(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-03
(45)【発行日】2023-10-12
(54)【発明の名称】アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
H02P 29/00 20160101AFI20231004BHJP
B25J 19/00 20060101ALI20231004BHJP
H05K 13/04 20060101ALI20231004BHJP
H02K 11/20 20160101ALI20231004BHJP
H02P 25/064 20160101ALI20231004BHJP
【FI】
H02P29/00
B25J19/00 A
H05K13/04 B
H02K11/20
H02P25/064
(21)【出願番号】P 2019132620
(22)【出願日】2019-07-18
【審査請求日】2021-12-13
(73)【特許権者】
【識別番号】390029805
【氏名又は名称】THK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福島 克也
(72)【発明者】
【氏名】原 聡史
(72)【発明者】
【氏名】和久田 翔悟
(72)【発明者】
【氏名】山田 幸宏
(72)【発明者】
【氏名】石井 正志
(72)【発明者】
【氏名】水野 智史
【審査官】佐藤 彰洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-146762(JP,A)
【文献】特開2016-080554(JP,A)
【文献】特開2016-156707(JP,A)
【文献】特開2010-188504(JP,A)
【文献】特開2007-030078(JP,A)
【文献】特開2001-333566(JP,A)
【文献】特開2017-127133(JP,A)
【文献】特開2002-369484(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 29/00
B25J 19/00
H05K 13/04
H02K 11/20
H02P 25/064
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸方向の移動によりワークに力を加えるシャフトと、
前記シャフトを前記中心軸の方向に摺動させることにより移動させる駆動部と、
前記シャフトの周りに設けられ前記駆動部が前記シャフトを移動させるときに前記シャフトが相対的に移動する固定部と、
前記固定部よりも前記駆動部側において前記シャフトに加わる力を検出する検出部と、
前記駆動部を制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
前記シャフトが前記ワークに力を加える前に前記シャフトが移動している期間のうちの所定期間に前記検出部が検出する力であって前記シャフトが摺動するときに発生する摩擦力と関連する第一の力を求め、前記所定期間の後に、前記検出部により検出される前記力及び前記第一の力に基づいて前記駆動部を制御
し、
前記検出部により検出される力の変動量が所定の範囲内の状態が継続する期間として前記所定期間を設定する、
アクチュエータ。
【請求項2】
中心軸方向の移動によりワークに力を加えるシャフトと、
前記シャフトを前記中心軸の方向に摺動させることにより移動させる駆動部と、
前記シャフトの周りに設けられ前記駆動部が前記シャフトを移動させるときに前記シャフトが相対的に移動する固定部と、
前記固定部よりも前記駆動部側において前記シャフトに加わる力を検出する検出部と、
前記駆動部を制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
前記シャフトが前記ワークに力を加える前に前記シャフトが移動している期間のうちの所定期間に前記検出部が検出する力であって前記シャフトが摺動するときに発生する摩擦力と関連する第一の力を求め、前記所定期間の後に、前記検出部により検出される前記力及び前記第一の力に基づいて前記駆動部を制御し、
前記シャフトの速度の変動量が所定の範囲内の状態が継続する期間として前記所定期間を設定する、
アクチュエータ。
【請求項3】
前記制御装置は、前記所定期間において、前記シャフトが前記ワークに近付く方向に移動しているときに、前記第一の力を求める、
請求項1
または2に記載のアクチュエータ。
【請求項4】
前記制御装置は、前記所定期間の後に、前記検出部により検出される前記力が所定値以上になると前記駆動部を停止させる制御である停止制御を行い、
前記制御装置は、前記停止制御において、前記第一の力を前記所定値に加算することで前記所定値を補正する、または、前記検出部により検出される前記力から前記第一の力を減算することで前記検出部により検出される前記力を補正する、
請求項1から
3の何れか1項に記載のアクチュエータ。
【請求項5】
前記制御装置は、前記所定期間の後に、前記検出部により検出される前記力が所定値となるように前記駆動部のフィードバック制御を行い、
前記制御装置は、前記フィードバック制御において、前記第一の力を前記所定値に加算することで前記所定値を補正する、または、前記検出部により検出される前記力から前記第一の力を減算することで前記検出部により検出される前記力を補正する、
請求項1から
3の何れか1項に記載のアクチュエータ。
【請求項6】
前記所定期間は、前記ワークをプレイスする前の期間である、
請求項1または2に記載のアクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
中空のシャフトをワークに押し付けた状態でシャフト内を負圧にすることで、ワークをシャフトに吸い付けて、ワークをピックアップすることができる。ここで、ワークをシャフトに吸い付けるときに、ワークとシャフトとの間に隙間があると、ワークがシャフトに勢いよく衝突してワークが破損する虞や、ワークを吸い付けることができない虞がある。一方、ワークを押し付ける荷重が大きすぎると、ワークが破損する虞がある。したがって、シャフトをワークに適切な荷重で押し付けることが望まれている。また、シャフトがワークに接する際にシャフトの速度が高いと、シャフトがワークに衝突することによりワークが破損する虞があるため、この衝撃を緩和することが望まれている。従来では、シャフト本体の先端にばね等の緩衝部材を介して吸着部材を設けている(例えば、特許文献1参照。)。すなわち、吸着部材がワークに接した際に、ばねが縮むことで衝撃を緩和している。その後、さらにシャフトがワークに向かって移動したときには、ばね定数に応じた荷重でワークを押し付けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、例えば、シャフトに加わる力を検出する力センサを設けることにより、シャフトとワークとの間に発生する荷重を検出することが考えられる。そして、この検出値に基づいてシャフトを移動させることで、シャフトとワークとの間に発生する荷重を制御することが考えられる。しかし、シャフトがガイド等において摺動していると、摩擦力が発生して力センサの検出値が変化する場合がある。このため、力センサの検出値が、シャフトとワークとの間に発生する実際の荷重を示さないことがある。そうすると、力センサの検出値に基づいてシャフトを移動させた場合に、シャフトとワークとの間に発生する実際の荷重が、要求される値に合わないこともある。摩擦力による影響を予め求めておくことも考えられるが、摩擦力は、シャフト等の経年変化、温度、湿度等によって変化してしまう。
【0005】
本発明は、上記したような種々の実情を鑑みてなされたものであり、その目的は、アクチュエータにおいて、シャフト及びワークに加わる荷重を適切に制御することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様の一つは、中心軸方向の移動によりワークに力を加えるシャフトと、前記シャフトを前記中心軸の方向に移動させる駆動部と、前記シャフトの周りに設けられ前記駆動部が前記シャフトを移動させるときに前記シャフトが相対的に移動する固定部と、前記固定部よりも前記駆動部側において前記シャフトに加わる力を検出する検出部と、前記駆動部を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記シャフトが前記ワークに力を加える前に前記シャフトが移動している期間のうちの所定期間に前記検出部が検出する力である第一の力を求め、前記所定期間の後に、前記検出部により検出される前記力及び前記第一の力に基づいて前記駆動部を制御する、アクチュエータである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、アクチュエータにおいて、シャフト及びワークに加わる荷重を適切に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係るアクチュエータの外観図である。
【
図2】実施形態に係るアクチュエータの内部構造を示した概略構成図である。
【
図3】実施形態に係るシャフトハウジングとシャフトの先端部との概略構成を示した断面図である。
