(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-03
(45)【発行日】2023-10-12
(54)【発明の名称】積層マット材及び排ガス浄化装置
(51)【国際特許分類】
F01N 3/28 20060101AFI20231004BHJP
B01D 53/94 20060101ALI20231004BHJP
【FI】
F01N3/28 311N
B01D53/94 300
B01D53/94 ZAB
(21)【出願番号】P 2019137047
(22)【出願日】2019-07-25
【審査請求日】2022-07-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】谷奥 尚平
【審査官】小川 克久
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-083154(JP,A)
【文献】特開2011-241820(JP,A)
【文献】特開2002-332834(JP,A)
【文献】特開2007-260656(JP,A)
【文献】特開2016-160825(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/28
B01D 53/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のマット材が積層されてなる平面視矩形の積層マット材であって、
前記積層マット材は、長手方向の一端である第1端部と、前記第1端部と反対側の第2端部とを有し、
前記第1端部側の各マット材の端部には、凸部が形成されており、
前記第2端部側の各マット材の端部には、前記凸部に嵌合する凹部が形成されており、
隣り合う前記マット材同士の関係において、前記積層マット材を平面視した際に、一方の前記マット材の凸部の短手方向の両端を幅とする帯状の領域と、他方の前記マット材の凸部の短手方向の両端を幅とする帯状の領域とは重な
らず、
前記複数のマット材は、互いに独立したマットであり、
前記複数のマット材は、積層されるにつれ長手方向の長さが長くなり、
長さが最も短い前記マット材が内側になるように、前記積層マット材を巻回した際に、前記第1端部側の前記各マット材の凸部と、前記第2端部側の前記各マット材の凹部とが、それぞれ嵌合し、
隣り合う前記マット材同士の関係において、長手方向の長さが長い前記マット材の凸部の短手方向の幅は、長手方向の長さが短い前記マット材の凸部の短手方向の幅以下の長さであることを特徴とする積層マット材。
【請求項2】
複数のマット材が積層されてなる平面視矩形の積層マット材であって、
前記積層マット材は、長手方向の一端である第1端部と、前記第1端部と反対側の第2端部とを有し、
前記第1端部側の各マット材の端部には、凸部が形成されており、
前記第2端部側の各マット材の端部には、前記凸部に嵌合する凹部が形成されており、
隣り合う前記マット材同士の関係において、前記積層マット材を平面視した際に、一方の前記マット材の凸部の短手方向の両端を幅とする帯状の領域と、他方の前記マット材の凸部の短手方向の両端を幅とする帯状の領域とは互いに一部のみが重な
り、
前記複数のマット材は、互いに独立したマットであり、
前記複数のマット材は、積層されるにつれ長手方向の長さが長くなり、
長さが最も短い前記マット材が内側になるように、前記積層マット材を巻回した際に、前記第1端部側の前記各マット材の凸部と、前記第2端部側の前記各マット材の凹部とが、それぞれ嵌合し、
隣り合う前記マット材同士の関係において、長手方向の長さが長い前記マット材の凸部の短手方向の幅は、長手方向の長さが短い前記マット材の凸部の短手方向の幅以下の長さであることを特徴とする積層マット材。
【請求項3】
前記各マット材の凸部及び前記各マット材の凹部は、前記各マット材の凸部及び前記各マット材の凹部をそれぞれ嵌合させた際に、短手方向において隙間が生じない形状である請求項1
又は2に記載の積層マット材。
【請求項4】
前記複数のマット材は、少なくとも一方の端部が遊動自在となるように相互に固定されている請求項1~
3のいずれかに記載の積層マット材。
【請求項5】
排ガス処理体と、前記排ガス処理体を収容する金属ケーシングと、前記排ガス処理体と前記金属ケーシングとの間に配置され、前記排ガス処理体を保持する積層マット材とを備える排ガス浄化装置であって、
前記積層マット材は、請求項1~
4のいずれかに記載の積層マット材であることを特徴とする排ガス浄化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層マット材及び排ガス浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジン等の内燃機関から排出される排ガス中には、パティキュレートマター(以下、PMともいう)が含まれており、近年、このPMが環境や人体に害を及ぼすことが問題となっている。また、排ガス中には、COやHC、NOx等の有害なガス成分も含まれていることから、この有害なガス成分が環境や人体に及ぼす影響についても懸念されている。
【0003】
ここで、排ガス中のPMを捕集したり、有害なガス成分を浄化したりする排ガス浄化装置として、炭化ケイ素やコージェライトなどの多孔質セラミックからなる排ガス処理体と、排ガス処理体を収容するケーシングと、排ガス処理体とケーシングとの間に配設される無機繊維集合体からなるマット材とから構成される排ガス浄化装置が種々提案されている。この種のマット材は、自動車の走行等により生じる振動や衝撃により、排ガス処理体がその外周を覆うケーシングと接触して破損するのを防止すること、及び、排ガス処理体とケーシングとの間から排気ガスが漏れることを防止すること等を主な目的として配設されている。
【0004】
上記マット材は、無機繊維からなり、平面視した上記マット材の基本形状は、長手方向に伸びる長辺とそれにほぼ直角な短辺とからなる矩形形状であり、上記矩形の一方の短辺側に凹部が形成されるとともに、他方の短辺側に上記凹部により切り取られた形状と同様の形状からなる凸部が形成されており、上記マット材を排ガス処理体に巻き付けて、上記凸部を上記凹部に嵌合させることにより、排ガスがマット材よりリークするのを防止している。
【0005】
近年、排ガス処理体の排ガス処理性能を有効に機能させるために、排ガス処理体を充分に保温することが可能な保温性能に優れたマット材への要求が高まりつつある。このような要求に対処するためには、排ガス処理体とケーシングの間隙を大きく設定して、マット材で排ガス処理体とケーシング間を断熱することを狙った構造が必要である。そのため、マット材は、厚さを厚くする必要がある。
