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特許7360078インレットガイドベーンアクチュエータアッセンブリ,遠心圧縮機,及びチラーシステム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-03
(45)【発行日】2023-10-12
(54)【発明の名称】インレットガイドベーンアクチュエータアッセンブリ,遠心圧縮機,及びチラーシステム
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/46 20060101AFI20231004BHJP
【FI】
F04D29/46 D
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022525037
(86)(22)【出願日】2020-10-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-22
(86)【国際出願番号】 JP2020038381
(87)【国際公開番号】W WO2021085092
(87)【国際公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-04-27
(31)【優先権主張番号】62/928,881
(32)【優先日】2019-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】モルガン,ジェフリー
【審査官】岸 智章
(56)【参考文献】
【文献】実開昭59-045298(JP,U)
【文献】米国特許第05108256(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0260870(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0125274(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0134784(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第107076168(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0138366(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のガイドベーンと、
前記複数のガイドベーンに連結されるとともに、回転することによって前記複数のガイドベーンを第一位置から第二位置へと移動させる駆動構造と、
アクチュエータと、
前記アクチュエータの動作に応じて前記複数のガイドベーンを前記第一位置と前記第二位置との間で移動させるよう構成される作動機構と、
を備える遠心圧縮機のインレットガイドベーンアッセンブリであって、
前記作動機構は、前記複数のガイドベーンが前記第一位置にあるとき前記駆動構造を駆動する第一量の回転力を印加し、前記複数のガイドベーンが前記第二位置にあるとき第二量の回転力を印加し、
前記作動機構は、前記アクチュエータにより駆動される歯車と、第一端及び第二端を有し、前記第一端側の第一点で前記歯車に接続されるリンケージアームと、を含み、
前記駆動構造は、第一面を定義するドライブリングを含み、
前記歯車は、前記第一面と垂直に配置され、
前記リンケージアームの前記第二端側の第二点は、前記ドライブリングに接続され、
前記歯車は、前記リンケージアームの前記第一点を前記第一面に沿う方向に移動させることで、前記リンケージアームの前記第二点を前記第一面に沿う方向に移動させて、前記ドライブリングを回転させ、
前記第一端と前記第二端とを結ぶ第一線と、前記第一面との間で形成される鋭角側の角度は、前記複数のガイドベーンの開度に応じて変化する、
インレットガイドベーンアッセンブリ。
【請求項2】
前記作動機構はウォームドライブを有する、
請求項1に記載のインレットガイドベーンアッセンブリ。
【請求項3】
前記歯車は楕円形である、
請求項1に記載のインレットガイドベーンアッセンブリ。
【請求項4】
前記第一線と前記第一面との間で形成される前記鋭角は、前記ガイドベーンが開くにつれて大きくなる、
請求項1に記載のインレットガイドベーンアッセンブリ。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載のインレットガイドベーンアッセンブリを備える、
