(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-03
(45)【発行日】2023-10-12
(54)【発明の名称】膝用サポーター
(51)【国際特許分類】
A41D 13/06 20060101AFI20231004BHJP
A61F 13/06 20060101ALI20231004BHJP
A61F 13/00 20060101ALI20231004BHJP
A61F 5/02 20060101ALI20231004BHJP
A61F 5/01 20060101ALI20231004BHJP
【FI】
A41D13/06 105
A61F13/06 A
A61F13/00 355S
A61F13/00 355Z
A61F5/02 N
A61F5/01 N
(21)【出願番号】P 2019220917
(22)【出願日】2019-12-06
【審査請求日】2022-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】514232719
【氏名又は名称】株式会社カーブスジャパン
(73)【特許権者】
【識別番号】000228866
【氏名又は名称】日本シグマックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】増本 岳
(72)【発明者】
【氏名】窪田 昌佳
(72)【発明者】
【氏名】笠井 美咲
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 匡平
【審査官】山尾 宗弘
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第205390398(CN,U)
【文献】特表2017-513668(JP,A)
【文献】特開平08-164150(JP,A)
【文献】特開2008-245989(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D 13/06
A61F 13/06
A61F 13/00
A61F 5/02
A61F 5/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
膝用サポーターであって、
当該膝用サポーターの装着時に膝関節の周囲を覆って固定される本体部と、
前記本体部の表面に配置され、外力により伸長可能なZ形状のストラップと、
を備え、
前記ストラップは、
前記本体部の膝下部の膝内側部側から膝外側部を通り前記本体部の膝上部の膝裏側まで傾斜状に配置され、両端部に前記本体部と脱着可能な脱着部が設けられる傾斜部と、
前記傾斜部の前記膝上部側の第1の端部から前記膝外側部側へ延在して端部が前記本体部に固定される第1水平部と、
前記傾斜部の前記膝下部側の第2の端部から前記第1水平部と反対側へ延在して端部が前記本体部に固定される第2水平部と、
を有
し、
当該膝用サポーターの装着時に前記膝内側部及び前記膝外側部となる前記本体部の位置に、前記膝上部と前記膝下部とを結ぶ膝上下方向に沿って延在し、膝の曲げ伸ばし方向に湾曲及び伸長可能に配置されるステー部材を備える、
膝用サポーター。
【請求項2】
装着時に膝関節の周囲を覆って固定される本体部と、
前記本体部の表面に配置され、外力により伸長可能なZ形状のストラップと、
を備え、
前記ストラップは、
前記本体部の膝下部の膝内側部側から膝外側部を通り前記本体部の膝上部の膝裏側まで傾斜状に配置され、両端部に前記本体部と脱着可能な脱着部が設けられる傾斜部と、
前記傾斜部の前記膝上部側の第1の端部から前記膝外側部側へ延在して端部が前記本体部に固定される第1水平部と、
前記傾斜部の前記膝下部側の第2の端部から前記第1水平部と反対側へ延在して端部が前記本体部に固定される第2水平部と、
を有
し、
前記本体部は、前記膝関節の周囲に膝裏側から膝表側に沿って巻き付けられ、前記膝上部及び前記膝下部の表側にて巻き付け方向の両端部が連結されて固定されるオープンタイプであり、
前記本体部の前記両端部は、面ファスナーにより前記膝上部及び前記膝下部の表側にて連結される、
膝用サポーター。
【請求項3】
前記ストラップの前記第1水平部及び前記第2水平部は、前記本体部の膝への巻き付け方向に沿って延在し、