【
図4】実施形態に係るひずみゲージの検出値の推移を示したタイムチャートである。
【
図5】第1実施形態に係るワークのピックアップ時におけるひずみゲージの検出値の推移を示したタイムチャートである。
【
図6】第1実施形態に係るピックアップ処理のフローを示したフローチャートである。
【
図7】第1実施形態に係るプレイス処理のフローを示したフローチャートである。
【
図8】第2実施形態に係るワークのピックアップ時におけるひずみゲージの検出値の推移を示したタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の態様の一つであるアクチュエータでは、駆動部によって、シャフトがシャフトの中心軸方向に移動する。シャフトは、ワークをピックアップしたり、ワークを押し付けたり、ワークをプレイスしたりするときに駆動部によって移動される。駆動部は、例えば、リニアモータ等の直動モータであってもよい。また、駆動部とシャフトとの間には他の部材が介在していてもよい。また、シャフトは、中心軸周りに回転可能に支持されていてもよい。シャフトが中心軸方向に移動するときには、シャフトが固定部に対して相対的に移動する。固定部は、例えば、アクチュエータの筐体に固定されていてもよいし、筐体自体であってもよい。固定部は、例えば、シャフトに接触する可能性のある部材であってもよく、シャフトが摺動する部材であってもよい。また、固定部は、例えば、シャフトを案内するガイドであってもよく、シャフトに負圧を供給する負圧供給機構を備えた部材であってもよい。駆動部によってシャフトが移動可能なように、固定部とシャフトとの間には隙間が設けられていてもよい。
【0010】
シャフトが、例えば、ワークをピックアップしたり、ワークを押し付けたり、ワークをプレイスしたりするときに、シャフトからワークに力を加えると、シャフトとワークとの間に荷重が発生する。検出部は、このときの力を検出する。検出部が検出する力を以下では検出値ともいう。なお、検出部は、シャフトに加わる力を検出可能であればその構成は問わない。検出部は、例えば、ひずみゲージを利用したセンサであってもよく、圧電式のセンサであってもよい。また、検出部は、ロードセルとしてもよい。
【0011】
制御装置は、駆動部を制御する。このときに、例えば、検出部の検出値に基づいた制御を実施する。しかし、シャフトが固定部に対して摺動すると、検出部の検出値は、そのときに発生する摩擦力によって変化し得る。例えば、シャフトが固定部に接しないようにアクチュエータを製造したとしても、公差や経年変化の影響により、シャフトが固定部に対して接触して摺動する場合もある。そうすると、シャフトがワークに近付くように移動している場合には、シャフトに対して、ワークから離れる方向の摩擦力が発生し、シャフトがワークから離れるように移動している場合には、シャフトに対して、ワークに近付く方向に摩擦力が発生する。そのため、シャフトがワークに接しているときには、シャフトがワークに加える力と、検出部の検出値とにずれが生じ得る。
【0012】
そこで、制御装置は、さらに、摩擦力と関連する第一の力に基づいて、駆動部を制御する。第一の力は、シャフトがワークに力を加える前のシャフトが移動している期間のうちの所定期間に求める。シャフトがワークに力を加える前の期間であれば、検出部の検出値はワークからの反力の影響を受けないため、摩擦力の影響をより正確に検出することができる。また、シャフトが移動中であれば、検出部の検出値は動摩擦力の影響を受けるため、動摩擦力の影響を検出することができる。「シャフトがワークに力を加える前」は、例えば、ワークのピックアップ時やワークの押し付け時において、シャフトがワークに接触する前としてもよいし、ワークのプレイス時において、ワークが接地する前、または、ワークが他の部材に接触する前としてもよい。なお、所定期間は、検出部の検出値が安定している期間としてもよい。例えば、シャフトが移動を始めた直後では、検出部の検出値がシャフトの加速度の影響を受けるため、検出部の検出値が安定しない場合がある。そのため、検出部の検出値が安定したときに第一の力を求めることにより、摩擦力に関連性の高い値を求めることができる。なお、第一の力は、例えば、所定期間における検出値を平滑化した値としてもよく、所定期間における検出値を平均した値としてもよく、所定期間における検出値に対して所定のなまし処理を行った値としてもよく、所定期間中の何れかの時点における瞬時値としてもよい。
【0013】
そして、所定期間後に、検出部の検出値及び第一の力に基づいて駆動部の制御を行うことにより、摩擦力を考慮した制御が可能となる。これにより、ワークに適切な荷重を加えることができるので、ワークの破損を抑制しつつ、より確実にワークをピックアップしたり、ワークを押しくけたり、ワークをプレイスしたりすることが可能となる。なお、第一の力は、例えば、ワークをピックアップする度、ワークを押し付ける度、又は、ワークをプレイスする度に求めることができる。そうすると、温度や湿度に応じて摩擦力が変化した場合であっても、速やかに対応することができる。
【0014】
なお、制御装置は、所定期間以前には、例えば、検出部の検出値に基づいて駆動部を制御してもよく、他のセンサ(例えばシャフトの位置を検出するセンサ)の検出値に基づいて駆動部を制御してもよい。
【0015】
また、前記制御装置は、前記所定期間において、前記シャフトが前記ワークに近付く方向に移動しているときに、前記第一の力を求めてもよい。
【0016】
シャフトの移動方向によって摩擦力が作用する方向が変化する。シャフトがワークに近付く方向に移動しているときに第一の力を検出することにより、ワークをピックアップするとき、ワークを押し付けるとき、または、ワークをプレイスするときに、シャフトに加わる力の方向と同じ方向の第一の力を求めることが可能となる。また、シャフトが移動しているときであれば、動摩擦力を得ることができる。
【0017】
前記制御装置は、前記検出部により検出される力の変動量が所定の範囲内の状態が継続する期間として前記所定期間を設定してもよい。
【0018】
ここで、シャフトが移動するときの速度が変化すると、検出部の検出値が加速度の影響を受ける。例えば、シャフトが移動を開始した直後には、検出部の検出値が大きく変動する。一方、検出部の検出値における加速度の影響が小さくなるにしたがって、検出値の変動量は小さくなる。したがって、検出部の検出値の変動量が所定の範囲内になれば、検出部の検出値が安定したものと判断して、そのときに第一の力を求める。すなわち、ここでいう所定の範囲は、例えば、検出部の検出値が安定しているといえる変動量の範囲であり、摩擦力の検出精度が許容範囲内となる変動量の範囲である。なお、検出値の変動量が連続して所定の範囲内となっている期間をカウントし、この期間が閾値に達した場合に、この期間を所定期間として設定してもよい。この場合、所定の期間における検出値の平均値
または所定の期間における検出値になまし処理を行った値を第一の力としてもよい。このように、検出値が安定したときに第一の力を求めることにより、摩擦力の影響をより正確に得ることができるので、その後の駆動部の制御をより適切に行うことができる。
【0019】
また、前記制御装置は、前記シャフトの速度の変動量が所定の範囲内の状態が継続する期間として前記所定期間を設定してもよい。
【0020】
例えば、シャフトの速度を位置センサなどによって検出することにより、その時間変化としてシャフトの速度を求めることができる。そして、シャフトの速度が安定していれば、検出部の検出値の変動量は小さくなる。したがって、シャフトの速度の変動量が所定の範囲内になれば、シャフトの速度が安定したものと判断して、そのときに第一の力を求めてもよい。すなわち、ここでいう所定の範囲は、例えば、シャフトの速度が安定しているといえる変動量の範囲であり、摩擦力の検出精度が許容範囲内となる変動量の範囲である。なお、シャフトの速度の変動量が連続して所定の範囲内となっている期間をカウントし、この期間が閾値に達した場合に、この期間を所定期間として設定してもよい。この場合、所定の期間における検出値の平均値または所定の期間における検出値になまし処理を行った値を第一の力としてもよい。このように、シャフトの速度が安定したときに第一の力を求めることにより、摩擦力の影響をより正確に得ることができるので、その後の駆動部の制御をより適切に行うことができる。
【0021】
また、前記制御装置は、前記所定期間の後に、前記検出部により検出される前記力が所定値以上になると前記駆動部を停止させる制御である停止制御を行い、前記制御装置は、前記停止制御において、前記第一の力を前記所定値に加算することで前記所定値を補正する、または、前記検出部により検出される前記力から前記第一の力を減算することで前記検出部により検出される前記力を補正してもよい。
【0022】
