(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-03
(45)【発行日】2023-10-12
(54)【発明の名称】設備評価システム、プログラム、及び方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/16 20120101AFI20231004BHJP
G06Q 40/02 20230101ALI20231004BHJP
【FI】
G06Q50/16
G06Q40/02
(21)【出願番号】P 2019116332
(22)【出願日】2019-06-24
【審査請求日】2022-05-17
(73)【特許権者】
【識別番号】517427082
【氏名又は名称】株式会社事業性評価研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田井 政晴
【審査官】円子 英紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-049845(JP,A)
【文献】特開2004-287485(JP,A)
【文献】特開2004-199373(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記憶装置と、
前記記憶装置に記憶されているデータに基づいて、評価対象の設備に関する設備評価額を算出する処理装置と、
を具備し、
前記記憶装置は、
評価時点、新築時点、設備面積を記憶し、
複数の部材のそれぞれに関して、新築残存部分の耐用年数、新築残存部分の単位面積当たりの再調達原価、更新部分の耐用年数、更新部分の単位面積当たりの再調達原価、更新部分の割合、更新時点、を記憶し、
前記処理装置は、
前記複数の部材のそれぞれに関して、前記設備面積と前記新築残存部分の単位面積当たりの再調達原価との積である新築時点の価格を算出し、新築残存部分の再調達原価を算出し、
前記複数の部材のそれぞれに関する前記新築残存部分の再調達原価を合計した第1の値を算出し、
前記複数の部材のそれぞれに関して、前記新築残存部分の再調達原価と前記新築残存部分の耐用年数との積である第2の値を算出し、
前記複数の部材のそれぞれに関する前記第2の値を合計した第3の値を算出し、
前記複数の部材のそれぞれに関して、前記設備面積と前記更新部分の単位面積当たりの再調達原価との積である更新時点の価格を算出し、更新部分の再調達原価を算出し、
前記複数の部材のそれぞれに関する前記更新部分の再調達原価を合計した第4の値を算出し、
前記複数の部材のそれぞれに関して、前記更新部分の再調達原価と前記更新部分の耐用年数との積である第5の値を算出し、
前記複数の部材のそれぞれに関する前記第5の値を合計した第6の値を算出し、
前記第1の値と前記第4の値とを加算した第7の値を算出し、
前記第3の値と前記第6の値とを加算した第8の値を算出し、
前記第8の値を前記第7の値で割り算した加重平均耐用年数を算出し、
新築残存部分の経過時間と前記加重平均耐用年数とに基づいて、新築残存部分の残価率を算出し、
前記第7の値と、前記第8の値と、前記新築残存部分の残価率と、前記複数の部材のそれぞれに関する前記新築時点の価格、前記更新部分の割合、前記新築残存部分の耐用年数とに基づいて、前記複数の部材のそれぞれに関する新築残存部分の残価を前記複数の部材のそれぞれに関する前記新築残存部分の耐用年数で重み付けした値を合計した第9の値を算出し、
前記複数の部材のそれぞれに関する更新部分の経過時間と前記加重平均耐用年数とに基づいて、前記複数の部材のそれぞれに関して、更新部分の残価率を算出し、
前記加重平均耐用年数と、前記複数の部材のそれぞれに関する前記更新時点の価格、前記更新部分の割合、前記更新部分の耐用年数、前記更新部分の残価率とに基づいて、前記複数の部材のそれぞれに関する更新部分の残価を前記複数の部材のそれぞれに関する前記更新部分の耐用年数で重み付けした値を合計した第10の値を算出し、
前記第9の値と前記第10の値とを加算した第11の値を前記設備評価額とする、
設備評価装置。
【請求項2】
前記処理装置は、前記加重平均耐用年数と前記第11の値との積を、前記第7の値で割った設備残存耐用年数を算出する、
請求項1の設備評価装置。
【請求項3】
前記処理装置は、
前記第7の値を前記加重平均耐用年数で割った第12の値を算出し、
前記第12の値が前記第11の値より大きい場合、前記第12の値を前記設備評価額とし、前記第12の値が前記第11の値以下の場合、前記第11の値を前記設備評価額とする、
請求項1又は請求項2の設備評価装置。
【請求項4】
評価対象の設備に関する評価時点、新築時点、設備面積を記憶し、複数の部材のそれぞれに関して、新築残存部分の耐用年数、新築残存部分の単位面積当たりの再調達原価、更新部分の耐用年数、更新部分の単位面積当たりの再調達原価、更新部分の割合、更新時点を記憶する記憶装置と、
前記記憶装置に記憶されているデータに基づいて、前記複数の部材のそれぞれに関する新築残存部分の残価を前記複数の部材のそれぞれに関する前記新築残存部分の耐用年数で重み付けした値を合計した第1の値を算出し、前記複数の部材のそれぞれに関する更新部分の残価を前記複数の部材のそれぞれに関する前記更新部分の耐用年数で重み付けした値を合計した第2の値を算出し、前記第1の値と前記第2の値とを加算した値を設備評価額とする処理装置と、
を具備する設備評価装置。
【請求項5】
コンピュータに、
記憶装置に対して、評価時点、新築時点、設備面積を記憶させ、複数の部材のそれぞれに関して、新築残存部分の耐用年数、新築残存部分の単位面積当たりの再調達原価、更新部分の耐用年数、更新部分の単位面積当たりの再調達原価、更新部分の割合、更新時点を記憶させる機能と、
前記記憶装置に記憶されているデータに基づいて、
前記複数の部材のそれぞれに関して、前記設備面積と前記新築残存部分の単位面積当たりの再調達原価との積である新築時点の価格を算出し、新築残存部分の再調達原価を算出し、
前記複数の部材のそれぞれに関する前記新築残存部分の再調達原価を合計した第1の値を算出し、
前記複数の部材のそれぞれに関して、前記新築残存部分の再調達原価と前記新築残存部分の耐用年数との積である第2の値を算出し、
前記複数の部材のそれぞれに関する前記第2の値を合計した第3の値を算出し、
