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特許7360113呼気サンプルを用いた揮発性有機化合物(VOC)の迅速な検出および定量化のための技術
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  • 特許-呼気サンプルを用いた揮発性有機化合物(VOC)の迅速な検出および定量化のための技術 図1
  • 特許-呼気サンプルを用いた揮発性有機化合物(VOC)の迅速な検出および定量化のための技術 図2
  • 特許-呼気サンプルを用いた揮発性有機化合物(VOC)の迅速な検出および定量化のための技術 図3
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  • 特許-呼気サンプルを用いた揮発性有機化合物(VOC)の迅速な検出および定量化のための技術 図4B
  • 特許-呼気サンプルを用いた揮発性有機化合物(VOC)の迅速な検出および定量化のための技術 図4C
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  • 特許-呼気サンプルを用いた揮発性有機化合物(VOC)の迅速な検出および定量化のための技術 図6
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  • 特許-呼気サンプルを用いた揮発性有機化合物(VOC)の迅速な検出および定量化のための技術 図10
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-03
(45)【発行日】2023-10-12
(54)【発明の名称】呼気サンプルを用いた揮発性有機化合物(VOC)の迅速な検出および定量化のための技術
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/02 20060101AFI20231004BHJP
   G01N 1/22 20060101ALI20231004BHJP
   G01N 21/3586 20140101ALI20231004BHJP
   G01N 27/62 20210101ALI20231004BHJP
   G01N 33/497 20060101ALI20231004BHJP
【FI】
G01N1/02 W
G01N1/22 L
G01N21/3586
G01N27/62 V
G01N33/497 A
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2021529539
(86)(22)【出願日】2019-07-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-02
(86)【国際出願番号】 IB2019056456
(87)【国際公開番号】W WO2020026120
(87)【国際公開日】2020-02-06
【審査請求日】2022-07-28
(31)【優先権主張番号】62/712,941
(32)【優先日】2018-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518137106
【氏名又は名称】ユニバーシティー・オブ・ノース・テキサス
(73)【特許権者】
【識別番号】521044408
【氏名又は名称】インスペクター・システムズ,エルエルシー
【住所又は居所原語表記】8000 Warren Parkway,Suite 350,Frisco,Texas 75034,United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100219542
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 郁治
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】バーベック、グイド・フリドリン
(72)【発明者】
【氏名】レッドモンド、ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ウィング、ティム
【審査官】外川 敬之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0023453(US,A1)
【文献】特表2013-504074(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/02
G01N 33/497
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
呼気サンプルを分析するシステムであって、
サンプリングチャンバと、
前記サンプリングチャンバに結合され、呼気サンプルを収容し、前記呼気サンプルを前記サンプリングチャンバに提供するように構成された入口と、
前記サンプリングチャンバ内に配置された分子収集器と、ここで、前記分子収集器は、前記呼気サンプル中に存在する揮発性有機化合物(VOC)を付着するように構成されており、
前記サンプリングチャンバ内に熱を導入するように構成された加熱要素と、ここで、前記VOCの少なくとも一部は、前記加熱要素によって前記サンプリングチャンバ内に導入された熱に基づいて前記分子収集器から放出されるものであり、
励起源と検出器を有するテラヘルツ(THz)分光計を備える分析デバイスと、を備え、
前記分析デバイスは、
前記分子収集器からの前記VOCの少なくとも一部の放出の後に、前記励起源によって前記サンプリングチャンバ内に励起信号を導入し、
前記分子収集器からの前記VOCの少なくとも一部の放出の後に、前記検出器によって前記サンプリングチャンバ中に存在する前記VOCの中から1つ以上の標的VOCを識別し、ここで、前記1つ以上の標的VOCは、前記励起信号に応答して、前記分子収集器から放出された前記VOCの少なくとも一部の励起に関係付けられた1つ以上の特性に基づいて識別されるものであり、そして、
前記1つ以上の標的VOCを表す出力を発生させる、
ように構成されている、システム。
【請求項2】
前記分子収集器は、炭素分子篩を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記加熱要素は、前記分子収集器に結合され、電圧を前記分子収集器に印加して前記サンプリングチャンバ内に熱を導入するように構成された電源を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記分析デバイスは、前記テラヘルツ分光計に通信可能に結合されたコンピューティングデバイスと、前記コンピューティングデバイスに通信可能に結合された出力デバイスとをさらに備え、
前記コンピューティングデバイスは、
1つ以上のプロセッサと、前記1つ以上のプロセッサに結合されたメモリとを含み、
前記1つ以上のプロセッサは、
前記検出器によって識別された前記1つ以上の標的VOCに関係付けられた情報に基づいて、前記1つ以上の標的VOCを表す前記出力を発生させ、
前記出力デバイスにおいて前記出力を表示する
ように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記1つ以上の標的VOCは、Δ-9-テトラヒドロカンナビノール(Δ-9-THC)を含み、前記分析デバイスは、Δ-9-THCとカンナビジオール(CBD)とを区別するように構成されている、請求項に記載のシステム。
【請求項6】
前記VOCの少なくとも一部の励起に関係付けられた前記1つ以上の特性は、吸光度特性を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記励起源はTHzレーザを備え、前記1つ以上の標的VOCは、Δ-9-テトラヒドロカンナビノール(Δ-9-THC)、11-ヒドロキシ-テトラヒドロカンナビノール(11-OH-THC)、カルボキシ-テトラヒドロカンナビノール(THC-COOH)、THC代謝産物、オピオイド、オピオイド代謝産物、又はこれらの組み合わせを含む、請求項に記載のシステム。
【請求項8】
前記VOCの少なくとも一部の励起に関係付けられた前記1つ以上の特性は蛍光発光特性を含む、請求項に記載のシステム。
【請求項9】
前記入口の第1の端部に取り外し可能に結合された使い捨てマウスピースをさらに備え、前記入口の第2の端部は前記サンプリングチャンバに結合されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記入口と前記サンプリングチャンバとの間の空気流路内に配置された弁をさらに備え、前記弁は、少なくとも第1の状態及び第2の状態に構成可能であり、前記第1の状態は、前記呼気サンプルが前記サンプリングチャンバ内に流れることを可能にするように構成された開放状態に対応し、前記第2の状態は、前記呼気サンプルの汚染を防止するように構成された閉鎖状態に対応する、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記サンプリングチャンバから非VOCを放出するように構成された出口をさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記1つ以上の標的VOCを表す前記出力は、前記呼気サンプルのソースに対する前記1つ以上の標的VOCの濃度を定量化する情報を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
