(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-03
(45)【発行日】2023-10-12
(54)【発明の名称】パッドタイプ吸収性物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/15 20060101AFI20231004BHJP
A61F 13/47 20060101ALI20231004BHJP
A61F 13/475 20060101ALI20231004BHJP
A61F 13/534 20060101ALI20231004BHJP
A61F 13/535 20060101ALI20231004BHJP
A61F 13/56 20060101ALI20231004BHJP
A61F 5/44 20060101ALN20231004BHJP
【FI】
A61F13/15 210
A61F13/47 300
A61F13/475 111
A61F13/475 112
A61F13/534 100
A61F13/535 200
A61F13/56 110
A61F5/44 H
(21)【出願番号】P 2017189904
(22)【出願日】2017-09-29
【審査請求日】2020-09-18
【審判番号】
【審判請求日】2022-05-23
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】弁理士法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柏木 達彦
【合議体】
【審判長】久保 克彦
【審判官】金丸 治之
【審判官】西本 浩司
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-518600(JP,A)
【文献】特開2009-261777(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0178650(US,A1)
【文献】特開2013-85829(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/15 - 13/84
A61L 15/16 - 15/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側シートと当該外側シート上に配した吸収体を有し、
前記外側シート裏面の前端部及び後端部のそれぞれにズレ止め部を設けた、
パッドタイプ吸収性物品であって、
前記外側シートの前後方向中央に位置する中央折り線と、
前記中央折り線と前記外側シートの前端縁との間、及び前記中央折り線と前記外側シートの後端縁との間にそれぞれ位置する外側折り線とを有し、
前記中央折り線及び前記外側折り線でそれぞれ谷折りすると前記ズレ止め部が当接するように構成され、
前記ズレ止め部の幅が、前記吸収体の幅の70~80%となるものであり、
前記吸収体は、中央部が肉厚、前端部及び後端部が肉薄であ
り、
前記吸収体の前記中央部は複数層、前記前端部及び前記後端部は1層で構成され、
前記複数層部分の前後端縁は、前記外側折り線から中央側に少なくとも5mm離れており、
前記外側折り線で折った段階で、前記外側シートの前後端縁が前記肉薄部分に位置すること
を特徴とするパッドタイプ吸収性物品。
【請求項2】
前記複数層部分の幅方向両端は、括れ形状であり、
前記括れ形状は、前記中央折り線を跨っている、請求項
1に記載のパッドタイプ吸収性物品。
【請求項3】
前記吸収体の表面を覆うように配された内側シートの幅方向の両側部にそれぞれ前後方向にギャザーシートが設けられ、
前記パッドタイプ吸収性物品の前後方向において、
前記ギャザーシートの立ち上がりが、前記外側折り線よりも前記外側シートの前後端縁側に位置する、請求項
1又は請求項
2に記載のパッドタイプ吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、裏面にズレ止め部を備えたパッドタイプ吸収性物品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
尿とりパッド等のパッドタイプ使い捨ておむつ等のように、テープタイプやパンツタイプの使い捨ておむつの内面や下穿き(以下、総称してアウターともいう)の内面に配置して使用されるパッドタイプ吸収性物品は、裏面の少なくとも前後方向両側の領域に、粘着剤やメカニカルファスナー(面ファスナー)のフック材(雄材)等からなるズレ止め部が設けられており、このズレ止め部がアウター内面に係止されることにより装着時のズレが防止されるものが一般的となっている。
