(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-03
(45)【発行日】2023-10-12
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 11/00 20060101AFI20231004BHJP
B60C 9/18 20060101ALI20231004BHJP
【FI】
B60C11/00 F
B60C11/00 Z
B60C9/18 N
(21)【出願番号】P 2019149114
(22)【出願日】2019-08-15
【審査請求日】2022-07-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】温品 良介
【審査官】松岡 美和
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-184808(JP,A)
【文献】特開2019-014313(JP,A)
【文献】特開2006-213205(JP,A)
【文献】特開2013-091444(JP,A)
【文献】特開2016-172499(JP,A)
【文献】特開2015-110394(JP,A)
【文献】米国特許第06564839(US,B1)
【文献】米国特許第05427164(US,A)
【文献】国際公開第2006/134776(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 9/18
B60C 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部と、該トレッド部の両側に配置された一対のサイドウォール部と、これらサイドウォール部のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部とを備え、前記トレッド部にタイヤ周方向に延びる複数本の主溝が形成され、これら主溝により複数列の陸部が区画された空気入りタイヤにおいて、
前記空気入りタイヤに230kPaの空気圧を充填し、規格にて定められた最大負荷能力のそれぞれ40%,75%,100%の荷重を負荷した条件にて接地した際のタイヤ周方向の最大接地長をそれぞれLA1,LB1,LC1とし、タイヤ幅方向の最大接地幅をそれぞれWA1,WB1,WC1とし、タイヤ中心位置からタイヤ幅方向外側に向かって最大接地幅WA1,WB1,WC1の40%の位置におけるタイヤ周方向の外部接地長をそれぞれLA2,LB2,LC2としたとき、前記最大接地長LA1,LB1,LC1及び前記外部接地長LA2,LB2,LC2が1.02≦(LB2/LB1)/(LA2/LA1)≦1.25、
1.00<(LC2/LC1)/(LB2/LB1)≦1.20の関係を満足し、
前記複数本の主溝がタイヤ幅方向両側の最外側に位置する2本のショルダー主溝を含み、前記トレッド部に、前記2本のショルダー主溝の内側に区画されるセンター領域と該2本のショルダー主溝の外側に区画されるショルダー領域とを定義したとき、タイヤ子午線断面において、少なくとも一方の前記ショルダー領域に含まれる各陸部の踏面を規定するプロファイルラインが前記ショルダー領域の基準プロファイルラインよりもタイヤ径方向外側に突出していることを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記最大接地長LB1及び前記外部接地長LB2が0.65≦LB2/LB1≦0.95の関係を満足することを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記最大接地長LA1,LB1,LC1及び前記外部接地長LA2,LB2,LC2が(LC2/LC1)/(LB2/LB1)≦(LB2/LB1)/(LA2/LA1)の関係を満足することを特徴とする請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記ショルダー領域の基準プロファイルラインに対する前記ショルダー領域に含まれる各陸部のプロファイルラインのタイヤ径方向外側への突出量Hsが0.2mm≦Hs≦0.8mmの範囲にあることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記複数本の主溝が少なくとも1本のセンター主溝を含み、前記センター領域に含まれる各陸部の踏面を規定するプロファイルラインが前記センター領域の基準プロファイルラインよりもタイヤ径方向外側に突出していることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記センター領域の基準プロファイルラインに対する前記センター領域に含まれる各陸部のプロファイルラインのタイヤ径方向外側への突出量Hcの最大値Hc
maxと前記ショルダー領域の基準プロファイルラインに対する前記ショルダー領域に含まれる各陸部のプロファイルラインのタイヤ径方向外側への突出量Hsの最大値Hs
maxがHc
max<Hs
