(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-03
(45)【発行日】2023-10-12
(54)【発明の名称】フェロトーシス阻害剤及びその用途
(51)【国際特許分類】
A61K 31/485 20060101AFI20231004BHJP
C07D 221/18 20060101ALI20231004BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20231004BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20231004BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20231004BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20231004BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20231004BHJP
A61P 25/14 20060101ALI20231004BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20231004BHJP
A61P 21/02 20060101ALI20231004BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20231004BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20231004BHJP
A61P 3/06 20060101ALI20231004BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20231004BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20231004BHJP
【FI】
A61K31/485
C07D221/18 CSP
A61P43/00 111
A61P25/00
A61P3/00
A61P1/16
A61P25/28
A61P25/14
A61P25/16
A61P21/02
A61P9/00
A61P3/10
A61P3/06
A61P13/12
A61P31/04
(21)【出願番号】P 2023528706
(86)(22)【出願日】2022-11-14
(86)【国際出願番号】 JP2022042198
(87)【国際公開番号】W WO2023085420
(87)【国際公開日】2023-05-19
【審査請求日】2023-05-15
(31)【優先権主張番号】P 2021185384
(32)【優先日】2021-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和2年度、国立研究開発法人日本医療研究開発機構、「医療分野研究成果展開事業 産学連携医療イノベーション創出プログラム(ACT-MS)」、「フェロトーシス制御によるミトコンドリア病・癌治療薬開発」、委託研究開発、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】505246789
【氏名又は名称】学校法人自治医科大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小坂 仁
(72)【発明者】
【氏名】宮内 彰彦
(72)【発明者】
【氏名】神保 恵理子
(72)【発明者】
【氏名】小林 瑞
【審査官】石井 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第112494491(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第101966228(CN,A)
【文献】中国特許第101407520(CN,B)
【文献】国際公開第2019/093379(WO,A1)
【文献】国際公開第2007/134485(WO,A1)
【文献】DAJAS-BAILADOR, Federico A. et al.,Dopaminergic pharmacology and antioxidant properties of pukateine, a natural product lead for the de,General Pharmacology,1999年,Vol.32, No.3,pp.373-379
【文献】CANNON, J.G. et al.,Centrally acting emetics. 5. Preparation and pharmacology of 10-hydroxy-11-methoxyaporphine (Isoap,Journal of Medicinal Chemistry,1972年,Vol.15, No.3,pp.273-276
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-31/80
C07D 221/18
A61P 1/00-43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I-1):
【化1】
[式中、
R
N1は、メチルであり、
R
1は、水素であり、
R
2及びR
3は、いずれも水素であり、
R
4は、ヒドロキシルであり、
R
5は、非置換若しくはハロゲン(フッ素、塩素、臭素又はヨウ素)、ヒドロキシル及びカルボキシルからなる群より選択される少なくとも1個の一価基で置換されたC
1~C
9アルコキシ、又は非置換若しくはハロゲン(フッ素、塩素、臭素又はヨウ素)、ヒドロキシル及びカルボキシルからなる群より選択される少なくとも1個の一価基で置換されたC
7~C
20アリールアルキルオキシであり(但し、メトキシ及びベンジルオキシは除く)、
R
6及びR
7は、いずれも水素である。]
で表される化合物若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物。
【請求項2】
R
5が、エトキシ、n-ブチルオキシ、2-フェニルエトキシ、3-フェニルプロピルオキシ、4-フェニルブチルオキシ、3,3-ビフェニルプロピルオキシ、3-ヒドロキシルプロピルオキシ、3-クロロプロピルオキシ、n-プロピルオキシ、n-ノニルオキシ又は4-トリフルオロブチルオキシである、請求項
1に記載の化合物若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物。
【請求項3】
請求項1に記載の化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物を有効成分として含有する、フェロトーシス阻害剤。
【請求項4】
請求項2に記載の化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物を有効成分として含有する、フェロトーシス阻害剤。
【請求項5】
請求項1に記載の化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物を有効成分として含有する、リー脳症、ミトコンドリア脳筋症・乳酸アシドーシス・脳卒中様発作症候群(MELAS)又はレーベル病であるミトコンドリア病、ミトコンドリア心筋症、ミトコンドリア肝症、慢性進行性外眼筋麻痺(CPEO)、パーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、狭心症、心筋梗塞、急性心不全、慢性心不全、心筋症、糖尿病性心筋症、心肥大、虚血再灌流障害、出血性脳卒中、糖尿病、脳梗塞、腎障害、急性腎不全、非アルコール性脂肪性肝炎若しくは肝障害、肝線維症、慢性閉塞性肺疾患、尿路感染症、多発性嚢胞腎、敗血症誘発心臓損傷、及び敗血症からなる群より選択される1種以上のフェロトーシスに関連する症状、疾患若しくは障害の予防又は治療に使用するための医薬。
【請求項6】
請求項2に記載の化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物を有効成分として含有する、リー脳症、ミトコンドリア脳筋症・乳酸アシドーシス・脳卒中様発作症候群(MELAS)又はレーベル病であるミトコンドリア病、ミトコンドリア心筋症、ミトコンドリア肝症、慢性進行性外眼筋麻痺(CPEO)、パーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、狭心症、心筋梗塞、急性心不全、慢性心不全、心筋症、糖尿病性心筋症、心肥大、虚血再灌流障害、出血性脳卒中、糖尿病、脳梗塞、腎障害、急性腎不全、非アルコール性脂肪性肝炎若しくは肝障害、肝線維症、慢性閉塞性肺疾患、尿路感染症、多発性嚢胞腎、敗血症誘発心臓損傷、及び敗血症からなる群より選択される1種以上のフェロトーシスに関連する症状、疾患若しくは障害の予防又は治療に使用するための医薬。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェロトーシス阻害剤及びその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
ミトコンドリアは、真核生物の細胞における主要なエネルギー産生の器官である。ミトコンドリアが機能障害に陥ると、様々な疾患又は症状を引き起こすことになる。
【0003】
ミトコンドリア病は、ミトコンドリアの機能障害に起因する代表的な疾患である。ミトコンドリア病は、500人に1人の頻度で発症する、比較的頻度の高い遺伝性代謝疾患である。ミトコンドリア病は、全臓器が罹患対象となり得るが、特にエネルギー需要の高い脳、中枢神経系及び筋肉において顕著な症状が発現し得る。例えば、中枢神経系における症状としては、不可逆性の知的退行、痙攣、脳卒中様発作及び小脳失調等を挙げることができる。
【0004】
ミトコンドリア病の臨床病型は、通常は、10種類以上に分類される。その中でも、リー脳症、及びミトコンドリア脳筋症・乳酸アシドーシス・脳卒中様発作症候群(以下、「MELAS」とも記載する)は、小児領域における二大病型とみなされている。リー脳症は、乳幼児期から、精神運動発達遅延及び退行等の症状を起こす。MELASは、ATP産生のようなミトコンドリアの機能に障害が生じることにより、反復する脳卒中様発作等の症状を起こす。
【0005】
ミトコンドリアの機能障害に起因する疾患又は症状の治療に関して、例えば、特許文献1は、パーキンソン病治療薬として知られるアポモルフィン等を有効成分として含む、ミトコンドリアの機能障害の改善剤を記載する。当該文献は、アポモルフィンが、ミトコンドリアの機能障害を改善する効果を有し、ミトコンドリア病のようなミトコンドリアの機能障害に起因する疾患又は症状の予防又は治療に使用することができると記載する。
【0006】
非特許文献1は、欧州において、コエンザイムQ10(以下、「CoQ10」とも記載する)の類縁体であるイデベノンが、ミトコンドリア病の臨床病型の1種であるレーバー遺伝性視神経炎に対する治療薬として認可されていることを記載する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【非特許文献】
【0008】
【文献】Okamoto M, Yamanaka S, Yoshimoto W, Shigematsu T, Alendronate as an effective treatment for bone loss and vascular calcification in kidney transplant recipients. Journal of transplantation. 2014年, 第2014巻, p. 269613
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前記のように、アポモルフィンがミトコンドリアの機能障害を改善する効果を有することが知られている。ミトコンドリアの機能障害は、ミトコンドリア病をはじめとする種々の症状、疾患若しくは障害の原因であることが知られているものの、ミトコンドリアの機能障害に起因する症状、疾患若しくは障害の発現機序は明らかではなかった。
【0010】
それ故、本発明は、ミトコンドリアの機能障害に起因する症状、疾患若しくは障害の発現機序を明らかにし、同様の発現機序に関連する症状、疾患若しくは障害を予防又は治療し得る手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、前記課題を解決するための手段を種々検討した。本発明者らは、ミトコンドリアの機能障害に関連する細胞死は、主としてフェロトーシスを介して誘導されることを見出した。また、本発明者らは、フェロトーシスを介して誘導される細胞死がアポモルフィンによって抑制されることを見出した。さらに、本発明者らは、アポモルフィンをリード化合物としてアポモルフィン誘導体を開発し、いくつかのアポモルフィン誘導体が高いフェロトーシス阻害効果を有することを見出した。本発明者らは、前記知見に基づき本発明を完成した。
【0012】
すなわち、本発明は、以下の態様及び実施形態を包含する。
(1) 式(I):
【化1】
[式中、
R
N1は、メチルであり、
R
1は、水素、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素又はヨウ素)、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のアルキル、置換若しくは非置換のアルケニル、置換若しくは非置換のアルキニル、置換若しくは非置換のシクロアルキル、置換若しくは非置換のシクロアルケニル、置換若しくは非置換のシクロアルキニル、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のシクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換のアリール、置換若しくは非置換のアリールアルキル、置換若しくは非置換のヘテロアリール、置換若しくは非置換のヘテロアリールアルキル、置換若しくは非置換のアルコキシ、置換若しくは非置換のシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のアリールオキシ、置換若しくは非置換のアリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のアリールアルケニルオキシ、置換若しくは非置換のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換のヘテロアリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のアルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のシクロアルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のアシル、置換若しくは非置換のアルキルカルボニルオキシ、置換若しくは非置換のアリールカルボニルオキシ、置換若しくは非置換のカルバモイル、置換若しくは非置換のアルキルスルホニル、置換若しくは非置換のアリールスルホニル、置換若しくは非置換のアルキルスルファニル、置換若しくは非置換のアリールスルファニル、又は置換若しくは非置換のアミノであり、
R
2及びR
3は、互いに独立して、水素、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素又はヨウ素)、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のアルキル、置換若しくは非置換のアルケニル、置換若しくは非置換のアルキニル、置換若しくは非置換のシクロアルキル、置換若しくは非置換のシクロアルケニル、置換若しくは非置換のシクロアルキニル、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のシクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換のアリール、置換若しくは非置換のアリールアルキル、置換若しくは非置換のヘテロアリール、置換若しくは非置換のヘテロアリールアルキル、置換若しくは非置換のアルコキシ、置換若しくは非置換のシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のアリールオキシ、置換若しくは非置換のアリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のアリールアルケニルオキシ、置換若しくは非置換のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換のヘテロアリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のアルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のシクロアルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のアシル、置換若しくは非置換のアルキルカルボニルオキシ、置換若しくは非置換のアリールカルボニルオキシ、置換若しくは非置換のカルバモイル、置換若しくは非置換のアルキルスルホニル、置換若しくは非置換のアリールスルホニル、置換若しくは非置換のアルキルスルファニル、置換若しくは非置換のアリールスルファニル、又は置換若しくは非置換のアミノであるか、或いは、
R
2及びR
3は、一緒になって-O-CH
2-O-を形成しており、
R
4及びR
5は、互いに独立して、水素、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素又はヨウ素)、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のアルキル、置換若しくは非置換のアルケニル、置換若しくは非置換のアルキニル、置換若しくは非置換のシクロアルキル、置換若しくは非置換のシクロアルケニル、置換若しくは非置換のシクロアルキニル、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のシクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換のアリール、置換若しくは非置換のアリールアルキル、置換若しくは非置換のヘテロアリール、置換若しくは非置換のヘテロアリールアルキル、置換若しくは非置換のアルコキシ、置換若しくは非置換のシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のアリールオキシ、置換若しくは非置換のアリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のアリールアルケニルオキシ、置換若しくは非置換のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換のヘテロアリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のアルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のシクロアルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のアシル、置換若しくは非置換のアルキルカルボニルオキシ、置換若しくは非置換のアリールカルボニルオキシ、置換若しくは非置換のカルバモイル、置換若しくは非置換のアルキルスルホニル、置換若しくは非置換のアリールスルホニル、置換若しくは非置換のアルキルスルファニル、置換若しくは非置換のアリールスルファニル、又は置換若しくは非置換のアミノであるか、或いは、
R
4及びR
5は、一緒になって-O-CH
2-O-を形成しており、
R
6及びR
7は、互いに独立して、水素、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素又はヨウ素)、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のアルキル、置換若しくは非置換のアルケニル、置換若しくは非置換のアルキニル、置換若しくは非置換のシクロアルキル、置換若しくは非置換のシクロアルケニル、置換若しくは非置換のシクロアルキニル、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のシクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換のアリール、置換若しくは非置換のアリールアルキル、置換若しくは非置換のヘテロアリール、置換若しくは非置換のヘテロアリールアルキル、置換若しくは非置換のアルコキシ、置換若しくは非置換のシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のアリールオキシ、置換若しくは非置換のアリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のアリールアルケニルオキシ、置換若しくは非置換のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換のヘテロアリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のアルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のシクロアルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のアシル、置換若しくは非置換のアルキルカルボニルオキシ、置換若しくは非置換のアリールカルボニルオキシ、置換若しくは非置換のカルバモイル、置換若しくは非置換のアルキルスルホニル、置換若しくは非置換のアリールスルホニル、置換若しくは非置換のアルキルスルファニル、置換若しくは非置換のアリールスルファニル、又は置換若しくは非置換のアミノであるか、或いは、
R
6及びR
7は、一緒になって-O-CH
2-O-を形成しており、
但し、R
N1がメチルであり、R
1、R
2及びR
3が水素であり、R
4及びR
5がヒドロキシルであり、且つR
6及びR
7が水素である場合を除く。]
で表される化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物を有効成分として含有する、フェロトーシス阻害剤。
(2) R
1が、水素、又は非置換若しくはハロゲン(フッ素、塩素、臭素又はヨウ素)、ヒドロキシル及びカルボキシルからなる群より選択される少なくとも1個の一価基で置換されたC
1~C
9アルコキシである、
前記実施形態(1)に記載のフェロトーシス阻害剤。
(3) R
2及びR
3が、互いに独立して、水素、ヒドロキシル、非置換若しくはハロゲン(フッ素、塩素、臭素又はヨウ素)、ヒドロキシル及びカルボキシルからなる群より選択される少なくとも1個の一価基で置換されたC
1~C
9アルコキシ、又は非置換若しくはハロゲン(フッ素、塩素、臭素又はヨウ素)、ヒドロキシル及びカルボキシルからなる群より選択される少なくとも1個の一価基で置換されたC
7~C
20アリールアルキルオキシであるか、或いは、
R
2及びR
3が、一緒になって-O-CH
2-O-を形成しており、
R
4及びR
5が、互いに独立して、水素、ヒドロキシル、非置換若しくはハロゲン(フッ素、塩素、臭素又はヨウ素)、ヒドロキシル及びカルボキシルからなる群より選択される少なくとも1個の一価基で置換されたC
6~C
18アリール、非置換若しくはハロゲン(フッ素、塩素、臭素又はヨウ素)、ヒドロキシル及びカルボキシルからなる群より選択される少なくとも1個の一価基で置換されたC
1~C
9アルコキシ、又は非置換若しくはハロゲン(フッ素、塩素、臭素又はヨウ素)、ヒドロキシル及びカルボキシルからなる群より選択される少なくとも1個の一価基で置換されたC
7~C
20アリールアルキルオキシであるか、或いは、
R
4及びR
5は、一緒になって-O-CH
2-O-を形成しており、
R
6及びR
7が、互いに独立して、水素、ヒドロキシル、非置換若しくはハロゲン(フッ素、塩素、臭素又はヨウ素)、ヒドロキシル及びカルボキシルからなる群より選択される少なくとも1個の一価基で置換されたC
1~C
9アルコキシ、又は非置換若しくはハロゲン(フッ素、塩素、臭素又はヨウ素)、ヒドロキシル及びカルボキシルからなる群より選択される少なくとも1個の一価基で置換されたC
7~C
20アリールアルキルオキシであるか、或いは、
R
6及びR
7は、一緒になって-O-CH
2-O-を形成している、
前記実施形態(1)又は(2)に記載のフェロトーシス阻害剤。
(4) R
2及びR
3が、一緒になって-O-CH
2-O-を形成している、前記実施形態(1)~(3)のいずれかに記載のフェロトーシス阻害剤。
(5) R
2及びR
3が、互いに独立して、ヒドロキシル、又は非置換若しくはハロゲン(フッ素、塩素、臭素又はヨウ素)、ヒドロキシル及びカルボキシルからなる群より選択される少なくとも1個の一価基で置換されたC
1~C
9アルコキシである、前記実施形態(1)~(3)のいずれかに記載のフェロトーシス阻害剤。
(6) R
2及びR
3が、いずれも水素である、前記実施形態(1)~(3)のいずれかに記載のフェロトーシス阻害剤。
(7) R
N1が、メチルであり;
R
1が、水素であり;
R
2及びR
3が、いずれも水素であり;
R
4が、ヒドロキシルであり;
R
5が、フェニル、エトキシ、n-ブチルオキシ、フェニルメトキシ(すなわちベンジルオキシ)、2-フェニルエトキシ、3-フェニルプロピルオキシ、4-フェニルブチルオキシ、3,3-ビフェニルプロピルオキシ、3-ヒドロキシルプロピルオキシ、3-クロロプロピルオキシ、n-プロピルオキシ、n-ノニルオキシ、4-トリフルオロブチルオキシ、イソプロピルオキシ、2-メチルプロピルオキシ、1-メチルプロピルオキシ、クロロメトキシ、2-クロロエトキシ、2-トリフルオロエトキシ又は3-トリフルオロプロピルオキシであり;
R
6及びR
7が、いずれも水素である、
前記実施形態(1)~(3)及び(6)のいずれかに記載のフェロトーシス阻害剤。
(8) R
N1が、メチルであり、R
1が、水素であり、R
2及びR
