(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-02
(45)【発行日】2023-10-11
(54)【発明の名称】レーザ信号による光通信用の端末
(51)【国際特許分類】
H04B 10/118 20130101AFI20231003BHJP
H04B 10/67 20130101ALI20231003BHJP
【FI】
H04B10/118
H04B10/67
(21)【出願番号】P 2023504030
(86)(22)【出願日】2021-07-08
(86)【国際出願番号】 FR2021051261
(87)【国際公開番号】W WO2022018343
(87)【国際公開日】2022-01-27
【審査請求日】2023-03-14
(32)【優先日】2020-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517342903
【氏名又は名称】エアバス・ディフェンス・アンド・スペース・エスアーエス
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ベルソ,ポール
(72)【発明者】
【氏名】バーレ,アドリアン
【審査官】後澤 瑞征
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0078858(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第109150302(CN,A)
【文献】特表2017-512418(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 10/00 - 10/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ信号による光通信用の端末(100)であって、
検出面(S)内における行と列との交点に感光素子が配置された、マトリクスイメージセンサタイプの追尾および捕捉検出器(2)を備え、
前記端末(100)は、前記端末の使用中に、前記端末に対して外部にあるソース(200)によって発せられた第1レーザ信号を受信し、第2レーザ信号を外部の前記ソースに送信するように構成され、さらに、前記第1レーザ信号の一部と前記第2レーザ信号の一部とが、前記追尾および捕捉検出器(2)の前記検出面(S)に入射するように構成されており、
前記端末(100)は、前記端末の前記使用中に、前記第1レーザ信号の別の一部を、光ファイバ(1)の入力端部(E)を通じて前記光ファイバに注入するようにさらに構成されており、
前記端末は、前記使用中に、
較正放射と称される放射が、前記光ファイバ(1)内で導かれて前記光ファイバの前記入力端部(E)を通じて出、
前記光ファイバ(1)の前記入力端部(E)の像が、前記較正放射を用いて、前記追尾および捕捉検出器(2)の前記検出面(S)上に形成される
ように適合されており、
前記端末(100)は、少なくとも1つのスペクトルフィルタリング素子(22)をさらに備え、
少なくとも1つの前記スペクトルフィルタリング素子(22)は、少なくとも、前記追尾および捕捉検出器(2)の前記検出面(S)に到達する前記第2レーザ信号の前記一部と前記較正放射とが、少なくとも1つの当該スペクトルフィルタリング素子を通過するように配置されており、
少なくとも1つの前記スペクトルフィルタリング素子が前記第2レーザ信号の波長に対して有する透過率値は、前記追尾および捕捉検出器のスペクトル検出区間において前記較正放射に関して有効な少なくとも1つの前記スペクトルフィルタリング素子の平均透過率値よりも低い、端末(100)。
【請求項2】
前記第2レーザ信号の前記波長に対する少なくとも1つの前記スペクトルフィルタリング素子(22)の前記透過率値は、前記追尾および捕捉検出器の前記スペクトル検出区間において前記較正放射に関して有効な少なくとも1つの前記スペクトルフィルタリング素子の前記平均透過率値の100分の1未満で
ある、請求項1に記載の端末(100)。
【請求項3】
少なくとも1つの前記スペクトルフィルタリング素子(22)は、多層干渉タイプフィルタである、請求項1または2に記載の端末(100)。
【請求項4】
少なくとも1つの前記スペクトルフィルタリング素子(22)は、帯域阻止タイプフィルタであり、
少なくとも1つの前記スペクトルフィルタリング素子(22)は、
前記第2レーザ信号の前記波長が少なくとも1つの前記スペクトルフィルタリング素子の阻止区間の内にあり、かつ、
前記較正放射の少なくとも1つの波長が前記阻止区間の外にある
ように適合されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の端末(100)。
【請求項5】
少なくとも1つの前記スペクトルフィルタリング素子(22)は、前記第1レーザ信号の波長が前記阻止区間の外にあるようにさらに適合されている、請求項4に記載の端末(100)。
【請求項6】
前記端末は、前記端末の前記使用中に、外部の前記ソース(200)からのビーコン信号を受信するようにさらに構成されており、
前記端末は、前記ビーコン信号の一部が前記追尾および捕捉検出器(2)の前記検出面(S)に入射するように適合されており、
少なくとも1つの前記スペクトルフィルタリング素子(22)は、前記ビーコン信号の波長もまた前記阻止区間の外にあるようにさらに適合されている、請求項4または5に記載の端末(100)。
【請求項7】
前記第1レーザ信号の波長に対する感度を有し、かつ、前記入力端部(E)とは反対側にある前記光ファイバ(1)の出力端部に光学的に結合された受信光検出器(11)であって、前記端末(100)が受信する前記第1レーザ信号に応じた受信電気信号を生成する受信光検出器(11)と、
前記第1レーザ信号に対して有効であり、かつ、前記光ファイバ(1)の前記入力端部(E)と前記受信光検出器(11)との間における前記第1レーザ信号の前記別の一部の光路上に位置する光増幅器(3)と、
をさらに備え、
前記光増幅器(3)は、前記端末(100)の前記使用中に、増幅された自然放出放射を生成し、
増幅された前記自然放出放射の一部は、前記光ファイバ(1)の前記入力端部(E)を通じて出ることによって、前記較正放射を構成している、請求項1~6のいずれか一項に記載の端末(100)。