maxの関係を満足することを特徴とする請求項5に記載の空気入りタイヤ。
【請求項7】
車両に対する装着方向が指定された空気入りタイヤにおいて、車両内側のショルダー領域の基準プロファイルラインに対する前記車両内側のショルダー領域に含まれる陸部のプロファイルラインのタイヤ径方向外側への突出量Hs
inと車両外側のショルダー領域の基準プロファイルラインに対する前記車両外側のショルダー領域に含まれる陸部のプロファイルラインのタイヤ径方向外側への突出量Hs
outがHs
in>Hs
outの関係を満足することを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項8】
規格にて定められた最大負荷能力の40%,75%,100%に対応する荷重をそれぞれW40,W75,W100(kN)とし、前記空気入りタイヤに230kPaの空気圧を充填し、前記荷重W40,W75,W100を負荷した条件にて測定されるコーナリングパワーをそれぞれCP40,CP75,CP100(kN/°)とし、前記空気入りタイヤの偏平比をRとし、その外径をD(mm)とし、その断面幅の呼びをA(mm)としたとき、前記荷重W40,W75,W100及び前記コーナリングパワーCP40,CP75,CP100が0.05≦(R×D/2A)
2×[(CP100-CP75)/(W100-W75)]/[(CP75-CP40)/(W75-W40)]≦0.50の関係を満足することを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項9】
前記トレッド部に、タイヤ周方向に対して傾斜する複数本のベルトコードを含み、層間でベルトコードが互いに交差する複数層のベルト層が埋設され、前記ベルトコードのタイヤ中心位置でのタイヤ周方向に対する傾斜角度αが21°≦α≦30°の関係を満足することを特徴とする請求項1~8のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関し、更に詳しくは、トレッド部のショルダー偏摩耗を抑制すると共に、乗心地を改善することを可能にした空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤは、一般に、タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部と、該トレッド部の両側に配置された一対のサイドウォール部と、これらサイドウォール部のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部とを備えると共に、一対のビード部間に装架されたカーカス層と、トレッド部におけるカーカス層のタイヤ径方向外側に配置された複数層のベルト層とを備えた構造を有している。
【0003】
このような空気入りタイヤにおいては、恒久的な課題として、摩耗特性を改善することが求められている。摩耗特性を改善するための手法として、例えば、キャップトレッドゴムの硬度を高くしてトレッド部の剛性を増大させることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、キャップトレッドゴムの硬度を単に高くしたのでは、トレッド部の剛性の増大に伴って走行時に路面から受ける衝撃が増大し、乗心地(マイルド感)が悪化するという問題がある。そのため、二律背反関係にある摩耗特性と乗心地とを両立させることが必要である。
【0004】
ところで、空気入りタイヤの接地形状を規定することにより、空気入りタイヤの諸性能を改善する技術が提案されている(例えば、特許文献2~4参照)。しかしながら、これら技術は摩耗特性と乗心地との両立を図るものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-203080号公報
【文献】特開平6-8710号公報
【文献】特開平8-108710号公報
【文献】特開2009-78790号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、トレッド部のショルダー偏摩耗を抑制すると共に、乗心地を改善することを可能にした空気入りタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明の空気入りタイヤは、タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部と、該トレッド部の両側に配置された一対のサイドウォール部と、これらサイドウォール部のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部とを備え、前記トレッド部にタイヤ周方向に延びる複数本の主溝が形成され、これら主溝により複数列の陸部が区画された空気入りタイヤにおいて、
