(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-03
(45)【発行日】2023-10-12
(54)【発明の名称】光ファイバの製造方法及び光ファイバの製造装置
(51)【国際特許分類】
C03B 37/027 20060101AFI20231004BHJP
C03B 37/029 20060101ALI20231004BHJP
【FI】
C03B37/027 Z
C03B37/029
(21)【出願番号】P 2019142865
(22)【出願日】2019-08-02
【審査請求日】2022-06-23
(31)【優先権主張番号】P 2018174127
(32)【優先日】2018-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】100143764
【氏名又は名称】森村 靖男
(72)【発明者】
【氏名】細川 宰
【審査官】玉井 一輝
(56)【参考文献】
【文献】実開昭62-186941(JP,U)
【文献】実開昭63-046439(JP,U)
【文献】特開平06-100328(JP,A)
【文献】特開2003-335545(JP,A)
【文献】国際公開第2010/055696(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/038794(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2002/0191926(US,A1)
【文献】特表2004-533390(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 37/027-37/029
G02B 6/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
希土類元素化合物を含むシリカガラスから成るコアを有する光ファイバとなる光ファイバ用母材の下端部を加熱炉において加熱しながら線引きする線引工程を備え、
前記加熱炉内の温度分布は、上流側から下流側に向かって最高温度になるまで昇温された後に降温され、前記最高温度となる箇所より下流側において温度低下が急峻になる変化をする変化点を有し、
前記最高温度は、前記シリカガラスがガラス転移点以上となると共に前記シリカガラスが単相である温度であ
り、
前記加熱炉内の温度分布における前記変化点より上流側の温度分布を下記式(1)で示す正規分布の一部に近似すると共に、前記変化点より下流側の温度分布を下記式(2)で示す正規分布の一部に近似し、
前記式(1)で示す正規分布の分散σ
t
と前記式(2)で示す正規分布の分散σ
b
との比σ
t
/σ
b
が2以上となるように、前記加熱炉の温度を設定する
ことを特徴とする光ファイバの製造方法。
【数1】
【数2】
ただし、上記式(1)及び式(2)において、Tは前記加熱炉内の任意の地点での温度であり、A及びBは定数であり、xは前記最高温度となる位置を基準点として下流側を正方向としたときの前記基準点から前記任意の地点までの距離であり、x
c
は前記基準点から前記変化点となる位置までの距離であり、x
0
は上記式(2)で求められるTが計算上の最高温度となる位置の前記基準点からの距離である。
【請求項2】
前記比σ
t/σ
bが3以上となるように前記加熱炉の温度を設定する
ことを特徴とする請求項
1に記載の光ファイバの製造方法。
【請求項3】
前記比σ
t/σ
bが8以下となるように前記加熱炉の温度を設定する
ことを特徴とする請求項
2に記載の光ファイバの製造方法。
【請求項4】
前記分散σ
tが100mm以上300mm以下とされる
ことを特徴とする請求項
1から3のいずれか1項に記載の光ファイバの製造方法。
【請求項5】
前記変化点の温度T
cと前記最高温度T
maxとの比T
c/T
maxが0.5以上とされる
ことを特徴とする請求項1から
3のいずれか1項に記載の光ファイバの製造方法。
【請求項6】
前記比T
c/T
maxが0.7以上とされる
ことを特徴とする請求項
5に記載の光ファイバの製造方法。
【請求項7】
前記希土類元素化合物に含まれる希土類元素がイッテルビウム(Yb)であり、
前記コアにおける前記希土類元素の濃度が2.0wt%以上3.1wt%以下である
ことを特徴とする請求項1から
6のいずれか1項に記載の光ファイバの製造方法。
【請求項8】
前記コアには、3.0
wt%以上5.3wt%以下のアルミニウム(Al)と、1.7wt%以上5.6wt%以下のリン(P)とがさらに含まれる
ことを特徴とする請求項
7に記載の光ファイバの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバの製造方法及び光ファイバの製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ファイバレーザ装置は、集光性に優れ、パワー密度が高く、小さなビームスポットとなる光が得られることから、レーザ加工分野、医療分野等の様々な分野において用いられている。このようなファイバレーザ装置では、希土類元素が添加されたコアを有する希土類添加光ファイバが用いられる。
【0003】
ところで、光ファイバは、光ファイバ用母材を加熱炉において加熱して線引きすることによって得られる。このようにして光ファイバを製造する方法が下記特許文献1に記載されている。下記特許文献1の光ファイバの製造方法では、線引きされた光ファイバの表面に傷が付くことを抑制するために、線引きされた光ファイバの側面に垂直にガスを吹き付けることで光ファイバを急冷し、光ファイバの表面に圧縮応力を付与して光ファイバを強化している。
【0004】
しかし、光通信に用いられる光ファイバのように長距離に渡って光の伝送損失を低減することが求められる場合には、線引きされた光ファイバを徐冷することによってレイリー散乱係数を小さくし、光の伝送損失を小さくすることが好ましい。例えば下記特許文献2には、光ファイバの表面のみを急激に冷却し、光ファイバの内部を徐冷することができる光ファイバの製造方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開昭53-125857号公報
【文献】特開2017-36197号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1及び特許文献2に記載されている光ファイバのコアは希土類元素を含んでいない。希土類元素を含まないシリカガラスからなるコアは、光ファイバの製造過程において結晶化が生じ難い。一方、希土類添加光ファイバの場合、製造過程において希土類元素が添加されたシリカガラスから成るコアが結晶化し易い。希土類添加光ファイバのコアでこのような結晶化が起こると、コアを伝搬する光の損失が増大することが懸念される。また、希土類元素が添加されたシリカガラスは、所定の温度において、組成比がそれぞれ異なる複数の液相に分離する相分離を起こすことがある。このような相分離が起こることによっても、コアを伝搬する光の損失が増大することが懸念される。
【0007】
上記特許文献1及び特許文献2の光ファイバの製造方法は、コアに希土類元素を含まない光ファイバの製造を前提としているため、上記のようなコアにおける結晶化や相分離についての検討がなされていない。したがって、上記特許文献1及び特許文献2に記載の光ファイバの製造方法によって希土類元素化合物を含むコアを有する光ファイバを製造する場合、コアを伝搬する光の損失を十分に抑制し得ない懸念がある。
