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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-03
(45)【発行日】2023-10-12
(54)【発明の名称】リレー装置および無線通信機
(51)【国際特許分類】
   H01H 47/04 20060101AFI20231004BHJP
   H01H 47/22 20060101ALI20231004BHJP
【FI】
H01H47/04
H01H47/22 C
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019237284
(22)【出願日】2019-12-26
(65)【公開番号】P2021106130
(43)【公開日】2021-07-26
【審査請求日】2022-09-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000100746
【氏名又は名称】アイコム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】河野 諒太
【審査官】内田 勝久
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-062132(JP,A)
【文献】特開2018-129303(JP,A)
【文献】実開昭54-153819(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 47/00 - 47/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リレー装置の加速度を検出する加速度センサと、
ラッチングリレーと、
前記ラッチングリレーのコイルを駆動する駆動回路と、
検出された前記加速度が所定範囲を超えたか否かを判定する判定部と、
前記加速度が前記所定範囲を超えたと判定されると、前記コイルを一定期間駆動するように前記駆動回路を制御する駆動制御部と、を備え
前記一定期間は、前記加速度が、前記所定範囲の下限値より小さくなってから最小値に達した後に上昇に転じ、前記所定範囲の上限値を超えて最大値に達した後に下降に転じて当該上限値より小さくなるまでの第1変動期間と、所定の余裕期間との和であるリレー装置。
【請求項2】
リレー装置の加速度を検出する加速度センサと、
ラッチングリレーと、
前記ラッチングリレーのコイルを駆動する駆動回路と、
検出された前記加速度が所定範囲を超えたか否かを判定する判定部と、
前記加速度が前記所定範囲を超えたと判定されると、前記コイルを一定期間駆動するように前記駆動回路を制御する駆動制御部と、を備えているリレー装置と、
入力された音声を送信信号に変換する送信部と、
受信された受信信号を音声に変換する受信部と、を備え、
前記リレー装置の前記ラッチングリレーは、前記送信信号および前記受信信号の少なくともいずれか一方を通過させる経路に設けられている無線通信機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラッチングリレーを有するリレー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ラッチングリレーは、コイルにセットまたはリセットさせるための駆動電圧を規定の期間印加してコイルにパルス電流を流すことにより、セット状態またはリセット状態を保持することができる。このため、ラッチングリレーは、一般的なリレーのようにコイルのセット状態またはリセット状態を保持するためにコイルを常時励磁する必要がなく、消費電力の低減を図ることができる。
【0003】
しかしながら、ラッチングリレーは、使用中に振動や衝撃を受けると、接点の閉路または開路の保持状態を解除して誤動作してしまうことがある。従来、このような誤動作への対策が種々試みられている。
【0004】
例えば、特許文献1には、オン状態にあるラッチングリレーが振動等によってオフ状態になったときに、制御回路のラッチングリレーの後段の電源を監視することで、指示により、ラッチングリレーをオン動作させることが開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、ラッチングリレーの誤動作を検出することによって、ラッチングリレーが誤動作したときに、正常な状態に復帰させることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2010-268620号公報(2010年11月25日公開)
【文献】特開平8-250001号公報(1996年9月27日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1および2に開示された技術では、ラッチングリレーが誤動作したときには、ラッチングリレーをオン状態に復帰させることができるものの、誤動作を未然に回避することができない。また、当該技術では、誤動作を検出するための回路等が必要となり、部品点数の増加を招いていた。
