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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-03
(45)【発行日】2023-10-12
(54)【発明の名称】無血管性または乏血管性微小腫瘍の治療
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/09 20060101AFI20231004BHJP
   A61K 31/42 20060101ALI20231004BHJP
   A61K 31/661 20060101ALI20231004BHJP
   A61K 51/04 20060101ALI20231004BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20231004BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20231004BHJP
【FI】
A61K31/09
A61K31/42
A61K31/661
A61K51/04 100
A61P35/00
A61P43/00 121
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020500155
(86)(22)【出願日】2018-07-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-08-31
(86)【国際出願番号】 EP2018068141
(87)【国際公開番号】W WO2019008064
(87)【国際公開日】2019-01-10
【審査請求日】2021-05-20
(31)【優先権主張番号】1710936.4
(32)【優先日】2017-07-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】LU100362
(32)【優先日】2017-08-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】LU
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】512320560
【氏名又は名称】カトリック ユニヴェルシテット ルーヴェン
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】ニー イーチェン
【審査官】愛清 哲
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第101073561(CN,A)
【文献】特表2011-504511(JP,A)
【文献】JOURNAL OF PHARMACEUTICAL SCIENCES,2010年,vol.99, no.6,pp.2914-2925,DOI: 10.1002/jps.22038
【文献】Proc Jpn Acad Ser B Phys Biol Sci.,2012年,vol.88, no.3,pp.53-71,DOI: 10.2183/pjab.88.53
【文献】Invest Radiol,2009年,vol.44, no.1,pp.44-53,DOI: 10.1097/RLI.0b013e31818e5ace
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-31/80
A61K 51/00-51/12
A61P 35/00-35/04
A61P 43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
20mm未満の直径を有する無血管性または乏血管性(avascular or hypovascular)微小腫瘍を治療するための、血管破壊剤(VDA)であって、前記血管破壊剤はコンブレタスタチンまたはその塩若しくは溶媒和物を含む、血管破壊剤。
【請求項2】
無血管性(avascular)腫瘍を治療するための、請求項1に記載の血管破壊剤(VDA)。
【請求項3】
前記腫瘍が、内臓器官、例えば、肝臓、脾臓、腎臓または肺内で生じる、請求項1または2に記載の微小腫瘍を治療するための血管破壊剤(VDA)。
【請求項4】
前記腫瘍が、硬変肝組織内で生じる、請求項1~3のいずれか一項に記載の微小腫瘍を治療するための血管破壊剤(VDA)。
【請求項5】
前記腫瘍が、1~10mmの直径を有するヒト腫瘍である、請求項1~4のいずれか一項に記載の微小腫瘍を治療するための血管破壊剤(VDA)。
【請求項6】
前記腫瘍が、修正4スケールEdmondsonおよびSteiner体系により定義されるグレードI~IVの腫瘍である、請求項1~5のいずれか一項に記載の微小腫瘍を治療するための血管破壊剤(VDA)。
【請求項7】
前記腫瘍が、修正4スケールEdmondsonおよびSteiner体系により定義されるグレードIまたはIIの腫瘍である、請求項1~6のいずれか一項に記載の微小腫瘍を治療するための血管破壊剤(VDA)。
【請求項8】
前記腫瘍が、癌腫、例えば、原発性肝細胞癌(HCC)または肉腫、例えば、横紋筋肉腫(rhabdomyosarcoma)である、請求項1~7のいずれか一項に記載の腫瘍を治療するための血管破壊剤(VDA)。
【請求項9】
VDAとしてさらに、チューブリン結合スチルベノイドまたはジヒドロスチルベノイドを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の微小腫瘍を治療するための血管破壊剤(VDA)。
【請求項10】
VDAとしてさらに、コンブレタスタチンA-4(CA4)、ZD6126若しくはSTA-9584またはそれらの塩若しくは溶媒和物を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の微小腫瘍を治療するための血管破壊剤(VDA)。
【請求項11】
補助療法との組合せにおける、請求項1~10のいずれか一項に記載の微小腫瘍を治療するための血管破壊剤(VDA)。
【請求項12】
前記補助療法が、壊死組織を標的化する治療剤の血管内投与を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の微小腫瘍を治療するための血管破壊剤(VDA)。
【請求項13】
前記治療剤が、放射線治療剤、例えば、ヨウ素-131標識ヒペリシンである、請求項12に記載の微小腫瘍を治療するための血管破壊剤(VDA)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無血管性(avascular)および乏血管性(hypovascular)腫瘍の治療に関する。
【0002】
本発明はさらに、腫瘍治療法における血管破壊剤(vascular disruption agents)の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
南アフリカのヤナギ樹木コンブレタム・カフラム(Combretum caffrum)からコンブレタスタチンファミリーメンバーとして最初に誘導されたコンブレタスタチンA4リン酸(CA4P)は、過去10年間にわたり癌治療法のための主な血管破壊剤(VDA)になってきた[Tozerら、(2005)Nat Rev Cancer.5,423-435;Hinnen & Eskens(2007)Br J Cancer.96,1159-1165]。CA4Pは、強力な可逆的チューブリン脱重合剤として作用して既存の腫瘍血管に損傷を与える[Patterson & Rustin、(2007)Clin Oncol.19,443-456]。
前臨床研究において実施された種々の移植腫瘍モデルにおいて、CA4Pは、1時間未満ほどの早い急速な腫瘍血管破壊を誘導し、12時間以内の広範な腫瘍内壊死をもたらす[Cooneyら、(2006)Nat Clin Pract Oncol.3,682-692;Siemannら、(2009)Expert Opin Investig Drugs 18,189-197]。
それにもかかわらず、VDA療法は、腫瘍周囲における残留癌細胞の層からなる生存辺縁(viable rim)を特色とし、続いて数日間にわたる腫瘍再発をもたらす[Liら、(2011)Radiology 260,799-807]。