【0006】
マット材を厚くすると、内周と外周の長さに差が生じるため、内周側に皺が発生しやすくなり、外周側が円周方向に引っ張られ、排ガス処理体とマット材との間に隙間が生じたり、マット材が裂けやすくなるという問題があった。
【0007】
このような問題を解決するために、特許文献1には、複数枚のマット材を積層した構造を採用し、各マット材の長さを排ガス処理体外周部におけるそれぞれの巻回長さに設計することにより各マット材の厚さを薄くし、マット材の内外周の長さの差を小さくすることが記載されている。
【0008】
すなわち、特許文献1には、触媒コンバータにおいて排気ガス浄化用触媒担体であるモノリスと金属製のケーシングとの間に介装されるモノリス保持材であって、帯状に形成され且つその長さ方向の両端部に互いに勘合する勘合部が設けられた耐熱性のマットを複数枚積層して構成され、各マットは、積層状態でモノリスに巻回した際、それぞれに緩みなく巻回でき且つ勘合部が勘合する長さに設定されていることを特徴とするモノリス保持材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に記載のモノリス保持材(積層マット材)では、隣り合うマット材において、勘合部(凸部及び凹部)が同じ形状であった。また、一方のマット材に形成された凸部を長手方向に平行移動させると、他方マット材の凸部と重なる位置に、各マット材の嵌合部は形成されていた。すなわち、各マット材の嵌合部は短手方向において揃っている。
また、特許文献1の積層マット材は、通常、凸部が形成されたマット材の端部は遊動自在である。
【0011】
特許文献1に記載の積層マット材では、各マット材の嵌合部は短手方向において揃っているので、積層マット材を巻回する際に、内側のマット材の凸部が、外側のマット材の凹部に嵌ってしまうことがあり、ハンドリングが悪いという問題があった。
【0012】
また、特許文献1に記載の積層マット材では、各マット材に形成された凸部の位置が短手方向において揃っているので、作業者が、一方のマット材の凸部だけを触った場合、そのマット材が内側のマット材であるのか、外側のマット材であるのかを判断しにくいという問題があった。
特に、一方のマット材の凸部が形成された端部が遊動して、他方のマット材とずれてしまい、一見して積層マット材の内側と外側とを判別しにくくなった場合、作業者は、一旦、各マット材の長さを確認し、積層マット材の内側と外側とを判別する必要があった。
そのため、作業効率が低下するという問題があった。
【0013】
本発明は、上記問題点を解決するためになされた発明であり、本発明の目的は、ハンドリングに優れた積層マット材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
すなわち、本発明の積層マット材の一態様は、複数のマット材が積層されてなる平面視矩形の積層マット材であって、上記積層マット材は、長手方向の一端である第1端部と、上記第1端部と反対側の第2端部とを有し、上記第1端部側の各マット材の端部には、凸部が形成されており、上記第2端部側の各マット材の端部には、上記凸部に嵌合する凹部が形成されており、隣り合う上記マット材同士の関係において、上記積層マット材を平面視した際に、一方の上記マット材の凸部の短手方向の両端を幅とする帯状の領域と、他方の上記マット材の凸部の短手方向の両端を幅とする帯状の領域とは重ならないことを特徴とする。
【0015】
また、本発明のマット材の別の態様は、複数のマット材が積層されてなる平面視矩形の積層マット材であって、上記積層マット材は、長手方向の一端である第1端部と、上記第1端部と反対側の第2端部とを有し、上記第1端部側の各マット材の端部には、凸部が形成されており、上記第2端部側の各マット材の端部には、上記凸部に嵌合する凹部が形成されており、隣り合う上記マット材同士の関係において、上記積層マット材を平面視した際に、一方の上記マット材の凸部の短手方向の両端を幅とする帯状の領域と、他方の上記マット材の凸部の短手方向の両端を幅とする帯状の領域とは互いに一部のみが重なることを特徴とする。
【0016】
また、本発明のマット材の別の態様は、複数のマット材が積層されてなる平面視矩形の積層マット材であって、上記積層マット材は、長手方向の一端である第1端部と、上記第1端部と反対側の第2端部とを有し、上記第1端部側の各マット材の端部には、凸部が形成されており、上記第2端部側の各マット材の端部には、上記凸部に嵌合する凹部が形成されており、隣り合う上記マット材同士の関係において、上記積層マット材を平面視した際に、一方の上記マット材の凸部の短手方向の両端の幅が、他方の上記マット材の凸部の短手方向の両端の幅よりも短く、一方の上記マット材の凸部の短手方向の両端を幅とする帯状の領域の全てが、他方の上記マット材の凸部の短手方向の両端を幅とする帯状の領域と重なっていることを特徴とする。
【0017】
このような構成の本発明の積層マット材では、一方のマット材の凸部を、長手方向に平行移動させたとしても、他方のマットの凸部と完全に重なることはない。
そのため、本発明の積層マット材を巻回する際に、一方のマット材の凸部が、他方のマット材の凹部に嵌合しにくい。すなわち、作業者が間違って一方のマット材の凸部を、他方のマット材の凹部に嵌合させてしまうミスが生じにくい。
従って、本発明の積層マット材は、巻回する際のハンドリングが良好である。
【0018】
また、一方のマット材の凸部が形成された端部が遊動して、他方のマット材とずれてしまったとしても、作業者は、いずれかのマット材の凸部を触るだけで、凸部の形成位置から積層マット材の内側と外側とを判別することができる。
そのため、作業効率が向上する。
【0019】
本発明の積層マット材では、上記複数のマット材は、積層されるにつれ長手方向の長さが長くなり、長さが最も短い上記マット材が内側になるように、上記積層マット材を巻回した際に、上記第1端部側の上記各マット材の凸部と、上記第2端部側の上記各マット材の凹部とが、それぞれ嵌合することが望ましい。
複数のマット材が積層されてなる積層マット材を排ガス処理体等の円柱体に巻き付ける場合、積層マット材の内側と外側とで内外周差が生じる。例えば、積層マット材を構成する各マット材が全て同じ長さであった場合、最も内側のマット材の端部同士が接触するように積層マット材を巻回すると、外側のマット材の端部同士の間には隙間が生じてしまう。このような隙間が生じると、ガス漏れ等の原因となる。