【0008】
本発明の一態様は、使用中の振動や衝撃によるラッチングリレーの誤動作防止を簡素な構成によって実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るリレー装置は、リレー装置の加速度を検出する加速度センサと、ラッチングリレーと、前記ラッチングリレーのコイルを駆動する駆動回路と、検出された前記加速度が所定範囲を超えたか否かを判定する判定部と、前記加速度が前記所定範囲を超えたと判定されると、前記コイルを一定期間駆動するように前記駆動回路を制御する駆動制御部と、を備えている。
【0010】
上記の構成によれば、リレー装置が何らかの衝撃を受けたときに、判定部によって加速度が所定範囲を超えたと判定されると、駆動制御部によって駆動回路がラッチングリレーのコイルを一定期間駆動する。これにより、加速度が、ラッチングリレーの動作状態を解除し得る程度の値に達する前に、ラッチングリレーのコイルを駆動して、ラッチングリレーの動作状態を維持することができる。
【0011】
前記リレー装置において、前記一定期間は、前記加速度が、前記所定範囲の下限値より小さくなってから最小値に達した後に上昇に転じ、前記所定範囲の上限値を超えて最大値に達した後に下降に転じて当該上限値より小さくなるまでの第1変動期間と、所定の余裕期間との和であってもよい。
【0012】
リレー装置が落下時に床等に衝突して衝撃を受けたときには、加速度が、所定範囲の下限値より小さくなってから、最小値に達した後に上昇し、所定範囲の上限値を超えて最大値に達した後に低下して、上限値より小さくなるという経過をたどって変化する。したがって、落下時には必然的に衝突による衝撃を受けることになる。
【0013】
そこで、このような加速度の変化に対して、落下時の加速度が所定範囲の下限値より小さくなることが判定されると、駆動回路によるコイルの駆動が開始する。そして、衝突による衝撃が弱まって加速度が所定範囲の上限値より小さくなったことが判定される第1変動期間の終了までコイルの駆動が持続した後は、さらに余裕期間、コイルの駆動が維持される。
【0014】
第1変動期間が終了した時点では、衝撃による影響がなくなったと考えられる。しかしながら、第1変動期間の終了時に、意図せずにラッチングリレーの動作状態が解除されたとしても、余裕期間でのコイルの駆動によってラッチングリレーを速やかに動作状態に復帰させることができる。
【0015】
あるいは、前記リレー装置において、前記一定期間は、前記加速度が前記所定範囲の上限値より大きくなってから前記加速度が前記上限値より小さくなるまでの第2変動期間と、所定の余裕期間との和であってもよい。
【0016】
落下時と異なり、リレー装置が何かにぶつかるなどによって衝撃を受けたときには、加速度が、所定範囲の上限値より大きくなってから、最大値に達した後に低下し、所定範囲の上限値より小さくなるという経過をたどって変化する。この場合は、加速度が所定範囲の上限値より大きくなった時点で衝撃を受けたことがわかる。
【0017】
そこで、このような加速度の変化に対して、加速度が所定範囲の上限値より大きくなったと判定されてから、駆動回路によるコイルの駆動が開始する。そして、衝突による衝撃が弱まって加速度が所定範囲の上限値より小さくなったことが判定される第2変動期間まで、コイルの駆動が持続した後は、さらに余裕期間、コイルの駆動が維持される。
【0018】
第2変動期間が終了した時点では、衝撃による影響がなくなったと考えられる。しかしながら、第2変動期間の終了時に、意図せずにラッチングリレーの動作状態が解除されたとしても、余裕期間でのコイルの駆動によってラッチングリレーを速やかに動作状態に復帰させることができる。
【0019】
前記リレー装置において、前記駆動制御部は、前記第2変動期間が前記コイルを駆動するために必要な最短駆動期間より短いときに、前記第2変動期間から代えた前記最短駆動期間で前記コイルを駆動するように前記駆動回路を制御してもよい。
【0020】
上記の構成によれば、衝撃を受けた時間が短く、第2変動期間がコイルを駆動するために必要な最短駆動期間より短くなったとき、コイルが最短駆動期間駆動される。これにより、ごく短い期間の衝撃に対してもラッチングリレーが動作状態を維持することができる。
【0021】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る無線通信機は、上述したいずれか1つのリレー装置と、入力された音声を送信信号に変換する送信部と、受信された受信信号を音声に変換する受信部と、を備え、前記リレー装置の前記ラッチングリレーは、前記送信信号および前記受信信号の少なくともいずれか一方を通過させる経路に設けられている。
【0022】
上記の構成によれば、無線通信機がリレー装置を備えることによって、無線通信機が衝撃を受けたときに、上述したように、リレー装置においてラッチングリレーの動作状態が維持される。これにより、経路における送信信号および受信信号の途絶を防止することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の一態様によれば、使用中の振動や衝撃によるラッチングリレーの誤動作の防止を簡素な構成によって実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の一実施形態に係る無線通信機の概略構成を示すブロック図である。