3が、一緒になって-O-CH
2-O-を形成しており、R
4及びR
5が、いずれも水素であり、且つR
6及びR
7が、いずれもメトキシであるか、或いは
R
N1が、メチルであり、R
1が、水素であり、R
2及びR
3が、一緒になって-O-CH
2-O-を形成しており、R
4及びR
5が、いずれも水素であり、R
6が、水素であり、且つR
7が、メトキシであるか、或いは
R
N1が、メチルであり、R
1が、水素であり、R
2及びR
3が、一緒になって-O-CH
2-O-を形成しており、R
4が、ヒドロキシルであり、R
5が、水素であり、R
6が、メトキシであり、且つR
7が、水素であるか、或いは
R
N1が、メチルであり、R
1が、水素であり、R
2及びR
3が、一緒になって-O-CH
2-O-を形成しており、R
4及びR
5が、いずれも水素であり、且つR
6及びR
7が、いずれも水素であるか、或いは
R
N1が、メチルであり、R
1が、メトキシであり、R
2及びR
3が、一緒になって-O-CH
2-O-を形成しており、R
4が、水素であり、R
5が、メトキシであり、R
6が、メトキシであり、且つR
7が、水素であるか、或いは
R
N1が、メチルであり、R
1が、水素であり、R
2が、メトキシであり、R
3が、ヒドロキシルであり、R
4及びR
5が、いずれもメトキシであり、且つR
6及びR
7が、いずれも水素であるか、或いは
R
N1が、メチルであり、R
1が、水素であり、R
2及びR
3が、いずれも水素であり、R
4が、ヒドロキシルであり、R
5が、n-ブチルオキシであり、且つR
6及びR
7が、いずれも水素であるか、或いは
R
N1が、メチルであり、R
1が、水素であり、R
2及びR
3が、いずれも水素であり、R
4が、ヒドロキシルであり、R
5が、3-フェニルプロピルオキシであり、且つR
6及びR
7が、いずれも水素であるか、或いは
R
N1が、メチルであり、R
1が、水素であり、R
2及びR
3が、いずれも水素であり、R
4が、ヒドロキシルであり、R
5が、3-ヒドロキシルプロピルオキシであり、且つR
6及びR
7が、いずれも水素であるか、或いは
R
N1が、メチルであり、R
1が、水素であり、R
2及びR
3が、いずれも水素であり、R
4が、ヒドロキシルであり、R
5が、3-クロロプロピルオキシであり、且つR
6及びR
7が、いずれも水素であるか、或いは
R
N1が、メチルであり、R
1が、水素であり、R
2及びR
3が、いずれも水素であり、R
4が、ヒドロキシルであり、R
5が、n-プロピルオキシであり、且つR
6及びR
7が、いずれも水素であるか、或いは
R
N1が、メチルであり、R
1が、水素であり、R
2及びR
3が、いずれも水素であり、R
4が、ヒドロキシルであり、R
5が、n-ノニルオキシであり、且つR
6及びR
7が、いずれも水素であるか、或いは
R
N1が、メチルであり、R
1が、水素であり、R
2及びR
3が、いずれも水素であり、R
4が、ヒドロキシルであり、R
5が、4-トリフルオロブチルオキシであり、且つR
6及びR
7が、いずれも水素であるか、或いは
R
N1が、メチルであり、R
1が、水素であり、R
2及びR
3が、いずれもメトキシであり、R
4が、ヒドロキシルであり、R
5が、メトキシであり、且つR
6及びR
7が、いずれも水素であるか、或いは
R
N1が、メチルであり、R
1が、水素であり、R
2及びR
3が、いずれも水素であり、R
4が、ヒドロキシルであり、R
5が、フェニルであり、且つR
6及びR
7が、いずれも水素であるか、或いは
R
N1が、メチルであり、R
1が、水素であり、R
2及びR
3が、いずれも水素であり、R
4が、ヒドロキシルであり、R
5が、フェニルメチルオキシ(すなわちベンジルオキシ)であり、且つR
6及びR
7が、いずれも水素であるか、或いは
R
N1が、メチルであり、R
1が、水素であり、R
2及びR
3が、いずれも水素であり、R
4が、ヒドロキシルであり、R
5が、2-フェニルエチルオキシであり、且つR
6及びR
7が、いずれも水素であるか、或いは
R
N1が、メチルであり、R
1が、水素であり、R
2及びR
3が、いずれも水素であり、R
4が、ヒドロキシルであり、R
5が、4-フェニルブチルオキシであり、且つR
6及びR
7が、いずれも水素であるか、或いは
R
N1が、メチルであり、R
1が、水素であり、R
2及びR
3が、いずれも水素であり、R
4が、ヒドロキシルであり、R
5が、3,3-ビフェニルプロピルオキシであり、且つR
6及びR
7が、いずれも水素であるか、或いは
R
N1が、メチルであり、R
1が、水素であり、R
2及びR
3が、いずれも水素であり、R
4が、ヒドロキシルであり、R
5が、エチルオキシであり、且つR
6及びR
7が、いずれも水素である、
前記実施形態(1)~(7)のいずれかに記載のフェロトーシス阻害剤。
(9) 前記実施形態(1)~(8)のいずれかに記載のフェロトーシス阻害剤を有効成分として含有する、フェロトーシスに関連する症状、疾患若しくは障害の予防又は治療に使用するための医薬。
(10) フェロトーシスに関連する症状、疾患若しくは障害が、原発性ミトコンドリア病、還元ストレスに起因する疾患、神経変性疾患、代謝性疾患又は肝機能障害である、前記実施形態(9)に記載の医薬。
(11) フェロトーシスに関連する症状、疾患若しくは障害が、リー脳症、ミトコンドリア脳筋症・乳酸アシドーシス・脳卒中様発作症候群(MELAS)又はレーベル病であるミトコンドリア病、ミトコンドリア心筋症、ミトコンドリア肝症、慢性進行性外眼筋麻痺(CPEO)、パーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、狭心症、心筋梗塞、急性心不全、慢性心不全、心筋症、糖尿病性心筋症、心肥大、虚血再灌流障害、出血性脳卒中、糖尿病、脳梗塞、腎障害、急性腎不全、非アルコール性脂肪性肝炎若しくは肝障害、肝線維症、慢性閉塞性肺疾患、尿路感染症、多発性嚢胞腎、敗血症誘発心臓損傷、及び敗血症からなる群より選択される1種以上の症状、疾患若しくは障害である、前記実施形態(9)又は(10)に記載の医薬。
(12) 式(I-1):
【化2】
[式中、
R
N1は、メチルであり、
R
1は、水素であり、
R
2及びR
3は、いずれも水素であり、
R
4は、ヒドロキシルであり、
R
5は、非置換若しくはハロゲン(フッ素、塩素、臭素又はヨウ素)、ヒドロキシル及びカルボキシルからなる群より選択される少なくとも1個の一価基で置換されたC
1~C
9アルコキシ、又は非置換若しくはハロゲン(フッ素、塩素、臭素又はヨウ素)、ヒドロキシル及びカルボキシルからなる群より選択される少なくとも1個の一価基で置換されたC
7~C
20アリールアルキルオキシであり、
R
6及びR
7は、いずれも水素である。]
で表される化合物若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物。
(13) R
5が、エトキシ、n-ブチルオキシ、2-フェニルエトキシ、3-フェニルプロピルオキシ、4-フェニルブチルオキシ、3,3-ビフェニルプロピルオキシ、3-ヒドロキシルプロピルオキシ、3-クロロプロピルオキシ、n-プロピルオキシ、n-ノニルオキシ又は4-トリフルオロブチルオキシである、前記実施形態(12)に記載の化合物若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物。
(14) 前記実施形態(1)~(8)のいずれかに記載のフェロトーシス阻害剤、或いは式(I)若しくは(I-1)で表される化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物を有効成分として含有する医薬組成物。
(15) 原発性ミトコンドリア病、還元ストレスに起因する疾患、神経変性疾患、代謝性疾患又は肝機能障害であるフェロトーシスに関連する症状、疾患若しくは障害の予防又は治療に使用するための、前記実施形態(14)に記載の医薬組成物。
(16) フェロトーシスに関連する症状、疾患若しくは障害が、リー脳症、ミトコンドリア脳筋症・乳酸アシドーシス・脳卒中様発作症候群(MELAS)又はレーベル病であるミトコンドリア病、ミトコンドリア心筋症、ミトコンドリア肝症、慢性進行性外眼筋麻痺(CPEO)、パーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、狭心症、心筋梗塞、急性心不全、慢性心不全、心筋症、糖尿病性心筋症、心肥大、虚血再灌流障害、出血性脳卒中、糖尿病、脳梗塞、腎障害、急性腎不全、非アルコール性脂肪性肝炎若しくは肝障害、肝線維症、慢性閉塞性肺疾患、尿路感染症、多発性嚢胞腎、敗血症誘発心臓損傷、及び敗血症からなる群より選択される1種以上の症状、疾患若しくは障害である、前記実施形態(15)に記載の医薬組成物。
(17) フェロトーシスに関連する症状、疾患及び/又は障害の予防又は治療を必要とする対象に、有効量の前記実施形態(1)~(8)のいずれかに記載のフェロトーシス阻害剤、或いは式(I)若しくは(I-1)で表される化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物を投与することを含む、前記症状、疾患及び/又は障害の予防又は治療方法。
(18) フェロトーシスに関連する症状、疾患若しくは障害が、原発性ミトコンドリア病、還元ストレスに起因する疾患、神経変性疾患、代謝性疾患又は肝機能障害である、前記実施形態(17)に記載の方法。
(19) フェロトーシスに関連する症状、疾患若しくは障害が、リー脳症、ミトコンドリア脳筋症・乳酸アシドーシス・脳卒中様発作症候群(MELAS)又はレーベル病であるミトコンドリア病、ミトコンドリア心筋症、ミトコンドリア肝症、慢性進行性外眼筋麻痺(CPEO)、パーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、狭心症、心筋梗塞、急性心不全、慢性心不全、心筋症、糖尿病性心筋症、心肥大、虚血再灌流障害、出血性脳卒中、糖尿病、脳梗塞、腎障害、急性腎不全、非アルコール性脂肪性肝炎若しくは肝障害、肝線維症、慢性閉塞性肺疾患、尿路感染症、多発性嚢胞腎、敗血症誘発心臓損傷、及び敗血症からなる群より選択される1種以上の症状、疾患若しくは障害である、前記実施形態(17)又は(18)に記載の方法。
(20) フェロトーシスに関連する症状、疾患及び/又は障害の予防又は治療に使用するための、前記実施形態(1)~(8)のいずれかに記載のフェロトーシス阻害剤、或いは式(I)若しくは(I-1)で表される化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物。
(21) フェロトーシスに関連する症状、疾患若しくは障害が、原発性ミトコンドリア病、還元ストレスに起因する疾患、神経変性疾患、代謝性疾患又は肝機能障害である、前記実施形態(20)に記載のフェロトーシス阻害剤、或いは化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物。
(22) フェロトーシスに関連する症状、疾患若しくは障害が、リー脳症、ミトコンドリア脳筋症・乳酸アシドーシス・脳卒中様発作症候群(MELAS)又はレーベル病であるミトコンドリア病、ミトコンドリア心筋症、ミトコンドリア肝症、慢性進行性外眼筋麻痺(CPEO)、パーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、狭心症、心筋梗塞、急性心不全、慢性心不全、心筋症、糖尿病性心筋症、心肥大、虚血再灌流障害、出血性脳卒中、糖尿病、脳梗塞、腎障害、急性腎不全、非アルコール性脂肪性肝炎若しくは肝障害、肝線維症、慢性閉塞性肺疾患、尿路感染症、多発性嚢胞腎、敗血症誘発心臓損傷、及び敗血症からなる群より選択される1種以上の症状、疾患若しくは障害である、前記実施形態(20)又は(21)に記載のフェロトーシス阻害剤、或いは化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物。
(23) フェロトーシスに関連する症状、疾患及び/又は障害の予防又は治療のための医薬の製造における、前記実施形態(1)~(8)のいずれかに記載のフェロトーシス阻害剤、或いは式(I)若しくは(I-1)で表される化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物の使用。
(24) フェロトーシスに関連する症状、疾患及び/又は障害の予防又は治療のための、前記実施形態(1)~(8)のいずれかに記載のフェロトーシス阻害剤、或いは式(I)若しくは(I-1)で表される化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物の使用。
(25) フェロトーシスに関連する症状、疾患若しくは障害が、原発性ミトコンドリア病、還元ストレスに起因する疾患、神経変性疾患、代謝性疾患又は肝機能障害である、前記実施形態(23)又は(24)に記載の使用。
(26) フェロトーシスに関連する症状、疾患若しくは障害が、リー脳症、ミトコンドリア脳筋症・乳酸アシドーシス・脳卒中様発作症候群(MELAS)又はレーベル病であるミトコンドリア病、ミトコンドリア心筋症、ミトコンドリア肝症、慢性進行性外眼筋麻痺(CPEO)、パーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、狭心症、心筋梗塞、急性心不全、慢性心不全、心筋症、糖尿病性心筋症、心肥大、虚血再灌流障害、出血性脳卒中、糖尿病、脳梗塞、腎障害、急性腎不全、非アルコール性脂肪性肝炎若しくは肝障害、肝線維症、慢性閉塞性肺疾患、尿路感染症、多発性嚢胞腎、敗血症誘発心臓損傷、及び敗血症からなる群より選択される1種以上の症状、疾患若しくは障害である、前記実施形態(23)~(25)のいずれかに記載の使用。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、ミトコンドリアの機能障害に起因する症状、疾患若しくは障害の発現機序の一つがフェロトーシスであることを明らかにし、同様の発現機序に関連する症状、疾患若しくは障害を予防又は治療し得る手段を提供することが可能となる。
【0014】
本明細書は、本願の優先権の基礎である日本国特許出願第2021-185384号の明細書及び/又は図面に記載される内容を包含する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、試験Iにおいて、正常細胞(Promo1細胞)又はリー脳症患者細胞(LS
ND3)に対してフェロトーシス誘導剤であるBSOと種々のフェロトーシス阻害剤とを共添加して、BSOによって誘導される細胞死の抑制効果を評価した結果を示すグラフである。図中、Aは、正常細胞(Promo1細胞)における結果を、Bは、リー脳症患者細胞(LS
ND3)における結果を、それぞれ示す。図中、横軸は、試験化合物であり、縦軸は、BSO非添加の対照における生細胞数を100%とした場合の各処理区の生細胞率(%)である。図中の値は、平均値±標準偏差を示す。
【
図2】
図2は、試験Iにおいて、正常細胞(Promo1細胞)又はリー脳症患者細胞(LS
ND3)に対してフェロトーシス誘導剤であるRSL-3と種々のフェロトーシス阻害剤とを共添加して、RSL-3によって誘導される細胞死の抑制効果を評価した結果を示すグラフである。図中、Aは、正常細胞(Promo1細胞)における結果を、Bは、リー脳症患者細胞(LS
ND3)における結果を、それぞれ示す。図中、横軸は、試験化合物であり、縦軸は、RSL-3非添加の対照における生細胞数を100%とした場合の各処理区の生細胞率(%)である。図中の値は、平均値±標準偏差を示す。
【
図3】
図3は、試験Iにおいて、正常細胞(Promo1細胞)又はリー脳症患者細胞(LS
ND3)に対してフェロトーシス誘導剤であるBSOとアポトーシス阻害剤(v-VAD)又はネクローシス阻害剤(GSK872)とを共添加して、BSOによって誘導される細胞死の抑制効果を評価した結果を示すグラフである。図中、Aは、正常細胞(Promo1細胞)における結果を、Bは、リー脳症患者細胞(LS
ND3)における結果を、それぞれ示す。図中、横軸は、試験化合物であり、縦軸は、BSO非添加の対照における生細胞数を100%とした場合の各処理区の生細胞率(%)である。図中の値は、平均値±標準偏差を示す。
【
図4】
図4は、試験Iにおいて、正常細胞(Promo1細胞)又はリー脳症患者細胞(LS
ND3)に対してフェロトーシス誘導剤であるRSL-3とアポトーシス阻害剤(v-VAD)又はネクローシス阻害剤(GSK872)とを共添加して、RSL-3によって誘導される細胞死の抑制効果を評価した結果を示すグラフである。図中、Aは、正常細胞(Promo1細胞)における結果を、Bは、リー脳症患者細胞(LS
ND3)における結果を、それぞれ示す。図中、横軸は、試験化合物であり、縦軸は、RSL-3非添加の対照における生細胞数を100%とした場合の各処理区の生細胞率(%)である。図中の値は、平均値±標準偏差を示す。
【
図5】
図5は、試験Iにおいて、正常細胞(Promo1細胞)又はミトコンドリア心筋症患者細胞(ME250-1)に対してフェロトーシス誘導剤であるBSOとアポモルフィン又はイデベノンとを共添加して、BSOによって誘導される細胞死の抑制効果を評価した結果を示すグラフである。図中、Aは、正常細胞(Promo1細胞)における結果を、Bは、ミトコンドリア心筋症患者細胞(ME250-1)における結果を、それぞれ示す。図中、横軸は、試験化合物であり、縦軸は、BSO非添加の対照における生細胞数を100%とした場合の各処理区の生細胞率(%)である。図中の値は、平均値±標準偏差を示す。
【
図6】
図6は、試験Iにおいて、正常細胞(Promo1細胞)又はミトコンドリア肝症患者細胞(ME263-1)に対してフェロトーシス誘導剤であるBSOとアポモルフィン又はイデベノンとを共添加して、BSOによって誘導される細胞死の抑制効果を評価した結果を示すグラフである。図中、Aは、正常細胞(Promo1細胞)における結果を、Bは、ミトコンドリア肝症患者細胞(ME263-1)における結果を、それぞれ示す。図中、横軸は、試験化合物であり、縦軸は、BSO非添加の対照における生細胞数を100%とした場合の各処理区の生細胞率(%)である。図中の値は、平均値±標準偏差を示す。
【
図7】
図7は、試験Iにおいて、正常細胞(Promo1細胞)又はカーンズ・セイヤー症候群(KSS)患者細胞(ME130-1)に対してフェロトーシス誘導剤であるBSOとアポモルフィン又はイデベノンとを共添加して、BSOによって誘導される細胞死の抑制効果を評価した結果を示すグラフである。図中、Aは、正常細胞(Promo1細胞)における結果を、Bは、KSS患者細胞(ME130-1)における結果を、それぞれ示す。図中、横軸は、試験化合物であり、縦軸は、BSO非添加の対照における生細胞数を100%とした場合の各処理区の生細胞率(%)である。図中の値は、平均値±標準偏差を示す。
【
図8】
図8は、試験Iにおいて、正常細胞(Promo1細胞)又はミトコンドリア心筋症患者細胞(ME250-1)に対してフェロトーシス誘導剤であるRSL-3とアポモルフィン又はフェロスタチン-1とを共添加して、RSL-3によって誘導される細胞死の抑制効果を評価した結果を示すグラフである。図中、Aは、正常細胞(Promo1細胞)における結果を、Bは、ミトコンドリア心筋症患者細胞(ME250-1)における結果を、それぞれ示す。図中、横軸は、試験化合物であり、縦軸は、RSL-3非添加の対照における生細胞数を100%とした場合の各処理区の生細胞率(%)である。図中の値は、平均値±標準偏差を示す。
【
図9】
図9は、試験Iにおいて、正常細胞(Promo1細胞)又はミトコンドリア肝症患者細胞(ME263-1)に対してフェロトーシス誘導剤であるRSL-3とアポモルフィン又はフェロスタチン-1とを共添加して、RSL-3によって誘導される細胞死の抑制効果を評価した結果を示すグラフである。図中、Aは、正常細胞(Promo1細胞)における結果を、Bは、ミトコンドリア肝症患者細胞(ME263-1)における結果を、それぞれ示す。図中、横軸は、試験化合物であり、縦軸は、RSL-3非添加の対照における生細胞数を100%とした場合の各処理区の生細胞率(%)である。図中の値は、平均値±標準偏差を示す。
【
図10】
図10は、試験Iにおいて、正常細胞(Promo1細胞)又はカーンズ・セイヤー症候群(KSS)患者細胞(ME130-1)に対してフェロトーシス誘導剤であるRSL-3とアポモルフィン又はフェロスタチン-1とを共添加して、RSL-3によって誘導される細胞死の抑制効果を評価した結果を示すグラフである。図中、Aは、正常細胞(Promo1細胞)における結果を、Bは、KSS患者細胞(ME130-1)における結果を、それぞれ示す。図中、横軸は、試験化合物であり、縦軸は、RSL-3非添加の対照における生細胞数を100%とした場合の各処理区の生細胞率(%)である。図中の値は、平均値±標準偏差を示す。
【
図11】
図11は、DMSO-d6中で測定した化合物D36の270 MHz
1H-NMRスペクトルである。
【
図12】
図12は、D
2Oを含むDMSO-d6中で測定した化合物D36の270 MHz
1H-NMRスペクトルである。
【
図13】
図13は、化合物D36のESI-MSスペクトル(上段:負イオンモード、下段:正イオンモード)である。
【
図14】
図14は、DMSO-d6中で測定した化合物D37の270 MHz
1H-NMRスペクトルである。
【
図15】
図15は、D
2Oを含むDMSO-d6中で測定した化合物D37の270 MHz
1H-NMRスペクトルである。
【
図16】
図16は、化合物D37のESI-MSスペクトル(上段:負イオンモード、下段:正イオンモード)である。
【
図17】
図17は、DMSO-d6中で測定した化合物D38の270 MHz
1H-NMRスペクトルである。
【
図18】
図18は、D
2Oを含むDMSO-d6中で測定した化合物D38の270 MHz
1H-NMRスペクトルである。
【
図19】
図19は、化合物D38のESI-MSスペクトル(上段:負イオンモード、下段:正イオンモード)である。
【
図20】
図20は、DMSO-d6中で測定した化合物D39の270 MHz
1H-NMRスペクトルである。
【
図21】
図21は、D
2Oを含むDMSO-d6中で測定した化合物D39の270 MHz
1H-NMRスペクトルである。
【
図22】
図22は、化合物D39のESI-MSスペクトル(上段:正イオンモード、下段:負イオンモード)である。
【
図23】
図23は、DMSO-d6中で測定した化合物D40の270 MHz
1H-NMRスペクトルである。
【
図24】
図24は、D
2Oを含むDMSO-d6中で測定した化合物D40の270 MHz
1H-NMRスペクトルである。
【
図25】
図25は、化合物D40のESI-MSスペクトル(上段:正イオンモード、下段:負イオンモード)である。
【
図26】
図26は、DMSO-d6中で測定した化合物D41の270 MHz
1H-NMRスペクトルである。
【
図27】
図27は、D
2Oを含むDMSO-d6中で測定した化合物D41の270 MHz
1H-NMRスペクトルである。
【
図28】
図28は、化合物D41のESI-MSスペクトル(上段:正イオンモード、下段:負イオンモード)である。
【
図29】
図29は、DMSO-d6中で測定した化合物D42の270 MHz
1H-NMRスペクトルである。
【
図30】
図30は、D
2Oを含むDMSO-d6中で測定した化合物D42の270 MHz
1H-NMRスペクトルである。
【
図31】
図31は、化合物D42のESI-MSスペクトル(上段:正イオンモード、下段:負イオンモード)である。
【
図32】
図32は、試験IIIにおいて、リー脳症患者細胞(KCMC10)に対してフェロトーシス誘導剤であるBSOと試験化合物とを共添加して、BSOによって誘導される細胞死の抑制効果を評価した結果を示すグラフである。図中、Aは、化合物D8、D9、D10、D18、D20、D26及びD36を用いた結果を、Bは、化合物D37、D38、D39、D40、D41、D42及びD43を用いた結果を、それぞれ示す。図中、横軸は、試験化合物であり、縦軸は、BSO非添加の対照における生細胞数を100%とした場合の各処理区の生細胞率(%)である。図中の値は、平均値±標準偏差を示す。
【
図33】
図33は、試験IIIにおいて、MELAS患者細胞(ME169)に対してフェロトーシス誘導剤であるBSOと試験化合物とを共添加して、BSOによって誘導される細胞死の抑制効果を評価した結果を示すグラフである。図中、Aは、化合物D8、D9、D10、D18、D20、D26及びD36を用いた結果を、Bは、化合物D37、D38、D39、D40、D41、D42及びD43を用いた結果を、それぞれ示す。図中、横軸は、試験化合物であり、縦軸は、BSO非添加の対照における生細胞数を100%とした場合の各処理区の生細胞率(%)である。図中の値は、平均値±標準偏差を示す。
【
図34】
図34は、試験IIIにおいて、リー脳症患者細胞(KCMC10)に対してフェロトーシス誘導剤であるRSL-3と試験化合物とを共添加して、RSL-3によって誘導される細胞死の抑制効果を評価した結果を示すグラフである。図中、Aは、化合物D8、D9、D10、D18、D20、D26及びD36を用いた結果を、Bは、化合物D37、D38、D39、D40、D41、D42及びD43を用いた結果を、それぞれ示す。図中、横軸は、試験化合物であり、縦軸は、RSL-3非添加の対照における生細胞数を100%とした場合の各処理区の生細胞率(%)である。図中の値は、平均値±標準偏差を示す。
【
図35】
図35は、試験IIIにおいて、MELAS患者細胞(ME169)に対してフェロトーシス誘導剤であるRSL-3と試験化合物とを共添加して、RSL-3によって誘導される細胞死の抑制効果を評価した結果を示すグラフである。図中、Aは、化合物D8、D9、D10、D18、D20、D26及びD36を用いた結果を、Bは、化合物D37、D38、D39、D40、D41、D42及びD43を用いた結果を、それぞれ示す。図中、横軸は、試験化合物であり、縦軸は、RSL-3非添加の対照における生細胞数を100%とした場合の各処理区の生細胞率(%)である。図中の値は、平均値±標準偏差を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<1. フェロトーシス阻害剤>
