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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-03
(45)【発行日】2023-10-12
(54)【発明の名称】試験用治具
(51)【国際特許分類】
   G01M 17/007 20060101AFI20231004BHJP
【FI】
G01M17/007 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019142341
(22)【出願日】2019-08-01
(65)【公開番号】P2021025824
(43)【公開日】2021-02-22
【審査請求日】2022-06-03
(73)【特許権者】
【識別番号】519281620
【氏名又は名称】有限会社多久和
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】多久和 誠
【審査官】岩永 寛道
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-003552(JP,A)
【文献】実開昭58-013932(JP,U)
【文献】実開昭59-017128(JP,U)
【文献】特開平09-141529(JP,A)
【文献】国際公開第2015/083376(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0311126(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 17/00- 17/10
B62D 41/00- 67/00
G01B 3/00- 3/08
G01B 3/11- 3/56
B23P 19/00- 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験対象となる車体部品に設けられた車体への取付部が固定される固定具と、該固定具が取り付けられる平面からなる固定面を有するベースと、を備え、該固定具に固定された該車体部品が車体に実装された状態を再現する試験用治具において、
前記ベースは、前記固定面に開口する第1締結孔を有し、
前記固定具は、複数の平板部材から構成され、
前記平板部材は少なくとも、
前記第1締結孔と一致する第2締結孔を有し、前記固定面に対して重ね合わされた状態で締結部材により固定される基板と、
前記基板における前記ベースと反対側の面の互いに離れた部分からそれぞれ該基板と交差する方向に延びる第1側板部材及び第2側板部材と、
前記第1側板部材及び前記第2側板部材の間に架設され、該第1側板部材及び該第2側板部材を連結する補強部材と、
前記第1側板部材及び前記第2側板部材の先端部に取り付けられる取付補強部材と、を含み、
前記第1側板部材の基端部及び前記第2側板部材の基端部には、基端圧入部が前記基板へ向けて突出するように形成され、前記基板には、該基端圧入部が圧入される基端孔部が形成され、
前記第1側板部材の先端部及び前記第2側板部材の先端部には、先端圧入部が前記取付補強部材へ向けて突出するように形成され、前記取付補強部材には、該先端圧入部が圧入される先端孔部が形成され、
記補強部材には、前記第1側板部材へ向けて突出する第1側方圧入部と、前記第2側板部材へ向けて突出する第2側方圧入部が形成され、前記第1側板部材には、該第1側方圧入部が圧入される第1側方孔部が形成され、前記第2側板部材には、該第2側方圧入部が圧入される第2側方孔部が形成され、
前記車体部品の前記取付部は、前記取付補強部材を介して前記固定具の先端部に取り付けられることを特徴とする試験用治具。
【請求項2】
請求項1に記載の試験用治具において、
前記第2締結孔は、前記第1側板部材と前記第2側板部材との間に設けられていることを特徴とする試験用治具。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の試験用治具において、
前記取付補強部材は、前記車体部品の前記取付部が取り付けられる側の面に、着脱可能な取付部材を有し、該取付部は該取付部材に当接させて取り付けられることを特徴とする試験用治具。
【請求項4】
請求項3に記載の試験用治具において、
前記取付部材は、平板状であり、
前記第1側板部材及び前記第2側板部材は、先端部が前記車体部品の前記取付部の取付角度と略同じ角度に形成されていることを特徴とする試験用治具。
【請求項5】
請求項3に記載の試験用治具において、
前記取付部材は、前記車体部品が取り付けられる車体の一部を模した立体形状であることを特徴とする試験用治具。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の試験用治具において、
前記ベースは、複数の前記第1締結孔を略等間隔に有し、
前記固定具は、前記車体部品の種類によって選択される所定の前記第1締結孔において
固定されることを特徴とする試験用治具。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の試験用治具において、
前記基端孔部、前記先端孔部、前記第1側方孔部、及び前記第2側方孔部は、略矩形状の開口部であり、該略矩形状の各角部において該開口部が拡張されるように、外側に向かって膨らむ拡張部が形成されていることを特徴とする試験用治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試験対象となる車体部品を固定して、該車体部品が車体に実装された状態を再現する試験用治具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車の内外装部品について、組み付け精度を検査する際又は耐久試験等の各種試験を行う際、該部品が車体に実装された状態を再現するために使用される試験用治具がある。このような試験用治具には大きく分けて2種類あった。
【0003】
例えば、特許文献1に開示されているような、車体の一部を模したモデル治具がある。モデル治具に試験対象となる車体部品を固定し、該車体部品が車体に実装された状態を再現して組立状態を検査する。
【0004】