遠心圧縮機。
【請求項6】
請求項5に記載の遠心圧縮機と、
凝縮器と、
蒸発器と、
膨張弁と、
を備えるチラーシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2019年10月31日出願の米国仮出願62/928,881号の優先権を主張し、その内容全体を参照によってここに援用する。
【0002】
本発明は、概してインレットガイドベーンに関し、特に暖房、換気、空調および冷凍装置におけるインレットガイドベーンを開く及び/又は閉じるためのアクチュエータアッセンブリに関する。また、本発明は、インレットガイドベーンアクチュエータアッセンブリを備えた遠心圧縮機、および遠心圧縮機を備えたチラーシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
本欄は、これから説明する実施形態の種々の面と関連しうる技術の種々の面を、その実施形態の種々の面を理解しやすくするために、紹介することを意図している。したがって、ここでの記載はこの点に照らして参照すべきものであって、従来の技術を自認するものでないことは理解されよう。
【0004】
現代の住宅居住者や産業に関係する顧客らは室内空間の環境状態が制御されていることを期待している。一般に、暖房・換気・空調(「HVAC」)システムは、室内空間の空気を低温源(冷房時)または高温源(暖房時)を通るよう循環させ、これにより、室内空間の環境温度を調整している。HVACシステムは、他の技術のなかでも、よく知られている、流体が気体から液体へと転移することによって熱を放出すると同時に流体が液体から気体へと転移することによって熱を吸収する物理原理を利用することによって、低温源および高温源を形成している。
【0005】
典型的な住宅用システムでは、流体冷媒が液相と気相との間で繰り返し変化するよう冷媒の流れおよび圧力を制御するように、圧縮機と他の流れ制御装置を用いる配管の閉ループにおいて流体冷媒を循環させる。こうした相転移は、一般に、閉ループの一部であって、循環している冷媒と流れる周囲空気との間で伝熱するように設計されるHVACの熱交換器内において行われる。これが冷却サイクルの基本である。冷媒が気体から液体へと転移する熱交換器は「凝縮器」と呼ばれ、凝縮する流体は周囲の環境に熱を放出する。冷媒が液体から気体へと転移する熱交換器は「蒸発器」と呼ばれ、蒸発する冷媒は周囲の環境から熱を吸収する。
【0006】
商業的利用として、遠心チラーは大きい建物の屋内の環境状態を制御する経済的な方法である。典型的なチラーシステム内では、複数の流体ループが協働して一の場所から他の場所へと熱を移動させる。典型的なチラーの中核となるのは、熱を所望の通りに吸収し放出するよう流体冷媒を液相と気相との間で転移させるように循環させる冷媒ループである。このことは、従来の住宅のシステムでも同様である。しかし、周囲の空気又は循環している空気へと冷媒が熱を冷媒が直接移す、又は、周囲の空気又は循環している空気から冷媒が熱を直接吸収するのではなく、多くの場合、チラーは熱を移す又は熱を吸収する循環水のループを用いる。建物を冷房するために、冷媒ループの蒸発器を、冷水ループ内で循環している水から熱を吸収し、その結果、エアハンドリングユニット内の熱交換器を介して屋内の環境から熱を吸収するよう、設計することもできる。冷媒ループの凝縮器を、循環している冷媒から冷却水ループ内の水へと熱を放出し、その結果、熱を冷却塔内の熱交換器を介して屋外の環境へと放出するよう、設計することもできる。
【0007】
冷媒ループ内の冷媒の循環の一部を、チラーの冷却容量を調整するために圧縮機内への冷媒の流れを変化させるよう開閉するインレットガイドベーン(IGV)を有する遠心圧縮機によって、行うことができる。インレットガイドベーンを閉じるにつれて、インレットガイドベーンによってインペラへの入力角度が変化し、流量が低減し、チラーの冷却容量が低減する。ある用途では、ガイドベーンに当たるガス冷媒によって、より閉じた位置からより開いた位置へのIGVの移動に抵抗を与えるトルクが生じる場合もある。多くの場合、この抵抗トルクは、IGVが閉じた位置にあるときまたはそれに近いときに最大となり、開いた位置へと移動するにつれて低下する。
【0008】
この最大の抵抗トルクに抗するためには、より強力なアクチュエータを利用する必要がある。しかしながら、こうしたより強力なアクチュエータは一般的にはより大きく、コストが嵩み、動作させるのにより多くのエネルギーを要する。
