(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-03
(45)【発行日】2023-10-12
(54)【発明の名称】冷媒輸送用ホース
(51)【国際特許分類】
F16L 11/08 20060101AFI20231004BHJP
B32B 25/14 20060101ALI20231004BHJP
【FI】
F16L11/08 A
B32B25/14
(21)【出願番号】P 2019215264
(22)【出願日】2019-11-28
【審査請求日】2022-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【氏名又は名称】三橋 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100181179
【氏名又は名称】町田 洋一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100197295
【氏名又は名称】武藤 三千代
(72)【発明者】
【氏名】杉原 孝樹
(72)【発明者】
【氏名】遊佐 郁真
(72)【発明者】
【氏名】眞榮田 大介
【審査官】渡邉 聡
(56)【参考文献】
【文献】特許第4365454(JP,B1)
【文献】特開2004-250696(JP,A)
【文献】国際公開第2017/221632(WO,A1)
【文献】特開2002-174373(JP,A)
【文献】特開平08-059925(JP,A)
【文献】特開平03-182532(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 11/08
B32B 25/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内管と外管とを有し、前記内管と前記外管との間に補強層を有し、
前記外管が外管用ゴム組成物によって形成され、
前記外管用ゴム組成物が、
イソモノオレフィンとp-アルキルスチレンとの共重合ゴムが臭素化された臭素化共重合ゴムであって、前記臭素化共重合ゴムを構成する臭素を有する繰り返し単位の含有量が、前記臭素化共重合ゴムを構成する繰り返し単位の全量に対して、0.8~1.5モル%である臭素化共重合ゴムと、
ジブチルフタレート吸収量が40cm
3/100g以下であるカーボンブラックAと、
臭素化アルキルフェノール樹脂と、
酸化亜鉛とを含有し、
前記カーボンブラックAの含有量が、前記臭素化共重合ゴム100質量部に対して、35質量部以上である、冷媒輸送用ホース。
【請求項2】
前記カーボンブラックAのよう素吸着量が、10~40g/kgである、請求項1に記載の冷媒輸送用ホース。
【請求項3】
前記カーボンブラックAが、FTFカーボンブラックである、請求項1又は2に記載の冷媒輸送用ホース。
【請求項4】
更に、ジブチルフタレート吸収量が50~80cm
3/100gであるカーボンブラックBを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の冷媒輸送用ホース。
【請求項5】
前記カーボンブラックBのよう素吸着量が、15~30g/kgである、請求項4に記載の冷媒輸送用ホース。
【請求項6】
前記カーボンブラックBが、SRFカーボンブラックである、請求項4又は5に記載の冷媒輸送用ホース。
【請求項7】
前記カーボンブラックBの含有量が、前記臭素化共重合ゴム100質量部に対して、20~120質量部である、請求項4~6のいずれか1項に記載の冷媒輸送用ホース。
【請求項8】
前記外管用ゴム組成物が、さらに、タルクを含有し、
前記タルクの含有量が、前記臭素化共重合ゴム100質量部に対して、10~80質量部である、請求項1~7のいずれか1項に記載の冷媒輸送用ホース。
【請求項9】
前記臭素化共重合ゴムを構成する臭素を有する繰り返し単位の含有量が、前記臭素化共重合ゴムを構成する繰り返し単位の全量に対して、1.1~1.3モル%である、請求項1~8のいずれか1項に記載の冷媒輸送用ホース。
【請求項10】
前記外管用ゴム組成物が、
イソモノオレフィンとp-アルキルスチレンとの共重合ゴムが臭素化された臭素化共重合ゴムであって、前記臭素化共重合ゴムを構成する臭素を有する繰り返し単位の含有量が、前記臭素化共重合ゴムを構成する繰り返し単位の全量に対して、0.8モル%未満又は1.5モル%を超える臭素化共重合ゴムを、更に含有し、
前記カーボンブラックAの含有量が、前記臭素化共重合ゴムを構成する臭素を有する繰り返し単位の含有量が、前記臭素化共重合ゴムを構成する繰り返し単位の全量に対して、0.8~1.5モル%である臭素化共重合ゴムと、前記臭素化共重合ゴムを構成する臭素を有する繰り返し単位の含有量が、前記臭素化共重合ゴムを構成する繰り返し単位の全量に対して、0.8モル%未満又は1.5モル%を超える臭素化共重合ゴムとの合計含有量100質量部に対して、35質量部以上である、請求項1~9のいずれか1項に記載の冷媒輸送用ホース。
【請求項11】
前記外管用ゴム組成物を架橋させたゴムの100%伸びにおける引張応力(M100)が、7MPa以上である、請求項1~10のいずれか1項に記載の冷媒輸送用ホース。
【請求項12】
前記内管が複数の層を有し、最内層がゴム層であり、
前記内管において前記最内層の外側にバリア層を有する、請求項1~11のいずれか1項に記載の冷媒輸送用ホース。
【請求項13】
前記バリア層が、ポリアミド系樹脂を含む、請求項12に記載の冷媒輸送用ホース。
【請求項14】
前記補強層が複数の補強層である、請求項1~13のいずれか1項に記載の冷媒輸送用ホース。
【請求項15】
自動車用の冷媒輸送用ホースである、請求項1~14のいずれか1項に記載の冷媒輸送用ホース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は冷媒輸送用ホースに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車のカーエアコンシステムにはゴム製の冷媒輸送用ホースが用いられている。上記エアコンシステム内において、上記ホースを金属製の配管に繋ぐ場合、例えば、配管の端部をホースの端部からホース内に挿入し、金属製の留め具を用いてホースの外側からホースを加締め(締め付ける)て、上記ホースを上記配管と繋ぐ(接続する)ことができる。
そして、自動車のカーエアコンシステムにおいて、上記ホース等の内部を、通常、冷媒と冷凍機油との混合物が流動する。
【0003】
このように、冷媒等を含有する混合物を内部に流通させる冷媒輸送用ホースに使用できるホース用ゴム組成物として、例えば、特許文献1が提案されている。
特許文献1には、(A)p-アルキルスチレン(PMS)含有量が5~25重量%、臭素(Br)含有量が1.5重量%以上であり、p-アルキルスチレン単位と臭素単位との重量比が0.15≦Br/PMS≦0.40である、炭素原子数4~7のイソモノオレフィンとp-アルキルスチレンとの共重合ゴムの臭素化物100重量部、
(B)亜鉛華0.1~10重量部、および
(C)臭素化アルキルフェノール樹脂1~15重量部を含有する、ホース用ゴム組成物が記載されている。
特許文献1には、上記組成物が更にカーボンブラック等を配合してもよいことが記載され、上記カーボンブラックとしてHAF級カーボンブラックが記載されている。
【0004】
また、これまでに自動車用エアコンホース等に適用できるホースとして、例えば、特許文献2が提案されている。
特許文献2には、少なくとも、内面ゴム層、2層以上のスパイラル編組構造の補強層および外面ゴム層を、内周側からこの順に備えるホースであって、上記内面ゴム層を形成するゴム材料の135℃における破断強度(TB)と、上記補強層を形成する補強糸の135℃における1.2cN/dtex時の中間伸びと、の比(TB/中間伸び)が、1.7以上である、ホースが記載されている。
