(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-03
(45)【発行日】2023-10-12
(54)【発明の名称】接合体、及び基材の接合方法
(51)【国際特許分類】
B32B 7/14 20060101AFI20231004BHJP
B32B 37/12 20060101ALI20231004BHJP
C09J 5/00 20060101ALI20231004BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20231004BHJP
【FI】
B32B7/14
B32B37/12
C09J5/00
C09J201/00
(21)【出願番号】P 2019145195
(22)【出願日】2019-08-07
【審査請求日】2022-07-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000165
【氏名又は名称】弁理士法人グローバル・アイピー東京
(72)【発明者】
【氏名】山元 裕太郎
(72)【発明者】
【氏名】木村 和資
(72)【発明者】
【氏名】影山 裕一
【審査官】大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】特許第6475948(JP,B2)
【文献】特開2012-139974(JP,A)
【文献】特開2019-119147(JP,A)
【文献】特開平06-008366(JP,A)
【文献】特開2007-237680(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0239224(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00- 5/10
C09J 9/00-201/10
B05D 1/00- 7/26
B29C 65/00-65/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに向き合う接合面を有する2つの基材と、
前記基材が接合されるよう前記接合面の間に介在し、前記接合面に沿って所定の方向に設けられた接着剤層と、を備え、
前記接着剤層は、前記所定の方向と直交し前記接合面と平行な幅方向の長さの長短により形成される幅広部及び幅狭部を有し、
前記幅狭部は、前記幅広部に対し、前記所定の方向の両側に配置され、
前記幅狭部は、前記幅広部より弾性率が低く、
前記接着剤層の幅方向の長さが最小となる部分を含み、前記幅狭部それぞれは、前記接着剤層の前記所定の方向の端から前記接着剤層の前記所定の方向長さの10%以上40%未満の領域であり、
前記幅広部は、前記幅方向に弾性率が一定であ
り、前記接着剤層の幅方向の長さが最大となる部分を含み、前記接着剤層の重心が位置する前記所定の方向の位置から前記所定の方向の両側に、前記接着剤層の前記所定の方向長さの10%以上40%未満の領域である、ことを特徴とする接合体。
【請求項2】
前記接着剤層は、接着剤の硬化反応により形成され、
前記幅広部と前記幅狭部とで、前記接着剤の組成比が異なっている、請求項1に記載の接合体。
【請求項3】
前記基材は、23℃での線膨張係数の差が5×10
-6/K以上である異種材料から構成される、請求項1又は2に記載の接合体。
【請求項4】
前記幅狭部の弾性率に対する前記幅広部の弾性率の比は2以上である、請求項1から3のいずれか1項に記載の接合体。
【請求項5】
前記幅広部及び前記幅狭部それぞれの幅方向長さは、前記所定の方向にわたり一定であり、
前記幅広部の幅方向の長さに対する前記幅狭部の幅方向の長さの比は0.5以下である、請求項1から4のいずれか1項に記載の接合体。
【請求項6】
前記基材は、前記接合面に沿って延びる端を有し、
前記接着剤層は、前記端の延在方向と交差する方向を幅方向とする前記幅広部を有している、請求項1から5のいずれか1項に記載の接合体。
【請求項7】
基材の接合方法であって、
2つの基材の互いに向き合う接合面の少なくとも一方に、前記接合面に沿って所定の方向に、前記所定の方向と直交し前記接合面と平行な幅方向の長さの長短により形成される幅広部及び幅狭部が形成されるよう接着剤を塗布する工程と、
塗布した前記接着剤が前記接合面の間に介在するよう前記基材を貼り合わせ、前記接着剤を硬化させて接着剤層を形成する工程と、を有し、
前記塗布する工程では、前記幅狭部の弾性率が前記幅広部より低く、前記幅広部の弾性率が前記幅方向に一定となるよう、前記接着剤の組成比を調整して前記接着剤を塗布
し、
形成された前記接着剤層において、
前記幅狭部は、前記幅広部に対し、前記所定の方向の両側に配置され、
前記幅狭部は、前記接着剤層の幅方向の長さが最小となる部分を含み、前記幅狭部それぞれは、前記接着剤層の前記所定の方向の端から前記接着剤層の前記所定の方向長さの10%以上40%未満の領域であり、