前記膝上部と前記膝下部とを結ぶ膝上下方向において、
前記第1水平部の前記本体部への固定位置は、前記傾斜部の前記第1の端部に設けられる前記脱着部の位置と同一であり、
前記第2水平部の前記本体部への固定位置は、前記傾斜部の前記第2の端部に設けられる前記脱着部の位置と同一である、
請求項1
または2に記載の膝用サポーター。
【請求項4】
前記ストラップの前記第1水平部及び前記第2水平部は、前記膝外側部の前記ステー部材が配置される位置にて前記本体部に固定される、
請求項
1に記載の膝用サポーター。
【請求項5】
前記本体部の表面には、前記ストラップの前記傾斜部の前記第1の端部及び前記第2の端部に設けられる前記脱着部の取り付け目標位置を示すマーカーが設けられる、
請求項1~4のいずれか1項に記載の膝用サポーター。
【請求項6】
前記ストラップの前記脱着部は、面ファスナーである、
請求項1~5のいずれか1項に記載の膝用サポーター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、膝用サポーターに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、長手方向に伸縮可能な巻回体を膝関節の周囲に螺旋状に巻き付けて、膝関節の内旋を抑制する器具が提案されている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし特許文献1に記載の器具では、膝関節まわりに巻回体を直接巻き付けるため、膝関節の内旋を抑制するために適切な位置に装着できない場合がある。この場合、内旋を適切に抑制できず、膝関節の動作が不安定となり、器具を着用して運動を行ったとしても運動効果を向上できない場合がある。
【0005】
本開示は、膝関節の運動効果を向上できる膝用サポーターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態の一観点に係る膝用サポーターは、当該膝用サポーターの装着時に膝関節の周囲を覆って固定される本体部と、前記本体部の表面に配置され、外力により伸長可能な略Z形状のストラップと、を備え、前記ストラップは、前記本体部の膝下部の膝内側部側から膝外側部を通り前記本体部の膝上部の膝裏側まで傾斜状に配置され、両端部に前記本体部と脱着可能な脱着部が設けられる傾斜部と、前記傾斜部の前記膝上部側の第1の端部から前記膝外側部側へ延在して端部が前記本体部に固定される第1水平部と、前記傾斜部の前記膝下部側の第2の端部から前記第1水平部と反対側へ延在して端部が前記本体部に固定される第2水平部と、を有し、当該膝用サポーターの装着時に前記膝内側部及び前記膝外側部となる前記本体部の位置に、前記膝上部と前記膝下部とを結ぶ膝上下方向に沿って延在し、膝の曲げ伸ばし方向に湾曲及び伸長可能に配置されるステー部材を備える。
同様に、本発明の実施形態の一観点に係る膝用サポーターは、装着時に膝関節の周囲を覆って固定される本体部と、前記本体部の表面に配置され、外力により伸長可能なZ形状のストラップと、を備え、前記ストラップは、前記本体部の膝下部の膝内側部側から膝外側部を通り前記本体部の膝上部の膝裏側まで傾斜状に配置され、両端部に前記本体部と脱着可能な脱着部が設けられる傾斜部と、前記傾斜部の前記膝上部側の第1の端部から前記膝外側部側へ延在して端部が前記本体部に固定される第1水平部と、前記傾斜部の前記膝下部側の第2の端部から前記第1水平部と反対側へ延在して端部が前記本体部に固定される第2水平部と、を有し、前記本体部は、前記膝関節の周囲に膝裏側から膝表側に沿って巻き付けられ、前記膝上部及び前記膝下部の表側にて巻き付け方向の両端部が連結されて固定されるオープンタイプであり、前記本体部の前記両端部は、面ファスナーにより前記膝上部及び前記膝下部の表側にて連結される。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、膝関節の運動効果を向上できる膝用サポーターを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係る膝用サポーターの表面側の平面図である。
【
図2】実施形態に係る膝用サポーターの裏面側の平面図である。
【
図3】膝用サポーターの装着手順の第1段階を示す図である。
【
図4】膝用サポーターの装着手順の第2段階を示す図である。
