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特許7359831接合部、電気フィードスルーおよびセンサ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-02
(45)【発行日】2023-10-11
(54)【発明の名称】接合部、電気フィードスルーおよびセンサ
(51)【国際特許分類】
   C04B 37/02 20060101AFI20231003BHJP
   C03C 8/04 20060101ALI20231003BHJP
【FI】
C04B37/02 A
C03C8/04
【請求項の数】 19
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021203130
(22)【出願日】2021-12-15
(65)【公開番号】P2022107513
(43)【公開日】2022-07-21
【審査請求日】2022-01-20
(31)【優先権主張番号】21150799.1
(32)【優先日】2021-01-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】502281471
【氏名又は名称】キストラー ホールディング アクチエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジョヴァンニ マストロジャコモ
(72)【発明者】
【氏名】ハンス ベアト メルキ
(72)【発明者】
【氏名】トーマス カドナオ
【審査官】神▲崎▼ 賢一
(56)【参考文献】
【文献】特開昭58-095673(JP,A)
【文献】特開2015-205801(JP,A)
【文献】特開平08-091950(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 37/02
C03C 8/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
接合部(1)であって、前記接合部(1)は、ガラス接合剤(4)によって合金部材(2)とセラミックス部材(3)が接合され、前記ガラス接合剤(4)は、材料結合接合部(24)によって前記合金部材(2)に接合され、前記ガラス接合剤(4)は、別の材料結合接合部(34)によって前記セラミックス部材(3)に接合されている、接合部(1)において、
前記ガラス接合剤(4)は、融点が800℃未満のガラスでできており、前記ガラス接合剤(4)は、少なくとも9・10-6-1の熱膨張係数を有し、前記ガラス接合剤(4)は、少なくとも10%のビスマス含有量を有し、前記合金部材(2)は、少なくとも9・10-6-1の熱膨張係数を有し、前記セラミックス部材(3)は、8・10-6-1の最大熱膨張係数を有し、前記ガラス接合剤(4)と前記セラミックス部材(3)との間の前記材料結合接合部(34)は、混合領域(10)を含み、前記混合領域(10)は、前記セラミックス部材(3)の部分領域であり、前記混合領域(10)は、前記混合領域(10)外の前記セラミックス部材(3)のビスマス含有量と比較して、ビスマス含有量が高いことを特徴とする、接合部(1)。
【請求項2】
前記混合領域(10)は、前記ガラス接合剤(4)に空間的に隣接して位置し、前記混合領域(10)の前記ビスマス含有量は、前記ガラス接合剤(4)に向かって徐々に増加することを特徴とする、請求項1に記載の接合部(1)。
【請求項3】
前記ビスマス含有量は、前記ガラス接合剤(4)から前記混合領域(10)に向かって急激に減少することを特徴とする、請求項1または2に記載の接合部(1)。
【請求項4】
前記混合領域(10)は、少なくとも0.001mmの前記ガラス接合剤(4)からの空間的延長部を有し、前記混合領域は、前記セラミックス部材(3)の前記空間的延長部によって区切られ、前記セラミックス部材(3)の前記ビスマス含有量が、前記ガラス接合剤(4)に直接隣接する前記混合領域(10)における前記セラミックス部材(3)の前記ビスマス含有量の1/eに等しい平面によって前記セラミックス部材(3)内でさらに区切られることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の接合部(1)。
【請求項5】
前記ガラス接合剤(4)は鉛を含まず、前記ガラス接合剤(4)は、融解温度が800℃未満のガラスでできていることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の接合部(1)。
【請求項6】
融解温度が650℃未満のガラスでできていることを特徴とする、請求項5に記載の接合部(1)。
【請求項7】
前記セラミックス部材(3)が電気絶縁性であり、前記セラミックス部材(3)は、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化ケイ素、またはこれらの材料の混合物を含み、その含有量は、少なくとも70%であることを特徴とする、請求項1~のいずれか一項に記載の接合部(1)。
【請求項8】
前記セラミックス部材(3)は、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化ケイ素、またはこれらの材料の混合物を含み、その含有量は、少なくとも95%であることを特徴とする、請求項7に記載の接合部(1)。
【請求項9】
前記合金部材(2)は多結晶構造を有し、前記多結晶構造の平均粒径は平均して0.01mm未満であることを特徴とする、請求項1~のいずれか一項に記載の接合部(1)。
【請求項10】
前記合金部材(2)は、マルテンサイト鋼であることを特徴とする、請求項1~のいずれか一項に記載の接合部(1)。
【請求項11】
前記合金部材(2)は、EN材料番号1.4542、1.4534または1.4614を有する鋼のうちの1つである、請求項10に記載の接合部(1)。
【請求項12】
前記ガラス接合剤(4)は、50%を超えるBi、1%~10%のB、10%~50%のZnO、1%~10%のSiO、0.1%~1%のAlを含むか、または前記ガラス接合剤(4)は、50%を超えるBi、1%~10%のB、1%~10%のZnO、0.1%~1%のCeOを含むか、または前記ガラス接合剤(4)は、50%を超えるBi、1%~10%のB、1%~10%のZnO、0.1%~1%のCeO、0.1%~1%のZrOを含むことを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載の接合部(1)。
【請求項13】