本明細書において、「ミトコンドリア」は、真核生物の細胞において、エネルギー産生を担う小器官を意味する。ミトコンドリアの機能障害に起因する疾患又は症状として、様々な疾患又は症状が知られている。しかしながら、これらのミトコンドリアの機能障害に起因する疾患又は症状は、いずれも根本的な治療方法が確立されていない。特に、ミトコンドリアの機能障害に起因する疾患又は症状の中でも、小児領域における二大病型であるリー脳症及びMELASに対しては、予防又は治療の有効性が実証されて、規制当局から承認された薬剤が存在しなかった。
【0017】
パーキンソン病治療薬として知られるアポモルフィンは、ミトコンドリアの機能障害を改善する効果を有し、ミトコンドリア病のようなミトコンドリアの機能障害に起因する疾患又は症状の予防又は治療に使用することができる(国際公開第2019/093379号、特許文献1)。しかしながら、ミトコンドリアの機能障害の改善効果におけるアポモルフィンの標的は明らかではなかった。
【0018】
ミトコンドリアの機能障害では、例えば、ATP産生の障害及び/又は酸化ストレスの増加が起こり、これにより、細胞死が引き起こされる。このため、ミトコンドリアの機能障害を有する個体では、正常な個体と比較して、酸化ストレスに対して脆弱であることが報告されている(Shrader WDら, Bioorg Med Chem Lett., 2011年6月15日, 第21(12)巻, p. 3693-8., doi:10.1016/j.bmcl.2011.04.085. 電子出版 2011年4月24日, PubMed PMID: 21600768)。酸化ストレスに関連する細胞死としては、アポトーシス、ネクローシス及びフェロトーシスが知られている。例えば、フェロトーシスにおいては、不飽和脂肪酸が酸化されて過酸化脂質が蓄積される。この過酸化脂質の蓄積は、グルタチオン(以下、「GSH」とも記載する)/グルタチオンペルオキシダーゼ4(以下、「GPX4」とも記載する)系、及びCoQ10/フェロトーシス抑制タンパク質1(以下、「FSP1」とも記載する)系によって抑制されることが知られている(Dollら, Bersukerら, Nature, 2019年)。しかしながら、ミトコンドリアの機能障害を有する個体における細胞死が、前記のいずれの発現機序によるものであるかは明らかではなかった。
【0019】
本発明者らは、ミトコンドリアの機能障害に関連する細胞死は、主としてフェロトーシスを介して誘導されることを見出した。また、本発明者らは、フェロトーシスを介して誘導される細胞死がアポモルフィンによって抑制されることを見出した。さらに、本発明者らは、アポモルフィンをリード化合物としてアポモルフィン誘導体を開発し、いくつかのアポモルフィン誘導体が高いフェロトーシス阻害効果を有することを見出した。それ故、本発明の一態様は、式(I):
【化3】
で表される化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物を有効成分として含有する、フェロトーシス阻害剤に関する。
【0020】
式(I)において、RN1は、メチルである。
【0021】
式(I)において、R1は、水素、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素又はヨウ素)、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のアルキル、置換若しくは非置換のアルケニル、置換若しくは非置換のアルキニル、置換若しくは非置換のシクロアルキル、置換若しくは非置換のシクロアルケニル、置換若しくは非置換のシクロアルキニル、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のシクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換のアリール、置換若しくは非置換のアリールアルキル、置換若しくは非置換のヘテロアリール、置換若しくは非置換のヘテロアリールアルキル、置換若しくは非置換のアルコキシ、置換若しくは非置換のシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のアリールオキシ、置換若しくは非置換のアリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のアリールアルケニルオキシ、置換若しくは非置換のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換のヘテロアリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のアルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のシクロアルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のアシル、置換若しくは非置換のアルキルカルボニルオキシ、置換若しくは非置換のアリールカルボニルオキシ、置換若しくは非置換のカルバモイル、置換若しくは非置換のアルキルスルホニル、置換若しくは非置換のアリールスルホニル、置換若しくは非置換のアルキルスルファニル、置換若しくは非置換のアリールスルファニル、又は置換若しくは非置換のアミノである。
R1は、水素、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素又はヨウ素)、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のC1~C9アルキル、置換若しくは非置換のC2~C9アルケニル、置換若しくは非置換のC2~C9アルキニル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルキル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルケニル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルキニル、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のC7~C20シクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルキル-C1~C9アルキル、置換若しくは非置換のC6~C18アリール、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルキル、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール-C1~C9アルキル、置換若しくは非置換のC1~C9アルコキシ、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルコキシ、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のC6~C18アリールオキシ、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルケニルオキシ、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール-C1~C9アルキルオキシ、置換若しくは非置換のC1~C9アルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のC1~C20アシル、置換若しくは非置換のC1~C9アルキルカルボニルオキシ、置換若しくは非置換のC6~C18アリールカルボニルオキシ、置換若しくは非置換のカルバモイル、置換若しくは非置換のC1~C9アルキルスルホニル、置換若しくは非置換のC6~C18アリールスルホニル、置換若しくは非置換のC1~C9アルキルスルファニル、置換若しくは非置換のC6~C18アリールスルファニル、又は置換若しくは非置換のアミノであることが好ましく;
水素、又は置換若しくは非置換のC1~C9アルコキシであることがより好ましく;
水素、又は非置換若しくはハロゲン(フッ素、塩素、臭素又はヨウ素)、ヒドロキシル及びカルボキシルからなる群より選択される少なくとも1個の一価基で置換されたC1~C9アルコキシであることがさらに好ましく;
水素、又はメトキシであることが特に好ましい。
【0022】
式(I)において、R2及びR3は、互いに独立して、水素、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素又はヨウ素)、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のアルキル、置換若しくは非置換のアルケニル、置換若しくは非置換のアルキニル、置換若しくは非置換のシクロアルキル、置換若しくは非置換のシクロアルケニル、置換若しくは非置換のシクロアルキニル、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のシクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換のアリール、置換若しくは非置換のアリールアルキル、置換若しくは非置換のヘテロアリール、置換若しくは非置換のヘテロアリールアルキル、置換若しくは非置換のアルコキシ、置換若しくは非置換のシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のアリールオキシ、置換若しくは非置換のアリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のアリールアルケニルオキシ、置換若しくは非置換のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換のヘテロアリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のアルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のシクロアルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のアシル、置換若しくは非置換のアルキルカルボニルオキシ、置換若しくは非置換のアリールカルボニルオキシ、置換若しくは非置換のカルバモイル、置換若しくは非置換のアルキルスルホニル、置換若しくは非置換のアリールスルホニル、置換若しくは非置換のアルキルスルファニル、置換若しくは非置換のアリールスルファニル、又は置換若しくは非置換のアミノであるか、或いは、一緒になって-O-CH2-O-を形成している。
R2及びR3は、互いに独立して、水素、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素又はヨウ素)、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のC1~C9アルキル、置換若しくは非置換のC2~C9アルケニル、置換若しくは非置換のC2~C9アルキニル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルキル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルケニル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルキニル、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のC7~C20シクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルキル-C1~C9アルキル、置換若しくは非置換のC6~C18アリール、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルキル、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール-C1~C9アルキル、置換若しくは非置換のC1~C9アルコキシ、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルコキシ、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のC6~C18アリールオキシ、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルケニルオキシ、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール-C1~C9アルキルオキシ、置換若しくは非置換のC1~C9アルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のC1~C20アシル、置換若しくは非置換のC1~C9アルキルカルボニルオキシ、置換若しくは非置換のC6~C18アリールカルボニルオキシ、置換若しくは非置換のカルバモイル、置換若しくは非置換のC1~C9アルキルスルホニル、置換若しくは非置換のC6~C18アリールスルホニル、置換若しくは非置換のC1~C9アルキルスルファニル、置換若しくは非置換のC6~C18アリールスルファニル、又は置換若しくは非置換のアミノであるか、或いは、一緒になって-O-CH2-O-を形成していることが好ましく;
互いに独立して、水素、ヒドロキシル、非置換若しくはハロゲン(フッ素、塩素、臭素又はヨウ素)、ヒドロキシル及びカルボキシルからなる群より選択される少なくとも1個の一価基で置換されたC1~C9アルコキシ、又は非置換若しくはハロゲン(フッ素、塩素、臭素又はヨウ素)、ヒドロキシル及びカルボキシルからなる群より選択される少なくとも1個の一価基で置換されたC7~C20アリールアルキルオキシであるか、或いは、一緒になって-O-CH2-O-を形成していることがより好ましく;
互いに独立して、水素、ヒドロキシル、又は非置換若しくはハロゲン(フッ素、塩素、臭素又はヨウ素)、ヒドロキシル及びカルボキシルからなる群より選択される少なくとも1個の一価基で置換されたC1~C9アルコキシであるか、或いは、一緒になって-O-CH2-O-を形成していることがさらに好ましく;
いずれも水素であるか、いずれもメトキシであるか、一方がヒドロキシルであり且つ他方がメトキシであるか、或いは、一緒になって-O-CH2-O-を形成していることが特に好ましい。
【0023】
式(I)において、R4及びR5は、互いに独立して、水素、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素又はヨウ素)、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のアルキル、置換若しくは非置換のアルケニル、置換若しくは非置換のアルキニル、置換若しくは非置換のシクロアルキル、置換若しくは非置換のシクロアルケニル、置換若しくは非置換のシクロアルキニル、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のシクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換のアリール、置換若しくは非置換のアリールアルキル、置換若しくは非置換のヘテロアリール、置換若しくは非置換のヘテロアリールアルキル、置換若しくは非置換のアルコキシ、置換若しくは非置換のシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のアリールオキシ、置換若しくは非置換のアリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のアリールアルケニルオキシ、置換若しくは非置換のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換のヘテロアリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のアルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のシクロアルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のアシル、置換若しくは非置換のアルキルカルボニルオキシ、置換若しくは非置換のアリールカルボニルオキシ、置換若しくは非置換のカルバモイル、置換若しくは非置換のアルキルスルホニル、置換若しくは非置換のアリールスルホニル、置換若しくは非置換のアルキルスルファニル、置換若しくは非置換のアリールスルファニル、又は置換若しくは非置換のアミノであるか、或いは、一緒になって-O-CH2-O-を形成している。
R4及びR5は、互いに独立して、水素、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素又はヨウ素)、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のC1~C9アルキル、置換若しくは非置換のC2~C9アルケニル、置換若しくは非置換のC2~C9アルキニル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルキル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルケニル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルキニル、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のC7~C20シクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルキル-C1~C9アルキル、置換若しくは非置換のC6~C18アリール、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルキル、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール-C1~C9アルキル、置換若しくは非置換のC1~C9アルコキシ、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルコキシ、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のC6~C18アリールオキシ、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルケニルオキシ、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール-C1~C9アルキルオキシ、置換若しくは非置換のC1~C9アルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のC1~C20アシル、置換若しくは非置換のC1~C9アルキルカルボニルオキシ、置換若しくは非置換のC6~C18アリールカルボニルオキシ、置換若しくは非置換のカルバモイル、置換若しくは非置換のC1~C9アルキルスルホニル、置換若しくは非置換のC6~C18アリールスルホニル、置換若しくは非置換のC1~C9アルキルスルファニル、置換若しくは非置換のC6~C18アリールスルファニル、又は置換若しくは非置換のアミノであるか、或いは、一緒になって-O-CH2-O-を形成していることが好ましく;
互いに独立して、水素、ヒドロキシル、非置換若しくはハロゲン(フッ素、塩素、臭素又はヨウ素)、ヒドロキシル及びカルボキシルからなる群より選択される少なくとも1個の一価基で置換されたC6~C18アリール、非置換若しくはハロゲン(フッ素、塩素、臭素又はヨウ素)、ヒドロキシル及びカルボキシルからなる群より選択される少なくとも1個の一価基で置換されたC1~C9アルコキシ、又は非置換若しくはハロゲン(フッ素、塩素、臭素又はヨウ素)、ヒドロキシル及びカルボキシルからなる群より選択される少なくとも1個の一価基で置換されたC7~C20アリールアルキルオキシであるか、或いは、一緒になって-O-CH2-O-を形成していることがより好ましく;
互いに独立して、水素、ヒドロキシル、フェニル、メトキシ、エトキシ、n-ブチルオキシ、フェニルメトキシ(すなわちベンジルオキシ)、2-フェニルエトキシ、3-フェニルプロピルオキシ、4-フェニルブチルオキシ、3,3-ビフェニルプロピルオキシ、3-ヒドロキシルプロピルオキシ、3-クロロプロピルオキシ、n-プロピルオキシ、n-ノニルオキシ又は4-トリフルオロブチルオキシであることがさらに好ましく;
いずれも水素又はメトキシであるか、一方が水素であり且つ他方がヒドロキシル又はメトキシであるか、或いは一方がヒドロキシルであり且つ他方がフェニル、メトキシ、エトキシ、n-ブチルオキシ、フェニルメトキシ(すなわちベンジルオキシ)、2-フェニルエトキシ、3-フェニルプロピルオキシ、4-フェニルブチルオキシ、3,3-ビフェニルプロピルオキシ、3-ヒドロキシルプロピルオキシ、3-クロロプロピルオキシ、n-プロピルオキシ、n-ノニルオキシ、4-トリフルオロブチルオキシ、イソプロピルオキシ、2-メチルプロピルオキシ、1-メチルプロピルオキシ、クロロメトキシ、2-クロロエトキシ、2-トリフルオロエトキシ又は3-トリフルオロプロピルオキシであることがさらにより好ましく;
いずれも水素又はメトキシであるか、一方が水素であり且つ他方がヒドロキシル又はメトキシであるか、或いは一方がヒドロキシルであり且つ他方がフェニル、メトキシ、エトキシ、n-ブチルオキシ、フェニルメトキシ(すなわちベンジルオキシ)、2-フェニルエトキシ、3-フェニルプロピルオキシ、4-フェニルブチルオキシ、3,3-ビフェニルプロピルオキシ、3-ヒドロキシルプロピルオキシ、3-クロロプロピルオキシ、n-プロピルオキシ、n-ノニルオキシ又は4-トリフルオロブチルオキシであることが特に好ましい。
【0024】
式(I)において、R6及びR7は、互いに独立して、水素、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素又はヨウ素)、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のアルキル、置換若しくは非置換のアルケニル、置換若しくは非置換のアルキニル、置換若しくは非置換のシクロアルキル、置換若しくは非置換のシクロアルケニル、置換若しくは非置換のシクロアルキニル、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のシクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換のアリール、置換若しくは非置換のアリールアルキル、置換若しくは非置換のヘテロアリール、置換若しくは非置換のヘテロアリールアルキル、置換若しくは非置換のアルコキシ、置換若しくは非置換のシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のアリールオキシ、置換若しくは非置換のアリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のアリールアルケニルオキシ、置換若しくは非置換のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換のヘテロアリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のアルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のシクロアルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のアシル、置換若しくは非置換のアルキルカルボニルオキシ、置換若しくは非置換のアリールカルボニルオキシ、置換若しくは非置換のカルバモイル、置換若しくは非置換のアルキルスルホニル、置換若しくは非置換のアリールスルホニル、置換若しくは非置換のアルキルスルファニル、置換若しくは非置換のアリールスルファニル、又は置換若しくは非置換のアミノであるか、或いは、一緒になって-O-CH2-O-を形成している。
R6及びR7は、互いに独立して、水素、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素又はヨウ素)、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のC1~C9アルキル、置換若しくは非置換のC2~C9アルケニル、置換若しくは非置換のC2~C9アルキニル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルキル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルケニル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルキニル、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のC7~C20シクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルキル-C1~C9アルキル、置換若しくは非置換のC6~C18アリール、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルキル、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール-C1~C9アルキル、置換若しくは非置換のC1~C9アルコキシ、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルコキシ、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のC6~C18アリールオキシ、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルケニルオキシ、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール-C1~C9アルキルオキシ、置換若しくは非置換のC1~C9アルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のC1~C20アシル、置換若しくは非置換のC1~C9アルキルカルボニルオキシ、置換若しくは非置換のC6~C18アリールカルボニルオキシ、置換若しくは非置換のカルバモイル、置換若しくは非置換のC1~C9アルキルスルホニル、置換若しくは非置換のC6~C18アリールスルホニル、置換若しくは非置換のC1~C9アルキルスルファニル、置換若しくは非置換のC6~C18アリールスルファニル、又は置換若しくは非置換のアミノであるか、或いは、一緒になって-O-CH2-O-を形成していることが好ましく;
