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特許7360286鉄心製品の製造方法及び鉄心製品の製造装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-03
(45)【発行日】2023-10-12
(54)【発明の名称】鉄心製品の製造方法及び鉄心製品の製造装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 15/02 20060101AFI20231004BHJP
【FI】
H02K15/02 K
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019169735
(22)【出願日】2019-09-18
(65)【公開番号】P2021048695
(43)【公開日】2021-03-25
【審査請求日】2022-06-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000144038
【氏名又は名称】株式会社三井ハイテック
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【弁理士】
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(74)【代理人】
【識別番号】100153969
【弁理士】
【氏名又は名称】松澤 寿昭
(72)【発明者】
【氏名】生池 一樹
(72)【発明者】
【氏名】加藤 剛
【審査官】中島 亮
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/086676(WO,A1)
【文献】特開2000-069718(JP,A)
【文献】特開2014-138533(JP,A)
【文献】特開2018-098904(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 15/00-15/02
H02K 15/04-15/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂注入部が設けられた鉄心本体を樹脂注入装置に配置して、前記樹脂注入部に溶融樹脂を注入することと、
前記樹脂注入装置と後続の加工装置との間に延びる搬送路によって前記鉄心本体が搬送される過程で、前記鉄心本体を冷却することと、
前記搬送路を搬送中の前記鉄心本体の温度が所定の温度を下回ると共に、前記搬送路における前記鉄心本体の搬送速度が所定の速度を下回る場合に、前記鉄心本体を保温することとを含む、鉄心製品の製造方法。
【請求項2】
前記鉄心本体を保温することは、前記搬送路の上流側を搬送中の前記鉄心本体を少なくとも保温することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記鉄心本体を保温することは、被覆部材によって前記搬送路を少なくとも部分的に覆うことを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記鉄心本体を保温することは、前記搬送路の下流側を搬送中の前記鉄心本体の温度が前記所定の温度を下回る場合に、前記鉄心本体を保温することを含む、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記鉄心本体を保温することは、前記搬送路を搬送中の前記鉄心本体の温度が所定の温度を下回る場合に、前記鉄心本体の冷却を停止しつつ、前記鉄心本体を保温することを含む、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記搬送路を搬送中の前記鉄心本体の温度が所定の下限値を下回る場合に、当該鉄心本体を前記搬送路から除去して再加熱することをさらに含む、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
鉄心本体に設けられた樹脂注入部に溶融樹脂を注入するように構成された樹脂注入装置と、
前記樹脂注入装置の後続の加工装置と、
前記樹脂注入装置と前記加工装置との間に延びるように構成された搬送路と、
前記搬送路内を冷却するように構成された冷却部と、
前記搬送路を搬送中の前記鉄心本体を保温するように構成された保温部と、
前記搬送路を搬送中の前記鉄心本体の温度を測定するように構成された測定部と、
前記測定部によって測定された温度が所定の温度を下回ると共に、前記搬送路における前記鉄心本体の搬送速度が所定の速度を下回る場合に、前記保温部を動作させるように構成された制御部とを備える、鉄心製品の製造装置。
【請求項8】
前記保温部は、前記搬送路の上流側を搬送中の前記鉄心本体を少なくとも保温するように構成されている、請求項に記載の装置。
【請求項9】
前記保温部は、前記搬送路を少なくとも部分的に覆う被覆部材を含む、請求項7又は8に記載の装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記測定部によって測定された温度が前記所定の温度を下回る場合に、前記保温部を動作させるように構成されている、請求項7~9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記制御部は、前記測定部によって測定された温度が所定の温度を下回る場合に、前記冷却部を停止しつつ、前記保温部を動作させるように構成されている、請求項7~10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