前記複数の部材のそれぞれに関して、前記設備面積と前記更新部分の単位面積当たりの再調達原価との積である更新時点の価格を算出し、更新部分の再調達原価を算出し、
前記複数の部材のそれぞれに関する前記更新部分の再調達原価を合計した第4の値を算出し、
前記複数の部材のそれぞれに関して、前記更新部分の再調達原価と前記更新部分の耐用年数との積である第5の値を算出し、
前記複数の部材のそれぞれに関する前記第5の値を合計した第6の値を算出し、
前記第1の値と前記第4の値とを加算した第7の値を算出し、
前記第3の値と前記第6の値とを加算した第8の値を算出し、
前記第8の値を前記第7の値で割り算した加重平均耐用年数を算出し、
新築残存部分の経過時間と前記加重平均耐用年数とに基づいて、新築残存部分の残価率を算出し、
前記第7の値と、前記第8の値と、前記新築残存部分の残価率と、前記複数の部材のそれぞれに関する前記新築時点の価格、前記更新部分の割合、前記新築残存部分の耐用年数とに基づいて、前記複数の部材のそれぞれに関する新築残存部分の残価を前記複数の部材のそれぞれに関する前記新築残存部分の耐用年数で重み付けした値を合計した第9の値を算出し、
前記複数の部材のそれぞれに関する更新部分の経過時間と前記加重平均耐用年数とに基づいて、前記複数の部材のそれぞれに関して、更新部分の残価率を算出し、
前記加重平均耐用年数と、前記複数の部材のそれぞれに関する前記更新時点の価格、前記更新部分の割合、前記更新部分の耐用年数、前記更新部分の残価率とに基づいて、前記複数の部材のそれぞれに関する更新部分の残価を前記複数の部材のそれぞれに関する前記更新部分の耐用年数で重み付けした値を合計した第10の値を算出し、
前記第9の値と前記第10の値とを加算した第11の値を
設備評価額とする、機能と、
を実現させるためのプログラム。
【請求項6】
コンピュータにより、記憶装置に対して、評価時点、新築時点、設備面積を記憶させ、複数の部材のそれぞれに関して、新築残存部分の耐用年数、新築残存部分の単位面積当たりの再調達原価、更新部分の耐用年数、更新部分の単位面積当たりの再調達原価、更新部分の割合、更新時点を記憶させることと、
前記コンピュータにより、前記記憶装置に記憶されているデータに基づいて、前記複数の部材のそれぞれに関して、前記設備面積と前記新築残存部分の単位面積当たりの再調達原価との積である新築時点の価格を算出し、新築残存部分の再調達原価を算出することと、
前記コンピュータにより、前記複数の部材のそれぞれに関する前記新築残存部分の再調達原価を合計した第1の値を算出することと、
前記コンピュータにより、前記複数の部材のそれぞれに関して、前記新築残存部分の再調達原価と前記新築残存部分の耐用年数との積である第2の値を算出することと、
前記コンピュータにより、前記複数の部材のそれぞれに関する前記第2の値を合計した第3の値を算出することと、
前記コンピュータにより、前記複数の部材のそれぞれに関して、前記設備面積と前記更新部分の単位面積当たりの再調達原価との積である更新時点の価格を算出し、更新部分の再調達原価を算出することと、
前記コンピュータにより、前記複数の部材のそれぞれに関する前記更新部分の再調達原価を合計した第4の値を算出することと、
前記コンピュータにより、前記複数の部材のそれぞれに関して、前記更新部分の再調達原価と前記更新部分の耐用年数との積である第5の値を算出することと、
前記コンピュータにより、前記複数の部材のそれぞれに関する前記第5の値を合計した第6の値を算出することと、
前記コンピュータにより、前記第1の値と前記第4の値とを加算した第7の値を算出することと、
前記コンピュータにより、前記第3の値と前記第6の値とを加算した第8の値を算出することと、
前記コンピュータにより、前記第8の値を前記第7の値で割り算した加重平均耐用年数を算出することと、
前記コンピュータにより、新築残存部分の経過時間と前記加重平均耐用年数とに基づいて、新築残存部分の残価率を算出することと、
前記コンピュータにより、前記第7の値と、前記第8の値と、前記新築残存部分の残価率と、前記複数の部材のそれぞれに関する前記新築時点の価格、前記更新部分の割合、前記新築残存部分の耐用年数とに基づいて、前記複数の部材のそれぞれに関する新築残存部分の残価を前記複数の部材のそれぞれに関する前記新築残存部分の耐用年数で重み付けした値を合計した第9の値を算出することと、
前記コンピュータにより、前記複数の部材のそれぞれに関する更新部分の経過時間と前記加重平均耐用年数とに基づいて、前記複数の部材のそれぞれに関して、更新部分の残価率を算出することと、
前記コンピュータにより、前記加重平均耐用年数と、前記複数の部材のそれぞれに関する前記更新時点の価格、前記更新部分の割合、前記更新部分の耐用年数、前記更新部分の残価率とに基づいて、前記複数の部材のそれぞれに関する更新部分の残価を前記複数の部材のそれぞれに関する前記更新部分の耐用年数で重み付けした値を合計した第10の値を算出することと、
前記コンピュータにより、前記第9の値と前記第10の値とを加算した第11の値を
設備評価額とすることと、
前記コンピュータにより、前記設備評価額を出力装置から出力させることと、
を具備する設備評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば園芸設備などのような各種設備を評価する設備評価システム、プログラム、及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
