(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-02
(45)【発行日】2023-10-11
(54)【発明の名称】要求に応じて月を表示するデバイス
(51)【国際特許分類】
G04B 19/26 20060101AFI20231003BHJP
【FI】
G04B19/26 A
(21)【出願番号】P 2022522911
(86)(22)【出願日】2020-11-05
(86)【国際出願番号】 EP2020081174
(87)【国際公開番号】W WO2021089722
(87)【国際公開日】2021-05-14
【審査請求日】2022-04-15
(32)【優先日】2019-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】506425538
【氏名又は名称】ザ・スウォッチ・グループ・リサーチ・アンド・ディベロップメント・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】ウィルマン,ミシェル
(72)【発明者】
【氏名】シュプリンガー,ジーモン
(72)【発明者】
【氏名】ボルン,エム・ジャン-ジャック
【審査官】細見 斉子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-155747(JP,A)
【文献】特開2000-065958(JP,A)
【文献】特開2009-008678(JP,A)
【文献】特開2012-198030(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第03477402(EP,A2)
【文献】特開2009-216547(JP,A)
【文献】特開2006-284579(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 19/26,19/04
G04G 21/00
G04C 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
計時器用の表示デバイス(100)であって、
前記表示デバイス(100)は、
第1のインジケーターメンバー(110)、
第2のインジケーターメンバー(120)、
駆動
手段、及び
制御ユニットを備え、
前記
第1のインジケーターメンバー(110)は、
動くことができるように取り付けられており、少なくとも1つの月の表現(111)を含み、
前記
第2のインジケーターメンバー(120)は、動くことができるように取り付けられており、前記少なくとも1つの月の表現(111)を
重ね合わせによって隠すように構成している少なくとも1つの隠し要素(121)を含み、
前記
駆動
手段は、前記
第1のインジケーターメンバー(110)及び
前記
第2のインジケーターメンバー(120)を駆動するように構成しており、
前記
制御ユニットは、前記
第1のインジケーターメンバー(110)及び
前記
第2のインジケーターメンバー(120)を駆動
して、ユーザーの要求及びデータセット(141)に応じて月相を表現し、
前記第1のインジケーターメンバー(110)と前記第2のインジケーターメンバー(120)は、時針と分針である
ことを特徴とする表示デバイス(100)。
【請求項2】
前記データセット(141)は、日付(146)、時刻(147)、及び
地理的位置(148)のデータを含む
ことを特徴とする請求項1に記載の表示デバイス(100)。
【請求項3】
前記データセット(141)が、無線周波数による通信、衛星地理的ポジショニング、及び/又は無線及び/又は光通信を介して、前記少なくとも1つの制御ユニットによって受信されるように構成している
ことを特徴とする請求項
2に記載の表示デバイス(100)。
【請求項4】
前記駆動手段は、前記第1のインジケーターメンバー(110)を駆動するように構成している第1の駆動機構と、前記
第2のインジケーターメンバー(120)を駆動するように構成している
第2の駆動機構を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の表示デバイス(100)。
【請求項5】
前記少なくとも1つの月の表現(111)は、前記少なくとも1つの隠し要素(121)よりも明るいように構成しており、かつ/又は
前記少なくとも1つの隠し要素(
121)及び/又は前記少なくとも1つの月の表現(111)は、丸まった、丸い、楕円状、円盤状かつ/又は球状の形を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の表示デバイス(100)。
【請求項6】