従来、包装フィルム(パッケージ)に包装されるときのパッドタイプ吸収性物品の形状は、同物品の前後方向の中央部を頂点として、表面が対向するように2つに折り畳まれた形状となっている(特許文献1)。この形状の同物品が、同じ向きに複数個重なった状態で包装されて、一つのパッケージとして販売されている。同物品の使用者は、使用時にパッケージから同物品を1つ引き出し、使用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、2つに折り畳まれた同物品のズレ止め部は裏面に位置するため、同じ向きに複数個重ねると、ある同物品のズレ止め部は、隣接する他の同物品のズレ止め部と接着する事態を招く。この状態で、使用者が、パッケージから特定の同物品を1つ引き出そうとすると、意図せずに隣接する同物品も一緒に引き出されてしまい、煩わしい。
そこで、本発明が解決しようとする主たる課題は、重ねた状態でお互いに接着しないような形状のパッドタイプ吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決した本発明は、以下のとおりである。
【0006】
<請求項1に記載の発明>
外側シートと当該外側シート上に配した吸収体を有し、
前記外側シート裏面の前端部及び後端部のそれぞれにズレ止め部を設けた、
パッドタイプ吸収性物品であって、
前記外側シートの前後方向中央に位置する中央折り線と、
前記中央折り線と前記外側シートの前端縁との間、及び前記中央折り線と前記外側シートの後端縁との間にそれぞれ位置する外側折り線とを有し、
前記中央折り線及び前記外側折り線でそれぞれ谷折りすると前記ズレ止め部が当接するように構成され、
前記ズレ止め部の幅が、前記吸収体の幅の70~80%となるものであり、
前記吸収体は、中央部が肉厚、前端部及び後端部が肉薄であり、
前記吸収体の前記中央部は複数層、前記前端部及び前記後端部は1層で構成され、
前記複数層部分の前後端縁は、前記外側折り線から中央側に少なくとも5mm離れており、
前記外側折り線で折った段階で、前記外側シートの前後端縁が前記肉薄部分に位置すること
を特徴とするパッドタイプ吸収性物品。
【0007】
(作用効果)
本発明のパッドタイプ吸収性物品は、不透液性シートと当該不透液性シート上に配した吸収体と、不透液性シート裏面にズレ止め部を有している。
また、中央折り線、2つの外側折り線で谷折りすると、4つ折り形状となり、両ズレ止め部の接着でその形状を維持できる。そして、4つ折り形状としたときに両ズレ止め部は同物品の外側に存在しないので、同物品を同方向に重ねても互いに意図しない接着が発生しない。
さらに、吸収体の中央部が肉厚であることから、4つ折り形状としたときの同物品の厚さは、均一となる。というのも、従来の同物品では吸収体の全面の厚さは一定であるので4つ折り形状とした場合、外側折り線付近は、中央折り線付近よりも肉厚となる。しかしながら、吸収体の中央付近を肉厚とすることで、外側折り線付近の厚さと、中央折り線付近の厚さは同程度となり、同物品の厚さは偏りがなく均一となる、という効果を有する。なお、外側折り線、中央折り線の定義は後述する。
【0008】
【0009】
(作用効果)
同物品の外側折り線は1層からなる吸収体部分に、中央折り線は複数層からなる吸収体部分にそれぞれ位置する。肉厚部の折り曲げは、曲げに対する抵抗が強く、開こうとする力が働き、複数層構造であると中央折り線が開き易いため、同物品をアウター内面に沿うように展開し易い。また、外側折り線を1層からなる吸収体部分に配置することで折り曲げ負荷による吸収体の解体を防ぐ、という効果を有する。
(作用効果)
外側折り線を折り曲げたときに同物品の端縁が、前記吸収体の1層部上に位置するように折り線を配置しておくことで、4つ折り形状の厚さをより薄くすることができる、という効果を有する。
【0010】
<請求項2に記載の発明>
前記複数層部分の幅方向両端は、括れ形状であり、
前記括れ形状は、前記中央折り線を跨っている、請求項1に記載のパッドタイプ吸収性物品。
【0011】
(作用効果)
肉厚部の折り曲げは、曲げに対する抵抗が強く、開こうとする力が働く。中央折り線を括れ形状にして吸収体の幅を小さくすることで、その抵抗を小さくし、4つ折り形状を維持する、という効果を有する。
【0012】
<請求項3に記載の発明>
前記吸収体の表面を覆うように配された内側シートの幅方向の両側部にそれぞれ前後方向にギャザーシートが設けられ、
前記パッドタイプ吸収性物品の前後方向において、