互いに独立して、水素、ヒドロキシル、非置換若しくはハロゲン(フッ素、塩素、臭素又はヨウ素)、ヒドロキシル及びカルボキシルからなる群より選択される少なくとも1個の一価基で置換されたC1~C9アルコキシ、又は非置換若しくはハロゲン(フッ素、塩素、臭素又はヨウ素)、ヒドロキシル及びカルボキシルからなる群より選択される少なくとも1個の一価基で置換されたC7~C20アリールアルキルオキシであるか、或いは、一緒になって-O-CH2-O-を形成していることがより好ましく;
互いに独立して、水素又はメトキシであることがさらに好ましく;
いずれも水素又はメトキシであるか、或いは一方が水素であり且つ他方がメトキシであることが特に好ましい。
【0025】
式(I)において、前記基が置換されている場合、該置換基は、それぞれ独立して、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素又はヨウ素)、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のアルキル、置換若しくは非置換のアルケニル、置換若しくは非置換のアルキニル、置換若しくは非置換のシクロアルキル、置換若しくは非置換のシクロアルケニル、置換若しくは非置換のシクロアルキニル、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のシクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換のアリール、置換若しくは非置換のアリールアルキル、置換若しくは非置換のヘテロアリール、置換若しくは非置換のヘテロアリールアルキル、置換若しくは非置換のアルコキシ、置換若しくは非置換のシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のアリールオキシ、置換若しくは非置換のアリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換のヘテロアリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のアルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のシクロアルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のアシル、置換若しくは非置換のアシルオキシ、置換若しくは非置換のアミノ、及びオキソ(C=O)からなる群より選択される少なくとも1個の一価基又は二価基であることが好ましく、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素又はヨウ素)、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のC1~C6アルキル、置換若しくは非置換のC2~C6アルケニル、置換若しくは非置換のC2~C6アルキニル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルキル、置換若しくは非置換のC4~C6シクロアルケニル、置換若しくは非置換のC4~C6シクロアルキニル、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のC7~C11シクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルキル-C1~C6アルキル、置換若しくは非置換のC6~C18アリール、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルキル、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール-C1~C6アルキル、置換若しくは非置換のC1~C6アルコキシ、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルコキシ、置換若しくは非置換の3~6員ヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のC6~C18アリールオキシ、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール-C1~C6アルキルオキシ、置換若しくは非置換のC1~C6アルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のC1~C20アシル、置換若しくは非置換のC1~C20アシルオキシ、置換若しくは非置換のアミノ、及びオキソ(C=O)からなる群より選択される少なくとも1個の一価基又は二価基であることがより好ましく、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のC1~C6アルコキシ、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルコキシ、置換若しくは非置換の3~6員ヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のC6~C18アリールオキシ、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール-C1~C6アルキルオキシ、及び置換若しくは非置換のC1~C20アシルオキシからなる群より選択される少なくとも1個の一価基であることがさらに好ましく、ヒドロキシルであることが特に好ましい。前記一価基が置換されている場合、該置換基は、前記一価基又は二価基からさらに選択されることが好ましく、非置換の前記一価基又は二価基からさらに選択されることがより好ましい。
【0026】
式(I)で表される化合物は、前記で例示されるRN1、R1、R2、R3、R4、R5、R6及びR7の任意の組み合わせによって定義される化合物を包含することができる。
【0027】
特定の一実施形態において、式(I)で表される化合物は、RN1がメチルであり、R1、R2及びR3が水素であり、R4及びR5がヒドロキシルであり、且つR6及びR7が水素である場合を除く、前記で例示されるRN1、R1、R2、R3、R4、R5、R6及びR7の任意の組み合わせによって定義される化合物を包含する。前記の組み合わせの場合、式(I)で表される化合物は、アポモルフィンを包含する。前記の組み合わせの場合を除く式(I)で表される化合物は、ドパミン受容体結合活性を実質的に有さないことが判明した。アポモルフィンは、ドパミン受容体アゴニストとして、オフ期のパーキンソン病に対する治療薬として承認され、臨床において使用されている。しかしながら、ドパミン受容体アゴニストは、該ドパミン受容体アゴニスト活性に起因する催吐作用のような副作用を伴う可能性がある。これに対し、前記の組み合わせの場合を除く式(I)で表される化合物は、ドパミン受容体結合活性を実質的に有さないことから、前記催吐作用のような副作用の少ない医薬の有効成分として使用することができる。
【0028】
RN1、R1、R2、R3、R4、R5、R6及びR7が前記で例示した基である場合、式(I)で表される化合物は、高いフェロトーシス阻害効果を発現することができる。
【0029】
好ましくは、式(I)で表される化合物は、
RN1が、メチルであり;
R1が、水素、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素又はヨウ素)、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のC1~C9アルキル、置換若しくは非置換のC2~C9アルケニル、置換若しくは非置換のC2~C9アルキニル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルキル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルケニル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルキニル、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のC7~C20シクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルキル-C1~C9アルキル、置換若しくは非置換のC6~C18アリール、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルキル、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール-C1~C9アルキル、置換若しくは非置換のC1~C9アルコキシ、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルコキシ、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のC6~C18アリールオキシ、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルケニルオキシ、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール-C1~C9アルキルオキシ、置換若しくは非置換のC1~C9アルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のC1~C20アシル、置換若しくは非置換のC1~C9アルキルカルボニルオキシ、置換若しくは非置換のC6~C18アリールカルボニルオキシ、置換若しくは非置換のカルバモイル、置換若しくは非置換のC1~C9アルキルスルホニル、置換若しくは非置換のC6~C18アリールスルホニル、置換若しくは非置換のC1~C9アルキルスルファニル、置換若しくは非置換のC6~C18アリールスルファニル、又は置換若しくは非置換のアミノであり;
R2及びR3が、互いに独立して、水素、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素又はヨウ素)、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のC1~C9アルキル、置換若しくは非置換のC2~C9アルケニル、置換若しくは非置換のC2~C9アルキニル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルキル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルケニル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルキニル、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のC7~C20シクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルキル-C1~C9アルキル、置換若しくは非置換のC6~C18アリール、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルキル、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール-C1~C9アルキル、置換若しくは非置換のC1~C9アルコキシ、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルコキシ、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のC6~C18アリールオキシ、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルケニルオキシ、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール-C1~C9アルキルオキシ、置換若しくは非置換のC1~C9アルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のC1~C20アシル、置換若しくは非置換のC1~C9アルキルカルボニルオキシ、置換若しくは非置換のC6~C18アリールカルボニルオキシ、置換若しくは非置換のカルバモイル、置換若しくは非置換のC1~C9アルキルスルホニル、置換若しくは非置換のC6~C18アリールスルホニル、置換若しくは非置換のC1~C9アルキルスルファニル、置換若しくは非置換のC6~C18アリールスルファニル、又は置換若しくは非置換のアミノであるか、或いは
R2及びR3が、一緒になって-O-CH2-O-を形成しており;
R4及びR5が、互いに独立して、水素、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素又はヨウ素)、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のC1~C9アルキル、置換若しくは非置換のC2~C9アルケニル、置換若しくは非置換のC2~C9アルキニル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルキル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルケニル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルキニル、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のC7~C20シクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルキル-C1~C9アルキル、置換若しくは非置換のC6~C18アリール、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルキル、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール-C1~C9アルキル、置換若しくは非置換のC1~C9アルコキシ、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルコキシ、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のC6~C18アリールオキシ、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルケニルオキシ、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール-C1~C9アルキルオキシ、置換若しくは非置換のC1~C9アルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のC1~C20アシル、置換若しくは非置換のC1~C9アルキルカルボニルオキシ、置換若しくは非置換のC6~C18アリールカルボニルオキシ、置換若しくは非置換のカルバモイル、置換若しくは非置換のC1~C9アルキルスルホニル、置換若しくは非置換のC6~C18アリールスルホニル、置換若しくは非置換のC1~C9アルキルスルファニル、置換若しくは非置換のC6~C18アリールスルファニル、又は置換若しくは非置換のアミノであるか、或いは
R4及びR5が、一緒になって-O-CH2-O-を形成しており;
R6及びR7が、互いに独立して、水素、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素又はヨウ素)、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のC1~C9アルキル、置換若しくは非置換のC2~C9アルケニル、置換若しくは非置換のC2~C9アルキニル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルキル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルケニル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルキニル、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のC7~C20シクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルキル-C1~C9アルキル、置換若しくは非置換のC6~C18アリール、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルキル、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール-C1~C9アルキル、置換若しくは非置換のC1~C9アルコキシ、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルコキシ、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のC6~C18アリールオキシ、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルケニルオキシ、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール-C1~C9アルキルオキシ、置換若しくは非置換のC1~C9アルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のC1~C20アシル、置換若しくは非置換のC1~C9アルキルカルボニルオキシ、置換若しくは非置換のC6~C18アリールカルボニルオキシ、置換若しくは非置換のカルバモイル、置換若しくは非置換のC1~C9アルキルスルホニル、置換若しくは非置換のC6~C18アリールスルホニル、置換若しくは非置換のC1~C9アルキルスルファニル、置換若しくは非置換のC6~C18アリールスルファニル、又は置換若しくは非置換のアミノであるか、或いは
R6及びR7が、一緒になって-O-CH2-O-を形成しており;
但し、RN1がメチルであり、R1、R2及びR3が水素であり、R4及びR5がヒドロキシルであり、且つR6及びR7が水素である場合を除き;
前記基が置換されている場合、該置換基は、それぞれ独立して、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素又はヨウ素)、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のC1~C6アルキル、置換若しくは非置換のC2~C6アルケニル、置換若しくは非置換のC2~C6アルキニル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルキル、置換若しくは非置換のC4~C6シクロアルケニル、置換若しくは非置換のC4~C6シクロアルキニル、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のC7~C11シクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルキル-C1~C6アルキル、置換若しくは非置換のC6~C18アリール、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルキル、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール-C1~C6アルキル、置換若しくは非置換のC1~C6アルコキシ、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルコキシ、置換若しくは非置換の3~6員ヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のC6~C18アリールオキシ、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール-C1~C6アルキルオキシ、置換若しくは非置換のC1~C6アルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のC1~C20アシル、置換若しくは非置換のC1~C20アシルオキシ、置換若しくは非置換のアミノ、及びオキソ(C=O)からなる群より選択される少なくとも1個の一価基又は二価基である。
【0030】
より好ましくは、式(I)で表される化合物は、
RN1が、メチルであり;
R1が、水素、又は置換若しくは非置換のC1~C9アルコキシであり;
R2及びR3が、互いに独立して、水素、ヒドロキシル、非置換若しくはハロゲン(フッ素、塩素、臭素又はヨウ素)、ヒドロキシル及びカルボキシルからなる群より選択される少なくとも1個の一価基で置換されたC1~C9アルコキシ、又は非置換若しくはハロゲン(フッ素、塩素、臭素又はヨウ素)、ヒドロキシル及びカルボキシルからなる群より選択される少なくとも1個の一価基で置換されたC7~C20アリールアルキルオキシであるか、或いは
R2及びR3が、一緒になって-O-CH2-O-を形成しており;
R4及びR5が、互いに独立して、水素、ヒドロキシル、非置換若しくはハロゲン(フッ素、塩素、臭素又はヨウ素)、ヒドロキシル及びカルボキシルからなる群より選択される少なくとも1個の一価基で置換されたC6~C18アリール、非置換若しくはハロゲン(フッ素、塩素、臭素又はヨウ素)、ヒドロキシル及びカルボキシルからなる群より選択される少なくとも1個の一価基で置換されたC1~C9アルコキシ、又は非置換若しくはハロゲン(フッ素、塩素、臭素又はヨウ素)、ヒドロキシル及びカルボキシルからなる群より選択される少なくとも1個の一価基で置換されたC7~C20アリールアルキルオキシであるか、或いは
R4及びR5が、一緒になって-O-CH2-O-を形成しており;
R6及びR7が、互いに独立して、水素、ヒドロキシル、非置換若しくはハロゲン(フッ素、塩素、臭素又はヨウ素)、ヒドロキシル及びカルボキシルからなる群より選択される少なくとも1個の一価基で置換されたC1~C9アルコキシ、又は非置換若しくはハロゲン(フッ素、塩素、臭素又はヨウ素)、ヒドロキシル及びカルボキシルからなる群より選択される少なくとも1個の一価基で置換されたC7~C20アリールアルキルオキシであるか、或いは
R6及びR7が、一緒になって-O-CH2-O-を形成しており;
但し、RN1がメチルであり、R1、R2及びR3が水素であり、R4及びR5がヒドロキシルであり、且つR6及びR7が水素である場合を除き;
前記基が置換されている場合、該置換基は、それぞれ独立して、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素又はヨウ素)、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のC1~C6アルキル、置換若しくは非置換のC2~C6アルケニル、置換若しくは非置換のC2~C6アルキニル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルキル、置換若しくは非置換のC4~C6シクロアルケニル、置換若しくは非置換のC4~C6シクロアルキニル、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のC7~C11シクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルキル-C1~C6アルキル、置換若しくは非置換のC6~C18アリール、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルキル、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール-C1~C6アルキル、置換若しくは非置換のC1~C6アルコキシ、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルコキシ、置換若しくは非置換の3~6員ヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のC6~C18アリールオキシ、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール-C1~C6アルキルオキシ、置換若しくは非置換のC1~C6アルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のC1~C20アシル、置換若しくは非置換のC1~C20アシルオキシ、置換若しくは非置換のアミノ、及びオキソ(C=O)からなる群より選択される少なくとも1個の一価基又は二価基である。
【0031】
さらに好ましくは、式(I)で表される化合物は、
RN1が、メチルであり;
R1が、水素、又は非置換若しくはハロゲン(フッ素、塩素、臭素又はヨウ素)、ヒドロキシル及びカルボキシルからなる群より選択される少なくとも1個の一価基で置換されたC1~C9アルコキシであり;
R2及びR3が、互いに独立して、水素、ヒドロキシル、又は非置換若しくはハロゲン(フッ素、塩素、臭素又はヨウ素)、ヒドロキシル及びカルボキシルからなる群より選択される少なくとも1個の一価基で置換されたC1~C9アルコキシであるか、或いは
R2及びR3が、一緒になって-O-CH2-O-を形成しており;
R4及びR5が、互いに独立して、水素、ヒドロキシル、フェニル、メトキシ、エトキシ、n-ブチルオキシ、フェニルメトキシ(すなわちベンジルオキシ)、2-フェニルエトキシ、3-フェニルプロピルオキシ、4-フェニルブチルオキシ、3,3-ビフェニルプロピルオキシ、3-ヒドロキシルプロピルオキシ、3-クロロプロピルオキシ、n-プロピルオキシ、n-ノニルオキシ又は4-トリフルオロブチルオキシであり;
R6及びR7が、互いに独立して、水素又はメトキシであり;