前記少なくとも1つの隠し要素(121)には、前記少なくとも1つの月の表現(111)を完全に又は部分的に見えるようにするように構成している少なくとも1つの開口(122)がある
ことを特徴とする請求項1に記載の表示デバイス(100)。
【請求項7】
前記少なくとも1つの月の表現(111)及び/又は前記少なくとも1つの隠し要素(121)は、
鏡面、半透明及び/又は光透過性の効果がある、偏光材料を含む
ことを特徴とする請求項1に記載の表示デバイス(100)。
【請求項8】
前記少なくとも1つの月の表現(111)は、光沢があり、反射性であり、発光性でありかつ/又はフォトルミネッセンスである材料を含み、かつ/又は
前記少なくとも1つの隠し要素(121)は、マット性であり又は光吸収性である材料を含む
ことを特徴とする請求項
7に記載の表示デバイス(100)。
【請求項9】
前記少なくとも1つの月の表現(111)及び/又は前記少なくとも1つの隠し要素(
121)は、前記少なくとも1つの月の表現(111)及び/又は前記少なくとも1つの隠し要素(121)の光透過性を変更するように構成している液晶ディスプレー、エレクトロクロミックディスプレー及び/又はエレクトロウェッティングディスプレーを備え、
これによって、前記少なくとも1つの月の表現(111)と前記少なくとも1つの隠し要素(121)が重なり合っているときに、観測者が月相の表現を認識するようにする
ことを特徴とする請求項1に記載の表示デバイス(100)。
【請求項10】
前記少なくとも1つの制御ユニットは、前記少なくとも1つの月の表現(111)が前記少なくとも1つの隠し要素(121)によって完全に又は部分的に隠されるように、完全に又は部分的に
少なくとも1つの
前記の第2のインジケーターメンバー(120)の裏にある
少なくとも1つの
前記第1のインジケーターメンバー(110)を駆動するように前記少なくとも1つの第1の駆動機構を制御するように構成しており、あるいは
前記少なくとも1つの月の表現(111)が前記少なくとも1つの隠し要素(121)によって完全に又は部分的に隠されるように、完全に又は部分的に
少なくとも1つの
前記第1のインジケーターメンバー(110)の手前にある
少なくとも1つの
前記第2のインジケーターメンバー(120)を駆動するように構成している
ことを特徴とする請求項1に記載の表示デバイス(100)。
【請求項11】
少なくとも1つの
前記第1のインジケーターメンバー(110)は、第1の回転軸のまわりを動くことができるように構成しており、かつ、
少なくとも1つの
前記第1のインジケーターメンバー(110)には、前記第1の回転軸に近い方の第1の近位端(116)及び/又は前記第1の回転軸から遠い方の第1の遠位端(117)があり、かつ/又は
少なくとも1つの
前記第2のインジケーターメンバー(120)は、第2の回転軸のまわりを動くことができるように構成しており、かつ、
少なくとも1つの
前記第2のインジケーターメンバー(120)には、前記第2の回転軸に近い方の第2の近位端(126)及び/又は前記第2の回転軸から遠い方の第2の遠位端(127)があり、そして、
前記少なくとも1つの月の表現(111)は、前記第1の遠位端(117)又は前記第1の近位端(116)にあり、かつ/又は前記少なくとも1つの隠し要素(
121)は、前記第2の遠位端(127)又は前記第2の近位端(126)にある
ことを特徴とする請求項1に記載の表示デバイス(100)。
【請求項12】
少なくとも1つの
前記第1のインジケーターメンバー(110)又は
少なくとも1つの
前記第2のインジケーターメンバー(120)は、月齢を示すように構成している
ことを特徴とする請求項1に記載の表示デバイス(100)。
【請求項13】
前記
駆動手段によって駆動されるように構成しており月齢を示す秒針を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の表示デバイス(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携行型時計(例、腕時計、懐中時計)の製造の分野、具体的には、月相の表現の分野、に関する。好ましくは、本発明は、ユーザーによって要求されて、かつ/又は特定のパラメータにしたがって、月相を表現することに関する。
【背景技術】
【0002】
伝統的に、月相は、表盤の下にあり2つの月が描かれた円盤によって示される。表盤に形成されている開口によって、月相と、月齢を読み取るための0~29.5の目盛りを視覚的に表現することができる。
【0003】
