(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-03
(45)【発行日】2023-10-12
(54)【発明の名称】光脱毛器
(51)【国際特許分類】
A45D 26/00 20060101AFI20231004BHJP
【FI】
A45D26/00 Z
(21)【出願番号】P 2019217017
(22)【出願日】2019-11-29
【審査請求日】2021-07-16
(73)【特許権者】
【識別番号】322010556
【氏名又は名称】株式会社カノン
(74)【代理人】
【識別番号】100080160
【氏名又は名称】松尾 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】津行 良明
(72)【発明者】
【氏名】多田 雅夫
(72)【発明者】
【氏名】山口 雅人
【審査官】新井 浩士
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-153606(JP,A)
【文献】特開2003-126277(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 26/00
A61B 18/04-18/20
A61N 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源からのパルス光を出射する照射窓と、
脱毛対象領域表面の面方向に沿った前記照射窓の移動を検出して移動量の情報を送出する移動検出手段と、
前記脱毛対象領域に対向させた前記照射窓の前記面方向に沿った直線的な移動に伴う前記移動検出手段からの情報に基づいて、前記照射窓よりパルス光が出射されたならば照射される脱毛対象領域表面上の領域が直前の照射済領域と外接する前記照射窓の位置で前記光源をパルス発光させ、移動方向に照射済領域を連続的に形成して該照射済領域の脱毛を促す連続発光モード実行手段を備えた制御部と、
を有する光脱毛器において、
前記照射窓は、前記脱毛対象領域の表面に仮定される直交二次元座標系のX軸方向にB、Y軸方向にAの長さを有する矩形状であり、
前記連続発光モード実行手段は、前記移動検出手段から供給された所定の微小時間内での前記直交二次元座標系におけるX軸方向及びY軸方向への移動量の情報に基づき、直前のパルス光出射位置から現在の位置までの前記照射窓の前記直交二次元座標系における移動方向と同直交二次元座標系のX軸とが成す角度θと、前記直交二次元座標系におけるX軸方向及びY軸方向への積算移動距離とを算出する移動距離・角度算出手段と、
[90°-[arctan(B/A)]°]±5°の範囲内である閾角αを提供する閾角提供手段と、
前記角度θが0°≦θ≦αの場合は、前記X軸方向への積算移動距離がB以上であれば前記光源をパルス発光させ、前記角度θがα<θ≦90°の場合は、前記Y軸方向への積算移動距離がA以上であれば前記光源をパルス発光させるパルス発光手段と、を備え、
前記制御部は、使用者による所定の入力操作がない限り前記光源を発光させず、前記入力操作があったときは前記光源をパルス発光させて照射済領域を単発的に形成する単発光モード実行手段を備えるものであり、
前記連続発光モード実行手段は、前記角度θが0°≦θ≦αの場合は前記微小時間内での前記直交二次元座標系におけるX軸方向への移動量、前記角度θがα<θ≦90°の場合はY軸方向への移動量の符号が、前回の微小時間内での同じ軸方向への移動量の符号に対し反転した場合には、前記単発光モード実行手段の実行を開始する重複照射抑制手段を備えたことを特徴とする光脱毛器。
【請求項2】
前記光源をパルス発光させるに際し前回のパルス発光からの経過時間が所定時間以下の場合には前記パルス発光手段によるパルス発光前に使用者に対し報知する移動スピード警報手段を備えることを特徴とする請求項
1に記載の光脱毛器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光脱毛器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、毛根のメラニン色素に反応して熱を発する光を皮膚表面にパルス状に照射して、脱毛を促す光脱毛(フラッシュ脱毛)が行われている。
【0003】
光脱毛器のハンドピースには光源が内蔵されており、パルス光は矩形状の照射窓を介して出射される。施術者はハンドピースを把持し、照射窓を被施術者の脱毛対象領域に対向させ、ボタンを押下するなど所定の操作を行ってパルス光を出射させることにより、毛根(毛乳頭)にダメージを与え、弱らせることで脱毛を促す。
【0004】
また、脱毛対象領域が広い場合は、照射窓からパルス光が出射されたならば脱毛に有効な強度で照射される脱毛対象領域上の領域(以下、照射標的領域Tという。)が直前の照射済領域と外接する位置に照射窓を移動させ照射する作業を繰り返す。これにより、照射済領域が連続的に形成され、脱毛対象領域の全体に一様に照射することが可能である。
【0005】
このように、光脱毛は脱毛対象領域の広さに拘わらず適用可能であり、しかも痛みが少なく効果的であることから、極めて有用な脱毛方法である。ただし、パルス光の過剰な照射は毛根以外にダメージを与えるおそれがあるため、施術者は、照射エネルギーの適度な照射に留意しなければならない。
【0006】
特に、既にパルス光が照射された照射済領域に重畳して照射標的領域を設定し、重ねてパルス光を照射してしまうこと、すなわち重複照射は避ける必要がある。
【0007】
また、照射済領域と照射標的領域との間が開きすぎると、その隙間部分の領域における脱毛効果は乏しく、効率的とは言い難い。従って、照射標的領域は、照射済領域とできるだけ近づけながらも、重ならないように設定するのが好ましい。
【0008】
光脱毛の施術は、一定の知識を習得した施術者によって行われるのが一般的であるが、上述した適切な位置への照射標的領域の設定、すなわち、照射窓の移動操作は、比較的高度な手技が要求される作業であることから、施術者の慣れや技量に左右される場合も考えられる。
【0009】
そこで、光脱毛器の制御部によって施術者が照射窓を適切な位置に配置したと判断された場合、付言すれば、照射標的領域が直前の照射済領域と重畳せず若干の間隔は許容しつつも開きすぎない位置(外接位置)に達したと光脱毛器の制御部が判断した場合に、自動的に光源を発光させて照射窓からパルス光を出射させる光脱毛器が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0010】
このような光脱毛器によれば、施術者の脱毛作業を補助することができ、より堅実かつ安全なパルス光の照射を実現することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところで、
図12(a)に示すように、幅をA、長さをBとした広幅(A>B)で矩形状の照射窓200を備えたハンドピースでの脱毛処理作業を仮定した場合、自動的な発光により脱毛対象領域Q上に連続的に照射済領域Uを形成するときは、
図12(b)に示すように照射窓200の移動方向を照射窓の長さ方向と一致させつつ移動(照射窓の長さ方向へ照射窓を移動)させれば効率的に脱毛を行うことができる。このように照射窓を移動させて行う脱毛作業を平行移動照射作業という。なお、
図12(a)及び
図12(b)における照射窓200と脱毛対象領域Qは、図示の便宜上、わざと離隔させて示しているが、実際は脱毛対象領域Qに照射窓200を接触させつつ施術が行われる。
【0013】
また、
図12(a)に示すように、照射窓200の所定のポイントP’と対向する脱毛対象領域上の点P(例えば、照射窓200の幅方向と長さ方向との中央部をそのポイントP’とすれば、このポイントP’と対向する脱毛対象領域上の点P。以下、単に基準点Pともいう。)を設定する場合、上述の平行移動照射作業におけるパルス発光のタイミングは、