図2】上記無線通信機が備えるリレー装置の構成を示すブロック図である。
図3】上記無線通信機が落下後に衝撃を受けたときの上記リレー装置の制御部によるラッチングリレーの駆動動作を示す波形図である。
図4】上記無線通信機が衝撃を受けたときの上記リレー装置の制御部によるラッチングリレーの駆動動作を示す波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
〔実施形態〕
以下、本発明の一実施形態について、図1図4を参照して説明すれば、以下の通りである。
【0026】
〈無線通信機の構成〉
図1は、本実施形態に係る無線通信機1の概略を示すブロック図である。
【0027】
図1に示すように、無線通信機1は、送信部2と、受信部3と、送受信切替回路4、リレー部5,6と、LPF(Low Pass Filter)部7と、アンテナ8と、駆動回路9と、制御部10と、加速度センサ11と、表示部12と、操作部13とを備えている。
【0028】
送信部2は、入力された音声を送信信号に変換する送信処理を行う。送信部2は、送信処理を行うために、マイク21と、A/D変換器22と、変調部23と、D/A変換器24と、BPF(Band Pass Filter)25と、ALC(Automatic Level Control)回路26と、電力増幅器27とを有している。図1において、マイク21はMICと示され、A/D変換器22はA/Dと示され、D/A変換器24はD/Aと示され、ALC回路26はALCと示され、電力増幅器27はPAと示される。
【0029】
送信部2において、マイク21から出力される音声信号は、A/D変換器22によってデジタル信号に変換された後、変調部23によって所定の変調方式で変調信号に変調される。変調信号は、D/A変換器24によってアナログ信号に変換された後、BPF25によって所定の帯域のみが通過する。BPF25を経た変調信号は、ALC回路26によって、電力増幅器27への入力レベルが制限される。ALC回路26を経た変調信号の電力は、電力増幅器27によって通信に必要な大きさの電力に増幅される。
【0030】
送信部2から出力された送信信号は、送受信切替回路4、リレー部5、LPF部7およびリレー部6を介してアンテナ8に出力される。アンテナ8は、入力された送信信号を電波として放射する。
【0031】
一方、アンテナ8は、電波として受信した受信信号をリレー部6に出力する。この受信信号は、リレー部6、LPF部7、リレー部5および送受信切替回路4を介して受信部3に入力される。
【0032】
受信部3は、受信された受信信号を音声に変換する受信処理を行う。受信部3は、受信処理を行うために、BPF(Band Pass Filter)31と、A/D変換器32と、復調部33と、D/A変換器34と、スピーカ35とを有している。図1において、A/D変換器32はA/Dと示され、D/A変換器34はD/Aと示され、スピーカ35SPと示される。
【0033】
受信部3において、入力された受信信号は、BPF31によって帯域が制限されて、A/D変換器32によってデジタル信号に変換された後、復調部33によって所定の復調方式で音声信号に復調される。復調部33からの音声信号は、D/A変換器34によってアナログ信号に変換され、スピーカ35に入力される。スピーカ35からは、入力信号に応じた音声が出力される。
【0034】
ところで、送受信切替回路4は、c接点(トランスファ接点)構成のラッチングリレー41を有している。ラッチングリレー41は、送信部2からの送信信号をリレー部5に出力することと、リレー部5からの受信信号を受信部3に出力することとを切り替える。
【0035】
リレー部5は、複数のa接点(ブレイク接点)構成のラッチングリレー51を有している。ラッチングリレー51は、制御部10によっていずれか1つがオンするように制御される。
【0036】
リレー部6は、複数のa接点(ブレイク接点)構成のラッチングリレー61を有している。ラッチングリレー61は、制御部10によっていずれか1つがオンするように制御される。駆動回路9は、制御部10によって与えられる制御信号に基づいて、ラッチングリレー41のコイルを駆動する駆動電圧と、複数のラッチングリレー51,61のいずれか1つのコイルを駆動する駆動電圧とを出力する。
【0037】
LPF部7は、複数のLPF(Low Pass Filter)71を有している。LPF部7は、それぞれ異なる通過帯域を有している。これにより、送信信号および受信信号は、いずれかのLPF71を通過すると、通過したLPF71の通過帯域に応じて帯域制限された信号として出力される。
【0038】
駆動回路9は、上述したラッチングリレー41,51,61のそれぞれの接点を作動させるコイルを駆動するために、当該コイルに印加される定格電圧を駆動電圧として生成する回路である。制御部10は、復調部33からの復調に関する情報に基づいて、受信状態などの情報を作成する。また、制御部10は、加速度センサ11によって検出された加速度に応じて駆動回路9の動作を制御する。加速度センサ11は、3次元方向の加速度を検出する。
