(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-03
(45)【発行日】2023-10-12
(54)【発明の名称】流体圧シリンダ
(51)【国際特許分類】
F15B 15/14 20060101AFI20231004BHJP
【FI】
F15B15/14 375
F15B15/14 380B
(21)【出願番号】P 2019083285
(22)【出願日】2019-04-24
【審査請求日】2021-10-26
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】船戸 泰志
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 一樹
【審査官】所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-025506(JP,A)
【文献】特開2003-232474(JP,A)
【文献】特開2018-128088(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダチューブと、
前記シリンダチューブに挿入されるピストンロッドと、
ねじ締結によって前記ピストンロッドの端部に取り付けられ前記シリンダチューブ内をロッド側室とボトム側室とに区画するピストンと、
前記ピストンロッドの前記端部を径方向の外側から内側に向けて押圧して前記ねじ締結の緩み止めをする緩み止め部と、
軸方向に沿って前記ピストンロッドに形成される内部通路と、
前記ピストンロッドに形成され前記内部通路と前記ロッド側室とを連通する連通路と、
前記内部通路に挿入され前記ピストンロッドの前記端部における端面に対する前記内部通路の開口を塞ぐプラグと、を備え、
前記プラグは、前記緩み止め部の押圧により変形した前記ピストンロッド
のみにより前記内部通路から抜け止めされることを特徴とする流体圧シリンダ。
【請求項2】
前記内部通路の内周には、前記プラグが螺合する雌ねじ部が形成され、
前記緩み止め部の押圧によって前記雌ねじ部が変形することにより、前記プラグが前記内部通路から抜け止めされることを特徴とする請求項1に記載の流体圧シリンダ。
【請求項3】
前記緩み止め部は、前記内部通路の前記開口を絞るように前記ピストンロッドを径方向内側に押圧し、
前記プラグは、前記内部通路の前記開口が絞られることにより、前記内部通路から抜け止めされることを特徴とする請求項1に記載の流体圧シリンダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体圧シリンダに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ピストンロッドに軸方向に沿って形成されて流体圧源とシリンダチューブ内を連通するロッド内通路と、ロッド内通路のシリンダチューブ内に開口する開口端から挿入されるプラグと、ピストンロッドに径方向に沿って形成されてロッド内通路を横切る横孔と、横孔に挿入されるピンと、を備える油圧シリンダが開示されている。ピストンロッドにはロッド内通路の内周に内周ネジ部が形成され、プラグには内周ネジ部に螺合する外周ネジ部と、ピンに係合してプラグの回り止めをする係合部と、が形成される。
【0003】
また、この油圧シリンダでは、ピストンに形成されるネジ穴に螺合するネジと、ネジによってピストンロッドの外周に押し付けられるボールと、によってピストンロッドとピストンの回り止めがされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の流体圧シリンダでは、プラグに係合部を設け、ピストンロッドに形成される横孔を通じてピンをプラグの係合部に係合することで、プラグの回り止めを行う。このため、ピストンロッドやプラグには、回り止めのために加工を施す必要がある。
【0006】
また、この流体圧シリンダでは、ピストンとピストンロッドの回り止めをする機構と、プラグとピストンロッドのロッド内通路との回り止めする機構と、を設ける必要がある、このため、特許文献1の流体圧シリンダでは、ピストン周辺の構造が複雑化する。