これは、CA4P治療を他の治療物、例えば、化学療法[Bilenkerら、(2005)Clin Cancer Res.11,1527-1533]、慣用の放射線療法[Ngら、(2012)Ann Oncol.23,231-237]、内部標的放射線療法および抗血管新生療法[Chenら、(2012)PLOS ONE 7,e41140;Kohら、(2009)Eur Radiol.19,2728-2238]と組み合わせる必要性を強調する。
これまで、進行性非小細胞肺癌[Zweifelら、(2011)Ann Oncol.22,2036-2041]、未分化甲状腺癌および白金耐性卵巣癌を有する患者における、CA4Pと化学療法の安全性および有効性が、第II/III相臨床試験において評価段階にある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、以下の記述でまとめられる。
1.20mm未満の直径を有する、無血管性または乏血管性微小腫瘍を治療するための、血管破壊剤(VDA)またはその塩若しくは溶媒和物若しくはプロドラッグ。
典型的には、微小腫瘍は、ヒト微小腫瘍である。
本発明の方法において治療される腫瘍は、無血管性または乏血管性であるため、それらのサイズは、限定される酸素および栄養素の供給を考慮して本質的に限定される。
以下に詳述されるとおり、微小腫瘍の最大サイズは、動物により左右される。
2.無血管性微小腫瘍を治療するための、記述1に記載の血管破壊剤(VDA)またはその塩若しくは溶媒和物若しくはプロドラッグ。
3.前記腫瘍が、内臓器官、例えば、肝臓、脾臓、腎臓または肺内で生じる、記述1または2に記載の微小腫瘍を治療するための血管破壊剤(VDA)またはその塩若しくは溶媒和物若しくはプロドラッグ。
具体的な実施形態は、血管を供給するための門部が不存在である膵臓中の腫瘍の治療を排除する。
4.前記腫瘍が、硬変または正常肝組織内で生じる、記述1~3のいずれか1つに記載の微小腫瘍を治療するための血管破壊剤(VDA)またはその塩若しくは溶媒和物若しくはプロドラッグ。
5.前記腫瘍が、1~10mm、または1~5mmの直径を有するヒト腫瘍である、記述1~4のいずれか1つに記載の微小腫瘍を治療するための血管破壊剤(VDA)またはその塩若しくは溶媒和物若しくはプロドラッグ。
6.前記腫瘍が、修正4スケールEdmondsonおよびSteiner体系により定義されるグレードI~IV腫瘍である、記述1~5のいずれか1つに記載の微小腫瘍を治療するための血管破壊剤(VDA)またはその塩若しくは溶媒和物若しくはプロドラッグ。
7.前記腫瘍が、修正4スケールEdmondsonおよびSteiner体系により定義されるグレードIまたはII腫瘍である、記述1~6のいずれか1つに記載の微小腫瘍を治療するための血管破壊剤(VDA)またはその塩若しくは溶媒和物若しくはプロドラッグ。
8.前記腫瘍が、カルシノーマ、例えば、原発性肝細胞癌(HCC)または肉腫、例えば、横紋筋肉腫である、記述1~7のいずれか1つに記載の微小腫瘍を治療するための血管破壊剤(VDA)またはその塩若しくは溶媒和物若しくはプロドラッグ。
9.VDAがチューブリン結合スチルベノイドまたはジヒドロスチルベノイドである、記述1~8のいずれか1つに記載の微小腫瘍を治療するための血管破壊剤(VDA)またはその塩若しくは溶媒和物若しくはプロドラッグ。
10.VDAがコンブレタスタチンA-4(CA4)、ZD6162若しくはSTA-9584またはそれらのプロドラッグ、塩若しくは溶媒和物である、記述1~9のいずれか1つに記載の微小腫瘍を治療するための血管破壊剤(VDA)またはその塩若しくは溶媒和物若しくはプロドラッグ。
上記記述のいずれかに記載の微小腫瘍を治療するための医薬組成物は、追加の抗癌医薬品をさらに含有し得る。
活性成分は、一緒にまたは別個に配合することができる。これらは、同一経路を介する、または異なる経路を介した投与のために製剤することができる。
11.20mm未満、典型的には、10mm未満の直径を有する無血管性または乏血管性微小腫瘍を治療する方法であって、有効量の血管破壊剤(VDA)またはその塩若しくは溶媒和物若しくはプロドラッグを投与するステップを含む方法。このような方法は、有効な補助療法と組み合わせ、または有効な補助療法が続いて、より治癒的なアウトカムに到達することができる。
【0005】
より治癒的な効果を得るため、典型的には、VDA剤の投与後翌日に、VDA誘導腫瘍壊死が、一旦、形成されたら、次いで第2の有効な補助療法の血管内投与を行うことができる。このようなさらなる治療剤は、典型的には、壊死組織を標的化する薬剤である。
【0006】
第2の有効な補助療法は、標的放射線治療剤、例えば、ヨウ素-131標識ヒペリシン(例示的な代表的な小分子ネクローシス・アヴィッド(necrosis-avid)化合物である)の血管内投与により実施することができる。これらの化合物は壊死腫瘍において蓄積し、ある浸透距離でイオン化放射線、例えば、高エネルギーベータ粒子を放出して隣接する残留生存癌細胞を殺傷する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1実験設計のフローチャート。DENA:ジエチルニトロソアミン;HCC:肝細胞癌(hepatocellular carcinoma);T2WI:T2強調イメージング(T2-weighted imaging);T1WI:T1強調イメージング(T1-weighted imaging);DWI:拡散強調イメージング(diffusion-weighted imaging);CE:造影増強(contrast-enhanced);CA4P:コンブレタスタチンA4リン酸;n:動物数;t:腫瘍数;φ:直径;h:時間;iv:静脈内。
図2微小HCCおよび大型HCC間のCA4P治療効力の比較。 A.≦5mmの微小HCCおよび>5mmのHCCにおける、CA4Pにより誘導された腫瘍壊死の割合の散布図。有意な負の線形相関が、CA4Pにより誘導された腫瘍壊死および>5mmの直径を有する腫瘍間で同定された一方(P<0.05)、腫瘍壊死は、≦5mmの直径を有する腫瘍と線形相関しなかった。 B.≦5mmの微小HCCおよび>5mmの大型HCC間のCA4Pにより誘導された腫瘍壊死の平均割合を比較する棒グラフ(*P<0.01)。
図3A-B】 CA4Pにより誘導されたほぼ完全な壊死を有する代表的な微小HCCのインビボMRIおよび死後検証。 A.微小癌の腫瘍1(矢印)のインビボMRI所見:T2WIにおける、処理前の高信号および12時間後における増加した高信号(a1~b1);造影前T1WIにおいて、明らかな変化は存在せず、ほぼ等信号である(a2~b2);ADCマップ上、ベースラインにおける中程度の高信号および12時間後における増加したシグナル(a3~b3);および、CE-T1WI上、ベースラインにおける最小の増強およびCA4P処理12時間後における遅延した造影増強(a4~c4)。 B.乏しい腫瘍血管性を示す、対応する微小血管造影(a1)超接写写真(Macrophotograph)(b1)および病理組織診断(H&E染色;c1、原寸の25倍、スケールバー=400μm;c2、原寸の200倍、スケールバー=50μm。NT:壊死腫瘍;VT:生存腫瘍;L:肝臓)は、ほぼ完全な腫瘍内壊死を明らかにした。C.DWIに由来するADCの定量。ADCperf(a)は、血液灌流(perfusion)がCA4P処理後に硬変肝中で急激に減少したことを示し(P<0.01)、腫瘍中でも降下を伴った。ADCdiff(b)は、12時間後においてわずかに増加し、CA4Pにより誘導された腫瘍内壊死を示唆し;その一方、肝臓のADCdiffは、有意な変化を示さなかった。
図3CCA4Pにより誘導されたほぼ完全な壊死を有する代表的な微小HCCのインビボMRIおよび死後検証。 A.微小癌の腫瘍1(矢印)のインビボMRI所見:T2WIにおける、処理前の高信号および12時間後における増加した高信号(a1~b1);造影前T1WIにおいて、明らかな変化は存在せず、ほぼ等信号である(a2~b2);ADCマップ上、ベースラインにおける中程度の高信号および12時間後における増加したシグナル(a3~b3);および、CE-T1WI上、ベースラインにおける最小の増強およびCA4P処理12時間後における遅延した造影増強(a4~c4)。 B.乏しい腫瘍血管性を示す、対応する微小血管造影(a1)超接写写真(Macrophotograph)(b1)および病理組織診断(H&E染色;c1、原寸の25倍、スケールバー=400μm;c2、原寸の200倍、スケールバー=50μm。NT:壊死腫瘍;VT:生存腫瘍;L:肝臓)は、ほぼ完全な腫瘍内壊死を明らかにした。C.DWIに由来するADCの定量。ADCperf(a)は、血液灌流(perfusion)がCA4P処理後に硬変肝中で急激に減少したことを示し(P<0.01)、腫瘍中でも降下を伴った。ADCdiff(b)は、12時間後においてわずかに増加し、CA4Pにより誘導された腫瘍内壊死を示唆し;その一方、肝臓のADCdiffは、有意な変化を示さなかった。
