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特許7359968自動ドア装置及び自動ドア装置の制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-02
(45)【発行日】2023-10-11
(54)【発明の名称】自動ドア装置及び自動ドア装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   E05F 15/43 20150101AFI20231003BHJP
   E05F 15/46 20150101ALI20231003BHJP
   E05F 15/74 20150101ALN20231003BHJP
【FI】
E05F15/43
E05F15/46
E05F15/74
【請求項の数】 23
(21)【出願番号】P 2022546968
(86)(22)【出願日】2021-09-02
(86)【国際出願番号】 JP2021032277
(87)【国際公開番号】W WO2022050346
(87)【国際公開日】2022-03-10
【審査請求日】2022-10-25
(31)【優先権主張番号】P 2020149433
(32)【優先日】2020-09-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】松永 絢一
(72)【発明者】
【氏名】友弘 真実
【審査官】野尻 悠平
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-191955(JP,A)
【文献】特開2019-100095(JP,A)
【文献】特開2018-003587(JP,A)
【文献】特開2017-025472(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 15/43
E05F 15/46
E05F 15/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内と室外とを隔てる扉と、
前記室内側に設けられ操作者の操作に応じて開指令を出力する非接触型の開指令出力部と、
前記室内側に設けられ操作者の操作に応じて閉指令を出力する非接触型の閉指令出力部と、
前記開指令出力部から出力された開指令又は前記閉指令出力部から出力された閉指令に基づいて前記扉を開駆動又は閉駆動させる制御部とを備え、
前記扉が非駆動状態にあるときに、開指令又は閉指令の何れか一方が出力されて所定時間内に開指令又は閉指令の他方が出力された場合、前記制御部は前記扉を非駆動状態に維持する、自動ドア装置。
【請求項2】
室内と室外とを隔てる扉と、
操作者の操作に応じて前記扉の開指令を出力する非接触型の開指令出力部と、
操作者の操作に応じて前記扉の閉指令を出力する非接触型の閉指令出力部と、
前記開指令出力部から出力された開指令又は前記閉指令出力部から出力された閉指令に基づいて前記扉を開駆動又は閉駆動させる制御部とを備え、
前記制御部は、前記扉の開駆動中に開指令及び閉指令が出力された場合前記扉を閉方向に逆駆動させ、又は前記扉の閉駆動中に開指令及び閉指令が出力された場合前記扉を開方向に逆駆動させる、自動ドア装置。
【請求項3】
前記扉が前記開駆動中、又は前記閉駆動中に前記扉を逆駆動させた後、前記制御部は、前記逆駆動させる前から出力され続けている開指令又は閉指令を無効にする、請求項2に記載の自動ドア装置。
【請求項4】
室内と室外とを隔てる扉と、
操作者の操作に応じて前記扉の開指令を出力する非接触型の開指令出力部と、
操作者の操作に応じて前記扉の閉指令を出力する非接触型の閉指令出力部と、
前記開指令出力部から出力された開指令又は前記閉指令出力部から出力された閉指令に基づいて前記扉を開駆動又は閉駆動させる制御部と、
前記開指令出力部から開指令が出力され、かつ前記閉指令出力部から閉指令が出力されている場合に報知する報知部とを備える、自動ドア装置。
【請求項5】
室内と室外とを隔てる扉と、
操作者の非接触操作に応じて前記扉の開指令又は閉指令を出力する非接触型の指令出力部と、
操作者の接触操作に応じて前記扉の開指令又は閉指令を出力する接触型の指令出力部と、
前記非接触型の指令出力部から出力された指令、及び前記接触型の指令出力部から出力された指令に基づいて前記扉を開駆動又は閉駆動させる制御部とを備え、
前記非接触型の指令出力部から出力された開指令又は閉指令に基づいて前記扉を駆動させている間に前記接触型の指令出力部から開指令又は閉指令が出力された場合、前記制御部は、前記接触型の指令出力部から出力された開指令又は閉指令に基づいて前記扉を駆動させる、自動ドア装置。
【請求項6】
前記接触型の指令出力部から開指令又は閉指令が出力された場合、前記制御部は、前記扉が全開状態又は全閉状態になるまで、前記接触型の指令出力部から出力された開指令又は閉指令のみに基づいて前記扉を制御する、請求項5に記載の自動ドア装置。
【請求項7】
前記接触型の指令出力部は、前記室内に設けられた室内閉指令出力部を備え、
前記室内閉指令出力部から閉指令が出力された場合、前記制御部は、前記室内が未使用状態になったと推定されるまで、前記非接触型の指令出力部から出力された指令に基づいて前記扉を制御しない、請求項5又は6に記載の自動ドア装置。
【請求項8】
前記非接触型の指令出力部から開指令及び閉指令が出力されている場合に報知する報知部とを備える、請求項5乃至7のいずれか1項に記載の自動ドア装置。
【請求項9】
前記報知部は、所定時間以上前記非接触型の指令出力部から開指令及び閉指令が出力されている場合、前記接触型の指令出力部を操作するよう報知する、請求項8に記載の自動ドア装置。
【請求項10】
室内と室外とを隔てる扉と、
前記室内側に設けられ操作者の非接触操作に応じて前記扉の開指令を出力する非接触型の開指令出力部と、
前記室内側に設けられ操作者の非接触操作に応じて前記扉の閉指令を出力する非接触型の閉指令出力部と、
前記開指令出力部から出力された開指令又は前記閉指令出力部から出力された閉指令に基づいて前記扉を開駆動又は閉駆動させる制御部とを備え、
前記扉が前記開駆動中に開指令が出力された場合、又は前記扉が前記閉駆動中に閉指令が出力された場合、前記制御部は開指令又は閉指令を無効にする、自動ドア装置。
【請求項11】
前記扉が前記開駆動中に閉指令が出力された場合、又は前記扉が前記閉駆動中に開指令が出力された場合、前記制御部は前記扉を逆駆動させる、請求項10に記載の自動ドア装置。
【請求項12】
操作者の接触操作に応じて前記扉の開指令又は閉指令を出力する接触型の指令出力部を備え、
前記非接触型の開指令出力部又は前記非接触型の閉指令出力部から出力された指令に基づいて前記扉を開駆動又は閉駆動させている間に前記接触型の指令出力部から開指令又は閉指令が出力された場合、前記制御部は、前記接触型の指令出力部の開指令又は閉指令に基づいて前記扉を駆動させる、請求項10又は11に記載の自動ドア装置。
【請求項13】
前記接触型の指令出力部の開指令に基づいて前記扉を駆動させている間に前記非接触型の閉指令出力部から閉指令が出力された場合、前記制御部は前記非接触型の閉指令出力部から出力された閉指令を無効にする、請求項12に記載の自動ドア装置。
【請求項14】
前記接触型の指令出力部は、前記室内側に設けられている、請求項13に記載の自動ドア装置。
【請求項15】
前記接触型の指令出力部から出力された開指令又は閉指令に基づいて前記扉を駆動している間に駆動方向とは逆の指令が前記接触型の指令出力部から出力された場合、前記制御部は前記扉を逆駆動させる、請求項12に記載の自動ドア装置。
【請求項16】
前記接触型の指令出力部は、前記室外側に設けられている、請求項15に記載の自動ドア装置。
【請求項17】
室内と室外とを隔てる扉と、
前記室内側に設けられ操作者の非接触操作に応じて前記扉の開指令が出力される非接触型の開指令出力部と、
前記室内側に設けられ操作者の非接触操作に応じて前記扉の閉指令が出力される非接触型の閉指令出力部と、
前記開指令出力部から出力された開指令又は前記閉指令出力部から出力された閉指令に基づいて前記扉を開駆動又は閉駆動させる制御部とを備え、