なお、所定値は、ワークのピックアップ時またはワークの押し付け時において、シャフトがワークに接触したと判定される力としてもよい。また、所定値は、ワークのピックアップ時において、ワークの破損を抑制しつつワークをより確実にピックアップすることが可能な力としてもよい。また、所定値は、ワークの押し付け時において、ワークの破損を抑制しつつワークをより確実に押し付けることが可能な力としてもよい。また、所定値は、ワークのプレイス時において、例えば、ワークが接地したと判定される力、または、ワークが他の部材に接触したと判定される力としてもよい。また、所定値は、ワークのプレイス時において、ワークの破損を抑制しつつより確実にワークを他の部材に押し付けることが可能な力としてもよい。所定値は、ワークの種類に応じて変更することもできる。検出部の検出値が所定値以上の場合に駆動部を停止させることにより、シャフトがワークに接したときにシャフトを直ぐに停止させたり、ワークが接地したときやワークが他の部材に接したときにシャフトを直ぐに停止させたりできる。また、ピックアップ時またはプレイス時、さらにはワークの押し付け時において、ワークに適切な力を加えることが可能となる。しかし、固定部により摩擦力が発生している場合には、ワークに加わる実際の力が、検出部の検出値から第一の力だけずれていると考えられる。これに対し、停止制御を行うときの検出部の検出値または所定値を第一の力だけずらすことにより、ワークに加わる実際の力と検出部の検出値とのずれを解消できる。すなわち、検出部の検出値が、第一の力だけ大きくなっているので、検出部の検出値から第一の力を減算することにより、検出部の検出値を補正してもよい。一方、停止制御においては、所定値に第一の力を加えることによっても、同じ効果を得ることができる。このようにして、停止制御を行うことにより、摩擦力の影響を考慮した停止制御が可能となるため、例えば、ワークへの接触をより確実に検出することができる。なお、シャフト及び固定部の状態によっては、シャフトが固定部に接触しない場合も考えられる。このような場合には、停止制御において、第一の力を例えば0としてもよい。
【0023】
また、前記制御装置は、前記所定期間の後に、前記検出部により検出される前記力が所定値となるように前記駆動部のフィードバック制御を行い、前記制御装置は、前記フィードバック制御において、前記第一の力を前記所定値に加算することで前記所定値を補正する、または、前記検出部により検出される前記力から前記第一の力を減算することで前記検出部により検出される前記力を補正してもよい。
【0024】
なお、所定値は、ワークのピックアップ時に要求される力、ワークの押し付け時に要求される力、または、ワークのプレイス時に要求される力としてもよい。また、所定値は、ワークのピックアップ時において、ワークの破損を抑制しつつワークをより確実にピックアップすることが可能な力としてもよい。また、所定値は、ワークの押し付け時において、ワークの破損を抑制しつつワークをより確実に押し付けることが可能な力としてもよい。また、所定値は、ワークのプレイス時において、ワークの破損を抑制しつつより確実にワークを他の部材に押し付けることが可能な力としてもよい。所定値は、ワークの種類に応じて変更することもできる。検出部の検出値が所定値となるように駆動部をフィードバック制御することにより、例えば、ワークのピックアップ、ワークの押し付け、またはワークのプレイスをより確実に実行することができる。しかし、固定部によって摩擦力が発生している場合には、ワークに加わる実際の力が、検出部の検出値から第一の力だけずれていると考えられる。これに対し、フィードバック制御を行うときの検出部の検出値または所定値を第一の力だけずらすことにより、ワークに加わる実際の力と検出部の検出値とのずれを解消できる。すなわち、検出部の検出値が、第一の力だけ大きくなっているので、検出部の検出値から第一の力を減算することにより、検出部の検出値を補正してもよい。一方、フィードバック制御においては、所定値に第一の力を加えることによっても、同じ効果を得ることができる。このようにして、フィードバック制御を行うことにより、摩擦力の影響を考慮したフィードバック制御が可能となるため、ワークに適切な力を加えることができる。なお、シャフト及び固定部の状態によっては、シャフトが固定部に接触しない場合も考えられる。このような場合には、フィードバック制御において、第一の力を例えば0としてもよい。
【0025】
以下に図面を参照して、本発明を実施するための形態を説明する。ただし、この実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。また、以下の実施形態は可能な限り組み合わせることができる。
【0026】
<第1実施形態>
図1は、本実施形態に係るアクチュエータ1の外観図である。アクチュエータ1は外形が略直方体のハウジング2を有しており、ハウジング2には、蓋200が取り付けられている。
図2は、本実施形態に係るアクチュエータ1の内部構造を示した概略構成図である。ハウジング2の内部に、シャフト10の一部を収容している。このシャフト10の先端部10A側は、中空となるよう形成されている。シャフト10及びハウジング2の材料には、例えば金属(例えばアルミニウム)を用いることができるが、樹脂等を用いることもできる。なお、以下の説明においては、XYZ直交座標系を設定し、このXYZ直交座標系を参照しつつ各部材の位置について説明する。ハウジング2の最も大きな面の長辺方向であってシャフト10の中心軸100の方向をZ軸方向とし、ハウジング2の最も大きな面の短辺方向をX軸方向とし、ハウジング2の最も大きな面と直交する方向をY軸方向とする。Z軸方向は鉛直方向でもある。なお、以下では、
図2におけるZ軸方向の上側をアクチュエータ1の上側とし、
図2におけるZ軸方向の下側をアクチュエータ1の下側とする。また、
図2におけるX軸方向の右側をアクチュエータ1の右側とし、
図2におけるX軸方向の左側をアクチュエータ1の左側とする。また、
図2におけるY軸方向の手前側をアクチュエータ1の手前側とし、
図2におけるY軸方向の奥側をアクチュエータ1の奥側
とする。ハウジング2は、Z軸方向の寸法がX軸方向の寸法よりも長く、X軸方向の寸法がY軸方向の寸法よりも長い。ハウジング2は、Y軸方向と直交する一つの面(
図2における手前側の面)に相当する箇所が開口しており、この開口を蓋200によって閉塞している。蓋200は、例えばネジによってハウジング2に固定される。
【0027】
ハウジング2内には、シャフト10をその中心軸100回りに回転させる回転モータ20と、シャフト10をその中心軸100に沿った方向(すなわち、Z軸方向)にハウジング2に対して相対的に直動させる直動モータ30と、エア制御機構60とが収容されている。また、ハウジング2のZ軸方向の下端面202には、シャフト10が挿通されたシャフトハウジング50が取り付けられている。ハウジング2には、下端面202からハウジング2の内部に向かって凹むように凹部202Bが形成されており、この凹部202Bにシャフトハウジング50の一部が挿入される。この凹部202BのZ軸方向の上端部には、Z軸方向に貫通孔2Aが形成されており、この貫通孔2A及びシャフトハウジング50をシャフト10が挿通される。シャフト10のZ軸方向の下側の先端部10Aは、シャフトハウジング50から外部へ突出している。シャフト10は、ハウジング2のX軸方向の中心且つY軸方向の中心に設けられている。つまり、ハウジング2における、X軸方向の中心およびY軸方向の中心を通ってZ軸方向に延びる中心軸と、シャフト10の中心軸100とが重なるように、シャフト10が設けられている。シャフト10は、直動モータ30によってZ軸方向に直動すると共に、回転モータ20によって中心軸100の回りを回転する。なお、直動モータ30は、駆動部の一例である。
【0028】
シャフト10の先端部10Aと逆側の端部(Z軸方向の上側の端部)である基端部10B側は、ハウジング2内に収容されており、回転モータ20の出力軸21に接続されている。この回転モータ20は、シャフト10を回転可能に支持している。回転モータ20の出力軸21の中心軸は、シャフト10の中心軸100と一致する。回転モータ20は、出力軸21の他に、固定子22と、固定子22の内部で回転する回転子23と、出力軸21の回転角度を検出するロータリエンコーダ24とを有する。回転子23が固定子22に対して回転することにより、出力軸21及びシャフト10も固定子22に対して連動して回転する。
【0029】
直動モータ30は、ハウジング2に固定された固定子31、固定子31に対して相対的にZ軸方向に移動する可動子32を有する。直動モータ30は、例えばリニアモータである。固定子31には複数のコイル31Aが設けられ、可動子32には複数の永久磁石32Aが設けられている。コイル31Aは、Z軸方向に所定ピッチで配置され、且つ、U,V,W相の3つのコイル31Aを一組として複数設けられている。本実施形態では、これらU,V,W相のコイル31Aに三相電機子電流を流すことによって直動的に移動する移動磁界を発生させ、固定子31に対して可動子32を直動的に移動させる。直動モータ30には固定子31に対する可動子32の相対位置を検出するリニアエンコーダ38が設けられている。なお、上記構成に代えて、固定子31に永久磁石を設け、可動子32に複数のコイルを設けることもできる。
【0030】
直動モータ30の可動子32と回転モータ20の固定子22とは、直動テーブル33を介して連結されている。直動テーブル33は、直動モータ30の可動子32の移動に伴って移動可能である。直動テーブル33の移動は、直動案内装置34によってZ軸方向に案内されている。直動案内装置34は、ハウジング2に固定されたレール34Aと、レール34Aに組み付けられたスライダブロック34Bとを有する。レール34Aは、Z軸方向に延びており、スライダブロック34Bは、レール34Aに沿ってZ軸方向に移動可能に構成されている。