前記空気入りタイヤに230kPaの空気圧を充填し、規格にて定められた最大負荷能力のそれぞれ40%,75%,100%の荷重を負荷した条件にて接地した際のタイヤ周方向の最大接地長をそれぞれLA1,LB1,LC1とし、タイヤ幅方向の最大接地幅をそれぞれWA1,WB1,WC1とし、タイヤ中心位置からタイヤ幅方向外側に向かって最大接地幅WA1,WB1,WC1の40%の位置におけるタイヤ周方向の外部接地長をそれぞれLA2,LB2,LC2としたとき、前記最大接地長LA1,LB1,LC1及び前記外部接地長LA2,LB2,LC2が1.02≦(LB2/LB1)/(LA2/LA1)≦1.25、1.00<(LC2/LC1)/(LB2/LB1)≦1.20の関係を満足し、
前記複数本の主溝がタイヤ幅方向両側の最外側に位置する2本のショルダー主溝を含み、前記トレッド部に、前記2本のショルダー主溝の内側に区画されるセンター領域と該2本のショルダー主溝の外側に区画されるショルダー領域とを定義したとき、タイヤ子午線断面において、少なくとも一方の前記ショルダー領域に含まれる各陸部の踏面を規定するプロファイルラインが前記ショルダー領域の基準プロファイルラインよりもタイヤ径方向外側に突出していることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、少なくとも一方のショルダー領域に含まれる各陸部の踏面を規定するプロファイルラインがショルダー領域の基準プロファイルラインよりもタイヤ径方向外側に突出していることにより、トレッド部のショルダー領域での剛性を確保してショルダー偏摩耗を抑制することができる。また、上記のような膨出構造を採用した場合、ショルダー領域に含まれる陸部の両エッジ部の接地圧が低減されるので、乗心地(マイルド感)を改善することができる。更に、最大接地長LA1,LB1,LC1及び外部接地長LA2,LB2,LC2が1.02≦(LB2/LB1)/(LA2/LA1)≦1.25、1.00<(LC2/LC1)/(LB2/LB1)≦1.20の関係を満足し、荷重変動を考慮した接地形状を規定することにより、ショルダー偏摩耗の抑制効果を維持しつつ、乗心地(マイルド感)を改善することができる。
【0009】
本発明において、最大接地長LB1及び外部接地長LB2は0.65≦LB2/LB1≦0.95の関係を満足することが好ましい。また、最大接地長LA1,LB1,LC1及び外部接地長LA2,LB2,LC2は(LC2/LC1)/(LB2/LB1)≦(LB2/LB1)/(LA2/LA1)の関係を満足することが好ましい。これにより、接地形状に基づいて乗心地を改善することができる。
【0010】
本発明において、ショルダー領域の基準プロファイルラインに対するショルダー領域に含まれる各陸部のプロファイルラインのタイヤ径方向外側への突出量Hsが0.2mm≦Hs≦0.8mmの範囲にあることが好ましい。ショルダー領域に含まれる各陸部の突出量Hsを上記範囲に設定することにより、ショルダー領域に含まれる各陸部の接地長を適正化しつつ、乗心地(マイルド感)を改善することができる。
【0011】
複数本の主溝が少なくとも1本のセンター主溝を含む場合、センター領域に含まれる各陸部の踏面を規定するプロファイルラインがセンター領域の基準プロファイルラインよりもタイヤ径方向外側に突出していることが好ましい。このようにセンター領域に含まれる各陸部の踏面を規定するプロファイルラインがセンター領域の基準プロファイルラインよりもタイヤ径方向外側に突出する構造も乗心地(マイルド感)の改善に寄与する。
【0012】
この場合、センター領域の基準プロファイルラインに対するセンター領域に含まれる各陸部のプロファイルラインのタイヤ径方向外側への突出量Hcの最大値Hcmaxとショルダー領域の基準プロファイルラインに対するショルダー領域に含まれる各陸部のプロファイルラインのタイヤ径方向外側への突出量Hsの最大値HsmaxがHcmax<Hsmaxの関係を満足することが好ましい。これにより、ショルダー領域に含まれる陸部の両エッジ部の接地圧が効果的に低減されるので、乗心地(マイルド感)を改善することができる。
【0013】
車両に対する装着方向が指定された空気入りタイヤにおいては、車両内側のショルダー領域の基準プロファイルラインに対する車両内側のショルダー領域に含まれる陸部のプロファイルラインのタイヤ径方向外側への突出量Hsinと車両外側のショルダー領域の基準プロファイルラインに対する車両外側のショルダー領域に含まれる陸部のプロファイルラインのタイヤ径方向外側への突出量HsoutがHsin>Hsoutの関係を満足することが好ましい。車両直進時はネガティブキャンバーの影響により車両内側のショルダー領域に含まれる陸部の接地領域が車両外側のショルダー領域に含まれる陸部の接地領域に比べて大きくなるが、車両内側のショルダー領域に含まれる陸部の突出量Hsinを相対的に大きくすることにより、車両内側のショルダー領域に含まれる陸部の両エッジ部の接地圧が効果的に低減されるので、乗心地(マイルド感)を改善することができる。
【0014】
