(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-03
(45)【発行日】2023-10-12
(54)【発明の名称】ナチュラルキラー細胞免疫療法における活性化キメラ受容体及びその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/62 20060101AFI20231004BHJP
C12N 5/16 20060101ALI20231004BHJP
C07K 14/705 20060101ALI20231004BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20231004BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20231004BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20231004BHJP
【FI】
C12N15/62 Z ZNA
C12N5/16
C07K14/705
C07K19/00
A61K35/17
A61P35/00
(21)【出願番号】P 2020542381
(86)(22)【出願日】2019-02-07
(86)【国際出願番号】 IB2019000181
(87)【国際公開番号】W WO2019155288
(87)【国際公開日】2019-08-15
【審査請求日】2022-02-01
(32)【優先日】2018-02-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507335687
【氏名又は名称】ナショナル ユニヴァーシティー オブ シンガポール
(74)【代理人】
【識別番号】100095832
【氏名又は名称】細田 芳徳
(74)【代理人】
【識別番号】100187850
【氏名又は名称】細田 芳弘
(72)【発明者】
【氏名】ショー,シー,ヴォーン
(72)【発明者】
【氏名】カンパナ,ダリオ
【審査官】北田 祐介
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/022646(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/117121(WO,A1)
【文献】Lucy C. Sullivan et al.,The heterodimeric assembly of the CD94-NKG2 receptor family and implications for human leukocyte antigen-E recognition.,Immunity,2007年12月13日,Vol.27, No.6,p.900-911,doi: 10.1016/j.immuni.2007.10.013
【文献】Brett K. Kaiser et al.,Structural basis for NKG2A/CD4 recognition of HLA-E.,Proc. Natl. Acad. Sci. USA,2008年04月30日,Vol.105, No.18,p.6696-6701,doi: 10.1073/PNAS.0802736105
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 5/00-5/28,15/00-15/90
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
HLAクラスI組織適合性抗原、α鎖E(HLA-E)/ペプチド複合体に結合する活性化キメラ受容体を発現する遺伝子改変ナチュラルキラー(NK)細胞であって、前記活性化キメラ受容体が、前記HLA-E/ペプチド複合体への結合後に活性化及び/又は同時刺激シグナルを伝達し、ここで前記活性化キメラ受容体が、
a)ナチュラルキラーグループ2メンバーA(NKG2A)の断片を含む細胞外受容体ドメイン、
ここでNKG2Aの前記断片が、膜貫通領域及び細胞内シグナル伝達ドメインを含むエフェクタードメインに共役され、
天然NKG2Aが、HLA-E/ペプチド複合体への結合後、阻害性シグナルを伝達し、且つ
NKG2Aの前記断片が、HLA-E/ペプチド複合体への結合後、活性化及び/又は同時刺激シグナルを伝達し、
前記活性化キメラ受容体が、配列番号61
の核酸
配列によってコードされ、且つ
前記細胞外受容体ドメインが、CD8a膜貫通ドメイン並びに4-1BB及びCD3ζを含むエフェクタードメインに共役されている;又は
b)ナチュラルキラーグループ2メンバーC(NKG2C)の改変変異体を含む細胞外受容体ドメイン、
ここで非改変NKG2Cが、HLA-E/ペプチド複合体に対して低い結合親和性を有し、
前記改変NKG2C変異体が、HLA-E/ペプチド複合体に対して、天然NKG2Cと比べて増強された結合親和性を有し、且
つ
前記改変NKG2C変異体が、配列番号63
の核酸配列によってコードされ、且つ
前記細胞外受容体ドメインが、膜貫通領域及び細胞内シグナル伝達ドメインを含むエフェクタードメインに共役されている;
を含む、遺伝子改変ナチュラルキラー(NK)細胞。
【請求項2】
DNAX活性化タンパク質12(DAP12)をコードするポリヌクレオチドをさらに含む、請求項
1に記載の遺伝子改変NK細胞。
【請求項3】
配列番号59の核酸配列によってコードされるキメラCD9
4をさらに含
む、請求項1
又は2に記載の遺伝子改変NK細胞。
【請求項4】
前記遺伝子改変NK細胞が、(a)ナチュラルキラーグループ2メンバーD(NKG2D)の天然リガンドに結合するペプチドを含む細胞外受容体ドメイン;並びに(b)膜貫通領域及び細胞内シグナル伝達ドメインを含むエフェクタードメインを含むキメラ受容体をさらに含む、請求項1~
3のいずれか一項に記載の遺伝子改変NK細胞。
【請求項5】
前記遺伝子改変NK細胞が、天然NKG2Aの転写又は翻訳を特異的に阻害する短いヘアピンRNA(shRNA)をコードするポリヌクレオチドをさらに含み、
ここで前記shRNAが、前記天然NKG2A遺伝子にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列を含み、前記shRNAが、前記NKG2A断片に不在である前記NKG2A遺伝子における標的配列に対して実質的に同一なヌクレオチド配列を含むセンス断片、及びアンチセンス断片を含み、ここで前記センス及びアンチセンス断片が、ループ断片によって分離される、請求項1~
4のいずれか一項に記載の遺伝子改変NK細胞。
【請求項6】
前記NK細胞が、膜結合型インターロイキン15(mbIL15)を追加的に発現する、請求項1~
5のいずれか一項に記載の遺伝子改変NK細胞。
【請求項7】
ドナーから単離された同種細胞である、請求項1~
6のいずれか一項に記載の遺伝子改変NK細胞。
【請求項8】
前記NK細胞が、天然NKG2Aの表面発現を欠く、請求項1~
7のいずれか一項に記載の遺伝子改変NK細胞。
【請求項9】
請求項1~
8のいずれか一項に記載の遺伝子改変NK細胞を含む、NK細胞の細胞傷害性の増強を必要とする哺乳動物においてNK細胞の細胞傷害性を増強するための医薬組成物。
【請求項10】
HLAクラスI組織適合性抗原、α鎖E(HLA-E)/ペプチド複合体に結合する活性化キメラ受容体であって、前記活性化キメラ受容体が、前記HLA-E/ペプチド複合体への結合後に活性化及び/又は同時刺激シグナルを伝達し、ここで前記活性化キメラ受容体が、
a)ナチュラルキラーグループ2メンバーA(NKG2A)の断片を含む細胞外受容体ドメイン、
ここでNKG2Aの前記断片が、膜貫通領域及び細胞内シグナル伝達ドメインを含むエフェクタードメインに共役され、
天然NKG2Aが、HLA-E/ペプチド複合体への結合後、阻害性シグナルを伝達し、且つ
NKG2Aの前記断片が、HLA-E/ペプチド複合体への結合後、活性化及び/又は同時刺激シグナルを伝達し、
前記活性化キメラ受容体が、配列番号61
の核酸
配列によってコードされ、且つ
前記細胞外受容体ドメインが、CD8a膜貫通ドメイン並びに4-1BB及びCD3ζを含むエフェクタードメインに共役されている;又は
b)ナチュラルキラーグループ2メンバーC(NKG2C)の改変変異体を含む細胞外受容体ドメイン、
ここで非改変NKG2Cが、HLA-E/ペプチド複合体に対して低い結合親和性を有し、
前記改変NKG2C変異体が、HLA-E/ペプチド複合体に対して、天然NKG2Cと比べて増強された結合親和性を有し、且
つ
前記改変NKG2C変異体が、配列番号63
の核酸配列によってコードされ、且つ
前記細胞外受容体ドメインが、膜貫通領域及び細胞内シグナル伝達ドメインを含むエフェクタードメインに共役されている;
を含む、活性化キメラ受容体。
【請求項11】
前記細胞外受容体ドメインが、天然NKG2C膜貫通領域及び天然NKG2C細胞内シグナル伝達ドメインに共役された改変NKG2C変異体を含む、請求項
10に記載の活性化キメラ受容体。
【請求項12】
前記活性化受容体が、DNAX活性化タンパク質12(DAP12)をさらに含む、請求項
11に記載の活性化キメラ受容体。
【請求項13】
配列番号59の核酸配列によってコードされるキメラCD94をさらに含
む、請求項
10~
12のいずれか一項に記載の活性化キメラ受容体。
【請求項14】
HLAクラスI組織適合性抗原、α鎖E(HLA-E)/ペプチド複合体に結合する活性化キメラ受容体をコードするポリヌクレオチドであって、前記活性化キメラ受容体が、前記HLA-E/ペプチド複合体への結合後に活性化及び/又は同時刺激シグナルを伝達し、ここで前記活性化キメラ受容体が、
a)ナチュラルキラーグループ2メンバーA(NKG2A)の断片を含む細胞外受容体ドメイン、
ここでNKG2Aの前記断片が、膜貫通領域及び細胞内シグナル伝達ドメインを含むエフェクタードメインに共役され、
天然NKG2Aが、HLA-E/ペプチド複合体への結合後、阻害性シグナルを伝達し、且つ
NKG2Aの前記断片が、HLA-E/ペプチド複合体への結合後、活性化及び/又は同時刺激シグナルを伝達し、
前記活性化キメラ受容体が、配列番号61
の核酸
配列によってコードされ、且つ
前記細胞外受容体ドメインが、CD8a膜貫通ドメイン並びに4-1BB及びCD3ζを含むエフェクタードメインに共役されている;又は
b)ナチュラルキラーグループ2メンバーC(NKG2C)の改変変異体を含む細胞外受容体ドメイン、
ここで非改変NKG2Cが、HLA-E/ペプチド複合体に対して低い結合親和性を有し、
前記改変NKG2C変異体が、HLA-E/ペプチド複合体に対して、天然NKG2Cと比べて増強された結合親和性を有し
、
前記改変NKG2C変異体が、配列番号63
の核酸配列によってコードされ、且つ
前記細胞外受容体ドメインが、膜貫通領域及び細胞内シグナル伝達ドメインを含むエフェクタードメインに共役されている;
を含む、ポリヌクレオチド。
【請求項15】
前記ポリヌクレオチドが、DNAX活性化タンパク質12(DAP12)をさらにコードする、請求項
14に記載のポリヌクレオチド。
【請求項16】
配列番号59の核酸配列によってコードされるキメラCD94をさらにコード
する、請求項
14又は15に記載のポリヌクレオチド。
【請求項17】
前記ポリヌクレオチドが、(a)ナチュラルキラーグループ2メンバーD(NKG2D)の天然リガンドに結合するペプチドを含む細胞外受容体ドメイン;並びに(b)膜貫通領域及び細胞内シグナル伝達ドメインを含むエフェクタードメインを含むキメラ受容体をさらにコードする、請求項
14~
16のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項18】
前記ポリヌクレオチドが、天然NKG2Aの転写又は翻訳を特異的に阻害する短いヘアピンRNA(shRNA)をさらにコードし、
ここで前記shRNAが、前記天然NKG2A遺伝子にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列を含み、前記shRNAが、前記NKG2A断片に不在である前記NKG2A遺伝子における標的配列に対して実質的に同一なヌクレオチド配列を含むセンス断片、及びアンチセンス断片を含み、ここで前記センス及びアンチセンス断片が、ループ断片によって分離される、請求項
14~
17のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項19】
前記ポリヌクレオチドが、膜結合型インターロイキン15(mbIL15)をコードする追加的な構築物と同時発現される、請求項
14~
18のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項20】
請求項
14~
19のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドを含むベクターであって、前記ポリヌクレオチドは、前記活性化キメラ受容体の発現のための少なくとも1つの調節エレメントに作動可能に連結されている、ベクター。
【請求項21】
前記ベクターは、レトロウイルス
ベクターである、請求項
20に記載のベクター。
【請求項22】
対象における癌の治療のための医薬組成物であって、前記組成物は、活性化キメラ受容体を含む遺伝子改変ナチュラルキラー(NK)細胞を含み、前記活性化キメラ受容体が、
a)ナチュラルキラーグループ2メンバーA(NKG2A)の断片を含む細胞外受容体ドメイン、
ここでNKG2Aの前記断片が、膜貫通領域及び細胞内シグナル伝達ドメインを含むエフェクタードメインに共役され、
天然NKG2Aが、HLA-E/ペプチド複合体への結合後、阻害性シグナルを伝達し、
前記活性化キメラ受容体が、配列番号61
の核酸
配列によってコードされ、且つ
NKG2Aの前記断片が、HLA-E/ペプチド複合体への結合後、活性化及び/又は同時刺激シグナルを伝達し、且つ
前記細胞外受容体ドメインが、CD8a膜貫通ドメイン並びに4-1BB及びCD3ζを含むエフェクタードメインに共役されている;又は
b)ナチュラルキラーグループ2メンバーC(NKG2C)の改変変異体を含む細胞外受容体ドメイン、
ここで非改変NKG2Cが、HLA-E/ペプチド複合体に対して低い結合親和性を有し、
前記改変NKG2C変異体が、HLA-E/ペプチド複合体に対して、天然NKG2Cと比べて増強された結合親和性を有し、且
つ
前記改変NKG2C変異体が、配列番号63
の核酸配列によってコードされ、且つ
前記細胞外受容体ドメインが、膜貫通領域及び細胞内シグナル伝達ドメインを含むエフェクタードメインに共役されている;
を含む、医薬組成物。
【請求項23】
前記NK細胞が、ドナーから単離された同種細胞である、請求項
22に記載の医薬組成物。
【請求項24】
前記NK細胞が、天然NKG2Aの表面発現を欠く、請求項
22又は
23に記載の医薬組成物。
【請求項25】
前記NK細胞が、
(i)(a)ナチュラルキラーグループ2メンバーD(NKG2D)の
天然リガンドに結合するペプチドを含む細胞外受容体ドメ
イン;及び
(b)膜貫通領域及び細胞内シグナル伝達ドメインを含むエフェ
クタードメイン
を含む、キメラ受容体;
(ii)膜結合型インターロイキン15(mbIL15);
(iii)天然NKG2Aの転写又は翻訳を特異的に阻害する短いヘアピンRNA(shRNA);並びに
(iv)(i)、(ii)、及び(iii)のいずれかの組み合わせ
をさらに含む、請求項
22~
24のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、2018年2月9日に出願された米国仮特許出願第62/628,788号明細書及び2018年9月26日に出願された米国仮特許出願第62/736,879号明細書の利益を主張する。これらの出願の各々の全体は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
ASCIIテキストファイルでのマテリアルの参照による援用
本願は、本明細書と同時に提出されている以下のASCIIテキストファイル中に含まれる配列表を参照により援用する。
a)ファイル名:44591147002SeqList.txt;86.4KBのサイズで2019年2月6日に作成
【背景技術】
【0003】
多くの疾患の出現及び持続性は、悪性及びウイルス感染細胞を含む異常細胞に対する不十分な免疫応答によって特徴付けられる。免疫療法は、様々な疾患を治療するための患者の免疫系の使用及び操作である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
免疫療法は、疾患の治療における新しい技術的進歩を提示し、免疫細胞は、罹患又は損傷細胞に対して特異的に同定及び反応する特定の標的化及び/又はエフェクター分子を発現するように操作される。これは、より従来の手法、例えば化学療法(すべての細胞が影響を受ける場合)と異なり、少なくとも部分的に、罹患又は損傷細胞を特異的に標的にするという能力に基づく有望な進歩を表し、また所望の結果は、十分な健常細胞が生存することで患者の生存を可能にすることである。1つの免疫療法アプローチは、目的の異常細胞の標的化された認識及び破壊を達成するための免疫細胞におけるキメラ受容体を活性化させる組換え発現である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
罹患又は感染細胞に対する特異的標的化及び破壊、無能化又は特に不活性化に関するこの必要性に対処するため、細胞、例えばナチュラルキラー細胞に対して増強された標的化及び細胞傷害性を付与するキメラ活性化受容体をコードするポリヌクレオチド、アミノ酸及びベクターが本明細書で提供される。さらに、その細胞を作製するための方法並びにその細胞を用いて罹患又は損傷細胞を標的化及び破壊する方法が提供される。いくつかの実施形態では、細胞外受容体ドメイン並びに膜貫通領域及び細胞内シグナル伝達ドメインを含むエフェクタードメインを含む活性化キメラ受容体をコードするポリヌクレオチドが提供され、ここで細胞受容体ドメインは、免疫抗原に高親和性で結合するペプチドを含む。
【0006】
例えば、いくつかの実施形態では、ナチュラルキラーグループ2メンバーC(NKG2C)の、NKG2Cの免疫リガンドに対してより高い親和性を有する改変変異体を含む細胞外受容体ドメインを含む活性化キメラ受容体をコードするポリヌクレオチドが提供される。いくつかの実施形態では、該ポリヌクレオチドは、コードされたNKG2C変異体に、免疫リガンド、例えばHLA-E/ペプチド複合体に対して、天然NKG2Cと比べて増強された結合親和性を与えるように設計される一方で、非改変NKG2Cは、HLA-E/ペプチド複合体に対してより低い結合親和性を有する。いくつかの実施形態では、改変NKG2C変異体は、天然又は改変NKG2A変異体の不在下で用いられる。いくつかの実施形態では、NKG2Cの完全長、又は他の天然切断型は用いられない。