前記呼気サンプルが1つ以上の基準を満たすかを決定するように構成されたセンサをさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
呼気サンプルを分析するための方法であって、前記方法は、
サンプリングチャンバにおいて、前記サンプリングチャンバに結合された入口を介して呼気サンプルを収容することと、ここで、前記サンプリングチャンバは、前記サンプリングチャンバ内に配置された分子収集器を備え、前記分子収集器は、前記呼気サンプル中に存在する揮発性有機化合物(VOC)を付着するように構成され、
加熱要素によって、前記サンプリングチャンバ内に熱を導入することと、ここで、前記VOCの少なくとも一部は、前記サンプリングチャンバ内に導入された前記熱に基づいて前記分子収集器から放出され、
分析デバイスによって、前記分子収集器からの前記VOCの少なくとも一部の放出の後に、前記サンプリングチャンバ中に存在する前記VOCの中から1つ以上の標的VOCを検出することと、ここで、前記分析デバイスは、テラヘルツ(THz)分光計を備え、前記1つ以上の標的VOCを検出することは、
前記分子収集器からの前記VOCの少なくとも一部の放出の後に、励起源によって、前記サンプリングチャンバ内に励起信号を送出することと、
前記テラヘルツ分光計の検出器によって、前記励起信号に応答して、前記分子収集器から放出された前記VOCの少なくとも一部の励起に関係付けられた1つ以上の特性に基づいて、前記1つ以上の標的VOCを識別することと、を備え、
前記分析デバイスによって、前記1つ以上の標的VOCを表す出力を発生させることと、ここで、前記1つ以上の標的VOCを表す前記出力は、前記呼気サンプルのソースに対する前記1つ以上の標的VOCの濃度を定量化する情報を含む
を備える、方法。
【請求項15】
前記1つ以上の標的VOCは、Δ-9-テトラヒドロカンナビノール(Δ-9-THC)を含み、前記識別することは、さらに、Δ-9-THCとカンナビジオール(CBD)とを区別することを備える、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記励起源はTHzレーザを備え、前記VOCの少なくとも一部の前記励起に関係付けられた前記1つ以上の特性は、吸光度特性若しくは蛍光発光特性、又はそれらの両方を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記1つ以上の標的VOCは、Δ-9-テトラヒドロカンナビノール(Δ-9-THC)、11-ヒドロキシ-テトラヒドロカンナビノール(11-OH-THC)、カルボキシ-テトラヒドロカンナビノール(THC-COOH)、THC代謝産物、オピオイド、オピオイド代謝産物、又はこれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記1つ以上の標的VOCは、さらに前記呼気サンプルの体積に基づいて識別される、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記分子収集器は、炭素分子篩を備える、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
命令を記憶する非一時的コンピュータ読取可能記憶媒体であって、前記命令が1つ以上のプロセッサによって実行されるとき、前記1つ以上のプロセッサに、呼気サンプルを分析するための動作を実行させるものであり、
前記動作は、
呼気サンプルがサンプリングチャンバに提供された後に、前記サンプリングチャンバ内に熱を導入するように構成された加熱要素をアクティブ化させることと、ここで、前記サンプリングチャンバは、前記サンプリングチャンバ内に配置された分子収集器を備え、前記分子収集器は、前記呼気サンプル中に存在する揮発性有機化合物(VOC)を付着するように構成されており、そして、前記VOCの少なくとも一部は、前記加熱要素によって前記サンプリングチャンバ内に導入された前記熱に基づいて前記分子収集器から放出され、
分析デバイスによって、分子収集器からの前記VOCの少なくとも一部の放出の後に、前記サンプリングチャンバ中に存在する前記VOCの中から1つ以上の標的VOCを検出することと、ここで、前記1つ以上の標的VOCは、Δ-9-テトラヒドロカンナビノール(Δ-9-THC)、11-ヒドロキシ-テトラヒドロカンナビノール(11-OH-THC)、カルボキシ-テトラヒドロカンナビノール(THC-COOH)、THC代謝産物、オピオイド、オピオイド代謝産物、又はこれらの組み合わせを含み、前記分析デバイスは、テラヘルツ(THz)分光計を備え、
前記1つ以上の標的VOCを検出することは、
前記分子収集器からの前記VOCの少なくとも一部の放出の後に、励起源によって、前記サンプリングチャンバ内に励起信号を送出することと、
前記テラヘルツ分光計の検出器によって、前記励起信号に応答して、前記分子収集器から放出された前記VOCの少なくとも一部の励起に関係付けられた1つ以上の特性に基づいて、前記1つ以上の標的VOCを識別することと、を備え、
そして、前記分析デバイスによって、前記1つ以上の標的VOCを表す出力を発生させることと、を備え、ここで、前記1つ以上の標的VOCを表す前記出力は、前記呼気サンプルのソースに対する前記1つ以上の標的VOCの濃度を定量化する情報を含む
非一時的コンピュータ読取可能記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
[0001] 本出願は、2018年7月31日に出願された米国仮特許出願番号第62/712,941号の優先権の利益を主張し、その全体が参照によりここに組み込まれている。
【技術分野】
【0002】
[0002] 本出願は、呼気分析計システムおよびデバイスに関する。より具体的には、本出願は、呼気サンプルを使用して現場で、THCおよび他の物質の定量分析を容易にするように設計された呼気分析計システムおよびデバイスに関する。
【背景】
【0003】
[0003] マリファナの合法化は、多くの司法上の問題を引き起こし、一般市民に対する安全性の懸念を提起している。毎日のマリファナのユーザは、2007年の米国の人口の9.8%から2014年に13.39%へと増加している。これはわずか3.6%の増加であるが、マリファナの精神活性化物質であるΔ-9-テトラヒドロカンナビノール(Δ-9-Tetrahydrocannabinol)(Δ-9-THC)の効力も、2001年の5%から、マリファナの葉では20%を超えて、生エキスでは60%を超えて増加した。効力の増加は、地域人口に対する犯罪報告の増加をもたらした。具体的には、高密度のマリファナ薬局を有するエリアは、薬局を有するすべての州の間でより高い窃盗犯罪率を有していた。マリファナの合法化に関する別の問題は、自動車を運転している間のマリファナの影響である。マリファナのユーザは、酔っていない運転者よりも自動車事故に遭う可能性が25%高く、週末の全運転者の10%超が違法薬物を摂取した状態にある。マリファナがより多くの州で合法化されるにつれて、人がマリファナを摂取した状態であるかの正確かつ迅速な決定を達成できるように、Δ-9-THCの適切な定量化が必要とされる。これはまた、濃度を正確に決定することができ、車両を運転するためにΔ-9-THCの設定限界を決定することを可能にするデバイスを有することにおいて、司法システムを支援する。
【0004】
[0004] 現在、血中のカンナビノイド(cannabinoid)濃度を決定するために3つのカンナビノイド化合物が分析されており;これらは、Δ-9-THC、11-ヒドロキシ-テトラヒドロカンナビノール(11-hydroxy-tetrahydrocannabinol)(11-OH-THC)、およびカルボキシ-テトラヒドロカンナビノール(carboxy-tetrahydrocannabinol)(THC-COOH)である。現在、カンナビノイドのようなの薬物の存在を決定するための技術は、血液、血漿、尿、または口腔液サンプルを介した分析を必要とする。ほとんどの分析技術は、質量分析(GC/MS)と結合されたガスクロマトグラフィーを使用する。これは、サンプルを収集し、それをさらなる分析のために実験室に戻さなければならないという問題を提示する。これらの技術は長い分析時間を有し、ほとんどの分析はカンナビノイドを検出するのに15分より長くかかる。さらに、GC/MSを用いてΔ-9-THCを検出することは、イオン化源が電子イオン化(EI)であるため、別の問題をもたらすこともある。大麻植物から抽出されたレジンであるカンナビジオール(Cannabidiol)(CBD)は、Δ-9-THCと同じ分子量を有するとともに、電子イオン化を用いてイオン化されたとき、同じ質量スペクトルフラグメント化パターンを有する。規制物質法の下で、CBDは、マリファナの誘導体であるため、スケジュールI薬物として分類される。しかしながら、2014年の農業法は、工業用大麻が市場調査の目的で栽培され、販売されることを可能にしている。いくつかの州は、この法案を、農業家がCBDを合法的に販売するために契約する権利と見なしている。これは、人の呼気中のΔ-9-THCの量を定量化する際に課題を生じさせる。なぜなら、信号は、人の呼気中のCBDの結果であるかもしれず、これらは合法的に得ることができるからである。