また、モデル治具に代替する試験用治具として、現物合わせの治具を使用すれば試験用治具の製造コストを抑えることができる。現物合わせの治具とは、ベースに車体部品を固定するための固定具を複数備え、試験対象の車体部品が完成した後に、該車体部品に合わせて固定具の角度や位置を調整しながら製造する治具である。
【0005】
また、本願の発明者は、特許文献2に開示されている試験用治具を提案している。この試験用治具は、複数の孔を設けた基板に、測定具をボルトで着脱自在とし、該孔付近に設けた目印と該測定具に設けた目印を合わせることで位置決めできるものであり、自動車部品の性能評価及び機能評価を短時間で行うことが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】登録実用新案第2520557号公報
【文献】特開2017-003552号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載のモデル治具は、車体の設計データを用いてNC加工機等によって精密に造形されるため、精度が高いという利点がある。その一方で、工期が長く、汎用性が低いという欠点や、デザインの異なる車種ごとに製造する必要があるため、コストが膨大になるという問題があった。試験用治具の精度が悪いと、車体部品を試験用治具に固定した状態と、実際に車体に実装した状態とでデータの相関が取れず、正確な試験結果を導き出せない。しかしながら、精度の高いモデル治具を全ての車体部品に対して採用することは、コスト面から現実的ではなかった。
【0008】
また、現物合わせの治具は、コストを低く抑えられるという利点があるが、試験対象の車体部品が完成してから、該車体部品に合わせて製造するので、該車体部品の完成後すぐに試験を開始できない。また、固定具の位置合わせは、ほぼ手作業で行われるため、精度が悪いという欠点があった。
【0009】
特許文献2に記載の試験用治具は、製造コストが低く、現物合わせの治具よりも精度を向上させることができたが、該試験用治具を組み立てる際に位置や角度にズレが生じることがあったため、モデル治具と比較すると精度は劣っていた。
【0010】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、製造コストが低く、かつ、精度の高い試験用治具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明では、ベースに設けた第1締結孔と固定具の基板に設けた第2締結孔とを一致させるとともに、固定具を構成する複数の平板部材には、孔部と圧入部を設け、固定具は孔部に圧入部を圧入することによって組み立てられるものとした。
【0012】
すなわち、第1の発明は、
試験対象となる車体部品に設けられた車体への取付部が固定される固定具と、該固定具が取り付けられる平面からなる固定面を有するベースと、を備え、該固定具に固定された該車体部品が車体に実装された状態を再現する試験用治具において、
前記ベースは、前記固定面に開口する第1締結孔を有し、
前記固定具は、複数の平板部材から構成され、
前記平板部材は少なくとも、
前記第1締結孔と一致する第2締結孔を有し、前記固定面に対して重ね合わされた状態で締結部材により固定される基板と、
前記基板における前記ベースと反対側の面の互いに離れた部分からそれぞれ該基板と交差する方向に延びる第1側板部材及び第2側板部材と、
前記第1側板部材及び前記第2側板部材の間に架設され、該第1側板部材及び該第2側板部材を連結する補強部材と、
前記第1側板部材及び前記第2側板部材の先端部に取り付けられる取付補強部材と、を含み、
前記第1側板部材の基端部及び前記第2側板部材の基端部と、前記基板との一方には、基端圧入部が他方へ向けて突出するように形成され、他方には、該基端圧入部が圧入される基端孔部が形成され、
前記第1側板部材の先端部及び前記第2側板部材の先端部と、前記取付補強部材との一方には、先端圧入部が他方へ向けて突出するように形成され、他方には、該先端圧入部が圧入される先端孔部が形成され、
前記第1側板部材と前記補強部材との一方には、第1側方圧入部が他方へ向けて突出するように形成され、他方には、該第1側方圧入部が圧入される第1側方孔部が形成され、
前記第2側板部材と前記補強部材との一方には、第2側方圧入部が他方へ向けて突出するように形成され、他方には、該第2側方圧入部が圧入される第2側方孔部が形成され、
前記車体部品の前記取付部は、前記取付補強部材を介して前記固定具の先端部に取り付けられることを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、固定具は、平板状の材料から切り出された複数の平板部材から構成されているため、製造コストが低い。また、ベースに設けられた第1締結孔と、固定具の基板に設けられた第2締結孔が一致するため、ベースへの固定具の取付精度が高く、製造における作業性にも優れる。
【0014】
さらに、固定具を構成する各平板部材はそれぞれ、基端圧入部及び基端孔部、先端圧入部及び先端孔部、第1側方圧入部及び第1側方孔部、並びに、第2側方圧入部及び第2側方孔部が形成されており、各圧入部が対応する各孔部へ圧入されることによって固定具が組み立てられている。各平板部材の寸法が正確でなければ圧入することは困難であるため、組み立てられた固定具は精度が非常に高い。そのため、車体部品は、本発明の試験用治具に固定されることによって、実際に車体へ実装した状態が高精度で再現される。
【0015】
なお、本発明において、圧入部の外形寸法と孔部の内形寸法は略一致するように形成されており、このように形成された該圧入部を該孔部内へ挿入することを「圧入」と言う。
【0016】
第2の発明は、第1の発明において、
前記第2締結孔は、前記第1側板部材と前記第2側板部材との間に設けられていることを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、第2締結孔を第1側板部材と第2側板部材との間に設けることにより、基板を最小限の大きさとすることが可能である。従って、基板が歪み難く、精度低下を防ぐことができる。
【0018】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、
