(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-03
(45)【発行日】2023-10-12
(54)【発明の名称】調剤支援装置、調剤支援システム、調剤支援方法および調剤支援プログラム
(51)【国際特許分類】
G16H 20/10 20180101AFI20231004BHJP
【FI】
G16H20/10
(21)【出願番号】P 2021139771
(22)【出願日】2021-08-30
(62)【分割の表示】P 2019083657の分割
【原出願日】2019-04-25
【審査請求日】2022-03-29
(73)【特許権者】
【識別番号】519153132
【氏名又は名称】株式会社メディカルユアーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100088904
【氏名又は名称】庄司 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100124453
【氏名又は名称】資延 由利子
(74)【代理人】
【識別番号】100135208
【氏名又は名称】大杉 卓也
(74)【代理人】
【識別番号】100163544
【氏名又は名称】平田 緑
(74)【代理人】
【識別番号】100183656
【氏名又は名称】庄司 晃
(72)【発明者】
【氏名】渡部 正之
【審査官】木村 慎太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-022322(JP,A)
【文献】特開昭62-065805(JP,A)
【文献】特開2012-063858(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00-80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療機関の端末装置と、
前記医療機関で発行された処方箋データを管理し
、前記医療機関が前記処方箋データを発行すると前記処方箋データを登録する処方箋管理データベースと、
調剤薬局における調剤業務を支援する調剤支援装置と、
前記調剤薬局内に設置されると共に前記調剤支援装置と通信可能であり、調剤準備を行う調剤準備用ロボットと、を備え、
前記端末装置と前記処方箋管理データベースと前記調剤支援装置とは、互いに通信可能であり
、
前記調剤支援装置は、
情報を表示する表示装置と、
前記調剤薬局をかかりつけ薬局としている特定の患者の前記処方箋データが前記処方箋管理データベースへ登録されると、登録されたことが前記処方箋管理データベースから前記調剤支援装置に対して自動的に通知され、前記調剤支援装置から前記処方箋管理データベースにアクセスし、前記調剤薬局への来局予定者として前記患者の前記処方箋データを取得する処方箋取得部と、
前記処方箋取得部により取得された前記患者の前記処方箋データを前記表示装置に表示させ、前記処方箋データの内容を薬剤師に確認させる処方箋確認部と、
前記確認を受けた処方箋データに基づいて、前記調剤準備用ロボットに、前記処方箋データで指定された薬剤の入った箱を保管場所から薬剤師に届ける調剤準備を指示する調剤準備指示部と、を含む、システム。
【請求項2】
請求項1に記載のシステムにおける調剤支援装置と、
請求項1に記載のシステムにおける調剤準備用ロボットと、
内部に薬剤を収容することができ、前記薬剤を受け取ることを可能にする自動薬剤受取機と、を備え、
前記自動薬剤受取機は、前記患者のIDを示すコードを読み取り可能な読取部を含み、
前記自動薬剤受取機は、前記患者のIDに対応付けられた前記薬剤が前記自動薬剤受取機に収容されている場合に、前記読取部が前記患者のIDを示す前記コードを読み取れば、前記自動薬剤受取機に収容されている前記薬剤を取り出すことができるように構成されている、調剤支援システム。
【請求項3】
医療機関の端末装置と、前記医療機関で発行された処方箋データを管理する処方箋管理データベースと、調剤薬局における調剤業務を支援する端末装置としてのコンピュータと、前記調剤薬局内に設置されると共に前記コンピュータと通信可能であり、調剤準備を行う調剤準備用ロボットと、を備えるシステムを利用し、前記調剤薬局における調剤業務を支援する調剤支援方法であって、
前記医療機関の前記端末装置と前記処方箋管理データベースと前記コンピュータとは、互いに通信可能であり
、
前記コンピュータは、情報を表示する表示装置を含み、
前記医療機関で前記処方箋データが発行されると前記処方箋データが前記処方箋管理データベースに登録され、前記調剤薬局をかかりつけ薬局としている特定の患者の前記処方箋データが前記処方箋管理データベースへ登録されると、登録されたことが前記処方箋管理データベースから前記コンピュータに対して自動的に通知され、前記コンピュータが、前記処方箋管理データベースにアクセスし、前記調剤薬局への来局予定者として前記患者の前記処方箋データを取得する処方箋取得ステップと、
