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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-02
(45)【発行日】2023-10-11
(54)【発明の名称】電子機器
(51)【国際特許分類】
   G06F 1/16 20060101AFI20231003BHJP
   H05K 5/02 20060101ALI20231003BHJP
【FI】
G06F1/16 312L
G06F1/16 312J
G06F1/16 312F
H05K5/02 V
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022037121
(22)【出願日】2022-03-10
(65)【公開番号】P2023132030
(43)【公開日】2023-09-22
【審査請求日】2022-03-10
(73)【特許権者】
【識別番号】505205731
【氏名又は名称】レノボ・シンガポール・プライベート・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 大輔
(72)【発明者】
【氏名】山内 武仁
(72)【発明者】
【氏名】木下 宏晃
(72)【発明者】
【氏名】森野 貴之
【審査官】征矢 崇
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-522730(JP,A)
【文献】米国特許第09348450(US,B1)
【文献】特開2021-015492(JP,A)
【文献】国際公開第2021/224991(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F1/16
G09F9/00;9/30-9/46
H04M1/02
H05K5/00-5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器であって、
第1縁部を有する第1筐体部材と、
前記第1縁部と隣接する第2縁部を有し、前記第1筐体部材と隣接する第2筐体部材と、
前記第1筐体部材と前記第2筐体部材とを、互いに面方向で重なるように積層する第1姿勢と、互いに面方向と垂直する方向に並ぶ第2姿勢との間で、相対的に回動可能に連結するヒンジ装置と、
前記第1縁部及び前記第2縁部を跨ぐように配置され、前記第2姿勢時に前記第1筐体部材と前記第2筐体部材との互いの表面間に形成される隙間を埋めるように配置されるカバー部品と、
前記カバー部品と前記第1筐体部材との間に形成される第1隙間に介在する第1隙間カバーと、
前記カバー部品と前記第2筐体部材との間に形成される第2隙間に介在する第2隙間カバーと、
を備え
前記第1隙間カバーは、前記第1筐体部材に固定され、該第1筐体部材から前記カバー部品に向かって突出したプラスチックシートであり、
前記第2隙間カバーは、前記第2筐体部材に固定され、該第2筐体部材から前記カバー部品に向かって突出したプラスチックシートであり、
前記第1隙間カバーは、前記カバー部品に対して相対移動可能に当接し、
前記第2隙間カバーは、前記カバー部品に対して相対移動可能に当接している
ことを特徴とする電子機器。
【請求項2】
請求項に記載の電子機器であって、
前記第1縁部には、前記第1筐体部材の表面に向かって起立した第1立壁と、該第1立壁の底部から前記第2縁部側に突出した第1底板と、が設けられ、
前記第2縁部には、前記第2筐体部材の表面に向かって起立した第2立壁と、該第2立壁の底部から前記第1縁部側に向かって突出した第2底板と、が設けられ、
前記第1隙間カバーは、前記第1立壁の上部で前記第1筐体部材に固定されると共に、前記第1立壁から離間する方向に向かって次第に前記第1底板側に傾斜する方向に突出し、
前記第2隙間カバーは、前記第2立壁の上部で前記第2筐体部材に固定されると共に、前記第2立壁から離間する方向に向かって次第に前記第2底板側に傾斜する方向に突出している
ことを特徴とする電子機器。
【請求項3】
電子機器であって、
第1縁部を有する第1筐体部材と、
前記第1縁部と隣接する第2縁部を有し、前記第1筐体部材と隣接する第2筐体部材と、
前記第1筐体部材と前記第2筐体部材とを、互いに面方向で重なるように積層する第1姿勢と、互いに面方向と垂直する方向に並ぶ第2姿勢との間で、相対的に回動可能に連結するヒンジ装置と、