電気フィードスルー(5)であって、前記電気フィードスルー(5)は、合金部材(2)であるハウジング(7)を含み、前記ハウジング(7)は、長手軸(L)に沿って形成され、開口壁(72)を有する開口部(71)を有し、細長い電気的導体(6)は、少なくとも前記長手軸(L)に沿った特定の領域で前記開口壁(72)によって放射状に囲まれており、前記電気的導体(6)は、他の合金部材(2)であり、少なくとも1つのセラミックス部材(3)は、前記開口部(71)内に少なくとも部分的に配置され、前記セラミックス部材(3)は、前記電気的導体(6)を少なくとも前記長手軸(L)に沿った特定の領域で放射状に囲み、前記セラミックス部材(3)は電気絶縁性であり、前記電気的導体(6)は、前記開口壁(72)から電気的に絶縁されており、ガラス接合剤(4)は、前記セラミックス部材(3)に隣接する前記開口部(71)内に配置され、前記ガラス接合剤(4)は、少なくとも長手軸(L)に沿った特定の領域で前記電気的導体(6)を放射状に取り囲む、電気フィードスルー(5)において、
前記電気的導体(6)および前記セラミックス部材(3)は、前記ガラス接合剤(4)を使用することにより、請求項1~12のいずれか一項に記載の接合部(1)によって接合され、前記開口壁(72)および前記セラミックス部材(3)は、前記ガラス接合剤(4)を使用することにより、請求項1~12のいずれか一項に記載のさらなる接合部(1)によって接合されることを特徴とする、電気フィードスルー(5)。
【請求項14】
前記電気フィードスルー(5)は、第1の領域(A)から第2の領域(B)に電荷を伝導するのに適しており、前記電気フィードスルー(5)は、前記第1の領域(A)を前記第2の領域(B)からしっかりと密封することを特徴とする、請求項13に記載の電気フィードスルー(5)。
【請求項15】
電気フィードスルー(5)の気密性は、350℃までの恒久的または一時的な温度によって損なわれないことを特徴とする、請求項14に記載の電気フィードスルー(5)。
【請求項16】
前記長手軸(L)に沿った前記電気的導体(6)の絶縁経路(11)が、前記セラミックス部材(3)によって、および前記ガラス接合剤(4)によって、放射状に囲まれており、前記絶縁経路の長さ(11)と前記電気的導体の直径(61)の比が3よりも大きいか、または前記長手軸(L)に沿った前記ガラス接合剤(4)の長さは、前記長手軸(L)に垂直な方向の前記ガラス接合剤(4)の直径よりも少なくとも2倍小さいことを特徴とする、請求項1315のいずれか一項に記載の電気フィードスルー(5)。
【請求項17】
少なくとも1つのセンサ部材(8)、金属センサハウジング(92)、および請求項1316のいずれか一項に記載の少なくとも1つの電気フィードスルー(5)を含むセンサ(9)であって、前記金属センサハウジング(92)は、内部(C)を実質的に取り囲んでおり、前記金属センサハウジング(92)は、少なくとも1つのフィードスルー開口部(91)を含み、各々のフィードスルー開口部(91)には、少なくとも1つの前記電気フィードスルー(5)のうちの1つが導入され、前記電気フィードスルー(5)は、材料結合接合部(S)によって前記金属センサハウジング(92)に接合され、前記電気フィードスルー(5)は、電流伝導方式で少なくとも1つの電気的導体(6)のうちの1つによって前記内部(C)を外部(D)に接続し、前記少なくとも1つのセンサ部材(8)は、前記内部(C)に配置されており、前記少なくとも1つのセンサ部材(8)は、物理量を検出するように構成されており、前記少なくとも1つのセンサ部材(8)は、電流伝導方式で前記少なくとも1つの電気的導体(6)に接続されている、センサ(9)。
【請求項18】
前記材料結合接合部(S)は、はんだ付けされた接合部または溶接された接合部または接着剤で結合された接合部である、請求項17に記載されたセンサ(9)。
【請求項19】
請求項1315のいずれか一項に記載の本体を貫通する電気フィードスルー(5)を製造する方法であって、
前記ハウジング(7)内に前記細長い開口部(71)を形成するステップと、
前記セラミックス部材(3)を少なくとも部分的に前記開口部(71)内に配置して、前記長手軸(L)に平行に延在するようにするステップであって、前記セラミックス部材(3)は、中空円筒形を有する、ステップと、
前記ガラス接合剤(4)を少なくとも部分的に前記開口部(71)内に配置して、前記長手軸(L)に平行に延在し、前記セラミックス部材(3)に当接するようにするステップであって、前記ガラス接合剤(4)は、中空円筒形を有する、ステップと、
記セラミックス部材(3)および前記ガラス接合剤(4)内に前記電気的導体(6)を配置して、前記セラミックス部材(3)および前記ガラス接合剤(4)が前記長手軸(L)に沿って放射状に前記電気的導体(6)を少なくとも部分的に取り囲むようにする、ステップと、
上記のように配置された前記電気的導体(6)、セラミックス部材(3)、ハウジング(7)、およびガラス接合剤(4)を前記ガラス接合剤(4)の融解温度よりも高い温度まで加熱することにより、前記ガラス接合剤(4)を少なくとも部分的に液化し、前記ガラス接合剤(4)の少なくともビスマス含有部分を前記セラミックス部材(3)へ浸透させ、前記混合領域(10)を形成する、ステップと、
上記のように配置された前記電気的導体(6)、セラミックス部材(3)、ハウジング(7)、およびガラス接合剤(4)の温度を、前記ガラス接合剤(4)の前記融解温度よりも低い温度まで変化させ、前記ガラス接合剤(4)と前記電気的導体(6)との間の材料結合接合部(24)と、前記ガラス接合剤(4)と前記セラミックス部材(3)との間の材料結合接合部(34)とを含む接合部(1)を形成し、前記ガラス接合剤(4)と前記ハウジング()との間の材料結合接合部(24)と、前記ガラス接合剤(4)と前記セラミックス部材(3)との間の材料結合接合部(34)とを含む接合部(1)を形成する、ステップとを含むことを特徴とする、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立請求項の前文の定義に記載された、ガラス接合剤を用いて合金部材をセラミックス部材に接続する接合部に関するものである。本発明はまた、上記の接合部を含む電気フィードスルーに関するものである。本発明はさらに、少なくとも1つのその電気フィードスルーを含むセンサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
様々な工業製品では、異なる材料間の耐熱性材料結合接合部が必要である。一般的に、互いに結合される2つの部材間の材料結合接合部は、この目的のために結合剤を用いて形成される。しかしながら、熱膨張係数が異なるため、セラミックス部材と、金属合金(以下では略して合金と呼ぶ)からなる合金部材または金属との間に耐熱性材料結合接合部を実現することはしばしば困難であるか、または、材料の選択に関して厳しく制限されている。冶金学では、合金は、少なくとも2つの化学元素を含む材料として定義され、そのうちの少なくとも1つは、金属結合の特性を共に示す金属である。明確にするために、以下では、金属合金または略して合金という用語を、純金属または金属合金または他の金属材料を指すために使用する。例えば、はんだの融解温度で接合剤として金属はんだを用いてはんだ付けすることによって、接合する部材を高温にする状態で接合部が生成される場合、はんだの融解温度とは異なる温度で接合部に強い力が作用する。これらの力は、機械的応力とも呼ばれる。力は温度変化に伴って変化し、温度変化時に接合部が弱くなり、亀裂が形成されたり、さもなければ接合部の特性に悪影響を及ぼしたりする可能性がある。