前記取付補強部材は、前記車体部品の前記取付部が取り付けられる側の面に、着脱可能な取付部材を有し、該取付部は該取付部材に当接させて取り付けられることを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、取付補強部材における車体部品の取付部が取り付けられる側の面は、車体部品の付け替えにより変形や破損のおそれがあるが、着脱可能な取付部材を有することによって、取付部材が劣化しても取り外して新しいものに交換することが可能であり、試験用治具全体を新しく製造する必要がない。
【0020】
第4の発明は、第3の発明において、
前記取付部材は、平板状であり、
前記第1側板部材及び前記第2側板部材は、先端部が前記車体部品の前記取付部の取付角度と略同じ角度に形成されていることを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、取付部材は、第1側板部材及び第2側板部材の先端部に取り付けられることによって、対向する取付部と略同じ角度とすることができる。平板状の取付部材は安価に製造できることから、車体部品を実際に車体へ実装した状態が高精度に再現可能な試験治具を安価に提供できる。
【0022】
第5の発明は、第3の発明において、
前記取付部材は、前記車体部品が取り付けられる車体の一部を模した立体形状であることを特徴とする。
【0023】
この構成によれば、取付部材を、例えば車体の設計データを用いてNC加工機等によって精密に造形して、車体部品が取り付けられる車体の一部を模した立体形状とすることで、より高精度な試験用治具とすることができる。
【0024】
第6の発明は、第1から第5のいずれか1つの発明において、
前記ベースは、複数の第1締結孔を略等間隔に有し、
前記固定具は、前記車体部品の種類によって選択される所定の前記第1締結孔において固定されることを特徴とする。
【0025】
この構成によれば、試験対象の車体部品の種類によって、固定具の位置が異なる場合も、ベースが複数の第1締結孔を有するので、所定の第1締結孔に固定具の第2締結孔を合わせて固定することができる。1つのベースに対して固定具の付け替えによって複数の車体部品に対応可能であり、試験用治具としての汎用性を広げることができる。
【0026】
第7の発明は、第1から第6のいずれか1つの発明において、
前記基端孔部、前記先端孔部、前記第1側方孔部、及び前記第2側方孔部は、略矩形状の開口部であり、該略矩形状の各角部において該開口部が拡張されるように、外側に向かって膨らむ拡張部が形成されていることを特徴とする。
【0027】
この構成によれば、基端孔部、先端孔部、第1側方孔部、及び第2側方孔部を加工する際に加工機を一時停止させることなく、開口部の各角部を形成することができるので、製造効率がよい。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、複数の平板部材によって固定具を構成することで、製造コストを低く抑えることができる。また、ベースに設けられた第1締結孔と、固定具の基板に設けられた第2締結孔を一致させるとともに、固定具を構成する各平板部材にそれぞれ、基端圧入部及び基端孔部、先端圧入部及び先端孔部、第1側方圧入部及び第1側方孔部、並びに、第2側方圧入部及び第2側方孔部を形成し、各圧入部が対応する各孔部へ圧入されることによって固定具が組み立てられるように構成したことにより、車体部品を本発明の試験用治具に固定した際に、実際に車体へ実装した状態が高精度で再現できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】第1実施形態に係る試験用治具を示す斜視図である。
図2】第1実施形態に係るベースの斜視図である。
図3】第1実施形態に係る固定具の斜視図である。
図4】第1実施形態に係る基板の平面図である。
図5】第1実施形態に係る試験用治具の要部の断面図である。
図6】第1実施形態に係る第1側板部材及び第2側板部材の平面図である。
図7A】第1実施形態に係る補強部材の平面図である。
図7B】第1実施形態に係る補強部材の側面図である。
図8】第1実施形態に係る取付補強部材の平面図である。
図9】第1実施形態に係る取付部材の平面図である。
図10】孔部の変形例を示す基板の平面図である。
図11】固定具の変形例を示す斜視図である。
図12】第2実施形態に係る固定具の斜視図である。
図13】第2実施形態に係る基板の平面図である。
図14】第2実施形態に係る第1側板部材の平面図である。
図15】第2実施形態に係る第2側板部材の平面図である。
図16】第2実施形態に係る補強部材の平面図である。
図17】第2実施形態に係る取付補強部材の平面図である。
図18】第2実施形態に係る取付部材の側面図である。
図19】試験用治具の使用例を示す斜視図である。
図20】他の実施形態に係るベースの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0031】
いくつかの図面には、固定具から見て車体部品が固定される方向を「先端側」、その反対方向であってベースに固定される方向を「基端側」として矢印で示した。特に言及しない限り、方向についてはこれらの矢印で示す方向に従って説明する。
【0032】
<第1実施形態>
図1は、本発明の実施形態に係る試験用治具1を示す斜視図である。図1に示すように、試験用治具1は、試験対象となる車体部品Vに設けられた車体への取付部Wが固定される固定具2と、固定具2が取り付けられる平面からなる固定面31を有するベース3と、を備え、固定具2に固定された車体部品Vが車体に実装された状態を再現する。例えば車体部品Vは自動車のバンパー等であり、試験用治具1に固定された状態で、試験用治具1ごと高温環境等の試験室に設置され、耐久性等の試験が行われる。
【0033】
なお図1中、試験用治具1に固定した車体部品V及びその取付部Wを二点鎖線で示したが、これらは説明の便宜のために仮想的な形状を示したものであり、車体部品及びその取付部の形状は限定されない。
【0034】
(ベースの構成)
図2は、本発明の実施形態に係るベース3の斜視図である。図1及び図2に示すように、ベース3は、複数の角材によって組み立てられた支持部32と、支持部32によって支持される平面板状の板部30とを有する。板部30は、固定具2が取り付けられる固定面31を有する。本実施形態において、固定面31は傾斜した状態で支持部32の上方に配置されているが、固定面31の角度は固定する車体部品Vの種類によって異なるため、特に限定はされず、例えば鉛直や水平であってもよい。