【0031】
直動テーブル33は、スライダブロック34Bに固定されており、スライダブロック3
4Bと共にZ軸方向に移動可能である。直動テーブル33は、直動モータ30の可動子32と2つの連結アーム35を介して連結されている。2つの連結アーム35は、可動子32のZ軸方向の両端部と、直動テーブル33のZ軸方向の両端部とを連結している。また、直動テーブル33は、両端部よりも中央側において、2つの連結アーム36を介して回転モータ20の固定子22と連結されている。なお、Z軸方向上側の連結アーム36を第一アーム36Aといい、Z軸方向下側の連結アーム36を第二アーム36Bという。また、第一アーム36Aと第二アーム36Bとを区別しない場合には、単に連結アーム36という。直動テーブル33と回転モータ20の固定子22とが、該連結アーム36を介して回転モータ20の固定子22と連結されているために、直動テーブル33の移動に伴って回転モータ20の固定子22も移動する。また、連結アーム36は、断面が四角である。各連結アーム36におけるZ軸方向の上側を向く面には、ひずみゲージ37が固定されている。なお、第一アーム36Aに固定されるひずみゲージ37を第一ひずみゲージ37Aといい、第二アーム36Bに固定されるひずみゲージ37を第二ひずみゲージ37Bという。第一ひずみゲージ37Aと第二ひずみゲージ37Bとを区別しない場合には、単にひずみゲージ37という。なお、本実施形態の2つのひずみゲージ37は、連結アーム36のZ軸方向の上側を向く面に夫々設けられているが、これに代えて、連結アーム36のZ軸方向の下側を向く面に夫々設けられていてもよい。ひずみゲージ37は、検出部の一例である。
【0032】
エア制御機構60は、シャフト10の先端部10Aに正圧や負圧を発生させるための機構である。すなわち、エア制御機構60は、ワークWのピックアップ時において、シャフト10内の空気を吸引することで、該シャフト10の先端部10Aに負圧を発生させる。これによってワークWがシャフト10の先端部10Aに吸い付けられる。また、シャフト10内に空気を送り込むことで、該シャフト10の先端部10Aに正圧を発生させる。これによりシャフト10の先端部10AからワークWを容易に脱離させる。
【0033】
エア制御機構60は、正圧の空気が流通する正圧通路61A(一点鎖線参照。)と、負圧の空気が流通する負圧通路61B(二点鎖線参照。)と、正圧の空気及び負圧の空気で共用される共用通路61C(破線参照。)とを有する。正圧通路61Aの一端は、ハウジング2のZ軸方向の上端面201に設けられた正圧用コネクタ62Aに接続され、正圧通路61Aの他端は正圧用の電磁弁(以下、正圧電磁弁63Aという。)に接続されている。正圧電磁弁63Aは、後述するコントローラ7によって開閉される。なお、正圧通路61Aの一端側の部分はチューブ610によって構成され、他端側の部分はブロック600に開けられた穴により構成されている。正圧用コネクタ62Aは、ハウジング2のZ軸方向の上端面201を貫通しており、正圧用コネクタ62Aにはエアを吐出するポンプ等に繋がるチューブが外部から接続される。
【0034】
負圧通路61Bの一端は、ハウジング2のZ軸方向の上端面201に設けられた負圧用コネクタ62Bに接続され、負圧通路61Bの他端は負圧用の電磁弁(以下、負圧電磁弁63Bという。)に接続されている。負圧電磁弁63Bは、後述するコントローラ7によって開閉される。なお、負圧通路61Bの一端側の部分はチューブ620によって構成され、他端側の部分はブロック600に開けられた穴により構成されている。負圧用コネクタ62Bは、ハウジング2のZ軸方向の上端面201を貫通しており、負圧用コネクタ62Bにはエアを吸引するポンプ等に繋がるチューブが外部から接続される。
【0035】
共用通路61Cはブロック600に開けられた穴により構成されている。共用通路61Cの一端は、2つに分岐して正圧電磁弁63A及び負圧電磁弁63Bに接続されており、共用通路61Cの他端は、ハウジング2に形成されている貫通孔であるエア流通路202Aに接続されている。エア流通路202Aは、シャフトハウジング50に通じている。負圧電磁弁63Bを開き且つ正圧電磁弁63Aを閉じることにより、負圧通路61Bと共用
通路61Cとが連通されるため、共用通路61C内に負圧が発生する。そうすると、エア流通路202Aを介してシャフトハウジング50内から空気が吸引される。一方、正圧電磁弁63Aを開き且つ負圧電磁弁63Bを閉じることにより、正圧通路61Aと共用通路61Cとが連通されるため、共用通路61C内に正圧が発生する。そうすると、エア流通路202Aを介してシャフトハウジング50内に空気が供給される。共用通路61Cには、共用通路61C内の空気の圧力を検出する圧力センサ64及び共用通路61C内の空気の流量を検出する流量センサ65が設けられている。
【0036】
なお、
図2に示したアクチュエータ1では、正圧通路61A及び負圧通路61Bの一部がチューブで構成され、他部がブロック600に開けられた穴により構成されているが、これに限らず、全ての通路をチューブで構成することもできるし、全ての通路をブロック600に開けられた穴により構成することもできる。共用通路61Cについても同様で、全てチューブで構成することもできるし、チューブを併用して構成することもできる。なお、チューブ610及びチューブ620の材料は、樹脂等の柔軟性を有する材料であってもよく、金属等の柔軟性を有さない材料であってもよい。また、正圧通路61Aを用いてシャフトハウジング50に正圧を供給する代わりに、大気圧を供給してもよい。
【0037】
また、ハウジング2のZ軸方向の上端面201には、回転モータ20を冷却するための空気の入口となるコネクタ(以下、入口コネクタ91Aという。)およびハウジング2からの空気の出口となるコネクタ(以下、出口コネクタ91Bという。)が設けられている。入口コネクタ91A及び出口コネクタ91Bは、夫々空気が流通可能なようにハウジング2の上端面201を貫通している。入口コネクタ91Aにはエアを吐出するポンプ等に繋がるチューブがハウジング2の外部から接続され、出口コネクタ91Bにはハウジング2から流出するエアを排出するチューブがハウジング2の外部から接続される。ハウジング2の内部には、回転モータ20を冷却するための空気が流通する金属製のパイプ(以下、冷却パイプ92という。)が設けられており、この冷却パイプ92の一端は、入口コネクタ91Aに接続されている。冷却パイプ92は、入口コネクタ91AからZ軸方向にハウジング2の下端面202付近まで延び、該下端面202付近において湾曲して他端側が回転モータ20に向くように形成されている。このように、Z軸方向の下側からハウジング2内に空気を供給することにより、効率的な冷却が可能となる。また、冷却パイプ92は、直動モータ30のコイル31Aから熱を奪うように、該固定子31の内部を貫通している。固定子31に設けられているコイル31Aからより多くの熱を奪うように、冷却パイプ92の周りにコイル31Aが配置されている。
【0038】
ハウジング2のZ軸方向の上端面201には、電力を供給する電線や信号線を含んだコネクタ41が接続されている。また、ハウジング2には、コントローラ7が設けられている。コネクタ41からハウジング2内に引き込まれる電線や信号線は、コントローラ7に接続されている。コントローラ7には、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、EPROM(Erasable Programmable ROM)が備わり、これらはバスにより相互に接続される。EPROMには、各種プログラム、各種テーブル等が格納される。EPROMに格納されたプログラムをCPUがRAMの作業領域にロードして実行し、このプログラムの実行を通じて、回転モータ20、直動モータ30、正圧電磁弁63A、負圧電磁弁63B等が制御される。これにより、所定の目的に合致した機能をCPUが実現する。また、圧力センサ64、流量センサ65、ひずみゲージ37、ロータリエンコーダ24、リニアエンコーダ38の出力信号がコントローラ7に入力される。なお、回転モータ20、直動モータ30、正圧電磁弁63A、負圧電磁弁63B等の制御を全てコントローラ7が行う必要はなく、コネクタ41に接続される他の制御機器によってこれらの一部が制御されてもよい。また、コネクタ41を介して外部の制御機器からコントローラ7へプログラムが供給されてもよい。なお、コントローラ7は、制御装置の一例である。
【0039】