【0008】
そこで、本発明は、希土類元素化合物を含むシリカガラスから成るコアを伝搬する光の損失を抑制し得る光ファイバの製造方法及び光ファイバの製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための本発明の光ファイバの製造方法は、希土類元素化合物を含むシリカガラスから成るコアを有する光ファイバとなる光ファイバ用母材の下端部を加熱炉において加熱しながら線引きする線引工程を備え、前記加熱炉内の温度分布は、上流側から下流側に向かって最高温度になるまで昇温された後に降温され、前記最高温度となる箇所より下流側において温度低下が急峻になる変化をする変化点を有し、前記最高温度は、前記シリカガラスがガラス転移点以上となると共に前記シリカガラスが単相である温度であることを特徴とする。
【0010】
希土類元素化合物を含むシリカガラスにおいて、希土類元素化合物の結晶化や相分離は、希土類元素化合物を含むシリカガラスがガラス転移点以上において、単相である温度よりも低い温度で起こる。よって、希土類元素化合物を含むシリカガラスをガラス転移点以上であると共に単相である温度まで一旦加熱した後に冷却速度を早めて所定の温度まで冷却することによって、希土類元素化合物の結晶化や相分離が抑制され得る。そのため、本発明の光ファイバの製造方法は、希土類元素化合物を含むコアを伝搬する光の損失を抑制し得る。
【0011】
また、前記加熱炉内の温度分布は、平衡状態において前記希土類元素化合物と純粋なシリカガラスとの組成比がそれぞれ異なる複数の液相に分離する温度で冷却速度が最大となるように設定されることが好ましい。
【0012】
希土類元素化合物を含むシリカガラスにおいて相分離が起きる温度領域で冷却速度が最大とされることによって、希土類元素化合物を含むシリカガラスの相分離がより抑制され得る。
【0013】
また、前記加熱炉内の温度分布における前記変化点より上流側の温度分布を下記式(1)で示す正規分布の一部に近似すると共に、前記変化点より下流側の温度分布を下記式(2)で示す正規分布の一部に近似し、前記式(1)で示す正規分布の分散σ
tと前記式(2)で示す正規分布の分散σ
bとの比σ
t/σ
bが2以上となるように、前記加熱炉の温度を設定することが好ましい。
【数1】
【数2】
ただし、上記式(1)及び式(2)において、Tは前記加熱炉内の任意の地点での温度であり、A及びBは定数であり、xは前記最高温度となる位置を基準点として下流側を正方向としたときの前記基準点から前記任意の地点までの距離であり、x
cは前記基準点から前記変化点となる位置までの距離であり、x
0は上記式(2)で求められるTが計算上の最高温度となる位置の前記基準点からの距離である。
【0014】
比σt/σbが大きくなるほど加熱炉内の温度分布の変化点以降の温度低下が急峻になる。また、本発明者は、比σt/σbが2以上とされることによって、加熱炉内における最高温度となる箇所より下流側において、光ファイバ用母材から線引きされるガラス線の冷却速度を十分に大きくし得ることを見出した。
【0015】
また、前記比σt/σbが3以上となるように前記加熱炉の温度を設定することがより好ましい。
【0016】
本発明者は、比σt/σbが3以上とされることによって、加熱炉内における最高温度となる箇所より下流側において、光ファイバ用母材から線引きされるガラス線の冷却速度をより大きくし得ることを見出した。
【0017】
更に、前記比σt/σbが8以下となるように前記加熱炉の温度を設定することがより好ましい。
【0018】
上記のように、比σt/σbが2以上とされることによって、加熱炉内における最高温度となる箇所より下流側において、光ファイバ用母材から線引きされるガラス線の冷却速度を十分に大きくし得る。しかし、本発明者は、比σt/σbが8より大きくなると、当該冷却速度の最大値があまり変化しなくなることを見出した。また、比σt/σbが低い値の方が加熱炉内の温度設定がしやすい傾向にある。したがって、比σt/σbが8以下となるように加熱炉の温度を設定することで、当該加熱炉の温度の設定を容易にしつつ、ガラス線の冷却速度をより大きくし得る。
【0019】
また、前記分散σtが100mm以上300mm以下とされることが好ましい。
【0020】
上記のように、比σt/σbが大きくなるほど加熱炉内の温度分布の変化点以降の温度低下が急峻になる。よって、分散σtが小さいほど、比σt/σbが小さくなり、加熱炉内の温度分布の変化点以降の温度低下が緩やかになる。すなわち、分散σtが小さいほど、光ファイバ用母材から線引きされるガラス線の冷却速度は一定の値に漸近し易くなる。本発明者は、分散σtが100mm以上であるときにガラス線の冷却速度を十分に高くし得ることを見出した。一方、分散σtが大きくなるほどガラスの冷却速度は遅くなる。高い冷却速度とするためには、分散σtが300mm以下であることが好ましい。
【0021】
また、前記変化点の温度Tcと前記最高温度Tmaxとの比Tc/Tmaxが0.5以上とされることが好ましい。
【0022】
比Tc/Tmaxが0.5以上であれば、光ファイバ用母材から線引きされるガラス線を最高温度まで加熱した後に急冷し易くなる。よって、コアを構成するシリカガラスにおける希土類元素化合物の結晶化や相分離がより抑制され易くなる。
【0023】
また、前記比Tc/Tmaxが0.7以上とされることが好ましい。
【0024】
比Tc/Tmaxが0.7以上であれば、光ファイバ用母材から線引きされるガラス線を最高温度まで加熱した後により急激に冷却し易くなる。よって、コアを構成するシリカガラスにおける希土類元素化合物の結晶化や相分離がさらに抑制され易くなる。
【0025】
また、前記希土類元素化合物に含まれる希土類元素がイッテルビウム(Yb)であり、前記コアにおける前記希土類元素の濃度が2.0wt%以上3.1wt%以下であってもよい。
【0026】
Ybは希土類元素であるため、コアに添加されるYbの濃度が大きくなるほど、コアに結晶化や相分離が起こりやすくなる。例えば、コアにおけるYbの濃度が2.0wt%以上3.1wt%以下である場合、コアに結晶化や相分離が起こりやすくなる。しかし、上述のように、この光ファイバの製造方法では、加熱炉内の温度が最大となる位置より下流側において加熱炉内の温度が急峻に下げられるため、2.0wt%以上3.1%以下のYbが添加されている場合であっても、Ybの結晶化や相分離が抑制され、コアを伝搬する光の損失が抑制され得る。
【0027】
コアに添加されるYbの濃度が2.0wt%以上3.1wt%以下である場合、前記コアには、3.0wt%以上5.3wt%以下のアルミニウム(Al)と、1.7wt%以上5.6wt%以下のリン(P)とがさらに含まれてもよい。
【0028】
AlおよびPがYbと共添加される場合、Ybが添加されたコアに結晶化や相分離が起こることが抑制され得る。これに加えて、この光ファイバの製造方法では、上述のように、加熱炉内の温度が最大となる位置より下流側において加熱炉内の温度を急峻に下げられる。このため、コアに結晶化や相分離が起こることがさらに抑制され得る。
【0029】