但し、RN1がメチルであり、R1、R2及びR3が水素であり、R4及びR5がヒドロキシルであり、且つR6及びR7が水素である場合を除く。
【0032】
さらにより好ましくは、式(I)で表される化合物は、
RN1が、メチルであり;
R1が、水素、又はメトキシであり;
R2及びR3が、いずれも水素であるか、いずれもメトキシであるか、一方がヒドロキシルであり且つ他方がメトキシであるか、或いは、一緒になって-O-CH2-O-を形成しており;
R4及びR5が、いずれも水素又はメトキシであるか、一方が水素であり且つ他方がヒドロキシル又はメトキシであるか、或いは一方がヒドロキシルであり且つ他方がフェニル、メトキシ、エトキシ、n-ブチルオキシ、フェニルメトキシ(すなわちベンジルオキシ)、2-フェニルエトキシ、3-フェニルプロピルオキシ、4-フェニルブチルオキシ、3,3-ビフェニルプロピルオキシ、3-ヒドロキシルプロピルオキシ、3-クロロプロピルオキシ、n-プロピルオキシ、n-ノニルオキシ、4-トリフルオロブチルオキシ、イソプロピルオキシ、2-メチルプロピルオキシ、1-メチルプロピルオキシ、クロロメトキシ、2-クロロエトキシ、2-トリフルオロエトキシ又は3-トリフルオロプロピルオキシであり;
R6及びR7が、いずれも水素又はメトキシであるか、或いは一方が水素であり且つ他方がメトキシである。
【0033】
或いは、さらにより好ましくは、式(I)で表される化合物は、
RN1が、メチルであり;
R1が、水素であり;
R2及びR3が、いずれも水素であり;
R4が、ヒドロキシルであり;
R5が、フェニル、エトキシ、n-ブチルオキシ、フェニルメトキシ(すなわちベンジルオキシ)、2-フェニルエトキシ、3-フェニルプロピルオキシ、4-フェニルブチルオキシ、3,3-ビフェニルプロピルオキシ、3-ヒドロキシルプロピルオキシ、3-クロロプロピルオキシ、n-プロピルオキシ、n-ノニルオキシ、4-トリフルオロブチルオキシ、イソプロピルオキシ、2-メチルプロピルオキシ、1-メチルプロピルオキシ、クロロメトキシ、2-クロロエトキシ、2-トリフルオロエトキシ又は3-トリフルオロプロピルオキシであり;
R6及びR7が、いずれも水素である。
【0034】
特に好ましくは、式(I)で表される化合物は、
RN1が、メチルであり;
R1が、水素、又はメトキシであり;
R2及びR3が、いずれも水素であるか、いずれもメトキシであるか、一方がヒドロキシルであり且つ他方がメトキシであるか、或いは、一緒になって-O-CH2-O-を形成しており;
R4及びR5が、いずれも水素又はメトキシであるか、一方が水素であり且つ他方がヒドロキシル又はメトキシであるか、或いは一方がヒドロキシルであり且つ他方がフェニル、メトキシ、エトキシ、n-ブチルオキシ、フェニルメトキシ(すなわちベンジルオキシ)、2-フェニルエトキシ、3-フェニルプロピルオキシ、4-フェニルブチルオキシ、3,3-ビフェニルプロピルオキシ、3-ヒドロキシルプロピルオキシ、3-クロロプロピルオキシ、n-プロピルオキシ、n-ノニルオキシ又は4-トリフルオロブチルオキシであり;
R6及びR7が、いずれも水素又はメトキシであるか、或いは一方が水素であり且つ他方がメトキシである。
【0035】
或いは、特に好ましくは、式(I)で表される化合物は、
RN1が、メチルであり;
R1が、水素であり;
R2及びR3が、いずれも水素であり;
R4が、ヒドロキシルであり;
R5が、フェニル、エトキシ、n-ブチルオキシ、フェニルメトキシ(すなわちベンジルオキシ)、2-フェニルエトキシ、3-フェニルプロピルオキシ、4-フェニルブチルオキシ、3,3-ビフェニルプロピルオキシ、3-ヒドロキシルプロピルオキシ、3-クロロプロピルオキシ、n-プロピルオキシ、n-ノニルオキシ又は4-トリフルオロブチルオキシであり;
R6及びR7が、いずれも水素である。
【0036】
より特に好ましくは、式(I)で表される化合物は、
RN1が、メチルであり、R1が、水素であり、R2及びR3が、一緒になって-O-CH2-O-を形成しており、R4及びR5が、いずれも水素であり、且つR6及びR7が、いずれもメトキシであるか(化合物D8)、或いは
RN1が、メチルであり、R1が、水素であり、R2及びR3が、一緒になって-O-CH2-O-を形成しており、R4及びR5が、いずれも水素であり、R6が、水素であり、且つR7が、メトキシであるか(化合物D9)、或いは
RN1が、メチルであり、R1が、水素であり、R2及びR3が、一緒になって-O-CH2-O-を形成しており、R4が、ヒドロキシルであり、R5が、水素であり、R6が、メトキシであり、且つR7が、水素であるか(化合物D10)、或いは
RN1が、メチルであり、R1が、水素であり、R2及びR3が、一緒になって-O-CH2-O-を形成しており、R4及びR5が、いずれも水素であり、且つR6及びR7が、いずれも水素であるか(化合物D18)、或いは
RN1が、メチルであり、R1が、メトキシであり、R2及びR3が、一緒になって-O-CH2-O-を形成しており、R4が、水素であり、R5が、メトキシであり、R6が、メトキシであり、且つR7が、水素であるか(化合物D20)、或いは
RN1が、メチルであり、R1が、水素であり、R2が、メトキシであり、R3が、ヒドロキシルであり、R4及びR5が、いずれもメトキシであり、且つR6及びR7が、いずれも水素であるか(化合物D26)、或いは
RN1が、メチルであり、R1が、水素であり、R2及びR3が、いずれも水素であり、R4が、ヒドロキシルであり、R5が、n-ブチルオキシであり、且つR6及びR7が、いずれも水素であるか(化合物D36)、或いは
RN1が、メチルであり、R1が、水素であり、R2及びR3が、いずれも水素であり、R4が、ヒドロキシルであり、R5が、3-フェニルプロピルオキシであり、且つR6及びR7が、いずれも水素であるか(化合物D37)、或いは
RN1が、メチルであり、R1が、水素であり、R2及びR3が、いずれも水素であり、R4が、ヒドロキシルであり、R5が、3-ヒドロキシルプロピルオキシであり、且つR6及びR7が、いずれも水素であるか(化合物D38)、或いは
RN1が、メチルであり、R1が、水素であり、R2及びR3が、いずれも水素であり、R4が、ヒドロキシルであり、R5が、3-クロロプロピルオキシであり、且つR6及びR7が、いずれも水素であるか(化合物D39)、或いは
RN1が、メチルであり、R1が、水素であり、R2及びR3が、いずれも水素であり、R4が、ヒドロキシルであり、R5が、n-プロピルオキシであり、且つR6及びR7が、いずれも水素であるか(化合物D40)、或いは
RN1が、メチルであり、R1が、水素であり、R2及びR3が、いずれも水素であり、R4が、ヒドロキシルであり、R5が、n-ノニルオキシであり、且つR6及びR7が、いずれも水素であるか(化合物D41)、或いは
RN1が、メチルであり、R1が、水素であり、R2及びR3が、いずれも水素であり、R4が、ヒドロキシルであり、R5が、4-トリフルオロブチルオキシであり、且つR6及びR7が、いずれも水素であるか(化合物D42)、或いは
RN1が、メチルであり、R1が、水素であり、R2及びR3が、いずれもメトキシであり、R4が、ヒドロキシルであり、R5が、メトキシであり、且つR6及びR7が、いずれも水素であるか(化合物D43)、或いは
RN1が、メチルであり、R1が、水素であり、R2及びR3が、いずれも水素であり、R4が、ヒドロキシルであり、R5が、フェニルであり、且つR6及びR7が、いずれも水素であるか(化合物D45)、或いは
RN1が、メチルであり、R1が、水素であり、R2及びR3が、いずれも水素であり、R4が、ヒドロキシルであり、R5が、フェニルメチルオキシ(すなわちベンジルオキシ)であり、且つR6及びR7が、いずれも水素であるか(化合物D47)、或いは
RN1が、メチルであり、R1が、水素であり、R2及びR3が、いずれも水素であり、R4が、ヒドロキシルであり、R5が、2-フェニルエチルオキシであり、且つR6及びR7が、いずれも水素であるか(化合物D48)、或いは
RN1が、メチルであり、R1が、水素であり、R2及びR3が、いずれも水素であり、R4が、ヒドロキシルであり、R5が、4-フェニルブチルオキシであり、且つR6及びR7が、いずれも水素であるか(化合物D50)、或いは
RN1が、メチルであり、R1が、水素であり、R2及びR3が、いずれも水素であり、R4が、ヒドロキシルであり、R5が、3,3-ビフェニルプロピルオキシであり、且つR6及びR7が、いずれも水素であるか(化合物D54)、或いは
RN1が、メチルであり、R1が、水素であり、R2及びR3が、いずれも水素であり、R4が、ヒドロキシルであり、R5が、エチルオキシであり、且つR6及びR7が、いずれも水素である(化合物D55)。
【0037】
さらにより特に好ましくは、式(I)で表される化合物は、
RN1が、メチルであり、R1が、水素であり、R2及びR3が、一緒になって-O-CH2-O-を形成しており、R4及びR5が、いずれも水素であり、且つR6及びR7が、いずれもメトキシであるか(化合物D8)、或いは
RN1が、メチルであり、R1が、水素であり、R2及びR3が、いずれも水素であり、R4が、ヒドロキシルであり、R5が、n-ブチルオキシであり、且つR6及びR7が、いずれも水素であるか(化合物D36)、或いは
RN1が、メチルであり、R1が、水素であり、R2及びR3が、いずれも水素であり、R4が、ヒドロキシルであり、R5が、3-フェニルプロピルオキシであり、且つR6及びR7が、いずれも水素であるか(化合物D37)、或いは
RN1が、メチルであり、R1が、水素であり、R2及びR3が、いずれも水素であり、R4が、ヒドロキシルであり、R5が、3-ヒドロキシルプロピルオキシであり、且つR6及びR7が、いずれも水素であるか(化合物D38)、或いは
RN1が、メチルであり、R1が、水素であり、R2及びR3が、いずれも水素であり、R4が、ヒドロキシルであり、R5が、n-プロピルオキシであり、且つR6及びR7が、いずれも水素であるか(化合物D40)、或いは
RN1が、メチルであり、R1が、水素であり、R2及びR3が、いずれも水素であり、R4が、ヒドロキシルであり、R5が、4-トリフルオロブチルオキシであり、且つR6及びR7が、いずれも水素であるか(化合物D42)、或いは
RN1が、メチルであり、R1が、水素であり、R2及びR3が、いずれも水素であり、R4が、ヒドロキシルであり、R5が、フェニルであり、且つR6及びR7が、いずれも水素であるか(化合物D45)、或いは
RN1が、メチルであり、R1が、水素であり、R2及びR3が、いずれも水素であり、R4が、ヒドロキシルであり、R5が、フェニルメトキシ(すなわちベンジルオキシ)であり、且つR6及びR7が、いずれも水素であるか(化合物D47)、或いは
RN1が、メチルであり、R1が、水素であり、R2及びR3が、いずれも水素であり、R4が、ヒドロキシルであり、R5が、2-フェニルエトキシであり、且つR6及びR7が、いずれも水素であるか(化合物D48)、或いは
RN1が、メチルであり、R1が、水素であり、R2及びR3が、いずれも水素であり、R4が、ヒドロキシルであり、R5が、4-フェニルブチルオキシであり、且つR6及びR7が、いずれも水素であるか(化合物D50)、或いは
RN1が、メチルであり、R1が、水素であり、R2及びR3が、いずれも水素であり、R4が、ヒドロキシルであり、R5が、3,3-ビフェニルプロピルオキシであり、且つR6及びR7が、いずれも水素であるか(化合物D54)、或いは
RN1が、メチルであり、R1が、水素であり、R2及びR3が、いずれも水素であり、R4が、ヒドロキシルであり、R5が、エトキシであり、且つR6及びR7が、いずれも水素である(化合物D55)。
【0038】
特定の一実施形態において、式(I)で表される化合物は、RN1が、メチルであり、R1が、水素であり、R2及びR3が、いずれも水素であり、R4が、ヒドロキシルであり、R5が、メトキシであり、且つR6及びR7が、いずれも水素である場合を除く、前記で例示されるRN1、R1、R2、R3、R4、R5、R6及びR7の任意の組み合わせによって定義される化合物を包含する。
【0039】
式(I)で表される化合物が前記特徴を有する場合、該化合物は、特に高いフェロトーシス阻害効果を発現することができる。
【0040】
本態様のフェロトーシス阻害剤の有効成分である式(I)で表される化合物は、該化合物自体だけでなく、その塩も包含する。式(I)で表される化合物の塩としては、限定するものではないが、例えば、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、若しくは置換若しくは非置換のアンモニウムイオンのようなカチオンとの塩、又は塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、炭酸若しくはリン酸のような無機酸、又はギ酸、酢酸、マレイン酸、フマル酸、安息香酸、アスコルビン酸、コハク酸、ビスメチレンサリチル酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、プロピオン酸、酒石酸、サリチル酸、クエン酸、グルコン酸、アスパラギン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、イタコン酸、グリコール酸、p-アミノ安息香酸、グルタミン酸、ベンゼンスルホン酸、シクロヘキシルスルファミン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、イセチオン酸、p-トルエンスルホン酸若しくはナフタレンスルホン酸のような有機酸アニオンとの塩が好ましい。式(I)で表される化合物が前記の塩の形態である場合であっても、フェロトーシス阻害効果を発現することができる。
【0041】
本態様のフェロトーシス阻害剤の有効成分である式(I)で表される化合物は、前記化合物自体だけでなく、該化合物又はその塩の溶媒和物も包含する。前記化合物又はその塩と溶媒和物を形成し得る溶媒としては、限定するものではないが、例えば、水、或いは、低級アルコール(例えば、メタノール、エタノール若しくは2-プロパノール(イソプロピルアルコール)のような1~6の炭素原子数を有するアルコール)、高級アルコール(例えば、1-ヘプタノール若しくは1-オクタノールのような7以上の炭素原子数を有するアルコール)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、酢酸、エタノールアミン又は酢酸エチルのような有機溶媒が好ましい。式(I)で表される化合物又はその塩が前記の溶媒との溶媒和物の形態である場合であっても、フェロトーシス阻害効果を発現することができる。
【0042】
本態様のフェロトーシス阻害剤の有効成分である式(I)で表される化合物は、前記化合物自体だけでなく、その保護形態も包含する。本明細書において、「保護形態」は、1個又は複数の官能基(例えばアミノ基、ヒドロキシル基又はカルボン酸基)に保護基が導入された形態を意味する。本明細書において、前記各式で表される化合物の保護形態を、前記各式で表される化合物の保護誘導体と記載する場合がある。また、本明細書において、「保護基」は、望ましくない反応の進行を防止するために、特定の官能基に導入される基であって、特定の反応条件において定量的に除去され、且つそれ以外の反応条件においては実質的に安定、即ち反応不活性である基を意味する。前記化合物の保護形態を形成し得る保護基としては、限定するものではないが、例えば、アミノ基の保護基の場合、t-ブトキシカルボニル(Boc)、2-ブロモベンジルオキシカルボニル(BrZ)、又は9-フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)が、ヒドロキシル基の保護基の場合、シリル(例えば、t-ブチルジメチルシリル(TBS)、トリイソプロピルシリル(TIPS)若しくはtert-ブチルジフェニルシリル(TBDPS))、又はアルコキシ(例えば、メトキシメトキシ(MOM)若しくはメトキシ(Me))が、カルボン酸基の保護基の場合、アルキルエステル(例えばメチル、エチル若しくはイソプロピルエステル)、アリールアルキルエステル(例えばベンジルエステル)、又はアミド(例えばオキサゾリジノン類とのアミド)が、それぞれ好ましい。前記保護基による保護化及び脱保護化は、公知の反応条件に基づき、当業者が適宜実施することができる。式(I)で表される化合物が前記の保護基による保護形態である場合であっても、フェロトーシス阻害効果を実質的に低下させることなく、該化合物を使用することができる場合がある。
【0043】
本態様のフェロトーシス阻害剤の有効成分である式(I)で表される化合物が1個又は複数個の互変異性体を有する場合、前記化合物は、該化合物の個々の互変異性体の形態も包含する。
【0044】
また、本態様のフェロトーシス阻害剤の有効成分である式(I)で表される化合物が1個又は複数個の立体中心(キラル中心)を有する場合、前記化合物は、該化合物の個々のエナンチオマー及びジアステレオマー、並びにラセミ体のようなそれらの混合物も包含する。
【0045】
式(I)で表される化合物は、市販品を購入等して準備してもよく、又は公知文献に基づき自ら調製することにより準備してもよい。
【0046】
前記特徴を有することにより、本態様のフェロトーシス阻害剤の有効成分である式(I)で表される化合物は、フェロトーシス阻害効果を発現することができる。
【0047】
<2. 新規化合物>
本発明の一態様のフェロトーシス阻害剤の有効成分である式(I)で表される化合物は、新規化合物を包含する。それ故、本発明の別の一態様は、新規化合物である式(I-1):
【化4】
で表される化合物若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物に関する。
【0048】
式(I-1)において、RN1は、メチルである。
【0049】
式(I-1)において、R1は、水素である。
【0050】
式(I-1)において、R2及びR3は、いずれも水素である。
【0051】
式(I-1)において、R4は、ヒドロキシルである。
【0052】
式(I-1)において、R5は、非置換若しくはハロゲン(フッ素、塩素、臭素又はヨウ素)、ヒドロキシル及びカルボキシルからなる群より選択される少なくとも1個の一価基で置換されたC1~C9アルコキシ、又は非置換若しくはハロゲン(フッ素、塩素、臭素又はヨウ素)、ヒドロキシル及びカルボキシルからなる群より選択される少なくとも1個の一価基で置換されたC7~C20アリールアルキルオキシである。
R5は、エトキシ、n-ブチルオキシ、2-フェニルエトキシ、3-フェニルプロピルオキシ、4-フェニルブチルオキシ、3,3-ビフェニルプロピルオキシ、3-ヒドロキシルプロピルオキシ、3-クロロプロピルオキシ、n-プロピルオキシ、n-ノニルオキシ又は4-トリフルオロブチルオキシであることが好ましい。
【0053】
式(I-1)において、R6及びR7は、いずれも水素である。
【0054】
式(I-1)で表される化合物は、前記で例示されるRN1、R1、R2、R3、R4、R5、R6及びR7の任意の組み合わせによって定義される化合物を包含することができる。
【0055】
RN1、R1、R2、R3、R4、R5、R6及びR7が前記で例示した基である場合、式(I-1)で表される化合物は、高いフェロトーシス阻害効果を発現することができる。
【0056】
好ましくは、式(I-1)で表される化合物は、
RN1が、メチルであり、
R1が、水素であり、
R2及びR3が、いずれも水素であり、
R4が、ヒドロキシルであり、
R5が、非置換若しくはハロゲン(フッ素、塩素、臭素又はヨウ素)、ヒドロキシル及びカルボキシルからなる群より選択される少なくとも1個の一価基で置換されたC1~C9アルコキシ、又は非置換若しくはハロゲン(フッ素、塩素、臭素又はヨウ素)、ヒドロキシル及びカルボキシルからなる群より選択される少なくとも1個の一価基で置換されたC7~C20アリールアルキルオキシであり、
R6及びR7が、いずれも水素である。
【0057】
より好ましくは、式(I-1)で表される化合物は、
RN1が、メチルであり、
R1が、水素であり、
R2及びR3が、いずれも水素であり、
R4が、ヒドロキシルであり、
R5が、エトキシ、n-ブチルオキシ、2-フェニルエトキシ、3-フェニルプロピルオキシ、4-フェニルブチルオキシ、3,3-ビフェニルプロピルオキシ、3-ヒドロキシルプロピルオキシ、3-クロロプロピルオキシ、n-プロピルオキシ、n-ノニルオキシ又は4-トリフルオロブチルオキシであり、
R6及びR7が、いずれも水素である。
【0058】
さらにより特に好ましくは、式(I-1)で表される化合物は、
RN1が、メチルであり、R1が、水素であり、R2及びR3が、いずれも水素であり、R4が、ヒドロキシルであり、R5が、n-ブチルオキシであり、且つR6及びR7が、いずれも水素であるか(化合物D36)、或いは
RN1が、メチルであり、R1が、水素であり、R2及びR3が、いずれも水素であり、R4が、ヒドロキシルであり、R5が、3-フェニルプロピルオキシであり、且つR6及びR7が、いずれも水素であるか(化合物D37)、或いは
RN1が、メチルであり、R1が、水素であり、R2及びR3が、いずれも水素であり、R4が、ヒドロキシルであり、R5が、3-ヒドロキシルプロピルオキシであり、且つR6及びR7が、いずれも水素であるか(化合物D38)、或いは
RN1が、メチルであり、R1が、水素であり、R2及びR3が、いずれも水素であり、R4が、ヒドロキシルであり、R5が、3-クロロプロピルオキシであり、且つR6及びR7が、いずれも水素であるか(化合物D39)、或いは
RN1が、メチルであり、R1が、水素であり、R2及びR3が、いずれも水素であり、R4が、ヒドロキシルであり、R5が、n-プロピルオキシであり、且つR6及びR7が、いずれも水素であるか(化合物D40)、或いは
RN1が、メチルであり、R1が、水素であり、R2及びR3が、いずれも水素であり、R4が、ヒドロキシルであり、R5が、n-ノニルオキシであり、且つR6及びR7が、いずれも水素であるか(化合物D41)、或いは
RN1が、メチルであり、R1が、水素であり、R2及びR3が、いずれも水素であり、R4が、ヒドロキシルであり、R5が、4-トリフルオロブチルオキシであり、且つR6及びR7が、いずれも水素であるか(化合物D42)、或いは
RN1が、メチルであり、R1が、水素であり、R2及びR3が、いずれも水素であり、R4が、ヒドロキシルであり、R5が、2-フェニルエチルオキシであり、且つR6及びR7が、いずれも水素であるか(化合物D48)、或いは
RN1が、メチルであり、R1が、水素であり、R2及びR3が、いずれも水素であり、R4が、ヒドロキシルであり、R5が、4-フェニルブチルオキシであり、且つR6及びR7が、いずれも水素であるか(化合物D50)、或いは
RN1が、メチルであり、R1が、水素であり、R2及びR3が、いずれも水素であり、R4が、ヒドロキシルであり、R5が、3,3-ビフェニルプロピルオキシであり、且つR6及びR7が、いずれも水素であるか(化合物D54)、或いは
RN1が、メチルであり、R1が、水素であり、R2及びR3が、いずれも水素であり、R4が、ヒドロキシルであり、R5が、エチルオキシであり、且つR6及びR7が、いずれも水素である(化合物D55)。
【0059】
式(I-1)で表される化合物が前記特徴を有する場合、該化合物は、特に高いフェロトーシス阻害効果を発現することができる。
【0060】
式(I-1)で表される化合物は、該化合物自体だけでなく、その塩も包含する。式(I-1)で表される化合物の塩としては、限定するものではないが、例えば、式(I)で表される化合物の塩として前記で例示した各種の塩が好ましい。式(I-1)で表される化合物が前記の塩の形態である場合であっても、フェロトーシス阻害効果を発現することができる。
【0061】
式(I-1)で表される化合物は、前記化合物自体だけでなく、該化合物又はその塩の溶媒和物も包含する。前記化合物又はその塩と溶媒和物を形成し得る溶媒としては、限定するものではないが、例えば、式(I)で表される化合物又はその塩と溶媒和物を形成し得る溶媒として前記で例示した各種の溶媒が好ましい。式(I-1)で表される化合物又はその塩が前記の溶媒との溶媒和物の形態である場合であっても、フェロトーシス阻害効果を発現することができる。
【0062】
式(I-1)で表される化合物は、前記化合物自体だけでなく、その保護形態も包含する。前記化合物の保護形態を形成し得る保護基としては、限定するものではないが、例えば、式(I)で表される化合物の保護形態を形成し得る保護基として前記で例示した各種の保護基が好ましい。式(I-1)で表される化合物が前記の保護基による保護形態である場合であっても、フェロトーシス阻害効果を実質的に低下させることなく、該化合物を使用することができる場合がある。
【0063】
式(I-1)で表される化合物が1個又は複数個の互変異性体を有する場合、前記化合物は、該化合物の個々の互変異性体の形態も包含する。
【0064】
また、式(I-1)で表される化合物が1個又は複数個の立体中心(キラル中心)を有する場合、前記化合物は、該化合物の個々のエナンチオマー及びジアステレオマー、並びにラセミ体のようなそれらの混合物も包含する。
【0065】
前記特徴を有することにより、本態様の式(I-1)で表される化合物は、フェロトーシス阻害効果を発現することができる。
【0066】
本発明の別の一態様は、式(I-1)で表される化合物の製造方法に関する。本態様の方法は、前駆体準備工程、及び前駆体連結工程を含む。
【0067】
前駆体準備工程は、アポモルフィンと、式(X):
R5-L (X)
で表される化合物とを準備することを含む。
【0068】
アポモルフィンは、式(I-1)において、RN1が、メチルであり、R1、R2及びR3が、いずれも水素であり、R4及びR5が、いずれもヒドロキシルであり、R6及びR7が、いずれも水素である化合物である。アポモルフィンは、その塩又は溶媒和物の形態であってもよい。アポモルフィンは、市販品を購入等して準備してもよく、又は公知文献に基づき自ら調製することにより準備してもよい。
【0069】
式(X)において、R5は、式(I-1)と同様に定義される基である。
【0070】
式(X)において、Lは、脱離基である。Lは、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素又はヨウ素)であることが好ましい。
【0071】
式(X)で表される化合物は、市販品を購入等して準備してもよく、又は公知文献に基づき自ら調製することにより準備してもよい。
【0072】
前駆体連結工程は、アポモルフィンと、式(X)で表される化合物とを連結して、式(I-1)で表される化合物を生成することを含む。