前記第1縁部及び前記第2縁部を跨ぐように配置され、前記第2姿勢時に前記第1筐体部材と前記第2筐体部材との互いの表面間に形成される隙間を埋めるように配置されるカバー部品と、
前記カバー部品と前記第1筐体部材との間に形成される第1隙間に介在する第1隙間カバーと、
前記カバー部品と前記第2筐体部材との間に形成される第2隙間に介在する第2隙間カバーと、
を備え、
前記第1隙間カバーは、前記第1筐体部材に固定され、該第1筐体部材から前記カバー部品に向かって突出したプラスチックシートであり、
前記第2隙間カバーは、前記第2筐体部材に固定され、該第2筐体部材から前記カバー部品に向かって突出したプラスチックシートであり、
前記第1縁部には、前記第1筐体部材の表面に向かって起立した第1立壁と、該第1立壁の底部から前記第2縁部側に突出した第1底板と、が設けられ、
前記第2縁部には、前記第2筐体部材の表面に向かって起立した第2立壁と、該第2立壁の底部から前記第1縁部側に向かって突出した第2底板と、が設けられ、
前記第1隙間カバーは、前記第1立壁の上部で前記第1筐体部材に固定されると共に、前記第1立壁から離間する方向に向かって次第に前記第1底板側に傾斜する方向に突出し、
前記第2隙間カバーは、前記第2立壁の上部で前記第2筐体部材に固定されると共に、前記第2立壁から離間する方向に向かって次第に前記第2底板側に傾斜する方向に突出している
ことを特徴とする電子機器。
【請求項4】
請求項1~のいずれか1項に記載の電子機器であって、
前記第1筐体部材に固定され、前記第1隙間に臨む第1磁石と、
前記第2筐体部材に固定され、前記第2隙間に臨む第2磁石と、
をさらに備える
ことを特徴とする電子機器。
【請求項5】
電子機器であって、
第1縁部を有する第1筐体部材と、
前記第1縁部と隣接する第2縁部を有し、前記第1筐体部材と隣接する第2筐体部材と、
前記第1筐体部材と前記第2筐体部材とを、互いに面方向で重なるように積層する第1姿勢と、互いに面方向と垂直する方向に並ぶ第2姿勢との間で、相対的に回動可能に連結するヒンジ装置と、
前記第1縁部及び前記第2縁部を跨ぐように配置され、前記第2姿勢時に前記第1筐体部材と前記第2筐体部材との互いの表面間に形成される隙間を埋めるように配置されるカバー部品と、
前記カバー部品と前記第1筐体部材との間に形成される第1隙間に介在する第1隙間カバーと、
前記カバー部品と前記第2筐体部材との間に形成される第2隙間に介在する第2隙間カバーと、
を備え、
前記第1筐体部材に固定され、前記第1隙間に臨む第1磁石と、
前記第2筐体部材に固定され、前記第2隙間に臨む第2磁石と、
をさらに備える
ことを特徴とする電子機器。
【請求項6】
電子機器であって、
第1縁部を有する第1筐体部材と、
前記第1縁部と隣接する第2縁部を有し、前記第1筐体部材と隣接する第2筐体部材と、
前記第1筐体部材と前記第2筐体部材とを、互いに面方向で重なるように積層する第1姿勢と、互いに面方向と垂直する方向に並ぶ第2姿勢との間で、相対的に回動可能に連結するヒンジ装置と、
前記第1縁部及び前記第2縁部を跨ぐように配置され、前記第2姿勢時に前記第1筐体部材と前記第2筐体部材との互いの表面間に形成される隙間を埋めるように配置されるカバー部品と、
前記第1筐体部材に固定され、前記カバー部品と前記第1筐体部材との間に形成される第1隙間に臨む第1磁石と、
前記第2筐体部材に固定され、前記カバー部品と前記第2筐体部材との間に形成される第2隙間に臨む第2磁石と、
を備えることを特徴とする電子機器。
【請求項7】
請求項6に記載の電子機器であって、
前記第1筐体部材に固定され、前記第1隙間に介在する第1隙間カバーと、
前記第2筐体部材に固定され、前記第2隙間に介在する第2隙間カバーと、
をさらに備える
ことを特徴とする電子機器。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の電子機器であって、
前記第1筐体部材と前記第2筐体部材との間に亘って設けられ、前記第1筐体部材と前記第2筐体部材とが相対的に回動することに応じて折り曲げられる折曲領域を有するディスプレイと、
前記ディスプレイの外周を囲むベゼル部材と、
をさらに備え、
前記カバー部品は、前記ディスプレイの外側部に隣接して配置され、