【請求項8】
前記端末の前記使用中に、
前記第1レーザ信号の前記波長が、1540nm~1545nmであり、
前記第2レーザ信号の前記波長が、1550nm~1555nmであり、かつ、
前記較正放射のスペクトル範囲が、1530nm~1560nmに及ぶ区間を含む
ように適合されている、請求項1~7のいずれか一項に記載の端末(100)。
【請求項9】
前記端末の前記使用中に、
前記第1レーザ信号の前記波長が、1540nm~1545nmであり、
前記第2レーザ信号の前記波長が、1550nm~1555nmであり、かつ、
前記較正放射のスペクトル範囲が、1530nm~1560nmに及ぶ区間を含む
ように適合されており、
少なくとも1つの前記スペクトルフィルタリング素子(22)の前記阻止区間は
、1550nm
~1575nmである、請求項4に記載の端末(100)。
【請求項10】
前記端末の前記使用中に、
前記第1レーザ信号の前記波長が、1540nm~1545nmであり、
前記第2レーザ信号の前記波長が、1550nm~1555nmであり、かつ、
前記較正放射のスペクトル範囲が、1530nm~1560nmに及ぶ区間を含む
ように適合されており、
前記端末の前記使用中に、
前記ビーコン信号の前記波長が、1580nm~2000nmである
ようにさらに適合されている、請求項6に記載の端末(100)。
【請求項11】
レーザ信号による光通信用の端末(100)を設ける工程、
ここで、当該端末(100)は、検出面(S)内における行と列との交点に感光素子が配置された、マトリクスイメージセンサタイプの追尾および捕捉検出器(2)を備え、前記端末は、前記端末の使用中に、
前記端末(100)に対して外部にあるソース(200)によって発せられた第1レーザ信号を受信し、
前記第1レーザ信号の一部を前記追尾および捕捉検出器(2)の前記検出面(S)へ向け、
前記第1レーザ信号の別の一部を、光ファイバ(1)の入力端部(E)を通じて前記光ファイバに注入し、
第2レーザ信号を前記端末(100)の外部に送信する
ように構成される;
前記端末(100)を使用して、前記第2レーザ信号を外部の前記ソース(200)に送信する工程;ならびに、
前記第2レーザ信号が送信されている間に、
前記第2レーザ信号の一部を、前記追尾および捕捉検出器(2)の前記検出面(S)へ向け、
前記光ファイバ(1)内で導かれて前記光ファイバの前記入力端部(E)を通じて出る較正放射と称される放射を、前記追尾および捕捉検出器(2)の前記検出面(S)へ同時に向け、
前記較正放射によって、前記光ファイバ(1)の前記入力端部(E)の像を、前記追尾および捕捉検出器(2)の前記検出面(S)上に形成する工程
を含む、通信方法であって、
前記追尾および捕捉検出器(2)の前記検出面(S)へ向けられる前記第2レーザ信号の前記一部と、前記光ファイバ(1)の前記入力端部(E)の前記像を形成する前記較正放射とが、前記追尾および捕捉検出器の前記検出面に到達する前に、前記追尾および捕捉検出器による前記較正放射の検出に関して有効な前記較正放射の平均強度に対する前記第2レーザ信号の前記一部の強度の商の値を減少させる工程をさらに含む、通信方法。
【請求項12】
前記光ファイバ(1)の前記入力端部(E)の前記像を形成する前記較正放射の、前記追尾および捕捉検出器による当該較正放射の検出に関して有効な前記平均強度に対する、前記追尾および捕捉検出器(2)の前記検出面(S)へ向けられる前記第2レーザ信号の前記一部の前記強度の前記商の前記値は、
元の値の100分の1未満の値へと減少させられる、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔発明の分野〕
本明細書は、レーザ信号による光通信用の端末および方法に関する。より具体的には、本明細書は、受信したレーザ信号が光ファイバを介して受信光検出器へとルーティングされる、かかる端末およびかかる方法に関する。
【0002】
〔関連技術の説明〕
非常に長い距離にわたってデータを送信するために、自由空間を伝播するレーザ信号、すなわち、光ファイバ内を導波されない通信レーザ信号を使用することは、特に宇宙空間における用途に関して、よく知られている。受信方向および送信方向が正確に制御される光端末を用いることが、それには必要となる。特に、たとえ双方の端末が相対運動をしている場合であっても、各端末がもう一方の端末によって送信された信号を実際に受信することが、この制御によって保証される。特に、双方の端末のうちの少なくとも一方の端末が、軌道(例えば、地球周囲の軌道)上の衛星に搭載されている場合に、この相対運動は大きなものとなり得る。このとき、もう一方の端末は、軌道上の別の衛星に搭載された状態であり、地球上の地面に位置しており、または、飛行中の航空機、もしくは、他の任意のビークル(vehicle)もしくはシップ(ship)に搭載された状態であり得る。各端末に関して、その端末の送信方向と、その端末がもう一方の端末から来るレーザ信号を受信する方向との間に適用される瞬時分離(instantaneous separation)は通常、光行差補正(ポイントアヘッド:point-ahead)オフセット(offset)と称される。
【0003】
〔技術的な課題〕
レーザ信号による光通信技術の利用に関する重要な課題として、端末のバルクおよび重量を低減することがある。
【0004】
この課題の一部は、特に、受信光検出器への、端末が受信する光通信レーザ信号の当該端末内におけるルーティングに関する。
【0005】
この課題の別の一部は、各端末の動作に必要な光センサの数の減少、より一般的には、各端末の動作に必要な光学コンポーネントの数の減少にある。
【0006】
この状況下において、本発明の一目的は、上述した課題に対する解決策を提供するために、レーザ信号による光通信のための新規の端末構成を提案することである。当該新規の端末構成には、特定の光学コンポーネントの使用が含まれる。
【0007】
〔発明の簡単な概要〕