図4肝硬変に基づく微小HCCにおけるCA4Pにより誘導された壊死の死後検証。A.微小血管造影(a1~f1)は、腫瘍壊死が生じた腫瘍2~6において現れたまばらな血管密度を示唆し、希少な腫瘍壊死が誘導された腫瘍7において大きい血管湖(vascular lakes)が存在することを示唆し;拡大写真(photomacrographs)(a2~f2)および顕微鏡観察(H&E染色;a3~f3、原寸の12.5倍、スケールバー=800μm;a4~f4、原寸の100倍、スケールバー=100μm)は、腫瘍2~5において生じたほぼ完全な壊死、腫瘍6において誘導された部分的な壊死、および腫瘍7において希少な壊死を検証した(NT:壊死腫瘍;VT;生存腫瘍;L:肝臓;V:血管湖(vascular lake))。腫瘍2、3および7の硬変肝周辺(sounding cirrhotic liver)中には斑状壊死(鏃印)も散在した。B.病理組織診断(H&E染色;a1、b1、原寸の50倍、スケールバー=200μm;a2、b2、原寸の200倍、スケールバー=50μm)は、壊死病巣(鏃印)が硬変肝実質(cirrhotic liver parenchyma)中に存在したことを実証した(NL:壊死肝;VL:生存肝)。
図5】長軸および短軸の直径が3.3および2.5の微小横紋筋肉腫R1腫瘍を、肝に移植したラットにおける、CA4P処理の12時間後の代表例を示す。図5A:T2強調水平断MRIにおいて、楕円形の高信号肝病変(矢印)が左肝葉(LL)中に現れる;RL、右肝葉;S、胃;およびC、結腸。B:造影剤Gd-DOTA投与の15分後、左肝(LL)病変は、壊死を示唆する中央の暗色領域により増強される(矢印);RL、右肝葉;S、胃;およびC、結腸。C:小型すぎて表面から見ることができない微小横紋筋肉腫R1腫瘍(矢印)を含む肝標本。D:対応する微小血管造影は、壊死を示唆する陰影欠損(filling defect)として病変を示す(矢印)。E:病変(矢印)は、肝切片(上段)および対応する微小血管造影(下段)上でトレースすることができる。F:低出力HE染色顕微鏡観察は、この実質的に乏血管性~無血管性のR1腫瘍の周囲の組織反応および考えられる腫瘍残留物を伴う大量および部分的出血性腫瘍壊死を明らかにする。G:高出力HE染色顕微鏡観察は、中心壊死および顕著な腫瘍内血管系を有さない生存するR1腫瘍細胞の周囲の数層を明らかに示す。H:対応する免疫組織化学CD34-PAS二重染色顕微鏡観察は、HE染色を用いた所見を裏付ける。
図6異なる倍率(25および100倍)における、処理していない微小腫瘍の組織形態学的検査。上段パネルは、ヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)染色による染色を示す。下段パネルは、CD34および過ヨウ素酸シッフ(PAS)二重染色を示す。
図7巨大癌と微小癌との間の模式的な治療の有効性。備考:T:悪性腫瘍;TN:CA4Pにより誘導された腫瘍壊死;β粒子は、浸透が約2.0mmであり(点線間の領域)、それは治癒効果についてのδよりも大きい。
【発明を実施するための形態】
【0008】
発明の詳細な説明全体にわたり使用される略語
VDA:血管破壊剤;
CA4P:コンブレタスタチンA-4リン酸;
HCC:肝細胞癌;
MRI:磁気共鳴イメージング;
T2WI:T2強調イメージング;
DWI:拡散強調イメージング;
CE:造影増強(contrast-enhanced;
T1WI:T1強調イメージング;
ADC:見かけの拡散計数(apparent diffusion coefficient);
RECIST:固形腫瘍における治療効果判定基準(Response Evaluation Criteria in Solid Tumors);
DCE:ダイナミック造影増強(dynamic contrast enhanced);
DENA:ジエチルニトロソアミン;
TSE:ターボスピンエコー;
EPI:エコープラナーイメージング;
SD:Sprague Dawley;
ROI:関心領域(region of interest);
SI:シグナル強度;
H&E:ヘマトキシリンおよびエオシン;
SEM:標準誤差。
【0009】
以下の詳細な説明は、事実上例示にすぎず、本発明または用途および本発明の使用を限定するものではない。
さらに、前述の本発明の背景技術または以下の詳細な説明に提示されるいかなる理論によっても拘束されるものではない。
【0010】
本発明の以下の詳細な説明は、添付の図面を参照する。異なる図面における同一の参照番号は、同一または類似の要素を特定する。さらに、以下の詳細な説明は、本発明を限定するものではない。その代わり、本発明の範囲は、付属の特許請求の範囲およびその均等物により定義される。
【0011】
いくつかの文書が本明細書の本文全体にわたり引用されている。本明細書に記載された文献のそれぞれ(任意の製造業者の仕様書、説明書などを含む)は、参照により本明細書に組み込まれ;しかしながら、いかなる引用文書も事実上本発明の先行技術であることを承認するものではない。
【0012】
本発明は、特定の実施形態に関して、およびある図面を参照して記載されるが、本発明はそれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。記載される図面は、模式的なものにすぎず、非限定的である。
図面において、要素の一部のサイズは、説明目的のために強調され、一定の縮尺で描画されないことがある。寸法および相対寸法は、本発明の実施のための実際の縮図に対応しない。
【0013】
さらに、詳細な説明中および特許請求の範囲中の第1、第2、第3などの用語は、類似の要素間の区別のために使用され、必ずしも順序または時系列を記載するために使用されない。そのように使用される用語は、適切な状況下で互換的であることおよび本明細書に記載の本発明の実施形態は、本明細書に記載または説明される以外の他の順序においても操作が可能であることを理解すべきである。
【0014】
さらに、詳細な説明中および特許請求の範囲中の頂部、底部、上方、下方などの用語は、説明目的として使用されるものであり、必ずしも相対的位置を記載するものではない。そのように使用される用語は、適切な状況下で互換的であることおよび本明細書に記載の本発明の実施形態は、本明細書に記載または説明される以外の方向に操作が可能であることを理解すべきである。
【0015】
特許請求の範囲において使用される用語「含む」は、その後に列挙される手段に限定するものと解釈すべきではなく;それは他の要素もステップも除外しないことに留意すべきである。したがって、言及されるとおり、記述される特色、整数、ステップまたは構成成分の存在を規定するものであるが、1つ以上の他の特色、整数、ステップ若しくは構成成分、またはその群の存在も追加も排除するものではないと解釈すべきである。したがって、「手段AおよびBを含む装置」という表現の範囲は、構成成分AおよびBのみからなる装置に限定されるべきではない。本発明に関して、それは、装置の唯一の関連する構成成分がAおよびBであることを意味する。
【0016】
本明細書全体にわたる「一実施形態」または「実施形態」への言及は、その実施形態に関連して記載される特定の特色、構造または特徴が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書の全体にわたる種々の箇所における語句「一実施形態において」または「実施形態において」の出現は、全て必ずしも同一の実施形態を指すわけではないが、そうであってもよい。さらに、特定の特色、構造または特徴は、1つ以上の実施形態において、本開示から当業者に自明であるとおり、任意の好適な様式で組み合わせることができる。
【0017】
同様に、本開示を合理化し、種々の本発明の態様の1つ以上の理解を補助する目的のため、本発明の例示的な実施形態の説明において、種々の本発明の特色を、単一の実施形態、図面またはその説明中において一緒にグループ化する場合があることを認識すべきである。
しかしながら、本開示のこの方法は、特許請求される本発明が、それぞれの請求項において明記されるよりも多くの特色を要求する意図を反映するものであると解釈されるべきではない。むしろ、以下の特許請求の範囲が反映するとおり、本発明の態様は、上記で開示された単一の実施形態の全ての特色よりも少ない特色で存在する。したがって、詳細な説明に続く特許請求の範囲は、本明細書によりこの詳細な説明に明示的に組み込まれ、それぞれの請求項は本発明の個々の実施形態としてそれ自体で成立する。
