(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-03
(45)【発行日】2023-10-12
(54)【発明の名称】空気調和機
(51)【国際特許分類】
F24F 11/83 20180101AFI20231004BHJP
F24F 11/74 20180101ALI20231004BHJP
F25B 1/00 20060101ALI20231004BHJP
F24F 140/20 20180101ALN20231004BHJP
F24F 110/10 20180101ALN20231004BHJP
【FI】
F24F11/83
F24F11/74
F25B1/00 399Y
F24F140:20
F24F110:10
(21)【出願番号】P 2019168320
(22)【出願日】2019-09-17
【審査請求日】2022-06-02
(73)【特許権者】
【識別番号】505461072
【氏名又は名称】東芝キヤリア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浅利 峻
(72)【発明者】
【氏名】木口 行雄
【審査官】町田 豊隆
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/194145(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/087421(WO,A1)
【文献】特開2010-112699(JP,A)
【文献】特開2017-166799(JP,A)
【文献】国際公開第2013/008365(WO,A1)
【文献】特開2018-128211(JP,A)
【文献】特開2015-152174(JP,A)
【文献】特開2017-067320(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108759065(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/83
F24F 11/74
F25B 1/00
F24F 140/20
F24F 110/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機と、室外側熱交換器と、膨張弁とを配管接続して冷媒を循環させる室外ユニットと、
前記冷媒と熱媒を熱交換する複数の中間熱交換器を備えた熱交換ユニットと、
前記熱媒と室内気を熱交換する室内側熱交換器と
、外気を吸い込んで前記室内側熱交換器に流入させた後、温調された空気を空調対象空間に向けて吹き出す室内ユニットファンと、を備えた室内ユニットと、
前記中間熱交換器で冷却された前記熱媒および加熱された前記熱媒のいずれかを、前記室内側熱交換器に流入させる流路切換弁を備えたバルブユニットと、を備え、
前記室外ユニット、前記熱交換ユニット、前記室内ユニット、および前記バルブユニットは、それぞれに分割してケーシングされ、
前記室内ユニットと前記バルブユニットとは、冷却された前記熱媒もしくは加熱された前記熱媒が流れる流路で接続され、
前記室内ユニットは、前記流路において少なくとも前記室内側熱交換器の下流側における前記熱媒の温度を検出する第1の熱媒温度センサと、前記流路において前記バルブユニットを経由して前記熱交換ユニットと前記室内ユニットとの間で前記熱媒を循環させる循環ポンプと、
前記空調対象空間の室内温度を検出する室内温度センサと、前記循環ポンプ
と前記室内ユニットファンの運転を制御する制御部と、をさらに備え、
前記循環ポンプは、回転数を増減可能なインバータポンプであり、前記室内ユニットの筐体内もしくは前記室内ユニットの近傍の少なくともいずれかに配置され、
前記制御部は、前記第1の熱媒温度センサによって検出された前記熱媒の温度
が所定の目標温度になると前記循環ポンプの回転数を低下させ、前記室内温度センサによって検出された前記室内温度がサーモオフ温度になると回転数を低下させた前記循環ポンプを停止させる制御を開始して停止させるとともに、前記循環ポンプのこれら動作制御の間および該循環ポンプの停止後も継続して前記室内ユニットファンを一定の回転数で回転させるように、前記循環ポンプの回転数と前記室内ユニットファンの回転数を制御する
空気調和機。
【請求項2】
前記制御部は、少なくとも前記室内ユニットの冷房運転時もしくは暖房運転時のいずれか一方または双方において、前記第1の熱媒温度センサの検出温度が前記室内側熱交換器の下流側における前記熱媒の温度として予め設定された目標出口温度となるように、前記循環ポンプの回転数を制御する
請求項1に記載の空気調和機。
【請求項3】
前記室内ユニットは
、前記空調対象空間の目標室内温度を取得して前記制御部に付与する情報取得部と、をさらに備え、
前記制御部は、前記室内温度センサによって検出された前記室内温度と、前記情報取得部から付与された前記目標室内温度とに基づいて前記目標出口温度を制御する
請求項2に記載の空気調和機。
【請求項4】
前記室内ユニットは、前記流路において前記室内側熱交換器の上流側における前記熱媒の温度を検出する第2の熱媒温度センサをさらに備え、
前記制御部は、前記第1の熱媒温度センサと前記第2の熱媒温度センサとの検出温度の差が予め設定された目標温度差となるように、前記循環ポンプの回転数を制御する
請求項1に記載の空気調和機。
【請求項5】
前記室内ユニットは
、前記空調対象空間の目標室内温度を取得して前記制御部に付与する情報取得部と、をさらに備え、
前記制御部は、前記室内温度センサによって検出された前記室内温度が前記情報取得部から付与された前記目標室内温度となるように、前記循環ポンプの回転数を制御する
請求項1に記載の空気調和機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、水などの熱媒を循環させて冷暖房を行う空気調和機に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化係数(GWP)が高い一部のHFC(ハイドロフルオロカーボン)冷媒の使用が問題視されており、欧州の改正Fガス法をはじめとして段階的にその使用が規制されている。このため、GWPの低い冷媒を使用する空気調和機の開発が進んでおり、家庭用および業務用空調機で主流であったR410Aは、R32に置き換えられている。
【0003】