【0007】
いくつかの実施形態では、免疫リガンド、例えばHLA-E/ペプチド複合体の結合時、阻害性シグナルではなく、活性化シグナルを伝達するように改変された断片である、ナチュラルキラーグループ2メンバーA(NKG2A)の断片を含む細胞外受容体ドメインを含む活性化キメラ受容体をコードするポリヌクレオチドが提供される。いくつかの実施形態では、改変NKG2A変異体は、天然又は改変NKG2C変異体の不在下で用いられる。いくつかの実施形態では、NKG2Aの完全長、又は他の天然切断型は用いられない。
【0008】
いくつかの実施形態では、該ポリヌクレオチドによってコードされる活性化キメラ受容体は、膜貫通領域及び細胞内シグナル伝達ドメインを含むエフェクタードメインを含み、それらドメインは、キメラ受容体の免疫抗原、例えばHLA-E/ペプチド複合体への(増強された親和性での)結合後、活性化及び/又は同時刺激シグナルを伝達するのに役立つ。いくつかの実施形態では、細胞外受容体ドメインは、膜貫通領域及び細胞内シグナル伝達ドメインを含むエフェクタードメインに共役された改変NKG2C変異体を含む。いくつかの実施形態では、改変NKG2C変異体の細胞外ドメインは、天然NKG2C膜貫通領域及び/又は天然NKG2C細胞内シグナル伝達ドメインに共役される。いくつかの実施形態では、改変NKG2C変異体は、配列番号58のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、改変NKG2C変異体は、配列番号63の核酸配列、又はその断片によってコードされる。いくつかの実施形態では、NKG2C変異体は、配列番号63と比べて、少なくとも約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約98%、又は約99%の相同性を有する。
【0009】
いくつかの実施形態では、活性化キメラ受容体は、膜貫通領域及び細胞内シグナル伝達ドメインを含むエフェクタードメインに共役されたNKG2Aの断片を含む。いくつかの実施形態では、NKG2A断片は、天然NKG2Aの膜貫通領域及び/又は天然NKG2Aの細胞内シグナル伝達ドメインに共役される。いくつかの実施形態では、NKG2A断片は、天然NKG2Cの膜貫通領域及び/又は天然NKG2Cの細胞内シグナル伝達ドメインに共役される。いくつかの実施形態では、NKG2A断片は、配列番号65の配列を有する。いくつかの実施形態では、NKG2Aの断片は、配列番号65と比べて、少なくとも約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約98%、又は約99%の相同性を有する。一実施形態では、NKG2A断片は、CD8a膜貫通ドメイン並びに4-1BB及びCD3ζの1つ以上を含むエフェクタードメインに共役される。いくつかの実施形態では、かかる活性化キメラ受容体構築物は、配列番号61の核酸配列によってコードされるか又は配列番号62のアミノ酸配列を含む。
【0010】
いくつかの実施形態では、他のシグナル伝達部分が、エフェクタードメイン内部で用いられる。例えば、いくつかの実施形態では、該ポリヌクレオチドは、DNAX活性化タンパク質12(DAP12)又はDAP10をさらにコードする。しかし、いくつかの実施形態では、DAP10は、活性化受容体構築物中に含まれず、且つ/又は細胞によって発現される別の改変構築物中に含まれない。同様に、いくつかの実施形態では、DAP12は、活性化受容体構築物中に含まれず、且つ/又は細胞によって発現される別の改変構築物中に含まれない。いくつかの実施形態では、該ポリヌクレオチドは、天然CD94又はキメラCD94をコードする。いくつかの実施形態では、キメラCD94は、細胞外受容体ドメイン並びに膜貫通領域及び細胞内シグナル伝達ドメインを含むエフェクタードメインを含むCD94の断片を含む。さらなる実施形態では、キメラCD94受容体は、CD8a膜貫通ドメイン並びに4-1BB及びCD3ζの1つ以上を含むエフェクタードメインに共役されたCD94の断片を含む。いくつかの実施形態では、キメラCD94は、配列番号59の核酸配列によってコードされる。いくつかの実施形態では、キメラCD94は、配列番号60のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、CD94の変異体、断片、又は切断物も用いられる。例えば、いくつかの実施形態では、配列番号59又は60と比べて、少なくとも約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約98%、又は約99%の相同性を有するCD94変異体が用いられる。一実施形態では、CD94の断片は、配列番号67に対して少なくとも80%の相同性を有する。一実施形態では、CD94の断片は、配列番号68に対して少なくとも80%の相同性を有する。
【0011】
いくつかの実施形態では、エフェクタードメインは、CD16、NCR1、NCR2、NCR3、4-1BB、NKp80、DAP10、CD3ζ、2B4の1つ以上を含む。いくつかの実施形態によると、これらのシグナル伝達部分のいずれかの活性シグナル伝達断片もまた有用である。
【0012】
いくつかの実施形態では、活性化キメラ受容体は、リンカー及び/又はヒンジ領域をさらに含む。いくつかの実施形態では、これらの領域(含まれる場合)は、例えば受容体の立体障害を低減し且つ/又は三次構造の形成時に生じることがある機能的課題を低減若しくは除去するため、分子の他の部分と間隔をあけるように機能し得る。いくつかの実施形態では、活性化キメラ受容体は、任意選択的には2回以上繰り返し可能であるGSリンカーを含む。例えば、いくつかの実施形態では、GSリンカーは、3、4、5、6又はそれ以上の回数繰り返される。いくつかの実施形態では、ヒンジ領域は、配列番号31のアミノ酸配列を有するグリシン-セリン繰り返しモチーフを含む。繰り返しは、連続的に「ヘッドトゥテール」様式である必要はないが、互いに間隔が設けられ得る。いくつかの実施形態では、キメラ受容体は、ヒンジ領域を含む。いくつかの実施形態では、配列番号5の核酸配列によってコードされるヒンジが用いられる。さらなる実施形態では、配列番号5の核酸配列の断片によってコードされるヒンジ領域が用いられる。いくつかの実施形態では、ヒンジ領域は、配列番号32又は配列番号33のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、ヒンジ領域は、配列番号34の核酸配列によってコードされる。いくつかの実施形態では、ヒンジ領域としてβアドレナリン受容体の部分が用いられる。いくつかの実施形態では、配列番号40又は配列番号42の核酸配列によってコードされるヒンジ領域が用いられる。
【0013】
いくつかの実施形態では、シグナルペプチドもまた提供される。したがって、いくつかの実施形態では、細胞外受容体ドメインは、配列番号4の核酸配列を含むCD8aシグナルペプチドをさらに含む。
【0014】
開示されるキメラ受容体による活性化シグナル伝達を促進し、いくつかの実施形態では増強するため、エフェクタードメインは、1つ以上のヘミITAM配列を含むように形成される。いくつかの実施形態では、ヘミITAMは、配列番号14のアミノ酸配列又は配列番号37のアミノ酸配列のいずれかを含む。いくつかの実施形態では、ヘミITAM(又は他の膜貫通若しくはシグナル伝達成分)の2つ以上の配列が提供される場合、該ポリヌクレオチドによってコードされる最終構築物では、該配列の混合物(例えば、ヘテロタンデムシグナル伝達ドメイン)を用いてもよい。いくつかの実施形態では、エフェクタードメインは、1つ以上のITSM配列を含む。例えば、いくつかの実施形態では、ITSMは、配列番号15のアミノ酸配列及び/又は配列番号35のアミノ酸配列を含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、該ポリヌクレオチドは、ナチュラルキラーグループ2メンバーD(NKG2D)の天然リガンドに結合する細胞外受容体ドメイン、並びにNKG2Dリガンドの結合時にキメラ受容体を発現する細胞へのシグナル伝達に役立つ膜貫通領域及び細胞内シグナル伝達ドメインを含むエフェクタードメインを含むキメラ受容体をさらにコードする。いくつかの実施形態では、キメラ受容体は、完全長又は野生型NKG2Dを用いない代わりに、NKG2Dの1つ以上のリガンドに結合する能力を保持するNKG2Dの断片を用いる。いくつかの実施形態では、NKG2Dに結合するキメラ受容体は、活性化受容体をコードするポリヌクレオチドとは別のポリヌクレオチド上に提供される(しかし最終的には、双方とも単一細胞内で同時発現され得る)。
【0016】
いくつかの実施形態では、該ポリヌクレオチドはまた、天然NKG2Aの転写又は翻訳を特異的に阻害する短いヘアピンRNA(shRNA)をコードする。かかる実施形態では、天然NKG2Aの転写又は翻訳を阻害するshRNAは、除去されない場合、該ポリヌクレオチドを発現する細胞上でのNKG2Aの発現低下をもたらす。いくつかの実施形態では、これは、より高い親和性のNKG2AとNKG2Cとの間での免疫抗原に対する競合を低減する。結果として、親和性が比較的より低いNKG2C受容体は、免疫抗原(HLA-E/ペプチド複合体など)に結合し、活性化シグナルを細胞(NK細胞など)に伝達することができる。一実施形態では、shRNAは、天然NKG2A遺伝子とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列を含み、NKG2A遺伝子における標的配列(その標的配列はNKG2A断片に不在である)に対して実質的に同一であるセンス断片、及びアンチセンス断片を含み、ここでセンス及びアンチセンス断片は、ループ断片によって分離される。天然NKG2A受容体の発現を低減するための他の機構もまた、実施形態に応じて用いることができる。例えば、天然NKG2A受容体の生成を破壊し得る(が、本明細書に開示されるような改変NKG2A断片/構築物の生成を残す)アンチセンス配列を含む別のベクターであれば、用いることができる。遺伝子編集技術もまた、天然NKG2A受容体をコードするDNAの1つ以上の領域を選択的に編集するため、用いることができる。免疫又は機械的分離技術(親和性固定化)もまた、NKG2A受容体を発現する細胞の、NK又はT細胞のような免疫細胞などの細胞集団を選択的に枯渇させるため、用いることができる。
【0017】
いくつかの実施形態では、提供されるポリヌクレオチドは、膜結合型インターロイキン15(mbIL15)をコードするか、又はそれをコードする追加的な構築物とともに同時発現される。膜結合型IL15は、いくつかの実施形態では、本明細書に開示される活性化キメラ受容体を発現する細胞の増殖を促進する。
【0018】
いくつかの実施形態では、該ポリヌクレオチドは、mRNAである。いくつかの実施形態では、該ポリヌクレオチドは、活性化キメラ受容体の発現のため、少なくとも1つの調節エレメントに作動可能に連結される。
【0019】
ポリヌクレオチドに加えて、該ポリヌクレオチドを含むベクターが本明細書に提供され、該ベクターは、細胞、例えば免疫細胞(例えばNK細胞)においてポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質を送達し、且つその発現を促進するように形成される。いくつかの実施形態では、該ベクターは、レトロウイルス、例えばレンチウイルス又はHIVである。さらなる実施形態は、他のベクター、例えば、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、さらには非ウイルスベクター(例えばリポソーム)が提供される。
【0020】
加えて、本明細書に開示されるポリヌクレオチドを含み、且つ活性化キメラ受容体を発現する遺伝子改変細胞、例えば免疫細胞が本明細書に提供される。様々な免疫細胞が、実施形態に応じて用いられる。いくつかの実施形態では、NK細胞が用いられる。いくつかの実施形態では、活性化キメラ受容体を発現するように改変された自家細胞(例えばNK細胞)が提供される。さらなる実施形態では、本明細書に開示される活性化キメラ受容体を発現するように改変された同種細胞(例えばNK細胞)が提供される。いくつかの実施形態では、細胞集団は、高親和性の活性化キメラ受容体を意図して濃縮される。一実施形態では、濃縮は、(例えば本明細書に開示されるポリヌクレオチドを発現することにより)阻害性NKG2A受容体を活性化NKG2A受容体に変換することを含む。加えて、この変換は、NKG2Cを伝達する活性化シグナルを生じさせるリガンドに対して増強された親和性を有する改変NKG2C受容体の発現と共役され得る。さらに、細胞集団は、天然NKG2Aをコードする核酸の遺伝的調節及び/又は集団からの天然NKG2Aを発現する細胞の選択的枯渇のいずれかにより、天然NKG2Aの表面発現を欠くように形成され得る。
【0021】
さらに、抗原に対して増強された親和性を有する改変NKG2C受容体又は阻害性受容体から活性化受容体に変換されているNKG2A変異体のいずれかである活性化キメラ受容体を含む遺伝子改変免疫細胞、例えばNK細胞が本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、かかる細胞はまた、細胞外受容体ドメイン(及び膜貫通領域及び細胞内シグナル伝達ドメインを含むエフェクタードメインを含む)を通じてナチュラルキラーグループ2メンバーD(NKG2D)の天然リガンドに結合するように形成されたキメラ受容体をコードするポリヌクレオチド、膜結合型インターロイキン15(mbIL15)をコードするポリヌクレオチド、天然NKG2Aの転写若しくは翻訳を特異的に阻害する短いヘアピンRNA(shRNA)をコードするポリヌクレオチド、又はそれらの組み合わせの1つ以上を含んでもよい。
【0022】
さらに、哺乳動物における免疫細胞の細胞傷害性を、前記哺乳動物に免疫細胞を投与することにより増強するための方法が本明細書で提供され、ここで前記免疫細胞は、抗原に対して増強された親和性を有する改変NKG2C受容体又は阻害性受容体から活性化受容体へ変換されているNKG2A変異体のいずれかである活性化キメラ受容体を発現する。様々な免疫細胞が、実施形態に応じて用いられる。いくつかの実施形態では、NK細胞が用いられる。いくつかの実施形態では、活性化キメラ受容体を発現するように改変された自家細胞(例えばNK細胞)が提供される。さらなる実施形態では、本明細書に開示される活性化キメラ受容体を発現するように改変された同種細胞(例えばNK細胞)が提供される。いくつかの実施形態では、該方法は、天然NKG2Aを発現する細胞の、対象に投与されるべき細胞の集団を枯渇させることをさらに含む。いくつかの実施形態では、枯渇により、天然NKG2Aを発現する細胞における20%、25%、30%、40%、又は50%(又はそれより多い)減少がもたらされる。いくつかの実施形態では、増強された免疫細胞に基づく細胞傷害性が、がん又は感染症を治療又は予防する場合に用いられる。
【0023】
さらに、ナチュラルキラー(NK)細胞の細胞傷害性を増強するための細胞に基づく薬剤の製造における活性化キメラ受容体をコードするポリヌクレオチドの使用が本明細書で提供される。本明細書で考察される通り、薬剤の作製において、活性化キメラ受容体は、抗原に対して増強された親和性を有する改変NKG2C受容体又は阻害性受容体から活性化受容体に変換されているNKG2A変異体であり得る。いくつかの実施形態では、改変NKG2CとNKG2A変異体の双方は、がん又は感染症の治療のための薬剤の製造において用いられる。
【0024】
上で概説され、以下でさらに詳細に示される組成物及び関連の方法は、施術者によってとられる特定の行動を説明するが、それらが別の団体によるそれら行動の指示も含み得ることが理解されるべきである。したがって、「活性化キメラ受容体を発現するNK細胞の集団を投与すること」などの行動は、「活性化キメラ受容体を発現するNK細胞の集団の投与を指示すること」を含む。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1A-1B】本明細書に開示されるいくつかの実施形態に従う改変受容体を表す。
図1Aは、本明細書に開示されるいくつかの実施形態に従う、CD94及びDap12二量体との複合体(本明細書で「D12(SIIS)2C94」と称される)中の、HLA-E/ペプチド複合体に対する高親和性について改変された改変ナチュラルキラーグループ2C(NKG2C)変異体(165-168SIIS)を示す模式図を表す。
図1Bは、本明細書に開示されるいくつかの実施形態に従う、内部リボソーム侵入部位(IRES)の後に緑色蛍光タンパク質(GFP)を有するMSCVレトロウイルスベクターに挿入された、NKG2C(165-168SIIS)、Dap12、及びCD94を含む構築物の模式図を表す。
【
図2A-2F】精製NKG2C(+)NKG2A(-)NK細胞における高親和性活性化D12(SIIS)2C94受容体複合体の発現に関するフローサイトメトリーデータを表す。GFPのみを有するベクターが形質導入されたNK細胞(
図2A~2C)及びD12(SIIS)2C94を有するベクターが形質導入されたNK細胞(
図2D~2F)のD12(SIIS)2C94発現特性が表される。
【
図3A-3B】HLA-Gシグナルペプチドを有するHLA-E分子の設計及び作製を表す。
図3Aは、HLA-EシグナルペプチドとHLA-EのHLA-Gシグナルペプチド(GpHLA-Eと称される;HLA-Gシグナルペプチドを有するHLA-E)との置換を表す。
図3Bは、固形腫瘍細胞株HT29、U2OS、ES8、及びEW8におけるGpHLA-Eの外因性発現に関するフローサイトメトリーデータを表す。
【
図4A-4C】遺伝子組換え腫瘍細胞株HT29-GpHLA-E(
図4A)、U2OS-GpHLA-E(
図4B)、及びSKBR3-GpHLA-E(
図4C)に対する、D12(SIIS)2C94が形質導入された精製NKG2C(+)NKG2A(-)NK細胞の指定されるE:T比での4時間細胞傷害性アッセイに関するデータを表す。
【
図5A-5B】形質導入NK細胞の特徴づけに関するデータを表す。
図5Aは、NKG2A(-)NK細胞の集団を作製するための、NK細胞のNKG2A枯渇に関するフローサイトメトリーデータを表す。