土地、建築物などの不動産を担保に金融機関から融資を受ける場合、金融機関は不動産に対し、一定の基準に基づいて担保評価を行う。例えば、建築物の評価においては、建築物の種類に応じた一般的な耐用年数及び建築後の経過年数などを用いて建築物の残存耐用年数が算出され、この残存耐用年数に基づいて建築物の現在の価値が決定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のように担保評価の過程で算出される建築物などの残存耐用年数(余寿命)は、建築物の劣化状態に関係なく、単に建築物の想定耐用年数から経過年数を減算することにより算出される場合が多い。具体的には、建築物の実際の耐用年数よりも大幅に少ない税法上の減価償却期間(例えば22年)が想定耐用年数として用いられる場合がある。建築後の経過年数がこの想定耐用年数を超えると、一律に建築物の残存耐用年数はゼロと判断され、建築物は価値がないと判断され、所有者は金融機関より融資が受けられない場合があった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされており、例えば設備(施設)などの評価対象に関して、更新(例えば改修又は追加投資)による残存耐用年数の回復を考慮に入れ、評価対象の設備の実際の状態にそった設備評価額を算出する設備評価装置、プログラム、及び方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態によれば、設備評価装置は、記憶装置と処理装置とを備える。処理装置は、記憶装置に記憶されているデータに基づいて、評価対象の設備に関する設備評価額を算出する。記憶装置は、評価時点(Ye)、新築時点(Ya)、設備面積(S)を記憶する。記憶装置は、複数の部材(Pi、i=1~n、nは2以上の整数)のそれぞれに関して、新築残存部分の耐用年数(Bi)、新築残存部分の単位面積当たりの再調達原価、更新部分の耐用年数(Bi’)、更新部分の単位面積当たりの再調達原価、更新部分の割合(Di)、更新時点(Yi)、を記憶する。処理装置は、複数の部材(Pi)のそれぞれに関して、設備面積(S)と新築残存部分の単位面積当たりの再調達原価との積である新築時点の価格(Ai)を算出し、新築残存部分の再調達原価(Ai(1-Di))を算出し、複数の部材(Pi)のそれぞれに関する新築残存部分の再調達原価(Ai(1-Di))を合計した第1の値(α)を算出し、複数の部材(Pi)のそれぞれに関して、新築残存部分の再調達原価(Ai(1-Di))と新築残存部分の耐用年数(Bi)との積である第2の値(Ai(1-Di)Bi)を算出し、複数の部材(Pi)のそれぞれに関する第2の値を合計した第3の値(β)を算出し、複数の部材(Pi)のそれぞれに関して、設備面積(S)と更新部分の単位面積当たりの再調達原価との積である更新時点の価格(Ai’)を算出し、更新部分の再調達原価(Ai’×Di)を算出し、複数の部材(Pi)のそれぞれに関する更新部分の再調達原価(Ai’×Di)を合計した第4の値(γ)を算出し、複数の部材(Pi)のそれぞれに関して、更新部分の再調達原価(Ai’×Di)と更新部分の耐用年数(Bi’)との積である第5の値(Ai’×Di×Bi’)を算出し、複数の部材(Pi)のそれぞれに関する第5の値を合計した第6の値(δ)を算出し、第1の値(α)と第4の値(γ)とを加算した第7の値(Rc)を算出し、第3の値(β)と第6の値(δ)とを加算した第8の値(Rw)を算出し、第8の値を第7の値で割り算した加重平均耐用年数(Na=Rw/Rc)を算出し、新築残存部分の経過時間(Ye-Ya)と加重平均耐用年数(Na)とに基づいて、新築残存部分の残価率(Ze=1-(Ye-Ya)/Na)を算出し、第7の値(Rc)と、第8の値(Rw)と、新築残存部分の残価率(Ze)と、複数の部材(Pi)のそれぞれに関する新築時点の価格(Ai)、更新部分の割合(Di)、新築残存部分の耐用年数(Bi)とに基づいて、複数の部材(Pi)のそれぞれに関する新築残存部分の残価を複数の部材(Pi)のそれぞれに関する新築残存部分の耐用年数(Bi)で重み付けした値を合計した第9の値(ε)を算出し、複数の部材(Pi)のそれぞれに関する更新部分の経過時間(Ye-Yi)と加重平均耐用年数(Na)とに基づいて、複数の部材(Pi)のそれぞれに関して、更新部分の残価率(ZRi=1-(Ye-Yi)/Na)を算出し、加重平均耐用年数(Na)と、複数の部材(Pi)のそれぞれに関する更新時点の価格(Ai’)、更新部分の割合(Di)、更新部分の耐用年数(Bi’)、更新部分の残価率(ZRi)とに基づいて、複数の部材(Pi)のそれぞれに関する更新部分の残価を複数の部材(Pi)のそれぞれに関する更新部分の耐用年数(Bi’)で重み付けした値を合計した第10の値(ξ)を算出し、第9の値(ε)と第10の値(ξ)とを加算した第11の値(VR)を設備評価額とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、評価対象に関して、更新による残存耐用年数の回復を考慮に入れ、評価対象の設備の実際の状態にそった設備評価額を算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態に係る設備評価装置の一例を示すブロック図。
【
図2】本実施形態に係る設定データの例を示すデータ構造図。
【
図3】本実施形態に係る入力データの例を示すデータ構造図。
【
図4】本実施形態に係る第1のデータの例を示すデータ構造図。
【
図5】本実施形態に係る第2のデータの例を示すデータ構造図。
【
図6】本実施形態に係る設備評価処理に含まれる第1の処理の例を示すフローチャートである。
【
図7】本実施形態に係る設備評価処理に含まれる第2の処理の例を示すフローチャートである。
【
図8】本実施形態に係る設備評価装置によって算出される設備評価額の変化の例を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、発明の実施形態について説明する。以下の説明において、同一の部分又は実質的に同一の部分には同じ参照符号を付して説明を省略するか、又は、簡単に説明を行う。
【0010】
本実施形態に係る設備評価装置は、評価対象の設備に関する設備評価値、及び、評価対象の設備に関する設備残存耐用年数を評価する。評価対象の設備は、例えば、園芸設備であるとする。しかしながら、評価対象は、例えば、建築物、工作物、機械、不動産などのような他の設備でもよい。園芸設備としては、例えば、ビニールハウスなどがある。
【0011】
本実施形態に係る設備評価装置は、評価対象の設備に関する設備評価額と設備残存耐用年数とを算出し、設備の価値把握を支援する。
【0012】
更新による設備の回復を考慮に入れた設備評価額及び設備残存耐用年数は、設備の取引における査定を行う際、又は、設備の処分・活用の検討を行う際などの判断材料として有用である。本実施形態に係る設備評価装置は、設備の現在の劣化状態、又は、更新による設備の回復を考慮に入れた設備評価額及び設備残存耐用年数を精度良くかつ簡便に算出可能である。
【0013】
図1は、本実施形態に係る設備評価装置1の構成の一例を示すブロック図である。
【0014】