月期は、2つの新月を隔てる時間間隔であり、その平均持続時間は29日12時間44分2.8秒である。機械式携行型時計において、円盤は59日で1回転する。月期とは差があるので、この円盤の位置を定期的に修正する必要がある。実際に、このような機構は、非常に洗練されているにもかかわらず、24時間ごとしか月相が変更されないために精度が十分ではなく、また、ユーザーが北半球にいるのか南半球にいるのかに応じて月の状態の表現が異なるにもかかわらずこれらの機構ではユーザーの位置が考慮されない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この特許出願の思想は、電子式携行型時計の時針と分針を用いることによって、月相を示す機構を単純化することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、好ましくは要求に応じて表示する、計時器用の表示デバイスの形態によって、前記課題のすべて又は一部を解決することを目的とする。前記表示デバイスは、少なくとも1つの第1のインジケーターメンバー、少なくとも1つの第2のインジケーターメンバー、少なくとも1つの第1の駆動機構、及び少なくとも1つの制御ユニットを備え、前記少なくとも1つの第1のインジケーターメンバーは、好ましくは動くことができるように取り付けられており、少なくとも1つの月の表現を含み、前記少なくとも1つの第2のインジケーターメンバーは、好ましくは動くことができるように取り付けられており、前記少なくとも1つの月の表現を隠すように構成している少なくとも1つの隠し要素を含み、前記少なくとも1つの第1の駆動機構は、前記少なくとも1つの第1のインジケーターメンバー及び/又は前記少なくとも1つの第2のインジケーターメンバーを駆動するように構成しており、前記少なくとも1つの制御ユニットは、前記少なくとも1つの第1のインジケーターメンバー及び/又は前記少なくとも1つの第2のインジケーターメンバーを駆動すること及び/又は重ね合わせることを行い、かつ、前記少なくとも1つの月の表現が前記少なくとも1つの隠し要素によって完全に又は部分的に隠されるように、データセットに応じて前記少なくとも1つの第1の駆動機構を制御するように構成している。
【0006】
この構成のおかげで、表盤上の空間を特別に専用に割り当てずに月の状態が表現され、また、当該表示デバイスによって、時刻と日付に応じて、そして、着用者が事前に選択した半球にも応じて、ダイナミックで最も忠実な月の表現をユーザーが得ることができる。
【0007】
好ましい実施形態において、前記少なくとも1つの制御ユニットは、ユーザーの要求に応じて前記少なくとも1つの第1の駆動機構を制御する。
【0008】
一実施形態において、前記データセットは、日付、時刻、及び/又は地理的位置のデータを含む。
【0009】
この構成のおかげで、ユーザーが要求した瞬間及び/又は場所に応じて、月の状態が最も忠実にユーザーに示される。
【0010】
一実施形態において、前記データセットが、無線周波数による通信、衛星地理的ポジショニング、及び/又は無線及び/又は光通信を介して、前記少なくとも1つの制御ユニットによって受信される。
【0011】
この構成のおかげで、ユーザーが要求した瞬間及び/又は場所に応じて、月の状態が最も忠実にユーザーに示される。
【0012】
一実施形態において、前記表示デバイスは、前記少なくとも1つの第2のインジケーターメンバーを駆動するように構成している少なくとも1つの第2の駆動機構を備える。
【0013】
この構成のおかげで、前記少なくとも1つの第1の駆動機構と前記少なくとも1つの第2の駆動機構は、前記少なくとも1つの第1のインジケーターメンバーと前記少なくとも1つの第2のインジケーターメンバーを独立して動かすことができ、また、エネルギーの観点から表示システムがより効果的かつ経済的になる。
【0014】
一実施形態において、前記少なくとも1つの月の表現は、前記少なくとも1つの隠し要素よりも明るく、かつ/又は前記少なくとも1つの隠し要素及び/又は前記少なくとも1つの月の表現は、丸まった、丸い、楕円状、円盤状かつ/又は球状の形を有する。
【0015】
一実施形態において、前記少なくとも1つの隠し要素は、前記少なくとも1つの月の表現よりも暗い。
【0016】
この構成のおかげで、前記少なくとも1つの月の表現が現実に近くなる。
【0017】
一実施形態において、前記少なくとも1つの隠し要素には、前記少なくとも1つの月の表現を完全に又は部分的に見えるようにするように構成している少なくとも1つの開口がある。
【0018】
この構成のおかげで、前記少なくとも1つの月の表現が現実に近くなる。
【0019】
一実施形態において、前記少なくとも1つの月の表現には、携行型時計の表盤を完全に又は部分的に見えるようにして月を表すように構成している少なくとも1つの開口がある。
【0020】