規格にて定められた最大負荷能力の40%,75%,100%に対応する荷重をそれぞれW40,W75,W100(kN)とし、空気入りタイヤに230kPaの空気圧を充填し、荷重W40,W75,W100を負荷した条件にて測定されるコーナリングパワーをそれぞれCP40,CP75,CP100(kN/°)とし、空気入りタイヤの偏平比をRとし、その外径をD(mm)とし、その断面幅の呼びをA(mm)としたとき、荷重W40,W75,W100及びコーナリングパワーCP40,CP75,CP100が0.05≦(R×D/2A)2×[(CP100-CP75)/(W100-W75)]/[(CP75-CP40)/(W75-W40)]≦0.50の関係を満足することが好ましい。これにより、高荷重域のコーナリングパワーの過度の増大を抑制し、操縦安定性を改善することができる。特に、タイヤサイズによりコーナリングパワーの出易さが異なるため、上記関係式は(R×D/2A)2の値により補正されている。つまり、偏平比が低く、外径が小さいタイヤほど高荷重側のコーナリングパワーの寄与を低下させるのである。
【0015】
本発明において、トレッド部に、タイヤ周方向に対して傾斜する複数本のベルトコードを含み、層間でベルトコードが互いに交差する複数層のベルト層が埋設される場合、ベルト層のセンター部におけるベルトコードのタイヤ周方向に対する傾斜角度αが21°≦α≦30°の関係を満足することが好ましい。ベルト層のセンター部におけるベルトコードの傾斜角度αを極度に低角度化しないことにより、ベルト層の剛性の増大を抑えて乗心地を改善することができる。
【0016】
本発明において、コーナリングパワーは、タイヤを正規リムにリム組みして所定の空気圧を充填した状態で所定の荷重を負荷した条件にて、キャンバー角度を0°とし、速度を10km/hとし、スリップ角度を変化させながらコーナリングフォースを測定し、スリップ角度が0°~1°となる範囲におけるコーナリングフォースに基づいて算出される。トレッド部の接地形状は、タイヤを正規リムにリム組みして所定の空気圧を充填した状態で平面上に垂直に置いて所定の荷重を負荷した条件にて測定される。空気入りタイヤの外径は、タイヤを正規リムにリム組みして所定の空気圧を充填した状態でタイヤ中心位置において測定される。トレッド部のプロファイルライン及び基準プロファイルラインは、タイヤを正規リムにリム組みして所定の空気圧を充填した状態で測定される。「正規リム」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えば、JATMAであれば標準リム、TRAであれば“Design Rim”、或いはETRTOであれば“Measuring Rim”とする。空気圧は230kPaとする。また、所定の荷重は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている最大負荷能力の40%,75%又は100%の荷重とする。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態からなる空気入りタイヤを示す子午線断面図である。
【
図2】
図1の空気入りタイヤのトレッドパターンを示す展開図である。
【
図3】
図1の空気入りタイヤのトレッド部の輪郭を示す断面図である。
【
図4】
図1の空気入りタイヤの接地形状(40%荷重)を示す平面図である。
【
図5】
図1の空気入りタイヤの接地形状(75%荷重)を示す平面図である。
【
図6】
図1の空気入りタイヤの接地形状(100%荷重)を示す平面図である。
【
図7】トレッド部の輪郭の変形例を示す断面図である。
【
図8】トレッド部の輪郭の他の変形例を示す断面図である。
【
図9】トレッド部の輪郭の他の変形例を示す断面図である。
【
図10】本発明の空気入りタイヤを構成するベルト層を示す展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の構成について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は本発明の実施形態からなる空気入りタイヤを示し、
図2はそのトレッドパターンを示し、
図3はそのトレッド部の輪郭を示すものである。
図2において、CLはタイヤ中心位置(タイヤ赤道)であり、Tcはタイヤ周方向であり、Twはタイヤ幅方向である。
【0019】
図1に示すように、本実施形態の空気入りタイヤは、タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部1と、該トレッド部1の両側に配置された一対のサイドウォール部2,2と、これらサイドウォール部2のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部3,3とを備えている。
【0020】
一対のビード部3,3間にはカーカス層4が装架されている。このカーカス層4は、タイヤ径方向に延びる複数本のカーカスコードを含み、各ビード部3に配置されたビードコア5の廻りにタイヤ内側から外側へ折り返されている。ビードコア5の外周上には断面三角形状のゴム組成物からなるビードフィラー6が配置されている。
【0021】