また、特許文献2には、臭素化イソブチレン-コ-パラ-メチルスチレン(BIMS)とSRFカーボンブラック等とを含有するゴム組成物でホースの内管を形成したことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2000-104866号公報
【文献】特開2006-307987号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、今日における自動車の使用環境は寒冷地域から熱帯地域まで広範囲に至る。また、昨今ではターボエンジンの搭載等によって自動車のエンジンルーム内が非常に高温となること等を考慮すると、例えば-30~+125℃のような広範囲な温度環境にあっても、冷媒輸送用ホースと配管との繋ぎ目から冷媒等が漏れないことが冷媒輸送用ホースには要求されている。
【0007】
このようななか、本発明者らは特許文献1、2を参考にしてゴム組成物を調製しこれを用いたホースを評価したところ、このようなホースを上記のように加締めて配管に繋いだ場合、上記の加締めた部分(加締め部)におけるシール性(ホースシール性能)が弱く、安定したシール性を得ることができない場合があることが分かった。このように加締め部におけるシール性が弱いと、冷媒輸送用ホースと配管との繋ぎ目から冷媒等が漏れる原因となると考えられる。
また、加締めによるホースのシール性を向上させるため、ゴムのモジュラスを単に高くするようにゴム組成物を設計すると、上記設計に伴って、ゴム組成物(未架橋の状態)の粘度が高くなる場合があることが分かった。上記のような設計に伴うゴム組成物(未架橋)の粘度の上昇は、押出加工性等のような、ホース製造時の加工性の悪化につながることが懸念された。
【0008】
そこで、本発明は、加工性とシール性とを優れたレベルで両立させうる冷媒輸送用ホースを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、冷媒輸送用ホースが特定の外管用ゴム組成物で形成された外管を有することによって、所望の効果が得られることを見出し、本発明に至った。
本発明は上記知見等に基づくものであり、具体的には以下の構成により上記課題を解決するものである。
【0010】
[1] 内管と外管とを有し、上記内管と上記外管との間に補強層を有し、
上記外管が外管用ゴム組成物によって形成され、
上記外管用ゴム組成物が、
イソモノオレフィンとp-アルキルスチレンとの共重合ゴムが臭素化された臭素化共重合ゴムであって、前記臭素化共重合ゴムを構成する臭素を有する繰り返し単位の含有量が、前記臭素化共重合ゴムを構成する繰り返し単位の全量に対して、0.8~1.5モル%である臭素化共重合ゴムと、
ジブチルフタレート吸収量が40cm3/100g以下であるカーボンブラックAと、
臭素化アルキルフェノール樹脂と、
酸化亜鉛とを含有し、
上記カーボンブラックAの含有量が、上記臭素化共重合ゴム100質量部に対して、35質量部以上である、冷媒輸送用ホース。
[2] 上記カーボンブラックAのよう素吸着量が、10~40g/kgである、[1]に記載の冷媒輸送用ホース。
[3] 上記カーボンブラックAが、FTFカーボンブラックである、[1]又は[2]に記載の冷媒輸送用ホース。
[4] 更に、ジブチルフタレート吸収量が50~80cm3/100gであるカーボンブラックBを含む、[1]~[3]のいずれかに記載の冷媒輸送用ホース。
[5] 上記カーボンブラックBのよう素吸着量が、15~30g/kgである、[4]に記載の冷媒輸送用ホース。
[6] 上記カーボンブラックBが、SRFカーボンブラックである、[4]又は[5]に記載の冷媒輸送用ホース。
[7] 上記カーボンブラックBの含有量が、上記臭素化共重合ゴム100質量部に対して、20~120質量部である、[4]~[6]のいずれかに記載の冷媒輸送用ホース。
[8] 上記外管用ゴム組成物が、さらに、タルクを含有し、
上記タルクの含有量が、上記臭素化共重合ゴム100質量部に対して、10~80質量部である、[1]~[7]のいずれかに記載の冷媒輸送用ホース。
[9] 上記臭素化共重合ゴムを構成する臭素を有する繰り返し単位の含有量が、上記臭素化共重合ゴムを構成する繰り返し単位の全量に対して、1.1~1.3モル%である、[1]~[8]のいずれかに記載の冷媒輸送用ホース。
[10] 上記外管用ゴム組成物が、
イソモノオレフィンとp-アルキルスチレンとの共重合ゴムが臭素化された臭素化共重合ゴムであって、上記臭素化共重合ゴムを構成する臭素を有する繰り返し単位の含有量が、上記臭素化共重合ゴムを構成する繰り返し単位の全量に対して、0.8モル%未満又は1.5モル%を超える臭素化共重合ゴムを、更に含有し、
前記カーボンブラックAの含有量が、前記臭素化共重合ゴムを構成する臭素を有する繰り返し単位の含有量が、前記臭素化共重合ゴムを構成する繰り返し単位の全量に対して、0.8~1.5モル%である臭素化共重合ゴムと、前記臭素化共重合ゴムを構成する臭素を有する繰り返し単位の含有量が、前記臭素化共重合ゴムを構成する繰り返し単位の全量に対して、0.8モル%未満又は1.5モル%を超える臭素化共重合ゴムとの合計含有量100質量部に対して、35質量部以上である、[1]~[9]のいずれかに記載の冷媒輸送用ホース。
[11] 上記外管用ゴム組成物を架橋させたゴムの100%伸びにおける引張応力(M100)が、7MPa以上である、[1]~[10]のいずれかに記載の冷媒輸送用ホース。
[12] 上記内管が複数の層を有し、最内層がゴム層であり、
上記内管において上記最内層の外側にバリア層を有する、[1]~[11]のいずれかに記載の冷媒輸送用ホース。
[13] 上記バリア層が、ポリアミド系樹脂を含む、[12]に記載の冷媒輸送用ホース。
[14] 上記補強層が複数の補強層である、[1]~[13]のいずれかに記載の冷媒輸送用ホース。
[15] 自動車用の冷媒輸送用ホースである、[1]~[14]のいずれかに記載の冷媒輸送用ホース。
【発明の効果】
【0011】
本発明の冷媒輸送用ホースは、加工性とシール性とを優れたレベルで両立させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の冷媒輸送用ホースの一例について、各層を切り欠いて表した、模式的な斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明の冷媒輸送用ホースの別の例について、各層を切り欠いて表した、模式的な斜視図である。
【
図3】
図3は、本発明の冷媒輸送用ホースの別の例について、各層を切り欠いて表した、模式的な斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明について以下詳細に説明する。
なお、本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において、特に断りのない限り、各成分はその成分に該当する物質をそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。成分が2種以上の物質を含む場合、成分の含有量は、2種以上の物質の合計の含有量を意味する。
本明細書において、加工性とシール性のうちの少なくとも1つがより優れることを、本発明の効果がより優れるということがある。
【0014】
[冷媒輸送用ホース]
本発明の冷媒輸送用ホース(本発明のホース)は、
内管と外管とを有し、上記内管と上記外管との間に補強層を有し、
上記外管が外管用ゴム組成物によって形成され、
上記外管用ゴム組成物が、
イソモノオレフィンとp-アルキルスチレンとの共重合ゴムが臭素化された臭素化共重合ゴムであって、前記臭素化共重合ゴムを構成する臭素を有する繰り返し単位の含有量が、前記臭素化共重合ゴムを構成する繰り返し単位の全量に対して、0.8~1.5モル%である臭素化共重合ゴムと、
ジブチルフタレート吸収量が40cm3/100g以下であるカーボンブラックAと、