【0005】
[0005] 体内のΔ-9-THCの法的限界に関する法律がいくつかの州で確立されている。12の州が0許容ポリシーを有し、これは、運転中に誰もカンナビノイドを血液に有するべきでないことを述べている。しかしながら、5つの州が医療用マリファナの使用を可能にしている。患者がマリファナを摂取した状態で運転している(DUIM)と考えられ得ることから、治療を受け、その後、その日の内に、または週の後半に運転しなければならない患者にとってこれは問題を引き起こす。3つ全てのカンナビノイドについて試験する分析技術は、精神活性ではないTHC-COOHが、Δ-9-THCおよび11-OH-THCの両方が血液中に残った後も長く血液中に残るため、問題となり得る。人は、精神活性効果を経験していなくても、カンナビノイド試験ではねられることがある。他の州は、自ら、血中大麻含量(BCC)法を採用している。これらの選択状態はそれぞれ独自の限界を有し、全体の範囲は、1ミリリットルの血につき1ナノグラムのTHCから(ng/ml)から5ng/mlの間である。運転者がこれらの値よりも高い濃度を有する場合、運転者はDUIMと見なされ、これは、酩酊している間の運転と同様のペナルティを与える。残念ながら、Δ-9-THC濃度を正確かつ迅速に検出することができるデバイスはまだ開発されていない。
【0006】
[0006] 人の呼気からカンナビノイドを検出することは、現場での非侵襲性の迅速な決定を可能にするために必要とされる。カンナビノイドの呼気決定の以前の方法は、1972年に、比色試験を使用して薬物を摂取した状態である人の呼気中にマリファナが検出されたときに遡る。この試験では、呼気を採取し、キノン-4-ハロイミン、(quinone-4-haloimine)2,6-ジハロキノン-4-ハロイミン(2,6-dihaloquinone-4-haloimine)、水酸化ナトリウム、およびアンモニアとの一連の反応を用いて、呼気サンプルが青色または赤色に変化するかを決定した。これらの比色試験は、大きな反応槽中で行わなければならず、陽性結果を表す広範囲の色を有し、陽性反応を有するためには呼気中に少なくとも1マイクログラムのTHCを必要とした。これらの試験は、Δ-9-THCのレベルを定量化することができず、現場で使用することもできなかった。
【0007】
[0007] 現在、3つのタイプの呼気分析計、すなわち、質量分析に結合された液体クロマトグラフィ(LC/MS)、高磁場非対称波形イオン移動度(FAIMS)、および分光に結合された液体クロマトグラフィが、地方の法執行官によって使用されている。第1の企業であるSensabuesは、呼気サンプリングキットを利用する。人がサンプリングチャンバ内に息を吸い込み、次いで、装置はLC/MSを使用して分析されるように実験室に戻される。この方法は定量化には有用であるが、現場では使用することができず、この方法の妨げとなっている。加えて、カンナビノイドを見ることができる前に、サンプルが実験室に到達したら、LCMSは、サンプルを分析するのに数分を必要とする。他の2つの会社が、現場測定が可能なシステムを提供している。Cannabix Technologies Inc.は、University of FloridaのYost research groupと連携して、高電界非対称波形イオン移動度分光分析(FAIMS)を利用するΔ-9-THC用の携帯型呼気分析計を作成した。このデバイスは、2分の時間窓でサンプルを分析することができ、サンプル中のΔ-9-THCを100万分の10(ppm)の濃度で検出し、定量化することができる。このデバイスは携帯性の問題を克服するが、FAIMSは、Δ-9-THCの濃度を決定するために必要な、同じ分解能またはピーク容量を含まない。適切な分解能がなければ、器具はタバコの煙の化合物を大麻の煙から区別することができないであろう。さらに、ピーク容量がなければ、違法薬物のような他の化合物が見落とされるかもしれず、異なる違法物質を摂取した状態である間に運転者が運転を継続することを可能にする。別の企業であるHound Labs Inc.は、分光と結合した液体クロマトグラフィも利用して、Δ-9-THCのパラ位に蛍光付加物をリンクすることによってΔ-9-THCの存在を検出するハンドヘルド器具を開発した。このデバイスは、ピコグラム量のΔ-9-THCのみを必要とし、人の呼気を捕捉し、呼気をC18培地上に凝縮することによって機能する。次いで、培地をTLCプレートに移し、ここで溶媒混合物を投与し、数分後に蛍光標識をTLCプレート全体に置く。蛍光標識は、Δ-9-THCに特に結合し、次いで、ダイオード励起固体レーザを用いて励起される。この励起状態は、スペクトルのシフトをもたらし、既知のΔ-9-THCを参照することができる。この方法は、サンプルを分析するのに8分より長くかかり、分析が行われるたびに既知の基準の使用を必要とする。
【0008】
[0008] 今世紀の始まり以来、一般市民の合成オピオイド過剰摂取の数は200%上昇しており、2014-2016からは、全薬物過剰摂取の50%がオピオイドに起因していた。2009-2012年の間に27%から42%に増加するオピオイド過剰摂取の着実な上昇を軍の救急部門が記録したことから、軍人もまた、オピオイド過剰摂取が増加している。一般市民および軍人の両方の間で非常に多くのオピオイド過剰摂取が生じているため、改善された検出方法が必要となるのは当然である。ほとんどの薬物取締まり機関は、質量分析に結合されたガスクロマトグラフィー(GC/MS)または質量分析に結合された液体クロマトグラフィ(LC/MS)を使用してのみオピオイドを分析することができる。メタドンおよびフェンタニルのようなオピオイドは、人体に入るとすぐにヒドロキシル化される。水酸化のこのプロセスは、プロピオン酸のような揮発性有機化合物(VOC)を生成する代謝回路を開始する。これらのVOCを検出するために使用された以前の方法は、GC/MSに結合された固相マイクロ抽出(SPME)技術によるものであった。残念ながら、これらの方法は、10分までの長い平衡時間を必要とする。
【発明の概要】
【0009】
[0009] 呼気サンプルからのカンナビノイドおよび他の物質の、改善された現場での定量化のための技術を提供するシステム、装置、方法、およびコンピュータ読取可能記憶媒体を開示する。本開示の例示的な呼気分析システムおよび装置は、呼気サンプルを収容し、呼気サンプルをサンプリングチャンバに提供するように構成された入口を有するサンプリングチャンバを含むことができる。分子収集器は、サンプリングチャンバ内に配置されてもよい。分子検出器は、サンプリングチャンバに導入された呼気サンプル中に存在する揮発性有機化合物(VOC)が分子収集器に付着するように構成されてもよい。呼気分析システムおよび装置は、サンプリングチャンバ内に熱を導入または誘導するように構成された加熱要素を含むことができ、これは、分子収集器に付着したVOCの少なくとも一部の吸収をもたらすことができる。例示的な呼気分析システムおよび装置は、分子収集器から放出されたVOCの少なくとも一部の中から1つ以上の標的VOCを識別し、識別された1つ以上の標的VOCを表す出力を発生させるように構成された分析デバイスを含むことができる。出力は、サンプリングチャンバに提供された呼気サンプルに対する呼気サンプルのソースに対する1つ以上の標的VOCの濃度を定量化する情報を含んでもよい。態様では、分析デバイスは、質量分析計またはテラヘルツ(THz)分光計を使用して1つ以上の標的VOCを識別することができる。
【0010】
[0010] 前述のものは、以下の本発明の詳細な説明がより良く理解できるように、本願の特徴および技術的利点をどちらかといえば広く概説している。本発明の特許請求の範囲の主題を形成する、本発明の追加の特徴および利点が以下で説明されるだろう。開示される概念および特定の実施形態が同じ本開示の目的を達成する他の構造を変形または設計するためのベースとして容易に利用できることが、当業者によって認識されるべきである。このような等価の構造が、添付された特許請求の範囲に示される本開示の精神および範囲から逸脱しないことも、当業者によって理解されるべきである。本発明の構成および動作の方法の両方について、本発明の特徴であると考えられる新規な特性は、さらなる目的および利点とともに、添付の図面と関連して考慮されるとき、以下の説明からより良く理解されるであろう。しかしながら、図面のそれぞれは、例示および説明のためだけに提供されており、本開示の限定の定義として意図されていないということは明示的に理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
[0011] 本発明のより完全な理解のために、添付図面と合わせて、以下の説明への参照がなされる。
図1】[0012] 図1は、本開示の態様にしたがう呼気サンプルを分析するためのシステムのブロックダイヤグラムを図示している。
図2】[0013] 図2は、本開示の態様にしたがう呼気サンプルを分析するための質量分析計ベースのシステムのダイヤグラムを図示している。
図3】[0014] 図3は、本開示の態様にしたがう呼気サンプルを分析するためのテラヘルツ分光計ベースのシステムのダイヤグラムを図示している。
図4A】[0015] 図4Aは、本開示の態様にしたがって構成されたシステムにおいて呼気サンプルを収容する態様を図示するダイヤグラムである。
図4B】[0016] 図4Bは、本開示の態様にしたがって構成されたシステムにおいて収容された呼気サンプル分子の反応の態様を図示するダイヤグラムである。