設備評価装置1は、例えば、入力装置2、出力装置3、記憶装置4、処理装置5を備える。入力装置2、出力装置3、記憶装置4、処理装置5は、例えばバス6などを介して、互いにデータを送受信可能である。設備評価装置1は、複数の情報処理装置が連携動作することにより実現されてもよい。
【0015】
入力装置2は、例えば、キーボード、ポインティングデバイス、受信装置などであり、各種データ、コマンド、指令などを受け付け、又は、受信する。
【0016】
出力装置3は、例えば、ディスプレイ、スピーカ、又は、送信装置などであり、各種データを表示、再生、又は、送信する。
【0017】
記憶装置4は、処理装置5によって実行される各種処理に必要な各種データを記憶する。本実施形態の例において、記憶装置4は、例えば、プログラム7、設定データ8、入力データ9、第1のデータ10、第2のデータ11などを記憶する。記憶装置4は、例えば、不揮発性ストレージデバイスを含むとしてもよく、例えば、キャッシュメモリなどのような一時記憶媒体を含むとしてもよい。
【0018】
本実施形態において、設定データ8、入力データ9、第1のデータ10、第2のデータ11は、説明を簡略化するために定められたものである。したがって、設定データ8、入力データ9、第1のデータ10、第2のデータ11は、適宜、分割してもよく、組み合わせてもよい。設定データ8、入力データ9、第1のデータ10、第2のデータ11の間でデータの重複は排除されてもよい。
【0019】
処理装置5は、記憶装置4に記憶されているプログラム7を実行し、これにより入力制御部12、記憶制御部13、評価部14、出力制御部15として機能する。なお、入力制御部12、記憶制御部13、評価部14、出力制御部15は、自由に分割し、又は、組み合わせてもよい。処理装置5は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)などのプロセッサとしてもよい。
【0020】
入力制御部12、記憶制御部13、出力制御部15は、例えば、オペレーティング・システムによって実現されるとしてもよい。評価部14は、例えば、オペレーティング・システム上で動作するアプリケーション・プログラムによって実現されるとしてもよい。
【0021】
入力制御部12は、入力装置2から設定データ8、入力データ9を入力するための制御を行う。入力制御部12は、例えば、入力装置2を制御するドライバでもよい。
【0022】
記憶制御部13は、入力制御部12による制御にしたがって入力装置2から入力された設定データ8、入力データ9を記憶装置4に記憶させる。また、記憶制御部13は、記憶装置4に記憶されている各種プログラム、データを読み出す。記憶制御部13は、例えば、記憶装置4を制御するドライバでもよい。
【0023】
評価部14は、記憶装置4から記憶制御部13を用いて読み出した設定データ8及び入力データ9に基づいて、第1のデータ10を生成する。評価部14は、記憶制御部13を用いて、生成した第1のデータ10を記憶装置4へ記憶させる。
【0024】
さらに、評価部14は、記憶装置4から記憶制御部13を用いて読み出した設定データ8、入力データ9、第1のデータ10に基づいて、第2のデータ11を生成する。評価部14は、記憶制御部13を用いて、生成した第2のデータ11を記憶装置4へ記憶させる。
【0025】
評価部14は、再調達原価を用いて求められる部材の更新後の評価額の増加と、経年劣化による部材の評価額の減少とを考慮した設備評価額を算出し、さらに、部材の更新により延長される設備残存耐用期間を算出する。
【0026】
出力制御部15は、記憶装置4から記憶制御部13を用いて第2のデータ11に含まれている出力データ11aを読み出し、読み出した出力データ11aを出力装置3により出力するための制御を行う。出力制御部15は、例えば、出力装置3を制御するドライバでもよい。
【0027】
以下で、
図2乃至
図5を用いて、評価部14による評価対象の設備に関する設備評価金額及び設備残存耐用年数の算出方法を具体的に説明する。
【0028】
図2は、本実施形態に係る設定データ8の例を示すデータ構造図である。
【0029】
設定データ8は、再調達原価に関する情報を含む。再調達原価に関する情報は、過去に取得された部材(資産)を評価時点で新しく取得すると想定した場合の評価値を求めるために利用される。再調達原価に関する情報は、評価時点で同スペックの部材を購入するために必要な価格に基づいて設定されてもよく、過去に取得した同スペックの部材の価格に物価変動又は価格変動などの調整を加えて設定されてもよい。
【0030】
設定データ8は、複数の部位と、各部位に含まれる少なくとも1つの部材を含む。
【0031】
設定データ8は、各部材に関して、立地条件に対応する新築残存部分の耐用年数Biと更新部分の耐用年数Bi’を含む。
図2乃至
図5の例では、立地条件として、内陸部又は沿岸部が用いられている。しかしながら、立地条件として他の条件が用いられてもよい。
【0032】
新築残存部分とは、例えば、新築時点から評価時点まで残存している部分である。
【0033】
設定データ8は、各部材に関して、新築残存部分の単位面積(例えば1000m2)当たりの再調達原価(円)と更新部分の単位面積当たりの再調達原価とを含む。
【0034】
図2乃至
図5の例では、新築残存部分と更新部分とで同じ耐用年数及び単位面積の部材が用いられる場合を例として説明する。この場合、各部材に関して、新築残存部分の耐用年数Biと更新部分の耐用年数Bi’とは同じ値となる。同様に、各部材に関して、新築残存部分の単位面積当たりの再調達原価と更新部分の単位面積当たりの再調達原価とは同じ値となる。
【0035】
図2の例において、部位は「基礎」、「躯体」、「被覆」、「機械」を含む。部位「基礎」は部材「コンクリート」、「鉄骨」を含む。部位「躯体」は部材「パイプ」、「鉄骨(丸型ハウス)」、「鉄骨(屋根型ハウス)」を含む。部位「被覆」は部材「農業用ポリオレフィン(パイプハウス)」、「農業用ポリオレフィン(丸型ハウス)」、「フッ素フィルム」を含む。部位「機械」は部材「自動カーテン」、「暖房器」を含む。
【0036】
図2の例において、部材「コンクリート」に関して、立地条件が内陸部の耐用年数は「35」、立地条件が沿岸部の耐用年数は「35」、単位面積当たりの再調達原価は「2,000,000」である。
【0037】
部材「鉄骨」に関して、立地条件が内陸部の耐用年数は「25」、立地条件が沿岸部の耐用年数は「20」、単位面積当たりの再調達原価は「770,000」である。