前記ベゼル部材は、前記隙間で分断されている
ことを特徴とする電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、隣接する筐体部材同士を相対的に回動可能に連結した電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、有機EL(Electro Luminescence)等のフレキシブルディスプレイを用いることで、筐体だけでなくディスプレイまでも折り曲げ可能に構成した電子機器を提案している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6952833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような電子機器は、相対的に回動する左右の筐体部材同士の干渉を防止する必要がある。このため、各筐体部材は、互いの隣接する縁部に逃げ形状を設け、互いの干渉を防いでいる。ところが、この逃げ形状は、筐体部材同士を平板状に並べた際、各筐体部材の表面間に大きな隙間を生じさせる。そこで、特許文献1の構成では、この隙間をヒンジ装置の側端部に取り付けたカバー部品で埋める構成を採用している。
【0005】
ところで、上記のようなカバー部品は、各筐体部材に対して相対移動するため、各筐体部材との間にそれぞれ僅かな隙間を確保しておく必要がある。ところが、この隙間は、筐体部材間が回動動作する際に拡大するため、ここから筐体内部へと異物が侵入する懸念があることが分かった。
【0006】
本発明は、上記従来技術の課題を考慮してなされたものであり、相対的に回動可能に連結された筐体部材間の隙間からの異物の侵入を抑制することができる電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1態様に係る電子機器は、第1縁部を有する第1筐体部材と、前記第1縁部と隣接する第2縁部を有し、前記第1筐体部材と隣接する第2筐体部材と、前記第1筐体部材と前記第2筐体部材とを、互いに面方向で重なるように積層する第1姿勢と、互いに面方向と垂直する方向に並ぶ第2姿勢との間で、相対的に回動可能に連結するヒンジ装置と、前記第1縁部及び前記第2縁部を跨ぐように配置され、前記第2姿勢時に前記第1筐体部材と前記第2筐体部材との互いの表面間に形成される隙間を埋めるように配置されるカバー部品と、前記カバー部品と前記第1筐体部材との間に形成される第1隙間に介在する第1隙間カバーと、前記カバー部品と前記第2筐体部材との間に形成される第2隙間に介在する第2隙間カバーと、を備える。
【0008】
本発明の第1態様に係る電子機器は、第1縁部を有する第1筐体部材と、前記第1縁部と隣接する第2縁部を有し、前記第1筐体部材と隣接する第2筐体部材と、前記第1筐体部材と前記第2筐体部材とを、互いに面方向で重なるように積層する第1姿勢と、互いに面方向と垂直する方向に並ぶ第2姿勢との間で、相対的に回動可能に連結するヒンジ装置と、前記第1縁部及び前記第2縁部を跨ぐように配置され、前記第2姿勢時に前記第1筐体部材と前記第2筐体部材との互いの表面間に形成される隙間を埋めるように配置されるカバー部品と、前記第1筐体部材に固定され、前記カバー部品と前記第1筐体部材との間に形成される第1隙間に臨む第1磁石と、前記第2筐体部材に固定され、前記カバー部品と前記第2筐体部材との間に形成される第2隙間に臨む第2磁石と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明の上記態様によれば、相対的に回動可能に連結された筐体部材間の隙間からの異物の侵入を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、一実施形態に係る電子機器を閉じて0度姿勢とした状態を模式的に示す斜視図である。
図2図2は、図1に示す電子機器を開いて180度姿勢とした状態を模式的に示す斜視図である。
図3図3は、図2に示す電子機器の内部構造を模式的に示す平面図である。
図4図4は、図3中のA-A線に沿う模式的な断面斜視図である。
図5A図5Aは、図4に示すカバー部品及びその周辺部の模式的な平面図である。
図5B図5Bは、図5Aに示す180度姿勢から0度姿勢に向かって筐体間を回動させた状態を示す模式的な平面図である。