【
図5】膝用サポーターの装着手順の第3段階を示す図である。
【
図6】膝用サポーターの装着手順の第4段階を示す図である。
【
図7】装着前後のストラップの状態の一例を示す模式図である。
【
図8】サポーター着用実験の主観アンケートの項目である。
【
図10】サポーター着用実験の角度計測結果である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0010】
なお、以下の説明において、x方向、y方向、z方向は互いに垂直な方向である。x方向は、本体部2の膝への巻き付け方向である。y方向は、膝への取り付け時の膝の上下方向であり、ステー部材の延在方向である。z方向は、本体部2及びストラップ4の積層方向である。
【0011】
図1は、実施形態に係る膝用サポーター1の表面2A側の平面図である。
図2は、実施形態に係る膝用サポーター1の裏面2B側の平面図である。
【0012】
図1に示すように、膝用サポーター1は、本体部2とストラップ4とを備える。
【0013】
本体部2は、膝関節の周囲に裏面2Bが当接するように巻き付けられて固定される部品である。本体部2は、膝関節の周囲に膝裏側から膝表側に沿って巻き付けられ、膝上部及び膝下部の表側にて巻き付け方向(x方向)の両端部が連結されて固定される、所謂オープンタイプである。
図1、
図2では、y正方向側が装着時に膝上部が位置する側であり、y負方向側が装着時に膝下部が位置する側である。
【0014】
図1、
図2に示すように、本体部2は、装着時に膝裏と当接する膝裏部21と、膝裏部21のx方向両端に設けられ、装着時に膝の表側で互いに重なって連結される一対の前合せ部22、23と、膝裏部21と一対の前合せ部22、23との間に設けられるステー収容部24、25とを有する。ステー収容部24、25には、長尺物のステー部材26、27が、y方向に沿って延在するよう収容される。ステー部材26、27は長手方向と交差する方向へ弾性変形可能であり、本体部2のステー収容部24、25に収容されることによって、膝の曲げ伸ばし方向に湾曲及び伸長可能に配置される。ステー部材26、27によって、膝を曲げたときに伸長方向に反発力が発生するので、膝の曲げ伸ばしをスムーズに、かつ安定して行うことができる。
【0015】
一対の前合せ部22、23のうち、膝裏部21のx負方向側に配置される前合せ部22は、装着時に膝内側部側に配置される部分である。一方、膝裏部21のx正方向側に配置される前合せ部23は、装着時に膝外側部側に配置される部分である。つまり、
図1、
図2に例示されている膝用サポーター1は、右膝用である。
【0016】
一対の前合せ部22、23のうち装着時に膝蓋骨が位置する部分には、略半円状の凹部28、29が形成されており、これにより装着時に膝頭のうち膝蓋骨がある部分が露出するよう形成される。凹部28、29のステー収容部24、25側には、凹部28、29の半円状の曲線に沿ってパッド32、33が設けられる。つまり、凹部28、29及びパッド32、33は、装着時に膝蓋骨の形状に沿うように形成されている。パッド32、33は、本体部2の他の部分より肉厚に形成され、これにより膝蓋骨の周囲を保護して膝の曲げ伸ばしをスムーズに行えるよう構成されている。また、凹部28、29及びパッド32、33を設けることによって、膝用サポーター1を膝に装着する際に、使用者は膝蓋骨の位置を基準とすることで膝関節に対する本体部2の位置決めを容易かつ確実にできる。
【0017】
前合せ部22、23の凹部28、29のy正方向側に膝上装着部30が設けられ、y負方向側に膝下装着部31が設けられる。膝上装着部30及び膝下装着部31は、例えば面ファスナーにより脱着可能に構成される。
【0018】
膝上装着部30では、膝外側部側の前合せ部23の裏面2Bに面ファスナーのフック部30A、30Bが設けられ、膝内側部側の前合せ部22の表面2Aに面ファスナーのループ部30Cが設けられる。フック部30A、30Bは、y方向に沿って2つに区分されている。膝下装着部31では、膝上装着部30と反対に、膝内側部側の前合せ部22の裏面2Bに面ファスナーのフック部31A、31Bが設けられ、膝外側部側の前合せ部23の表面2Aに面ファスナーのループ部31Cが設けられる。フック部31A、31Bは、y方向に沿って2つに区分されている。
【0019】