図3は、シャフトハウジング50とシャフト10の先端部10Aとの概略構成を示した断面図である。シャフトハウジング50は、ハウジング本体51と、2つのリング52と、フィルタ53と、フィルタ止め54とを有する。なお、シャフトハウジング50またはリング52は、固定部の一例である。ハウジング本体51には、シャフト10が挿通される貫通孔51Aが形成されている。貫通孔51Aは、Z軸方向にハウジング本体51を貫通しており、該貫通孔51AのZ軸方向の上端は、ハウジング2に形成された貫通孔2Aに通じている。貫通孔51Aの直径はシャフト10の外径よりも大きい。そのため、貫通孔51Aの内面とシャフト10の外面とには隙間が設けられている。貫通孔51Aの両端部には、孔の直径が拡大された拡径部51Bが設けられている。2つの拡径部51Bには、夫々リング52が嵌め込まれている。リング52は筒状に形成されており、リング52の内径はシャフト10の外径よりも若干大きい。したがって、シャフト10がリング52の内部をZ軸方向に移動可能である。そのため、リング52の内面とシャフト10の外面との間にも隙間が形成される。したがって、シャフト10がリング52の内部をZ軸方向に移動可能であり、且つ、シャフト10がリング52の内部を中心軸100回りに回転可能である。ただし、拡径部51Bを除く貫通孔51Aの内面とシャフト10の外面との間に形成される隙間よりも、リング52の内面とシャフト10の外面との間に形成される隙間の方が小さい。なお、Z軸方向上側のリング52を第一リング52Aといい、Z軸方向下側のリング52を第二リング52Bという。第一リング52Aと第二リング52Bとを区別しない場合には、単にリング52という。リング52の材料には、例えば金属または樹脂を用いることができる。
【0040】
ハウジング本体51のZ軸方向の中央部には、X軸方向の左右両方向に張り出した張出部511が形成されている。張出部511には、ハウジング2の下端面202と平行な面であって、シャフトハウジング50をハウジング2の下端面202へ取り付けるときに、該下端面202と接する面である取付面511Aが形成されている。取付面511Aは、中心軸100と直交する面である。また、ハウジング2にシャフトハウジング50を取り付けたときに、シャフトハウジング50の一部であって取付面511AよりもZ軸方向の上側の部分512は、ハウジング2に形成された凹部202Bに嵌るように形成されている。
【0041】
上記のとおり、貫通孔51Aの内面とシャフト10の外面とには隙間が設けられている。その結果、ハウジング本体51の内部には、貫通孔51Aの内面と、シャフト10の外面と、第一リング52Aの下端面と、第二リング52Bの上端面とによって囲まれた空間である内部空間500が形成されている。また、シャフトハウジング50には、ハウジング2の下端面202に形成されるエア流通路202Aの開口部と、内部空間500とを連通して空気の通路となる制御通路501が形成されている。制御通路501は、X軸方向に延びる第一通路501A、Z軸方向に延びる第二通路501B、第一通路501A及び第二通路501Bが接続される空間であってフィルタ53が配置される空間であるフィルタ部501Cを有する。第一通路501Aの一端は内部空間500に接続され、他端はフィルタ部501Cに接続されている。第二通路501Bの一端は、取付面511Aに開口しており、エア流通路202Aの開口部に接続されるように位置が合わされている。
【0042】
また、第二通路501Bの他端はフィルタ部501Cに接続される。フィルタ部501Cには、円筒状に形成されたフィルタ53が設けられている。フィルタ部501Cは、第一通路501Aと中心軸が一致するようにX軸方向に延びた円柱形状の空間となるように形成されている。フィルタ部501Cの内径とフィルタ53の外径とは略等しい。フィルタ53は、X軸方向にフィルタ部501Cへ挿入される。フィルタ部501Cにフィルタ53が挿入された後に、フィルタ止め54によってフィルタ53の挿入口となったフィルタ部501Cの端部が閉塞される。第二通路501Bの他端は、フィルタ53の外周面側
からフィルタ部501Cに接続されている。また、第一通路501Aの他端はフィルタ53の中心側と通じている。そのため、第一通路501Aと第二通路501Bとの間を流通する空気は、フィルタ53を通過する。したがって、例えば、先端部10Aに負圧を発生させたときに、内部空間500に空気と一緒に異物を吸い込んだとしても、この異物はフィルタ53によって捕集される。第二通路501Bの一端には、シール剤を保持するように溝501Dが形成されている。
【0043】
張出部511のX軸方向の両端部付近には、該シャフトハウジング50をハウジング2にボルトを用いて固定するときに、該ボルトを挿通させるボルト孔51Gが2つ形成されている。ボルト孔51Gは、Z軸方向に張出部511を貫通して取付面511Aに開口している。
【0044】
シャフト10の先端部10A側には、シャフト10が中空となるように中空部11が形成されている。中空部11の一端は、先端部10Aで開口している。また、中空部11の他端には、内部空間500と中空部11とをX軸方向に連通する連通孔12が形成されている。直動モータ30によってシャフト10がZ軸方向に移動したときのストロークの全範囲において、内部空間500と中空部11とが連通するように連通孔12が形成されている。したがって、シャフト10の先端部10Aと、エア制御機構60とは、中空部11、連通孔12、内部空間500、制御通路501、エア流通路202Aを介して連通している。なお、連通孔12は、X軸方向に加えてY軸方向にも形成されていてもよい。
【0045】
このような構成によれば、直動モータ30を駆動してシャフト10をZ軸方向に移動させたときに、シャフト10がZ軸方向のどの位置にあっても、連通孔12は常に内部空間500と中空部11とを連通する。また、回転モータ20を駆動してシャフト10を中心軸100回りに回転させたときに、シャフト10の回転角度が中心軸100回りのどの角度であっても、連通孔12は常に内部空間500と中空部11とを連通する。したがって、シャフト10がどのような状態であっても、中空部11と内部空間500との連通状態が維持されるため、中空部11は常にエア制御機構60に通じていることになる。そのため、シャフト10の位置にかかわらず、エア制御機構60において正圧電磁弁63Aを閉じ、負圧電磁弁63Bを開くと、エア流通路202A、制御通路501、内部空間500、および連通孔12を介して、中空部11内の空気が吸引されることになる。その結果、中空部11に負圧を発生させることができる。すなわち、シャフト10の先端部10Aに負圧を発生させることができるので、シャフト10の先端部10AにワークWを吸い付けることができる。なお、上述したように、リング52の内面とシャフト10の外面との間にも隙間が形成されている。しかしながら、この隙間は、内部空間500を形成する隙間(すなわち、貫通孔51Aの内面とシャフト10の外面との間に形成される隙間)よりも小さい。そのため、エア制御機構60において正圧電磁弁63Aを閉じ、負圧電磁弁63Bを開くことで、内部空間500内から空気が吸引されても、リング52の内面とシャフト10の外面との間の隙間を流通する空気の流量を抑制することができる。これにより、ワークWをピックアップできるような負圧をシャフト10の先端部10Aに発生させることができる。一方、シャフト10の位置にかかわらず、エア制御機構60において正圧電磁弁63Aを開き、負圧電磁弁63Bを閉じると、中空部11に正圧を発生させることができる。すなわち、シャフト10の先端部10Aに正圧を発生させることができるので、シャフト10の先端部10AからワークWを速やかに脱離させることができる。
【0046】
(ピックアンドプレイス動作)
アクチュエータ1を用いたワークWのピックアンドプレイスについて説明する。ピックアンドプレイスは、コントローラ7が所定のプログラムを実行することにより行われる。ワークWのピックアップ時において、シャフト10がワークWに接触するまでは、正圧電磁弁63A及び負圧電磁弁63Bは共に閉じた状態とする。この場合、シャフト10の先
端部10Aの圧力は大気圧となる。そして、直動モータ30によりシャフト10をZ軸方向下側に移動させる。シャフト10がワークWに接触すると、直動モータ30を停止させる。直動モータ30を停止後に負圧電磁弁63Bを開くことにより、シャフト10の先端部10Aに負圧を発生させ、ワークWをシャフト10の先端部10Aに吸い付ける。その後、直動モータ30によりシャフト10をZ軸方向上側に移動させる。このときに、必要に応じて、回転モータ20によりシャフト10を回転させる。このようにして、ワークWをピックアップすることができる。
【0047】
次に、ワークWのプレイス時には、ワークWが先端部10Aに吸い付いている状態のシャフト10を直動モータ30によりZ軸方向の下側に移動させる。ワークWが接地すると、直動モータ30を停止させることで、シャフト10の移動を停止させる。さらに、負圧電磁弁63Bを閉じ且つ正圧電磁弁63Aを開くことにより、シャフト10の先端部10Aに正圧を発生させる。その後、直動モータ30によりシャフト10をZ軸方向の上側に移動させることにより、シャフト10の先端部10AがワークWから離れる。
【0048】