また、上記課題を解決するための本発明の光ファイバの製造装置は、希土類元素化合物を含むシリカガラスから成るコアを有する光ファイバとなる光ファイバ用母材を発熱体により加熱する加熱炉を備え、前記加熱炉内の温度分布は、上流側から下流側に向かって最高温度になるまで昇温された後に降温され、前記最高温度となる箇所より下流側において温度低下が急峻になる変化をする変化点を有し、前記最高温度は、前記シリカガラスがガラス転移点以上となると共に前記シリカガラスが単相である温度であることを特徴とする。
【0030】
上記のように、希土類元素化合物を含むシリカガラスがガラス転移点以上となる共に単相である温度まで一旦シリカガラスを加熱した後に冷却速度を早めて所定の温度まで冷却することで、希土類元素化合物の結晶化や相分離が抑制され得る。そのため、本発明の光ファイバの製造装置は、希土類元素化合物を含むコアを伝搬する光の損失を抑制し得る。
【0031】
また、前記光ファイバ用母材から線引きされるガラス線を冷却する冷却部材が前記発熱体よりも下側に設けられることが好ましい。
【0032】
光ファイバ用母材から線引きされるガラス線を冷却する冷却部材が発熱体よりも下側に設けられることによって、加熱炉の下側において加熱炉内の温度を低下させ易くなる。そのため、加熱炉内において、最高温度となる箇所より下流側において温度低下が急峻となる変化点を有する温度分布を容易に形成し得る。
【0033】
また、前記冷却部材は前記ガラス線を囲い、前記冷却部材の内周面と前記ガラス線の表面との間に下から上に向けて冷却ガスが吹き込まれることが好ましい。
【0034】
上記のように冷却ガスが吹き込まれることで、加熱炉内において、最高温度となる箇所より下流側における温度低下をより急峻にし得る。また、冷却ガスが下から上に向けて吹き込まれることによって、当該冷却ガスはガラス線に沿って流通する。この場合、上記特許文献1や特許文献2に記載されている方法のようにガラス線の側面に垂直に冷却ガスが吹き付けられる場合に比べて、ガラス線の揺れが抑制され得る。よって、上記特許文献1や特許文献2に記載されている方法に比べて光ファイバが精度良く製造され得る。
【0035】
また、前記発熱体よりも下側に、前記加熱炉の内側の熱を前記加熱炉の外側に伝達する放熱材が設けられることが好ましい。
【0036】
このような放熱材が設けられることによって、加熱炉内において発熱体よりも下側において熱を外に放出し易くなる。そのため、加熱炉内において、最高温度となる箇所より下流側において温度低下が急峻となる変化点を有する温度分布を容易に形成し得る。
【発明の効果】
【0037】
以上のように、本発明によれば、希土類元素化合物を含むコアを伝搬する光の損失を抑制し得る光ファイバの製造方法及び光ファイバの製造装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】本発明の実施形態に係る光ファイバの長手方向に垂直な断面を示す図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る光ファイバの製造装置を概略的に示す図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る光ファイバの製造方法を示すフローチャートである。
【
図4】準備工程で準備される光ファイバ用母材の長手方向に垂直な断面を示す図である。
【
図6】Yb
2O
3とSiO
2との二元系平衡状態図である。
【
図7】
図5に示す加熱炉内の温度分布をより詳細に説明するための図である。
【
図8】加熱炉内の温度分布、ネックダウン付近におけるガラスの温度分布、およびネックダウンの外径の推定結果を示す図である。
【
図9】
図8に示す推定結果から得られるガラスの温度とそのときのガラスの冷却速度との関係を示すである。
【
図10】分散σ
t=150mm、x
c=0のときの加熱炉内の温度分布を示す図である。
【
図11】分散σ
t=150mm、x
c=0のときのガラスの温度分布を示す図である。
【
図12】分散σ
t=150mm、x
c=0のときのネックダウンの外径を示す図である。
【
図13】分散σ
t=150mmのときのガラスの温度分布およびネックダウンの外径から見積もった加熱炉内の各位置におけるガラスの冷却速度と、そのときのガラスの温度との関係を示す図である。
【
図14】
図13から得られる冷却速度の最大値と比σ
t/σ
bとの関係を示す図である。
【
図15】冷却速度の最大値をσ
t=σ
bのときの冷却速度の最大値で規格化した値と比σ
t/σ
bとの関係を示す図である。
【
図16】比σ
t/σ
b=3.0のときの加熱炉内の温度分布を示す図である。
【
図17】比σ
t/σ
b=3.0のときのガラスの温度分布を示す図である。
【
図18】比σ
t/σ
b=3.0のときのネックダウンの外径を示す図である。
【
図19】比σ
t/σ
b=3.0のときのガラスの温度分布およびネックダウンの外径から見積もった加熱炉内の各位置におけるガラスの冷却速度と、そのときのガラスの温度との関係を示す図である。
【
図20】
図19から得られる冷却速度の最大値を、x
c=0のときの冷却速度の最大値で規格化した値と比T
c/T
maxとの関係を示す図である。
【
図21】変形例にかかる加熱炉の断面を示す図である。
【
図22】他の変形例にかかる加熱炉の断面を示す図である。
【
図23】更なる他の変形例にかかる加熱炉の断面を示す図である。
【
図24】実施例1で用いた加熱炉の断面を示す図である。
【
図25】実施例1における加熱炉内の温度分布の測定結果を示す図である。
【
図26】比較例1における加熱炉内の温度分布の測定結果を示す図である。
【
図27】実施例2及び比較例2におけるネックダウンの外径を測定した結果を示す図である。
【
図28】実施例2及び比較例2におけるネックダウンの外径から推定されるガラスの温度を示す図である。
【
図29】光ファイバのコアに添加されるYbの濃度と上記コアを伝搬する光の損失との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明に係る光ファイバの製造方法及び光ファイバの製造装置の好適な実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。以下に例示する実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良することができる。
【0040】
図1は、本発明の実施形態に係る光ファイバの長手方向に垂直な断面を示す図である。本実施形態の光ファイバ1は、増幅用光ファイバとされる。
図1に示すように、本実施形態の光ファイバ1は、コア10と、コア10の外周面を隙間なく囲むクラッドである内側クラッド11と、内側クラッド11の外周面を被覆する外側クラッド12と、外側クラッド12の外周面を被覆する保護層13と、を主な構成として備える。このように光ファイバ1は、いわゆるダブルクラッド構造とされている。内側クラッド11の屈折率はコア10の屈折率よりも低く、外側クラッド12の屈折率は内側クラッド11の屈折率よりも低くされている。また、コア10は、内側クラッド11の中心に配置されている。
【0041】