【0018】
さらに、本明細書に記載の一部の実施形態は、他の実施形態に含まれる一部の特色を含むが、他の特色を含まない一方、異なる実施形態の特色の組合せは、本発明の範囲内にあることを意味し、当業者により理解されるとおり異なる実施形態を形成する。例えば、以下の特許請求の範囲において、クレームされた実施形態のいずれかを任意の組合せで使用することができる。
【0019】
本明細書に記載される詳細な説明において、多数の具体的な詳細が記載される。しかしながら、本発明の実施形態は、これらの具体的な詳細なしで実施することができることが理解される。他の例において、この詳細な説明の理解が不明瞭にならないために、周知の方法、構造および技術は詳細に示さなかった。
【0020】
本発明の他の実施形態は、本明細書の考慮および本明細書に開示される本発明の実施から当業者に自明である。
【0021】
本明細書および実施例は、例示にすぎないとみなされることを意図する。
【0022】
いずれの請求項も、本発明の実施形態として本明細書に組み込まれる。したがって、特許請求の範囲は、詳細な説明の一部であり、さらなる説明であり、本発明の好ましい実施形態に追加される。
【0023】
請求項のそれぞれは、本発明の特定の実施形態を記載する。
【0024】
本発明の特定および好ましい態様は、添付の独立および従属請求項に記載される。従属請求項からの特色は、独立請求項の特色と、および他の従属請求項の特色と適宜組み合わせることができ、特許請求の範囲に明記されているもののみに限らない。
【0025】
したがって、詳細な説明に続く特許請求の範囲は、本明細書に明示的に詳細な説明に組み込まれ、それぞれの請求項は本発明の別個の実施形態としてそれ自体で成立する。
【0026】
本発明に関する「血管破壊剤」(VDA)は、既に樹立された腫瘍血管系の内皮細胞および周囲細胞を標的とする化合物の機能的定義を指す。
これらの化合物は、腫瘍における新血管形成プロセスを阻止するために使用される抗血管新生化合物と異なる。VDAという一般的用語はまた、薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、またはプロドラッグも包含する。
【0027】
最良に特徴付けされたVDAは、チューブリン結合剤およびフラボノイドである。
【0028】
チューブリン結合剤は、内皮チューブリンの[ベータ]サブユニットに作用することにより機能し、微小管の脱重合並びにアクチンおよびチューブリンの脱組織化をもたらす。これらは、細胞骨格の、および細胞間ジャンクション構成タンパク質の破壊を決定する。
これらは、内皮細胞形状の重大な変化、血管浸透性の増加、血流の阻害が続く間質圧の増加および血管収縮を誘導する。結果は、血流の急速崩壊、顕著な虚血、壊死および腫瘍出血である。これらの効果は、腫瘍の中心区域においてより顕著である。
【0029】
具体的なクラスのVDAは、コンブレタスタチンである。これらは、コンブレタスタチンA4に構造的に関連する化合物である。
【0030】
全てのものがコルヒチンに構造的に関連し、それとしては、コンブレタスタチンA-4(CA4)、そのプロドラッグCA4リン酸(CA4P)、CA4Pアナログ[3-メトキシ-2-ホスホナトオキシ-6-[(Z)-2-(3,4,5-トリメトキシフェニル)エテニル]フェニル]リン酸(Oxi4503)(コンブレタスタチンA1リン酸)、および(2S)-2-アミノ-3-ヒドロキシ-N-[2-メトキシ-5-[(Z)-2-(3,4,5-トリメトキシフェニル)エテニル]フェニル]プロパンアミド(AVE8062)、メチル-[5-[[4-[[(2S)-2-アミノプロパノイル]アミノ]フェニル]スルファニル]-1H-ベンズイミダゾール-2-イル]カルバメート一塩酸塩(MN-029)、N-アセチルコチノール(acetylcochinol)-O-リン酸(ZD6126)、(3Z,6Z)-3-[(5-tert-ブチル-1H-イミダゾール-4-イル)メチレン]-6-(フェニルメチレン)-2,5-ピペラジンジオン(NPI-2358)、およびN-エチル-N_-[2-メトキシ-4-[5-メチル-4-[[(1S)-1-(3-ピリジニル)ブチル]アミノ]-2-ピリミジニル]フェニル]ウレア(CYT997)が挙げられる。
【0031】
このようなアナログの一例は、活性代謝産物RPR258063に変換されるプロドラッグのオンブラブリンである。
【0032】
具体的な実施形態において、VDAは、CA4P、ZD6162、およびSTA-9584からなる群から選択される。
【0033】
以下のチューブリン結合剤は、臨床開発に入れられている:CA4P、AVE8062、ABT-751、NPI-2358、ドラスタチン-10、MPC6827、CYT997、TZT-1027、ZD6126、BNC105P、EPC2407、MN-029およびOxi4503。
【0034】
多数のVDAが、当分野において記載されている。上記段落に挙げられ、以下の引用文献に開示される全てのVDAは、参照により本出願に組み込まれ、コンブレタスタチンA-4(CA4)およびそのプロドラッグCA4リン酸(CA4P)の妥当な代替物である。
【0035】
特許および非特許文献の非限定的なリストを以下に列挙する。
【0036】
米国特許出願公開第93583038号明細書は、VDA、例えば、コルヒチン、コルヒチノイド、コンブレタスタチン、フェンスタチン、ポドフィロトキシン、ステガナシン、アンフェチニル(amphethinile)、スチルベンおよびフラボノイドを記載している。具体的なコルヒチン様分子は、アザデメチルコルヒチン、アザコルヒチン、N-メチルデスアセチルコルヒチンおよびデスアセチルコルヒチンである。
【0037】
米国特許出願公開第2010168036号明細書は、コンブレタスタチンA-4、コンブレタスタチンA-4リン酸、コンブレタスタチンA-1、コンブレタスタチンA-1二リン酸を開示している。
【0038】
米国特許出願公開第20070178107号明細書は、コンブレタスタチンA-4リン酸二ナトリウム、ZD6126、AVE8062、およびOxi4503;並びにフラボノイド、DMXAAを開示している。
【0039】
米国特許出願公開第20080214509号明細書は、参照により本明細書に明示的に組み込まれる種々のコンブレタスタチン構造アナログを記載している。
【0040】
Mahalら、(2016)Eur J Med Chem.118,9-20は、コンブレタスタチンA-4由来の、5-(1-メチル-4-フェニル-イミダゾール-5-イル)インドールを記載している。
【0041】
Macdonoughら、(2013)Bioorg Med Chem.21,6831-6843は、2-(3’-ヒドロキシ-4’-メトキシフェニル)-3-(3’’,4’’,5’’-トリメトキシベンゾイル)-6-メトキシインドール(OXi8006)に由来するインドール系抗癌剤を開示している。
【0042】
Rajakら、(2013)Curr Pharm Des.19,1923-1955は、コンブレタスタチンシス拘束型異性体アナログを開示している。
【0043】
Foleyら、(2012)J Pharmacol Exp Ther.343,529-538は、血管破壊剤STA-9584を開示している。
【0044】
Shiraishiら、(2012)Pharm Res.29,178-186は、種々のコンブレタスタチン誘導体を記載している。
【0045】
Delmonte & Sessa(2009)Expert Opin Investig Drugs.18,1541-1548は、新たなコンブレタスタチン誘導体のAVE8062を開示している。
【0046】
Nicholsonら、(2006)Anticancer Drugs 17,25-31は、腫瘍血管破壊剤のNPI-2358を開示している。
【0047】
Wallaceら、(2007)Cancer Res.67,7011-7019は、血管破壊剤DMXAAを開示している。
【0048】
Dupeyreら、(2006)Bioorg Med Chem.14, 4410-4426は、抗血管剤としての(3,4,5-トリメトキシフェニル)インドール-3-イルメタン誘導体を開示している。
【0049】
VDAフラボノイドの一例は、フラボン-8-酢酸アナログASA404(バジメザン)である。
【0050】