一方、積層マット材を構成する複数のマット材が、積層されるにつれ長手方向の長さが長くなり、長さが最も短いマット材が内側になるように、積層マット材を巻回した際に、第1端部側の各マット材の凸部と、第2端部側の上記各マット材の凹部とが、それぞれ嵌合する場合、上記の隙間が生じにくい。
そのため、このような構成の積層マット材を排ガス浄化装置に用いると、隙間からのガス漏れが生じにくくなる。
【0020】
本発明の積層マット材では、上記各マット材の凸部及び上記各マット材の凹部は、上記各マット材の凸部及び上記各マット材の凹部をそれぞれ嵌合させた際に、短手方向において隙間が生じない形状であることが望ましい。
各マット材の凸部及び各マット材の凹部がこのような形状であると、摩擦により凸部及び凹部がしっかりと嵌合し、各マット材がばらばらに離れてしまうことを防ぐことができる。
【0021】
本発明の積層マット材では、上記複数のマット材は、少なくとも一方の端部が遊動自在となるように相互に固定されていることが望ましい。
このような構成の積層マット材は、各マット材がばらばらになりにくい。そのため、作業時のハンドリングが向上する。
【0022】
本発明の排ガス浄化装置は、排ガス処理体と、上記排ガス処理体を収容する金属ケーシングと、上記排ガス処理体と上記金属ケーシングとの間に配置され、上記排ガス処理体を保持する積層マット材とを備える排ガス浄化装置であって、上記積層マット材は、本発明の積層マット材であることを特徴とする。
【0023】
上記の通り、本発明の積層マット材はハンドリングが良い。そのため、排ガス浄化装置の積層マット材として、本発明の積層マット材を用いると、作業効率が向上する。
本発明の排ガス浄化装置は、本発明の積層マット材を用いて製造されるので生産効率が良好である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1(a)は、本発明の第1実施形態に係る積層マット材の一例を模式的に示す斜視図である。
図1(b)は、
図1(a)の積層マット材の平面図である。
【
図2】
図2(a)~(c)は本発明の第1実施形態に係る積層マット材における各マット材の嵌合の態様の一例を模式的に示す平面図である。
【
図3】
図3は、本発明の第1実施形態に係る積層マット材を備える排ガス浄化装置の一例を模式的に示す断面図である。
【
図4】
図4(a)は、本発明の第1実施形態に係る排ガス浄化装置を構成する排ガス処理体の一例を模式的に示す斜視図である。
図4(b)は、
図4(a)のA-A線断面図である。
【
図5】
図5(a)は、本発明の第2実施形態に係る積層マット材の一例を模式的に示す斜視図である。
図5(b)は、
図5(a)の積層マット材の平面図である。
【
図6】
図6(a)は、本発明の第3実施形態に係る積層マット材の一例を模式的に示す斜視図である。
図6(b)は、
図6(a)の積層マット材の平面図である。
【0025】
(発明の詳細な説明)
以下、本発明の積層マット材について具体的に説明する。
しかしながら、本発明は、以下の構成に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。なお、以下において記載する本発明の個々の好ましい構成を2つ以上組み合わせたものもまた本発明である。
【0026】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に係る積層マット材は、複数のマット材が積層されてなる平面視矩形の積層マット材であって、上記積層マット材は、長手方向の一端である第1端部と、上記第1端部と反対側の第2端部とを有し、上記第1端部側の各マット材の端部には、凸部が形成されており、上記第2端部側の各マット材の端部には、上記凸部に嵌合する凹部が形成されており、隣り合う前記マット材同士の関係において、上記積層マット材を平面視した際に、一方の上記マット材の凸部の短手方向の両端を幅とする帯状の領域と、他方の上記マット材の凸部の短手方向の両端を幅とする帯状の領域とは重ならないことを特徴とする。
【0027】
本発明の第1実施形態に係る積層マット材の一例を以下に図面を用いて説明する。
図1(a)は、本発明の第1実施形態に係る積層マット材の一例を模式的に示す斜視図である。
図1(b)は、
図1(a)の積層マット材の平面図である。
図1(a)に示す積層マット材10は、第1マット材20と第2マット材30とが積層されてなる平面視矩形の積層マット材である。
また、
図1(b)に示すように、積層マット材10は、長手方向の一端である第1端部11と、第1端部11と反対側の第2端部12とを有している。
【0028】
第1端部11側の第1マット材20の端部21には、凸部21aが形成されており、第2端部12側の第1マット材20の端部22には、凸部21aに嵌合する凹部22aが形成されている。
図1(a)及び(b)に示す、第1マット材20では、凸部21aの形状は四角形であるが、本発明の第1実施形態に係る積層マットにおいて、第1マット材の凸部の形状は、三角形や四角形等の多角形であってもよく、半円形や半楕円形であってもよい。
【0029】
第1端部11側の第2マット材30の端部31には、凸部31aが形成されており、第2端部12側の第2マット材30の端部32には、凸部31aに嵌合する凹部32aが形成されている。
図1(a)及び(b)に示す、第2マット材30では、凸部31aの形状は四角形であるが、本発明の第1実施形態に係る積層マットにおいて、第2マット材の凸部の形状は、三角形や四角形等の多角形であってもよく、半円形や半楕円形であってもよい。
【0030】
積層マット材10では、積層マット材10を第1マット材20側から平面視した際に、第1マット材20の凸部21aの短手方向の両端を幅とする帯状の領域25と、第2マット材30の凸部31aの短手方向の両端を幅とする帯状の領域35とは重ならない。
【0031】
積層マット材10では、第1マット材20の凸部21aを、長手方向に平行移動させたとしても、第2マット材30の凸部31aと完全に重なることはない。
そのため、積層マット材10を巻回する際に、第1マット材20の凸部21aは、第2マット材30の凹部32aに嵌合しにくい。すなわち、作業者が間違って第1マット材20の凸部21aを、第2マット材30の凹部32aに嵌合させてしまうミスが生じにくい。
従って、積層マット材10は、巻回する際のハンドリングが良好である。
【0032】
また、第1マット材20の凸部21aが形成された端部が遊動して、第2マット材30とずれてしまったとしても、作業者は、いずれかのマット材の凸部を触るだけで、凸部の形成位置から積層マット材10の内側と外側とを判別することができる。
そのため、作業効率が向上する。
【0033】