図4C】[0017] 図4Cは、本開示の態様にしたがって構成された質量分析計ベースのシステムを使用して呼気サンプル分子を分析する態様を図示するダイヤグラムである。
図4D】[0018] 図4Dは、本開示の態様にしたがって構成されたテラヘルツ(THz)分光計ベースのシステムを使用して呼気サンプル分子を分析する態様を図示するダイヤグラムである。
図5】[0019] 図5は、健康な呼気サンプルについて観測されたVOCを図示するグラフである。
図6】[0020] 図6は、季節性アレルギーに罹患している人の呼気サンプルについて観測されたVOCを図示するグラフである。
図7】[0021] 図7は、マウスウォッシュを使用した後の人の呼気サンプルについて観測されたVOCを図示するグラフである。
図8】[0022] 図8は、トルエン、ベンゼン、およびキシレンについて観測されたVOCを図示するグラフである。
図9】[0023] 図9は、マリファナサンプルについて観測されたVOCを図示するグラフである。
図10】[0024] 図10は、本開示の1つの態様にしたがって呼気サンプルを分析するための方法のフローダイヤグラムである。
【詳細な説明】
【0012】
[0025] 様々な特徴および有利な詳細が、添付の図面に示され、以下の説明において詳述される非限定的な実施形態を参照してより完全に説明される。周知の出発物質、処理技術、コンポーネントおよび機器の説明は、詳細な本発明を不必要に不明瞭にしないように省略される。しかしながら、詳細な説明および特定の例は、本発明の実施形態を示しているが、実例としてのみ与えられ、限定として与えられないことを理解すべきである。基礎となる発明概念の精神および/または範囲内の様々な置換、修正、追加、および/または再配置が、本開示から当業者に明らかになるであろう。
【0013】
[0026] 図1を参照すると、本開示の態様にしたがう、呼気サンプルを分析するためのシステムのブロックダイヤグラムが、システム100として示されている。図1で図示されているように、システム100は、サンプリングチャンバ110と分析デバイス120を含む。態様では、サンプリングチャンバ110は、システム100の取り外し可能および/または使い捨てコンポーネントとして構成されてもよい。このような配置では、サンプリングチャンバ110は、分析デバイス120に取り外し可能に結合されてもよい。システム100の取り外し可能なコンポーネントとしてサンプリングチャンバ110を構成することは、分析デバイス120によって分析される連続的な呼気サンプルの汚染を防止できる。例えば、第1のサンプリングチャンバは、第1の人によって提供される呼気サンプルの分析を実行するために利用されてもよく、第2のサンプリングチャンバは、第2の人によって提供される呼気サンプルの分析を実行するために利用されてもよい。異なる呼気サンプルに対して異なるサンプリングチャンバを使用することは、1つの呼気サンプルが別の呼気サンプルを潜在的に汚染することを防止する。サンプリングチャンバ110が使い捨てコンポーネントとして構成される場合、サンプリングチャンバは、使用後に、または(例えば、証拠目的のために)サンプリングチャンバを保持するために法執行機関によって必要とされる時間量のような所望の時間が経過した後に、廃棄されてもよい。サンプリングチャンバ110が再使用可能なコンポーネントとして構成される場合、サンプリングチャンバ110は、必要に応じて、洗浄され、その後の再使用のために準備されてもよい。態様では、分析デバイス120の一部はまた、複数の呼気サンプルを分析するために利用される場合に汚染されるかもしれない分析デバイス120の部分のような、使い捨ておよび/または再使用可能なコンポーネントとして構成されてもよい。一態様では、サンプリングチャンバは、呼気サンプルを取得するために利用されてもよく、次いで分析のために分析デバイス120内に配置されるかまたはそれに結合されてもよいカートリッジとして構成されてもよい。例えば、分析デバイス120は、法執行車両中に設置されてもよく、法執行当局は、DUIMの疑いのある人に、カートリッジに呼気サンプルを提供させ、次いで、本開示の態様にしたがう分析を促進するように、カートリッジを分析デバイス120に結合させてもよい。上述の例示的な構成は、限定ではなく例示を目的として提供されており、本開示にしたがう呼気分析システムのコンポーネントを配置、結合、および/または統合するための多数の他の方法が利用されてもよいことに留意されたい。
【0014】
[0027] 図1に示すように、サンプリングチャンバ110は、外面104および内面106を有するハウジングを備えることができる。ハウジングの内面106は、サンプリングチャンバの容積を規定することができる。入口112は、サンプリングチャンバ110に結合されてもよい。入口112は、呼気サンプル102を収容し、呼気サンプル102をサンプリングチャンバ110に提供するように、より具体的には、呼気サンプル102をサンプリングチャンバの容積に提供するように構成されてもよい。態様では、使い捨てマウスピース(図1に図示せず)は、入口112の第1の端部に取り外し可能に結合されてもよく、入口112の第2の端部は、サンプリングチャンバ110に結合されてもよい。代替として、入口112の第1の端部は、マウスピースとして利用されてもよく、入口112の第2の端部は、サンプリングチャンバ110に結合されてもよい。弁113は、入口112とサンプリングチャンバ110との間の空気流路内に配置されてもよい。弁113は、少なくとも第1の状態および第2の状態に構成可能であってもよい。第1の状態は、呼気サンプル102がサンプリングチャンバ110に流入することを可能にするように構成された開状態に対応してもよく、第2の状態は、いったん呼気サンプル102が提供されると周囲空気がサンプリングチャンバ110に入ることを防止することなどによって、呼気サンプル102の汚染を防止するように構成された閉状態に対応してもよい。一態様では、サンプリングチャンバ110は、図4Aを参照して以下で図示および説明するように、サンプリングチャンバ110から非VOCを放出するように構成された出口を含むことができる。システム100はまた、呼気サンプルが1つ以上の基準を満たすかを決定するように構成されたセンサ115を含むことができる。例えば、センサ115は、呼気サンプル102が十分な力をかけられたか、十分な体積を有するか等を決定するように構成されてもよく、これは、呼気サンプル102が本開示の態様にしたがう分析を容易にするのに十分であることを確実にできる。
【0015】
[0028] 分子収集器116は、サンプリングチャンバ110内に配置されてもよい。分子収集器116の少なくとも一部は、サンプリングチャンバ110の容積内に配置されてもよい。分子収集器116は、呼気サンプル中に存在する揮発性有機化合物(VOC)に付着するように構成されてもよい。例えば、分子収集器116は、Carboxen(登録商標)のような材料から構築されてもよい。分子収集器116は、単一の材料(例えば、上述の材料のうちの1つ)から形成されてもよく、または上述の材料のうちの1つ以上でコーティングされたベース材料のような複数の材料から形成されてもよいことに留意されたい。いくつかの態様では、分子収集器116は、上述の材料から形成されたプレートまたはロッドのような固体フォームファクタを有することができ、または上述の材料から形成されたメッシュのような別のフォームファクタを有することができる。サンプリングチャンバ110はまた、サンプリングチャンバ110内に熱を導入するように構成された加熱要素118を含むか、またはそれに結合されてもよい。例えば、加熱要素118は、分子収集器116に結合され、電圧を分子収集器116に印加するように構成された電源を含むことができる。電圧を分子収集器116に印加することは、分子収集器を加熱し、それによって、サンプリングチャンバ110内に熱を導入してもよい。以下でより詳細に説明するように、サンプリングチャンバ110内に導入された熱は、分子収集器116に付着したVOCをサンプリングチャンバの容積内に放出させ、それによって、サンプリングチャンバ110内に存在するVOCのうちの1つ以上の分析および識別を容易にすることができる。
【0016】
[0029] システム100は、分析デバイスを含むことができる。分析デバイス120は、分子収集器116からのVOCの少なくとも一部の放出の後(例えば、加熱要素118によって提供または導入される熱に起因して)、サンプリングチャンバ110中に存在するVOCの中から1つ以上の標的VOCを識別するように構成されてもよい。加えて、分析デバイス120は、1つ以上の標的VOCを表す出力を発生させるように構成されてもよい。図1に示すように、分析デバイス120は、1つ以上のプロセッサ122、メモリ130、分析コンポーネント124、および1つ以上の入力/出力(I/O)デバイス126を含むことができる。メモリ130は、命令132を記憶していてもよく、命令が1つ以上のプロセッサ122によって実行されるとき、1つ以上のプロセッサ122に、呼気サンプル102の1つ以上の標的VOCを分析および識別することに対して、分析デバイス120、および場合によっては加熱要素118のようなシステム100の他のコンポーネントの動作を制御させる。1つ以上の標的VOCは、Δ-9-テトラヒドロカンナビノール(Δ-9-THC)、THC代謝産物、オピオイド、オピオイド代謝産物、またはこれらの組み合わせを含んでいてもよい。