【発明の要約】
【0009】
ここに開示するいくつかの面にかかる態様を以下に説明する。なお、これらの面が本発明が取りうるいくつかの態様の簡単な要約を提供するだけにすぎず、これらの面が本発明の範囲を限定するものではないことは理解されよう。実際には、本発明は以下では説明されていない様々な面をも含むことができる。
【0010】
本開示の態様は、概して、IGVを開き及び/又は閉じるインレットガイドベーンアッセンブリアッセンブリを有する遠心圧縮機を利用する暖房、換気、空調または冷凍システム(HVACRシステム)に関する。
【0011】
ある態様では、IGVは、メカニカルアドバンテージを生じさせるよう配置されるウォームドライブおよび連結(リンケージ)部品を用いるアッセンブリに連結される。ある態様では、IGVアクチュエータアッセンブリは、複数のガイドベーンと、駆動構造と、アクチュエータと、作動機構と、を備える。駆動構造は、複数のガイドベーンに連結される。駆動構造の回転によって、複数のガイドベーンは、第一位置から第二位置へと移動する。作動機構は、アクチュエータの動作に応じて複数のガイドベーンを第一位置と第二位置との間で移動させるよう構成される。作動機構は、ガイドベーンが第一位置にあるとき駆動構造を駆動する第一量の回転力を印加し、ガイドベーンが第二位置にあるとき第二量の回転力を印加する。ガイドベーンが第一位置にあるとき、ガイドベーンが第二位置にあるときと比較して、作動機構は、アクチュエータに、相対的に大きいメカニカルアドバンテージを提供する。
【0012】
ある態様では、IGVがほぼ閉じた位置にあるとき、メカニカルアドバンテージは、ドライブリング及び/又はIGVに印加する力を増大させる。ある態様では、IGVがほぼ閉じた位置にあるとき、必要とされるアクチュエータトルクは小さい。ある態様では、リンケージは「中心がずれた(オーバーセンター)」設計であり、つまり、リンケージがドライブリングの面に対して平行に近いときにドライブリングに印加される力が、ドライブリングの面に対して平行から離れるときより大きい設計である。
【0013】
本態様の種々の面に関係して、上述した各特徴に種々の変形を行うことができよう。こうした種々の面に、さらなる特徴を加えることもできる。これらの変形および特徴の追加を個々に又は組み合わせて行うこともできる。例えば、例示した態様の一以上に関係して以下で説明する種々の特徴を、上述した本開示の面のいずれにも又はいずれかの組み合わせに加えることもできる。あらためて、上に示した簡単な要約は、特許請求の範囲の主題を限定するものではなく、ある面およびいくつかの態様の関連を前もって分かりやすくしておくためだけのものである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
これら及び他の、特徴、面、およびある態様の利点は、以下の図面を参照しながら以降の詳細な説明からより理解されよう。以下の各図面では同様の部材には同様の符号を付してある。
図1図1は、本開示の一の実施形態にかかる建物のための冷却装置システムを概略的に示す。
図2A図2Aは、本開示の実施形態にかかる遠心冷却装置の一部分内に装着されるIGVアクチュエータアッセンブリを概略的に示す。
図2B図2Bは、本開示の実施形態にかかる遠心冷却装置の一部分内に装着されるIGVアクチュエータアッセンブリを概略的に示す。
図3A図3Aは、本開示の実施形態にかかるIGVの開閉位置を概略的に示す。
図3B図3Bは、本開示の実施形態にかかるIGVの開閉位置を概略的に示す。
図3C図3Cは、本開示の実施形態にかかるIGVの開閉位置を概略的に示す。
図4図4は、本開示の実施形態にかかるIGVアクチュエータアッセンブリを概略的に示す。
図5図5は、本開示の実施形態にかかるIGVアクチュエータアッセンブリを概略的に示す。
図6A図6Aは、本開示の実施形態にかかるIGVアクチュエータアッセンブリの動作を概略的に示す。
図6B図6Bは、本開示の実施形態にかかるIGVアクチュエータアッセンブリの動作を概略的に示す。
図6C図6Cは、本開示の実施形態にかかるIGVアクチュエータアッセンブリの動作を概略的に示す。
図6D図6Dは、本開示の実施形態にかかるIGVアクチュエータアッセンブリの動作を概略的に示す。
図6E図6Eは、本開示の実施形態にかかるIGVアクチュエータアッセンブリの動作を概略的に示す。
図6F図6Fは、本開示の実施形態にかかるIGVアクチュエータアッセンブリの動作を概略的に示す。
