(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-03
(45)【発行日】2023-10-12
(54)【発明の名称】白金族金属イオンの分離回収システム及び分離回収方法
(51)【国際特許分類】
C22B 11/00 20060101AFI20231004BHJP
C22B 3/02 20060101ALI20231004BHJP
C22B 3/24 20060101ALI20231004BHJP
C22B 3/42 20060101ALI20231004BHJP
B01J 20/22 20060101ALI20231004BHJP
C02F 1/461 20230101ALI20231004BHJP
C02F 1/70 20230101ALI20231004BHJP
C02F 1/42 20230101ALI20231004BHJP
【FI】
C22B11/00 101
C22B3/02
C22B3/24 101
C22B3/42
B01J20/22 B
C02F1/461 101B
C02F1/70 A
C02F1/42 G
C02F1/42 H
(21)【出願番号】P 2019167654
(22)【出願日】2019-09-13
【審査請求日】2022-06-17
(31)【優先権主張番号】P 2018196678
(32)【優先日】2018-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】506209422
【氏名又は名称】地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター
(74)【代理人】
【識別番号】100218062
【氏名又は名称】小野 悠樹
(74)【代理人】
【識別番号】100093230
【氏名又は名称】西澤 利夫
(72)【発明者】
【氏名】梶山 哲人
(72)【発明者】
【氏名】井上 潤
(72)【発明者】
【氏名】國仙 久雄
【審査官】藤長 千香子
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-079933(JP,A)
【文献】特開平09-047768(JP,A)
【文献】特開平07-310129(JP,A)
【文献】特開2005-305411(JP,A)
【文献】研究事例紹介2 廃棄物から微量の白金属元素を回収するシステムを開発,TIRI NEWS,日本,地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター経営企画室広報係,2019年08月01日,8月号(2019),4頁~5頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22B 1/00-61/00
C02F 1/42、1/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも四価の白金族金属イオンであるPt
4+イオンと二価の白金族金属イオンであるPd
2+イオンを含む酸性廃液に対し、二価の白金族金属イオンを選択的に分離回収するための第1のジチゾン結合樹脂カラムと、
前記第1のジチゾン結合樹脂カラムからの処理廃液に対し、Pt
4+イオンを還元してPt
2+とする還元機構と、
前記還元機構からの還元処理廃液に対し、二価の白金族金属イオンを選択的に分離回収するための第2のジチゾン結合樹脂カラムを備え、
前記第1のジチゾン結合樹脂カラムおよび前記第2のジチゾン結合樹脂カラムは、スチレン系樹脂にクロロメチル基を導入した樹脂にジチゾンを修飾させたものであり、
前記酸性廃液からPt
2+イオンとPd
2+イオンをそれぞれ選択的に分離回収する、白金族金属イオンの分離回収システム。
【請求項2】
前記第1のジチゾン結合樹脂カラムの前段に、前記酸性廃液中の白金族金属イオン以外の不純物金属イオンを分離する前処理試薬結合樹脂カラムまたは陽イオン交換樹脂を設けた請求項1に記載の白金族金属イオンの分離回収システム。
【請求項3】