前記非接触型の開指令出力部及び前記非接触型の閉指令出力部は、静電容量の変化量が所定の閾値を超えたときに指令を出力する静電容量式のセンサであり、
前記扉が非駆動状態にあるときに、開指令又は閉指令の何れか一方の出力後所定時間内に開指令又は閉指令の他方が出力された場合、前記制御部は静電容量の変化量が多い方の指令に基づき前記扉を駆動する、自動ドア装置。
【請求項18】
前記扉が全閉状態にあるときに、前記非接触型の閉指令出力部から閉指令が出力された場合、前記制御部は閉指令を無効にする、請求項17に記載の自動ドア装置。
【請求項19】
前記扉が全開状態にあり、かつ前記非接触型の開指令出力部から開指令が出力されているときに前記非接触型の閉指令出力部から閉指令が出力された場合、前記制御部は閉指令に基づいて扉を駆動させる、請求項17又は18に記載の自動ドア装置。
【請求項20】
室内と室外とを隔てる扉の室内側に設けられた非接触型の開指令出力部から開指令を出力し、又は前記室内側に設けられた非接触型の閉指令出力部から閉指令を出力するステップと、
前記扉が非駆動状態にあるときに開指令及び閉指令の何れか一方が出力されたあと、所定時間内に開指令及び閉指令の何れか他方が出力された場合、前記扉を非駆動状態で維持するステップとを備える、自動ドア装置の制御方法。
【請求項21】
室内と室外とを隔てる扉の室内側に設けられた非接触型の開指令出力部から開指令を出力し、又は前記室内側に設けられた非接触型の閉指令出力部から閉指令を出力するステップと、
前記扉の開駆動中に開指令及び閉指令が出力された場合前記扉を閉方向に逆駆動させ、前記扉の閉駆動中に開指令及び閉指令が出力された場合前記扉を開方向に逆駆動させるステップとを備える、自動ドア装置の制御方法
【請求項22】
室内と室外とを隔てる扉の室内側に設けられた非接触型の開指令出力部から開指令を出力し、又は前記室内側に設けられた非接触型の閉指令出力部から閉指令を出力するステップと、
前記指令出力部から開指令及び閉指令が出力されている場合、報知するステップとを備える、自動ドア装置の制御方法。
【請求項23】
室内と室外とを隔てる扉の室内側に設けられた非接触型の開指令出力部から開指令を出力し、又は前記室内側に設けられた非接触型の閉指令出力部から閉指令を出力するステップと、
前記非接触型の指令出力部から出力された開指令又は閉指令に基づいて前記扉を駆動させるステップと、
前記扉の駆動中に接触型の指令出力部から開指令又は閉指令を出力するステップと、
前記接触型の指令出力部の開指令又は閉指令に基づいて前記扉を駆動させるステップとを備える、自動ドア装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動ドア装置及び自動ドア装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、多機能トイレ等の特定の設備の引戸を、使用者の操作に応じて自動的に開閉する自動ドア装置が知られている。自動ドア装置は、使用者の操作に応じて引戸の開閉指令を出力する押しボタン等の接触型の指令出力部を備える。自動ドア装置は、指令応じて引戸を開閉する。
【0003】
近年、衛生面を含む種々の観点から自動ドア装置に非接触型の指令出力手段を採用したいという要望が増えている。非接触型の指令出力手段としては、例えば特許文献1に記載されているような赤外線投光式センサが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-006981号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
自動ドア装置に非接触型の指令出力手段を適用することで、使用者が指令出力手段に触れることなく引戸の開閉を行えるようになる。しかしながら、非接触型の指令出力手段は接触型の指令出力手段と異なり、使用者自身が指令出力手段の操作結果を視覚的又は触覚的に認識できない。これにより使用者が意図した操作と、自動ドア装置が認識した指令が一致しないことがある。したがって、接触型の指令出力部のみを有する自動ドア装置の制御システムをそのまま非接触型の指令出力部を有する自動ドア装置に転用すると、自動ドア装置が使用者の意図せぬ動作をする頻度が高くなる。
【0006】
本開示はこのような課題を解決するものであり、非接触型の指令出力部を有する自動ドア装置において使用者の意図せぬ動作をする頻度を少なくできる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、室内と室外とを隔てる扉と、室内側に設けられ操作者の操作に応じて開指令を出力する非接触型の開指令出力部と、室内側に設けられ操作者の操作に応じて閉指令を出力する非接触型の閉指令出力部と、開指令出力部から出力された開指令又は閉指令出力部から出力された閉指令に基づいて扉を開駆動又は閉駆動させる制御部とを備え、扉が非駆動状態にあるときに、開指令又は閉指令の何れか一方が出力されて所定時間内に開指令又は閉指令の他方が出力された場合、制御部は前記扉を非駆動状態に維持する自動ドア装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】自動ドア装置の正面図である。
図2】自動ドア装置が設置された多機能トイレの平面図である。
図3】自動ドア装置の制御機構のブロック図である。
図4】自動ドア装置の指令出力部の概略図を示す。
図5】自動ドア装置の指令出力部の概略図を示す。
図6】第1運転方式におけるドア制御器の一連の処理を示すフロー図である。
図7】第2運転方式におけるドア制御器の一連の処理を示すフロー図である。
図8】第1運転方式と第2運転方式を組み合わせた一連の処理のフロー図である。
図9】第2実施形態による自動ドア装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を好適な実施形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0010】
実施形態では多機能トイレの出入口に設けられた自動ドア装置について説明する。自動ドア装置は、多機能トイレ以外にも例えば工場の搬出入口のように自動ドア装置の引戸を挟んで両側に開閉スイッチが配置される様々な場所に適用できる。
【0011】
〔第1実施形態〕
図1は自動ドア装置の正面図であり、図2は自動ドア装置が設置された多機能トイレの平面図である。図1及び図2に示すように自動ドア装置10は、四方が壁12により囲まれた多機能トイレ14の出入口16に設置される。自動ドア装置10は、固定部18と、引戸20と、無目22とを備える。固定部18は、壁12に固定されており無目22と床面との間を視覚的に遮断する。引戸20は固定部18に対して水平方向に、開状態と閉状態との間で移動する。引戸20は、正面(図1の方向)から見たときに開状態において固定部18と重なり、引戸20が開状態にあるとき固定部18の横の出入口16(開口)が開く。引戸20は、閉状態において固定部18と横並びになり出入口16を閉じる。なお、この例では引戸20は多機能トイレ14の室内側に設けられており、開状態において固定部18の室内側の面と対向するよう配置されている。しかしながら、引戸20を室外側に設けて開状態において固定部18の室外側の面と対向するよう配置してもよい。
【0012】
多機能トイレ14内には、利用者が利用する洗面台24、便器26、おむつ替え台28等の設備が設けられている。本実施形態では、洗面台24、及び便器26は自動ドア装置10から離れた個室の奥側に配置されるものとする。また本実施形態では、おむつ替え台28は、図示のように個室の手前側(自動ドア装置側)に配置されるものとする。自動ドア装置10の近傍には、後述する自動ドア装置10の保護センサの検知エリア30が設けられている。検知エリア30は、自動ドア装置の開口の室外側にある室外側閉検知エリアA2と、開口の室内側にある室内側閉検知エリアA3と、開検知エリアA4とを含む。検知エリアについては、無目22の構成と共に後述する。以下、本明細書において、室外側閉検知エリアA2と室内側閉検知エリアA3とを区別しない場合には、「閉検知エリアA2,A3」と総称することがある。
【0013】
