(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-03
(45)【発行日】2023-10-12
(54)【発明の名称】電池配線モジュール
(51)【国際特許分類】
H01M 50/569 20210101AFI20231004BHJP
H01M 50/284 20210101ALI20231004BHJP
H01M 50/519 20210101ALI20231004BHJP
H01M 50/298 20210101ALI20231004BHJP
H01G 4/38 20060101ALI20231004BHJP
H01G 11/10 20130101ALI20231004BHJP
H01G 2/06 20060101ALI20231004BHJP
H05K 1/02 20060101ALI20231004BHJP
H05K 1/11 20060101ALI20231004BHJP
【FI】
H01M50/569
H01M50/284
H01M50/519
H01M50/298
H01G4/38 A
H01G11/10
H01G2/06
H05K1/02 C
H05K1/11 H
(21)【出願番号】P 2019205196
(22)【出願日】2019-11-13
【審査請求日】2022-02-28
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001966
【氏名又は名称】弁理士法人笠井中根国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100147717
【氏名又は名称】中根 美枝
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【氏名又は名称】笠井 美孝
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 秀夫
(72)【発明者】
【氏名】高瀬 慎一
【審査官】佐溝 茂良
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-114464(JP,A)
【文献】特開2013-062451(JP,A)
【文献】特開2014-075457(JP,A)
【文献】特開2001-068856(JP,A)
【文献】特開平09-181453(JP,A)
【文献】特開2017-045845(JP,A)
【文献】特開2007-250616(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/50-50/598
H01M 50/20-50/298
H01G 4/38
H01G 11/10
H01G 2/06
H05K 1/02
H05K 1/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極端子を有する複数の蓄電素子に配設される電池配線モジュールであって、
前記電極端子に接続される複数の接続部材と、
前記複数の接続部材を介して前記複数の蓄電素子の電圧を検知する複数の電圧検知線を有するフレキシブルプリント基板とを備え、
前記複数の電圧検知線の少なくとも1つが、前記フレキシブルプリント基板の表面に形成された表面配線と裏面に形成された裏面配線と、前記フレキシブルプリント基板を板厚方向に貫通して該表面配線および該裏面配線を接続する表裏導通部を含んで構成されており、
前記表裏導通部の単位長さあたりの抵抗値が、前記表面配線と前記裏面配線における単位長さ当たりの最大抵抗値以下であ
り、
前記表裏導通部が、前記フレキシブルプリント基板の前記板厚方向の投影で、前記表面配線と前記裏面配線が相互に重なりあう多層配線領域を前記板厚方向で貫通するスルーホールと、該スルーホールの周壁に付着して該スルーホールを充填することなく筒状に形成され、前記板厚方向の上端側と下端側が前記表面配線と前記裏面配線にそれぞれ接続する金属めっき層からなる、隣接配置された複数のビアにより構成されている電池配線モジュール。
【請求項2】
前記表裏導通部が、前記表面配線と前記裏面配線の長さ方向が長軸となる楕円形状を有している請求項1に記載の電池配線モジュール。
【請求項3】
前記ビアを構成する前記スルーホールの穴径が、前記表面配線と前記裏面配線における最小配線幅寸法よりも大きくされている請求項
1または請求項
2に記載の電池配線モジュール。
【請求項4】