図5Bは、抗NKG2A抗体Z199の存在下又は不在下でインキュベートされた遺伝子組換え腫瘍細胞株(i)HT29-GpHLA-E及び(ii)U2OS-GpHLA-Eに対する、モック形質導入NKG2A(-)NK細胞集団又はD12(SIIS)2C94形質導入NKG2A(-)NK細胞の、指定されるE:T比での細胞傷害性アッセイに関するデータを表す。
【
図6A-6B】本明細書に開示されるようなキメラ受容体の実施形態の模式図を表す。
図6Aは、本明細書に開示されるいくつかの実施形態に従う、膜貫通及び阻害性細胞質ドメインのN末端部分の欠失、並びにCD8a膜貫通ドメイン及び4-1BB(CD137)及びCD3ζの細胞質ドメインでの置換が存在する、切断型のナチュラルキラーグループ2メンバーA(NKG2A)及びCD94を示す模式図を表す。活性化NKG2A受容体及びキメラCD94受容体は、本明細書に開示されるいくつかの実施形態に従う、活性化複合体を形成する(本明細書で「2A/94BBz」と称される)。
図6Bは、本明細書に開示されるいくつかの実施形態に従う、内部リボソーム侵入部位(IRES)の後に緑色蛍光タンパク質(GFP)を有するMSCVレトロウイルスベクターに挿入された、キメラCD94及び活性化NKG2A受容体を含む構築物の模式図を表す。
【
図7A-7C】形質導入NKG2A枯渇NK細胞(最下段)及びモック形質導入NK細胞集団(最上段)における活性化NKG2A/CD94-41BB-CD3z受容体の発現に関するフローサイトメトリーデータを表す。
【
図8A-8B】(a)U2OS-GpHLA-E細胞(
図8A)及びHT29-GpHLA-E細胞(
図8B)に対する、モック形質導入NK細胞集団又は活性化NKG2A/CD94-41BB-CD3z受容体を発現する増殖されたNK細胞の指定されるE:T比での4時間細胞傷害性アッセイに関するデータを表す。
【
図9】本発明のいくつかの実施形態に従う、構築物及びその部分の非限定的な実施形態を提供する。
【
図10】結腸直腸腺癌の異種移植片モデル及び本明細書に開示されるいくつかの実施形態に従うNK細胞構築物の抗腫瘍活性に関するデータを表す。
【
図11】本明細書に開示されるいくつかの実施形態に従う、NK細胞構築物の投与後の結腸直腸腺癌の異種移植片モデルからの生存データを表す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
概要
多くの疾患の基礎をなす(ウイルス感染及び悪性細胞を含む)異常細胞の出現及び持続は、前記異常細胞に対する不十分な免疫応答によって可能になる。免疫療法の目標は、患者の免疫系の応答を開始又は増強する例えば免疫細胞、例えばナチュラルキラー(NK)細胞が損傷又は異常細胞を損傷させるか、殺滅するか、又は他に阻害する能力を後押しすることである。1つの免疫療法アプローチは、異常細胞の認識及び破壊を標的にするための免疫細胞における活性化キメラ受容体の組換え発現である。一般に、キメラ受容体は、標的細胞上のリガンドを認識する細胞外受容体ドメイン、アンカー膜貫通ドメイン及びリガンド結合時のシグナルの活性化を伝達するエフェクタードメインを含む。本明細書で開示されるいくつかの実施形態では、その一般的構造を有するか又はその一般的構造におけるバリエーションを有する活性化キメラ受容体が用いられる。加えて、いくつかの実施形態では、膜貫通ドメイン及びエフェクタードメインは、一緒に融合された別々のペプチドである。いくつかの他の実施形態では、膜貫通及びエフェクタードメインは、同じペプチドに由来する。いくつかのかかる実施形態では、膜貫通及びエフェクタードメインは、単一のペプチド(例えば、膜を貫通することに加え、平衡が保たれ、シグナルカスケードを開始させる1つのペプチド)を含む。以下により詳細に考察される通り、免疫細胞(例えばNK細胞)において所望の程度の発現を示し、非標的細胞に対する有害作用を回避する程度の標的結合活性と平衡した、NK細胞から細胞傷害活性を誘導する活性化キメラ受容体構築物を作製するため、切断、突然変異、追加的なリンカー/スペーサーエレメント、二量体などが用いられる。免疫細胞の表面上での本明細書で開示されるような活性化キメラ受容体の組換え発現により、目的の異常細胞に対する免疫細胞の標的化が再誘導され、且つ会合時の免疫活性化が増強される可能性がある。
【0027】
免疫療法のためのNK細胞
1つの免疫療法アプローチは、活性化キメラ受容体を発現するように操作されたT細胞を患者に投与し、陽性免疫応答を誘発することを含む。しかし、この手法の欠点は、患者における移植片対宿主病の誘導を予防するために自家細胞の使用が必要である点である。本明細書で開示されるいくつかの実施形態において提供される通り、操作されたNK細胞を含む組成物は、いくつかの利点を享受する。例えば、自家又はドナー由来同種細胞のいずれかは、NK細胞アプローチで用いることができる。加えて、いくつかの実施形態によると、本明細書で提供されるような操作されたNK細胞は、正常細胞に対して細胞傷害性を増強することが有意でない。さらに、NK細胞は、活性化されると、有意な細胞傷害性効果を有する。これを考慮すると、本明細書で提供されるような操作されたNK細胞が、その細胞傷害性効果をさらに高めることにより、罹患した標的細胞を選択的に殺滅するといったさらにより有効な手段を提供し得ることは、想定外である。したがって、いくつかの実施形態では、癌又は感染性疾患を治療又は予防する方法であって、治療有効量の、本明細書に記載の活性化キメラ受容体を発現するNK細胞を投与することを含む方法が提供される。一実施形態では、投与されるNK細胞は、自家細胞である。さらなる実施形態では、投与されるNK細胞は、ドナー由来(同種)細胞である。
【0028】
いくつかの実施形態では、活性化キメラ受容体を発現する(例えば、標的細胞上のリガンドに結合することによる)組換えNK細胞の会合及び活性化により、細胞溶解によるストレス及び/又は異常細胞(例えば、腫瘍細胞、ウイルス感染細胞など)の直接的殺滅がもたらされる。したがって、いくつかの実施形態では、NK細胞の細胞傷害性を増強する方法であって、本明細書に記載の活性化キメラ受容体を発現するように操作されたNK細胞を投与することを含む方法が提供される。一実施形態では、投与されるNK細胞は、自家細胞である。さらなる実施形態では、NK細胞は、ドナー由来(同種)細胞である。いくつかの実施形態では、操作されたNK細胞は、ストレス及び/又は異常細胞(例えば、腫瘍細胞、ウイルス感染細胞など)の間接的破壊又は阻害をもたらす。
【0029】
HLA-E/ペプチド複合体に結合する活性化キメラ受容体
上記の通り、いくつかの実施形態では、NK細胞は、腫瘍細胞及びウイルス感染細胞を含む異常細胞を認識及び破壊する。これらの天然免疫細胞の細胞傷害活性は、細胞表面上に存在する阻害性及び活性化受容体の各々からのシグナル伝達の平衡によって調節される。前者は、健常細胞の表面上に発現される「自己」分子に結合する一方、後者は、異常細胞上に発現されるリガンドに結合する。根底にある論理は、「自己」分子と相互作用するNK細胞上の阻害性受容体が活性化されることがなく、それによりNK細胞による「自己」分子を有する細胞の破壊が免れることである。それに対し、活性化受容体を発現するNK細胞が、例えば異常細胞上の「非自己」リガンドと相互作用するとき、NK細胞は活性化され、それに続いて細胞傷害性効果が現れる。したがって、阻害性受容体と比べての活性化受容体の会合の増加により、NK細胞の活性化及び標的細胞の溶解がもたらされる。
【0030】
ナチュラルキラーグループ2メンバーA(NKG2A)及びC(NKG2C)は、阻害性及び活性化シグナル伝達の平衡に影響を及ぼすNK細胞受容体の表面上で主に発現されるC型レクチン受容体である。NKG2AとNKG2Cの双方は、例えば膜内在性糖タンパク質CD94とヘテロ二量体を形成する能力がある。さらに、NKG2C/CD94とNKG2A/CD94の双方は、ヒトにおける非古典的MHCクラスI分子のHLA-E/ペプチド複合体に結合する。HLA-Eは、HLA-Eが古典的MHCクラスI分子のシグナルペプチド由来のペプチドの制限されたサブセット、即ちHLA-A、B、C、Gに結合することから、NK細胞による細胞認識における特別な役割を有する。したがって、NK細胞は、古典的MHCクラスI分子の発現を、NKG2C/CD94及びNKG2A/CD94とHLA-Eとの相互作用を通じて間接的に監視し得る。NKG2Cは、活性化受容体であり、HLA-E/ペプチド複合体の結合により、NKG2C/CD94とITAM保有アダプタータンパク質DAP12との間の相互作用が可能になる。それに対し、NKG2Aは、阻害性受容体であり、NKG2A/CD94は、その細胞質ドメイン内のITIMモチーフを介して阻害性シグナルを伝達する。
【0031】
NK細胞が腫瘍細胞及び/又はウイルス感染細胞を含む異常細胞を認識し、破壊する能力から、(キメラ受容体に基づく免疫療法アプローチを含む)免疫療法アプローチの構成要素が潜在的に有用になる。しかし、NK細胞の使用を複雑化していることは、HLA-Eが複数の腫瘍において上方制御され、腫瘍細胞の(免疫細胞により分泌される)IFNγへの曝露によりHLA-Eの発現が増強されるという事実である。NKG2Cは、NKG2Aと比べて、ペプチド複合体に対してより低い親和性を有することから、標的細胞上でのHLA-Eの発現増加は、単なる「カムフラージュ」として機能し得る。これは、親和性が高まっても阻害性であるNKG2Aが、標的ペプチドへの結合に対してNKG2Cを打ち負かし、ひいてはNK細胞活性に対する全体的な阻害効果を引き起こすことができるという結果である。
【0032】
これに対処するための1つのアプローチが、いくつかの実施形態において提供されるとき、増強された親和性でHLA-E/ペプチド複合体に結合する活性化キメラ受容体をコードするポリヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、活性化キメラ受容体は、HLA-E/ペプチド複合体に対して(例えば非修飾NKG2Cの親和性と比べて)増強された親和性を意図して改変されたNKG2C変異体を含む。NKG2C変異体のいくつかの実施形態では、野生型NKG2Cの残基165-168が、NKG2Aの対応する残基(SIIS)で置換される。いくつかの実施形態では、NKG2C変異体は、配列番号58のアミノ酸配列(SIIS)を含む(ここでSIISは、セリン-イソロイシン-イソロイシン-セリンを指す)。かかる実施形態では、予め親和性がより低いNKG2C受容体が増強された親和性を有するように改変されるように、元のNKG2A受容体の親和性が「移植」される。いくつかの実施形態では、突然変異NKG2Cの(非突然変異NKG2Cと比べるときの)親和性は、実施形態に応じて、約20%、約30%、約40%、約50%、又はそれ以上増加する。
【0033】
本明細書に開示されるいくつかの実施形態では、活性化キメラ受容体、例えば突然変異NKG2Cをコードするポリヌクレオチドが提供され、ここで細胞外受容体ドメインは、その天然膜貫通及び/又は細胞内ドメインが欠いており、いくつかの実施形態ではHLA-E/ペプチド複合体に対してさらに追加的な増強された親和性を該変異体に与えるNKG2C変異体の断片である。いくつかの実施形態では、NKG2C変異体断片は、配列番号63によってコードされる。いくつかの実施形態では、NKG2C変異体の断片は、完全長野生型NKG2Cと、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%の相同性がある。いくつかの実施形態では、該断片は、配列番号63からの1つ以上の追加的な突然変異(例えば、挿入、欠失、及び/又は保存的若しくは非保存的置換)を有してもよいが、リガンド結合機能を保持するか、又はいくつかの実施形態ではそれを増強している。いくつかの実施形態では、NKG2C変異体断片は、二量体、三量体、又は他のコンカテマー形式として提供され、かかる実施形態は、増強されたリガンド結合活性を提供する。いくつかの実施形態では、NKG2C変異体断片をコードする配列は、任意選択的には、完全に又は部分的にコドン最適化される。
【0034】
加えて、いくつかの実施形態では、シグナルペプチドが用いられる。シグナルペプチドの種又は配列は、構築物によって異なり得る。しかし、いくつかの実施形態では、CD8由来のシグナルペプチドが用いられる。一実施形態では、シグナルペプチドは、CD8aに由来し、配列番号4の配列を有する。いくつかの実施形態では、該ポリヌクレオチドは、NKG2C変異体受容体及びDAP12をコードする。いくつかの実施形態では、該ポリヌクレオチドは、NKG2C変異体受容体及びCD94をコードする。いくつかの実施形態では、該ポリヌクレオチドは、NKG2C変異体受容体、CD94、及びDAP12をコードする。NKG2Cが用いられるようないくつかの実施形態では、細胞は、天然NKG2Aの発現を変更する(例えば、転写を低減若しくは排除し、且つ/又は翻訳を低減若しくは排除する)ようにさらに改変される。
【0035】
いくつかの実施形態では、NKG2Aは、HLA-E/ペプチド複合体の結合時、阻害性シグナルのその正常な送達とは対照的に、活性化シグナルを送達するように改変される。本明細書で用いられるとき、「NKG2A」は、NKG2A遺伝子の任意の変異体、誘導体、若しくはアイソフォーム、又は限定はされないがNKG2Bを含むコード化タンパク質を指す。したがって、本明細書に開示されるいくつかの実施形態によると、活性化キメラ受容体をコードするポリヌクレオチドが提供され、ここで細胞外受容体ドメインは、その天然膜貫通又は細胞内ドメインが欠いているが、有利にはHLA-E/ペプチド複合体に結合するその能力を保持するNKG2Aの断片である。したがって、いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるポリペプチドによってコードされるキメラ受容体は、ITIM、ITAM又はヘミITAM/ヘミITAMを含まない。いくつかの実施形態では、NKG2A断片は、配列番号65によってコードされる。いくつかの実施形態では、NKG2Aの断片は、完全長野生型NKG2Aと、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%の相同性がある。いくつかの実施形態では、該断片は、配列番号65からの1つ以上の追加的な突然変異(例えば、挿入、欠失、及び/又は保存的若しくは非保存的置換)を有してもよいが、リガンド結合機能を保持するか、又はいくつかの実施形態ではそれを増強している。いくつかの実施形態では、NKG2A断片は、二量体、三量体、又は他のコンカテマー形式として提供され、かかる実施形態は、増強されたリガンド結合活性を提供する。いくつかの実施形態では、NKG2A断片をコードする配列は、任意選択的には、完全に又は部分的にコドン最適化される。加えて、いくつかの実施形態では、シグナルペプチドが用いられる。シグナルペプチドの種又は配列は、構築物によって異なり得る。しかし、いくつかの実施形態では、CD8由来のシグナルペプチドが用いられる。一実施形態では、シグナルペプチドは、CD8aに由来し、配列番号4の配列を有する。いくつかの実施形態では、該ポリヌクレオチドは、活性化NKG2A受容体及びCD94受容体をコードする。
【0036】
いくつかの実施形態では、CD94は、HLA-E/ペプチド複合体の結合時、活性化シグナルを送達するように改変される。したがって、本明細書に開示されるいくつかの実施形態によると、活性化キメラ受容体をコードするポリヌクレオチドが提供され、ここで細胞外受容体ドメインは、その天然膜貫通又は細胞内ドメインが欠いているが、有利にはNKG2A及びNKG2Cと二量体化するその能力を保持するCD94の断片である。いくつかの実施形態では、CD94断片は、配列番号67によってコードされる。いくつかの実施形態では、CD94の断片は、完全長野生型CD94と、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%の相同性がある。いくつかの実施形態では、該断片は、配列番号67からの1つ以上の追加的な突然変異(例えば、挿入、欠失、及び/又は保存的若しくは非保存的置換)を有してもよいが、リガンド結合機能を保持するか、又はいくつかの実施形態ではそれを増強している。いくつかの実施形態では、CD94断片は、配列番号68のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、CD94の断片は、完全長野生型CD94と、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%の相同性がある。いくつかの実施形態では、該断片は、配列番号68からの1つ以上の追加的な突然変異(例えば、挿入、欠失、及び/又は保存的若しくは非保存的置換)を有してもよいが、リガンド結合機能を保持するか、又はいくつかの実施形態ではそれを増強している。いくつかの実施形態では、CD94断片は、二量体、三量体、又は他のコンカテマー形式として提供され、かかる実施形態は、増強されたリガンド結合活性を提供する。いくつかの実施形態では、CD94断片をコードする配列は、任意選択的には、完全に又は部分的にコドン最適化される。加えて、いくつかの実施形態では、シグナルペプチドが用いられる。シグナルペプチドの種又は配列は、構築物によって異なり得る。しかし、いくつかの実施形態では、CD8由来のシグナルペプチドが用いられる。一実施形態では、シグナルペプチドは、CD8aに由来し、配列番号4の配列を有する。いくつかの実施形態では、該ポリヌクレオチドは、キメラCD94受容体及び活性化NKG2A受容体をコードする。いくつかの実施形態では、該ポリヌクレオチドは、活性化NKG2C変異体受容体及びキメラCD94受容体をコードする。
【0037】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される活性化キメラ受容体をコードするポリヌクレオチドは、NKG2A枯渇細胞集団(例えば、NKG2Aを発現する細胞が枯渇したか、実質的に枯渇したか、又は完全に枯渇したNK細胞の集団-例えば免疫除去法)において発現される。
【0038】
膜貫通、シグナル伝達及び組み合わせドメイン
上記の通り、一般的な活性化キメラ受容体構造は、リガンド結合ドメインをシグナル伝達ドメインに連結する少なくとも1つの膜貫通ドメインを含む。いくつかの実施形態では、しかし、膜貫通ドメインは、シグナル伝達機能を提供することにも役立ち得る。
【0039】