【0007】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、流体圧シリンダにおけるピストン周辺の構造を簡素化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、流体圧シリンダであって、シリンダチューブと、シリンダチューブに挿入されるピストンロッドと、ねじ締結によってピストンロッドの端部に取り付けられシリンダチューブ内をロッド側室とボトム側室とに区画するピストンと、ピストンに挿入されピストンロッドの端部を径方向の外側から内側に向けて押圧してねじ締結の緩み止めをする緩み止め部と、軸方向に沿ってピストンロッドに形成される内部通路と、ピストンロッドに形成され内部通路とロッド側室とを連通する連通路と、内部通路に挿入されピストンロッドの端部における端面に対する内部通路の開口を塞ぐプラグと、を備え、プラグは、緩み止め部の押圧により変形したピストンロッドのみにより内部通路から抜け止めされることを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、内部通路の内周には、プラグが螺合する雌ねじ部が形成され、緩み止め部の押圧によって雌ねじ部が変形することにより、プラグが内部通路から抜け止めされることを特徴とする。
【0010】
これらの本発明では、ピストンとピストンロッドのねじ締結の緩み止めをするための緩み止め部の押圧力によってピストンロッドを変形させ、このようなピストンロッドの変形により内部通路からのプラグの抜け止めがされる。よって、プラグの抜け止めのためにピストンロッドやプラグに加工を施す必要がなく、ピストンとピストンロッドのねじ締結の緩み止めとは別にプラグの抜け止め構造を設ける必要もない。
【0011】
また、本発明は、緩み止め部が、内部通路の開口を絞るようにピストンロッドを径方向内側に押圧し、プラグは、内部通路の開口が絞られることにより、内部通路から抜け止めされることを特徴とする。
【0012】
この発明では、プラグは、単に内部通路に挿入されていればよく、ねじ等によってプラグを内部通路に取り付けなくてもよいため、プラグや内部通路へのねじ等の加工が不要となり、製造コストが低減される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、流体圧シリンダにおけるピストン周辺の構造が簡素化される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態に係る油圧シリンダの断面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る油圧シリンダにおけるピストン周辺を示す断面図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る油圧シリンダの第1変形例に係るピストン周辺を示す断面図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る油圧シリンダの第2変形例に係るピストン周辺を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る流体圧シリンダとして、作動油を作動流体として駆動する油圧シリンダ100について説明する。
【0016】
図1に示すように、油圧シリンダ100は、筒状のシリンダチューブ10と、シリンダチューブ10に挿入されるピストンロッド20と、ピストンロッド20の基端側の端部(基端部)に連結されるピストン30と、を備える。
【0017】
ピストン30は、シリンダチューブ10の内周面に沿って摺動自在に設けられる。シリンダチューブ10の内部は、ピストン30によってロッド側室1及びボトム側室2の2つの流体圧室に区画される。
【0018】
ピストンロッド20は、
図2に示すように、外周に雄ねじ部21aが形成される基端部(端部)21と、基端部21よりも外径が大きい本体部22と、本体部22と基端部21の外径差により形成されピストン30が着座する段差面23と、を有する。ピストンロッド20は、ピストン30の内周に形成される雌ねじ部30aに雄ねじ部21aが螺合し、ピストン30が段差面23に着座した状態で所定の締め付け力(以下、「ピストン締め付け力」と称する。)で締め付けられることでピストン30と連結される。なお、ピストン締め付け力は、単一の値を指すものではなく、所定の数値幅を有するものである。