前記鉄心本体を加熱するように構成された加熱部と、
前記鉄心本体を前記搬送路から前記加熱部に排出するように構成された排出部とをさらに備え、
前記制御部は、前記測定部によって測定された温度が所定の下限値を下回る場合に、前記排出部によって前記鉄心本体を前記搬送路から前記加熱部に排出させるように構成されている、請求項7~11のいずれか一項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、鉄心製品の製造方法及び鉄心製品の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、埋込磁石型(IPM:Interior Permanent Magnet)モータに用いられる回転子鉄心の製造方法を開示している。当該方法は、鉄心本体の磁石挿入孔に永久磁石を挿入することと、磁石挿入孔に溶融樹脂を注入することと、当該溶融樹脂を固化することとを含む。樹脂注入工程において、溶融樹脂を磁石挿入孔に満遍なく充填する目的で、鉄心本体が予熱される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2017/159348号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、鉄心本体の熱を後続の工程で効果的に利用することが可能な鉄心製品の製造方法及び鉄心製品の製造装置を説明する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
鉄心製品の製造方法の一例は、樹脂注入部が設けられた鉄心本体を樹脂注入装置に配置して、樹脂注入部に溶融樹脂を注入することと、樹脂注入装置と後続の加工装置との間に延びる搬送路によって鉄心本体が搬送される過程で、鉄心本体を冷却することと、搬送路を搬送中の鉄心本体の温度が所定の温度を下回ると共に、搬送路における鉄心本体の搬送速度が所定の速度を下回る場合に、鉄心本体を保温することとを含んでいてもよい。
【0006】
鉄心製品の製造装置の一例は、鉄心本体に設けられた樹脂注入部に溶融樹脂を注入するように構成された樹脂注入装置と、樹脂注入装置の後続の加工装置とを備えていてもよい。鉄心製品の製造装置の一例は、樹脂注入装置と加工装置との間に延びるように構成された搬送路と、搬送路内を冷却するように構成された冷却部とをさらに備えていてもよい。またさらに、鉄心製品の製造装置の一例は、搬送路を搬送中の鉄心本体を保温するように構成された保温部と、搬送路を搬送中の鉄心本体の温度を測定するように構成された測定部とを備えていてもよい。加えて、鉄心製品の製造装置の一例は、測定部によって測定された温度が所定の温度を下回ると共に、搬送路における鉄心本体の搬送速度が所定の速度を下回る場合に、保温部を動作させるように構成された制御部を備えていてもよい。
【発明の効果】
【0007】
本開示に係る鉄心製品の製造方法及び鉄心製品の製造装置によれば、鉄心本体の熱を後続の工程で効果的に利用することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、回転子の一例を示す分解斜視図である。
図2図2は、図1のII-II線断面図である。
図3図3は、回転子の製造装置の一例を示す概略図である。
図4図4は、樹脂注入装置の一例を概略的に示す断面図である。
図5図5は、溶接装置の一例を概略的に示す断面図である。
図6図6は、搬送装置の一例を概略的に示す側面図である。
図7図7は、図6の搬送装置を概略的に示す上面図である。
図8図8は、図6の搬送装置において被覆部材が搬送路を覆った状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本開示に係る実施形態の一例について、図面を参照しつつより詳細に説明する。以下の説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0010】
[回転子の構成]
まず、図1及び図2を参照して、回転子1(鉄心製品)の構成について説明する。回転子1(ロータ)は、固定子(ステータ)と組み合わせられることにより、電動機(モータ)を構成する。回転子1は、例えば、埋込磁石型(IPM)モータを構成してもよいし、他の種類のモータの一部を構成してもよい。回転子1は、回転子積層鉄心2と、一対の端面板3,4と、シャフト5とを含む。
【0011】
回転子積層鉄心2は、積層体10(鉄心本体)と、複数の永久磁石12と、複数の固化樹脂14とを備える。
【0012】
積層体10は、図1に示されるように、円筒状を呈している。積層体10の中央部には、中心軸Axに沿って延びるように積層体10を貫通する軸孔10aが設けられている。軸孔10aは、積層体10の高さ方向(上下方向)に延びている。積層体10は中心軸Ax周りに回転するので、中心軸Axは回転軸でもある。
【0013】
軸孔10aの内周面には、一対の突条10bが形成されている。突条10bは、積層体10の上端面S1から下端面S2に至るまで高さ方向に延びている。一対の突条10bは、中心軸Axを間において対向しており、軸孔10aの内周面から中心軸Axに向けて突出している。
【0014】