その一方で、R32は微燃性(A2L)の冷媒であり、例えば冷媒充填量が多い可変冷媒流量(VRF)方式の空気調和機で使用する際には、室内に漏えいした場合の安全性を考慮する必要がある。このため、VRF方式の空気調和機では引き続きR410Aが使用されていたが、近年の研究開発により、熱媒として水を循環させて室内機個別に冷暖房を行う方式が提案されている。一例として、かかる方式の空気調和機では、室外ユニットと室内ユニットの間に中継ユニットが介在し、室外ユニットと中継ユニットが冷媒配管で接続され、中継ユニットと室内ユニットが水配管で接続される。中継ユニットでは、冷媒と熱媒とが熱交換される。したがって、冷媒配管が通るのは室外ユニットから中継ユニットまでであり、中継ユニットと室内ユニットの間は水配管が通る。これにより、室内での冷媒漏えいに対する安全性が担保され、R32のような微燃性冷媒の使用が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような空気調和機では、室内ユニットごとに水が循環する。したがって、室内ユニットごとに水流量の差が生じないように、水の流路長さによる配管抵抗を考慮する必要がある。その対策として、例えば各室内ユニットへの流量制御弁を中継ユニットに配置することが挙げられるが、この場合、中継ユニットの筐体サイズやコストなどを増大させやすい。特に、ヒートリカバリーとして室外機の排熱を使用する場合、中継ユニット内にVRFに対応する能力の水熱交換器と流路切換弁、循環ポンプ、さらに流量調整弁まで収容する必要がある。その結果、中継ユニットの筐体サイズがさらに大きくなり、据付作業の人員増や設置スペースの確保などといった問題も生じ得る。
また、末端の室内ユニットまで十分に水を循環させるため、例えば循環ポンプとして揚程が比較的大きなものを採用する必要がある。あるいは、循環ポンプの揚程を変動させない場合、室内ユニットまでの配管長に上限と下限の制約を設けなければならない事態も生じ得る。
【0006】
本発明は、これを踏まえてなされたものであり、その目的は、ユニットの筐体サイズの増大を抑制するとともに、水の流路長さによる配管抵抗を低減させて末端の室内ユニットまで適切に水を循環させることが可能な水循環式の空気調和機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態によれば、空気調和機は、室外ユニットと、熱交換ユニットと、室内ユニットと、バルブユニットとを備える。室外ユニットは、圧縮機と、室外側熱交換器と、膨張弁とを配管接続して冷媒を循環させる。熱交換ユニットは、冷媒と熱媒を熱交換する複数の中間熱交換器を備える。室内ユニットは、熱媒と室内気を熱交換する室内側熱交換器と、外気を吸い込んで室内側熱交換器に流入させた後、温調された空気を空調対象空間に向けて吹き出す室内ユニットファンを備える。バルブユニットは、中間熱交換器で冷却された熱媒および加熱された熱媒のいずれかを、室内側熱交換器に流入させる流路切換弁を備える。室外ユニット、熱交換ユニット、室内ユニット、およびバルブユニットは、それぞれに分割してケーシングされる。室内ユニットとバルブユニットとは、冷却された熱媒もしくは加熱された熱媒が流れる流路で接続される。室内ユニットは、前記流路において少なくとも室内側熱交換器の下流側における熱媒の温度を検出する第1の熱媒温度センサと、該流路においてバルブユニットを経由して熱交換ユニットと室内ユニットとの間で熱媒を循環させる循環ポンプと、空調対象空間の室内温度を検出する室内温度センサと、循環ポンプと室内ユニットファンの運転を制御する制御部とをさらに備える。循環ポンプは、回転数を増減可能なインバータポンプであり、室内ユニットの筐体内もしくは室内ユニットの近傍の少なくともいずれかに配置される。制御部は、第1の熱媒温度センサによって検出された熱媒の温度が所定の目標温度になると循環ポンプの回転数を低下させ、室内温度センサによって検出された室内温度がサーモオフ温度になると回転数を低下させた循環ポンプを停止させる制御を開始して停止させるとともに、循環ポンプのこれら動作制御の間および該循環ポンプの停止後も継続して室内ユニットファンを一定の回転数で回転させるように、循環ポンプの回転数と室内ユニットファンの回転数を制御する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1の実施形態に係る空気調和機の構成を概略的に示す図である。
【
図2】第1の実施形態に係る空気調和機の配管系統を概略的に示す図である。
【
図3】第1の実施形態に係る空気調和機の各ユニットの設置例を概略的に示す図である。
【
図4】第1の実施形態に係る空気調和機における第1の回転数設定処理を示す制御フロー図である。
【
図5】第1の実施形態に係る空気調和機における第1の回転数設定処理の一例をそれぞれ示す図であって、(a)は空調対象空間の室内温度、室内側熱交換器における熱媒の出口温度および入口温度の時間変化をそれぞれ示す図、(b)は循環ポンプの回転数の時間変化を示す図、(c)は室内ユニットファンの回転数の時間変化を示す図である。
【
図6】第2の実施形態に係る空気調和機における第2の回転数設定処理を示す制御フロー図である。
【
図7】第2の実施形態に係る空気調和機における第2の回転数設定処理の一例をそれぞれ示す図であって、(a)は空調対象空間の室内温度、室内側熱交換器における熱媒の出口温度および入口温度の時間変化をそれぞれ示す図、(b)は循環ポンプの回転数の時間変化を示す図、(c)は室内ユニットファンの回転数の時間変化を示す図である。
【
図8】第3の実施形態に係る空気調和機における第3の回転数設定処理を示す制御フロー図である。
【
図9】第3の実施形態に係る空気調和機における第3の回転数設定処理の一例をそれぞれ示す図であって、(a)は空調対象空間の室内温度、室内側熱交換器における熱媒の出口温度および入口温度の時間変化をそれぞれ示す図、(b)は循環ポンプの回転数の時間変化を示す図、(c)は室内ユニットファンの回転数の時間変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[第1の実施形態]
以下、第1の実施形態について、
図1から
図5を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る空気調和機の構成を概略的に示す図である。
図2は、本実施形態に係る空気調和機の配管系統を概略的に示す図である。
図3は、本実施形態に係る空気調和機の各ユニットの設置例を概略的に示すである。
図1、
図2、