自動ドア装置10は、利用者の操作に応じて引戸20の開指令又は閉指令を出力する指令出力部36(非接触型の指令出力部に相当)を備える。指令出力部36は、室外側に設けられた室外側指令出力部36oと、室内側に設けられた室内側指令出力部36iとを含む。室内側指令出力部36i及び室外側指令出力部36oは、それぞれ出入口16付近に設けられる。室外側指令出力部36o、及び室内側指令出力部36iの各々は、開センサ38と閉センサ40とを備える。開センサ38及び閉センサ40は、利用者が引戸20を開く操作を行おうとしているとき、又は引戸20を閉じる操作を行おうとしているときに、例えば手などの身体の一部が近付いたことを検知する赤外線投光式センサである。例えば利用者が開センサ38に手を近付け開センサ38の検知範囲内に手が入ると、開センサ38は検知信号をONにする。一方で開センサ38の検知範囲内で利用者の身体等が検知されていない間、開センサ38は検知信号をOFFにする。以下、本明細書において、開センサ38のうち室内側の開ボタンを指す場合には開センサ38iと称し、室外側の開センサを指す場合には開センサ38oと称することがある。閉センサ40についても、同様に閉センサ40i又は閉センサ40oと称することがある。
【0014】
開センサ38及び閉センサ40としては、静電容量式センサを用いてもよい。静電容量式センサは、検知領域として磁界を形成しており、磁界内の静電容量の変化量に応じて検知領域内で人又は物が検知されたか否かを判断する。この場合、静電容量式センサは、静電容量の変化量が所定の閾値を超えたときに検知領域内で人又は物が検知されたと判断する。閾値を設定することで、操作精度をより高められる。
【0015】
自動ドア装置10は、出入口16内に検知エリアA1を有する補助光電センサ42を備える。補助光電センサ42は、投光部44と、受光部46とを含む。投光部44と受光部46は、出入口16を挟んで幅方向反対側に配置され、両者の間が補助光電センサ42の検知エリア(補助検知エリア)A1となる。補助光電センサ42は、投光部44からの光を受光部46に向けて照射し、受光部46で光を受け取れたか(検知できたか)により、補助検知エリアA1内に人又は物が存在するかを検知する。自動ドア装置10は、補助光電センサ42の検知結果に基づいて補助光電センサ42の補助検知エリアA1内に人又は物が存在するかを検知できる。
【0016】
無目22は、出入口16の上部に配置され、上述した保護センサ48等を含む引戸20の制御機構を内蔵する。無目22の表面には、出入口16の室外側に検知エリア(室外側閉検知エリアA2)を有する室外側閉保護センサ50oと、出入口16の室内側に検知エリア(室内側閉検知エリアA3)を有する室内側閉保護センサ50iと、開状態の引戸20が待機する位置と重複する検知エリア(開検知エリアA4)を有する開保護センサ52とが設けられている。本明細書において、室外側閉保護センサ50oと、室内側閉保護センサ50iと、開保護センサ52とを総称して保護センサ48と称することがある。また、室外側閉保護センサ50oと、室内側閉保護センサ50iとを総称して、閉保護センサ50と総称することがある。
【0017】
各保護センサ48は、対応する検知エリアA2~A4に向けて近赤外線を投射し、その反射光を受光する近赤外線センサにより構成される。より具体的には保護センサ48は、検知エリアA2~A4を複数の小検知エリアに分割し、それぞれの小検知エリアに対応させた複数の近紫外線センサを備える。基本的には保護センサ48は、いずれかの小検知エリア内で人又は物が検知された場合、検知エリアA2~A4内で人又は物が検知されたものと判断する。
【0018】
図3は、自動ドア装置の制御機構のブロック図である。
【0019】
図3に示すように自動ドア装置10は、制御部としての多機能トイレ自動ドア制御器(以下、単に「ドア制御器」ということがある)54と、ドアコントローラ56と、報知部58とを備える。ドア制御器54は、例えば一般的な建物の出入口用の自動ドア装置に備えられていない、多機能トイレに特有の機能を実現するための制御器である。ドア制御器54は、開閉センサ38,40の出力結果を受けドアコントローラ56に対して引戸20の駆動指令を供給する。これに加えてドア制御器54は、報知部58を介して利用者に所定の通知をする。またドア制御器54は、必要に応じて保護センサ48の検知結果を読み出しこれに基づいてドアコントローラ56に対して引戸20の駆動指令を供給してもよい。
【0020】
ドア制御器54は、引戸20の状態、及び多機能トイレ14の室内の状況に応じて開センサ38i,38o、及び閉センサ40i,40oからの出力(つまり開指令又は閉指令)を有効にし、又は無効にする。引戸20の状態とは、引戸20が全開状態、全閉状態、全閉状態から全開状態に向かう開動作状態、及び全開状態から全閉状態に向かう閉動作状態を含む。多機能トイレ14の室内の状況とは、多機能トイレ14内の利用者の有無をいう。ドア制御器54が多機能トイレ14内の室内の状況を判断する方法としては、多機能トイレ14内に人感センサを設けたり、指令出力部36の出力履歴に基づいて室内の利用者の有無を推定したりする方法がある。例えば、引戸20の最終の操作履歴が室外側の閉センサ40oから出力された閉指令である場合、ドア制御器54は、多機能トイレ14内に人がいないと推定する。一方で引戸20の最終の操作履歴が室内側の閉センサ40iから出力された閉指令である場合、ドア制御器54は多機能トイレ14内に人がいると推定する。開センサ38i等の出力を有効にし、又は無効にするとは、ドア制御器54が開センサ38i等からのON信号又はOFF信号に基づいて引戸20を駆動するか、駆動せずに現在の状態を維持させるかをいう。したがって、例えば開センサ38iからの開指令を無効にした場合、開センサ38iは開指令を出力しないか、又は開センサ38iから開指令が出力されたとしてもドア制御器54は開指令に基づく制御を行わず開指令を無視する。
【0021】
表1は、引戸20の状態と、開センサ38i,38o、及び閉センサ40i,40oから指令が出力された場合のドア制御器54の待ち受け状態の変化との関係を示す。ドア制御器54の待ち受け状態は、引戸20の状態及び多機能トイレ14の室内の状況(使用中であるか又は未使用であるか)に応じて予め複数設定される。ドア制御器54は、引戸20の状態及び多機能トイレ14内の状況が変わる度に待ち受け状態を切り替える。ドア制御器54は待ち受け状態に応じて開センサ38i,38o、及び閉センサ40i,40oの出力の有効又は無効を切り替える。
【0022】
【表1】
表1に示すように、複数の待ち受け状態は、引戸20が全閉状態にあり、かつ少なくとも開センサ38i及び38oの出力が有効である場合(第1待ち受け状態)、引戸20が開動作状態にあり、かつ少なくとも閉センサ40i及び40oの出力が有効である場合(第2待ち受け状態)、引戸20が閉動作状態にあり、かつ少なくとも開センサ38i及び38oの出力が有効である場合(第3待ち受け状態)、引戸20が全閉状態にあり、かつ開センサ38iの出力が有効である場合(第4待ち受け状態)、及び引戸20が閉動作状態にあり、かつ開センサ38iの出力が有効である場合(第5待ち受け状態)を含む。本実施形態では、第1待ち受け状態、第2待ち受け状態、及び第3待ち受け状態においては、多機能トイレ14は未使用状態にあると推定されるものとする。本実施形態では、第4待ち受け状態及び第5待ち受け状態においては、多機能トイレ14は使用状態にあると推定されるものとする。
【0023】
ドア制御器54は、出力された直前の指令に基づいて多機能トイレ14が使用状態にあるのか、未使用状態にあるのかを推定する。つまり、ドア制御器54は、多機能トイレ14が使用状態にあるのか、未使用状態にあるのかを推定する推定部としても機能する。具体的には、ドア制御器54は、直前の操作が、複数の待ち受け状態のうち多機能トイレ14が未使用状態となる待ち受け状態に移行するよう指示するものである場合には多機能トイレ14が未使用状態に移行したものと推定し、直前の操作が、複数の待ち受け状態のうち多機能トイレ14が使用状態となる待ち受け状態に移行するよう指示するものである場合には、多機能トイレ14が使用状態に移行したものと推定する。例えば、ドア制御器54は、第2待ち受け状態において閉センサ40oから閉指令が出力された場合、多機能トイレ14が未使用状態に移行したものと推定する。また、ドア制御器54は、引戸20が所定時間以上全開状態にある場合も、多機能トイレ14が未使用状態にあるものと推定する。一方で、例えば、ドア制御器54は、第1待ち受け状態において閉センサ40iから閉指令が出力された場合、ドア制御器54は多機能トイレ14が使用状態に移行したものと推定する。