【0035】
また、ベース3は固定面31に開口する第1締結孔3aを有する。第1締結孔3aは、固定具2の基板4に設けられた第2締結孔4aの数や位置に対応して設けられている。本実施形態では、1つの固定具2に対して、4つの第1締結孔3aが設けられているが、第2締結孔4aに対応する数であれば、特に限定はされない。
【0036】
固定面31には、開口部31aが設けられていてもよい。開口部31aは、車体部品Vの試験において影響を及ぼすことのない程度の大きさ及び位置に形成されている。板部30は鋼板によって構成されているため、固定面31に開口部31aを設けることで軽量化することができる。
【0037】
なお固定面31は、例えばフライス加工によって平面度を更に高くする処理を行ってもよい。固定面31を所定以上の平面度とすることで、固定具2が取り付けられた状態で、第1側板部材5及び第2側板部材6の先端部を更に高精度に位置決め可能となる。
【0038】
(固定具の構成)
図3は、本発明の実施形態に係る固定具2の斜視図である。図3に示すように、固定具2は、複数の平板部材から構成される。複数の平板部材とは、少なくとも、固定面31に対して重ね合わされた状態で固定される基板4と、基板4におけるベース3と反対側の面の互いに離れた部分からそれぞれ基板4と交差する方向に延びる第1側板部材5及び第2側板部材6と、第1側板部材5及び第2側板部材6の間に架設され、第1側板部材5及び第2側板部材6を連結する補強部材7と、第1側板部材5及び第2側板部材6の先端部に取り付けられる取付補強部材8と、を含む。また、固定具2は、取付補強部材8の車体部品Vの取付部Wが取り付けられる側の面に取り付けられ、取付部Wに当接させて固定される取付部材9を含む。
【0039】
各平板部材は、例えば、厚み寸法3.2mmの鋼板がレーザ加工によって所定の形状に切り出されて形成される。各平板部材の厚みは、限定されない。また、各平板部材の加工の手法はレーザ加工に限られず、ワイヤ切削や放電加工等も用いることができるが、コストの観点からレーザ加工が望ましい。
【0040】
なお、後述する各平板部材の各圧入部5a,5c,6a,6c,71a,72a,73が対応する各孔部4b,4c,5b,6b,8bに圧入されるためには、各圧入部5a,5c,6a,6c,71a,72a,73と、これらに対応する各孔部4b,4c,5b,6b,8bの寸法が略一致していなければならない。そのため、各平板部材はレーザー加工における図面指示公差が0とされている。なお、切り出し後の各平板部材の寸法に誤差が±0.1mm以下で生じた場合であっても、試験用治具1が完成した状態の誤差が実際の車体において規格された寸法公差内(例えば、一般許容公差±1.5mm、取付穴ピッチ±0.7mm)に収まっていれば、許容してよい。
【0041】
(基板の構成)
図4は、基板4の平面図である。図3及び図4に示すように、基板4は角部が面取りされた略長矩形の平板部材であって、固定具2の基端側に位置し、固定面31に対して重ね合わされた状態で固定される。
【0042】
基板4には、基板4の長手方向に離れた位置に2つの第1基端孔部4b,4bが設けられている。第1基端孔部4bは、第1側板部材5と第2側板部材6の基端部に形成された第1基端圧入部5a,6aにそれぞれ対応する位置及び形状に形成され、第1基端圧入部5a,6aが圧入される。本実施形態において、第1基端孔部4bは、第1基端圧入部5a,6aの外形寸法と略同じ内形寸法であり、略直角の角を有する長矩形状の開口である。第1基端孔部4bは、基板4の長手方向が短辺、基板4の短手方向が長辺となるよう形成されている。第1基端孔部4bは、短辺が第1基端圧入部5a,6aの板厚の寸法と等しく、長辺が第1基端圧入部5a,6aの長辺の寸法と等しい。
【0043】
2つの第1基端孔部4b,4b間の略中央部には、第2基端孔部4cが設けられている。第2基端孔部4cは、補強部材7の基端部に形成された第2基端圧入部73に対応する位置及び形状に形成され、第2基端圧入部73が圧入される。本実施形態において、第2基端孔部4cは、第2基端圧入部73の外形寸法と略同じ内形寸法であり、略直角の角を有する長矩形状の開口である。第2基端孔部4cは、基板4の長手方向が長辺、基板4の短手方向が短辺となっている。第2基端孔部4cは、短辺が第2基端圧入部73の板厚の寸法と等しく、長辺が第2基端圧入部73の長辺の寸法と等しい。
【0044】
また、基板4には、第1締結孔3aに対向する位置に第2締結孔4aが設けられている。基板4の短手方向に離れて位置する一対の第2締結孔4aが、第1基端孔部4b,4bの間において基板4の長手方向に離れて2箇所配置され、計4つの第2締結孔4aが設けられている。第2締結孔4aは、第1締結孔3aと一致する。第1締結孔3a及び第2締結孔4aは、例えば、互いに略同じ孔径を有し、内壁にネジ山の溝が形成された断面円形の締結孔である。第2締結孔4aは、第1側板部材5と第2側板部材6との間に設けられていることが望ましい。
【0045】
図5は、本発明の実施形態に係る試験用治具の要部の断面図であって、固定具2の基端部における固定面31との締結部、及び先端部における車体部品Vの取付部Wとの締結部を示す。図5に示すように、基板4は固定面31に重ね合された状態で、第1締結孔3a及び第2締結孔4aを貫通するように、固定面31から締結部材10が挿入されてベース3と固定具2が締結されている。
【0046】
(第1側板部材及び第2側板部材の構成)
図6は、第1側板部材5及び第2側板部材6の平面図である。第1側板部材5及び第2側板部材6は同一の形状であって、共通部品である。図6に示すように、第1側板部材5及び第2側板部材6は、基端側から先端側に向かって延びる長辺と、固定面31に沿う基端側の短辺及び取付部Wに沿う先端側の短辺とで、長矩形状に形成されている。
【0047】
第1側板部材5及び第2側板部材6の基端部は、基板4に当接する基端側端面5d,6dと、基板4へ向けて突出するように形成された第1基端圧入部5a,6aを有する。第1基端圧入部5a,6aは、基端側端面5d,6dの略中間部において、基端側端面5d,6dから略垂直に突出して形成されている。また、第1基端圧入部5a,6aは、基板4に形成された第1基端孔部4bの内形寸法と略同じ外形寸法、かつ、略直角の角を有する。第1基端圧入部5a,6aは、第1基端孔部4bへ圧入される。