図12(b)に示すように、直前の照射済領域U1の基準点P1の位置から照射標的領域T2の基準点P2(現在の照射窓の位置での基準点P2)の位置までの距離が照射窓の長さBとなったときとすることで連続的に外接位置に照射済領域U2を形成することができ、照射窓200の長さ方向への移動量のみを監視すれば足りるため、光脱毛器の制御部における発光タイミングの処理としても比較的単純である。
【0014】
通常の光脱毛の施術では、専ら平行移動照射作業で作業が行われるのであるが、例えば
図13(a)に示すように、脱毛対象領域Qの幅が照射窓200の幅Aよりも短い場合、照射窓の長さ方向が照射窓の移動方向に対し所定角度θの傾きを持つよう照射窓200を傾けて脱毛処理を行うこととなる。なお、以下の説明において、照射窓200の移動方向と照射窓200の長さ方向とを一致させた状態(破線で示す状態)に対し、照射窓200を傾けた状態で直線的に移動させつつ行う脱毛処理を斜行移動照射作業と称する。
【0015】
また、斜行移動照射作業を行うと、照射済領域Uが連続してなる連続照射済領域Vが形成されるが、照射窓の移動方向に沿った連続照射済領域Vの上部及び下部(一点鎖線で囲って示す。)は各照射済領域Uの隅部が突出するため鋸歯状となり、照射された部位と照射されていない部位が交互に出現することとなる。そこでここでは、この鋸歯状の部位の照射された部位と照射されていない部位とを相殺し均一化して考慮可能とすべく、実効照射幅という概念を用いる。実効照射幅は幅方向の長さAのcosθ倍として得られる値であり、
図13における照射窓200の傾きθは、実効照射幅が脱毛対象領域Qの幅となる角度としている。
【0016】
ここで、光脱毛器の制御部が照射窓200の長さ方向への移動量を監視しており、この長さ方向移動量に基づいて発光タイミングの処理を行う場合、傾きθが比較的小さな角度であれば、照射済領域U3から照射標的領域T4へ照射窓200が移動したときは、特別の制御処理を行わずとも、基準点P3から基準点P4への軌跡のベクトルMにおける照射窓200の長さ方向への成分Mbの長さが照射窓200の長さ方向の長さBとなった時点、すなわち、照射標的領域T4が照射済領域U3に外接する位置でパルス発光するため、特に問題とならない。
【0017】
しかしながら、傾きθが比較的大きな角度の場合、例えば80°以上の場合には、cosθの値が小さくなるため、移動距離の検出精度が著しく低下し、適切な位置でのパルス発光が困難となる。
【0018】
また、傾きθが90°の場合は、照射窓200の長さ方向への移動検出量が0となるため、適切な位置での発光は不可能となってしまう。
【0019】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであって、斜行移動照射作業を行う際に、ハンドピースの傾き(照射窓短辺と移動方向との成す角度)を大きくした場合であっても、直前の照射済領域と外接する位置にて自動的にパルス光を照射できる光脱毛器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記従来の課題を解決するために、本発明に係る光脱毛器では、(1)光源からのパルス光を出射する照射窓と、脱毛対象領域表面の面方向に沿った前記照射窓の移動を検出して移動量の情報を送出する移動検出手段と、前記脱毛対象領域に対向させた前記照射窓の前記面方向に沿った直線的な移動に伴う前記移動検出手段からの情報に基づいて、前記照射窓よりパルス光が出射されたならば照射される脱毛対象領域表面上の領域が直前の照射済領域と外接する前記照射窓の位置で前記光源をパルス発光させ、移動方向に照射済領域を連続的に形成して該照射済領域の脱毛を促す連続発光モード実行手段を備えた制御部と、を有する光脱毛器において、前記照射窓は、前記脱毛対象領域の表面に仮定される直交二次元座標系のX軸方向にB、Y軸方向にAの長さを有する矩形状であり、前記連続発光モード実行手段は、前記移動検出手段から供給された所定の微小時間内での前記直交二次元座標系におけるX軸方向及びY軸方向への移動量の情報に基づき、直前のパルス光出射位置から現在の位置までの前記照射窓の前記直交二次元座標系における移動方向と同直交二次元座標系のX軸とが成す角度θと、前記直交二次元座標系におけるX軸方向及びY軸方向への積算移動距離とを算出する移動距離・角度算出手段と、[90°-[arctan(B/A)]°]±5°の範囲内である閾角αを提供する閾角提供手段と、前記角度θが0°≦θ≦αの場合は、前記X軸方向への積算移動距離がB以上であれば前記光源をパルス発光させ、前記角度θがα<θ≦90°の場合は、前記Y軸方向への積算移動距離がA以上であれば前記光源をパルス発光させるパルス発光手段と、を備え、前記制御部は、使用者による所定の入力操作がない限り前記光源を発光させず、前記入力操作があったときは前記光源をパルス発光させて照射済領域を単発的に形成する単発光モード実行手段を備えるものであり、前記連続発光モード実行手段は、前記角度θが0°≦θ≦αの場合は前記微小時間内での前記直交二次元座標系におけるX軸方向への移動量、前記角度θがα<θ≦90°の場合はY軸方向への移動量の符号が、前回の微小時間内での同じ軸方向への移動量の符号に対し反転した場合には、前記単発光モード実行手段の実行を開始する重複照射抑制手段を備えることとした。
【0021】
また、本発明に係る光脱毛器では、以下の点にも特徴を有する。
(2)前記光源をパルス発光させるに際し前回のパルス発光からの経過時間が所定時間以下の場合には前記パルス発光手段によるパルス発光前に使用者に対し報知する移動スピード警報手段を備えること。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る光脱毛器によれば、光源からのパルス光を出射する照射窓と、脱毛対象領域表面の面方向に沿った前記照射窓の移動を検出して移動量の情報を送出する移動検出手段と、前記脱毛対象領域に対向させた前記照射窓の前記面方向に沿った直線的な移動に伴う前記移動検出手段からの情報に基づいて、前記照射窓よりパルス光が出射されたならば照射される脱毛対象領域表面上の領域が直前の照射済領域と外接する前記照射窓の位置で前記光源をパルス発光させ、移動方向に照射済領域を連続的に形成して該照射済領域の脱毛を促す連続発光モード実行手段を備えた制御部と、を有する光脱毛器において、前記照射窓は、前記脱毛対象領域の表面に仮定される直交二次元座標系のX軸方向にB、Y軸方向にAの長さを有する矩形状であり、前記連続発光モード実行手段は、前記移動検出手段から供給された所定の微小時間内での前記直交二次元座標系におけるX軸方向及びY軸方向への移動量の情報に基づき、直前のパルス光出射位置から現在の位置までの前記照射窓の前記直交二次元座標系における移動方向と同直交二次元座標系のX軸とが成す角度θと、前記直交二次元座標系におけるX軸方向及びY軸方向への積算移動距離とを算出する移動距離・角度算出手段と、[90°-{arctan(B/A)}°]±5°の範囲内である閾角αを提供する閾角提供手段と、前記角度θが0°≦θ≦αの場合は、前記X軸方向への積算移動距離がB以上であれば前記光源をパルス発光させ、前記角度θがα<θ≦90°の場合は、前記Y軸方向への積算移動距離がA以上であれば前記光源をパルス発光させるパルス発光手段と、を備えることとしたため、斜行移動照射作業を行う際に、ハンドピースの傾き(照射窓短辺と移動方向との成す角度)を大きくした場合であっても、直前の照射済領域と外接する位置にて自動的にパルス光を照射できる光脱毛器を提供することができる。
【0023】
また、前記制御部は、使用者による所定の入力操作がない限り前記光源を発光させず、前記入力操作があったときは前記光源をパルス発光させて照射済領域を単発的に形成する単発光モード実行手段を備えるものであり、前記連続発光モード実行手段は、前記角度θが0°≦θ≦αの場合は前記微小時間内での前記直交二次元座標系におけるX軸方向への移動量、前記角度θがα<θ≦90°の場合はY軸方向への移動量の符号が、前回の微小時間内での同じ軸方向への移動量の符号に対し反転した場合には、前記単発光モード実行手段の実行を開始する重複照射抑制手段を備えることとすれば、施療者がハンドピースをこれまでの移動方向と逆方向に移動させた場合、連続発光モードから脱して単発光モードへ移行するため、より安全な施療が可能な光脱毛器を提供することができる。