腫瘍血管系を標的化する他の化合物としては、リガンド指向VDA[エンド-TAG(カチオン性脂質パクリタキセル)、ADH-1のexherin、サイトカイン、例えば、腫瘍ホーミングペプチド-TNF、細胞毒性剤、例えば、パプリタキセル(paplitaxel)が挙げられる。
【0051】
上記の化合物の薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、またはプロドラッグが同様に想定される。
【0052】
本明細書に記載の化合物は、化合物それ自体として投与することができ、または医薬品として製剤化することができる。医薬品/医薬組成物は、場合により、1つ以上の薬学的に許容可能な賦形剤、例えば、担体、希釈剤、増量剤、崩壊剤、滑沢剤、結合剤、着色剤、色素、安定剤、保存剤、酸化防止剤、または溶解度向上剤を含み得る。
【0053】
任意の特定の個々の対象についての具体的な用量レベルおよび投薬の頻度は変えることができ、種々の因子、例として、用いられる具体的な化合物の活性、その化合物の代謝安定性および作用の長さ、年齢、体重、全身健康状態、性別、食事、投与方式および時間、排泄速度、薬物組合せ、特定の病態の重症度、並びに治療法を受ける個々の対象に依存する。
【0054】
本明細書に開示の化合物は、他の治療剤との、特に他の抗癌薬との組合せで使用することができる。
【0055】
VDAは、典型的には、静脈内または腹腔内投与により投与される。あるVDAは、経口投与することができることが当分野において公知である。
【0056】
薬物の用量および薬物の投与の頻度は、動物モデルおよび臨床試験において評価され、パラメータ、例えば、腫瘍のサイズ、腫瘍のグレード、副作用および他の薬物との最終的な同時投与に依存する。
【0057】
本発明に関する「微小癌」または「微小腫瘍」は、5mm未満の直径を有するラット中の腫瘍を指す。ヒト(または大型動物、例えば、ウマ、非ヒト霊長類、およびウシ)中の微小癌または微小腫瘍は、20mm未満、15mm未満、または10mm未満の直径を有する腫瘍を指す。
【0058】
「無血管性」または「乏血管性」腫瘍はそれぞれ、明白な血管を有さない、または対応する健常組織中の血管よりも少ない血管を有する悪性腫瘍塊を指す。これは、対応する健常組織中の血管よりも多い血管を有する血管過多性腫瘍と対照的である。
【0059】
本発明の具体的な実施形態は、無血管性または乏血管性肝細胞癌(HCC)[例として、不明瞭な結節状の分化した腫瘍(「早期」HCC)]、および、「古典的」大型HCCと類似する組織学的特色を有する明瞭な結節状の病変(明瞭な結節型の小型HCC)、または肝臓への転移性腫瘍若しくは肝臓以外の器官中の腫瘍の治療に関する。
【0060】
本発明に関する「治療」は、治療中の対象の健康状態の改善を指し、それとしては、腫瘍の成長の遅延、腫瘍の成長の阻害および典型的には腫瘍の縮小が挙げられる。健康状態の改善の他の指標としては、腫瘍の壊死の発生、腫瘍若しくは転移の消失、または重症度の低い腫瘍グレード分類への腫瘍の分類が挙げられる。
【0061】
血管破壊剤(VDA)の抗癌活性は、残留癌細胞により包囲される腫瘍壊死および「正」の容量応答関係を特色付ける。
本発明者らは、磁気共鳴イメージング(MRI)および死後技術を使用して、ラット中の肝細胞癌(HCC)の腫瘍サイズに関して、VDAコンブレタスタチンA-4リン酸(CA4P)の効力を調査した。19匹のラットに、肝硬変に、直径2.8~20.9mmの43個の原発性HCCを化学的に誘導させた。
ラットは、CA4Pを静脈内で10mg/kgを受容した。
腫瘍直径を、T2強調イメージング(T2WI)により計測して、大型HCCに対して、微小癌(O<5mm)を規定した。血管応答および組織壊死を、拡散強調(DWI)および造影増強T1強調イメージング(CE-T1WI)により検出し、それらを微小血管造影および病理組織診断により検証した。
DWIに由来するあきらかな拡散係数(ADC)マップおよびCE-T1WIは、7つの微小HCCのうち5つにおいてほぼ完全な壊死を明らかにしたが、大型HCCにおいては多様な治療的壊死を明らかにし、腫瘍サイズとの正の相関を示した。
微小HCCにおける壊死は、大型HCCよりも36.9%多かった。ADCperfは、微小HCCにおいてもまた降下を伴う、硬変肝において急激に減少した血液灌流(perfusion)を示した。
ADCdiff増加は、腫瘍壊死を示唆し、硬変肝はほぼ不変であった。
微小血管造影および病理組織診断は、微小癌における、大量の、部分的なおよび軽度の腫瘍壊死が、それぞれ、5:1:1であり、そして、硬変肝中の斑状の壊死病巣を明らかにした。
この試験において、より完全なCA4P応答は、硬変肝中のCA4Pにより誘導された壊死病巣とともに、ラット中の微小HCCにおいて予想外に生じた。
MRIは、血管反応および腫瘍壊死の検出を可能とした。これらは、HCCおよび肝硬変を有する患者におけるVDAの臨床応用の計画を補助し得る。
【0062】
他の化学療法に関して、VDA処理後の「逆の」容量応答関係が留意されてきた。それというのも、VDAの抗腫瘍効力は腫瘍が大きく成長するにつれて増加すると考えられたためであった[Garonら、(2016)OncoTargets Ther.9,7275-7283]。
腫瘍サイズの増加およびVDAのより良好な治療効果間のこのような相関が、前臨床試験における複数のネズミアログラフトおよびゼノグラフトモデルにおいて観察されている[Nielsenら、(2010)Acta Oncol.49,906-913;Landuytら、(2000)Eur J Cancer.36,1833-1843;Siemann & Rojiani(2005)Int J Radiat Oncol Biol Phys.62,846-853]。
例えば、皮下横紋筋肉腫のラットアログラフトモデルにおいて、大型腫瘍(≧14cm3)におけるCA4P効力は、小型腫瘍(<1cm3)におけるものよりも16.6倍強力であった。
同様に、ZD6126の腹腔内注射は、げっ歯類肉腫、扁平上皮癌および線維肉腫、並びにヒト腎細胞癌、カポジ肉腫および乳癌を含む、いくつかのマウスのゼノグラフトモデルにおいて、0.3g未満の小型腫瘍における約たったの25%と比較して、1gよりも大きい腫瘍においてほぼ90%の壊死を齎した。
さらに、この傾向は、進行性未分化甲状腺癌の臨床試験においても示されている[Sosaら、(2013)Thyroid 24,232-240]。
これらの強力な証拠にもかかわらず、その機序は依然として解明されていない。小型腫瘍におけるVDAの劣った効果は、血液供給のそれらの主要部分が大部分、周囲の正常組織の血管から由来(rooting)することに起因する可能性が高い[Dong & Lin(1993)J Vasc Interv Radiol 4,621-624]。
実際、直径が5mmよりも小さい腫瘍は、それら自体の血管系を欠くことが多く、それらの宿主器官から拡散される栄養素により栄養供給される。
【0063】
CA4Pは、数時間以内に急性腫瘍壊死を引き起こすため、VDA試験の終点において定型的に採用される慣用のイメージング基準の固形腫瘍における治療効果判定基準(RECIST)は、腫瘍サイズの変化前に生じる早期および一過的腫瘍血管反応を検出する必要性の高まりを完全には満たし得ない。
磁気共鳴イメージング(MRI)は、2mmほど小型のラット肝腫瘍を識別するほどの高い感度および優れた軟組織造影のものであることが公知である[Niら、(1992)Invest Radiol 27,689-697]。
これまで、マルチパラメトリック法(例として、ダイナミック造影増強(DCE)-MRIおよび拡散強調イメージング(DWI))が、機能的情報(例えば、血液灌流(perfusion)、流体拡散、血液容量、血管浸透性および血管外細胞外空間)を取得するため、並びにリアルタイムの血管応答を非侵襲的にモニタリングするために、前臨床および臨床試験の両方においてますます適用されてきている[Wangら、(2009)Invest Radiol.44,44-53;Wangら、(2010)Eur Radiol.20,2013-2026]。
【0064】
本試験において、本発明者らは、ラットにおける化学的に誘導された原発性肝臓癌または肝細胞癌(HCCS)モデルを用い、異なるサイズ、特に、2~5mmの範囲の直径の肝臓微小癌病変における、HCCに対するCA4Pの治療効力を評価した。
換言すると、ヒトリストコイルを用いる3.0T臨床MRIを利用して、12時間以内のCA4Pに対するインビボ早期血管応答を特徴付けし、イメージング所見をエクスビボ微小血管造影および病理組織診断によりさらに検証した。
【0065】