一方、トレッド部1におけるカーカス層4の外周側には複数層のベルト層7が埋設されている。これらベルト層7はタイヤ周方向に対して傾斜する複数本のベルトコードを含み、かつ層間でベルトコードが互いに交差するように配置されている。ベルト層7を構成するベルトコードとしては、スチールコードが好ましく使用される。ベルト層7の外周側には、タイヤ周方向に配向する複数本のバンドコードを含む少なくとも1層のベルト補強層8が配置されている。ベルト補強層8は少なくとも1本のバンドコードを引き揃えてゴム被覆してなるストリップ材をタイヤ周方向に連続的に巻回したジョイントレス構造とすることが望ましい。ベルト補強層8を構成するバンドコードとしては、ナイロンやアラミド等の有機繊維コードが好ましく使用される。
【0022】
図2に示すように、トレッド部1には、タイヤ周方向に延びる複数本の主溝10が形成されている。主溝10はウエアインジケーターが施された周方向溝である。これら主溝10は、タイヤ中心位置CLの両側の位置でタイヤ周方向に延びる一対のセンター主溝11,11と、該センター主溝11,11よりもタイヤ幅方向外側の位置でタイヤ周方向に延びる一対のショルダー主溝12,12とを含んでいる。センター主溝11及びショルダー主溝12は、ストレート形状を有していても良く、或いは、ジグザグ形状を有していても良い。これにより、センター主溝11,11の相互間にはセンター陸部20が区画され、センター主溝11とショルダー主溝12との間にはミドル陸部30が区画され、ショルダー主溝12の外側にはショルダー陸部40が区画されている。これら陸部20,30,40は、タイヤ周方向に沿って連続的に延在するリブであっても良く、或いは、タイヤ周方向に配列された複数個のブロックからなるブロック列であっても良い。
【0023】
センター陸部20は、タイヤ周方向に分断されることなく連続するリブである。ミドル陸部30の各々には、タイヤ幅方向に延びる複数本のサイプ31が形成されている。また、一対のミドル陸部30の一方には、タイヤ周方向に沿って延びていてジグザグ形状を有する周方向細溝32が形成されている。
【0024】
ショルダー陸部40の各々には、タイヤ幅方向に延びる複数本のラグ溝41が形成されている。これらラグ溝41はショルダー主溝12に対して非連通となっている。また、一対のショルダー陸部40の一方には、タイヤ幅方向に延びる複数本のサイプ42が形成されている。このようなサイプ42は一対の陸部40の他方にも形成することができる。両者が混在する場合、ラグ溝41及びサイプ42はタイヤ周方向に沿って交互に配置されていると良い。
【0025】
上記空気入りタイヤにおいて、
図2に示すように、トレッド部1に、2本のショルダー主溝12,12の内側に区画されるセンター領域Xcと、2本のショルダー主溝12,12の外側に区画されるショルダー領域Xsとを定義したとき、
図3に示すように、タイヤ子午線断面において、少なくとも一方のショルダー領域Xsに含まれる陸部40の踏面を規定するプロファイルラインがショルダー領域Xsの基準プロファイルラインPLs(破線にて図示)よりもタイヤ径方向外側に突出している。ショルダー領域Xsの基準プロファイルラインPLsは、ショルダー主溝12の両端点とショルダー基準点Pを通る曲線(単一の円弧)である。ショルダー基準点Pはトレッド部1の展開幅TDWに対して0.88×TDWとなる位置(タイヤ中心位置CLから0.44TDWの位置)に設定される基準点である。展開幅TDWはトレッド部1を平坦に展開したときのタイヤ幅方向の寸法である。陸部30,40がショルダー主溝12に沿って面取り部を有する場合、ショルダー主溝12の端点は踏面上に形成される端点とする。
【0026】
図4~
図6はそれぞれ
図1の空気入りタイヤの接地形状(40%荷重、75%荷重、100%荷重)を示すものである。上記空気入りタイヤにおいて、該空気入りタイヤに230kPaの空気圧を充填し、規格にて定められた最大負荷能力のそれぞれ40%,75%,100%の荷重を負荷した条件にて接地した際のタイヤ周方向の最大接地長をそれぞれLA1,LB1,LC1(mm)とし、タイヤ幅方向の最大接地幅をそれぞれWA1,WB1,WC1(mm)とし、タイヤ中心位置からタイヤ幅方向外側に向かって最大接地幅WA1,WB1,WC1の40%の位置におけるタイヤ周方向の外部接地長をそれぞれLA2,LB2,LC2(mm)とする。
【0027】
つまり、
図4に示すように、上記空気入りタイヤに230kPaの空気圧を充填し、規格にて定められた最大負荷能力の40%の荷重を負荷した条件にて接地した際のタイヤ周方向の最大接地長をLA1とし、タイヤ幅方向の最大接地幅をWA1とし、タイヤ中心位置CLからタイヤ幅方向外側に向かって最大接地幅WA1の40%の位置におけるタイヤ周方向の外部接地長をLA2とする。外部接地長LA2はタイヤ中心位置CLの両側における測定値の平均値である。
【0028】
また、
図5に示すように、上記空気入りタイヤに230kPaの空気圧を充填し、規格にて定められた最大負荷能力の75%の荷重を負荷した条件にて接地した際のタイヤ周方向の最大接地長をLB1とし、タイヤ幅方向の最大接地幅をWB1とし、タイヤ中心位置CLからタイヤ幅方向外側に向かって最大接地幅WB1の40%の位置におけるタイヤ周方向の外部接地長をLB2とする。外部接地長LB2はタイヤ中心位置CLの両側における測定値の平均値である。