これらの目的または別の目的のうちの少なくとも1つの目的を達成するために、本発明の第1態様では、レーザ信号による光通信用の新規の端末が提案される。当該端末は、検出面内における行と列との交点に感光素子が配置された、マトリクスイメージセンサタイプの追尾および捕捉検出器(tracking and acquisition detector)を備える。この端末は、使用中に、前記端末に対して外部にあるソースによって発せられた第1レーザ信号を受信し、第2レーザ信号を外部の前記ソースに送信するように構成されている。さらに、この端末は、前記第1レーザ信号の一部と前記第2レーザ信号の一部とが、前記追尾および捕捉検出器の前記検出面に入射するように構成されている。これにより、追尾および捕捉検出器の少なくとも一部の感光素子が生成する検出信号を用いることによって、受信方向に対する端末の向きと光行差補正オフセットとを、調整することができる。
【0008】
さらに、外部の前記ソースによって送信されるデータを回収するために、本発明に係る端末は、その使用中に、前記第1レーザ信号の別の一部を、光ファイバの入力端部を通じて前記光ファイバに注入するようにさらに構成されている。この目的のために、前記端末は、その使用中に、
-較正放射と称される放射が、前記光ファイバ内で導かれて前記光ファイバの前記入力端部を通じて出、
-前記光ファイバの前記入力端部の像が、前記較正放射を用いて、前記追尾および捕捉検出器の前記検出面上に形成される
ように適合されている。このように、前記追尾および捕捉検出器は、いわゆる第1レーザ信号の別の一部、すなわち、受信した前記レーザ信号の受信光検出器へ向かう部分が、前記光ファイバの前記入力端部を通じて当該光ファイバに実際に注入されることが保証されるように、さらに適合されている。前記追尾および捕捉検出器に関する複数の機能のかかる組み合わせは、端末のバルク、重量およびコストを低減するために、特に有利である。
【0009】
本発明の追加の構成によれば、前記端末は、少なくとも1つのスペクトルフィルタリング素子(22)をさらに備え、少なくとも1つの前記スペクトルフィルタリング素子(22)は、少なくとも、前記追尾および捕捉検出器(2)の前記検出面(S)に到達する前記第2レーザ信号の前記一部と前記較正放射とが、少なくとも1つの当該スペクトルフィルタリング素子を通過するように配置されている。この少なくとも1つのスペクトルフィルタリング素子が前記第2レーザ信号の波長に対して有する透過率値は、前記追尾および捕捉検出器のスペクトル検出区間において前記較正放射に関して有効なこの同じスペクトルフィルタリング素子の平均透過率値よりも低い。かかるスペクトルフィルタリング素子を使用することにより、追尾機能に使用される前記第2レーザ信号の前記一部が到達する前記検出面内の各位置における前記追尾および捕捉検出器の飽和を回避しつつ、当該追尾および捕捉検出器が前記較正放射を同時に検出するのに十分な感度を有することを保証することができる。このように、本発明に係る端末における前記追尾および捕捉検出器の全ての機能、すなわち、受信方向に対する前記端末の向きの調整、光行差補正オフセットの調整、および、受信した前記レーザ信号の前記受信光検出器における導波光ファイバへの注入は、追加の光学コンポーネントの数を減らした状態で前記追尾および捕捉検出器を実装することとの適合性がある。
【0010】
本発明によって追加される少なくとも1つのスペクトルフィルタリング素子に関して、複数の代替的な位置が可能である。当該複数の代替的な位置は全て、前記較正放射と前記追尾および捕捉検出器に到達するように意図された前記第2レーザ信号の前記一部とによって共有される光路部分に沿ったものである。特に、少なくとも1つの前記スペクトルフィルタリング素子は、前記追尾および捕捉検出器の前記検出面の前方に配置されてもよく、または、前記追尾および捕捉検出器の前記検出面に向かって配置されてもよい。すなわち、少なくとも1つの前記スペクトルフィルタリング素子は、特に、前記検出面と、前記検出面上に前記光ファイバの前記入力端部の前記像を形成するために使用される結像素子との間に配置されてもよい。
【0011】
有利には、前記第2レーザ信号の前記波長に対する少なくとも1つの前記スペクトルフィルタリング素子の前記透過率値は、前記追尾および捕捉検出器の前記スペクトル検出区間において前記較正放射に関して有効な少なくとも1つの前記スペクトルフィルタリング素子の前記平均透過率値の100分の1未満であってもよく、好ましくは、当該平均透過率値の1000分の1未満であってもよい。これにより、前記第2レーザ信号の前記一部が前記較正放射よりもはるかに大きな強度を有する場合であっても、前記追尾および捕捉検出器は、感度は十分であるが飽和することなく、前記第2レーザ信号の前記一部および前記較正放射を検出することができる。
【0012】
本発明の好ましい実施形態において、以下の追加の構成のうちの少なくとも1つの構成が、単独で、またはそれらの構成のうちの複数の構成の組み合わせにおいて、任意選択的に再現されてもよい:
-前記端末において本発明に従って使用される、少なくとも1つの前記スペクトルフィルタリング素子は、1つのフィルタから構成されてもよく、または、組み合わせられた複数のフィルタのアセンブリから構成されてもよい;
-前記端末において本発明に従って使用される、少なくとも1つの前記スペクトルフィルタリング素子は、多層干渉フィルタタイプであってもよい;
-前記端末において本発明に従って使用される、少なくとも1つの前記スペクトルフィルタリング素子は、帯域阻止フィルタタイプであってもよく、少なくとも1つの前記スペクトルフィルタリング素子は、前記第2レーザ信号の前記波長が少なくとも1つの前記スペクトルフィルタリング素子の阻止区間の内にあり、かつ、前記較正放射の少なくとも1つの波長が前記阻止区間の外にあるように、適合されていてもよい;
-少なくとも1つの前記スペクトルフィルタリング素子は、前記第1レーザ信号の波長も前記阻止区間の外にあるようにさらに適合されていてもよい;ならびに、
-前記端末は、前記端末の前記使用中に、外部の前記ソースからのビーコン信号を受信するようにさらに構成されていてもよく、前記端末は、前記ビーコン信号の一部もまた前記追尾および捕捉検出器の前記検出面に入射するように適合されていてもよい。この場合において、少なくとも1つの帯域阻止タイプの前記スペクトルフィルタリング素子は、前記ビーコン信号の波長もまた前記阻止区間の外にあるようにさらに適合されていてもよい。
【0013】
特に有利である本発明の実施形態では、前記端末は、以下の構成をさらに備えてもよい:
-前記第1レーザ信号の前記波長に対する感度を有し、かつ、前記入力端部とは反対側にある前記光ファイバの出力端部に光学的に結合された前記受信光検出器であって、前記端末が受信する前記第1レーザ信号に応じた受信電気信号を生成する前記受信光検出器;および、