硬変肝中のHCCの発症は、腫瘍血液供給の多段階リモデリングにより特徴付けられる[Yang & Poon(2007)Anat Rec 91,721-734.]。
HCCは、一般に、主に肝動脈枝により供給される血管過多性固形腫瘍である[Park(1998)Am J Surg Pathol.22,656-662]。
しかしながら、ヒト患者における小型HCC(<2cm)は血管過多性でないことが多く[Golfieri Rら、(2007)Dig Liver Dis.39,883-890]、2つのタイプ、すなわち、不明瞭な結節状の高分化腫瘍(「早期」HCC)、および「古典的」大型HCCと類似する組織学的特色を有する明瞭な結節状の病変(明瞭な結節型の小型HCC)にさらに分類することができる[Efremidisら、(2007)Eur Radiol.17,2969-2982]。
同様に、DENAにより誘導されたラット肝臓癌において、5mmよりも小さい肝腫瘍結節が根本的に門脈(portal vein)により供給されることが示されており、それは、大型ラットHCCと区別する。
多様なHCC血管性を考慮すると、早期HCCを微小HCCのサブグループとして分析することが有益である。
【0066】
この前臨床試験において、本発明者らは、硬変肝バックグラウンド上に散在する処理により誘導された壊死病巣とともに、ラットにおけるDENAで誘導された原発性HCCの微小癌(<5mm)におけるほぼ完全なCA4P治療応答を、初めて報告した。
ADCから計算された灌流(perfusion)および拡散は、肝臓全体の血液供給の劇的な低下に続く、早期腫瘍血管反応および壊死を説明するのに役立った。
2つの主な因子が、微小癌におけるCA4Pのこの優れた効力に相乗的に寄与し得る、
1)そのような「早期HCC」、「小型HCC」または微小HCCにおける、無血管性および/または乏血管性の特色;および、
2)CA4Pが媒介する抗チューブリン効果に対しても脆弱な硬変肝実質中の新血管形成。
結果的に、宿主肝中の血管遮断および虚血性壊死により、微小HCCから必要不可欠な栄養素が奪われ得、目下の逆説的な所見がもたらされる。
【0067】
肝硬変は、慢性ウイルス肝炎、アルコール、アフラトキシンなどに起因し得る高リスクの前癌性病態として広く考慮されている[Maier KP.(1998)Praxis 87,1462-1465;Schlageterら、(2014)World J Gastroenterol 20,15955-15964]。
げっ歯類における発癌性物質DENAの適用は、この病理学的進行を刺激し得、最終的に、肝硬変を前提として原発性肝臓癌を誘導する[Liu、(2015)Quant Imaging Med Surg.5,708-729]。
肝線維症の発症は、硬変肝に特有の異常な血管構築を徐々に形成する病的血管新生を伴う[Fernandezら、(2009)J Hepatol.50,604-620;Iwakiriら、(2014)J.Hepatol.61,912-924]。
特に、本発明者らの試験において見られる、硬変肝におけるCA4Pにより誘導された壊死は、肝線維形成進行における新血管形成が、VDAにより同等に標的化され得る腫瘍血管新生と共通する何かを共有し得ることを示す。
しかしながら、移植されたR1腫瘍を有する正常肝に関する本発明者らの補助試験は、新血管系を有する硬変肝に対するCA4Pの攻撃がそれらの微小癌における続発性の大量壊死の原因となり得るという仮定を支持するとは考えられない。このような不可解な観察の根本をなす真の機序をさらに解明する必要がある。
【0068】
DWIは、早期のVDAで誘導された腫瘍血管応答をモニタリングし、さらに腫瘍壊死を示すための著名なイメージングマーカーであるが、本発明者らの試験における腫瘍灌流(perfusion)および拡散に関して計算されたADCの変化は、それほど有意であるとは見えなかった。
関連する理由は、腫瘍容積が小型すぎる場合のMRIアーチファクトの増加、および本試験におけるリクルートされた肝臓微小癌の症例の少なさであり得る。
第2に、硬変肝における血液供給の有意な変更および臨床試験における肝硬変におけるそのようなVDAの副作用に関する報告の欠落を考慮すると、正常および硬変肝におけるVDA効果を比較するための並行試験を実施することが有益である。
【0069】
結局、本所見は、硬変バックグラウンドにおける肝臓内微小転移巣だけでなく、再発性ヘパトーマ病巣に対する、CA4Pの阻止的効果にも光を当てた。
しかしながら、他方、このような現象はまた、慢性肝疾患を基礎として硬変に達している患者において、硬変肝および後続の肝不全におけるCA4Pで誘導された壊死の潜在的な形成のため、将来的なCA4P療法の間には、基本的に、肝機能を保護するという認識も上昇させる。
これらは、HCCおよび肝硬変を有するヒト対象において、CA4Pのさらなる臨床適用の計画に潜在的に有益であり得る。
【0070】
微小癌におけるVDA、例えば、CA4P、の強力な効果の発見は、癌患者の臨床管理において大いに重要であり得る。
特に、VDA単剤療法が無効であることが証明されたことを認識することで、壊死標的化二重療法の組合せは、残留癌組織を最小化して潜在的に治癒的な応答を付与することを要求する。
原発性HCCおよび続発性横紋筋肉腫R1腫瘍の両方の微小癌に関する本発明者らの試験は、従来技術の二重療法がより完全な治療アウトカムを達成し得ることを示唆する。それというのも、残留生存腫瘍細胞は、周囲において実に最小であるためであり、それは、131Iヨウ化ネクローシス・アヴィッド小分子、例えば、ヒペリシン、から放出される高エネルギーβ粒子の2mmの浸透距離内に十分に存在する。
したがって、腫瘍塊軽減緩和措置としての後期癌患者における使用に代えて、そのような二重標的療法は、それが極めて早期、すなわち、微小癌段階において適用することができる場合、治癒的アウトカムを生じさせ得る。
【実施例
【0071】
一般的条件
合計43個の原発性HCC病変を、19匹のラットにおいて良好に生成させた。これらのうち、7匹のラットを、それぞれの1つの微小HCCを有すると同定した。全てのラットは、肝細胞癌生成のためのジエチルニトロソアミン(DENA)強制投与、ガス麻酔、造影剤投与を伴うMRIスキャニング、および静脈内CA4P処理を含む実験手順にわたり生存した。
全てのラットを、インビボ試験の終点としてのCA4P処理の12時間後に屠殺した。
【0072】
大型HCCにおける「正の」容量応答関係
本発明者らは最初に、種々の腫瘍直径における43個のHCC間で、CA4Pにより誘導された腫瘍壊死を比較して、CA4Pの抗腫瘍効力および原発性HCCの腫瘍サイズ間の関係を調査した(図1)。
CA4Pが大型腫瘍において増加した活性を示した従来の研究と一致して、この試験におけるCA4P効力は、5.7mm~20.9mmの範囲の直径を有する大型HCCと正に相関すると考えられたが、治療壊死の割合において、大きい相違を示した(図2A)。
【0073】
肝臓微小癌におけるCA4Pの逆説的効果
驚くべきことに、広範な治療の腫瘍壊死は、小型HCC、すなわち、直径が5mmよりも小さい肝臓微小癌のサブグループにおいて高頻度に生じた(図2A)。
80%~ほぼ100%の範囲の腫瘍壊死が、7つの微小癌病変のうち5つにおいて見出された。
定量的には、肝臓微小癌における腫瘍壊死の割合は、CA4P処理後の大型HCCよりも、36.93%高かった(図2B)。
【0074】
肝臓微小癌における早期の劇的な反応は、代表的な肝臓微小癌の腫瘍1により実証されたように、リアルタイムマルチパラメトリックMRIにより検出することができた(図3A)。
ベースラインにおいて、微小癌は、T2WIにおいて、わずかに高信号で現れ(図3Aa1)、T1WIにおいて、ほぼ等信号で現れ(図3Aa2)、ADCマップ上で中程度に高信号で現れ(図3Aa3)、CE-T1WI上でほぼ無増強で現れ、それは乏血管性を示唆した(図3Aa4)。
CA4P処理の12時間後、大量腫瘍壊死が誘導され、T2WIにおいて、腫瘍全体内の強力な高信号(図3Ab1)、腫瘍ADCの増加(図3Ab3)、および造影前T1WI(図3Ab2)と比較したCE-T1WIにおける造影増強の遅延(図3Ab4)により明らかになった。
これらのイメージングの所見を、死後微小血管造影および病理組織学的評価により検証した(図3B)。
微小血管造影は、腫瘍血管密度の低減を示した(図3Ba)。担腫瘍肝組織の肉眼的標本(図3Bb)および対応するH&E染色顕微鏡写真は、硬変肝上で重ね合わせるとほぼ完全な腫瘍壊死を裏付けた(図3Bc1、3Bc2)。
【0075】
硬変肝における血液灌流(perfusion)の降下は、微小癌における大量壊死の原因であるか?