【0019】
基端部21の外周は、雄ねじ部21aと、ピストンロッド20の基端側の端面である基端面20a(
図2参照)に接続される円筒面である円筒部21bと、を有する。つまり、雄ねじ部21aは、基端部21の軸方向の全長にわたって形成されるものではなく、基端部21の軸方向における一部に形成される。円筒部21bは、雄ねじ部21aよりも外径が小さく形成される。
【0020】
ピストンロッド20の先端は、
図1に示すように、他の機器への取付用の取付部20bが形成され、シリンダチューブ10の開口端から延出する。
【0021】
シリンダチューブ10の開口端には、ピストンロッド20が挿通するシリンダヘッド11が設けられる。シリンダヘッド11は、複数のボルト(図示省略)を用いてシリンダチューブ10の開口端に締結される。また、シリンダチューブ10の端部には、他の機器への取付用の取付部10aが形成される。
【0022】
ピストンロッド20には、
図1及び
図2に示すように、ロッド側室1に作動油を導くロッド側通路5と、ボトム側室2に作動油を導くボトム側通路8と、が形成される。
【0023】
ロッド側通路5は、ピストンロッド20の基端面20aに開口し、ピストンロッド20の軸方向に沿って形成される内部通路6と、ピストンロッド20の径方向に延びて形成され内部通路6とロッド側室1とを連通する連通路7と、を有する。連通路7は、内部通路6に対して垂直に設けられ、ピストンロッド20の本体部22の外周面に開口する。
【0024】
シリンダチューブ10から延出するピストンロッド20の先端には、内部通路6に作動油を導くロッド側ポート9aが形成される。ロッド側ポート9aには配管(図示省略)が接続され、ロッド側ポート9aは、配管を通じて油圧源(流体圧源)またはタンク(図示省略)と選択的に接続される。
【0025】
内部通路6には、ピストンロッド20の基端面20aに対する開口を塞ぐプラグ40が挿入される。プラグ40は、
図2に示すように、外周に雄ねじ部41aが形成されるプラグねじ部41と、プラグねじ部41と同軸に形成され、プラグねじ部41よりもピストンロッド20の先端側(
図2中左側)に設けられる軸部42と、軸部42の外周に設けられ、軸部42の外周と内部通路6の内周との間を封止するシール部材43と、を有する。
【0026】
内部通路6には、プラグ40のプラグねじ部41が螺合する雌ねじ部6aと、プラグ40と内部通路6とのねじ締結の座面となる着座面6bと、が形成される。
【0027】
プラグ40は、内部通路6の雌ねじ部6aにプラグねじ部41が螺合して、着座面6bに接触した状態から所定の締め付け力で締め付けられることで、内部通路6に取り付けられる。また、シール部材43により軸部42と内部通路6との間が封止されることで、内部通路6とボトム側室2との連通が遮断される。
【0028】
ボトム側通路8は、ピストンロッド20の基端面20aに開口し、ピストンロッド20の軸方向に沿って形成される。また、
図1に示すように、シリンダチューブ10から延出するピストンロッド20の先端には、ボトム側通路8に作動油を導くボトム側ポート9bが形成される。ボトム側ポート9bには配管(図示省略)が接続され、ボトム側ポート9bは、配管を通じて油圧源またはタンクと選択的に接続される。
【0029】
油圧源からロッド側通路5又はボトム側通路8を通じてロッド側室1又はボトム側室2に選択的に作動油(作動流体)が導かれると、ピストンロッド20は、シリンダチューブ10に対して移動する。これにより、油圧シリンダ100は伸縮作動する。
【0030】
油圧シリンダ100は、
図2及び
図3に示すように、ピストンロッド20の基端部21を径方向の外側から内側に向けて(ピストンロッド20の中心軸O1に向けて)押圧して、ピストン30とピストンロッド20のねじ締結の緩み止めをする緩み止め部50をさらに備える。
【0031】
緩み止め部50は、径方向に沿ってピストン30に形成される挿入孔55に挿入される。挿入孔55は、ピストン30の外周面及び雌ねじ部30aが形成される内周面に開口する貫通孔である。挿入孔55は、ピストン30とピストンロッド20が連結された状態において、ピストンロッド20の円筒部21bの外周に臨む位置に設けられる。また、挿入孔55は、
図2及び