【0017】
[0030] I/Oデバイス126は、システム100の動作に関連して入力を受信し、および/または出力を提供するように構成されたスイッチ、ボタン、ライト、ディスプレイデバイス、または他の制御要素を含んでいてもよい。例えば、スイッチおよび/またはボタンは、システム100の電源をオンおよびオフにするために、呼気サンプルが提供されたことを示すために、識別されるべき1つ以上の標的VOCを識別するため、または他の機能および制御特徴のために提供されてもよい。システム100が電源オンまたは電源オフされていることを示すために、(例えば、センサ115から受信した情報に基づいて)提供された呼気サンプルが十分であるかを示すために、識別されたVOCを示すために(例えば、異なるライトが、システム100によって識別されてもよい、異なるVOCに関係付けられてもよい)、またはシステム100の動作に関係付けられた他の情報を提供するために、ライトが提供されてもよい。識別されたVOCを示し、(例えば、ライトまたは他のステータス情報に関して上述した異なる特徴のうちの1つ以上を示す情報を提供する)システム100の動作状態を、およびこれらに類するものを示すような情報を表示するために、1つ以上のディスプレイデバイスをさらに設けることができる。分析コンポーネント124は、呼気サンプル102の1つ以上の標的VOCを識別するように構成された質量分析計またはテラヘルツ(THz)分光計を含むことができる。
【0018】
[0031] 図2を参照すると、質量分析計ベースの分析コンポーネントを利用するシステム100の例示的な態様が図示されている。図1および図2において、同様の参照番号は、同様のコンポーネントを指すために利用されることに留意されたい。図2に示すように、分析コンポーネント124は、イオナイザ222、質量分析器224、および検出器226を含むことができる。上述のように、呼気サンプル102は、弁113が開状態にあるときに、マウスピース210を介して入口112に提供されてもよい。呼気サンプル102がサンプリングチャンバ110の容積に供給された後、加熱要素118(図2には図示せず)をアクティブ化し、分子収集器116に付着したVOCの吸収をもたらすことができる。出口204を利用して、放出されたVOCを分析コンポーネント124に提供することができる。弁213は、分析コンポーネントへのVOCの提供を制御するために、第1の状態(例えば、開放状態)および第2の状態(例えば、閉鎖状態)に構成可能であってもよい。例えば、第1の状態では、VOCは、分析コンポーネント124へと出口204を通過することを可能にされてもよく、第2の状態では、VOCは、分析コンポーネント124へと出口204を通過することを防止されてもよい。イオナイザ222は、分子収集器から放出されたVOCの少なくとも一部をイオン化し、1つ以上のイオン化フラグメントを生成するように構成されてもよい。質量分析器224は、(例えば、1つ以上のイオン化フラグメントの質量電荷比にしたがって)1つ以上のイオン化フラグメントを分離するように構成されてもよく、検出器226は、分離された1つ以上のイオン化フラグメントに基づいて1つ以上の標的VOCを識別するように構成されてもよい。一態様では、質量分析計コンポーネント(例えば、イオナイザ222、質量分析器224、および検出器226)は、1つ以上のプロセッサ122、メモリ130、および1つ以上のI/Oデバイス126を含むコンピューティングデバイスのようなコンピューティングデバイスの制御下で、またはそれと協調して動作することができる。例えば、コンピューティングデバイスは、呼気サンプル102において識別された1つ以上の標的VOCに関係付けられた情報のような情報を質量分析計コンポーネントから受信してもよく、1つ以上の標的VOCに関係付けられた情報に基づいて1つ以上の標的VOCを表す出力を発生させてもよい。加えて、コンピューティングデバイスは、ディスプレイデバイスのような出力デバイスにおいて出力を表示するように構成されてもよい。
【0019】
[0032] 図3を参照すると、THz分光計ベースの分析コンポーネントを利用するシステム100の例示的な態様が図示されている。図1および図3では、同様の参照番号が同様のコンポーネントを指すために利用されることに留意されたい。図2に示すように、分析コンポーネント124は、励起源320および検出器322を含むことができる。上述のように、呼気サンプル102は、弁113が開状態にあるときに、マウスピース310を介して入口112に提供されてもよい。呼気サンプル102がサンプリングチャンバ110の容積に提供された後、加熱要素118(図3には図示せず)をアクティブ化し、分子収集器116に付着したVOCの吸収をもたらすことができる。励起源320は、分子収集器116からのVOCの少なくとも一部の放出の後、サンプリングチャンバ内に励起信号324を導入するように構成されてもよく、検出器322は、励起信号324に応答して分子収集器116から放出されるVOCの少なくとも一部の励起に関係付けられた1つ以上の特性に基づいて、1つ以上の標的VOCを識別するように構成されてもよい。一態様では、励起源320はTHzレーザデバイスであってよく、励起信号324はTHzレーザ信号であってよい。態様では、VOCの少なくとも一部の励起に関係付けられた1つ以上の特性は、吸光度特性および蛍光発光特性のうちの少なくとも1つを含むことができ、これは、以下でより詳細に説明するように、呼気サンプル102内に存在する1つ以上の標的VOCを識別するために利用することができる。一態様では、THz分光計コンポーネント(例えば、励起源320および検出器322)は、1つ以上のプロセッサ122、メモリ130、および1つ以上のI/Oデバイス126を含むコンピューティングデバイスのようなコンピューティングデバイスの制御下で、またはそれと協調して動作することができる。例えば、コンピューティングデバイスは、呼気サンプル102において識別された1つ以上の標的VOCに関係付けられた情報のような情報をTHz分光計コンポーネントから受信してもよく、1つ以上の標的VOCに関係付けられた情報に基づいて1つ以上の標的VOCを表す出力を発生させてもよい。加えて、コンピューティングデバイスは、ディスプレイデバイスのような出力デバイスにおいて出力を表示するように構成されてもよい。
【0020】
[0033] 図1に戻って参照すると、1つ以上の標的VOCを表す出力は、呼気サンプルのソースに対する1つ以上の標的VOCの濃度を定量化する情報を含むことができる。この情報は、呼気サンプル102を提供した人のような呼気サンプルのソースが損なわれているか、または1つ以上の物質(例えば、識別された1つ以上の標的VOCに対応する物質)を摂取した状態であるかの決定を容易にすることができる。1つ以上の標的VOCの濃度を定量化する情報を提供することによって、ソースが損なわれているか、または物質を摂取した状態であるかのより正確な決定がされてもよい。さらに、(図2または図3のいずれかにしたがって構成されるような)システム100によって利用される技術は、VOCレベルのより迅速な識別および定量化を容易にでき、それによって、ソースが損なわれているか、またはTHCのような1つ以上の物質を摂取した状態であるかについての現場での決定を容易にする。例えば、完了するのに長い時間がかかる、特定のVOCを定量的に分析することができる既存のシステムとは異なり、システム100は、数秒でのVOCの決定および量子化を容易にすることができ、それにより、法執行当局によるような、現場での実用化を容易にする。
【0021】
[0034] 図4A図4Dを参照すると、本開示の態様にしたがう、呼気サンプル中に存在するVOCを分析するためのシステムの様々な態様が示されている。図4Aに示されるように、呼気サンプルは、入口112を介してサンプリングチャンバ110に提供されてもよい。呼気サンプルは、図4Aに示す例示的なVOC404、406、408のような1つ以上のVOCを含むことができる。さらに、呼気サンプルは、CO402のような他のガスを含んでいるかもしれない、非VOCを含んでいてもよい。一態様では、サンプリングチャンバ110は、サンプリングチャンバ110から非VOCを放出するように構成された出口410を含むことができる。出口410は、図2の出口204と同じではないことに留意されたい。図4Bに示されるように、呼気サンプル中に存在するVOC404、406、408は、分子収集器116に付着してもよい。図4Cでは、加熱要素118(図4A-4Dには図示せず)がアクティブ化されており、サンプリングチャンバ110内に熱を導入し、これは、VOCを分子収集器116から放出させる。VOCが分子収集器116から放出された後、VOC(またはVOCの少なくとも一部)は、図2を参照して上述したように、分析のために、出口204(図4Cには図示せず)を介して、図2に図示した分析デバイスのような質量分析計ベースの分析デバイスに提供されてもよい。図4Dでは、加熱要素118(図4A-4Dには図示せず)がアクティブ化されており、サンプリングチャンバ110内に熱を導入し、これは、VOCを分子収集器116から放出させる。VOCが分子収集器116から放出された後、VOC(またはVOCの少なくとも一部)は、図2を参照して上述したように、分析のために、図3に図示した分析デバイスのようなTHz分光計ベースの分析デバイスに提供されてもよい。例えば、図4Dに図示されるように、励起信号324は、サンプリングチャンバ内に提供または投影されてもよい。以下に説明されるように、励起信号324によるVOCの励起は、サンプリングチャンバ110に提供される呼気サンプル中に存在する1つ以上の標的VOCを識別するために、検出器322によって利用されてもよい。