一実施形態において、前記少なくとも1つの月の表現及び/又は前記少なくとも1つの隠し要素は、特に鏡面、半透明及び/又は光透過性の効果がある、偏光材料を含む。
【0021】
この構成のおかげで、前記少なくとも1つの月の表現及び/又は前記少なくとも1つの隠し要素が、ユーザーに見えない、又はわずかにしか見えない。
【0022】
一実施形態において、前記少なくとも1つの月の表現は、光沢があり、反射性であり、発光性でありかつ/又はフォトルミネッセンスであり、かつ/又は硫酸バリウムによった作られた、材料を含み、かつ/又は前記少なくとも1つの隠し要素は、マット性であり、光吸収性であり、又は炭素及び/又はカーボンナノチューブによって作られた、材料を含む。
【0023】
この構成のおかげで、前記少なくとも1つの月の表現が月のように光を反射又は拡散し、かつ/又は前記少なくとも1つの隠し要素が光を吸収する。
【0024】
一実施形態において、前記少なくとも1つの月の表現及び/又は前記少なくとも1つの隠し要素は、前記少なくとも1つの月の表現及び/又は前記少なくとも1つの隠し要素の光透過性を変更するように構成している液晶ディスプレー、エレクトロクロミックディスプレー及び/又はエレクトロウェッティングディスプレーを備え、これによって、前記少なくとも1つの月の表現と前記少なくとも1つの隠し要素が重なり合っているときに、観測者が月相の表現を認識するようにする。
【0025】
この構成のおかげで、前記少なくとも1つの月の表現及び/又は前記少なくとも1つの隠し要素は、ユーザーが希望する場合にのみ月の状態を見えるようにし、前記少なくとも1つの第1のインジケーターメンバーと前記少なくとも1つの第2のインジケーターメンバーが交わるときには隠す。
【0026】
一実施形態において、前記少なくとも1つの制御ユニットは、前記少なくとも1つの月の表現が前記少なくとも1つの隠し要素によって完全に又は部分的に隠されるように、完全に又は部分的に前記少なくとも1つの第2のインジケーターメンバーの裏にある前記少なくとも1つの第1のインジケーターメンバーを駆動するように前記少なくとも1つの第1の駆動機構を制御するように構成しており、あるいは前記少なくとも1つの月の表現が前記少なくとも1つの隠し要素によって完全に又は部分的に隠されるように、完全に又は部分的に前記少なくとも1つの第1のインジケーターメンバーの手前にある前記少なくとも1つの第2のインジケーターメンバーを駆動するように構成している。
【0027】
この構成のおかげで、表盤上の空間において特別な専用の空間を割り当てずに月の状態が示され、また、当該表示デバイスは、ダイナミックかつ最も忠実な月の表現をユーザーが得ることを可能にする。
【0028】
一実施形態において、前記少なくとも1つの第1のインジケーターメンバーは、第1の回転軸のまわりを動くことができ、かつ、前記少なくとも1つの第1のインジケーターメンバーには、前記第1の回転軸に近い方の第1の近位端及び/又は前記第1の回転軸から遠い方の第1の遠位端があり、かつ/又は前記少なくとも1つの第2のインジケーターメンバーは、第2の回転軸のまわりを動くことができるように構成しており、かつ、前記少なくとも1つの第2のインジケーターメンバーには、前記第2の回転軸に近い方の第2の近位端及び/又は前記第2の回転軸から遠い方の第2の遠位端があり、そして、前記少なくとも1つの月の表現は、前記第1の遠位端又は前記第1の近位端にあり、かつ/又は前記少なくとも1つの隠し要素は、前記第2の遠位端又は前記第2の近位端にある。
【0029】
この構成のおかげで、前記少なくとも1つの第1のインジケーターメンバー及び/又は前記少なくとも1つの第2のインジケーターメンバーの前記端において月の状態が示される。
【0030】
一実施形態において、前記少なくとも1つの第1のインジケーターメンバー又は前記少なくとも1つの第2のインジケーターメンバーは、月齢を示すように構成している。
【0031】
この構成のおかげで、ユーザーは月齢を知ることができる。
【0032】
一実施形態において、前記少なくとも1つの第1のインジケーターメンバー又は前記少なくとも1つの第2のインジケーターメンバーは、地平線に対する月の位置、月の出の時刻、及び月の入りの時刻を示すように構成している。
【0033】
この構成のおかげで、前記少なくとも1つの第1のインジケーターメンバー又は前記少なくとも1つの第2のインジケーターメンバーは、上記を示すことができる。
【0034】
一実施形態において、前記少なくとも1つの第1のインジケーターメンバーは時針と分針の一方であり、かつ/又は前記少なくとも1つの第2のインジケーターメンバーは時針と分針の他方である。
【0035】
この構成のおかげで、既存の要素を用いつつ、表盤上の空間を特別に専用に割り当てずに月の状態が示される。
