(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-02
(45)【発行日】2023-10-11
(54)【発明の名称】外部分離器を備えた粒状汚泥反応器システム
(51)【国際特許分類】
C02F 3/28 20230101AFI20231003BHJP
【FI】
C02F3/28 A
C02F3/28 B
(21)【出願番号】P 2021509204
(86)(22)【出願日】2019-08-20
(86)【国際出願番号】 EP2019072296
(87)【国際公開番号】W WO2020038959
(87)【国際公開日】2020-02-27
【審査請求日】2022-05-10
(32)【優先日】2018-08-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】520210136
【氏名又は名称】ヴェオリア ウォーター ソリューションズ アンド テクノロジーズ サポート
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パチェコ-ルイス,サンティアゴ
(72)【発明者】
【氏名】ラ ヴォス,ヘンドリック リチャード ポール
(72)【発明者】
【氏名】アルノー,ティエリー アルフォンス
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン デル ルッブ,ジェロニムス ゲラルドゥス マリア
【審査官】片山 真紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-033982(JP,A)
【文献】特開2011-098344(JP,A)
【文献】特開2001-246396(JP,A)
【文献】中国実用新案第204897526(CN,U)
【文献】特開2012-000557(JP,A)
【文献】特開2008-279383(JP,A)
【文献】特開2013-220410(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F3/00-34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオマスを含む汚泥床を収納する上向流生物反応器(1)、外部分離器(2)、および調整タンク(12)を備える設備において、生分解性有機物質を含む水性流体を処理する方法であって、
前記調整タンク(12)内で前記水性流体を処理するステップと、その後に、
前記水性流体を前記調整タンク(12)から前記生物反応器の下部中に送給し、前記送給された流体をバイオマスと接触させ、それによって前記生分解性有機物質からバイオガスを形成するステップと、
前記バイオマスと接触させた前記流体を、前記生物反応器の上部から抜き取るステップであって、前記抜き取られた流体がバイオマスを含む、ステップと、
前記生物反応器の前記上部から抜き取られた、前記バイオマスを含む前記水性流体を、傾斜内部構造が設けられた分離チャンバを含む前記外部分離器(2)中に送給するステップであって、前記バイオマスを含む前記水性流体が、バイオマス含有量が低減、またはバイオマスを実質的に含まない液相と、バイオマスに富んだ流体相とに分離される、ステップと、
バイオマスに富んだ前記流体相を前記外部分離器から
導管(10)を介して前記生物反応器へ戻
し、その際、前記導管(10)に前記バイオガスを注入するステップと、
バイオマス含有量が低減、またはバイオマスを実質的に含まない前記液相の一部を、前記外部分離器(2)から前記調整タンク(12)へ戻すステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記生物反応器は、粒状汚泥床(GSB)を備え、前記
粒状汚泥床(GSB
)は、嫌気性微生物を含み、前記生分解性有機物質は、前記嫌気性微生物にて変換され、それによってバイオガスを形成する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記生物反応器の前記上部から抜き取られた前記流体は、粒状バイオマスを含み、粒状バイオマスは、前記外部分離器(2)内部で沈降し、前記生物反応器(1)に戻される前記流体相は、沈降した粒状バイオマスを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記生物反応器(1)は、前記生物反応器の上部に位置する内部気液分離器(3)
を備える、請求項1、2または3に記載の方法。
【請求項5】
前記内部気液分離器(3)は、バッフル、ディフレクタ、漏斗、および傾斜プレート沈降器からなる群から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記外部分離器(2)は、前記流体を前記外部分離器に送給する
導管(6)の、前記生物反応器(1)から水性流体を抜き取る入口(5)より低く設置される、請求項1から
5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記調整タンク内での前記処理は、前記調整タンク内の前記水性流体のpHを、6.5から7.2の範囲
のpHに維持、または前記調整タンク内の水性流体のpHをこの範囲のpHに調整する、請求項
6に記載の方法。
【請求項8】
前記調整タンク内での前記処理は、前記調整タンク内の前記水性流体のpHを、6.6から6.8の範囲のpHに維持、または前記調整タンク内の水性流体のpHをこの範囲のpHに調整する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記調整タンク内の前記水性流体は、33℃から37℃の範囲
の温度に維持、または調節される、請求項
6から8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記調整タンク内の前記水性流体は、34℃から36℃の範囲の温度に維持、または調節される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
生分解性有機物質を含む水性流体を微生物学的に処理する設備であって、
バイオガス用の出口を備える、生物反応器(1)と、