前記幅広部は、前記接着剤層の幅方向の長さが最大となる部分を含み、前記接着剤層の重心が位置する前記所定の方向の位置から前記所定の方向の両側に、前記接着剤層の前記所定の方向長さの10%以上40%未満の領域である、ことを特徴とする基材の接合方法。
【請求項8】
前記基材は、23℃での線膨張係数の差が5×10
-6/K以上の異なる異種材料から構成される、請求項7に記載の基材の接合方法。
【請求項9】
前記塗布する工程では、前記幅狭部の弾性率に対する前記幅広部の弾性率の比が2以上になるよう前記接着剤の組成比が調整される、請求項7又は8に記載の基材の接合方法。
【請求項10】
前記塗布する工程では、
前記幅広部及び前記幅狭部それぞれの幅方向長さは、前記所定の方向にわたり一定であり、前記幅広部の幅方向の長さに対する前記幅狭部の幅方向の長さの比が0.5以下になるよう前記接着剤の塗布を行う、請求項7から9のいずれか1項に記載の基材の接合方法。
【請求項11】
前記基材は、前記接合面に沿って延びる端を有し、
前記塗布する工程では、少なくとも、前記端の延在方向と交差する方向を幅方向とする前記幅広部が形成されるよう、前記接着剤の塗布を行う、請求項7から10のいずれか1項に記載の基材の接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤により複数の基材が接合された接合体及び基材の接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のボディ等の構造体において、複数の基材が接着剤により接合されている場合がある。基材の接合面の間に介在する接着剤層には、高い接着強度が求められる。一方、基材同士を接合した接合体では、基材の熱膨張や熱収縮に伴って、反りや歪が生じやすい。
【0003】
特許文献1には、基材の接合面に介在する接着剤の周縁部に応力が集中しやすいことから、周縁部には弾性率の低い接着剤を使用する一方で、内部には弾性率の高い接着剤を使用することが記載されている。特許文献1では、硬化後の接着剤層の弾性率が周縁部から中心部に向かって上昇するように、例えば、渦巻状あるいは入れ子状に塗布しつつ、接着剤層の組成を変化させることで基材上に接着剤層を積層することを行う。特許文献1によれば、基材同士の接着力が高く、かつ、基材間の線膨張係数差に起因する応力が分散された歪の少ない接合体が得られるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、接着剤層に用いる接着剤によっては、中心部と周縁部とで接着剤の組成を変化させても弾性率を大きく変化させることができない場合がある。このため、周縁部に集中する応力を十分に緩和できず、反りや歪を十分に抑制できない場合がある。一方で、周縁部の弾性率が中心部と比べ一律に低いことで、本来、高い接着力が必要な箇所においても接着力が低下し、接合面が剥がれるおそれがある。また、接着剤層の形状によっては、渦巻状あるいは入れ子状に塗布することが困難となる場合がある。
【0006】
本発明は、接着剤を介して複数の基材が接合された接合体において、接着強度を低下させることなく、歪を少なくすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、接合体であって、
互いに向き合う接合面を有する2つの基材と、
前記基材が接合されるよう前記接合面の間に介在し、前記接合面に沿って所定の方向に設けられた接着剤層と、を備え、
前記接着剤層は、前記所定の方向と直交し前記接合面と平行な幅方向の長さの長短により形成される幅広部及び幅狭部を有し、
前記幅狭部は、前記幅広部に対し、前記所定の方向の両側に配置され、
前記幅狭部は、前記幅広部より弾性率が低く、前記接着剤層の幅方向の長さが最小となる部分を含み、前記幅狭部それぞれは、前記接着剤層の前記所定の方向の端から前記接着剤層の前記所定の方向長さの10%以上40%未満の領域であり、
前記幅広部は、前記幅方向に弾性率が一定であり、前記接着剤層の幅方向の長さが最大となる部分を含み、前記接着剤層の重心が位置する前記所定の方向の位置から前記所定の方向の両側に、前記接着剤層の前記所定の方向長さの10%以上40%未満の領域である、ことを特徴とする。
【0008】
前記接着剤層は、接着剤の硬化反応により形成され、
前記幅広部と前記幅狭部とで、前記接着剤の組成比が異なっていることが好ましい。
【0009】
前記接合体は、前記基材が、23℃での線膨張係数の差が5×10-6/K以上である異種材料から構成される場合に好適である。
【0010】
前記幅狭部の弾性率に対する前記幅広部の弾性率の比は2以上であることが好ましい。
【0011】
前記幅広部及び前記幅狭部それぞれの幅方向長さは、前記所定の方向にわたり一定であり、
前記幅広部の幅方向の長さに対する前記幅狭部の幅方向の長さの比は0.5以下であることが好ましい。
【0012】
前記基材は、前記接合面に沿って延びる端を有し、
前記接着剤層は、前記端の延在方向と交差する方向を幅方向とする前記幅広部を有していることが好ましい。
【0013】
本発明の別の一態様は、基材の接合方法であって、