【0003】
耐熱性の材料結合接合部は、センサに、例えば、センサのハウジングまたは装置のハウジングに溶接されたハウジングを有する電気フィードスルーによく見られる。通常、金属導体は、ガラス製の絶縁性ガラス接合剤を介して直接導通する。ガラス接合剤は、ハウジングによって放射状に囲まれている。接合される一方の部材としてのハウジングと接合される他方の部材としての導体との間の接合部を形成するために、中空円筒形のガラス接合剤が頻繁に使用される。市販のフィードスルーでよく知られているガラス接合剤は、ホウケイ酸ガラスである。フィードスルーを形成するために、ホウケイ酸ガラスは800℃を超える高温で溶融され、接合される部材に材料結合接合部を提供する。これは、当技術分野では「ガラス化」として知られている。
【0004】
特に小型化が進む傾向にあるため、一般的なセンサハウジングは可能な限り薄肉で小型に製造されている。したがって、使用される材料は、細粒構造によって特徴付けられる必要があり、細粒構造は、結晶粒とも呼ばれる結晶ゾーンを含む材料を意味すると理解され、結晶粒は、0.01mm未満の小さな平均粒径を有する。平均粒径は、非特許文献1に記載されている方法で決定される。
【0005】
特に力センサおよび圧力センサは、薄い金属膜を組み込むことが多い。さらに、そのようなセンサはまた、可能な限り薄壁の予圧スリーブによって測定要素に予圧力で機械的に予圧をかけるための薄壁の金属予圧スリーブを組み込むことが多い。この目的のために、予圧スリーブは、金属製のセンサハウジングに溶接されることが多い。良好な溶接接合部を実現するために、センサハウジングと予圧スリーブは、ハウジング自体に薄いまたは繊細な部材または構造が含まれていない場合でも、同じ材料で作られていることが多い。薄壁の膜を含むセンサも知られている。予圧スリーブと同様に、これらはセンサハウジングに溶接されることが多く、例えば特許文献1で知られているように、センサの内部を環境の影響から保護するためにしっかりと密閉された接合部を実現する。このため、このようなセンサハウジングは、例えば、EN材料番号1.4542、1.4534、または1.4614の鋼などのマルテンサイト鋼で作製されている。しかしながら、既知の電気フィードスルーは、オーステナイト系、したがって粗粒構造をもつ1.3981グレードの鋼で作製されたハウジングを有することが多い。本明細書の意味において、粗粒は、0.01mmを超える平均粒径を有するものとして理解される。EN 1.3981の材料番号の鋼は、酸化アルミニウムおよびホウケイ酸ガラスと同様の熱膨張係数を示す。しかしながら、マルテンサイト鋼は、9~12・10-6・K-1の著しくより高い熱膨張係数を特徴としている。マルテンサイト鋼とEN 1.3981の材料番号の鋼との間のこの非適合性により、マルテンサイト鋼に比べて降伏強度が低い鋼間の接合領域が生じ、はんだ付け、溶接、またはその他の材料結合接合部の接合される部材の熱膨張係数の違いによる亀裂傾向が生じる。
【0006】
材料結合接合部で使用されるガラス接合剤の過剰な流れと、材料結合部の近くにない結合される部材の領域の汚染を防ぐために、いわゆるガラス化温度は、ガラス接合剤の融解温度のすぐ上でなければならない。汚染は、例えば、これらの領域をさらにはんだ付けまたは溶接された接合部のために使用できなくする。ガラス接合剤の融解温度に近いガラス化温度は、結合剤の不必要な流れを防止する。ガラス接合剤の融点に近い処理温度にもかかわらず、細孔および/または収縮穴のない材料結合、すなわち細孔フリーおよび/または収縮孔フリーのガラス化を得るために、ガラス接合剤は、狭い公差帯内で形成され、ガラス化の前にすでに接合される部材とガラス接合剤との間の良好な接触を達成されなければならない。冶金学では、収縮穴は、溶融物の冷却と凝固によって発生するある体積の空洞である。ガラス接合剤は、高い幾何学的公差を示さなければならない。しかしながら、このような幾何学的公差を実現することは困難であり、多大な労力を必要とする場合がある。
【0007】
金属タンタルとセラミックスでそれぞれ作製された部材の間に生成される材料結合接合部は、特許文献2から知られており、接合部は、ガラスからなる接合手段を使用することによって達成される。タンタル、セラミックス、ガラスは、熱膨張係数の差が1.5・10-6-1を超えないように選択される。3000℃を超える高い融解温度のため、タンタルは多くの用途には適していない。さらに、酸化する傾向が高いため、溶接時に不活性環境が必要になる。さらに、高価である。特許文献2に開示されているガラス材料はさらに、900℃を超える高い融点を有する。そのような高温は、特に、薄い金属部材を損傷する、例えば、不可逆的に変形する可能性がある。
【0008】
異なる材料間の耐熱材料結合は、セラミックスによる金属表面の電気絶縁にも使用される。これらの場合、金属表面は平面セラミックスに材料結合されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】米国特許第4016437号明細書
【文献】米国特許第3638076号明細書
【非特許文献】
【0010】
【文献】ASTM国際標準試験方法(International Standard Test Method)E112-10、DOI:10.1520/E0112-10
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、耐熱性であり、低コストで製造することができ、800℃以下の低温で製造することができる、金属材料とセラミックス間の接合部を製造することである。本発明の別の目的は、耐熱性であり、低コストで製造することができる電気フィードスルーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的は、独立請求項の構成によって達成された。
【0013】
本発明は、独立請求項1に記載の接合部に関するものである。
【0014】
本発明はさらに、独立請求項10に記載の電気フィードスルーに関するものである。
【0015】
ガラスなどの材料の混合物に含まれるビスマスなどの材料のパーセンテージを示す場合、これは、材料の混合物の総重量に対して含まれる材料の重量パーセントを意味することを意図している。
【0016】