バイオマスを含む流体相から液相を分離するように配設された、傾斜内部構造が設けられた分離チャンバを備える、外部分離器(2)であって、生物反応器(1)から水性流体を抜き取るための導管(6)の入口(5)に接続された水性流体用の入口(4)と、水性流体用の出口(7a)と、バイオマスに富んだ流体用の出口(8)と、導管(10)を経由する、生物反応器(1)のバイオマスに富んだ流体用の入口(9)とを備える、外部分離器(2)と、
前記水性流体を事前処理する調整タンク(12)であって、廃水(13)用の入口と、導管(16)を介する前記生物反応器の入口(15)に接続された前記水性流体用の出口(14)と、前記外部分離器(2)から前記調整タンク(12)への液相用の戻りライン(37)と、バイオガス用の出口とを備える、調整タンク(12)と、
を備え
、
前記生物反応器(1)は、固形物に富んだ前記流体を前記外部分離器(2)から前記生物反応器(1)へ戻すための前記導管(10)中にバイオガスを注入する構成とされたバイオガス注入器(23)に接続されている内部バイオガス収集器(22)を備える、設備。
【請求項12】
流入物を前記生物反応器
中に導入する流入物分配システム(15)を備え、前記流入物分配システム(15)は、反応器表面領域に亘って前記水性流体の少なくとも実質的に均等な分配をもたらすように配設され
、
前記設備は、再循環ポンプ(11)を備える、請求項
11に記載の設備。
【請求項13】
前記生物反応器(1)は、固形物を含む水性流体からバイオガスを分離するように配設された、前記生物反応器の上部に位置する内部分離器(3)を備える、請求項
11または
12に記載の設備。
【請求項14】
前記内部分離器(3)は、バッフル、ディフレクタ、漏斗、および傾斜プレート沈降器
、からなる群から選択される気液分離器である、請求項
13に記載の設備。
【請求項15】
前記内部分離器(3)は、バッフルまたはディフレクタから選択される気液分離器である、請求項14に記載の設備。
【請求項16】
前記外部分離器(2)は、前記生物反応器(1)の
入口(3
2)に接続されるとともに、任意選択的に、導管(33)を介して調整タンク(12)の入口(31)に接続された出口(29)を備え、前記導管
(33)は、ポンプ
を備える、請求項
11から
15のいずれかに記載の設備。
【請求項17】
前記ポンプはねじポンプである、請求項16に記載の設備。
【請求項18】
保全、洗浄または交換のために外部分離器(2)を隔離するために、前記導管(10)はバルブ(28)を備え、導管(6)はバルブ(27)を備える、請求項
11から
17のいずれかに記載の設備。
【請求項19】
前記生物反応器は、上向流粒状汚泥床反応器である、請求項
11から
18のいずれかに記載の設備。
【請求項20】
前記生物反応器は、拡張粒状汚泥床反応器である、請求項
19に記載の設備。
【請求項21】
前記外部分離器は
、前記生物反応器の前記底と
同等の高さ、またはその下に配置されている、請求項
11から
20のいずれかに記載の設備。
【請求項22】
前記外部分離器は、床上に配置されている、請求項
21に記載の設備。
【請求項23】
前記固形物に富んだ前記流体を戻すための前記導管(10)には、戻された前記流体を前記生物反応器中に排出する出口(9)が設けられ、戻された前記流体を前記生物反応器中に排出する前記出口(9)は、前記バイオガス注入器(23)より高い位置にある、請求項
21または
22に記載の設備。
【請求項24】
戻された前記流体を前記生物反応器中に排出する出口(9)は、前記生物反応器の中央部内または下部内にある、請求項
21または
22に記載の設備。
【請求項25】
請求項1から
10のいずれかに記載の方法を用いた、請求項
11から
24のいずれかに記載の設備の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物反応器(bioreactor)を備える設備であって、水性流体を処理する方法であり、それによって、バイオガスが生成される方法に関する。本発明は、そのような方法を実行するために適した設備にさらに関する。
【背景技術】
【0002】
廃水などの水性流体の生物学的処理では、活性バイオマス(バクテリアおよび/または古細菌(archaea)などの微生物)を用いて、汚染物質(有機物質)を無害な成分に変換する。
【0003】
基本的に2種類のプロセスが存在する。いわゆる嫌気性処理(無酸素)の場合、嫌気性微生物の共同体(consortia)が汚染物質をバイオガスにほぼ変換する。
【0004】
好気性処理では、汚染物質は、好気性(有酸素)条件下で大幅に削減され、処理済廃水から分離して、別々に処理する必要のある新規な微生物(余剰汚泥)となる。
【0005】
嫌気性汚泥床反応器システムは、嫌気性微生物を用い、水性流体中の汚染物質をバイオガスに変換する。これらの嫌気性細菌は、主に、凝集体中で成長し、粒状バイオマスと呼ばれることが多い。このシステムは、関与する嫌気性微生物の正味収量が低い結果とし、正味バイオマス生成量が少ない(通常、変換されたCODの2~4%)ことが特徴であることが多い。
【0006】
この理由は、廃水処理システムで発達した過剰なバイオマスは、かなりのコストで固形廃棄物として廃棄する必要があるため、一方では大きな利点であるが、他方では、処理システム(反応器)内に十分な活性な生物学的汚泥を保持・維持することに注意を要する観点となる。
【0007】
嫌気性処理反応器内にバイオマスを保持する方法は、様々な方法で行うことができる。固定担体または移動担体上でのバイオマスの固定化は、バイオマス保持時間から液体保持時間を切り離すための1つの方法である。しかしながら、より良くそして好ましい方法は、上向流嫌気性汚泥ブランケット(UASB:Upflow Anaerobic Sludge Blanket)反応器、粒状汚泥床反応器、およびIC反応器に適用されるような、主に粒状化されたバイオマスを用いることであり、例えば国際公開第2007/078195号や、Frankin R.J.(2001)、Full scale experiences with anaerobic treatment of industrial wastewater、Wat Sci. Tech., 44(8), 1-6)を参照されたい。
【0008】
拡張粒状汚泥床(EGSB:Expanded Granular Sludge Bed)反応器などの粒状汚泥床(GSB:Granular Sludge Bed)反応器は、食品加工、飲料業界、蒸留所、製薬業界、紙パルプ工場などの廃水処理用に一般的に用いられる反応器である。この種の廃水には、通常、水を再使用または廃棄する前に除去する必要のある大量の有機汚染物質が含まれている。