臭素化アルキルフェノール樹脂と、
酸化亜鉛とを含有し、
上記カーボンブラックAの含有量が、上記臭素化共重合ゴム100質量部に対して、35質量部以上である、冷媒輸送用ホースである。
【0015】
本発明のホースは上記の構成をとるため、所望の効果が得られるものと考えられる。その理由は明らかではないが、およそ以下のとおりと推測される。
本発明者らは、外管を構成するゴムのモジュラスが高い場合、加締め部のシール性(ホースシール性能)を増強できることを見出した。
留め具で外管を加締めて外管を配管と接続させたときに、留め具からの力に対する外管の反力が大きい(つまり外管を構成するゴムのモジュラスが高い)ほうが、加締め部のシール性が優れると考えられる。
一方、上記と同様なゴムが内管に使用された場合、留め具からホースにかかる力が外管及び補強層を介するので、留め具からの力が内管に直接かからず、加締め部のシール性が安定しないと考えられる。
【0016】
また、外管を構成するゴムのモジュラスの上昇は、上記外管を形成するゴム組成物(未架橋)の粘度の上昇と相関している。上記のようなゴム組成物(未架橋)の粘度の上昇による、ホース製造時等における加工性の悪化が懸念された。
【0017】
上記のような問題に対して、本発明者らは、臭素を有する繰り返し単位の含有量が所定の範囲である臭素化共重合ゴムと、所定の範囲のDBP(ジブチルフタレート)吸収量を有するカーボンブラックを所定の含有量で含有するゴム組成物を用いて、冷媒輸送用ホースの外管を形成することによって、外管(を構成するゴム)のモジュラスを上昇させて冷媒輸送用ホースと配管との繋ぎ目におけるシール性(ホースシール性能)を向上させつつ、ゴム組成物(未架橋)の粘度の上昇を抑制でき冷媒輸送用ホースの製造時等の加工性に優れることを見出した。
上記理由から、本発明のホースは、加工性とシール性とを優れたレベルで両立させることができると考えられる。
以下、本発明のホースについて詳述する。
【0018】
本発明のホースの例について添付の図面を参照して説明する。本発明は添付の図面に制限されない。
図1は、本発明の冷媒輸送用ホースの一例について、各層を切り欠いて表した、模式的な斜視図である。
図1において、冷媒輸送用ホース(ホース)10は、内管11と外管16とを有し、内管11と外管16との間に補強層14を有する。
外管16が上記外管用ゴム組成物で少なくとも形成される。
【0019】
図2は、本発明の冷媒輸送用ホースの別の例について、各層を切り欠いて表した、模式的な斜視図である。
図2において、冷媒輸送用ホース(ホース)20は、内管21と外管26とを有し、内管21と外管26との間に補強層24を有する。また、ホース20は、内管21と補強層24との間に中間ゴム層28を有する。
図2において、内管21は複数の層(最内層22及びバリア層23)を有し、最内層22の外側にバリア層23を有する。
外管26が上記外管用ゴム組成物で少なくとも形成される。
【0020】
図3は、本発明の冷媒輸送用ホースの別の例について、各層を切り欠いて表した、模式的な斜視図である。
図3において、冷媒輸送用ホース(ホース)30は、内管31と外管36とを有し、内管31と外管36との間に、複数の補強層として、補強層34、35を有する。
内管31は複数の層(最内層32及びバリア層33)を有し、最内層32の外側にバリア層33を有する。
ホース30は、内管31から順に、中間ゴム層37、補強層34、中間ゴム層38、補強層35、及び外管36を有する。
外管36が上記外管用ゴム組成物で少なくとも形成される。
【0021】
本発明のホースの外径は、特に制限されないが、例えば、4~30mmとできる。
本発明のホースの内径は、特に制限されないが、例えば、3~20mmとできる。
【0022】
<外管>
本発明において、本発明のホースは外管を有する。
上記外管の厚さは、特に制限されないが、例えば、0.5~4mmとできる。
【0023】
本発明において、上記外管が、後述する外管用ゴム組成物によって形成される。
上記外管が単層である場合、上記単層の外管(ホースの最外層)が外管用ゴム組成物によって形成されればよい。
上記外管が複数の層を有する場合、上記複数の層のうちいずれか1層以上が後述する外管用ゴム組成物によって形成されればよい。上記外管が複数の層を有する場合、上記外管において、少なくとも最も外側の層(ホースの最外層)が後述する外管用ゴム組成物によって形成されることが好ましい態様の1つとして挙げられる。
【0024】
<外管用ゴム組成物>
上記外管を形成する外管用ゴム組成物は、
イソモノオレフィンとp-アルキルスチレンとの共重合ゴムが臭素化された臭素化共重合ゴムであって、前記臭素化共重合ゴムを構成する臭素を有する繰り返し単位の含有量が、前記臭素化共重合ゴムを構成する繰り返し単位の全量に対して、0.8~1.5モル%である臭素化共重合ゴムと、
ジブチルフタレート吸収量が40cm3/100g以下であるカーボンブラックAと、
臭素化アルキルフェノール樹脂と、
酸化亜鉛とを含有し、
上記カーボンブラックAの含有量が、上記臭素化共重合ゴム100質量部に対して、35質量部以上であり、
本発明の冷媒輸送用ホースの外管を形成するために使用されるゴム組成物である。
以下、上記外管用ゴム組成物に含有される各成分について説明する。
【0025】
<臭素化共重合ゴム>
上記外管用ゴム組成物は、
イソモノオレフィンとp-アルキルスチレンとの共重合ゴムが臭素化された臭素化共重合ゴムであって、上記臭素化共重合ゴムを構成する臭素を有する繰り返し単位の含有量が、上記臭素化共重合ゴムを構成する繰り返し単位の全量に対して、0.8~1.5モル%である臭素化共重合ゴムを含有する。
本明細書において、イソモノオレフィンとp-アルキルスチレンとの共重合ゴムが臭素化された臭素化共重合ゴムであって、上記臭素化共重合ゴムを構成する臭素を有する繰り返し単位の含有量が、上記臭素化共重合ゴムを構成する繰り返し単位の全量に対して、0.8~1.5モル%である臭素化共重合ゴムを「特定臭素化共重合ゴム」と称する場合がある。
本発明において、上記外管用ゴム組成物は、特定臭素化共重合ゴムを含有する。
【0026】
なお、上記イソモノオレフィンは、イソモノオレフィンとp-アルキルスチレンとの上記共重合ゴム(臭素化前)において、上記共重合ゴムを構成する繰り返し単位として存在することができる。上記p-アルキルスチレンも同様である。
上記特定臭素化共重合ゴムは、臭素化された、イソモノオレフィンとp-アルキルスチレンとのコポリマーということができる。
本明細書において、イソモノオレフィンとp-アルキルスチレンとの共重合ゴムが臭素化された臭素化共重合ゴムを、臭素化共重合ゴムを構成する臭素を有する繰り返し単位の含有量にかかわらず、単に「臭素化共重合ゴム」と称する場合がある。
また、上記のとおり、上記臭素化共重合ゴムを構成する臭素を有する繰り返し単位の含有量が所定の範囲である臭素化共重合ゴムを「特定臭素化共重合ゴム」と称し、その一方、後述のとおり、上記臭素化共重合ゴムを構成する臭素を有する繰り返し単位の含有量が上記所定の範囲を外れる臭素化共重合ゴムを「別の臭素化共重合ゴム」と称する場合がある。
【0027】
上記特定臭素化共重合ゴム(又は上記臭素化された、イソモノオレフィンとp-アルキルスチレンとのコポリマー。以下同様)を構成する全繰り返し単位のうち、いずれの繰り返し単位が臭素化されているかは特に制限はない。例えば、上記共重合ゴムの上記p-アルキルスチレンによる繰り返し単位の一部が臭素化されるのが好ましい態様の1つとして挙げられる。つまり、上記の場合、上記特定臭素化共重合ゴムは、例えば、イソモノオレフィンによる繰り返し単位と、臭素化されていないp-アルキルスチレンによる繰り返し単位と、臭素化された、p-アルキルスチレンによる繰り返し単位とを有することができる。
【0028】
<イソモノオレフィン>