【0036】
一実施形態において、前記表示デバイスは、月齢を示す秒針を備え、前記少なくとも1つの第1の駆動機構、及び/又は前記少なくとも1つの第2の駆動機構、及び/又は前記少なくとも1つの第3の駆動機構によって、駆動される。
【0037】
この構成のおかげで、既存の要素を用いつつ、表盤上の空間を特別に専用に割り当てずに月の状態が示される。
【0038】
一実施形態において、前記表示デバイスには、ユーザーが要求したときにその日の日付及び/又は月齢を示すように構成している開口がある。
【0039】
以下、例として与えられる添付の図面を用いて本発明を詳細に説明する。なお、これに限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】一実施形態に係る、ユーザーの位置148、時刻及び日付に応じた月相を含むデータ141の全体的な例を示している。
【
図2】一実施形態に係る、月の表現111を含む第1のインジケーターメンバー110と、隠し要素121を含む第2のインジケーターメンバー120がある表盤の例を示している。
【
図3】一実施形態にしたがって前記月の表現111が前記隠し要素121によって隠されるように重なり合った前記第1のインジケーターメンバー110と前記第2のインジケーターメンバー120を示している。
【
図4】一実施形態に係る、月齢とその対応する月相を示している第1のインジケーターメンバー110を示している。
【
図5】一実施形態に係る、一方の半球における月相を示している。
【
図6】一実施形態に係る日食と月食の相の展開を概略的に示している。
【
図7】前記月の表現111と前記隠し要素121の形態及び相対的位置を示している。
【
図8】前記月の表現111と前記隠し要素121の形態及び相対的位置を示している。
【
図9】前記月の表現111と前記隠し要素121の形態及び相対的位置を示している。
【発明を実施するための形態】
【0041】
前記図についての以下の詳細な説明において、本発明の理解を単純にするために、同じ機能を行う一又は複数の同じ要素に対して同じ参照符号を使う場合もある。また、「ユーザー」という用語は、女性、男性などのユーザーを含む概念として理解する必要があり、限定されるべきではない。
【0042】
本発明は、例えば、電子式携行型時計の時針と分針を用いることによって、月相を示すためのエンジニアリングを単純化し、情報の質を向上させることができる。
【0043】
月を表す円盤を時針の後ろ側に配置し、月を多かれ少なかれ隠すことができる円盤を分針の後ろ側に配置することができる。通常モードにおいて、これらの針は時刻を示すことができ、要求に応じて、例えばボタンやリュウズを押すことで、針が動いて、円盤の重ね合わせが携行型時計の日時における月相を示すことができる。
【0044】
実際に、本発明は、ユーザーの要求に応じて、さらには随意的にユーザーの地理的位置を考慮に入れて、日時に応じた月の状態を示すことを可能にする。このことは、要求に応じて、所与の瞬間と所与の場所における月相をユーザーが知ることを可能にする表示デバイス100のおかげである。また、この表示デバイス100を月食や日食にも適用することができる。
【0045】
また、表盤199上の空間を特別に専用に割り当てずに月の状態が示され、また、表示デバイス100は、
図1に示しているように、データセットにしたがってユーザーが月の動的かつ最も忠実な表現を獲得することを可能にする。
【0046】
実際に、表示デバイス100は、少なくとも1つの第1のインジケーターメンバー110及び少なくとも1つの第2のインジケーターメンバー120を用いてそれらを重ね合わせて、月の状態を示すことができる。
【0047】
前記少なくとも1つの第1のインジケーターメンバー110を、第1の回転軸のまわりを動くことができるように取り付けることができ、前記少なくとも1つの第1のインジケーターメンバー110には、前記第1の回転軸に近い方の第1の近位端116、及び/又は前記第1の回転軸から遠い方の第1の遠位端117があることができ、前記第1の遠位端117又は前記第1の近位端116のいずれかに、月の表現111がある。
【0048】
また、前記少なくとも1つの第2のインジケーターメンバー120を、前記第1の回転軸、又は好ましくは前記第1の回転軸と同軸である、第2の回転軸のまわりを動くことができるように取り付けることができ、前記少なくとも1つの第2のインジケーターメンバー120には、前記第1の回転軸に近い方の第2の近位端126、及び/又は前記第1の回転軸及び/又は前記第2の回転軸から遠い方の第2の遠位端127があることができ、前記第2の遠位端127又は前記第2の近位端126のいずれかに少なくとも1つの隠し要素121を配置することができる。