一般的に理解されるように、ガラスは、本明細書において、ガラスの固体状態からゴム状への粘性状態への転移が起こるガラス転移温度を有する材料を意味することを意図している。一般的に、粘性は、約1012Pa・s(パスカル秒)の粘度で発生すると定義される。ガラス転移は、特定の温度では発生しないが、温度範囲内で発生する。ガラス転移温度は、ガラス温度または変態温度とも呼ばれる。
【0017】
さらに、ガラスは、材料結合が形成されるガラス化温度も示す。このガラス化温度は、以下、融解温度と呼ばれる。ガラス化は融解とも呼ばれる。
【0018】
合金部材は、少なくとも9・10-6-1の熱膨張係数を示し、一定量のビスマスを含むガラス接合剤は、少なくとも9・10-6-1の熱膨張係数を示す。本明細書に記載されているすべての熱膨張係数は、特に明記しない限り、25℃の室温と100℃の間の熱膨張係数を指す。特に、合金はマルテンサイト鋼である。したがって、合金部材とガラス接合剤を接合した場合の熱膨張係数に関して、問題に遭遇することはない。セラミックス部材は、8・10-6-1の最大の熱膨張係数を示す。したがって、合金部材とセラミックス部材の熱膨張係数の範囲は重ならない。合金部材とガラス接合剤との間、およびセラミックス部材とガラス接合剤との間の材料結合接合部は、ガラス接合剤を少なくとも部分的に溶融することによって達成される。溶融ガラス接合剤は、合金部材およびセラミックス部材とそれぞれ接触される。ガラス接合剤の少なくともビスマス含有部分がセラミックス部材に導入される。セラミックス部材内で検出されるビスマス含有量が、ガラス接合剤に材料結合される前のセラミックス部材内のビスマス含有量と比較して高いセラミックス部材の部分は、混合領域と呼ばれる。混合領域では、ガラス接合剤の熱膨張係数に合わせて熱膨張係数が変化する。混合領域とガラス接合剤との間の界面でのガラス接合剤の熱膨張係数と一致するような混合領域の熱膨張係数におけるこの変化は、ある量のビスマスをセラミックス部材に導入することによって達成される熱膨張係数におけるこの変化がない場合と比較して、温度変化中に発生する力が減少する。セラミックス部材とガラス接合剤との界面に作用する力は、セラミックス部材に混合領域がない場合に作用する力よりも小さいため、これは有利である。これにより、材料の結合が損傷するリスクが低減される。ガラス接合剤とセラミックス部材との間の材料結合接合部は、ガラス接合剤のガラス転移温度に近い温度まで耐熱性である。
【0019】
合金部材とガラス接合剤の熱膨張係数はよく一致しているため、温度が変化しても、合金部材とガラス接合剤の間の材料結合接合部には力が発生しないか、またはわずかな力しか発生しない。したがって、ガラス接合剤と合金部材との間の材料結合接合部は、ガラス接合剤のガラス化温度近くまで耐熱性である。
【0020】
ガラス接合剤による合金部材とセラミックス部材との間の本発明に係る接合部は、異なる熱膨張係数を有する材料間の接合部における温度変化の際に起こり得る亀裂を回避する。
【0021】
本発明の文脈において、温度変化は、数秒から数日の期間にわたって少なくとも10℃の、ガラス接合剤または合金部材またはセラミックス部材の温度の変化、またはガラス接合剤、セラミックス部材、合金部材の組み合わせの温度の変化である。温度変化は、少なくとも2つの温度の間で繰り返し発生する温度変化である。
【0022】
本発明はさらに、上記の段落に記載されたような少なくとも1つの接合部を含む、請求項9に記載の電気フィードスルーに関するものである。
【0023】
以下では、本発明は、以下の図を参照して、例としてより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】接合部の一実施形態の概略部分図を示す。
図2】接合部のさらなる一実施形態の概略部分図を示す。
図3】接合部のさらなる一実施形態の概略部分図を示す。
図4】電気フィードスルーの一実施形態の概略部分図を示す。
図5】電気フィードスルーのさらなる一実施形態の概略部分図を示す。
図6】電気フィードスルーのさらなる一実施形態の概略部分図を示す。
図7】電気フィードスルーのさらなる一実施形態の概略部分図を示す。
図8】電気フィードスルーの一実施形態の部分図の表現を示す。
図9】電気フィードスルーのさらなる一実施形態の概略部分図を示す。
図10】電気フィードスルーのさらなる一実施形態の概略部分図を示す。
図11】電気フィードスルーを含むセンサハウジングの概略部分図を示す。
図12】センサの概略部分図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は、接合部1の潜在的な一実施形態の概略部分図を示している。
【0026】
接合部1は、ガラス接合剤4により作製された合金部材2とセラミックス部材3との間の接合部である。ガラス接合剤4と合金部材2は、材料結合接合部24によって接合される。さらに、ガラス接合剤4とセラミックス部材3は、材料結合接合部34によって接合される。ガラス接合剤4の融点は800℃未満である。セラミックス部材3および合金部材2への材料結合24、34は、それぞれ、ガラス接合剤2の融解温度のすぐ上の温度で形成される。以下、低温とは800℃未満の温度を意味し、高温とは800℃を超える温度を意味すると理解される。ガラス接合剤4の低い融解温度は、ガラス接合剤4に含まれる少なくとも10%のビスマスの量によって達成される。
【0027】
ガラス接合剤4の低い融解温度は、例えば、高い融解温度を有するホウケイ酸ガラスとの材料結合において生じるような線形膨張によって引き起こされる可能性のある、セラミックス部材3および合金部材2への機械的応力を低減する。接合部1を製造するために低温を使用することのさらなる利点は、関与するセラミックス部材3および関与する合金部材2ならびにガラス接合剤4の長手方向の膨張が、異なる熱膨張係数のために温度に依存することである。したがって、ガラス接合剤4とセラミックス部材3または合金部材2との間の線膨張、したがって線膨張の差は、接合部1を製造するために高温を使用する場合と比較して小さい。したがって、ガラス接合剤4によって接合されたセラミックス部材3および合金部材2は、それらが接合部1内でガラス接合剤4によって互いに材料結合された(24、34)後、異なる温度、例えば、室温またはセルシウス目盛りの負の範囲の温度で使用される場合、接合部1のガラス接合剤4により、上記高温に対して熱膨張係数の異なるセラミックス部材3と合金部材2の線膨張の相対差が、高温で製造しなければならない材料結合接合部の場合よりもさらに小さくなる。
【0028】
本発明によれば、接合部1は混合領域10を含む。混合領域10は、一定量のビスマスを含む。混合領域10は、セラミックス部材3の部分領域である。
【0029】
ガラス接合剤4による材料結合接合部34が形成される前のセラミックス部材3のビスマス含有量は、混合領域10のビスマス含有量よりも低い。したがって、セラミックス部材3のビスマス含有量は、材料結合接合部34が形成される前の時点でゼロまたは検出するには低すぎる可能性がある。ビスマスは、例えば、一般的に知られている蛍光X線測定またはX線吸収測定によって検出することができる。しかしながら、ビスマスの検出には、二次イオン質量分析(SIMS)などのよく知られた材料分析技術を使用することもできる。