【0025】
また、前記光源をパルス発光させるに際し前回のパルス発光からの経過時間が所定時間以下の場合には前記パルス発光手段によるパルス発光前に使用者に対し報知する移動スピード警報手段を備えることとすれば、光脱毛器の状態がパルス発光可能な状態となるために必要な時間を確保して、堅実な施術を行わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本実施形態に係る光脱毛器の外観構成を示す説明図である。
【
図4】光脱毛器の電気的構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本実施形態に係る光脱毛器について、図面を参照しながら説明する。
図1は本実施形態に係る光脱毛器Kの概略構成図である。光脱毛器Kは、装置本体1と、同装置本体1に通電ケーブル4を介して接続可能としたハンドピース5と、装置本体1及びハンドピース5の双方に掛け渡して内蔵された、ハンドピース5のキセノン管56の発光に伴う発熱を冷却するための冷却部6(
図3参照)とを備えている。
【0028】
装置本体1は、マイコン等の制御回路よりなり、各種制御処理を行う制御部2と、操作キー類及び表示器を備えた操作部3とを備えている。
【0029】
操作部3には、操作パネル30と緊急停止ボタン31とキースイッチ32とを設けている。
【0030】
操作パネル30は、光脱毛器Kの主要な操作に係る入力や表示出力等を行う部位であり、表示パネル33やMODEボタン34、OKボタン35、SELECTボタン36が備えられている。
【0031】
表示パネル33は、施術を行う使用者に対し各種設定の状態やアラーム等の情報を視覚的に提供する手段として機能する。
【0032】
MODEボタン34は、装置本体1の動作モードの選択を受け付けるための入力部である。本実施形態に係る光脱毛器Kでは、A~Dの4つのボタンが備えられており、それぞれ異なるモードが割り当てられている。追って詳述するが、本実施形態に係る光脱毛器Kには、ハンドピース5の移動方向に照射済領域を自動で連続的に形成して該照射済領域の脱毛を促す連続発光モードの実行手段や、所定の入力操作があったときに光源をパルス発光させて照射済領域を単発的に形成する単発光モードの実行手段が実装されており、例えばAボタンを押下した場合には連続発光モードに移行したり、Bボタンを押下した場合には単発光モードに移行するよう構成している。またその余のボタン、例えばCボタンやDボタンはフェイスやボディなど照射箇所に応じて適した発光となるモードに移行させるためのボタンである。
【0033】
OKボタン35は、使用者が所定の入力操作を行った際に、その入力を確定させるためのボタンである。例えば、前述のOKボタン35のうち所望するモードのボタンを押下した後は、このOKボタン35を押下することで、制御処理上においてその操作入力が確定する。
【0034】
SELECTボタン36は、光の強弱を調整するためのボタンであり、脱毛対象領域の皮膚の状態等に応じて適した光の強度が選択できるよう構成している。
【0035】
緊急停止ボタン31は、緊急事態が発生した場合に強制的に光の照射等を停止するためのボタンである。キースイッチ32は、図示しないキーを差し込み、時計回りに回すと電源が投入され操作可能となるスイッチ、すなわち電源スイッチである。
【0036】
また、装置本体1の前面には、先端にハンドピース5を備えた通電ケーブル4と装置本体1との接続部として機能するコネクタ部8が設けられている。コネクタ部8には、電気系統コネクタ81と冷却水コネクタ82とが設けられている。
【0037】
ハンドピース5は、
図2に示すように、背の低い半円柱状のハンドピース本体50と、同ハンドピース本体50の湾曲面50aより伸延させた棒状のグリップ部59とを備えており、使用者は、
図2(a)の如くグリップ部59を掴むか、または
図2(b)の如くハンドピース本体50を手で掴んだ状態で施療を行う。
【0038】
また、ハンドピース本体50の両側面は中央部がやや凹状に形成され、側面上部には半円弧状上面に沿った半円弧状の凸条が形成されており、施療者が片手の平で把持した際のグリップ性を向上させている。
【0039】
ハンドピース本体50には、
図2に示すように照射部55が、また
図1に示すように第1照射ボタン51や表示器53、照射カウンタ54が備えられている。
【0040】
照射部55は、脱毛対象領域にパルス光を出射するための部位であり、その主な構成としてキセノン管56や照射窓57を備えている。
【0041】
キセノン管56は、パルス光の光源として機能する部位であり、ハンドピース本体50の内部に配設されている。キセノン管56に対し瞬間的に高電圧を印加すると、毛根のメラニン色素に反応して熱を発する光がパルス光として発生する。発生するパルス光は、例えば20ms~1500msの幅で発光可能としている。また、キセノン管56の発光は、非点灯時にも微弱電流を流してシマー発光させておき、照射時に高速に発光できるようにしている。
【0042】
照射窓57は、キセノン管56にて発生させたパルス光をハンドピース本体50の外へ導くための窓であり、脱毛対象領域と対向させるハンドピース本体50の底面部50bに配されている。照射窓57は、本実施形態では一例としてサファイアからなる導光管にて構成しており、その大きさは、幅方向である長辺の長さAを60mm、長さ方向である短辺の長さBを20mmとしている。
【0043】
また、ハンドピース本体50の湾曲面50aに着目すると、同湾曲面50aには、表示器53及び第1照射ボタン51が設けられている。すなわち、半円弧状上面には先端部に小円形の照射準備ランプよりなる表示器53を配設し、その後方においてハンドピース本体50を手の平で把持した状態で人差指の先端腹面に位置する箇所に第1照射ボタン51が配設されており、更に、その後方に液晶表示窓からなる照射カウンタ54を配設している。
【0044】
表示器53は、発光ダイオード等の発光素子を備えており、連続発光モードにて使用者がハンドピース5を逆方向に走査際に、使用者に対してその旨を発光により報知するようにしている。
【0045】
第1照射ボタン51は、先述した単発光モードにおいて使用者が任意のタイミングで押下することにより照射部55からパルス光を出射させるためのボタンである。
【0046】
照射カウンタ54は、パルス光の出射回数が表示される部位である。同照射カウンタ54には、例えば光脱毛器Kを購入して設置した時からの累積照射回数が、制御部2の所定記憶領域に記憶されたカウンタ値に基づいて表示される。
【0047】
一方、棒状のグリップ部59はハンドピース本体のケースと一体に形成されており、ハンドピース本体の前後長さと略同一の長さに構成すると共に、ハンドピース本体の上面略凸半円弧状の延長基端部、すなわち、ハンドピース本体の基端上部に延設している。このように、ハンドピース本体50とグリップ部59とのどちらでも把持できる構成としているため、脱毛処理を行う処理部位に応じて操作しやすいグリップ形態をとることが可能である。
【0048】
また、グリップ部59には第2照射ボタン52が配設されている。この第2照射ボタン52は、
図2(a)に示すように、使用者がグリップ部59を把持した際に親指の腹が対向する位置に配置されており、単発光モードにおける所望のタイミングでのパルス光の出射、すなわち、第2照射ボタン52の押下が円滑に行われるよう構成しており、安全で確実な操作が可能である。
【0049】
また、グリップ部59からは、装置本体1と接続するための通電ケーブル4が延設されている。
【0050】