前記コンピュータが、前記処方箋取得ステップにより取得した前記患者の前記処方箋データを前記表示装置に表示させ、前記処方箋データの内容を薬剤師に確認させる処方箋確認ステップと、
前記コンピュータが、前記確認を受けた処方箋データに基づいて、前記調剤準備用ロボットに、前記処方箋データで指定された薬剤の入った箱を保管場所から薬剤師に届ける調剤準備を指示する調剤準備指示ステップと、
前記調剤準備指示ステップにおける前記指示に基づいて、前記調剤準備用ロボットが調剤準備を行う調剤準備ステップと、を含む、調剤支援方法。
【請求項4】
請求項1に記載のシステムの調剤支援装置における前記処方箋取得部、前記処方箋確認部および前記調剤準備指示部としてコンピュータを動作させる調剤支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調剤薬局における調剤業務を支援する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
医療機関を受診した患者に処方箋が発行されると、患者は紙の処方箋を調剤薬局に提出して調剤を依頼する。しかし現状では、患者が処方箋を提出してから薬を受け取るまでに長い待ち時間(15分~30分程度)が発生することが多い。
【0003】
図1は、処方箋が発行されてから患者が薬を受け取るまでの一般的な流れを示すフローチャートである。医療機関において処方箋が発行されると(ステップS1)、患者は調剤薬局に来局して、処方箋を提出する(ステップS2)。これに対し、調剤薬局では、処方箋の情報を端末装置に入力して(ステップS3)、薬剤師が処方監査を行う。処方監査では、処方箋に記載されている処方内容が適切であるか、飲み合わせの悪い薬が含まれていないか等を確認し(処方箋情報確認、ステップS4)、その後、患者と対面して、症状等に関する確認を行い、薬の服用方法や注意事項を説明する(患者情報確認、ステップS5)。
【0004】
処方監査が終了すると、薬剤師は調剤を行う(ステップS6)。具体的には、処方箋に記載された薬を倉庫内の棚から探し、処方された用量を取り出して、薬剤を調製する。その後、薬剤師は、調製された薬を監査し(ステップS7)、最後に、患者に薬を渡す(ステップS8)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図1に示すフローでは、ステップS4の処方監査(処方箋情報)、および、ステップS6の調剤の作業に時間がかかる傾向があり、調剤薬局において患者を長時間待たせる大きな要因となっていた。
【0006】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであって、調剤薬局における患者の待ち時間を短縮することができる調剤支援装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る調剤支援装置は、調剤薬局における調剤業務を支援する調剤支援装置であって、前記調剤薬局への来局予定者の処方箋データを取得する処方箋取得部と、前記処方箋データの内容を薬剤師に確認させる処方箋確認部と、前記確認を受けた処方箋データに基づいて、調剤準備用ロボットに調剤準備を指示する調剤準備指示部と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、患者の来局前に、処方箋データを取得し、処方箋情報の確認を行い、調剤準備用ロボットによって、処方すべき薬を箱に入った形態で薬剤師の手元に準備することができるため、薬剤師が棚から薬を探し出す作業を省略することができる。したがって、調剤薬局における患者の待ち時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】処方箋が発行されてから患者が薬を受け取るまでの一般的な流れを示すフローチャートである。
【
図2】本発明の一実施形態に係る医療ネットワークのブロック図である。
【
図3】調剤準備用ロボットの一例を示す写真である。
【
図5】本発明の一実施形態における、処方箋が発行されてから患者が薬を受け取るまでの流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。なお、本発明は、下記の実施形態に限定されるものではない。
【0011】
(システム構成)
図2は、本発明の一実施形態に係る医療ネットワーク1のブロック図である。医療ネットワーク1では、医療機関2の端末装置21と、処方箋管理データベースDBと、調剤支援システム3の調剤支援装置31とが、インターネットなどの通信ネットワークNを介して、互いに通信可能となっている。