前記前処理試薬結合樹脂カラムは、基材を前処理試薬で修飾したものであり、
前記前処理試薬がオキシン系、スルホン酸系またはイミノジ酢酸系の分離材である請求項2に記載の白金族金属イオンの分離回収システム。
【請求項4】
少なくとも四価の白金族金属イオンであるPt
4+イオンと二価の白金族金属イオンであるPd
2+イオンを含む酸性廃液から、第1の捕集
材を用い、Pd
2+を選択的に分離回収する第1の分離回収工程と、
前記第1の分離回収工程からの処理廃液中のPt
4+イオンを還元してPt
2+とする還元工程と、
前記還元工程からの還元処理廃液から、第2の捕集
材を用い、Pt
2+を選択的に分離回収する第2の分離回収工程を含
み、
前記第1の捕集材および前記第2の捕集材は、スチレン系樹脂にクロロメチル基を導入した樹脂にジチゾンを修飾させたものである、白金族金属イオンの分離回収方法。
【請求項5】
前記第1の分離回収工程の前に、前記酸性廃液中の白金族金属イオン以外の不純物金属イオンを前処理試薬結合樹脂カラムまたは陽イオン交換樹脂により分離する前処理工程を含む、請求項4に記載の白金族金属イオンの分離回収方法。
【請求項6】
前記前処理試薬結合樹脂カラムは、基材を前処理試薬で修飾したものであり、
前記前処理試薬がオキシン系、スルホン酸系またはイミノジ酸系の分離材である、請求項5に記載の白金族金属イオンの分離回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、白金族金属イオンの分離回収システム及び分離回収方法に関し、より詳しくは、高濃度廃液処理後の低濃度廃液から二価の白金族金属イオンPt2+とPd2+を選択的に分離回収する白金族金属イオンの分離回収システム及び分離回収方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在まで、白金族金属(Pt、Pdなど)及び希土類金属(Dy、Pr、Nd、Smなど)は、特に我が国の基幹産業である自動車産業で用いられており、我が国の産業の発展を維持しながら、高度の循環型社会の構築を目指す際に欠くことのできない重要な金属である。
【0003】
ところが、これらの金属はほとんどが輸入されており、今後の安定な供給が維持できるか不透明である。従って、これらの最先端工業製品に利用されている白金族金属と希土類金属の再利用が求められている。
【0004】
現在、高濃度の白金族金属を含んだスクラップなどから白金族金属をリサイクルする方法としては、高温の銅フラックスもしくは酸を用いて金属を溶出させた後、硫化物法や塩化アンモニウム沈殿法により、白金族金属を分離回収して、その後電解精錬法等によって精製している。しかし、白金族金属は製品中の含量が少なく、低濃度廃棄物が多い。独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)発行の鉱物資源マテリアルフロー(2014年版)によると、白金(Pt)のリサイクル率は70%、パラジウム(Pd)のリサイクル率は37%であり、必要不可欠な金属であるにもかかわらずリサイクル率は高くない。現状では白金族金属を回収した後の低濃度廃棄物(廃液)は廃棄されている。
【0005】
高濃度廃液中の白金族金属を回収した後の低濃度廃液には、Pt4+やPd2+などの白金族金属イオンが低濃度で含まれており、低濃度廃液からこれらの白金族金属イオンを選択的に分離回収する資源循環システムの構築が望まれている。しかしながら、低濃度廃液が白金族金属イオンを選択的に分離回収する技術はこれまで提案されていなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような従来技術の実情に鑑みてなされたもので、高濃度廃液中の白金族金属を回収した後の低濃度廃液から効率よく白金族金属(Pt、Pd)イオンを選択的に分離回収し、リサイクル率の向上を図ることできる技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明によれば、下記のシステム及び方法が提供される。