【0038】
部材「パイプ」に関して、立地条件が内陸部の耐用年数は「15」、立地条件が沿岸部の耐用年数は「10」、単位面積当たりの再調達原価は「5,780,000」である。
【0039】
部材「鉄骨(丸型ハウス)」に関して、立地条件が内陸部の耐用年数は「25」、立地条件が沿岸部の耐用年数は「20」、単位面積当たりの再調達原価は「7,230,000」である。
【0040】
部材「鉄骨(屋根型ハウス)」に関して、立地条件が内陸部の耐用年数は「25」、立地条件が沿岸部の耐用年数は「20」、単位面積当たりの再調達原価は「17,290,000」である。
【0041】
部材「農業用ポリオレフィン(パイプハウス)」に関して、立地条件が内陸部の耐用年数は「3」、立地条件が沿岸部の耐用年数は「3」、単位面積当たりの再調達原価は「580,000」である。
【0042】
部材「農業用ポリオレフィン(丸型ハウス)」に関して、立地条件が内陸部の耐用年数は「3」、立地条件が沿岸部の耐用年数は「3」、単位面積当たりの再調達原価は「630,000」である。
【0043】
部材「フッ素フィルム」に関して、立地条件が内陸部の耐用年数は「15」、立地条件が沿岸部の耐用年数は「15」、単位面積当たりの再調達原価は「2,500,000」である。
【0044】
部材「自動カーテン」に関して、立地条件が内陸部の耐用年数は「10」、立地条件が沿岸部の耐用年数は「6」、単位面積当たりの再調達原価は「2,900,000」である。
【0045】
部材「暖房器」に関して、立地条件が内陸部の耐用年数は「10」、立地条件が沿岸部の耐用年数は「7」、単位面積当たりの再調達原価は「3,170,000」である。
【0046】
図3は、本実施形態に係る入力データ9の例を示すデータ構造図である。
【0047】
入力データ9は、評価時点Ye、新築時点Ya、設備面積S、立地条件、設備取得金額を含む。
【0048】
この
図3の例において、入力データ9は、複数の部材に関して、評価時点は「2019/4/3」、新築時点は「2000/4/3」、設備面積は「2000m
2」、立地条件は「内陸部」、設備の取得金額は「50,000,000(円)」である。
【0049】
本実施形態において、立地条件は「内陸部」であるため、評価処理では、設定データ8における立地条件「内陸部」に対応する新規残存部分の耐用年数Bi、更新部分の耐用年数Bi’、新規残存部分の単位面積当たりの再調達原価、更新部分の単位面積当たりの再調達原価が用いられる。
【0050】
入力データ9は、評価対象の設備に含まれる複数の部位と、複数の部位のうちのいずれかに対応付けられている複数の部材Pi(i=1~n:nは2以上の整数)を含む。この入力データ9に含まれる複数の部材Piは、評価対象の設備の新築時に使用された部材である。
【0051】
入力データ9は、入力データ9の各部材Piに関して、新築時部材構成比、更新部材、更新範囲Di、更新時点Yiを含む。ここで、更新範囲とは、部材Piの全体に対する部材Piの更新部分の割合とする。
【0052】
図3の例において、部位は「基礎」、「躯体」、「被覆」、「機械」を含む。部位「基礎」は部材「コンクリート」を含む。部位「躯体」は部材「鉄骨(屋根型ハウス)」を含む。部位「被覆」は「フッ素フィルム」を含む。部位「機械」は部材「自動カーテン」、「暖房器」を含む。
【0053】
部材「コンクリート」に関して、新築時部材構成比は「100%」、更新部材は「コンクリート」、更新範囲は「50%」、更新時点は「2018/4/3」である。
【0054】
部材「鉄骨(屋根型ハウス)」に関して、新築時部材構成比は「100%」、更新部材は「鉄骨(屋根型ハウス)」、更新範囲は「50%」、更新時点は「2015/4/3」である。
【0055】
部材「フッ素フィルム」に関して、新築時部材構成比は「100%」、更新部材は「フッ素フィルム」、更新範囲は「100%」、更新時点は「2017/4/3」である。
【0056】
部材「自動カーテン」に関して、新築時部材構成比は「100%」、更新部材は「自動カーテン」、更新範囲は「100%」、更新時点は「2019/4/1」である。
【0057】
部材「暖房器」に関して、新築時部材構成比は「100%」、更新部材は「暖房器」、更新範囲は「100%」、更新時点は「2019/4/1」である。
【0058】
図4は、本実施形態に係る第1のデータ10の例を示すデータ構造図である。
【0059】
第1のデータ10は、先に説明した設定データ8及び入力データ9に基づいて、評価部14によって自動生成可能である。
【0060】
第1のデータ10は、評価対象の設備に含まれる複数の部位と、複数の部位のうちのいずれかに対応付けられている複数の部材Piを含む。
【0061】
第1のデータ10は、各部材Piに関して、新築残存部分の耐用年数Bi、新築残存部分の再調達原価、新築残存部分の再調達原価と新築残存部分の耐用年数Biとの積を含む。
【0062】
部材Piの新築残存部分の耐用年数Biは、例えば設備が内陸部に存在するか沿岸部に存在するかなどのような設備の立地条件に応じて変更される。
【0063】
各部材Piに関して、新築時点の価格Aiは、設備面積Sと新築残存部分の単位面積当たりの再調達原価との積により算出される。なお、新築時点の価格Aiは、必要に応じて価格インデックスを用いて補正されてもよい。部材Piの全範囲に対する部材Piの新築残存部分の割合は、(1-Di)となる。各部材Piに関して、新築残存部分の再調達原価は、Ai(1-Di)により算出される。
【0064】
各部材Piに関して、新築残存部分の再調達原価と新築残存部分の耐用年数Biとの積は、Ai(1-Di)×Biにより算出される。
【0065】
第1のデータ10は、各部材Piに関して、更新部分の耐用年数Bi’、更新部分の再調達原価、更新部分の再調達原価と更新部分の耐用年数Bi’との積を含む。
【0066】
部材Piの更新部分の耐用年数Bi’は、例えば設備が内陸部に存在するか沿岸部に存在するかなどのような設備の立地条件に応じて変更される。
【0067】
各部材Piに関して、更新時点の価格Ai’は、設備面積Sと更新部分の単位面積当たりの再調達原価との積により算出される。なお、更新時点の価格Ai’は、必要に応じて価格インデックスを用いて補正されてもよい。部材Piの全範囲に対する部材Piの更新部分の割合は、Diである。各部材Piに関して、更新部分の再調達原価は、Ai’×Diにより算出される。