図1(b)において、第1マット材20の凸部21aの短手方向の両端の幅と、第2マット材30の凸部31aの短手方向の両端の幅は、同じ長さであるが、本発明の第1実施形態に係る積層マット材では、第1マット材の凸部の短手方向の両端の幅と、第2マット材の凸部の短手方向の両端とは異なる長さであってもよい
【0034】
図1(a)及び(b)に示すように、積層マット材10では、第1マット材20の端部21と、第2マット材30の端部31とが遊動自在となるように、固定部15により第1マット材20と第2マット材30とは相互に固定されている。
また、固定部15は、積層マット材10の短手方向に沿って形成されている。
このような構成の積層マット材10は、第1マット材20及び第2マット材30がばらばらに分離しにくい。そのため、作業時のハンドリングが向上する。
【0035】
固定部15は、結束バンド、ピン止め、糸縫い等により形成されていてもよい。
なお、固定部15が糸縫いにより形成されている場合は、固定部15は、積層マット材10の長手方向に沿って形成されていてもよく、短手方向に沿って形成されていてもよい。
また、本発明の第1実施形態に係る積層マット材では、固定部が無くてもよい。
【0036】
図1(b)に示すように、積層マット材10では、積層マット材10を第1マット材20側から平面視した際に、第2マット材30の凸部31aが、第1端部11側の第1マット材20の端部21から突出するように位置している。
このような構造であると、第1マット材20の端部21を触る際に、第2マット材30の凸部31aも触ることができる。
そのため、目視をしなくても、第1マット材20の端部21及び第2マット材30の凸部31aを触るだけで、第1マット材20及び第2マット材30が重なっていることを確認することができ、さらに、第1マット材20及び第2マット材30の短手方向の位置を揃えることができる。
従って、第1マット材20及び第2マット材30を定位置に配置する際の作業効率が向上する。
【0037】
なお、本発明の第1実施形態に係る積層マット材では、積層マット材を第1マット材側から平面視した際に、第2マット材の凸部が、第1端部側の第1マット材の端部から突出せず、第1マット材に覆われるように位置していてもよい。
【0038】
積層マット材10では、第1マット材20の長手方向の長さが、第2マット材30の長手方向の長さが長い。
後述するようにマット材10は、排ガス処理体に巻回されることになるが、第1マット材20の長手方向の長さが、第2マット材30の長手方向の長さが長い場合、第2マット材30を内側にして巻回すると、内外周差を小さくすることができる。
その結果、巻回により内側のマット材(第2マット材30)に皺が生じることを防ぐことができ、外側のマット材(第1マット材20)の端部21と端部22との間に大きな隙間が生じることを防ぐことができる。
【0039】
また、積層マット材10では、第2マット材30が内側になるように、積層マット材10を巻回した際に、第1マット材20の凸部21aと第1マット材20の凹部22aとが嵌合し、かつ、第2マット材30の凸部31aと第2マット材30の凹部32aとが嵌合する。
【0040】
ここで、本発明の第1実施形態における積層マット材において、各マット材の凸部と凹部とが嵌合する態様について、以下に図面を用いて説明する。
図2(a)~(c)は本発明の第1実施形態に係る積層マット材における各マット材の嵌合の態様の一例を模式的に示す平面図である。
【0041】
積層マット材10では、積層マット材10を巻回した際に、
図2(a)に示すように、第1マット材20の凸部21aと第1マット材20の凹部22aとが隙間なく嵌合し、かつ、第2マット材30の凸部31aと第2マット材30の凹部32aとが隙間なく嵌合してもよい。
各マット材の凸部及び凹部がこのように嵌合していると、嵌合部に隙間が無いので、積層マット材10を排ガス浄化装置に使用した際に、排ガスが漏れることを防ぐことができる。
【0042】
積層マット材10では、積層マット材10を巻回した際に、
図2(b)に示すように、第1マット材20の凸部21aの先端21a
1と、第1マット材20の凹部22aの底部22a
1との間に隙間が生じるように第1マット材20の凸部21aと第1マット材20の凹部22aとが嵌合し、かつ、第2マット材30の凸部31aと第2マット材30の凹部32aとが隙間なく嵌合してもよい。
また、積層マット材10では、積層マット材10を巻回した際に、
図2(c)に示すように、第1マット材20の凸部21aの先端21a
1と、第1マット材20の凹部22aの底部22a
1との間に隙間が生じるように第1マット材20の凸部と第1マット材20の凹部22aとが嵌合し、かつ、第2マット材30の凸部31aの先端31a
1と、第2マット材30の凹部32aの底部32a
1との間に隙間が生じるように第2マット材30の凸部31aと第2マット材30の凹部32aとが嵌合してもよい。
第1マット材20や第2マット材30の製造時にこれら長さに製造誤差が生じることがある。また、積層マット材10が巻き付けられることになる排ガス処理体の製造時にも排ガス処理体の外周の長さに製造誤差が生じる場合がある。
このような製造誤差により、積層マット材10を巻回した際に、第1マット材20の凸部21aの先端21a
1と、第1マット材20の凹部22aの底部22a
1との間に隙間が生じることや、第2マット材30の凸部31aの先端31a
1と、第2マット材30の凹部32aの底部32a
1との間に隙間が生じることもある。
しかし、各マット材の凸部と凹部とが上記のように嵌合していれば、排ガス浄化装置の製造時に第1マット材20と第2マット材30とがばらばらに離れてしまうことを防ぐことができる。
また、排ガスが漏れることを充分に防ぐことができる。
【0043】
なお、いずれの嵌合の態様であっても、第1マット材20の凸部21a及び第1マット材20の凹部22aは、嵌合させた際に短手方向に隙間が生じない形状であることが望ましい。また、第2マット材30の凸部31a及び第2マット材30の凹部32aは、嵌合させた際に短手方向においてに隙間が生じない形状であることが望ましい。
このような態様であると、摩擦により凸部及び凹部がしっかりと嵌合し、第1マット材20と第2マット材30とがばらばらに離れてしまうことを防ぐことができる。
【0044】
次に、第1マット材及び第2マット材の構成について説明する。
第1マット材は、特に限定されないが、無機繊維からなることが望ましい。
無機繊維としては、アルミナ繊維、シリカ繊維、アルミナ-シリカ繊維、ムライト繊維、ガラス繊維及び生体溶解性繊維から選択される少なくとも1種を含むことが望ましい。
第1マット材がこれらの無機繊維からなると耐熱性が充分になる。
【0045】