図6A図6Aは、図4中のA-A線に沿う模式的な側面断面図である。
図6B図6Bは、図6Aに示す筐体を90度姿勢に変化させた状態での側面断面図である。
図6C図6Cは、図6Aに示す筐体を40度姿勢に変化させた状態での側面断面図である。
図6D図6Dは、図6Aに示す筐体を0度姿勢に変化させた状態での側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る電子機器について好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0012】
図1は、一実施形態に係る電子機器10を閉じて0度姿勢とした状態を模式的に示す斜視図である。図2は、図1に示す電子機器10を開いて180度姿勢とした状態を模式的に示す斜視図である。図3は、図2に示す電子機器10の内部構造を模式的に示す平面図である。
【0013】
図1図3に示すように、電子機器10は、第1筐体12A及び第2筐体12Bと、ヒンジ装置14と、ディスプレイ16とを備える。本実施形態の電子機器10は、本のように折り畳み可能なタブレット型PC或いはノート型PCを例示する。電子機器10は、スマートフォン又は携帯用ゲーム機等であってもよい。
【0014】
各筐体12A,12Bは、互いに隣接して配置されている。第1筐体12Aは、第1筐体部材17Aと、第1背面プレート18Aとを備える。第1筐体部材17Aは、第2筐体12Bと隣接する第1縁部17Aa以外の3辺に側壁19Aを起立させた矩形の枠状部材である。第1背面プレート18Aは、第1筐体部材17Aの裏面開口を閉じるプレート状部材である(図4も参照)。同様に、第2筐体12Bは、第1筐体12Aと隣接する第2縁部17Ba以外の3辺に側壁19Bを起立させた第2筐体部材17Bと、第2筐体部材17Bの裏面開口を閉じる第2背面プレート18Bとを備える。筐体部材17A,17Bの表面開口は、ディスプレイ16で閉じられる。
【0015】
各部材17A,17B,18A,18Bは、例えばステンレスやマグネシウム、アルミニウム等の金属部材、或いは炭素繊維等の強化繊維を含む繊維強化樹脂板等で構成される。
【0016】
ヒンジ装置14は、筐体部材17A,17B間を相対的に回動可能に連結している。ヒンジ装置14は、図1に示す0度姿勢で形成される縁部17Aa,17Ba間の隙間を隠す背表紙としても機能する。ディスプレイ16は、筐体部材17A,17B間に亘って延在している。
【0017】
以下、電子機器10について、筐体12A,12Bの並び方向をX方向、これと直交する縁部17Aa,17Baに沿う方向をY方向、筐体12A,12Bの厚み方向をZ方向、と呼んで説明する。X方向については、第2筐体12Bから第1筐体12Aに向かう方向をX1方向、その逆をX2方向と呼ぶこともある。Z方向については、各筐体12A,12Bの背面から表面、つまり後述する底板34A,34Bの内面からディスプレイ16に向かう方向をZ1方向、その逆をZ2方向と呼ぶこともある。また、筐体12A,12B間の角度姿勢について、互いに面方向で重なるように積層された状態を0度姿勢(図1参照)と呼び、互いに面方向と垂直する方向(X方向)に並んだ状態を180度姿勢(図2参照)と呼んで説明する。0度と180度の間の姿勢は適宜角度を刻んで呼ぶことができ、例えば筐体12A,12Bの互いの面方向が直交した状態が90度姿勢となる。これらの角度は説明の便宜上のものであり、実際の製品では角度数字の示す正確な角度位置から多少ずれた角度位置となることも当然生じ得る。
【0018】
図3に示すように、本実施形態のヒンジ装置14は、ヒンジ本体20と、サポートプレート22A,22Bと、複数のリンクアーム24A,24Bとを有する。
【0019】
ヒンジ本体20は、筐体12A,12Bの縁部17Aa,17Baを跨ぐ位置に設けられ、縁部17Aa,17Baに沿ってY方向で略全長に亘って延在している。ヒンジ本体20は、アルミニウム等の金属材料で形成されたブロック状部品である。ヒンジ本体20には、180度姿勢でX方向に並ぶ2本のヒンジ軸が支持されている。一方のヒンジ軸にはY方向に並んだ複数のリンクアーム24Aが軸支され、他方のヒンジ軸にはY方向に並んだ複数のリンクアーム24Bが軸支されている。各リンクアーム24Aは、第1筐体部材17Aに固定されたブラケットに軸支される。各リンクアーム24Bは、第2筐体部材17Bに固定されたブラケットに軸支される。