積層体10には、複数の磁石挿入孔16(樹脂注入部)が形成されている。磁石挿入孔16は、図1に示されるように、積層体10の外周縁に沿って所定間隔で並んでいる。磁石挿入孔16は、図2に示されるように、中心軸Axに沿って延びるように積層体10を貫通している。すなわち、磁石挿入孔16は高さ方向に延びている。
【0015】
積層体10は、複数の打抜部材Wが積み重ねられて構成されている。打抜部材Wは、後述する金属板MS(例えば、電磁鋼板)が所定形状に打ち抜かれた板状体であり、積層体10に対応する形状を呈している。積層体10は、いわゆる転積によって構成されていてもよい。「転積」とは、打抜部材W同士の角度を相対的にずらしつつ、複数の打抜部材Wを積層することをいう。転積は、主に打抜部材Wの板厚偏差を相殺して、積層体10の平面度、平行度及び直角度を高めることを目的に実施される。転積の角度は、任意の大きさに設定してもよい。
【0016】
積層方向において隣り合う打抜部材W同士は、図1及び図2に示されるように、カシメ部18によって締結されていてもよい。これらの打抜部材W同士は、カシメ部18に代えて、種々の公知の方法にて締結されてもよい。例えば、複数の打抜部材W同士は、接着剤又は樹脂材料を用いて互いに接合されてもよいし、溶接によって互いに接合されてもよい。あるいは、打抜部材Wに仮カシメを設け、仮カシメを介して複数の打抜部材Wを締結して積層体10を得た後、仮カシメを当該積層体から除去してもよい。なお、「仮カシメ」とは、複数の打抜部材Wを一時的に一体化させるのに使用され且つ回転子積層鉄心2を製造する過程において取り除かれるカシメを意味する。
【0017】
永久磁石12は、図1及び図2に示されるように、各磁石挿入孔16内に一つずつ挿入されている。永久磁石12の形状は、特に限定されないが、例えば直方体形状を呈していてもよい。永久磁石12の種類は、モータの用途、要求される性能などに応じて決定すればよく、例えば、焼結磁石であってもよいし、ボンド磁石であってもよい。
【0018】
固化樹脂14は、永久磁石12を収容する磁石挿入孔16内に充填された溶融状態の樹脂材料(溶融樹脂)が固化したものである。固化樹脂14は、永久磁石12を磁石挿入孔16内に固定するように構成されていてもよい。固化樹脂14は、高さ方向で隣り合う打抜部材W同士を接合するように構成されていてもよい。
【0019】
端面板3,4は、図1に示されるように、円環状を呈している。すなわち、端面板3,4の中央部にはそれぞれ、端面板3,4を貫通する軸孔3a,4aが設けられている。端面板3,4の外径は、例えば、積層体10の外径よりも小さく設定されていてもよいし、積層体10の外径と同程度に設定されていてもよい。
【0020】
軸孔3aの内周面には、一対の突起3bが形成されている。一対の突起3bは、中心軸Axを間において対向しており、軸孔3aの内周面から中心軸Axに向けて突出している。軸孔4aの内周面にも、軸孔3aと同様に、一対の突起4bが形成されている。上方(中心軸方向)から見たときに、突起3b,4bの大きさ及び形状は、突条10bの大きさ及び形状と略同一であってもよい。
【0021】
端面板3,4はそれぞれ、積層体10の上端面S1及び下端面S2に配置されており、積層体10と溶接により接合されている。例えば、端面板3は、図2に示されるように、端面板3及び積層体10を跨がるように設けられた溶接ビードB1を介して、積層体10の上端近傍に位置する一枚以上の打抜部材Wと接合されている。同様に、端面板4は、端面板4及び積層体10を跨がるように設けられた溶接ビードB2によって、積層体10の下端近傍に位置する一枚以上の打抜部材Wと接合されている。このように、回転子積層鉄心2と端面板3,4とは、溶接によって一体化されているので、一つの回転体6を構成している。
【0022】
シャフト5は、全体として円柱状を呈している。シャフト5には、一対の凹溝5aが形成されている。凹溝5aは、シャフト5の一端から他端にかけてシャフト5の延在方向に延びている。シャフト5は、軸孔3a,4a,10a内に挿通されている。このとき、凹溝5aには、突起3b,4b及び突条10bが係合する。これにより、シャフト5と回転子積層鉄心2との間で回転力が伝達する。
【0023】
[回転子の製造装置]
続いて、図3図5を参照して、回転子1の製造装置100について説明する。製造装置100は、帯状の金属板MSから回転子1を製造するように構成されている。製造装置100は、図3に示されるように、アンコイラー110と、送出装置120と、プレス加工装置130と、樹脂注入装置140と、溶接装置150(後続の加工装置)と、シャフト取付装置160(後続の加工装置)と、搬送装置200A~200Cと、コントローラCtr(制御部)とを備える。
【0024】
アンコイラー110は、コイル材111を回転自在に保持するように構成されている。コイル材111は、金属板MSがコイル状(渦巻状)に巻回されたものである。送出装置120は、金属板MSを上下から挟み込む一対のローラ121,122を含む。一対のローラ121,122は、コントローラCtrからの指示信号に基づいて回転及び停止し、金属板MSをプレス加工装置130に向けて間欠的に順次送り出す。
【0025】
プレス加工装置130は、コントローラCtrからの指示信号に基づいて動作する。プレス加工装置130は、送出装置120によって間欠的に送り出される金属板MSを順次打ち抜き加工して打抜部材Wを形成するように構成されている。プレス加工装置130は、打ち抜き加工によって得られた複数の打抜部材Wを順次積層して積層体10を形成するように構成されている。
【0026】