-前記第1レーザ信号に対して有効であり、かつ、前記光ファイバの前記入力端部と前記受信光検出器との間における前記第1レーザ信号の前記別の一部(と本明細書では称する)の光路上に位置する光増幅器。
【0014】
このとき、前記光増幅器は、前記端末の前記使用中に、増幅された自然放出放射を生成してもよく、増幅された前記自然放出放射の一部は、前記光ファイバの前記入力端部を通じて出ることによって、前記較正放射を構成していてもよい。本発明の代替実施形態では、前記較正放射は、副次的な光ソースが生成する当該較正放射が前記光ファイバの前記入力端部を通じて出るように、前記光ファイバに結合された副次的な当該光ソースによって生成されてもよい。
【0015】
特に、以下の仕様に適合する数値が採用されてもよい:
前記第1レーザ信号の前記波長は、1540nm(ナノメートル)~1545nmであってもよい;
前記第2レーザ信号の前記波長は、1550nm~1555nmであってもよい;
前記較正放射のスペクトル範囲は、1530nm~1560nmに及ぶ区間を含んでもよい;
少なくとも1つの前記スペクトルフィルタリング素子が帯域阻止タイプである場合、その前記阻止区間は、約1550nm~約1575nmであってもよく、該当する場合には、前記ビーコン信号の前記波長は、1580nm~2000nmであってもよい。
【0016】
本発明の第2態様では、以下の工程を含む通信方法が提案される:
-レーザ信号による光通信用の端末を設ける工程、ここで、当該端末は、検出面内における行と列との交点に感光素子が配置された、マトリクスイメージセンサタイプの追尾および捕捉検出器を備え、前記端末は、前記端末の使用中に、前記端末に対して外部にあるソースによって発せられた第1レーザ信号を受信し、前記第1レーザ信号の一部を前記追尾および捕捉検出器の前記検出面へ向け、前記第1レーザ信号の別の一部を、光ファイバの入力端部を通じて当該光ファイバに注入し、第2レーザ信号を前記端末の外部に送信するように構成される;
-前記端末を使用して、前記第2レーザ信号を外部の前記ソースに送信する工程;ならびに、
-前記第2レーザ信号が送信されている間に、前記第2レーザ信号の一部を、前記追尾および捕捉検出器の前記検出面へ向け、前記光ファイバ内で導かれて前記光ファイバの前記入力端部を通じて出る較正放射と称される放射を、前記追尾および捕捉検出器の前記検出面へ同時に向け、前記較正放射によって、前記光ファイバの前記入力端部の像を、前記追尾および捕捉検出器の前記検出面上に形成する工程。
【0017】
本発明によれば、前記方法は、以下の追加の工程をさらに含む:
前記追尾および捕捉検出器の前記検出面へ向けられる前記第2レーザ信号の前記一部と、前記光ファイバの前記入力端部の前記像を形成する前記較正放射とが、前記追尾および捕捉検出器の前記検出面に到達する前に、前記追尾および捕捉検出器による前記較正放射の検出に関して有効な前記較正放射の平均強度に対する前記第2レーザ信号の前記一部の前記強度の商の値を減少させる工程。
【0018】
有利には、前記光ファイバの前記入力端部の前記像を形成する前記較正放射の、前記追尾および捕捉検出器による当該較正放射の検出に関して有効な前記平均強度に対する、前記追尾および捕捉検出器の前記検出面へ向けられる前記第2レーザ信号の前記一部の前記強度の前記商の前記値は、100よりも大きい係数だけ減少させられてもよく、好ましくは、1000よりも大きい係数だけ減少させられてもよい。
【0019】
本発明に係る方法によって提供されるレーザ信号による光通信用の前記端末が、上述した本発明の第1態様に適合するように、前記商は、少なくとも1つの前記スペクトルフィルタリング素子を使用することによって、減少させられてもよい。
【0020】
〔図面の簡単な説明〕
本発明の構成および利点は、添付の図面を参照した、非限定的な実施例に関する以下の詳細な説明において、より明確に明らかとなるだろう。
【0021】
図1は、本発明に従うレーザ信号による光通信用の端末の光学図である。
【0022】
図2は、本発明の実装に関して
図1の端末において使用され得るスペクトルフィルタの透過率のグラフである。
【0023】
〔発明の詳細な説明〕
明確さのために、これらの図に示す素子の寸法は、実際の寸法にも実際の寸法比にも対応していない。さらに、これらの素子のうちの一部の素子は、単に記号的に示されているにすぎない。
【0024】
図1において、参照番号100は、レーザ信号による光通信用の端末の全体を示す。また、F
1は、遠方の端末200から発せられつつこの端末100により受信されるレーザ信号のビームを示す。本明細書の概略部分において、端末100が受信するこれらのレーザ信号は、第1レーザ信号と称されており、端末200は、外部のソースと称されていた。ビームF
1のレーザ信号は、受信光路によって、端末100の内部においてルーティングされる。当該受信光路は、光検出器11において終端する。光検出器11は、超高速フォトダイオード(ultrafast photodiode)であってもよい。結果として得られる受信電気信号は、図中において、Rxと記されている。受信光路における受信したレーザ信号の経路には、端末100の光学入口(optical entrance)P
0と光検出器11との間において、第1光路P
1と、光ファイバ1と、が含まれる。
【0025】
端末100によって遠方の端末200へと送信される、他のレーザ信号は、ビーム部分F21を構成している。本明細書の概略部分において、当該他のレーザ信号は、第2レーザ信号と称されていた。これらは、光伝送路によって、端末100の内部において伝送する。
【0026】
端末100および端末200は各々、異なる衛星に搭載されていてもよく、あるいは、一方の端末が衛星に搭載されており、もう一方の端末が地球または別の惑星の表面に設置されていてもよい。
【0027】
以下に列挙する参照番号は、次の意味を有する:
101:端末100の放射コレクタオプティクス。当該放射コレクタオプティクスは、遠方の端末200から発せられるビームF1を収集することと、この遠方の端末200に向かってビーム部分F21を送信することとの、両方の役割を果たしてもよい。例えば、コレクタオプティクス101は、テレスコープであってもよい;