【0030】
混合領域10内のビスマス含有量は、混合領域10の外側のセラミックス部材3のビスマス含有量よりも高い。
【0031】
混合領域10は、ガラス接合剤4に空間的に近接して配置されている。図1図3は、接合部1の3つの実施形態を示している。
【0032】
合金部材2の熱膨張係数は、少なくとも9・10-6-1であり、ある量のビスマスを含むガラス接合剤4の熱膨張係数は、少なくとも9・10-6-1である。したがって、熱膨張係数は、合金部材2とガラス接合剤4との間に材料結合接合部24の形成を可能にする。
【0033】
セラミックス部材3の最大の熱膨張係数は、8・10-6-1である。セラミックス部材3の熱膨張係数は、ある量のビスマスをセラミックス部材の部分領域、いわゆる混合領域10に導入することによって増加する。したがって、増加した量のビスマスを含む混合領域10では、熱膨張係数は、ビスマスの量が増加しない混合領域10の外側のセラミックス部材3よりも高い。セラミックス部材3の混合領域10へのビスマスの導入により、混合領域10の熱膨張係数は、ガラス接合剤4の熱膨張係数および合金部材2の熱膨張係数に近づく。混合領域10は、応力の一部が混合領域10内で、したがってセラミックス部材3の部分領域3内で今発生しているので、混合領域10のない接合部1と比較して、セラミックス部材3とガラス接合剤4との間の界面で発生する機械的応力を低減する。しかしながら、そこでの機械的応力は、セラミックス部材3とガラス接合剤4との間の材料結合接合部34に悪影響を及ぼさない。
【0034】
一実施形態では、混合領域10に含まれるビスマスの量は、ガラス接合剤4に向かって徐々に増加する。セラミックス部材の熱膨張係数はビスマス含有量に依存することが示されている。混合領域10では、ビスマスの量が増加するにつれて熱膨張係数が増加する。結果として、ガラス接合剤4に空間的に近接している混合領域10の熱膨張係数は、ガラス接合剤4の熱膨張係数に近づく。混合領域10内の熱膨張係数は、ガラス接合剤4の熱膨張係数に徐々に近づき、材料結合接合部34の温度変化時に発生する機械的応力および対応する力が混合領域10全体にわたって分散される。セラミックス部材3に混合領域がない場合に合金部材2とセラミックス部材3との間に作用する力と比較して、セラミックス部材3とガラス接合剤4との間の界面には、より小さな力が作用する。
【0035】
有利には、混合領域10の熱膨張係数をガラス接合剤4の熱膨張係数と徐々に一致させるためには、ガラス接合剤4と混合領域10との間の界面で、ビスマス含有量が急激に減少する必要がある。ガラス接合剤4と混合領域10との間の界面は、ガラス接合剤4には存在しないが、混合領域10内にセラミックス材料が存在することによって画定される。混合領域10のビスマス含有量への熱膨張係数の依存性は、ガラス接合剤4のビスマス含有量への熱膨張係数の依存性とは異なるので、ビスマス含有量は、混合領域10とガラス接合剤4との間の界面での熱膨張係数の一致を得るために、ガラス接合剤4内のビスマス含有量と比較して、混合領域内でより低くなければならない。したがって、混合領域10内のビスマス含有量は、有利には、ガラス接合剤4と混合領域10との間の界面でのビスマス含有量が急激に減少するようなものである。含有量の急激な変化は、0.001mmの距離内で5%を超えるこの含有量の相対的な変化である。
【0036】
有利には、混合領域10は、接合手段4から少なくとも0.001mmの空間的延長部を有する。したがって、混合領域10の空間的延長部の境界は、一方では、セラミックス部材3の空間的延長部である。したがって、セラミックス部材3の空間的延長部はまた、混合領域を、それに直接隣接するガラス接合剤4から区切る。混合領域10の延長部は、セラミックス部材3内のガラス接合剤4との界面から垂直方向に測定される。混合領域10のもう1つの境界は、セラミックス部材3内のビスマス含有量が、ガラス接合剤4に直接隣接するセラミックス部材3内のビスマス含有量の1/e以下となる場所で画定される。値1/eは、オイラーの数の逆数である。ガラス接合剤4に直接隣接するセラミックス部材3内のビスマス含有量は、ガラス接合剤4とセラミックス部材3との間の界面におけるセラミックス部材3の最初の0.0005mm内のビスマス含有量である。したがって、混合領域10は、セラミックス部材3の部分領域である。少なくとも0.001mmの混合領域10の空間的延長部は、材料結合接合部34の温度の変化時に発生する力が混合領域10全体に分散されるので有利である。混合領域10の空間的延長部は、ガラス化温度およびガラス化期間の持続時間によって調整することができる。ガラス化に必要なエネルギー入力およびガラス化期間の持続時間が不必要に増加する一方で、接合部1の耐久性に関して有意な改善をもたらさないので、約1.0mmを超える延長部は必要ではない。
【0037】
一実施形態では、ガラス接合剤4は鉛を含まない。鉛含有はんだガラスとその特性は、よく知られている。しかしながら、鉛が生物に及ぼす悪影響は広く知られている。このため、電気・電子部品への鉛の使用は、例えば、電気・電子機器における特定有害物質の使用制限(RoHS)に関する2011年6月8日の欧州議会および理事会の指令2011/65/EUによって、特定の場合に禁止されている。しかしながら、鉛なしで本発明に係るガラス接合剤4を調製することは可能である。これには、ガラス接合剤4が指令2011/65/EUに準拠しているという利点がある。指令2011/65/EUに従い、「鉛を含まない」という用語は、0.1重量%未満の鉛含有量を指す。
【0038】
ガラス接合剤4は、融解温度が800℃未満のガラスでできている。ガラス接合剤4とセラミックス部材3との間に材料結合接合部34を形成するため、またはガラス接合剤4と合金部材2との間に材料結合接合部24を形成するために、ガラス接合剤4の少なくとも一部および少なくとも合金部材2またはセラミックス部材3の一部は、それぞれ、ガラス接合剤4の融解温度を少なくとも数ミリ秒間示す。高い融解温度を示すボロシリケートガラス接合剤で作製された従来の材料結合と比較して、ビスマス含有ガラス接合剤4の低い融解温度は、室温に対するガラス接合剤4および合金部材2またはセラミックス部材3の線形膨張が高温よりも少ないという利点を有する。これにより、ガラス接合剤4の融解温度よりも低い温度での潜在的な機械的応力の低減がもたらされる。
【0039】
一実施形態では、ガラス接合剤4中のビスマス含有量は、好ましくは650℃よりも低い融解温度が得られるように選択される。上記の利点に加えて、650℃未満の温度は、例えばセラミックス部材3または合金部材2内の熱伝導、または対流、または熱放射による、接合部1の近くに位置する部品への熱影響を最小限に抑え、したがって、部品または合金部材2またはセラミックス部材3の経年劣化または損傷を防ぐことを可能にする。