【0049】
典型的には、前記少なくとも1つの第1のインジケーターメンバー110は、時針又は分針の形態であることができ、かつ/又は前記少なくとも1つの第2のインジケーターメンバー120はそれぞれ、分針又は時針であることができ、したがって、表盤199上の空間が月の状態のために特別に専用に割り当てられず、また、針のような既存の要素を用いることができる。
【0050】
前記少なくとも1つの第1のインジケーターメンバー110と前記少なくとも1つの隠し要素121が重なり合っているときに、前記少なくとも1つの隠し要素121は、前記少なくとも1つの月の表現111を隠すように構成していることができる。
【0051】
いくつかの実施形態において、この少なくとも1つの月の表現111は、明るく、反射性、発光性かつ/又は光ルミネセンス性の材料、例えば、硫酸バリウムによって作られた材料、Superluminovaとしても知られているアルミン酸ストロンチウムによって作られた材料、を含むことによって、前記少なくとも1つの隠し要素121よりも明るく見えるようにすることができ、かつ/又は前記少なくとも1つの隠し要素121は、マット性又は光吸収性の材料、例えば、炭素及び/又はカーボンナノチューブによって作られた材料、を含むことによって、前記少なくとも1つの月の表現111よりも暗く見えるようにすることができ、これによって、前記少なくとも1つの月の表現111が月のように光を反射又は拡散し、かつ/又は前記少なくとも1つの隠し要素121が光を吸収ないしマスクする。
【0052】
当然、本発明は、これらの実施形態に限定されず、前記少なくとも1つの月の表現111及び/又は前記少なくとも1つの隠し要素121が、特に鏡面効果及び/又は好ましくは光透過性効果を発揮する、偏光材料を含むことができ、これによって、前記少なくとも1つの月の表現111と前記少なくとも1つの隠し要素121が重なり合っていないときには、前記少なくとも1つの月の表現111及び/又は前記少なくとも1つの隠し要素121をユーザーが認識できず又はわずかにしか認識できず、それにもかかわらず、重なり合っているときにはユーザーが月の状態を認識することができるようにすることができる。
【0053】
他の実施形態も考えることができ、前記少なくとも1つの月の表現111及び/又は前記少なくとも1つの隠し要素121が、前記少なくとも1つの月の表現111及び/又は前記少なくとも1つの隠し要素121の光透過度を変えるように構成している液晶ディスプレー、電気化学的ディスプレー及び/又はエレクトロウェッティングディスプレーを備えて、これによって、前記少なくとも1つの月の表現111と前記少なくとも1つの隠し要素121が重なり合っているときに、月相の表現を観測者が認識することができるようにすることができる。
【0054】
この場合、前記少なくとも1つの月の表現111及び/又は前記少なくとも1つの隠し要素121が、ユーザーが望むときにのみ月の状態を認識させるようにして、前記少なくとも1つの第1のインジケーターメンバー110と前記少なくとも1つの第2のインジケーターメンバー120が交差するときには認識させないようにすることができる。実際に、前記少なくとも1つの月の表現111及び/又は前記少なくとも1つの隠し要素121が、液晶ディスプレー、電気化学的ディスプレー及び/又はエレクトロウェッティングディスプレーを備える場合に、前記少なくとも1つの月の表現111と前記少なくとも1つの隠し要素121が、ユーザーが要求したとき及び電流及び/又は電圧が前記少なくとも1つの月の表現111と前記少なくとも1つの隠し要素121に与えられたときにのみ月相を示す。実際に、前記少なくとも1つの月の表現111及び/又は前記少なくとも1つの隠し要素121が、液晶ディスプレー、電気化学的ディスプレー及び/又はエレクトロウェッティングディスプレーを備え、前記少なくとも1つの隠し要素121又は前記少なくとも1つの月の表現111が偏光材料を含むことができ、これらの2つが組み合わさって月の状態を示すことができる。
【0055】
いくつかの実施形態において、形態も重要であることがあり、前記少なくとも1つの隠し要素121及び/又は前記少なくとも1つの月の表現111が、丸まった、丸い、楕円状、円盤状及び/又は球状の形を有することができ、
図9A及び9Bにおいて、前記少なくとも1つの隠し要素121が前記少なくとも1つの月の表現111を隠しているときの月の状態が現実に近くなる。
【0056】