つまり、本実施形態では、面ファスナーのフック部が膝上下方向に沿って合計4段に分かれて設けられている。この構成により、膝上下方向に沿った4つの位置で使用者の腿や脛のサイズに合わせて前合せ部22、23の重なり量を個別に調整できるので、使用者の脚部の形状に沿ってより適切に本体部2を膝関節まわりに固定することが可能となり、装着時の膝の安定性を向上できる。
【0020】
なお、
図1に示すように、膝内側部側の前合せ部22の表面2Aには、ループ部30C以外の部分も全域にわたって面ファスナーのループ部と同様の表面加工がなされている。一方、膝外側部側の前合せ部23の表面2Aでは、膝下側の部分のみが面ファスナーのループ部と同様の表面加工がなされている。また、膝裏部21の表面2Aの上端側部分21Aも、面ファスナーのループ部と同様の表面加工がなされている。これらの構成は、後述するストラップ4の脱着部44、45の本体部2への固定のために設けられている。
【0021】
ストラップ4は、本体部2の表面2Aに重ねて配置され、外力により伸長可能な略Z形状の部品である。
【0022】
図1に示すように、ストラップ4は、傾斜部41と、第1水平部42と、第2水平部43とを有する。傾斜部41は、膝下部の膝内側部側から膝外側部を通り膝上部の膝裏側まで傾斜状に配置され、両端部に本体部2と脱着可能な脱着部44、45が設けられる。第1水平部42は、傾斜部41の膝上部側の第1の端部41Aから膝外側部側へ延在して端部42Aが本体部2に固定される。第2水平部43は、傾斜部41の膝下部側の第2の端部41Bから第1水平部42と反対側へ延在して、端部43Aが本体部2に固定される。
【0023】
ストラップ4は、膝用サポーター1が膝へ装着される際には、傾斜部41が膝下部の膝内側部側から膝外側部を通り膝上部の膝裏側まで、膝の表面に沿って膝蓋骨を迂回するようにらせん状に配置される。また、傾斜部41の両端部41A、41Bは、伸長した状態で本体部2に固定されるので、傾斜部41の延在方向に沿って収縮力f(
図7参照)が働き、これにより膝下部が膝外側部側へ斜め上方に向けて引っ張り上げられ、これにより膝関節の内旋が抑制される。
【0024】
また、ストラップ4の第1水平部42及び第2水平部43は、本体部2の膝への巻き付け方向(x方向)に沿って延在する。膝上部と膝下部とを結ぶ膝上下方向(y方向)において、第1水平部42の本体部2への固定位置42Aは、傾斜部41の第1の端部41Aに設けられる脱着部44の位置と同一であり、第2水平部43の本体部2への固定位置43Aは、傾斜部41の第2の端部41Bに設けられる脱着部45の位置と同一である。
【0025】
さらに、本体部2の表面2Aには、ストラップ4の傾斜部41の第1の端部41A及び第2の端部41Bに設けられる脱着部44、44の取り付け目標位置を示すマーカー34、35が設けられる。膝上部側のマーカー34は、例えば本体部2が膝関節に装着された状態のときに、大腿裏内側部、特に半腱様筋筋腹近辺に配置されるのが好ましい。また、膝下部側のマーカー35は、例えば本体部2が膝関節に装着された状態のときに、下腿内側部、特に縫工筋、薄筋、半腱様筋の遠位付着部である鵞足近辺に配置されるのが好ましい。
【0026】
このような第1水平部42及び第2水平部43の形状と、マーカー34、35の配置によって、使用者はサポーター装着時に脱着部44、45を掴み、第1水平部42及び第2水平部43の延在方向である巻き付け方向(x方向)に沿って第1水平部42及び第2水平部43を引っ張って伸長させ、マーカー34、35の位置を目安に脱着部44、45を本体部2に取り付ければ、ストラップ4の傾斜部41が上述の内旋を抑制できる収縮力を適切に発揮するように容易に装着できる。
【0027】
また、本実施形態では、ストラップ4の脱着部44、45は、面ファスナーのフック部であり、上述のように本体部2の膝裏部21の表面2Aの上端側部分21Aや、前合せ部22の表面2Aのループ部に固定される。この構成により、ストラップ4の本体部2との脱着を容易にできる。また、マーカー34、35によって、適切なストラップ4の脱着部44、45の固定位置を使用者に分かり易く教示できる。
【0028】