第1マット材を構成する無機繊維は、平均繊維径が3~50μmであり、平均繊維長が100~100000μmであることが望ましい。
【0046】
第1マット材のかさ密度は、0.05~0.30g/cm3であることが望ましい。
第1マット材のかさ密度が0.05g/cm3未満であると、無機繊維のからみ合いが弱く、無機繊維が剥離しやすいため、マット材の形状を所定の形状に保ちにくくなる。
第1マット材のかさ密度が0.30g/cm3を超えると、マット材が硬くなり、対象物への巻き付け性が低下し、マット裂けが発生しやすくなる。
【0047】
第1マット材は、有機バインダを含んでいてもよい。
第1マット材が有機バインダを含むと、無機繊維を固定しやすくなる。そして、第1マット材の引張強度向上ができ、さらに、第1マット材から無機繊維が脱落すること、及び、飛散することを抑止することができる。
【0048】
第1マット材は、無機バインダを含んでいてもよい。
さらに、無機バインダは、無機繊維の表面に付着することで、第1マット材の面圧及び断熱性を向上させることができる。
【0049】
第1マット材は、ニードルパンチングマット材であってもよく、抄造マット材であってもよい。
【0050】
第2マット材は、第1マット材と同様の無機繊維からなることが望ましく、かさ密度も第1マット材と同様であることが望ましい。
また、第2マット材は、第1マット材と同様に、有機バインダや無機バインダを含んでいてもよい。
また、第2マット材は、ニードルパンチングマット材であってもよく、抄造マット材であってもよい。
【0051】
このような第1マット材及び第2マット材を作製する方法としては、ブローイング法や抄造法等の従来の方法を採用することができる。
また、第1マット材及び第2マット材は、トムソン刃等により無機繊維マットを打ち抜くことにより作製してもよい。
【0052】
次に、積層マット材10の使用方法の一例である、本発明の第1実施形態に係る積層マット材を備えた排ガス浄化装置について説明する。
なお、本発明の第1実施形態に係る積層マット材を備える排ガス浄化装置は、本発明の第1実施形態に係る排ガス浄化装置でもある。
図3は、本発明の第1実施形態に係る積層マット材を備える排ガス浄化装置の一例を模式的に示す断面図である。
【0053】
図3に示すように、排ガス浄化装置50は、排ガス処理体60と、排ガス処理体60を収容する金属ケーシング70と、排ガス処理体60と金属ケーシング70との間に配置され、排ガス処理体60を保持する積層マット材10とを備える。
【0054】
上記の通り、積層マット材10は、第1マット材20と第2マット材30とからなる。
排ガス浄化装置50では、積層マット材10の第2マット材30が排ガス処理体60に接するように配置されている。
【0055】
以下、排ガス浄化装置50を構成する排ガス処理体60及び金属ケーシング70について説明する。
【0056】
(排ガス処理体)
図4(a)は、本発明の第1実施形態に係る排ガス浄化装置を構成する排ガス処理体の一例を模式的に示す斜視図である。
図4(b)は、
図4(a)のA-A線断面図である。
図4(a)及び(b)に示すように、排ガス浄化装置50に含まれる排ガス処理体60は、多数のセル61がセル壁62を隔てて長手方向に並設された円柱状のものである。
また、排ガス処理体60では、各々のセル61におけるいずれか一方が封止材63によって目封じされた排ガスフィルタ(ハニカムフィルタ)である。
【0057】
図4(b)に示すように、内燃機関から排出され排ガス処理体60に流入した排ガス(
図4(b)中、排ガスをGで示し、排ガスの流れを矢印で示す)は、排ガス処理体60の排ガス流入側端面に開口した一のセル61に流入し、セル61を隔てるセル壁62を通過することになる。この際、排ガス中のPMがセル壁62で捕集され、排ガスが浄化されることとなる。浄化された排ガスは、排ガス流出側端面に開口した他のセル61から流出し、外部に排出される。
【0058】
なお、
図4(a)及び(b)に示す排ガス処理体60は、セル61のいずれか一方の端部が封止材63で封止されているフィルタであるが、本発明の第1実施形態に係る排ガス浄化装置を構成する排ガス処理体は、セルの端部が封止されていなくてもよい。このような排ガス処理体は、触媒担体として好適に使用することが可能となる。
【0059】
排ガス処理体60は、炭化ケイ素や窒化ケイ素などの非酸化多孔質セラミックからなっていてもよく、サイアロン、アルミナ、コーデェライト、ムライト等の酸化多孔質セラミックからなっていてもよい。これらの中では、炭化ケイ素であることが望ましい。
【0060】
排ガス処理体60が炭化ケイ素質の多孔質セラミックである場合、多孔質セラミックの気孔率は特に限定されないが、35~60%であることが望ましい。
気孔率が35%未満であると、排ガス処理体がすぐに目詰まりを起こすことがあり、一方、気孔率が60%を超えると、排ガス処理体の強度が低下して容易に破壊されることがある。
【0061】
また、多孔質セラミックの平均気孔径は5~30μmであることが望ましい。
平均気孔径が5μm未満であると、PMが容易に目詰まりを起こすことがあり、一方、平均気孔径が30μmを超えると、PMが気孔を通り抜けてしまい、PMを捕集することができず、フィルタとして機能することができないことがあるからである。
なお、上記気孔率及び気孔径は、走査型電子顕微鏡(SEM)による測定の従来公知の方法により測定することができる。
【0062】
排ガス処理体60の断面におけるセル密度は、特に限定されないが、望ましい下限は、31.0個/cm2(200個/inch2)、望ましい上限は、93.0個/cm2(600個/inch2)である。また、より望ましい下限は、38.8個/cm2(250個/inch2)、より望ましい上限は、77.5個/cm2(500個/inch2)である。
【0063】
排ガス処理体60には、排ガスを浄化するための触媒を担持させてもよく、担持させる触媒としては、例えば、白金、パラジウム、ロジウム等の貴金属が望ましく、この中では、白金がより望ましい。また、その他の触媒として、例えば、カリウム、ナトリウム等のアルカリ金属、バリウム等のアルカリ土類金属を用いることもできる。これらの触媒は、単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
これら触媒が担持されていると、PMを燃焼除去しやすくなり、有毒な排ガスの浄化も可能になる。
【0064】
(金属ケーシング)
金属ケーシング70は、略円筒形である。
金属ケーシング70の内径(排ガス処理体を収容する部分の内径)は、積層マット材10が巻き付けられた排ガス処理体60の直径より若干短くなっていることが好ましい。