【0040】
例えば、ガラス接合剤4として適切なガラスは、50%を超えるBi、1%~10%のB、10%~50%のZnO、1%~10%のSiO、0.1%~1%のAlを含むガラスである。上記のガラス接合剤4は、約520℃のガラス化温度を示す。例えば、ガラス接合剤4として適した別のガラスは、50%を超えるBi、1%~10%のB、1%~10%のZnO、0.1%~1%のCeOを含むガラスである。上記のガラス接合剤4は、約620℃のガラス化温度を示す。さらに、ガラス接合剤4として適したガラスは、50%を超えるBi、1%~10%のB、1%~10%のZnO、0.1%~1%のCeO、0.1%~1%のZrOを含むガラスである。上記のガラス接合剤4のガラス化温度は、約450℃~約500℃の範囲である。
【0041】
一実施形態では、セラミックス部材3は電気絶縁性である。本明細書で定義される電気絶縁性は、室温で少なくとも10Ω・cmの抵抗率を有する材料である。電気絶縁性セラミックス部材3は、電流伝導性合金部材2が電気絶縁性セラミックス部材3によってその環境から電気的に絶縁されている電気用途に有利である。電気絶縁性セラミックス部材3に適した材料は、例えば、少なくとも70%の酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化ケイ素、酸化イットリウム、またはこれらの材料の混合物を含むセラミックスである。高い絶縁性を必要とする用途では、前述の材料の含有量は、少なくとも95%であることが好ましい。そのような用途の1つは、力の衝撃下で圧電電荷を生成する圧電測定要素の使用である。測定要素の圧電電荷は、測定のために可能な限り少ない損失で取得する必要がある。費用効果のために、80%~98%の酸化アルミニウムを含み、約6・10-6-1の熱膨張係数を有するセラミックス3で作製された接合部材が特に有利であることが見出された。
【0042】
使用されるセラミックスは、多結晶および/または単結晶構造を有することができる。単結晶構造の一例は、サファイアである。
【0043】
一実施形態では、合金部材2は、多結晶微細構造を有する。多結晶微細構造は、結晶格子の異なる配向を有する複数の結晶ゾーンを有する微細構造を意味することを意図している。これらの結晶ゾーンは、当業者には結晶粒子としても知られている。これらの粒子には、ASTM国際標準試験方法E112-10に従って決定できる、いわゆる粒径という寸法がある。多結晶構造をもつ合金の場合、平均粒径は重要な特性である。膜、ハウジング、予圧スリーブ、および時には0.1mm未満の小さな幾何学的寸法を有する他の金属部品を正確に製造するには、平均粒径を幾何学的寸法よりも小さくする必要があることがわかっている。0.10mm~0.02mmの範囲の金属部品の幾何学的寸法は、電子および電気技術のアプリケーションでよく見られる。したがって、合金部材2には、平均粒径が0.01mm未満の多結晶構造を有する合金が好ましい。
【0044】
一実施形態では、合金部材2はマルテンサイト鋼である。マルテンサイト鋼は、平均粒径が0.01mm未満の微粒の微細構造を有し、したがって、粒径と同様の厚さを有する製造されたパーツまたは部品の構造を可能にするため、有利である。これは、電子工学、電気工学、または精密工学における薄い電流伝導性部材にとって特に有利である。マルテンサイト鋼は、例えば、EN材料番号が1.4542、1.4534、または1.4614の鋼のいずれかである。
【0045】
本発明はさらに、少なくとも1つの接合部1を含む電気フィードスルー5を包含し、接合部1は、合金部材2とセラミックス部材3との間のガラス接合剤4によって生成される接合部であり、セラミックス部材3は、すでに上で説明したように、混合領域10を含む。
【0046】
電気フィードスルー5は、接合部1の文脈において合金部材2に対応するハウジング7を含む。ハウジング7は、長手軸Lに沿って形成された開口部71を含む。開口部71は、開口壁72を有する。開口壁72は、少なくとも長手軸Lに沿った特定の領域において、細長い電気的導体6を取り囲む。以下では、電気的導体6を略して導体6と呼ぶ。導体6は、開口壁72から電気的に絶縁されている。導体6は、開口壁72と直接接触していない。接合部1の文脈では、導体6は合金部材2である。少なくとも1つのセラミックス部材3は、開口部71内に少なくとも部分的に配置され、セラミックス部材3は、長手軸Lに沿った少なくとも特定の領域において導体6を放射状に取り囲む。導体6は、開口壁72から電気的に絶縁されている。開口部71は、例えば、円形の断面を有し、長手軸Lに沿って延在する。この場合、セラミックス部材3は、例えば、円筒軸が長手軸Lに沿って延在し、中央開口部31が例えば円形断面を有する中空円筒形である。導体6は、セラミックス部材3の開口部31内に配置され、接合部材の開口部31の断面と実質的に等しい断面を有する。しかしながら、前述の開口部31、71および合金部材2、セラミックス部材4、導体6の長方形または多角形または他の任意の断面ももちろん可能である。
【0047】
ガラス接合剤4は、セラミックス部材3に隣接する開口部71内に配置される。ガラス接合剤4は、少なくとも長手軸Lに沿った特定の領域において導体6を放射状に取り囲む。ガラス接合剤4は、セラミックス部材3に直接隣接している。ガラス接合剤4は、セラミックス部材3と同様に、中空円筒形とすることができる。ガラス接合剤4が中空円筒形の場合、セラミックス部材3とガラス接合剤4は、中空円筒の端面と互いに当接している。
【0048】
導体6とセラミックス部材3は、ガラス接合剤4を用いて、すでに上記したように接合部1によって接合されている。接合部1は、ガラス接合剤4を用いて、合金部材2、この場合は導体6と、セラミックス部材3との間に生成される接合部である。ガラス接合剤4は、材料結合接合部24によって導体6に接続されている。さらに、ガラス接合剤4は、材料結合接合部34によってセラミックス部材3に接続されている。ガラス接合剤4は、800℃未満の融点を有する。すでに述べたように、ガラス接合剤4のビスマス含有量は少なくとも10%である。
【0049】
開口壁72とセラミックス部材3は、ガラス接合剤4を用いて、上記のように別の接合部1により接合されている。
【0050】
導体6および開口壁72は、同じセラミックス部材3に結合されており、セラミックス部材3は、導体6を開口壁72から電気的に絶縁している。電気フィードスルー5の潜在的な実施形態を図4図9に示す。さらに、2つの接合部1は、上記の実施形態の構成を含むことができる。特に、接合部1は、上記の実施形態の構成の組み合わせを含むことができる。
【0051】