【0020】
これによりヒンジ本体20は、筐体12A,12B間を相対的に回動可能に連結している。ヒンジ本体20内には、筐体12A,12B間の回動動作を同期させるギヤ機構や、筐体12A,12B間の回動動作に所定の回動トルクを付与するトルク機構等も設けられている。ヒンジ本体20の外面には、化粧カバーとなる背表紙部品26が取り付けられている(図1参照)。
【0021】
サポートプレート22A,22Bは、アルミニウム等の金属材料で形成され、Y方向に延在するプレートであり、左右対称形状である。サポートプレート22A,22Bは、リンクアーム24A,24Bが軸支されたブラケットに対して軸支されて揺動可能である。サポートプレート22A,22Bは、180度姿勢時にヒンジ本体20の左右に並び、その表面がヒンジ本体20の表面と同一平面上に配置される。これによりヒンジ装置14は、180度姿勢時に後述するディスプレイ16の折曲領域R3(図2参照)を支持することができる。
【0022】
図1図3に示すように、ディスプレイ16は、可撓性を有するシート状に形成されている。ディスプレイ16は、例えば有機EL(OLED:Organic Electro Luminescence Diode)である。
【0023】
図1に示す0度姿勢において、筐体12A,12Bは、二つ折りに折り畳まれて互いに積層された状態となる。この際、ディスプレイ16は、第1筐体12A側の第1領域R1と第2筐体12B側の第2領域R2とが対向するように配置され、領域R1,R2間の境界領域である折曲領域R3が円弧状に折り曲げられた状態となる。図2に示す180度姿勢において、筐体12A,12Bは、互いに左右に並んで配置される。この際、ディスプレイ16は、領域R1,R2及び折曲領域R3がXY平面上に並んで配置され、全体として1枚の平板形状を成す。
【0024】
図2及び図3に示すように、ディスプレイ16は、第1プレート30A及び第2プレート30Bと、ヒンジ装置14とによって支持されてもよい。プレート30A,30Bは、例えば炭素繊維にエポキシ樹脂等のマトリクス樹脂を含侵させた炭素繊維強化樹脂板の裏面外周にマグネシウム合金製の金属フレームを取り付けた構成である。
【0025】
プレート30A,30Bは、相互間にヒンジ装置14を挟んで左右に隙間を設けて配置され、それぞれの表面でディスプレイ16の裏面を支持する。ディスプレイ16は、第1領域R1の裏面が第1プレート30Aの表面に粘着固定され、第2領域R2の裏面が第2プレート30Bの表面に粘着固定される。第1プレート30Aは、第1筐体部材17Aに締結される。第2プレート30Bは、第2筐体部材17Bに締結される。
【0026】
図3に示す180度姿勢において、ヒンジ装置14は、プレート30A,30B間でヒンジ本体20及び左右のサポートプレート22A,22Bの各表面がプレート30A,30Bの表面と同一平面上に配置される。これによりヒンジ装置14は、ディスプレイ16の折曲領域R3の裏面を支持する。折曲領域R3は、ヒンジ装置14に対しては相対移動可能に支持されることで、180度姿勢から0度姿勢に向かう回動動作時に折り曲げられ、次第に円弧状に変形する。
【0027】
本実施形態の電子機器10は、図2及び図3に示すように、ディスプレイ16の表面の外周を囲むベゼル部材32を備える。ベゼル部材32は、ディスプレイ16の側方で起立する側壁19A,19Bと、ディスプレイ16の表面との間に跨るように設けられ、両者間の隙間を覆い隠す。ベゼル部材32は、側壁19A,19Bの表面19Aa,19Ba(図4及び図5A参照)と、ディスプレイ16の表面とにそれぞれ両面テープ等の粘着材で固定される。
【0028】
本実施形態のベゼル部材32は、X方向中央でヒンジ本体20の側方を通過する位置に一対の分断部32a,32aを有する。このため、ベゼル部材32は、実際には角が略直角に形成された2つのU字状部材で構成され、ディスプレイ16の外周の大部分を囲んでいることになる。
【0029】
ところで、左右の筐体12A,12Bは、相対的に回動する。このため、筐体12A,12Bは、0度姿勢から180度姿勢までの回動範囲内で互いの縁部17Aa,17Ba同士が干渉することを防止する必要がある。そこで、本実施形態の電子機器10は、筐体12A,12Bの縁部17Aa,17Baに逃げ形状を有する。
【0030】