樹脂注入装置140は、コントローラCtrからの指示信号に基づいて動作する。樹脂注入装置140は、各磁石挿入孔16に永久磁石12をそれぞれ配置するように構成されている。樹脂注入装置140は、永久磁石12を収容する磁石挿入孔16内に溶融樹脂を充填するように構成されている。樹脂注入装置140は、図4に詳しく示されるように、下型141と、上型142と、複数のプランジャ143とを含む。
【0027】
下型141は、ベース部材141aと、ベース部材141aに設けられた挿通ポスト141bとを含む。ベース部材141aは、積層体10を載置可能に構成されている。挿通ポスト141bは、ベース部材141aの略中央部に位置しており、ベース部材141aの上面から上方に向けて突出している。挿通ポスト141bは、円柱形状を呈しており、積層体10の軸孔10aに対応する外形を有する。なお、下型141の内部に、後述する熱源142bと同様の熱源が配置されていてもよい。
【0028】
上型142は、下型141と共に積層体10を高さ方向において挟持可能に構成されている。上型142は、ベース部材142aと、熱源142bとを含む。
【0029】
ベース部材142aは、矩形状を呈する板状部材である。ベース部材142aには、一つの貫通孔142cと、複数の収容孔142dとが設けられている。貫通孔142cは、ベース部材142aの略中央部に位置している。貫通孔142cは、挿通ポスト141bに対応する形状(略円形状)を呈しており、挿通ポスト141bが挿通可能である。
【0030】
複数の収容孔142dは、ベース部材142aを貫通しており、貫通孔142cの周囲に沿って所定間隔で並んでいる。各収容孔142dは、下型141及び上型142が積層体10を挟持した際に、積層体10の磁石挿入孔16にそれぞれ対応する箇所に位置している。各収容孔142dは、円柱形状を呈しており、少なくとも一つの樹脂ペレットPを収容可能である。
【0031】
熱源142bは、例えば、ベース部材142aに内蔵されたヒータである。熱源142bが動作すると、ベース部材142aが加熱され、ベース部材142aに接触している積層体10が加熱されると共に、各収容孔142dに収容された樹脂ペレットPが加熱される。これにより、樹脂ペレットPが溶融して溶融樹脂に変化する。
【0032】
複数のプランジャ143は、上型142の上方に位置している。各プランジャ143は、図示しない駆動源によって、対応する収容孔142dに対して挿抜可能となるように構成されている。
【0033】
溶接装置150は、コントローラCtrからの指示信号に基づいて動作する。溶接装置150は、回転子積層鉄心2と端面板3,4とを溶接するように構成されている。溶接装置150は、図5に示されるように、保護板151,152と、溶接トーチ153,154とを含む。
【0034】
保護板151,152は、円板状を呈している。保護板151,152の外径は、端面板3,4及び積層体10の外径よりも大きく設定されていてもよいし、端面板3,4及び積層体10の外径と同程度に設定されていてもよい。
【0035】
保護板151は、回転子積層鉄心2及び端面板3の上方に配置される。保護板152は、回転子積層鉄心2及び端面板4の下方に配置される。保護板151,152は、回転子積層鉄心2及び端面板3,4を挟持可能に構成されている。
【0036】
保護板151,152にはそれぞれ、熱源151a,152aが内蔵されている。熱源151a,152aはそれぞれ、保護板151,152が端面板3,4と当接した状態で、端面板3,4を加熱するように構成されている。熱源151a,152aは、例えばヒータであってもよい。
【0037】
溶接トーチ153,154はそれぞれ、端面板3,4と回転子積層鉄心2(積層体10)とを溶接するように構成されている。溶接トーチ153,154は、例えば、レーザ溶接機であってもよい。溶接トーチ153は、保護板151から露出している端面板3及び回転子積層鉄心2(積層体10)の周縁部にその先端部分が向かうように配置されている。溶接トーチ154は、保護板152から露出している端面板4及び回転子積層鉄心2(積層体10)の周縁部にその先端部分が向かうように配置されている。
【0038】
シャフト取付装置160は、コントローラCtrからの指示信号に基づいて動作する。シャフト取付装置160は、回転子積層鉄心2と端面板3,4とが溶接により一体化された回転体6に対してシャフト5を取り付けるように構成されている。例えば、シャフト取付装置160は、回転子積層鉄心2及び端面板3,4を加熱しながら、軸孔3a,4a,10aに対してシャフト5を焼き嵌めするように構成されていてもよい。
【0039】
搬送装置200Aは、図3に示されるように、プレス加工装置130と樹脂注入装置140との間を延びるように配置されている。搬送装置200Aは、コントローラCtrからの指示に基づいて動作し、プレス加工装置130から排出される積層体10を樹脂注入装置140に搬送するように構成されている。搬送装置200Aは、各種のコンベア(例えば、ローラコンベア、ベルトコンベアなど)を含んでいてもよい。
【0040】
搬送装置200Bは、樹脂注入装置140と溶接装置150との間を延びるように配置されている。搬送装置200Bは、コントローラCtrからの指示に基づいて動作し、樹脂注入装置140から排出される回転子積層鉄心2を溶接装置150に搬送するように構成されている。搬送装置200Bの詳細については、後述する。
【0041】