【0065】
金属ケーシング70は、特に限定されないが、ステンレス鋼からなることが望ましい。
【0066】
これまで説明してきた積層マット材10は、第1マット材20及び第2マット材30の2枚のマット材から構成されていたが、本発明の第1実施形態に係る積層マット材では、3枚以上のマット材から構成されていてもよい。
このような積層マット材では、隣り合うマット材同士の関係において、積層マット材を平面視した際に、一方の上記マット材の凸部の短手方向の両端を幅とする帯状の領域と、他方の上記マット材の凸部の短手方向の両端を幅とする帯状の領域とは重ならなければよい。
【0067】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態に係る積層マット材は、複数のマット材が積層されてなる平面視矩形の積層マット材であって、上積層マット材は、長手方向の一端である第1端部と、上記第1端部と反対側の第2端部とを有し、上記第1端部側の各マット材の端部には、凸部が形成されており、上記第2端部側の各マット材の端部には、上記凸部に嵌合する凹部が形成されており、隣り合う上記マット材同士の関係において、上記積層マット材を平面視した際に、一方の上記マット材の凸部の短手方向の両端を幅とする帯状の領域と、他方の上記マット材の凸部の短手方向の両端を幅とする帯状の領域とは互いに一部のみが重なることを特徴とする。
【0068】
本発明の第2実施形態に係る積層マット材の一例を以下に図面を用いて説明する。
図5(a)は、本発明の第2実施形態に係る積層マット材の一例を模式的に示す斜視図である。
図5(b)は、
図5(a)の積層マット材の平面図である。
図5(a)に示す積層マット材110は、第1マット材120と第2マット材130とが積層されてなる平面視矩形の積層マット材である。
また、
図5(b)に示すように、積層マット材110は、長手方向の一端である第1端部111と、第1端部111と反対側の第2端部112とを有している。
【0069】
第1端部111側の第1マット材120の端部121には、凸部121aが形成されており、第2端部112側の第1マット材120の端部122には、凸部121aに嵌合する凹部122aが形成されている。
図5(a)及び(b)に示す第1マット材120では、凸部121aの形状は四角形であるが、本発明の第2実施形態に係る積層マットにおいて、第1マット材の凸部の形状は、三角形や四角形等の多角形であってもよく、半円形や半楕円形であってもよい。
【0070】
第1端部111側の第2マット材130の端部131には、凸部131aが形成されており、第2端部112側の第2マット材130の端部132には、凸部131aに嵌合する凹部132aが形成されている。
図5(a)及び(b)に示す第2マット材130では、凸部131aの形状は四角形であるが、本発明の第2実施形態に係る積層マットにおいて、第2マット材の凸部の形状は、三角形や四角形等の多角形であってもよく、半円形や半楕円形であってもよい。
【0071】
積層マット材110では、積層マット材110を第1マット材120側から平面視した際に、第1マット材120の凸部121aの短手方向の両端を幅とする帯状の領域125と、第2マット材30の凸部131aの短手方向の両端を幅とする帯状の領域135とは互いに一部のみが重なる。
【0072】
積層マット材110では、第1マット材120の凸部121aを、長手方向に平行移動させたとしても、第2マット材130の凸部131aと完全に重なることはない。
そのため、積層マット材110を巻回する際に、第1マット材120の凸部121aは、第2マット材130の凹部132aに嵌合しにくい。すなわち、作業者が間違って第1マット材120の凸部121aを、第2マット材130の凹部132aに嵌合させてしまうミスが生じにくい。
従って、積層マット材110は、巻回する際のハンドリングが良好である。
【0073】
図5(b)に示すように、積層マット材110では、積層マット材110を第1マット材120側から平面視した際に、第2マット材130の凸部131aが、第1端部111側の第1マット材120の端部121から突出するように位置している。
このような構造であると、第1マット材120の端部121を触る際に、第2マット材130の凸部131aも触ることができる。
そのため、目視をしなくても、第1マット材120の端部121及び第2マット材130の凸部131aを触るだけで、第1マット材120及び第2マット材130が重なっていることを確認することができ、さらに、第1マット材120及び第2マット材130の短手方向の位置を揃えることができる。
従って、第1マット材120及び第2マット材130を定位置に配置する際の作業効率が向上する。
【0074】
なお、本発明の第1実施形態に係る積層マット材では、積層マット材を第1マット材側から平面視した際に、第2マット材の凸部が、第1端部側の第1マット材の端部から突出せず、第1マット材に覆われるように位置していてもよい。
【0075】
図5(b)において、第1マット材120の凸部121aの短手方向の両端の幅と、第2マット材130の凸部131aの短手方向の両端の幅は、同じ長さであるが、本発明の第2実施形態に係る積層マット材では、第1マット材の凸部の短手方向の両端の幅と、第2マット材の凸部の短手方向の両端とは異なる長さであってもよい
【0076】
積層マット材110では、第1マット材120の長手方向の長さが、第2マット材130の長手方向の長さが長い。
後述するようにマット材110は、排ガス処理体に巻回されることになるが、第1マット材120の長手方向の長さが、第2マット材130の長手方向の長さが長い場合、第2マット材130を内側にして巻回すると、内外周差を小さくすることができる。
その結果、巻回により内側のマット材(第2マット材130)に皺が生じることを防ぐことができ、外側のマット材(第1マット材120)の端部121と端部122との間に大きな隙間が生じることを防ぐことができる。
【0077】
図5(a)及び(b)に示すように、積層マット材110では、第1マット材120の端部121と、第2マット材130の端部131とが遊動自在となるように、固定部115により第1マット材120と第2マット材130とは相互に固定されている。
また、固定部115は、積層マット材110の短手方向に沿って形成されている。
このような構成の積層マット材110は、第1マット材120及び第2マット材130がばらばらに分離しにくい。そのため、作業時のハンドリングが向上する。
【0078】
固定部115は、結束バンド、ピン止め、糸縫い等により形成されていてもよい。