いくつかの実施形態では、CD94の断片、NKG2Aの断片、及び/又はNKG2C変異体は、その正常な膜貫通ドメインの少なくとも一部を保持する。いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは、通常、T細胞及びNK細胞の両方で発現される膜貫通糖タンパク質であるCD8の少なくとも一部を含む。いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインがCD8αを含む一方、いくつかの実施形態では、CD8βが用いられる。いくつかの実施形態では、CD8αの「ヒンジ」(たとえば、細胞外ドメインと細胞内ドメインの間の部分)は、配列番号5の配列を有する。いくつかの実施形態では、CD8αは、配列番号5の配列を有するCD8αと少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%相同であるように切断又は修飾され得る。いくつかの実施形態では、CD8βは、配列番号6の配列を有する。いくつかの実施形態では、CD8βは、配列番号6の配列を有するCD8βと少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%相同であるように切断又は修飾され得る。いくつかの実施形態では、CD8α及びCD8βの二量体又は三重体又は繰り返される配列が用いられる。
【0040】
いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは、シグナル伝達ドメインとして同様に役立つCD16を含む。CD16は、2つのアイソフォームa及びb(それぞれFcγ受容体IIIa及びIIIbとしても公知)で存在する。これらの受容体は、通常、順番にNK細胞を活性化するIgG抗体のFc部分に結合する。したがって、いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインがCD16aを含む一方、いくつかの実施形態では、CD16bが用いられる。いくつかの実施形態では、CD16aは、配列番号7の配列を有する。いくつかの実施形態では、CD16aは、配列番号7の配列を有するCD16aと少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%相同であるように切断又は修飾され得る。いくつかの実施形態では、CD16bは、配列番号8の配列を有する。いくつかの実施形態では、CD16bは、配列番号8の配列を有するCD16bと少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%相同であるように切断又は修飾され得る。いくつかの実施形態では、CD16a及びCD16bの二量体が用いられる。いくつかの実施形態では、CD16膜貫通ドメインに対する修飾は、ドメインの長さを増加するための追加的な核酸残基を含む。代わりに、CD16は、短縮され得る。CD16の長さに対する修飾は、有利にはリガンド-受容体相互作用の増強を促進し得る。
【0041】
いくつかの実施形態では、本明細書中の活性化キメラ受容体は、シグナル伝達ドメインとして同様に役立つナチュラルキラー受容体2B4ドメイン(本明細書中で「2B4」と称され、CD244としても公知である)を含む。2B4は、NK細胞上で発現され、この受容体と標的細胞上のそのリガンドとの相互作用を通じて、非主要組織適合複合体(MHC)制限による殺滅を制御する。いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは、2B4を含む一方、いくつかの実施形態では、2B4ドメインは、細胞内シグナル伝達ドメインとして採用される。いくつかの実施形態では、2B4は、配列番号9の配列を有する。いくつかの実施形態では、2B4は、配列番号9の配列を有する2B4と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%相同であるように切断又は修飾され得る。いくつかの実施形態では、2B4は、構築物中の唯一の膜貫通/シグナル伝達ドメインとして用いられるが、いくつかの実施形態では、2B4は、1つ以上の他のドメインと併用され得る。例えば、いくつかの実施形態では、CD16、4-1BB及び/又は2B4の組み合わせが用いられる。
【0042】
いくつかの実施形態では、DAP10を通じて、シグナル伝達が達成される。いくつかの実施形態では、DAP10の二量体が用いられる。いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは、DAP10を含む。いくつかの実施形態では、DAP10は、配列番号10の配列を有する。いくつかの実施形態では、DAP10は、配列番号10の配列を有するDAP10と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%相同であるように切断又は修飾され得る。同様に、いくつかの実施形態では、DAP12もかかるシグナルを伝達し得るために使用可能である。いくつかの実施形態では、DAP12は、配列番号11の配列を有する。いくつかの実施形態では、DAP12は、配列番号11の配列を有するDAP12と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%相同であるように切断又は修飾され得る。いくつかの実施形態では、DAP10及びDAP12のヘテロ二量体が用いられる。しかし、いくつかの実施形態では、NKG2A、NKG2C、又はNKG2D構築物のいずれかにおいて、DAP10もDAP12も用いられない。
【0043】
いくつかの実施形態では、4-1BB(CD137及び腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー9(TNFRSF9)としても公知である)を通じてシグナル伝達が提供される。4-1BBは、典型的には活性化免疫細胞のための刺激性分子として機能する(例えば、4-1BBの架橋によりT細胞増殖及び細胞溶解活性が増強される)同時刺激性の免疫チェックポイント分子である。しかし、いくつかの実施形態では、4-1BBの機能は、有利にはNK細胞と併せて用いられる。いくつかの実施形態では、4-1BBは、配列番号12の配列を有する。いくつかの実施形態では、4-1BBは、配列番号12の配列を有する4-1BBと少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%相同であるように切断又は修飾され得る。いくつかの実施形態では、4-1BBは、唯一のシグナル伝達ドメインであるが、上で考察の通り、いくつかの実施形態では、4-1BBは、本明細書で開示される他の膜貫通/シグナル伝達ドメインの1つ以上と併せて意外にも十分に機能する。例えば、いくつかの実施形態では、CD16は、4-1BBと併せて相乗的刺激効果をもたらし、特に有効な(例えば、細胞傷害性)NK細胞をもたらす。いくつかの実施形態では、DAP10は、4-1BBと併せて相乗的刺激効果をもたらし、特に有効な(例えば、細胞傷害性)NK細胞をもたらす。いくつかの実施形態では、DAP10は、4-1BB及び2B4と併せて、相乗的刺激効果をもたらし、特に有効な(例えば細胞傷害性のある)NK細胞が得られる。
【0044】
いくつかの実施形態では、シグナル伝達ドメインは、CD3 T細胞受容体複合体の少なくとも一部を含む。T細胞受容体複合体は、ζ、α、β、γ、δ及びεサブユニットを含む複数のサブユニットを含む。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されるいくつかの実施形態に従って操作されたNK細胞は、これらサブユニット(又はその断片)の少なくとも1つを含む。いくつかの実施形態では、シグナル伝達ドメインは、CD3ζサブユニットを含む。いくつかの実施形態では、CD3ζは、配列番号13の配列を有する。いくつかの実施形態では、CD3ζは、配列番号13の配列を有するCD3ζと少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%相同であるように切断又は修飾され得る。いくつかの実施形態では、CD3ζは、ドメインがもはや基準の免疫受容体チロシンに基づく活性化モチーフ又はITAMモチーフに一致しないように突然変異される(例えば、アミノ酸の突然変異、挿入又は欠失)。したがって、いくつかの実施形態では、NK細胞は、ITAMモチーフを含まない操作された受容体を含む。いくつかの実施形態では、CD3ζは用いられない。いくつかの実施形態では、得られる操作されたNK細胞は、特に標的細胞に対して増強された細胞傷害性を示すとともに、有害な副作用は、制限又は低減される。いくつかの実施形態では、これは、その所与の実施形態において用いられるキメラ受容体の様々な部分の相乗的相互作用に起因する。いくつかの実施形態では、CD3ζは、4-1BBと併せて相乗的刺激効果をもたらし、特に有効な(例えば、細胞傷害性)NK細胞をもたらす。いくつかの実施形態では、CD3ζは、2B4と併せて相乗的刺激効果をもたらし、特に有効な(例えば、細胞傷害性)NK細胞をもたらす。
【0045】
なおさらなる実施形態では、活性化キメラ受容体のシグナル伝達部分は、ITAMの一部、例えばヘミ-タムを含む。いくつかの実施形態では、これらの部分は、基準のITAM配列を構成しないというよりも、NK細胞の細胞傷害性に要求されるシグナルをさらに伝達し得る部分を含む。いくつかの実施形態では、ヘミ-タムは、配列番号14の配列を有する(ここで、Xは、任意の残基であり得る)。いくつかの実施形態では、ヘミ-タムは、配列番号14の配列を有するヘミ-タムと少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%相同であるように切断又は修飾され得る。いくつかの実施形態では、活性化キメラ受容体構築物は、配列番号14のヘミ-タムを含む。いくつかの実施形態では、複数のヘミ-タムは、例えば、ヘッドトゥテール、テールトゥヘッド、ヘッドトゥヘッド又はテールトゥテールの配置で使用可能である。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのヘミ-タムの存在は、少なくとも1つのヘミ-タムを用いる活性化キメラ受容体を含むNK細胞に対し、増強されたシグナル伝達及び細胞傷害性をもたらす。以下により詳細に考察される通り、いくつかの活性化キメラ受容体は、ヘミ-タムの1つの非限定例であるNKp80を含む。
【0046】
いくつかの実施形態では、例えば、シグナル伝達リンパ球活性化分子(SLAM)ファミリーの受容体に由来するシグナル伝達領域を含む追加的なシグナル伝達領域が用いられる。これらの受容体として、限定されないが、2B4(上で考察)が挙げられる。SLAMファミリーの受容体は、それらの細胞質側末端においてチロシンに基づく共通モチーフを共有する。そのモチーフは、免疫受容体チロシンに基づくスイッチモチーフ(ITSM)と称されるS/TxYxxL/Iである(配列番号15)。これらの受容体は、チロシンキナーゼFynを動員するSLAM関連タンパク質(SAP、遺伝子SH2D1Aによってコードされる)を通じて活性化シグナルを伝達する。したがって、いくつかの実施形態によると、シグナル伝達領域は、ITSMモチーフを含むポリペプチド配列(又はそれをコードする核酸)を含む。いくつかの実施形態では、ITSMモチーフは、完全にコードされる必要はないが、シグナル伝達領域は、SAP(又は別の類似経路)を通じて活性化シグナルを伝達することができる。いくつかの実施形態では、ITSMモチーフは、配列番号15の配列を有する(ここで、Xは、任意のアミノ酸残基であり得る)。いくつかの実施形態では、ITSMモチーフは、配列番号15の配列を有するITSMモチーフと少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%相同であるように切断又は修飾され得る。いくつかの実施形態では、ITSMモチーフは、配列番号15の配列を含む。
【0047】
細胞外受容体ドメイン、膜貫通ドメイン及びシグナル伝達ドメイン(及び膜貫通/シグナル伝達ドメインの組み合わせ)におけるこれらのバリエーションに加えて、いくつかの実施形態では、追加的な同時活性化分子が提供され得る。例えば、いくつかの実施形態では、NK細胞は、膜結合性インターロイキン15(mbIL15)を発現するように操作される。かかる実施形態では、NK細胞上でのmbIL15の存在は、NK細胞の増殖及び寿命を相乗的に高めることにより、NK細胞の細胞傷害性効果をさらに増強するように機能する。いくつかの実施形態では、mbIL15は、配列番号16の核酸配列を有する。いくつかの実施形態では、mbIL15は、配列番号16の配列と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%相同であるように切断又は修飾され得る。いくつかの実施形態では、mbIL15は、配列番号17のアミノ酸配列を有する。本明細書で開示される活性化キメラ受容体と併せて、かかる実施形態は、特定の標的細胞を標的化及び破壊するのに特に有効なNK細胞組成物を提供する。
【0048】
キメラ受容体構築物
本明細書に記載された本開示を考慮して、特定の標的細胞(例えば、疾患細胞又は癌細胞)に標的を定めて破壊するために、NK細胞中で生成及び発現され得る様々な活性化キメラ受容体が存在する。そのようなキメラ受容体の非限定的な例を下記でより詳細に論じる。
【0049】
上記で論じたように、T細胞受容体複合体の一部(具体的にはCD3ζ)は、免疫シグナル伝達カスケードの強力な活性化因子として機能する。同様に、腫瘍壊死因子スーパーファミリーのメンバーである受容体4-1BBは、リガンドの結合時にNK細胞を活性化する。いくつかの実施形態では、これらの2つのシグナル伝達成分は、キメラ受容体へのリガンドの結合時に相乗的に作用してNK細胞を活性化する。したがって、いくつかの実施形態では、HLA-E/ペプチド複合体に結合するNKG2A断片の細胞外受容体ドメイン、CD8膜貫通領域、並びに4-1BB及びCD3ζのシグナル伝達ドメインを含むエフェクタードメインを含むNKG2A/CD8a/4-1BB/CD3ζキメラ受容体をコードするポリヌクレオチドが提供される。一実施形態では、このキメラ受容体は、配列番号61の核酸配列によってコードされる。さらに別の実施形態では、NKG2A/CD8a/4-1BB/CD3ζキメラ受容体は、配列番号62のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、この構築物は、NK細胞がmbIL15を同時に発現するとき、特に有効であり、mbIL15は、NK細胞の活性化及び細胞傷害性に関してさらなる相乗効果を提供する。いくつかの実施形態では、キメラ受容体の配列は、配列番号61と異なってもよいが、実施形態に応じて、配列番号61と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%の相同性を維持する。いくつかの実施形態では、キメラ受容体が配列番号61と異なってもよい一方で、キメラ受容体は、NK細胞の活性化及び/又は細胞傷害性機能を保持するか、又はいくつかの実施形態では増強している。
【0050】
加えて、いくつかの実施形態では、CD94断片細胞外受容体ドメイン、CD8膜貫通領域、並びに4-1BB及びCD3ζのシグナル伝達ドメインを含むエフェクタードメインを含むCD94/CD8a/4-1BB/CD3ζキメラ受容体をコードするポリヌクレオチドが提供される。一実施形態では、このキメラ受容体は、配列番号59の核酸配列によってコードされる。さらに別の実施形態では、CD94/CD8a/4-1BB/CD3ζキメラ受容体は、配列番号60のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、この構築物は、NK細胞がmbIL15を同時に発現するとき、特に有効であり、mbIL15は、NK細胞の長期活性化及び細胞傷害性(例えばインビボ持続)に関してさらなる相乗効果を提供する。いくつかの実施形態では、キメラ受容体の配列は、配列番号59と異なってもよいが、実施形態に応じて、配列番号59と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%の相同性を維持する。いくつかの実施形態では、キメラ受容体が配列番号59と異なってもよい一方で、キメラ受容体は、NK細胞の活性化及び/又は細胞傷害性機能を保持するか、又はいくつかの実施形態では増強している。
【0051】
受容体2B4は、いくつかの免疫受容体チロシンベーススイッチモチーフ(ITSM)を有し、活性化シグナルを伝達する可能性を有する。同様に、受容体4-1BBを通じたシグナル伝達では、腫瘍壊死因子スーパーファミリーメンバーもまた、リガンド結合時、NK細胞を活性化する。したがって、いくつかの実施形態では、これらのシグナル伝達分子が想定外に細胞傷害性NK細胞を有効に生成するように協力する能力を利用して、NKG2A、CD94、又はNKG2C変異体の断片を含む細胞外受容体ドメイン、CD8a膜貫通領域、並びに4-1BB及び2B4のシグナル伝達ドメインを含むエフェクタードメインを含む活性化キメラ受容体をコードするポリヌクレオチドが提供される。加えて、いくつかの実施形態では、この構築物は、任意選択的にはmbIL15と同時発現され得る。
【0052】
いくつかの実施形態では、標的細胞に対して増強された細胞傷害性を生じさせるため、2B4とCD3ζとの組み合わせがNK細胞とともに用いられる。したがって、いくつかの実施形態では、NKG2A、CD94、又はNKG2C変異体の断片を含む細胞外受容体ドメイン、CD8a膜貫通領域、並びにCD3ζ及び2B4のシグナル伝達ドメインを含むエフェクタードメインを含む活性化キメラ受容体をコードするポリヌクレオチドが提供される。加えて、いくつかの実施形態では、この構築物は、任意選択的にはmbIL15と同時発現され得る。上で考察したように、4-1BBは、CD3ζ及び2B4と同様、免疫シグナル伝達カスケードの強力なアクチベーターである。いくつかの実施形態では、これら3つのシグナル伝達成分は、リガンドのキメラ受容体への結合時にNK細胞を活性化するため、相乗的様式で作用する。
【0053】
いくつかの実施形態では、NKG2A、CD94、又はNKG2C変異体の断片を含む細胞外受容体ドメイン、CD8a膜貫通領域、並びに4-1BB及びDAP10のシグナル伝達ドメインを含むエフェクタードメインを含む活性化キメラ受容体をコードするポリヌクレオチドが提供される。加えて、いくつかの実施形態では、この構築物は、任意選択的にはmbIL15と同時発現され得る。
【0054】