搬送装置200Cは、溶接装置150とシャフト取付装置160との間を延びるように配置されている。搬送装置200Cは、コントローラCtrからの指示に基づいて動作し、溶接装置150から排出された回転体6をシャフト取付装置160に搬送するように構成されている。搬送装置200Cの構成は、搬送装置200Bと同様であってもよい。
【0042】
コントローラCtrは、例えば、記録媒体(図示せず)に記録されているプログラム又はオペレータからの操作入力等に基づいて、送出装置120、プレス加工装置130、樹脂注入装置140、溶接装置150及び搬送装置200A~200Cをそれぞれ動作させるための指示信号を生成するように構成されている。コントローラCtrは、これらの装置に当該指示信号をそれぞれ送信するように構成されている。
【0043】
[搬送装置200Bの詳細]
続いて、図6図8を参照して、搬送装置200Bの詳細について説明する。搬送装置200Bは、図6及び図7に示されるように、搬送路202と、コンベア204と、冷却機206(冷却部)と、温度センサ208(測定部)と、保温装置210(保温部)と、払出装置212(排出部)と、加熱装置214(加熱部)とを含む。
【0044】
搬送路202は、樹脂注入装置140の出口と溶接装置150の入口とを接続するように延びている。搬送路202は、例えば、底壁と、一対の側壁と、天壁とで囲まれた四角柱状の空間であってもよい。側壁は、空気が流通可能なようにメッシュ状を呈していてもよい。天壁のうち冷却機206が配置される部分も、空気が流通可能なようにメッシュ状を呈していてもよい。
【0045】
コンベア204は、搬送路202の底壁に設置されている。コンベア204は、コントローラCtrからの指示に基づいて動作し、載置された回転子積層鉄心2を樹脂注入装置140から溶接装置150へと搬送するように構成されている。コンベア204は、各種のコンベア(例えば、ローラコンベア、ベルトコンベアなど)であってもよい。
【0046】
冷却機206は、コントローラCtrからの指示に基づいて動作し、コンベア204によって搬送されている回転子積層鉄心2を冷却するように構成されている。冷却機206は、周囲の空気を回転子積層鉄心2に吹き付ける送風機であってもよいし、冷風を回転子積層鉄心2に吹き付ける冷風機であってもよい。
【0047】
冷却機206は、搬送路202に設置されている。冷却機206の設置箇所は、搬送路202の天壁部分であってもよいし、他の部分(例えば、底壁、側壁など)であってもよい。搬送路202に設置される冷却機206の数は、一つであってもよいし、複数であってもよい。複数の冷却機206は、搬送路202の長手方向において所定間隔で並ぶように配置されていてもよい。溶接装置150に到達する回転子積層鉄心2の温度が所定の温度(第1の閾値)を下回らないように、冷却機206の数、送風量、送風温度などが設定されていてもよい。
【0048】
温度センサ208は、コンベア204によって搬送されている回転子積層鉄心2の温度を測定し、測定した温度データをコントローラCtrに送信するように構成されている。温度センサ208は、接触式センサであってもよいし、非接触式センサであってもよい。
【0049】
温度センサ208は、搬送路202内に設置されている。温度センサ208の設置箇所は、搬送路202のうち下流側であってもよいし、他の位置(例えば、上流側、中央など)であってもよい。搬送路202に設置される温度センサ208の数は、一つであってもよいし、複数であってもよい。複数の温度センサ208は、搬送路202の長手方向において所定間隔で並ぶように配置されていてもよい。
【0050】
保温装置210は、搬送路202を搬送されている回転子積層鉄心2の温度を保温するように構成されている。保温装置210は、被覆部材216と、駆動機構218とを含む。
【0051】
被覆部材216は、搬送路202の少なくとも一部を覆うように構成されている。被覆部材216の設置箇所は、図6図8に示されるように搬送路202の側方であってもよいし、他の位置(例えば、搬送路202の上方、下方など)であってもよい。被覆部材216は、搬送路202の長手方向において、搬送路202の少なくとも上流側に設置されていてもよい。
【0052】
被覆部材216は、開口などが設けられていない板状体であってもよい。被覆部材216のうち搬送路202に対面する部分に断熱材が設けられていてもよい。搬送路202に設置される被覆部材216の数は、一つであってもよいし、複数であってもよい。複数の被覆部材216は、搬送路202の長手方向において所定間隔で並ぶように配置されていてもよく、互いに隙間なく隣接するように配置されていてもよい。
【0053】
駆動機構218は、コントローラCtrからの指示に基づいて動作し、被覆部材216が搬送路202を覆う被覆位置(図8参照)と、被覆部材216が搬送路202と重なり合わない退避位置(図6参照)との間で被覆部材216を駆動可能に構成されている。被覆部材216が被覆位置にある場合、搬送路202が少なくとも部分的に被覆部材216によって覆われるので、搬送路202内の空気が流動し難くなる。そのため、搬送路202内の温度低下が抑制される。一方、被覆部材216が退避位置にある場合、空気が搬送路202の内外を自由に流通できる。そのため、搬送路202内の温度低下が促進する。
【0054】
被覆部材216が搬送路202の側方に配置されている場合、駆動機構218は、被覆部材216を昇降させることで、被覆部材216を被覆位置と退避位置との間で駆動してもよい。保温装置210が複数の被覆部材216を含む場合、各被覆部材216にそれぞれ駆動機構218が接続されていてもよいし、一つの駆動機構218が2つ以上の被覆部材216を駆動してもよい。