コア10を構成する材料は、イッテルビウム(Yb)等の希土類元素が添加されたシリカガラスが挙げられる。このような希土類元素としては、上記Ybの他にツリウム(Tm)、セリウム(Ce)、ネオジウム(Nd)、ユーロピウム(Eu)、エルビウム(Er)等が挙げられる。なお、希土類元素は化合物となってコア10を構成する材料に含まれる。例えば、Ybは、Yb2O3等の酸化化合物となってコア10中に存在する。また、コア10を構成する材料には、屈折率を上昇させるゲルマニウム(Ge)等の元素や、結晶化やフォトダークニングを抑制し得るアルミニウム(Al)やリン(P)等の元素が更に添加されてもよい。さらに、コア10を構成する材料には、屈折率を調整するために、フッ素(F)やホウ素(B)等の屈折率を下げる元素が添加されてもよい。
【0042】
内側クラッド11を構成する材料としては、例えば、何らドーパントが添加されていない純粋なシリカガラスを挙げることができる。なお、内側クラッド11を構成する材料には、屈折率を低下させるフッ素(F)等の元素が添加されてもよい。
【0043】
外側クラッド12は、例えば樹脂から成り、当該樹脂としては例えば紫外線硬化性樹脂や熱硬化性樹脂が挙げられる。
【0044】
保護層13を構成する材料としては、例えば、紫外線硬化性樹脂や熱硬化性樹脂が挙げられる。外側クラッド12が樹脂から成る場合、保護層13を構成する材料は外側クラッド12を構成する樹脂とは異なる樹脂とされる。
【0045】
次に、本発明の実施形態に係る光ファイバの製造装置について説明する。
【0046】
図2は、本実施形態に係る光ファイバの製造装置を概略的に示す図である。
図2に示す光ファイバ1の製造装置100は、母材送り出し装置21、加熱炉20、被覆装置50、ターンプーリー60、引取装置61、巻取装置62を主な構成として備える。光ファイバの製造装置100によって、上記光ファイバ1が製造される。
【0047】
母材送り出し装置21は、光ファイバ1となる光ファイバ用母材1Pの上端部に取り付けられ、光ファイバ用母材1Pを下端側から加熱炉20内に所定の速度で送り込むモータを有する装置である。
【0048】
本実施形態の加熱炉20は、筐体23、炉心管22、発熱体30、断熱材25、及び冷却部材40を主な構成として備える。
【0049】
筐体23の外壁内には冷媒が流通する冷媒流路24が形成されている。冷媒流路24に冷媒が流通することによって筐体23が冷却され、熱による筐体23の損傷が抑制される。また、筐体23は中心部に上下方向に貫通した貫通孔を有しており、当該貫通孔に炉心管22が挿入される。本実施形態では、炉心管22は、筐体23の上端及び下端のそれぞれから突出している。ただし、炉心管22は、筐体23の上端及び下端の少なくとも一方から突出しなくても良い。さらに、筐体23には当該貫通孔に連通する中空部20Hが形成され、中空部20Hにおいて、炉心管22の外周面側から炉心管22を加熱できるように発熱体30が設けられる。
【0050】
本実施形態の発熱体30は、電気が流されるときに電気抵抗によって発熱する。なお、発熱体30は炉心管22の一部とされてもよい。この発熱体30が発する熱を有効に利用するため、中空部20Hにおいて、発熱体30及び炉心管22は断熱材25によって囲われる。断熱材25の数は特に限定されず、断熱材25は複数に分割されていてもよい。
【0051】
加熱炉20内の最高温度は、光ファイバ用母材1Pの大きさや光ファイバ用母材1Pから線引きされる光ファイバ裸線1Eの目標とする外径や光ファイバ裸線1Eに加えられる張力等によるが、2000℃程度の高温とされる場合がある。そのため、炉心管22、発熱体30及び断熱材25を構成する材料は、例えばカーボンであることが好ましい。炉心管22、発熱体30及び断熱材25にカーボンを用いる場合、加熱炉20内部は不活性雰囲気とされることが好ましい。よって、炉心管22の内周面側及び筐体23の中空部20Hは、例えば、アルゴン(Ar)、ヘリウム(He)等の不活性ガスで満たされることが好ましい。
【0052】
冷却部材40は、光ファイバ用母材1Pから線引きされるガラス線を冷却する部材であり、加熱炉20内において炉心管22の内周面側における発熱体30よりも下側に設けられる。また、本実施形態の冷却部材40は、光ファイバ用母材1Pから線引きされるガラス線を囲う。このような冷却部材40は、例えば内部に冷却水が流通する構成とされることが好ましい。この冷却水の温度は、冷却部材40を流通している間に沸騰しない温度であり、かつ冷却部材40に過剰な結露を生じさせない温度であることが好ましい。冷却水は、例えば10℃以上70℃以下の範囲内の一定の温度で冷却部材40に供給されることが好ましい。冷却部材40に供給される冷却水の温度は冷却部材40内を流通する間に上昇するが、冷却部材40に供給されるときの冷却水の温度が一定とされることによって、冷却部材40内の各部位における冷却水の温度の経時変化が抑制され得る。
【0053】
また、本実施形態の冷却部材40の内周面側には、下から上に向かって冷却ガスが吹き込まれることが好ましい。この冷却ガスは、冷却部材40の内周面と光ファイバ用母材1Pから線引きされるガラス線の表面との間に下から上に向けて吹き込まれる。このように冷却ガスが吹き込まれることによって、冷却ガスは光ファイバ用母材1Pから線引きされるガラス線の表面に沿って流通し易くなる。そのため、ガラス線の表面垂直に冷却ガスが吹き付けられる場合に比べて、ガラス線の揺れが抑制され得る。冷却ガスの種類は特に限定されないが、熱伝導性等の観点から冷却ガスはHeやArであることが好ましい。
【0054】
本実施形態の被覆装置50は、第1被覆装置51及び第2被覆装置52を備える。第1被覆装置51は、加熱炉20において線引きされるコア10及び内側クラッド11からなる光ファイバ裸線1Eが通されることによって、光ファイバ裸線1Eの外周面を被覆する外側クラッド12を形成する装置である。また、第2被覆装置52は、外側クラッド12の外周面を被覆する保護層13を形成する装置である。
【0055】
引取装置61は、ターンプーリー60によって向きが変えられた光ファイバ1を所定の引き取り速度で引き取る装置であり、巻取装置62は光ファイバ1をボビンに巻き取る装置である。
【0056】
次に、本発明の実施形態に係る光ファイバの製造方法について説明する。
【0057】
図3は、本発明の実施形態に係る光ファイバの製造方法を示すフローチャートである。本実施形態の光ファイバの製造方法によって、光ファイバの製造装置100を用いて上記光ファイバ1が製造される。
図3に示すように、本実施形態の光ファイバ1の製造方法は、準備工程P1及び線引工程P2を主な工程として備える。
【0058】
<準備工程P1>
本工程では、まず光ファイバ1のコア10となるコアガラス体と、内側クラッド11となるクラッドガラス体とを有する光ファイバ用母材1Pを準備する。
図4は、準備工程P1で準備される光ファイバ用母材1Pの長手方向に垂直な断面を示す図である。
図4に示すように、光ファイバ用母材1Pは、光ファイバ1のコア10となるコアガラス体10Pと、内側クラッド11となるクラッドガラス体11Pと、を有する。光ファイバ用母材1Pの作製方法は特に限定されず、例えば、MCVD法(Modified chemical vapor deposition method)によって光ファイバ用母材1Pを作製することができる。
【0059】
次に、光ファイバ用母材1Pを加熱炉20内に設置する。