図3に示すように、空気調和機1は、室外ユニット2と、熱交換ユニット3と、バルブユニット4と、室内ユニット5とを備えている。これらは、ユニットごとに分割してケーシングされ、ユニット間は所定の配管6~9を介して接続されている。これらのユニットのうち、例えば室外ユニット2は建屋Bの屋上RF、熱交換ユニット3、バルブユニット4、および室内ユニット5は建屋Bの各階1F,2Fの天井空間CSなどにそれぞれ設置される。天井空間CSは、建屋Bの天井裏の梁と天井板との間などに規定された空間である。なお、
図1、
図2、
図3は、空気調和機1を模式的に示しており、ユニット数や配管数は、図示態様から適宜増減可能である。
【0010】
これらユニット2,3,4,5は、後述する各々の構成部材の動作を制御する制御部20,30,40,50をそれぞれ備えている。制御部20,30,40,50は、CPU、メモリ、記憶装置(不揮発メモリ)、入出力回路、タイマなどを含み、所定の演算処理を実行する。例えば、各制御部20,30,40,50は、各種データを入出力回路により読み込み、記憶装置からメモリに読み出したプログラムを用いてCPUで演算処理し、処理結果に基づいて各々のユニット構成部材の動作制御を行う。その際、制御部20,30,40,50は、それぞれのユニット構成部材との間および制御部相互間で、制御信号を有線もしくは無線を介して送受信する。
【0011】
室外ユニット2および熱交換ユニット3は、空気調和機1において冷媒を循環させる熱源側冷凍サイクルを構成する。また、熱交換ユニット3、バルブユニット4、および室内ユニット5は、空気調和機1における熱媒循環サイクルを構成する。
室外ユニット2と熱交換ユニット3は、配管(以下、冷媒配管という)6で接続されている。冷媒配管6は、液管6a、吸入ガス管6b、吐出ガス管6cを含む。
【0012】
室外ユニット2は、主たる要素として、圧縮機2a、逆止弁2b、オイルセパレータ2c、四方弁2d、室外側熱交換器2e、膨張弁2f、リキッドタンク2g、室外ユニットファン2h、アキュムレータ2i、および開閉弁2j,2kを備えている。室外ユニットファン2h以外は、筐体21内で配管接続され、熱交換ユニット3との間で循環する冷媒流路にそれぞれ配置される。室外ユニットファン2hは、室外側熱交換器2eに隣接して筐体21の壁部に配置される。筐体21は、室外ユニット2の外郭を規定する。
【0013】
熱交換ユニット3は、主たる要素として、膨張弁3a(31a,32a,33a)、中間熱交換器3b(31b,32b)、および開閉弁3cを筐体31にそれぞれ収容して構成されている。筐体31は、熱交換ユニット3の外郭を規定する。中間熱交換器3bは、冷媒と熱媒を熱交換する。本実施形態において、熱交換ユニット3は複数の中間熱交換器3bを備えており、そのうちの少なくとも一つは冷媒により熱媒を冷却し、それ以外は冷媒により熱媒を加熱する。冷媒は、例えばR410AやR407Cに比べて地球温暖化係数(GWP)が低いR32である。熱媒は、一例として水であるが、不凍液であってもよい。
【0014】
熱交換ユニット3が冷却用中間熱交換器31bと加熱用中間熱交換器32bを備えることで、空気調和機1は、冷却運転もしくは加熱運転のいずれか一方、あるいは双方の同時運転が可能とされている。
これら室外ユニット2および熱交換ユニット3により構成される熱源側冷凍サイクルについて、空気調和機1の冷却運転時、加熱運転時、冷却加熱混在運転時における動作態様をそれぞれ説明する。以下に説明するこれらの運転時、室外ユニット2および熱交換ユニット3においては、バルブユニット4および室内ユニット5の制御部40,50と制御部20,30が制御信号を適宜送受信し、各ユニット2,3の構成部材を動作させる。
【0015】
冷却運転時、室外ユニット2および熱交換ユニット3は、次のようにそれぞれ動作する。この時、室外ユニット2において、圧縮機2aは、吸込口21aからガス冷媒を吸い込み、吸い込んだガス冷媒を圧縮して吐出口22aから吐出する。圧縮機2aは、冷媒を圧縮して高温高圧の状態にする装置であり、例えば容量制御可能なインバータ圧縮機などである。吐出されたガス冷媒は、逆止弁2bを通り、オイルセパレータ2cで潤滑油分が分離されて室外側熱交換器2eに流入する。その際、ガス冷媒の一部は、四方弁2dで分岐されて室外側熱交換器2eに流入する。流入したガス冷媒は、室外側熱交換器2eで外気に放熱して凝縮、液化される。室外側熱交換器2eは、冷媒と外気との間で熱交換を行い、冷却運転時には凝縮器として機能する。液化された冷媒は、膨張弁2fで減圧されてリキッドタンク2gに貯留され、液管6aを通って熱交換ユニット3に供給される。室外ユニットファン2hは、筐体21内に外気を吸い込んで室外側熱交換器2eに流入させた後、筐体21外に排出する。
【0016】
熱交換ユニット3において、供給された液冷媒は、冷却用膨張弁31aで膨張されて冷却用中間熱交換器31bに流入する。流入した液冷媒は、冷却用中間熱交換器31bで熱媒から吸熱して蒸発、気化される。気化された冷媒(蒸発ガス)は、圧力制御用膨張弁33a、吸入ガス管6bを通って室外ユニット2に戻される。蒸発ガスは、冷却用中間熱交換器31bを通過して蒸発過程を経た冷媒として規定される。蒸発ガスには、例えば冷媒が完全に蒸発しておらず、乾き度1.0以下で液冷媒を含んだ冷媒も含まれる。圧力制御用膨張弁33aは、冷却用中間熱交換器31bの蒸発温度を制御し、熱媒である水の凍結を回避する。
【0017】
室外ユニット2に戻された蒸発ガスは、アキュムレータ2iでガス冷媒と液冷媒とに分離される。分離されたガス冷媒は、吸込口21aから圧縮機2aに吸い込まれ、再び圧縮される。一方、分離された液冷媒は、アキュムレータ2iに貯留される。
【0018】
これに対し、加熱運転時、室外ユニット2および熱交換ユニット3は、次のようにそれぞれ動作する。この時、室外ユニット2において、圧縮機2aから吐出されたガス冷媒は、冷却運転時と同様に、逆止弁2bを通り、オイルセパレータ2cで潤滑油分が分離される。その際、開閉弁2jが開き、ガス冷媒は、吐出ガス管6cを通って熱交換ユニット3に供給される。
【0019】
熱交換ユニット3においては、開閉弁3cが開き、供給されたガス冷媒が加熱用中間熱交換器32bで熱媒に放熱して凝縮、液化される。液化された冷媒(液冷媒)は、加熱用膨張弁32aで膨張され、液管6aを通って室外ユニット2に戻される。
【0020】