図3に示すように、ピストン30とピストンロッド20が連結された状態において、プラグ40のプラグねじ部41の径方向外側であって、その中心軸O3がプラグ40の中心軸(内部通路6の中心軸)O2と直交する位置に設けられる。これにより、ピストン30(ピストンロッド20)の中心軸O1に対する緩み止め部50とプラグ40の周方向の位置(角度)が一致し、緩み止め部50とプラグ40とは、ピストン30の中心軸O1に対して径方向に並ぶ(
図3参照)。
【0032】
緩み止め部50は、挿入孔55に形成される雌ねじ部55aに螺合するねじ部材としてのセットスクリュ51と、セットスクリュ51とピストンロッド20の外周面との間に設けられ、ピストンロッド20を径方向の内側に向けて押圧する球状の押圧部材としてのスチールボール52と、を有する。
【0033】
緩み止め部50では、セットスクリュ51が所定の締め付け力で締め付けられることで、スチールボール52によってピストンロッド20の円筒部21bを所定の押圧力で押圧する。これにより、スチールボール52に対してピストンロッド20の円筒部21bが軸方向に係止され、ピストン30とピストンロッド20が緩み止めされる。
【0034】
また、ピストンロッド20が緩み止め部50に押圧されることにより、内部通路6に形成される雌ねじ部6aがプラグ40のプラグねじ部41の雄ねじ部41aに密着するように、ピストンロッド20の一部(内部通路6とスチールボール52との間の部分)が変形する。これにより、内部通路6の雌ねじ部6aとプラグ40の雄ねじ部41aとが緩み止めされ、プラグ40が内部通路6から抜け止めされる。
【0035】
ピストンロッド20の円筒部21b及び内部通路6の雌ねじ部6aは、緩み止め部50の押圧によって、それぞれ弾性域内で変形することが望ましい。つまり、緩み止め部50のセットスクリュ51の締め付け力は、ピストンロッド20の円筒部21b及び内部通路6の雌ねじ部6aが塑性変形せず、弾性変形する程度に設定されることが望ましい。これによれば、ピストン30とピストンロッド20を分解するオーバーホール後においても、ピストン30とピストンロッド20を補修せずに再利用することができる。なお、これに限らず、緩み止め部50の押圧によってピストンロッド20の円筒部21bや内部通路6の雌ねじ部6aが塑性変形してもよい。また、緩み止め部50は、ピストンロッド20に対し、雄ねじ部21aではなく、円筒部21bを押圧するように構成される。雄ねじ部21aが緩み止め部50によって押圧される場合には、雄ねじ部21aのねじ山を押圧することになるため、円筒部21bを押圧する場合と比べて塑性変形が生じやすい。つまり、緩み止め部50によって円筒部21bを押圧する構成とすることで、ピストンロッド20の変形を弾性変形としやすく、ピストンロッド20を分解した後に再利用しやすくなる。なお、緩み止め部50が円筒部21bを押圧する構成は必須のものではなく、後述のように雄ねじ部21aが押圧される構成であってもよい。
【0036】
以上のように、緩み止め部50は、ピストンロッド20の基端部21の円筒部21bを径方向外側から内側に向けて押圧することで、ピストン30とピストンロッド20の緩み止めを行うと共に、内部通路6の雌ねじ部6aを径方向内側に変形させてプラグ40の抜け止めも行う。つまり、緩み止め部50は、ピストン30とピストンロッド20の緩み止め機構であると共に、プラグ40の抜け止め機構としての機能も発揮する。よって、ピストン30とピストンロッド20の緩み止めとは別にプラグ40の抜け止め構造を設ける必要がなく、プラグ40の抜け止めのためにピストンロッド20やプラグ40に加工を施す必要もない。したがって、簡易な構造により、ピストンロッド20の内部通路6からのプラグ40の抜け止めを行うことができる。
【0037】
また、一般に、ねじ締結された2つの部材を緩み止めする方法としては、ポンチかしめなどによって2つの部材の少なくとも一方を塑性変形させる方法も知られている。しかしながら、かしめによる緩み止めは、作業者の手作業で行われることが多く、熟練した作業が求められる。
【0038】
これに対し、本実施形態では、所定の締め付け力でセットスクリュ51をねじ込むことで、ピストン30とピストンロッド20の緩み止めとプラグ40の抜け止め(プラグ40と内部通路6との緩み止め)が行われる。よって、締め付け力の管理を行うだけでよいため、容易にピストン30とピストンロッド20の緩み止め、及び、プラグ40と内部通路6の緩み止めをすることができる。