通電ケーブル4には、装置本体1とハンドピース5との間の各種信号のやり取りをする信号線やキセノン管56へ電力を供給する電力線、装置本体1とハンドピース5との間で冷却水を循環させるための冷却水パイプ64が収容されている。通電ケーブル4は、一端をコネクタ部8に、他端はグリップ部59を通してハンドピース本体50に接続している。
【0051】
また、本実施形態に係る光脱毛器Kの特徴の一つとして、ハンドピース本体50の底面部50bには、照射窓57の幅方向を成す辺57aに近接して移動検出部58が配設されている。この移動検出部58は、光脱毛器Kが連続発光モードの時に使用者がハンドピース5を把持し、照射窓57を脱毛対象領域に対向させて表面を走査した際に、脱毛対象領域表面の面方向に沿った照射窓57の移動を検出する移動検出手段の一部として機能する部位である。本実施形態において移動検出部58は、所謂光学マウスセンサを採用しており、内蔵された撮像素子によって得られる画像の経時変化の解析により、照射窓の微小時間(例えば、数十msec)内での移動における上記撮像素子に定義されたX軸及びY軸方向への移動量(ΔX,ΔY)が、同程度の微小時間毎に制御部2へ送出される。また、光学マウスセンサは、撮像素子に定義されたX軸方向が照射窓57の長さ方向と平行、Y軸方向が照射窓57の幅方向と平行となるよう配置されている。従って、光学マウスセンサである移動検出部58より供給される微小時間あたりのX軸方向への移動量ΔX及びY軸方向への移動量ΔYは、実質的には照射窓57のX軸及びY軸方向への移動量ΔX,ΔYとして供給される。なお本明細書では、脱毛対象領域と照射窓との関係を表すために、照射窓を脱毛対象領域に対向させた際に脱毛対象領域上に規定される座標系であって、脱毛対象領域の面に沿って照射窓の長さ方向をX軸方向とし、幅方向をY軸方向とする直交二次元座標系(以下、脱毛領域座標系と称する。)を仮定して説明する。また以下の説明においては、便宜上、移動検出部58からは照射窓57の微小時間あたりの脱毛領域座標系におけるX軸及びY軸方向への移動量ΔX,ΔYが得られるものとして説明する。
【0052】
また、本実施形態に係る光脱毛器Kの更なる特徴の一つとして、装置本体1の上面にはスピーカ41が配設されている。このスピーカ41は、使用者が施療中に表示パネル33を参照せずとも、現在のモードが何であるかなど光脱毛器Kの現在の状態を音響にて知得させるための部位であり、光脱毛器Kの状況を報知する報知手段の一部として機能する部位である。
【0053】
図3は冷却部6の構成を示した説明図である。冷却部6は、ハンドピース5のキセノン管56の発光に伴う発熱を冷却するための部位であり、装置本体1に内蔵した冷媒冷却部42と、ハンドピース5に内蔵した冷媒吸熱部43とを通電ケーブル4に内蔵した冷却水パイプ64を介し接続することで構成している。
【0054】
冷媒冷却部42は、冷却装置であるペルチェユニット61や、冷媒としての冷却水を補給したり貯水する冷却水タンク62、送水ポンプ63を備えている。
【0055】
ペルチェユニット61は、ペルチェ効果を利用した熱電素子であるペルチェ素子を用いた水冷による冷却装置であり、冷却水タンク62から供給された水を冷却する。冷却された水は、送水ポンプ63によりコネクタ部8の冷却水コネクタ82を介して送出される。
【0056】
冷却水コネクタ82には、冷却水パイプ64(往路冷却水パイプ64a及び復路冷却水パイプ64b)が接続しており、送出された冷却水は、通電ケーブル4内に収容されている往路冷却水パイプ64aを通してハンドピース5に入り、冷媒吸熱部43に至る。
【0057】
冷媒吸熱部43は、照射窓57の熱を奪えるように配された照射窓冷却管路43aと、キセノン管56の熱を奪えるように配されたキセノン管冷却管路43bと、照射窓冷却管路43aより吐出された冷却水をキセノン管冷却管路43bへ供給するための連結管路43cとを備えている。なお、図示の便宜上、冷媒吸熱部43をキセノン管56と照射窓57との間に示しているが、実際はキセノン管56にて発生させたパルス光が照射窓57へ導かれるのを妨げない位置に配している。
【0058】
冷媒吸熱部43に供給された冷却水は、照射窓冷却管路43aにて照射窓57を冷却し、連結管路43cを介してキセノン管冷却管路43bに導入され、キセノン管56冷却して冷媒吸熱部43より吐出される。
【0059】
冷媒吸熱部43を経た冷却水は、通電ケーブル4内に収容されている復路冷却水パイプ64bを通して装置本体1に入り、冷媒冷却部42内のペルチェユニット61に至ることで循環され、再び冷却される。このようにして、冷却部6はハンドピース本体50の照射部55に設けたキセノン管56及び照射窓57を冷却する。
【0060】
次に、本実施形態に係る光脱毛器Kの電気的構成について説明する。
図4は本実施形態に係る光脱毛器Kの電気的構成を示した説明図である。
【0061】
制御部2は、内部にCPU21、ROM22、RAM23等を備えており、光脱毛器Kの稼動に必要なプログラムを実行可能としている。また、制御部2内のRAM23には、移動スピード警報処理にて参照される待ち時間値、移動距離変換係数、照射窓の幅及び長さの値が格納されている。また、RAM23には、後述の連続発光モード実行処理にて参照される閾角αが記憶される場合もある。なお、この閾角αを記憶するRAM23は、閾角記憶手段として機能して、本実施形態に係る光脱毛器Kの閾角提供手段としての役割を担うこととなる。
【0062】
閾角αは、矩形状の照射窓の幅方向の長さと長さ方向の長さとにより規定される数値範囲から指定された値であり、具体的には、[90°-{arctan(B/A)}°]±5°の範囲内の値である。なお、本実施形態に係る光脱毛器Kでは、A=60mm、B=20mmであることから、[90°-{arctan(B/A)}°]±5°が66.6°~76.5°の範囲であり、閾角αは小数点第2位を四捨五入した{arccos(B/A)}°の値でもある70.5°としている。なお、本技術を権利化するにあたり、閾角αの値を、[90°-{arctan(B/A)}°]±5°に基づく値ではない値とすることを妨げない。例えば、閾角αの値を、{arccos(B/A)}°としたり、経験に基づいてこの値に許容範囲を加えたり、また更には、数式等に基づかず経験に基づいた所定の値としてもよい。本願は、上位の観点から言えば、閾角の根拠は何であれ、所定の閾角αを境に処理を違えるという点で既に特徴的であるといえる。
【0063】
この閾角αは、RAM23の所定のアドレスに予め記憶させていても良く、また、照射窓のサイズに基づいて[90°-{arctan(B/A)}°]+β(但しβは、-5°≦β≦5°の任意の数値)により求められる値を算出し、RAM23の所定のアドレスに記憶させることも可能であるし、算出した値を処理において直接的に参照するよう構成しても良い。
【0064】
例えば前者の如く閾角αを予め記憶させておくケースとしては、例えば光脱毛器Kの製造工程にて予め閾角αを記憶させておいたり、ハンドピース5内に設けたメモリ等に予め閾角αを記憶させておき、装置本体1により参照可能とする場合が考えられる。特にハンドピース5内に記憶させた場合には、別のサイズの照射窓を備えたハンドピースを付け替えた際に、装置本体1がハンドピース5のメモリ内の閾角αを参照することで、閾角αの変更作業等を要することなく簡便である。この場合、この閾角αを記憶する構成、例えばRAM23であったり、不揮発性メモリであったり、その他の各種記憶媒体は、閾角記憶手段であって、CPU21が処理を実行するにあたり閾角を提供する閾角提供手段の一態様である。
【0065】
また例えば後者の如く、照射窓のサイズに基づき算出するケースとしては、制御部2に閾角αの算出手段を設け、光脱毛器Kの製造工程にてメモリ等に予め照射窓サイズを記憶させておき、同記憶を閾角αの算出手段にて参照することで閾角αを算出可能としたり、使用者に照射窓のサイズを入力させて閾角αを算出可能としたり、ハンドピース5内に設けたメモリ等に照射窓サイズを予め記憶させておき、装置本体1により参照可能とすることで閾角αを算出可能としたり、また、この算出した値を所定の記憶領域に記憶させこれを参照するように構成することも可能である。この場合、この閾角αを算出する閾角算出手段は、CPU21が処理を実行するにあたり閾角を提供する閾角提供手段の一態様である。