【0048】
第1側板部材5及び第2側板部材6は、基板4に形成された2つの第1基端孔部4b,4bに、それぞれ第1基端圧入部5a,6aが圧入されることにより、基板4におけるベース3と反対側(先端側)の面の互いに離れた部分からそれぞれ基板4と交差する方向に延びる。交差する方向とは、本実施形態において基板4と略垂直な方向であるが、垂直な方向には限定されない。
【0049】
第1側板部材5及び第2側板部材6の先端部は、車体部品Vの取付部Wの取付角度に対応するように形成されている。例えば本実施形態では、第1側板部材5及び第2側板部材6の先端部において取付部Wと対向する先端側端面5e,6eは、取付部Wの対向面における取付角度と略同じ角度に形成されている。また、第1側板部材5及び第2側板部材6は先端側端面5e,6eの略中間部において、先端側端面5e,6eと略垂直、かつ、先端側端面5e,6eから取付補強部材8へ向けて突出するように形成された先端圧入部5c,6cを有する。先端圧入部5c,6cは、取付補強部材8に形成された先端孔部8bの内形寸法と略同じ外形寸法、かつ、略直角の角を有する。先端圧入部5c,6cは、先端孔部8bへ圧入される。
【0050】
第1側板部材5及び第2側板部材6には、第1側方孔部5b及び第2側方孔部6bがそれぞれ形成されている。第1側方孔部5b及び第2側方孔部6bは、補強部材7に形成された第1側方圧入部71a又は第2側方圧入部72aに対応する位置及び形状に形成され、第1側方圧入部71a又は第2側方圧入部72aが圧入される。本実施形態において、第1側方圧入部71a又は第2側方圧入部72aの外形寸法と略同じ内形寸法、かつ、略直角の角を有する長矩形状の開口である。第1側方孔部5b及び第2側方孔部6bは、第1側板部材5及び第2側板部材6の短手方向略中間部において、長手方向に間隔をあけて複数形成されている。第1側方孔部5b及び第2側方孔部6bの長辺は第1側板部材5及び第2側板部材6の長手方向に沿って延びている。そして、第1側方孔部5b及び第2側方孔部6bの短辺は、第1側方圧入部71a又は第2側方圧入部72aの板厚と等しい寸法である。第1側方孔部5b及び第2側方孔部6bは、第1側方圧入部71a又は第2側方圧入部72aに対応して形成されていればよく、位置や数量は限定されない。
【0051】
(補強部材の構成)
図7Aは補強部材7の平面図であり、図7Bは補強部材7の側面図である。図7A及び図7Bに示すように、補強部材7は、基端側から先端側に向かって延びる長辺と、固定面31に沿う基端側の短辺とで、略長矩形状に形成されている。
【0052】
補強部材7の基端部は、基板4に当接する基端側端面74と、基端側端面74の略中間部において、基端側端面74と略垂直、かつ、基端側端面74から基板4へ向けて突出するように形成された第2基端圧入部73とを有する。第2基端圧入部73は、基板4に形成された第2基端孔部4cの内形寸法と略同じ外形寸法、かつ、略直角の角を有する。
【0053】
また、補強部材7は第1側板部材5又は第2側板部材6に当接する側端面75と、側端面75と略垂直、かつ、側端面75から第1側板部材5及び第2側板部材6に向けてそれぞれ突出するように、間隔をあけて複数形成された第1側方圧入部71a及び第2側方圧入部72aとを有する。第1側方圧入部71a及び第2側方圧入部72aは、第1側板部材5及び第2側板部材6に形成された第1側方孔部5b及び第2側方孔部6bの内形寸法と略同じ外形寸法、かつ、略直角の角を有する。
【0054】
補強部材7は、第1側板部材5と第2側板部材6との間において、第1側方圧入部71aが第1側方孔部5bへ、第2側方圧入部72aが第2側方孔部6bへ、それぞれ圧入されることによって、第1側板部材5及び第2側板部材6を連結する。さらに、補強部材7は、第2基端圧入部73が第2基端孔部4cに圧入されることによって、第1側板部材5及び第2側板部材6を補強する。
【0055】
(取付補強部材の構成)
図8は、取付補強部材8の平面図である。取付補強部材8は角部が面取りされた略長矩形の平板部材であって、第1側板部材5及び第2側板部材6の先端部に当接した状態で取り付けられることで、対向する取付部Wと略同じ角度となる。
【0056】
取付補強部材8には、取付補強部材8の長手方向に離れた位置に2つの先端孔部8b,8bが設けられている。先端孔部8bは、第1側板部材5と第2側板部材6の先端部に形成された先端圧入部5c,6cにそれぞれ対応する位置及び形状に形成され、先端圧入部5c,6cが圧入される。本実施形態において、先端孔部8bは、先端圧入部5c,6cの外形寸法と略同じ内形寸法であり、略直角の角を有する長矩形状の開口である。先端孔部8bは、取付補強部材8の長手方向が短辺、取付補強部材8の短手方向が長辺となるよう形成されている。先端孔部8bは、短辺が先端圧入部5c,6cの板厚の寸法と等しく、長辺が先端圧入部5c,6cの長辺の寸法と等しい。
【0057】
2つの先端孔部8b,8b間の略中央部には、第3締結孔8aが設けられている。第3締結孔8aは、車体部品Vの取付部Wに設けられた取付孔Xに対応する位置及び形状に形成されている。
【0058】
また、取付補強部材8には、取付部材9を取り付けるための孔8cが形成されている。取付補強部材8の短手方向に離れて位置する一対の孔8cが、先端孔部8b,8bの間において取付補強部材8の長手方向に離れて2箇所配置され、計4つの孔8cが設けられている。
【0059】
図5に示すように、取付補強部材8は、第1側板部材5及び第2側板部材6の先端部に当接した状態で取り付けられることにより、取付部Wに沿う。そして、車体部品Vは取付補強部材8に取り付けられた取付部材9に重ね合された状態で、取付孔X、第4締結孔9a、及び第3締結孔8aを貫通するように、取付部W側から締結部材11が挿入される。これにより、車体部品Vは取付補強部材8を介して固定具2の先端部に取り付けられる。
【0060】
(取付部材の構成)
図9は、取付部材9の平面図である。取付部材9は、角部が面取りされた略矩形の平板部材である。取付部材9は、取付補強部材8の、車体部品Vの取付部Wが取り付けられる側の面に、例えばネジ留めによって着脱可能に取り付けられる。取付部Wは取付部材9に当接させて取り付けられる。
【0061】