【0008】
[1]少なくとも四価の白金族金属イオンであるPt4+イオンと二価の白金族金属イオンであるPd2+イオンを含む酸性廃液に対し、二価の白金族金属イオンを選択的に分離回収するための第1のジチゾン結合樹脂カラムと、
前記第1のジチゾン結合樹脂カラムからの処理廃液に対し、Pt4+イオンを還元してPt2+とする還元機構と、
前記還元機構からの還元処理廃液に対し、二価の白金族金属イオンを選択的に分離回収するための第2のジチゾン結合樹脂カラムを備え、
前記酸性廃液からPt2+イオンとPd2+イオンをそれぞれ選択的に分離回収する、白金族金属イオンの分離回収システム。
【0009】
[2]上記第[1]の発明において、前記第1のジチゾン結合樹脂カラムの前段に、前記酸性廃液中の白金族金属イオン以外の不純物金属イオンを分離する前処理試薬結合樹脂カラムまたは陽イオン交換樹脂を設けた白金族金属イオンの分離回収システム。
【0010】
[3]上記第[2]の発明において、前記前処理試薬がオキシン系、スルホン酸系またはイミノジ酢酸系の分離材である白金族金属イオンの分離回収システム。
【0011】
[4]少なくとも四価の白金族金属イオンであるPt4+イオンと二価の白金族金属イオンであるPd2+イオンを含む酸性廃液から、第1の捕集材としてジチゾンを用い、Pd2+を選択的に分離回収する第1の分離回収工程と、
前記第1の分離回収工程からの処理廃液中のPt4+イオンを還元してPt2+とする還元工程と、
前記還元工程からの還元処理廃液から、第2の捕集材としてジチゾンを用い、Pt2+を選択的に分離回収する第2の分離回収工程を含む、白金族金属イオンの分離回収方法。
【0012】
[5]上記第[4]の発明において、前記第1の分離回収工程の前に、前記酸性廃液中の白金族金属イオン以外の不純物金属イオンを前処理試薬結合樹脂カラムまたは陽イオン交換樹脂により分離する前処理工程を含む、白金族金属イオンの分離回収方法。
【0013】
[6]上記第[5]の発明において、前記前処理試薬がオキシン系、スルホン酸系またはイミノジ酢酸系の分離材である、白金族金属イオンの分離回収方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、上記白金族金属イオンの分離回収システム及び分離回収方法を採用したので、高濃度廃液中の白金族金属を回収した後の低濃度廃液から効率よく二価の白金族金属(Pt、Pd)イオンを選択的に分離回収し、リサイクル率の向上に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係る白金族金属イオンの分離回収システムの構成を模式的に示すブロック図である。
【
図2】低濃度の白金族金属イオンを含む酸性溶液(HCl)から白金族金属イオンを選択的に分離回収した場合のHCl濃度に対する白金族金属イオンの捕集率を示す図である。
【
図3】本発明の別の実施形態に係る白金族金属イオンの分離回収システムの構成を模式的に示すブロック図である。
【
図4】白金族金属イオン以外の低濃度の金属イオン(Co
2+)を含む酸性溶液(HCl)からの捕集材による捕集挙動(捕集率)を示す図である。
【
図5】白金族金属イオン以外の低濃度の金属イオン(Ni
2+)を含む酸性溶液(HCl)からの捕集材による捕集挙動(捕集率)を示す図である。
【
図6】白金族金属イオン以外の低濃度の金属イオン(Cu
2+)を含む酸性溶液(HCl)からの捕集材による捕集挙動(捕集率)を示す図である。
【
図7】白金族金属イオン以外の低濃度の金属イオン(Zn
2+)を含む酸性溶液(HCl)からの捕集材による捕集挙動(捕集率)を示す図である。
【
図8】高濃度廃液のPt沈殿剤として用いられるNH
4Clが、低濃度の白金族金属(Pt
2+)を含む酸性溶液(HCl)からの捕集材による捕集挙動に及ぼす影響を調べた結果を示す図である。
【
図9】捕集材を充填したカラム中に各種金属イオン(Pt
4+、Pd
2+、Co
2+、Ni
2+、Cu
2+、及びZn