【0039】
次に、油圧シリンダ100の製造方法について説明する。具体的には、ピストン30とピストンロッド20の組み立て方法について説明する。
【0040】
ピストン30とピストンロッド20の組み立て方法としては、ピストン30とピストンロッド20とを所定の締め付け力(ピストン締め付け力)によって締結した後に緩み止め部50によってピストンロッド20を押圧する方法(以下、「第1組立方法」と称する。)と、緩み止め部50によってピストンロッド20を押圧した状態でピストン30とピストンロッド20とをピストン締め付け力で締結する方法(以下、「第2組立方法」と称する。)と、の2つがある。
【0041】
まず、第1組立方法について説明する。
【0042】
第1組立方法では、まず、ピストンロッド20の雄ねじ部21aをピストン30の雌ねじ部30aに螺合させ、両者を所定のピストン締め付け力で締め付け、ピストン30とピストンロッド20を連結する。この際、ピストン30の挿入孔55とピストンロッド20の内部通路6の周方向の位置を一致させる。さらに、プラグ40のプラグねじ部41の雄ねじ部41aをピストンロッド20の内部通路6の雌ねじ部6aに螺合させ、所定の締め付け力でプラグ40を締め付ける。これにより、内部通路6の開口が塞がれ、内部通路6及び連通路7を通じたロッド側室1とボトム側室2との連通が遮断される。
【0043】
次に、ピストン30の挿入孔55にスチールボール52を挿入し、セットスクリュ51を挿入孔55の雌ねじ部55aに螺合させる。そして、セットスクリュ51を所定の締め付け力で締め付けて、スチールボール52をピストンロッド20の円筒部21bの外周に押し付ける。これにより、スチールボール52とピストンロッド20の円筒部21bとが軸方向に係止されると共に、ピストンロッド20の円筒部21bが径方向の外側から内側に向けて押圧されることで、内部通路6の雌ねじ部6aが変形する。したがって、ピストン30とピストンロッド20の緩み止めとプラグ40の抜け止めが行われる。このようにして、ピストン30とピストンロッド20とが組み立てられる。
【0044】
次に、第2組立方法について説明する。
【0045】
第2組立方法では、まず、ピストンロッド20の雄ねじ部21aをピストン30の雌ねじ部30aに螺合させて、ピストン30の端面をピストンロッド20の段差面23に接触させる。そして、ピストン締め付け力よりも小さい締め付け力(以下、「仮組み締め付け力」と称する。)で、ピストン30とピストンロッド20を締め付ける。これにより、ピストン30とピストンロッド20とが仮組みされる。さらに、所定の締め付け力によって、プラグ40を締め付けて内部通路6に取り付ける。
【0046】
次に、挿入孔55にスチールボール52を挿入し、セットスクリュ51を挿入孔55の雌ねじ部55aに螺合して締め付ける。
【0047】
この状態で、緩み止め部50とプラグ40の周方向位置が一致し、かつ、締め付け力がピストン締め付け力に達するまで、ピストン30とピストンロッド20とをさらに締め付ける(増し締め)。これにより、ピストン30とピストンロッド20とがピストン締め付け力により締結されると共に、緩み止め部50の押圧力によってピストン30とピストンロッド20の緩み止め及びプラグ40の抜け止めが行われる。
【0048】
このような第2組立方法によっても、ピストン30とピストンロッド20とを組み立てることができる。
【0049】
なお、緩み止め部50によってピストンロッド20を塑性変形させる場合、仮組み締め付け力は、ピストン30とピストンロッド20とが仮組みされた状態から、ピストン30とピストンロッド20を1回転以上締め付けると、締め付け力がピストン締め付け力に達するように設定されることが望ましい。これによれば、締め付け力がピストン締め付け力に達するまでの間に、緩み止め部50とプラグ40の周方向位置が一致する状態が必ず生じるため、緩み止め部50によって内部通路6の雌ねじ部6aを確実に押圧して塑性変形させることができる。よって、プラグ40の抜け止めをより確実に行うことができる。
【0050】
次に、本実施形態の変形例について説明する。
【0051】
まず、
図4及び