102:端末100の指向装置(pointing device)。当該指向装置は、精密な指向装置と、粗雑な指向装置とを組み合わせることも可能である。単純化のため、指向装置102は、高速応答向き付け可能ミラー(rapid response orientable mirror)、または、「高速ステアリングミラー(fast steering mirror)」の形態において、示されている。しかしながら、指向装置102は、端末100が搭載される衛星のための姿勢および軌道制御システムの一部と組み合わせられてもよい;
103:指向装置102の制御装置。CTRLと記されている;
104:端末100の送信光路と受信光路とを結合するための装置。この装置は、「偏波ビームスプリッタ(Polarization Beam Splitter)」の略PBSで通常は称される、偏波に基づく分離によって動作する複プリズムであってもよい。この場合において、結合装置104を通過するビーム部分に対して有効な偏波制御コンポーネントが使用されるが、それらは図示していない;
105:端末100の送信方向に関する較正装置、すなわち、ビーム部分F21の方向に関する較正装置。この装置105は、任意選択的(optional)なものであり、本発明と直接接続しているものではない。装置105には、可変方向ミラーが含まれてもよい;
106:較正装置105のための制御装置。当該制御装置は、端末100の送信方向を調整するためのものである;ならびに、
110:端末100によって遠方の端末200へ送信したレーザ信号のソースである。当該ソースは、Txと記されている。
【0028】
レーザ信号ソース110と放射収集オプティクス101との間に含まれる光路は、端末100の送信光路を構成している。当該光路は、放射収集オプティクス101と結合装置104との間の受信光路によって共有されている。
【0029】
構成要素101~110の各々の動作、および、端末100内におけるそれらの協働は、当業者に知られている。特に、指向装置102は、この端末100が送信したレーザ信号(すなわち、収集オプティクス101の下流にあるビームの一部F21)が遠方の端末200に正確に到達するように、端末100が受け得る、意図した送信方向からその指向方向を偏向させるであろう振動を補償するよう、意図されている。この目的のために、制御装置103が検出信号S1を受信し、当該検出信号S1によって、遠方の端末200から発せられるレーザ信号(すなわち、ビームF1)のその瞬間における受信方向が特定される。非常に短い応答時間で振動を補償するこの機能は、後述する可変偏向(deviation)装置4のものとは異なっている。当該可変偏向装置4に関する反応時間は、より長いものであり得る。
【0030】
ソース110は、レーザ信号を生成し、当該レーザ信号は、ビームF2の形態において、端末100によって遠方の端末200へ送信される。結合装置104は、端末100が送信するレーザ信号のビームF2が複プリズム6を通過するように構成されている。複プリズム6は、強度分割によって動作するビームスプリッタ(「ビームスプリッタ(Beam Splitter)」の略BSで通常は称される)を構成している。しかしながら、その他のタイプのビーム分割器が同等に使用されてもよい。ビームF2は、複プリズム6によって、次の2つのビーム部分に分割される:(i)放射収集オプティクス101を透過し、遠方の端末200へ向かう第1ビーム部分F21、および、(ii)マトリクスイメージセンサ2へ向かう別のビーム部分F22。
【0031】
マトリクスイメージセンサ2は、例えば、CMOSタイプであってもよい。マトリクスイメージセンサ2は、当該マトリクスイメージセンサ2の検出面Sがイメージャ21の焦点面に位置するように、イメージャ21(例えば、収束レンズ)と組み合わせられてもよい。これにより、イメージャ21に入射するコリメートされた各放射ビームは、マトリクスイメージセンサ2の検出面S上における1または複数の照射点に集束する。このとき、これらの照射点の(1つ以上の)位置が、ビームの入射方向を表す。
【0032】
送信レーザ信号の伝播方向に関して指向装置102の上流にある、ビーム部分F21の方向は、端末100の光軸と一致するように意図されてもよい。この目的のために、制御装置106は、ビーム部分F21の方向が指向装置102の上流にある端末100の光軸に重なり合うように、マトリクスイメージセンサ2がビーム部分F22に基づいて生成する検出信号S2に応じて、較正システム105をロックする。本明細書に記載された実施形態では、ビーム部分F22は、三面体反射器アセンブリ(trihedral reflector assembly)60によって反射されることによって、マトリクスイメージセンサ2へ向けられる。
【0033】
好ましい構成によれば、反射器アセンブリ60は、3つの平坦なミラー61、62、および63によって形成されてもよい。これらのミラーは各々、2つの直線稜間に画定されており、角度αに沿って同一点で交わる。平坦なミラー61、平坦なミラー62、および平坦なミラー63は、頂点において対称的な三面角αが形成されるように、それらの稜に沿って接合されている。各ミラー61、62および63の角度αは、90°(度)よりも大きい角度が選択されてもよく、例えば、90.5°に等しくてもよい。各ミラー61、62および63の角度αは、使用される光学コンポーネント間の距離、そのサイズ、その焦点距離等に応じて、調整されてもよい。これらの条件下において、ミラー61、ミラー62、およびミラー63の三面体に入射する放射ビームは、6つのビームの形態において再帰反射し、当該6つのビームのそれぞれの方向は、平均反射方向の周りに、対称的に分布する。三面体の中心軸に関して、平均反射方向は、入射するビームの方向と対称になっている。
【0034】
かかる三面体反射器アセンブリ60が用いられる場合、ビーム部分F
22は、マトリクスイメージセンサ2の検出面S上の6つの点を照らす(
図1の挿入図内における参照符号F
22の点を参照)。ビーム部分F
22のこれら6つの点は、正六角形の頂点に位置する。当該正六角形の中心は、複プリズム6の上流のビームF
2の方向に対応している。較正制御装置106が装置105のロックインを行うとき、ビーム部分F
22の検出六角形の中心は、端末100の光軸と検出面Sとの交点となる。較正制御装置106は、検出六角形を表す信号S
2から、ビーム部分F