2+)の入った溶液(還元剤なし)を流して捕集能を調べた結果を示す図である。
【
図10】捕集材を充填したカラム中に各種金属イオン(Pt
4+、Pd
2+、Co
2+、Ni
2+、Cu
2+、及びZn
2+)の入った溶液(還元剤含む)を流して捕集能を調べた結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施の形態に基づいて詳細に説明する。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態に係る白金族金属イオンの分離回収システム1の構成を模式的に示すブロック図である。この分離回収システム1では、高濃度(高品位)廃液Aの処理を行い、白金族金属を回収した後の低濃度廃液Bを、白金族金属(Pt、Pd)イオンの分離回収の対象とする。この低濃度廃液Bには、12ppm程度のPt
4+、廃液による違いはあるが白金と同程度のPd
2+が含まれている。また、便宜上、白金族金属イオンの他に、金属M
1のイオン(1種以上)と金属M
2のイオン(1種以上)が含まれているものとする。
【0018】
この分離回収システム1は、低濃度廃液(酸性廃液)Bから白金族金属イオン以外の不純物金属(M1)イオンを選択的に分離する前処理試薬結合樹脂カラム2と、前処理試薬結合樹脂カラム2からの処理廃液Cに対し、二価の白金族金属イオン(Pd2+)を選択的に分離回収するための第1のジチゾン結合樹脂カラム3と、第1のジチゾン結合樹脂カラム3からの処理廃液Dに対し、Pt4+イオンを還元してPt2+とする還元機構4と、還元機構4からの還元処理廃液Eに対し、二価の白金族イオン(Pt2+)を選択的に分離回収する第2のジチゾン結合樹脂カラム5を備えている。第2のジチゾン結合樹脂カラム5からは白金族金属イオン以外の不純物金属(M2)のイオンを含む廃液Fが排出される。
【0019】
低濃度廃液Bは、例えば0.1~6.0Mの高濃度HClを含む酸性廃液であり、白金族金属イオンPt4+、Pd2+の他、白金族金属以外の不純物金属M1、M2のイオンを含んでいる。不純物金属M1のイオンとしては、例えばCo2+、Ni2+、Cu2+、Zn2+等の1種以上が挙げられる。また、不純物金属M2のイオンとしては、例えば前処理カラムで取り切れなかったCo2+、Ni2+、Cu2+、Zn2+、またはRh3+等の1種以上が挙げられる。
【0020】
前処理試薬結合樹脂カラム2は、スチレン系樹脂、シリカ系基材、セルロース系基材等の基材に、前処理試薬である不純物分離材として、オキシン系(オキシン等)、スルホン酸系(スルホン酸基等)、イミノジ酢酸系(イミノジ酢酸等)などの一般的な金属イオンを回収することができる分離材で修飾したものを用いることができる。典型的な不純物分離材としては、下記式(1)のオキシンを用いることができる。
【0021】
【0022】
不純物分離材を樹脂へ修飾させる方法としては、例えば、樹脂にメタクリル酸グリシジル(GMA)を用いたグラフト重合を行い、その先端に不純物分離材を化学結合させる方法や、クロロメチル基を導入したスチレン樹脂に不純物分離材を化学結合させる方法などの方法を用いることができる。不純物分離材は、例えばオキシンを用いた場合、樹脂1.0cm3に対し、5.0×10-3~3.0×10-2g程度が好ましく、より好ましくは0.01g程度である。前処理試薬結合樹脂カラム2では、不純物金属M1のイオンを分離する。従って、処理廃液Cには、Pd2+、Pt4+、不純物金属M2のイオンが含まれることになる。
【0023】
第1のジチゾン結合樹脂カラム3の前段において、低濃度廃液(酸性廃液)Bから白金族金属イオン以外の不純物金属(M1)イオンを選択的に分離するものとして、本実施形態では前処理試薬結合樹脂カラム2を用いているが、その他に陽イオン交換樹脂を用いてもよい。
【0024】
第1のジチゾン結合樹脂カラム3は、スチレン系樹脂にクロロメチル基を導入した樹脂にジチゾンを修飾させた、下記式(2)で表される構造のものを用いることができる。
【0025】
【0026】
ここで、明示はしていないが、例えば1%のジビニルベンゼンによる架橋を含んでいる。