【0055】
払出装置212は、図7に示されるように、コントローラCtrからの指示に基づいて動作し、コンベア204によって搬送されている回転子積層鉄心2を搬送路202から加熱装置214に押し出すように構成されている。払出装置212は、例えば、油圧アクチュエータ、空圧アクチュエータ、電動アクチュエータ、電磁ソレノイドなどであってもよい。
【0056】
加熱装置214は、払出装置212によって搬送路202から押し出された回転子積層鉄心2を加熱するように構成されている。加熱装置214は、過度に温度が低下した回転子積層鉄心2を、後続の装置(溶接装置150又はシャフト取付装置160)での加工に適した温度となるように再加熱するために用いられてもよい。
【0057】
[回転子の製造方法]
続いて、図3図8を参照して、回転子1の製造方法について説明する。まず、図3に示されるように、プレス加工装置130により金属板MSを順次打ち抜きつつ複数の打抜部材Wを積層して、積層体10を形成する。プレス加工装置130から排出された積層体10は、搬送装置200Aによって樹脂注入装置140に搬送される。
【0058】
次に、図4に示されるように、積層体10を下型141に載置する。次に、各磁石挿入孔16内に永久磁石12を挿入する。各磁石挿入孔16内への永久磁石12の挿入は、人手で行われてもよいし、コントローラCtrの指示に基づいて、樹脂注入装置140が備えるロボットハンド(図示せず)等により行われてもよい。
【0059】
次に、上型142を積層体10上に載置する。そのため、積層体10は、下型141及び上型142で積層方向から挟持された状態となる。次に、各収容孔142dに樹脂ペレットPを投入する。上型142の熱源142bにより樹脂ペレットPが溶融状態となると、溶融樹脂をプランジャ143によって各磁石挿入孔16内に注入する。その後、溶融樹脂が固化すると、磁石挿入孔16内に固化樹脂14が形成される。下型141及び上型142が積層体10から取り外されると、回転子積層鉄心2が完成する。
【0060】
コントローラCtrは、コンベア204に指示して、樹脂注入装置140から排出された積層体10を、溶接装置150に向けて搬送する。コントローラCtrは、冷却機206に指示して、コンベア204によって搬送されている回転子積層鉄心2に向けて送風する。これにより、溶接装置150に搬入される回転子積層鉄心2の温度が溶接に適した温度となる程度まで、回転子積層鉄心2が冷却される。
【0061】
この際、コントローラCtrは、温度センサ208から送信される回転子積層鉄心2の温度データと、所定の温度(第1の閾値)とを比較して、当該温度データが所定の温度を下回っているか否かを判断する。コントローラCtrは、当該温度データが所定の温度(第1の閾値)を下回っていないと判断した場合には、コンベア204による回転子積層鉄心2の溶接装置150への搬送を継続させる。
【0062】
一方、コントローラCtrは、当該温度データが所定の温度(第1の閾値)を下回っていると判断した場合には、冷却機206に指示して冷却機206の動作を停止させると共に、保温装置210に指示して駆動機構218により被覆部材216を被覆位置に移動させる。これにより、回転子積層鉄心2に向けた送風が停止し、且つ、搬送路202内における空気の流動が抑制される。そのため、回転子積層鉄心2が保有する熱が搬送路202内から逃げ難くなるので、回転子積層鉄心2を保温することができる。
【0063】
なお、当該温度データが所定の温度(第1の閾値)よりも低く設定された所定の下限値を下回っている場合、回転子積層鉄心2の温度が過度に低くなっている。そのため、保温装置210によって回転子積層鉄心2を保温したとしても、溶接の品質に影響が生ずる可能性が懸念される。そこで、コントローラCtrは、当該温度データが所定の下限値を下回っているか否かを判断してもよい。
【0064】
コントローラCtrは、当該温度データが所定の下限値を下回っていると判断した場合には、払出装置212に指示して回転子積層鉄心2を搬送路202から加熱装置214に搬送すると共に、加熱装置214に指示して回転子積層鉄心2を再加熱してもよい。その後、回転子積層鉄心2の温度が溶接に適した温度となる程度まで加熱装置214において回転子積層鉄心2が再加熱された場合には、コントローラCtrは、図示しない搬送装置等に指示して、回転子積層鉄心2を加熱装置214から溶接装置150に搬送させてもよい。
【0065】
次に、図5に示されるように、溶接装置150に搬送された回転子積層鉄心2の上端面S1及び下端面S2に端面板3,4をそれぞれ配置する。この状態で、熱源151a,152aによって所定温度まで加熱された保護板151,152が、回転子積層鉄心2及び端面板3,4を挟持する。これにより、端面板3,4が溶接に適した温度となるまで加熱される。一方、回転子積層鉄心2の温度は、保温装置210によって、溶接に適した所定の温度以上に維持されている。
【0066】
次に、コントローラCtrが溶接トーチ153,154に指示して、端面板3,4と回転子積層鉄心2(積層体10)とを溶接する。これにより、端面板3,4が回転子積層鉄心2に接合された回転体6が形成される。溶接装置150から排出された回転体6は、搬送装置200Cによってシャフト取付装置160に向けて搬送される。コントローラCtrは、上記の搬送装置200Bと同様に、搬送装置200Cを制御してもよい。