2つの基材の互いに向き合う接合面の少なくとも一方に、前記接合面に沿って所定の方向に、前記所定の方向と直交し前記接合面と平行な幅方向の長さの長短により形成される幅広部及び幅狭部が形成されるよう接着剤を塗布する工程と、
塗布した前記接着剤が前記接合面の間に介在するよう前記基材を貼り合わせ、前記接着剤を硬化させて接着剤層を形成する工程と、を有し、
前記塗布する工程では、前記幅狭部の弾性率が前記幅広部より低く、前記幅広部の弾性率が前記幅方向に一定となるよう、前記接着剤の組成比を調整して前記接着剤を塗布し、
形成された前記接着剤層において、
前記幅狭部は、前記幅広部に対し、前記所定の方向の両側に配置され、
前記幅狭部は、前記接着剤層の幅方向の長さが最小となる部分を含み、前記幅狭部それぞれは、前記接着剤層の前記所定の方向の端から前記接着剤層の前記所定の方向長さの10%以上40%未満の領域であり、
前記幅広部は、前記接着剤層の幅方向の長さが最大となる部分を含み、前記接着剤層の重心が位置する前記所定の方向の位置から前記所定の方向の両側に、前記接着剤層の前記所定の方向長さの10%以上40%未満の領域である、ことを特徴とする。
【0014】
前記接合方法は、前記基材が、23℃での線膨張係数の差が5×10-6/K以上の異なる異種材料から構成される場合に好適である。
【0015】
前記塗布する工程では、前記幅狭部の弾性率に対する前記幅広部の弾性率の比が2以上になるよう前記接着剤の組成比が調整されることが好ましい。
【0016】
前記塗布する工程では、前記幅広部及び前記幅狭部それぞれの幅方向長さは、前記所定の方向にわたり一定であり、前記幅広部の幅方向の長さに対する前記幅狭部の幅方向の長さの比が0.5以下になるよう前記接着剤の塗布を行うことが好ましい。
【0017】
前記基材は、前記接合面に沿って延びる端を有し、
前記塗布する工程では、少なくとも、前記端の延在方向と交差する方向を幅方向とする前記幅広部が形成されるよう、前記接着剤の塗布を行うことが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
上記態様によれば、接着剤を介して複数の基材が接合された接合体において、接着強度を低下させることなく、歪を少なくすることができる。また、そのような接合体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】(a)は、一実施形態の接合体の層構成を示す図であり、(b)は、一方の基材を剥がして平面視した接合体を示す図である。
【
図2】(a),(b)は接着剤層の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の接合体及び基材の接合方法について、実施形態を示しながら詳細に説明する。
図1に、一実施形態の接合体1を示す。
図1(a)は、接合体1の層構成を示す図であり、
図1(b)は、一方の基材を剥がして平面視した接着剤層を示す図である。
【0021】
(接合体)
接合体1は、2つの基材3,5と、接着剤層11と、を備える。
【0022】
基材3,5は、互いに向き合う接合面3a,5aを有する。接合面3a,5aの形状は、特に制限されないが、例えば、平面状、曲面状である。
図1(a)に示す例において、接合面3a,5aは、互いに平行な平面である。基材3,5の形態は、特に制限されないが、例えば、板状、あるいは、板状の部分を有する形状である。
【0023】
基材3,5は、例えば、金属、プラスチック、セラミックスを材質とする。基材3,5は、同種の材料から構成されていてもよいが、接合体1は、本実施形態の効果が良好に発揮される点で、異種材料から構成されている場合に好適である。一実施形態によれば、基材3,5は、23℃での線膨張係数の差が5×10-6/K以上である異種材料から構成されることが好ましい。このような異種材料の組み合わせとして、例えば、アルミニウム、鉄、これらを主成分とする合金、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)、の中から選択した2つが挙げられる。
【0024】
接着剤層11は、基材3,5が接合されるよう接合面3a,5aの間に介在する層である。すなわち、基材3,5は、接着剤層11を介して接合されている。接着剤層11は、接合面3a,5aに沿って所定の方向に設けられている。所定の方向とは、例えば、直線に沿った方向、湾曲あるいは屈曲した線に沿った方向、あるいはこれらの2つ以上の線を組み合わせた線に沿った方向である。
図1に示す例において、所定の方向は、直線に沿った方向であり、上下方向(X方向)である。以降の説明では、所定の方向を、延在方向ともいう。接着剤層11が所定の方向に設けられているとは、接着剤層11が、例えば、所定の方向に連続的に延びていること、あるいは、所定の方向に間隔をあけて離散的に配置されていること、を意味する。
図1に示す例の接着剤層11は、所定の方向に連続的に延びている。なお、接着剤層11は、
図1に示す例のように延在方向の両端を有していてもよく、後で参照する
図3に示す例のように延在方向の端を有していなくてもよい。
【0025】