小型腫瘍が、それら自体の樹立された血管系の欠落に起因して、VDA処理に不十分に応答する傾向があるという全体的な合意を考慮し、本発明者らは、次に、硬変肝の周辺における血液供給が同様にCA4Pにより影響を受け、したがって、それが微小癌における続発性の虚血性壊死を引き起こしたという本発明者らの仮説を試験した。
腫瘍および硬変肝の周辺の両方における血管挙動を、ADC計算により評価した。
定量的ADCperfは、第1に、ベースラインにおいて、硬変肝が微小HCCと比べて有意に過灌流(hyperperfused )であることが考えられることを示し(p<0.05);第2に、CA4Pは、肝周辺における血液灌流(perfusion)を急激に減少させ(p<0.05)、その結果、腫瘍灌流(perfusion)の降下を伴った(図3Ca)。
この所見は、硬変肝の血管系もまた、CA4Pにより重度に影響を受け、少なくとも12時間の継続的な肝虚血および肝周辺からの供給に完全に依存する肝臓微小癌に続発性の損傷をもたらすことを示唆する。
その一方で、腫瘍ADCdiffはわずかに上昇したが、肝周辺においてはほぼ不変であり、腫瘍壊死形成を示唆した(図3Cb)。
【0076】
硬変肝における散在壊死を伴う肝臓微小癌における大量壊死
病理組織学的および微小血管造影分析により、CA4P療法に対する腫瘍反応を、それらの7つ全ての微小癌においてさらに比較した。
一貫して、ほぼ完全な壊死(82.77~96.45%)が、乏血管性グレードI~IIの高分化微小HCC、すなわち、腫瘍1~5(図3B図4Aa1~a5、4Ab1~b5、4Ac1~c5、4Ad1~d5)において誘導された。;
その一方、部分的な腫瘍壊死(23.15%)が、血管過多性グレードIIIの低分化腫瘍6において見られ(図4Ae1~e5)、最小の壊死が、大部分が血管湖により構成されるグレードIVの未分化腫瘍7において見られた(図4Af1~f5)。
その上、壊死巣は、顕微鏡観察により見られるとおり、硬変肝中で散在し、同様にCA4P処理により影響を受け得る硬変実質中の新血管系を伴った(図4B)。
【0077】
血管破壊剤により標的化可能な微小癌
技術水準は、新たな毛細血管をリクルート(すなわち、新血管形成)することなく、腫瘍がミリメートル直径を超えて拡大できないこと、およびVDAが既存の異常な腫瘍血管を破壊することにより癌を治療することを示し、それは、数ミリメートルよりも小さい腫瘍(新血管形成前段階)は、VDAにより影響を受けて腫瘍壊死を齎すことはないことを意味する。
これは、これまで、VDAに関する全てのインビボ研究が、直径がほぼ1cmまたはそれよりも大きい腫瘍塊を有する動物モデルにおいて実施されてきた主な理由である。
げっ歯類内臓器官中の極小の腫瘍を取り扱うことは、別の理由を提示する。
本発明者らの知識では初めて、本発明者らは、多様な腫瘍サイズおよび悪性腫瘍の程度の化学的に誘導された多発性肝細胞癌(HCC)を有するラットにおけるVDA CA4Pを試験し、それは、サイズが2~5mmの微小HCC間でCA4Pの性能を探索する機会を与えた。
驚くべきことに、本発明者らは、7つのHCCのうち5つが、CA4Pにより、80%超壊死されたことを見出し、その全てが、無血管性または乏血管性分化HCCであり、残り2つは治療的壊死の割合がかなり低い血管過多である。
【0078】
上記の予測外の所見を他の型の固形腫瘍において支持することができるか否かを検証するため、本発明者らは、非侵襲性縦方向MRIによりモニタリングし、そして、死後技術により検証したように、直径が1~5mmの範囲の横紋筋肉腫(R1)を肝に移植したラットの群において、CA4Pを意図的に試験した。
R1は、VDA研究に関して以前に広範に研究されてきたが、かなり大型の腫瘍サイズにおいて研究されてきた。一貫して、11個のそのような病変のうち10個が90%超の壊死を示し、それらの全てが、図5により例示されるとおり、無血管性または乏血管性腫瘍のいずれかとして格付けすることができる。
【0079】
明確な腫瘍血管の欠落にかかわらず、なぜそれらの微小癌がVDAに対して十分に応答したかという難題に関する洞察を得るため、標準的なHE染色を比較する組織学検査および免疫組織化学的染色を図6に実証されるとおり実施した。
肝臓中の微小腫瘍の顕微鏡画像は、慣用のヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)染色(上行)により、腫瘍が無血管性または乏血管性(すなわち、腫瘍血管系の欠落のために、VDA、例えば、CA4P、が小型癌においても微小癌においても機能しないという概念の原因となり得る明確な血管構造を有さない)であると見える。
しかしながら、免疫組織学的なCD34および過ヨウ素酸シッフ(PAS)の二重染色(下行)により、組織全体にわたり細胞のネットワークを形成する、正に染色された新血管内皮は、高密度で同定することができる。
これらの細胞は、VDAの標的であると見え、そして、小型または微小癌を用いる本発明者らの実験におけるほぼ完全な腫瘍壊死を説明し得る。
【0080】
VDAおよび放射線標識ネクローシス・アヴィッド化合物(necrosis-avid compound)、例えば、131I-ヒペリシン(131I-Hyp)の組合せによる微小癌における治癒的見込みを予測するため、本発明者らは、図7に示されるとおり、数学的モデリングを実施した。
【0081】
半径r1の球体1の体積についての式は、
【数1】
であり;半径r2の球体2の体積についての式は、
【数2】
であり;V2は、V1のα%(例えば、0.8=80%)であることを想定し;それは、V2=αV1;すなわち、
【数3】
であり;したがって、
【数4】
【数5】
であり;生存腫瘍辺縁δの厚さは、
【数6】
である。
【0082】
VDAまたはCA4Pは、腫瘍壊死の50~99%(α)を誘導し得ることが公知である。
上記の式による計算時、直径が2~10cmの巨大癌の10%未満のみが、2日間連続の1回のCA4Pおよび131I-Hypの静脈内投与によって、治癒的効力を達成し得る一方、大多数の腫瘍が一時的な緩和効果を示す。
しかしながら、直径が2cm未満のほぼ全ての微小癌を、そのような1回の二重iv送達のみにより根絶することができた(図7)。
【0083】
図7に示されるとおり、巨大腫瘍は、VDA処理後にも、周辺組織から酸素および栄養素を受容する生存細胞のかなりの層を依然として含む。
壊死組織に結合する放射性医薬品は、放射線をある程度で放出するにすぎない(図7における点線間の領域)。この領域外の細胞は生存し、再発をもたらす。
【0084】
微小腫瘍において、周辺生存細胞の領域全体を放射線照射し、腫瘍の完全な根絶をもたらすことができる。
【0085】
この組合せ二重標的化アプローチにより、微小癌間でのこのような治癒的効力の原理を証明するため、以下の実験プロトコルを適用する:
1)多種の動物モデルは、ブランク対照、単一標的化および二重標的化処理の群(それぞれ、n=10)におけるVX2腫瘍移植肝を有するウサギおよびR1腫瘍移植肝を有するラットを含み;
2)磁気共鳴イメージング(MRI)は、腫瘍成長および治療効力をモニタリングし;
3)処理は、CA4P 20mg/kg iv、2mCi/kgにおける131I-hyp ivおよび対照としての通常の生理食塩水を含み;および
4)エンドポイントは、
a)動物全生存数、
b)インビボのMRIおよび病理組織診断により計測される腫瘍サイズ、および
c)標的化可能性の証拠のためのオートラジオグラフィー
で、群間で異なる時点において比較した、
【0086】
材料および方法
動物および試薬
雄Sprague Dawley(SD)ラットを、Charles River Breeding Laboratories,Inc.(St.Aubain les Elbeuf,France)から購入した。
ジエチルニトロソアミン(DENA、N0258)を、Sigma-Aldrich(St.Louis,MO,USA)から調達した。
CA4P(C643025)を、Toronto Research Chemical Inc.(Toronto,Canada)から入手した。
MRI造影剤Dotarem(Gd-DOTA、ガドテル酸メグルミン;Dotarem(登録商標)、Guerbet,France)、硫酸バリウム懸濁液(Micropaque(登録商標)、Guerbet,France)およびガス麻酔薬イソフルラン(Forane(登録商標);Baxter Healthcare,Deerfield,IL)も商業的に入手した。