【0012】
端末装置21は、診療所や病院などの医療機関2に設置されているコンピュータである。端末装置21は、医師の操作に応じて処方箋データを発行する処方箋発行部211を備えている。処方箋データには、担当医師名、患者名、保険証情報、処方する薬の種類および用量などが含まれる。
【0013】
処方箋管理データベースDBは、クラウド上に設けられたデータベースであり、1または複数の医療機関で発行された処方箋データを管理する。処方箋発行部211が発行した処方箋データは、紙の処方箋として出力するために、医療機関2の会計窓口の端末に送信されるとともに、処方箋管理データベースDBに登録される。
【0014】
調剤支援システム3は、調剤薬局内に設けられており、調剤薬局における調剤業務を支援する。調剤支援システム3は、調剤支援装置31と、調剤準備用ロボット32と、自動薬剤受取機33とを備えている。
【0015】
調剤支援装置31は、調剤薬局における調剤業務を支援する端末装置であり、汎用のコンピュータで構成することができる。調剤支援装置31は、ハードウェア構成として、キーボードやマウスなどの入力装置、液晶ディスプレイなどの表示装置、CPUやMPUなどの演算処理装置、DRAMやハードディスクなどの記憶装置を備えている。
【0016】
また、調剤支援装置31は、機能ブロックとして、処方箋取得部311と、処方箋確認部312と、調剤準備指示部313とを備えている。これらの各部は、記憶装置に記憶された調剤支援プログラムを演算処理装置が実行することにより実現される。調剤支援プログラムは、通信ネットワークNを介して調剤支援装置31にダウンロードしてもよいし、CD-ROMなどのコンピュータ読み取り可能な非一時的な記録媒体に調剤支援プログラムを記録しておき、当該記憶媒体を介して調剤支援装置31にインストールしてもよい。
【0017】
処方箋取得部311は、処方箋管理データベースDBにアクセスして、調剤薬局への来局予定者の処方箋データを取得する機能を有している。処方箋管理データベースDBに登録された処方箋データは、調剤薬局から自由にアクセスできるわけではなく、特定の患者の処方箋データについて、特定の調剤薬局からのアクセスが許可されている。例えば、調剤薬局をかかりつけ薬局としている患者が、その調剤薬局から自身の処方箋データへのアクセスを許可するように登録しておく。これにより、当該患者の処方箋データが処方箋管理データベースDBに登録されると、登録されたことが処方箋管理データベースDBから処方箋取得部311に自動的に通知され、処方箋取得部311は、処方箋データを取得することができる。
【0018】
処方箋確認部312は、処方箋データの内容を薬剤師に確認させる機能を有している。具体的には、処方箋確認部312は、処方箋取得部311が取得した処方箋データの情報を調剤支援装置31の表示装置に表示させ、薬剤師に閲覧させる。薬剤師は、処方箋データの情報に問題ないか確認し、確認後、問題がないことを示すボタン(OKボタンなど)を押下する。
【0019】
調剤準備指示部313は、処方箋確認部312による確認を受けた処方箋データに基づいて、調剤準備用ロボット32に調剤準備を指示する機能を有している。調剤支援装置31は、調剤準備用ロボット32と無線または有線で通信可能に接続されている。
【0020】
調剤準備用ロボット32は、薬剤を保管する倉庫に移動可能に設けられている。調剤準備用ロボット32としては、例えば、日本ベクトン・ディッキンソン株式会社のBD Rowa Vmaxシステムを用いることができる。
【0021】
図3は、調剤準備用ロボット32の一例を示す写真である。写真の左右両側には、薬剤の箱を保管する棚が設置されている。中央部分の調剤準備用ロボット32は、棚の領域と、保管されている薬剤の種類との対応関係を記憶しており、棚の任意の位置にアクセスして、薬剤の箱を取り出すことができる。
【0022】
調剤準備指示部313から調剤準備用ロボット32に調剤準備の指示が送信されると、調剤準備用ロボット32は、指示に含まれる薬剤およびその保管場所を特定し、当該薬剤の箱を棚から取り出し、薬剤師の手元に届ける。この調剤準備用ロボット32の動作は、薬剤の箱を薬剤師の手元に届けるだけであるので、調剤行為には該当せず、調剤行為の前段階である調剤準備行為に該当する。例えば、処方箋データに「A錠剤を10錠」と指定されている場合であっても、調剤準備用ロボット32は、A錠剤が入っている箱を棚から薬剤師の手元に届けるだけであり、箱からA錠剤を取り出すことは行わない。
【0023】
自動薬剤受取機33は、人を介さずに薬剤を受け取ることを可能とする装置である。