図2に示すように、光ファイバ用母材1Pの上端部は母材送り出し装置21に固定され、光ファイバ用母材1Pは下端部から加熱炉20の炉心管22に挿入される。
【0060】
<線引工程P2>
本工程は、光ファイバ用母材1Pの下端部を加熱炉20において加熱しながら線引きする工程である。
【0061】
上記のように準備工程P1において光ファイバ用母材1Pを加熱炉20に設置した後、加熱炉20の発熱体30を発熱させて、光ファイバ用母材1Pの下端部を加熱する。光ファイバ用母材1Pの下端部は、加熱炉20内において加熱されることによって溶融し、テーパー状のネックダウンNDが形成されて縮径される。このように光ファイバ用母材1Pの下端部が縮径し、コアガラス体10Pがコア10となると共にクラッドガラス体11Pが内側クラッド11となり、コア10及び内側クラッド11からなる光ファイバ裸線1Eが得られる。
【0062】
光ファイバ裸線1Eの外径、すなわち内側クラッド11の外径は、母材送り出し装置21によって光ファイバ用母材1Pを加熱炉20の下流側に送り込む速度と、引取装置61による光ファイバ1を引き取る速度と、を調整することによって調整される。また、上記のように光ファイバ裸線1Eが線引きされるとき、ネックダウンNDには下方に引っ張られる力、すなわち線引き張力が加えられる。ネックダウンNDに加えられる線引き張力は、加熱炉20内の温度等が調整されることによって調整される。
【0063】
図5は加熱炉20内の温度分布を示す図である。加熱炉20内の温度分布は、
図5に実線で示すように、加熱炉20の上流側から下流側に向かって最高温度T
maxになるまで昇温された後に降温され、最高温度T
maxとなる箇所より下流側において温度低下が急峻になる変化をする変化点を有する。この変化点の温度をT
c、変化点となる位置をx
cとする。なお、加熱炉20内の位置は、最高温度T
maxとなる箇所を基準点(0)として当該基準点から下流側を正方向、上流側を負方向として定義する。
【0064】
本実施形態の加熱炉20では、冷却部材40が炉心管22の発熱体30よりも下側に配置されることによって、加熱炉20の下部の温度が上部の温度より低くなっている。そのため、加熱炉20内の温度は上記のような変化点を有する分布となる。
【0065】
図5に破線で示す温度分布は、冷却部材40が備えられない場合における上記変化点以降の温度分布を示している。冷却部材40が備えられない場合、加熱炉20内の温度分布は概ね正規分布となる。すなわち、冷却部材40が備えられない場合、加熱炉20内の温度分布は最高温度T
maxとなる基準点の上流側と下流側とで概ね対称となるが、本実施形態の加熱炉20内の温度分布は、基準点の上流側と下流側とで非対称となる。
【0066】
加熱炉20内の最高温度Tmaxは、コア10を構成するシリカガラスがガラス転移点以上となると共に当該シリカガラスが単相である温度である。加熱炉20内の最高温度Tmaxについて、Yb2O3とSiO2の二元系平衡状態図を用いて説明する。
【0067】
図6は、Yb
2O
3とSiO
2との二元系平衡状態図である。
【0068】
Yb
2O
3を数%含むシリカガラス(SiO
2)は、1700℃以上の所定の温度域において、Yb
2O
3とSiO
2との組成比が互いに異なる2つの液相となる。このような相分離が生じる温度の上限は、シリカガラスに添加されるYb
2O
3の量によって異なる。加熱炉20内の最高温度T
maxは、シリカガラスが単相となる温度であり、上記相分離が生じる温度域よりも高い温度とされる。よって、
図6に示すように、加熱炉20内の最高温度T
maxは、Yb
2O
3を含むシリカガラスが平衡状態において液相(Liquid)となる温度とされる。コア10を構成するシリカガラスに添加されるYb
2O
3は数%であり、加熱炉20内の最高温度T
maxが2200℃以上とされれば、最高温度T
maxはコア10を構成するシリカガラスがガラス転移点以上になると共に当該シリカガラスが単相である温度となる。ただし、上記のように相分離が生じる温度の上限はYb
2O
3の添加量によって異なる。そのため、最高温度T
maxは2200℃より低い温度であってもよい。例えば、コア10を構成する材料の組成によって、最高温度T
maxは、2000℃程度~1730℃程度であってもよい。
【0069】
図7は、
図5に示す加熱炉20内の温度分布をより詳細に説明するための図である。
図7に示すように、変化点より上流側の温度分布は実線で示される正規分布の一部として近似することができ、変化点より下流側の温度分布は破線で示される正規分布の一部として近似することができる。すなわち、加熱炉20内の温度分布における変化点より上流側の温度分布を下記式(1)で示す正規分布の一部に近似すると共に、変化点より下流側の温度分布を下記式(2)で示す正規分布の一部に近似することができる。
【数3】
【数4】
【0070】
ここで、σtは変化点より上流側の温度分布を上記式(1)で示す正規分布の一部に近似したときの当該正規分布の分散であり、σbは変化点より下流側の温度分布を上記式(2)で示す正規分布の一部に近似したときの当該正規分布の分散である。したがって、σt>σbとなる。また、上記式(1)及び式(2)において、Tは加熱炉20内の任意の地点での温度であり、A及びBは定数であり、xは最高温度Tmaxとなる位置を基準点(0)として下流側を正方向としたときの基準点から任意の地点までの距離であり、xcは基準点から変化点となる位置までの距離であり、x0は上記式(2)で表されるTが計算上の最高温度Tmaxとなる位置の基準点からの距離である。
【0071】
この場合、式(1)で示す正規分布の半値幅は2√(2ln2)σtとなり、式(2)で示す正規分布の半値幅は2√(2ln2)σbとなる。
【0072】
上記式(1)の分散σtと上記式(2)の分散σbとの比σt/σbは、以下の計算例で示すように、2以上であることが好ましく、3以上であることがより好ましく、8以下であることが更に好ましい。また、比σt/σbは6以下とされてもよい。
【0073】
以下に説明する計算例において、ネックダウンND付近における光ファイバ1を構成するガラスの温度分布及びネックダウンNDの外径は、光ファイバ用母材1Pの外径、内側クラッド11の外径、光ファイバ1の引き取り速度、及び加熱炉20内の温度分布から推定した。この推定計算は、ネックダウンNDを形成する際の力の平衡、物質収支、及び熱収支の関係式を解くことにより行われる。以下の計算例では、計算を容易にするため、光ファイバ用母材1Pが全て純粋な石英からなる円柱であると仮定している。なお、以下の説明において、ネックダウンND付近における光ファイバ1を構成するガラスを単にガラスということがある。
【0074】
ネックダウンNDを形成する際の力の平衡からは、下記式(3)の関係式が導出される。
【数5】
ここで、xは加熱炉20内の位置、tは時間、vは位置xにおけるガラスの移動速度、Sは位置xにおけるガラスの断面積、Fは線引き張力、βはガラスの伸び粘性係数である。伸び粘性係数βは、純粋な石英の場合、ガラスの温度Taの関数として下記式(4)で表される。
【数6】
【0075】
物質収支からは、下記式(5)の関係式が導出される。
【数7】
【0076】
熱収支からは、下記式(6)の関係式が導出される。なお、下記式(6)中のg(Ta)は下記式(7)、p(Ta)は下記式(8)で求められる。