【0087】
インビボMRI
画像を、臨床3.0T MRIスキャナ(MAGNETOM Prisma;Siemens,Erlangen,Germany)およびヒトリストコイル(Hand/Wrist16、A1.5T Timコイル、Siemens)上で取得した。
20個の軸位像(axial images)を取得し、スライス厚さは2.0mmであり、ギャップは0.4mmであった。
T2強調(反復時間、4000ms;エコー時間、70ms;フリップ角、150°;視野、75×56mm2;マトリックス、256×192)およびT1強調(反復時間、626ms;エコー時間、15ms;フリップ角、160°;視野、75×56mm2;マトリックス、256×192)ターボスピンエコー(TSE)画像(T2WI、T1WI)を週1回実施して腫瘍成長をモニタリングした一方、T2WI、T1WI、拡散強調イメージング(DWI)および連続造影増強(CE-)T1WIを取得してCA4P処理を評価した。
DWIについて、二次元SEエコープラナーイメージング(EPI)シーケンス(反復時間、3500ms;エコー時間、62ms;フリップ角、90°;視野、136×74mm2;マトリックス、96×52)を8つのb値(0、50、100、150、400、600、800および1000秒/mm2)で取得した。
CE-MRIについて、0.2mmol/kgのGd-DOTAのボーラス(Bolus)を注射してから一連のCE-T1WIを取得した。
【0088】
実験設計
この動物実験は、KU Leuven大学の動物管理および使用倫理委員会の承認後に欧州および国内規制に従って実施した。
強制食餌、腫瘍移植、薬物注射、およびイメージングを含む全てのインビボ手順は、ガス麻酔システム(Harvard Apparatus,Holliston,MA)を使用して、20%の酸素および80%の室内空気の混合物中の2%のイソフルランによるガス麻酔下で実施した。
【0089】
図1に説明されるとおり、多発性原発性肝臓癌を、8週間の1日1回の10mg/kg/日におけるDENAの強制食餌により、体重300~350gの19匹の雄Sprague Dawley(SD)ラットに樹立させた。
腫瘍成長を、DENA投与後の9週目から、最大腫瘍病変が直径1mm超に達するまでMRIにより週1回モニタリングした。
全てのリクルートされた担癌ラットは、10mg/kgにおけるCA4Pの単一静脈内注射を受容した。
T2WI、T1WI、DWIおよびCE-T1WIを、CA4P療法の4時間前および12時間後に実施した。
ラットをMRIの最後の時点後に、死後微小血管造影および病理組織診断のために安楽死させた。
【0090】
MR画像分析
画像分析は、Siemensワークステーション(バージョンNumaris/4 Syngo MR A30)およびMeVisLab(バージョン2.6.2、MeVis Medical Solutions AG,Bremen,Germany)上のビルトインソフトウェアを使用して実施した。
以下の計測の全てを、同意を得た3人の著者により取得した。
【0091】
1)腫瘍直径の計測
T2WI上で、腫瘍直径は、処理4時間前の最大腫瘍横断面を有する腫瘍含有画像から手作業により計測した。
【0092】
2)腫瘍ADCの別個の計算
DWI上で、腫瘍領域(tumor area)は、全ての腫瘍含有画像上の操作者が定義した関心領域(ROI)により手作業で輪郭抽出(contoured)した。
ADCマップを、DWIから計算して、以下の単一指数式により治療応答を定量した:Si=S0×exp(-bi×ADC)、
式中、Siは、i番目のb値画像上で計測されるシグナル強度(SI)であり、biは、対応するb値であり、そして、S0は、固有のSI(b=0秒/mm2に対して)を推定する変数である。
【0093】
異なるADC値の計算のため、腫瘍を、1000s/mm2のb値におけるオリジナルのDWI上の最大横断面積を有する中央スライス上でのみフリーハンドで輪郭を描いて部分容積効果を回避した。
それぞれの腫瘍病変の描写を、異なるb値を有する全ての画像に自動的に複写した。
次いで、腫瘍当たりおよびb値当たりの平均SIを決定した。
ADClow(b=0、50および100s/mm2)およびADChigh(b=600、800および1000s/mm2)間の差を、組織微小毛細血管灌流(perfusion)を反映するために、ADCperfとして定義した一方、ADChighをADCdiffとして定義した[Chenら、(2007)Methods.43,12-20]。
【0094】
デジタル微小血管造影
最後のMRIスキャニング後、ラットを50mg/kgのペントバルビタールの腹腔内注射により麻酔した。
次いで開腹(laparotomy)を実施し、カニューレ挿入された後大静脈および腹部大動脈(postcava and abdominal aorta)を介して血液を回収し、それを介してバリウム懸濁液を注射してから、担腫瘍肝全体を摘出した。
デジタルマンモグラフィーユニット(Em-brace;Agfa-Gevaert,Mortsel,Belgium)を用いて、死後肝動脈造影を、26kV、32mAsにおいて行って、腫瘍血管性の変化を報告した。
次いで、肝臓を固定し、MR画像に対応する軸平面で3mmの切片にスライスし、それらの切片を定性的分析のために、26kV、18mAsにおいて放射線撮影した。
【0095】
病理組織診断
微小血管造影後、AxioCam MRモノクロデジタルカメラを備えるAxiovert 200M顕微鏡(Carl Zeiss Inc,Gottingen,Germany)を使用し、AxioVision 4.8ソフトウェアによる顕微鏡分析のために腫瘍切片をパラフィン包埋し、5μm厚にスライスし、ヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)により染色した。
【0096】
HCCの診断
ヒト肝臓癌において観察される病理組織学的進行と高い類似性に起因して、ラット原発性HCCを古典的組織形態学的特色:広い索状物(trabeculae)(>3つの細胞層)、顕著な肺胞パターン(noticeable acinar pattern)、小さい細胞変化、細胞異型(cytologic atypia)、核突出(prominent nucleoli)、有糸分裂活性(mitotic activity)、血管浸潤、クッパー細胞の不存在およびレチクリンネットワーク(reticulin network)の損失を有する多血管性であることが多い(often well vascularized)、悪性肝細胞腫瘍、に従って診断した。
修正4スケールEdmondsonおよびSteiner体系[Schlageterら、上記引用]を使用して、ラットHCCの分化をグレードI~IVにさらに分類した。
【0097】
2)CA4P誘導腫瘍内壊死の計算
12.5の倍率における腫瘍スライスのデジタル画像を使用して、ImageJソフトウェア[Buijsら、(2011)J Vasc Interv Radiol 22,1175-1180]により腫瘍壊死の割合を推定した。
簡潔に述べると、関心領域を、腫瘍全体および壊死腫瘍の周囲の輪郭をそれぞれ描き、「それぞれの切片における壊死比」を得た。
それぞれの腫瘍切片について、この腫瘍ブロックを表す軸方向スライド(axial slide)を「切片面積」として選択した。
それぞれのH&E染色スライス上の腫瘍壊死を、2人の病理学者により独立して推定し、式:腫瘍内壊死比(%)=Σ[それぞれの切片上の壊死比(%)×切片面積(mm2)]×切片厚さ(mm)/[4/3πr3](mm3)、により計算した。
【0098】
統計的分析
統計的分析を、GraphPad Prism(バージョン7.02、GraphPad Software Inc,La Jolla,CA,USA)により実施した。
ピアソン相関係数を、病理組織診断により計算された腫瘍壊死の百分率およびT2WIから計測された腫瘍直径間で計算した。
数値データを、平均値±平均値の標準誤差(SEM)として提示した。
腫瘍壊死の百分率の比較を、対応のない二元t検定により実施し;腫瘍および肝臓バックグラウンド間のADCの結果を、二元ANOVAにより比較した。P<0.05で有意差が結論付けられた。
図1
図2
図3A-B】
図3C
図4
図5
図6
図7