図5に示す変形例について、説明する。
【0052】
上記実施形態では、緩み止め部50の押圧によって内部通路6の雌ねじ部6aを変形させることで、プラグ40が抜け止めされる。これに対し、
図4及び
図5に示す変形例のように、緩み止め部50の押圧によって内部通路6の開口を絞るようにピストンロッド20を変形させてもよい。
【0053】
図4に示す変形例では、ピストンロッド20の基端面20aへの開口側の一部の内部通路6は、内周が上記実施形態のような雌ねじ部6aではなく円筒面106aとして形成される。プラグ140は、上記実施形態におけるプラグねじ部41に代えて、外周が円筒面に形成されるベース部141を有し、内部通路6に挿入される。プラグ140の端面は、ピストンロッド20の端面から突出せず内部通路6内に位置する。よって、内部通路6の内側であって、プラグ140の端面とピストンロッド20の端面20aとの間には、内側空間Sが区画される。
【0054】
緩み止め部50は、内側空間Sの径方向外側にあるピストンロッド20の外周(円筒部21b)を径方向内側に押圧する。つまり、ピストン30の挿入孔55は、ピストン30とピストンロッド20が締結された状態において、内側空間Sが区画される軸方向の範囲内に位置するように設けられる。これにより、ピストンロッド20の円筒部21bが緩み止め部50のスチールボール52に係止され、ピストン30とピストンロッド20とが緩み止めされる。
【0055】
また、内側空間Sの径方向外側にあるピストンロッド20の外周が緩み止め部50によって押圧されるため、ピストンロッド20において押圧される部分が径方向内側に向けて変形する。これにより、内部通路6の開口は、内径が減少するように絞られる。よって、内部通路6を絞るように変形したピストンロッド20の一部に対してプラグ140が軸方向に係止され、プラグ140の抜けが防止される。
【0056】
このような変形例によれば、内部通路6の開口を絞るようにピストンロッド20を変形させることでプラグ140の抜け止めが行われる。よって、プラグ40は、内部通路6に螺合によって取り付けられる必要がなく、プラグ140の外周や内部通路6の内周にねじ加工を施す必要がない。よって、プラグ140やピストンロッド20の加工工数が低減し、コストを低減することができる。
【0057】
なお、プラグ140は、上記実施形態と同様に、ねじ締結により内部通路6に取り付けられてもよい。この場合であっても、緩み止め部50によって内部通路6の開口を絞るようにピストンロッド20を変形させることで、プラグ140が抜け止めされる。
【0058】
また、
図5に示すように、内部通路6の開口を絞ることによってプラグ140の抜け止めをする場合、プラグ140は、内部通路6に対峙するベース部141と、内部通路6の開口に向かってベース部141から軸方向に延び、ベース部141よりも外径が小さい小径部44と、を有していてもよい。この場合、小径部44の外周面と内部通路6の円筒面106aとの間に環状の内側空間Sが形成される。緩み止め部50によって、ピストンロッド20において内側空間Sが区画される軸方向の範囲を径方向内側に押圧することで、内部通路6の開口が絞られ、プラグ140が抜け止めされる。この場合、小径部44は、
図5に示すように、内部通路6からピストンロッド20の端面を超えて基端側へ突出しないように形成されることが望ましい。
【0059】
次に、その他の変形例について説明する。
【0060】
上記実施形態では、ピストン30の内周に雌ねじ部30aが形成され、ピストンロッド20の雄ねじ部21aとピストン30の雌ねじ部30aが螺合して、ピストンロッド20とピストン30とがねじ締結される。つまり、ピストンロッド20とピストン30とは、直接ねじ締結される。これに対し、図示は省略するが、ピストンロッド20の段差面23との間でピストン30を挟持するナットを別途設け、ナットがピストンロッド20に螺合することで、ピストン30がピストンロッド20に取り付けられる構成でもよい。つまり、ピストンロッド20の雄ねじ部21aに螺合する雌ねじ部を有するナットによって、ピストン30がピストンロッド20に取り付けられてもよい。この場合には、緩み止め部50は、ナットに設ければよい。この場合であっても、上記実施形態と同様の効果を奏する。このように、「ピストンが、ねじ締結によってピストンロッドに取り付けられる」とは、ピストン30がピストンロッド20に直接螺合して取り付けられる構成と、ピストンロッド20に螺合するナットによって、ピストン30がピストンロッド20に取り付けられる構成と、の両方を含むものである。