ストラップ4の第1水平部42及び第2水平部43は、膝外側部のステー部材27が配置されるステー収容部25にて本体部2に固定される。装着時には第1水平部42及び第2水平部43が巻き付け方向(x方向)の反対方向にそれぞれ引っ張られるため、膝関節に装着されている本体部2では膝上側と膝下側が反対方向にねじられる力を受ける。本実施形態では、第1水平部42及び第2水平部43から本体部2が固定されるステー収容部25に膝上下方向に延在するステー部材27が収容されているため、第1水平部42及び第2水平部43から力を受けてもステー収容部25はねじり変形しにくい。これにより、ストラップ4の本体部2への固定時に本体部2がねじられるのを抑制でき、ストラップ4の伸長や本体部2への固定の作業をより安定して行うことができる。
【0029】
本体部2及びストラップ4は、例えばナイロン、ポリエステル、ポリウレタンなどを原料とする繊維を用いて成形される。また、ステー部材26、27は、クロロプレン、ポリウレタン、アクリル、ナイロンなどの樹脂材料などで成形される。
【0030】
図3~
図6を参照して膝用サポーター1の装着手順を説明する。
図3~
図6は、膝用サポーター1の装着手順の第1~第4段階を示す図である。
【0031】
図3に示すように、第1段階では、本体部2の裏面2Bのうち膝裏部21を膝裏と当接させて、前合せ部22,23を膝上及び膝下をくるむように膝に巻き付ける。このとき、凹部28、29及びパッド32,33により形成される略円形の開口部から膝頭の膝蓋骨の部分が露出するように(
図4参照)本体部2を膝に巻き付ける。
【0032】
図4に示すように、第2段階では、膝頭が安定するように膝上装着部30及び膝下装着部31を固定する。まず矢印(1)のように、膝上装着部30のうち膝頭の膝蓋骨部分に近いほうのフック部30Aをループ部30Cに固定し、次に、矢印(2)のように、膝下装着部31のうち膝蓋骨に近いほうのフック部31Aをループ部31Cに固定する。次に、矢印(3)のように、膝上装着部30のうち膝蓋骨から遠いほうのフック部30Bをループ部30Cに固定し、次に、矢印(4)のように、膝下装着部31のうち膝蓋骨から遠いほうのフック部31Bをループ部31Cに固定する。
【0033】
図4、
図5に示すように、第3段階では、矢印(5)で示すように、ストラップ4の傾斜部41の膝下部側の第2の端部41Bを、膝下内側のある十字のマーカー35を目安に膝内側部方向へ引っ張り、第2水平部43を伸長させた状態として、脱着部45により前合せ部22上に固定する。
【0034】
図6に示すように、第4段階では、矢印(6)で示すように、ストラップ4の傾斜部41の膝上部側の第1の端部41Aを、膝裏にある十字のマーカー34を目安に膝裏側方向に引っ張り、第1水平部42を伸長させた状態として、脱着部44により膝裏部21上に固定する。
【0035】
図7は、装着前後のストラップ4の状態の一例を示す模式図である。
図7には、例えば
図1に示したように外力がかからない通常状態のストラップ4の形状を点線で図示し、上記の第3、第4段階完了後のストラップ4の形状の一例を実線で図示している。
図7に矢印E1で示すように第1水平部42及び第2水平部43が伸長されることによって、矢印E2で示すように、傾斜部41も第1水平部42側及び第2水平部43側へ引っ張られて長手方向に伸長する。これにより、ストラップ4の傾斜部41には長手方向の中央部に向かって収縮力fが生じる。このような収縮力fが発生する状態でストラップ4が本体部2に固定されると、傾斜部41の第2の端部41Bが固定される膝下部は、膝外側部側へ斜め上方に向けて引っ張り上げられ、これにより膝関節の内旋が抑制される。
【0036】
また、第3段階では、ストラップ4の第2水平部43の本体部2への固定位置43Aは、傾斜部41の第2の端部41Bに設けられる脱着部45の位置と膝上下方向(y方向)で同一であると、使用者は第2の端部41Bを膝まわりの周方向に沿って(
図1の例ではx正方向)引っ張ることが容易になり、ストラップ4の引張方向を適切な方向に誘導できる。同様に、第4段階では、ストラップ4の第1水平部42の本体部2への固定位置42Aは、傾斜部41の第1の端部41Aに設けられる脱着部44の位置と膝上下方向(y方向)で同一であると、使用者は第1の端部41Aを膝まわりの周方向に沿って(
図1の例ではx負方向)引っ張ることが容易になり、ストラップ4の引張方向を適切な方向に誘導できる。これにより、ストラップ4の傾斜部41を適切な方向に螺旋状に走行させることができ、膝用サポーター1による内旋抑制の効果を確実に発揮できる。