なお、固定部115が糸縫いにより形成されている場合は、固定部115は、積層マット材110の長手方向に沿って形成されていてもよく、短手方向に沿って形成されていてもよい。
また、本発明の第2実施形態に係る積層マット材では、固定部が無くてもよい。
【0079】
積層マット材110における第1マット材120の凸部121a及び第1マット材120の凹部122aの嵌合の望ましい態様、並びに、第2マット材130の凸部131a及び第2マット材130の凹部132aの嵌合の望ましい態様は、上記積層マット材10における第1マット材20の凸部21a及び第1マット材20の凹部22aの嵌合の望ましい態様、並びに、第2マット材30の凸部31a及び第2マット材30の凹部32aの嵌合の望ましい態様と同じである。
【0080】
積層マット材110を構成する第1マット材120及び第2マット材130の望ましい構成、製造方法は、上記積層マット材10を構成する第1マット材20及び第2マット材30の望ましい構成、製造方法と同じである。
【0081】
これまで説明してきた積層マット材110は、第1マット材120及び第2マット材130の2枚のマット材から構成されていたが、本発明の第2実施形態に係る積層マット材では、3枚以上のマット材から構成されていてもよい。
このような積層マット材では、隣り合うマット材同士の関係において、積層マット材を平面視した際に、一方の上記マット材の凸部の短手方向の両端を幅とする帯状の領域と、他方の上記マット材の凸部の短手方向の両端を幅とする帯状の領域とは互いに一部のみが重なればよい。
【0082】
本発明の第2実施形態に係る積層マット材は排ガス浄化装置に使用されることになる。
すなわち、本発明の第2実施形態に係る積層マット材は、排ガス処理体と、排ガス処理体を収容する金属ケーシングと、排ガス処理体と金属ケーシングとの間に配置され、排ガス処理体を保持するマット材とを備える排ガス浄化装置における、マット材として使用されることになる。
なお、本発明の第2実施形態に係る積層マット材を備える排ガス浄化装置は、本発明の第2実施形態に係る排ガス浄化装置でもある。
【0083】
本発明の第2実施形態に係る排ガス浄化装置の排ガス処理体及び金属ケーシングの望ましい態様は、上記本発明の第1実施形態に係る排ガス浄化装置の排ガス処理体及び金属ケーシングの望ましい態様と同じである。
【0084】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態に係る積層マット材は、複数のマット材が積層されてなる平面視矩形の積層マット材であって、上積層マット材は、長手方向の一端である第1端部と、上記第1端部と反対側の第2端部とを有し、上記第1端部側の各マット材の端部には、凸部が形成されており、上記第2端部側の各マット材の端部には、上記凸部に嵌合する凹部が形成されており、隣り合う上記マット材同士の関係において、上記積層マット材を平面視した際に、一方の上記マット材の凸部の短手方向の両端の幅が、他方の上記マット材の凸部の短手方向の両端の幅よりも短く、一方の上記マット材の凸部の短手方向の両端を幅とする帯状の領域の全てが、他方の上記マット材の凸部の短手方向の両端を幅とする帯状の領域と重なっていることを特徴とする。
【0085】
本発明の第3実施形態に係る積層マット材の一例を以下に図面を用いて説明する。
図6(a)は、本発明の第3実施形態に係る積層マット材の一例を模式的に示す斜視図である。
図6(b)は、
図6(a)の積層マット材の平面図である。
図6(a)に示す積層マット材210は、第1マット材220と第2マット材230とが積層されてなる平面視矩形の積層マット材である。
また、
図6(b)に示すように、積層マット材210は、長手方向の一端である第1端部211と、第1端部211と反対側の第2端部212とを有している。
【0086】
第1端部211側の第1マット材220の端部221には、凸部221aが形成されており、第2端部212側の第1マット材220の端部222には、凸部221aに嵌合する凹部222aが形成されている。
図6(a)及び(b)に示す第1マット材220では、凸部221aの形状は四角形であるが、本発明の第3実施形態に係る積層マットにおいて、第1マット材の凸部の形状は、三角形や四角形等の多角形であってもよく、半円形や半楕円形であってもよい。
【0087】
第1端部211側の第2マット材230の端部231には、凸部231aが形成されており、第2端部212側の第2マット材230の端部232には、凸部231aに嵌合する凹部232aが形成されている。
図6(a)及び(b)に示す第2マット材230では、凸部231aの形状は四角形であるが、本発明の第3実施形態に係る積層マットにおいて、第2マット材の凸部の形状は、三角形や四角形等の多角形であってもよく、半円形や半楕円形であってもよい。
【0088】
積層マット材210では、積層マット材210を第1マット材220側から平面視した際に、第2マット材の凸部231aの短手方向の両端の幅が、第1マット材220の凸部221aの短手方向の両端の幅よりも短く、第2マット材230の凸部231aの短手方向の両端を幅とする帯状の領域235の全てが、第1マット材220の凸部221aの短手方向の両端を幅とする帯状の領域225と重なっている。
【0089】
積層マット材210では、第1マット材220の凸部221aを、長手方向に平行移動させたとしても、第2マット材230の凸部231aと互いに完全に重なることはない。
そのため、積層マット材210を巻回する際に、第1マット材220の凸部221aは、第2マット材230の凹部232aに嵌合しにくい。すなわち、作業者が間違って第1マット材220の凸部221aを、第2マット材230の凹部232aに嵌合させてしまうミスが生じにくい。
従って、積層マット材210は、巻回する際のハンドリングが良好である。
【0090】
積層マット材210では、第1マット材220の長手方向の長さが、第2マット材230の長手方向の長さが長い。
後述するようにマット材210は、排ガス処理体に巻回されることになるが、第1マット材220の長手方向の長さが、第2マット材230の長手方向の長さが長い場合、第2マット材230を内側にして巻回すると、内外周差を小さくすることができる。
その結果、巻回により内側のマット材(第2マット材230)に皺が生じることを防ぐことができ、外側のマット材(第1マット材220)の端部221と端部222との間に大きな隙間が生じることを防ぐことができる。
【0091】
図6(a)及び(b)に示すように、積層マット材210では、第1マット材220の端部221と、第2マット材230の端部231とが遊動自在となるように、固定部215により第1マット材220と第2マット材230とは相互に固定されている。