【0061】
上記実施形態では、緩み止め部50は、セットスクリュ51とスチールボール52とを有する。これに対し、緩み止め部50は、上記構成に限らず、ピストンロッド20を押圧して緩み止めするかぎり、任意の構成とすることができる。例えば、緩み止め部50は、スチールボール52を有さず、セットスクリュ51のみによって構成されてもよい。
【0062】
また、上記実施形態では、緩み止め部50は、ピストンロッド20の円筒部21bをピストンロッド20の中心軸O1に向けて押圧するように設けられる。より具体的には、ピストン30の中心軸O1に対する緩み止め部50とプラグ40の周方向の位置(角度)が一致し、緩み止め部50とプラグ40とは、ピストン30の中心軸O1に対して径方向に並ぶ。これに対し、緩み止め部50によってプラグ40の抜け止め(プラグ40と内部通路6との緩み止め)がされる構成であれば、緩み止め部50は上記構成に限られない。例えば、緩み止め部50は、プラグ40と周方向位置がずれて設けられるものでもよい。また、緩み止め部50は、セットスクリュ51の中心軸(挿入孔55の中心軸)O3がピストン30の中心軸O1やプラグ40の中心軸O2と直交しなくてもよい。
【0063】
また、上記実施形態では、ピストンロッド20の基端部21は、雄ねじ部21aと円筒部21bを有し、緩み止め部50によって円筒部21bが径方向内側に押圧される。これに対し、雄ねじ部21aが緩み止め部50によって径方向内側に押圧されてもよい。この場合には、基端部21の外周は、円筒部21bが設けられず、軸方向の全長にわたって雄ねじ部21aとして形成されてもよい。緩み止め部50のセットスクリュ51によって雄ねじ部21aのねじ山が弾性変形又は塑性変形することで、ピストンロッド20とピストン30とは緩み止めされる。
【0064】
また、ピストンロッド20の雄ねじ部21a及び内部通路6の雌ねじ部6aを塑性変形させて、ピストン30とピストンロッド20の緩み止め及びプラグ40の抜け止めを行う場合には、第2組立方法において緩み止め部50とプラグ40の周方向位置を一致させなくてもよい。
【0065】
具体的に説明すると、この場合には、ピストン30とピストンロッド20を仮組みした状態で、ピストンロッド20の雄ねじ部21a及び内部通路6の雌ねじ部6aが塑性変形する程度の締め付け力により、セットスクリュ51を締め付けてスチールボール52を雄ねじ部21aに押圧させる。次に、締め付け力がピストン締め付け力に達するまで、ピストン30とピストンロッド20の増し締めを行う。セットスクリュ51の締め付け力は、ピストンロッド20の雄ねじ部21a及び内部通路6の雌ねじ部6aが塑性変形する程度の大きさであるため、増し締めの過程において、緩み止め部50に対向するピストン30の雄ねじ部21aが塑性変形する。さらに、緩み止め部50とプラグ40の周方向位置が一致すると、緩み止め部50によって内部通路6の雌ねじ部30aが押圧され塑性変形する。
【0066】
この方法によれば、増し締めの過程において緩み止め部50とプラグ40の周方向位置が一致すると、内部通路6の雌ねじ部30aが塑性変形してプラグ40の抜け止めを行うことができる。よって、緩み止め部50とプラグ40との周方向位置を最終的に一致させる必要がなく、緩み止め部50とプラグ40とを位置合わせしなくてよいため、ピストン30とピストンロッド20の組み立てを容易に行うことができる。
【0067】
以上の実施形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0068】
油圧シリンダ100では、緩み止め部50によってピストンロッド20の外周の円筒部21bを径方向外側から内側に向けて押圧することで、ピストン30とピストンロッド20の緩み止めを行うと共にプラグ40の抜け止めも行う。よって、ピストン30とピストンロッド20の緩み止めとは別にプラグ40の抜け止め構造を設ける必要がなく、プラグ40の抜け止めのためにピストンロッド20やプラグ40に加工を施す必要もない。したがって、簡易な構造により、ピストンロッド20の内部通路6からのプラグ40の抜け止めを行うことができる。