【0024】
表1中に記載されている「1へ」、「2へ」等とは、行の先頭に記載されたセンサから指令が出力された場合に、ドア制御器54が待ち受け状態を該当する番号の待ち受け状態に移行させることを意味する。例えば、第1待ち受け状態にあるときに開センサ38iから指令が出力された場合、ドア制御器54は引戸20を駆動させると共に、待ち受け状態を第2待ち受け状態に移行させる。また、表1中に記載されている「無効」とは、当該待ち受け状態においては行の先頭に記載されたセンサの出力が無効にされていることを意味する。例えば、第1待ち受け状態では、閉センサ40oの出力が無効にされている。
【0025】
次に、各待ち受け状態について詳述する。
【0026】
〔第1待ち受け状態〕
第1待ち受け状態においてドア制御器54は、開センサ38i,38o及び閉センサ40iの出力を有効にする。多機能トイレ14が未使用状態であれば閉センサ40oから指令が出力されたとしても取り得る動作がないため、ドア制御器54は閉センサ40oの出力を無効にする。第1待ち受け状態において開センサ38iから指令が出力されるとドア制御器54は引戸20を開駆動させ、待ち受け状態を第2待ち受け状態に移行させる。通常、未使用状態では多機能トイレ14内に利用者がいないが、利用者の有無の推定に誤りが発生したりする可能性もある。したがって、利用者の閉じ込めを防止するために第1待ち受け状態において開センサ38iから指令が出力されるとドア制御器54は、引戸20を開駆動させる。
【0027】
第1待ち受け状態において閉センサ40iから開指令が出力されると、ドア制御器54は引戸20を全閉状態に維持したまま、待ち受け状態を第4待ち受け状態に移行させる。第1待ち受け状態において閉センサ40iから指令が出力されるということは多機能トイレ14内に人がいると考えられるため、ドア制御器54は待ち受け状態を第4待ち受け状態に移行することで、引戸20が全閉状態にあり、多機能トイレ14が使用状態にあるものと推定する。
【0028】
第1待ち受け状態において開センサ38oから開指令が出力されると、ドア制御器54は引戸20を開状態に向けて駆動させ、待ち受け状態を第2待ち受け状態に移行させる。第1待ち受け状態において開センサ38oから指令が出力される場面としては、多機能トイレ14が未使用状態にあり、室外の利用者が多機能トイレ14を利用しようとしている場面がある。
【0029】
〔第2待ち受け状態〕
第2待ち受け状態においてドア制御器54は、閉センサ40i,40oの出力を有効にする。開動作状態において開センサ38i,38oから指令が出力されたとしても取り得る動作がないため、ドア制御器54は開センサ38i,38oの出力を無効にする。
【0030】
第2待ち受け状態において閉センサ40iから閉指令が出力されるとドア制御器54は引戸20を逆駆動させて閉駆動させ、待ち受け状態を第5待ち受け状態に移行させる。第2待ち受け状態では多機能トイレ14は未使用状態にあるはずであるが、閉センサ40iから指令が出力された場合、ドア制御器54は引戸を閉じ、多機能トイレ14が使用状態にあるものと推定する。
【0031】
第2待ち受け状態において閉センサ40oから閉指令が出力されるとドア制御器54は引戸20を閉駆動させ、待ち受け状態を第3待ち受け状態に移行させる。第2待ち受け状態において閉センサ40oに閉指令が出力される場面としては、利用者が多機能トイレ14を利用しようとして例えば開センサ38oを操作したが、途中で使用するのを辞めて閉センサ40oを操作した場面がある。
【0032】
〔第3待ち受け状態〕
第3待ち受け状態においてドア制御器54は、開センサ38i,38oの出力を有効にする。多機能トイレ14が閉動作中であれば閉センサ40i,40oから指令が出力されたとしても取り得る動作がないため、ドア制御器54は閉センサ40i,40oの出力を無効にする。引戸20が全閉状態になるとドア制御器54は、待ち受け状態を第1待ち受け状態にする。
【0033】
第3待ち受け状態において開センサ38iから開指令が出力されるとドア制御器54は引戸20を逆駆動させて開駆動させる。これにより、多機能トイレ14は未使用状態のまま、引戸20が開駆動状態となる。また第3待ち受け状態において開センサ38oから開指令が出力された場合も同様に、ドア制御器54は引戸20を逆駆動させて開駆動させる。これにより、多機能トイレ14は未使用状態のまま、引戸20が開駆動状態となる。
【0034】
〔第5待ち受け状態〕
第4待ち受け状態においてドア制御器54は、開センサ38iの出力を有効にし、開センサ38o及び閉センサ40i,40oの出力を無効にする。多機能トイレ14が使用状態にあり、引戸20が全閉状態にある場合は、室内にある開センサ38iのみが作動している状態にする必要があるからである。
【0035】
第4待ち受け状態において開センサ28iから開指令が出力されると、ドア制御器54は待ち受け状態を第2待ち受け状態に移行させる。
【0036】
〔第5待ち受け状態〕
第5待ち受け状態においてドア制御器54は、第4待ち受け状態と同様に、開センサ38iの出力を有効にして開センサ38o及び閉センサ40i,40oの出力を無効にする。第5待ち受け状態において開センサ38iから開指令が出力された場合の制御は、第4待ち受け状態における制御と同一である。
【0037】
ドア制御器54は、引戸20の状態に応じて自身の待ち受け状態を逐次変更する。また、ドア制御器54は待ち受け状態に応じて間接的に多機能トイレ14の使用状態を判断する判断部としても機能する。
【0038】
ドアコントローラ56は、保護センサ48の検知結果、補助光電センサ42の検知結果、及びドア制御器54からの駆動指令に基づいて引戸20の駆動源となるモータ60を制御する。ドアコントローラ56は、ドア制御器54を介して開閉センサ38,40からの出力を受け取り、引戸20を施錠するための電気錠62を制御する。
【0039】
ドア制御器54及びドアコントローラ56は、一体として自動ドア装置10の制御部を構成する。ドア制御器54及びドアコントローラ56は、同一のハードウェア及びソフトウェアにより構成されてもよいし、別々のハードウェア及びソフトウェアにより構成されてもよい。例えば一般的な建物の出入口用の自動ドア装置を多機能トイレの自動ドア装置として転用する場合、一般的な建物の出入口用の自動ドア装置に対してドア制御器54及び指令出力部36を追加することで自動ドア装置10を構成してもよい。
【0040】
報知部58は、利用者を含む自動ドア装置10の周囲にいる人に向けて所定の通知をする。報知部58としては、聴覚的に人に通知を行うスピーカー、視覚的に人に通知をする電光掲示板等を用いることができる。報知部58から出力される通知は、予め決定された複数種類の通知の中から、ドア制御器54が状況に応じて選択した通知である。このような通知としては、開閉センサ38,40から出力された指令内容が不明確である旨の通知、引戸20が駆動する旨の通知、引戸20の操作方法のガイダンス、室内で異常が発生した旨の通知等がある。
【0041】
本実施形態では図3に示す各構成のうち、ドアコントローラ56、ドア制御器54、モータ60、保護センサ48、及び報知部58は無目22内に内蔵されている。各構成は無目22内に内蔵される必要はなく、ドア制御器54を指令出力部36と共に壁内に埋め込んだり、報知部58を室内の壁に固定したりする等、様々な配置が想定される。
【0042】
次に、自動ドア装置10の基本的な動作について説明する。
【0043】