22の方向を決定してもよい。かかる較正機能は、公開番号EP2173042である、「Optical transmission-reception unit with controllable transmission direction」という名称の特許出願EP9172199に記載されている。
【0035】
複プリズム6は、端末100が受信したレーザ信号のビーム部分F1を、受信光検出器11に到達するように意図された第1ビーム部分F11と、マトリクスイメージセンサ2に到達するように意図された第2ビーム部分F12と、に分割する。端末100は、受信したレーザ信号のビームF1の一部F11が複プリズム6を偏向なく通過するように構成されていてもよい。ビームF1の一部F12は、複プリズム6によって、マトリクスイメージセンサ2へ直接的に反射される。ビーム部分F12が検出される検出面Sの点は、端末100によるビームF1の受信方向を表している。したがって、この点は、ビーム部分F11の方向もまた表している。ビームF12のこの検出点は、マトリクスイメージセンサ2が生成する検出信号S1によって特定される。
【0036】
先ほど説明した端末100の動作条件下では、ビーム部分F21とビームF1とのそれぞれの方向のオフセットは、端末100へ指令される光行差補正角(point-ahead angle)である。この光行差補正角は、検出信号S1および検出信号S2によって特徴付けられ、一方の検出信号は、当該六角形の中心とビーム部分F22によって照らされる検出面S内の6つの点との間における2次元のオフセットを表し、他方の検出信号は、ビーム部分F12によって照らされる点を表す。マトリクスイメージセンサ2の検出面S上へのビーム部分F12の衝突点が、意図された光行差補正角の反対に対応する位置にあるように、指向装置102を用いて放射収集オプティクス101の入力光学場(input optical field)を方向付けることによって、それが生成され得る。あるいは、光行差補正オフセットは、送信方向の較正のための装置105を使用することによって、生成されてもよい。これにより、マトリクスイメージセンサ2は、追尾および捕捉検出器として機能する。
【0037】
光ファイバ1にビーム部分F11が注入されるように、端末100において注入システムが用いられる。この注入システムの機能は、光ファイバ1の入力端部Eの位置に影響を及ぼし得る軸ずれ(transverse offset)を補償することである。場合によっては、当該軸ずれは、ビーム部分F11に対する端末100の光行差補正角にも影響を及ぼし得る。光ファイバ1によってビームF1の一部F11が導波されて伝播し、光検出器11へルーティングされるように、当該ビーム部分F11が光ファイバ1の入力端部Eに入射することが、注入システムによって保証される。光ファイバ1は、ビーム部分F11の放射に関してシングルモードであってもよい。かかる場合において、入力端部Eは、1.5μm(マイクロメートル)のオーダーの受信したレーザ信号の波長に対して、10μmのオーダーの直径を有し得る。
【0038】
この目的のために、端末100の光学入口P0を光ファイバ1の入力端部Eに接続する第1光路P1は、光ファイバ1の方向に方向付けられることになる。光路P1は、受信したレーザ信号のビームF1の一部F11が辿る(進む)ように意図されている。図を明瞭にするために、光ファイバ1の入力端部Eが集束レンズの焦点面に位置する、ビーム部分F11のための当該集束レンズは、図示していない。それを使用することは、当業者に周知であるからである。
【0039】
P2で示す第2光路は、光ファイバ1の入力端部Eの位置を特定するために使用される放射のために設けられている。第2光路P2は、光ファイバ1の入力端部Eを、マトリクスイメージセンサ2へ、このセンサ2に向けて接続する。
【0040】
光路P1および光路P2の各々には、関与する(1以上の)放射ビームが、辿る光路によって各ビームの方向が固定されることなく辿ってもよい。注入システムによって、各放射ビームが伝播する光路P1、光路P2内における当該放射ビームの方向が制御される。
【0041】
光ファイバ1の入力端部Eの位置を特定するための専用の放射は、本明細書の概略部分において較正放射と称されていた。この放射のビームは、図中ではFSと示されている。
【0042】
本発明の特に有利な実施形態によれば、光ファイバ1によって、受信したレーザ信号のビームF1の一部F11が光増幅器3へ伝送され、次いで、その結果得られる増幅されたビーム部分F11が光検出器11へ伝送される。増幅器3(LNOA(low-noise optical amplifier:低雑音光増幅器)と記されている)は、エルビウム添加ファイバ増幅器(erbium-doped fibre amplifier:EDFA)タイプであってもよい。周知の通り、かかる増幅器は、増幅された自然放出(amplified spontaneous emission:ASE)を通じて、放射を生成する。その一部分は、光ファイバ1の内部において、その入力端部Eに向かって導波される。光ファイバ1は、かかる増幅された自然放出放射を増幅器3からファイバの入力端部Eへ導くのに、有効である。入力端部Eを通って出た後に、増幅された自然放出放射のこの部分は、較正放射ビームFSを構成する。較正放射ビームFSは、マトリクスイメージセンサ2の検出面S上に結像することで光ファイバ1の端部Eの位置が特定されるように、マトリクスイメージセンサ2に向かって光路P2を伝播する。
【0043】
端末100のコンパクトな実施形態では、光路P1と光路P2とが複プリズム6と光ファイバ1の端部Eとの間で重なり合うように、光路P1と光路P2との両者が複プリズム6によって結合されてもよい。まず、較正放射ビームFSは、複プリズム6によって反射器アセンブリ60に向かって反射され、次いで、再帰反射され、その結果、偏向なく複プリズム6を再び通過し、イメージャ21を通り、マトリクスイメージセンサ2の方へ向かってもよい。この結果、ビームFSが検出される検出面S上の点は、光ファイバ1の入力端部Eの位置を表す。ビーム部分F22の場合と同様に、ビームFSは、三面体反射器アセンブリ60によって、別の正六角形の頂点に位置する6つの点として検出される。較正ビームFSのこの6つの検出点は、やはりマトリクスイメージセンサ2によって生成される検出信号SEによって特定される。このさらなる六角形の中心点によって、光ファイバ1の入力端部Eの位置が特定される。