その際、開閉弁2kが開き、室外ユニット2に戻された液冷媒は、リキッドタンク2gを経由し、膨張弁2fで膨張されて室外側熱交換器2eに流入する。流入した液冷媒は、室外側熱交換器2eで外気から吸熱して蒸発、気化される。加熱運転時、室外側熱交換器2eは、蒸発器として機能する。その際、室外ユニットファン2hは、筐体21内に外気を吸い込んで室外側熱交換器2eに流入させた後、筐体21外に排出する。気化された冷媒(蒸発ガス)は、四方弁2d、アキュムレータ2iを通って吸込口21aから圧縮機2aに吸い込まれ、再び圧縮される。
【0021】
そして、冷却および加熱の混在運転時、室外ユニット2および熱交換ユニット3は、次のようにそれぞれ動作する。この時、室外ユニット2において、圧縮機2aから吐出されたガス冷媒は、加熱運転時と同様に、吐出ガス管6cを通って熱交換ユニット3に供給される。熱交換ユニット3において、供給されたガス冷媒は、加熱運転時と同様に、加熱用中間熱交換器32bで熱媒に放熱して凝縮、液化される。液化された冷媒(液冷媒)は、加熱用膨張弁32aおよび冷却用膨張弁31aでそれぞれ膨張され、冷却用中間熱交換器31bに流入する。流入した液冷媒は、冷却用中間熱交換器31bで熱媒から吸熱して蒸発、気化される。
【0022】
この時、加熱よりも冷却が優先される場合、室外ユニット2から熱交換ユニット3へ液冷媒が供給されるように流路が切り換えられる。一方、冷却よりも加熱が優先される場合、熱交換ユニット3から室外ユニット2へ液冷媒が供給されるように流路が切り換えられる。例えば、開閉弁2j,2k,3cが開閉するとともに、四方弁2dで流路が変更されることで、液管6aを通る液冷媒の供給方向が切り換わる。開閉弁2j,2k,3cが閉じた場合、液冷媒は室外ユニット2から四方弁2dを通って熱交換ユニット3へ供給される。開閉弁2j,2k,3cが開いた場合、液冷媒は熱交換ユニット3から四方弁2dを通って室外ユニット2へ供給される。
【0023】
熱交換ユニット3、バルブユニット4、および室内ユニット5は、空気調和機1における熱媒循環サイクルを構成する。
【0024】
バルブユニット4は、熱交換ユニット3と室内ユニット5との間に介在している。バルブユニット4は、熱媒配管7,8で熱交換ユニット3とそれぞれ接続されている。
【0025】
熱媒配管7は、冷却用中間熱交換器31bで冷却された熱媒(以下、冷却熱媒という)の流路を構成する。熱媒配管7は、冷却用熱媒供給管7a、冷却用熱媒還流管7bを含む。冷却用熱媒供給管7aは、冷却熱媒を熱交換ユニット3からバルブユニット4に供給する流路である。冷却用熱媒還流管7bは、冷却熱媒をバルブユニット4から熱交換ユニット3に還流する流路である。
【0026】
熱媒配管8は、加熱用中間熱交換器32bで加熱された熱媒(以下、加熱熱媒という)の流路を構成する。熱媒配管8は、加熱用熱媒供給管8a、加熱用熱媒還流管8bを含む。加熱用熱媒供給管8aは、加熱熱媒を熱交換ユニット3からバルブユニット4に供給する流路である。加熱用熱媒還流管8bは、加熱熱媒をバルブユニット4から熱交換ユニット3に還流する流路である。
【0027】
また、バルブユニット4は、分配管9で室内ユニット5と接続されている。分配管9は、熱媒を室内ユニット5に供給する往水管9aと、熱媒をバルブユニット4に戻す還水管9bを含む。往水管9aは、冷却用熱媒供給管7aから供給される冷却熱媒、および加熱用熱媒供給管8aから供給される加熱熱媒を室内ユニット5に供給する流路を構成する。還水管9bは、冷却熱媒および加熱熱媒をバルブユニット4に戻す流路を構成する。
【0028】
これにより、冷却熱媒および加熱熱媒は、熱交換ユニット3と室内ユニット5との間を、バルブユニット4を経由してそれぞれ循環する。
図2に示す構成例では、冷却用熱媒供給管7aおよび加熱用熱媒供給管8aがいずれも四つの往水管9aにそれぞれ分岐され、冷却熱媒および加熱熱媒は、それぞれ四つの室内ユニット5に分配される。分配された冷却熱媒および加熱熱媒は、四つの還水管9bからそれぞれバルブユニット4に戻され、冷却用熱媒還流管7bもしくは加熱用熱媒還流管8bを通って熱交換ユニット3との間で循環する。
【0029】
したがって、熱媒配管7,8と分配管9では、配管径が異なる。本実施形態では一例として、冷却用熱媒供給管7aと冷却用熱媒還流管7bの配管径は、往水管9aの配管径よりも大きい。また、加熱用熱媒供給管8aと加熱用熱媒還流管8bの配管径は、還水管9bの配管径よりも大きい。これにより、熱媒配管7,8と分配管9との間で、熱媒をスムーズかつ安定して循環させることができる。
【0030】
また、熱媒配管7,8の配管径は、室内ユニット5の合計接続容量に応じて異ならせればよい。室内ユニット5は、その容量(能力)ごとに設計流量が異なるため、それぞれの容量で定格流量が求まる。仮に0.5HP~5HPまでの室内ユニットをラインナップした場合、その定格流量はそれぞれ異なり、循環ポンプ5aも3ラインナップ程度が必要と考えられる。本実施形態では、熱媒循環サイクルが密閉回路である場合を想定しているが、異物の混入や水漏れ等によるエアの侵入を考慮し、配管流速を適切な値とする。このため、室内ユニット5の合計接続容量に応じて、熱媒配管7,8の配管径を異ならせる。
【0031】
バルブユニット4は、主たる要素として、流路切換弁4aを筐体41に収容して構成されている。流路切換弁4aは、冷却熱媒および加熱熱媒のいずれかを室内ユニット5の室内側熱交換器5bに流入させるバルブであり、往水弁41a、還水弁42aを含む。往水弁41aおよび還水弁42aは、制御部40によって開閉される三方弁であり、詳細については後述する。筐体41は、バルブユニット4の外郭を規定する。
室内ユニット5は、主たる要素として、循環ポンプ5a、室内側熱交換器5b、室内ユニットファン5c、温度センサ5d、温度センサ5e、情報取得部5fを備えている。循環ポンプ5a、室内側熱交換器5b、温度センサ5dは、筐体51内で配管接続され、バルブユニット4を経由して熱交換ユニット3との間で循環する熱媒流路にそれぞれ配置される。室内ユニットファン5c、温度センサ5e、および情報取得部5fは、筐体51の壁部に隣接して配置される。筐体51は、室内ユニット5の外郭を規定する。循環ポンプ5aは、熱媒流路で熱媒を循環させる。
【0032】
温度センサ5dは、熱媒の温度を検出するセンサであり、第1の熱媒温度センサ51dと、第2の熱媒温度センサ52dを含む。第1の熱媒温度センサ51dは、熱媒流路において、室内側熱交換器5bの下流側に配置され、該下流側の熱媒の温度、つまり室内側熱交換器5bに供給された後の熱媒温度(以下、出口温度という)を検出する。第2の熱媒温度センサ52dは、熱媒流路において、室内側熱交換器5bの上流側に配置され、該上流側の熱媒の温度、つまり室内側熱交換器5bに供給される前の熱媒温度(以下、入口温度という)を検出する。温度センサ(以下、室内温度センサという)5eは、室内ユニット5の空調対象空間(例えば、