いくつかのさらなる実施形態では、活性化キメラ受容体の膜貫通及びエフェクタードメイン(及び関連機能)は、同じペプチドに由来する。CD16は、NK細胞の表面上に発現される強力な活性化受容体である。したがって、いくつかの実施形態では、膜貫通領域と細胞内エフェクタードメインの双方を含み、NKG2C変異体、CD94、又はNKG2Aの断片、及びCD16ペプチドを含む、NKG2A/CD16キメラ受容体、NKG2C変異体/CD16キメラ受容体、又はCD94/CD16キメラ受容体をコードするポリヌクレオチドが提供される。加えて、いくつかの実施形態では、この構築物は、任意選択的にはmbIL15と同時発現され得る。
【0055】
いくつかのさらなる実施形態では、NKG2A/CD16/4-1BBキメラ受容体、CD94/CD16/4-1BBキメラ受容体、又はNKG2C変異体/CD16/4-1BBキメラ受容体をコードするポリヌクレオチドが提供され、ここで4-1BBのシグナル伝達ドメインは、エフェクタードメインにおける活性化シグナルの第2のトランスデューサーとして作用する。加えて、いくつかの実施形態では、この構築物は、任意選択的にはmbIL15と同時発現され得る。
【0056】
NCR1(NKp46)、NCR2(NKp44)及びNCR3(NKp30)は、リガンド結合時に活性化シグナルを伝達するNK細胞上の受容体である。したがって、いくつかの実施形態では、膜貫通領域と細胞内エフェクタードメインの双方を含み、NKG2A、CD94、又はNKG2C変異体断片、及びNCR1ペプチドを含む、NKG2A/NCR1キメラ受容体、CD94/NCR1キメラ受容体、又はNKG2C変異体/NCR1キメラ受容体をコードするポリヌクレオチドが提供される。
【0057】
いくつかのさらなる実施形態では、NKG2A/NCR1/4-1BBキメラ受容体、CD94/NCR1/4-1BBキメラ受容体、又はNKG2C変異体/NCR1/4-1BBキメラ受容体をコードするポリヌクレオチドが提供され、ここで4-1BBのシグナル伝達ドメインは、エフェクタードメインにおける活性化シグナルの第2のトランスデューサーとして作用することで、相乗的に増強されたNK細胞の活性化及び細胞傷害性をもたらす。いくつかのさらなる実施形態では、膜貫通領域と細胞内エフェクタードメインの双方を含み、NCR2ペプチドを含む、NKG2A/NCR2キメラ受容体、CD94/NCR2キメラ受容体、NKG2C変異体/NCR2キメラ受容体をコードするポリヌクレオチドが提供される。NCR1と同様、いくつかの実施形態では、これらの構築物は、それらの比較的小さいサイズ及び配列に対する単純性が理由で、キメラ受容体を発現するNK細胞の作製における使用に特に適し得る。しかし、それらは、いくつかの実施形態では、構築物の見かけ上の単純性に反して、高度に有効なNK細胞を生成する能力を保持する。加えて、いくつかの実施形態では、これらの構築物は、任意選択的にはmbIL15と同時発現され得る。
【0058】
いくつかのさらなる実施形態では、膜貫通領域と細胞内エフェクタードメインの双方を含み、NCR3ペプチドを含む、NKG2A/NCR3キメラ受容体、CD94/NCR3キメラ受容体、又はNKG2C変異体/NCR3キメラ受容体をコードするポリヌクレオチドが提供される。NCR1及び/又はNCR2と同様、いくつかの実施形態では、これらの構築物は、それらの比較的小さいサイズ及び配列に対する単純性が理由で、活性化キメラ受容体を発現するNK細胞の作製における使用に特に適し得る。しかし、それらは、いくつかの実施形態では、構築物の見かけ上の単純性に反して、高度に有効なNK細胞を生成する能力を保持する。
【0059】
いくつかのさらなる実施形態では、NKG2A/NCR2/4-1BBキメラ受容体、CD94/NCR2/4-1BBキメラ受容体、又はNKG2C変異体/NCR2/4-1BBキメラ受容体をコードするポリヌクレオチドが提供され、ここで4-1BBのシグナル伝達ドメインは、エフェクタードメインにおける活性化シグナルの第2のトランスデューサーとして作用し、それによりシグナル伝達ドメインと想定外に有効に細胞傷害性NK細胞との間に相乗効果をもたらす。加えて、いくつかの実施形態では、この構築物は、任意選択的にはmbIL15と同時発現され得る。
【0060】
いくつかのさらなる実施形態では、NKG2A/NCR3/4-1BBキメラ受容体、CD94/NCR3/4-1BBキメラ受容体、又はNKG2C変異体/NCR3/4-1BBキメラ受容体をコードするポリヌクレオチドが提供され、ここで4-1BBのシグナル伝達ドメインは、エフェクタードメインにおける活性化シグナルの第2のトランスデューサーとして作用し、それによりシグナル伝達ドメインと想定外に有効に細胞傷害性NK細胞との間に相乗効果をもたらす。加えて、いくつかの実施形態では、この構築物は、任意選択的にはmbIL15と同時発現され得る。
【0061】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるキメラ受容体の表面発現及び有効性は、いくつかの実施形態では膜貫通ドメインとCD94断片、NKG2A断片、又はNKG2C断片のいずれか1つとの間の細胞外ドメイン内に位置するスペーサー領域(ヒンジ)におけるバリエーションにより増強される。一部の実施形態では、このヒンジ領域は、この活性化キメラ受容体の他の部分間(例えば、細胞内ドメインと膜貫通ドメインとの間又は複数の細胞内ドメイン間)に含まれ得る。一部の実施形態では、本明細書の他の箇所で開示される特定の目的に役立つドメインは、追加的な機能を果たし得る。例えば、いくつかの実施形態では、CD8aは、(いくつかの実施形態では配列番号5の核酸配列によってコードされる)ヒンジ領域として機能するように再利用される。さらに別の実施形態では、このヒンジ領域は、CD8aのN末端切頭型及び/又はCD8aのC末端切頭型を含む。実施形態に応じて、これらの切頭は、配列番号5によってコードされるヒンジに対して少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%又は少なくとも約90%相同であり得る。いくつかの追加的な実施形態では、このヒンジは、グリシン残基及びセリン残基のスパン(本明細書では「GSリンカー」と称される)を含み、GSnは、配列(Gly-Gly-Gly-Gly-Ser)n(配列番号42)を表す。一実施形態では、このヒンジは、CD8a及びGS3の両方を含み、配列番号32のアミノ酸配列によってコードされ、例えばn=3である。追加的な実施形態では、nの値は、実施形態に応じて、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15と等しいか又はそれより高いことができる。いくつかの実施形態では、このヒンジは、GSn/CD8aとして構成されている可能性もある。代わりに、このGSリンカーは、ヒンジ領域全体を含み得る。そのような一実施形態では、このヒンジ領域は、配列番号33の核酸配列によってコードされる。別のそのような実施形態では、このヒンジ領域は、配列番号34の核酸配列によってコードされる。
【0062】
いくつかの実施形態では、本活性化キメラ受容体構築物は、2B4細胞内シグナル伝達ドメインを利用する。いくつかの実施形態では、このドメインは、配列番号35のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、この2B4ドメインは、配列番号36の核酸配列によってコードされる。一部の実施形態では、活性化キメラ受容体中で使用される2B4細胞内ドメインの配列は、配列番号36と異なり得るが、実施形態に応じて、配列番号36と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%又は少なくとも95%相同のままである。いくつかの実施形態では、この活性化キメラ受容体のシグナル伝達ドメインは、配列番号36と異なり得るが、この活性化キメラ受容体は、NK細胞の活性化機能及び/又は細胞傷害機能を保持するか、又は一部の実施形態では増強している。同様に、いくつかの実施形態では、NKp80細胞内ドメインがいくつかの実施形態で使用される。一部の実施形態では、このNKp80ドメインは、唯一の細胞内シグナル伝達ドメインであるが、一部の実施形態では、このドメインは、1つ又は複数の追加的なドメインとともに使用される。いくつかの実施形態では、このNKp80は、配列番号37のアミノ酸配列によってコードされる。一部の実施形態では、このNKp80ドメインは、配列番号38の核酸配列によってコードされる。一部の実施形態では、キメラ受容体中で使用されるNKp80細胞内ドメインの配列は、配列番号38と異なり得るが、実施形態に応じて、配列番号38と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%又は少なくとも95%相同のままである。いくつかの実施形態では、この活性化キメラ受容体のシグナル伝達ドメインは、配列番号38と異なり得るが、このキメラ受容体は、NK細胞の活性化機能及び/又は細胞傷害機能を保持するか、又は一部の実施形態では増強している。
【0063】
いくつかの実施形態では、本活性化キメラ受容体は、膜貫通ドメインとしてβアドレナリン受容体の一部を使用する。いくつかの実施形態では、この部分は、βアドレナリン細胞外ドメインの一部を含む。いくつかの実施形態では、この部分は、βアドレナリン受容体膜貫通ドメインの一部である。いくつかの実施形態では、βアドレナリン受容体の細胞外ドメイン及び膜貫通ドメインの組み合わせが使用される。実施形態に応じて、この部分は、β-1及び/β-2のアドレナリン受容体に由来する。いくつかの実施形態では、このβ-2アドレナリン受容体のN末端細胞外領域の一部が使用される。いくつかの実施形態では、この部分は、配列番号39のアミノ酸配列を有する。一部の実施形態では、細胞外β-2アドレナリンドメインは、配列番号40の核酸配列によってコードされる。一部の実施形態では、キメラ受容体中で使用される細胞外β-2アドレナリンドメインの配列は、配列番号39と異なり得るが、実施形態に応じて、配列番号39と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%又は少なくとも95%相同のままである。いくつかの実施形態では、このβ-2アドレナリン受容体の第1の膜貫通ヘリックスは、任意選択により細胞外β-2アドレナリンドメインとともに使用される。いくつかの実施形態では、このβ-2アドレナリン受容体の第1の膜貫通ヘリックスは、配列番号41のアミノ酸配列を有する。一部の実施形態では、このβ-2アドレナリン受容体の第1の膜貫通ヘリックスは、配列番号42の核酸配列によってコードされる。一部の実施形態では、キメラ受容体中で使用されるβ-2アドレナリン受容体の第1の膜貫通ヘリックスの配列は、配列番号41と異なり得るが、実施形態に応じて、配列番号41と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%又は少なくとも95%相同のままである。
【0064】
上で考察したように、いくつかの実施形態では、コドン最適化配列が用いられる。例えばいくつかの実施形態では、CD94、NKG2A、又はNKG2C変異体の断片を含む細胞外受容体ドメインに対して、コドン最適化(完全又は部分)が実施される。しかし、いくつかの実施形態では、コドン最適化が実施されない。いくつかの実施形態では、キメラ受容体構築物に、最適化されていないNKG2A、CD94、又はNKG2C変異体の断片を含む細胞外ドメイン、CD8aヒンジ、及び4-1BBシグナル伝達ドメインが提供される。いくつかの実施形態では、キメラ受容体構築物に、最適化されていないNKG2A、CD94、又はNKG2C変異体の断片を含む細胞外ドメイン、CD8aヒンジ及び膜貫通ドメイン、及び4-1BBシグナル伝達ドメインが提供される。
【0065】
いくつかの実施形態では、活性化キメラ受容体構築物に、最適化されていないNKG2A、CD94、又はNKG2C変異体の断片を含む細胞外ドメイン、CD8aヒンジ、及びNKp80シグナル伝達ドメインが提供される。いくつかの実施形態では、キメラ受容体構築物に、最適化されていないNKG2A、CD94、又はNKG2C変異体の断片を含む細胞外ドメイン、CD8aヒンジ及び膜貫通ドメイン、及びNKp80シグナル伝達ドメインが提供される。いくつかの実施形態では、GSリンカー、例えばGS3リンカーは、4-1BBとNKp80ドメインとを連結する。
【0066】
いくつかの実施形態では、CD8膜貫通ドメインは、2B4細胞内ドメインに共役されている。いくつかの実施形態では、CD8膜貫通ドメインは、膜貫通であり且つ細胞内である2B4ドメインに置き換えられている。いくつかの実施形態では、このCD8膜貫通ドメインは、2B4に置き換えられており、4-1BBは、近位配置で発現される。
【0067】
いくつかの実施形態では、CD16細胞内シグナル伝達ドメインは、本明細書で説明された活性化キメラ受容体に対してトランスで外因的に発現されるCD3ζ又はγサブユニットに共役されている。上記で論じたように、そのような構築物は、予想外にも増強されたシグナル伝達をもたらし得、そのため、NK細胞の細胞毒性効果の予想外の増加をもたらし得る。
【0068】
いくつかの実施形態では、本明細書でさらに詳細に論じられているように、本活性化キメラ受容体は、二量体化するように構成されている。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたいくつかの実施形態に係るCD94の断片、NKG2Aの断片、又はNKG2C変異体を含む受容体は、任意選択により二量体化されている。二量体化は、実施形態に応じてホモ二量体又はヘテロ二量体を含み得る。いくつかの実施形態では、二量体化により、この活性化キメラ受容体(したがって、この受容体を発現するNK細胞)のアビディティは、有害な毒性効果の減少(又は欠如)における同等のバランスを有してより良好なリガンド認識にシフトされる。さらなる実施形態では、細胞外受容体ドメインは、CD8aシグナルペプチドをさらに含む。いくつかの実施形態では、この活性化キメラ受容体は、内部二量体を利用するか、又は1つ若しくは複数の成分サブユニットの繰り返しを利用する。例えば、いくつかの実施形態では、このキメラ受容体は、第2のNKG2C変異体細胞外ドメインに共役されたNKG2C変異体細胞外ドメインと、膜貫通/シグナル伝達領域(又は別個のシグナル伝達領域とともに別個の膜貫通領域)とを含む。いくつかの実施形態では、このNKG2D細胞外ドメインの1つ又は複数は、コドン最適化されている。いくつかの実施形態では、2つのNKG2D細胞外ドメインがリンカー(例えば、GSnリンカー)により分離されている。一実施形態では、GS3リンカーが使用される。いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは、βアドレナリン受容体の細胞外領域を含む。いくつかの実施形態では、膜貫通ドメイン膜貫通ドメインは、β-2アドレナリン受容体の細胞外領域を含み、β-2アドレナリン受容体の第1の膜貫通ドメインをさらに含む。いくつかの実施形態では、シグナル伝達領域は、4-1BBを含む。いくつかの実施形態では、シグナル伝達領域は、NKp80を含む。いくつかの実施形態では、シグナル伝達領域は、CD16膜貫通-細胞内ドメインを含む。いくつかの実施形態では、シグナル伝達領域は、NKp80又はCD16膜貫通-細胞内ドメインとともに4-1BBを含む。
【0069】
本明細書で開示されたいくつかの実施形態によれば、コドン最適化された細胞外受容体ドメインを利用する追加的なキメラ受容体が提供される(任意選択により、この構築物は、最適化されていないか又は部分的に最適化されたドメインによっても複製され得る)。例えば、いくつかの実施形態では、コドン最適化された細胞外ドメインは、ヒンジ及び少なくとも2つのドメイン(たとえば、膜貫通ドメイン及びシグナル伝達ドメイン)に共役されている。いくつかの実施形態では、複数のシグナル伝達ドメインによりNK細胞の細胞傷害効力が増強され、なぜなら、複数の非冗長のシグナルカスケードが開始されるからである。いくつかの実施形態では、これらの複数の経路は、単一のシグナル伝達分子(例えば、IFNγ)に収束し得るが、細胞傷害エンドポイントを駆動するシグナル伝達分子の全体的な大きさのため、全体的な細胞傷害効果が予想外にも増加する。
【0070】
さらに追加的な実施形態では、活性化キメラ受容体の特定の成分は、効力(例えば、NK細胞の活性化又は細胞傷害性)の増強をもたらす1つ又は複数の追加的なサブユニットに置き換えられ得る。例えば、一実施形態では、CD16細胞内シグナル伝達ドメインは、DAP10の四重反復(例えば、4×DAP10)に置き換えられ得る。追加的な実施形態では、CD16細胞内シグナル伝達ドメインは、Zap70サブユニットに置き換えられ得る。特定のそのような実施形態は、NK細胞の細胞傷害性の予想外の増強をもたらす。
【0071】
いくつかの追加的な実施形態では、エフェクタードメインは、リガンドの結合時に活性化シグナル伝達を増強するために1つ又は複数のコンセンサスヘミITAM配列を含む。追加的な実施形態では、4-1BB、CD16、NCR1、NCR2及び/又はNCR3のシグナル伝達ドメイン間のGSリンカーの包含によりシグナル伝達が増強される。さらに、いくつかの実施形態では、CD3ζ及びFcRγの一方又は両方は、(同一又は別個の構築物上で)本明細書で説明されたキメラ受容体とともにさらに発現され、これによりシグナル伝達が予想外にも増強され、そのため、NK細胞の細胞傷害効果が予想外にも増加する。実施形態に応じて、CD3ζ及びFcRγの1つ又は複数の操作された発現は、NK細胞によるこれらの分子の内因性発現を補い、それによりNK細胞のシグナル伝達及び究極の細胞傷害効力がさらに増強される。
【0072】
任意選択により、実施形態に応じて、本明細書で開示されたポリヌクレオチドのいずれかは、活性化キメラ受容体の構成サブユニットの1つ又は複数の切頭及び/又はバリアントもコードし得、NK細胞を標的細胞に向ける能力を依然として保持し得、いくつかの実施形態では、結合時に細胞傷害性を予想外にも増強し得る。加えて、本明細書で開示されたポリヌクレオチドのいずれかは、任意選択により、キメラ受容体の様々な構成サブユニットをコードするコドン最適化ヌクレオチド配列も含み得る。本明細書で使用される場合、用語「断片」及び「切頭型」は、それらの通常の意味が与えられるものとし、且つタンパク質のN末端欠失バリアント及びC末端欠失バリアントも含むものとする。
【0073】