【0037】
本実施形態に係る膝用サポーター1は、前合わせ式のオープンタイプの本体部2と、この本体部2に螺旋状に取り付けられる略z形状のストラップ4とを備える。このストラップ4は、z形状の両端部が本体部2に固定され、z形状の角部が例えば面ファスナー構造によって本体部2の表面2A上の任意の位置に脱着可能に固定できる。この構成により、まず本体部2をオープンタイプにすることによって、筒形のように足先から挿入する必要がなく、膝の周囲に巻き付けるだけで容易に装着できる。また、膝頭の位置を基準として適切な位置に容易に装着できる。そして、このように適切な位置に装着された本体部2に対して、ストラップ4を相対的に伸長した状態で固定するので、ストラップ4の装着位置も膝に対して適切な位置に容易に設置できる。ストラップ4は、傾斜部41が膝下部の膝内側部側から膝外側部を通り膝上部の膝裏側まで、膝の表面に沿ってらせん状に配置されるので、
図7を参照して説明したように、膝下部を膝外側部側に引っ張り上げるように傾斜部41の収縮力fが膝に作用して、これにより内旋を抑制できる。この結果、本実施形態の膝用サポーター1は、膝関節の内旋をより確実に抑制できる。
【0038】
より詳細には、膝の内側下部から膝蓋骨を避けて大腿骨外側へ走行するよう設置されるストラップ4が、膝関節の外旋を行う大腿二頭筋、大腿筋膜張筋、脛骨が前内方へ動くことを防ぐ前十字靭帯の機能を代償していると考えられる。この結果、本実施形態の膝用サポーター1を着用することにより、膝まわりの筋肉や靭帯などの機能をサポーターが代償するので、仮に使用者の膝周辺の筋力や靭帯の機能が低下していたとしても膝関節の動作を安定化させることが可能となる。これにより、使用者は膝関節の運動の可動域をより広げることができ、また、膝関節の運動の速度をより速くすることができるので、運動効果を向上できる。
【0039】
さらに、膝内側部側及び膝外側部側に配置されるステー部材26、27が、膝関節の内反を制限する外側側副靭帯の機能を代償していると考えられる。これにより、本実施形態の膝用サポーター1を着用することにより、膝関節の動作をさらに安定化させることが可能となり、運動効果をさらに向上できる。
【実施例】
【0040】
以下、本発明の実施例について比較例を挙げて具体的に説明する。
【0041】
[実施例]
膝痛を抱える19人の被験者に、上記実施形態に係る膝用サポーター1を着用した状態で所定の動作を行わせ、動作後に主観評価を行わせた。動作の種類は、歩行(通常の歩行)、踏み台降下(踏み台から降りる動作)、スクワット、グルートとした。主観評価は、VAS(Visual Analogue Scale)と主観アンケートを用いた。VASは痛みスケールの一種であり、痛みの度合を0~100までの数値で表す。例えば痛みが無い場合にはVASは0となり、最大の痛みの場合にはVASは100となる。主観アンケートは、
図8に示すように、各動作に関する「安定度合」「可動域の変化」「早さの変化」「普段と比べて頑張れた度合」の4つの項目について0~4の五段階評価を行った。
【0042】
また、各動作における膝の屈曲角度、内転角度、内旋角度を計測した。また、スクワットとグルートについては1回当たりの所要時間も計測した。上記の主観評価と角度計測の被験者19人分の結果の平均値を算出した。
【0043】
[比較例]
膝用サポーター1を着用しなかったこと以外は、実施例と同様に主観評価を行い、各動作における膝の屈曲角度、内転角度、内旋角度、所要時間を計測し、被験者19人分の平均値を算出した。
【0044】
図9に主観評価結果を示す。
図9には、スクワットとグルートの各動作における実施例及び比較例のVASと主観アンケートの平均値を示す。また
図9には、各評価項目の実施例と比較例とのP値も示す。P値とは有意確率であり、一般に0.05以下の場合に比較対象の二者間(ここでは実施例と比較例)に有意差があると判断される。
【0045】
図9に示すように、スクワット、グルートの両方で、VASと主観アンケート4項目のすべての項目で、実施例と比較例との間に有意差があり、比較例より実施例のスコアが低くなることが示された。特にVASは、スクワットでは約三分の一に低減し、グルートでは約八分の一に低減した。つまり、本実施形態の膝用サポーター1を着用することによって、被験者は、膝の痛みが低減し、動作が安定し、可動域が広がり、動作を早くでき、普段と比べて痛みが無くとても頑張れたことが示された。