【数8】
【数9】
【数10】
ここで、Taはガラスの温度、Tbは加熱炉20内の温度、ρはガラスの比重、C
pはガラスの比熱、E
mは径方向のガラスの熱輻射率、E
nは長手方向のガラスの熱輻射率、σ
Bはステファンボルツマン定数(5.76×10
-8J/sec/m
2/K
4)である。以下の計算例では、ρ=2200kg/m
3、E
m=0.2、E
n=0.2とし、C
pは下記式(9)及び式(10)で近似した。
【数11】
【数12】
【0077】
(計算例1)
光ファイバ用母材1Pの外径を30mm、内側クラッド11の外径を0.25mm、光ファイバ1の引取速度を50m/min、線引き張力を50gf、上記式(1)及び式(2)の定数Bを300K、分散σ
tを150mm、分散σ
bを50mm、x
cを135mmとしたときの加熱炉20内の温度分布、ネックダウンND付近におけるガラスの温度分布、およびネックダウンNDの外径の推定結果を
図8に示す。なお、このとき、上記式(1)及び式(2)の定数Aの値は線引き張力が50gfとなるように設定しており、比σ
t/σ
b=3.0、比T
c/T
max=0.70である。
【0078】
また、
図8に示す推定結果から得られるガラスの温度とそのときのガラスの冷却速度との関係を
図9に示す。
【0079】
(計算例2)
光ファイバ用母材1Pの外径を30mm、内側クラッド11の外径を0.25mm、引取速度を50m/min、線引き張力を50gf、上記式(1)及び式(2)の定数Bを300K、x
cを0としたときに、分散σ
tを50mm~300mm、分散σ
bを20mm~300mmに変化させ、加熱炉20内の温度分布、ネックダウンND付近におけるガラスの温度分布、およびネックダウンNDの外径の推定を行った。分散σ
tを150mmとして分散σ
bを20mm~150mmに変化させたときの加熱炉20内の温度分布を
図10に示し、同条件におけるガラスの温度分布を
図11に示し、同条件におけるネックダウンNDの外径を
図12に示す。
【0080】
また、分散σ
tが150mmであるときのガラスの温度分布およびネックダウンNDの外径から見積もった加熱炉20内の各位置におけるガラスの冷却速度と、そのときのガラスの温度との関係を
図13に示す。
【0081】
図13から得られる冷却速度の最大値と比σ
t/σ
bとの関係を
図14に示し、冷却速度の最大値をσ
t=σ
bのときの冷却速度の最大値で規格化した値と比σ
t/σ
bとの関係を
図15に示す。なお、
図14及び
図15には、分散σ
tが50mm、100mm、150mm、200mm、300mm、400mmの場合についても同様の計算を行った結果を併記している。
図14および
図15から、比σ
t/σ
bの値が大きくなるほど冷却速度も大きくなることがわかる。
図15から、比σ
t/σ
bが2未満であるときは冷却速度の最大値の上昇が大きく、比σ
t/σ
bが3以上となれば冷却速度の最大値が上昇し難くなっている。このことから、上記のように、比σ
t/σ
bは2以上であることが好ましく、3以上であればより好ましいことがわかる。また、比σ
t/σ
bが低い値の方が加熱炉内の温度設定がしやすい傾向にあり、
図14から比σ
t/σ
bが8より大きくなると、冷却速度の最大値があまり変化しなくなることがわかる。したがって、比σ
t/σ
bが低い値に保たれたまま、冷却速度が最大値に近づけられ得る観点から、上記のように比σ
t/σ
bが8以下であることが好ましい。また、分散σ
tが小さいほど、比σ
t/σ
bが小さい値から冷却速度は一定の値に漸近するが、分散σ
tが100mmより小さい場合には冷却速度の最大値は大きくし難いことがわかる。
【0082】
一方で、分散σtが300mmよりも大きい場合には、冷却速度の最大値が小さい値となっていることが分かる。したがって、分散σtは300mm以下であることが好ましい。
【0083】
(計算例3)
光ファイバ用母材1Pの外径を30mm、内側クラッド11の外径を0.25mm、引取速度を50m/min、線引き張力を50gf、定数Bを300K、分散σ
tを150mm、分散σ
bを50mm(比σ
t/σ
b=3.0)としたときに、x
cを0mm~225mmに変化させて加熱炉20内の温度分布、ネックダウンND付近におけるガラスの温度分布、およびネックダウンNDの外径の推定を行った。x
cを0mm~225mmに変化させたときの加熱炉20内の温度分布を
図16に示し、同条件におけるガラスの温度分布を
図17に示し、同条件におけるネックダウンNDの外径を
図18に示す。
【0084】
また、比σ
t/σ
b=3.0であるときのガラスの温度分布およびネックダウンNDの外径から見積もった加熱炉20内の各位置におけるガラスの冷却速度と、そのときのガラスの温度との関係を
図19に示す。
【0085】
図19から得られる冷却速度の最大値を、x
c=0のときの冷却速度の最大値で規格化した値と比T
c/T
maxとの関係を
図20に示す。
図20からは、比σ
t/σ
bの値によらず比T
c/T
maxが0.5以上であれば冷却速度の最大値の低下は10%程度に抑えられることがわかる。よって、比T
c/T
maxが0.5以上であれば、光ファイバ用母材1Pから線引きされるガラス線を最高温度まで加熱した後に急冷し易くなる。また、比T
c/T
maxが0.7以上であれば冷却速度の最大値の低下は5%程度に抑えられることがわかる。よって、比T
c/T
maxが0.7以上であれば、光ファイバ用母材1Pから線引きされるガラス線を最高温度まで加熱した後により急冷し易くなる。なお、変化点は、最高温度となる箇所より下流側であるため、変化点の温度T
cは最高温度T
maxよりも低く、T
c/T
maxは1未満とされる。
【0086】
上記のように温度設定された加熱炉20内において、光ファイバ用母材1Pの下端は加熱されて溶融状態となる。そして、光ファイバ用母材1Pからガラス線が溶融して線引きされる。線引きされた溶融状態のガラス線は、加熱炉20から出ると、すぐに固化して、コアガラス体10Pがコア10となり、クラッドガラス体11Pが内側クラッド11となることで、コア10と内側クラッド11とから構成される光ファイバ裸線1Eとなる。
【0087】
上記のように光ファイバ裸線1Eが作製された後、この光ファイバ裸線1Eは、適切な温度まで冷却される。光ファイバ裸線1Eは、不図示の冷却装置によって冷却されてもよい。冷却された光ファイバ裸線1Eは、第1被覆装置51において、外側クラッド12となる紫外線硬化性樹脂で被覆された後に紫外線が照射されることで、当該紫外線硬化性樹脂が硬化してなる外側クラッド12が形成される。次に外側クラッド12で被覆された光ファイバ裸線1Eは、第2被覆装置52において、保護層13となる紫外線硬化性樹脂で被覆された後に紫外線が照射されることで、当該紫外線硬化性樹脂が硬化して保護層13が形成され、
図1に示す光ファイバ1となる。
【0088】
そして、光ファイバ1は、ターンプーリー60により方向が変換され、巻取装置62により巻き取られる。
【0089】
以上説明したように、本実施形態の光ファイバ1の製造方法は、希土類元素化合物を含むシリカガラスから成るコア10を有する光ファイバ1となる光ファイバ用母材1Pの下端部を加熱炉20において加熱しながら線引きする線引工程P2を備える。また、加熱炉20内の温度分布は、上流側から下流側に向かって最高温度Tmaxになるまで昇温された後に降温され、最高温度Tmaxとなる箇所より下流側において温度低下が急峻になる変化をする変化点を有する。さらに、最高温度Tmaxは、シリカガラスがガラス転移点以上となると共にシリカガラスが単相である温度である。