【0029】
更に、
図6に示すように、上記空気入りタイヤに230kPaの空気圧を充填し、規格にて定められた最大負荷能力の100%の荷重を負荷した条件にて接地した際のタイヤ周方向の最大接地長をLC1とし、タイヤ幅方向の最大接地幅をWC1とし、タイヤ中心位置CLからタイヤ幅方向外側に向かって最大接地幅WC1の40%の位置におけるタイヤ周方向の外部接地長をLC2とする。外部接地長LC2はタイヤ中心位置CLの両側における測定値の平均値である。
【0030】
ここで、最大接地長LA1,LB1,LC1及び外部接地長LA2,LB2,LC2は以下の関係を満足する。
1.02≦(LB2/LB1)/(LA2/LA1)≦1.25
1.00≦(LC2/LC1)/(LB2/LB1)≦1.20
【0031】
上述した空気入りタイヤでは、少なくとも一方のショルダー領域Xsに含まれる各陸部40の踏面を規定するプロファイルラインがショルダー領域Xsの基準プロファイルラインPLsよりもタイヤ径方向外側に突出していることにより、トレッド部1のショルダー領域Xsでの剛性を確保してショルダー偏摩耗を抑制することができる。また、上記のような膨出構造を採用した場合、ショルダー領域Xsに含まれる陸部40の両エッジ部の接地圧が低減されるので、乗心地(マイルド感)を改善することができる。
【0032】
しかも、上述した空気入りタイヤでは、最大接地長LA1,LB1,LC1及び外部接地長LA2,LB2,LC2が1.02≦(LB2/LB1)/(LA2/LA1)≦1.25、1.00≦(LC2/LC1)/(LB2/LB1)≦1.20の関係を満足し、荷重変動を考慮した接地形状を規定することにより、ショルダー偏摩耗の抑制効果を維持しつつ、乗心地(マイルド感)を改善することができる。つまり、エンジンを前方に搭載した一般的な車両において、負荷荷重が相対的に小さいリヤ装着タイヤの荷重変動を考慮して(LB2/LB1)/(LA2/LA1)を所定の範囲に設定する一方で、負荷荷重が相対的に大きいフロント装着タイヤの荷重変動を考慮して(LC2/LC1)/(LB2/LB1)を所定の範囲に設定することにより、ショルダー偏摩耗の抑制効果と乗心地の改善効果を最適化することができる。
【0033】
ここで、(LB2/LB1)/(LA2/LA1)が1.02よりも小さいと乗心地の改善効果が不十分になり、逆に1.25よりも大きいとショルダー偏摩耗の抑制効果が不十分になる。同様に、(LC2/LC1)/(LB2/LB1)が1.00よりも小さいと乗心地の改善効果が不十分になり、逆に1.20よりも大きいとショルダー偏摩耗の抑制効果が不十分になる。特に、1.03≦(LB2/LB1)/(LA2/LA1)≦1.15、1.02≦(LC2/LC1)/(LB2/LB1)≦1.10の関係を満足することが望ましい。
【0034】
上記空気入りタイヤにおいて、最大接地長LB1及び外部接地長LB2は0.65≦LB2/LB1≦0.95の関係を満足すると良い。最大負荷能力の75%の荷重を負荷した条件における接地形状をコントロールすることにより、定常走行時において良好な乗心地を発揮することができる。特に、0.70≦LB2/LB1≦0.88の範囲ではトレッド部1のエンベロープ特性が良化して乗心地が効果的に改善される。
【0035】
上記空気入りタイヤにおいて、最大接地長LA1,LB1,LC1及び外部接地長LA2,LB2,LC2は(LC2/LC1)/(LB2/LB1)≦(LB2/LB1)/(LA2/LA1)の関係を満足すると良い。このようにリヤ装着タイヤとフロント装着タイヤにおける接地形状を最適化することで乗心地を改善することができる。
【0036】
上記空気入りタイヤにおいて、
図3に示すように、ショルダー領域Xsの基準プロファイルラインPLsに対するショルダー領域Xsに含まれる各陸部40のプロファイルラインのタイヤ径方向外側への突出量Hsは0.2mm≦Hs≦0.8mmの範囲にあると良い。ショルダー領域Xsに含まれる各陸部40の突出量Hsを上記範囲に設定することにより、ショルダー領域Xsに含まれる各陸部40の接地長を適正化しつつ、乗心地(マイルド感)を改善することができる。ここで、突出量Hsが0.2mmよりも小さいとショルダー領域Xsに含まれる陸部40の両エッジ部の接地圧を低減する効果が低下し、逆に0.8mmを超えると陸部40接地長が長くなるため接地形状の矩形率が増大してしまう。なお、突出量Hsはショルダー領域Xsの基準プロファイルラインPLsから陸部40のプロファイルラインまでの最大寸法である。また、ショルダー主溝12はタイヤ中心位置CLからタイヤ幅方向外側に向かってトレッド部1の展開幅TDWの15%~30%の範囲内にあることが望ましい。
【0037】
図7はトレッド部の輪郭の変形例を示すものである。