図4図9に示す実施形態では、セラミックス部材3と導体6および開口壁72との間の接合部1は、一体部品から作製されたガラス接合剤4によって達成される。好ましくは、ガラス接合剤4は、焼結体である。焼結体とは、例えば加圧下で、例えばガラス粉末などの細粒の出発材料をプレスし、続いてそれを焼結温度まで加熱することによって、または例えば加圧下でプレスし、同時に焼結温度まで加熱し、続いて冷却することによって、本体の形状は保持されるが、粉末は結合して固体を形成するように製造される物体である。焼結体は、押出技術および焼結によっても製造することができる。いずれの場合も、焼結温度は、ガラス接合剤4の融解温度より低いままである。
【0052】
図10に示すような別の一実施形態では、セラミックス部材3と導体6との間の接合部1は、ガラス接合剤4を用いて製造される。また、セラミックス部材3と開口壁72との間の接合部1は、ガラス接合剤4’を用いて生成される。どちらの場合も、セラミックス部材3は、ガラス接合剤4に隣接する混合領域10、10’をそれぞれ含む。図10に係る本実施形態に記載されるガラス接合剤4、4’は、同じガラス組成を有する必要はない。
【0053】
電気フィードスルー5は、第1の領域Aから第2の領域Bに電荷を伝導するのに適している。一実施形態では、第1の領域Aは、第2の領域Bからしっかりと密閉されている。この文脈でしっかりと密閉されているとは、ヘリウムの漏れ量が10-5Pa・m・s-1未満の接合部1を指す。漏れ量の決定は、DIN EN 1779に記載されているように実行することができる。
【0054】
電気フィードスルー5のしっかりとした密閉は、好ましくは、350℃までの恒久的または一時的な温度の影響を受けない。350°の温度は、ガラス接合剤4に使用できる材料のガラス化温度よりも低い。これは、例えば内燃機関など、350℃を超える高温アプリケーションに電気フィードスルー5を使用する場合に有利である。高温アプリケーションの場合、電気フィードスルー5の構造的完全性を促進するために端部部材73が提供される。長手軸Lに沿ってセラミックス部材3に力が作用する場合、セラミックス部材3は端部部材73上で支持される。そのような力は、例えば、圧力が第1の領域Aまたは第2の領域Bに加えられたときに発生する。端部部材73は、開口部71のテーパーとして構成され、このテーパーは、図4図7および図9に示すように、開口部71の断面がセラミックス部材3の断面よりも少なくとも部分的に小さくなるように開口部71を減少させる。
【0055】
図4図6、および図9の実施形態に示されるように、セラミックス部材3は、端部部材73と直接接触していてもよい。図7の実施形態に示されるように、セラミックス部材3はまた、ガラス接合手段4を介在して端部部材73に当接していてもよい。
【0056】
図5に示される実施形態では、セラミックス部材3が、端部部材73’と、ガラス接合剤4を介在させて端部部材73との両方に当接するように、端部部材73に加えてさらなる端部部材73’が提供される。さらなる端部部材は、例えば溶接Sを用いて、ハウジング7に接合されるので、ガラス接合剤4、セラミックス部材3、および導体6を、ハウジング7の開口部71に事前に挿入することが可能である。
【0057】
端部部材73、73’を使用すると、構造の完全性、したがって接合部1の気密性に有利である。実際、ガラス接合剤4は、室温よりも350℃を超える温度で強度がより低い可能性がある。同時に、長手軸Lに沿ってセラミックス部材3に力が作用すると、接合部1に損傷が生じる可能性がある。これらの力が端部部材73によって放散される場合、この損傷は起こらない。当業者は、長手軸Lに沿って予想される力の方向に従って、上記の実施形態のうちの1つを選択するであろう。
【0058】
電気フィードスルー5は、絶縁経路11を含む。絶縁経路11は、導体6がセラミックス部材3および開口部71内のガラス接合手段4によって長手軸Lに沿って放射状に囲まれる位置で、長手軸Lに沿って画定される。したがって、長手軸Lに沿った導体6の絶縁経路11は、セラミックス部材3およびガラス接合剤4によって放射状に囲まれている。一実施形態では、絶縁経路11の長さと導体直径61との間の比は3よりも大きい。これは、導体6が開口壁72によって絶縁経路11全体にわたって放射状に支持されるので、電気フィードスルー5が長手軸Lに垂直に作用する力を利用することに鈍感であるという利点を有する。
【0059】
有利なことに、ハウジング7は、鋼1.4542、1.4534または1.4614のうちの1つで作製される。同様に、導体6は、有利には、鋼1.4542、1.4534、または1.4614のうちの1つで作製される。したがって、ハウジング7は、良好な被削性を有するので、有利には、1.4542で作製される。また、1.4614鋼も良好な被削性を示す。良好な被削性とは、例えば、従来技術で使用されているタンタルよりも優れた被削性を意味する。さらに、導体6は、有利には、1.4542で作製される。しかしながら、上記の鋼の別のもの、例えば、良好な被削性を示さないが、細長い形状に冷間引抜きすることができる1.4614から導体を作製することも可能である。
【0060】
電気フィードスルー5を低コストで製造するために、ガラス接合剤4は焼結体として提供される。焼結体の製造は安価であり、大量生産が可能である。しかしながら、ガラス接合剤4は、材料接合部24、34が作製される前に、接合される部材2、3、6、7にすでに当接している必要がある。例えば、ギャップが大きすぎる場合、ガラス接合剤4の溶融時に、開口壁72との連続的で細孔のないおよび/または収縮穴のない材料結合接合部24が生成されない。しかしながら、それらの製造方法により、焼結体は大きな公差を示す。例えば、収縮は、出発原料粉末の圧縮のために製造中にしばしば発生する。長さの長い焼結体の場合、10%未満の許容誤差は、多大な労力と関連コストを伴ってのみ達成され得る。しかしながら、電気フィードスルー5の絶縁経路11の長さは、長手軸Lに垂直に発生する可能性のあるてこの力によって損傷されないことを保証するために、ハウジング7の開口部71の直径より長くなければならない。電気フィードスルー5は、セラミックス部材3のサイズが、長手軸Lの方向の開口部71の直径の少なくとも2/3であり、長手軸Lに沿ったガラス接合剤4の長さが、長手軸Lに垂直な方向において、接合手段4の直径よりも少なくとも2倍小さいときに、特に低コストで製造可能であることが見出された。絶縁経路11の大部分はセラミックス部材3の長さによって絶縁されているので、ガラス接合剤4が主に絶縁経路11の長さに寄与する必要がないので、これは有利である。
【0061】
本体を通る電気フィードスルー5は、例えば、以下のステップによって製造される。
【0062】
ハウジング7の細長い開口部71を製造する。これは、例えば、旋削、穴あけ、フライス加工、または研削などの機械加工プロセスによって、またはウォータージェット切断、レーザー切断、腐食、または同様の適切な機械加工方法によって実行することができる。