【0066】
なお、本願明細書における「閾角αを提供する閾角提供手段」は、上述した技術思想からも明らかなように、閾角αの値を直接に記憶しているメモリ等のほかに、照射窓のサイズを記憶しておりこれをベースに算出することで実質的には閾角αを記憶しているのと同様に閾角の提供が可能となるよう構成された手段も含むと解すべきである。なお、本実施形態では、閾角提供手段の一例として、RAM23を閾角記憶手段として機能させた例について説明する。
【0067】
移動スピード警報処理にて参照される待ち時間値は、パルス発光手段によるパルス発光を行うにあたり、前回のパルス発光からの経過時間がこの待ち時間値よりも小さい場合に、使用者に対し報知するための値である。本実施形態では待ち時間値は0.1秒としている。
【0068】
パルス発光を行うにあたっては、キセノン管56を発光させるために必要な大電力を供給するための回路的な制約であったり、単位時間内の照射回数についての安全上の制約などがあるため、パルス発光の発光間隔として所定のインターバル時間が必要となる。
【0069】
本実施形態に係る光脱毛器Kでは、この所定のインターバル時間を規定するのが待ち時間値であり、この待ち時間値は移動スピードが速すぎる際に使用者に対して警報を行う移動スピード警報手段によって参照される。
【0070】
そして、連続発光モードにおいてパルス発光を行うべき位置に照射窓が到達したものの、例えば移動速度が早すぎて電気的な準備が整っていなかったり安全上発光すべきでない場合、付言すれば、前回のパルス発光から待ち時間値未満の時間しか経過していない場合に、移動スピードが不適であると判定して施術者に警報が発せられる。
【0071】
移動距離変換係数は、移動検出部58より供給される照射窓57の移動量ΔX,ΔYや、積算された移動量などについて、脱毛対象領域上での移動距離を算出するために使用する係数である。この移動距離変換係数もまた、閾角αと同様に、ハンドピース5内に設けた所定の記憶領域に記憶させるよう構成しても良い。
【0072】
また、RAM23の所定アドレスには、現在のモードを示すモード値や、X軸方向積算移動距離、Y軸方向積算移動距離、移動角度θ、連続発光中フラグが記憶される。モード値は、スタンバイモードのときは「0」、単発光モードのときは「1」、連続発光モードのときは「2」の値をとる。また、X軸方向積算移動距離及びY軸方向積算移動距離は、直前のパルス光出射位置から現在の位置までの移動検出部58より供給される照射窓57の移動量ΔX,ΔYに移動距離変換係数を乗じて得た積算値である。また移動角度θは、直前のパルス光出射位置から現在の位置までの照射窓57の脱毛領域座標系における移動方向と脱毛領域座標系のX軸(例えば、直前のパルス光出射位置又は現在位置でのX軸。)とが成す角度である。また、連続発光中フラグは、連続発光モードにおいて自動的に発光すべき状態か否かを示すフラグであり、最初のパルス発光が未だ行われていない場合はOFFの値をとり、最初のパルス発光が行われ連続して自動的に発光を行うべく照射ボタンが押下されたままとなっている場合はONの値をとる。
【0073】
また、制御部2には、
図4に示すように、入力系構成として操作パネル30や移動検出部58、第1照射ボタン51、第2照射ボタン52が、また出力系構成として表示パネル33やペルチェユニット61、送水ポンプ63、スピーカ41、キセノン管56、表示器53、照射カウンタ54が電気的に接続されており、制御部2におけるプログラムの実行状況に応じて参照されたり、制御駆動するよう構成している。これら入出力系構成は、必要に応じて各部駆動回路24を介して駆動や制御がなされる。
【0074】
例えば、移動検出部58より供給される照射窓57の移動量ΔX,ΔYのデータは、前述したRAM23の所定アドレス内に逐次格納される。
【0075】
また、使用者が表示パネル33の各ボタンを操作することで入力された情報も、RAM23の所定アドレス内に逐次格納される。例えば、緊急停止ボタン31が押下された旨の情報や、MODEボタン34によって所定のモードが選択された旨の情報、SELECTボタン36により指定された発光強度の情報などが記憶される。
【0076】
また、使用者が第1照射ボタン51や第2照射ボタン52を操作した情報も、RAM23の所定アドレス内に逐次格納される。
【0077】
次に、制御部2において実行される処理について、
図5を参照しつつ説明する。
図5は、本実施形態に係る光脱毛器Kのメイン処理を示したフローである。なお、メイン処理では光脱毛器Kの動作制御や使用者の操作応答などの装置全体を統括する処理も実行されるが、ここでは、連続発光モードを実行するための処理や、単発光モードを実行するための処理を中心に説明し、その他の各種処理についての説明は省略する。
【0078】
メイン処理において制御部2のCPU21はまず、RAM23のアクセス許可や作業領域初期化等の初期化処理を実行する(ステップS11)。具体的には、モード値の値をスタンバイモードの「0」とし、X軸方向積算移動距離やY軸方向積算移動距離、移動角度θの値をそれぞれ「0」にリセットする。また、本ステップにおいてCPU21は、部駆動回路24を介してキセノン管56のシマー発光を開始させる。
【0079】
次にCPU21は、光脱毛器Kが備える各種機能を実現するための各種処理を実行する(ステップS12)。一例を挙げるならば、この各種処理では、RAM23の所定アドレスを参照し、緊急停止ボタン31の押下や、MODEボタン34によるモードの選択に応じて処理を行う。緊急停止ボタン31が押下されたと判断した場合には、モード値の値をスタンバイモードの「0」に設定し、その他のモードから離脱する。またMODEボタン34が押下された場合には、押下されたボタンのモードに応じたモード値に値を変更する。
【0080】
また本ステップS12では、冷却部6の駆動を開始させる。すなわち、CPU21は、部駆動回路24を介して送水ポンプ63を駆動させると共に、ペルチェユニット61を稼働させて冷却水の循環及び冷却を行う。
【0081】
ステップS12を終えたCPU21は次に、単発光モード実行処理を実行する(ステップS13)。単発光モード実行処理は、使用者による所定の入力操作がない限り前記光源を発光させず、前記入力操作があったときは前記光源をパルス発光させて照射済領域を単発的に形成するための処理であり、詳細については後に
図6を参照しつつ説明する。なお、制御部2がこのステップS13の単発光モード実行処理を実行することで、本実施形態に係る光脱毛器Kの単発光モード実行手段として機能する。
【0082】
次にCPU21は、ステップS14において連続発光モード実行処理を実行する。連続発光モード実行処理は、平行又は斜行移動照射作業において使用者が照射窓57を移動させ、照射標的領域が直前の照射済領域との外接位置に達した際に自動的にキセノン管56を発光させて照射窓57からパルス光を出射させ、脱毛対象領域上に連続照射済領域を形成するための処理であり、詳細については後に
図7を参照しつつ説明する。なお、制御部2がこのステップS14を連続発光モード実行処理を実行することで、本実施形態に係る光脱毛器Kの連続発光モード実行手段として機能する。
【0083】
次にCPU21は、音響報知処理を実行する(ステップS15)。具体的には、RAM23の所定アドレスに記憶されているモード値を参照し、現在のモードに応じた音響をスピーカ41より再生する。この音響は、使用者が現在のモードを判別できる音響であれば特に限定されるものではなく、例えば「ピッピッ」や「プップッ」の如き電子音や効果音であったり、鳥のさえずりの如き環境音でも良いし、所定の楽曲を採用することも可能である。なお、制御部2がこの音響報知処理を実行することで、本実施形態に係る光脱毛器Kの報知手段として機能する。本ステップS14を終了すると、CPU21は処理をステップS12へ戻す。