図6G図6Gは、本開示の実施形態にかかるIGVアクチュエータアッセンブリの動作を概略的に示す。
図6H図6Hは、本開示の実施形態にかかるIGVアクチュエータアッセンブリの動作を概略的に示す。
図6I図6Iは、本開示の実施形態にかかるIGVアクチュエータアッセンブリの動作を概略的に示す。
図6J図6Jは、本開示の実施形態にかかるIGVアクチュエータアッセンブリの動作を概略的に示す。
図7図7は、本開示の実施形態にかかるIGVアクチュエータアッセンブリにおけるトルクとベーン角度との間の関係を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本開示の一以上の具体的な実施形態を以下に説明する。実施形態を簡潔に説明するためには、実際の実施のすべての特徴を説明できないこともある。そのような実際の実施の開発においては、一の実施から他の実施へと変わりうる、システムに関するそしてビジネスに関する制約との適合といった開発者の特定の目標を達成するよう、実施に関して具体的な幾多の判断が行われることを記載しておく。また、このような開発努力が複雑でかつ時間を要するが、それでも、設計、生産および製造は、本開示の技術分野の当業者にとっては、日常行われている作業であろう。
【0016】
種々の実施形態の要素を説明するとき、“a”、“an”、“the”、“said”といった冠詞は一以上の要素であることを意味する。語「備える」、「含む」、および「有する」は、排他的ではなく、列挙された要素以外のさらなる要素を加えることできる意である。
【0017】
図面に戻って、図1は、チラーシステム100の概略を示す。冷却装置の中心には冷却ループ110を示している。圧縮機(コンプレッサ)120は、比較的低温低圧の冷媒ガスを高温高圧のガスへと変換する。そして、高温高圧のガスは、凝縮器125において高圧の液冷媒へと転移する。このステップの際に、高圧ガスからの熱は、冷却水ループ130を循環している水へと、多くの場合、凝縮器125における熱交換器を介して移動する。最終的には、冷却水ループ130の水へと移動した熱は、冷却塔140における他の熱交換器を介して屋外の環境へと排出される。
【0018】
冷媒ループで凝縮器125から出てくる液冷媒は、膨張弁127を通過する際には低圧の液体へと転移する。この圧力の低下により、低圧の液体になるにつれて、冷媒の温度も低下する。そして、低温低圧の液体は、蒸発器145へと入って、そこで熱が冷媒へと戻されて、冷媒は、圧縮機によって圧縮される低圧のガスへと戻るよう変化させられる。蒸発器145において冷媒に移動した熱は、多くの場合、蒸発器145内の熱交換器を通じて、冷水ループ150を循環している水により供給される。冷却水ループ150は、屋内の空気を熱交換器を通るよう循環させる空気制御ユニット(AHU)160に、冷却された水を移送し、これにより、屋内の空間を冷却する。想定されるこのような冷媒には、R410A、R32、R454B、R452B、R1233zd、R1234ze、R134a、R513A、R515A、R515BおよびR1234yfを含む任意の冷媒、またはそれらのうちの任意の数の冷媒の組み合わせがある。
【0019】
図2Aは、遠心圧縮機210の一部分内に取り付けられるIGVアクチュエータアッセンブリ200を概略的に示す。図2Bは、遠心圧縮機210内のIGVアクチュエータアッセンブリ200の一の実施形態の構成が見えるよう遠心圧縮機210の一部を取り外した、遠心圧縮機210内に取り付けられるIGVアクチュエータアッセンブリ200を概略的に示す。IGVアクチュエータアッセンブリ200のIGVは、チラーシステムに組み込まれた遠心圧縮機210内のガスの流れ案内する。言い換えれば、IGVアクチュエータアッセンブリ200のIGVは、チラーシステムに組み込まれた遠心圧縮機210内のガスの流れに影響を与える。
【0020】
遠心圧縮機は、インレットガイドベーンを通じてガスを引き込み、遠心インペラを用いてガスを圧縮するよう動作する。遠心圧縮機に入ってくるガスの流れはIGVの開閉によって調整される。
【0021】
図3A図3Cは、開いた位置から閉じた位置へと移行するときのIGV310を示す。図3Aは、完全に開いている位置にあるIGV310を示す。この位置では、ガスはほぼ制限されることなくベーンを通って流れることができる。図3Bは、部分的に閉じた位置へと回転したIGV310を示す。この位置では、多少制限されるが、ガスはベーンを通じて流れることができる。また、ベーンは、遠心圧縮機に入ってくるガスが回転運動するようガスの流れを方向付けるよう機能する。図3Cは、完全に閉じた位置にあるIGV310を示す。この位置では、ガスの流れは大きく制限されている。あるIGVアッセンブリでは、IGVが閉じた位置にあるときであっても、最小限の冷媒が流れることができるよう、IGVの中心部分は開いたままである。