上記特定臭素化共重合ゴムを構成するイソモノオレフィンは、末端にC*-(CH3)2の分岐状構造を有し、別の末端に1つの二重結合を有する炭化水素化合物である。なおイソモノオレフィンの炭素数が4である場合、上記C*-(CH3)2におけるC*が二重結合を形成することができる。
【0029】
・炭素数
上記イソモノオレフィンの炭素数は、本発明の効果により優れるという観点から、4~7であることが好ましく、4がより好ましい。
【0030】
上記イソモノオレフィンとしては、例えば、イソブチレン(イソブテン。2-メチル-1-プロペン)、3-メチル-1-ブテン(イソペンテン)、4-メチル-1-ペンテン(イソヘキセン)、5-メチル-1-ヘキセン(イソヘプテン)が挙げられる。
なかでも、上記イソモノオレフィンは、本発明の効果により優れるという観点から、イソブチレンが好ましい。
【0031】
<p-アルキルスチレン>
上記特定臭素化共重合ゴムを構成するp-アルキルスチレンは、p位にアルキル基をするスチレンである。
上記特定臭素化共重合ゴムにおいて、上記p-アルキルスチレンによる繰り返し単位の一部が、上記p-アルキルスチレンが有するアルキル基において臭素化されていることが好ましい態様の1つとして挙げられる。
【0032】
上記p-アルキルスチレンが有するアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基のような炭素数1~8のアルキル基が挙げられる。
なかでも、上記p-アルキルスチレンは、本発明の効果により優れるという観点から、p-メチルスチレンが好ましい。
【0033】
<臭素を有する繰り返し単位の含有量>
本発明において、外管用ゴム組成物に含有される、イソモノオレフィンとp-アルキルスチレンとの共重合ゴムが臭素化された臭素化共重合ゴム(特定臭素化共重合ゴム)について、上記臭素化共重合ゴム(特定臭素化共重合ゴム)を構成する臭素を有する繰り返し単位の含有量が、上記臭素化共重合ゴム(特定臭素化共重合ゴム)を構成する繰り返し単位の全量に対して、0.8~1.5モル%である。
【0034】
上記特定臭素化共重合ゴムを構成する臭素を有する繰り返し単位の含有量は、本発明の効果により優れるという観点から、上記特定臭素化共重合ゴムを構成する繰り返し単位の全量に対して、1.1~1.3モル%であることが好ましい。
【0035】
上記外管用ゴム組成物はゴム成分として上記特定臭素化共重合ゴムを含有すればよい。
上記特定臭素化共重合ゴムは、1種又は2種以上を組合わせて使用することができる。
【0036】
・別の臭素化共重合ゴム
上記外管用ゴム組成物はゴム成分として上記特定臭素化共重合ゴム以外に、上記特定臭素化共重合ゴムとは臭素を有する繰り返し単位の含有量が異なる別の臭素化共重合ゴム(以下、上記のような別の臭素化共重合ゴムを「別の臭素化共重合ゴム」と称する場合がある。)を更に含有することができる。
別の臭素化共重合ゴムは、別の臭素化共重合ゴムを構成する臭素を有する繰り返し単位の含有量が、上記特定臭素化共重合ゴムが有する臭素を有する繰り返し単位の所定の範囲の含有量を外れればよい。
【0037】
上記別の臭素化共重合ゴムとしては、例えば、上記別の臭素化共重合ゴムを構成する臭素を有する繰り返し単位の含有量が、上記別の臭素化共重合ゴムを構成する繰り返し単位の全量に対して、0.8モル%未満である、又は1.5モル%を超える臭素化共重合ゴムが挙げられる。
上記別の臭素化共重合ゴムは、臭素を有する繰り返し単位の含有量が異なる以外は、イソモノオレフィンとp-アルキルスチレンとの共重合ゴムが臭素化された臭素化共重合ゴムであることの範囲内であれば、上記特定臭素化共重合ゴムと同じであってもよく、異なってもよい。
上記別の臭素化共重合ゴムにおいて臭素を有する繰り返し単位の含有量が0.8モル%未満である場合、上記含有量の下限は、上記別の臭素化共重合ゴムを構成する繰り返し単位の全量に対して、例えば、0.1モル%以上とすることができる。
上記別の臭素化共重合ゴムにおいて臭素を有する繰り返し単位の含有量が1.5モル%を超える場合、上記含有量の上限は、上記別の臭素化共重合ゴムを構成する繰り返し単位の全量に対して、例えば、3.0モル%以下とすることができる。
【0038】
上記外管用ゴム組成物が、上記特定臭素化共重合ゴムとは臭素を有する繰り返し単位の含有量が異なる別の臭素化共重合ゴム(別の臭素化共重合ゴム)を更に含有する場合、上記特定臭素化共重合ゴム及び上記別の臭素化共重合ゴムを構成する臭素を有する繰り返し単位の含有量の合計量は、特に制限されないが、上記特定臭素化共重合ゴム及び上記別の臭素化共重合ゴムを構成する全繰り返し単位の合計量に対して、平均で、0.8~1.5モル%であることが好ましく、1.1~1.3モル%であることがより好ましい。
【0039】
・特定臭素化共重合ゴムの含有量
上記外管用ゴム組成物は、臭素化共重合ゴムのすべてが上記特定臭素化共重合ゴムであることが好ましく、ゴム成分のすべてが上記特定臭素化共重合ゴムであることがより好ましい。
上記外管用ゴム組成物が、臭素化共重合ゴムとして、上記特定臭素化共重合ゴムと、上記別の臭素化共重合ゴムとを含有する場合、上記特定臭素化共重合ゴムの含有量は、本発明の効果により優れるという観点から、上記特定臭素化共重合ゴムと上記別の臭素化共重合ゴムとの合計含有量(臭素化共重合ゴムの全体量)に対して、50質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上100質量%未満が更に好ましい。
臭素化共重合ゴムが上記特定臭素化共重合ゴムと上記別の臭素化共重合ゴムとを含有する場合、臭素化共重合ゴム又はゴム成分のすべてが上記特定臭素化共重合ゴムと上記別の臭素化共重合ゴムとによって占められていてもよい。
【0040】
臭素化共重合ゴムの製造方法は特に制限されない。例えば、従来公知の方法が挙げられる。
例えば、上記イソモノオレフィンと上記p-アルキルスチレンとを共重合させて共重合ゴムを得て、上記共重合ゴムを臭素化して臭素化共重合ゴムを製造した場合、上記臭素化前の共重合ゴムが例えば0.5~10モル%のp-アルキルスチレン(による繰り返し単位)を含み、その内の例えば5~30%をブロモアルキルスチレン(による繰り返し単位)に転化することによって臭素化共重合ゴムを製造することができる。上記転化を調節することによって、上記特定臭素化共重合ゴム又は上記別の臭素化共重合ゴムを製造することができる。
【0041】
臭素化共重合ゴムとして市販品を使用することができる。
上記特定臭素化共重合ゴムとしては、例えば、Exxpro 3745(EXXONMOBIL CHEMICAL COMPANY製)が挙げられる。
上記別の臭素化共重合ゴムとしては、例えば、Exxpro 3433、Exxpro 3035(いずれもEXXONMOBIL CHEMICAL COMPANY製。いずれも臭素を有する繰り返し単位の含有量が0.8モル%未満である。)が挙げられる。
【0042】
<カーボンブラックA>
本発明において、上記外管用ゴム組成物は、カーボンブラックAを含有する。
【0043】
<カーボンブラックAのジブチルフタレート(DBP)吸収量>
本発明において、カーボンブラックAのジブチルフタレート(DBP)吸収量は、40cm3/100g以下である。
カーボンブラックAのDBP吸収量は、本発明の効果により優れ、得られるゴムの切断時伸びに優れるという観点から、10~35cm3/100gが好ましい。
本発明において、カーボンブラックのジブチルフタレート吸収量は、JIS K6217-4:2008に準じて測定できる。
【0044】
なお、あるカーボンブラックのDBP吸収量が数値範囲で記載されている際において、上記数値範囲の全体が40cm3/100g以下に該当する場合、又は上記数値範囲の上限と下限の平均値が40cm3/100g以下に該当する場合、そのカーボンブラックはカーボンブラックAに該当するものとする。後述するカーボンブラックAのよう素吸着量についても同様である。