前記ギャザーシートの立ち上がりが、前記外側折り線よりも前記外側シートの前後端縁側に位置する、請求項1又は請求項2に記載のパッドタイプ吸収性物品。
【0013】
(作用効果)
ギャザーシートの立ち上がり開始位置が、前端折り線又は後端折り線よりも端縁寄りに位置するようにすると、第1に使用時において同物品の中央折り線をアウター内面に置き、中央折り線を展開してもギャザーシートは立ち上がらず寝た状態のままである。第2に外側折り線をアウター内面に沿わせるように展開したとき、始めてギャザーシートは立ち上がる。したがって、使用者が同物品を装着する際、予め立ち上ったギャザーシートに意図せずに手を引っ掛けて同物品をずらしてしまうなどの不手際を防ぐことができ、作業効率の向上を図ることができる。
【0014】
【0015】
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、パッドタイプ吸収性物品は、重ねた状態でお互いに接着しないような形状となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】パッドタイプ吸収性物品の展開状態の表面側を示す平面図である。
【
図2】パッドタイプ吸収性物品の展開状態の裏面側を示す平面図である。
【
図4】パッドタイプ吸収性物品の4つ折り形状時の断面図である。
【
図6】アウター(
図5のB-B断面図)内面へのパッドタイプ吸収性物品の装着要領を概略的に示す断面図である。
【
図7】吸収体の中央部が砂時計状部であるパッドタイプ吸収性物品の展開状態の表面側を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。なお、以下の説明及び図面は、本発明の一実施形態を示したものにすぎない。
ここで、説明の便宜上、次の用語を定義する。外側折り線71とは、外側シート40の前端部FRの端縁(又は後端部BAの端縁)から中央方向に全長の約10~22%長となる位置であって、幅方向WDに延在する折り目をいう。また中央折り線72とは、外側シート40の前後方向LDの中点を通過する幅方向WDの折り目をいう。さらに、両外側折り線71から前後方向LDの、中央側を中央部CE、中央部CEの前縁側を前端部FR、後縁側を後端部BAということとする。ただし、中央部CEは吸収体23を複数層配置することができるようにし、また、外側折り線71は1層の吸収体23上に配置するほうが折り曲げがスムーズであることから、複数層部分の前後端縁は両外側折り線71から中央側に少なくとも5mm離しておくとよい。
【0019】
図1~
図3は、パッドタイプ吸収性物品200を示している。このパッドタイプ吸収性物品200は、使い捨ておむつや布の下着等のアウター100の内面70の所定の位置に敷いて使用されることを想定したものであり、股間部Cである中央部CE、その前後両側に延在する腹側部分である前端部FR及び背側部分である後端部BAを有するものである。なお、吸収パッドにおける「股間部」とは使用時に身体の股間と対応させる部分を意味し、殆ど多くの製品では前後方向中央部CE及びその前後近傍の部分である。
【0020】
パッドタイプ吸収性物品200の寸法は適宜定めることができ、例えば成人向け製品の場合、物品全長L(前後方向長さ)は450~630mm程度、物品全幅Wは135~320mm程度とすることができる。
【0021】
(吸収体23について)
パッドタイプ吸収性物品200は、外側シート40の内面と、内側シート22との間に、吸収体23が介在された基本構造を有している。吸収体23とは、排泄液その他の液体を吸収して保持する物体である。吸収体23の材料としては、パルプ繊維の積繊体、セルロースアセテート等のフィラメントの集合体、あるいは不織布を基本とし、必要に応じて高吸収性ポリマーを混合、固着等してなるものを用いることができる。必要に応じて、吸収体23はクレープ紙(図示せず)により包むことができる。また、吸収体23の形状は、相対的に前側の部分が後側の部分よりも幅広な帯状、あるいは長方形状、砂時計状等、適宜の形状とすることができる。
特に、
図7に示すように、中央部CEの幅方向WDの両端部を砂時計状とする場合、括れ部の幅は、幅方向WD全長の60~85%にすると好適である。
というのは、吸収体23は、上述のとおり、パルプ繊維の積繊体等で構成されている。厚く形成された吸収体23に対して曲げようとする力を加えると、開き方向に応力が働く。そこで、括れ部を形成することで応力を緩和でき、4つ折り形状が意図せずに展開するのを防ぐことができることとなる。
【0022】