【0022】
図4は、一の実施形態にかかるIGVアクチュエータアッセンブリ400を概略的に示す。図に示す通り、アッセンブリ400は、複数のIGV410の位置を制御することができる。複数のIGV410を連係させて開くことによって及び/又は閉じることによって、IGV410を通る遠心圧縮機内への流体の流れを制限する又は拡張することができる。
【0023】
本開示のアッセンブリでは、IGV410は、IGV410の開閉を制御する駆動構造420に連結される。ある態様では、駆動構造420は駆動環(ドライブリング)422を有する。ある態様では、駆動構造420は、力を駆動構造420に印加する作動機構430に接続されており、これによりIGV410を開閉できる。作動機構430は、ドライブリング422に回転力を印加できる。作動機構430は、作動器(アクチュエータ)440によって駆動される。
【0024】
図5は、一の実施形態にかかるIGVアクチュエータアッセンブリ500を概略的に示す。本開示の一の実施形態では、IGVアクチュエータアッセンブリ500は、ウォームドライブ530によって駆動される。ウォームドライブ530は、中央ハブ538に装着されるウォームギヤ(歯車)536を回転させるために用いられる被駆動ウォームねじ534を有する。ウォームドライブ530は、ウォームアクチュエータ540によって駆動される。リンケージアーム550は、第一端部552がウォームギヤ536に、第二端部554がドライブリング522に接続されている。(ここで用いる「端部」は、終端を意味せず、一方に向かって他方より近い位置をいう。)リンケージアーム550がウォームギヤ536に接続されている点を、第一点562という。リンケージアーム550がドライブリング522に接続されている点を、第二点564という。
【0025】
ウォームねじ534が駆動されると、ウォームギヤ536が回転する。ウォームギヤ536の回転によりリンケージアーム550を通じて力が伝わり、ドライブリング522が回転することによって、IGV510が開くまたは閉じる。すなわち、ドライブリング522は機能的に動作可能にIGV510に接続され、そして開いた位置と閉じた位置との間でIGV510を回転させるよう構成される。換言すれば、ドライブリング522は機能的に動作可能にIGV510に接続され、そしてIGV510を開閉するよう構成されている。
【0026】
ある態様では、ウォームギヤ、リンケージアームおよびドライブリングの具体的な構成に基づいて、メカニカルアドバンテージ(機械的倍率)が生じる。リンケージアームは、ウォームギヤの回転をドライブリングの回転へと変換する。ある態様では、ウォームギヤとドライブリングとは互いに対してほぼ垂直に配置される。換言すれば、ウォームドライブはドライブリングにほぼ垂直に配置されるウォームギヤを有する。ある態様では、ウォームギヤの1回転当たりにドライブリングに印加される回転の量は、第一点の位置および/またはドライブリングとウォームギヤとの間の相対角度に応じて決められる。
【0027】
例えば、第一点がドライブリングによって定義される面から(すなわち、第一面)から垂直方向に最も離れた(オフセットした)とき、ウォームギヤの単位回転によって、第一点は第一の面と平行な方向により大きな量で移動することになり、これによってリンケージアームがドライブリングをより大きい量で回転させるが、リンケージシステムのメカニカルアドバンテージは低減する。第一点がウォームギヤとともに回転し、ドライブリングによって定義される面に近づくとき、ウォームギヤの単位回転によって、第一点が第一の面と平行な方向により小さな量で移動することになり、これによってリンケージアームがドライブリングをより小さい量で回転させるが、リンケージシステムのメカニカルアドバンテージは増大する。この機構の結果、その面に第一点が近づく場合にドライブリングに印加される力の量は、第一点がその第一面からより離れた場合よりも、大きくなる。
【0028】