【0044】
このように、マトリクスイメージセンサ2は同時に、端末100が受信したレーザ信号のビームF1の一部F12と、端末100が送信するレーザ信号のビームF2の一部F22と、較正放射ビームFSとを受け取る。マトリクスイメージセンサ2に関する複数の機能のこの組み合わせは、本発明によって提供される端末100の最適化に関与している。ビームF1の一部F11の方向の特徴付けには三面体反射器アセンブリ60が関わらないので、ビームF1の一部F11の方向は、マトリクスイメージセンサ2の検出面S上の単一の検出点によって特徴付けられる。すでに示したように、この点は、ビーム部分F12によって照射され、この点は、光ファイバ1の入力端部E上へ向けられるように意図されたビーム部分F11の方向を表す。この目的のために、ビーム部分F12の検出点は、較正放射ビームFSの複数の検出点の六角形の中心と一致するように意図される。
【0045】
さらに、可変偏向装置4が、光路P
1上に配置されている。可変偏向装置4は、例えば、光路P
1と光路P
2とによって共有される光路部分に配置されるが、これは必須ではない。本明細書に記載された端末100の構造において、送信光路と受信光路とを結合するための装置104は、光路P
1および光路P
2における、複プリズム6と可変偏向装置4との間に配置されている。可変偏向装置4は、端末100の送信方向の較正のための装置105とは別個のものであり、また、指向装置102とも別個のものである。可変偏向装置4は、受信したレーザ信号のビームF
1の一部F
11を可変方向に反射できるように、2つの回転軸を有する支持体上に取り付けられた専用の平坦なミラーから構成されてもよい。
図1に示すように、装置4の可変方向ミラーがビームF
1の一部F
11と較正放射ビームF
Sとを同時に反射する特定の場合に関しては、ビーム部分F
11が光ファイバ1の入力端部Eに入射するように装置4のミラーが方向付けられたときに、ビームF
1の一部F
11と較正放射ビームF
Sとは、同一の伝播方向を有するが、一方では、装置4と光ファイバ1の入力端部Eとの間を、他方では、装置4と複プリズム6との間を、互いに逆方向に伝播する。
図1の挿入図には、注入システムの作動中に較正放射を受けるマトリクスイメージセンサ2の検出面S内における6つの点が示されている。例えば装置4の可変方向ミラーによって生成されるビームF
Sの方向は、これら6つの点の重心に対応しており、これは、注入制御装置5によって、検出信号S
Eから決定されてもよい。それらは、検出面S内における6つの点のそれぞれの位置を示す。検出信号S
Eに基づいてビームF
Sの方向を表す6つの点の重心を決定するために、注入制御装置5によって実行されるべき計算は、当業者にとって明らかで、かつ利用可能である。頂点における角度が90°とは異なる反射器アセンブリ60の三面体構成のゆえに、マトリクスイメージセンサ2によって生成される検出信号S
1(光学入口P
0において受信したレーザ信号のビームF
1の方向を特定する)は、同じくマトリクスイメージセンサ2が生成する検出信号S
E(光ファイバ1の端部Eの位置を特定する)とは、スワップ(swap)することができない。
【0046】
反射器アセンブリ60の中心軸が、複プリズム6の出力における端末100の光軸と一致する場合、ビーム部分F12と、反射器アセンブリ60によって生成されるビームFSの6つの部分の平均方向との両者は、単一の検出点において、マトリクスイメージセンサ2の検出面Sと交差する。反対に、マトリクスイメージセンサ2の検出面S上において、ビーム部分F12の検出点とビームFSの6つの検出点の重心との間にギャップがあるということは、受信したレーザ信号のビームF1の一部F11が光ファイバ1の入力端部Eと交わっていないことを意味する。
【0047】
注入制御装置5(CTRLと記されている)は、検出信号SEにより装置4の可変方向ミラーの向きをロックするように働く。注入制御装置5は、例えば検出信号SEによって特定される、光ファイバ1の入力端部Eが位置するミラーにおける見かけの方向と、例えばビーム部分F12を使用してマトリクスイメージセンサ2によって検出される、ビーム部分F11の方向との間におけるオフセットとが低減されるように、このミラーの向きを制御するよう設計されている。検出信号SEおよび検出信号S1に基づいて、注入制御装置5は、ビームFSとビーム部分F11とのそれぞれの方向の間のオフセットが低減し、これらの方向の重ね合わせが生み出されるまで、装置4のミラーの向きを制御する。このようにして、光ファイバ1の端部Eに対するビーム部分F11の横方向オフセットを補償することができる。かかる軸ずれは、注入システムの少なくとも一部分に影響を及ぼす温度変化に起因するものであってもよく、かつ/または、光学入口P0において受信したレーザ信号のビームF1の見かけの方向の変化に起因するものであってもよく、かつ/または、他の任意の原因に起因するものであってもよい。このようにして、端末100が受信したレーザ信号のビーム部分F11は、その端部Eを通して、光ファイバ101内へ継続的に注入される。
【0048】
このように、マトリクスイメージセンサ2は、以下の3つの機能に関与している:(i)指向装置102の制御、(ii)較正装置105の制御、および(iii)偏向装置4の制御である。これらの装置はそれぞれ、(i)端末100全体に影響を及ぼす振動を補償し、(ii)端末100の送信方向を制御し、(iii)受信光検出器に向かう導波光ファイバへ受信したレーザ信号を注入することを制御する。かかる機能の組合せは、光通信端末100の寸法、重量およびエネルギー消費を低減するために、特に有利である。
【0049】
端末100の動作中において、端末100が受信したレーザ信号のビームF
1の方向(例えば、単一の照射点の形態において、マトリクスイメージセンサ2によって検出される)は、当該センサ2の検出面Sの限られた領域に含まれている。この限られたゾーンは、放射収集オプティクス101の入射光学場に含まれる複数の受信方向のセットと共役である。当該限られたゾーンは、ZUと記されており、本明細書の概略部分において、追尾機能に有用なゾーンと称されていた。対照的に、追尾機能に有用なゾーンZUと相補的な検出面Sの部分の点は、収集オプティクス101を通るいかなる受信方向とも、光学的に共役ではない。