接着剤層11は、接着剤層11の延在方向と直交し接合面3a,5aと平行な幅方向(以降、単に幅方向ともいう)の長さの長短により形成される幅広部13及び幅狭部15を有している。
図1に示す例において、幅方向は、左右方向である。
【0026】
接着剤層11を接合面3a,5aに対し平面視した形状(以降、単に接着剤層の形状ともいう)は、例えば、楕円形状、多角形状、線状に延びる形状、あるいはこれらの2つ以上を組み合わせた形状である。多角形状としては、例えば、三角形、四角形、五角形、六角形等の形状が挙げられる。
図1に示す例において、接着剤層11の形状は、X方向を長軸方向とする楕円形状である。
【0027】
幅広部13は、一実施形態によれば、接着剤層11の幅方向の長さが最大となる部分(
図1(b)に示す例において、符号13で囲んだ部分)を含むことが好ましい。接着剤層11が延在方向に連続的に延びている場合、幅広部13は、例えば、接着剤層11の重心が位置する延在方向の位置から、延在方向の両側に、接着剤層11の延在方向長さの10~40%未満の領域である。
【0028】
幅狭部15は、幅方向の長さが幅広部13より狭い。幅狭部15は、一実施形態によれば、接着剤層11の幅方向の長さが最小となる部分(
図1(b)に示す例において、符号15で囲んだ部分)を含むことが好ましい。また、幅狭部15は、一実施形態によれば、
図1(b)に示す例のように、幅広部13に対し、延在方向の両側に位置していることが好ましい。接着剤層11が延在方向に連続的に延びている場合、幅狭部15はそれぞれ、例えば、接着剤層11の延在方向の端から、接着剤層11の延在方向長さの10%以上40%未満の領域である。幅広部13と幅狭部15は、延在方向に隣接していてもよく、延在方向に間隔をあけて配置されていてもよい。
【0029】
幅狭部15の弾性率は、幅広部13の弾性率より低い。幅狭部15の弾性率は、一実施形態によれば、接着剤層11内で最小であることが好ましい。基材3,5が熱膨張すると、接合面3a,5aに沿った接着剤層11の外周の縁に近い位置であるほど、応力が集中しやすい。本実施形態では、幅狭部15の弾性率が幅広部13より低いことで、幅狭部15が、基材3,5の熱膨張に追従して伸びやすく、幅狭部15の接合面3a,5aとの接着面積が小さいことで、その効果が大きい。このため、幅狭部15に発生する応力を十分に緩和でき、接合体1の反りや歪を効果的に抑制できる。このような効果は、幅広部13と幅狭部15との弾性率の差が大きくない場合であっても発揮される。ここで、幅狭部の幅方向の長さが幅広部と同等であると、幅狭部の接合面との接着面積が大きいため、幅狭部の弾性率が幅広部より低くても、幅狭部が基材3,5に追従して伸び難く、基材3,5の熱膨張を拘束してしまう。このため、基材3,5の反りや歪を抑制する効果は小さい。
【0030】
幅広部13は、幅方向に弾性率が一定である。幅広部13の弾性率は、一実施形態によれば、接着剤層11内で最大であることが好ましい。幅広部13の弾性率が幅方向に一定であることによって、高い接着強度が得られる。幅広部の弾性率が幅方向に変化している場合(例えば、幅広部の幅方向の両端部の弾性率が中央部よりも低い場合)、弾性率が高い部分と接合面3a,5aとの接着面積が小さくなるため、接着強度は弱くなる。
【0031】
したがって、本実施形態の接合体1によれば、接着強度を低下させることなく、歪を少なくすることができる。
【0032】
なお、幅広部13及び幅狭部15内で弾性率が変化している場合、幅広部13及び幅狭部15の弾性率とは、幅広部13及び幅狭部15内の複数箇所における弾性率の平均値を意味し、平均値は、例えば、延在方向に沿って等間隔をあけた複数の位置における弾性率を用いて計算される。幅狭部15の弾性率は、幅方向に変化していてもよいが、最大値が幅広部13の弾性率の半分以下となることが好ましい。これにより、接合体1の歪を少なくしながら接着強度を効率的に高めることができる。
【0033】
一実施形態によれば、接着剤層11は、接着剤の硬化反応により形成され、幅広部13と幅狭部15とで、接着剤の組成比が異なっていることが好ましい。このような接着剤層11は、幅広部13と幅狭部15の弾性率を容易に異ならせることができる。弾性率は、同種の接着剤の組成比を異ならせることで調整されていてもよく、異種の接着剤を使い分けることで調整されていてもよい。
【0034】
接着剤は、一実施形態によれば、組成比の調整が容易な点で、複数の剤を混合することで硬化反応を行うものが好ましい。そのような接着剤として、例えば、ウレタン系、アクリル系、エポキシ系の接着剤が挙げられる。混合される剤の数は、例えば、2つ、3つ、4つ等であるが、塗布作業や混合比の計算を簡易に行える点で、2つが好ましい。このような接着剤として、下記説明するウレタン系接着剤が好ましく用いられる。このウレタン系接着剤の硬化物は、引張特性に優れ、具体的に、破断強度が10MPa以上であり、破断伸度が100%以上である。このような特性を備える硬化物は、接着剤層11として用いられることで、接着強度を低下させることなく、歪を少なくする効果を効果的に発揮する。なお、破断強度とは、JIS K6251に準拠した引張強さを意味し、破断伸度とは、JIS K6251に準拠した切断時伸びを意味する。