【0084】
次に、ステップS13の単発光モード実行処理について
図6を参照しつつ説明する。
【0085】
単発光モード実行処理においてCPU21はまず、RAM23の所定アドレスを参照し、モード値の値が1であるか否か、すなわち単発光モードが選択されているか否かについて判断を行う(ステップS21)。ここでモード値が1でないと判断した場合(ステップS21:No)には、CPU21は処理をメイン処理へ戻す。一方、モード値が1であると判断した場合(ステップS21:Yes)には、CPU21は処理をステップS22へ移す。
【0086】
ステップS22においてCPU21は、RAM23の所定アドレスを参照し、第1照射ボタン51又は第2照射ボタン52のいずれかが押下されたか否かについて判断を行う。ここで照射ボタンが押下されていないと判断した場合(ステップS22:No)にはCPU21は処理をメイン処理に戻す。一方、照射ボタンが押下されたと判断した場合(ステップS22:Yes)には、CPU21は処理をステップS23へ移す。
【0087】
ステップS23においてCPU21は、パルス発光処理を行う。具体的には、RAM23を参照し、使用者により指定された発光強度やパルス幅にて部駆動回路24を介し、キセノン管56を発光させる。本ステップS23を終了すると、CPU21は処理をメイン処理へ戻す。
【0088】
次に、ステップS14の連続発光モード実行処理について
図7を参照しつつ説明する。
【0089】
連続発光モード実行処理においてCPU21はまず、RAM23の所定アドレスを参照し、モード値の値が2であるか否か、すなわち連続発光モードが選択されているか否かについて判断を行う(ステップS31)。ここでモード値が2でないと判断した場合(ステップS31:No)には、CPU21は処理をメイン処理へ戻す。一方、モード値が2であると判断した場合(ステップS31:Yes)には、CPU21は処理をステップS32へ移す。
【0090】
ステップS32においてCPU21は、RAM23の所定アドレスを参照し、第1照射ボタン51又は第2照射ボタン52のいずれかが押下されたか否かについて判断を行う。ここで照射ボタンが押下されていないと判断した場合(ステップS32:No)にはCPU21は処理をステップS33へ移す。
【0091】
ステップS33においてCPU21は、RAM23の所定アドレスに記憶しているX軸方向への積算移動距離とY軸方向への積算移動距離をリセットすると共に、連続発光中フラグの値をOFFにする。本ステップS33を終えるとCPU21は、処理をメイン処理に戻す。
【0092】
一方、ステップS32において、照射ボタンが押下されたと判断した場合(ステップS32:Yes)には、CPU21は処理をステップS34へ移す。
【0093】
ステップS34においてCPU21は、RAM23を参照し、連続発光中フラグの値がONであるか否かについて判断を行う。ここで連続発光中フラグの値がONではないと判断した場合(ステップS34:No)には、CPU21は処理をステップS35へ移す。
【0094】
ステップS35においてCPU21は、パルス発光処理を行う。具体的には、RAM23を参照し、使用者により指定された発光強度やパルス幅にて部駆動回路24を介し、キセノン管56を発光させる。なお、連続発光中フラグの値がOFFである場合は、連続発光中フラグの値をONに設定する。また、本ステップS35では、連続発光中フラグの値がONである場合は、X軸方向への積算移動距離とY軸方向への積算移動距離をリセットする。本ステップS35を終了すると、CPU21は処理をメイン処理へ戻す。
【0095】
一方、ステップS34において、連続発光中フラグの値がONであると判断した場合(ステップS34:Yes)には、CPU21は処理をステップS36へ移す。
【0096】
ステップS36においてCPU21は、RAM23の所定アドレスに格納された移動検出部58からのΔX及びΔYの値を取得し、移動距離変換係数を参照した上で元の積算移動距離に差分の移動距離を加算してX軸方向積算移動距離とY軸方向積算移動距離の算出を行う。
【0097】
また本ステップS36においてCPU21は、X軸方向積算移動距離とY軸方向積算移動距離に基いて、原点である直前のパルス光出射位置から現在の位置までの照射窓57の脱毛領域座標系における移動方向と脱毛領域座標系のX軸(例えば、直前のパルス光出射位置又は現在位置でのX軸。)とが成す角度θを算出する。
【0098】
次にCPU21は、RAM23の所定アドレスに記憶された閾角αを参照し(ステップS37)、処理をステップS38へ移す。
【0099】
ステップS38においてCPU21は、角度θが0°≦θ≦αの範囲内であるか否かについて判断を行う。ここで角度θが0°≦θ≦αの範囲内であると判断した場合(ステップS38:Yes)には、CPU21は処理をステップS39へ移す。
【0100】
ステップS39においてCPU21は、ステップS36の前回の実行により取得した予め記憶しているΔXの値と、今回のステップS36の実行により取得したΔXの値をと比較して、ΔXの符号が逆に、すなわち正の値の場合は負に、負の値の場合は正になっているか否かについて判断を行う。ここで符号が逆になっていると判断した場合(ステップS39:Yes)には、CPU21は処理をステップS40へ移す。
【0101】
ステップS40においてCPU21は、モード値の値を単発光モードを示す1に設定すると共に、照射窓57がこれまで進行していた方向に対し逆方向へ移動させられたこと、換言すればハンドピース5を逆方向に走査したことを使用者に対して報知する。なお、この報知は、音響にて聴覚的に行っても良いし、表示によって視覚的に行っても良く、またこれらを同時に行うことも可能である。音響にて行う場合は、装置本体1又はハンドピース5に設けたスピーカ41を介して行うことができ、表示による場合は表示パネル33や表示器53を介して行うことができる。本ステップS40を終えると、CPU21は処理をステップS33へ移す。
【0102】
一方、ステップS39において符号が逆ではないと判断した場合(ステップS39:No)には、CPU21は処理をステップS41へ移す。
【0103】
ステップS41においてCPU21は、RAM23やハンドピース5内に設けた記憶手段等に記憶されている照射窓57の長さ方向の長さBの値(例えば本実施形態ではB=20mm)を参照し、ステップS36にて算出したX軸方向積算移動距離が長さB以上の長さとなったか否かについて判断を行う。ここで、X軸方向積算移動距離が長さB以上の長さとなっていないと判断した場合(ステップS41:No)には、CPU21は処理をメイン処理へ戻す。一方、X軸方向積算移動距離が長さB以上の長さとなったと判断した場合(ステップS41:Yes)には、CPU21は処理をステップS42へ移す。
【0104】
ステップS42においてCPU21は、RAM23に格納されている待ち時間値を参照し、前回のパルス発光時からの経過時間が待ち時間値以上となったか否かについて判断を行う。ここで、経過時間が待ち時間値以上であると判断した場合(ステップS42:Yes)には、CPU21は処理をステップS35へ移す。一方、経過時間が待ち時間値以上ではないと判断した場合(ステップS42:No)には、CPU21は処理をステップS43へ移す。
【0105】
ステップS43においてCPU21は、移動スピードが速すぎる旨の警報を使用者に対して発報し報知する。この報知もまた、前述したステップS40における逆方向への移動がされた旨の報知と同様に、音響にて聴覚的に行っても良いし、表示によって視覚的に行っても良く、またこれらを同時に行うことも可能である。本ステップS43を終えると、CPU21は処理をメイン処理へ移す。
【0106】