前記表面配線と前記裏面配線が、前記フレキシブルプリント基板に設けられた金属製の基層と、該基層上に設けられた表層を含んで構成されており、該表層が、前記ビアを構成する前記スルーホールの前記周壁に付着して設けられた前記金属めっき層と同時にめっきにより形成されたものであり、前記表層の厚さ寸法が前記基層の厚さ寸法よりも大きくされている請求項
1から請求項
3のいずれか1項に記載の電池配線モジュール。
【請求項5】
前記表面配線と前記裏面配線と前記表裏導通部が、それらに重ね合される絶縁性フィルムにより蓋覆されている請求項1から請求項
4のいずれか1項に記載の電池配線モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、複数の蓄電素子に取り付けられる電池配線モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車やハイブリッド車用の蓄電モジュールでは、複数の蓄電素子が直列や並列に接続されている。複数の蓄電素子には、各蓄電素子の電極端子に接続される複数の接続部材と、各蓄電素子の電圧を検知するための複数の電圧検知線を備えた、電池配線モジュールが取り付けられており、各蓄電素子の電圧を監視できるようになっている。
【0003】
近年では、例えば特許文献1に記載の如く、フレキシブルプリント基板の複数のプリント配線を用いて複数の電圧検知線を構成した電池配線モジュールが提案されており、電池配線モジュールの取扱性や組付作業性の向上が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、フレキシブルプリント基板のプリント配線を用いて、複数の電圧検知線を構成した場合、各別の被覆電線により複数の電圧検知線を構成した場合に比して、電圧検知線の配索自由度が制限されるという問題を内在していた。これに対して、例えばジャンパ線を用いて配線形態を変更することが考えられる。しかしながら、ジャンパ線を介した短絡のリスクなどが考えられ、好ましい対策とは言い難かった。
【0006】
そこで、フレキシブルプリント基板のプリント配線により構成された電圧検知線の配索自由度を、短絡の問題を伴うことなく向上させることができる、新規な構造の電池配線モジュールを開示する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の電池配線モジュールは、電極端子を有する複数の蓄電素子に配設される電池配線モジュールであって、前記電極端子に接続される複数の接続部材と、前記複数の接続部材を介して前記複数の蓄電素子の電圧を検知する複数の電圧検知線を有するフレキシブルプリント基板とを備え、前記複数の電圧検知線の少なくとも1つが、前記フレキシブルプリント基板の表面に形成された表面配線と裏面に形成された裏面配線と、前記フレキシブルプリント基板を板厚方向に貫通して該表面配線および該裏面配線を接続する表裏導通部を含んで構成されており、前記表裏導通部の単位長さあたりの抵抗値が、前記表面配線と前記裏面配線における単位長さ当たりの最大抵抗値以下であり、前記表裏導通部が、前記フレキシブルプリント基板の前記板厚方向の投影で、前記表面配線と前記裏面配線が相互に重なりあう多層配線領域を前記板厚方向で貫通するスルーホールと、該スルーホールの周壁に付着して該スルーホールを充填することなく筒状に形成され、前記板厚方向の上端側と下端側が前記表面配線と前記裏面配線にそれぞれ接続する金属めっき層からなる、隣接配置された複数のビアにより構成されている電池配線モジュールである。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、フレキシブルプリント基板のプリント配線により構成された電圧検知線の配索自由度を、短絡の問題を伴うことなく向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本開示の実施形態1に係る電池配線モジュールを示す平面図である。
【
図3】
図3は、
図2におけるIII-III断面拡大図である((a)スルーホール形成後、(b)配線形成後、(c)完成図)。
【
図5】
図5は、実施形態2にかかる電池配線モジュールの表裏導通部を示す平面
拡大図である。
【
図6】
図6は、実施形態3にかかる電池配線モジュールの表裏導通部を示す平面
拡大図である。
【
図7】
図7は、実施形態4にかかる電池配線モジュールの表裏導通部を示す平面
拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<本開示の実施形態の説明>
最初に、本開示の実施態様を列記して説明する。
本開示の電池配線モジュールは、
(1)電極端子を有する複数の蓄電素子に配設される電池配線モジュールであって、前記電極端子に接続される複数の接続部材と、前記複数の接続部材を介して前記複数の蓄電素子の電圧を検知する複数の電圧検知線を有するフレキシブルプリント基板とを備え、前記複数の電圧検知線の少なくとも1つが、前記フレキシブルプリント基板の表面に形成された表面配線と裏面に形成された裏面配線と、前記フレキシブルプリント基板を板厚方向に貫通して該表面配線および該裏面配線を接続する表裏導通部を含んで構成されており、前記表裏導通部の単位長さあたりの抵抗値が、前記表面配線と前記裏面配線における単位長さ当たりの最大抵抗値以下であり、前記表裏導通部が、前記フレキシブルプリント基板の前記板厚方向の投影で、前記表面配線と前記裏面配線が相互に重なりあう多層配線領域を前記板厚方向で貫通するスルーホールと、該スルーホールの周壁に付着して該スルーホールを充填することなく筒状に形成され、前記板厚方向の上端側と下端側が前記表面配線と前記裏面配線にそれぞれ接続する金属めっき層からなる、隣接配置された複数のビアにより構成されている電池配線モジュールである。
【0011】
本開示の電池配線モジュールによれば、複数の電圧検知線の少なくとも1つが、フレキシブルプリント基板の表面に形成された表面配線と裏面に形成された裏面配線と、フレキシブルプリント基板を板厚方向に貫通して表面配線および裏面配線を接続する表裏導通部を含んで構成されている。これにより、例えば、複数の電圧検知線が外部機器に接続されるコネクタ側において、それら複数の電圧検知線の配列順を電位順に変更したい場合等には、表面配線と裏面配線を好適に組み合わせて表裏導通部で接続することで、所望の配列を実現することができる。
【0012】
さらに、表裏導通部の単位長さあたりの抵抗値が、表面配線と裏面配線における単位長さ当たりの最大抵抗値以下に設定されており、表裏導通部における電圧検知線の予期せぬ回路遮断等の不具合や短絡の発生が未然に防止されている。これにより、フレキシブルプリント基板のプリント配線により構成された電圧検知線の配索自由度を、短絡の問題を伴うことなく向上させることができる。また、表裏導通部をビアにより構成することで、本開示の電池配線モジュールの製造を有利に行うことができる。特に、隣接配置された複数のビアにより表裏導通部を構成することで、単位長さあたりの抵抗値が、表面配線と裏面配線における単位長さ当たりの最大抵抗値以下である表裏導通部を、ビアのめっき厚を厚くすることなく実現することができる。それゆえ、より低コストで導通抵抗が低くされた表裏導通部を設けることができる。
【0013】
なお、表面配線と裏面配線における単位長さ当たりの最大抵抗値は、それらの配線構成部分におけるものをいい、配線途中に設けられたチップヒューズや正温度係数サーミスタ等の電流制限領域を含まない部分のものである。
【0014】
(2)前記表裏導通部が、前記表面配線と前記裏面配線の長さ方向が長軸となる楕円形状を有していることが好ましい。表裏導通部を、表面配線と裏面配線の長さ方向が長軸となる楕円形状とすることで、限られた配線幅の表面配線と裏面配線に対して、表裏導通部の断面積を大きく確保することができる。その結果、表裏導通部の単位長さあたりの抵抗値を有利に低減でき、表面配線と裏面配線における単位長さ当たりの最大抵抗値以下にすることを容易に実現できるからである。
【0017】
(3)上記(1)または(2)において、前記ビアを構成する前記スルーホールの穴径が、前記表面配線と前記裏面配線における最小配線幅寸法よりも大きくされていることが好ましい。表面配線と裏面配線における最小配線幅寸法よりも大きな穴径を有するスルーホールを、配線幅寸法の大きい他の部位に設けることで、ビアの金属めっき層の断面積を有利に稼ぐことができる。それゆえ、ビアにより構成される表裏導通部の単位長さ当たりの抵抗値を、表面配線と裏面配線における単位長さ当たりの最大抵抗値以下にすることを、有利に実現できる。
【0018】