【0073】
前駆体連結工程は、塩基存在下、アポモルフィン及び式(X)で表される化合物を反応させることにより、実施することができる。この反応により、式(X)で表される化合物の脱離基Lが脱離して、アポモルフィンのヒドロキシル基の酸素原子との間に共有結合が形成される。本工程で使用される塩基としては、限定するものではないが、例えば、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の炭酸塩(例えば、炭酸カリウム)を挙げることができる。本工程の反応温度は、通常は30~100℃の範囲、例えば50~90℃の範囲である。また、本工程の反応時間は、通常は終夜~数日間の範囲、例えば20時間~3日間の範囲である。
【0074】
本態様の方法において、前駆体連結工程の後で、得られた生成物から式(I-1)で表される化合物を精製する、精製工程をさらに含んでもよい。精製工程において使用される精製手段としては、例えば、抽出、濾過、遠心分離、吸着、再結晶、蒸留、及び各種クロマトグラフィー等を挙げることができる。
【0075】
本態様の方法を実施することにより、フェロトーシス阻害剤の有効成分として使用し得る式(I-1)で表される化合物を生成することができる。
【0076】
<3. 医薬用途>
本発明の一態様のフェロトーシス阻害剤の有効成分である式(I)で表される化合物は、高いフェロトーシス阻害効果を有する。ミトコンドリアの機能障害に関連する細胞死は、主としてフェロトーシスを介して誘導される。このため、式(I)で表される化合物を、ミトコンドリアの機能障害に起因する症状、疾患若しくは障害を有する対象に投与した場合、フェロトーシス阻害効果を介して、該対象の有する該症状、疾患若しくは障害を予防又は治療し得る。それ故、本発明の別の一態様は、本発明の一態様のフェロトーシス阻害剤、又は該フェロトーシス阻害剤の有効成分である式(I)で表される化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物を有効成分として含有する医薬又は医薬組成物に関する。
【0077】
本発明の各態様において、「フェロトーシス阻害効果」は、フェロトーシス自体、及び/又はフェロトーシスに伴って引き起こされる種々の機能及び/又は活性を実質的に阻害する効果を意味する。
【0078】
本発明の各態様において、式(I)で表される化合物のフェロトーシス阻害効果は、限定するものではないが、例えば、対象に由来する細胞に対して、公知のフェロトーシス誘導剤と該化合物とを共添加して、フェロトーシス誘導剤によって誘導される細胞死の抑制効果を評価することにより、決定することができる。
【0079】
本発明の各態様において、式(I)で表される化合物は、通常は、5 nM以上又は100 nM以上、例えば、5~5000 nMの範囲、特に、200~5000 nMの範囲でフェロトーシス阻害効果を発現することができる。
【0080】
式(I)で表される化合物を医薬用途に適用する場合、式(I)で表される化合物は、該化合物自体だけでなく、該化合物の製薬上許容される塩、及びそれらの製薬上許容される溶媒和物も包含する。式(I)で表される化合物の製薬上許容される塩、及びそれらの製薬上許容される溶媒和物としては、限定するものではないが、例えば、前記で例示した塩又は溶媒和物が好ましい。式(I)で表される化合物が前記の製薬上許容される塩又は製薬上許容される溶媒和物の形態である場合、フェロトーシス阻害効果を実質的に低下させることなく、該化合物を所望の医薬用途に適用することができる。
【0081】
式(I)で表される化合物を医薬用途に適用する場合、式(I)で表される化合物は、該化合物自体だけでなく、該化合物のプロドラッグ形態も包含する。本明細書において、「プロドラッグ」は、生体内で親薬物に変換される化合物を意味する。前記化合物のプロドラッグ形態としては、限定するものではないが、例えば、ヒドロキシル基が存在する場合、該ヒドロキシル基と任意のカルボン酸とのエステル、及び該ヒドロキシル基と任意のアミンとのアミド等を、例えば、アミノ基が存在する場合、該アミノ基と任意のカルボン酸とのアミド等を、挙げることができる。式(I)で表される化合物が前記のプロドラッグ形態である場合、親薬物である式(I)で表される化合物のフェロトーシス阻害効果を実質的に低下させることなく、対象へのプロドラッグ形態の投与時の薬物動態を向上させることができる。
【0082】
式(I)で表される化合物を医薬用途に適用する場合、該化合物を単独で使用してもよく、1種以上の製薬上許容される成分と組み合わせて使用してもよい。本態様の医薬は、所望の投与方法に応じて、当該技術分野で通常使用される様々な剤形に製剤されることができる。それ故、本態様の医薬はまた、本発明の一態様のフェロトーシス阻害剤、又は該フェロトーシス阻害剤の有効成分である式(I)で表される化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物と、1種以上の製薬上許容される担体とを含む医薬組成物の形態で提供されることもできる。本態様の医薬組成物は、前記成分に加えて、製薬上許容される1種以上の媒体(例えば、滅菌水のような溶媒又は生理食塩水のような溶液)、賦形剤、結合剤、ビヒクル、溶解補助剤、防腐剤、安定剤、膨化剤、潤滑剤、界面活性剤、乳化剤、油性液(例えば、植物油)、懸濁剤、緩衝剤、無痛化剤、酸化防止剤、甘味剤及び香味剤等を含んでもよい。
【0083】
本発明の一態様のフェロトーシス阻害剤、又は該フェロトーシス阻害剤の有効成分である式(I)で表される化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物を有効成分として含む本態様の医薬の剤形は、特に限定されず、非経口投与に使用するための製剤であってもよく、経口投与に使用するための製剤であってもよい。また、本態様の医薬の剤形は、単位用量形態の製剤であってもよく、複数投与形態の製剤であってもよい。非経口投与に使用するための製剤としては、例えば、水若しくはそれ以外の製薬上許容される媒体との無菌性溶液又は懸濁液等の注射剤を挙げることができる。注射剤に混和することができる成分としては、限定するものではないが、例えば、生理食塩水、ブドウ糖若しくはその他の補助薬(例えば、D-ソルビトール、D-マンニトール、D-マンノース若しくは塩化ナトリウム)を含む等張液のようなビヒクル、アルコール(例えばエタノール若しくはベンジルアルコール)、ポリアルコール(例えばプロピレングリコール若しくはポリエチレングリコール)若しくはエステル(例えば安息香酸ベンジル)のような溶解補助剤、ポリソルベート80(商標)又はポリオキシエチレン硬化ヒマシ油のような非イオン性界面活性剤、ゴマ油又は大豆油のような油性液、リン酸塩緩衝液又は酢酸ナトリウム緩衝液のような緩衝剤、塩化ベンザルコニウム又は塩酸プロカインのような無痛化剤、ヒト血清アルブミン又はポリエチレングリコールのような安定剤、保存剤、並びに酸化防止剤等を挙げることができる。調製された注射剤は、通常、適当なバイアル(例えばアンプル)に充填され、使用時まで適切な環境下で保存される。
【0084】
経口投与に使用するための製剤としては、例えば、錠剤、丸薬、散剤、カプセル剤、軟カプセル剤、マイクロカプセル剤、エリキシル剤、液剤、シロップ剤、スラリー剤及び懸濁液等を挙げることができる。錠剤は、所望により、糖衣又は溶解性被膜を施した糖衣錠、ゼラチン被包錠、腸溶被錠、口腔内崩壊錠(OD錠)又はフィルムコーティング錠の剤形として製剤してもよく、或いは二重錠又は多層錠の剤形として製剤してもよい。
【0085】
錠剤又はカプセル剤等に混和することができる成分としては、限定するものではないが、例えば、水、エタノール、プロパノール、単シロップ、グルコース液、カルボキシメチルセルロース、セラック、メチルセルロース、リン酸カリウム、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、コーンスターチ、トラガントガム又はアラビアゴムのような結合剤;結晶性セルロース、乳糖、白糖、塩化ナトリウム、グルコース、尿素、澱粉、炭酸カルシウム、カオリン又はケイ酸のような賦形剤;乾燥澱粉、アルギン酸ナトリウム、寒天末、ラミナラン末、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸モノグリセリド、澱粉又は乳糖のような崩壊剤;白糖、ステアリンカカオバター又は水素添加油のような崩壊抑制剤;第四級アンモニウム塩又はラウリル硫酸ナトリウムのような吸収促進剤;グリセリン又はデンプンのような保湿剤;澱粉、乳糖、カオリン、ベントナイト又はコロイド状ケイ酸のような吸着剤;精製タルク、ステアリン酸塩(例えばステアリン酸マグネシウム)、ホウ酸末又はポリエチレングリコールのような潤滑剤;ショ糖、乳糖又はサッカリンのような甘味剤;及びペパーミント、アカモノ油又はチェリーのような香味剤等を挙げることができる。製剤がカプセル剤の場合、さらに油脂のような液状担体を含有してもよい。
【0086】
本発明の一態様のフェロトーシス阻害剤、又は該フェロトーシス阻害剤の有効成分である式(I)で表される化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物を有効成分として含む本態様の医薬は、デポー製剤として製剤化することもできる。この場合、デポー製剤の剤形の本態様の医薬を、例えば皮下若しくは筋肉に埋め込み、又は筋肉注射により投与することができる。本態様の医薬をデポー製剤に適用することにより、式(I)で表される化合物のフェロトーシス阻害効果を、長期間に亘って持続的に発現することができる。
【0087】
本発明の一態様のフェロトーシス阻害剤、又は該フェロトーシス阻害剤の有効成分である式(I)で表される化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物を有効成分として含む本態様の医薬は、医薬として有用な1種以上の他の薬剤と併用することもできる。併用される他の薬剤としては、限定するものではないが、例えば、タウリン、イデベノン、及びコエンザイムQ10を挙げることができる。この場合、本態様の医薬は、本発明の一態様のフェロトーシス阻害剤、又は該フェロトーシス阻害剤の有効成分である式(I)で表される化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物と、1種以上の前記他の薬剤とを含む併用医薬の形態となる。前記併用医薬は、本発明の一態様のフェロトーシス阻害剤、又は該フェロトーシス阻害剤の有効成分である式(I)で表される化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物と、1種以上の前記他の薬剤とを組み合わせてなる医薬組成物の形態であってもよく、本発明の一態様のフェロトーシス阻害剤、又は該フェロトーシス阻害剤の有効成分である式(I)で表される化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物を含む、1種以上の前記他の薬剤と併用される医薬組成物の形態であってもよい。本態様の医薬が前記のような併用医薬の形態である場合、本発明の一態様のフェロトーシス阻害剤、又は該フェロトーシス阻害剤の有効成分である式(I)で表される化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物と、1種以上の他の薬剤とを含む、単一製剤の形態で提供されてもよく、1種以上の他の薬剤とが別々に製剤化された複数の製剤を含む医薬組合せ又はキットの形態で提供されてもよい。医薬組合せ又はキットの形態の場合、それぞれの製剤を同時又は別々に(例えば連続的に)投与することができる。
【0088】
本発明の一態様のフェロトーシス阻害剤、又は該フェロトーシス阻害剤の有効成分である式(I)で表される化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物を有効成分として含む本態様の医薬は、フェロトーシス阻害効果を介して、フェロトーシスに関連する種々の症状、疾患及び/又は障害を、予防又は治療することができる。前記症状、疾患及び/又は障害としては、限定するものではないが、例えば、フェロトーシスに関連する、原発性ミトコンドリア病、還元ストレスに起因する疾患、神経変性疾患、代謝性疾患及び肝機能障害を挙げることができる。例えば、前記症状、疾患及び/又は障害としては、限定するものではないが、例えば、フェロトーシスに関連する、リー脳症、ミトコンドリア脳筋症・乳酸アシドーシス・脳卒中様発作症候群(MELAS)又はレーベル病であるミトコンドリア病、ミトコンドリア心筋症、ミトコンドリア肝症、慢性進行性外眼筋麻痺(CPEO)、パーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、狭心症、心筋梗塞、急性心不全、慢性心不全、心筋症、糖尿病性心筋症、心肥大、虚血再灌流障害、出血性脳卒中、糖尿病、脳梗塞、腎障害、急性腎不全、非アルコール性脂肪性肝炎若しくは肝障害、肝線維症、慢性閉塞性肺疾患、尿路感染症、多発性嚢胞腎、敗血症誘発心臓損傷、及び敗血症を挙げることができる。前記症状、疾患及び/又は障害は、フェロトーシスに関連する、リー脳症、ミトコンドリア脳筋症・乳酸アシドーシス・脳卒中様発作症候群(MELAS)又はレーベル病であるミトコンドリア病、ミトコンドリア心筋症、ミトコンドリア肝症、慢性進行性外眼筋麻痺(CPEO)、パーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、狭心症、心筋梗塞、急性心不全、慢性心不全、心筋症、糖尿病性心筋症、心肥大、虚血再灌流障害、出血性脳卒中、糖尿病、脳梗塞、腎障害、急性腎不全、非アルコール性脂肪性肝炎若しくは肝障害、肝線維症、慢性閉塞性肺疾患、尿路感染症、多発性嚢胞腎、敗血症誘発心臓損傷、及び敗血症からなる群より選択される1種以上の症状、疾患又は障害であることが好ましい。フェロトーシスに関連する前記疾患、症状若しくは障害の予防又は治療を必要とする対象に本態様の医薬を投与することにより、前記疾患、症状若しくは障害を予防又は治療することができる。
【0089】
本発明の各態様において、「フェロトーシスに関連する症状、疾患及び/又は障害」は、フェロトーシス自体、及び/又はフェロトーシスに伴って引き起こされる種々の機能及び/又は活性の阻害に起因して引き起こされる症状、疾患及び/又は障害を意味する。症状、疾患及び/又は障害がフェロトーシスに関連することは、限定するものではないが、例えば、該症状、疾患及び/又は障害を有する対象におけるフェロトーシスの機能発現の亢進及び/又は異常を確認することにより、特定することができる。フェロトーシスに関連する症状、疾患及び/又は障害を有する対象におけるフェロトーシスの機能発現の亢進及び/又は異常は、限定するものではないが、例えば、該対象にフェロトーシス阻害剤を投与することで該対象の細胞死を予防し得ること、又は該対象においてフェロトーシスによって蓄積される過酸化脂質の量が変動し得ることを指標に、評価することができる。
【0090】
本発明の一態様のフェロトーシス阻害剤、又は該フェロトーシス阻害剤の有効成分である式(I)で表される化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物を有効成分として含む本態様の医薬は、フェロトーシスに関連する前記症状、疾患及び/又は障害の予防又は治療を必要とする様々な対象に適用することができる。前記対象は、ヒト又は非ヒト哺乳動物(例えば、ブタ、イヌ、ウシ、ラット、マウス、モルモット、ウサギ、ニワトリ、ヒツジ、ネコ、サル、マントヒヒ若しくはチンパンジー等の温血動物)の被験体又は患者であることが好ましい。前記対象に本態様の医薬を投与することにより、該対象におけるフェロトーシスに関連する種々の症状、疾患及び/又は障害を予防又は治療することができる。
【0091】
本明細書において、「予防」は、症状、疾患及び/又は障害の発生(発症又は発現)を実質的に防止又は低減することを意味する。また、本明細書において、「治療」は、発生(発症又は発現)した症状、疾患及び/又は障害を抑制(例えば進行の抑制)、軽快、修復及び/又は治癒することを意味する。
【0092】
本発明の一態様のフェロトーシス阻害剤、及び該フェロトーシス阻害剤の有効成分である式(I)で表される化合物は、前記で説明したフェロトーシスに関連する症状、疾患及び/又は障害を有する対象において、該症状、疾患及び/又は障害の予防又は治療に使用することができる。それ故、本態様の医薬は、前記で説明したフェロトーシスに関連する症状、疾患及び/又は障害の予防又は治療に使用するための医薬であることが好ましく、フェロトーシスに関連する、原発性ミトコンドリア病、還元ストレスに起因する疾患、神経変性疾患、代謝性疾患又は肝機能障害の予防又は治療に使用するための医薬であることがより好ましく、フェロトーシスに関連する、リー脳症、ミトコンドリア脳筋症・乳酸アシドーシス・脳卒中様発作症候群(MELAS)又はレーベル病であるミトコンドリア病、ミトコンドリア心筋症、ミトコンドリア肝症、慢性進行性外眼筋麻痺(CPEO)、パーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、狭心症、心筋梗塞、急性心不全、慢性心不全、心筋症、糖尿病性心筋症、心肥大、虚血再灌流障害、出血性脳卒中、糖尿病、脳梗塞、腎障害、急性腎不全、非アルコール性脂肪性肝炎若しくは肝障害、肝線維症、慢性閉塞性肺疾患、尿路感染症、多発性嚢胞腎、敗血症誘発心臓損傷、及び敗血症からなる群より選択される1種以上の症状、疾患及び/又は障害の予防又は治療に使用するための医薬であることがさらに好ましい。本態様の医薬を、フェロトーシスに関連する前記症状、疾患及び/又は障害の予防又は治療に使用することにより、式(I)で表される化合物のフェロトーシス阻害効果を介して、フェロトーシスに関連する該症状、疾患及び/又は障害を予防又は治療することができる。
【0093】
本発明の一態様のフェロトーシス阻害剤、及び該フェロトーシス阻害剤の有効成分である式(I)で表される化合物は、前記で説明したフェロトーシスに関連する症状、疾患及び/又は障害を有する対象において、該症状、疾患及び/又は障害の予防又は治療に使用することができる。それ故、本発明の別の一態様は、前記で説明したフェロトーシスに関連する症状、疾患及び/又は障害の予防又は治療を必要とする対象に、有効量の本発明の一態様のフェロトーシス阻害剤、又は該フェロトーシス阻害剤の有効成分である式(I)で表される化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物を投与することを含む、前記症状、疾患及び/又は障害の予防又は治療方法である。前記症状、疾患及び/又は障害は、フェロトーシスに関連する、原発性ミトコンドリア病、還元ストレスに起因する疾患、神経変性疾患、代謝性疾患又は肝機能障害であることが好ましく、フェロトーシスに関連する、リー脳症、ミトコンドリア脳筋症・乳酸アシドーシス・脳卒中様発作症候群(MELAS)又はレーベル病であるミトコンドリア病、ミトコンドリア心筋症、ミトコンドリア肝症、慢性進行性外眼筋麻痺(CPEO)、パーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、狭心症、心筋梗塞、急性心不全、慢性心不全、心筋症、糖尿病性心筋症、心肥大、虚血再灌流障害、出血性脳卒中、糖尿病、脳梗塞、腎障害、急性腎不全、非アルコール性脂肪性肝炎若しくは肝障害、肝線維症、慢性閉塞性肺疾患、尿路感染症、多発性嚢胞腎、敗血症誘発心臓損傷、及び敗血症からなる群より選択される1種以上の症状、疾患及び/又は障害であることがより好ましい。フェロトーシスに関連する前記症状、疾患及び/又は障害の予防又は治療を必要とする対象に、本発明の一態様のフェロトーシス阻害剤、又は該フェロトーシス阻害剤の有効成分である式(I)で表される化合物を投与することにより、式(I)で表される化合物のフェロトーシス阻害効果を介して、フェロトーシスに関連する該症状、疾患及び/又は障害を予防又は治療することができる。
【0094】
本発明の別の一態様は、前記で説明したフェロトーシスに関連する症状、疾患及び/又は障害の予防又は治療に使用するための、本発明の一態様のフェロトーシス阻害剤、又は該フェロトーシス阻害剤の有効成分である式(I)で表される化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物である。本発明の別の一態様は、前記で説明したフェロトーシスに関連する症状、疾患及び/又は障害の予防又は治療のための医薬の製造における、本発明の一態様のフェロトーシス阻害剤、又は該フェロトーシス阻害剤の有効成分である式(I)で表される化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物の使用である。本発明のさらに別の一態様は、前記で説明したフェロトーシスに関連する症状、疾患及び/又は障害の予防又は治療のための、本発明の一態様のフェロトーシス阻害剤、又は該フェロトーシス阻害剤の有効成分である式(I)で表される化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物の使用である。前記症状、疾患及び/又は障害は、フェロトーシスに関連する、原発性ミトコンドリア病、還元ストレスに起因する疾患、神経変性疾患、代謝性疾患又は肝機能障害であることが好ましく、フェロトーシスに関連する、リー脳症、ミトコンドリア脳筋症・乳酸アシドーシス・脳卒中様発作症候群(MELAS)又はレーベル病であるミトコンドリア病、ミトコンドリア心筋症、ミトコンドリア肝症、慢性進行性外眼筋麻痺(CPEO)、パーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、狭心症、心筋梗塞、急性心不全、慢性心不全、心筋症、糖尿病性心筋症、心肥大、虚血再灌流障害、出血性脳卒中、糖尿病、脳梗塞、腎障害、急性腎不全、非アルコール性脂肪性肝炎若しくは肝障害、肝線維症、慢性閉塞性肺疾患、尿路感染症、多発性嚢胞腎、敗血症誘発心臓損傷、及び敗血症からなる群より選択される1種以上の症状、疾患及び/又は障害であることがより好ましい。本発明の一態様のフェロトーシス阻害剤、又は該フェロトーシス阻害剤の有効成分である式(I)で表される化合物を、フェロトーシスに関連する前記症状、疾患及び/又は障害の予防又は治療に使用することにより、式(I)で表される化合物のフェロトーシス阻害効果を介して、フェロトーシスに関連する該症状、疾患及び/又は障害を予防又は治療することができる。
【0095】
本発明の一態様のフェロトーシス阻害剤、又は該フェロトーシス阻害剤の有効成分である式(I)で表される化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物を有効成分として含む本態様の医薬を、対象、特にヒト患者に投与する場合、正確な用量及び用法(例えば、投与量、投与回数及び/又は投与経路)は、対象の年齢、性別、予防又は治療されるべき症状、疾患及び/又は障害の正確な状態(例えば重症度)、並びに投与経路等の多くの要因を鑑みて、担当医が治療上有効な投与量、投与回数及び投与経路等を考慮して、最終的に決定すべきである。それ故、本態様の医薬において、本発明の一態様のフェロトーシス阻害剤、又は該フェロトーシス阻害剤の有効成分である式(I)で表される化合物は、治療上有効な量及び回数で、対象に投与される。例えば、本態様の医薬をヒト患者に投与する場合、式(I)で表される化合物の投与量は、通常は、1回投与あたり、0.001~100 mg/kg体重の範囲であり、典型的には、1回投与あたり、0.001~100 mg/kg体重の範囲であり、典型的には、1回投与あたり、0.01~10 mg/kg体重の範囲であり、特に、1回投与あたり、0.1~10 mg/kg体重の範囲である。また、本態様の医薬の投与回数は、例えば、1日に1回又は複数回(例えば2若しくは3回)、或いは数日に1回とすることができる。また、本態様の医薬の投与経路は、特に限定されず、経口的に投与されてもよく、非経口的(例えば、経皮、直腸内、径粘膜、腸内、筋肉内、皮下、骨髄内、鞘内、直接心室内、静脈内、硝子体内、腹腔内、鼻腔内又は眼内)に単回若しくは複数回投与されてもよい。本態様の医薬を、前記の用量及び用法で使用することにより、式(I)で表される化合物のフェロトーシス阻害効果を介して、フェロトーシスに関連する前記症状、疾患及び/又は障害を予防又は治療することができる。
【実施例】
【0096】
以下、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明の技術的範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
【0097】
<試験I:フェロトーシス誘導剤付与によって誘導される細胞死の抑制試験>
ミトコンドリアの機能障害では、例えば、ATP産生の障害及び/又は酸化ストレスの増加が起こり、これにより、細胞死が引き起こされる。このため、ミトコンドリアの機能障害を有する個体では、正常な個体と比較して、酸化ストレスに対して脆弱であることが報告されている(Shrader WDら, Bioorg Med Chem Lett., 2011年6月15日, 第21(12)巻, p. 3693-8., doi:10.1016/j.bmcl.2011.04.085. 電子出版 2011年4月24日, PubMed PMID: 21600768)。酸化ストレスに関連する細胞死としては、アポトーシス、ネクローシス及びフェロトーシスが知られている。しかしながら、ミトコンドリアの機能障害を有する個体における細胞死が、前記のいずれの発現機序によるものであるかは明らかではなかった。そこで、ミトコンドリア病を有する患者の皮膚線維芽細胞を用いて、薬剤添加によって誘導される細胞死を指標に、細胞死の作用機序を調査した。
【0098】
本試験及び以下において説明する試験では、核遺伝子変異によるリー脳症、ミトコンドリア遺伝子変異によるリー脳症、MELAS、ミトコンドリア心筋症、ミトコンドリア肝症、又はカーンズ・セイヤー(Kearns-Sayre)症候群(以下、「KSS」とも記載する)を有する患者からそれぞれ樹立した皮膚線維芽細胞を使用した。リー脳症を有する患者における遺伝子変異は、いずれも呼吸鎖複合体Iの活性低下を引き起こす変異である。正常細胞の対照としては、Promo Cell社から購入した正常皮膚線維芽細胞を使用した。サンプルに関しては、自治医科大学附属病院の倫理委員会により承認されており、全ての患者家族からインフォームドコンセントを得た。