図3の各階1F,2F)の温度である室内温度を検出する。
【0033】
情報取得部5fは、室内ユニット5とユーザとの間で情報のやり取りを行うインターフェース部であり、例えば操作用のパネル、スイッチ、ボタン、表示用のディスプレイなどである。情報取得部5fは、例えば室内ユニット5の運転開始、冷房運転と暖房運転のモード選択、室内温度の設定などの情報(データ)を取得し、取得した情報を制御部50に付与する。
【0034】
これら熱交換ユニット3、バルブユニット4、および室内ユニット5により構成される熱媒循環サイクルについて、次に説明する。
熱媒循環サイクルにおいて、バルブユニット4には、熱交換ユニット3の冷却用中間熱交換器31bで冷媒に放熱して冷却された熱媒(冷却熱媒)が冷却用熱媒供給管7aから供給される。また、加熱用中間熱交換器32bで冷媒から吸熱して加熱された熱媒(加熱熱媒)が加熱用熱媒供給管8aから供給される。供給された冷却熱媒および加熱熱媒は、往水弁41aを通って往水管9aから室内ユニット5に供給される。往水弁41aは、冷却熱媒もしくは加熱熱媒のいずれかを室内ユニット5に供給する。具体的には、冷房運転を行う室内ユニット5に対し、往水弁41aは、冷却用熱媒供給管7aに繋がるようにバルブユニット4の流路を切り換え、冷却熱媒を供給する。一方、暖房運転を行う室内ユニット5に対し、往水弁41aは、加熱用熱媒供給管8aに繋がるようにバルブユニット4の流路を切り換え、加熱熱媒を供給する。室内ユニット5における冷房運転と暖房運転は、例えば情報取得部5fが取得したユーザによる運転モードの選択などに応じて、制御部50が切り換える。
【0035】
また、室内ユニット5から戻された熱媒は、還水管9bから還水弁42aを通ってバルブユニット4に戻される。還水弁42aは、同一流路上の往水弁41aと対応して動作し、室内ユニット5に供給された熱媒をバルブユニット4に戻す。具体的には、冷房運転を行う室内ユニット5から戻された熱媒を冷却用熱媒還流管7bへ導くように、還水弁42aは、バルブユニット4の流路を切り換える。冷却用熱媒還流管7bへ導かれた熱媒は、冷却用中間熱交換器31bで冷媒に放熱して再び冷却される。一方、還水弁42aは、暖房運転を行う室内ユニット5から戻された熱媒を加熱用熱媒還流管8bへ導くように、バルブユニット4の流路を切り換える。加熱用熱媒還流管8bへ導かれた熱媒は、加熱用中間熱交換器32bで冷媒から吸熱して再び加熱される。
【0036】
室内ユニット5において、循環ポンプ5aは、室内ユニット5の運転もしくは停止に対応して動作し、冷却熱媒もしくは加熱熱媒を吸入して室内側熱交換器5bに吐出する。循環ポンプ5aは、回転数を増減可能なインバータ式のポンプであり、例えば熱媒の出口温度(室内側熱交換器5bの出口水温)に基づいて回転数を増減させる。室内側熱交換器5bは、室内気を熱媒との間で熱交換し、温度調整する。室内ユニットファン5cは、筐体51内に室内気を吸い込んで室内側熱交換器5bに流入させた後、温調された空気を筐体51から室内空間に向けて吹き出す。室内ユニットファン5cは、冷房または暖房の運転開始要求とほぼ同時に回転し、運転停止要求とほぼ同時に停止する。循環ポンプ5aと室内ユニットファン5cを停止する順番は、どちらが先でも構わない。一例として、室内温度のセンシングという観点においては、サーモオフ時にまず循環ポンプ5aを停止させ、室内ユニットファン5cの回転を継続させることが望ましい。
【0037】
このような熱媒の出口温度に基づいた循環ポンプ5aの回転数の制御(第1の回転数設定処理)の一例について、制御部50の制御フローに従って説明する。
図4には、室内ユニット5が冷房運転される場合において、第1の回転数設定処理(S1)における制御部50の制御フローを示す。
【0038】
図4に示すように、制御部50は、循環ポンプ5aおよび室内ユニットファン5cの運転を開始する(S101)。制御部50は、例えば情報取得部5fが取得したユーザによる運転開始の指示をトリガーとして、循環ポンプ5aおよび室内ユニットファン5cの運転を開始する。
【0039】
次いで、制御部50は、第1の熱媒温度センサ51dに熱媒の出口温度、第2の熱媒温度センサ52dに熱媒の入口温度、室内温度センサ5eに空調対象空間の室内温度をそれぞれ検出させる(S102)。これらセンサ51d,52d,5eは、検出データを制御部50に送信する。
【0040】
検出データが送信されると、制御部50は、出口温度条件を判定する(S103)。出口温度条件は、出口温度が目標出口温度以下であるか否かの判定条件である。目標出口温度は、出口温度の目標値として予め設定された温度であり、例えば制御部50の記憶装置に格納され、出口条件の判定時にパラメータとしてメモリに読み出される。出口温度条件の判定にあたって、制御部50は、現時点の出口温度の値(第1の熱媒温度センサ51dによる検出値)を目標出口温度の値と比較する。
【0041】
出口温度条件を満たさない場合、制御部50は、循環ポンプ5aの回転数を上限回転数に設定し、該回転数で循環ポンプ5aを運転させる(S104)。そして、制御部50は、S102以降の処理を再び実行する。
【0042】
これに対し、S103において出口温度条件を満たす場合、制御部50は、回転数条件を判定する(S105)。回転数条件は、循環ポンプ5aの回転数が下限回転数を超えているか否かの判定条件である。下限回転数は、循環ポンプ5aの運転時における回転数の最小値として予め設定された回転数であり、例えば制御部50の記憶装置に格納され、回転数条件の判定時にパラメータとしてメモリに読み出される。回転数条件の判定にあたって、制御部50は、現時点の循環ポンプ5aの回転数の値を下限回転数の値と比較する。循環ポンプ5aの回転数は、運転中、循環ポンプ5aの運転状態を示すデータとして循環ポンプ5aから制御部50へ逐次送信される。
【0043】
回転数条件を満たす場合、循環ポンプ5aの回転数が下限回転数を超えているため、制御部50は、循環ポンプ5aの回転数を低下させる(S106)。
これに対し、回転数条件を満たさない場合、循環ポンプ5aの回転数が下限回転数以下となっているため、制御部50は、循環ポンプ5aの回転数を低下させることなく、その回転数を維持させる。
【0044】