ここで、ワークWのピックアップ時において、シャフト10の先端部10AがワークWに接触したことをひずみゲージ37を用いて検出する。以下では、この方法について説明する。なお、ワークWのプレイス時においてワークWが接地したことも同様にして検出することができる。シャフト10の先端部10AがワークWに接触して先端部10AがワークWを押すと、シャフト10とワークWとの間に荷重が発生する。すなわち、シャフト10がワークWに力を加えたときの反作用によって、シャフト10がワークWから力を受ける。このシャフト10がワークWから受ける力は、連結アーム36に対してひずみを発生させる方向に作用する。すなわち、このときに連結アーム36にひずみが生じる。このひずみは、ひずみゲージ37によって検出される。そして、ひずみゲージ37が検出するひずみは、シャフト10がワークWから受ける力と相関関係にある。このため、ひずみゲージ37の検出値に基づいて、ワークWからシャフト10が受ける力、すなわち、シャフト10とワークWとの間に発生した荷重を検出することができる。ひずみゲージ37の検出値と荷重との関係は予め実験またはシミュレーション等により求めることができる。なお、以下では、ひずみゲージ37の検出値といった場合には、ひずみゲージ37によって検出される荷重を含むものとする。
【0049】
このように、ひずみゲージ37の検出値に基づいてシャフト10とワークWとの間に発生した荷重を検出することができるため、例えば、検出された荷重が所定荷重以上の場合に、シャフト10の先端部10AがワークWに接触したと判断してもよい。なお、所定荷重は、シャフト10がワークWに接触したと判定される荷重であり予め設定しておく。また、所定荷重をワークWの破損を抑制しつつワークWをより確実にピックアップすることが可能な荷重として設定してもよい。所定荷重は、ワークWの種類に応じて変更することもできる。なお、所定荷重は所定値の一例である。
【0050】
ここで、ひずみゲージ37のひずみによる抵抗値変化は極めて微少であるため、ホイートストンブリッジ回路を利用して、電圧変化として取り出している。アクチュエータ1では、第一ひずみゲージ37Aに係るブリッジ回路の出力と、第二ひずみゲージ37Bに係るブリッジ回路の出力とを並列に接続している。このように、両ブリッジ回路の出力を並列に接続することにより、以下のような温度の影響を取り除いた電圧変化を得ている。
【0051】
ここで、温度の影響による連結アーム36のひずみがないと仮定した場合には、第一ひずみゲージ37Aと第二ひずみゲージ37Bとの夫々で検出される荷重は略同じになる。しかし、例えば、直動モータ30の作動頻度が高く、且つ、回転モータ20の作動頻度が低い場合には、直動モータ30側の温度が回転モータ20側の温度よりも高くなるため、第一アーム36Aと第二アーム36Bとの間では、直動テーブル33のZ軸方向の膨張量
が、回転モータ20のZ軸方向の膨張量よりも大きくなる。これにより、第一アーム36Aと第二アーム36Bとが平行でなくなり、回転モータ20側よりも直動モータ30側の方が、第一アーム36Aと第二アーム36Bとの距離が大きくなる。このときには、第一ひずみゲージ37Aは縮み、第二ひずみゲージ37Bは伸びる。この場合、第一ひずみゲージ37Aの出力は、見かけ上、荷重の発生を示し、第二ひずみゲージ37Bの出力は、見かけ上、負の荷重の発生を示す。このときには、第一アーム36A及び第二アーム36Bに、直動テーブル33のZ軸方向の膨張量と回転モータ20のZ軸方向の膨張量との差によって生じる力が逆方向に等しくかかっているため、第一ひずみゲージ37Aの出力と、第二ひずみゲージ37Bの出力とは、絶対値が等しく正負が異なっている。そのため、両ひずみゲージの出力を並列に接続することにより、温度の影響による出力を互いに打ち消すことができるため、別途温度に応じた補正を行う必要がない。そのため、簡易且つ高精度に荷重を検出することができる。このように、両ブリッジ回路の出力を並列に接続することにより、温度の影響を取り除いた電圧変化を得ることができ、この電圧変化はシャフト10とワークWとの間に発生する荷重に応じた値になる。
【0052】
なお、本実施形態においては、ひずみゲージ37を2つ設けているが、これに代えて、第一ひずみゲージ37Aまたは第二ひずみゲージ37Bの何れか一方のみを設けていてもよい。この場合、ひずみゲージの検出値を周知の技術を用いて温度に応じて補正する。ひずみゲージ37を1つ設けた場合であっても、ひずみゲージ37の出力はシャフト10とワークWとの間に発生する荷重に応じた値になるため、ひずみゲージ37の出力に基づいて、シャフト10とワークWとの間に発生する荷重を検出することができる。
【0053】
このように、連結アーム36にひずみゲージ37を設けることにより、ワークWにシャフト10が接したことを検出することができる。また、ワークWのピックアップ時、ワークWの押し付け時、及びワークWのプレイス時に、ワークWに適切な力を加えることが可能となるため、ワークWのピックアップ、押し付け及びプレイスをより確実に実行することができる。例えば、ワークWをピックアップするときには、シャフト10の先端部10AにワークWを押し付けた状態で中空部11に負圧を発生させることにより、ワークWをより確実にピックアップすることが可能となると共に、ワークWを吸引したときにワークWが勢いよくシャフト10に衝突して破損することを抑制できる。一方、ワークWを押し付ける荷重が大きすぎると、ワークWが破損する虞がある。したがって、ワークWにかかる力を検出しつつワークWに適切な荷重をかけることにより、ワークWの破損を抑制しつつ、より確実なワークWのピックアップが可能となる。また、ワークWのピックアップを伴わない押し付け時にも、ワークWにかかる力を検出しつつワークWに適切な荷重をかけることにより、ワークWの破損を抑制しつつ、より確実な押し付けが可能となる。また、プレイス時においても、ワークWに適切な荷重をかけることが求められる場合もある。例えば、ワークWを他の部材に接着剤を用いて接着する場合には、接着の特性に応じた荷重をかける必要がある。このときにも、ワークWにかかる力を適切に制御することにより、より確実な接着が可能となる。
【0054】
ここで、シャフト10がリング52の内部をZ軸方向に移動可能とするため、リング52の内面とシャフト10の外面との間に隙間が形成されている。この隙間が大きいと、この隙間をガスが流通しやすくなるため、シャフト10の先端部10Aにおける負圧の発生に影響を与える。そのため、この隙間は小さいほうが望ましい。しかし、この隙間を小さくすると、例えば、シャフト10がシャフトハウジング50に接触しないように形成した場合であっても、公差や、経年変化、温度等によって、シャフト10がシャフトハウジング50に接触する場合がある。そして、シャフト10が中心軸方向に移動するときに、シャフトハウジング50にシャフト10が接触すると、シャフトハウジング50に対して、シャフト10が摺動する。このため、摩擦力が発生することがある。ひずみゲージ37は、シャフトハウジング50よりも直動モータ30側に取り付けられているため、ひずみゲ
ージ37の検出値には、シャフトハウジング50とシャフト10との間で発生する摩擦力が含まれる。
【0055】
ここで、
図4は、ひずみゲージ37の検出値の推移を示したタイムチャートである。
図4では、シャフト10がワークWに接触しない範囲で移動している場合の図である。L1は、シャフト10がZ軸の負の方向(
図2の下方向)に移動している場合であって、温度が比較的低い場合のひずみゲージ37の検出値を示している。L2は、シャフト10が
図2の下方向に移動している場合であって、温度がL1よりも高い場合(例えば常温の場合)のひずみゲージ37の検出値を示している。一方、L3は、シャフト10がZ軸の正の方向(
図2の上方向)に移動している場合であって、L2と同じ温度の場合のひずみゲージ37の検出値を示している。L4は、シャフト10が
図2の上方向に移動している場合であって、L1と同じ温度の場合のひずみゲージ37の検出値を示している。
【0056】
L1及びL2では、シャフト10が
図2の下方向に移動しているため、シャフトハウジング50との摩擦抵抗は、シャフト10に対して
図2の上方向に作用する。一方、L3及びL4では、シャフト10が
図2に上方向に移動しているため、シャフトハウジング50との摩擦抵抗は、シャフト10に対して
図2の下方向に作用する。
図4に示すように、温度やシャフト10の移動方向によって摩擦抵抗が異なる。また、これらの摩擦抵抗は、湿度や経年変化によっても変化し得る。
【0057】
シャフト10が摺動することにより生じる摩擦力は、シャフト10が移動していれば、シャフト10がワークWに接した後にも生じる。したがって、ひずみゲージ37の検出値に基づいてシャフト10がワークWに接触したか否かを判定するときには、ひずみゲージ37の検出値に摩擦力が含まれていることになる。このようなひずみゲージ37の検出値に基づいて直動モータ30を制御しても、シャフト10とワークWとに加わる実際の荷重を所定荷重に合わせることが困難になり得る。この摩擦力は、温度、湿度、経年変化等によって変化し得るため、補正値を予め設定しておいたとしても補正の精度が低くなり得る。
【0058】