図7では、タイヤ子午線断面において、トレッド部1のショルダー領域Xsに含まれる各陸部40の踏面を規定するプロファイルラインがショルダー領域Xsの基準プロファイルラインPLs(破線にて図示)よりもタイヤ径方向外側に突出していることに加えて、センター領域Xcに含まれる各陸部20,30の踏面を規定するプロファイルラインがセンター領域Xcの基準プロファイルラインPLc(破線にて図示)よりもタイヤ径方向外側に突出している。センター領域Xcの基準プロファイルラインPLcは、センター主溝11の両端点とショルダー主溝12の幅方向内側端点を通る曲線(単一の円弧)である。陸部20,30,40がセンター主溝11又はショルダー主溝12に沿って面取り部を有する場合、センター主溝11及びショルダー主溝12の端点は踏面上に形成される端点とする。このようにセンター領域Xcに含まれる各陸部20,30の踏面を規定するプロファイルラインがセンター領域Xcの基準プロファイルラインPLcよりもタイヤ径方向外側に突出する構造を採用した場合、乗心地(マイルド感)を改善することができる。
【0038】
図7において、センター領域Xcの基準プロファイルラインに対するセンター領域Xcに含まれる各陸部20,30のプロファイルラインのタイヤ径方向外側への突出量Hcの最大値Hc
maxとショルダー領域Xsの基準プロファイルラインに対するショルダー領域Xsに含まれる各陸部40のプロファイルラインのタイヤ径方向外側への突出量Hsの最大値Hs
maxはHc
max<Hs
maxの関係を満足すると良い。このようにショルダー領域Xsに含まれる各陸部40の突出量Hsの最大値Hs
maxをセンター領域Xcに含まれる各陸部20,30の突出量Hcの最大値Hc
maxよりも大きくすることにより、ショルダー領域Xsに含まれる陸部40の両エッジ部の接地圧が効果的に低減されるので、乗心地(マイルド感)を改善することができる。ここで、0.2mm≦Hs
max-Hc
max≦0.6mmの関係を満足すると良い。両者の差を適正化することにより、乗心地(マイルド感)を効果的に改善することができる。
【0039】
図8及び
図9はそれぞれトレッド部の輪郭の他の変形例を示すものである。これら空気入りタイヤは、車両装着時におけるタイヤ表裏の装着方向が指定された空気入りタイヤである。
図8及び
図9において、INは車両装着時の車両内側であり、OUTは車両装着時の車両外側である。
【0040】
図8及び
図9に示すように、車両内側のショルダー領域Xsの基準プロファイルラインPLsに対する車両内側のショルダー領域に含まれる陸部40のプロファイルラインのタイヤ径方向外側への突出量Hs
inと車両外側のショルダー領域Xsの基準プロファイルラインPLsに対する車両外側のショルダー領域Xsに含まれる陸部40のプロファイルラインのタイヤ径方向外側への突出量Hs
outはHs
in>Hs
outの関係を満足している。車両直進時はネガティブキャンバーの影響により車両内側のショルダー陸部40の接地領域が車両外側のショルダー陸部40の接地領域に比べて大きくなるが、車両内側のショルダー陸部40の突出量Hs
inを相対的に大きくすることにより、車両内側のショルダー陸部40の両エッジ部の接地圧が効果的に低減されるので、乗心地(マイルド感)を改善することができる。ここで、0.2mm≦Hs
in-Hs
out≦0.6mmの関係を満足すると良い。両者の差を適正化することにより、乗心地(マイルド感)を効果的に改善することができる。
【0041】
図9においては、トレッド部1に、タイヤ幅方向両側の最外側に位置する2本のショルダー主溝12,12と、これらショルダー主溝12,12の間に位置する1本のセンター主溝11とを含む3本の主溝10が形成されている。このような3本主溝のトレッドパターンを採用することも可能である。
【0042】
上述した種々の空気入りタイヤにおいて、規格にて定められた最大負荷能力の40%,75%,100%に対応する荷重をそれぞれW40,W75,W100(kN)とし、空気入りタイヤに230kPaの空気圧を充填し、荷重W40,W75,W100を負荷した条件にて測定されるコーナリングパワーをそれぞれCP40,CP75,CP100(kN/°)とし、空気入りタイヤの偏平比をRとし、その外径をD(mm)とし、その断面幅の呼びをA(mm)としたとき、荷重W40,W75,W100及びコーナリングパワーCP40,CP75,CP100が0.05≦(R×D/2A)2×[(CP100-CP75)/(W100-W75)]/[(CP75-CP40)/(W75-W40)]≦0.50の関係を満足することが好ましい。これにより、高荷重域のコーナリングパワーの過度の増大を抑制し、ウエット路面での操縦安定性を改善することができる。特に、上記関係式は(R×D/2A)2の値により補正されているので、偏平比が低く、断面幅の呼びに対する外径の比が小さいタイヤほど高荷重側のコーナリングパワーの寄与を低下させる。そのため、タイヤサイズに応じて適度なコーナリングパワーを発揮することができる。
【0043】