【0068】
各部材Piに関して、更新部分の再調達原価と更新部分の耐用年数Bi’との積は、Ai’×Di×Bi’により算出される。
【0069】
部材P1~Pnに関する新築残存部分の再調達原価の合計値αは、下記の(1)式により算出される。
【0070】
【0071】
部材P1~Pnに関する新築残存部分の再調達原価と新築残存部分の耐用年数Biとの積の合計値βは、下記の(2)式により算出される。
【0072】
【0073】
部材P1~Pnに関する更新部分の再調達原価の合計値γは、下記の(3)式により算出される。
【0074】
【0075】
部材P1~Pnに関する更新部分の再調達原価と更新部分の耐用年数Bi’との積の合計値δは、下記の(4)式により算出される。
【0076】
【0077】
第1のデータ10は、合計値αと合計値γとを加算した値Rcと、合計値βと合計値δとを加算した値Rwとを含む。
【0078】
第1のデータ10は、加重平均耐用年数Naを含む。
【0079】
加重平均耐用年数Naは、下記の(5)式により算出される。
【0080】
【0081】
この(5)における加重平均耐用年数Naは、(β+δ)/(α+γ)=Rw/Rcである。
【0082】
第1のデータ10は、最低残価(最低評価値)ωを含む。
【0083】
最低残価ωは、残存1年分の評価額であり、Rc/Naにより算出される。
【0084】
図4の例において、第1のデータ10は、入力データ9と同じ複数の部位「基礎」、「躯体」、「被覆」、「機械」と部材「コンクリート」、「鉄骨(屋根型ハウス)」、「フッ素フィルム」、「自動カーテン」、「暖房器」を含み、各部材Piに関する「新築残存部分の耐用年数」、「新築残存部分の再調達原価」、「新築残存部分の再調達原価×新築残存部分の耐用年数」、「更新部分の耐用年数」、「更新部分の再調達原価」、「更新部分の再調達原価×更新部分の耐用年数」を含む。
【0085】
部材「コンクリート」に関して、「新築残存部分の耐用年数」は「35」、「新築残存部分の再調達原価」は「2,000,000」、「新築残存部分の再調達原価×新築残存部分の耐用年数」は「70,000,000」、「更新部分の耐用年数」は「35」、「更新部分の再調達原価」は「2,000,000」、「更新部分の再調達原価×更新部分の耐用年数」は「70,000,000」である。
【0086】
部材「鉄骨(屋根型ハウス)」に関して、「新築残存部分の耐用年数」は「25」、「新築残存部分の再調達原価」は「17,290,000」、「新築残存部分の再調達原価×新築残存部分の耐用年数」は「432,250,000」、「更新部分の耐用年数」は「25」、「更新部分の再調達原価」は「17,290,000」、「更新部分の再調達原価×更新部分の耐用年数」は「432,250,000」である。
【0087】
部材「フッ素フィルム」に関して、「新築残存部分の耐用年数」は「15」、「新築残存部分の再調達原価」は「0」、「新築残存部分の再調達原価×新築残存部分の耐用年数」は「0」、「更新部分の耐用年数」は「15」、「更新部分の再調達原価」は「5,000,000」、「更新部分の再調達原価×更新部分の耐用年数」は「75,000,000」である。
【0088】
部材「自動カーテン」に関して、「新築残存部分の耐用年数」は「10」、「新築残存部分の再調達原価」は「0」、「新築残存部分の再調達原価×新築残存部分の耐用年数」は「0」、「更新部分の耐用年数」は「10」、「更新部分の再調達原価」は「5,800,000」、「更新部分の再調達原価×更新部分の耐用年数」は「58,000,000」である。
【0089】
部材「暖房器」に関して、「新築残存部分の耐用年数」は「10」、「新築残存部分の再調達原価」は「0」、「新築残存部分の再調達原価×新築残存部分の耐用年数」は「0」、「更新部分の耐用年数」は「10」、「更新部分の再調達原価」は「6,340,000」、「更新部分の再調達原価×更新部分の耐用年数」は「63,400,000」である。
【0090】
部材「コンクリート」、「鉄骨(屋根型ハウス)」、「フッ素フィルム」、「自動カーテン」、「暖房器」に関する「新築残存部分の再調達原価」の合計値αは「19,290,000」である。
【0091】
部材「コンクリート」、「鉄骨(屋根型ハウス)」、「フッ素フィルム」、「自動カーテン」、「暖房器」に関する「新築残存部分の再調達原価×新築残存部分の耐用年数」の合計値βは「502,250,000」である。
【0092】
部材「コンクリート」、「鉄骨(屋根型ハウス)」、「フッ素フィルム」、「自動カーテン」、「暖房器」に関する「更新部分の再調達原価」の合計値γは「36,430,000」である。
【0093】
部材「コンクリート」、「鉄骨(屋根型ハウス)」、「フッ素フィルム」、「自動カーテン」、「暖房器」に関する「更新部分の再調達原価×更新部分の耐用年数」の合計値δは「698,650,000」である。
【0094】
値Rcは「55,720,000」であり、値Rwは「1,200,900,000」である。
「加重平均耐用年数」は「21.55」である。
「最低残価」に関する値ωは、設備全体の再調達原価の合計値Rcを加重平均耐用年数Naで割って算出され、およそ「2,585,615」である。
【0095】
図5は、本実施形態に係る第2のデータ11の例を示すデータ構造図である。
【0096】
第2のデータ11は、先に説明した設定データ8、入力データ9、第1のデータ10に基づいて、評価部14によって自動生成可能である。
【0097】
第2のデータ11は、複数の部位と複数の部材Piとを含む。
第2のデータ11は、新築残存部分の経過年数τ、新築残存部分の残価率Ze、新築残存部分の評価額(加重平均残価)の合計値εを含む。
【0098】
本実施形態において、新築残存部分の評価額の合計値εは、複数の部材Piのそれぞれに関する新築残存部分の残価を複数の部材Piのそれぞれに関する新築残存部分の耐用年数Biで重み付けした値を合計した値である。
【0099】
新築残存部分の経過年数τは、Ye-Yaである。
新築残存部分の残価率Zeは、1-(Ye-Ya)/Naである。
【0100】
新築残存部分の評価額の合計値εは、下記の(6)式により算出される。
【0101】
【0102】