多機能トイレ14の室内に人がいない状態では、自動ドア装置10は引戸20を全閉状態に維持する。このときドア制御器54の待ち受け状態は、第1の待ち受け状態となる。利用者が引戸20の室外側に到着して室外側指令出力部36oの開センサ38oに手を近付けると、開センサ38oはドア制御器54に対してON信号を出力する。ドア制御器54は、開センサ38oからON信号を受け取るとドアコントローラ56に対して引戸20を開くよう開駆動指令を供給する。ドアコントローラ56は、開保護センサ52により開検知エリアA4内に人又は物が存在しないことを確認し、モータ60を駆動して引戸20を全閉状態から全開状態に通常運転で移行させる。このときドア制御器54の待ち受け状態は、第2の待ち受け状態となる。ドアコントローラ56は引戸20が全開状態になるまで引戸20を駆動し続ける。これにより出入口16が全開状態になり利用者は室内に入れるようになる。入室後、利用者が室内側指令出力部36iの閉センサ40iに手を近付け、ドア制御器54が、閉センサ40iからON信号を受け取るとドア制御器54はドアコントローラ56に対して引戸20を閉じるよう閉駆動指令を供給する。ドアコントローラ56は、室内側閉保護センサ50i及び室外側閉保護センサ50oにより室内側閉検知エリアA3及び室外側閉検知エリアA2内に人又は物が存在しないことを確認し、かつ補助光電センサ42により補助検知エリアA1内に人又は物が存在しないことを確認した上でモータ60を駆動して引戸20を全開状態から全閉状態に通常運転により移行させる。このときドア制御器54の待ち受け状態は、第5の待ち受け状態となる。利用者が多機能トイレ14を使用中、ドア制御器54は引戸20を全閉状態に維持する。このときドア制御器54の待ち受け状態は、第4の待ち受け状態となる。利用者が多機能トイレ14から出るために開センサ38iに手を近付けると、開センサ38iはドア制御器54に対してON信号を出力する。ドア制御器54は、開センサ38oからON信号を受け取るとドアコントローラ56に対して引戸20を開くよう開駆動指令を供給する。ドアコントローラ56は、開保護センサ52により開検知エリアA4内に人又は物が存在しないことを確認し、モータ60を駆動して引戸20を全閉状態から全開状態に通常運転で移行させる。このときドア制御器54の待ち受け状態は、第2の待ち受け状態となる。
【0044】
〔第1運転方式〕
次に、実施形態による自動ドア装置10の第1運転方式について詳述する。なお、以下では第1運転方式の有益性を説明するために第1運転方式を行わない場合の問題点について先に説明する。このとき説明の便宜上、図1乃至図3を用いて説明した自動ドア装置10を用いるものとする。
【0045】
図4及び図5は、自動ドア装置の指令出力部の概略図を示す。図4は、一例として室外側指令出力部36oを示す。図4に示すように、利用者が正確に開センサ38oの検知エリアA5にのみ手を入れて開センサ38oのみから開指令を出力できれば、引戸20は利用者の意図通りに作動する。しかしながら、利用者は開センサ38oの検知エリアA5を視覚的に確認するのは困難である。また非接触型指令出力部の場合、接触型指令出力部とは異なりボタンからの抵抗のような利用者へのフィードバックがないため、検知エリアA5内に手が入ったことを触覚的に認識することも困難である。また図5に示すように、利用者の手が検知エリアA5に入っており、かつ利用者の腕が開センサ38oに近接する閉センサ40oの検知エリアA6に入っている場合も生じ得るが、利用者がこれを視覚的又は触覚的に認識するのは困難である。つまり非接触型指令出力部を自動ドア装置に適用した場合、図5に示すように室外側指令出力部36oに対して、開センサ38o及び閉センサ40oの操作が同時に行われることが想定される。このとき非接触型指令出力部の操作に対応する指令を全て実行するよう引戸20を制御しようとすると、引戸20が開方向及び閉方向の間で往復動を続けたり、利用者の意図しない方向へ引戸20が動いたりする等の現象が発生する。これは、室内側又は室外側のいずれかにある両方のセンサの出力が有効な待ち受け状態において、利用者が意図した操作を行った後、利用者が意図していない操作が行われてしまうと、最初の操作により待ち受け状態が移行することで発生する。最初の操作により待ち受け状態が移行すると、後の操作が有効になってしまうことがあり、引戸20が利用者の目的とする状態にはならないからである。
【0046】
一例として、ドア制御器54が第1の待ち受け状態にあり引戸20が非駆動状態にあるときに、利用者が開センサ38oに手をかざそうとして、利用者の手及び腕が開センサ38oの検知エリアA5及び閉センサ40oの検知エリアA6の両方に同時に入ることが想定される。非駆動状態とは、引戸20の現在位置に関わらず、引戸20に駆動力又は制動力が付与されていない状態をいう。非駆動状態としては、自動ドア装置の電源入れた直後でスタンバイの状態にあるとき、全開状態で待機中で操作待ちの状態、及び全閉状態で電気錠がかかった状態がある。なお、離れた位置にある検知エリアA5及び検知エリアA6内に誤差が無く同時に手及び腕が入ることは実際には考えられないため、ここでいう同時とはある程度の誤差(例えば0.5ms)をもって手が検知エリアA5に入り、その後、腕が検知エリアA6内に入るものとする。この場合、検知エリアA5内で手が最初に検知されるため開センサ38oからドア制御器54にON信号が供給され、その直後に閉センサ40oからドア制御器54にON信号が供給される。一般的な自動ドア装置10は、最新の操作(後の操作)に従うよう構成されている場合が多いため、一般的な自動ドア装置10は、引戸20を開駆動させた直後に引戸20を閉駆動させ、最終的に引戸20は全閉状態となる。通常、利用者は閉センサ40oの検知エリアA6に腕を入れたという自覚がないため、利用者には引戸20が開かない理由が分からないこととなる。この問題は、指令出力部36の2つのセンサ(開センサ38及び閉センサ40)の出力が有効になっている第1待ち受け状態において生じ得る。
【0047】
図6は、第1運転方式におけるドア制御器の一連の処理を示すフロー図である。以下の説明では、開センサ38iの検知エリアA5に利用者の手等が入った後、閉センサ40iの検知エリアA6に利用者の手等が入ったものとして詳細な説明をする。
【0048】
一連の処理が開始すると、ステップS1においてドア制御器54は、一方のセンサのON信号を受信する。この例では、閉センサ40iからON信号を受け取る。
【0049】
ステップS2においてドア制御器54は、他方のセンサからON信号が既に供給されているか否かを判断する。この例ではドア制御器54は、閉センサ40iからのON信号が供給される前に、開センサ38iからON信号が供給されているか否かを判断する。
【0050】
ステップS2において開センサ38iからもON信号が既に供給されていると判断した場合(ステップS2のYes)、ステップS3においてドア制御器54は他方のセンサからON信号を供給された時間が1秒以上前であるか否かを判断する。この例では、開センサ38iからON信号を供給された時間が、閉センサ40iからON信号を供給された時間よりも1秒以上前であるかを判断する。
【0051】
開センサ38iからON信号を供給された時間が、閉センサ40iからON信号を供給された時間よりも1秒以上前である場合(ステップS3のYes)、ステップS4においてドア制御器54は他方のセンサからのON信号にしたがって引戸20を駆動する。この例では、ドア制御器54は閉センサ40iから出力された閉指令にしたがって引戸20を閉駆動させる。
【0052】
開センサ38iからON信号を供給された時間が、閉センサ40iからON信号を供給された時間よりも1秒以上前でない場合(ステップS3のNo)、ステップS5においてドア制御器54は、1秒以内に両方のセンサからON信号が供給されたため供給された2つのON信号をOFF信号とみなし、引戸20の現在の状態を維持する。この例では、ドア制御器54は開センサ38i及び閉センサ40iから供給されたON信号をOFF信号とみなして処理する。これにより、引戸20が現在の状態を維持する。次いでステップS6においてドア制御器54は、報知部58を介して所定のメッセージを報知する。この場合、ドア制御器54は、報知部58を介して利用者の意図が把握できないため引戸20を駆動させていない旨、再び開センサ38i又は閉センサ40iに手を近付ける旨、手を近付ける角度又は向きに注意する旨等のアナウンスを利用者に対してアナウンスする。これにより、利用者に再び操作をするよう促せる。
【0053】