これらの実施形態において、前記少なくとも1つの月の表現111は、一方では、金、白金、チタンのような非常に高貴な材料で作ることができ、他方では、非常に単純な真鍮、鋼、アルミニウムで作ることができ、ここで、月の色を最も良好に模倣するために色の薄い層が堆積していることができ、重さ、長さ、幅及び厚みのような寸法構成が、共通重心ないし重心が前記第1の軸に可能なかぎり近くなるように定められる。前記少なくとも1つの隠し要素121について、この少なくとも1つの隠し要素121は、随意的に、非常に高貴な材料によって作り、前記第1の軸及び/又は前記第2の軸に可能なかぎり近い共通重心ないし重心を有するように寸法構成を定めることができる。
【0057】
図7A、7B、8A及び8Bに示しているように、前記少なくとも1つの隠し要素121には、前記少なくとも1つの月の表現111を完全に又は部分的に認識できるようにするように構成している少なくとも1つの開口122があることができる。
【0058】
また、前記少なくとも1つの月の表現111に、携行型時計の表盤199を完全に又は部分的に見えるようにするように構成している少なくとも1つの開口を形成して、月や太陽を示すことは完全に可能である。実際に、いくつかの実施形態において、
図9A及び9Bにそれぞれ示しているように、日食又は月食が示することができる。この図において、前記少なくとも1つの第1のインジケーターメンバー110及び/又は前記少なくとも1つの第2のインジケーターメンバー120は、例えば、食の期間全体にわたって動く。
【0059】
前記少なくとも1つの第1のインジケーターメンバー110及び/又は前記少なくとも1つの第2のインジケーターメンバー120の可動性は、いくつかの実施形態にしたがって、前記少なくとも1つの第1のインジケーターメンバー110及び/又は前記少なくとも1つの第2のインジケーターメンバー120を駆動するように構成している、少なくとも1つの第1の駆動機構、好ましくは電気モーターや制御されたステッピングモーター、を用いて可能になる。
【0060】
実際に、いくつかの実施形態において、少なくとも1つの第1の駆動機構のみが、前記少なくとも1つの第1のインジケーターメンバー110と前記少なくとも1つの第2のインジケーターメンバー120を駆動することができ、あるいは前記少なくとも1つの第1のインジケーターメンバー110と前記少なくとも1つの第2のインジケーターメンバー120のそれぞれが、前記少なくとも1つの第1の駆動機構と前記少なくとも1つの第2の駆動機構、好ましくは電気モーター又は制御されたステッピングモーター、を備え、これによって、前記少なくとも1つの第1の駆動機構と前記少なくとも1つの第2の駆動機構が、前記少なくとも1つの第1のインジケーターメンバー110と前記少なくとも1つの第1の駆動機構を独立して動かすことができる。また、この構成によって、機構を単純化することも可能になり、前記少なくとも1つの第1の駆動機構と前記少なくとも1つの第2の駆動機構を互いに独立して制御することができる。また、機能の消費電力を低減することができることと同様に、要求に応じた表示の応答性が向上する。
【0061】
少なくとも1つの制御ユニットを用いて、前記少なくとも1つの第1のインジケーターメンバー110及び/又は前記少なくとも1つの第2のインジケーターメンバー120、特に、少なくとも1つの第1のインジケーターメンバーの制御駆動機構及び/又は前記少なくとも1つの第2の駆動機構、の制御を達成することができる。
【0062】
前記少なくとも1つの制御ユニットは、典型的には、プロセッサー、マイクロコントローラー、マイクロプロセッサー、又は前記少なくとも1つの第1の駆動機構及び/又は前記少なくとも1つの第2の駆動機構を制御するための専用の集積回路の形態であることができる。
【0063】
前記少なくとも1つの制御ユニットは、
図1に示しているデータセット141にしたがって前記少なくとも1つの第1の駆動機構及び/又は前記少なくとも1つの第2の駆動機構を制御して、前記少なくとも1つの第1のインジケーターメンバー110及び/又は前記少なくとも1つの第2のインジケーターメンバー120を駆動すること及び/又は重ね合わせることを行い、そして、前記少なくとも1つの月の表現111が前記少なくとも1つの隠し要素121によって完全に又は部分的に隠されるように構成している。
【0064】
実際に、前記少なくとも1つの第1のインジケーターメンバー110と前記少なくとも1つの第2のインジケーターメンバー120の重なり合いが、時刻、日付、例えば2019年5月18日、のようなデータセット141に基づくことができる。これには、携行型時計が利用できる永久カレンダーを用い、又は無線周波数通信を介して、衛星地理的ポジショニングを介して、かつ/又は無線通信及び/又は光通信を介して、前記少なくとも1つの制御ユニットによって受信される前記データセット141を用い、これによって、ユーザーが要求した瞬間、すなわち、日付と時刻、及び/又は選択された場所、に応じて可能なかぎり最も忠実にユーザーに月の状態を示す。