図4は、図3中のA-A線に沿う模式的な断面斜視図である。図5Aは、図4に示すカバー部品40及びその周辺部の模式的な平面図である。
【0031】
図4に示すように、筐体12A,12Bの逃げ形状は、第1に、筐体部材17A,17Bの縁部17Aa,17Baに形成された薄い底板34A,34Bで構成されている。底板34A,34Bは、縁部17Aa,17BaのY方向の両端部を除く大部分に亘って延在している。底板34A,34Bは、それぞれX方向に幅狭でY方向に長い一枚板である。縁部17Aa,17Baの端面17Ab,17Bbは、底板34A,34Bの端面である。これにより筐体部材17A,17Bは、回動動作時の縁部17Aa,17Ba同士の干渉を防止しつつ、その内側にヒンジ装置14の収容スペースを確保している。
【0032】
筐体12A,12Bの逃げ形状は、第2に、筐体部材17A,17Bの縁部17Aa,17BaのY方向の両端部に形成された切欠形状部36A、36Bで構成されている。切欠形状部36Aは、側壁19Aの表面19Aaを端面17AbからX1方向に向かって後退させるように切り欠いたような形状を有する。切欠形状部36AのX2側端面は、底板34AからZ1方向に起立した立壁38Aを形成する。同様に、切欠形状部36Bは、側壁19Bの表面19Baを端面17BbからX2方向に向かって後退させるように切り欠いたような形状を有し、そのX1側端面に立壁38Bを形成している。底板34A,34Bは、立壁38A,38Bの底部からそれぞれX2方向又はX1方向に突出している。
【0033】
このように、側壁19A,19Bの表面19Aa,19Baは、切欠形状部36A,36Bで途切れている。このため、ベゼル部材32は、この部分に分断部32aを設けている。
【0034】
図5Aに示すように、切欠形状部36A,36Bは、側壁19A,19Bの外面を形成する薄い外壁板19Ac,19Bcには形成されていない。このため、180度姿勢時、電子機器10を側方から見た際に切欠形状部36A,36Bが外観上に露出することはない。
【0035】
図4及び図5Aに示すように、筐体部材17A,17Bは、側壁19A,19Bに切欠形状部36A,36Bを設けている。この際、切欠形状部36A,36は、互いの立壁38A,38B間に大きな隙間Gが形成されている。そこで、本実施形態の電子機器10は、この隙間Gを埋めるカバー部品40を備える。カバー部品40は、Y方向で両端に設けられた隙間Gにそれぞれ配置される(図2及び図3参照)。
【0036】
本実施形態のカバー部品40は、背表紙部品26の一部である。カバー部品40は、背表紙部品26のY方向の両端部にそれぞれ形成され、ヒンジ本体20の側方でZ方向に起立する。カバー部品40は、例えば側面視で略かまぼこ形状(Semi-cylindrical shape)を有する。カバー部品40は、背表紙部品26と別部品でもよい。この場合、カバー部品40は、背表紙部品26又はヒンジ本体20に取り付けるとよい。
【0037】
図4及び図5Aに示す180度姿勢において、カバー部品40は、立壁38A,38B間で起立し、隙間Gの大部分を埋める。但し、カバー部品40は、筐体12A,12Bに対して相対移動できる必要がある。このため、電子機器10は、180度姿勢において、カバー部品40と、立壁38A,38B及びベゼル部材32の分断部32aの各端面との間には、それぞれ微小な隙間G1,G2を有する。
【0038】
図5Bは、図5Aに示す180度姿勢から0度姿勢に向かって筐体12A,12B間を回動させた状態を示す模式的な平面図である。図6Aは、図4中のA-A線に沿う模式的な側面断面図である。図6B図6C、及び図6Dは、それぞれ図6Aに示す筐体12A,12Bを90度姿勢、40度姿勢、及び0度姿勢に変化させた状態を示す。
【0039】
図5A図6Dに示すように、筐体12A,12B間が180度姿勢から0度姿勢に向かって回動すると、カバー部品40が筐体部材17A,17Bから離間するように相対移動する。このため、隙間G1,G2が次第に拡大する。隙間G1,G2は、180度姿勢では微小であり、0度姿勢では筐体部材17A,17Bの内側に隠される。しかしながら、例えば160~30度程度の角度範囲では、180度姿勢の時よりも拡大した状態で外部に露出する。
【0040】