【0022】
[0035] THz分光計ベースのシステムは、既存のシステムと比較していくつかの利点を提供できることに留意されたい。例えば、THz分光計を使用することは、呼気サンプルの迅速な分析を容易にすることができ、これは、わずか数秒で完了することができ、地方の法執行車両で輸送することができる携帯型システムを容易にすることができる。さらに、THz分光法ベースのシステムは、分子中の結合が異なるため、Δ-9-THCとCBDとを区別することができる。THz分光法または遠赤外線分光法は、回転運動を含む双極子を有する化合物を識別するために使用されてもよい。分光範囲は、3mm-30μmまたは0.1-10THzで動作するマイクロウェーブ領域と赤外線領域との間にある。THz分光計ベースのシステムの別の有利な態様は、VOCのような化合物が識別されてもよい粒度である。例えば、THz時間領域分光法(THz-TDS)は、1兆分の1程度の低い濃度の化合物を検出することができる。THz-TDSは、チタンサファイアレーザであってもよいパルスフェムト秒レーザを発することによって機能する。レーザは、遅延線で分割された後、2つの光伝導アンテナに送られ、結果としてプローブビームおよびポンプビームが生じる。ポンプビームは、ガリウムヒ素(GaAs)から形成されてもよい非線形結晶を励起し、信号をサンプリングチャンバ110内の容積のようなサンプリング空間に集束させる。プローブビームは、THz放射を検出する第2の光伝導アンテナに信号を送る。サンプルのスペクトルを得るために、サンプルの前にブランクを取らなければならず、これはサンプルのTHzスペクトルから差し引くための基準として作用する。THz-TDSは、分子のねじれ変形および分子の分子間結合を決定するのに有用である。呼気のような気相化合物を分析する利点は、分子間結合相互作用が気相中でより弱く、ねじれおよび回転分光信号のみを残すことである。ガス分析のためのTHz-TDSが直面する1つの課題は、大気中に水が大量に存在することであり、これは、デバイスの高度に依存してデバイスの精度を変えるかもしれない。この問題は、分析前のバックグラウンドの収集によって、および、信号中の水を除去する、真空またはヘリウムのような乾燥不活性ガスの使用によって、克服することができる。
【0023】
[0036] 呼気中のカンナビノイドの信号は、THZ-TDSを介した検出には低すぎるかもしれないが、適切な信号を達成するために事前濃縮器を使用することができる。以前は、LC/MSを用いたΔ-9-THCの分析において、事前濃縮デバイスが利用されていた。しかしながら、これらの事前濃縮デバイスは、水を保持し、揮発性有機化合物(VOC)の識別を損なうソーベント捕集材料を利用した。この課題を克服するために、上述の分子収集器116は、VOCを探すときに水を取り込む量を低減する炭素分子篩を利用することができる。炭素分子篩は、黒鉛面間で化合物を捕捉することによって機能し、分子のサイズに基づいて分子が速くまたは遅く拡散することを可能にする。黒鉛面が拡大すると、加熱要素が吸着剤に適用されるとき、分子は急速に放たれることができる。上述のように、本開示のシステムでは、炭素分子篩吸着剤から形成された、または炭素分子篩吸着剤でコーティングされた導体材料を、分子収集器として使用することができる。しかしながら、吸着剤のタイプに基づいて、材料は異なるレートでVOCを放出することができ、分離が依然として達成されることを可能にする。この脱着のプロセスは、迅速なガス分析技術において、ある炭素分子篩材料を他のものと区別する。態様では、分子収集器116は、Carboxen(登録商標)(例えば、Carboxen(登録商標)1000)のようなVOC脱着材から形成されてもよい。Carboxen(登録商標)は、放出時間に基づいて特定の分子を識別するための迅速なVOCガス分析において使用されてもよい。より大きい分子は、より小さい分子より速く黒鉛面から放たれず、より小さい化合物がより大きい分子より速く脱着し、分析されることを可能にする。
【0024】
[0037] 以下の説明では、図3を参照して上述したシステムと同様のカンナビノイド検出のためのTHz分光法ベースのシステムを、図2を参照して上述したシステムと同様のサーモフィッシャー PolarisQ質量分析計ベースのシステムと相互参照した。実験設定では、Carboxen(登録商標)1000被覆メッシュから形成された分子収集器を含むサンプリングチャンバを、加熱要素(例えば、24ボルト電源)に結合した。入口および交換可能なマウスピースをサンプリングチャンバに接続する弁が開いている状態で、人はサンプリングチャンバ内に息を吐き出し、Carboxen(登録商標)分子収集器上でVOCを捕捉する。他のVOCも分子収集器に付着したが、非VOCガスはサンプリング管の上および外に流れる(図4A)。息の吐き出しの完了後、弁を閉じて、任意の外部からの化合物が分子収集器上に堆積するのを防止する(図4B)。次いで、分子収集器に24ボルトを供給して、分子収集器を均一に加熱し、そこに付着した化合物の迅速な脱着を促進する。質量分析基準特徴付けのために、放出された化合物を、検出される信号のために質量分析計に提供する(図4C)。Carboxen(登録商標)から形成されるので、分子収集器は、より小さいVOCがより大きい化合物より速く放たれる分離技術も容易にする。これにより、カンナビノイドが分子収集器から放たれる適切な時間の決定が可能になる。いったん適切な時間が決定されると、THz分光計を使用して、他のバックグラウンド信号の存在なしにカンナビノイドの存在を決定し、正確で精密な測定を補助する。いったんカンナビノイドのこの時間基準が収集されると、サンプリングチャンバは、THz分光計ベースの分析デバイス内に配置され、励起信号(例えば、THzレーザ信号)が、分子収集器によって放たれるサンプルを検出するために使用されることを可能にする(図4D)。THz分光計ベースのシステムは、2つの方法で動作することができる。最初に、化合物(例えば、VOC)が分子収集器から放たれ、次いで励起信号を介して励起されてもよい。次いで、励起された分子は、基底状態に戻る際に検出器によって吸光度として検出されてもよい。他の機構は、分子収集器の急速な加熱による分子の励起が、結果として蛍光信号を送り得ることである。システムは、励起信号によるVOCの励起に応答して送られる蛍光信号に基づいて、呼気サンプル中のカンナビノイドおよび/または他のVOCの存在を決定するように構成されてもよい。
【0025】
[0038] 質量分析計ベースのシステムを開発し、呼気サンプルを分析するために利用した。このシステムを使用して、息を吐いている人の身体的状態の違いが既に実証されている。健康な呼気サンプル、季節性アレルギーを患う人からの呼気サンプル(アレルギー呼気)、およびリステリンで口を洗い流した直後の人から得られた呼気サンプルを、PolarisQイオン捕捉質量分析計に取り付けられたCarboxen(登録商標)被覆メッシュから形成された分子収集器を有するサンプリングチャンバに収集した。各呼気サンプルについて行った分析の結果を、図5(健康な呼気サンプル)、図6(季節性アレルギーを患う人の呼気サンプル)、および図7(リステリンで洗浄した直後の人の呼気サンプル)に図示する。図5において、切り抜き504は、ボックス502に図示したピークの拡大図を示す。図6において、切り抜き604は、ボックス602に図示したピークの拡大図を示す。図7において、切り抜き704は、ボックス702に図示したピークの拡大図を示す。図5に示すように、1-ブテン-3-イン(1-buten-3-yne)に相当する大きな51.93m/z値が観測された。この1-ブテン-3-インはアレルギー呼気サンプル中には見出されなかった。アレルギー呼気サンプルでは、図6に示すように、イソプレンに対応する66.93m/zで最大ピークが観測され、続いて80.93m/s(1-メチル-ピロール)(1-methyl-pyrrole)および94.93m/z(2-エチルピロール)(2-ethylpyrrole)でピークが観測された。図7に図示したマウスウォッシュサンプルでは、イソプレンに関係付けられたピークは予想通り低下し、76.93m/zでピークのエチルメチルスルフィド(ethylmethylsulfide)および90.93m/zの1,2,3-プロパントリオール(propanetriol)のような他のピークが確立された。さらに、切り抜き604に図示した254.60m/zでピークのオクタデカンのような、より大きい分子量の化合物が存在した。サンプルは全て、イソプレンを示す顕著な66.93m/zピークを示す。イソプレンは、全ての呼気サンプル中に見出されるべきであり、器具が呼気VOCをサンプリングしていることを確実にするための基準として使用されてもよい。図5-7に示すように、観測された化合物における顕著な変化が、提示した3つの異なるシナリオにおいて見出された。この器具を基準として利用して、呼気サンプル中のカンナビノイドの決定を、以下に記載するようにテラヘルツ分光計を使用して達成した。
【0026】