ここで、前述したステップS38の説明に戻り、同ステップS38において角度θが0°≦θ≦αの範囲内ではないと判断した場合(ステップS38:No)には、CPU21は処理をステップS44へ移す。
【0107】
ステップS44においてCPU21は、角度θがα<θ≦90°の範囲内であるか否かについて判断を行う。ここで角度θがα<θ≦90°の範囲内でないと判断した場合(ステップS44:No)には、CPU21は処理をステップS33へ移す。一方、角度θがα<θ≦90°の範囲内であると判断した場合(ステップS44:Yes)には、CPU21は処理をステップS45へ移す。
【0108】
ステップS45においてCPU21は、ステップS36の前回の実行により取得した予め記憶しているΔYの値と、今回のステップS36の実行により取得したΔYの値をと比較して、ΔYの符号が逆に、すなわち正の値の場合は負に、負の値の場合は正になっているか否かについて判断を行う。ここで符号が逆になっていると判断した場合(ステップS45:Yes)には、CPU21は処理をステップS40へ移す。一方、ステップS45において符号が逆ではないと判断した場合(ステップS45:No)には、CPU21は処理をステップS46へ移す。
【0109】
ステップS46においてCPU21は、RAM23やハンドピース5内に設けた記憶手段等に記憶されている照射窓57の幅方向の長さAの値(例えば本実施形態ではA=60mm)を参照し、ステップS36にて算出したY軸方向積算移動距離が長さA以上の長さとなったか否かについて判断を行う。ここで、Y軸方向積算移動距離が長さA以上の長さとなっていないと判断した場合(ステップS46:No)には、CPU21は処理をメイン処理へ戻す。一方、Y軸方向積算移動距離が長さA以上の長さとなったと判断した場合(ステップS46:Yes)には、CPU21は処理をステップS42へ移す。
【0110】
次に、このような構成を備えた本実施形態に係る光脱毛器Kの動作について
図8~
図11を参照しつつ説明する。
【0111】
使用者はまず、光脱毛器Kの装置本体1の操作部3に備えられたキースイッチ32にキーを挿入して回転させる。これに伴い、制御部2ではステップS11にて初期設定が行われ、スタンバイモードとして光脱毛器Kが起動する。
【0112】
次に使用者は脱毛施療にあたり、所望のモードを選択する。例えばMODEボタン34のBボタンを押下して単発光モードを選択した場合は、ステップS13の単発光モード実行処理が実行されることで制御部2が単発光モード実行手段として機能し、使用者の任意のタイミングで第1又は第2の照射ボタンが押下される毎にパルス光が照射窓57より出射される。
【0113】
また、脱毛施療にあたり、使用者がMODEボタン34のAボタンを押下して連続発光モードを選択した場合は、ステップS14の連続発光モード実行処理が実行されることで制御部2が連続発光モード実行手段として機能する。
【0114】
そして、脱毛対象領域に対向させた照射窓57の、脱毛対象領域の面方向に沿った直線的な移動に伴う移動検出部58からの情報に基づいて、照射標的領域が直前の照射済領域と外接する照射窓57の位置でキセノン管56をパルス発光させ、移動方向に連続照射済領域Vを形成して脱毛が促される。
【0115】
また、制御部2が連続発光モード実行処理を実行した際、ステップS36を実行することで移動距離・角度算出手段として機能し、移動検出部58から供給されたΔX及びΔYに基づき、直前のパルス光出射位置から現在の位置までの照射窓57の脱毛領域座標系における移動方向と同座標系のX軸とが成す角度θと、脱毛領域座標系におけるX軸方向及びY軸方向への積算移動距離とが算出される。
【0116】
また、脱毛領域座標系のX軸方向にB、Y軸方向にAの長さを有する矩形状の照射窓を備えた光脱毛器Kにおいて、RAM23は閾角αとして、[90°-{arctan(B/A)}°]±5°の範囲内の所定の角度を記憶している。例えば本実施形態に係る光脱毛器Kでは、A=60mm、B=20mmであることから、[90°-{arctan(B/A)}°]±5°が66.6°~76.5°の範囲であり、閾角αは小数点第2位を四捨五入した{arccos(B/A)}°の値でもある70.5°としており、この値が記憶されることで閾角記憶手段として機能している。なお、この閾角αを算出するまでの計算過程は、光脱毛器K内に実装されていてもよいし、予め計算した上で値のみを光脱毛器Kに記憶させても良い。すなわち、本願は光脱毛器のパルス発光を自動的に行うにあたり、照射窓短辺と移動方向との成す角度を大きくした場合であっても、直前の照射済領域と外接する位置にて自動的にパルス光を照射すべく行うための基準となる角度の計算方法や計算手段、閾角提供手段等を提案するものでもある。
【0117】
そして、閾角αをステップS37で参照した上で、ステップS38やステップS44、ステップS41やステップS46が実行され、各条件に適合してステップS35が実行されることで、角度θが0°≦θ≦閾角αの場合は、X軸方向への積算移動距離がB以上であればキセノン管56をパルス発光させ、角度θが閾角α<θ≦90°の場合は、Y軸方向への積算移動距離がA以上であればキセノン管56をパルス発光させるパルス発光手段が実現される。
【0118】
ここで図面を参照しつつ、より具体的に検討する。まず、
図8に示すように、被施療者Gの腕にハンドピース5の照射窓57を対向させ、ハンドピース5を腕Grの伸延方向に移動させつつ、この移動方向に対し照射窓57に傾き角度θを持たせた状態で行う斜行移動照射作業を想定する。
【0119】
このような場合、角度θが例えば30°の場合は、0°≦θ≦70.5°(閾角α)であるため、
図9(a)に示すように、照射窓57の照射済領域U10から照射標的領域T11への移動に係るX軸方向への積算移動距離、理解を容易にするために基準点を示して説明すれば、照射済領域U10を照射した際の照射窓57の基準点の位置P10から、照射標的領域T11の基準点P11まで移動したときの距離と方向のベクトルM11の脱毛領域座標系におけるX軸方向成分であるMb11に相当するX軸方向への積算移動距離が、照射窓57の長さ方向の長さBである20mmとなれば外接位置となり、20mm以上(例えば20mm~25mm程度)となった照射標的領域T11の位置でパルス発光が行われ、これを繰り返すことで連続照射済領域Vの形成が行われる。従って、実効照射幅=Acosθ=60mm×cos30°≒52mmの幅で脱毛作業が行われる。なお、
図9(a)において照射済領域U10の辺に沿って示す直交矢印は、照射済領域U10の位置に照射窓57があったときの脱毛対象領域Q表面上に規定される脱毛領域座標系のX軸及びY軸を示している。
【0120】
また、脱毛対象領域Qの幅をより狭く、換言すれば実効照射幅をより狭くすべく角度θを例えば60°とした場合も、前述の30°の場合と概ね同様である。すなわち、0°≦θ≦70.5°(閾角α)であるため、
図9(b)に示すように、照射窓57の照射済領域U12から照射標的領域T13への移動(M13)に係るX軸方向への積算移動距離(Mb13)が、照射窓57の長さ方向の長さBである20mmとなれば外接位置となり、20mm以上となった照射標的領域T13の位置でパルス発光が行われ、これを繰り返すことで連続照射済領域Vの形成が行われる。従って、実効照射幅=Acosθ=60mm×cos60°=30mmの幅で脱毛作業が行われる。
【0121】
ここで、実効照射幅を更に狭くすべく、角度θを[90°-{arctan(B/A)}°]とした場合、例えば本実施形態の[90°-{arctan(B/A)}°]≒71.6°とした場合、
図10(a)に示すように、照射済領域U14の移動方向側先端隅部と照射標的領域T15の対角隅部とで外接することになる。
【0122】
従って、[90°-{arctan(B/A)}°](ここでは、71.6°)よりも大きな角度θとした場合、X軸方向への積算移動距離が照射窓57の長さ方向の長さBである20mmとなっても外接できず、また、照射窓57の照射済領域U14から照射標的領域T15への移動(M15)の長さに対してX軸方向への積算移動距離(Mb15)が小さく、誤差が生じやすい状態となってしまう。ただし、パルス光による脱毛への影響は、照射された光の強度や皮膚の状態によって多少の誤差がある。