取付部材9は、取付補強部材8に設けられた孔8cと締結するための孔9bが各角部に設けられている。孔9bは、取付補強部材8に設けられた孔8cと一致する。取付補強部材8の孔8c及び取付部材9の孔9bは、例えば、互いに同じ孔径を有し、内壁にネジ山の溝が形成された断面円形の締結孔であり、溶接は行われず、ネジを孔8c,9bへ螺合させることにより、着脱可能に取付補強部材8に取付部材9が取り付けられる。
【0062】
また、取付部材9は、略中央部に第3締結孔8aに対向する第4締結孔9aが、設けられている。第4締結孔9aは取付孔Xに対応する所定の孔径に形成される。第4締結孔9aは、取付補強部材8に設けられた第3締結孔8aと重ね合されて、取付孔Xと締結される。第3締結孔8a、第4締結孔9a、及び取付孔Xの孔径は、限定されないが、例えば、第3締結孔8a及び第4締結孔9aをファスナによって締結する場合、第3締結孔8aは逃がし孔となるため、第4締結孔9aよりも大きい孔径に形成される。例えば本実施形態において、取付孔Xの直径は12mm、第4締結孔9aの直径は10mm、第3締結孔8aの直径は15mmである。
【0063】
取付部材9は、例えば、厚み寸法0.7mmの車体部品Vを構成する材料と同じ平板がレーザ加工によって所定の形状に切り出されて形成される。補強部材9の板厚は、車体部品Vが実際に取り付けられる車体の部分と同じ板厚であることが望ましく、取り付ける車体部品Vによって指定された板厚の鋼板が用いられる。
【0064】
なお、取付部材9の孔9aをパンチング加工にて形成し、取付部材9を車体と同じ板金塗装を施工してもよい。これにより、更に実装の車体を模擬することが可能となり、より精度の高い性能評価を実施することが可能となる。
【0065】
(固定具の組立て)
固定具2を構成する基板4、第1側板部材5、第2側板部材6、補強部材7、及び取付補強部材8は、各圧入部5a,5c,6a,6c,71a,72a,73が対応する各孔部4b,4c,5b,6b,8bに圧入されて組み立てられる。圧入は、例えばハンマー等を用いて、叩き込むことによって行われる。
【0066】
そして、固定具2を構成する各平板部材は互いに当接する部分においてスポット溶接されることが望ましい。スポット溶接は、歪みに影響を及ぼさない部分において行うことが望ましく、例えば、各圧入部及び各孔部の付近ではなく、図5中に破線の丸枠で示した、各圧入部及び各孔部から離れた角部Zである。スポット溶接を行うことで、当接部に亘って溶接を行うよりも、歪みの発生が低減できる。
【0067】
(第1実施形態の作用効果)
以上説明したように、この実施形態に係る試験用治具1によれば、固定具2は、平板状の材料から切り出された複数の平板部材から構成されているため、製造コストが低い。また、ベース3に設けられた第1締結孔3aと、固定具2の基板4に設けられた第2締結孔4aが一致するため、ベース3への固定具2の取付精度が高く、製造における作業性にも優れる。
【0068】
さらに、固定具2を構成する各平板部材はそれぞれ、第1基端圧入部5a,6a及び第1基端孔部4b、先端圧入部5c,6c及び先端孔部8b、第1側方圧入部71a及び第1側方孔部5b、並びに、第2側方圧入部72a及び第2側方孔部6bが形成されており、各圧入部が対応する各孔部へ圧入されることによって固定具2が組み立てられている。各平板部材の寸法が正確でなければ圧入することは困難であるため、組み立てられた固定具は精度が非常に高い。そのため、車体部品Vは、本発明の試験用治具1に固定されることによって、実際に車体へ実装した状態が高精度で再現される。
【0069】
また、第2締結孔4aが第1側板部材5と第2側板部材6との間に位置するよう、第1基端孔部4bと第2基端孔部4cの間に設けることにより、基板4を最小限の大きさとすることが可能である。従って、基板4が歪み難く、精度低下のおそれが少ない。
【0070】
また、取付補強部材8における車体部品Vの取付部Wが取り付けられる面は、車体部品Vの付け替えにより摩耗等の劣化のおそれがあるが、取付補強部材8の、車体部品Vの取付部Wに対向する面に、取付部材9が着脱可能に取り付けられることによって、取付部材9が劣化しても、取付部材9のみを取り外して新しいものに交換することが可能であり、試験用治具1全体を新しく製造する必要がないので経済的である。
【0071】
また、第1側板部材5及び第2側板部材6の先端部は取付部Wの対向面における取付角度と略同じ角度に形成されているので、平板状の取付部材9を第1側板部材5及び第2側板部材6の先端部に取り付けることで、容易に取付部材9を取付部Wと略同じ角度とすることができる。よって、高精度の試験用治具1を安価に提供可能である。
【0072】
(各孔部の変形例)
固定具2を構成する基板4、第1側板部材5、第2側板部材6、補強部材7、及び取付補強部材8は、例えばレーザー加工機によって平板状の材料から切り出されるため、平板面に対して端面が略直角となる。そのため、突出するように形成される各圧入部5a,5c,6a,6c,71a,72a,73は、略直角の角部を有する。各圧入部5a,5c,6a,6c,71a,72a,73に対応する略矩形状の開口部である各孔部4b,4c,5b,6b,8bは、各角部が略直角に形成されていなければ各圧入部5a,5c,6a,6c,71a,72a,73を圧入することが困難である。
【0073】
各孔部4b,4c,5b,6b,8bを加工する際、各角部において、加工機を連続運転させた状態で略直角に切り出そうとすると、角が僅かに湾曲してR状に形成されてしまい、各圧入部5a,5c,6a,6c,71a,72a,73を圧入することが困難であった。そこで、各角部において加工機を一時停止させることによって略直角に切り出すことが可能であったが、角部毎に加工機を停止させるのは効率が悪かった。
【0074】
図10は、各孔部の変形例を示す平面図である。図10に示すように、基板41の第1基端孔部40b及び第2基端孔部40cには、略矩形状開口部の各角部が拡張されるように、外側に向かって膨らむ拡張部40dが形成されている。拡張部40dにより、加工機を一時停止させることなく角部の加工が可能となり、圧入部を圧入可能な開口部を効率よく製造できる。なお、この拡張部40dは、図10に示されるような円形状には限られず、他の形状であってもよい。
【0075】