吸収体23は、装着時の不快感をできるだけ排除するため、排泄液が逆戻りしない限りにおいて、できるだけ薄く形成すること(肉薄)が望まれる。吸収体23における繊維目付け及び吸収性ポリマーの目付けは適宜定めることができるが、繊維目付けは200~600g/m2程度とするのが好ましく、また吸収性ポリマーの目付けは100~300g/m2程度とするのが好ましい。これらの目付けで構成された吸収体を1層(又は肉薄)の吸収体23aということとする。
【0023】
(2層目付)
しかしながら、1層の吸収体23では、中央部CE付近の排泄液を十分に吸収しきれない場合も想定され得る。これに対応するには、吸収体23の中央部CEに相当する部分(ただし、外側折り線71に近傍する範囲を除く。)に、吸収体23を複数層配するとよい。複数層配することで、肉厚になり、より排泄液の吸収が可能となる。例えば、吸収体の厚さを2層23b(
図1、7の図示形態では、太線枠内の領域23b)とすることで、高吸収性ポリマーを2倍量配置することができる。しかるに、中央部CE(股間部)に相当する部分において、より多くの排泄液を吸収できる。また、同物品200を使用する際、中央部CEが肉厚であるため、4つ折り形状から中央折り線72を前後方向に展開しやすく、動作がスムーズである。
【0024】
(外側シート)
外側シート40は、排泄液を透過しないシート(液不透過性シート21)と当該液不透過性シート21の裏面に配され、製品の外面を構成するシート(外装シート25)で構成される。
【0025】
(不透液性シート)
液不透過性シート21は、吸収体23の裏側に、吸収体23の周縁より所定長さ食み出すように設けられている。そして、内側シート22と液不透過性シート21は吸収体23を表面及び裏面から挟み込むように内包し、それぞれ接着し、吸収体23を収納した形態になる。したがって、不透液性シート21は、パッドタイプ吸収性物品200の裏面を構成することができる。しかしながら、不透液性シート21の裏面にさらに外装シート25を配することができる。
液不透過性シート21の素材は、特に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂や、ポリエチレンシート等に不織布を積層したラミネート不織布、防水フィルムを介在させて実質的に液不透過性を確保した不織布(この場合は、防水フィルムと不織布とで液不透過性シートが構成される。)などを例示することができる。もちろん、この他にも、近年、ムレ防止の観点から好まれて使用されている液不透過性かつ透湿性を有する素材も例示することができる。この液不透過性かつ透湿性を有する素材のシートとしては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を混練して、シートを成形した後、一軸又は二軸方向に延伸して得られた微多孔性シートを例示することができる。さらに、マイクロデニール繊維を用いた不織布、熱や圧力をかけることで繊維の空隙を小さくすることによる防漏性強化、高吸水性樹脂又は疎水性樹脂や撥水剤の塗工といった方法により、防水フィルムを用いずに液不透過性としたシートも、液不透過性シート21として用いることができる。本発明の実施例では液不透過性シート21の裏面に外装シート25を配し、外装シート25をパッドタイプ吸収性物品200の裏面となるように説明している。しかし、外装シート25は省略することもでき、液不透過性シート21をパッドタイプ吸収性物品200の裏面とする構成にすることもできる。
【0026】
(外装シート)
外装シート25は、必要に応じて製品裏面を構成するシートである。素材は、不織布が好適であるが、これに限定されない。不織布の種類は特に限定されず、素材繊維としては、例えばポリエチレン又はポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維を用いることができ、加工法としてはスパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、エアスルー法、ニードルパンチ法等を用いることができる。ただし、肌触り及び強度を両立できる点でスパンボンド不織布やSMS不織布、SMMS不織布等の長繊維不織布が好適である。不織布は一枚で使用する他、複数枚重ねて使用することもできる。後者の場合、不織布相互をホットメルト接着剤等により接着するのが好ましい。不織布を用いる場合、その繊維目付けは10~50g/m2、特に15~30g/m2のものが望ましい。
【0027】
(内側シート)