【0027】
ジチゾンを樹脂に修飾させる方法としては、例えば実施例に記載したような方法を用いることができる。ジチゾンは、樹脂10gに対し、3~4g程度が好ましい。このジチゾンは、二価の白金族金属イオンを選択的に分離回収するもので、第1のジチゾン結合樹脂カラム3は、Pd2+を選択的に分離回収する。従って、処理廃液Dには、Pt4+、不純物金属M2のイオンが含まれることになる。
【0028】
還元機構4は、処理廃液D中のPt4+をPt2+に還元する。還元剤を使用する場合、還元剤としては、例えば、2.7×10-4mol/dm3程度の濃度の塩化スズ(SnCl2)溶液を用いることができる。従って、還元処理廃液Eには、Pt2+、不純物金属M2のイオンが含まれることになる。
【0029】
この還元機構4には、より効率的に還元を行うために、フロー電解カラム(カラム型フロー電解セル)を用いることもできる。従来公知の一例を説明すると、カラム型フロー電解セルは、糸状に形成された複数のカーボン繊維からなる作用電極、隔膜として用いられる絶縁管としてのバイコールガラス管と、カーボン電極を備えている。バイコールガラス管には微細な孔が無数に貫通して形成されており、バイコールガラス管内にはカーボン繊維の束が密に充填されている。バイコールガラス管の周囲には白金線を巻回して対極を形成している。分離カラムからの溶液が液流入口から流入され、作用電極内を通過すると、電解用電源から電極を介して供給される電解電流によって還元され、液流出口から流出する。このフロー電解カラムによれば、還元剤を使用せずに高効率でPt4+をPt2+に還元することが可能である。
【0030】
下記式(3)に捕集材であるジチゾンと二価の白金族金属Mとの錯形成の形態を示す。
【0031】
【0032】
第2のジチゾン結合樹脂カラム5は、第1のジチゾン結合樹脂カラム3と同様、二価の白金族金属イオンを選択的に分離回収するもので、第2のジチゾン結合樹脂カラム5は、Pt2+を選択的に分離回収する。第2のジチゾン結合樹脂カラム5としては、第1のジチゾン結合樹脂カラム3と同様なものを用いることができる。廃液Fには不純物金属M2のイオンが含まれ、廃棄される。
【0033】
上記において、第1のジチゾン結合樹脂カラム3で分離回収したPd2+と第2のジチゾン結合樹脂カラム5で分離回収したPt2+を、それぞれ電解還元することにより、金属PdとPtが得られる。
【0034】
以上のようにして、第1の実施形態の白金族金属イオンの回収装置によれば、低濃度廃液から効率よく二価の白金族金属(Pt、Pd)イオンが選択的に分離され、PtとPdのリサイクル率を向上させることができる。
【0035】
次に、本発明の別の実施形態に係る白金族金属イオンの分離回収システムについて説明する。
図3は、この実施形態に係る白金族金属イオンの分離回収システム11の構成を模式的に示すブロック図である。この分離回収システム11も、高濃度(高品位)廃液の処理を行い、白金族金属を回収した後の低濃度廃液Pを、白金族金属(Pt、Pd)イオンの分離回収の対象とする。この低濃度廃液Pにも、12ppm程度のPt
4+、廃液による違いはあるが、同程度のPd
2+が含まれている。また、ここでは、便宜上白金族イオンのほかに、金属Mのイオン(1種以上)が含まれているものとする。
【0036】
この分離回収システム11は、第1の実施形態と異なり、前処理試薬結合樹脂カラムを有していない。この分離回収システムは、低濃度廃液(酸性廃液)Pに対し、二価の白金族イオン(Pd2+)を選択的に分離回収するための第1のジチゾン結合樹脂カラム12と、第1のジチゾン結合樹脂カラム12からの処理廃液Qに対し、Pt4+イオンを電解還元してPt2+とする還元機構13と、還元機構13からの還元処理廃液Rに対し、二価の白金族イオン(Pt2+)を選択的に分離回収する第2のジチゾン結合樹脂カラム14を備えている。第1のジチゾン結合樹脂カラム12で分離回収されたPd2+は溶離されて取り出される。また、第2のジチゾン結合樹脂カラム14で分離回収されたPt2+は溶離されて取り出される。また、第2のジチゾン結合樹脂カラム14からは白金族金属イオン以外の不純物金属(M)のイオンを含む廃液Sが排出される。