(4)上記(1)から(3)のいずれか1つにおいて、前記表面配線と前記裏面配線が、前記フレキシブルプリント基板に設けられた金属製の基層と、該基層上に設けられた表層を含んで構成されており、該表層が、前記ビアを構成する前記スルーホールの前記周壁に付着して設けられた前記金属めっき層と同時にめっきにより形成されたものであり、前記表層の厚さ寸法が前記基層の厚さ寸法よりも大きくされていることが好ましい。スルーホールの周壁に付着して設けられた金属めっき層と同時に、表面配線と裏面配線の表層をめっきにより形成することができ、製造効率の向上を図ることができる。さらに、各配線の表層の厚さ寸法を基層の厚さ寸法よりも大きくすることで、ビアの金属めっき層の厚さ寸法を大きく確保することができ、ビアにより構成される表裏導通部の単位長さ当たりの抵抗値を、表面配線と裏面配線における単位長さ当たりの最大抵抗値以下にすることを、有利に実現できる。
【0019】
(5)前記表面配線と前記裏面配線と前記表裏導通部が、それらに重ね合される絶縁性フィルムにより蓋覆されていることが好ましい。表裏配線と共に、表裏導通部を絶縁被覆することができ、表裏導通部への結露等による短絡の発生を未然に防止することができるからである。
【0020】
<本開示の実施形態の詳細>
本開示の電池配線モジュールの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本開示は、これらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0021】
<実施形態1>
以下、本開示の実施形態1について、
図1から
図4を参照しつつ説明する。蓄電モジュール10は、例えば電気自動車やハイブリッド自動車等の車両(図示せず)に搭載されており、複数(本実施形態では6個)の蓄電素子12と、複数の蓄電素子12に配設される1つの電池配線モジュール14を備えている。なお、以下の説明においては、Z方向を上方、Y方向を長さ方向前方、X方向を幅方向右方として説明する。また、複数の同一部材については、一部の部材にのみ符号を付し、他の部材については符号を省略する場合がある。
【0022】
<蓄電モジュール10>
図1に示すように、蓄電モジュール10は、6個の蓄電素子12が長さ方向(
図1中、上下方向)に並んでいる。蓄電素子12は横長の直方体形状を有しており、
蓄電モジュール10は、6個の蓄電素子12を直列に接続して出力電圧を高くしている。蓄電素子12は特に限定されず、二次電池でもよく、またキャパシタでもよい。本実施形態にかかる蓄電素子12は二次電池とされる。この二次電池には、リチウムイオン二次電池、リチウムポリマー二次電池、ニッケル水素電池などが使用できる。
【0023】
蓄電素子12の上面の左右両端部にはそれぞれ、電極端子16が形成されている。電極端子16の一方は正極で、他方は負極である。電極端子16には、接続部材を構成する、接続バスバー18または出力バスバー20が電気的に接続されている。
【0024】
<接続バスバー18および出力バスバー20>
接続バスバー18および出力バスバー20は、金属板材を所定の形状にプレス加工してなる。接続バスバー18および出力バスバー20を構成する金属としては、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金等の熱伝導性が高く、電気抵抗の低い金属を適宜に選択することができる。接続バスバー18および出力バスバー20の表面には、図示しないめっき層が形成されていてもよい。めっき層を構成する金属としては、スズ、ニッケル、半田等、任意の金属を選択できる。
【0025】
接続バスバー18は、
図1に示すように、隣り合う電極端子16に跨った状態で隣り合う電極端子16同士を接続する。出力バスバー20は、1つの電極端子16に接続されて図示しない外部機器へ電力を出力する。本実施形態における出力バスバー20は2つであって、最後列の蓄電素子12の左端部に形成された電極端子16に接続されたものと、最前列の蓄電素子12の左端部に形成された電極端子16に接続されたものである。本実施形態においては、5つの接続バスバー18が隣り合う電極端子16同士を接続している。これらの接続バスバー18により、複数の蓄電素子12が直列に接続されている。なお、接続バスバー18および出力バスバー20と、電極端子16とは、半田付け、溶接、ボルト締結等の公知の手法により、電気的かつ物理的に接続されている。
【0026】
図1において、接続バスバー18および出力バスバー20に付された0から6までの番号は、接続バスバー18および出力バスバー20が接続された6個の蓄電素子12それぞれの、電位の順を示している。0が付された出力バスバー20に接続された電極端子16の電位が最も低く、1から5へ順に高くなっており、6が付された出力バスバー20に接続された電極端子16の電位が最も高くなっている。因みに、本実施形態では、電位順に後述する表面配線30を並べるということが困難であるという従来の問題は解消されている。