吸収体23の表面は、内側シート22で覆われている。内側シート22は直接、股間部Cと接し、排泄液を素早く透過する必要性から、液透過性を有する有孔又は無孔の不織布を用いることができる。不織布の構成繊維が何であるかは特に限定されない。例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維などや、これらから二種以上が使用された混合繊維、複合繊維などを例示することができる。さらに、不織布は、どのような加工によって製造されたものであってもよい。加工方法としては、公知の方法、例えば、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法、エアスルー法、ポイントボンド法等を例示することができる。例えば、柔軟性、ドレープ性を求めるのであれば、スパンレース法が、嵩高性、ソフト性を求めるのであれば、サーマルボンド法が、好ましい加工方法となる。
【0028】
パッドタイプ吸収性物品200の前後方向両端部では、外側シート40および内側シート22が吸収体23の前後端よりも前後両側にそれぞれ延在されて貼り合わされ、吸収体23の存在しないエンドフラップ部EFが形成されている。
【0029】
パッドタイプ吸収性物品200の両側部では、外側シート40が吸収体23の側縁よりも外側にそれぞれ延在され、この延在部から内側シート22の側部までの部分の内面にはギャザーシート24の幅方向外側の部分24xが前後方向全体にわたり貼り付けられ、吸収体23の存在しないサイドフラップ部SFを構成している。これらを含め、素材の貼り合わせ部分は、ホットメルト接着剤、ヒートシール、超音波シールにより形成でき、平面図では斜線模様、断面図では点模様で示されている。
【0030】
これらエンドフラップ部EF及びサイドフラップ部SF以外の吸収体介在部分が、排泄物を保持する本体部BDを構成する。
【0031】
ギャザーシート24の素材としては、プラスチックシートやメルトブローン不織布を使用することもできるが、肌への感触性の点で、不織布にシリコーンなどにより撥水処理をしたものが好適に使用される。
【0032】
ギャザーシート24の幅方向中央側の部分24cは内側シート22上にまで延在しており、その幅方向中央側の端部には、細長状弾性部材24Gが前後方向に沿って伸張状態でホットメルト接着剤等により固定されている。この細長状弾性部材24Gとしては、糸状、紐状、帯状等に形成された、スチレン系ゴム、オレフィン系ゴム、ウレタン系ゴム、エステル系ゴム、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリスチレン、スチレンブタジエン、シリコーン、ポリエステル等、通常使用される素材を用いることができる。
【0033】
両ギャザーシート24,24は、幅方向外側の部分24xが前後方向全体にわたり物品内面(図示形態では内側シート22表面および外側シート40内面)に貼り合わされて固定されるとともに、幅方向中央側の部分24cが、前後方向の両端部では物品内面(図示形態では内側シート22表面)に貼り合わされて固定され、かつ前後方向の両端部の間では物品内面(図示形態では内側シート22表面)に固定されていない。この非固定部分は、
図3に示されるように、物品内面(図示形態ではトップシート22表面)に対して起立可能な立体ギャザーとなる部分であり、その起立基端24bはギャザーシート24における幅方向外側の固定部分24xと内側の部分24cとの境に位置する。
【0034】
また、ギャザーシート24は、前後方向の両端部が貼り合された固定部分の中央側にある非固定部分で立ち上がる。そのギャザーシート24の固定部分と非固定部分の境目である、立ち上がり開始位置は、外側折り線71よりも両端側10~30mmにするとよい。これにより、装着作業が容易となる。というのも、第1に装着作業においてパッドタイプ吸収性物品200の中央折り線72をアウター100の内面70の股間部Cに置き、中央折り線72を展開する。このとき、ギャザーシート24は立ち上がらず寝たままである。第2に外側折り線71をアウター100の内面70に沿わせるように展開したとき、始めてギャザーシート24は立ち上がる。したがって、使用者がパッドタイプ吸収性物品200を装着する際、予め立ち上ったギャザーシート24に意図せずに手を引っ掛けて同物品200をずらしてしまうなどの不手際を防ぐことができ、作業効率の向上を図ることができる。
【0035】
図2~
図4および
図6に示すように、パッドタイプ吸収性物品200の裏面(外側シート40の裏面)には、粘着剤層からなるズレ止め部30が設けられている。パッドタイプ吸収性物品200はアウター100の内面70に装着して使用するものである。しかしながら、パッドタイプ吸収性物品200をアウター100の内面70に接着しておかないと、パッドタイプ吸収性物品200がズレてしまうおそれがある。したがって、粘着剤層からなるズレ止め部を接着するために通常は、ズレ止め部30を設ける。