第1側方孔部5b、第2側方孔部6b、及び先端孔部8bにおいても、上記した第1基端孔部40b及び第2基端孔部40cと同様の効果が得られることから、略矩形状開口部の各角部が拡張されるように、外側に向かって膨らむ拡張部が形成されることが望ましい。
【0076】
(固定具の変形例)
図11は、固定具2の変形例を示す斜視図である。固定具2を構成する各平板部材は、矩形に限られない。例えば、図11に示すように、第1側板部材51及び第2側板部材61は、基端部が基端側に向かって拡張する形状であってもよい。また、取付補強部材81及び取付部材91は、矩形に限られず、図11に示すような多角形であってもよい。車体部品Vの取付部Wに合わせて、矩形や多角形等、形状の異なる複数の種類の固定具2を組み合わせて試験用治具1を構成してもよい。
【0077】
<第2実施形態>
また、試験用治具は、上記した固定具とは異なる形態の固定具を用いてもよい。例えば、取付部材は、第1実施形態のように平板状の取付部材9,91に限定されることはなく、図12に示すように、車体部品Vが取り付けられる車体の一部を模した立体形状の取付部材92であってもよい。図12は、第2実施形態に係る固定具の斜視図であって、取付部材92を分離した状態を示す。この固定具20は、平板部材である基板42、第1側板部材52、第2側板部材62、補強部材72及び取付補強部材82に設けられた各圧入部が対応する各孔部に圧入されることによって組み立てられ、取付部材92が取り付けられる点は上記実施形態における固定具2と同じであるが、各部材の形態が異なる。
【0078】
(基板の構成)
図13は、第2実施形態に係る基板42の平面図である。基板42は、略長矩形の平板部材であって、長手方向に離れた位置に2つの第1基端孔部42b,42bが設けられている。2つの第1基端孔部42b,42bは、短手方向に互いにずれた位置に設けられている。第2実施形態において、第1基端孔部42bは、第1側板部材52と第2側板部材62の基端部に形成された第1基端圧入部52a,62aに対応する寸法に形成されている。第1基端孔部42bは長矩形の開口であって、角部にそれぞれ矩形の拡張部42dが形成されている。
【0079】
2つの第1基端孔部42b,42b間には、第2基端孔部42cが設けられている。第2基端孔部42cは、補強部材72の基端部に形成された第2基端圧入部73’に対応する寸法に形成されている。第2基端孔部42cは長矩形の開口であって、角部にそれぞれ矩形の拡張部42dが形成されている。
【0080】
また、基板42には、第1締結孔3aに対向する位置に第2締結孔42aが設けられている。基板4の短手方向に離れて位置する一対の第2締結孔42aが、第1基端孔部42b,42bより縁側において基板42の長手方向に離れて2箇所配置され、計4つの第2締結孔42aが設けられている。第2締結孔42aは、第1締結孔3aと一致する。
【0081】
(第1側板部材及び第2側板部材の構成)
図14は、第2実施形態に係る第1側板部材52の平面図であり、図15は第2実施形態に係る第2側板部材62の平面図である。第1側板部材52及び第2側板部材62は、基端側から先端側に向かって延びる長辺と、固定面31に沿う基端側の短辺及び取付部Wに沿う先端側の短辺とで、略長矩形状に形成されている。
【0082】
第1側板部材52及び第2側板部材62は、基端側に、基板42に当接する基端側端面52d,62dと、基端側端面52d,62dから基板42へ向けて略垂直に突出するように形成された第1基端圧入部52a,62aを有する。第1側板部材52の第1基端圧入部52aは、基端側端面52dの略中間部に形成され、第2側板部材62の第1基端圧入部62aは、基端側端面62dの略中間部からずれた位置に形成されている。
【0083】
第1側板部材52及び第2側板部材62は、先端側に、取付部Wと対向する先端側端面52e,62eと、先端側端面52e,62eから取付補強部材82へ向けて略垂直に突出するように形成された先端圧入部52c,62cを有する。第1側板部材52の先端圧入部52cは、先端側端面52eの略中間部に形成され、第2側板部材62の先端圧入部62cは、先端側端面62eの略中間部からずれた位置に形成されている。先端側端面52e,62eと第1側板部材52及び第2側板部材62の長手方向は略垂直である。
【0084】
基端側端面52d,62dと第1基端圧入部52a,62aとの間、及び、先端側端面52e,62eと先端圧入部52c,62cとの間には、矩形に切り欠かれた凹部55,65が形成されている。凹部55,65が設けられることにより、基端側端面52d、62dと第1基端圧入部52a,62aとの角部、及び、先端側端面52e,62eと先端圧入部52c,62cとの角部を精度よく略直角に形成する必要がないため、施工性がよい。
【0085】
第1基端圧入部52a,62aは、基板42に形成された第1基端孔部42b,42bに対応する形状であり、略直角の角を有する。先端圧入部52c,62cは、取付補強部材82に形成された先端孔部82bに対応する形状であり、略直角の角を有する。
【0086】
第1側板部材52及び第2側板部材62には、第1側方孔部52b及び第2側方孔部62bがそれぞれ形成されている。第1側方孔部52b及び第2側方孔部62bは、補強部材72に形成された第1側方圧入部71a’又は第2側方圧入部72a’に対応する位置及び形状に形成された略直角の角を有する長矩形状の開口である。
【0087】
(補強部材の構成)
図16は第2実施形態に係る補強部材72の平面図である。図16に示すように、補強部材72は、基端側から先端側に向かって延びる長辺と、固定面31に沿う基端側の短辺とで、略長矩形状に形成されている。
【0088】
補強部材72の基端部は、基板42に当接する基端側端面74’と、基端側端面74’の略中間部において、基端側端面74’から基板4へ向けて略垂直に突出するように形成された第2基端圧入部73’とを有する。第2基端圧入部73’は、基板42に形成された第2基端孔部42cに対応する形状であり、略直角の角を有する。
【0089】
補強部材72の先端部は、取付補強部材82に当接する先端側端面77と、先端側端面77の略中間部において、先端側端面77から取付補強部材82へ向けて略垂直に突出するように形成された第2先端圧入部76とを有する。第2先端圧入部76は、取付補強部材82に形成された第2先端孔部82dに対応する形状であり、略直角の角を有する。