式(6)において、A1(1-D1)×Ze、…、An(1-Dn)×Zeは、部材P1、…、Pnに関する新築残存部分の残価AR1、…、ARnある。
【0103】
第2のデータ11は、各部材Piに関して、更新部分の経過年数、更新部分の残価率ZRi、新築残存部分の評価額(加重平均残価)の合計値ξを含む。
【0104】
本実施形態において、更新部分の評価額の合計値ξは、複数の部材Piのそれぞれに関する更新部分の残価を複数の部材Piのそれぞれに関する更新部分の耐用年数Bi’で重み付けした値を合計した値である。
【0105】
部材Piに関して、更新部分の経過年数は、Ye-Yiである。
部材Piに関して、更新部分の残価率ZRiは、1-(Ye-Yi)/Naである。
【0106】
部材P1~Pnに関する更新部分の評価額の合計値ξは、下記の(7)式により算出される。
【0107】
【0108】
式(7)において、A1’×D1×ZR1、…、An’×D1×ZRnは、部材P1、…、Pnに関する更新部分の残価AR1’、…、ARn’である。
【0109】
第2のデータ11は、出力装置3で出力されるべき出力データ11aを含む。
出力データ11aは、設備評価額、設備残存耐用年数、設備の経過年数、入力データ9に含まれている設備取得額、設備全体の再調達原価の合計値Rcを含む。
【0110】
設備評価額は、ω>(ε+ξ)の場合にωとし、ω≦(ε+ξ)の場合にε+ξとする。
【0111】
ε+ξをVRとすると、部材P1~Pnを備える設備残存耐用年数は、下記の(8)式により算出される。
【0112】
【0113】
設備の経過年数は、新築残存部分の経過年数τに相当する。
【0114】
図5の例において、第2のデータ11は、複数の部位「基礎」、「躯体」、「被覆」、「機械」と部材「コンクリート」、「鉄骨(屋根型ハウス)」、「フッ素フィルム」、「自動カーテン」、「暖房器」を含む。
【0115】
第2のデータ11は、「新築残存部分の経過年数」、「新築残存部分の残価率」、「新築残存部分の評価額」を含む。
【0116】
「新築残存部分の経過年数」は、「新築時点」から「評価時点」までの期間τに相当する。第2のデータ11において、「新築残存部分の経過年数」は「19.01」である。
【0117】
「新築残存部分の残価率」は、1-(新築残存部分の経過年数/加重平均耐用年数Na)により算出される。第2のデータ11において、「新築残存部分の残価率」は、「1-(19.01/21.55)」であり、およそ「11.79%」となる。
【0118】
「新築残存部分の評価額」は、各部材Piの残価を各部材Piの耐用年数で重み付けして算出される。「新築残存部分の評価額」は、新築時から残っている部分の評価額であり、「2,746,696」である。
【0119】
部材「コンクリート」に関して、「更新部分の経過年数」は「1.00」、「更新部分の残価率」は「95.36%」、「更新部分の評価額」は「3,097,183」である。
【0120】
部材「鉄骨(屋根型ハウス)」に関して、「更新部分の経過年数」は「4.00」、「更新部分の残価率」は「81.44%」、「更新部分の評価額」は「16,333,118」である。
【0121】
部材「フッ素フィルム」に関して、「更新部分の経過年数」は「2.00」、「更新部分の残価率」は「90.72%」、「更新部分の評価額」は「3,156,930」である。
【0122】
部材「自動カーテン」に関して、「更新部分の経過年数」は「0.00」、「更新部分の残価率」は「100.00%」、「更新部分の評価額」は「2,691,115」である。
【0123】
部材「暖房器」に関して、「更新部分の経過年数」は「0.00」、「更新部分の残価率」は「100.00%」、「更新部分の評価額」は「2,941,667」である。
【0124】
出力データ11aにおいて、「設備評価額」は、ω≦(ε+ξ)であるため、「30,966,710」である。
【0125】
「設備残存耐用年数」は「11.98」である。
「設備の経過年数」、「設備取得額」、「設備全体の再調達原価の合計値」は、それぞれ「19.01」、「50,000,000」、「55,720,000」である。
【0126】
図6は、本実施形態に係る設備評価処理に含まれる第1の処理の例を示すフローチャートである。
【0127】
ステップS601において、入力制御部12は、入力装置2から設定データ8と入力データ9とを受信する。記憶制御部13は、設定データ8と入力データ9とを記憶装置4へ記憶させる。
【0128】
ステップS602aにおいて、評価部14は、記憶装置4から記憶制御部13を用いて設定データ8及び入力データ9を読み出し、部材Piのそれぞれに関して、設備面積Sと新築残存部分の単位面積当たりの再調達原価との積である新築時点の価格Aiを算出し、新築残存部分の再調達原価Ai(1-Di)を算出する。
【0129】
ステップS602bにおいて、評価部14は、部材Piのそれぞれに関する新築残存部分の再調達原価Ai(1-Di)を合計した第1の値αを算出する。
【0130】
ステップS602cにおいて、評価部14は、部材Piのそれぞれに関して、新築残存部分の再調達原価Ai(1-Di)と新築残存部分の耐用年数Biとの積である第2の値Ai(1-Di)Biを算出する。
【0131】
ステップS602dにおいて、評価部14は、部材Piのそれぞれに関する第2の値Ai(1-Di)Biを合計した第3の値βを算出する。
【0132】
ステップS603aにおいて、評価部14は、部材Piのそれぞれに関して、設備面積Sと更新部分の単位面積当たりの再調達原価との積である更新時点の価格Ai’を算出し、更新部分の再調達原価Ai’×Diを算出する。
【0133】
ステップS603bにおいて、評価部14は、部材Piのそれぞれに関する更新部分の再調達原価Ai’×Diを合計した第4の値γを算出する。
【0134】
ステップS603cにおいて、評価部14は、部材Piのそれぞれに関して、更新部分の再調達原価Ai’×Diと更新部分の耐用年数Bi’との積である第5の値Ai’×Di×Bi’を算出する。
【0135】
ステップS603dにおいて、評価部14は、部材Piのそれぞれに関する第5の値Ai’×Di×Bi’を合計した第6の値δを算出する。
【0136】
ステップS604において、評価部14は、第1の値αと第4の値γとを加算した第7の値Rcを算出し、第3の値βと第6の値δとを加算した第8の値Rwを算出する。
【0137】