【0027】
図1に示すように、前後方向に並ぶ6個の蓄電素子12の左端部に配された接続バスバー18および出力バスバー20に接続された電極端子16の電位の序列は、0、2、4、6となっており、6個の蓄電素子12の右端部に配された接続バスバー18に接続された電極端子16の電位の序列は、1,3,5となっている。このように、電極端子16の電位は、低い順に、右と左とに分かれて、交互に並んでいる。
【0028】
<コネクタ22>
コネクタ22は、電池配線モジュール14の接続端部に設けられている。コネクタ22は、内部に電圧検知用の回路またはマイクロコンピュータを備える図示しない外部機器に接続されるようになっている。
【0029】
<電池配線モジュール14>
図1に示すように、6個の蓄電素子12の上面には、電池配線モジュール14が載置されている。本実施形態にかかる電池配線モジュール14は、可撓性を有する2層基板24と、2層基板24に接続されたコネクタ22と、を備えている。
【0030】
<2層基板24>
図1に示すように、2層基板24は
、後述する可撓性を有する絶縁
ベースフィルム44の表面26と裏面28にそれぞれプリント配線技術により配線が形成された、2層
のフレキシブルプリント基板である。2層基板24は前後方向に長く延びて形成されている。
【0031】
図1に示すように、2層基板24の表面26には、複数(本実施形態では7本)の表面配線30が形成されている。一方の端部が0あるいは6が付されたコネクタ22の位置に接続されている電圧検知線を構成する2本の表面配線30は、他方の端部が出力バスバー20に接続されている。すなわち、フレキシブルプリント基板である2層基板24は、2つの出力バスバー20を介して2個の蓄電素子12の電圧を検知する2本の電圧検知線を構成する2本の表面配線30を有している。なお、表面配線30と出力バスバー20とは、半田付け、溶接等、任意の手法により、電気的かつ物理的に接続されている。
【0032】
一方の端部が1から5が付されたコネクタ22の位置に接続されている5本の電圧検知線を構成する表面配線30は、他方の端部が表裏導通部32に接続されている。表裏導通部32は、2層基板24を板厚方向(
図1中、紙面に垂直な方向)に貫通して表面配線30および、裏面28に形成され電圧検知線を構成する裏面配線34を接続している。一方の端部が表裏導通部32に接続されている5本の裏面配線34はそれぞれ、他方の端部が1から5までの番号が付された接続バスバー18に接続されている。すなわち、フレキシブルプリント基板である2層基板24は、5つの接続バスバー18を介して6個の蓄電素子12の電圧を検知する5本の電圧検知線である、5本の表面配線30および裏面配線34を有している。なお、裏面配線34と接続バスバー18とは、半田付け、溶接等、任意の手法により、電気的かつ物理的に接続されている。
【0033】
<表裏導通部32>
図2に示すように、表裏導通部32は、2層基板24の板厚方向(
図2中、紙面に垂直な方向)の投影で、表面配線30と裏面配線34が長さ方向の一端部において相互に重なりあう多層配線領域36に形成されている。表裏導通部32は、この多層配線領域36を板厚方向で貫通するスルーホール38と、スルーホール38の周壁40に付着して筒状に形成される金属めっき層42からなる1つのビア43によって構成されており、表裏導通部32の板厚方向の上端側と下端側が表面配線30と裏面配線34にそれぞれ接続されている。このように、表裏導通部32をビア43によって構成することにより、本開示の電池配線モジュール14の製造を有利に行うことができるようになっている。
図2に示すように、表裏導通部32は、表面配線30と裏面配線34の長さ方向(
図2中、左右方向)が長軸となる楕円形状を有している。これにより、表裏導通部32は、長さ方向の中央部よりも長さ方向の両端部において金属めっき層42が厚く形成されている。また、長さ方向を長軸とすることにより、一定の配線幅を有する表面配線30と裏面配線34に比して、表裏導通部32の断面積を大きく確保することが可能となる。以上のことから、表裏導通部32の単位長さあたりの抵抗値を有利に低減でき、表面配線30と裏面配線34における単位長さ当たりの最大抵抗値以下にすることを容易に実現できる。なお、理解を容易にするため、金属めっき層42の境界線を仮想線で記載している。