【0090】
希土類元素化合物を含むシリカガラスにおいて、希土類元素化合物の結晶化や相分離は、希土類元素化合物を含むシリカガラスがガラス転移点以上において単相である温度よりも低い温度で起こる。よって、希土類元素化合物を含むシリカガラスがガラス転移点以上となると共に単相である温度まで一旦加熱した後に冷却速度を早めて所定の温度まで冷却することによって、
図6に示すTwo liquidsで示される領域に滞在する時間が短くなるため、希土類元素化合物の結晶化や相分離が抑制され得る。そのため、本実施形態の光ファイバ1の製造方法は、希土類元素化合物を含むコア10を伝搬する光の損失を抑制し得る。
【0091】
また、本実施形態の光ファイバ1の製造方法において、加熱炉20内の温度分布は、平衡状態において希土類元素化合物と純粋なシリカガラスとの組成比がそれぞれ異なる複数の液相に分離する温度で冷却速度が最大となるように設定される。希土類元素化合物を含むシリカガラスにおいて相分離が起きる温度領域で冷却速度が最大とされることによって、希土類元素化合物を含むシリカガラスの相分離がより抑制され得る。
【0092】
また、本実施形態の光ファイバ1の製造装置100は、希土類元素化合物を含むシリカガラスから成るコア10を有する光ファイバ1となる光ファイバ用母材1Pを加熱する加熱炉20を備える。加熱炉20内の温度分布は、上記のように設定される。上記のように、希土類元素化合物を含むシリカガラスをガラス転移点以上であると共に単相となる温度まで一旦加熱した後に冷却速度を速めて所定の温度まで冷却することによって、希土類元素化合物の結晶化や相分離が抑制され得る。そのため、本実施形態の光ファイバ1の製造装置100は、希土類元素化合物を含むコアを伝搬する光の損失を抑制し得る。
【0093】
また、本実施形態の光ファイバ1の製造装置100では、光ファイバ用母材1Pから線引きされるガラス線を冷却する冷却部材40が加熱炉20を加熱する発熱体30よりも下側に設けられる。光ファイバ用母材1Pから線引きされるガラス線を冷却する冷却部材40が加熱炉20を加熱する発熱体30よりも下側に設けられることによって、加熱炉20の下側において加熱炉20内の温度を低下させ易くなる。そのため、加熱炉20内において、最高温度Tmaxとなる箇所より下流側において温度低下が急峻となる変化点を有する温度分布を容易に形成し得る。
【0094】
また、本実施形態の光ファイバ1の製造装置100において、冷却部材40は光ファイバ用母材1Pから線引きされるガラス線を囲い、冷却部材40の内周面と当該ガラス線の表面との間に下から上に向けて冷却ガスが吹き込まれることが好ましい。このように冷却ガスが吹き込まれることによって、加熱炉20内において、最高温度Tmaxとなる箇所より下流側における温度低下をより急峻にし得る。また、冷却ガスが下から上に向けて吹き込まれることによって、当該冷却ガスはガラス線に沿って流通する。この場合、上記特許文献1や特許文献2に記載されている方法のようにガラス線の側面に垂直に冷却ガスが吹き付けられる場合に比べて、ガラス線の揺れが抑制され得る。よって、上記特許文献1や特許文献2に記載されている方法に比べて光ファイバ1が精度良く製造され得る。
【0095】
以上、本発明について、実施形態を例に説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0096】
例えば、加熱炉20内において最高温度Tmaxとなる箇所よりも下流側において温度低下を急峻にする手段は、上記実施形態で例示した冷却部材40に限定されない。例えば、加熱炉20を加熱する発熱体30よりも下側において、加熱炉20の内側の熱を加熱炉20の外側に伝達する放熱材が設けられてもよい。放熱材の熱伝導率は、断熱材25の熱伝導率よりも高くされる。このような放熱材が設けられることによって、加熱炉20内において上側よりも下部側の方が熱を外に放出し易くなる。そのため、加熱炉20内において、最高温度Tmaxとなる箇所より下流側において温度低下が急峻となる変化点を有する温度分布を容易に形成し得る。
【0097】
図21から
図23は、このような変形例にかかる加熱炉20の断面を示す図である。
【0098】
図21に示す加熱炉20は、筐体23の中空部20Hにおいて、断熱材25の下方に放熱材として中空管26を備える。中空管26は、例えばカーボン等からなる。加熱炉20の内側の熱を加熱炉20の外側に伝達し易くする観点から、中空管26は炉心管22の外周面及び筐体23の内周面に接することが好ましい。
【0099】
図22に示す加熱炉20は、断熱材25の下端部において加熱炉20の内側から外側に貫通して設けられる金属棒27を複数備える。金属棒27は放熱材である。また、金属棒27は高融点金属によって構成される。金属棒27を構成する高融点金属として、例えば、W、Re、Ta、Os、Mo、Nb、Ir、Ru、Hf等が挙げられる。これらの金属は組わせて用いられてもよい。また、金属棒27の数は特に限定されない。ただし、金属棒27は、炉心管22の軸心を対称軸として回転対称となる位置に設けられることが好ましい。このように金属棒27が複数設けられることによって、加熱炉20の周方向に均一に熱を放出し易くなる。
【0100】
図23に示す加熱炉20は、断熱材25の下端部において分散される金属粉28を備える。金属粉28は放熱材であり、金属粉28を構成する金属は、上記金属棒27と同様である。
【0101】
なお、
図21から
図23に示す例は放熱材を設ける場合の一部の例に過ぎず、加熱炉20の下端部に放熱材を設ける方法はこれらに限定されない。また、
図21から
図23に示す例において、冷却部材40は必須ではない。
【0102】
また、上記実施形態では、光ファイバ1の長手方向に垂直な断面において、内側クラッド11の外周が円形である例を挙げて説明した。しかし、内側クラッド11の外周形状は、円形に限定されず、六角形や七角形や八角形等の多角形や多角形の角に丸みを帯びた形状等の非円形とされてもよい。
【0103】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明の内容をより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものでは無い。
【0104】
(実施例1)
図24は、実施例1で用いた加熱炉の断面を示す図である。
図24において、
図2と同様の構成のものには同じ符号を付している。実施例で用いた加熱炉20aは、断熱材25が3つに分割されている点と発熱体30の位置が実施形態で例示した加熱炉20と異なる。
【0105】
通常の操業では加熱炉20a内の温度は2000℃程度とされるため、加熱炉20a内の温度を実測することは難しい。そのため、加熱炉20a内の温度を実際の操業時の温度よりも低く設定し、Ir/Ir-40%RH熱電対で加熱炉20a内の温度を実測した。
【0106】