続いて、制御部50は、室内温度条件を判定する(S107)。室内温度条件は、空調対象空間の室内温度がサーモオフ温度以下であるか否かの判定条件である。サーモオフ温度は、室内ユニット5の運転を停止させる室内の温度であり、例えばユーザによって設定された室内温度である。サーモオフ温度は、例えば制御部50のメモリに保持され、室内温度条件の判定時にパラメータとして使用される。室内温度条件の判定にあたって、制御部50は、現時点の室内温度の値(室内温度センサ5eによる検出値)をサーモオフ温度の値と比較する。
【0045】
室内温度条件を満たす場合、制御部50は、循環ポンプ5aを停止させるための制御を行う(S108)。停止制御されると、循環ポンプ5aの回転数は、下限回転数から徐々に低下し、ゼロになる。
【0046】
制御部50は、空気調和機1が運転されている間、このような循環ポンプ5aの回転数の制御(第1の回転数設定処理)を繰り返す(S109)。これにより、循環ポンプ5aの回転数は、熱媒の出口温度に基づいて適宜上昇、低下、もしくは維持される。
そして、空気調和機1が運転停止されると、制御部50は、第1の回転数設定処理を終了する。
【0047】
図5には、熱媒の出口温度(室内側熱交換器5bの下流側における熱媒温度)に基づいて循環ポンプ5aの回転数を制御する第1の回転数設定処理のシーケンスの一例を示す。この例では、四つの室内ユニット5のうち、いずれか一つの室内ユニット5が冷房運転される場合におけるシーケンス例を示すが、これ以外の室内ユニット5についても同様のシーケンスを例示可能である。
図5(a)は、空調対象空間の室内温度(L51)、室内側熱交換器5bにおける熱媒の出口温度(L52)および入口温度(L53)の時間変化をそれぞれ示す図である。
図5(b)は、循環ポンプ5aの回転数の時間変化を示す図である。
図5(c)は、室内ユニットファン5cの回転数の時間変化を示す図である。
【0048】
図5(a)から(c)に示すように、時刻t0において開始制御がなされ、循環ポンプ5aおよび室内ユニットファン5cがそれぞれ運転を開始し、これに伴って室内温度が低下する。運転開始後は、室内温度がまだ高いため、熱媒の出口温度は、目標出口温度(Tt)よりもかなり高い。この時、熱媒の出口温度を目標出口温度とするため、循環ポンプ5aの回転数は、該出口温度を低下させるように上限回転数(Max)まで上昇する。室内ユニットファン5cは、回転数が所定値(R)まで上昇し、その回転数を維持しながら回転を続ける。
【0049】
本例において、目標出口温度(Tt)は、出口温度を低下させる際の目標値であり、一例として12℃である。かかる目標出口温度は、例えば室内側熱交換器5bにおける熱媒の入口温度と出口温度の差が5℃、冷却用中間熱交換器31bにおける熱媒の出口温度(冷却用中間熱交換器31bの下流側における熱媒温度)が7℃である場合の一例である。
【0050】
その後、循環ポンプ5aが上限回転数で運転を続けることで、空調対象空間が冷却され、室内温度と熱媒の入口温度(室内側熱交換器5bの上流側における熱媒温度)が近づき、冷却負荷が低下する。これに伴い、室内側熱交換器5bにおける熱媒と室内気との交換熱量が低下するため、熱媒の出口温度が徐々に低下し、時刻t1に目標出口温度となる。
【0051】
時刻t1は、室内ユニット5がサーモオフ状態であり、この時、循環ポンプ5aの回転数は上限回転数から低下し始め、徐々に下限回転数(Min)まで低下する。その間、空調対象空間に入熱がない、あるいは入熱が小さい場合、熱媒の出口温度は、目標出口温度よりもさらに低下し、時刻t2において室内ユニット5がサーモオフ状態となる。サーモオフ状態において、室内温度は、サーモオフ温度(To)となる。サーモオフ温度は、室内ユニット5の運転を停止させる室内の温度である。サーモオフ温度は、例えばユーザによって設定された室内温度であり、目標出口温度よりも若干高い任意の温度である。
【0052】
サーモオフ状態となっても、室内温度はしばらくの間サーモオフ温度に維持され、熱媒の出口温度と入口温度は徐々に上昇していく。循環ポンプ5aは、時刻t2に停止制御され、その後に停止する。一方、室内ユニットファン5cは、その間も一定の回転数で回転を続ける。
【0053】
このように熱媒の出口温度に基づいて循環ポンプ5aの回転数を制御することで、末端の室内ユニット5まで熱媒(一例として水)を適切に循環させることができる。室内ユニット5が個別に循環ポンプ5aを備えているため、かかる回転数制御を室内ユニット5ごとに行うことができ、室内ユニット5間で空調度合いに偏りが生じることを抑制できる。その際、熱媒の流路長さによる配管抵抗が低減されるため、循環ポンプ5aの省エネ性の向上を図ることが可能となる。
【0054】
また、本実施形態では、熱媒の流路切換弁4aを備えたバルブユニット4を熱交換ユニット3とは別体としてケーシングしている。このため、熱交換ユニット3とバルブユニット4とが一体にケーシングされたユニットに相当する従来の中継ユニットなどと比べて、ユニットの筐体サイズを抑制できる。加えて、従来のように中継ユニットではなく、室内ユニット5にそれぞれ循環ポンプ5aを配置しているため、ポンプの揚程も抑えることができる。
【0055】
本実施形態では、上限回転数と下限回転数を設定し、上限回転数(Max)と下限回転数(Min)の間の任意の回転数で循環ポンプ5aを運転しているが、これらの上限回転数および下限回転数は、設定しなくともよい。また、室内側熱交換器5bにおける熱媒流量を検出する手段(流量計など)を設け、熱媒流量に上限値および下限値を設定してもよい。これにより、熱媒の出口温度に加えてもしくは代えて、かかる熱媒流量に基づいて循環ポンプ5aの回転数を制御することが可能となる。
【0056】
なお、
図5には、室内ユニット5が冷房運転される場合におけるシーケンス例を示すが、暖房運転される場合、図示は省略するが一例として次のようなシーケンスとなる。時刻t0において開始制御がなされ、循環ポンプ5aおよび室内ユニットファン5cがそれぞれ運転を開始すると、これに伴って室内温度が上昇する。運転開始後は、室内温度がまだ低いため、熱媒の出口温度は、目標出口温度よりもかなり低い。この時、熱媒の出口温度を目標出口温度とするため、循環ポンプ5aの回転数は、該出口温度を高めるように上限回転数まで上昇する。室内ユニットファン5cは、回転数が所定値(R)まで上昇し、その回転数を維持しながら回転を続ける。
【0057】