本明細書で説明された活性化キメラ受容体をコードするポリヌクレオチドをベクターに挿入して、NK細胞中での組換えタンパク質発現を達成し得る。一実施形態では、このポリヌクレオチドは、この活性化キメラ受容体の発現のための少なくとも1つの調節エレメントに作動可能に連結されている。具体的な実施形態では、本明細書で開示されたペプチドに対して異種の転写調節エレメント(例えば、内部リボソーム侵入部位(IRES)又はエンハンサーエレメント)を利用して、この活性化キメラ受容体の転写が指示される。実施形態に応じて、活性化キメラ受容体の様々な構成部分は、単一のベクターで又は代わりに複数のベクターでNK細胞に送達され得る。一部の実施形態では、活性化キメラ受容体構築物は、単一のベクターで送達されるが、活性化キメラ受容体の効力を増強する別の因子(例えば、mbIL15)は、別個のベクターで送達される。いくつかの実施形態では、活性化キメラ受容体及びこの活性化キメラ受容体の効力を増強する因子(例えば、mbIL15)は、単一のベクターで送達される。使用されるベクターの数に関係なく、任意のポリヌクレオチドは、タグ配列を任意選択により含み得、この構築物を発現するNK細胞の存在の認識を可能にする。例えば、いくつかの実施形態では、FLAGタグ(DYKDDDDK、配列番号55)が使用される。同様に利用可能であるのは、他のタグ配列であり、例えばポリヒスチジンタグ(His-タグ)(HHHHHH、配列番号56)、HA-タグ又はmyc-タグ(EQKLISEEDL;配列番号57)である。代わりに、緑色蛍光タンパク質又は他の蛍光部分が使用される。タグのタイプの組み合わせも使用して、キメラ受容体のサブコンポーネントを個別に認識し得る。
【0074】
いくつかの実施形態では、本活性化キメラ受容体をコードするポリヌクレオチドは、エレクトロポレーションによりNK細胞中に導入され得るmRNAである。別の実施形態では、ベクターは、形質導入によりNK細胞中に導入され得るウイルス(好ましくはレトロウイルス)である。いくつかの実施形態では、このベクターは、マウス幹細胞ウイルス(MSCV)である。追加的な実施形態では、他のベクターが使用され得、例えばレンチウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス及び同様のものが使用され得る。いくつかの実施形態では、非HIV由来レトロウイスルが使用される。選択されるベクターは、様々な因子(例えば、限定されないが、転写調節エレメントの強度及びタンパク質を発現するために使用される細胞)に依存するであろう。このベクターは、プラスミド、ファージミド、コスミド、ウイルスベクター、ファージ、人工染色体及び同様のものであり得る。追加的な実施形態では、このベクターは、エピソームの非相同的に又は相同的に組み込むベクターであり得、このベクターは、このベクターを形質転換するための任意の適切な手段(形質転換、遺伝子導入、コンジュゲーション、プロトプラスト融合、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿、直接マイクロインジェクション等)により、適切な細胞中に導入され得る。いくつかの実施形態では、NK細胞中でキメラ受容体の発現を誘導するための他のアプローチが使用され、このアプローチとして例えば下記が挙げられる:SV40初期プロモーター領域、ラウス肉腫ウイルスの3’長末端反復に含まれるプロモーター、ヘルペスチミジンキナーゼプロモーター、メタロチオネイン遺伝子の調節配列、アデノウイルス(ADV)プロモーター、サイトメガロウイスル(CMV)プロモーター、ウシパピローマウイルス(BPV)プロモーター、パロウイルスB19p6プロモーター、βラクタマーゼプロモーター、tacプロモーター、ノパリンシンテターゼプロモーター領域又はカリフラワーモザイクウイルス35S RNAプロモーター、リブロースビスリン酸カルボキシラーゼのプロモーター、Gal 4プロモーター、ADC(アルコールデヒドロゲナーゼ)プロモーター、PGK(ホスホグリセロールキナーゼ)プロモーター、骨髄増殖性肉腫ウイルスエンハンサーとともに、操作されたMoMuLV LTRのU3領域を含む合成MNDプロモーター及びアルカリホスファターゼプロモーター。
【0075】
本明細書で開示された活性化キメラ受容体を発現するようにナチュラルキラー細胞を操作し得る。活性化キメラ受容体発現構築物は、当業者に既知の技術のいずれかを使用してNK細胞に導入され得る。一実施形態では、この活性化キメラ受容体は、NK細胞中で一時的に発現される。別の実施形態では、この活性化キメラ受容体は、NK細胞中で安定的に発現される。追加的な実施形態では、このNK細胞は、自己細胞である。さらに別の実施形態では、このNK細胞は、ドナー由来(同種)細胞である。
【0076】
本明細書でさらに提供されるのは、癌又は感染性疾患を有する対象を処置する方法であって、本明細書で開示された活性化キメラ受容体を発現するように操作されたNK細胞を含む組成物を対象に投与することを含み、この活性化キメラ受容体は、損傷又は罹患した細胞又は組織上で差次的に発現される(例えば、正常な細胞又は組織と比較して異なる程度で発現される)マーカー又はリガンドを標的とするように設計されている、方法である。本明細書で使用される場合、用語「発現する」、「発現される」及び「発現」は、それらの通常の意味が与えられ、遺伝子配列又はポリヌクレオチド配列の情報の顕在化を可能にすること又は引き起こすことを指すものとし、例えば対応する遺伝子配列又はDNA配列の転写及び翻訳に関与する細胞機能を活性化させることによるタンパク質の産生を指すものとする。発現産物自体(例えば、結果として生じるタンパク質)が細胞により「発現される」と呼ばれる場合もある。発現産物は、細胞内、細胞外又は膜貫通として特徴付けられ得る。用語「細胞内」は、その通常の意味が与えられるものとし、且つ細胞の内側を指すものとする。用語「細胞外」は、その通常の意味が与えられるものとし、且つ細胞の外側を指すものとする。用語「膜貫通」は、その通常の意味が与えられるものとし、且つポリペプチドの少なくとも一部が細胞膜に埋め込まれていることを指すものとする。用語「細胞質」は、その通常の意味が与えられるものとし、且つ細胞膜内、核外に存在することを指すものとする。本明細書で使用される場合、対象への治療の投与に関連する用語「処置する」、「処置すること」及び「処置」は、それらの通常の意味が与えられるものとし、且つ対象が治療から得られる有益な効果を指すものとする。いくつかの実施形態では、本明細書で説明された遺伝子操作細胞による対象の処置により、例えば下記で挙げられる効果の1つ、2つ、3つ、4つ又はより多くが達成される:(i)疾患又はそれに関連する症状の重症度の軽減又は寛解;(ii)疾患に関連する症状の持続時間の短縮;(iii)疾患又はそれに関連する症状の進行に対する保護;(iv)疾患又はそれに関連する症状の退行;(v)疾患に関連する症状の発生又は発症に対する保護;(vi)疾患に関連する症状の再発に対する保護;(vii)対象の入院の減少;(viii)入院の長さの短縮;(ix)疾患を有する対象の生存率の増加;(x)疾患に関連する症状の数の減少;(xi)別の治療の予防効果又は治療効果の増強、改善、補充、補完又は増大。投与は、様々な経路(例えば、限定されないが、罹患した組織への静脈内送達、動脈内送達、皮下送達、筋肉内送達、肝内送達、腹腔内送達及び/又は局所送達)によるものであり得る。NK細胞の用量は、所定の対象に関して、この対象の体重、疾患の種類及び状態並びに所望の処置の積極性に基づいて用意に決定され得るが、実施形態に応じて、1kg当たり約105個の細胞~1kg当たり約1012個の細胞の範囲(例えば、105~107個、107~1010個、1010~1012個及びそれらの重複範囲)である。一実施形態では、用量漸増レジメンを使用する。いくつかの実施形態では、ある範囲のNK細胞(例えば、約1×106個の細胞/kg~約1×108個の細胞/kg)を投与する。実施形態に応じて、様々な種類の癌又は感染性疾患を処置し得る。本明細書で提供される様々な実施形態は、下記の癌の非限定的な例の処置又は予防を含む:例えば、限定されないが、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、副腎皮質癌、カポジ肉腫、リンパ腫、胃腸癌、虫垂癌、中枢神経癌、基底細胞癌、胆管癌、膀胱癌、骨癌、脳腫瘍(例えば、限定されないが、星状細胞腫、脊髄腫瘍、脳幹グリオーマ、頭蓋咽頭腫、上衣芽細胞腫、上衣腫、髄芽腫、髄上皮腫)、乳癌、気管支腫瘍、バーキットリンパ腫、子宮頸癌、結腸癌、慢性リンパ性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性骨髄増殖性障害、乳管癌、子宮内膜癌、食道癌、胃癌、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、有毛細胞白血病、腎細胞癌、白血病、口腔癌、上咽頭癌、肝癌、肺癌(例えば、限定されないが、非小細胞肺癌(NSCLC)及び小細胞肺癌)、膵癌、腸癌、リンパ腫、黒色腫、眼癌、卵巣癌、膵癌、前立腺癌、下垂体癌、子宮癌並びに腟癌。
【0077】
さらに、本明細書で提供される様々な実施形態は、下記の非限定的な例の感染性疾患の処置又は予防を含み、この感染性疾患として細菌起源の感染が挙げられるが、それに限定されず、例えば下記の属の1つ又は複数からの細菌による感染が含まれ得る:ボルデテラ(Bordetella)、ボレリア(Borrelia)、ブルセラ(Brucella)、カンピロバクター(Campylobacter)、クラミジア(Chlamydia)及びクラミドフィラ(Chlamydophila)、クロストリジウム(Clostridium)、コリネバクテリウム(Corynebacterium)、エンテロコッカス(Enterococcus)、エシェリキア(Escherichia)、フランシセラ(Francisella)、ヘモフィルス(Haemophilus)、ヘリコバクター(Helicobacter)、レジオネラ(Legionella)、レプトスピラ(Leptospira)、リステリア(Listeria)、マイコバクテリウム(Mycobacterium)、マイコプラズマ(Mycoplasma)、ナイセリア(Neisseria)、シュードモナス(Pseudomonas)、リケッチア(Rickettsia)、サルモネラ(Salmonella)、シゲラ(Shigella)、スタフィロコッカス(Staphylococcus)、ストレプトコッカス(Streptococcus)、トレポネーマ(Treponema)、ビブリオ(Vibrio)及びエルシニア(Yersinia)並びにこれらの変異体又は組み合わせ。いくつかの実施形態では、種々の真菌感染症を治療するための方法が提供され、及び真菌起源のかかる感染は、例えば、アスペルギルス(Aspergillus)属、ブラストミセス(Blastomyces)属、カンジダ(Candida)属、コクシジオイデス(Coccidioides)属、クリプトコッカス(Cryptococcus)属、及びヒストプラズマ(Histoplasma)属、並びにそれらの突然変異体又は組み合わせの1つ以上に由来する真菌による感染を含んでもよい。いくつかの実施形態では、ウイルス感染(例えば、1つ又は複数のウイルスにより引き起こされるもの)を処置するために様々なものを処置する方法が提供され、このウイルとして下記が挙げられる:アデノウイルス、コクサッキーウイルス、エプスタイン-バーウイルス、a型肝炎ウイルス、b型肝炎ウイルス、c型肝炎ウイルス、単純ヘルペスウイルス1型、単純ヘルペスウイルス2型、サイトメガロウイルス、デボラウイルス、ヒトヘルペスウイルス8型、HIV、インフルエンザウイルス、麻疹ウイルス、ムンプスウイルス、ヒトパピローマウイルス、パラインフルエンザウイルス、ポリオウイルス、狂犬病ウイルス、呼吸器合抱体ウイルス、風疹ウイルス及び水痘帯状疱疹ウイルス。
【0078】
いくつかの実施形態では、同様に本明細書で提供されるのは、配列番号1~68のそれぞれの核酸配列又はアミノ酸配列と比較して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%(及びそれらの中の範囲)相同であり、且つそれぞれの配列番号1~68と比較して機能の1つ又は複数も示す核酸配列及びアミノ酸配列であり、この機能として下記が挙げられるが、それらに限定されない:(i)増殖の増強、(ii)活性化の増強、(iii)核酸配列及びアミノ鎖配列によってコードされる受容体を有するNK細胞が結合するリガンドを提示する細胞に対する細胞傷害活性の増強、(iv)腫瘍又は感染部位へのホーミングの増強、(v)オフターゲット細胞傷害効果の減少、(vi)免疫刺激性サイトカイン及びケモカイン(例えば、限定されないが、IFNg、TNFa、IL-22、CCL3、CCL4及びCCL5)の分泌の増強、(vii)さらなる自然免疫応答及び適応免疫応答を刺激する能力の増強、並びに(viii)これらの組み合わせ。
【0079】
加えて、いくつかの実施形態では、核酸コードの縮重を説明しつつ、本明細書で開示された核酸のいずれかに対応するアミノ鎖配列が提供される。さらに、本明細書で明示的に開示されたものと異なるが、機能の類似性又は均等性を有するこの配列(核酸又はアミノ酸)も本開示の範囲内で企図される。上記には、変異体、切頭、置換又は他の種類の改変が含まれる。
【0080】
本明細書中のいくつかの実施形態によると、CD94、NKG2A、又はNKG2C変異体の断片を含む細胞外受容体ドメイン、膜貫通領域及び細胞内シグナル伝達ドメインを含むエフェクタードメインを含む活性化キメラ受容体をコードするポリヌクレオチドが提供される。いくつかの実施形態では、該ポリヌクレオチドは、CD16を含むエフェクタードメインをコードする。いくつかの実施形態では、該ポリヌクレオチドは、NCR1を含むエフェクタードメインをコードする。いくつかの実施形態では、該ポリヌクレオチドは、NCR2を含むエフェクタードメインをコードする。いくつかの実施形態では、該ポリヌクレオチドは、NCR3を含むエフェクタードメインをコードする。いくつかの実施形態では、該ポリヌクレオチドは、4-1BBを含む追加的なエフェクタードメイン部分をコードする。いくつかの実施形態では、該ポリヌクレオチドは、CD16及びCD94、NKG2A、又はNKG2C変異体の断片から構成されるキメラ受容体をコードする。いくつかの実施形態では、該ポリヌクレオチドは、NCR1及びCD94、NKG2A、又はNKG2C変異体の断片から構成されるキメラ受容体をコードする。いくつかの実施形態では、該ポリヌクレオチドは、NCR2及びCD94、NKG2A、又はNKG2C変異体の断片から構成されるキメラ受容体をコードする。さらなる実施形態では、該ポリヌクレオチドは、CD16及び任意選択的には4-1BBに共役されたCD94、NKG2A、又はNKG2C変異体の断片から構成されるキメラ受容体をコードする。いくつかの実施形態では、CD16は、NCR1に置き換えられており、いくつかの実施形では、実施形態に応じて、NCR2又はさらにNCR3に置き換えられている。いくつかの実施形態では、エフェクタードメインは、例えば、4-1BBとCD16、NCR1、NCR2又はNCR3の1つとの間にGSリンカーをさらに含む。
【0081】
いくつかの実施形態では、細胞外受容体ドメインは、ヒンジ領域をさらに含む。いくつかの実施形態では、このヒンジ領域は、CD8aを含む。しかしながら、追加的な実施形態では、このヒンジ領域は、1つ又は複数のリンカーを含み、このリンカーは、いくつかの実施形態では、GS9、CD8a/GS3、切頭型CD8a、GS3及び同様のものを含む。
【0082】
いくつかの実施形態では、この細胞外受容体ドメインは、CD8aシグナルペプチドをさらに含む。いくつかの実施形態では、エフェクタードメインは、1つ又は複数のヘミITAM配列を含む。いくつかの実施形態では、本キメラ受容体は、DNAX活性化タンパク質10(DAP10)を含まない。いくつかの実施形態では、このキメラ受容体は、ITAMモチーフを含まず、むしろ代替シグナル伝達領域(例えば、ITSM、ヘミ-タム又は他の共刺激領域)を利用する。
【0083】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の活性化キメラ受容体は、ナチュラルキラーグループ2メンバーD(NKG2D)の天然リガンドを発現する細胞を標的にし、相乗的に増強されたNK細胞の活性化及び細胞傷害性をもたらすキメラ受容体と同時発現される。したがって、いくつかの実施形態では、天然NKG2Dに結合するペプチドを含む細胞外受容体ドメイン、膜貫通領域、及びエフェクタードメインを含むNKGDキメラ受容体をコードするポリヌクレオチドも提供され、ここでNKG2Dの天然リガンドに結合するペプチドはNKG2Dの断片である。いくつかの実施形態では、NKG2Dの断片は、配列番号1の配列の断片を含むポリヌクレオチドによってコードされる。いくつかの実施形態では、NKG2Dの断片は、配列番号2の配列を含む一方で、さらなる実施形態では、NKG2Dをコードする断片は、コドン最適化され、例えば配列番号3の配列を含む。いくつかの実施形態では、エフェクタードメインは、CD16、NCR1、NCR2、NCR3、4-1BB、CD28、NKp80、DAP10、CD3ζ及び2B4の1つ以上を含む。いくつかの実施形態では、これらのエフェクタードメインは、CD8αに共役される。いくつかの実施形態では、NKG2Dドメインは、完全長又は野生型NKG2Dでなく、いくつかのかかる実施形態では、DAP10がキメラ受容体構築物において用いられない。さらなる実施形態では、CD3ζ又はITAMが用いられない。本明細書で考察される通り、膜貫通及び細胞内ドメインの組み合わせは、いくつかの実施形態において用いられ、NKG2Dキメラ受容体の成分間での相乗的相互作用をもたらし、増強された細胞傷害性効果をもたらす。いくつかの実施形態では、NKG2Dキメラ受容体構築物において、リンカー、ヒンジ、又は他の「スペーシング」エレメントが提供される。例えば、いくつかの実施形態では、エフェクタードメインは、リンカーを含む。いくつかの実施形態では、該ポリヌクレオチドは、NKG2Dキメラ受容体構築物の部分間、例えば、4-1BB、CD28、CD16、NCR1、NCR3、CD3ζ、DAP10、2B4又はNKp80のいずれかの間のGSリンカーをコードする。いくつかの実施形態では、NKG2Dキメラ受容体のエフェクタードメインは、リンカーを含む。いくつかの実施形態では、該ポリヌクレオチドは、NKG2Dキメラ受容体構築物の部分間、例えば、4-1BB、CD28、CD16、NCR1、NCR3、2B4又はNKp80のいずれかの間のGSリンカーをコードする。いくつかの実施形態では、ヒンジ領域を含むキメラ受容体が提供される。いくつかの実施形態では、NKG2Dキメラ受容体のエフェクタードメインは、1つ以上のヘミITAM配列を含む。加えて、本明細書に開示されるキメラ受容体のいずれもまた、膜結合型インターロイキン15(mbIL15)と同時発現され得る。