[0039] ベンゼン、トルエン、およびキシレンのテラヘルツスペクトルを取得し、Menlo Systems(マルティンスリート、ドイツ)K15時間領域テラヘルツ分光計を使用して、加熱されたマリファナの葉のガスサンプルのテラヘルツスペクトルと比較した。この器具を使用して、乾燥ガスであるヘリウムをフラスコ内にポンプで送り込み、揮発性蒸気をサンプリングチャンバ内に強制的に排出し、ここでVOCがCarboxen(登録商標)ベースの分子収集器に付着する。次いで、電圧を分子収集器に印加し、VOCを放出させる。ベンゼン、トルエンおよびキシレンについて観測された結果を図8に図示し、ここで線802はキシレンから結果として生じるVOCを表し、線804はトルエンから結果として生じるVOCを表し、線806はベンゼンから結果として生じるVOCを表す。図9は、マリファナサンプルから観測されたVOCを図示する。ガス状サンプルの分析により、回転分光を得ることができ、走査された周波数のいずれかでベンゼンについて得られた低信号を説明する。マリファナサンプルは、結果として最も多くの数の回転結合をもたらし、これは純粋なサンプルではなかったことから予想される。キシレンおよびトルエンは同じピークであるように見えるが、キシレンは一貫して、結果としてより低い周波数ピークをもたらす一方で、トルエンはより高い周波数で現れた。これは、キシレンが芳香環に結合した2つのメチル基を有する一方で、トルエンは芳香環に結合した1つのメチル基のみを有するためである。
【0027】
[0040] テラヘルツスペクトルに基づいてガスを定量化する方法は、連続波テラヘルツ分光法を使用してタバコの煙を使用して行われてきた。しかし、そうするためには、ローレンツ適合式の変数を入力するデータベースが必要である。カンナビノイドはまだデータベース化されておらず、ローレンツ適合式がカンナビノイド定量化に有用であることを妨げている。しかしながら、定量化は、テラヘルツスペクトルの吸光係数を用いて達成することができる。測定された透過t(f) の透過場と比較したサンプルTHz場の透過に基づいて、吸光係数を以下のように計算することができる。
【数1】
ここで、ns(f) はサンプル屈折率であり、cは真空中の光の速度であり、φ(f) はサンプルテラヘルツ場の透過と基準テラヘルツ場の透過との間の位相差であり、fは周波数であり、dはサンプル厚さである。サンプル厚さは、サンプリングチャンバの長さであってもよく、上述の例では9cmであった。サンプル屈折率は、以下のように表され、
【数2】
【数3】
計算されてもよく、級数係数α(f) を計算でき、ここで、界面における信号の損失はRLに等しい。基準スペクトルからサンプルスペクトルを減算して、ランベルト・ベールの法則を以下のように使用することを可能にし、
【数4】
ここで、T(f) は、サンプル透過THz場の強度と基準透過THz場の強度との間の比に等しい。これは、Δ-9-THCの迅速な定量化を可能にできる。本開示にしたがう呼気サンプル分析器システムは、人の呼気からカンナビノイドの濃度を計算するためにこれらの方程式を利用するように(例えば、命令として記憶されたソフトウェアを介して)構成されてもよい。サンプル体積は、人によって変わるかもしれない。したがって、システムは、決定された濃度の不正確さを回避または軽減するために、人が吐き出した呼気サンプルの総体積を考慮に入れるように構成されてもよい。
【0028】
[0041] 図10を参照すると、本開示の態様にしたがう、呼気サンプルを分析するための方法のフローダイヤグラムが、分析方法1000として示されている。一態様では、分析方法1000は、図1のシステム100によって実行することができ、システム100は、図2を参照して上述したような質量分析計ベースのアプローチ、または図3を参照して上述したようなTHz分光計ベースのアプローチを利用することができる。一態様では、分析方法1000の動作またはステップは、メモリ(例えば、図1-3のメモリ)に記憶されたプログラムまたは命令(例えば、図1-3の命令)として実現されてもよく、プログラムまたは命令は、1つ以上のプロセッサ(例えば、図1-3の1つ以上のプロセッサ122)によって実行されるとき、1つ以上のプロセッサに、本開示の態様にしたがって呼気サンプルを分析するための動作を実行させる。
【0029】
[0042] 図10中に示すように、分析方法1000は、ステップ1010において、サンプリングチャンバにおいて、呼気サンプルを収容することを含む。上述のように、呼気サンプルは、サンプリングチャンバ(例えば、図1のサンプリングチャンバ110)に結合された入口(例えば、図1の入口112)を介してサンプリングチャンバで収容されてもよく、サンプリングチャンバは、サンプリングチャンバ内に配置された分子収集器(例えば、図1の分子収集器116)を含んでもよい。ステップ1020において、分析方法1000は、加熱要素を介して、サンプリングチャンバ内に熱を導入することを含む。一態様では、熱は、図1の加熱要素118によって導入されてもよい。ステップ1030において、分析方法1000は、分析デバイスによって、分子収集器からのVOCの少なくとも一部の放出の後、サンプリングチャンバ中に存在するVOCの中から1つ以上の標的VOCを識別することを含む。上述のように、VOCの少なくとも一部は、(例えば、ステップ1020において)加熱要素によってサンプリングチャンバ内に導入される熱によって分子収集器から放出されてもよい。分析デバイスは、図2を参照して上述したように、質量分析計ベースのデバイスであってもよく、または図3を参照して上述したように、THz分光計ベースのデバイスであってもよい。ステップ1040において、分析方法1000は、分析デバイスによって、1つ以上の標的VOCを表す出力を発生させることを含む。一態様では、1つ以上の標的VOCは、Δ-9-THC、11-ヒドロキシ-テトラヒドロカンナビノール(11-hydroxy-tetrahydrocannabinol)(11-OH-THC)、カルボキシ-テトラヒドロカンナビノール(carboxy-tetrahydrocannabinol)(THC-COOH)、THC代謝産物、オピオイド(例えば、メタドンおよびフェンタニル、オピオイド代謝産物)のうちの1つ以上と関係付けられてもよい。上述したように、1つ以上の標的VOCを表す出力は、呼気サンプルを提供する人のような呼気サンプルのソースに対する1つ以上の標的VOCの濃度を定量化する情報を含むことができる。
【0030】
[0043] 上述したように、本開示にしたがう呼気分析システムおよび方法は、現場で呼気サンプルからカンナビノイドおよび他の物質の検出を容易にするデバイスを提供することができる。このようなシステムは、ドライバがDUIMであるかを迅速かつ正確に識別/決定するために、法執行職員によって利用されてもよい。現場でそのような決定を行う能力は、この問題を検出し対処することに関して刑事司法現場の能力を大幅に高める。例えば、従来の技術では、サンプルを採取し、その後、数分または数時間かけて実験室に送る必要があった。この長い分析時間は、イベントの場面で、任意適切な措置をとることを妨げる。対照的に、本開示にしたがう呼気分析システムを利用すると、地方の法執行機関は、現場で決定的な証拠を得ることができる。器具のこの適用は、DUIMドライバーの検出を促進すること、彼らを道路から移動させること、および他のドライバーの安全性を高めることに移行するように他の分野を促す。さらに、本開示の呼気分析システムは、迅速かつ携帯可能な技術を用いて他の違法薬物の検出を容易にすることができる。現場での検出に加えて、開示されるシステムによって提供されるカンナビノイドの濃度を正確に定量化する能力は、人がDUIMであるかを定義するために使用される標準濃度を開発する能力を提供してもよい。
【0031】
[0044] 本願の実施形態およびその利点を詳細に説明してきたが、添付の特許請求の範囲によって定義されるような本開示の精神および範囲から逸脱することなく、さまざまな変更、置換、および代替を、ここで行うことができることを理解すべきである。さらに、本願の範囲は、本明細書で説明したプロセス、機械、製造物、組成物、手段、方法、およびステップの特定の実施形態に限定されるよう意図されたものではない。ここで説明した対応する実施形態と実質的に同じ機能を実行するか、または実質的に同じ機能を実行する、現存しているまたはのちに開発されるプロセス、機械、製造物、組成物、手段、方法、またはステップは、本発明にしたがって利用できることを、当業者は本開示から認識するだろう。したがって、添付の請求項は、このようなプロセス、機械、製造物、組成物、手段、方法、またはステップをこれらの範囲内に含むよう意図されている。さらに、本願の範囲は、本明細書で説明したプロセス、機械、製造物、組成物、手段、方法、およびステップの特定の実施形態に限定されるよう意図されたものではない。
以下に、出願当初の特許請求の範囲に記載の事項を、そのまま、付記しておく。
[1] 呼気サンプルを分析するシステムであって、
サンプリングチャンバと、
前記サンプリングチャンバに結合され、呼気サンプルを収容し、前記呼気サンプルを前記サンプリングチャンバに提供するように構成された入口と、
前記サンプリングチャンバ内に配置された分子収集器と、ここで、前記分子収集器は、前記呼気サンプル中に存在する揮発性有機化合物(VOC)に付着するように構成されており、
前記サンプリングチャンバ内に熱を導入するように構成された加熱要素と、
分析デバイスと、を備え、
前記分析デバイスは、