【0035】
ウレタン系接着剤は、主剤と硬化剤を含む二液型の接着剤である。
主剤は、ウレタンプレポリマーを含む。
ウレタンプレポリマーは、ポリイソシアネートと、ポリオールとを反応させて得たものである。この反応は、一実施形態によれば、ポリオール中の水酸基に対するポリイソシアネート中のイソシアネート基の当量比(インデックス)を、好ましくは2.05~12、より好ましくは3~10、特に好ましくは4~8として、ポリオールのすべてがウレタンプレポリマーの単量体単位となるよう行われることが好ましい。これにより、破断強度が10MPa以上の硬化物を得やすくなる。また、インデックスを2.05以上とし、イソシアネート基を水酸基に対して大きく過剰にしたことで、ポリイソシアネートとポリオールとの反応後に残存するイソシアネート基を、硬化剤と十分に反応させることができる。これにより、破断伸度が100%以上の硬化物を得やすくなる。
このような引張特性は、破断伸度が、従来のポリウレタン系接着剤と同等でありながら、破断強度が、エポキシ樹脂系接着剤の破断強度に準じる大きさである。また、粘弾性特性の温度依存性が小さい硬化物として、硬化物の130℃での貯蔵弾性率(E1´)が、-40℃での貯蔵弾性率(E2´)の50%以上の大きさを確保している硬化物が得られる。一般的にウレタン系の接着剤は、120℃以上の高温において、低温時と比べ弾性率が低下し軟らかくなり、場合によっては軟化することがあるが、ここで説明する接着剤の硬化物は、その傾向が改善され、温度依存性が極めて少ない特性を有している。
【0036】
このような主剤を用いることで、ポリイソシアネートが、ポリオールに付加した後に、硬化剤中の活性水素基と反応したもの、及び、ポリオールと反応せず残存した後に、硬化剤中の活性水素基と反応したもの、が硬化物中に形成され、ポリマーブレンドが生成する。
【0037】
ポリイソシアネートは、分子内にイソシアネート基を2個以上有するものであれば、特に限定されない。ポリイソシアネートには、従来公知のポリイソシアネート化合物を用いることができる。
【0038】
主剤に含まれるポリオールは、一実施形態によれば、1分子中に少なくとも1つの水酸基を有し、平均分子量が500以上の結晶性ポリオールであることが好ましい。
【0039】
結晶性ポリオールには、硬化物の破断強度、破断伸度が効果的に向上させる観点から、好ましくは、ポリエステルポリオール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリカーボネートポリオール、及びポリカプロラクトンポリオールの中から選択される少なくとも1種が用いられる。
【0040】
主剤は、ウレタンプレポリマーのほか、さらに、残存ポリイソシアネートを含むことが好ましい。残存ポリイソシアネートとは、結晶性ポリオールと反応しなかったポリイソシアネートの残部である。主剤に、残存ポリイソシアネートが含まれていることで、速やかに硬化剤との反応を行うことができる。これにより、硬化時間を短くできるとともに、残存ポリイソシアネートが水分と反応し発泡することを抑制でき、硬化物の破断強度、破断伸度等の引張特性の低下を抑制することができる。
【0041】
硬化剤は、例えば、ポリアミン及びポリオールの少なくとも1つを含む。
【0042】
ポリアミンは、ポリイソシアネートとの反応速度が速いため、残存ポリイソシアネートとの反応が速やかに進行する。また、ポリアミンは、ウレタンプレポリマーとも反応し、ウレタンプレポリマーを硬化させつつ、成長させる。この過程で、主剤及び硬化剤を混合した接着剤は、これらの反応に伴って発熱することで、硬化剤のポリオールと残存ポリイソシアネートとの反応が促進される。これにより、硬化時間が短くなり、可使時間を短くする効果が得られる。
【0043】
ポリアミン化合物(b2)は、分子内にアミノ基を2個以上有するものであれば、特に限定されず、従来公知のポリアミン化合物を用いることができる。
【0044】
硬化剤に含まれるポリオールは、1分子中に少なくとも2つの水酸基を有し、平均分子量が1000以上の非晶性ポリオールであることが好ましい。硬化剤に非晶性ポリオールが含まれていることで、硬化物の破断伸度を高めることができる。
【0045】
また、接着剤組成物の硬化物には、ポリイソシアネートが、複数の種類の化合物、すなわち、結晶性ポリオール、非晶性ポリオール、ポリアミンと反応した部分が形成されていることで、硬化物の粘弾性特性の温度依存性が小さくなる。このように、硬化物の骨格として種々の化合物が導入されていることで、硬化物の使用温度として想定される温度領域(例えば-40~180℃の範囲)での引張特性の温度変化が抑制され、安定する。
【0046】
また、非晶性ポリオールは、ポリアミンと比べ、ポリイソシアネートとの反応速度が遅いため、硬化時間が短すぎず、作業性の向上に寄与する。
【0047】