発熱体30の高さ方向の長さは40mmであり、発熱体30の下には高さ130mmの断熱材25を配置した。また、発熱体30の外側には、発熱体30の下端からの高さが300mmの断熱材25を配置した。炉心管22は、断熱材25の下端から下方に160mmの位置まで延在していた。また、26℃に保たれた冷却水が内部に供給される冷却部材40を炉心管22の下端から挿入した。冷却部材40は、炉心管22の下端から175mmの位置に上端が配置されるように炉心管22に挿入されており、冷却部材40の上端と発熱体30の中心との高さ方向の距離は155mmであった。さらに、炉心管22の上側からHeを6L/min、炉心管22の下側から炉心管22の内周面と冷却部材40の外周面との間にHeを5L/min、Arを3L/min、管状の冷却部材40の内周面側に下側からHeを7L/minで流した。
【0107】
このような条件における加熱炉20a内の温度分布の測定結果を
図25に示す。
図25において、太線が測定した加熱炉20a内の温度を示しており、細線が加熱炉20a内の温度分布を近似した正規分布を示している。なお、
図25では、変化点より上流側と下流側とで異なる正規分布に近似しており、それぞれの正規分布を補間する線を破線で示している。
【0108】
(比較例1)
加熱炉20aに冷却部材40を挿入せずに、炉心管22の上側からHeを6L/min、炉心管22の下側からHeを10L/min、Arを3L/minで流した以外は実施例1と同様にして、加熱炉20a内の温度分布を測定した。その結果を
図26に示す。
【0109】
図26に示した比較例1の加熱炉内の温度分布は、最高温度となる箇所の上流側と下流側とでほぼ対称となり、分散σ=140mm、A=1715K、B=300Kとする下記式(11)で表される正規分布に近似される。
【数13】
【0110】
一方、
図25に示す実施例1の加熱炉20a内の温度分布は、分散σ
t=140mm、分散σ
b=35mm、A=1715K、B=300Kとする上記式(1)及び式(2)で表される正規分布に近似される。なお、x
c=160mm、T
c=1204Kであった。また、比σ
t/σ
b=4.0、比T
c/T
max=0.70であった。実施例1の温度分布は、変化点より上流側では比較例1と同様であるが、下流側では冷却部材40の影響によって温度勾配が急峻となっていた。
【0111】
(実施例2)
実施例1と同様の加熱炉20aを用いて、コア10にYbが2.3wt%、Alが3.3wt%、及びPが3.8wt%添加された光ファイバ1を製造した。線引工程P2終了時に光ファイバ用母材1Pの送り出し及び光ファイバ1の引き取りを同時に止めてから加熱炉20a内の温度を下げ、実際の操業に近い状態においてネックダウンNDのサンプルを採取した。光ファイバ用母材1Pの外径を30mm、内側クラッド11の外径を0.28mm、光ファイバ1の引き取り速度を50m/minとし、線引き張力を50gfと仮定した。ネックダウンNDの外径を測定した結果を
図27に示し、ネックダウンNDの外径から推定されるガラスの温度を
図28に示す。
図27及び
図28の横軸はネックダウンNDの長手方向の位置であり、加熱炉内の温度が最大となる位置を基準点(0)とし、基準点より下流方向を正方向としている。
【0112】
(比較例2)
加熱炉20aに冷却部材40を挿入せずに、光ファイバ1の引取速度を80m/minとした以外は実施例2と同様にネックダウンNDのサンプルを採取した。ネックダウンNDの外径を測定した結果を
図27に示し、ネックダウンNDの外径から推定されるガラスの温度を
図28に示す。
【0113】
図28に示すように、加熱炉内の温度が最大となる位置より下流側において、冷却部材40を用いた実施例2のガラスの方が比較例2のガラスよりも急峻に冷却されていることがわかる。
【0114】
(比較例3)
コアに添加されるドーパントをYbが2.3wt%、Alが3.1wt%、及びPが4.0wt%とし、加熱炉20aに冷却部材40を挿入しなかった以外は実施例2と同様にして光ファイバを製造した。
【0115】
(実施例3-1~3-17)
加熱炉20aにおける発熱体30の長さ、冷却部材40の上端から発熱体30の中心までの高さ方向の距離、コア10に添加されるドーパントの含有量、及び、光ファイバ裸線1Eの引き取り速度を下記表1に示す通りとしたこと以外は、実施例2と同様にして光ファイバ1を製造した。
【0116】
(比較例4-1~4-11)
加熱炉20aに冷却部材40を挿入せずに、加熱炉20aにおける発熱体30の長さ、コア10に添加されるドーパントの含有量、及び、光ファイバ裸線1Eの引き取り速度を下記表2に示す通りとしたこと以外は、実施例2と同様にして光ファイバ1を製造した。
【0117】
実施例2、実施例3-1~3-17のそれぞれの光ファイバ、及び、比較例3、比較例4-1~4-11のそれぞれの光ファイバについて、波長1180nmの光の損失を測定した。その結果を表1、表2、及び
図29に示す。なお、
図29は実施例2、実施例3-1~3-17、比較例3、及び比較例4-1~4-11においてコアに添加されたYbの濃度と、上記光の損失との関係を示す。
【0118】
【0119】
【0120】
表1及び表2において、同じYb濃度を有する実施例における光ファイバと比較例における光ファイバとを比較すると、冷却部材40を挿入することによって加熱炉20a内の温度が最大となる位置より下流側において加熱炉20a内の温度を急峻に下げている実施例2及び実施例3-1~3-17の方が、冷却部材40が未挿入であり上記温度が急峻に下がらない比較例3及び比較例4-1~4-11に比べて、光の損失が抑制されることが分かった。例えば、Yb濃度が2.5%である比較例4-4の光ファイバと、Yb濃度が2.5%である実施例3-2の光ファイバとを比較すると、前者における光の損失は50dBであるのに対して後者における光の損失は9dBに過ぎず、比較例における光の損失に比べて実施例における光の損失が少ないことが分かる。これは、シリカガラスのガラス転移点以上であると共にシリカガラスが単相となる温度までコアを構成するシリカガラスが加熱された後に急冷されることよって、コアにおける希土類元素化合物の結晶化や相分離が抑制されたためであると考えらえる。
【0121】
また、
図29に示すように、Ybの濃度が2.0wt%以上3.1wt%以下である場合、冷却部材40を挿入することによって加熱炉20a内の温度が最大となる位置より下流側において加熱炉20a内の温度を急峻に下げている実施例2及び実施例3-1~3-17の方が、冷却部材40が未挿入であり上記温度が急峻に下がらない比較例3及び比較例4-1~4-11に比べて、光の損失が小さくなることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0122】
以上説明したように、本発明によれば、希土類元素化合物を含むコアを伝搬する光の損失を抑制し得る光ファイバの製造方法及び光ファイバの製造装置が提供され、加工機や医療用レーザ装置等の分野で利用することが期待される。
【符号の説明】
【0123】
1・・・光ファイバ
1P・・・光ファイバ用母材
10・・・コア
10P・・・コアガラス体
11・・・内側クラッド
11P・・・クラッドガラス体
12・・・外側クラッド
13・・・保護層
20,20a・・・加熱炉
21・・・母材送り出し装置
22・・・炉心管
23・・・筐体
24・・・冷媒流路
25・・・断熱材
30・・・発熱体
40・・・冷却部材
100・・・光ファイバの製造装置