また、カーボンブラックA以外のカーボンブラック(例えば後述するカーボンブラックB等)についても同様である。
【0045】
(カーボンブラックAのよう素吸着量)
上記カーボンブラックAのよう素吸着量は、10~40g/kgが好ましい。
本発明において、カーボンブラックのよう素吸着量は、JIS K6217-1:2008に準じて測定できる。
【0046】
上記カーボンブラックAは、本発明の効果により優れ、得られるゴムの切断時伸びに優れるという観点から、FTF(Fine Thermal Furnance:微粒熱分解)カーボンブラックであることが好ましい。
【0047】
<カーボンブラックAの含有量>
本発明において、上記カーボンブラックAの含有量は、上記特定臭素化共重合ゴム100質量部に対して、35質量部以上である。
【0048】
上記カーボンブラックAの含有量は、本発明の効果により優れ、得られるゴムの切断時伸びと100%モジュラスに優れるという観点から、上記特定臭素化共重合ゴム100質量部に対して、170質量部以下が好ましく、60~85質量部がより好ましく、65~75質量部が更に好ましい。
なお、本発明において、カーボンブラックAの含有量の基準は、上記外管用ゴム組成物が臭素化共重合ゴムとして上記特定臭素化共重合ゴムを含有する場合、「上記特定臭素化共重合ゴム100質量部」である。
【0049】
また、上記外管用ゴム組成物が臭素化共重合ゴムとして上記特定臭素化共重合ゴムと上記別の臭素化共重合ゴムとを含有する場合、カーボンブラックAの含有量の基準を「上記特定臭素化共重合ゴムと上記別の臭素化共重合ゴムとの合計含有量100質量部」としてカーボンブラックAの含有量を規定することもできる。
【0050】
上記外管用ゴム組成物が上記特定臭素化共重合ゴム以外に上記別の臭素化共重合ゴムを更に含有する場合、上記カーボンブラックAの含有量は、本発明の効果により優れ、得られるゴムの切断時伸びと100%モジュラスに優れるという観点から、上記特定臭素化共重合ゴムと上記別の臭素化共重合ゴムとの合計含有量100質量部に対して、35質量部以上であることが好ましく、60~85質量部がより好ましく、65~75質量部が更に好ましい。
【0051】
なお、本明細書において、カーボンブラックA以外の成分(例えば、臭素化アルキルフェノール樹脂、酸化亜鉛、カーボンブラックB、タルク等)の含有量の基準について、カーボンブラックA以外の成分の含有量の基準を、「上記特定臭素化共重合ゴム100質量部」又は「上記特定臭素化共重合ゴムと上記別の臭素化共重合ゴムとの合計含有量100質量部」をまとめて、「上記特定臭素化共重合ゴム等100質量部」と表すことがある。
【0052】
(カーボンブラックB)
上記外管用ゴム組成物は、本発明の効果により優れ、得られるゴムの切断時伸びと100%モジュラスに優れるという観点から、更に、ジブチルフタレート(DBP)吸収量が50~80cm3/100gであるカーボンブラックBを含むことが好ましい。
【0053】
・カーボンブラックBのよう素吸着量
上記カーボンブラックBのよう素吸着量は、本発明の効果により優れ、得られるゴムの切断時伸びと100%モジュラスに優れるという観点から、15~30g/kgであることが好ましい。
【0054】
・カーボンブラックB
上記カーボンブラックBは、本発明の効果により優れ、得られるゴムの切断時伸びと100%モジュラスに優れるという観点から、SRF(Semi-Reinforcing Furnace:中補強力)カーボンブラックであることが好ましい。
【0055】
・カーボンブラックBの含有量
上記カーボンブラックBの含有量は、本発明の効果により優れ、得られるゴムの切断時伸びと100%モジュラスに優れるという観点から、上記特定臭素化共重合ゴム100質量部に対して、20~120質量部が好ましい。
上記カーボンブラックBの含有量は、本発明の効果により優れ、得られるゴムの切断時伸びと100%モジュラスに優れるという観点から、上記特定臭素化共重合ゴム等100質量部に対して、20質量部以上95質量部未満であることが好ましく、30~70質量部がより好ましく、40~60質量部が更に好ましい。
【0056】
<臭素化アルキルフェノール樹脂>
上記外管用ゴム組成物は、臭素化アルキルフェノール樹脂を含有する。
上記臭素化アルキルフェノール樹脂は、臭素化共重合ゴムの架橋助剤として機能することができる。
【0057】
上記臭素化アルキルフェノール樹脂は、臭素化されたアルキルフェノールとホルムアルデヒドとの縮合物である。
上記臭素化アルキルフェノール樹脂は、臭素化されたアルキルフェノールとフェノールとホルムアルデヒド等との縮合物であってもよい。
【0058】
上記臭素化アルキルフェノール樹脂の含有量は、本発明の効果により優れ、得られるゴムの切断時伸びと100%モジュラスに優れるという観点から、上記特定臭素化共重合ゴム等100質量部に対して、1~10質量部であることが好ましく、2~5質量部がより好ましい。
【0059】
<酸化亜鉛>
上記外管用ゴム組成物は、酸化亜鉛(ZnO)を含有する。
上記酸化亜鉛は、臭素化共重合ゴムの架橋剤として機能することができる。
【0060】
上記酸化亜鉛の含有量は、本発明の効果により優れ、得られるゴムの切断時伸びと100%モジュラスに優れるという観点から、上記特定臭素化共重合ゴム等100質量部に対して、0.5~10質量部であることが好ましく、1~5質量部がより好ましい。
【0061】
(タルク)
上記外管用ゴム組成物は、本発明の効果により優れるという観点から、さらに、タルクを含有することが好ましい。
タルクは、水酸化マグネシウムとケイ酸塩からなる鉱物であり、Mg3Si4O10(OH)2で表される化合物である。
上記タルクの含有量は、本発明の効果により優れるという観点から、上記特定臭素化共重合ゴム100質量部に対して、10~80質量部が好ましい。
上記タルクの含有量は、本発明の効果により優れるという観点から、上記特定臭素化共重合ゴム等100質量部に対して、10~50質量部であることが好ましく、20~40質量部がより好ましい。
【0062】
(添加剤)
上記外管用ゴム組成物は、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、更に添加剤を含有することができる。
添加剤としては、例えば、上記特定臭素化共重合ゴム及び上記別の臭素化共重合ゴム以外のゴム、樹脂、上記カーボンブラックA、B以外のカーボンブラック、タルク以外の白色充填剤、酸化亜鉛以外の架橋剤、架橋促進助剤(例えば、ステアリン酸、ステアリン酸亜鉛)、架橋遅延剤、軟化剤のような加工助剤、老化防止剤、可塑剤などが挙げられる。
【0063】
(外管用ゴム組成物の製造方法)
上記外管ゴム組成物はその製造方法について特に制限されない。例えば、上記必須成分と、必要に応じて使用することができる任意成分とを例えば20~180℃の条件下で混合することによって製造することができる。
上記外管用ゴム組成物は、そのムーニー粘度が低いので、ホースを製造する際の加工性(例えば押出加工性)に優れるほか、上記外管用ゴム組成物自体を製造する際の加工性(例えば、混合加工性)にも優れる。
【0064】
(ゴム組成物の架橋)
本発明のゴム組成物を架橋する方法は特に制限されない。本発明のゴム組成物を、例えば、140~190℃の条件下において、プレス架橋、蒸気架橋、オーブン架橋(熱気架橋)または温水架橋することによって、架橋することができる。
なお、本発明において、本発明のゴム組成物を架橋させるとは、本発明のゴム組成物(未架橋)を架橋させて硬化することを意味する。具体的には、臭素化共重合ゴムが架橋すればよい。
臭素化共重合ゴムが架橋するとは、上記特定臭素化共重合ゴムが、臭素化共重合ゴム分子内で、臭素化共重合ゴム同士で、又は、後述する、臭素化共重合ゴム以外のゴムと、単結合又は連結基を形成することによって、結合することを意味する。上記連結基は特に制限されない。
【0065】