図4は、自動薬剤受取機33の一例を示す写真である。自動薬剤受取機33は、内部に薬剤を収容することができ、正面下部にバーコードを読み取るバーコード読取部を備えている。薬剤が患者のID等と対応付けられて自動薬剤受取機33に収容されると、当該ID等を示すバーコードをバーコード読取部にかざすことにより、薬剤を取り出すことができる。自動薬剤受取機33としては、日本ベクトン・ディッキンソン株式会社製のピックアップターミナルを用いることができる。
【0024】
(調剤の流れ)
図5は、本実施形態における、処方箋が発行されてから患者が薬を受け取るまでの流れを示すフローチャートである。医療機関において処方箋が発行されると(ステップS1)、処方箋データが処方箋管理データベースDBに登録され、調剤薬局内の調剤支援装置31の処方箋取得部311が処方箋管理データベースDBから処方箋データを取得する(ステップS1-1、処方箋取得ステップ)。続いて、調剤支援装置31の処方箋確認部312が、処方箋データの情報を調剤支援装置31の表示装置に表示させ、薬剤師に確認させる(ステップS1-2、処方箋確認ステップ)。これにより、薬剤師は、患者が来局する前に、処方箋データの情報に問題ないか確認することができる。
【0025】
処方箋データの情報に問題が無ければ、調剤支援装置31の調剤準備指示部313が処方箋データに基づいて、調剤準備用ロボット32に調剤準備を指示する(ステップS1-3、調剤準備指示ステップ)。これに応じて、調剤準備用ロボット32が調剤準備を行う(ステップS1-4、調剤準備ステップ)。調剤準備用ロボット32は、処方箋データで指定された薬剤の入った箱を、倉庫の棚から薬剤師の手元に届ける。薬の種類にもよるが、調剤準備用ロボット32による調剤準備に要する時間は、通常、数十秒程度である。
【0026】
処方箋が発行された後、患者は、医療機関において会計を済ませ、紙の処方箋を受け取ってから、調剤薬局に来局するが(ステップS2)、患者は、医療機関における会計処理に少なくとも数分程度待たされることになるため、医療機関と調剤薬局とが近接している場合であっても、上記のステップS1-1~S1-3は、患者が調剤薬局に来院する前に完了することができる。
【0027】
患者の来局後、薬剤師は、患者と対面して処方監査を行う(ステップS5)。具体的には、症状等(副作用が起こっていないか、残薬があるか、等)に関する確認を行い、薬の服用方法や注意事項を説明する。
【0028】
その後、薬剤師は調剤を行う(ステップS6’)。ここでの調剤は、
図1に示す調剤行為(ステップS6)とは異なり、処方すべき薬は、箱に入った状態で調剤準備用ロボット32によって薬剤師の手元に準備されているため、薬剤師は、必要な用量だけ箱から取り出すだけでよい。なお、原則として、調剤は、処方監査の後に行う必要がある。
【0029】
その後、薬剤師は、調製された薬を監査し(ステップS7)、最後に、患者に薬を渡す(ステップS8)。
【0030】
以上のように、本実施形態では、
図1に示す従来のフローチャートと比べて、患者が来局した後(ステップS2)、処方箋入力(ステップS3)、処方監査(処方箋情報の確認、ステップS4)、および、調剤(ステップS6)において棚から薬を探し出す行為を省略することができる。特に、処方されることが少ない薬の場合、薬剤師が棚から薬を探し出すために長時間要することが多く、患者の待ち時間が長くなる原因となっていた。これに対し、本実施形態では、患者の来局前に、処方箋データを取得し、処方箋情報の確認を行い、調剤準備用ロボット32によって、処方すべき薬を箱に入った形態で薬剤師の手元に準備することができるため、薬剤師が棚から薬を探し出す作業を省略することができる。これにより、患者の来局後の待ち時間を大幅に(例えば5分程度に)短縮することが可能となる。
【0031】
なお、本実施形態では、ステップS5の処方監査の後、患者は、ステップS6’およびS7の処理が完了するまで調剤薬局内で待つことになる。しかし、患者が、この待ち時間を省略することを希望した場合、薬剤師は、調剤監査を終えた薬剤を、患者のID等と対応付けて自動薬剤受取機33に収納する。これにより患者は、次回の来局時に、自動薬剤受取機33にID等を示すバーコードをかざすだけで、薬剤師を介することなく(つまり、待たされることなく)、薬剤を受け取ることができる。
【0032】
(付記事項)
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0033】
1 医療ネットワーク
2 医療機関
3 調剤支援システム
21 端末装置
211 処方箋発行部
31 調剤支援装置
311 処方箋取得部
312 処方箋確認部
313 調剤準備指示部
32 調剤準備用ロボット
33 自動薬剤受取機
DB 処方箋管理データベース
N 通信ネットワーク