また、固定部215は、積層マット材210の短手方向に沿って形成されている。
このような構成の積層マット材210は、第1マット材220及び第2マット材230がばらばらに分離しにくい。そのため、作業時のハンドリングが向上する。
【0092】
固定部215は、結束バンド、ピン止め、糸縫い等により形成されていてもよい。
なお、固定部215が糸縫いにより形成されている場合は、固定部215は、積層マット材210の長手方向に沿って形成されていてもよく、短手方向に沿って形成されていてもよい。
また、本発明の第3実施形態に係る積層マット材では、固定部が無くてもよい。
【0093】
積層マット材210における第1マット材220の凸部221a及び第1マット材220の凹部122aの嵌合の望ましい態様、並びに、第2マット材230の凸部231a及び第2マット材230の凹部232aの嵌合の望ましい態様は、上記積層マット材10における第1マット材20の凸部21a及び第1マット材20の凹部22aの嵌合の望ましい態様、並びに、第2マット材30の凸部31a及び第2マット材30の凹部32aの嵌合の望ましい態様と同じである。
【0094】
積層マット材210を構成する第1マット材220及び第2マット材230の望ましい構成、製造方法は、上記積層マット材10を構成する第1マット材20及び第2マット材30の望ましい構成、製造方法と同じである。
【0095】
これまで説明してきた積層マット材210は、第1マット材220及び第2マット材230の2枚のマット材から構成されていたが、本発明の第3実施形態に係る積層マット材では、3枚以上のマット材から構成されていてもよい。
このような積層マット材では、隣り合うマット材同士の関係において、積層マット材を平面視した際に、一方の上記マット材の凸部の短手方向の両端の幅が、他方の上記マット材の凸部の短手方向の両端の幅よりも短く、一方の上記マット材の凸部の短手方向の両端を幅とする帯状の領域の全てが、他方の上記マット材の凸部の短手方向の両端を幅とする帯状の領域と重なっていればよい。
【0096】
本発明の第3実施形態に係る積層マット材は排ガス浄化装置に使用されることになる。
すなわち、本発明の第3実施形態に係る積層マット材は、排ガス処理体と、排ガス処理体を収容する金属ケーシングと、排ガス処理体と金属ケーシングとの間に配置され、排ガス処理体を保持するマット材とを備える排ガス浄化装置における、マット材として使用されることになる。
なお、本発明の第3実施形態に係る積層マット材を備える排ガス浄化装置は、本発明の第3実施形態に係る排ガス浄化装置でもある。
【0097】
本発明の第3実施形態に係る排ガス浄化装置の排ガス処理体及び金属ケーシングの望ましい態様は、上記本発明の第1実施形態に係る排ガス浄化装置の排ガス処理体及び金属ケーシングの望ましい態様と同じである。
【0098】
(実施例)
以下、本発明をより具体的に開示した実施例を示す。なお、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0099】
塩基性塩化アルミニウム水溶液に対して、焼成後の無機繊維における組成比が、Al2O3:SiO2=72:28(重量比)となるようにシリカゾルを配合し、さらに、有機重合体(ポリビニルアルコール)を適量添加して混合液を調製した。
得られた混合液を濃縮して紡糸用混合物とし、この紡糸用混合物をブローイング法(紡糸雰囲気温度:120℃)により紡糸してアルミナ繊維前駆体を作製した。
得られたアルミナ繊維前駆体の平均繊維径は5.5μmであった。
【0100】
続いて、上記アルミナ繊維前駆体を圧縮して幅1254mm×厚さ7.9mmの大きさの連続したシート状物を作製した。
これ密度が23個/cm2となるように、ニードルパンチング処理を行った。
その後、シート状物を最高温度1300℃で焼成することにより、アルミナ繊維前駆体をアルミナ繊維に転換し無機繊維集合体のシートを得た。
【0101】
次に、長手方向の一方の端部に凸部を有し、もう一方の端部に凹部を有する矩形になるように、トムソン刃で無機繊維集合体のシートを打ち抜き第1マット材を作製した。
第1マット材の大きさは、長さ419.0mm×幅88.5mmであった。
凸部の長さは、35.0mmであり、凸部の幅は29.5mmであった。
凸部の形成位置は、第1マット材の凸部が形成された端部を右に配置して、第1マット材を平面視した際に、マット材の上方の側面から下方に向かって10.0~39.5mmの位置であった。
また、凹部は凸部が丁度嵌合する形状であった。
【0102】
次に、長手方向の一方の端部に凸部を有し、もう一方の端部に凹部を有する矩形になるように、トムソン刃で無機繊維集合体のシートを打ち抜き第2マット材を作製した。
第2マット材の大きさは、長さ461.0mm×幅88.5mmであった。
凸部の長さは、35.0mmであり、凸部の幅は29.5mmであった。
凸部の形成位置は、第2マット材の凸部が形成された端部を右に配置して、第2マット材を平面視した際に、マット材の下方の側面から上方に向かって10.0~39.5mmの位置であった。
また、凹部は凸部が丁度嵌合する形状であった。
【0103】
次に、第1マット材の凸部の形成位置、及び、第2マット材の凸部の形成位置で説明した上下左右の位置関係のまま、第2マット材の上に第1マット材を積層した。
次に、第1マット材の凹部が形成された端部と、第2マット材の凹部が形成された端部とを揃えた。
次に、凹部が形成された端部から50mmの位置において、結束バンドを用いて第1マット材及び第2マット材を固定し固定部とすることにより、本発明の実施例に係る積層マット材を製造した。
【0104】
このような本発明の実施例に係る積層マット材では、巻回作業中に、第2マット材の凸部が第1マット材の凹部に嵌ってしまったり、第1マット材の凸部が第2マット材の凹部に嵌ってしまうことがなかった。
【符号の説明】
【0105】
10、110、210 積層マット材
11、111、211 第1端部
12、112、212 第2端部
20、120、220 第1マット材
21、121、221 端部
21a、121a、221a 凸部
21a1 先端
22、122、222 端部
22a、122a、222a 凹部
22a1 底部
25、125、225 領域
30、130、230 第2マット材
31、131、231 端部
31a、131a、231a 凸部
31a1 先端
32、132、232 端部
32a、132a、232a 凹部
32a1 底部
35、135、235 領域
50 排ガス浄化装置
60 排ガス処理体
61 セル
62 セル壁
63 封止材
70 金属ケーシング