これに対して、本実施形態では、シャフト10がワークWに力を加える前、(例えば、シャフト10がワークWに接触する前)にシャフト10がワークWに近付く方向に移動しているときのひずみゲージ37の検出値が、シャフト10とシャフトハウジング50との間に発生する摩擦力と相関があることを利用して、その後のひずみゲージ37の検出値または所定荷重を補正する。すなわち、シャフト10がワークWに力を加える前にシャフト10がワークWに向かって移動しているときのひずみゲージ37の検出値は、摩擦力を示しているため、シャフト10がワークWに力を加える前にひずみゲージ37によって摩擦力を検出しておく。動摩擦力は、シャフト10がワークWに力を加える前後において変化しないため、シャフト10がワークWに力を加える前に検出した摩擦力が、シャフト10がワークWに力を加えた後においても同様にシャフト10に加わっていると考えられる。そのため、シャフト10がワークWに力を加える前に検出した摩擦力に基づいて、シャフト10がワークWに力を加えた後のひずみゲージ37の検出値を補正したり、直動モータ30の制御時の閾値となる所定荷重を補正したりできる。補正のための摩擦力の検出は、例えば、ワークWをピックアップする毎に、ワークWをピックアップする直前に実施する。また、例えば、ワークWを押し付ける毎に、ワークWを押し付ける直前に実施する。また、例えば、ワークWをプレイスする毎に、ワークWをプレイスする直前に実施する。
【0059】
図5は、ワークWのピックアップ時におけるひずみゲージ37の検出値の推移を示したタイムチャートである。
図5において、実線はシャフト10がシャフトハウジング50を摺動するときの摩擦力が比較的大きな場合を示し、一点鎖線は摩擦力が比較的小さな場合を示している。例えば、同じアクチュエータ1で同じ動作をした場合であっても、温度、
湿度、経年変化などによって摩擦力は変化し得る。また、
図5において、T1は、シャフト10が移動を開始する時期である。T1以前は、シャフト10が停止している。また、
図5において、T2は、シャフト10の速度が安定する時期である。また、T3は、シャフト10がワークWに接触を始める時期である。なお、T3は、シャフト10の一部がワークWに接触を始める時期としてもよい。T4は、シャフト10及びワークWに加わる荷重が所定荷重に達する時期である。T4は、シャフト10がワークWに接触したことを検知する時期、または、シャフト10がワークWに接触したためにシャフト10の移動を停止させる時期としてもよい。また、T4においてシャフト10が停止される停止制御が実施されてもよく、T4において、ひずみゲージ37の検出値が所定荷重となるようにフィードバック制御を開始してもよい。
【0060】
ここで、T1からT3までの期間は、ワークWからシャフト10が離れているため、このときのひずみゲージ37の検出値は、シャフト10がシャフトハウジング50から受ける摩擦力に起因していると考えられる。一方、T3以降は、ワークWにシャフト10の少なくとも一部が接しているため、ワークWをシャフト10が押したときの反力と、シャフト10がシャフトハウジング50から受ける摩擦力との両方に起因していると考えられる。
【0061】
T1以前の検出値は、0(N)である。なお、T1以前の検出値が0になるように、ひずみゲージ37のキャリブレーションを行っておいてもよい。T1からT2までの期間は、シャフト10の速度が上昇するのに伴って、摩擦力が変動する期間である。この期間は、シャフト10の加速度の影響を受けるためにひずみゲージ37の検出値が安定しない期間ともいえる。T2からT3までの期間では、シャフト10が移動しているものの摩擦力は安定している。このときには、シャフト10はワークWに接触していないため、このときのひずみゲージ37の検出値は、摩擦力によるものであると考えることができる。そこで、本実施形態では、T2からT3までの期間におけるひずみゲージ37の検出値を、シャフト10がシャフトハウジング50から受ける摩擦力とし、この摩擦力に基づいて、T3以降におけるひずみゲージ37の検出値または制御の閾値(例えば、所定荷重)を補正する。なお、T2からT3までの期間は、所定期間の一例である。すなわち、T3以降もシャフト10が移動しているときには、T2からT3までの期間と同じ摩擦力がシャフト10に加わっているため、T2からT3までの期間における検出値を補正量として用いる。例えば、T3以降におけるひずみゲージ37の検出値を補正する場合には、検出値から補正量を減算する。一方、T3以降における制御の所定荷重を補正する場合には、所定荷重に補正量を加算する。以下では、所定荷重を補正する場合について説明する。
【0062】
例えば、
図5の実線で示した場合について説明すると、T2からT3までの間の検出値を第一補正量として求める。そして、補正前の所定荷重に第一補正量を加算することにより、補正後の所定荷重を得る。補正後の所定荷重を目標として、フィードバック制御や停止制御を実行する。同様に、
図5の破線で示した場合について説明すると、T2からT3までの間の検出値を第二補正量として求める。そして、補正前の所定荷重に第二補正量を加算することにより、補正後の所定荷重を得る。補正後の所定荷重を目標として、フィードバック制御や停止制御を実行する。例えば、ワークWのピックアップ毎及びプレイス毎に、ひずみゲージ37の検出値または所定荷重を補正することにより、温度などの変化による摩擦力の変化にも速やかに対応して、より適切な制御を実施することができる。すなわち、停止制御において、より適切なタイミングでシャフト10を停止させることができる。また、フィードバック制御において、より適切な荷重をワークWに加えることができる。なお、T2からT3までの全ての期間を対象にして補正量を求めてもよいし、T2からT3までの期間の中のさらに短い期間を対象にして補正量を求めてもよい。
【0063】
(ピックアンドプレイス制御)
次に、ピックアンドプレイスの具体的な制御について説明する。このピックアンドプレイスは、コントローラ7が所定のプログラムを実行することにより行われる。なお、本実施形態では、ひずみゲージ37の出力を荷重に置き換えて、この荷重に基づいて直動モータ30を制御するが、これに代えて、ひずみゲージ37の出力に基づいて、直動モータ30を直接制御してもよい。まずは、ピックアップ処理について説明する。
図6は、ピックアップ処理のフローを示したフローチャートである。本フローチャートは、コントローラ7によって所定の時間毎に実行される。この所定の時間は、タクトタイムに応じて設定される。初期状態では、シャフト10は、ワークWから十分に距離がある。
【0064】
ステップS101では、正圧電磁弁63A及び負圧電磁弁63Bを共に閉じた状態とする。すなわち、シャフト10の先端部10Aの圧力を大気圧とする。ステップS102では、シャフト10を下降させる。すなわち、シャフト10がZ軸方向の下側に移動するように、直動モータ30を駆動させる。ステップS103では、ひずみゲージ37によって、シャフト10に加わる荷重を検出する。ステップS104では、シャフト10に加わる荷重が安定しているか否か判定される。すなわち、
図5に示したT2からT3までの期間であるか否か判定される。ステップS104では、例えば、ひずみゲージ37の検出値の変動量が所定範囲内の状態が所定時間継続すれば、シャフト10に加わる荷重が安定していると判定してもよい。シャフト10が移動している状態でシャフト10に加わる荷重が安定している場合には、このときのひずみゲージ37の検出値が摩擦力を示していると判断できる。所定時間及び所定範囲は、検出値の安定を検出可能なように予め実験またはシミュレーション等により求める。このようにして、シャフト10に加わる荷重が安定しているか否か判定することにより、シャフト10の加速度の影響を抑制できる。なお、本ステップS104では、シャフト10の位置を検出する位置センサを併用し、シャフト10がワークWに接触しない位置であることを確認しておいてもよい。
【0065】
ここで、シャフト10が移動しているときには、ひずみゲージ37の検出値が変動する場合がある。したがって、ひずみゲージ37の検出値が厳密には一定にならない場合もある。しかし、ひずみゲージ37の検出値が変動している場合であっても、例えば、検出値を平滑化する処理を行うことによって、シャフト10が受ける摩擦力を得ることはできる。なお、検出値の平滑化には公知の処理を採用することができる。このときには、例えば、検出値の平均値を求めたり、検出値のなまし処理を行ったりしてもよい。上記の所定時間及び所定範囲は、ひずみゲージ37の検出値を平滑化する処理を行うことにより、シャフト10が受ける摩擦力を精度よく求めることができるように、すなわち、摩擦力の算出精度が許容範囲内となるように設定されてもよい。ステップS104で肯定判定された場合にはステップS105へ進み、否定判定された場合にはステップS103へ戻る。
【0066】
ステップS105では、所定荷重の補正量が算出される。例えば、ステップS104において所定時間に検出された荷重の平均値を補正量として算出する。ここでいう所定荷重は、例えば、シャフト10がワークWに接触したと判定される荷重、または、ワークWの破損を抑制しつつワークWをより確実にピックアップすることが可能な荷重として設定される。ステップS106では、所定荷重が補正される。補正前の所定荷重は、例えば、メモリに予め記憶されている。そして、補正前の所定荷重に、ステップS105において算出された補正量を加算することにより、補正後の所定荷重を算出する。補正後の所定荷重はメモリに記憶され、その後の制御において用いられる。
【0067】
ステップS107では、ひずみゲージ37によって、シャフト10に加わる荷重を検出する。ステップS108では、シャフト10に加わる荷重が、所定荷重以上であるか否か判定される。この所定荷重は、ステップS106で算出された補正後の所定荷重である。ステップS108で肯定判定された場合には、ステップS109へ進み、否定判定された場合にはステップS107へ戻る。したがって、シャフト10に加わる荷重が所定荷重以