ここで、(R×D/2A)2×[(CP100-CP75)/(W100-W75)]/[(CP75-CP40)/(W75-W40)]が0.05よりも小さいと低荷重域でのコーナリングパワーが過剰となり、逆に0.50よりも大きいと高荷重域でのコーナリングパワーが過剰となり、いずれの場合も、操縦安定性の改善効果が低下する。特に、0.10≦(R×D/2A)2×[(CP100-CP75)/(W100-W75)]/[(CP75-CP40)/(W75-W40)]≦0.40の関係を満足することが望ましい。
【0044】
上述した空気入りタイヤにおいて、トレッド部1に、タイヤ周方向に対して傾斜する複数本のベルトコードCを含み、層間でベルトコードCが互いに交差する複数層のベルト層7が埋設される場合、
図10に示すように、ベルト層7のセンター部BcにおけるベルトコードCのタイヤ周方向に対する傾斜角度αは21°≦α≦30°の関係を満足すると良い。ベルト層7のセンター部BcにおけるベルトコードCの傾斜角度αを極度に低角度化しないことにより、ベルト層7の剛性の増大を抑えて乗心地を改善することができる。ここで、傾斜角度αが21°よりも小さいとベルト層7の剛性の増大により乗心地の改善効果が低下し、逆に30°よりも大きいと操縦安定性等のタイヤ特性が低下するため実用的ではない。なお、ベルト層7のセンター部Bcは、タイヤ中心位置CLを中心とし、その幅Lcがベルト層7の全幅Lの1/2以上となる領域である。また、ベルト層7のセンター部Bcより外側のショルダー部BsにおけるベルトコードCのタイヤ周方向に対する傾斜角度βは特に限定されるものではないが、α>βの関係を満足すると良い。
【0045】
上述した空気入りタイヤは偏平比0.65以下の乗用車用タイヤとして好適である。乗心地の改善が厳しく要求される乗用車用タイヤにおいて、耐偏摩耗性と乗心地とを両立することが可能になる。
【実施例】
【0046】
タイヤサイズ205/55R16 91Vで、一対のビード部間にカーカス層が装架され、トレッド部におけるカーカス層のタイヤ径方向外側に2層のベルト層が埋設され、トレッド部にタイヤ周方向に延びる複数本の主溝が形成され、これら主溝により複数列の陸部が区画された空気入りタイヤにおいて、各陸部のプロファイルラインを基準プロファイルラインと一致させた従来例及び比較例1と、センター領域及びショルダー領域に含まれる各陸部のプロファイルラインを基準プロファイルラインよりもタイヤ径方向外側に突出させた比較例2及び実施例1~3と、ショルダー領域に含まれる各陸部のプロファイルラインを基準プロファイルラインよりもタイヤ径方向外側に突出させた実施例4~9のタイヤを製作した。
【0047】
従来例、比較例1,2及び実施例1~9において、ベルト層のセンター部におけるベルトコードのタイヤ周方向に対する傾斜角度α、ベルト層のショルダー部におけるベルトコードのタイヤ周方向に対する傾斜角度β、ショルダー陸部の突出量Hs、Hsmax-Hcmax、Hsin-Hsout、低荷重域CP変動係数X=[(CP75-CP40)/(W75-W40)]、高荷重域CP変動係数Y=[(CP100-CP75)/(W100-W75)]、(R×D/2A)2×(Y/X)、(LB2/LB1)/(LA2/LA1)、(LC2/LC1)/(LB2/LB1)、LB2/LB1(矩形比)を表1のように設定した。
【0048】
これら試験タイヤについて、下記試験方法により、耐偏摩耗性(ショルダー領域)、乗心地を評価し、その結果を表1に併せて示した。
【0049】
耐偏摩耗性(ショルダー領域):
各試験タイヤをリムサイズ16×6.5Jのホイールに組み付けて摩擦エネルギー測定試験機に装着し、空気圧230kPa、負荷荷重4.5kNの条件下にて、トレッド部のショルダー領域での平均摩擦エネルギーを測定した。測定値は、各領域で10mm間隔となるタイヤ幅方向2箇所×タイヤ周方向2箇所の計4点における摩擦エネルギーを測定し、これらを平均したものである。評価結果は、測定値の逆数を用い、従来例を100とする指数にて示した。指数値が大きいほど耐偏摩耗性が優れていることを意味する。
【0050】
乗心地:
各試験タイヤをリムサイズ16×6.5Jのホイールに組み付けて排気量2リットルの前輪駆動車に装着し、当該車両の指定空気圧を充填し、路面上に突起が配設されたテストコースにてパネラーによる走行試験を実施し、突起の入力等を考慮した乗心地(マイルド感)に関する官能評価を行った。評価結果は、従来例を100とする指数にて示した。指数値が大きいほど乗心地が良好であることを意味する。
【0051】
【0052】
この表1から判るように、実施例1~9のタイヤは、従来例との対比において、良好な耐偏摩耗性を備えると同時に、乗心地(マイルド感)が優れていた。一方、比較例1,2のタイヤは、耐偏摩耗性及び乗心地(マイルド感)の改善効果が必ずしも十分ではなかった。
【符号の説明】
【0053】
1 トレッド部
2 サイドウォール部
3 ビード部
4 カーカス層
5 ビードコア
6 ビードフィラー
7 ベルト層
8 ベルト補強層
10 主溝
11 センター主溝
12 ショルダー主溝
20,30,40 陸部
31 サイプ
32 周方向細溝
41 ラグ溝
42 サイプ