【0009】
典型的な(E)GSB反応器では、廃水は上向流生物反応器の下部に導入される。続いて、水は、廃水内に存在する有機廃棄物を分割する微生物を含む粒状汚泥床を通って上向きに流れ、それによってバイオガス、特にメタンと二酸化炭素とが形成され、このメタンは次に、グリーンエネルギー源として用い、例えばエネルギーを提供できる。高速嫌気性反応器(拡張粒状汚泥床)の効率は、良好な汚泥床拡張、液体の乱流、および高流量に強く依存するが、それはこれらが良好な物質移動、目詰まりの減少、および短絡の減少を推進するためである(Van Lier, J.B., van der Zee, F.P., Frijters, M. E. Ersahin, Rev Environ Sci. Biotechnol. 2015, 14(4), 681-702)。
【0010】
効率的なプロセスに対する鍵は、バイオマス(顆粒)、水(流出物)、およびバイオガスを効率的に分離することであり、言い換えると、システム内のバイオマスを維持しながら、流出物とバイオガスとを除去し、粒状バイオマスの正味成長を達成できることである。EGSB反応器などのGSB反応器において、液体、固体、気相の良好な分離に影響を与えるいくつかのパラメータが存在している。
【0011】
当業者が知っているように、そのような効率的な分離を達成するための1つの重要なパラメータは、バイオマスの沈降挙動(settling behavior)である。相の効率的な分離を達成するためには、顆粒の良好な沈降挙動が必要である。顆粒の沈降は、反応器内の水力学または流体力学(液体および気体)および/または反応器内の三相分離装置の存在および設計(乱流および層流、乱流および上向流速度)などの、いくつかの因子の影響を受ける。さらに、沈降挙動は、バイオマス含有量、および/またはミネラル分などの汚泥顆粒の組成に依存する可能性がある。例えば、不活性率が高い汚泥顆粒(生分解性ではない任意の物質)は、より速く沈降し得るが、その分解活性はより低くなるか、分解活性がないことさえあり得る。したがって、不活性汚泥顆粒には、バイオガス生成および/または流れの再循環の結果として、拡張不能および/または再循環不能になるというリスクがある。よって、従来のシステムでは、それらは反応器の底に残留し、それによって汚泥抽出ポートを塞いで、動作上の重大な問題を引き起こす傾向が存在している。
【0012】
これに加え、顆粒の沈降挙動は、顆粒内のガスの存在によって影響を受ける。反応器の底に存在するバイオマスは、GSBシステム、特にEGSBシステムが有することのある、大きい高さ(通常15mから25mの間)によって、反応器の上部におけるより高圧力、結果的には、圧力が通常1.5~2.5バールの水柱によって生じる圧力を受けることになる。したがって、反応器の底に存在する顆粒内のガスが圧縮され、その結果、顆粒の密度が高くなり、したがって顆粒がより速く沈降する。
【0013】
第二に、沈降器(settler)などの分離装置は、異なる相の分離を改善し、それによって廃水処理プロセスの全体的な効率を向上させる貴重なツールである。
【0014】
相の効率的な分離は、例えば(固形物を下向きに押すことによって)バイオマスの沈降性を補助する、反応器内部の特定の流れを作り出すことでさらに強化できる。このような流れは、内部沈降器の傾斜プレートなどの分離システムにて導入してもよく、水中に二酸化炭素を溶解させて乱流を生成することで発生させてもよく、または密度の違いによる相の単なる移動によって、例えば汚泥は重力にて下向きに移動する傾向があるのに対し、バイオガスは上向きに流れることによって発生させてもよい。
【0015】
EGSB反応器の一例が国際公開第2007/078195号に記載されている。さらに知られているものとして、BIOTHANE Biobed Advanced EGSBがある。この反応器は、生物反応器内に三相分離器を有し、さらに調整タンクを備えている。生物反応器の上部内には、傾斜プレート沈降器(TPS:tilted plate settler)があり、流出物およびバイオマスからバイオガスを分離することを助けている。傾斜プレート沈降器の下部では、プレートの上部に対する傾斜プレートの下方の圧力差によって、大きな流れ効果が生じてバイオガスのより良好な分離を可能にし、沈降したバイオマスを下方に誘導する。
【0016】
欧州特許第0493727号明細書は、任意選択的に外部分離装置、好ましくはサイクロンを有する連続式の機械的および嫌気性の生物学的清浄化のための反応器に関する。反応器の下部は、固形物の通過を防ぎながら液体の通過を可能にする穿孔を有する底を備える反応器から分離された沈降ゾーンを含む。
【0017】
このシステムの欠点は、汚泥が流入ラインの下に沈降し、それによって廃水と汚泥との相互作用が最適以下となり、システムの効率を低下させることである。
【0018】
国際公開第2012/005592号は、第2の沈降器を有する反応器を設計することで、この問題を克服することをねらっており、この第2の沈降器は生物反応器の底に設置され、ここでは分離がより高圧力で行われるため、バイオマスがより高効率で液体流出物から分離される。反応器の上部に位置する傾斜プレート沈降器においてバイオガスから分離された流体は、外部分離器送給導管を通ってこの第2の沈降器に送られる。本発明者らは、このシステムの欠点が以下のものであることを見出した。
【0019】
・特に始動時など、バイオガスの生成量が少ないか不足しているときの、反応器内の再循環の適切な制御の欠如、
・生物反応器の底に設置された第2の沈降器の閉塞に対する大きな可能性、
・保全のためのこの分離チャンバへのアクセスの欠如、保全を実施したい場合には、反応器を完全に空にすることを必要とする、
・バイオガス生成がないとき(始動時)の操作の困難さ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【文献】国際公開第2007/078195号
【文献】欧州特許第0493727号明細書
【文献】国際公開第2012/005592号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明者らは、驚くべきことに、反応器内部に位置する第2の沈降器を有することなく、これらの欠点を克服する、水性流体を処理するための非常に効率的なプロセスを得る方法を発見した。代わりに、外部分離チャンバは、通常、調整タンクへの戻りラインの前に、生物反応器の外側に設けられる。