このため、図6B及び図6Cに示すように、拡大した隙間G1,G2に異物42が侵入する可能性がある。異物42としては、非金属のものではゴミや紙屑等、金属のものではねじ、クリップ、ホチキス針等を例示できる。このような異物42が隙間G1,G2に侵入すると、ディスプレイ16の裏面とヒンジ装置14との隙間を通して筐体12A,12B内に混入する懸念がある。
【0041】
そこで、本実施形態の電子機器10は、隙間G1,G2からの異物42の侵入を抑制するため、第1隙間カバー44A及び第2隙間カバー44Bと、第1磁石46A及び第2磁石46Bと、を備える。隙間カバー44A,44Bと磁石46A,46Bは、両方備えることが最も好ましいが、一方のみを備える構成としてもよい。
【0042】
先ず、隙間カバー44A,44Bは、ある程度の張りと可撓性を有するプラスチックシートで形成されるとよい。隙間カバー44A,44Bの材質は、例えばポリカーボネート(PC)又はポリエチレンテレフタレート(PET)を挙げられる。隙間カバー44A,44Bの厚みは、例えば0.2~0.4mmである。
【0043】
第1隙間カバー44Aは、第1端部44aが第1筐体部材17Aに固定され、第2端部44bの表面がカバー部品40の外周面に当接する。第1隙間カバー44Aの第1端部44aは、立壁38Aを乗り越えた上部で側壁19Aの表面19Aaに両面テープ等の粘着材で固定される。第2隙間カバー44Bは、第1端部44aが第2筐体部材17Bに固定され、第2端部44bの表面がヒンジ本体20の外周面に当接する。第2隙間カバー44Bの第1端部44aも、立壁38Bを乗り越えた上部で側壁19Bの表面19Baに両面テープ等の粘着材で固定される。
【0044】
図6A図6Dに示す構成例において、筐体部材17A,17Bは、側壁19A,19Bの表面19Aa,19Baに凹状部48を有する。凹状部48は、表面19Aa,19Baの立壁38A,38B側の端部を一段低くした部分である。隙間カバー44A,44Bの第1端部44aは、凹状部48の底面に固定されている。なお、凹状部48は、隙間カバー44A,44Bの厚み分の深さを有し、ベゼル部材32が隙間カバー44A,44Bの厚み分の段差を生じることを防止するために設けている。但し、隙間カバー44A,44Bの厚みは極めて薄いため、ベゼル部材32の段差に対する影響はほとんどないため、凹状部48は省略してもよい。
【0045】
隙間カバー44A,44Bは、立壁38A,38Bの上端を通過する部分に多少の曲げ癖が設けられている。この曲げ癖は、立壁38A,38Bの上端から底板34A,34Bに向かう方向である。これにより隙間カバー44A,44Bの第2端部44bは、カバー部品40の表面に当接しつつ、ある程度カバー部品40の下面側に回り込んで係止される。つまり隙間カバー44A,44Bは、立壁38A,38Bの上端から離間する方向に向かって次第に底板34A,34B側に傾斜する方向に突出し、カバー部品40の表面に当接する。このため、隙間カバー44A,44Bの第2端部44b及びその周辺部は、カバー部品40の表面に沿って湾曲した形状を成している。
【0046】
隙間カバー44A,44Bは、ベゼル部材32及び側壁19A,19Bの表面19Aa,19BaのY方向幅と略同一のY方向幅を有する。隙間カバー44A,44Bは、立壁38A,38Bの上端部からカバー部品40に当接可能な長さを有することが好ましい。
【0047】
これにより、図6A図6Cに示すように、筐体12A,12Bが180度姿勢から0度姿勢に向かって回動された際、隙間カバー44A,44Bは、拡大する隙間G1,G2からの異物42の侵入を物理的に阻止することができる。具体的には、隙間カバー44A,44Bは、筐体12A,12Bの回動時、第2端部44bがヒンジ本体20の外周面に摺動する。このため、隙間カバー44A,44Bは、筐体12A,12Bの角度姿勢にかかわらず、常に立壁38A,38Bの上部からカバー部品40までかけ渡された状態となり、常に隙間G1,G2を塞いでいる。
【0048】
このため、例えば図6Bに示す90度姿勢時に隙間G2から異物42が落下した場合であっても、この異物42は第2隙間カバー44Bの表面に当たってそれ以上の落下が阻止される。その結果、異物42が隙間G2から第2筐体12Bの内部に侵入することを抑制でき、第1隙間カバー44Aについても同様な効果を発揮する。
【0049】