このズレ止め部30としては、フック状突起を多数有するフックテープを貼り付けることにより形成することも可能である。フック状突起の形状としてはキノコ状の他、フック状、レ字状、J字状、T字状、ダブルJ字状(J字状のものを背合わせに結合した形状のもの)等が存在するが、いずれの形状であっても良い。なお、フックテープはホットメルト接着剤等により取り付けることができる。
【0036】
ズレ止め部30を配置する位置は、外側シート40裏面における前後方向の前端部FR及び後端部BAであって少なくとも外側折り線71より端側の領域とする。ズレ止め部30の寸法は、ズレ止め部30を配置する位置の全領域に亘ってもよく、好ましくは、幅を吸収体23の幅の70~80%程度、長さを吸収体23の全長の10~20%程度とするとよい。
【0037】
なお、使用者は、使用時を除きズレ止め部30に触れることはないため、ズレ止め部30を覆う粘着力保持を目的とする保護シートは不必要である。したがって、保護シートを剥離し、捨てる手間が省ける。
【0038】
(パッケージ方法)
包装については、4つ折り形状のパッドタイプ吸収性物品200を同じ向きに複数個重ねた状態で包装フィルムに詰めることができる。したがって、隣り合うパッドタイプ吸収性物品200は、裏面の中央折り線72と外側折り線71で囲まれた部分どうしが互いに同方向に接した状態で包装される。
【0039】
(パッドタイプ吸収性物品の引き出し)
通常、使用者はパッドタイプ吸収性物品200を包装フィルムから一つずつ引き出すことができる。上記のごとくパッドタイプ吸収性物品200が重なった状態で包装されていれば、隣り合う同物品とのズレ止め部30どうしの接着がないため、スムーズにその一つのみを引き出すことができる。
仮に、パッドタイプ吸収性物品200が2つ折り形状で複数重ねた状態で包装されているならば、同物品200に設けられたズレ止め部30が、隣り合う同物品200のズレ止め部30と接着することになる。使用者がその物品の一つを引き出そうすると、意図せず隣り合う同物品も一緒に引っ張られてしまう。また、一つの同物品200を引き出したとしても、ズレ止め部30がむき出しであるため、使用時に予期せぬ位置に接着することも生じえ、煩雑である。しかしながら、同物品200を4つ折り形状とすることで、このような煩雑さから解放される。
【0040】
(折り畳み)
4つ折り形状の形成は次のとおり行う。まず、パッドタイプ吸収性物品200の外側折り線71を頂点に、前端部FRと中央部CEが対向するように折り畳む。後端部BAについても同様に折り畳む。次に、中央折り線72を頂点に、前端部FR及び後端部BAそれぞれの裏面に設けたズレ止め部30が当接するように折り畳む。この過程によりできた形状を、4つ折り形状という。一方、特許文献1に示す従来の折り形状は、パッドタイプ吸収性物品200の中央折り線72を頂点に前端部FRと後端部BAが対向するように折り畳んだ、2つ折り形状である。
【0041】
(装着例)
本パッドタイプ吸収性物品200をアウター100に装着する際には、先ず、同物品200を4つ折り形状のまま、前後方向をアウター100の内面70の腹側及び背側に沿うように持ち込み、アウター100の内面70の股間部Cに当てる。その後、中央折り線72を展開する。次いで2つある外側折り線71のうちの一方を展開し、裏面のズレ止め部30をアウター100の内面70の所定の位置に係止する。同様に、もう一方の外側折り線71を展開し、ズレ止め部30を所定の位置に係止する。以上の作業で、装着は完了する。
従来の製品に使用される、ズレ止め部30を覆う粘着力保持を目的とした保護シートがないため、使用者は、保護シートを剥離する必要がない。またズレ止め部30に触れることがないため、ズレ止め部に糸くずその他の異物が貼り付いて係止力が低下することもない。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、パッドタイプ吸収性物品である限り、尿とりパッド等のパッドタイプ使い捨ておむつの他、生理用ナプキンにも利用可能である。
【符号の説明】
【0043】
21…液不透過性シート、22…内側シート、23…吸収体、23a…吸収体1層部、23b…吸収体2層部、24…ギャザーシート、25…外装シート、30…ズレ止め部、40…外側シート、100…アウター、200…パッドタイプ吸収性物品、C…股間部、70…装着部、71…外側折り線、72…中央折り線、FR…前端部、CE…中央部、BA…後端部。