前記分子収集器からの前記VOCの少なくとも一部の放出の後、前記サンプリングチャンバ中に存在する前記VOCの中から1つ以上の標的VOCを識別するように構成されているとともに、ここで、前記VOCの少なくとも一部は、前記加熱要素によって前記サンプリングチャンバ内に導入された熱によって前記分子収集器から放出されるものであり、
前記1つ以上の標的VOCを表す出力を発生させるように構成されている、システム。
[2] 前記分子収集器は、Carboxen(登録商標)被覆メッシュを備える、[1]に記載のシステム。
[3] 前記加熱要素は、前記分子収集器に結合され、電圧を前記分子収集器に印加して前記サンプリングチャンバ内に熱を導入するように構成された電源を備える、[1]に記載のシステム。
[4] 前記分析デバイスは、質量分析計と、前記質量分析計に通信可能に結合されたコンピューティングデバイスと、前記コンピューティングデバイスに通信可能に結合された出力デバイスとを備え、
ここで、前記質量分析計は、
前記分子収集器から放出された前記VOCの少なくとも一部をイオン化し、1つ以上のイオン化フラグメントを生成するように構成されたイオナイザと、
前記1つ以上のイオン化フラグメントを分離するように構成された質量分析器と、
前記分離された1つ以上のイオン化フラグメントに基づいて前記1つ以上の標的VOCを識別するように構成された検出器と、を含み、
前記コンピューティングデバイスは、
1つ以上のプロセッサと、前記1つ以上のプロセッサに結合されたメモリとを含み、
前記1つ以上のプロセッサは、
前記検出器によって識別された前記1つ以上の標的VOCに関係付けられた情報に基づいて、前記1つ以上の標的VOCを表す前記出力を発生させ、
前記出力デバイスにおいて前記出力を表示するように構成されている、[1]に記載のシステム。
[5] 前記1つ以上の標的VOCは、Δ-9-THC、11-ヒドロキシ-テトラヒドロカンナビノール(11-OH-THC)、カルボキシ-テトラヒドロカンナビノール(THC-COOH)、THC代謝産物、オピオイド、オピオイド代謝産物、またはこれらの組み合わせを含む、[4]に記載のシステム。
[6] 前記分析デバイスは、テラヘルツ(THz)分光計を備え、前記THz分光計は、
前記分子収集器からの前記VOCの少なくとも一部の放出の後、前記サンプリングチャンバ内に励起信号を導入するように構成された励起源と、
前記励起信号に応答して、前記分子収集器から放出された前記VOCの少なくとも一部の励起に関係付けられた1つ以上の特性に基づいて、前記1つ以上の標的VOCを識別するように構成された検出器と、を含む、[1]に記載のシステム。
[7] 前記励起源はTHzレーザを備え、前記1つ以上の標的VOCは、Δ-9-THC、11-ヒドロキシ-テトラヒドロカンナビノール(11-OH-THC)、カルボキシ-テトラヒドロカンナビノール(THC-COOH)、THC代謝産物、オピオイド、オピオイド代謝産物、またはこれらの組み合わせを含む、[6]に記載のシステム。
[8] 前記VOCの少なくとも一部の励起に関係付けられた前記1つ以上の特性は、吸光度特性および蛍光発光特性のうちの少なくとも1つを備える、[6]に記載のシステム。
[9] 前記入口の第1の端部に取り外し可能に結合された使い捨てマウスピースをさらに備え、前記入口の第2の端部は前記サンプリングチャンバに結合されている、[1]に記載のシステム。
[10] 前記入口と前記サンプリングチャンバとの間の空気流路内に配置された弁をさらに備え、前記弁は、少なくとも第1の状態および第2の状態に構成可能であり、前記第1の状態は、前記呼気サンプルが前記サンプリングチャンバ内に流れることを可能にするように構成された開放状態に対応し、前記第2の状態は、前記呼気サンプルの汚染を防止するように構成された閉鎖状態に対応する、[1]に記載のシステム。
[11] 前記サンプリングチャンバから非VOCを放出するように構成された出口をさらに備える、[1]に記載のシステム。
[12] 前記1つ以上の標的VOCを表す前記出力は、前記呼気サンプルのソースに対する前記1つ以上の標的VOCの濃度を定量化する情報を備える、[1]に記載のシステム。
[13] 前記呼気サンプルが1つ以上の基準を満たすかを決定するように構成されたセンサをさらに備える、[1]に記載のシステム。
[14] 呼気サンプルを分析するための方法であって、前記方法は、
サンプリングチャンバにおいて、前記サンプリングチャンバに結合された入口を介して呼気サンプルを収容することと、
加熱要素を介して、前記サンプリングチャンバ内に熱を導入することと、
分析デバイスによって、分子収集器からの揮発性有機化合物(VOC)の少なくとも一部の放出の後、前記サンプリングチャンバ中に存在する前記VOCの中から1つ以上の標的VOCを識別することと、
前記分析デバイスによって、前記1つ以上の標的VOCを表す出力を発生させることと、を備え、
前記サンプリングチャンバは、前記サンプリングチャンバ内に配置された前記分子収集器を備え、ここで、前記分子収集器は、前記呼気サンプル中に存在する前記VOCに付着するように構成され、
前記VOCの少なくとも一部は、前記加熱要素によって前記サンプリングチャンバ内に導入された前記熱によって前記分子収集器から放出され、
前記1つ以上の標的VOCを表す前記出力は、前記呼気サンプルのソースに対する前記1つ以上の標的VOCの濃度を定量化する情報を備える、方法。
[15] 前記分子収集器は、Carboxen(登録商標)被覆メッシュを備え、前記加熱要素は、前記分子収集器に結合された電源を備え、前記方法は、電圧を前記分子収集器に印加して、前記サンプリングチャンバ内に前記熱を導入することを備える、[14]に記載の方法。
[16] 前記1つ以上の標的VOCは、Δ-9-THC、11-ヒドロキシ-テトラヒドロカンナビノール(11-OH-THC)、カルボキシ-テトラヒドロカンナビノール(THC-COOH)、THC代謝産物、オピオイド、オピオイド代謝産物、またはこれらの組み合わせを含む、[14]に記載の方法。
[17] 前記分析デバイスは、質量分析計と、前記質量分析計に通信可能に結合されたコンピューティングデバイスと、前記コンピューティングデバイスに通信可能に結合された出力デバイスとを備え、ここで、前記1つ以上の標的VOCを識別することは、
前記質量分析計のイオナイザによって、前記分子収集器から放出された前記VOCの少なくとも一部をイオン化し、1つ以上のイオン化フラグメントを生成することと、
前記質量分析計の質量分析器によって、前記1つ以上のイオン化フラグメントを分離することと、
前記質量分析計の検出器によって、前記分離された1つ以上のイオン化フラグメントに基づいて、前記1つ以上の標的VOCを識別することと、ここで、前記1つ以上の標的VOCを表す前記出力は、前記コンピューティングデバイスによって、前記検出器によって識別された前記1つ以上の標的VOCに関係付けられた情報に基づいて発生されるものであり、
前記出力デバイスにおいて前記出力を表示することと、を備える、[14]に記載の方法。
[18] 前記分析デバイスは、テラヘルツ(THz)分光計を備え、ここで、前記1つ以上の標的VOCを識別することは、
前記分子収集器からの前記VOCの少なくとも一部の放出の後、励起源によって、前記サンプリングチャンバ内に励起信号を送ることと、
前記THz分光計の検出器によって、前記励起信号に応答して、前記分子収集器から放出された前記VOCの少なくとも一部の励起に関係付けられた1つ以上の特性に基づいて、前記1つ以上の標的VOCを識別することと、を備える、[14]に記載の方法。
[19] 前記励起源はTHzレーザを備え、ここで、前記VOCの少なくとも一部の前記励起に関係付けられた前記1つ以上の特性は、吸光度特性および蛍光発光特性のうちの少なくとも1つを備える、[18]に記載の方法。
[20] 命令を記憶する非一時的コンピュータ読取可能記憶媒体であって、前記命令が1つ以上のプロセッサによって実行されるとき、前記1つ以上のプロセッサに、呼気サンプルを分析するための動作を実行させるものであり、
前記動作は、
呼気サンプルがサンプリングチャンバに提供された後、前記サンプリングチャンバ内に熱を導入するように構成された加熱要素をアクティブ化させることと、
分子収集器からの揮発性有機化合物(VOC)の少なくとも一部の放出の後、前記サンプリングチャンバ中に存在する前記VOCの中から1つ以上の標的VOCを識別することと、
前記1つ以上の標的VOCを表す出力を発生させることと、を備え、
前記サンプリングチャンバは、前記サンプリングチャンバ内に配置された前記分子収集器を備え、ここで、前記分子収集器は、前記呼気サンプル中に存在する前記VOCに付着するように構成されており、
前記VOCの少なくとも一部は、前記加熱要素によって前記サンプリングチャンバ内に導入された熱によって前記分子収集器から放出され、ここで、前記1つ以上の標的VOCは、Δ-9-THC、11-ヒドロキシ-テトラヒドロカンナビノール(11-OH-THC)、カルボキシ-テトラヒドロカンナビノール(THC-COOH)、THC代謝産物、オピオイド、オピオイド代謝産物、またはこれらの組み合わせを含み、
前記1つ以上の標的VOCを表す前記出力は、前記呼気サンプルのソースに対する前記1つ以上の標的VOCの濃度を定量化する情報を備える、非一時的コンピュータ読取可能記憶媒体
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図5
図6
図7
図8
図9
図10