【0067】
次に、シャフト取付装置160が回転体6にシャフト5を取り付ける。シャフト5は、例えば、回転体6に対して焼き嵌めされてもよい。こうして、回転子1が完成する。
【0068】
[作用]
以上の例によれば、回転子1の生産が継続している場合には、樹脂注入装置140から後続の溶接装置150又はシャフト取付装置160に至るまでの間に、回転子積層鉄心2は、溶接又はシャフト5の取り付けに適した温度となるまで、適宜冷却される。一方、回転子1の生産が中断されるなどの場合には、回転子積層鉄心2の冷却が停止され、さらに回転子積層鉄心2が保温される。そのため、回転子1の生産が再開した場合に、回転子積層鉄心2が過度に冷却されてしまうことが極めて抑制される。したがって、回転子積層鉄心2の熱を後続の工程で効果的に利用することが可能となる。
【0069】
以上の例において、回転子積層鉄心2は、少なくとも搬送路202の上流側を搬送中に、保温装置210によって保温されうる。この場合、樹脂注入装置140から排出された直後の回転子積層鉄心2の温度が急激に低下することが抑制される。そのため、回転子積層鉄心2の温度管理を容易に行うことが可能となる。
【0070】
以上の例において、被覆部材216によって搬送路202が少なくとも部分的に覆われることにより、回転子積層鉄心2の保温が行われうる。この場合、回転子積層鉄心2の保温を簡易且つ容易に実施することが可能となる。
【0071】
以上の例において、コントローラCtrは、搬送路202の下流側に配置された温度センサ208からの温度データを用いて、搬送路202の下流側を搬送中の回転子積層鉄心2の温度が所定の温度を下回る場合に、保温装置210の駆動を行いうる。この場合、下流側に位置し、温度低下が進行している回転子積層鉄心2の温度を基準に、保温の開始が判断される。そのため、保温の開始をより正確に判断することが可能となる。
【0072】
以上の例において、コントローラCtrは、温度センサ208からの温度データを用いて、搬送路202を搬送中の回転子積層鉄心2の温度が所定の温度を下回る場合に、冷却機206の停止及び保温装置210の駆動を行いうる。この場合、回転子積層鉄心2の生産開始時などにおいて、回転子積層鉄心2が過度に冷却されてしまうことが極めて抑制される。そのため、回転子積層鉄心2の熱を後続の工程でより効果的に利用することが可能となる。
【0073】
以上の例において、コントローラCtrは、搬送路202の下流側を搬送中の回転子積層鉄心2の温度が所定の下限値を下回る場合に、払出装置212によって回転子積層鉄心2を加熱装置214に押し出すと共に、加熱装置214によって回転子積層鉄心2を再加熱しうる。この場合、搬送路202の搬送中に過度に冷却された回転子積層鉄心2は、後続の溶接装置150又はシャフト取付装置160には送られず、再加熱される。そのため、溶接装置150又はシャフト取付装置160には再加熱を要しない回転子積層鉄心2のみが搬送されるので、回転子1の生産時間の短縮化が図られる。また、再加熱を要する回転子積層鉄心2は、再加熱後に溶接装置150又はシャフト取付装置160において処理されるので、回転子積層鉄心2を無駄なく利用できる。その結果、回転子1の生産性を高めることが可能となる。
【0074】
[変形例]
本明細書における開示はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。特許請求の範囲及びその要旨を逸脱しない範囲において、以上の例に対して種々の省略、置換、変更などが行われてもよい。
【0075】
(1)回転子積層鉄心2の温度が所定の温度(第1の閾値)を下回る場合、搬送路202に対する被覆部材216の着脱が人手で行われてもよい。
【0076】
(2)コントローラCtrは、コンベア204による回転子積層鉄心2の搬送速度を検知して、その速度データと、所定の速度(第2の閾値)とを比較して、当該速度データが所定の速度を下回っているか否かを判断してもよい。コントローラCtrは、当該速度データが所定の速度(第2の閾値)を下回っていると判断した場合には、冷却機206に指示して冷却機206の動作を停止させると共に、保温装置210に指示して駆動機構218により被覆部材216を被覆位置に移動させてもよい。この場合、搬送路202における回転子積層鉄心2の搬送速度が相対的に遅くなったとしても、回転子積層鉄心2の冷却が停止され、さらに回転子積層鉄心2が保温されているので、回転子積層鉄心2が過度に冷却されてしまうことが抑制される。したがって、回転子積層鉄心2の熱を後続の工程でより効果的に利用することが可能となる。
【0077】
(3)コントローラCtrは、装置100が停止した場合、すなわち回転子積層鉄心2の搬送速度が0になった場合、温度センサ208からの温度データに関わらず保温装置210に指示して、駆動機構218により被覆部材216を被覆位置に移動させてもよい。
【0078】
(4)コントローラCtrは、回転子積層鉄心2の温度、搬送速度、外気温などに応じて、被覆部材216による搬送路202の被覆面積を増減させるように、駆動機構218を制御してもよい。
【0079】