ある態様では、リンケージアームは、概して、ドライブリングによって定義される第一面と交差する第一線を形成する。このような実施形態では、ギヤが回転するにつれて、第一線と第一面との間で形成される鋭角が大きくなる、または小さくなる。ある態様では、第一線と第一面との間の鋭角が小さいときのメカニカルアドバンテージは、鋭角が大きいときよりも、大きい。ある態様では、第一面と第一線との間で鋭角は、複数のガイドベーンが閉じているとき小さく、ガイドベーンが開いているとき大きい。
【0029】
図6A図6Jは、一実施形態にかかるIGVアクチュエータアッセンブリ600の動作を概略的に示す。図6Aは、ほぼ閉じた位置におけるIGV610を示す。この位置では、IGV610を通る気体によってIGVに最大の力が印加され、IGVを開くのに抵抗が生じる。IGV610が閉じており、流れているガスから最大量の抵抗を受けるときには、第一点615は、ドライブリング620によって定義される第一面605(図6C参照)にほぼ隣接しており、したがって、生じるメカニカルアドバンテージは増大している。
【0030】
図6Bは、ウォームねじが時計回りにおよそ10°回転したときのアッセンブリ600を示す。この回転により、第一点615をほぼ完全に第一面に垂直な方向に移動させ、その結果、ドライブリングが微小量だけ回転し、IGV610が少量開く。なお、円形のウォームギヤを10°回転させるためにウォームねじが回転する量は、第一点615の位置によらず、ほぼ同じであることは理解されよう。一方、リンケージアームによってドライブリングに印加される力は、第一点615の位置によって、大きく変化する。
【0031】
図6Cから図6Hは、それぞれの図においてさらにおよそ10°ずつウォームギヤを時計回りに回転させたアッセンブリ600を示す。それぞれの図では、第一点615はウォームギヤによって時計回りに回転する。それぞれ図ではウォームギヤがおよそ10°回転するが、図を追うごとに、第一点で615は、第一面605と平行な方向の移動が大きくなっていき、第一面605に垂直な方向の移動が小さくなっていく。この結果、ウォームギヤの回転によって第一点615が第一面からより離れた点へと回転するにつれて、図6Cから図6Hの順に、10°当たりのリンケージアームによるドライブリングの回転量が増加する。図から分かる通り、第一面605とリンケージアームとの間で形成される鋭角は、10°ずつの回転とともに大きくなる。
【0032】
図6Iは、ウォームねじがウォームギヤをおよそ80°回転させ、第一面605から最大限オフセットした位置に第一点が近づいているときのアッセンブリ600を示す。この位置では、ウォームギヤの10°の回転によって、第一点615がほぼ完全に第一面605に平行な方向に移動し、したがって、リンケージアームがドライブリング620を大きく回転させる。この位置では、IGV610は十分に開いており、ガスは比較的小さい抵抗で遠心圧縮機へと入るができる。アッセンブリがこの配置にあるとき、流れるガスは大きな抵抗を与えないので、アッセンブリによって生じるメカニカルアドバンテージを大きくする必要はない。
【0033】
図6Jは、ウォームねじがウォームギヤを図6Aに示した配置からおよそ90°回転させ、第一面605から最大限オフセットした位置に第一点615があるときの、アッセンブリ600を示す。IGVは完全に開いており、ガスは比較的自由に遠心圧縮機内へと通過することができる。この位置では、流れるガスはIGV610の移動に対して大きな抵抗を与えない。アッセンブリが生じるメカニカルアドバンテージはこの位置で最小となる。
【0034】
図7は、一実施形態にかかるIGVアクチュエータアッセンブリのベーン角度とアクチュエータトルクとの間の関係を示すグラフである。グラフに示す通り、ある態様では、ベーンが閉じた位置にあり、ベーン角度が0度に近づくとき、ベーントルクは最大になる。ベーン角度がゼロに近づくにつれて全体のベーントルクは増加するにもかかわらず、本開示の機構によって生成されるメカニカルアドバンテージによって、必要とされるアクチュエータトルクは低減される。図7から分かる通り、ドライブリングに対するガイドベーンの角度が減少するにつれて、アクチュエータによって生成されるトルクとガイドベーンに印加されるトルクとの差が増加している。また、リンケージアームによって印加されるドライブリングへの力の量は、ガイドベーンは閉じた位置にあるときの方が、ガイドベーンが開いた位置にあるときよりも、大きいことを図7は示している。
【0035】
図7に示す通り、ある態様では、作動機構は、ガイドベーンが第一位置にあるとき、ベーントルクへと変換される駆動構造を駆動する第一量の回転力を印加し、ガイドベーンが第二位置にあるとき第二量の回転力を印加する。ある態様では、ガイドベーンが第一位置にあるときには、ガイドベーンが第二位置にあるとき比較して、作動機構は、アクチュエータに、相対的に大きいメカニカルアドバンテージを提供する。