【0099】
【0100】
前記皮膚線維芽細胞に対して、公知のフェロトーシス誘導剤と公知のフェロトーシス阻害剤、アポトーシス阻害剤又はネクローシス阻害剤とを共添加して、これらの薬剤によって誘導される細胞死の抑制効果を評価した。試験に用いる皮膚線維芽細胞(15継代以内)を、細胞培養用96ウェルプレートに、5,000細胞 / ウェル及び80 μL培地 / ウェルの濃度になるよう播種し、炭酸ガスインキュベーター内(37℃、5% CO2)で24時間培養した。維持培地として、DMEM低グルコース(1 g/L)、10% ウシ胎仔血清(FBS)及び1% ペニシリン・ストレプトマイシン(PS)を含む培地を、試験用培地として、DMEM低グルコース(1 g/L)及び10% FBSを含む培地を、それぞれ使用した。培養24時間後に、フェロトーシス誘導剤(最終濃度50又は100 nM)と公知のフェロトーシス阻害剤、アポトーシス阻害剤又はネクローシス阻害剤(最終濃度1 μM)とをウェル中の細胞に共添加し、添加48時間後に、生細胞率を測定した。生細胞率の測定は、生細胞数測定試薬SF(ナカライテスク社)を使用して、生成したホルマザンの吸光度を測定することにより行った。フェロトーシス誘導剤として、L-ブチオニン-(S,R)-スルホキシミン(BSO)又はRSL-3を使用した。フェロトーシス阻害剤として、フェロスタチン-1(Fer-1)、リプロクススタチン(Lip-1)又はデフェロキサミン(DFO)を使用した。アポトーシス阻害剤として、v-VADを使用した。ネクローシス阻害剤として、GSK872を使用した。これらの阻害剤と比較する薬剤として、アポモルフィン(Apo)、及びレーバー遺伝性視神経炎に対する治療薬として欧州で認可されているイデベノン(Ide)を使用した。
【0101】
正常細胞(Promo1細胞)又はリー脳症患者細胞(LS
ND3)に対してフェロトーシス誘導剤であるBSOと種々のフェロトーシス阻害剤とを共添加して、BSOによって誘導される細胞死の抑制効果を評価した結果を
図1に示す。図中、Aは、正常細胞(Promo1細胞)における結果を、Bは、リー脳症患者細胞(LS
ND3)における結果を、それぞれ示す。図中、横軸は、試験化合物であり、縦軸は、BSO非添加の対照における生細胞数を100%とした場合の各処理区の生細胞率(%)である。図中の値は、平均値±標準偏差を示す。試験化合物に関し、「対照」は、BSO非添加の対照を、「BSO」は、100 μMのBSO添加且つ試験化合物非添加の対照を、「BSO+Apo」、「BSO+Lip-1」、「BSO+Fer-1」及び「BSO+DFO」は、BSO及び各フェロトーシス阻害剤の共添加を、それぞれ示す。
【0102】
正常細胞(Promo1細胞)又はリー脳症患者細胞(LS
ND3)に対してフェロトーシス誘導剤であるRSL-3と種々のフェロトーシス阻害剤とを共添加して、RSL-3によって誘導される細胞死の抑制効果を評価した結果を
図2に示す。図中、Aは、正常細胞(Promo1細胞)における結果を、Bは、リー脳症患者細胞(LS
ND3)における結果を、それぞれ示す。図中、横軸は、試験化合物であり、縦軸は、RSL-3非添加の対照における生細胞数を100%とした場合の各処理区の生細胞率(%)である。図中の値は、平均値±標準偏差を示す。試験化合物に関し、「対照」は、RSL-3非添加の対照を、「RSL-3」は、50 nMのRSL-3添加且つ試験化合物非添加の対照を、「RSL-3+Apo」、「RSL-3+Lip-1」、「RSL-3+Fer-1」及び「RSL-3+DFO」は、50 nMのRSL-3及び各フェロトーシス阻害剤の共添加を、それぞれ示す。
【0103】
図1Aに示すように、正常細胞(Promo1細胞)では、いずれの試験化合物の単独添加又は共添加によっても細胞死は引き起こされなかった。これに対し、
図1Bに示すように、リー脳症患者細胞(LS
ND3)では、BSOの添加によって細胞死が誘導された一方で、BSO及びApo、Lip-1、Fer-1又はDFOの共添加によって、この細胞死が抑制された。
図2に示すように、RSL-3を用いた場合も、BSOを用いた場合と同様の結果が確認された。
【0104】
正常細胞(Promo1細胞)又はリー脳症患者細胞(LS
ND3)に対してフェロトーシス誘導剤であるBSOとアポトーシス阻害剤(v-VAD)又はネクローシス阻害剤(GSK872)とを共添加して、BSOによって誘導される細胞死の抑制効果を評価した結果を
図3に示す。図中、Aは、正常細胞(Promo1細胞)における結果を、Bは、リー脳症患者細胞(LS
ND3)における結果を、それぞれ示す。図中、横軸は、試験化合物であり、縦軸は、BSO非添加の対照における生細胞数を100%とした場合の各処理区の生細胞率(%)である。図中の値は、平均値±標準偏差を示す。試験化合物に関し、「対照」は、BSO非添加の対照を、「BSO」は、100 μMのBSO添加且つ試験化合物非添加の対照を、「Fer-1」及び「Apo」は、BSO及び各フェロトーシス阻害剤の共添加の対照を、「GSK872(1 μM)」、「GSK872(3 μM)」及び「GSK872(10 μM)」は、BSO及びネクローシス阻害剤(GSK872)の共添加を、「v-VAD(1 μM)」及び「v-VAD(10 μM)」は、BSO及びアポトーシス阻害剤(v-VAD)の共添加を、それぞれ示す。
【0105】
正常細胞(Promo1細胞)又はリー脳症患者細胞(LS
ND3)に対してフェロトーシス誘導剤であるRSL-3とアポトーシス阻害剤(v-VAD)又はネクローシス阻害剤(GSK872)とを共添加して、RSL-3によって誘導される細胞死の抑制効果を評価した結果を
図4に示す。図中、Aは、正常細胞(Promo1細胞)における結果を、Bは、リー脳症患者細胞(LS
ND3)における結果を、それぞれ示す。図中、横軸は、試験化合物であり、縦軸は、RSL-3非添加の対照における生細胞数を100%とした場合の各処理区の生細胞率(%)である。図中の値は、平均値±標準偏差を示す。試験化合物に関し、「対照」は、RSL-3非添加の対照を、「RSL-3」は、50 nMのRSL-3添加且つ試験化合物非添加の対照を、「Fer-1」及び「Apo」は、RSL-3及び各フェロトーシス阻害剤の共添加の対照を、「GSK872(1 μM)」、「GSK872(3 μM)」及び「GSK872(10 μM)」は、RSL-3及びネクローシス阻害剤(GSK872)の共添加を、「v-VAD(1 μM)」及び「v-VAD(10 μM)」は、RSL-3及びアポトーシス阻害剤(v-VAD)の共添加を、それぞれ示す。
【0106】
図3Aに示すように、正常細胞(Promo1細胞)では、いずれの試験化合物の単独添加又は共添加によっても細胞死は引き起こされなかった。これに対し、
図3Bに示すように、リー脳症患者細胞(LS
ND3)では、BSOの添加によって細胞死が誘導され、BSO及びFer-1又はApoの共添加によって、この細胞死が抑制された一方で、BSO及びGSK872又はv-VADの共添加によってはこの細胞死は抑制されなかった。
【0107】
RSL-3を用いた場合、
図4Aに示すように、正常細胞(Promo1細胞)でもRSL-3の単独添加によって細胞死が誘導され、RSL-3及びGSK872又はv-VADの共添加によっても同様の細胞死が誘導されたが、RSL-3及びFer-1又はApoの共添加によって、この細胞死が抑制された。これに対し、
図4Bに示すように、リー脳症患者細胞(LS
ND3)では、同様の傾向がさらに強く確認された。
【0108】
以上の結果から、ミトコンドリアの機能障害を有する個体における細胞死は、主としてフェロトーシスを介して誘導されること、及びアポモルフィンがフェロトーシス阻害効果を有することが明らかとなった。
【0109】
正常細胞(Promo1細胞)又はミトコンドリア心筋症患者細胞(ME250-1)に対してフェロトーシス誘導剤であるBSOとアポモルフィン又はイデベノンとを共添加して、BSOによって誘導される細胞死の抑制効果を評価した結果を
図5に示す。図中、Aは、正常細胞(Promo1細胞)における結果を、Bは、ミトコンドリア心筋症患者細胞(ME250-1)における結果を、それぞれ示す。図中、横軸は、試験化合物であり、縦軸は、BSO非添加の対照における生細胞数を100%とした場合の各処理区の生細胞率(%)である。図中の値は、平均値±標準偏差を示す。試験化合物に関し、「対照」は、BSO非添加の対照を、「50 μM BSO」、「100 μM BSO」及び「200 μM BSO」は、それぞれ所定濃度のBSO添加且つ試験化合物非添加の対照を、「+Ide」及び「+Apo」は、それぞれ所定濃度のBSO及び各薬剤の共添加を、それぞれ示す。
【0110】
正常細胞(Promo1細胞)又はミトコンドリア肝症患者細胞(ME263-1)に対してフェロトーシス誘導剤であるBSOとアポモルフィン又はイデベノンとを共添加して、BSOによって誘導される細胞死の抑制効果を評価した結果を
図6に示す。図中、Aは、正常細胞(Promo1細胞)における結果を、Bは、ミトコンドリア肝症患者細胞(ME263-1)における結果を、それぞれ示す。図中、横軸は、試験化合物であり、縦軸は、BSO非添加の対照における生細胞数を100%とした場合の各処理区の生細胞率(%)である。図中の値は、平均値±標準偏差を示す。試験化合物に関し、「対照」は、BSO非添加の対照を、「50 μM BSO」、「100 μM BSO」及び「200 μM BSO」は、それぞれ所定濃度のBSO添加且つ試験化合物非添加の対照を、「+Ide」及び「+Apo」は、それぞれ所定濃度のBSO及び各薬剤の共添加を、それぞれ示す。
【0111】
正常細胞(Promo1細胞)又はカーンズ・セイヤー症候群(KSS)患者細胞(ME130-1)に対してフェロトーシス誘導剤であるBSOとアポモルフィン又はイデベノンとを共添加して、BSOによって誘導される細胞死の抑制効果を評価した結果を
図7に示す。図中、Aは、正常細胞(Promo1細胞)における結果を、Bは、KSS患者細胞(ME130-1)における結果を、それぞれ示す。図中、横軸は、試験化合物であり、縦軸は、BSO非添加の対照における生細胞数を100%とした場合の各処理区の生細胞率(%)である。図中の値は、平均値±標準偏差を示す。試験化合物に関し、「対照」は、BSO非添加の対照を、「50 μM BSO」、「100 μM BSO」及び「200 μM BSO」、並びに「1.3 mM BSO」、「1.5 mM BSO」及び「2 mM BSO」は、それぞれ所定濃度のBSO添加且つ試験化合物非添加の対照を、「+Ide」及び「+Apo」は、それぞれ所定濃度のBSO及び各薬剤の共添加を、それぞれ示す。
【0112】
図5Aに示すように、正常細胞(Promo1細胞)では、いずれの試験化合物の単独添加又は共添加によっても細胞死は引き起こされなかった。これに対し、
図5Bに示すように、ミトコンドリア心筋症患者細胞(ME250-1)では、BSOの添加によって細胞死が誘導された一方で、BSO及びIde又はApoの共添加によって、この細胞死が抑制された。
図6及び7に示すように、ミトコンドリア肝症患者細胞(ME263-1)及びKSS患者細胞(ME130-1)を用いた場合も、ミトコンドリア心筋症患者細胞(ME250-1)を用いた場合と同様の結果が確認された。
【0113】
正常細胞(Promo1細胞)又はミトコンドリア心筋症患者細胞(ME250-1)に対してフェロトーシス誘導剤であるRSL-3とアポモルフィン又はフェロスタチン-1とを共添加して、RSL-3によって誘導される細胞死の抑制効果を評価した結果を
図8に示す。図中、Aは、正常細胞(Promo1細胞)における結果を、Bは、ミトコンドリア心筋症患者細胞(ME250-1)における結果を、それぞれ示す。図中、横軸は、試験化合物であり、縦軸は、RSL-3非添加の対照における生細胞数を100%とした場合の各処理区の生細胞率(%)である。図中の値は、平均値±標準偏差を示す。試験化合物に関し、「対照」は、RSL-3非添加の対照を、「10 nM RSL-3」、「30 nM RSL-3」及び「50 nM RSL-3」、並びに「100 nM RSL-3」、「120 nM RSL-3」及び「140 nM RSL-3」は、それぞれ所定濃度のRSL-3添加且つ試験化合物非添加の対照を、「+Fer-1」及び「+Apo」は、それぞれ所定濃度のRSL-3及び各薬剤の共添加を、それぞれ示す。
【0114】
正常細胞(Promo1細胞)又はミトコンドリア肝症患者細胞(ME263-1)に対してフェロトーシス誘導剤であるRSL-3とアポモルフィン又はフェロスタチン-1とを共添加して、RSL-3によって誘導される細胞死の抑制効果を評価した結果を
図9に示す。図中、Aは、正常細胞(Promo1細胞)における結果を、Bは、ミトコンドリア肝症患者細胞(ME263-1)における結果を、それぞれ示す。図中、横軸は、試験化合物であり、縦軸は、RSL-3非添加の対照における生細胞数を100%とした場合の各処理区の生細胞率(%)である。図中の値は、平均値±標準偏差を示す。試験化合物に関し、「対照」は、RSL-3非添加の対照を、「10 nM RSL-3」、「30 nM RSL-3」及び「50 nM RSL-3」、並びに「100 nM RSL-3」、「120 nM RSL-3」及び「140 nM RSL-3」は、それぞれ所定濃度のRSL-3添加且つ試験化合物非添加の対照を、「+Fer-1」及び「+Apo」は、それぞれ所定濃度のRSL-3及び各薬剤の共添加を、それぞれ示す。
【0115】
正常細胞(Promo1細胞)又はカーンズ・セイヤー症候群(KSS)患者細胞(ME130-1)に対してフェロトーシス誘導剤であるRSL-3とアポモルフィン又はフェロスタチン-1とを共添加して、RSL-3によって誘導される細胞死の抑制効果を評価した結果を
図10に示す。図中、Aは、正常細胞(Promo1細胞)における結果を、Bは、KSS患者細胞(ME130-1)における結果を、それぞれ示す。図中、横軸は、試験化合物であり、縦軸は、RSL-3非添加の対照における生細胞数を100%とした場合の各処理区の生細胞率(%)である。図中の値は、平均値±標準偏差を示す。試験化合物に関し、「対照」は、RSL-3非添加の対照を、「10 nM RSL-3」、「30 nM RSL-3」及び「50 nM RSL-3」、並びに「100 nM RSL-3」、「120 nM RSL-3」及び「140 nM RSL-3」は、それぞれ所定濃度のRSL-3添加且つ試験化合物非添加の対照を、「+Fer-1」及び「+Apo」は、それぞれ所定濃度のRSL-3及び各薬剤の共添加を、それぞれ示す。
【0116】
図8Aに示すように、正常細胞(Promo1細胞)では、いずれの試験化合物の単独添加又は共添加によっても細胞死は引き起こされなかった。これに対し、
図8Bに示すように、ミトコンドリア心筋症患者細胞(ME250-1)では、RSL-3の添加によって細胞死が誘導された一方で、RSL-3及びFer-1又はApoの共添加によって、この細胞死が抑制された。
図9及び10に示すように、ミトコンドリア肝症患者細胞(ME263-1)及びKSS患者細胞(ME130-1)を用いた場合も、ミトコンドリア心筋症患者細胞(ME250-1)を用いた場合と同様の結果が確認された。
【0117】
<試験II:新規フェロトーシス阻害剤の探索>
試験Iの結果から、ミトコンドリアの機能障害を有する個体においては、主としてフェロトーシスを介して細胞死が誘導されること、及び当該細胞死がアポモルフィンのようなフェロトーシス阻害剤によって抑制されることが明らかとなった。そこで、アポモルフィンをリード化合物として、新規フェロトーシス阻害剤を探索した。
【0118】
アポモルフィンをリード化合物として、45個のアポモルフィン誘導体を合成又は購入等により準備した。これらのアポモルフィン誘導体のうち、以下の試験に使用した試験化合物を表2に示す。また、新規アポモルフィン誘導体の合成を以下に示す。
【0119】
【0120】
【0121】
窒素気流下、アポモルフィン塩酸塩0.5水和物(500 mg, 1.65 mmol)及び炭酸カリウム (0.46 g, 3.3 mmol)に、脱気した3-ペンタノン (5 mL)及び1-ブロモブタン (0.20 mL, 1.8 mmol)を加え、90℃で終夜(20時間)加熱した。放冷後、反応液をセライトろ過し、ろ液を減圧下濃縮した。得られた残渣を中圧分取シリカゲルカラムクロマトグラフィー(NHシリカゲル 30 g、ヘキサン / 酢酸エチル = 90 / 10~75 / 25)にて精製した。得られた1-1に約4 Mの塩化水素-1,4ジオキサン溶液(2 mL)を加えて溶解させ、減圧下濃縮して、化合物D36 (0.237 g, 0.659 mmol, 収率40%)を白色固体として得た。DMSO-d6中で測定した化合物D36の270 MHz
1H-NMRスペクトルを
図11に、D
2Oを含むDMSO-d6中で測定した化合物D36の270 MHz
1H-NMRスペクトルを
図12に、化合物D36のESI-MSスペクトル(上段:負イオンモード、下段:正イオンモード)を
図13に、それぞれ示す。分子式:C
21H
26ClNO
2(HCl塩)
分子量:359.89(HCl塩)
LRMS:C
21H
26NO
2に対する計算値 [M+H]
+ 324.20, 実測値: 324.6
1H NMR (270 MHz, DMSO-d6): δ 11.18 (brs, 1H), 8.85 (s, 1H), 8.31 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 7.37 (t, J = 8.1 Hz, 1H), 7.17 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 6.94 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 6.81 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 4.31 (m, 1H), 4.03 (t, J = 5.4 Hz, 2H), 3.70 (m, 1H), 3.45-3.30 (m, 3H), 3.09 (s, 3H), 3.10-2.95 (m, 1H), 2.90-2.70 (m, 1H), 1.76 (m, 2H), 1.47 (m, 2H), 0.94 (t, J = 8.1 Hz, 3H)。
【0122】
【0123】
窒素気流下、アポモルフィン塩酸塩0.5水和物(500 mg, 1.65 mmol)及び炭酸カリウム (0.46 g, 3.3 mmol)に、脱気した3-ペンタノン (5 mL)及び3-フェニルプロピルブロミド (0.275 mL, 1.81 mmol)を加え、90℃で終夜(20時間)加熱した。放冷後、反応液をセライトろ過し、ろ液を減圧下濃縮した。得られた残渣を中圧分取シリカゲルカラムクロマトグラフィー(NHシリカゲル 30 g、ヘキサン / 酢酸エチル = 90 / 10~75 / 25)にて精製した。得られた2-1に約4 Mの塩化水素-1,4ジオキサン溶液(2 mL)を加えて溶解させ、減圧下濃縮して、化合物D37 (0.175 g, 0.415 mmol, 収率25%)を白色固体として得た。DMSO-d6中で測定した化合物D37の270 MHz
1H-NMRスペクトルを
図14に、D
2Oを含むDMSO-d6中で測定した化合物D37の270 MHz
1H-NMRスペクトルを
図15に、化合物D37のESI-MSスペクトル(上段:負イオンモード、下段:正イオンモード)を
図16に、それぞれ示す。
分子式:C
26H
28ClNO
2(HCl塩)
分子量:421.97(HCl塩)
LRMS:C
26H
28NO
2に対する計算値 [M+H]
+ 386.21, 実測値: 386.8
1H NMR (270 MHz, DMSO-d6): δ 11.34 (brs, 1H), 8.93 (s, 1H), 8.33 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 7.42-7.11 (m, 7H), 6.90 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 6.80 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 4.31 (m, 1H), 4.02 (t, J = 5.4 Hz, 2H), 3.69 (m, 1H), 3.50-3.25 (m, 3H), 3.03 (s, 3H), 3.08-2.68 (m, 4H), 2.06 (m, 2H)。
【0124】
【0125】
窒素気流下、アポモルフィン塩酸塩0.5水和物(500 mg, 1.65 mmol)及び炭酸カリウム (0.46 g, 3.3 mmol)に、脱気したアセトン (5 mL)及び3-ブロモ1-プロパノール (0.16 mL, 1.8 mmol)を加え、50℃で3日間加熱した。放冷後、反応液をセライトろ過し、ろ液を減圧下濃縮した。得られた残渣を中圧分取シリカゲルカラムクロマトグラフィー(NHシリカゲル 30 g、ヘキサン / 酢酸エチル = 80 / 20~50 / 50)にて精製した。得られた固体3-1を塩化メチレン (4 mL)で懸濁洗浄し、ろ取した。これをジオキサン (4 mL)に溶解させ、約4 Mの塩化水素-1,4ジオキサン溶液 (0.5 mL)を加えて、減圧下濃縮して、化合物D38 (114 mg, 0.315 mmol, 収率19%)を白色固体として得た。DMSO-d6中で測定した化合物D38の270 MHz
1H-NMRスペクトルを
図17に、D
2Oを含む重DMSO-d6中で測定した化合物D38の270 MHz
1H-NMRスペクトルを
図18に、化合物D38のESI-MSスペクトル(上段:負イオンモード、下段:正イオンモード)を
図19に、それぞれ示す。
分子式:C
20H
24ClNO
3(HCl塩)
分子量:361.87(HCl塩)
LRMS:C
20H
24NO
3に対する計算値 [M+H]
+ 326.18, 実測値: 326.6
1H NMR (270 MHz, DMSO-d6): δ 8.87 (s, 1H), 8.28 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 7.33 (t, J = 8.1 Hz, 1H), 7.14 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 6.93 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 6.79 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 4.65 (t, J = 5.4 Hz, 1H), 4.20-4.01 (m, 3H), 3.80-2.55 (m, 11H), 1.91 (m, 2H)。
【0126】
【0127】
窒素気流下、アポモルフィン塩酸塩0.5水和物(1.00 g, 3.30 mmol)及び炭酸カリウム (910 mg, 6.58 mmol)に、脱気したアセトン (10 mL)及び1-ブロモ3-クロロプロパン (0.36 mL, 3.6 mmol)を加え、50℃で終夜(23時間)加熱した。放冷後、反応液をセライトろ過し、ろ液を減圧下濃縮した。得られた残渣を中圧分取シリカゲルカラムクロマトグラフィー(NHシリカゲル 30 g、ヘキサン / 酢酸エチル = 95 / 5~80 / 20)にて精製した。得られた4-1をシクロペンチルメチルエーテル (3 mL)に溶解させ、約4 Mの塩化水素-シクロペンチルメチルエーテル溶液 (1 mL)を加えた。析出した固体をろ取して、化合物D39 (107 mg, 0.281 mmol, 収率8.5%)を白色固体として得た。DMSO-d6中で測定した化合物D39の270 MHz
1H-NMRスペクトルを
図20に、D
2Oを含む重DMSO-d6中で測定した化合物D39の270 MHz
1H-NMRスペクトルを
図21に、化合物D39のESI-MSスペクトル(上段:正イオンモード、下段:負イオンモード)を
図22に、それぞれ示す。
分子式:C
20H
23Cl
2NO
2(HCl塩)
分子量:380.31(HCl塩)
LRMS:C
20H
23ClNO
2に対する計算値 [M+H]
+ 344.14, 実測値: 344.5
1H NMR (270 MHz, DMSO-d6): δ 10.60 (brs, 1H), 8.97 (s, 1H), 8.32 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 7.38 (t, J = 8.1 Hz, 1H), 7.19 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 6.96 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 6.82 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 4.33 (m, 1H), 4.13 (t, J = 5.4 Hz, 2H), 3.92 (t, J = 8.1 Hz, 2H), 3.73 (m, 1H), 3.60-2.65 (m, 5H), 3.07 (s, 3H), 2.21 (m, 2H)。
【0128】
【0129】
窒素気流下、アポモルフィン塩酸塩0.5水和物(500 mg, 1.65 mmol)及び炭酸カリウム (0.46 g, 3.3 mmol)に、脱気したアセトン (5 mL)及び1-ブロモプロパン(0.165 mL, 1.81 mmol)を加え、50℃で3日間加熱した。放冷後、反応液をセライトろ過し、ろ液を減圧下濃縮した。得られた残渣を中圧分取シリカゲルカラムクロマトグラフィー(NHシリカゲル 30 g、ヘキサン / 酢酸エチル = 95 / 5~80 / 20)にて精製した。得られた5-1に約4 Mの塩化水素-1,4ジオキサン溶液(2 mL)を加えて溶解させ、減圧下濃縮して、化合物D40 (120 mg, 0.347 mmol, 収率21%)を白色固体として得た。DMSO-d6中で測定した化合物D40の270 MHz
1H-NMRスペクトルを
図23に、D
2Oを含む重DMSO-d6中で測定した化合物D40の270 MHz
1H-NMRスペクトルを