【課題を解決するための手段】
【0022】
したがって、本発明は、バイオマスを含む汚泥床を収納する上向流生物反応器(1)、および外部分離器(2)を備える設備において、生分解性有機物質を含む水性流体を処理する方法であって、
- 水性流体を生物反応器の下部中に送給し、送給された流体をバイオマスと接触させ、それによって生分解性有機物質からバイオガスを形成するステップと、
- 生物反応器の上部から、バイオマスと接触させた流体を抜き取るステップであって、この抜き取られた流体はバイオマスを含む、ステップと、
- (生物反応器の上部から抜き取られた)バイオマスを含む水性流体を、傾斜内部構造が設けられた分離チャンバを含む外部分離器(2)中へ送給するステップであって、バイオマスを含む水性流体が、バイオマス含有量が低減、またはバイオマスを実質的に含まない液相と、バイオマスに富んだ流体相とに分離され、バイオマスに富んだ流体相は、(外部分離器から)生物反応器に戻される、ステップとを含む方法に関する。
【0023】
本発明は、廃水を処理するための効率的な方法を提供する。外部分離器を有することにより、保全の改善、プロセスの始動の改善が可能になり、さらに部分的に反応器を設置、すなわち、既存のシステムを外部分離器でグレードアップし、それによって反応器の効率を向上させることが可能になる。
【0024】
外部分離器は、外部分離器中に送給される流体と比較して粒状バイオマス含有量が減少した液相を得るために、特に適していることが分かった。これは、粒状バイオマスを沈降させることで有利に達成される。次いで、沈降した粒状バイオマスは、少なくともかなりの部分が(粒状バイオマスに富んだ流体相の一部として)生物反応器に戻される。
【0025】
本発明は、生分解性有機物質を含む水性流体を微生物学的に処理する設備であって、
- バイオガス用の出口を備える、生物反応器(1)と、
- 固形物、特にバイオマス、さらに特に粒状バイオマスを含む流体相から液相を分離するように配設された傾斜内部構造が設けられた、分離チャンバを備える、外部分離器(2)であって、生物反応器(1)から水性流体を抜き取るための導管(6)の入口(5)に接続された、水性流体用の入口(4)と、水性流体用の出口(7a)と、固形物、特に(粒状)バイオマスに富んだ流体用の出口(8)と、導管(10)を経由する、生物反応器(1)のそのような流体用の入口(9)とを備える、外部分離器(2)とを備える、設備にさらに関する。
【0026】
本発明による設備は、気液固混合物を、気相と、粒状バイオマスを実質的に含まない液相と、固形物に富んだ、特に微粒子状固体に富んだ、特に粒状バイオマスに富んだ流体相と、に効率的に分離するために特に適していることが分かった。設備は非常に効率的であるが、その設計はむしろ簡単であり、特に反応器の内部では、分離を強化するために必要な技術装置の数は限られたものであり、これによって、誤動作のリスクが低減されるとともに、保全と洗浄が簡略化される。良好な分離のために重要なのは、外部分離器である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明に係る(プロセスで使用する)設備の全体的な構成を概略的に示す図である。
【
図2】本発明に係る(プロセスで使用する)設備の第2の構成を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本明細書で用いる「または」の用語は、特に明記しない限り、「および/または」と定義される。
【0029】
本明細書で用いる「ある(a)」または「1つ(an)」の用語は、特に明記しない限り、「少なくとも1つ」と定義される。
【0030】
単数形で名詞(例えば化合物、添加物など)を指す場合、複数形が含まれることを意味する。
【0031】
「(少なくとも)実質的(に)」の用語は、本明細書においては、一般的に、それが、指定されたものの一般的な特徴または機能を有することを示すために用いられる。定量化可能な特徴に言及する場合には、この用語は、それがその特徴の最大値の少なくとも50%、さらに特に75%超、さらに特に90%超であることを示すために特に用いられる。「実質的に含まない(essentially free)」という用語は、本明細書においては、一般に、物質が存在しない(有効な出願日において利用可能な分析技術にて達成可能な検出限界未満である)か、または前記物質を実質的に含まない製品の特性に大きな影響を与えないほど少量で存在することを示すために用いられる。実際に、定量的には、その物質の含有量が0~1重量%、特に0~0.5重量%、さらに特には0~0.1重量%であれば、通常、製品はその物質を実質的に含まないと見なされる。
【0032】
本出願の文脈において、「約」の用語は、一般に、所定の値からの15%以下の偏差、特に10%以下の偏差、さらに特に5%以下の偏差を意味する。
【0033】
本明細書で用いる場合に、「生分解性有機物質」とは、典型的には、実質的に嫌気性条件下での反応器内のバイオマスによって、特にバイオマスまたはメタンに変換され得る有機物質である。
【0034】
「流体」の用語は、本明細書においては、液体、および液体と、外圧(重力以外の圧力)を加えずに流れる懸濁液などの少なくとも1つの他の相との混合物に対して用いられる。
【0035】
「液体」の用語は、本明細書においては、裸眼で見ることができる、すなわちサイズが0.1mm超の粒子を実質的に含まない水性流体に対して用いられる。
【0036】
本明細書にて用いる「有機物質」とは、ISO 6060:1989に記載のように、化学的酸素要求量(COD)試験にて決定できる化学的に酸化可能な任意の有機物質である。有機物質の含有量は、一般に、gCOD、すなわちその有機物質の酸化に消費されるグラム酸素で表わされる。
【0037】
当業者は、「上」、「下」、「中央」、「底」、「底付近」、「上端」、「上端付近」などの用語に精通している。一般に、これらは別のものとの関係において読み取られ、当業者は、共通の一般知識、本明細書に開示される情報および引用、ならびに設備のユニット(生物反応器、別個の容器、または生物反応器もしくはセクションに含まれるある量の物質など)の詳細に基づいて、その実装を実践に移すことができる。
【0038】