ステップS2において、現時点では開センサ38iからON信号が供給されていないと判断した場合(ステップS2のNo)、ステップS7においてドア制御器54は一方のセンサからON信号を受信してから1秒以上経過したか否かを判断する。この例では、ドア制御器54は閉センサ40iからON信号を受信してから1秒以上経過したか否かを判断する。ドア制御器54が1秒以上経過していないと判断した場合(ステップS7のNo)、ドア制御器54はステップS2以降の処理を繰り返す。ドア制御器54が1秒以上経過したと判断した場合(ステップS7のYes)、ステップS8においてドア制御器54は一方のセンサからのON信号にしたがって引戸20を制御する。
【0054】
以上のように第1運転方式によれば、2つの指令がほぼ同時(1秒以内)に出力された場合、利用者の意図が不明であるため、少なくとも利用者の意図しない動作を行わないよう2つの信号を無視する。これにより、利用者の意図しない方向に引戸20が駆動するのを防止できる。
【0055】
以上のように第1運転方式によれば、2つの異なる指令が出力された場合に、少なくとも利用者の意図しない方向に引戸20が動くのを防止できる。
【0056】
〔第2運転方式〕
次に、実施形態による自動ドア装置10の第2運転方式について詳述する。図5を参照して、ドア制御器54が第1の待ち受け状態にあるときに利用者が開センサ38oに手をかざそうとして、利用者の手及び腕が開センサ38oの検知エリアA5及び閉センサ40oの検知エリアA6の両方に入った場合について説明する。なお、利用者は手及び腕が検知エリアA5及び検知エリアA6に入っていることに気付かず、そのまま手及び腕を動かさないものとする。この場合、有効な開センサ38oからドア制御器54にON信号が供給される。これによりドア制御器54は待ち受け状態を第2待ち受け状態に移行させ、かつ引戸20を開駆動させる。待ち受け状態が第1待ち受け状態から第2待ち受け状態に移行するとき、第1待ち受け状態では無効とされていた閉センサ40oの出力が有効になり、開センサ38oの出力が無効になる。閉センサ40oの出力が有効になると閉センサ40oはドア制御器54に対してON信号を供給する。これにより引戸が閉駆動する。これと同時にドア制御器54は待ち受け状態を第4待ち受け状態に移行させる。第4待ち受け状態においては、第2待ち受け状態に移行したときに無効にされた開センサ38oの出力が再び有効になり、閉センサ40oの出力が無効になる。開センサ38oの出力が再び有効になると開センサ38oはドア制御器54に対してON信号を供給する。これにより引戸20が再び開駆動する。このように、特定の場合には利用者が検知エリアA5,A6に手を入れている間、第2待ち受け状態と第4待ち受け状態との間での無限ループが発生するおそれがある。
【0057】
第2運転方式では、自動ドア装置10は、以下の制御により上述した無限ループの発生を防止する。簡潔に説明すると第2運転方式では、引戸20の駆動中に開センサ38o及び閉センサ40oの両方の操作が行われて2つの異なる指令が出力された場合、一方の指令を無視することで無限ループを防止する。
【0058】
図7は、第2運転方式におけるドア制御器の一連の処理を示すフロー図である。以下の説明では、第3待ち受け状態において開センサ38oから指令が出力されて、ドア制御器54の待ち受け状態は第2待ち受け状態にあるものとする。
【0059】
ステップS11においてドア制御器54は、有効なセンサの信号がON信号になったか否かを判断する。この例では、現在の第2待ち受け状態において閉センサ40oからドア制御器54にON信号が供給されているか否かを判断する。有効なセンサの信号がON信号になっている場合(ステップS11のYes)、ステップS12においてドア制御器54は有効なセンサからのON信号にしたがって引戸20を駆動させる。この例では、第2待ち受け状態において有効な閉センサ40oからON信号が供給されている場合、ドア制御器54は引戸20を閉駆動させる。これと同時にドア制御器54は待ち受け状態を第3待ち受け状態に移行させる。
【0060】
ステップS11において無効にされたセンサの信号がONになっていると判断した場合(ステップS11のNo)、ステップS13においてドア制御器54は、無効なセンサの信号が現在の待ち受け状態になってからON状態になったか否かを判断する。つまり、現在の第2待ち受け状態で有効なセンサ及び無効なセンサの両方の信号がON信号になっていると判断した場合(ステップS11のNo)、ドア制御器54は、ステップS13で無効なセンサの信号がON状態になった時期を判断する。この例では、ドア制御器54は、第2待ち受け状態において無効な開センサ38oが、第2待ち受け状態に移行する前(つまり第3待ち受け状態であったとき)にON状態になったのか、第2待ち受け状態に移行した後にON状態になったのかを判断する。
【0061】
ステップS13においてドア制御器54は、有効なセンサの信号が現在の待ち受けモードに状態に移行してからON状態になったと判断した場合(ステップS13のYes)、ドア制御器54はステップS12以降の処理を実行する。この例では、第2待ち受け状態において無効な開センサ38oが、第2待ち受け状態に移行した後にON状態になったとして、第2待ち受け状態においては本来的に無効な開センサ38oからの指令を無視する。したがってドア制御器54は、第2待ち受け状態において有効な閉センサ40oからの指令にしたがって引戸20を閉駆動させ、待ち受け状態を第3待ち受け状態に移行させる。
【0062】
ドア制御器54は、現在駆動している方向とは反対向きに引戸20を逆駆動させてもよい。引戸20を逆駆動させるとは、全開状態に向かって開方向に駆動している引戸20を閉方向に駆動させること、又は全閉状態に向かって閉方向に駆動している引戸20を開方向に駆動させることをいう。例えば、利用者が第3待ち受け状態において無効な閉センサ40o及び有効な開センサ38oに手をかざし、手の位置をそのまま保持したとする。この場合、ドア制御器54は開センサ38oからの信号がON信号になったことに応じて引戸20を開駆動させ、待ち受け状態を第2待ち受け状態に移行させる。この間、利用者が手の位置を保持し続けると、第2待ち受け状態に移行したときに有効になった閉センサ40oからの信号がON信号となる。また、第2待ち受け状態に移行したときに無効になった開センサ38oからの信号もON信号となるが、ステップS13の処理を実施することで、第3待ち受け状態時には有効であり、第2待ち受け状態時には無効になった開センサ38oからのON信号をOFF信号とみなす。一方で、例えば第3待ち受け状態において利用者が引戸20を開こうとして開センサ38oのみに手をかざし、すぐに手を検知エリアA5外に出したとする。この場合、ドア制御器54は開センサ38oから出力された指令にしたがって引戸20を開駆動し、第2待ち受け状態に移行する。その状態で利用者があわてて引戸20を閉じようとして、手を開センサ38oの検知エリアA5及び閉センサ40oの検知エリアA6に入れてしまうことが考えられる。この場合、ステップS14の処理をすることで、待ち受け状態が移行する前後で手を移動させていないだけなのか、利用者が改めて引戸20を逆転させる操作を行ったのかを区別できる。また、利用者があわてて引戸20を逆方向に駆動させようとし手を両方の検知エリアA5,A6に入れてしまった場合に、利用者は引戸20を逆駆動させる意図をもっているとみなし、利用者の意図にしたがって引戸20を逆駆動させられる。
【0063】
一方で無効なセンサの信号が現在の待ち受け状態になってからON状態になっていない(つまり、現在の待ち受け状態になる前からON状態になっていた)と判断した場合(ステップS13のNo)、ステップS14においてドア制御器54は有効なセンサからのON信号をOFF信号とみなして処理する。この例では、第2待ち受け状態において有効な閉センサ40oからのON信号をOFF信号とみなす。このとき引戸20は開駆動中であるため、閉センサ40oからのON信号をOFF信号とみなすことで、引戸20は開駆動し続ける。つまりステップS13においてドア制御器54は、待ち受け状態が移行するきっかけとなった指令が、待ち受け状態を移行した後も利用者の意図と無関係に出力され続けているのか否かを判断する、とも言える。これにより、待ち受け状態が移行する前後で利用者が手を同じ位置に保持し続けても、第2待ち受け状態と第3待ち受け状態との間で待ち受け状態がループし続けるのを防止できる。