一実施形態によれば、非晶性ポリオールは、ポリエチレングリコール、及び、ポリプロピレングリコールの少なくとも一方を含むことが好ましい。また、一実施形態によれば、非晶性ポリオールは、1級水酸基を末端に有するものが特に好ましい。
【0048】
一実施形態によれば、主剤と硬化剤の混合比は3:7~7:3であることが好ましい。この接着剤によれば、主剤と硬化剤の混合比を、このような範囲で変化させても、硬化物の破断強度及び破断伸度の大きさへの影響が極めて少ない。具体的には、上記混合比が1:1である場合の破断強度及び破断伸度に対して、破断強度及び破断伸度の変化率が±20%以内に抑えられる。一方で、上記混合比の範囲内で、弾性率の最大値を最小値の例えば3倍以上に調整できる。
【0049】
以上説明した主剤及び硬化剤は、それぞれ、必要に応じてさらに、フィラー、硬化触媒、可塑剤、老化防止剤、酸化防止剤、顔料(染料)、揺変性付与剤、紫外線吸収剤、難燃剤、界面活性剤(レベリング剤を含む)、分散剤、脱水剤、接着付与剤、帯電防止剤などの各種添加剤等を含有することができる。
【0050】
主剤は、フィラー、老化防止剤、着色剤、粘度調整剤、及び可塑剤からなる群から選択される少なくとも1つを含むことが好ましい。
硬化剤は、フィラー、老化防止剤、着色剤、粘度調整剤、可塑剤、及び平均分子量が500未満の多価アルコール類からなる群から選択される少なくとも1つを含むことが好ましい。平均分子量が500未満の多価アルコール類として、例えば、上述した低分子多価アルコール類を用いることができる。
【0051】
一実施形態によれば、幅狭部15の弾性率に対する幅広部13の弾性率の比(弾性率比)は、2以上であることが好ましい。上記比が2より小さいと、幅狭部15が基材3,5の熱膨張に十分に追従して伸びることができず、接合体1の歪を少なくする効果が得られ難い。弾性率比の上限値は、特に制限されないが、例えば10である。一実施形態によれば、幅広部13の弾性率は、好ましくは200MPa以上であり、より好ましくは300MPa以上である。幅広部13の弾性率の上限値は、特に制限されないが、例えば700MPaである。幅狭部15の弾性率は、好ましくは20~150MPaであり、より好ましくは50~100MPaである。
【0052】
一実施形態によれば、幅広部13の幅方向の長さに対する幅狭部15の幅方向の長さの比は0.5以下であることが好ましい。これにより、接合体1の歪を少なくしながら接着強度を効率的に高めることができる。上記比は、好ましくは0.3以下である。一方、上記比が小さすぎると、基材3,5との接着面積が小さくなりすぎ、幅狭部15が基材3,5の熱膨張に十分に追従して伸びることができず、接合体1の歪を少なくする効果が得られ難い。このため、上記比は、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.1以上である。
【0053】
接着剤層11が、
図1に示す例のように延在方向の両端を有している場合、一実施形態によれば、接着剤層11の延在方向長さと幅方向長さとの比(アスペクト比)は、好ましくは1.1:1~10:1であり、より好ましくは1.5:1~5:1である。
【0054】
(変形例)
図2(a)及び
図2(b)は、接着剤層11の変形例を平面視して示す図である。
接着剤層11は、
図2に示す例のように、延在方向に間隔をあけて離散的に配置された複数の層であってよい。接着剤層11の数は、特に制限されず、例えば3~10個である。接着剤層11の数は、
図2(a)の例では3個であり、符号11a~11cで示す。
図2(b)の例では5個であり、符号11a~11eで示す。なお、
図2(a)及び
図2(b)において、延在方向はいずれも上下方向(X方向)である。
【0055】
このように接着剤層11が複数の層からなる場合、幅広部13は、幅方向長さが最大の部分であり、幅狭部15は、幅方向長さが最小の部分である。
図2(a)に示す例では、接着剤層11bが幅広部13であり、接着剤層11a,11cが幅狭部15である。
図2(b)に示す例では、接着剤層11cが幅広部13であり、接着剤層11a,11eが幅狭部15である。
【0056】
接着剤層11の隣り合う間隔は、接着強度の低下を抑える観点から、当該間隔をあけて隣り合う2つの接着剤層11のうち延在方向長さが短い方の層の延在方向の長さの、好ましくは5~50%の長さである。
【0057】
このように接着剤層11が複数の層からなる場合、幅広部13の両側に配置される幅狭部15の数は同数であることが好ましい。
【0058】
また、接着剤層11が複数の層からなる場合に、各層は、さらに、幅方向に間隔をあけて配置された複数の層であってもよい。
【0059】
一実施形態によれば、接着剤層11の延在方向は、環状に延びる線に沿った方向であることも好ましい。これにより、接合面3a,5a内で、接着剤の使用量を低減しつつ、広範囲に接着強度を高めることができる。環の形状は、例えば、円、楕円、多角形である。多角形は、例えば、三角形、四角形、五角形、六角形等である。多角形の頂角は、丸みを帯びた(例えば円弧形状の)角であってもよい。また、接着剤層11は、接着強度をさらに高める観点から、複数の幅広部13を有していることも好ましい。