【0063】
セラミックス部材3を少なくとも部分的に開口部71に挿入して、長手軸Lに平行に延在させ、セラミックス部材3は中空円筒形を有する。セラミックス部材3の機能を維持する、すなわち導体6をハウジング7から絶縁する他の形状も考えられる。
【0064】
ガラス接合剤4を、長手軸Lに平行で、セラミックス部材3に当接する開口部71内に少なくとも部分的に挿入し、ガラス接合剤4は、中空円筒形を有する。
【0065】
中空円筒形セラミックス部材3およびガラス接合剤4内への導体6の挿入により、セラミックス部材3およびガラス接合剤4は、長手軸Lに沿って放射状に導体6を少なくとも部分的に取り囲む。
【0066】
上記のように配置された導体6およびハウジング7およびガラス接合剤4をガラス接合剤4の融解温度より高い温度に加熱することにより、ガラス接合剤4を少なくとも部分的に液化する。ガラス接合剤4の少なくともビスマス含有部分をセラミックス部材3へ浸透させて、混合領域10を形成する。
【0067】
上記のように配置された導体6およびハウジング7およびガラス接合剤4の温度をガラス接合剤4の融解温度よりも低い温度に変化させ、ガラス接合剤4と導体6との間の材料結合接合部24と、ガラス接合剤4とセラミックス部材4との間の材料結合接合部34とを含む接合部1を形成し、ガラス接合剤4とハウジング7との間の材料結合接合部24と、ガラス接合剤4とセラミックス部材3との間の材料結合接合部34とを含むさらなる接合部1を形成する。
【0068】
混合領域10のサイズは、ガラス接合剤4の温度がその融解温度を超える期間によって与えられる。混合領域10のサイズはまた、ガラス接合剤4の融解温度を超える温度レベルによって影響を受ける可能性がある。
【0069】
好ましい一実施形態では、合金部材2および/または導体6および/またはハウジング7は耐食性である。クロム含有量が少なくとも10.5%の合金は耐食性がある。
【0070】
一実施形態では、少なくとも1つの合金部材2および/または1つのセラミックス部材3および/または1つ体6および/または1つのハウジング7は、金層を備えている。金層は熱膨張に大きな影響を与えず、さらに、金は耐薬品性がよく知られている貴金属であるため、合金部材2および/またはセラミックス部材3および/または導体6および/またはハウジング7は、金層による環境の影響から保護されるので、これは有利である。導体6を金の層でコーティングすることは特に有利である。これにより、上記のマルテンサイト合金と比較して導電率が向上する。同様に、金の代わりに銀または白金を使用してもよい。本発明の文脈において、このようにコーティングされた合金部材2および/またはセラミックス部材3および/または導体6および/またはハウジング7は、依然として、コーティングされた材料の熱膨張係数を示す。
【0071】
一実施形態では、電気フィードスルー5のハウジング7は、図11に例示的に示されるように、材料結合接合部Sによって、例えば、はんだ付けされた接合部または溶接された接合部によって、センサハウジング92または装置ハウジング92に接合される。材料結合接合部Sはまた、接着剤を使用して達成される接着剤接合部とすることができる。センサハウジング92または装置ハウジング92は、金属または合金で作製された金属部品である。好ましくは、装置ハウジング92またはセンサハウジング92は、ハウジング7と同じ合金で作製されるか、または少なくともマルテンサイト鋼で作製される。
【0072】
本発明はまた、図12に例示されるようなセンサ9に関するものである。センサ9は、少なくとも1つのセンサ部材8、金属センサハウジング92、および少なくとも1つの電気フィードスルー5を含む。センサハウジングは、内部Cを実質的に取り囲んでいる。少なくとも1つのセンサ部材8は、内部Cに配置されている。センサハウジング92は、少なくとも1つのフィードスルー開口部91を含む。各々のフィードスルー開口部91には、少なくとも1つの電気フィードスルー5のうちの1つが導入されている。少なくとも1つのセンサ部材8は、電流伝導方式で少なくとも1つの導体6に接続されている。電気フィードスルー5は、電流伝導方式で少なくとも1つの導体6のうちの1つによって内部Cを外部Dに接続する。センサ部材8は、物理量を検出するように構成される。物理量に対応する信号は、導体6を介して外部Dで受信することができる。電気フィードスルー5は、材料結合接合部S、例えば、はんだ付けされた接合部または溶接された接合部によってセンサハウジング92に接合される。例えば接着剤を用いた他の材料結合Sも考えられる。
【0073】
好ましくは、センサハウジング92は、フィードスルー5のハウジング7と同じ材料で作製される。これは特にマルテンサイト鋼であり、例えば、EN材料番号が1.4542、1.4534、または1.4614の鋼のうちの1つである。
【0074】
センサ9は、例えば、加速度センサ、力センサ、トルクセンサ、圧力センサ、または温度センサである。いくつかの実施形態では、言及された最初の4つのセンサは、特に、機械的変形時にそれらの表面に圧電電荷を生成する圧電センサ部材8を使用する。圧電センサ部材8は、センサ9の内部Cを外部Dからしっかりと密閉されなければならない。これは、圧電センサ部材8を環境の影響、特に湿気から保護する。センサは、圧電電荷を正確に検出するために、高い絶縁抵抗を必要とし、それは湿気がセンサ9に浸透すると劣化する。
【0075】
いくつかの実施形態では、加速度センサ9、力センサ9、トルクセンサ9、圧力センサ9、または温度センサ9は、好ましくは、機械的衝撃時に電気抵抗の変化を受けるピエゾ抵抗型センサ部材8を使用する。また、これらのセンサ部材8は、外部Dからしっかりと密封されてセンサ9の内部Cに配置されなければならない。
【0076】
本明細書に開示された実施形態の様々な構成を組み合わせた、セラミックス部材3と合金部材2との間の接合部1のさらなる実施形態が考えられ得る。
【0077】
同様に、本明細書に開示された実施形態の様々な構成を組み合わせた電気フィードスルー5のさらなる実施形態が考えられ得る。
【0078】
同様に、本明細書に開示された実施形態の様々な構成を組み合わせたセンサ9のさらなる実施形態が考えられ得る。
【符号の説明】
【0079】
1 接合部
2 合金部材
3 セラミックス部材
4 ガラス接合剤
5 フィードスルー
6 導体
7 ハウジング
8 センサ部材
9 センサ
10、10’ 混合領域
11 絶縁経路
24 材料結合接合部
31 開口部
34 材料結合接合部
61 導体直径
71 開口部
72 開口部壁
73、73’ 端部部材
91 フィードスルー開口部
92 センサハウジング、装置ハウジング
A、B 領域
C 内部
D 外部
L 長手軸
S 材料結合接合部、溶接結合接合部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12