【0046】
図10に角度計測結果を示す。
図10には、歩行、段差降り(踏み台降下)、スクワット、グルートの各動作における実施例と比較例の屈曲角度、内転角度、内旋角度を示す。また、スクワットとグルートについては1回当たりの所要時間も示す。また、
図10には、
図9の主観評価結果と同様に、各評価項目の実施例と比較例とのP値も示す。
【0047】
図10に示すように、歩行動作の場合、実施例の内旋角度が比較例より減少しており、膝用サポーター1の着用によって膝の内旋が抑制されていることが示された。また、歩行、段差降り、スクワットの各動作において、実施例の屈曲角度が比較襟より増大しており、膝用サポーター1の着用によって膝可動域が拡大することが示された。また、この効果は特にスクワット動作の場合に顕著であることが示された。また、スクワット、グルートの1回あたりの所要時間は、実施例が比較例より短縮していることが示された。
【0048】
また、スクワット動作の角度(
図10の屈曲角度)と、速度(
図10の1回当たりの所要時間から算出)とを実施例と比較例で比較したところ、実施例の角度は比較例の104.6%となり、実施例の速度は比較例の110.4%となった。また、スクワット動作の運動効果を角度と速度の積で算出したところ、実施例の運動効果は比較例の115.4%となり、膝用サポーター1を着用することによりスクワット動作の運動効果が約15%向上することが示された。
【0049】
同様に、グルート動作の角度(
図10の屈曲角度)と、速度(
図10の1回当たりの所要時間から算出)とを実施例と比較例で比較したところ、実施例の角度は比較例の100.0%となり、実施例の速度は比較例の106.8%となった。また、グルート動作の運動効果を角度と速度の積で算出したところ、実施例の運動効果は比較例の106.8%となり、膝用サポーター1を着用することによりグルート動作の運動効果が約7%向上することが示された。
【0050】
以上、具体例を参照しつつ本実施形態について説明した。しかし、本開示はこれらの具体例に限定されるものではない。これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素およびその配置、条件、形状などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。
【0051】
上記実施形態では、ストラップ4の第1水平部42の端部42Aと、第2水平部43の端部43Aとが、本体部2の膝外側部側のステー収容部25に固定される構成を例示したが、端部42A、43Aの本体部2への固定位置はステー収容部25以外の部分でもよい。
【0052】
また、上記実施形態では、ストラップ4の第1水平部42の本体部2への固定位置42Aは、傾斜部41の第1の端部41Aに設けられる脱着部44の位置と膝上下方向(y方向)で同一である構成を例示したが、膝上下方向で異なる位置に配置してもよい。同様に、ストラップ4の第2水平部43の本体部2への固定位置43Aも、傾斜部41の第2の端部41Bに設けられる脱着部45の位置と膝上下方向(y方向)で異なる構成でもよい。
【0053】
また、上記実施形態では、ストラップ4の脱着部44、45が面ファスナーのフック部である構成を例示したが、脱着部44、45は、面ファスナー以外の構造で本体部2に固定される構成でもよい。同様に、本体部2の一対の前合せ部22、23との連結構造は面ファスナー以外の構造でもよい。
【0054】
上記実施形態では、本体部2は、膝関節の周囲に膝裏側から膝表側に沿って巻き付けられ、膝上部及び膝下部の表側にて巻き付け方向(x方向)の両端部が連結されて固定される、所謂、膝表側で開閉するオープンタイプの構成を例示したが、本体部2の構成はこれに限られず、装着時に膝関節の周囲を覆って固定される構成であればよい。例えば、本体部2は、膝表以外で開閉するオープンタイプや、筒形で形成され、足側から挿入して膝関節で固定するクローズタイプ、セミクローズタイプでもよい。
【符号の説明】
【0055】
1 膝用サポーター
2 本体部
4 ストラップ
41 傾斜部
42 第1水平部
43 第2水平部
44、45 脱着部
26、27 ステー部材
34、35 マーカー