ステップS605において、評価部14は、第8の値Rwを第7の値Rcで割り算した加重平均耐用年数Naを算出する。
【0138】
ステップS606において、評価部14は、第7の値Rcを前記加重平均耐用年数Naで割った最低残価ωを算出する。
【0139】
ステップS607において、記憶制御部13は、第1のデータ10を記憶装置4へ記憶させる。
【0140】
図7は、本実施形態に係る設備評価処理に含まれる第2の処理の例を示すフローチャートである。
【0141】
ステップS701aにおいて、評価部14は、新築残存部分の経過時間Ye-Yaを算出する。
【0142】
ステップS701bにおいて、評価部14は、新築残存部分の経過時間と加重平均耐用年数Naとに基づいて、新築残存部分の残価率Ze=1-(Ye-Ya)/Naを算出する。
【0143】
ステップS701cにおいて、評価部14は、第7の値Rcと、第8の値Rwと、新築残存部分の残価率Zeと、部材Piのそれぞれに関する新築時点の価格Ai、更新部分の割合Di、新築時の耐用年数Biとに基づいて、部材Piのそれぞれに関する新築残存部分の残価を複数の部材Piのそれぞれに関する新築残存部分の耐用年数Biで重み付けした値を合計した第9の値εを算出する。
【0144】
ステップS702aにおいて、評価部14は、部材Piのそれぞれに関して、更新部分の経過時間Ye-Yiを算出する。
【0145】
ステップS702bにおいて、評価部14は、部材Piのそれぞれに関する更新部分の経過時間と加重平均耐用年数Naとに基づいて、部材Piのそれぞれに関して、更新部分の残価率ZRi=1-(Ye-Yi)/Naを算出する。
【0146】
ステップS702cにおいて、評価部14は、加重平均耐用年数Naと、部材Piのそれぞれに関する更新時点の価格Ai’、更新部分の割合Di、更新部分の耐用年数Bi’、更新部分の残価率ZRiとに基づいて、部材Piのそれぞれに関する更新部分の残価を複数の部材Piのそれぞれに関する更新部分の耐用年数Bi’で重み付けした値を合計した第10の値ξを算出する。
【0147】
ステップS703において、評価部14は、上記のステップS606で算出された最低残価ωが、第9の値εと第10の値ξを加算した第11の値VR=ε+ξより大きいか否か判断する。
【0148】
最低残価ωが第11の値VRより大きい場合、ステップS704aにおいて、評価部14は、最低残価ωを設備評価額とする。
【0149】
最低残価ωが第11の値VR以下の場合、ステップS704bにおいて、評価部14は、第11の値VRを設備評価額とする。
【0150】
ステップS705において、評価部14は、加重平均耐用年数Naと第11の値VRとの積を、第7の値Rcで割った設備残存耐用年数(Na×VR/Rc)を算出する。
【0151】
ステップS706において、記憶制御部13は、第2のデータ11を記憶装置4へ記憶させる。
【0152】
ステップS707において、出力制御部15は、出力装置3を用いて出力データ11aを出力する。
【0153】
なお、上記
図6及び
図7の各処理は、値を算出可能な範囲で適宜処理順序を変更可能である。
【0154】
例えば、
図6のステップS602bは、ステップS602aからステップS604までのいずれかの時点で実行されればよい。
【0155】
例えば、
図6のステップS603bは、ステップS603aからステップS604までのいずれかの時点で実行されればよい。
【0156】
例えば、
図6のステップS606は、ステップS605から
図7のステップS703までの間のいずれかの時点で実行されればよい。
【0157】
以上説明した本実施形態に係る設備評価装置1によって得られる効果を説明する。
【0158】
図8は、本実施形態に係る設備評価装置1によって算出される設備評価額の変化の例を示すグラフである。
【0159】
この
図8において、横軸は経過時間、縦軸は評価額を表す。縦軸の評価額は、新築時点の評価額を100%としている。
【0160】
法定耐用年数のみを用いて設備評価額を求める場合、法定耐用年数が経過すると設備評価額はゼロとなる。
【0161】
しかしながら、設備の実際の耐用年数は法定耐用年数よりも長く、法定耐用年数が経過した設備であっても設備を使用可能であり、設備に価値がある場合が多い。このように使用可能な設備の評価額をゼロと評価するのは適切ではない。
【0162】
本実施形態においては、評価対象の設備を構成する部材が更新された場合に、その更新された部材の耐用年数が延長され、更新に応じて評価対象の設備の評価額が増加される。この結果、評価対象の設備の価値が長期間認められる。
【0163】
この
図8の例において、部材P1の更新に関しては、更新前と更新後で同じ耐用年数の部材が用いられている。設備評価額は、部材P1の更新時に上昇し、その後、時間の経過にそって更新前と同じ傾きで設備評価額は減少する。
【0164】
部材P2、P3の更新に関しては、更新前より耐用年数の長い部材で更新されている。その結果、設備評価額は、部材P2、P3の更新時に上昇し、その後、更新後の設備評価額の減少率は、更新前の設備評価額の減少率より小さくなる。
【0165】
以上説明した本実施形態に係る設備評価装置1により、法定耐用年数を経過した場合であっても設備を適切に評価することができる。したがって、設備の所有者は、法定耐用年数を経過した設備を担保にして金融機関から融資を受けることができ、設備の更新、管理、売却を適切に判断することができる。
【0166】
本実施形態においては、設備の立地条件ごとに耐用年数を切り替えることができ、より適切に設備評価額及び設備残存耐用年数を算出することができる。
【0167】
なお、本発明は上記で説明した実施形態に限定されず、各実施形態は、構成要素を削除、付加又は変更等をして実施することができる。また、各実施形態の各構成要素を適宜組み合わせ又は交換などをすることで、さらに異なる形態で実施することができる。このように、上記で説明した実施形態と直接的には異なる実施形態であっても、本発明と同様の趣旨のものは、本発明の実施形態として説明したものとして、その説明を省略している。
【符号の説明】
【0168】
1…設備評価装置、2…入力装置、3…出力装置、4…記憶装置、5…処理装置、6…バス、7…プログラム、8…設定データ、9…入力データ、10…第1のデータ、11…第2のデータ、11a…出力データ、12…入力制御部、13…記憶制御部、14…評価部、15…出力制御部。