【0069】
また、ピストンロッド20の基端部21における円筒部21bが緩み止め部50によって押圧されるため、ピストンロッド20の変形を弾性変形としやすく、オーバーホール後にピストンロッド20を再利用しやすい。
【0070】
また、油圧シリンダ100では、所定の締め付け力でセットスクリュ51をねじ込むことで、ピストン30とピストンロッド20の緩み止めとプラグ40の抜け止め(プラグ40と内部通路6との緩み止め)が行われる。よって、締め付け力の管理を行うだけでよいため、容易にピストン30とピストンロッド20の緩み止め、及び、プラグ40と内部通路6の緩み止めをすることができる。
【0071】
また、変形例に係る油圧シリンダ100では、緩み止め部50によってピストンロッド20を径方向内側へ押圧し、内部通路6の開口を絞るように変形させることで、プラグ140の抜け止めが行われる。このため、プラグ140は、内部通路6に螺合によって取り付けられる必要がなく、プラグ140の外周や内部通路6の内周にねじ加工を施す必要がない。よって、プラグ40やピストンロッド20の加工工数が低減し、コストを低減することができる。
【0072】
以下、本発明の実施形態の構成、作用、及び効果をまとめて説明する。
【0073】
油圧シリンダ100は、シリンダチューブ10と、基端部21に雄ねじ部21aが形成されシリンダチューブ10に挿入されるピストンロッド20と、雄ねじ部21aに螺合してピストンロッド20に連結されシリンダチューブ10内をロッド側室1とボトム側室2とに区画するピストン30と、ピストン30に挿入されピストンロッド20の基端部21を径方向の外側から内側に向けて押圧してピストン30とピストンロッド20の緩み止めをする緩み止め部50と、軸方向に沿ってピストンロッド20に形成される内部通路6と、ピストンロッド20に形成され内部通路6とロッド側室1とを連通する連通路7と、内部通路6に挿入されピストンロッド20の基端部21における基端面20aに対する内部通路6の開口を塞ぐプラグ40と、を備え、プラグ40は、緩み止め部50の押圧により変形したピストンロッド20により内部通路6から抜け止めされる。
【0074】
また、油圧シリンダ100では、内部通路6の内周には、プラグ40が螺合する雌ねじ部6aが形成され、緩み止め部50の押圧によって雌ねじ部6aが変形することにより、プラグ40が内部通路6から抜け止めされる。
【0075】
これらの構成では、ピストン30とピストンロッド20との緩み止めをするための緩み止め部50の押圧力によってピストンロッド20を変形させ、このようなピストンロッド20の変形により内部通路6からのプラグ40の抜け止めがされる。よって、プラグ40の抜け止めのためにピストンロッド20やプラグ40に加工を施す必要がなく、ピストン30とピストンロッド20の緩み止めとは別にプラグ40の抜け止め構造を設ける必要もない。したがって、油圧シリンダ100におけるピストン30周辺の構造が簡素化される。
【0076】
また、変形例に係る油圧シリンダ100では、緩み止め部50は、内部通路6の開口を絞るようにピストンロッド20を径方向内側に押圧し、プラグ140は、内部通路6の開口が絞られることにより、内部通路6から抜け止めされる。
【0077】
この構成では、プラグ140は、単に内部通路6に挿入されていればよく、ねじによってプラグ140を内部通路6に取り付けなくてもよいため、プラグ140や内部通路6へのねじ加工が不要となり、製造コストが低減される。
【0078】
また、油圧シリンダ100では、緩み止め部50は、ピストン30に径方向に沿って形成される挿入孔55に螺合するセットスクリュ51と、セットスクリュ51とピストンロッド20の外周面との間に設けられ、ピストンロッド20を径方向の内側へ向けて押圧する球状のスチールボール52と、を有する。
【0079】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0080】
1…ロッド側室、2…ボトム側室、6…内部通路、6a…雌ねじ部、7…連通路、10…シリンダチューブ、20…ピストンロッド、20a…基端面(端面)、21…基端部(端部)、30…ピストン、40,140…プラグ、50…緩み止め部、100…油圧シリンダ