【0064】
以上のように第2運転方式によれば、ステップS11、ステップS12、ステップS14、及びステップS15の処理により待ち受け状態がループし続けるのを防止できる。
【0065】
また、第2運転方式によれば、引戸20を閉駆動又は開駆動している最中に利用者が、有効なセンサの検知エリアA5,A6に手を入れれば引戸20を逆駆動させられる。この場合、利用者の手が無効なセンサの検知エリアA5,A6に入ったとしても、ステップS14において無効なセンサがONになった時期を判断することで引戸20を逆駆動させられる。
【0066】
また、引戸20が逆駆動を開始しても利用者が検知エリアA5,A6から手を出さないことも考えられる。しかしながら、利用者が逆駆動後も検知エリアA5,A6から手を出していない状態でドア制御器54が図7の一連の処理を開始しても、ステップS14の処理により、逆駆動する前から出力され続けている指令に基づいて引戸20を駆動しないこととなる。したがって、引戸20を逆駆動させ始めた後は、引戸20を逆駆動させる前から出力され続けている指令を無視できる。これにより、利用者の意図に反して引戸20がさらに逆駆動するのを防止できる。
【0067】
第1運転方式と第2運転方式を組み合わせることもできる。図8は、第1運転方式と第2運転方式を組み合わせた一連の処理のフロー図である。
【0068】
一連の処理が開始すると、ステップS31においてドア制御器54は、現在の待ち受け状態において閉センサ40及び開センサ38の両方が有効な状態にあるのか否かを判断する。ここでいう両方が有効であるとは、外側又は内側のいずれかの指令出力部36において、開センサ38i及び閉センサ40iが有効であるか、開センサ38o又は閉センサ40oが有効であることをいう。つまりステップS31においてドア制御器54は、現在の待ち受け状態が第1待ち受け状態であるか否かを判断しているとも言える。
【0069】
ステップS31において現在の待ち受け状態において閉センサ40及び開センサ38の両方が有効な状態にあると判断した場合(ステップS31のYes)、ステップS32においてドア制御器54は第1運転方式にしたがってステップS1乃至S8の処理を実行する。一方で、ステップS31において現在の待ち受け状態において閉センサ40及び開センサ38の両方が有効な状態にないと判断した場合(ステップS31のNo)、ステップS33においてドア制御器54は第2運転方式にしたがってステップS11乃至S15の処理を実行する。
【0070】
このように、現在の待ち受け状態に応じて第1運転方式と第2運転方式を組み合わせることもできる。
【0071】
第1実施形態の変形例として、ドア制御器54は無効なセンサの検知エリアA5,A6に手が入ったときに、引戸20の現在の状態を維持し、かつ報知部58を介してその旨を利用者に報知してもよい。つまり、変形例による自動ドア装置10は、現在の待ち受け状態において無効な検知エリアA5,A6に利用者の手が入った場合、引戸20を駆動し始めたり、逆駆動させたりしない。ドア制御器54は、無効なセンサの検知エリアA5,A6のみに手が入っている場合、及び無効なセンサの検知エリアA5,A6と有効なセンサの検知エリアA5,A6の両方に手が入っている場合に、無効なセンサの検知エリアA5,A6に手が入っていると判断する。この場合、自動ドア装置10は利用者に対して少なくとも、無効な検知エリアA5,A6に手が入っている旨、又は手を検知エリアA5,A6から離して再度所望の検知エリアA5,A6に手をかざす旨を報知する。このような構成によっても、非接触型指令出力部を自動ドア装置に適用したときに引戸20が利用者の意図しない方向に駆動するのを防止できる。
【0072】
更なる変形例として、検知エリアA5,A6が有効か無効かに関わらず、2つの検知エリアA5,A6に手が入っている場合、ドア制御器54は報知部58を介してその旨を利用者に報知してもよい。つまり、2つの検知エリアA5,A6に手が入っている場合、手が検知エリアA5,A6に入った時期にかかわらず、ドア制御器54は常に引戸20の現在の状態を維持し、2つの検知エリアA5,A6に手が入っている旨を利用者に報知する。この構成によっても、利用者の意図しない方向に引戸20が駆動するのを防止できる。
【0073】
更なる変形例として、第2運転方式において、ドア制御器54は、有効なセンサの信号がON信号になった後、当該有効なセンサを含めて全てのセンサから指令が出力されなくなるまでは、いずれのセンサからの指令も無視するようにしてもよい。つまり、2つの検知エリアA5,A6に手が入っている場合、第2待ち受け状態に移行して閉センサ40oの出力が有効になり、開センサ38oの出力が無効になっても、ドア制御器54は、検知エリアA5,A6の双方が非検知になるまでは有効な閉センサ40oのON信号に基づく引戸20の閉駆動を行わず、検知エリアA5,A6の双方が非検知になった後に、有効な閉センサ40oのON信号の供給があったときに引戸20を閉駆動させる。この構成によっても、利用者の意図しない方向に引戸20が駆動するのを防止できる。
【0074】
〔第2実施形態〕
次に、第2実施形態について説明する。図9は、第2実施形態による自動ドア装置のブロック図である。第2実施形態による自動ドア装置100は、自動ドア装置10の構成に加えて接触型の指令出力部を備える。なお自動ドア装置100のその他の構成は、自動ドア装置10の構成と同一であるため詳細な説明を省略する。
【0075】
具体的には自動ドア装置100は、接触型の指令出力部として、室外側の開ボタン102o及び閉ボタン104oと、室内側の開ボタン102i及び閉ボタン104iとを備える。以下、本明細書において、開ボタン102o、閉ボタン104o、室内側の開ボタン102i、及び閉ボタン104iを総称して、「開閉ボタン102,104」ということがある。開ボタン102o及び閉ボタン104oは、室外側指令出力部36oに接続され、開ボタン102o又は閉ボタン104oが押されるとボタンに対応する開指令又は閉指令をドア制御器54に供給する。開ボタン102i及び閉ボタン104iは、室内側指令出力部36iに接続され、開ボタン102i又は閉ボタン104iが押されるとボタンに対応する開指令又は閉指令をドア制御器54に供給する。開ボタン102o、閉ボタン104o、開ボタン102i、及び閉ボタン104iからの指令は常に有効な状態とされる。
【0076】
自動ドア装置100は、非接触型の指令出力部から出力された指令に対して、接触型の指令出力部から出力された指令を優先して引戸20を制御する。例えば、利用者が開センサ38oに手をかざしてドア制御器54が引戸20を開駆動させている最中に、利用者が閉ボタン104oを押したとする。この場合、ドア制御器54は引戸20の状態や待ち受け状態に関わらず閉ボタン104oから出力された指令にしたがって引戸20を閉駆動させる。なお、閉ボタン104oに閉指令が出力されたときに室外側閉検知エリアA2、又は室内側閉検知エリアA3内で人又は物が検知された場合、ドア制御器54は引戸20を停止させてもよい。
【0077】
自動ドア装置100は、一旦、開閉ボタン102,104に開指令又は閉指令が出力されると、引戸20が全閉又は全開状態になるまで開センサ38及び閉センサ40の出力を無効にする。利用者が開閉ボタン102,104を操作した場合、利用者は開センサ38又は閉センサ40の検知エリアA5,A6に気を配らない可能性がある。この場合、利用者が意図せず検知エリアA5,A6内に手又は物を入れてしまい、これにより引戸20が利用者の意図しない方向に駆動することが考えられる。したがって開閉ボタン102,104が操作された結果、開指令又は閉指令が出力された場合、開センサ38及び閉センサ40の出力を一時的に無効にすることにより、利用者が無意識に開センサ38及び閉センサ40の検知エリアA5,A6に手又は物を入れたことによる引戸20の誤作動を防止できる。
【0078】