図24に、化合物D40のESI-MSスペクトル(上段:正イオンモード、下段:負イオンモード)を
図25に、それぞれ示す。
分子式:C
20H
24ClNO
2(HCl塩)
分子量:345.87(HCl塩)
LRMS:C
20H
24NO
2に対する計算値 [M+H]
+ 310.18, 実測値: 310.8
1H NMR (270 MHz, DMSO-d6): δ 10.40 (brs, 1H), 8.85 (s, 1H), 8.30 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 7.36 (t, J = 8.1 Hz, 1H), 7.17 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 6.93 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 6.80 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 4.32 (m, 1H), 3.98 (t, J = 5.4 Hz, 2H), 3.71 (m, 1H), 3.45-2.64 (m, 5H), 3.06 (s, 3H), 1.78 (m, 2H), 0.99 (t, J = 8.1 Hz, 3H)。
【0130】
【0131】
窒素気流下、アポモルフィン塩酸塩0.5水和物(500 mg, 1.65 mmol)及び炭酸カリウム (0.46 g, 3.3 mmol)に、脱気した3-ペンタノン (5 mL)及び1-ブロモノナン (0.32 mL, 1.8 mmol)を加え、90℃で終夜(20時間)加熱した。放冷後、反応液をセライトろ過し、ろ液を減圧下濃縮した。得られた残渣を中圧分取シリカゲルカラムクロマトグラフィー(NHシリカゲル 30 g、ヘキサン / 酢酸エチル = 95 / 5~80 / 20)にて精製した。得られた6-1に約4 Mの塩化水素-1,4ジオキサン溶液(2 mL)を加えて溶解させ、減圧下濃縮して、化合物D41 (0.251 g, 0.584 mmol, 収率35%)を白色固体として得た。DMSO-d6中で測定した化合物D41の270 MHz
1H-NMRスペクトルを
図26に、D
2Oを含む重DMSO-d6中で測定した化合物D41の270 MHz
1H-NMRスペクトルを
図27に、化合物D41のESI-MSスペクトル(上段:正イオンモード、下段:負イオンモード)を
図28に、それぞれ示す。
分子式:C
26H
36ClNO
2(HCl塩)
分子量:430.03(HCl塩)
LRMS:C
26H
34NO
2に対する計算値 [M-H]
- 392.26, 実測値: 392.8
1H NMR (270 MHz, DMSO-d6):δ 11.09 (brs, 1H), 8.81 (s, 1H), 8.30 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 7.35 (t, J = 8.1 Hz, 1H), 7.16 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 6.92 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 6.79 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 4.30 (m, 1H), 4.01 (t, J = 5.4 Hz, 2H), 3.69 (m, 1H), 3.59-2.65 (m, 5H), 3.03 (s, 3H), 1.76 (m, 2H), 1.49-1.15 (m, 12H), 0.85 (t, J = 8.1 Hz, 3H)。
【0132】
【0133】
窒素気流下、アポモルフィン塩酸塩0.5水和物(0.50 g, 1.7 mmol)及び炭酸カリウム (0.46 g, 3.3 mmol) に、脱気した3-ペンタノン (5 mL)及び1,1,1-トリフルオロ-4-ブロモブタン(0.22 mL, 1.8 mmol)を加え、90℃で25時間加熱した。放冷後、反応液をセライトろ過し、ろ液を減圧下濃縮した。得られた残渣を中圧分取シリカゲルカラムクロマトグラフィー(NHシリカゲル 30 g、ヘキサン / 酢酸エチル = 95 / 5~80 / 20)にて精製した。得られた7-1に約4 Mの塩化水素-シクロペンチルメチルエーテル溶液(10 mL)を加え、析出した固体をろ取して、化合物D42 (0.17 g, 0.42 mmol, 収率25%)を白色固体として得た。DMSO-d6中で測定した化合物D42の270 MHz
1H-NMRスペクトルを
図29に、D
2Oを含む重DMSO-d6中で測定した化合物D42の270 MHz
1H-NMRスペクトルを
図30に、化合物D42のESI-MSスペクトル(上段:正イオンモード、下段:負イオンモード)を
図31に、それぞれ示す。
分子式:C
21H
23ClF
3NO
2(HCl塩)
分子量:413.87(HCl塩)
LRMS:C
21H
23F
3NO
2に対する計算値 [M+H]
+ 378.17, 実測値: 378.8
1H NMR (270 MHz, DMSO-d6):δ 11.14 (brs, 1H), 8.98 (s, 1H), 8.32 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 7.37 (t, J = 8.1 Hz, 1H), 7.18 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 6.93 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 6.82 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 4.31 (m, 1H), 4.08 (t, J = 5.4 Hz, 2H), 3.70 (m, 1H), 3.45-2.51 (m, 10H), 1.98 (m, 2H)。
【0134】
【0135】
窒素気流下、アポモルフィン塩酸塩0.5水和物(0.50 g, 1.7 mmol)、炭酸カリウム(0.42 g, 3.3 mmol)に、脱気したアセトン(5 mL)、フェネチルブロミド(3.60 mL, 26.7 mmol)を加え、50℃で加熱しながら、原料が消失するまでフェネチルブロミドを分割添加した。放冷後、反応液をセライトろ過し、ろ液を減圧下濃縮した。得られた残渣を、中圧分取シリカゲルカラムクロマトグラフィー(NHシリカゲル 10 g、ヘキサン / 酢酸エチル = 100 / 0~60 / 40)にて精製して8-1を得た。得られた8-1を、中圧分取シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ODSシリカゲル 10 g、1%塩酸 / アセトニトリル= 60 / 40)で精製して、化合物D48(0.145 g, 0.355 mmol, 収率21%)を白色固体として得た。
分子式:C25H26ClNO2(HCl塩)
分子量:407.94(HCl塩)
LRMS:C25H26NO2に対する計算値 [M+H]+ 372.20, 実測値: 372.5
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6):δ 10.91 (brs, 1H), 8.92 (s, 1H), 8.31 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 7.41-7.35 (m, 3H), 7.32 (t, J = 8.0 Hz, 2H), 7.23 (t, J = 8.0 Hz, 1H), 7.18 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 6.97 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 6.80 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 4.31 (m, 1H), 4.23 (t, J = 8.0 Hz, 2H), 3.71 (m, 1H), 3.47-3.30 (m, 3H), 3.11 (t, J = 8.0 Hz, 2H), 3.09-2.96 (m, 1H), 3.06 (s, 3H), 2.84-2.72 (m, 1H)。
【0136】
【0137】
窒素気流下、アポモルフィン塩酸塩0.5水和物(0.50 g, 1.7 mmol)、炭酸カリウム(0.66 g, 4.8 mmol)に、3-ペンタノン(5 mL)、4-フェニルブチルブロミド(0.295 mL, 1.76 mmol)を加え、90℃で18時間加熱した。放冷後、反応液に酢酸エチル、水を加えて分液し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した。有機層を減圧下濃縮して得られた残渣を、中圧分取シリカゲルカラムクロマトグラフィー(NHシリカゲル 10 g、ヘキサン / 酢酸エチル = 100 / 0~80 / 20)にて精製した。得られた9-1を、約4 Mの塩化水素-ジオキサン溶液(2 mL)に溶解させ、減圧下濃縮して得られた固体を、アセトニトリル/イソプロピルエーテル(1 / 1, 10mL)で懸濁洗浄して、化合物D50(0.16 g, 0.37 mmol, 収率22%)を白色固体として得た。
分子式:C27H30ClNO2(HCl塩)
分子量:435.99(HCl塩)
LRMS:C27H30NO2に対する計算値 [M+H]+ 400.23, 実測値: 400.8
1H NMR (270 MHz, DMSO-d6):δ 10.90 (brs, 1H), 8.82 (s, 1H), 8.31 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 7.42-7.10 (m, 7H), 6.92 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 6.80 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 4.32 (m, 1H), 4.05 (m, 2H), 3.71 (m, 1H), 3.47-3.27 (m, 3H), 3.11-2.92 (m, 1H), 3.05 (s, 3H), 2.80 (t, J = 13.5 Hz, 1H), 2.65 (t, 2H), 1.83-1.70 (m, 4H)。
【0138】
【0139】
窒素気流下、アポモルフィン塩酸塩0.5水和物(0.50 g, 1.7 mmol)、炭酸カリウム(0.66 g, 4.8 mmol)に、3-ペンタノン(5 mL)、3,3-ジフェニルプロピルブロミド(473 mg, 1.72 mmol)を加え、90℃で20時間加熱した。放冷後、反応液に塩化メチレン、水を加えて分液し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した。有機層を減圧下濃縮して得られた残渣を、中圧分取シリカゲルカラムクロマトグラフィー(NHシリカゲル 10 g、ヘキサン / 酢酸エチル = 100 / 0~80 / 20)にて精製した。得られた10-1を、約4 Mの塩化水素-ジオキサン溶液(2 mL)に溶解させ、減圧下濃縮して得られた固体をアセトニトリル/イソプロピルエーテル (1 / 1, 10mL)で懸濁洗浄して、化合物D54(198 mg, 0.398 mmol, 収率23%)を白色固体として得た。
分子式:C32H32ClNO2(HCl塩)
分子量:498.06(HCl塩)
LRMS:C32H32NO2に対する計算値 [M+H]+ 462.24, 実測値: 462.9
1H NMR (270 MHz, DMSO-d6):δ 10.96 (brs, 1H), 8.91 (s, 1H), 8.34 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 7.42-7.23 (m, 9H), 7.22-7.12 (m, 3H), 6.75 (m, 2H), 4.42 (t, J = 8.1 Hz, 1H), 4.30 (m, 1H), 3.90 (t, J = 5.4 Hz, 2H), 3.70 (m, 1H), 3.46-3.27 (m, 3H), 3.09-2.93 (m, 1H), 3.04 (s, 3H), 2.79 (t, J = 13.5 Hz, 1H), 2.59-2.45 (m, 2H)。
【0140】
【0141】
窒素気流下、アポモルフィン塩酸塩0.5水和物(0.70 g, 2.2 mmol)をDMF(3 mL)に溶解させ、氷冷下、水素化ナトリウム(60%、流動パラフィン分散)(0.26 g, 11 mmol)を加えた。30分後、反応液にブロモエタン(0.18 mL, 2.4 mmol)を加え、室温で1時間撹拌した。反応液にブロモエタン(0.05 mL, 0.66 mmol)を追加し、原料が消失したところで、水、塩化メチレンを加えて分液した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下濃縮して得られた残渣を、中圧分取シリカゲルカラムクロマトグラフィー(NHシリカゲル 30 g、ヘキサン / 酢酸エチル = 100 / 0~75 / 25)にて11-1の粗精製物を得た。これを中圧分取シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ODSシリカゲル 30 g、1%塩酸 / アセトニトリル= 70 / 30)で精製した。得られた精製物をメタノール(2 mL)に溶解させ、約4 Mの塩化水素-1,4ジオキサン溶液(1 mL)を加え、減圧下濃縮して化合物D55(208 mg, 0.626 mmol, 収率28%)を白色固体として得た。
分子式:C19H22ClNO2(HCl塩)
分子量:331.84(HCl塩)
LRMS:C19H22NO2に対する計算値 [M+H]+ 296.17, 実測値: 296.8
1H NMR (270 MHz, DMSO-d6):δ 11.00 (brs, 1H), 8.91 (s, 1H), 8.31 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 7.37 (t, J = 8.1 Hz, 1H), 7.17 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 6.94 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 6.81 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 4.32 (m, 1H), 4.10 (q, J = 8.1 Hz, 2H), 3.71 (m, 1H), 3.49-3.26 (m, 3H), 3.11-2.94 (m, 1H), 3.05 (s, 3H), 2.01 (t, J = 12.5 Hz, 1H), 1.38 (t, J = 8.1 Hz, 3H)。
【0142】
<試験III:アポモルフィン誘導体のフェロトーシス阻害効果>
アポモルフィンに代えて表2に示す試験化合物を共添加した他は試験Iと同様の手順で、種々のフェロトーシス誘導剤によって誘導される細胞死の抑制効果を評価した。対照の薬剤として、アポモルフィン、及びレーバー遺伝性視神経炎に対する治療薬として欧州で認可されているイデベノンを使用した。
【0143】
リー脳症患者細胞(KCMC10)に対してフェロトーシス誘導剤であるBSOと試験化合物とを共添加して、BSOによって誘導される細胞死の抑制効果を評価した結果を
図32に示す。図中、Aは、化合物D8、D9、D10、D18、D20、D26及びD36を用いた結果を、Bは、化合物D37、D38、D39、D40、D41、D42及びD43を用いた結果を、それぞれ示す。図中、横軸は、試験化合物であり、縦軸は、BSO非添加の対照における生細胞数を100%とした場合の各処理区の生細胞率(%)である。図中の値は、平均値±標準偏差を示す。試験化合物に関し、「対照」は、BSO非添加の対照を、「BSO」は、100 μMのBSO添加且つ試験化合物非添加の対照を、「+Apo」及び「+イデベノン」は、BSO添加且つアポモルフィン又はイデベノン添加の対照を、「+D8」等は、BSO及び化合物D8等の共添加を、それぞれ示す。
【0144】
MELAS患者細胞(ME169)に対してフェロトーシス誘導剤であるBSOと試験化合物とを共添加して、BSOによって誘導される細胞死の抑制効果を評価した結果を
図33に示す。図中、Aは、化合物D8、D9、D10、D18、D20、D26及びD36を用いた結果を、Bは、化合物D37、D38、D39、D40、D41、D42及びD43を用いた結果を、それぞれ示す。図中、横軸は、試験化合物であり、縦軸は、BSO非添加の対照における生細胞数を100%とした場合の各処理区の生細胞率(%)である。図中の値は、平均値±標準偏差を示す。試験化合物に関し、「対照」は、BSO非添加の対照を、「BSO」は、80 μMのBSO添加且つ試験化合物非添加の対照を、「+Apo」は、BSO添加且つアポモルフィン添加の対照を、「+D8」等は、BSO及び化合物D8等の共添加を、それぞれ示す。
【0145】
リー脳症患者細胞(KCMC10)に対してフェロトーシス誘導剤であるRSL-3と試験化合物とを共添加して、RSL-3によって誘導される細胞死の抑制効果を評価した結果を
図34に示す。図中、Aは、化合物D8、D9、D10、D18、D20、D26及びD36を用いた結果を、Bは、化合物D37、D38、D39、D40、D41、D42及びD43を用いた結果を、それぞれ示す。図中、横軸は、試験化合物であり、縦軸は、RSL-3非添加の対照における生細胞数を100%とした場合の各処理区の生細胞率(%)である。図中の値は、平均値±標準偏差を示す。試験化合物に関し、「対照」は、RSL-3非添加の対照を、「100 nM RSL-3」は、100 nMのRSL-3添加且つ試験化合物非添加の対照を、「+Apo」及び「+Fer-1」は、RSL-3添加且つアポモルフィン又はFer-1添加の対照を、「+D8」等は、RSL-3及び化合物D8等の共添加を、それぞれ示す。
【0146】
MELAS患者細胞(ME169)に対してフェロトーシス誘導剤であるRSL-3と試験化合物とを共添加して、RSL-3によって誘導される細胞死の抑制効果を評価した結果を
図35に示す。図中、Aは、化合物D8、D9、D10、D18、D20、D26及びD36を用いた結果を、Bは、化合物D37、D38、D39、D40、D41、D42及びD43を用いた結果を、それぞれ示す。図中、横軸は、試験化合物であり、縦軸は、RSL-3非添加の対照における生細胞数を100%とした場合の各処理区の生細胞率(%)である。図中の値は、平均値±標準偏差を示す。試験化合物に関し、「対照」は、RSL-3非添加の対照を、「100 nM RSL-3」は、100 nMのRSL-3添加且つ試験化合物非添加の対照を、「+Apo」及び「+Fer-1」は、RSL-3添加且つアポモルフィン又はFer-1添加の対照を、「+D8」等は、RSL-3及び化合物D8等の共添加を、それぞれ示す。
【0147】
図32及び33に示すように、化合物D8、D9、D10、D18、D20、D26及びD36はいずれも、リー脳症患者細胞(KCMC10)及びMELAS患者細胞(ME169)においてBSOによって誘導されるフェロトーシスによる細胞死を顕著に抑制した。また、
図34及び35に示すように、これらの化合物は、リー脳症患者細胞(KCMC10)及びMELAS患者細胞(ME169)においてRSL-3によって誘導されるフェロトーシスによる細胞死も抑制した。
【0148】
化合物D8、D9、D10、D18、D20、D26、D36、D37、D38、D39、D40、D41、D42、D43、D45、D47、D48、D50、D54及びD55の、リー脳症患者細胞(KCMC10)においてBSOによって誘導されるフェロトーシスによる細胞死の抑制効果の50%効果濃度(EC50)を表3に示す。
【0149】
【0150】
表3に示すように、化合物D55、D40、D45、D36、D47、D48、D38、D42、D8及びD37は、特に低いEC50値を示したことから、特に高いフェロトーシス阻害効果を有することが明らかとなった。
【0151】
<試験IV:新規フェロトーシス阻害剤のドパミンD2受容体結合活性>
本試験では、GeneBLAzer D2-Gqo5-NEAT-bla CHO-K1 Cell-based Assay(Thermo Fisher Scientific)を使用して、試験化合物のドパミンD2受容体結合活性の測定を行った。このCHO細胞は、薬剤添加によりシグナルトランスダクション経路が活性化され、レポーター遺伝子(βラクタマーゼ)が発現するようデザインされている。発現されたβラクタマーゼの働きにより、フェルスター共鳴エネルギー移動(FRET)基質が緑色蛍光(520 nm)から青色蛍光(447 nm)へとシフトするため、青色蛍光/緑色蛍光の比率を測定することにより、試験化合物の結合活性を測定することができる。384ウェルプレートに、10,000細胞/ウェルになるようCHO細胞を播種し、CO2インキュベーターで16~20時間培養した。試験化合物及びアゴニスト(アポモルフィン)をそれぞれ段階希釈した溶液を細胞に添加し、CO2インキュベーターで5時間培養した。基質ミックスを細胞に添加し、2時間、室温でインキュベートした。その後、Multimode Plate Reader EnVision 2105(Perkin Elmer)を用いて緑色蛍光及び青色蛍光を測定し、青色蛍光/緑色蛍光の比率を算出した。GraphPad Prism 8を用いて、測定した蛍光の比率から試験化合物それぞれのEC50値を求めた。
【0152】
使用した試験化合物のドパミンD2受容体結合活性を表4に示す。表中、活性強度が「++」は、アポモルフィンの結合活性のEC50値と同程度であったことを、「±」は、弱い結合活性が確認されたことを、「-」は、結合活性が確認されなかったことを、それぞれ示す。
【0153】
【0154】
表4に示すように、化合物D8、D9、D10、D18、D20、D26、D36、D37、D38、D39,D40、D41、D42、D43、D45、D47、D48、D50,D54及びD55はいずれも、ドパミンD2受容体結合活性を有していないか、殆ど有していないことが確認された。
【0155】
アポモルフィンは、ドパミン受容体アゴニストとして、オフ期のパーキンソン病に対する治療薬として承認され、臨床において使用されている。しかしながら、アポモルフィンをミトコンドリア病の治療薬として使う場合、ドパミン受容体アゴニスト活性に起因する催吐作用を伴う可能性がある。これに対し、前記の試験化合物はドパミンD2受容体結合活性を有していないことから、催吐作用のような副作用の少ない医薬の有効成分として使用し得ると推測される。
【0156】
<試験V:アポモルフィン誘導体の肝臓癌細胞系におけるフェロトーシス阻害効果>
本試験では、肝臓癌細胞系において、フェロトーシス誘導剤によって誘導される細胞死の抑制効果を評価した。フェロトーシス誘導剤として、RSL-3を使用した。対照の薬剤として、アポモルフィン(Apo)、及びフェロスタチン-1(Fer-1)を使用した。
【0157】
試験に用いるヒト肝臓癌細胞株(Huh7)を、細胞培養用96ウェルプレートに播種し、炭酸ガスインキュベーター内(37℃、5% CO2)で培養した。維持培地として、DMEM及び10% FBSを含む培地を、試験用培地として、DMEM無血清培地を、それぞれ使用した。70%コンフルエントとなった段階で試験用培地に交換し、DMSO又は試験化合物(GSK872の最終濃度5 μM、それ以外の化合物の最終濃度1 μM)をウェル中の細胞に添加し、1時間培養した。その後、フェロトーシス誘導剤(最終濃度0.5 μM)をウェル中の細胞に添加し、24時間培養した。培養終了後、乳酸脱水素酵素(LDH)活性を指標に細胞死抑制活性を測定するとともに、黄色テトラゾリウム塩(MTT)をホルマザンに還元する活性を指標に細胞増殖及び細胞生存率を測定した。
【0158】
使用した試験化合物のLDH活性及びMTT値を表5に示す。表中の値は、RSL-3非添加の対照におけるLDH活性及びMTT値をそれぞれ1とした場合の相対値である。
【0159】
【0160】
表5に示すように、RSL-3の添加によって細胞死が誘導された一方で、RSL-3及びFer-1又はApoの共添加だけでなく、RSL-3及びアポモルフィン誘導体の共添加によっても、この細胞死が抑制された。
【0161】
<試験VI:アポモルフィン誘導体の呼吸鎖複合体I阻害剤(ロテノン)誘導神経細胞死に対する阻害効果>
ヒト神経芽細胞腫由来細胞株SH-SY5Y細胞を播種し、呼吸鎖複合体I阻害薬であるロテノン(最終濃度1μM)及びアポモルフィン(Apo)(最終濃度0.1 nM、1 nM、10 nM、100 nM、1 μM又は10μM)又はアポモルフィン誘導体(10 nM、100 nM、1 μM又は10μM)を共添加して48時間培養した。培養終了後、ロテノン誘導細胞死を、サイトトキシティLDHアッセイキット-WST(Dojindo)を用いて測定した。前記試験において、最も有効な濃度で10%以上の細胞死阻害作用を示した場合を阻害効果ありと判定した。前記試験を2回実施して、ロテノン誘導細胞死の濃度依存的な阻害効果を2回確認できた場合を(++)と判定した。2回の試験のうち1回の試験で阻害効果ありと判定され、1回の試験で阻害効果なしと判定された場合、3回目の試験を実施した。3回目の試験において、濃度依存的な阻害効果が確認できた場合を(+)と、確認できなかった場合を(±)と、それぞれ判定した。2回の試験のいずれにおいてもロテノン誘導細胞死の阻害効果が確認できなかった場合を(-)と判定した。結果を表6に示す。
【0162】
【0163】
なお、本発明は、前記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、前記した実施例は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加、削除及び/又は置換をすることが可能である。
【0164】
本明細書で引用した全ての刊行物、特許及び特許出願をそのまま参考として本明細書にとり入れるものとする。