図3に示す例の接着剤層11は、環状に延びる線に沿って延在し、複数の幅広部13を有している。
図3は、接着剤層11の別の変形例を平面視して示す図である。
図3に示す例において、環の形状は正方形であり、各辺に幅広部13が1つ配置され、隣り合う幅広部13の間に幅狭部15が配置されている。このように接着剤層11が延在方向の端を有しない場合、幅狭部15は、例えば、接着剤層11のうち、最小幅の部分、あるいは、最小幅の部分を含んだ、最大幅の50%以下の部分である。
図3に示す例において、幅狭部15は、最小幅で線状に延びる部分である。
図3に示す例では、接着剤層11は、1つの接着領域で示されるが、延在方向に間隔をあけて配置された複数の接着領域であってもよい。
【0060】
一実施形態によれば、基材3,5は、接合面3a,5aに沿って延びる端3b,5b(
図1参照)を有している。このとき、接着剤層11は、端3b,5bの延在方向と交差する方向を幅方向とする幅広部13を有していることが好ましい。端3b,5bの延在方向とは、
図1(b)に示す例においてX方向である。幅広部13の幅方向は、
図1及び
図2に示す例において、基材3,5の端3b,5bの延在方向と直交している。また、
図3に示す例において、4つの幅広部13のうち、一対の互いに平行な辺上の2つの幅広部13の幅方向が、基材3,5の端3b,5bの延在方向と直交している。このように幅広部13が設けられていることにより、端3b,5bの延在方向と交差する方向に基材3,5が熱膨張した場合に、接合面3a,5aが剥がれ難くなる効果が大きくなる。
【0061】
(基材の接合方法)
本実施形態の基材の接合方法は、接着剤を塗布する工程と、接着剤層を形成する工程と、を備える。基材、接着剤、接着剤層は、上記説明した基材、接着剤、接着剤層と同様に構成される。
【0062】
接着剤を塗布する工程では、2つの基材3,5の互いに向き合う接合面3a,5aの少なくとも一方に、接合面3a,5aに沿って所定の方向に、幅方向の長さの長短により形成される幅広部13及び幅狭部15が形成されるよう接着剤を塗布する。所定の方向、幅広部13、幅狭部15は、上記実施形態の所定の方向、幅広部13、幅狭部15と同様である。
【0063】
接着剤を塗布する工程では、幅狭部15の弾性率が幅広部13より低く、幅広部13の弾性率が幅方向に一定となるよう、接着剤の組成比を調整して接着剤を塗布する。このような塗布方法によれば、接着剤層11の延在方向に沿って、組成比を調整した接着剤を塗り分けることで幅広部13及び幅狭部15を形成でき、塗布作業を簡易に行える。ここで、幅広部の弾性率が幅方向に変化した接着剤層を形成するためには、接着剤の組成比を幅方向にも調整する必要が生じ、塗布作業が面倒になる。特に、接着剤層のアスペクト比が高い場合や線状に延びる形状を含む形状である場合は、塗布作業が困難になる。この点で、接着剤層11は、一実施形態によれば、延在方向にだけ、弾性率が変化していることが好ましい。
【0064】
接着剤層を形成する工程では、塗布した接着剤が接合面の間に介在するよう基材を貼り合わせ、接着剤を硬化させて接着剤層を形成する。
【0065】
なお、接着剤として、複数の剤の混合により硬化反応を行う接着剤を用いる場合、接着剤の塗布は、例えば、すべての剤を混合したものを、接合面3a,5aの一方に塗ることで行うことができるが、複数の剤を接合面3a,5aのそれぞれに分けて塗ることで行うこともできる。後者の場合、基材3,5を張り合わることで硬化反応を開始することもできる。
【0066】
このような接合方法を用いて、上記説明した接合体1を作製することができる。
【0067】
(実施例、比較例)
本発明の効果を調べるために、種々の接合体を作製し、接着強度及び歪を評価した。
【0068】
(接合体の作製)
表3,4及び下記に示す仕様に従い、JIS K6850に準拠して接合体を作製した。基材には、表3,4に示す材質として、23℃での線膨張係数が下記の値のものを用いた。
・鉄:12×10-6/K
・CFRP:6×10-6/K
・アルミ:23×10-6/K
基材の寸法は、100×25×1.5mmとした。
【0069】
接着剤層11の形状は、表3,4及び下記に示した仕様を除き、
図1(b)に示す例のように、延在方向を長軸方向とする楕円形状とした。接着剤層11を延在方向に3等分した領域のうち、中央の領域が幅広部13、その両側の領域が幅狭部15となるよう、接着剤を塗布した。表3,4及び下記に示す場合を除いて、弾性率は幅方向に一定になるよう塗布した。幅広部の幅方向は、下記に示す場合を除いて、いずれも、基材の端の延在方向と直交する方向とした。接着剤層11の厚みは0.3mmなるよう塗布した。接着剤は、下記の要領で調製した。
【0070】
下記ポリテトラメチレンエーテルグリコール(平均分子量1000)100gと下記4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(分子量250)100g(インデックス4.0)を窒素雰囲気下、80℃で4時間撹拌を行い、反応させて、ウレタンプレポリマーを合成し、さらに、表1に示す成分を加え、主剤を作製した。