自動ドア装置100は、一旦、開閉ボタン102,104に開指令又は閉指令が出力されると、多機能トイレ14が未使用状態になったと推定されるまで開センサ38及び閉センサ40の出力を無効にしてもよい。例えば、利用者が開センサ38oを操作した結果、開指令が出力されて引戸20を開き多機能トイレ14に入室して、その後閉ボタン104iを押して引戸20を閉じたとする。この場合、その利用者は非接触型の開センサ38及び閉センサ40ではなく、接触型の開閉ボタン102,104を好む傾向にあると考えられる。この場合、利用者が開センサ38及び閉センサ40の検知エリアA5,A6の存在に気を配らないことも考えられ、利用者が意図せず検知エリアA5,A6に手又は物を入れてしまい引戸20が利用者の意図に反して駆動する可能性がある。したがって、ドア制御器54は、多機能トイレ14が未使用状態になるまで開センサ38及び閉センサ40の出力を無効にしてドア制御器54が開閉ボタン102,104からの指令のみに基づいて引戸20を駆動させる。これにより、利用者の意図に反して引戸20が駆動する可能性を減らせる。
【0079】
自動ドア装置100は、利用者が開センサ38又は閉センサ40を適切に操作できていない場合に、開閉ボタン102,104による操作をするよう促してもよい。この場合、ドア制御器54は多機能トイレ14が未使用状態のときに開閉ボタン102,104の操作が開始されてからの経過時間を計測する。ドア制御器54は、例えば所定時間(例えば1分)経過しても多機能トイレ14が使用状態になり、かつ引戸20が全閉状態になっていなければ、開閉ボタン102,104による操作をするよう報知部58を介して報知する。
【0080】
以上のよう自動ドア装置100によっても、利用者の意図しない方向に引戸20が駆動するのを防止できる。
【0081】
〔第3実施形態〕
以下、本発明の第3実施形態について詳述する。第3実施形態による自動ドア装置は、第2実施形態による自動ドア装置と同一のハードウェアにより実現される。したがって以下では図9図2、及び図3を参照しながら詳細な説明をする。第3実施形態による自動ドア装置は、開センサ38及び閉センサ40として静電容量式センサを用いることにより顕著な作用効果を生じさせる。
【0082】
第3実施形態による自動ドア装置は、引戸20の状態に応じて予め決定されたセンサの出力を無効にする。これにより、他の操作を行えなくなるのを防ぐ。表2は、引戸20の状態と、センサの出力の状態(有効又は無効)との関係を示す。
【表2】
【0083】
表2中、「停止中」とは引戸20が全開状態と全閉状態との間で停止していることを示す。表2のセンサとは、室内側の開センサ38i及び閉センサ40iのみ、室外側の開センサ38o及び閉センサ40o、又は室内外両方の開センサ38及び閉センサ40を示す。なお、開閉ボタン102,104が設けられている場合、開閉ボタン102,104の出力は常時有効になっているものとする。したがって、引戸20の状態に関わらず、開閉ボタン102,104を操作した結果出力された指令は常に有効とされ、自動ドア装置は開閉ボタン102,104から出力された指令に基づいて引戸20を駆動させる。
【0084】
引戸20が何らかの原因により停止中である場合、ドア制御器54は開センサ38及び閉センサ40の両方の出力を有効にする。これにより、操作者は、開センサ38及び閉センサ40のいずれかを操作して引戸20を操作できる。
【0085】
開センサ38及び閉センサ40として静電容量式センサを用いている場合、引戸20が停止中であるときに、静電容量の変化量がより多いセンサからの指令に基づいて制御をするようにしてもよい。
【0086】
引戸20が全閉状態で待機している場合、開センサ38の出力が有効にされ、閉センサ40の出力は無効にされている。また引戸20が全開状態で待機している場合、開センサ38の出力が無効にされ、閉センサ40の出力は有効にされている。つまり、引戸20を現在の状態に移行させるために用いられるセンサの出力が無効にされている。
【0087】
一般的な自動ドア装置において、引戸が全閉状態にあるときに閉センサが操作され続けると、ドア制御器は他の操作を受け付けなくなる。したがって、例えば引戸20が全閉状態にあり、室外側の閉センサ40oの検知領域内に荷物が置かれているものとする。この場合、閉センサ40oから閉指令が出力され続けているため室内の利用者が開センサ38iを操作しても、ドア制御器54は引戸20を開制御しないこととなる。このような課題は、非接触式センサを用いた場合に生じ易くなる。一方で上記の場合に閉センサ40oの出力を無効にしておけば、室内の利用者が開センサ38iを操作することで開センサ38iから開指令が出力され、引戸20を開けるようになる。
【0088】
開センサ38及び閉センサ40として静電容量式センサを用いている場合、引戸20が全閉状態にあるときに閉センサ40の出力を無効にする代わりに、静電容量の変化量がより多いセンサからの指令に基づいて制御をするようにしてもよい。これにより、開センサ38iにより手を近付けて静電容量の変化を大きくすることで、閉センサ40oの状態に関わらず引戸20を開制御できるようになる。
【0089】
表2の説明に戻り、引戸20が全閉状態から全開状態に移行している開動作中は、開センサ38の出力が無効にされ、閉センサ40の出力が有効にされる。また引戸が全開状態から全閉状態に移行している閉動作中は、開センサ38の出力が有効にされ、閉センサ40の出力が無効にされる。つまり、引戸20が駆動している方向と同一の方向へ駆動させるためのセンサの出力が無効にされている。これにより、例えば引戸20の開駆動中に引戸20を閉駆動させる動作をより確実に行わせられる。
【0090】
別の観点で説明すると、第3実施形態では、引戸20を現在の状態に移行させるために用いられるセンサ又は引戸20が駆動している方向と同一の方向へ駆動させるためのセンサの操作状態に関わらず、他方のセンサが操作されたときに当該他方のセンサの操作にしたがって引戸20を駆動させる。
【0091】
このように第3実施形態によれば、引戸20の状態に応じて予め決定されたセンサの出力を無効することで、より利用者の意図に従った制御を行い易くできる。
【0092】
本開示は上述の実施形態に限られるものではなく、各構成は本開示の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0093】
本明細書で開示した実施形態のうち、複数の物体で構成されているものは、当該複数の物体を一体化してもよく、逆に一つの物体で構成されているものを複数の物体に分けることができる。一体化されているか否かにかかわらず、発明の目的を達成できるように構成されていればよい。
【0094】
また本明細書で開示した実施形態のうち、複数の機能が分散して設けられているもの(例えばドア制御器54とドアコントローラ56の機能)は、当該複数の機能の一部又は全部を集約して設けても良く、逆に複数の機能が集約して設けられているものを、当該複数の機能の一部又は全部が分散するように設けることができる。機能が集約されているか分散されているかにかかわらず、発明の目的を達成できるように構成されていればよい。
【0095】
第1及び第2実施形態の変形例として以下のものが想定される。
【0096】
第1又は第2の実施形態において、開センサ38又は閉センサ40が手を検知している間、報知部58を介して利用者にその旨を報知してもよい。この場合、検知エリアA5,A6内で有体物が検知されている間、音を流したり検知エリアA5,A6内で検知がなされている旨のアナウンスを流すことができる。これにより、利用者に対して検知エリアA5,A6内に手等が入っている旨を知らせることができる。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明は、自動ドア装置及び自動ドアの制御方法の分野において産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0098】
10 自動ドア装置, 14 多機能トイレ,20 引戸,36 指令出力部,38i 開センサ,38o 開センサ,40i 閉センサ,40o 閉センサ,54 ドア制御器,58 報知部,100 自動ドア装置,102i 開ボタン,102o 開ボタン,104i 閉ボタン,104o 閉ボタン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9