【0034】
<表裏導通部32の製造工程>
続いて、表裏導通部32の構成について、本実施形態にかかる電池配線モジュール14における表裏導通部32の製造工程の一例を用いて説明する。表裏導通部32の製造工程は以下の記載に限定されない。
【0035】
まず、
図3を用いて、表裏導通部32の製造工程について説明する。
(1)ポリイミド等からなる可撓性の絶縁ベースフィルム44と、この絶縁ベースフィルム44の両面に対して接着剤層45を用いて貼付された銅箔46とを有する両面銅張積層板48を準備する。
(2)次に、この両面銅張積層板48に対し、NCドリル加工またはレーザ加工等を施すことにより、両面銅張積層板48を貫通するスルーホール38を形成する(
図3(a)参照)。
(3)続いて、スルーホール38内の周壁40にデスミア処理および導電化処理を行った後、スルーホール38の形成された両面銅張積層板48の全面にわたってめっき処理(例えば電解銅めっき処理)を施す。これにより、銅箔46上およびスルーホール38の周壁40に金属めっき層42が形成され、絶縁ベースフィルム44の両面に形成された銅箔46が電気的に接続される。
(4)次に、サブトラクティブ工法により、絶縁ベースフィルム44の両面の導電膜(金属めっき層42および銅箔46)を所定のパターンに加工する(
図3(b)参照)。より詳細には、金属めっき層42およびスルーホール38を被覆するように、ドライフィルムレジスト等のレジスト層(図示せず)を形成し、その後、フォトファブリケーション法によりレジスト層を露光・現像して、レジスト層を所定のパターンに加工する。その後、パターニングされたレジスト層をマスクにして、金属めっき層42および銅箔46をエッチングすることにより、表面配線30および裏面配線34を形成する。その後、レジスト層を剥離する。
【0036】
ここまでの工程により、
図3(b)に示すように、絶縁ベースフィルム44の表面
26および裏面
28に表面配線30および裏面配線34がそれぞれ形成され、表裏導通部32を有する2層基板24が作製される。なお、上記の手順では、スルーホール38を形成した後にめっき処理を行ったが、このめっき処理を行わずに銅箔46のパターニングを行ってもよい。
(5)最後に、ポリイミドフィルム等からなる絶縁性フィルム50と、この絶縁性フィルム50の片面に形成された接着剤層52とを有するカバーレイ54を準備する。接着剤層52は、例えばアクリル、エポキシ等の接着剤からなる。そして、表面配線30および裏面配線34を絶縁保護するために、真空ラミネータ等を用いて、2層基板24の両面にそれぞれカバーレイ54をラミネートする。これにより、
図3(c)に示すように、表面配線30と裏面配線34と表裏導通部32が、それらに重ね合される絶縁性フィルム50により蓋覆される。この結果、表面配線30と裏面配線34と共に、表裏導通部32も絶縁被覆することができ、表裏導通部32への結露等による短絡の発生を未然に防止できる。本工程を経て、
図1に示す電池配線モジュール14が完成する。
【0037】
このようにして、表面配線30と裏面配線34が、2層基板24の両面に設けられた金属製の基層を構成する銅箔46と、銅箔46上に設けられた表層を構成する金属めっき層42を含んで構成されている。これにより、スルーホール38の周壁40のみならず表面配線30と裏面配線34の表層にも金属めっき層42を同時に形成することができ、製造効率の向上を図ることができる。また、本実施形態では、金属めっき層42の厚さ寸法が18μm、銅箔46の厚さ寸法が15μmとされており、金属めっき層42の厚さ寸法が銅箔46の厚さ寸法よりも大きくされている。これにより、ビア43の金属めっき層42の厚さ寸法を大きく確保することができる。しかも、表裏導通部32が長さ方向が長軸となる楕円形状を有していることから、長さ方向の両端部において金属めっき層42が厚く形成され、表裏導通部32を構成する周壁40が長さ方向に向かって長尺で延び出している。それゆえ、表裏導通部32の単位長さあたりの抵抗値が小さくされており、表面配線30と裏面配線34における単位長さ当たりの最大抵抗値以下にすることが、有利に実現されている。なお、ここでいう最大抵抗値とは、それらの配線構成部分におけるものをいい、配線途中に設けられたチップヒューズや正温度係数サーミスタ等の電流制限領域を含まない。
【0038】