臭素化共重合ゴムの架橋の具体例について、以下に反応式を示して説明する。なお、以下に示す反応式は臭素化共重合ゴムの架橋の一例であり、本発明は以下の反応式に制限されない。
以下の反応式に示すように、例えば、(左側の)臭素化共重合ゴムが有する臭化メチル基が、酸化亜鉛及び/又はステアリン酸亜鉛の存在下において、(右側の)臭素化共重合ゴムが有するトリル基と反応して、脱臭化水素しメチレン基を形成することによって、臭素化共重合ゴムは分子内又は分子間で架橋することができる。
【0066】
【0067】
上記外管用ゴム組成物を架橋させたゴムの100%伸びにおける引張応力(M100)は、本発明の効果(特にシール性)により優れるという観点から、7MPa以上であることが好ましく、9~15MPaがより好ましい。
なお、本発明においてM100の測定については、まず、上記外管用ゴム組成物を、153℃の条件下で、面圧3.0MPaの圧力下で45分間架橋して、2mm厚のゴムを作製した。次いで、上記のとおり得られたゴムを用いて、JIS K6251:2017に準じて、23℃、引張速度500mm/分の条件下で引張試験を行い、上記ゴムの100%伸びにおける引張応力(M100)を測定した。
【0068】
<内管>
本発明のホースは内管を有する。
上記内管の厚さは、特に制限されないが、例えば、0.2~3mmとできる。
上記内管は、単層であってもよく、複数の層を有してもよい。
【0069】
上記内管が単層である場合、上記単層の内管をゴム層又は樹脂層で形成することができる。
(内管を形成しうるゴム組成物)
上記内管が単層であり、上記単層の内管がゴム層である場合、上記ゴム層を形成しうるゴム組成物は特に制限されない。例えば従来公知のものが挙げられる。
上記内管に使用されるゴム組成物に含有されるゴムとしては、例えば、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、天然ゴム(NR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン-ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、ポリイソプレンゴム(IR)、ブチルゴム(IIR)、クロロブチルゴム(Cl-IIR)、ブロモブチルゴム(Br-IIR)、クロロプレンゴム、エチレン-プロピレン共重合体ゴム、スチレン-イソプレン共重合体ゴム、スチレン-イソプレン-ブタジエン共重合体ゴム、イソプレン-ブタジエン共重合体ゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレン(CM)が挙げられる。
なかでも、上記ゴムは、ゴム層の耐疲労性能に優れるという観点から、ブチルゴム(IIR)及び/又は塩素化ポリエチレン(CM)を含むことが好ましい。
【0070】
(内管を形成しうる樹脂組成物)
上記樹脂層は、耐冷媒透過性等に優れるという観点から、ポリアミド系樹脂を含む樹脂組成物で形成されることが好ましい。
上記ポリアミド系樹脂としては、例えば、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン666、ナイロン612、ナイロン610、ナイロン46、ナイロン66612のようなポリアミド樹脂が挙げられる。
上記ポリアミド系樹脂は、例えば、上記ポリアミド樹脂とカルボキシル基含有変性ポリオレフィン(カルボキシル基:-COOHを有する、変性されたポリオレフィン)とのブレンド物であってもよい。
上記樹脂組成物は、上記ポリアミド系樹脂のほかに、例えば、カーボンブラック、シリカのようなフィラー;加硫剤又は架橋剤、加硫促進剤又は架橋促進剤、オイル、老化防止剤など、樹脂組成物に一般的に配合されている添加剤を更に含有することができる。添加剤の配合量は本発明の目的に反しない範囲で、適宜選択することができる。
【0071】
上記内管は、耐冷媒透過性等に優れるという観点から、上記内管が複数の層を有し、上記内管において上記最内層の外側にバリア層を有することが好ましい。
また、上記バリア層は上記最内層に隣接することが好ましい。
【0072】
(最内層)
上記最内層は、ゴム層であることが好ましい。
上記最内層を形成しうるゴム組成物は特に制限されない。例えば従来公知のものが挙げられる。上記最内層を形成しうるゴム組成物として、上記「(内管を形成しうるゴム組成物)」と同様のものが挙げられる。
【0073】
(バリア層)
上記バリア層は、例えば、上記「(内管を形成しうる樹脂組成物)」と同様の樹脂組成物によって形成することができる。
上記バリア層が、耐冷媒透過性等に優れるという観点から、ポリアミド系樹脂を含むことが好ましい。
上記バリア層に含まれるポリアミド系樹脂としては、上記と同様のポリアミド樹脂が挙げられる。
【0074】
<補強層>
本発明のホースは、上記内管と上記外管との間に補強層を有する。
本発明のホースは補強層を有することによって、シール性(ホースシール性)に優れ、ホースの強度を保持することができ、耐圧性に優れる。
【0075】
上記補強層の厚さは、特に制限されないが、例えば、0.3~3mmとできる。
上記補強層を形成しうる補強材料は特に限定されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。
上記補強層(補強材料)の材質としては、例えば、ポリマー(繊維材料)、金属が挙げられる。
上記ポリマー(繊維材料)としては、具体的には例えば、ポリエステル、ポリアミド、アラミド、ビニロン、レーヨン、PBO(ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール)、ポリケトン、ポリアリレート、ポリケトンが挙げられる。
上記金属としては、例えば、ブラスメッキが施されたワイヤ、亜鉛メッキワイヤー等などの硬鋼線が挙げられる。
補強層は、補強層の耐疲労性能に優れ、コストパフォーマンスに優れるという観点から、ポリエステルが好ましく、ポリエステル系繊維がより好ましい。
上記補強材料は表面処理されたものであってもよい。
【0076】
上記補強層(補強材料)の形態としては、例えば、スパイラル構造及び/又はブレード構造に編組されたものが挙げられる。
上記補強層(補強材料)の形態は、スパイラル構造及び/又はブレード構造に編組されたものが好ましい。
【0077】
本発明のホースが有する上記補強層は、1層の補強層又は複数の補強層のいずれであってもよい。
上記補強層は、冷媒輸送用ホースの強度が強くなるという観点から、複数の補強層である(本発明のホースが上記補強層として、複数の補強層を有する)ことが好ましい。
上記補強層が複数の補強層である場合、上記補強層の数は、2層以上であればよく、5層以下とすることができる。上記補強層が複数の補強層である場合、上記補強層の数は、冷媒輸送用ホースの強度が強くなるという観点から、2~3層が好ましい。
【0078】
(中間ゴム層)
本発明のホースは更に中間ゴム層を有することができる。中間ゴム層は上記中間ゴム層の両側に存在する部材同士を接着させることができる。
上記中間ゴム層は、例えば、内管と補強層の間、補強層と外管の間、又は、最内層とバリア層との間に存在することができる。
本発明のホースが上記補強層として複数の補強層を有する場合、上記中間ゴム層は、上記のほかに、補強層同士の間に存在してもよい。
上記中間ゴム層は、耐冷媒透過性等に優れるという観点から、内管と補強層との間に存在することが好ましい。本発明のホースが上記補強層として複数の補強層を有する場合、上記中間ゴム層は、上記のほかに、補強層同士の間に存在することが好ましい。
【0079】
上記中間ゴム層を形成しうるゴム組成物は特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。