【0084】
いくつかの実施形態では、提供されるポリヌクレオチドは、mRNAである。一部の実施形態では、このポリヌクレオチドは、活性化キメラ受容体の発現のための少なくとも1つの調節エレメントに作動可能に連結されている。本明細書で使用される場合、用語「核酸」、「ヌクレオチド」及び「ポリヌクレオチド」は、その通常の意味が与えられるものとし、デオキシリボヌクレオチド、デオキシリボ核酸、リボヌクレオチド及びリボ核酸並びにそれらのポリマー形態を含むものとし、且つ一本鎖形態又は二本鎖形態を含む。核酸は、天然に存在する核酸(例えば、デオキシリボ核酸(「DNA」)及びリボ核酸(「RNA」))並びに核酸類似体を含む。核酸類似体として、天然に存在するホスホジエステル結合以外の他のヌクレオチドと結合するヌクレオチドである、天然に存在しない塩基を含むもの又はホスホジエステル結合以外の結合を介して付着した塩基を含むものが挙げられる。そのため、核酸類似体として、例えば、限定されないが、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホロトリエステル、ホスホルアミデート、ボラノホスフェート、メチルホスホネート、キラルメチルホスホネート、2-O-メチルリボヌクレオチド、ペプチド核酸(PNA)、ロックド核酸(LNA)及び同様のものが挙げられる。本明細書で使用される場合、例えば異種核酸配列に「作動可能に連結されている」調節核酸配列に関連する用語「作動可能に連結されている」は、その通常の意味が与えられるものとし、且つこの調節核酸配列が異種核酸配列と機能的関係に置かれていることを意味するものとする。IRESに関連して、「作動可能に連結されている」は、内部リボソーム侵入部位を含む核酸配列と、異種コード配列が翻訳されるmRNA配列の中央での異種コード配列開始との間の機能的連結を指す。本明細書で使用される場合、用語「ベクター」は、その通常の意味が与えられるものとし、且つDNA配列又はRNA配列(例えば、外来遺伝子)を遺伝子操作細胞中に導入し、遺伝子操作された細胞を形質転換させて、導入された配列の発現(例えば、転写及び/又は翻訳)を促進し得る媒体を指すものとする。ベクターとして、ウイルス、プラスミド、ファージ等が挙げられる。用語「キメラ受容体」は、本明細書で用いられるとき、その通常の意味が与えられるものとし、単一のタンパク質上に天然には一緒に見出されない少なくとも2つのポリペプチドドメインを含むか、又は異なる受容体若しくはシグナル伝達分子に由来する1つ以上の領域又は部分(例えば、受容体の別のサブタイプ又はタイプ)を含む細胞表面受容体を指すものとする。用語「キメラ受容体複合体」は、本明細書で使用される場合、単一タンパク質上で自然界において一緒に見出されない組み合わせで少なくとも2つのポリペプチドドメインを含み得る第1のポリペプチドを指し、この第1のポリペプチドは、第2のポリペプチド(例えば、アダプターポリペプチド)、シグナル伝達分子又は刺激分子と関連している。本明細書で開示されたキメラ受容体の生成及び使用に関する追加的な用語は、当業者により容易に理解され、且つ国際公開第2014/117121号パンフレット及び米国特許第7,994,298号明細書(これらのそれぞれは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)でも見出され得る。
【0085】
いくつかの実施形態に従って追加で提供されるのは、本明細書で提供されたポリヌクレオチドのいずれかをコードするポリヌクレオチドを含むベクターであって、このポリヌクレオチドは、任意選択により、活性化キメラ受容体の発現のための少なくとも1つの調節エレメントに作動可能に連結されている、ベクターである。いくつかの実施形態では、このベクターは、レトロウイルスである。
【0086】
本明細書でさらに提供されるのは、本明細書で開示されたポリヌクレオチド、ベクター又は活性化キメラ受容体を含む操作されたナチュラルキラー細胞である。いくつかの実施形態では、このNK細胞は、疾患(例えば、癌及び/又は感染性疾患)の予防の処置での使用に適している。
【0087】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるポリヌクレオチドは、天然NKG2Aの転写又は翻訳を特異的に阻害する短いヘアピンRNA(shRNA)をさらにコードし、ここでshRNAは、天然NKG2A遺伝子にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列を含み、NKG2A断片に不在であるNKG2A遺伝子における標的配列に実質的に同一のヌクレオチド配列を含むセンス断片とアンチセンス断片とを含み、ここでセンス及びアンチセンス断片はループ断片によって分離される。いくつかの実施形態では、該ポリヌクレオチドは、膜結合型インターロイキン15(mbIL15)をコードする追加的な構築物と同時発現される。いくつかの実施形態では、該ポリヌクレオチドは、mRNAである。いくつかの実施形態では、該ポリヌクレオチドは、活性化キメラ受容体の発現のため、少なくとも1つの調節エレメントに作動可能に連結される。
【0088】
さらに、本明細書中のいくつかの実施形態では、活性化キメラ受容体の発現のため、少なくとも1つの調節エレメントに作動可能に連結される本開示のポリヌクレオチドを含むベクターが提供される。いくつかの実施形態では、該ベクターは、レトロウイルスである。
【0089】
いくつかの実施形態では、それを必要とする哺乳動物におけるがん又は感染症を治療又は予防するための方法であって、NK細胞を治療有効量で前記哺乳動物に投与することを含む方法が提供され、ここで前記NK細胞は、本開示に従うポリヌクレオチドによってコードされる活性化キメラ受容体を発現する。いくつかの実施形態では、NK細胞は、がん又は感染症を有する患者から単離される自家細胞である。いくつかの実施形態では、NK細胞は、ドナーから単離される同種細胞である。いくつかの実施形態では、NK細胞は、天然NKG2Aの表面発現を欠く。
【0090】
いくつかの実施形態では、それを必要とする哺乳動物におけるがん又は感染症を治療又は予防するための薬剤の製造における本開示に従うポリヌクレオチドの使用が提供される。いくつかの実施形態では、それを必要とする哺乳動物におけるNK細胞の細胞傷害性を増強するための薬剤の製造における本開示に従うベクターの使用が提供される。いくつかの実施形態では、それを必要とする哺乳動物におけるがん又は感染症を治療又は予防するための薬剤の製造において、ベクターが用いられる。
【0091】
いくつかの実施形態では、それを必要とする哺乳動物におけるNK細胞の細胞傷害性を増強するための本開示に従う単離された遺伝子改変ナチュラルキラー細胞の使用が提供される。いくつかの実施形態では、それを必要とする哺乳動物におけるがん又は感染症を治療又は予防するための本開示に従う単離された遺伝子改変ナチュラルキラー細胞の使用も提供される。
【0092】
いくつかの実施形態では、細胞外受容体ドメイン、膜貫通ドメイン、及び細胞質ドメインを含むキメラのナチュラルキラーグループ2メンバーC(NKG2C)が提供され、ここで細胞外受容体ドメインは、配列番号58を含む。いくつかの実施形態では、ナチュラルキラーグループ2メンバーA(NKG2A)の細胞外受容体ドメイン、膜貫通領域、及び細胞質ドメインを含むキメラ受容体が提供される。いくつかの実施形態では、膜貫通領域は、CD8膜貫通領域を含む。いくつかの実施形態では、細胞質ドメインは、4-1BB細胞質ドメイン及びCD3ζ細胞質ドメインの1つ以上を含む。
【0093】
いくつかの実施形態では、細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、及び細胞質ドメインを含むキメラ受容体をコードするポリヌクレオチドが提供され、ここで細胞外ドメインは、ナチュラルキラーグループ2メンバーC(NKG2C)及び配列番号58を含む。
【0094】
いくつかの実施形態では、ナチュラルキラーグループ2メンバーA(NKG2A)の細胞外受容体ドメイン、膜貫通領域、及び細胞質ドメインを含むキメラ受容体をコードするポリヌクレオチドが提供される。いくつかの実施形態では、膜貫通領域は、CD8膜貫通領域を含む。いくつかの実施形態では、細胞質ドメインは、4-1BB細胞質ドメイン及びCD3ζ細胞質ドメインの1つ以上を含む。
【実施例】
【0095】
方法
以下の実験方法及び材料は、下に開示する非限定的な実験例において用いた。
【0096】
細胞株及び培養条件
ヒト腫瘍細胞株SKBR3、HT-29、U2-OSは、アメリカ合衆国培養細胞系統保存機関(American Type Culture Collection)(ATCC;Rockville,MD)から購入した。ユーイング肉腫細胞株ES8及びEW8は、St.Jude Research Hospital(Memphis,TN)の組織貯蔵所から入手した。細胞株をRPMI-1640(ThermoFisher,Waltham,MA)中で維持し;培地に10%ウシ胎仔血清(FBS;GE Healthcare,Chicago,IL)及び抗生物質を添加した。細胞株に、緑色蛍光タンパク質(GFP)又はルシフェラーゼのいずれかを有するマウス幹細胞ウイルス(MSCV)レトロウイルスベクター(St.Jude Children’s Research HospitalのVector Development and Production Shared Resource,Memphis,TNから入手)を形質導入した。
【0097】
ヒトNK細胞の増殖及びNK細胞サブセットの選択
末梢血サンプルは、National University Hospital Blood Bank,Singaporeでの健常成人ドナーからの血小板輸血の匿名扱いの廃棄副生物から得た。
【0098】
単核性細胞を、Lymphoprep density step(Nycomed,Oslo,Norway)での遠心分離により分離し、RPMI-1640中で2回洗浄した。NK細胞を増殖するため、単核性細胞を遺伝子組換えK562-mb15-41BBL細胞株と共培養した。つまり、末梢血単核性細胞(3×106個)を、10%FBS及び40IU/mLのヒトインターロイキン(IL)-2(Novartis,Basel,Switzerland)を含有するSCGM培地(CellGenix,Freiburg,Germany)中、2×106個の照射した(100Gy)K562-mb15-41BBL細胞を有する6ウェル組織培養プレート内で培養した。2~3日ごとに、新しい組織培地及びIL-2を添加した。共培養の7日後、Dynabeads CD3(Thermo Fisher)を用いて残留T細胞を除去し、>90%のCD56+CD3-NK細胞を含有する細胞集団を生成した。実験前、増殖したNK細胞を、FBS、抗生物質、及び400IU/mLのIL2を有するSCGM中で維持した。
【0099】
NKG2A+NK細胞を枯渇させるため、増殖したNK細胞を、アロフィコシアニン(APC)及び抗APCマイクロビーズにコンジュゲートした抗NKG2A抗体で標識し、LDカラム上で分離した(すべてはMiltenyi Biotech製)。
【0100】
DNAプラスミド、レトロウイルスの生成及びNK細胞の形質導入
すべての構築物をコードするプラスミドは、Genescript(Nanjing,China)により合成した。構築物を有するARD114シュードタイプMSCVレトロウイルスを用いて、NK細胞に形質導入した。レトロウイルスベクター培養上清を、レトロネクチン(Takara、大津、日本)でコーティングしたポリプロピレン管に添加し;遠心分離及び上清の除去後、増殖したNK細胞(3×105個)を該管に添加し、37℃で12時間放置し;新しいウイルス上清を12時間ごとに全部で6回添加した。次に、実験の時期まで、FBS、抗生物質及び400IU/mlのIL-2を有するRPMI中で細胞を維持した。
【0101】
活性化受容体の発現のフローサイトメトリーによる検出
抗NKG2Cの表面発現は、抗NKG2C-フィコエリスリン(PE)抗体(Miltenyi Biotech)を用いて検出した。NKG2Aの発現は、PE又はAPC(Miltenyi Biotech)にコンジュゲートされた抗NKG2A抗体を用いて検出した。CD94の発現は、抗CD94-APC(BD Biosciences)を用いて検出した。
【0102】
細胞傷害性アッセイ
GFP/ルシフェラーゼを形質導入した標的細胞を、10%FBSを有するRPMI-1640に懸濁し、96ウェル平底プレート(Costar,Corning,NY)に蒔いた。プレートをインキュベーター内に少なくとも4時間置き、NK細胞を添加する前に細胞接着を可能にした。次に、10%FBSを有するRPMI-1640に懸濁した、様々な受容体又はGFP単独を発現する増殖したNK細胞を様々なエフェクター対標的(E:T)比で添加し、標的細胞とともに4時間共培養した。培養の終了時、Flx 800プレートリーダー(BioTek,Winooski,VT)を用いて、BrightGlo(Promega,Fitchburg,WI)をウェルに添加後、生細胞の数を測定した。
【0103】
実施例1-活性化高親和性NKG2C受容体構築物
本明細書に開示の通り、様々な膜貫通ドメインと共役された細胞外受容体ドメインを含む様々な活性化キメラ受容体構築物を準備する。本実験は、HLA-E/ペプチド複合体に対する高親和性について改変した活性化ナチュラルキラーグループ2メンバーC(NKG2C)変異体の発現及び細胞傷害性活性を評価するために実施した。活性化NKG2C受容体構築物は、上記の方法及び材料に従い、調製し、試験した。構築物に応じて、使用方法は、構築物の作製、発現、及び試験に要求されるバリエーションに対処するため、容易に調節することができる。
【0104】
図1Aは、CD94及びDap12二量体との複合体(本明細書で「D12(SIIS)2C94」と称する)中の、HLA-E/ペプチド複合体に対する高親和性について改変した改変NKG2C変異体(165-168SIIS)を示す模式図を表す。
図1Bは、内部リボソーム侵入部位(IRES)の後に緑色蛍光タンパク質(GFP)を有するMSCVレトロウイルスベクターに挿入された、NKG2C(165-168SIIS)、Dap12、及びCD94を含む構築物の模式図を表す。
【0105】
NK細胞がこの構築物を有効に発現する能力を最初に評価した。
図2は、GFPのみを有するベクターを形質導入したNK細胞と比べての精製NKG2C(+)NKG2A(-)NK細胞における高親和性活性化D12(SIIS)2C94受容体複合体の強固な発現を示すフローサイトメトリーデータを表す。まとめると、これらのデータは、本明細書で開示されるいくつかの実施形態によると、操作した活性化キメラ受容体構築物がNK細胞上で十分に発現され得ることを示す。
【0106】
いくつかの実施形態では、構築物の増強された発現は、NK細胞への特定構築物の形質導入の反復により達成され得る。いくつかの実施形態では、構築物の成分は、単一のベクターで又は代わりに複数のベクターを用いて細胞に送達され得る。実施形態に応じて、構築物自体が増強された発現をもたらし得、例えば、線状又はヘッドトゥテール構築物は、複数のサブユニット構築物が必要とする細胞内アセンブリの程度減少が理由で、増強された発現をもたらし得る。
【0107】
NKG2C/CD94及びNKG2A/CD94は、ヒトにおける非古典的MHCクラスI分子HLA-E/ペプチド複合体に結合する。HLA-Eは、NK細胞による細胞認識において非常に特殊化した役割を有し、HLA-Eは、古典的MHCクラスI分子のシグナルペプチドに由来するペプチドの制限されたサブセット、即ちHLA-A、B、C、Gに結合する。したがって、NK細胞は、NKG2C/CD94及びNKG2A/CD94とHLA-E/ペプチド複合体との相互作用を通じて、古典的MHCクラスI分子の発現を間接的に監視し得る。本明細書に記載の活性化NKG2C受容体構築物及び活性化NKG2A受容体構築物の有効性を評価するため、がん細胞をHLA-Gシグナルペプチドを有するHLA-Eを発現するように改変した。
図3は、HLA-Gシグナルペプチドを有するHLA-E分子の設計及び作製を表す。
図3Aは、HLA-Eシグナルペプチド(配列番号69)とHLA-EのHLA-Gシグナルペプチド(配列番号70)(GpHLA-Eと称する;HLA-Gシグナルペプチドを有するHLA-E)との置換を表す。
図3Bは、固形腫瘍細胞株HT29、U2OS、ES8、及びEW8におけるGpHLA-Eの外因性発現を検証するフローサイトメトリーデータを表す。
【0108】
形質導入NK細胞の集団の効力を評価するため、GpHLA-Eを発現するがん細胞株を用いて細胞傷害性アッセイを実施した。D12(SIIS)2C94を発現する精製NKG2C(+)NKG2A(-)NK細胞は、U2OS-GpHLA-E、SKBR3-GpHLA-E、及びHT29-GpHLA-E細胞に対して対照NK細胞よりも有意に高い細胞傷害性を試験したE:T比のすべてで示した(
図4)。これらのデータは、NK細胞が活性化キメラ受容体構築物を発現するように改変可能であるだけでなく、活性化キメラ受容体を発現する細胞が活性化され、標的細胞に対する増強された細胞傷害性効果を十分にもたらすことができるという証拠を提供する。
【0109】
NKG2A(+)細胞の枯渇を確認するため(その存在が潜在的にはこれらの試験及びNK細胞に基づく治療の結果を交絡させ得る)、フローサイトメトリー分析を実施した。NKG2Aの枯渇後、細胞集団がNKG2C(+)NKG2A(-)NK細胞からなることを確認した。さらに、遺伝子組換え腫瘍細胞株に対するモック形質導入NK細胞集団又はD12(SIIS)2C94形質導入NKG2C(+)NKG2A(-)NK細胞の細胞傷害性アッセイによると、後者のNK細胞集団の増強された細胞傷害性が、細胞を抗NKG2A抗体Z199とともにインキュベートしたか否かにかかわらず、実証された(
図5)。
【0110】
実施例2-活性化キメラNKG2A/CD94受容体構築物
本明細書に開示の通り、様々な膜貫通ドメインと共役された細胞外受容体ドメインを含む様々な活性化キメラ受容体構築物を準備する。本実験は、活性化ナチュラルキラーグループ2メンバーA(NKG2A)/CD94受容体構築物の発現及び細胞傷害性活性を評価するため、実施した。活性化NKG2A/CD94受容体構築物は、上記の方法及び材料に従い、調製し、試験した。構築物に応じて、使用方法は、構築物の作製、発現、及び試験に要求されるバリエーションに対処するため、容易に調節することができる。