【0039】
表示部12は、制御部10によって作成された上記の情報に基づいて、受信状態などを表示する。操作部13は、各種の操作ボタンを有しており、操作ボタンによる操作を受け付け、操作された操作ボタンに応じた操作信号を制御部10に出力する。制御部10は、入力された操作信号に応じた制御動作を行う。
【0040】
〈リレー装置の構成〉
図2は、無線通信機1が備えるリレー装置20の構成を示すブロック図である。
【0041】
図2に示すように、無線通信機1は、リレー装置20を備えている。リレー装置20は、ラッチングリレー14,15を駆動するために、上述した、駆動回路9と、制御部10と、加速度センサ11とを備えている。ラッチングリレー14,15は、それぞれラッチングリレー41,51,61を構成し得るラッチングリレーであって、ラッチングリレー41,51,61のいずれかを特定するものではない。なお、図1に示す無線通信機1において、リレー装置20は、送受信切替回路4(ラッチングリレー41)、リレー部5(ラッチングリレー51)、リレー部6(ラッチングリレー61)、駆動回路9、制御部10および加速度センサ11を備える部分である。
【0042】
ラッチングリレー14は、可動接点141と、固定接点142,143と、コイル144,145とを有しているc接点の2巻線型の構成である。ラッチングリレー14は、セット側のコイル144に駆動電圧が印加されると、可動接点141を固定接点142に接するように駆動する。また、ラッチングリレー14は、リセット側のコイル145に駆動電圧が印加されると、可動接点141を固定接点143に接するように駆動する。
【0043】
ラッチングリレー15は、可動接点151と、固定接点152,153と、コイル154とを有しているc接点の1巻線型の構成である。ラッチングリレー15は、コイル154に図2におけるA方向の電流が流れたときに可動接点151を固定接点153に接するように動作する一方、コイル154に図2におけるB方向の電流が流れたときに可動接点151を固定接点152に接するように動作する。
【0044】
送受信切替回路4のラッチングリレー41は、上記のラッチングリレー14,15のいずれで構成されていてもよい。リレー部5,6のそれぞれのラッチングリレー51,61も、上記のラッチングリレー14,15のいずれで構成されていてもよい。ただし、ラッチングリレー51,61として用いられるラッチングリレー14,15においては、a接点リレーとして機能するために、固定接点143,153が開放されており、何も接続されない。
【0045】
駆動回路9は、第1駆動回路91および第2駆動回路92を有している。第1駆動回路91は、ラッチングリレー14のセット側のコイル144にセットのための駆動電圧を印加し、ラッチングリレー14のリセット側のコイル145に、コイル144に印加する駆動電圧とは逆極性の駆動電圧を印加する。第2駆動回路92は、ラッチングリレー15のコイル154に駆動電圧を印加する。図1に示す駆動回路9は、図示はしないが、ラッチングリレー41,51,61のそれぞれに応じた第1駆動回路または第2駆動回路を有している。
【0046】
制御部10は、駆動回路9を制御するために、判定部101と、駆動制御部102とを有している。
【0047】
判定部101は、加速度センサ11の互いに直交する3軸(X軸、Y軸およびZ軸)のそれぞれの方向の検出値X,Y,Zが所定範囲を超えたか否かを判定する。具体的には、判定部101は、検出値X,Y,Zの二乗和平方根を3軸方向で合成した検出値として演算し、当該二乗和平方根を1つの所定範囲と比較することにより、当該二乗和平方根が所定範囲を超えたか否かを判定する。
【0048】
駆動制御部102は、上記の二乗和平方根が判定部101によって所定範囲を超えたと判定されると、駆動回路9を制御する。具体的には、第1駆動回路91は、ラッチングリレー14のコイル144またはコイル145を一定期間駆動する。また、第2駆動回路92は、ラッチングリレー15のコイル154を一定期間駆動する。
【0049】
〈ラッチングリレーの衝撃時駆動動作〉
上記のように構成される無線通信機1が衝撃を受けたときのリレー装置20の動作について説明する。図3は、無線通信機1が落下後に衝撃を受けたときのリレー装置20の制御部10によるラッチングリレー14,15の駆動動作を示す波形図である。図4は、無線通信機1が衝撃を受けたときのリレー装置20の制御部10によるラッチングリレー14,15の駆動動作を示す波形図である。
【0050】
なお、図3および図4は、1つの駆動電圧が印加される1巻線型のラッチングリレー15の駆動制御例を示している。ただし、以降の説明では、便宜上、2巻線型のラッチングリレー14の駆動制御についても、図3および図4を参照している。ここで、ラッチングリレー14については、上述したように、セット側のコイル144を駆動するための駆動電圧と、リセット側のコイル145を駆動するための駆動電圧とが必要となる。