経験則として、文脈と異なる方法に従わない限り、(「下」や「上」などの)特定の基準点の「近く」とは、通常「基準点から最大+/-20%の相対高さにある」こと、特には「基準点から最大+/-15%までの相対高さにあること」、さらに特には「基準点から最大+/-10%までの相対高さにあること」を意味する。相対的な高さは、ユニットの全高(底と上端との間の高さの差)で除した、底からの距離である。
【0039】
経験則として、文脈と異なる方法に従わない限り、「上」部は、一般にユニットの上1/2内、特に上1/3内を意味し、「下」部は、一般にユニットの下1/2、特にはユニットの下1/3を意味する。中央部を指すときは、これは特にユニットの中央1/3を意味する(底の1/3から上端から1/3まで)。
【0040】
図1は、本発明に係る(プロセスで使用する)設備の全体的な構成を概略的に示している。これは、水性流体がどのように入口(13)を介して調整タンク(12)中に導入され得るかを概略的に示しており、ここで、(廃水などの)水性流体は、調整ステップに供される。調整タンク(12)は、バイオガスの出口(17)および導管(16)を介して生物反応器(1)の底またはその近くで、流入物分配システム(IDS:Influent Distribution System)(15)に接続された、事前調整流体の出口をさらに備える。有利には、導管(16)は、流体の連続的かつ制御された再循環のための再循環ポンプ(11)をさらに備える。水性流体は、生分解性有機物質をバイオガスに変換できる微生物を含んだ汚泥床を通過する。
【0041】
調整タンク(12)から生物反応器(1)への再循環ポンプ(11)の存在により、
- 抑制性化合物の制御された希釈、
- EGSBへの一定の流量、
- 一定の上向流速(COD負荷率に依存しない)、
- 戻された嫌気性流出物のアルカリ度による、CTにおけるpH制御の向上
が可能となる。
【0042】
図1において、生物反応器(1)は、気体-水性流体混合物からバイオガスを除去するために、生物反応器(1)の上部に位置する、内部バッフルまたはディフレクタ/セパレータ(3)、およびバイオガス用の出口(18)をさらに備える。生物反応器(1)は、バイオガスがそれから分離された固形物を含む水性流体用の入口(5)を備えた内部送給導管(6)をさらに含み、内部送給導管(6)は、液相からの固形物の分離のために、外部分離器(2)の入口(4)に接続されている。導管(6)の入口(5)は、バッフルまたはディフレクタ(3)の下にある。導管(6)は、外部分離器(2)の保守、修理または交換の場合に、外部分離器(2)を設備から隔離するためのバルブ(27)をさらに備える。導管(10)は、外部分離器(2)の出口(8)を、生物反応器(1)からの固形分が富んだ流体ための入口(9)に接続し、生物反応器(1)内には、導管(10)内の固形物が富んだ流体中にバイオガスを導入する構成とされた導管バイオガス注入器(23)が設けられるとともに、バイオガス注入器(23)と生物反応器(1)内のバイオガス収集フード(22)との間に、バイオガス導管(21)が設けられている。また、導管(10)は、外部分離器(2)の保守、修理または交換の場合に、外部分離器(2)を設備から隔離するためのバルブ(28)を備える。
【0043】
図1に示すバイオガス導管(21)は、調整タンク(12)内部の水性流体の混合のために、入口(25)を介して調整タンク(12)中にバイオガスを導入するために、バイオガス導管(21)とバイオガス導管(26)とを接続するT接合部(24)をさらに備える。
【0044】
さらに、
図1は、外部分離器(2)から液相を抜き取ってリサイクルするための手段(7)を示している。これは、分離器からバイオマス含有量が減少した液相(バイオマスを実質的に含まない可能性がある)を抜き取るための出口(7a)を備える。この出口(7a)から、処理相が設備を出ることができる抜き取り導管(7b)、および液相を調整タンク(12)中に戻すためのリサイクルライン(37)を設けることができる。
【0045】
図1に示すように、また、外部分離器(2)は、導管(33)を介して、調整タンク(12)の
入口(31)と生物反応器(1)の入口(32)とに接続された、
出口(29)を備える。この導管(33)は、必要な場合に、外部分離器(2)から生物反応器(1)へ汚泥を戻すための、ポンプ(30)を備える。さらに、(隔離するためのバルブ(27),(28)とともに)この導管(33)は、バルブ(2)を用いることで、反応器(1)および調整タンク(12)と完全に隔離して、外部分離器(2)の定置洗浄のための、水性流体(通常は、酸性薬品)の再循環を可能にする。
【0046】
さらに、
図1に示すように、設備は、バイオガス用の出口(18)と、調整タンク(12)からのバイオガス用の入口(19)とを接続する、バイオガス用導管(20)を備える。このような設備は、調整タンク(12)内の圧力が生物反応器(1)内の圧力と実質的に同等であることを確実にできる。
【0047】
図2は、本発明に係る(プロセスで使用する)設備の第2の構成を概略的に示す。構成の詳細な説明については、
図1の説明を参照されたい。生物反応器(1)は、外部分離器(2)中に水性流体を送給するための外部送給導管(34)を備える。ディフレクタまたはバッフル(36)は、固形物を含む水性流体を外部送給導管(34)に誘導するために、導管(34)の入口(35)の下に位置している。
【0048】
本発明に係る方法で処理された水性流体は、原則として、生分解性であり、特に嫌気性条件下で生分解性である、有機物質を含む任意の水性流体とできる。好ましくは、水性流体は、都市廃水、産業廃水、下水、発酵プロセスから廃棄された水性流体(例えば、残留発酵ブロス)、水性スラリおよび水性汚泥の群から選択される。本発明に係るプロセスで処理される廃棄物ストリームの含水量に関し、これは広範囲に変動し得る。一般に、処理する水性流体の含水量は、流体の総重量の80重量%超、特に少なくとも80重量%、さらに特には90重量%以上である。通常、含水率は、99.9重量%以下、好ましくは99.5重量%以下、より好ましくは99重量%以下、特に98重量%以下、さらに特には96重量%以下である。生物反応器に送給される水性流体の総有機物質含有量は、通常、0.1gCOD/l以上であり、好ましくは、0.3~100gCOD/lの範囲、特に5~50gCOD/lの範囲である。
【0049】