【0036】
本開示のIGVアクチュエータアッセンブリの全体的な思想を一部の特定の実施形態と関連させて説明したが、いくつもの変形が考えられることを記載しておく。
【0037】
本開示の実施形態は、複数のガイドベーンと、駆動構造と、作動機構とを有する。ある態様では、駆動構造は、ドライブリング、または作動機構から力を受けて複数のガイドベーンの位置を調整できる他のあらゆる適切な構造を有する。
【0038】
ある態様では、アクチュエータ機構は、ウォームドライブ、プーリドライブ、ベルトドライブ、またはラック・アンド・ピニオンを有することができる。ある態様では、アクチュエータ機構は、歯車、例えば、平歯車、ウォームギヤ、はすば歯車、かさ歯車、ホイール、または作動力を受けて回転力等の力を駆動構造またはドライブリングへと印加するよう構成されるあらゆる適当な部品を有する。ある態様では、歯車は、中央ハブに装着される。ある態様では、歯車は、駆動構造またはドライブリングに対してほぼ垂直に配置される。ある態様では、歯車は、駆動構造またはドライブリングに対して45°より大きい角度で配置される。ある態様では、歯車は楕円形である。ある態様では、アクチュエータ機構は、互いに係合するおよび/またはハブによって回転可能に連結される複数の歯車を有する。
【0039】
ある態様では、アクチュエータ機構はリンケージアームを有する。ある態様では、リンケージアームは第一端部および第二端部を有する。第一端部は、第一点において歯車またはホイールに接続される。第二端部は、第二点において駆動構造またはドライブリングに接続される。ある態様では、リンケージアームは、アクチュエータ機構の歯車またはホイールから駆動構造またはドライブリングへと力を伝達する。ある態様では、リンケージアームは、アクチュエータアッセンブリおよび駆動構造の両方の運動を受けるよう配置される一以上のヒンジ状または回動式取付点を有する。ある態様では、ドライブリングの運動は円弧状である。このような態様では、第二点は円弧状の運動で移動し、ドライブリングとともに回転する。リンケージアームは、第一点において歯車との接続を維持しながら、これらの運動をそれぞれ受ける必要がある。ある態様では、リンケージアームは、引張り力および押し出し力の両方を与えるよう配置される。ある態様では、二つ以上のリンケージアームを用いることができる。このような態様では、それぞれのリンケージアームが、押し出し力または引張り力を与えるよう配置することができる。
【0040】
ある態様では、アクチュエータ機構はアクチュエータによって駆動される。アクチュエータを、電気アクチュエータ、空気圧式アクチュエータ、液圧アクチュエータ、磁気アクチュエータ、またはモータとすることができる。ある態様では、アクチュエータは、ウォームねじ、ラック、チェーンドライブ、および/またはベルトドライブを用いて歯車と係合する。ある態様では、アクチュエータは、中間機構、例えば、一連の歯車または中央ハブを通じて、歯車と係合する。
【0041】
本開示のいくつかの面を種々の変更にそして変形態様にすることが可能であるが、特定の態様を一例として図面に示し、ここに詳細に説明した。しかしながら、本発明を、開示した特定の態様に限定することを意図したものではないことは理解されよう。むしろ、本発明は、添付した特許請求の範囲によって特定される発明の精神および範囲内に含まれる、あらゆる変更、均等物および変形に及ぶものである。
【符号の説明】
【0042】
200: IGVアクチュエータアッセンブリ
310: IGV
400: IGVアクチュエータアッセンブリ
410: IGV
420: 駆動構造
422: ドライブリング
430: 作動機構
440: アクチュエータ
500: IGVアクチュエータアッセンブリ
510: IGV
522: ドライブリング
530: ウォームドライブ
534: 被駆動ウォームねじ
536: ウォームギヤ
538: 中央ハブ
540: ウォームアクチュエータ
550: リンケージアーム
552: 第一端部
554: 第二端部
562: 第一点
564: 第二点
600: アッセンブリ
605: 第一面
610: IGV
615: 第一点
620: ドライブリング
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図6F
図6G
図6H
図6I
図6J
図7