【0051】
まず、検出値X,Y,ZのそれぞれについてX=a、Y=a、Z=aという値が得られたとする。このとき、制御部10の判定部101は、3軸方向の検出値X,Y,Zを二乗和平方根として合成した検出値である加速度│a│=√(a +a +a )を算出する。
【0052】
無線通信機1が静止状態にあるとき、加速度センサ11が検出する加速度は重力加速度のみである。したがって、加速度│a│は、ほぼ1[G](1[G]=9.8m/s)になる。また、無線通信機1が落下状態にあるとき、加速度│a│は、ほぼ0[G]となる。また、無線通信機1に衝撃が加わったとき、加速度│a│が1[G]を超えると考えられる。
【0053】
ここで、無線通信機1に衝撃が加わったときに、加速度│a│が、1にαを加えた値(1+α)より大きくなると、ラッチングリレー14,15の保持されている動作状態(セット状態またはリセット状態)が解除される誤動作が生じやすくなるとする。また、無線通信機1は、落下するとき、床等に衝突することによって衝撃を受けることになる。そこで、加速度│a│が、1からβを減じた値(1-β)より小さくなると、落下と見なして衝撃が生じることを予測できる。
【0054】
判定部101は、加速度│a│が、1+αを上限値とし、1-βを下限値とする所定範囲にあるか否かを判定する。図3に示すように、加速度│a│が1-β<│a│<1+αを満たしていることが判定部101によって判定されると、駆動制御部102は、駆動電圧を出力しないように駆動回路9を制御する。
【0055】
無線通信機1が落下時に床等に衝突して衝撃を受けたときには、図3に示すように、加速度│a│が変化する。具体的には、加速度│a│は、下降していき下限値1-βより小さくなってから、最小値に達した後に上昇に転じ、上限値1+αを超えて最大値に達した後に下降に転じて上限値1+αより小さくなる。このような加速度│a│の変化に対して、加速度│a│が下限値1-βより小さくなることによって落下が判定されてから、駆動回路9による駆動電圧の出力が開始する。
【0056】
その後、無線通信機1が床等に衝突したときには、その衝撃によって、加速度│a│は、正の方向に変動して、一旦、所定範囲内に戻るが、さらに上限値1+αを超えて最大値に達した後、低下する。駆動制御部102は、この間も、駆動電圧を出力するように駆動回路9の制御を維持している。そして、加速度│a│が下限値1-βより小さくなったと判定されてから加速度│a│が上限値1+αより小さくなったと判定されるまでの第1変動期間T1に、駆動電圧の出力が持続した後は、さらに余裕期間Tm、駆動電圧の出力が維持される。
【0057】
これにより、衝撃による影響がなくなったと考えられる第1変動期間T1が終了した後に、意図せずにラッチングリレー14,151の動作状態が解除されたとしても、余裕期間Tmにコイルを駆動させる。これにより、ラッチングリレー14,15を速やかに動作状態に復帰させることができる。
【0058】
ここで、余裕期間Tmは、ラッチングリレー14,15が動作状態を保持するために必要な駆動時間(品種に応じて異なるが概ね数十ms)以上の値に設定される。具体的には、余裕期間Tmは、20ms~50ms程度に設定される。
【0059】
また、落下時と異なり、無線通信機1が何かにぶつかるなどによって衝撃を受けたときには、図4に示すように、加速度│a│が、上限値1+αより大きくなってから、最大値に達した後に低下し、上限値1+αより小さくなる。このような加速度│a│の変化に対して、加速度│a│が上限値1+αより大きくなったと判定されてから、駆動回路9による駆動電圧の出力が開始する。そして、加速度│a│が上限値1+αより大きくなったと判定されてから加速度│a│が上限値1+αより小さくなったと判定されるまでの第2変動期間T2に、駆動電圧の出力が持続した後は、さらに余裕期間Tm、駆動電圧の出力が維持される。
【0060】
第2変動期間T2が終了した時点では、衝撃による影響がなくなったと考えられる。これに対し、意図せずにラッチングリレー14,15の動作状態が解除されたとしても、上記のように、余裕期間Tmでのコイルの駆動によってラッチングリレー14,15を速やかに動作状態に復帰させることができる。
【0061】
また、図4に示すように、衝撃を受けた時間が短く、第2変動期間T2がコイル144,145,154を駆動するために必要な最短駆動期間T3より短いとき、駆動制御部102は、上記の場合と異なる制御を行う。具体的には、駆動制御部102は、第2変動期間T2に代えた最短駆動期間T3でコイル144,145,154を駆動する。これにより、ごく短い期間の衝撃に対してもラッチングリレー14,15が動作状態を維持することができる。なお、最短駆動期間T3は上述した駆動期間と同義である。
【0062】
〈リレー装置による効果〉
以上のように、本実施形態に係る無線通信機1は、リレー装置20を備えている。リレー装置20は、駆動回路9と、制御部10と、加速度センサ11と、ラッチングリレー14,15とを備えている。また、制御部10は、判定部101と、駆動制御部102とを有している。
【0063】