本発明に従って処理することに特に適した水性流体の一例は、乳製品の製造または加工(例えば、ミルク、チーズ、バターの製造/加工)、飲料の製造または加工(例えば、ワイン、ビール、蒸留飲料、フルーツ・ジュース、ミルク)、バイオ燃料または石油化学製品の製造または加工、化学プラント、農業施設、紙パルプの製造または加工、砂糖加工または酵母製造からの水性廃棄物である。
【0050】
通常、本発明に係る設備内には、調整タンク(12)が存在する。このようなタンクには、使用中に、生物反応器で処理される水性流体が、生物反応器用に調整される。有利なことに、調整タンクは、生物反応器でまだ処理されていない水性流体(生の水性送給物)が送給されるだけでなく、外部分離器から出る、(生物反応器の流出物と比較してバイオマス含有量の低い)液相の一部も受け入れる。この液相は、新たに設備に入る生の水性流体を調整するために非常に適している。
【0051】
調整タンクを用いる利点は、生物反応器への水性流体の流入の望ましくない変動、および水性流体の品質の望ましくない変動を回避できることである。分離器から調整タンクへリサイクルすることにより、調整タンクから生物反応器へ、および生物反応器から外部分離器へなど、設備の異なるユニット間の様々なストリームで比較的一定の流れを維持することによって、さらなる改善が可能となる。また、設備中への処理される水性流体の供給に大きな変動がある場合においても、ユニット内の流体レベルを比較的一定に保つことを可能にする点で、さらなる頑強性をもたらす。分離器から調整タンクへのリサイクルによって、ユニットへの/からの流れを比較的一定に保つこと、および/またはユニット内の流体レベルを比較的一定に保つことは、効率的な動作のために望ましいが、例えば導管の目詰まりまたは分離器の目詰まりのリスクを低く保つためにも望ましい。
【0052】
好ましくは、生廃水などの処理される生水性流体は、最初に調整タンクに入り、そこで温度および/またはpHなどの特定のパラメータを監視してもよい。当業者は、バイオマスの組成に応じて、好ましいパラメータ値を決定できるであろう。調整タンク内の水性流体が約33から約37℃の範囲、より好ましくは34から36℃の範囲の温度に維持され、または調節されるプロセス、および/または、調整タンク内の水性流体のpHが、約6.5から約7.2の範囲、好ましくは6.6から6.8の範囲のpHに維持され、または調節され得るプロセスによって、特に良好な結果が達成された。当業者が知るように、特定の微生物培養物については、異なる温度またはpHが最適な可能性がある。例えば、好アルカリ性細菌の場合、例えば約pH11までの、より高pHが好まれる場合がある。
【0053】
好ましくは、調整タンクで前処理された後の水性流体は、好ましくは、生物反応器の水平断面に亘って水性流体の少なくとも実質的に均等な分配を提供できる適合された流入物分配システムを介して、上向流生物反応器の下部中に送給され、ここで、水性流体は、バイオマス、好ましくは粒状バイオマスを含む、汚泥床を上向きに通過する。
【0054】
上向流生物反応器は、好ましくは、粒状汚泥床、特に拡張粒状汚泥床(EGSB)であり、(E)GSBは嫌気性微生物を含み、この場合に、生分解性有機物質が嫌気性微生物にて変換され、それによってバイオガスが形成される。
【0055】
好ましい嫌気性微生物は、当技術分野において一般的に知られている。好ましくは、生物反応器は、少なくとも1種の加水分解細菌、少なくとも1種の酸生成細菌、少なくとも1種の酢酸生成細菌、および少なくとも1種のメタン生成細菌を含む微生物の共同体を含む。
【0056】
汚泥、特にバイオマス顆粒の汚泥の良好な沈降性、よって良好な分離に関連する別の因子は、バイオマスが存在する生物反応器の高さである。通常、バイオガスは、顆粒の内部で発生する可能性もあり、これが上向きの浮揚を引き起こす可能性がある。反応器の底では、顆粒がより高圧力を受け、それによってバイオガスが顆粒から放出され、汚泥の沈降性が向上する。
【0057】
好ましくは、(プロセスで使用するための)設備は、約15から約25mの範囲、より好ましくは18から22mの範囲の高さの生物反応器を備える。典型的には、生物反応器は、85~98vol%まで、好ましくは約90~95vol%まで、水性流体で充填される。
【0058】
生物反応器内で生分解性有機物質を消化すると、気体-水性流体混合物が得られる。
【0059】
気相は、微生物にて生成されるバイオガスで構成されている。一般に知られるように、バイオガスは、一般に少なくとも実質的にメタンと二酸化炭素とからなるが、さらに水素、アンモニア、水蒸気および/または硫化水素などの、その他の気体を少量含むこともある。
【0060】
水性流体は、固形物、特にバイオマス粒子を含み、任意選択的に、無機および/または有機の懸濁物質をさらに含む。
【0061】
水性流体は、通常、実質的に水と、有機酸などの水溶性物質とからなる液体、および微生物にて消化されない可溶性物質、またはミネラルまたは塩などの通常、水中に存在するその他の分子をさらに含む。
【0062】
気体-水性流体混合物は、バイオガスが混合物から分離する反応器を通って上方に移動する。これは自発的に発生、または分離が内部分離器にて強化される場合がある。
【0063】
バイオガスは、リアクターの上端またはその近く(液面より上)に位置するバイオガス出口を介して生物反応器から出る。生物反応器から直接出る場合もあれば、最初に調整タンクの上部に入り、タンクの上端またはその近くに位置する出口を介して設備から出る場合もある。任意選択的に、バイオガスは、それ自体が公知の方法でさらに処理される。バイオガスは、プロセスにエネルギーを提供するため、すなわち、例えばシステムを加熱することによって、プロセスを自給可能にするために使用してもよい。代替的に、バイオガスは、発電機を介して電気に変換するか、またはメタンにグレードアップして、他の目的でエネルギーを提供、または化学プロセスで使用するためのメタンの供給源として、他の場所に輸送できる。
【0064】
好ましい実施形態においては、形成されるバイオガスの一部は、生物反応器から調整タンクの下部または中央部に輸送され、調整タンク内の水性流体の混合を改善する。
【0065】
一実施形態において、生物反応器は、内部分離器をさらに含み、その中で固形物を含む水性流体からのバイオガスの分離が促進される。存在する場合には、内部分離器は、通常、生物反応器の上部に配置される。内部分離器は、好ましくは、気液分離器(gas-fluid separator)であり、より好ましくは、生物反応器の上部に位置するディフレクタまたはバッフルである。バッフルまたはディフレクタは、好ましくは、外部分離器への送給導管の上に位置し、バイオガスまたはバイオガス-流体混合物の自然な上昇流の結果として、水性流体からのバイオガス分離を促進する。