その後、循環ポンプ5aが上限回転数で運転を続けることで、空調対象空間が暖房され、室内温度と熱媒の入口温度が近づき、暖房負荷が低下する。これに伴い、室内側熱交換器5bにおける熱媒と室内気との交換熱量が低下するため、熱媒の出口温度が徐々に上昇し、時刻t1に目標出口温度に達する。これにより、室内ユニット5はサーモオフ状態となる。その後、空調対象空間からの放熱がない、あるいは放熱が小さい場合、熱媒の出口温度は、目標出口温度よりもさらに上昇し、時刻t2において室内ユニット5がサーモオフ状態となる。サーモオフ状態となっても、室内温度はしばらくの間サーモオフ温度に維持され、熱媒の出口温度と入口温度は徐々に低下していく。循環ポンプ5aは、時刻t2に停止制御され、その後に停止する。一方、室内ユニットファン5cは、その間も一定の回転数で回転を続ける。
【0058】
ここで、熱交換ユニット3が室内ユニット5へ供給する熱媒の目標温度(送水目標温度)は、基本的に変化せずほぼ一定であると見做せる。このため、例えば室内ユニット5が冷房運転される場合、送水目標温度が7℃、熱媒の出口温度と入口温度の差が5℃の条件であれば、出口温度が12℃となるように、循環ポンプ5aの回転数を制御すればよい。また、室内ユニット5が暖房運転される場合、送水目標温度が45℃、熱媒の入口温度と出口温度の差が5℃の条件であれば、出口温度が40℃となるように、循環ポンプ5aの回転数を制御すればよい。
【0059】
送水目標温度を変化させる場合、熱交換ユニット3から室内ユニット5へ送水目標温度の値を送信する。例えば、熱媒の出口温度と入口温度の差が5℃の条件下では、熱媒の出口温度が送水目標温度+5℃となるように循環ポンプ5aの回転数を制御すればよい。
【0060】
図5に示すように、本実施形態では、熱媒の出口温度に基づいて循環ポンプ5aの回転数を制御したが、制御条件のパラメータは、出口温度に限定されない。例えば、熱媒の出口温度と入口温度の差(以下、熱媒温度差という)に基づいて循環ポンプ5aの回転数を制御してもよい。あるいは、空調対象空間の室内温度に基づいて循環ポンプ5aの回転数を制御してもよい。
以下、熱媒温度差に基づいて循環ポンプ5aの回転数を制御する実施形態を第2の実施形態、室内温度に基づいて循環ポンプ5aの回転数を制御する実施形態を第3の実施形態として、それぞれ説明する。なお、第2の実施形態および第3の実施形態に係る空気調和機の構成は、いずれも第1の実施形態(
図1から
図3)と同様である。
【0061】
[第2の実施形態]
熱媒温度差に基づいた循環ポンプ5aの回転数の制御(第2の回転数設定処理)の一例について、制御部50の制御フローに従って説明する。
図6には、室内ユニット5が冷房運転される場合において、第2の回転数設定処理(S2)における制御部50の制御フローを示す。
【0062】
図6に示すように、第2の回転数設定処理においては、S203のステップを除き、制御部50は、上述した第1の回転数設定処理(S01)と同様の制御を実行する。したがって、第1の回転数設定処理と同様の制御については、
図6中に同一のステップ番号を付して説明を省略する。
【0063】
第2の回転数設定処理において所定の検出データが送信されると、制御部50は、温度差条件を判定する(S203)。温度差条件は、熱媒温度差が目標温度差以内であるか否かの判定条件である。目標温度差は、熱媒温度差の目標値として予め設定された出口温度と入口温度の差(本例では、出口温度を低下させる際の入口温度との温度差の値)であり、例えば制御部50の記憶装置に格納され、温度差条件の判定時にパラメータとしてメモリに読み出される。温度差条件の判定にあたって、制御部50は、現時点の熱媒温度差の値(第1の熱媒温度センサ51dと第2の熱媒温度センサ52dによる検出値の差)を目標温度差の値と比較する。
【0064】
温度差条件を満たさない場合、制御部50は、循環ポンプ5aの回転数を上限回転数に設定し、該回転数で循環ポンプ5aを運転させる(S104)。そして、制御部50は、S102以降の処理を再び実行する。
【0065】
これに対し、S203において温度差条件を満たす場合、制御部50は、回転数条件を判定する(S105)。
以降は、S106からS109の各ステップを第1の回転数設定処理(S01)と同様に適宜実行する。
【0066】
図7には、熱媒温度差に基づいて循環ポンプ5aの回転数を制御する第2の回転数設定処理のシーケンスの一例を示す。
図7(a)は、空調対象空間の室内温度(L71)、室内側熱交換器5bにおける熱媒の出口温度(L72)および入口温度(L73)の時間変化をそれぞれ示す図である。
図7(b)は、循環ポンプ5aの回転数の時間変化を示す図である。
図7(c)は、室内ユニットファン5cの回転数の時間変化を示す図である。
【0067】
図7(a)から(c)に示すように、時刻t0において開始制御がなされ、循環ポンプ5aおよび室内ユニットファン5cがそれぞれ運転を開始し、これに伴って室内温度が低下する。運転開始後は、室内温度がまだ高いため、熱媒の出口温度は、目標温度差(Td)の範囲内よりもかなり高い。この時、熱媒温度差を目標温度差の範囲内とするため、循環ポンプ5aの回転数は、該出口温度を低下させるように上限回転数(Max)まで上昇する。室内ユニットファン5cは、回転数が所定値(R)まで上昇し、その回転数を維持しながら回転を続ける。
【0068】
本例において、目標温度差(Td)は、出口温度を低下させる際の入口温度との温度差の値であり、一例として5℃である。かかる目標温度差は、例えば室内側熱交換器5bにおける熱媒の入口温度と出口温度の設計上の差(設計温度差)が5℃、冷却用中間熱交換器31bにおける熱媒の出口温度が7℃である場合の一例である。
【0069】
その後、循環ポンプ5aが上限回転数で運転を続けることで、空調対象空間が冷却され、室内温度と熱媒の入口温度が近づき、冷却負荷が低下する。これに伴い、室内側熱交換器5bにおける熱媒と室内気との交換熱量が低下するため、熱媒の出口温度が徐々に低下し、時刻t1に目標温度差の範囲内となる。
【0070】
時刻t1は室内ユニット5がサーモオフ状態であり、この時、循環ポンプ5aの回転数は、上限回転数から低下し始め、徐々に下限回転数(Min)まで低下する。その間、空調対象空間に入熱がない、あるいは入熱が小さい場合、熱媒の出口温度は、目標温度差の範囲内でさらに低下し、時刻t2において室内ユニット5がサーモオフ状態となる。サーモオフ状態において、室内温度は、サーモオフ温度(To)となる。
【0071】
サーモオフ状態となっても、室内温度はしばらくの間サーモオフ温度に維持され、熱媒の出口温度と入口温度は徐々に上昇していく。循環ポンプ5aは、時刻t2に停止制御され、その後に停止する。一方、室内ユニットファン5cは、その間も一定の回転数で回転を続ける。