上記構成によれば、使用中の無線通信機1が何らかの振動や衝撃を受けたときに、判定部101によって加速度│a│が所定範囲を超えたと判定されると、駆動制御部102によって駆動回路9がラッチングリレー14,15のコイル144,145,154を一定期間駆動する。一定期間は、図3の例に示す、第1変動期間T1と余裕期間Tmとの和である。あるいは、一定期間は、図4の第1の例に示す、第2変動期間T2と余裕期間Tmとの和であってもよい。あるいは、一定期間は、図4の第2の例に示す、最短駆動期間T3と余裕期間Tmとの和であってもよい。
【0064】
これにより、加速度│a│が、ラッチングリレー14,15の動作状態(セット状態またはリセット状態)を解除し得る程度の値に達する前に、ラッチングリレー14,15のコイル144,145,154を駆動する。それゆえ、ラッチングリレー14,15の動作状態を維持することができる。このため、無線通信機1が可搬型機器である場合、振動や衝撃を受けやすくなることによるリレー装置20の誤動作を未然に防ぐことができる。
【0065】
したがって、ラッチングリレー14,15の利点を可搬型機器においても得ることができる。このような利点は、低消費電力、信号品質の劣化抑制、大電力の送出などがある。低消費電力については、誤動作が生じる可能性のある状態でラッチングリレー14,15のコイル144,145,154を駆動するので、消費電力の削減が可能である。一般に、リレー(メカニカルリレー)は、可動接点の固定接点との接続を機械的に切り替える部品であるため、電力のロスが少なく、かつ通過する信号に生じる歪みが少ない。このため、大きい電力の送信信号を切り替えて送出し、かつ歪みを生じさせたくない送受信切替回路4、リレー部5およびリレー部6をそれぞれ構成するラッチングリレー41,51,61にラッチングリレー14または15を適用する。これにより、信号品質の劣化抑制および大電力の送出という利点が得られる。また、ラッチングリレー14,15の誤動作を検出する必要がないので、誤動作検出のための回路を設ける必要がない。よって、振動や衝撃によるラッチングリレー14,15の誤動作防止を簡素な構成によって実現することができる。
【0066】
また、無線通信機1が、上記のような耐衝撃性の優れたリレー装置20を備えることにより、送信中に振動や衝撃を受けても、送受信切替回路4およびリレー部5,6のそれぞれにおけるラッチングリレー41,51,61が誤動作しないように制御される。これにより、送信部2の終段に設けられる電力増幅器27に、ラッチングリレー41,51,61の誤動作による悪影響が及ぶことを回避できる。したがって、無線通信機1の信頼性を向上させることができる。
【0067】
なお、ラッチングリレー14,15は、送信信号および受信信号の少なくともいずれか一方を通過させる経路に設けられていてもよい。
【0068】
〔ソフトウェアによる実現例〕
無線通信機1の制御ブロック(特に制御部10)は、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、ソフトウェアによって実現してもよい。
【0069】
後者の場合、無線通信機1は、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するコンピュータを備えている。このコンピュータは、例えば1つ以上のプロセッサを備えているとともに、上記プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を備えている。
【0070】
そして、上記コンピュータにおいて、上記プロセッサが上記プログラムを上記記録媒体から読み取って実行することにより、本発明の目的が達成される。上記記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、ROM(Read Only Memory)等の他、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、上記プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)などをさらに備えていてもよい。
【0071】
上記プログラムは、該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して上記コンピュータに供給されてもよい。なお、本発明の一態様は、上記プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
【0072】
〔付記事項〕
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、実施形態においてそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0073】
1 無線通信機
2 送信部
3 受信部
14,15,41,51,61 ラッチングリレー
11 加速度センサ
20 リレー装置
101 判定部
102 駆動制御部
T1 第1変動期間
T2 第2変動期間
T3 最短駆動期間
Tm 余裕期間
1+α 上限値
1-β 下限値
図1
図2
図3
図4