隙間カバー44A,44Bは、プラスチックシートであることが好ましい。プラスチックシートは、カバー部品40側への反力を生じさせ易く、またカバー部品40に対する摺動抵抗を小さくし易いという利点がある。このため、プラスチックシートで構成した隙間カバー44A,44Bは、筐体12A,12B間が180度姿勢と0度姿勢との間で繰り返し回動された場合であっても、180度姿勢となる度に図6Aに示す初期姿勢に円滑に復帰できる。
【0050】
次に、第1磁石46Aは、立壁38A及び底板34Aの内面に固定され、吸着面が第1隙間G1に臨むように設置されている。同様に、第2磁石46Bは、立壁38B及び底板34Bの内面に固定され、吸着面が第2隙間G2に臨むように設置されている。
【0051】
これにより、図6A図6Cに示すように、筐体12A,12Bが180度姿勢から0度姿勢に向かって回動された際、磁石46A,46Bは、拡大する隙間G1,G2から侵入した金属製の異物42を吸着することができる。その結果、この異物42が、隙間G1,G2から筐体12A,12B内に侵入することを抑制できる。
【0052】
なお、本実施形態では、磁石46A,46Bと共に隙間カバー44A,44Bを用いている。このため、図6B及び図6Cに示すように、例えば隙間G2に侵入した金属製の異物42は、隙間カバー44A,44Bの表面で受け止められた状態でさらに磁石46A,46Bによる吸着力を受ける。ここで、隙間カバー44A,44Bは、外壁板19Ac,19Bc側とは逆側の側方にヒンジ装置14がある。このため、隙間カバー44A,44Bは、この側方を覆うことはできず、隙間カバー44A,44Bで受け止めた異物42がここから筐体12A,12B内に転落する可能性もゼロではない。この点、本実施形態は、隙間カバー44A,44Bと磁石46A,46Bとを併用し、金属製の異物42が筐体12A,12B内に侵入して電気ショート等の重大な不具合を生じることを抑制している。
【0053】
以上のように隙間カバー44A,44Bと磁石46A,46Bは、両方備えることが最も好ましいが、上記したように、一方のみを備える構成としてもよい。すなわち、隙間カバー44A,44Bのみを備えた構成は、異物42の材質に関わらずに隙間G1,G2からの侵入を物理的に抑制できる。また、磁石46A,46Bのみを備えた構成は、筐体12A,12B内への侵入を特に阻止したい金属製の異物42が隙間G1,G2を通して筐体12A,12B内に侵入することを磁力によって抑制できる。
【0054】
ここで、本実施形態の電子機器10は、ディスプレイ16の外周を囲むベゼル部材32が隙間Gで分断されている。換言すれば、ベゼル部材32が、隙間Gとオーバーラップする位置に分断部32aを有する。このため、ベゼル部材32は、筐体12A,12B間が回動に伴う変形等を生じることがなく、剥がれや捩れの発生が防止されている。一方でベゼル部材32がこのような分断部32aを有するため、電子機器10は、ディスプレイ16の側部の大きな隙間Gがそのまま外観上に現れてしまう。そこで、当該電子機器10は、この隙間Gをカバー部品40で埋めつつ、カバー部品40と筐体部材17A,17Bとの間の隙間G1,G2からの異物42の侵入は隙間カバー44A,44Bや磁石46A,46Bで抑制でき、これにより外観品質の向上をさせつつ、異物侵入防止効果を担保している。
【0055】
なお、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【0056】
上記では、本のように二つ折りに折り畳み可能な電子機器10を例示したが、本発明は、同形の筐体同士を二つ折りに折り畳む構成以外、例えば大形の筐体の左右縁部にそれぞれ小形の筐体を折り畳み可能に連結した観音開きの構成、1つの筐体の左右縁部にそれぞれ折り畳み方向の異なる筐体を連結したS型の折り畳み構成、大形の筐体の左右一方の縁部に小形の筐体を折り畳み可能に連結したJ型の折り畳み構成等、各種構成に適用可能であり、筐体の連結数は4以上としてもよい。
【符号の説明】
【0057】
10 電子機器
12A 第1筐体
12B 第2筐体
14 ヒンジ装置
16 ディスプレイ
17A 第1筐体部材
17B 第2筐体部材
32 ベゼル部材
36A,36B 切欠形状部
38A,38B 立壁
40 カバー部品
44A 第1隙間カバー
44B 第2隙間カバー
46A 第1磁石
46B 第2磁石
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図6C
図6D