【0065】
したがって、前記少なくとも1つの第1のインジケーターメンバー110が約3時を示し前記少なくとも1つの第2のインジケーターメンバー120が約51分を示しているときのような、ユーザーが表示デバイスに月の状態の表現を表示するように要求した時刻、例えば03:51、に応じて、前記少なくとも1つの第1のインジケーターメンバー110は、月の状態を表示するためにかかる時間の間に、動かないままでいて、前記少なくとも1つの駆動機構又は前記少なくとも1つの第2の駆動機構が前記少なくとも1つの第1のインジケーターメンバー110の近くの前記少なくとも1つの第2のインジケーターメンバー121を駆動し、これによって、
図1に示しているように満月を示す。
【0066】
また、当該表示デバイス100が、前記データセット141にしたがって、日食又は月食を示すことも可能である。ただし、当該表示デバイス100は、前記通信手段によって送信されるデータ、又は前記プロセッサー、マイクロコントローラー、マイクロプロセッサー又は集積回路に属する内部メモリーに記録されるデータを含む。
【0067】
また、前記少なくとも1つの第1のインジケーターメンバー110又は前記少なくとも1つの第2のインジケーターメンバー120が、
図2に示している初期位置から、方向(
図3を参照)及び/又は月齢(
図3又は4を参照)を示すことができる中間位置に動くことができるようにすることも可能である。
【0068】
実際に、月相に加えて、月齢を示すことができる。例えば、
図3では月齢が8、
図4では月齢が15である。
【0069】
より正確には、月齢を時針、分針又は秒針が示すことができるようにして、既存の要素を用いつつ、表盤199上の空間を特別に専用に割り当てずに月の状態を示すようにすることができる。
【0070】
また、当該表示デバイスに、ユーザーが要求したときにその日の日付146及び/又は月齢、又はユーザーの要件にしたがって新月又は満月までの残りの日数を示すように構成している開口195があることができる。
【0071】
図4に示しているように、前記少なくとも1つの第1のインジケーターメンバー110又は前記少なくとも1つの第2のインジケーターメンバー120が月齢を示すように構成している場合、表盤及び/又はベゼルにスケール及び/又は目盛りを記す。
【0072】
別の実施形態において、前記データセット141が、49°29’29.0"N 11°46’21.5"Eのような、ユーザーが手動で入力した又は衛星地理的ポジショニングを用いて獲得した、ユーザーの地理的位置148のような少なくとも他の指示種を含み、これによって、ユーザーが要求した瞬間及び/又は場所に応じて可能なかぎり忠実に月の状態をユーザーに示すことができる。
【0073】
前記のように、ユーザーの地理的位置148は、手動で入力するようにしたり、また、グリニッジ標準時に対する差とともにいくつかの都市を携行型時計に示して事前に選択したりすることができる。例えば、ユーザーがスイスのビールにいる場合、ユーザーは、ジュネーブのような自身の携行型時計の表盤上における自身の位置に最も近い場所を選択し、そして、そのユーザーが月の状態の表示を要求したときに、当該表示デバイスは、前記少なくとも1つの第1の駆動機構を用いて、前記少なくとも1つの第1のインジケーターメンバー110及び/又は前記少なくとも1つの第2のインジケーターメンバー120を駆動して、日付146、時刻147、地理的位置148に対応する月の状態を示す。
【0074】
図5は、表盤が2つの部分に分けられていて、前記少なくとも1つの月の表現111と前記少なくとも1つの隠し要素121が重なり合って北半球及び/又は南半球における月の状態を示すような表示デバイス100を示している。
【0075】
実際に、
図5に示すように、月の相に加えて、水平線に対する月の位置を携行型時計の表盤又は風防における9時から3時の間の位置に配置することができる。
【0076】
地平線は、ユーザーが要求した特定の場所に合わせて計算され適応され、ここで、ユーザーが見やすいように地平線のレリーフを形成し、表盤として機能する画面に表示することができる。月が見えるときには地平線の上にし、見えないときには地平線の下にすることができる。月の位置が、例えば、月の出の時刻や月の入りの時刻に関する情報を与えるようにすることができる。
【0077】
好ましいことに、前記少なくとも1つの第1の駆動機構と前記少なくとも1つの制御ユニットを用いて、前記少なくとも1つの月の表現111と前記少なくとも1つの隠し要素121が、時計回りに動いて北半球における月の経過を示し、反時計回りに動いて南半球における月の経過を示すことができる。