上記中間ゴム層に使用されるゴム組成物に含有されるゴムとしては、例えば、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、天然ゴム(NR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン-ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、ポリイソプレンゴム(IR)、ブチルゴム(IIR)、クロロブチルゴム(Cl-IIR)、ブロモブチルゴム(Br-IIR)、クロロプレンゴム、エチレン-プロピレン共重合体ゴム、スチレン-イソプレン共重合体ゴム、スチレン-イソプレン-ブタジエン共重合体ゴム、イソプレン-ブタジエン共重合体ゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレン(CM)が挙げられる。
なかでも、上記ゴムは、ゴム層の耐疲労性能に優れるという観点から、ブチルゴム(IIR)及び/又は塩素化ポリエチレン(CM)を含むことが好ましい。
上記中間ゴム層の厚さは例えば0.2~0.7mmとすることができる。
上記中間ゴム層は、例えば、上記中間ゴム層を介して隣接する2層を接着させる接着剤として機能することができる。
【0080】
なお、上記内管又は中間ゴム層を形成しうるゴム組成物は、上記のゴムの他に、さらに、カーボンブラックのような充填剤;加硫剤、架橋剤、加硫促進剤、酸化亜鉛、架橋促進助剤(例えば、ステアリン酸、ステアリン酸亜鉛)、架橋遅延剤、軟化剤のような加工助剤、老化防止剤、可塑剤などの添加剤を含有することができる。上記添加剤の含有量は本発明の目的に反しない範囲で、適宜選択することができる。
【0081】
(ホースの製造方法)
本発明のホースはその製造方法について特に制限されない。例えば、マンドレル上に、内管を形成するためのゴム組成物及び/又は樹脂組成物、補強層を形成するための補強材料並びに外管を形成するための上記外管用ゴム組成物、必要に応じて使用することができる中間ゴム層を形成するためのゴム組成物を、目的のホースの態様となるように積層させて積層体とし、上記積層体を140~190℃、30~180分の条件で、プレス架橋、蒸気架橋、オーブン架橋(熱気架橋)または温水架橋することにより架橋して、本発明のホースを製造することができる。
上記において、上記架橋する前の積層体に例えばポリメチルテルペンによる保護膜を被覆させ、上記のように架橋し、その後上記保護膜を積層体から剥離して、本発明のホースを製造してもよい。
【0082】
本発明のホースは、冷媒輸送用ホースとして使用することができる。
本発明のホースの具体的な用途としては、例えば、カーエアコンシステム用ホース、室内用のエアコンシステム用ホースが挙げられる。
【実施例】
【0083】
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明する。ただし本発明はこれらに限定されない。
【0084】
<外管用ゴム組成物の製造>
下記第1表の各成分を同表に示す組成(質量部)で用いて、これらを撹拌機を用いて20~90℃の条件下で5分間混合し、外管用ゴム組成物を製造した。
【0085】
(ムーニー粘度の測定)
上記のとおり製造された各外管用ゴム組成物のムーニー粘度は、JIS K6300-1:2013の規定に準拠し、L形ロータを使用し、予熱時間1分、ロータの回転時間4分、試験温度125℃の条件で、測定された。結果を第1表に示す。
【0086】
(ムーニー粘度による加工性の評価基準)
上記のとおり測定されたムーニー粘度が65未満であった場合、冷媒輸送用ホースの製造時の加工性(例えば押出加工性)に優れると評価した。
上記ムーニー粘度が65よりもさらに小さかった場合、上記加工性により優れる。
上記ムーニー粘度が65以上であった場合、上記加工性が悪いと評価した。
【0087】
<架橋シートの作製>
上記のとおり得られた各外管用ゴム組成物を153℃のプレス成型機を用い、面圧3.0MPaの圧力下で45分間架橋して、2mm厚の架橋シートを作製した。
(引張試験に用いる初期試験片の作製)
上記のとおり作製された各架橋シートからJIS3号ダンベル状の試験片を打ち抜き、初期試験片を得た。
【0088】
(引張試験)
上記のとおり得られた各初期試験片を用いて、JIS K6251:2017に準じて、23℃、引張速度500mm/分の条件下で引張試験を行い、切断時伸び(Eb)[%]及び100%モジュラス(100%伸びにおける引張応力。M100。)を測定した。結果を第1表に示す。
【0089】
・切断時伸び(Eb)
本発明において、切断時伸びの値が100%以上であった場合、耐久性に優れると評価できる。
・100%モジュラス
本発明において、100%モジュラスは、7MPa以上であることが好ましい。100%モジュラスが7MPa以上である場合、100%モジュラスの値が大きいほうがより好ましい。
後述するように、100%モジュラスはシール性(ホースシール性能)と相関関係にあると考えられる。
【0090】
(ホースシール性能の評価)
以下に示す「・ホースの製造」に従って各ホースを製造した。
SAE(米国自動車技術会)規格J3062 5.3項Coupling Integrityに準じて、後述のとおり製造されたホースの端部をそれぞれ継手と連結させ連結部をコネクタで圧着した(加締めた)連結アセンブリを得た。次に、上記連結アセンブリに後述する冷媒、冷凍機油(潤滑剤)を充填し、上記充填後、連結アセンブリを密閉した状態で5.3.2.2項のテスト暴露を行った。上記テスト暴露はテストオプション1であった。テストオプション1について所定のa~dを四回繰り返した後、漏れ評価を行った。上記漏れ評価において、上記テスト曝露前及びテスト曝露終了後で、連結アセンブリの重さを測定した。
上記漏れ評価で得られた、上記テスト曝露直後での連結アセンブリの重さの結果をもとに、連結アセンブリから漏れた、冷媒又は冷凍機油の量(漏れ量)の重さを算出した。
上記のとおり算出された漏れ量をもとに後述する「・ホースシール性能の評価基準」でホースシール性能(冷媒輸送用ホースと配管との繋ぎ目におけるシール性)を評価した。結果を第1表の「ホースシール性能 C.I試験」欄に示す。
【0091】
上記評価に使用されたホース及び冷媒、冷凍機油の詳細は以下のとおりである(4. HOSE IDENTIFICATION)。
ホースのタイプ:TypeC(Barrier, Textile Reinforced)
ホースのクラス:Class I -Not greater than 0.039g/cm2/year
ホースの内径のサイズ:16mm
冷媒:HFO1234yf
冷凍機油:ND-8(株式会社デンソー製)
【0092】
・ホースの製造
上記評価に使用されたホースを以下のように製造した。
外径16mmの熱可塑性樹脂製マンドレルの表面に、後述するブチルゴム系組成物Aを厚さ1.2mmで押出して、最内層を形成し、
上記最内層の上に、後述するポリアミド樹脂を厚さ0.15mmで押出して、バリア層を形成し、
上記バリア層の上に、後述するブチルゴム系組成物Aを厚さ0.2mmで押出して、第1の中間ゴム層を形成し、
上記第1の中間ゴム層の上に、ポリエチレンテレフタレート繊維を交互にスパイラル状に巻きつけて、第1の補強層を形成し、
上記第1の補強層の上に、後述するブチルゴム系組成物Aを厚さ0.2mmで押出して、第2の中間ゴム層を形成し、
上記第2の中間ゴム層の上に、ポリエチレンテレフタレート繊維を交互にスパイラル状に巻きつけて、第2の補強層を形成し、
上記第2の補強層の上に、上記のとおり製造された各外管用ゴム組成物を厚さ1.3mmで押出して外管を形成し、
更に上記外管の上にポリメチルペンテン樹脂を押出して外皮を形成し、管状の積層体を得た。
上記のとおり得られた管状の積層体を160℃の条件下で100分間加硫した後、管状積層体から外皮とマンドレルを取り除いてホースを作製した。
上記のとおり製造されたホースの形態は、添付の
図3に該当する。
【0093】