【0037】
低濃度廃液Pは、例えば0.1~6.0Mの高濃度HClであり、白金族イオンPt4+、Pd2+の他、白金族金属以外の不純物金属Mのイオンを含んでいる。不純物金属Mのイオンとしては、例えばCo2+、Ni2+、Cu2+、Zn2+、またはRh3+等の1種以上が挙げられる。
【0038】
第1のジチゾン結合樹脂カラム12としては、第1の実施形態の第1のジチゾン結合樹脂カラム3と同様なものを使用することができる。また、還元機構13としては、第1の実施形態の還元機構4と同様なものを使用することができる。さらに、第2のジチゾン結合樹脂カラム14としては第1のジチゾン樹脂カラム5と同様なものを使用することができる。詳細は、第1の実施形態におけるこれらの要素の説明を参照されたい。
【0039】
上記において、第1のジチゾン結合樹脂カラム14で分離回収したPd2+と第2のジチゾン結合樹脂カラム14で分離回収したPt2+を、それぞれ電解還元することにより、金属PdとPtが得られる。
【0040】
以上のようにして、第2の実施形態の白金族金属イオンの回収装置によれば、低濃度廃液から効率よく二価の白金族金属(Pt、Pd)イオンが選択的に分離され、PtとPdのリサイクル率を向上させることができる。
【実施例】
【0041】
以下、実施例に基づき本発明を説明する。
1.ジチゾン結合捕集材の作製
(1)ジヒドロジチゾンの合成
ジチゾン4gを溶解させたクロロホルム600cm3に、ヘキサシアノ鉄酸カリウム(III)12.8gと炭酸カリウム12gを溶解させた水200cm3を加え、スターラーで2時間撹拌した。その後、分液漏斗で下層の有機層を、直径30cmの時計皿(200cm3)3個に分けて注ぎ、キムワイプで蓋をして2日間ドラフト内で乾燥させた。析出した固体をクロロホルムで洗浄しジチゾンを除き、ジヒドロジチゾンを得た。
【0042】
(2)クロロメチルスチレン樹脂へのジヒドロジチゾンの修飾
100cm3のジメルホルムアルデヒド(DMF)に10gのクロロメチルスチレン樹脂を加え500cm3メスフラスコに入れた。次に100cm3のDMFにジヒドロジチゾンを4g溶かし、上記の500cm3メスフラスコに加えた。これをアルミホイルで、覆って光を遮り、14日間振とうし、目的物を得た。
【0043】
(3)ジヒドロジチゾン部分の還元
上の反応で得られた生成物を濾過し5g分を計りとり、500cm3のDMF、250cm3のDMFと250cm3の水との混合物、500cm3の水、500cm3の1.0M塩酸溶液、500cm3の水の順に洗浄した。次に100cm3の0.5Mアスコルビン酸と50cm3の1.0M水酸化ナトリウム溶液を三角フラスコで混合した。そこへ洗浄済みの生成物を加え、30分間振とうした。ジヒドロジチゾン部分がジチゾンに還元され、目的のジチゾン結合捕集材を得た。
【0044】
(4)ジチゾン結合捕集材の評価
濃度1.0×10
-4(mol/dm
3)のPt
4+、濃度1.0×10
-4(mol/dm
3)のPt
2+、濃度1.0×10
-4(mol/dm
3)のPd
2+、濃度2.7×10
-3(mol/dm
3)のSnCl
2、濃度0.1~6(mol/dm
3)のHCl、濃度0.05(mol/dm
3)のNH
4Clをそれぞれ別々に含む水相を複数調整し、これらに上記で合成したジチゾン結合樹脂カラムを20cm
3当たり0.05g加え、120分振とうした。その後、ジチゾン結合捕集材を濾過し、溶液中の金属イオン濃度をICP発光分光分析装置(以下、ICP-OESと記す)で測定した。Pt
2+、Pt
4+、Pd
2+の捕集率を
図2に示す。
図2において●はPt
2+、■はPd
2+、▲はPt
4+を示す。
【0045】
以上から、上記で作製したジチゾン結合捕集材は、二価の白金族金属イオンPt2+とPd2+を高い捕集率で捕集できることを確認した。
【0046】
2.共存イオンの影響の確認