【0111】
図6Aは、膜貫通及び阻害性細胞質ドメインのN末端部分に欠失が存在する、ナチュラルキラーグループ2メンバーA(NKG2A)及びCD94の切断型からなる複合体を示す模式図を表す。これらのドメインは、CD8a膜貫通ドメイン及び4-1BB(CD137)及びCD3ζの細胞質ドメインで置換されている。活性化NKG2A受容体及びキメラCD94受容体は、活性化複合体を形成する(本明細書中で「2A/94BBz」と称する)。
図6Bは、内部リボソーム侵入部位(IRES)の後に緑色蛍光タンパク質(GFP)を有するMSCVレトロウイルスベクターに挿入されたキメラCD94受容体及び活性化NKG2A受容体を含む構築物の模式図を表す。
【0112】
NK細胞がこれらの構築物を有効に発現する能力を最初に評価した。
図7は、モック形質導入NK細胞集団と比べてのNKG2A枯渇NK細胞における活性化NKG2A/CD94-41BB-CD3z受容体の強固な発現を示すフローサイトメトリーデータを表す。まとめると、これらのデータは、本明細書に開示されるいくつかの実施形態によると、改変活性化キメラ受容体構築物がNK細胞上で十分に発現され得ることを示す。
【0113】
形質導入NK細胞の集団の効力を評価するため、GpHLA-Eを発現するがん細胞株を用いて、細胞傷害性アッセイを実施した。4時間細胞傷害性アッセイにおいて、増殖したNK細胞上での活性化NKG2A/CD94-41BB-CD3z受容体の発現により、U2OS-GpHLA-E及びHT29-GpHLA-E細胞に対する細胞傷害性が対照NK細胞と比べて有意に増強された。これらのデータは、NK細胞が活性化キメラ受容体構築物を発現するように改変可能であるだけでなく、活性化キメラ受容体を発現する細胞が活性化され、標的細胞に対する増強された細胞傷害性効果を十分にもたらすことができるという証拠を提供する。
【0114】
実施例3-活性化キメラ受容体構築物の抗腫瘍活性
本明細書に開示される活性化NK受容体構築物が標的細胞(例えば腫瘍細胞)に対する細胞傷害性効果を発揮する能力を実証するため、結腸直腸腺癌の異種移植片モデルを用いた。HT-29細胞は、不死化した結腸直腸腺癌細胞株である。HT-29細胞に、本実施例中で用いる改変活性化受容体によって認識される標的の一部であるHLA-Eを発現するように、HT-29細胞にGpHLA-Eとルシフェラーゼの双方を形質導入した(D12(SIIS)2C/94構築物をHLA-E/ペプチド複合体に対する高親和性について改変する(165-168SIIS))。形質導入HT-29細胞を、1×105個の細胞/マウスの用量で、NOD-SCIDIL2RGヌルマウス12匹の各々に腹腔内注射した。その後、NK細胞(1×107個の細胞)を、3、6、10及び13日目に注射した。NK細胞に、GFPのみ(「対照」)又はD12(SIIS)2C/94構築物のいずれかを形質導入した。マウスにはまた、IL-2(20,000IU)を、腹腔内注射により週3回投与した。Xenogen Spectrum装置を用いて、腹側及び背側の生物発光を測定し、腫瘍量を評価した(各記号は、腹側及び背側の読み出し値の平均である)。
【0115】
図10の左パネル(NK細胞なし)にて理解できるように、各マウスにおける平均生物発光は経時的に増加したが、これは注射したHT-29細胞の成長/増殖から腫瘍量が増加していることを示す。中央パネル(GFPを発現するNK細胞を注射したマウス)は、一般に平均生物発光が増加しているが、「NKなし」群よりも低い程度までであることを示した。全く対照的に、D12(SIIS)2C/94における平均生物発光は、実験が終了した約75日目の時点であっても非常に限られた増加を示す。単一のマウスが、実験の約40~75日の間での平均生物発光における中程度の増加を有した。これらのデータは、活性化キメラ受容体を発現する改変NK細胞が、たとえそれら自身で比較的強固な抗腫瘍効果を有するNK細胞と比較しても、有意な抗腫瘍活性を有することを示す。
【0116】
本明細書に開示される改変活性化受容体の効果をさらに検討するため、生存曲線を作成し、様々な群におけるマウスの生存率を判定した。上記と同じ実験群を用いて、ログランク検定により分析するカプラン・マイヤー生存曲線を
図11に示す。(破線)で示す通り、HT-29細胞を投与したがNK細胞を投与していないマウスは、約60日目、0%の生存率に達した。同様に、GFPを発現するNK細胞を投与したマウス(ソリッドグレイ線)は、類似の生存パターンを示し、約80日目までに0%の生存率に達した。これらの群の統計学的評価によると、NK非投与群と対照群との間に統計学的差異が示されなかった(カプラン・マイヤー生存曲線、ログランク検定、
図11)。(上記平均生物発光データに類似する)最初の2群と対照的に、D12(SIIS)2C/94群は、有意に増強された生存を示した。D12(SIIS)2C/94マウス4匹中1匹が実験の全持続期間にわたり生存しただけでなく、D12(SIIS)2C/94における全マウスの生存の持続期間が増加した。統計学的評価は、D12(SIIS)2C/94における生存が、NK非投与群及びNK細胞投与対照群と比べて有意であったことを示す(カプラン・マイヤー生存曲線、ログランク検定、P値を
図11に表す)。したがって、これらのデータは、さらに(比較的高い天然細胞傷害性を示す)NK細胞と比較しても、活性化キメラ受容体を発現するように改変されたNK細胞が、意外にも標的細胞に対して増強された細胞傷害性効果を有することを示す。いくつかの実施形態では、NK細胞に対する活性化キメラ受容体の発現は、(例;本明細書に開示のような高親和性ドメインを発現するように改変されていないNK細胞を用いての例えば治療頻度、持続期間などと比べるとき)治療頻度の減少、治療持続期間の減少、NK細胞の必要用量の減少、及びNKに基づくがん免疫療法レジメンの転帰の全体的改善(例えば、腫瘍量の減少及び/又は生存の増強)の1つ以上を可能にする。
【0117】
上に開示された実施形態の具体的特徴及び態様の様々な組み合わせ又は部分的組み合わせが本発明の1つ以上の範囲内に設けられ、さらに属し得ることが考慮される。さらに、本明細書で示されるすべての他の実施形態において、実施形態に関連した任意の特定の特色、態様、方法、特性、特徴、品質、属性、要素などに関する本明細書中の開示を用いることができる。したがって、開示される本発明の異なる態様を形成するため、開示される実施形態の様々な特徴及び態様は、相互に組み合わせるか又は置き換えられ得ることが理解されるべきである。したがって、本明細書で開示される本発明の範囲は、上記の特定の開示される実施形態によって限定されるべきでないことが意図される。さらに、本発明は、様々な修飾形態及び代替形態が可能であるが、その具体例は、図面で示されており、本明細書中で詳述される。しかし、本発明が開示される特定の形態又は方法に限定されるべきでなく、逆に、本発明は、記述される様々な実施形態及び添付の特許請求の範囲の趣旨及び範囲内に入るすべての修飾形態、均等物及び代替物を網羅するべきであることが理解されるべきである。本明細書で開示される任意の方法は、列挙される順序で実施される必要はない。本明細書で開示される方法は、施術者によってとられる特定の行動を含むが、それらは、明示的又は暗示的のいずれかでそれらの行動についての任意の第三者の指示も含み得る。例えば、「拡大されたNK細胞の集団を投与すること」などの行動は、「拡大されたNK細胞の集団の投与を指示すること」を含む。さらに、本開示の特色又は態様がマーカッシュグループの観点で説明される場合、当業者は、本開示が、それにより、マーカッシュグループの任意の個々のメンバー又はそのメンバーのサブグループの観点でも説明されることを理解するであろう。
【0118】
本明細書で開示される範囲は、あらゆる重複、部分範囲及びそれらの組み合わせも包含する。「最大」、「少なくとも」、「~よりも大きい」、「~よりも少ない」、「~の間」などの文言は、列挙される数を含む。「約」又は「概ね」などの用語が先行する数は、列挙される数を含む。例えば、「約10ナノメーター」は、「10ナノメーター」を含む。
本発明の態様として以下のものが挙げられる。
項1
HLAクラスI組織適合性抗原、α鎖E(HLA-E)/ペプチド複合体に結合する活性化キメラ受容体をコードするポリヌクレオチドであって、前記活性化キメラ受容体が、前記HLA-E/ペプチド複合体への結合後に活性化及び/又は同時刺激シグナルを伝達し、ここで前記活性化キメラ受容体が、
a)ナチュラルキラーグループ2メンバーC(NKG2C)の改変変異体を含む細胞外受容体ドメインであって、
非改変NKG2Cが、HLA-E/ペプチド複合体に対して低い結合親和性を有し、
前記改変NKG2C変異体が、HLA-E/ペプチド複合体に対して、天然NKG2Cと比べて増強された結合親和性を有し、且つ
前記改変NKG2C変異体が、配列番号58のアミノ酸配列を含む、細胞外受容体ドメイン;又は
b)ナチュラルキラーグループ2メンバーA(NKG2A)の断片を含む細胞外受容体ドメインであって、
NKG2Aの前記断片が、膜貫通領域及び細胞内シグナル伝達ドメインを含むエフェクタードメインに共役され、
天然NKG2Aが、HLA-E/ペプチド複合体への結合後、阻害性シグナルを伝達し、且つ
NKG2Aの前記断片が、HLA-E/ペプチド複合体への結合後、活性化及び/又は同時刺激シグナルを伝達する、細胞外受容体ドメイン
を含む、ポリヌクレオチド。
項2
前記細胞外受容体ドメインが、膜貫通領域及び細胞内シグナル伝達ドメインを含むエフェクタードメインに共役された改変NKG2C変異体を含む、項1に記載のポリヌクレオチド。
項3
前記細胞外受容体ドメインが、天然NKG2C膜貫通領域及び天然NKG2C細胞内シグナル伝達ドメインに共役された改変NKG2C変異体を含む、項1に記載のポリヌクレオチド。
項4
前記改変NKG2C変異体が、配列番号63の核酸配列、又はその断片によってコードされる、項1に記載のポリヌクレオチド。
項5
前記ポリヌクレオチドが、DNAX活性化タンパク質12(DAP12)をさらにコードする、項1に記載のポリヌクレオチド。
項6
前記ポリヌクレオチドが、天然CD94又はキメラCD94をさらにコードする、項1に記載のポリヌクレオチド。
項7
前記キメラCD94が、
(a)CD94の断片を含む細胞外受容体ドメイン;並びに
(b)膜貫通領域及び細胞内シグナル伝達ドメインを含むエフェクタードメイン
を含む、項6に記載のポリヌクレオチド。
項8
前記エフェクタードメインが、CD16、NCR1、NCR2、NCR3、4-1BB、NKp80、DAP10、CD3ζ、2B4、及びそれらの断片の1つ以上を含む、項7に記載のポリヌクレオチド。
項9
前記キメラCD94受容体が、CD8a膜貫通ドメイン並びに4-1BB及びCD3ζを含むエフェクタードメインに共役されたCD94の断片を含む、項7に記載のポリヌクレオチド。
項10
前記キメラCD94が、配列番号59の核酸配列によってコードされる、項9に記載のポリヌクレオチド。
項11
前記キメラCD94が、配列番号60のアミノ酸配列を含む、項9に記載のポリヌクレオチド。
項12
前記活性化キメラ受容体が、CD8a膜貫通ドメイン並びに4-1BB及びCD3ζを含むエフェクタードメインに共役されたNKG2Aの断片を含む、項1に記載のポリヌクレオチド。
項13
前記活性化キメラ受容体が、配列番号61の核酸配列によってコードされる、項12に記載のポリヌクレオチド。
項14
前記活性化キメラ受容体が、配列番号62のアミノ酸配列を含む、項12に記載のポリヌクレオチド。
項15
前記活性化キメラ受容体が、GSリンカーをさらに含む、項1~14のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
項16
前記キメラ受容体が、ヒンジ領域を含む、項1~14のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
項17
前記ヒンジ領域が、配列番号5の核酸配列によってコードされる、項16に記載のポリヌクレオチド。
項18
前記ヒンジ領域が、配列番号5の核酸配列の断片によってコードされる、項16に記載のポリヌクレオチド。
項19
前記ヒンジ領域が、配列番号31のアミノ酸配列を有するグリシン-セリン繰り返しモチーフを含む、項16に記載のポリヌクレオチド。
項20
前記ヒンジ領域は、配列番号32のアミノ酸配列を含む、項16に記載のポリヌクレオチド。
項21
前記ヒンジ領域は、配列番号33のアミノ酸配列を含む、項16に記載のポリヌクレオチド。
項22
前記ヒンジ領域は、配列番号34の核酸配列によってコードされる、項16に記載のポリヌクレオチド。
項23
前記ヒンジ領域は、βアドレナリン受容体の一部を含む、項16に記載のポリヌクレオチド。
項24
前記ヒンジ領域は、配列番号40の核酸配列によってコードされる、項23に記載のポリヌクレオチド。
項25
前記ヒンジ領域は、配列番号42の核酸配列によってコードされる、項23に記載のポリヌクレオチド。
項26
前記細胞外受容体ドメインは、CD8aシグナルペプチドをさらに含み、前記シグナルペプチドは、配列番号4の核酸配列を含む、項1~14のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
項27
前記エフェクタードメインは、1つ以上のヘミITAM配列を含む、項1~14のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
項28
ヘミITAMは、配列番号14のアミノ酸配列を含む、項27に記載のポリヌクレオチド。
項29
ヘミITAMは、配列番号37のアミノ酸配列を含む、項27に記載のポリヌクレオチド。
項30
前記エフェクタードメインは、1つ以上のITSM配列を含む、項1~14のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
項31
前記ITSMは、配列番号15のアミノ酸配列を含む、項30に記載のポリヌクレオチド。
項32
前記ITSMは、配列番号35のアミノ酸配列を含む、項30に記載のポリヌクレオチド。
項33
前記NKG2C変異体が、配列番号63に対する少なくとも80%の相同性を有する、項1~14のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
項34
NKG2Aの前記断片が、配列番号65に対する少なくとも80%の相同性を有する、項1~14のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
項35
CD94の前記断片が、配列番号67に対する少なくとも80%の相同性を有する、項1~14のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
項36
前記ポリヌクレオチドが、(a)ナチュラルキラーグループ2メンバーD(NKG2D)の天然リガンドに結合するペプチドを含む細胞外受容体ドメイン;及び(b)膜貫通領域及び細胞内シグナル伝達ドメインを含むエフェクタードメイン、を含むキメラ受容体をさらにコードする、項1~14のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
項37
前記ポリヌクレオチドが、天然NKG2Aの転写又は翻訳を特異的に阻害する短いヘアピンRNA(shRNA)をさらにコードし、
ここで前記shRNAが、前記天然NKG2A遺伝子にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列を含み、前記shRNAが、前記NKG2A断片に不在である前記NKG2A遺伝子における標的配列に対して実質的に同一なヌクレオチド配列を含むセンス断片、及びアンチセンス断片を含み、ここで前記センス及びアンチセンス断片が、ループ断片によって分離される、項1~14のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
項38
前記ポリヌクレオチドが、膜結合型インターロイキン15(mbIL15)をコードする追加的な構築物と同時発現される、項1~37のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
項39
項1~14のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドを含む遺伝子改変ナチュラルキラー細胞。
項40
患者から単離された自家細胞である、項39に記載の遺伝子改変ナチュラルキラー細胞。
項41
ドナーから単離された同種細胞である、項39に記載の遺伝子改変ナチュラルキラー細胞。
項42
前記NK細胞が、天然NKG2Aの表面発現を欠く、項39に記載の遺伝子改変ナチュラルキラー細胞。
項43
項1~14のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド、並びに
(i)(a)ナチュラルキラーグループ2メンバーD(NKG2D)の天然リガンドに結合するペプチドを含む細胞外受容体ドメイン;及び(b)膜貫通領域及び細胞内シグナル伝達ドメインを含むエフェクタードメインを含むキメラ受容体をコードするポリヌクレオチド;
(ii)膜結合型インターロイキン15(mbIL15)をコードするポリヌクレオチド;
(iii)天然NKG2Aの転写又は翻訳を特異的に阻害する短いヘアピンRNA(shRNA)をコードするポリヌクレオチド;並びに
(iv)(i)、(ii)、及び(iii)のいずれかの組み合わせ
から選択される追加的なポリヌクレオチドを含む遺伝子改変ナチュラルキラー細胞。
項44
NK細胞の細胞傷害性の増強を、それを必要とする哺乳動物において行うための方法であって、NK細胞を前記哺乳動物に投与することを含み、前記NK細胞は、項1~14のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドによってコードされる活性化キメラ受容体を発現する、方法。
項45
前記NK細胞は、患者から単離された自家細胞である、項44に記載の方法。
項46
前記NK細胞は、ドナーから単離された同種細胞である、項44に記載の方法。
項47
前記NK細胞が、天然NKG2Aの表面発現を欠く、項44に記載の方法。
項48
それを必要とする哺乳動物におけるNK細胞の細胞傷害性を増強するための薬剤の製造における、項1~14のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドの使用。
【配列表】