このような構造とされた本開示の電池配線モジュール14によれば、2層基板24を板厚方向に貫通して電圧検知線を構成する表面配線30および裏面配線34を接続する表裏導通部32を有している。これにより、例えば複数の電圧検知線を構成する表面配線30が外部機器に接続されるコネクタ22側における配列順を電位順に変更することが、容易に実現できる。しかも、表裏導通部32の単位長さあたりの抵抗値を、表面配線30と裏面配線34における単位長さ当たりの最大抵抗値以下にすることが有利に実現されていることから、表裏導通部32における電圧検知線を構成する表面配線30および裏面配線34の予期せぬ回路遮断等の不具合や短絡の発生が未然に防止されている。それゆえ、フレキシブルプリント基板を構成する2層基板24のプリント配線である表面配線30および裏面配線34により構成された電圧検知線の配索自由度を、ジャンパ線を用いた場合の短絡の問題を伴うことなく向上させることができる。
【0039】
<他の実施形態>
本明細書に記載された技術は上記記述および図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本明細書に記載された技術の技術的範囲に含まれる。
【0040】
(1)上記実施形態1では、表裏導通部32が1つのビア43によって構成されていたが、これに限定されない。例えば、
図5に示す実施形態2の表裏導通部56のように、長さ方向に隣接配置された2つのビア43により構成されていてもよい。あるいは、
図6に示す実施形態3の表裏導通部58のように、長さ方向および幅方向に隣接配置された4つのビア43により構成されていてもよい。これにより、単位長さあたりの抵抗値が、表面配線30と裏面配線34における単位長さ当たりの最大抵抗値以下である表裏導通部56,58を、ビア43のめっき厚を厚くすることなく実現し得る。それゆえ、より低コストで導通抵抗が低くされた表裏導通部56,58を設けることができる。
【0041】
(2)上記実施形態1,2,3では、
図2,5,6に示すように、ビア43を構成するスルーホール38の幅方向の穴径:rが、表面配線30と裏面配線34における最小配線幅寸法:Wよりも小さくされていたが、これに限定されない。例えば、
図7に示す実施形態4の表裏導通部60のように、ビア43を構成するスルーホール38の幅方向の穴径:Rが、表面配線30と裏面配線34における最小配線幅寸法:wよりも大きくされていてもよい。これにより、ビア43の金属めっき層42の断面積を、表面配線30と裏面配線34における最小配線幅寸法の部位よりも有利に稼ぐことができる。それゆえ、表裏導通部60の単位長さ当たりの抵抗値を、表面配線30と裏面配線34における単位長さ当たりの最大抵抗値以下にすることを有利に実現できる。なお、理解を容易とするため、
図7では、2層基板24の記載を省略している。
【0042】
(3)上記実施形態1,2,3,4では、表裏導通部32,56,58,60は、スルーホール38の周壁40に付着された金属めっき層42によって表面配線30と裏面配線34を導通接続していたが、これに限定されない。例えば、スルーホール38内にはんだを充填することにより表面配線30と裏面配線34を導通接続してもよい。
【0043】
(4)上記実施形態1,2,3,4では、複数の蓄電素子12に配設される1つの電池配線モジュール14を例にとって説明を行ったが、これに限定されず、複数の蓄電素子12の一方側と他方側にそれぞれ配設される2つの電池配線モジュール14に対しても適用することができる。この場合は、電位順に表面配線30を並べるということが困難であるという問題はないが、例えば、電圧検知線に接続される抵抗調整部を裏面配線34で構成することにより、特許文献1に記載されている各電圧検知線の配線長さの電気抵抗の違いを容易に解消することができる。これにより、フレキシブルプリント基板のプリント配線により構成された電圧検知線の配索自由度の向上が図られ得る。
【符号の説明】
【0044】
10 蓄電モジュール
12 蓄電素子
14 電池配線モジュール
16 電極端子
18 接続バスバー(接続部材)
20 出力バスバー(接続部材)
22 コネクタ
24 2層基板(フレキシブルプリント基板)
26 表面
28 裏面
30 表面配線(電圧検知線)
32 表裏導通部
34 裏面配線(電圧検知線)
36 多層配線領域
38 スルーホール
40 周壁
42 金属めっき層
43 ビア
44 絶縁ベースフィルム
45 接着剤層
46 銅箔
48 両面銅張積層板
50 絶縁性フィルム
52 接着剤層
54 カバーレイ
56 表裏導通部
58 表裏導通部
60 表裏導通部