ポリアミド樹脂:ポリアミド6とカルボキシル基含有変性ポリオレフィンとのブレンド物[商品名Zytel ST811HS、デュポン社製]
【0094】
ブチルゴム系組成物A(最内層、第1、第2の中間ゴム層で共通):ブチルゴム100質量部、カーボンブラック(HAF)80質量部、ステアリン酸3質量部、パラフィン油10質量部、酸化亜鉛2質量部、および臭素化アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂8質量部を含有する組成物。
【0095】
・ホースシール性能の評価基準
漏れ評価の結果、上記のとおり得られた漏れ量の重さが4.0g未満であった場合、ホースシール性能(ホースのシール性)に非常に優れると評価して、これを「◎」と表示した。
上記漏れ量が4.0g以上5.0g未満であった場合、ホースシール性能にやや優れると評価して、これを「〇」と表示した。
上記漏れ量が5.0g以上であった場合、ホースシール性能が悪いと評価して、これを「×」と表示した。
【0096】
・シール性(ホースシール性能)と100%モジュラスとの関係
本発明において、上記のとおり得られた各初期試験片の100%モジュラスが10.0MPa以上であった場合、シール性(ホースシール性能)が非常に優れた(◎)。
上記100%モジュラスが7.0MPa以上10.0MPa未満であった場合、上記シール性がやや優れた(〇)。
上記100%モジュラスが7.0MPa未満であった場合、上記シール性が悪かった(×)。
このように、本発明者らは、シール性(ホースシール性能)が100%モジュラスに相関すること、及び100%モジュラスが大きいほどシール性(ホースシール性能)の生データが小さくなることを見出している。
【0097】
【0098】
第1表に示した各成分の詳細は以下のとおりである。
(臭素化共重合ゴム)
・BIMS1:Exxpro 3745、EXXONMOBIL CHEMICAL COMPANY製。BIMS1は、炭素数4のイソモノオレフィン(イソブチレン)とp-メチルスチレンとの共重合ゴムにおいて、p-メチルスチレンが臭素化されてブロモメチルスチレンに転化した臭素化共重合ゴムであって、上記ブロモメチルスチレンによる繰り返し単位の含有量は、上記特定臭素化共重合ゴムを構成する繰り返し単位の全量に対して、1.2モル%であった。BIMS1は特定臭素化共重合ゴムに該当する。上記特定臭素化共重合ゴムにおけるp-メチルスチレンによる繰り返し単位の含有量は、上記特定臭素化共重合ゴムを構成する繰り返し単位の全量に対して7.5質量%であった。
【0099】
・BIMS2:Exxpro 3433、EXXONMOBIL CHEMICAL COMPANY製。BIMS2は、炭素数4のイソモノオレフィン(イソブチレン)とp-メチルスチレンとの共重合ゴムにおいて、p-メチルスチレンが臭素化されてブロモメチルスチレンに転化した臭素化共重合ゴムであって、上記ブロモメチルスチレンによる繰り返し単位の含有量は、上記臭素化共重合ゴムを構成する繰り返し単位の全量に対して、0.75モル%であった。BIMS2は上記別の臭素化共重合ゴムに該当する。上記臭素化共重合ゴムにおけるp-メチルスチレンによる繰り返し単位の含有量は、上記臭素化共重合ゴムを構成する繰り返し単位の全量に対して、5.0質量%であった。
【0100】
・BIMS3:Exxpro 3035、EXXONMOBIL CHEMICAL COMPANY製。BIMS3は、炭素数4のイソモノオレフィン(イソブチレン)とp-メチルスチレンとの共重合ゴムにおいて、p-メチルスチレンが臭素化されてブロモメチルスチレンに転化した臭素化共重合ゴムであって、上記ブロモメチルスチレンによる繰り返し単位の含有量は、上記臭素化共重合ゴムを構成する繰り返し単位の全量に対して、0.5モル%であった。BIMS3は上記別の臭素化共重合ゴムに該当する。上記臭素化共重合ゴムにおけるp-メチルスチレンによる繰り返し単位の含有量は、上記臭素化共重合ゴムを構成する繰り返し単位の全量に対して、5.0質量%であった。
【0101】
・Br-IIR(比較):臭素化ブチルゴム(下記式で表されるブロモブチルゴム)。EXXON BROMOBUTYL 2255、日本ブチル株式会社製。臭素の含有量(mの繰り返し単位数)は、下記式におけるlとmの合計に対して、1.8モル%である上記臭素化ブチルゴム。上記臭素化ブチルゴムは、p-アルキルスチレンによる繰り返し単位を有さないので、上記臭素化ブチルゴムは、上記臭素化共重合ゴムに該当しない。
【化2】
【0102】
(カーボンブラック)
・カーボンブラックB-1:SRFカーボンブラック。旭#50、旭カーボン株式会社製。DBP吸収量64±12cm3/100g、よう素吸着量23±5g/Kg。カーボンブラックB-1のジブチルフタレート吸収量は50~80cm3/100gに該当するので、カーボンブラックB-1はカーボンブラックBに該当する。
【0103】
・カーボンブラックA-1:FTFカーボンブラック。アサヒサーマル、旭カーボン株式会社製。DBP吸収量20~30cm3/100g、よう素吸着量20~34g/Kg。カーボンブラックA-1のジブチルフタレート吸収量は40cm3/100g以下なので、カーボンブラックA-1はカーボンブラックAに該当する。
【0104】
・カーボンブラックC-1:HAFカーボンブラック。ショウブラックN330、昭和キャボット社製。DBP吸収量97~107cm3/100g、よう素吸着量76~86g/Kg。カーボンブラックC-1のDBP吸収量は97~107cm3/100gなので、カーボンブラックC-1は、上記カーボンブラックA、Bのいずれにも該当しない。便宜上上記HAFカーボンブラックをカーボンブラックC-1と表記した。
【0105】
・タルク:ミストロンベーパー(日本ミストロン社製)
【0106】
・パラフィンオイル:プロセスオイル123、昭和シェル石油社製
【0107】
・酸化亜鉛:酸化亜鉛3種、正同化学工業株式会社製
【0108】
・ステアリン酸:ステアリン酸50S、日新理化株式会社製
【0109】
・臭素化アルキルフェノール樹脂:臭素化アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂。タッキロール250-I、田岡化学工業株式会社製
【0110】
第1表に示す結果から明らかなように、臭素化共重合ゴムを構成する臭素を有する繰り返し単位の含有量が所定の範囲を満たさない比較例1、2は、100%モジュラスが低く、シール性が悪かった。
特定臭素化共重合ゴムを含有せず、代わりに臭素化ブチルゴムを含有する比較例3は、100%モジュラスが低く、ホースシール性が悪かった。
上記カーボンブラックAを含有せず代わりにDBP吸収量がカーボンブラックA、Bよりも大きいカーボンブラックを含有する比較例4、5はムーニー粘度が高く、加工性が悪かった。またカーボンブラックの量が比較例5よりも少ない比較例4はさらに100%モジュラスが低く、ホースシール性も悪かった。
上記カーボンブラックAを含有せず代わりにDBP吸収量がカーボンブラックAよりも大きいカーボンブラックBを含有する比較例6~8、10は、100%モジュラスが低くホースシール性が悪いか、又はムーニー粘度が高く加工性が悪かった。
上記カーボンブラックAの含有量が所定の範囲に満たない比較例9は、100%モジュラスが低く、ホースシール性が悪かった。
【0111】
上記比較例に対して、上記各実施例の外管用ゴム組成物はいずれもムーニー粘度が低く、ホースシール性能に優れた。また、上記各実施例の外管用ゴム組成物はいずれも100%モジュラスが高かった。
したがって、上記外管用ゴム組成物によって形成された外管を有する本発明のホースは、加工性とシール性とを優れたレベルで両立させることができる。
【符号の説明】
【0112】
10、20、30 冷媒輸送用ホース(ホース)
11、21、31 内管
14、24、34、35 補強層
16、26、36 外管
22、32 最内層
23、33 バリア層
28、37、38 中間ゴム層