Pt、Pd含有廃棄物に含まれているCo
2+、Ni
2+、Cu
2+、及びZn
2+がジチゾン結合捕集材による捕集にどのような影響を与えるのか調べた。溶液は、濃度1.0×10
-4mol/dm
3の金属イオン(Co
2+、Ni
2+、Cu
2+、及びZn
2+)、濃度0.1~6.0mol/dm
3のHClで調製した。捕集材0.05gと溶液20cm
3を遠心沈殿管にとり、2時間振とうした。振とう後、ジチゾン結合捕集材をろ過し、ろ液の金属イオン濃度をICP-OESでそれぞれ測定した。これらの測定結果を
図4、
図5、
図6、および
図7に示す。これらの図から、金属イオンCo
2+、Ni
2+、Cu
2+、及びZn
2+はほとんど捕集されないことがわかった。このことから、ジチゾン結合捕集材によるPt、Pdの捕集には影響を与えないことが示された。
【0047】
3.高濃度廃液のPt沈殿剤として用いられるNH
4
Clの影響の確認
高濃度廃液のPt沈殿剤として用いられているNH
4Clがジチゾン結合捕集材の捕集にどのような影響を与えるのか調べた。溶液は、濃度1.0×10
-5mol/dm
3のPt
4+、濃度2.7×10
-4mol/dm
3になるように加えた10%SnCl
2溶液、濃度0.1~6.0mol/dm
3のHClで調製した。また、上記溶液に、濃度0.05mol/dm
3のNH
4Clを加えた溶液も調製した。捕集材0.05gと溶液20cm
3を遠心沈殿管にとり、2時間振とうした。振とう後、捕集材をろ過し、ろ液のPt濃度をICP-OESで測定した。その結果を
図8に示す。
図8の●のデータはNH
4Clが0.05mol/dm
3、○のデータはNH
4Clが0mol/dm
3の場合である。
図8より、高濃度廃液のPt沈殿剤のNH
4Clが溶液中に含まれていてもPt
2+の捕集率に大きな変化はなかった。このことから、NH
4ClはPt
2+の捕集に大きな影響を与えないことが示された。
【0048】
4.カラム法による測定
ジチゾン結合捕集材を4g充填したカラム中に各種金属イオン(Pt
4+、Pd
2+、Co
2+、Ni
2+、Cu
2+、及びZn
2+)の入った溶液を流して捕集能を調べた。溶液は400cm
3を流した。溶液は、それぞれ濃度1.0×10
-4mol/dm
3の各金属イオン(Pt
4+、Pd
2+、Co
2+、Ni
2+、Cu
2+、及びZn
2+)、濃度2.0mol/dm
3のHClで調製した。また、それぞれ濃度1.0×10
-4mol/dm
3の各金属イオン(Pt
4+、Pd
2+、Co
2+、Ni
2+、Cu
2+、及びZn
2+)、還元剤として濃度2.7×10
-4mol/dm
3になるように加えた10%SnCl
2溶液、濃度2.0mol/dm
3のHClで調製した溶液に関しても調べた。その結果(還元剤なし)を
図9に示す。
図9より明らかなように、カラム法でもPd
2+の捕集率はほぼ100%だった。還元剤を入れていないのでPt
4+では捕集率は30%程度で収束した。その他4種類のイオン(Co
2+、Ni
2+、Cu
2+、及びZn
2+)はほとんど捕集されなかった。
【0049】
また、
図10は還元剤としてSnCl
2溶液を入れた溶液での結果である。
図11でも、Pd
2+の捕集率はほぼ100%だった。還元剤を入れるとPt
4+が還元されてPt
2+に変わる。そして捕集率は、流し始めは90%程度を示し、徐々に低下、300cm
3までには70%程度、その後50%程度で収束した。その他4種類のイオン(Co
2+、Ni
2+、Cu
2+、及びZn
2+)はほとんど捕集されなかった。
【符号の説明】
【0050】
1 分離回収システム
2 前処理試薬結合樹脂カラム
3 第1のジチゾン結合樹脂カラム
4 還元機構
5 第2のジチゾン結合樹脂カラム
11 分離回収システム
12 第1のジチゾン結合樹脂カラム
13 還元機構
14 第2のジチゾン結合樹脂カラム
A 高濃度廃液
B 低濃度廃液
C 処理廃液
D 処理廃液
E 還元処理廃液
F 廃液
P 低濃度廃液
Q 処理廃液
R 還元処理廃液
S 廃液