【0066】
一実施形態において、外部分離器への送給導管は内部送給導管である。内部送給導管は、少なくとも実質的な部分が生物反応器の内部に位置している。バイオガスがそれから分離された水性流体を収集するための入口は、バッフルまたはディフレクタの下に位置して、水性流体を収集し、次いでこれが外部分離器中に送給される。
【0067】
別の実施形態において、外部分離器への送給導管は外部送給導管である。水性流体の入口は生物反応器の側面に位置し、外部分離器への外部導管は、生物反応器の外側に位置している。生物反応器は、好ましくは、水性流体を外部送給導管中に誘導するための外部送給導管入口の近くに位置し、好ましくは外部送給導管の真下に位置するバッフルまたはディフレクタを備えている。
【0068】
内部または外部送給導管は、水性流体を外部分離器(2)中に送給し、外部分離器は、バイオマス、および任意選択的に他の固体を含む水性流体を、液相と、外部分離器に入る水性流体と比較して、バイオマスに富んだ流体相とに分離するための、傾斜内部構造が設けられた分離チャンバを備える。
【0069】
別の実施形態において、内部分離器は、漏斗、好ましくはマンモスポンプ漏斗(mammoth pump funnel)である。漏斗が存在する場合、漏斗の下部は、内部送給導管の入口に接続される。漏斗は、効率的なマンモス流効果を促進し、それによって、水性流体が外部分離器に入る前に、(液体および固形物を含む)水性流体からのバイオガスの分離を助ける。この気液分離器マンモスポンプ漏斗は、好ましくは、内部送給導管を接続する、底部に向かう漏斗として成形された、傾斜壁にて構成される。
【0070】
別の実施形態において、内部分離器は、傾斜内部構造、好ましくは傾斜プレートまたはチューブを備える気液分離器である。好ましくは、気液分離器は傾斜プレート沈降器である。傾斜プレートは、分離器の内部に乱流を引き起こし、これがバイオガスの分離を助ける。傾斜プレートは、平坦または波形にできる。このような傾斜内部構造は、流体相および固体相からのバイオガスの分離を促進する。傾斜内部構造は、通常約45~65°の角度で設置される。約55~約60°の角度で設置すると、特に良好な結果が得られる。隣接する内部構造は、分離を強化するとともに、分離器の目詰まりを防止するために、通常少なくとも2cmの距離、特には互いに2~10cmの距離に設置される。好ましくは、水性流体は、分離器の上部を介して内部分離器に入る。傾斜内部構造を備える気液分離器が存在する場合、内部送給導管の入口は、固形物に富んだ流体を収集するために分離器の下部に接続される。固形物を含む水性流体は、通常、内部分離器の底に集められ、外部分離器(2)中に送給される。
【0071】
通常、外部分離器は、使用中に、固形物を含む水性流体が、分離器の下部に位置する入口を介して入る構成とされている。外部分離器は、固体粒子の沈降性を高めるために、傾斜内部構造を備えている。傾斜プレートは、平坦または波形にできる。このような傾斜内部構造は、「ラメラ効果(lamella effect)」により、液相および固体相からのバイオガスの分離を促進する。傾斜内部構造は。通常、約45~65°の角度で設置される。約55から約60°の角度で設置すると、特に良好な結果が得られた。隣接する内部構造は、通常、分離を強化するとともに、分離器の目詰まりを防止するために、少なくとも2cmの距離、特には互いに2~10cmの距離に設置される。傾斜内部構造を用いると、固形物の沈降のための沈降面が増大する。
【0072】
水性流体は、傾斜内部構造を上向きに通過し、そこで、層流が固体粒子の下向きの移動を促進させる一方、水性流体(流出物)の出口が位置する上向きの方向に液体を移動させる。
【0073】
外部分離器は、好ましくは、反応器に影響を与えることなくこのモジュールの保守、交換および修理を可能にするための隔離バルブを備える。外部分離器の隔離は、装置を隔離することで外部分離器の定期的な定置洗浄を行うためにも使用できる。
【0074】
外部分離器と生物反応器、および任意選択的に、外部分離器と調整タンクとを接続する導管(33)を有することがさらに好ましい。この導管は、さらに好ましくは、汚泥を生物反応器に戻し、外部分離器を通して薬品を循環させるためのポンプ(30)、好ましくは、ねじポンプ(screw pump)を有する。これらの薬品は、除去する必要のある不純物に応じ、酸性または塩基性としてもよい。このポンプは、外部分離器の定置洗浄を可能にする。
【0075】
外部分離器は、好ましくは、細長い設計である。
【0076】
分離器から出る液相は、通常、粒状バイオマスを実質的に含まない。分離器中に送給される流体が(粒状バイオマス廃棄物(granular biomass decay)、凝集性-非粒状化-バイオマス(flocculent - not granulated - biomass)、および/または非分解性懸濁物質の破片の形態の)懸濁固形物を含む実施形態においては、分離器から出る液相は、送給された流体と比較して懸濁物質(特にバイオマス含有量)が減少するが、残留凝集性バイオマスを含むことがある。必要に応じ、この流体は、例えば、液相を設備から取り出して廃棄、またはプロセス水としてさらに使用する場合に、それ自体が知られる方法で清浄化できる。例えば、調整タンクを介して生物反応器に戻される液相は、これらの懸濁固形物を除去する必要なしに、戻すことができる。
【0077】
通常、本発明に係るシステムは、調整タンクを備える。調整タンクが存在する場合、外部分離器にて得られた液相の一部を調整タンクに戻し、タンク内の流体の体積をほぼ同一レベルに維持できる。
【0078】
バイオマスに富んだ液相は、生物反応器に再び入れられる。効率的なプロセスには、プロセス中にバイオマスが正味成長することが望まれる。反応器の始動中、生分解性物質の効率的な変換のために十分な量のバイオマスを得るために、システム内でバイオマスの正味成長があることが重要である。プロセスの後段では、バイオマスの正味成長があることによって、回転率、すなわちCODの変換に悪影響を与えることなく、反応器から汚泥を抽出できる。さらに、バイオマスが過剰にあると、バイオマスを簡単に保管、輸送、販売できるため、収益がさらに増大する。