上になるまで、直動モータ30がシャフト10をZ軸方向の下側に移動させる。
【0068】
ステップS109では、直動モータ30を停止させる。なお、シャフト10に対して所定荷重が継続して加わるように、直動モータ30への通電がフィードバック制御されていてもよい。
【0069】
ステップS110では、負圧電磁弁63Bが開かれる。なお、正圧電磁弁63Aは閉弁状態が維持される。これにより、シャフト10の先端部10Aに負圧を発生させ、ワークWをシャフト10の先端部10Aに吸い付ける。ステップS111では、シャフト10を上昇させる。このときには、直動モータ30によりシャフト10をZ軸方向上側に所定距離だけ移動させる。このときに、必要に応じて、回転モータ20によりシャフト10を回転させてもよい。このようにして、ワークWをピックアップすることができる。なお、
図6に示した処理は、ワークWを押し付ける場合にも適用することができる。この場合、ステップS101及びステップS110の処理が省略される。
【0070】
次に、プレイス処理について説明する。
図7は、プレイス処理のフローを示したフローチャートである。プレイス処理は、
図6に示したピックアップ処理の後に、コントローラ7によって実行される。プレイス処理の開始時には、シャフト10の先端にワークWが吸い付けられている。すなわち、正圧電磁弁63Aが閉じ、負圧電磁弁63Bが開いた状態となっている。ステップS201では、シャフト10を下降させる。すなわち、シャフト10がZ軸方向の下側に移動するように、直動モータ30を駆動させる。
【0071】
ステップS202では、ひずみゲージ37によって、シャフト10に加わる荷重を検出する。ステップS203では、シャフト10に加わる荷重が安定しているか否か判定される。ここでは、ステップS104と同様の処理が実行される。ステップS203で肯定判定された場合にはステップS204へ進み、否定判定された場合にはステップS202へ戻る。
【0072】
ステップS204では、第二所定荷重の補正量が算出される。例えば、ステップS203において所定時間に検出された荷重の平均値を補正量として算出する。ここでいう第二所定荷重は、ワークWが接地したと判定される荷重、または、ワークWが他の部材に接触したと判定される荷重である。なお、第二所定荷重をワークWの破損を抑制しつつワークWをより確実にプレイスすることが可能な荷重として設定してもよい。ステップS205では、第二所定荷重が補正される。補正前の第二所定荷重は、例えば、メモリに予め記憶されている。そして、補正前の第二所定荷重に、ステップS204において算出された補正量を加えることにより、補正後の第二所定荷重を算出する。補正後の第二所定荷重はメモリに記憶され、その後の制御において用いられる。
【0073】
ステップS206では、ひずみゲージ37によって、シャフト10に加わる荷重を検出する。ステップS207では、シャフト10に加わる荷重が、第二所定荷重以上であるか否か判定される。この第二所定荷重は、ステップS205において補正された第二所定荷重である。ステップS207で肯定判定された場合には、ステップS208へ進み、否定判定された場合にはステップS206へ戻る。したがって、シャフト10に加わる荷重が第二所定荷重以上になるまで、直動モータ30がシャフト10をZ軸方向の下側に移動させる。
【0074】
ステップS208では、直動モータ30を停止させる。なお、直動モータ30が停止した場合であっても、シャフト10に対して第二所定荷重が継続して加わるように、直動モータ30への通電をフィードバック制御してもよい。
【0075】
ステップS209では、正圧電磁弁63Aが開かれ、負圧電磁弁63Bが閉じられる。これにより、シャフト10の先端部10Aに正圧を発生させ、シャフト10からワークWを脱離させる。ステップS210では、シャフト10を上昇させる。すなわち、直動モータ30によりシャフト10をZ軸方向上側に所定距離だけ移動させる。このときに、必要に応じて、回転モータ20によりシャフト10を回転させてもよい。このようにして、ワークWをプレイスすることができる。
【0076】
以上説明したように本実施形態に係るアクチュエータ1によれば、シャフト10に加わる摩擦力の影響を考慮しつつ、シャフト10に加わる荷重に基づいて直動モータ30を制御することにより、ワークWに適切な荷重を加えることができるため、ワークWの破損を抑制しつつ、より確実にワークWをピックアップしたり、ワークWを押し付けたり、ワークWをプレイスしたりすることが可能となる。
【0077】
<第2実施形態>
本実施形態では、シャフト10がZ軸の正の方向(
図2における上方向)に移動するときの摩擦力について説明する。その他の装置等は第1実施形態と同じため説明を省略する。
図8は、ワークWのピックアップ時におけるひずみゲージ37の検出値の推移を示したタイムチャートである。例えば、シャフト10が
図2のZ軸の正の方向に移動しているときに、ワークWをピックアップする場合である。
図8におけるT1,T2,T3,T4は、
図5における、T1,T2,T3,T4と同様の時期である。
図5と比較して、
図8では、力の向きが逆方向になるため、検出値は負の値になるものの、考え方は
図5と同じである。
【0078】
例えば、T2からT3までの間の検出値を補正量として求める。そして、補正前の所定荷重に補正量を加算することにより、補正後の所定荷重を得る。補正後の所定荷重を目標として、直動モータ50のフィードバック制御や停止制御を実行する。なお、所定荷重を補正する代わりに、ひずみゲージ37の検出値を補正してもよい。このように、例えば、ワークWのピックアップ毎及びプレイス毎に、ひずみゲージ37の検出値または所定荷重を補正することにより、温度などの変化による摩擦力の変化にも速やかに対応して、より適切な制御を実施することができる。
【0079】
このように、シャフト10が上方向に移動するときにシャフトハウジング50を摺動するときの摩擦力を求めることにより、ひずみゲージ37の検出値又は所定荷重の補正量を算出することができる。これにより、シャフト10が上方向に移動する場合であっても、より適切な制御が可能となる。
【0080】
<その他の実施形態>
上記アクチュエータ1においては、連結アーム36にひずみゲージ37を設けているが、これに代えて、連結アーム35にひずみゲージ37を設けることもできる。また、上記実施形態では、ひずみゲージ37を用いてシャフト10及びワークWに加わる荷重を検出しているが、他のセンサ等を用いることもできる。この場合、シャフト10がシャフトハウジング50において摺動することによる摩擦力が検出される位置において、シャフト10及びワークWに加わる荷重を検出する。すなわち、シャフトハウジング50よりも直動モータ30側において荷重を検出する。例えば、シャフト10の先端部10Aに力センサを設けた場合には、シャフト10が移動しているときの摩擦力はこの力センサの検出値に影響を与えないため、本発明を適用する必要はない。すなわち、シャフトハウジング50よりも直動モータ30側(すなわち、固定部よりも駆動部側)において力を検出するセンサ等を設ける場合に、本発明を適用する。このセンサは、ロードセルとしてもよく、圧電式のセンサとしてもよい。このようなセンサは、シャフトハウジング50よりも上側のシャフト10、連結アーム36、連結アーム35、可動子32、直動テーブル33、回転モ
ータ20等に設けることができる。すなわち、シャフトハウジング50よりも上側のシャフト10から直動モータ30までに介在する部材にセンサを設けることができる。
【0081】
また、上記実施形態では、ひずみゲージ37の検出値が安定しているときの検出値を補正量として求めているが、これに代えて、シャフト10の速度の変化量が所定の範囲内の状態が所定期間継続した場合に、シャフト10の速度が安定しているものとして、補正量を求めてもよい。シャフト10の移動開始直後では、シャフト10が加速されるためにシャフト10の速度が安定していない。そのため、ひずみゲージ37の検出値も安定していない。一方、シャフト10の速度が安定していれば、ひずみゲージ37の検出値も安定していると考えられるため、このときのひずみゲージ37の検出値を補正量としてもよい。すなわち、ひずみゲージ37の検出値の代わりに、シャフト10の速度の検出値を用いて、補正量を求める時期を得ることができる。シャフト10の速度は、例えば、直動モータ30に設けられるセンサにより検出してもよい。また、ひずみゲージ37の検出値及びシャフト10の速度が共に安定している場合、または、何れか一方が安定している場合に、補正量を求めるようにしてもよい。このようにして、シャフト10の速度に基づいて補正量を求める時期を決定することもできる。これにより、シャフト10の加速度の影響を受けることを抑制できる。
【符号の説明】
【0082】
1・・・アクチュエータ、2・・・ハウジング、10・・・シャフト、10A・・・先端部、11・・・中空部、20・・・回転モータ、22・・・固定子、23・・・回転子、30・・・直動モータ、31・・・固定子、32・・・可動子、36・・・連結アーム、37・・・ひずみゲージ、50・・・シャフトハウジング、60・・・エア制御機構