【0123】
そこで本実施形態に係る光脱毛器Kでは、[90°-{arctan(B/A)}°]で表される角度に対し、本発明者らの脱毛に関する長年の経験を踏まえ、±5°の幅をもたせた範囲内にて規定される値を閾角αとすることとしている。
【0124】
また本発明では特に、角度θが閾角αよりも大きなα<θ≦90°の範囲となった場合、ステップS44やステップS46を実効することで、Y軸方向への積算移動距離が57の幅方向の長さAである60mm以上であればキセノン管56をパルス発光させることとしている。
【0125】
これにより、
図10(b)に示すように、本実施形態に係る光脱毛器Kにおいて閾角αの値として採用した70.5°とした場合、角度θが例えば80°となった場合には、、
図10(b)に示すように、照射窓57の照射済領域U16から照射標的領域T17への移動(M17)に係るY軸方向への積算移動距離(Ma17)が、照射窓57の幅方向の長さAである60mmとなれば外接位置となり、60mm以上となった照射標的領域T17の位置でパルス発光が行われ、これを繰り返すことで連続照射済領域Vの形成が行われる。このとき、先述の実効照射幅の概念に従い、実効照射幅=Bsinθ=20mm×sin80°≒19.7mmの幅で脱毛作業が行われる。
【0126】
また特に、角度θが90°の場合、
図11に示すように、照射窓57の照射済領域U18から照射標的領域T19への移動(M19)に係るX軸方向への積算移動距離(Mb19)が0となってしまうため、従来の光脱毛器では外接位置を判断することができず適切なパルス照射は困難であったが、本実施形態に係る光脱毛器Kによれば、α<θ≦90°の場合には、Y軸方向への積算移動距離(Ma19)が、照射窓57の幅方向の長さAである60mm以上となった照射標的領域T19の位置でパルス発光を行うこととしたため、外接する正しい位置でパルス光を出射して照射済領域を形成することができ、これを繰り返すことで連続照射済領域Vの形成が可能となる。なおこのとき、実効照射幅=Bsinθ=20mm×sin90°=20mmの幅で脱毛作業が行われる。
【0127】
また、本実施形態に係る光脱毛器Kの特徴として、ステップS14にて実行する連続発光モード実行処理において、ステップS38やステップS39を実行することで、角度θが0°≦θ≦αの場合はΔXの符号が前回の微小時間内でのΔXの符号に対し反転した場合には、ステップS40を実行して単発光モードに移行するとともに、使用者に対してその旨報知するよう構成している。
【0128】
また、ステップS44やステップS45を実行することで、角度θがα<θ≦90°の場合はΔYの符号が前回の微小時間内でのΔYの符号に対し反転した場合にも、ステップS40を実行して単発光モードに移行し、使用者に対してその旨報知するよう構成している。
【0129】
このように、本実施形態に係る光脱毛器Kでは重複照射抑制手段を実現しており、これによれば、施療者がハンドピースをこれまでの移動方向と逆方向に移動させた場合、連続発光モードから脱して単発光モードへ移行するため、より安全な施療が可能な光脱毛器を提供することができる。また特に、角度θが0°(平行移動照射作業)や90°のときにも機能する重複照射抑制手段が実現される。
【0130】
また本発明では、メイン処理においてステップS15の音響報知処理を実行することで、使用中のモードなど現在の光脱毛器Kの状況を使用者に対し音響にて報知する報知手段が実現されており、使用者は視覚的に現在の状況等を確認する必要がなく、施術に集中することが可能となる。なお、本実施形態において報知手段はスピーカ41を介して音響により行うこととしたが、使用者が現在の光脱毛器Kの状況を知得可能であれば、これに限定されるものではない。例えば、光や振動でおこなったり、これらを併用することで報知手段を構成することも可能である。特に光により報知する場合には、光脱毛器Kの状態と発光色とを対応付けしたり、所定のインジケータの如き構成を介して光により報知することで、光脱毛器Kの現状を使用者に的確に把握させることができる。
【0131】
また、本発明では、ステップS14にて実行される連続発光モード実行処理において、ステップS42を実行することにより、前回のパルス発光からの経過時間が所定時間以下、すなわち、予め定義した待ち時間値以下の場合には、ステップS35にて行うパルス発光処理の前にステップS43を実行して使用者に対し移動スピード警報を報知するよう移動スピード警報手段を構築している。
【0132】
従って、光脱毛器の状態がパルス発光可能な状態となるために必要な時間を確保して、堅実な施術を行わせることができる。
【0133】
上述してきたように、本実施形態に係る光脱毛器Kによれば、光源からのパルス光を出射する照射窓と、脱毛対象領域表面の面方向に沿った前記照射窓の移動を検出して移動量の情報を送出する移動検出手段と、前記脱毛対象領域に対向させた前記照射窓の前記面方向に沿った直線的な移動に伴う前記移動検出手段からの情報に基づいて、前記照射窓よりパルス光が出射されたならば照射される脱毛対象領域表面上の領域が直前の照射済領域と外接する前記照射窓の位置で前記光源をパルス発光させ、移動方向に照射済領域を連続的に形成して該照射済領域の脱毛を促す連続発光モード実行手段を備えた制御部と、を有する光脱毛器において、前記照射窓は、前記脱毛対象領域の表面に仮定される直交二次元座標系のX軸方向にB、Y軸方向にAの長さを有する矩形状であり、前記連続発光モード実行手段は、前記移動検出手段から供給された所定の微小時間内での前記座標系におけるX軸方向及びY軸方向への移動量の情報に基づき、直前のパルス光出射位置から現在の位置までの前記照射窓の前記座標系における移動方向と同座標系のX軸とが成す角度θと、前記座標系におけるX軸方向及びY軸方向への積算移動距離とを算出する移動距離・角度算出手段と、[90°-{arctan(B/A)}°]±5°である閾角αを提供する閾角提供手段と、前記角度θが0°≦θ≦αの場合は、前記X軸方向への積算移動距離がB以上であれば前記光源をパルス発光させ、前記角度θがα<θ≦90°の場合は、前記Y軸方向への積算移動距離がA以上であれば前記光源をパルス発光させるパルス発光手段と、を備えることとしたため、斜行移動照射作業を行う際に、ハンドピースの傾き(照射窓短辺と移動方向との成す角度)を大きくした場合であっても、直前の照射済領域と外接する位置にて自動的にパルス光を照射できる光脱毛器を提供することができる。
【0134】
最後に、上述した各実施の形態の説明は本発明の一例であり、本発明は上述の実施の形態に限定されることはない。このため、上述した各実施の形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることは勿論である。
【0135】
例えば、本実施形態に係る光脱毛器Kにおいて移動検出部58は、光学マウスセンサを採用したがこれに限定されるものではない。例えば、ボールマウスの如くボールとロータリーエンコーダとの組み合わせにて移動検出部58を構成しても良いのは勿論である。すなわち移動検出部58は、照射窓の移動を検出してΔXやΔYなどの情報を制御部2に対して提供可能であれば、その構成は公知の技術に基づき適宜選択することができる。
【符号の説明】
【0136】
1 装置本体
2 制御部
5 ハンドピース
21 CPU
22 ROM
23 RAM
24 各部駆動回路
34 MODEボタン
41 スピーカ
51 第1照射ボタン
52 第2照射ボタン
53 表示器
55 照射部
56 キセノン管
57 照射窓
58 移動検出部
A 長さ
B 長さ
ΔX,ΔY 移動量
α 閾角
θ 角度
K 光脱毛器
Q 脱毛対象領域
T 照射標的領域
U 照射済領域
V 連続照射済領域