【0079】
本発明の有利な方法において、バイオマス、特に粒状バイオマスを含む流体の戻りは、機械的ポンプを必要とせず達成される。生物反応器内のバイオガスが上向きに移動すると、バイオマスに富んだ流体を、外部分離器を出て生物反応器中に引き込む流れを発生させる。
【0080】
好ましい実施形態において、生物反応器(1)は、バイオガス注入器(23)を含み、その使用中に、外部分離器(2)を生物反応器(1)に接続する、(粒状)バイオマス(10)に富んだ流体用の導管中に、生物反応器からのバイオガスが注入されて、外部分離器(2)から生物反応器(1)に向かう、(粒状)バイオマスに富んだ流体の流れを促進する。例えば、
図1を参照されたい。さらに、一旦、導管(10)内部の(粒状)バイオマスに富んだ水性流体が、生物反応器(1)中に戻ると、戻されたバイオガスは、ガスリフト(gas lift)効果によって外部分離器(2)内の水性流体の上向きの流れを促進する。バイオガスを流体に導入することは、導管の目詰まりが最小限に抑えられ、好ましくは防止されるという追加の利点がある。導管(10)に注入するためのバイオガスは、バイオガス収集器を備えた生物反応器から収集される。バイオガス収集器は、好ましくは、1または複数のバイオガス収集器フードを有し、これは、少なくとも使用中、生物反応器内の流体(懸濁液)に沈められている。
【0081】
好ましくは、バイオガス収集フード(22)は、外部分離器(2)からの(粒状)バイオマスに富んだ流体用の入口(9)の下に配置される。
【0082】
好ましい実施形態において、バイオガス収集フード(22)は、外部分離器(2)のための水性流体用の導管(6)の入口(5)、または導管(34)の入口(35)の下に配置される。
【0083】
したがって、本発明はまた、傾斜内部構造が設けられた分離チャンバと、生物反応器からの(粒状)バイオマスを含む水性流体を外部分離器の下部中に送給するための入口(4)とを含む、外部分離器に関する。外部分離器の入口は、内部送給導管(6)の入口(5)、または外部送給導管(34)の入口(35)に接続されている。使用中、水性流体は、液相と粒状(粒状)とに富んだ流体相に分離される。外部分離器は、(粒状)バイオマスに富んだ水性流体を生物反応器に戻すための出口(8)をさらに含み、これは、導管(10)を介して生物反応器の(粒状)バイオマスに富んだ水性流体用の入口(9)に接続されている。導管(10)は、(粒状)バイオマスに富んだ流体にバイオガスを注入するためのバイオガス注入器(23)を備え、このバイオガス注入器は、導管(21)を介してバイオガス収集器(22)に接続されている。
【0084】
反応器の始動中は、(粒状)バイオマスに富んだ流体を外部分離器から生物反応器中に抜き取るために十分な上向きの流れを引き起こすために、バイオガス生成が、機械的支援なしには、まだ十分でない可能性がある。そのような場合、再循環ポンプなどの機械的支援を置いて、バイオマスを含む前記流体を外部分離器から生物反応器中に引き込んでもよい。さらに、そのようなポンプの存在によって、ライン内の汚泥の沈積の結果としての導管の目詰まりが最小化または防止される。
【0085】
好ましくは、調整タンク(12)が存在し、そこから、使用中に、水性流体が生物反応器中に供給される。調整タンク内に存在する水性流体の混合を改善するために、好ましくは、生物反応器から調整タンク中にバイオガスを導入するバイオガス導管が設けられる。
【0086】
好ましくは、再循環ポンプを用い、沈降した固形物を外部分離器から生物反応器中に引き込むために十分な上向きの流れを発生させる。
【0087】
外部分離器は、生物反応器の外側に設置されてアクセス性を向上させ、これによって、保全と始動の手順とを容易化するとともに、さらに部分的な反応器の設備を可能する、すなわち既存のシステムを外部沈降器でグレードアップし、それによって反応器の効率を向上できる。
【0088】
好ましくは、外部分離器を設備の他の部分と接続する導管は、隔離バルブを備え、外部分離器の隔離を可能にし、したがって、外部分離器の定置洗浄または保守を容易にする。さらに、外部分離器は、通常、外部分離器用の送給導管の入口よりも低く設置されるため、外部分離器内の圧力は、生物反応器の上部内の圧力より高い。通常、圧力差は、約1.5~3バールの間である。より高い圧力は、バイオマス顆粒を圧縮し、それによって顆粒の内部にまだ存在する可能性のあるガスを除去し、このようにして顆粒の沈降性を高め、したがって液相からの固形物の除去を向上させる。
【0089】
好ましくは、外部分離器から生物反応器へのバイオマスに富んだリサイクル流体相に対する推進力の少なくとも一部は、ガスリフト原理を利用する。これが
図1および
図2に示され、ここでは、バイオガス導管(21)が、リサイクル導管(10)中へのバイオガス注入器(23)と、生物反応器(22)内部のバイオガス収集フードとの間に設けられている。この原理を用いるために、外部分離器は、好ましくは、十分に低く設置して、リサイクル導管(10)がガスリフトを生成するとともに、バイオマスに富んだ流体相を生物反応器の中央部または下部に戻すために十分なほど、上方に延びることを可能にする。これは、生物反応器の上部の固形物含有量を比較的低く保つことが望ましい理由から望ましい。したがって、外部分離器は、好ましくは、設備の床またはその近く、あるいは生物反応器とほぼ同じ高さに、またはその底より下に配置されるが、一方で、導管(10)を介して生物反応器(1)中へのリサイクル済のバイオマスに富んだ流体用の入口(9)は、少なくとも外部分離器のバイオマスに富んだ流体の出口(29)よりも高い位置に配置され、好ましくは外部分離器の上端よりも高い位置に配置される。外部分離器のバイオマスに富んだ流体の出口(29)、リサイクル導管(10)中へのガス注入器(23)、および外部分離器からのリサイクル済のバイオマスに富んだ流体用の入口(9)の間の十分な高さの差は、本明細書に開示された情報、共通の一般知識、および任意選択的に限られた量の日常的な試行錯誤に基づくことができる。特に、当業者は、圧力差が流体/固体/気体を正しい方向に駆動するように高さの差を選択できるであろう。
【0090】
特定の実施形態において、生物反応器から外部分離器に水性流体を送給するための導管は、汚泥が導管を沈殿させてシステムの目詰まりを引き起こすことを防ぐために、少なくとも実質的に真っ直ぐ、すなわち鋭角または鋭いエッジを含まない。