図1の挿入図において、ゾーンZUと相補的な検出面Sのこの部分は、ZNUと記されている。境界線Lは、ゾーンZUとゾーンZNUとの間の境界である。このとき、較正放射ビームF
Sによって照射される検出面Sの6つの点がゾーンZNU内にあり、かつ、送信ビーム部分F
22によって照射される他の6つの点もまたゾーンZNU内にあるように、反射器アセンブリ60の三面体の角度αを選択することが有利である。このため、マトリクスイメージセンサ2が生成する検出信号S
1(端末100が受信したレーザ信号のビームF
1の方向を特定する)は、同じくマトリクスイメージセンサ2が生成する検出信号S
E(光ファイバ1の端部Eの位置を特定する)から、常に分離される。同様に、検出信号S
1は、マトリクスイメージセンサ2が生成する検出信号S
2(端末100が送信したレーザ信号のビームF
2の方向を特定する)から、常に分離される。
【0050】
端末100のこの動作中において、ビーム部分F22の6つの検出点の各々は、較正放射ビームFSの6つの検出点の各々の受ける放射強度よりも、はるかに大きな放射強度を受ける。さらに、本明細書に記載された端末100の特定の実施形態に関して、ビーム部分F22の6つの検出点に到達する放射強度は、ビーム部分F12の検出点に到達する放射強度よりも、はるかに大きい。強度レベルのこの不均衡は、端末100によって外部に送信されるように意図されたレーザ信号のソース110のパワーが高いことに起因している。その結果、ビーム部分F22の検出点において、マトリクスイメージセンサ2の飽和のリスクが生じる。マトリクスイメージセンサ2が飽和すると、このビーム部分F22が検出面S内に入射する位置を特定できる精度が低下し得る。このリスクを排除するために、本発明では、少なくとも1つのスペクトルフィルタリング素子を追加することが提案される。当該少なくとも1つのスペクトルフィルタリング素子は、較正放射ビームFSに対して、ビーム部分F22を減衰させ、場合によっては、ビーム部分F12に対しても、ビーム部分F22を減衰させる。このフィルタリング素子は、帯域阻止フィルタ22から構成されてもよい。当該帯域阻止フィルタ22は、検出面Sの前方に配置されてもよい。あるいは、かかるフィルタ22は、イメージャ21とマトリクスイメージセンサ2との間に、複プリズム6とイメージャ21との間に、反射器アセンブリ60と複プリズム6との間に、または、送信経路と受信経路との結合装置104と複プリズム6との間に、配置されてもよい。フィルタ22は、複数の薄層の積み重ねの形態において、実装されてもよい。これにより、このフィルタの送信用途のためのスペクトル阻止区間が、干渉効果によって生成される。通常、かかる干渉フィルタは、このフィルタの仕様に応じて、少なくとも20層の重畳された薄層から構成されてもよく、さらには、少なくとも100層の重畳された薄層から構成されてもよい。有利には、フィルタ22は、阻止区間外において有効なフィルタ22の複数の透過率値のうちの一部の透過率値と、阻止区間内において有効なフィルタ22の複数の透過率値のうちの他の透過率値との間で、100を超える係数を有するように選択されてもよく、好ましくは、1000を超える係数を有するように選択されてもよい。このとき、フィルタ22は、送信するレーザ信号のソース110の波長がその阻止区間内にあり、かつ、ビームFSを構成する較正放射のうちの少なくとも一部が当該阻止区間外にあるように、選択される。また、外部のソース200から発せられ端末100によって受信されるレーザ信号のビームF1の波長、および、捕捉フェーズ中に外部のソース200によって送信され得るビーコン信号もまた、帯域阻止区間外にあることが好ましい。
【0051】
図2に示すフィルタ22の透過スペクトル図において、縦軸は、対数目盛において、スペクトル透過率の値(Tと表記され、パーセンテージで表されている)を示しており、横軸は、波長の値(λと表記される)を示している。Rは、約1550nm~約1575nmに及ぶ阻止区間を示す。区間Rにおけるフィルタ22のスペクトル透過率値Tは、典型的には、0.05%未満である。フィルタ22のスペクトル透過率値Tは、1525nmと1545nmとの間において、さらに、1580nmと1625nmとの間において、95%よりも高い。このとき、端末100と外部のソース200との間におけるレーザ信号による光通信のセッションに関しては、以下の値が用いられ得る:
ビームF
2を生成するソース110の波長:約1552nm、より一般的には、1550nm~1555nm;
較正放射ビームF
Sを生成する増幅された自然放出の放射のスペクトル範囲:1530nm未満から1560nm超まで;
ビームF
1を構成する端末100が受信したレーザ信号の波長:約1542nm、より一般的には、1540nm~1545nm;および、
外部のソース200から端末100が受信するビーコン信号の波長:約1590nm。
【0052】
図2におけるグラフでは、前述した波長はそれぞれ、先に列挙した順序で、F
2、F
S、F
1と示されており、ビーコン信号については、Bと示されている。マトリクスイメージセンサ2のスペクトル感度区間は、少なくとも1525nmから1625nmまでに及んでおり、このセンサは、このスペクトル区間にわたって、おおよそ一定の検出収出力(detection yield)を有するものと仮定されている。
【0053】
上に詳述された光通信端末の副次的態様を修正することによって、示された複数の利点のうちの少なくとも一部の利点を維持しつつ、本発明を再現し得ることが理解される。特に、記載された構成要素の機能と同様の機能を実行する光学コンポーネントが、当該記載された構成要素の代わりに使用されてもよい。さらに、受信光検出器に到達するように意図される受信したレーザ信号の一部を光ファイバへ注入するために使用されるシステムは、詳述された構成とは異なる構成に従って、実装されてもよい。最後に、所与の数値は全て、単に例示を目的とするものにすぎず、これらの数値は、当該光通信端末が供される用途に応じて変更されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【
図1】本発明に従うレーザ信号による光通信用の端末の光学図である。
【
図2】本発明の実装に関して
図1の端末において使用され得るスペクトルフィルタの透過率のグラフである。