【0090】
また、補強部材72は第1側板部材52又は第2側板部材62に当接する側端面75’と、側端面75’から第1側板部材52又は第2側板部材62に向けて略垂直に突出する第1側方圧入部71a’及び第2側方圧入部72a’とを有する。第1側方圧入部71a’及び第2側方圧入部72a’は、第1側板部材52及び第2側板部材62に形成された第1側方孔部52b及び第2側方孔部62bに対応する形状であり、略直角の角を有する。
【0091】
基端側端面74’と第2基端圧入部73’との間、先端側端面77と第2先端圧入部76との間、並びに、側端面75’と第1側方圧入部71a’及び第2側方圧入部72a’との間には、加工を容易にするための凹部78が矩形に切り欠かれて形成されている。
【0092】
(取付補強部材の構成)
図17は、第2実施形態に係る取付補強部材82の平面図である。取付補強部材82は角部が面取りされた略台形の平板部材であって、第1側板部材52、第2側板部材62、及び補強部材72の先端部に当接した状態で取り付けられる。第2実施形態において、取付補強部材82は、基板42と略平行である。
【0093】
取付補強部材82には、取付補強部材82の長手方向に離れた位置に2つの先端孔部82b,82bが設けられている。先端孔部82bは、第1側板部材52と第2側板部材62の先端部に形成された先端圧入部52c,62cに対応する形状の開口である。
【0094】
2つの先端孔部82b,82b間には、第2先端孔部82dが設けられている。第2先端孔部82dは、補強部材77の先端部に形成された第2先端圧入部76に対応する形状の開口である。
【0095】
先端孔部82b及び第2先端孔部82dは、それぞれ長矩形の角部に、それぞれ矩形の拡張部82eが形成されたI字形状の開口である。
【0096】
また、取付補強部材82には取付部材92を取り付けるための孔82cが形成されている。先端孔部82b及び第2先端孔部82dより縁側に間隔をあけて3つの孔82cが設けられている。
【0097】
(取付部材の構成)
図18は、第2実施形態に係る取付部材92の側面図である。取付部材92は、車体部品Vが取り付けられる車体の一部を模した立体形状である。第2実施形態においては、先端側面が傾斜しており、対向する取付部Wに沿う。取付部材92全体としては三角錐様の形状である。取付部材92は基端側面に、取付補強部材8に設けられた孔82cと締結するための孔92bを有する。孔92bは、取付補強部材8の孔82cに対応する位置に設けられている。
【0098】
孔92bは、取付補強部材82に設けられた孔82cと一致する。取付補強部材82の孔82c及び取付部材92の孔92bは、例えば、互いに同じ孔径を有し、内壁にネジ山の溝が形成された断面円形の締結孔であり、溶接は行われず、ネジを孔82c,92bへ螺合させることにより、着脱可能に取付補強部材82に取付部材92が取り付けられる。
【0099】
取付部材92は、車体の設計データを用いてNC加工機等によって精密に造形して、車体部品Vが取り付けられる車体の一部を模した立体形状とする。これにより、取付部材92が、車体部品Vが取り付けられる車体の一部を忠実に再現し、より正確な試験用治具とすることができる。なお、取付部材92の立体形状は、車体部品Vの種類や、固定具2が取り付けられる位置によって適宜設計されるため、図12及び図18に示す形状に限定されない。
【0100】
(第2実施形態の作用効果)
以上説明したように、この実施形態に係る試験用治具によれば、第1実施形態と同様に、各圧入部が対応する各孔部へ圧入されることによって固定具20が組み立てられているので、車体部品Vは、本発明の試験用治具1に固定されることによって、実際に車体へ実装した状態が高精度で再現される。
【0101】
また、取付部材92は、車体部品Vが取り付けられる車体の一部を模した立体形状であるので、より高精度な試験用治具とすることができる。
【0102】
<固定具を組み合わせた使用例>
図19は、本実施形態の試験用治具1’の使用例を示す斜視図である。図19に示すように、試験用治具1’は、第1実施形態の固定具2及び第2実施形態の固定具20を併用して用いてもよい。また、実施する試験に応じて、必要な測定端子やセンサー等を取り付けてもよい。
【0103】
(ベースの他の実施形態)
図20は、他の実施形態に係るベース30の斜視図である。図20に示すように、ベース30は、複数の第1締結孔3aを略等間隔に有するものであってもよい。そして、固定具は、車体部品Vの種類によって選択される所定の第1締結孔3aにおいて固定することができる。この構成によれば、試験対象の車体部品Vの種類によって、固定具の位置が異なる場合も、ベース30の所定の第1締結孔3aに固定具の第2締結孔4aを合わせて固定することができる。1つのベース30に対して固定具の付け替えによって複数の車体部品Vに対応可能となるので、試験用治具としての汎用性を広げることができる。
【0104】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0105】
以上説明したように、本発明に係る試験用治具は、車体部品の各種試験を行う際に使用することができる。
【符号の説明】
【0106】
1,1’ 試験用治具
2,20 固定具
3,30 ベース
3a 第1締結孔
31 固定面
32 支持部
4,42 基板
4a,42a 第2締結孔
4b,42b 第1基端孔部
4c,42c 第2基端孔部
40d,42d 拡張部
5,51,52 第1側板部材
5a,52a 第1基端圧入部
5b,52b 第1側方孔部
5c,52c 先端圧入部
6,61,62 第2側板部材
6a,62a 第1基端圧入部
6b,62b 第2側方孔部
6c,62c 先端圧入部
7,72 補強部材
71a,71a’ 第1側方圧入部
72a,72a’ 第2側方圧入部
73,73’ 第2基端圧入部
8,81 取付補強部材
8a 第3締結孔
8b 先端孔部
9,91,92 取付部材
9a 第4締結孔
V 車体部品
W 取付部
X 取付孔
図1
図2
図3
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図5
図6
図7A
図7B
図8
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図20