【0072】
このように熱媒温度差に基づいて循環ポンプ5aの回転数を制御する場合であっても、第1の実施形態と同様に、末端の室内ユニット5まで熱媒(一例として水)を適切に循環させることができる。室内ユニット5ごとに回転数制御ができ、熱媒の流路長さによる配管抵抗が低減されるため、循環ポンプ5aの省エネ性の向上が可能であることも、第1の実施形態と同様である。
【0073】
[第3の実施形態]
室内温度に基づいた循環ポンプ5aの回転数の制御(第3の回転数設定処理)の一例について、制御部50の制御フローに従って説明する。
図8には、室内ユニット5が冷房運転される場合において、第3の回転数設定処理(S3)における制御部50の制御フローを示す。
【0074】
図8に示すように、第3の回転数設定処理においては、S303のステップを除き、制御部50は、上述した第1の回転数設定処理(S01)と同様の制御を実行する。したがって、第1の回転数設定処理と同様の制御については、
図8中に同一のステップ番号を付して説明を省略する。なお、本実施形態のS102のステップでは、熱媒の出口温度および入口温度の検出は省略可能である。
【0075】
第3の回転数設定処理において所定の検出データが送信されると、制御部50は、室内温度条件を判定する(S303)。室内温度条件は、室内温度が目標室内温度以下であるか否かの判定条件である。目標室内温度は、室内温度の目標値として予め設定された室内温度であり、例えば制御部50の記憶装置に格納され、室内温度条件の判定時にパラメータとしてメモリに読み出される。室内温度条件の判定にあたって、制御部50は、現時点の室内温度の値(室内温度センサ5eによる検出値)を目標室内温度の値と比較する。
【0076】
室内温度条件を満たさない場合、制御部50は、循環ポンプ5aの回転数を上限回転数に設定し、該回転数で循環ポンプ5aを運転させる(S104)。そして、制御部50は、S102以降の処理を再び実行する。
【0077】
これに対し、S203において室内温度条件を満たす場合、制御部50は、回転数条件を判定する(S105)。
以降は、S106からS109の各ステップを第1の回転数設定処理(S01)と同様に適宜実行する。
【0078】
図9には、室内温度に基づいて循環ポンプ5aの回転数を制御する第3の回転数設定処理のシーケンスの一例を示す。
図9(a)は、空調対象空間の室内温度(L91)、室内側熱交換器5bにおける熱媒の出口温度(L92)および入口温度(L93)の時間変化をそれぞれ示す図である。
図9(b)は、循環ポンプ5aの回転数の時間変化を示す図である。
図9(c)は、室内ユニットファン5cの回転数の時間変化を示す図である。
【0079】
図9(a)から(c)に示すように、時刻t0において開始制御がなされ、循環ポンプ5aおよび室内ユニットファン5cがそれぞれ運転を開始し、これに伴って室内温度が低下する。ただし、室内温度は、運転開始後は目標室内温度(Ti)よりもかなり高い。この時、室内温度を目標室内温度とするため、循環ポンプ5aの回転数は、室内温度を低下させるように上限回転数(Max)まで上昇する。室内ユニットファン5cは、回転数が所定値(R)まで上昇し、その回転数を維持しながら回転を続ける。
【0080】
本例において、目標室内温度は、室内温度の目標として予め設定された温度(本例では、室内温度を低下させる際の目標値)であり、例えば情報取得部5fの操作パネルなどからユーザによって設定される。
【0081】
その後、循環ポンプ5aが上限回転数で運転を続けることで、空調対象空間が冷却され、室内温度と目標室内温度が近づき、冷却負荷が低下する。これに伴い、室内側熱交換器5bにおける熱媒と室内気との交換熱量が低下するため、熱媒の出口温度が徐々に低下し、時刻t1に目標出口温度(Tt)となる。
【0082】
時刻t1は室内ユニット5がサーモオフ状態であり、この時、循環ポンプ5aの回転数は、上限回転数から低下し始め、徐々に下限回転数(Min)まで低下する。その間、空調対象空間に入熱がない、あるいは入熱が小さい場合、室内温度は、目標室内温度よりもさらに低下し、時刻t2において室内ユニット5がサーモオフ状態となる。サーモオフ状態において、室内温度は、サーモオフ温度(To)となる。
【0083】
サーモオフ状態となっても、室内温度はしばらくの間サーモオフ温度に維持され、熱媒の出口温度と入口温度は徐々に上昇していく。循環ポンプ5aは、時刻t2に停止制御され、その後に停止する。一方、室内ユニットファン5cは、その間も一定の回転数で回転を続ける。
【0084】
このように室内温度に基づいて循環ポンプ5aの回転数を制御する場合であっても、第1の実施形態および第2の実施形態と同様に、末端の室内ユニット5まで熱媒(一例として水)を適切に循環させることができる。室内ユニット5ごとに回転数制御ができ、熱媒の流路長さによる配管抵抗が低減されるため、循環ポンプ5aの省エネ性の向上が可能であることも、第1の実施形態および第2の実施形態と同様である。
【0085】
以上、本発明の各実施形態を説明したが、かかる実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0086】
例えば、上述した各実施形態に係る空気調和機1においては、循環ポンプ5aを室内ユニット5の筐体51内に配置している。これに代えてもしくは加えて、室内ユニット5の外(筐体51外)に循環ポンプを配置してもよい。この場合、かかる循環ポンプは、室内ユニット5の近傍に配置すればよい。また、すべての循環ポンプが筐体51外に配置されていてもよいし、筐体51の内外に配置される循環ポンプが混在していてもよい。
【符号の説明】
【0087】
1…空気調和機、2…室外ユニット、3…熱交換ユニット、3b…中間熱交換器、4…バルブユニット、4a…流路切換弁、41a…往水弁、42a…還水弁、5…室内ユニット、5a…循環ポンプ、5b…室内側熱交換器、5d…温度センサ、5e…温度センサ(室内温度センサ)、5f…情報取得部、6…冷媒配管、6a…液管、6b…吸入ガス管、6c…吐出ガス管、7,8…熱媒配管、7a…冷却用熱媒供給管、7b…冷却用熱媒還流管、8a…加熱用熱媒供給管、8b…加熱用熱媒還流管、9…分配管、9a…往水管、9b…還水管、20,30,40,50…制御部、21,31,41,51…筐体、31b…冷却用中間熱交換器、32b…加熱用中間熱交換器、51d…第1の熱媒温度センサ、52d…第2の熱媒温度センサ。