・ポリテトラメチレンエーテルグリコール:
PTMG1000(平均分子量1000)、三菱ケミカル社製
・4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート:
ミリオネートMT(分子量250)、東ソー社製
【0071】
表2に示す成分を混合して硬化剤を作製した。
【0072】
表1中、ウレタンプレポリマーの値は、ウレタンプレポリマー及び残存ポリイソシアネートの合計量を示す。ウレタンプレポリマー以外の主剤及び硬化剤の成分には、下記のものを使用した。表1,2に示す成分量は、質量部で示される。
・カーボンブラック:200MP、日鉄カーボン社製
・炭酸カルシウム:重質炭酸カルシウム、スーパーS、丸尾カルシウム社製
・可塑剤:フタル酸ジイソノニル、ジェイプラス社製
・ポリオール:ポリプロピレングリコール、サンニックスGL-3000、三洋化成社製
・ポリアミン:ジエチルメチルベンゼンジアミン、DETDA、三井化学ファイン社製
・シリカ:レオロシールQS-102S、トクヤマ社製
【0073】
【0074】
【0075】
作製した主剤及び硬化剤を、表3,4に示した混合比で混合し、硬化させたものを、下記要領で、弾性率を測定した。また、作製した接合体を用いて、下記要領で、接着強度、歪を評価した。
【0076】
(弾性率)
表3,4に示す「主剤:硬化剤」比で混合した接着剤それぞれを用いて、ダンベル状3号形試験片とし、JIS K6301に準拠して引張試験を行った。伸度測定用の標線は20mmの間隔で付け、引張速さは200mm/分とした。規定された2点のひずみε1=0.1%、およびε2=1.0%に対応する応力をそれぞれσ1、およびσ2とする時、応力の差(σ2-σ1)をひずみの差(ε2-ε1)で除した値を引張弾性率(E)とし、下式に基づいて求めた。
E=(σ2-σ1)/(ε2-ε1)
E:引張弾性率(MPa)、σ:引張応力(MPa)、ε:引張ひずみ
【0077】
(接着強度)
作製した接合体を測定用試料として、温度23℃、湿度50%の環境下で、引張速度10mm/分で引っ張り方向に、JIS K6850に準拠して引張剪断接着強さ(単位:MPa)を測定した。測定値に応じて下記のように評価し、その結果、AおよびBを、接着強度が高いと評価した。
A:20MPa以上
B:10MPa以上
C:10MPa未満
【0078】
(歪)
基材の厚さを1mmとした以外、上記作製した接合体と同じ要領で、接合体を作製した。基材を貼り合わせた後、室温で3日間養生し、これを歪評価試験用試料とした。接合箇所に発生した歪が大きい方の基材に注目し、目視により下記のように評価した。その結果、AおよびBを、歪が少ないと評価した。
A:歪みが発生しなかった場合
B:接合箇所の外周部のみ歪みが発生した場合
C:接合箇所全体に歪みが発生した場合
【0079】
なお、表3,4において、「主剤:硬化剤」は、幅広部、幅狭部に使用した主剤と硬化剤の混合比を意味する。
「弾性率比」は、幅狭部の弾性率に対する幅広部の弾性率の比を意味する。
「幅広部:幅狭部」は、幅広部と幅狭部の幅方向長さの比を意味する。この比は、実施例、比較例の間で幅広部の幅方向長さを一定とし、幅狭部の幅方向長さは塗布量を変えることにより調整した。比較例1,2を除き、実施例、比較例いずれの接着剤層も、延在方向長さに対する幅方向長さの比(アスペクト比)を一定とした。
比較例1,2の「-」は、弾性率を変化させることなく一様に塗布(ベタ塗り)したことを意味する。比較例1,2の接着剤層の形状は、実施例1の幅広部の幅方向長さと等しい直径の円形状とした。
比較例4,6の接着剤層の形状は、長方形状とした。
比較例5の幅広部は、幅方向に3等分した領域のうち、中央の領域を、主剤:硬化剤を7:3とし、その両側の領域を、主剤:硬化剤の比を3:7として形成した。「主剤:硬化剤(幅広部)」の欄には、このうち、中央の領域の混合比を示す。
【0080】
【0081】
【0082】
実施例2と比較例5の対比より、幅広部の弾性率が幅方向に一定であることで、接着強さが向上することがわかる。
実施例2と比較例6の対比より、幅狭部の幅方向長さが幅広部より短いことで、歪を抑える効果が大きいことがわかる。
実施例2と比較例7の対比より、幅狭部の弾性率が幅広部より低いことで、歪を抑える効果が大きいことがわかる。
また、実施例2の接着剤層の延在方向を基材の端の延在方向と直交させた(幅広部の幅方向を基材の端の延在方向と平行にした)別の実施例では、歪はB、接着強さは10MPaでBであった。
【0083】
以上、本発明の接合体及び基材の接合方法について詳細に説明したが、本発明の接合体及び基材の接合方法は上記実施形態あるいは実施例に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。
【符号の説明】
【0084】
1 接合体
3,5 基材
3a,5a 接合面
3b,5b 端
11 接着剤層
13 幅広部
15幅狭部