(5)コントローラCtrは、温度センサ208からの温度データが所定の温度(第1の閾値)を下回っていると判断した場合に、冷却機206の動作を停止させることなく、保温装置210に指示して駆動機構218により被覆部材216を被覆位置に移動させてもよい。この場合、搬送路202が被覆部材216によって覆われるので、冷却機206が動作していても、冷却機206からの送風が搬送路202の外部に排出され難い。そのため、冷却機206による回転子積層鉄心2の冷却能力が弱まるので、回転子積層鉄心2を保温することができる。装置100が複数の冷却機206を含む場合には、複数の冷却機206の冷却機206のうち一部を動作させ、残部を停止させてもよい。
【0080】
(6)回転子積層鉄心2を保温することは、搬送路202に設置された加熱装置(ヒータ、温風機等)によって回転子積層鉄心2を加熱することを含んでいてもよい。
【0081】
(7)シャフト5を積層体10に取り付けた後に、磁石挿入孔16内に永久磁石12を樹脂封止してもよい。あるいは、シャフト5を回転子積層鉄心2に取り付けた後に、回転子積層鉄心2に端面板3,4を溶接してもよい。
【0082】
(8)溶接処理の際に、溶接トーチ153,154を上下方向に移動させながら、積層体10の外周面を積層方向に複数箇所溶接してもよい。
【0083】
(9)溶接装置150は、一つの溶接トートを含んでいてもよい。この場合、例えば、当該溶接トーチは、端面板3と積層体10とをまず溶接した後、高さ方向に移動して(降下して)、端面板4と積層体10とを溶接してもよい。あるいはこの場合、例えば、端面板3と積層体10とをまず溶接した後、接合された端面板3と共に回転子積層鉄心2を反転させて溶接装置150にセットし直し、端面板4と積層体10とを溶接してもよい。
【0084】
(10)積層体10の少なくとも一方の端面に端面板が配置されていてもよい。あるいは、回転子1は、端面板を含んでいなくてもよい。この場合、例えば、複数の打抜部材Wを接合するように、積層体10に対して溶接が行われてもよい。具体的には、全ての打抜部材Wを接合するように、積層体10の上端から下端にわたって高さ方向に延びる溶接ビードが積層体10の周面に形成されてもよい。あるいは、積層体10の上端部及び/又は下端部における数枚の打抜部材Wを接合するように、溶接ビードが積層体10の周面に形成されていてもよい。これらの場合、上端部及び/又は下端部における打抜部材Wがめくれてしまうことが抑制できる。後者の場合には特に、上端部及び/又は下端部の一部に溶接ビードが形成されるので、溶接による回転子1の磁気特性の低下を抑制できる。
【0085】
(11)複数の永久磁石12が一つの磁石挿入孔16内に挿入されていてもよい。この場合、複数の永久磁石12は、一つの磁石挿入孔16内において高さ方向に沿って隣り合うように並んでいてもよいし、一つの磁石挿入孔16内において高さ方向と交差する方向に沿って並んでいてもよい。
【0086】
(12)積層体10以外によって鉄心本体が構成されていてもよい。例えば、鉄心本体は、例えば、強磁性体粉末が圧縮成形されたものであってもよいし、強磁性体粉末を含有する樹脂材料が射出成形されたものであってもよい。
【0087】
(13)回転子1以外の鉄心製品(例えば、固定子積層鉄心)に本技術を適用してもよい。具体的には、固定子積層鉄心と巻線との間を絶縁するための樹脂膜を固定子積層鉄心のスロットの内周面(樹脂柱入部)に設ける際に、本技術を適用してもよい。固定子積層鉄心としては、複数の鉄心片が組み合わされてなる分割型の固定子積層鉄心であってもよいし、非分割型の固定子積層鉄心であってもよい。これらの積層鉄心において、高さ方向に貫通する貫通孔(樹脂柱入部)内に溶融樹脂を充填することで複数の打抜部材を接合する際に、本技術を適用してもよい。
【0088】
[他の例]
例1.鉄心製品(2)の製造方法の一例は、樹脂注入部(16)が設けられた鉄心本体(10)を樹脂注入装置(140)に配置して、樹脂注入部(16)に溶融樹脂を注入することと、樹脂注入装置(140)と後続の加工装置(150,160)との間に延びる搬送路(200B)によって鉄心本体(10)が搬送される過程で、鉄心本体(10)を冷却することと、搬送路(202)を搬送中の鉄心本体(10)の温度が所定の温度を下回る場合に、鉄心本体(10)を保温することとを含んでいてもよい。鉄心製品の生産が継続している場合には、樹脂注入装置から後続の加工装置に至るまでの間に、鉄心本体は、加工装置での加工に適した温度となるまで、適宜冷却される。一方、鉄心製品の生産が中断されるなどの場合には、鉄心本体が保温される。そのため、鉄心製品の生産が再開した場合に、鉄心本体が過度に冷却されてしまうことが抑制される。したがって、鉄心本体の熱を後続の工程で効果的に利用することが可能となる。
【0089】
例2.例1の方法において、鉄心本体(10)を保温することは、搬送路(202)を搬送中の鉄心本体(10)の温度が所定の温度を下回ると共に、搬送路(202)における鉄心本体(10)の搬送速度が所定の速度を下回る場合に、鉄心本体(10)を保温することを含んでいてもよい。この場合、搬送路における鉄心本体の搬送速度が相対的に遅くなったとしても、鉄心本体が保温されているので、鉄心本体が過度に冷却されてしまうことが抑制される。したがって、鉄心本体の熱を後続の工程でさらに効果的に利用することが可能となる。
【0090】
例3.例1又は例2の方法において、鉄心本体(10)を保温することは、搬送路(202)の上流側を搬送中の鉄心本体(10)を少なくとも保温することを含んでいてもよい。この場合、樹脂注入装置から排出された直後の鉄心本体の温度が急激に低下することが抑制される。そのため、鉄心本体の温度管理を容易に行うことが可能となる。
【0091】
例4.例1~例3のいずれかの方法において、鉄心本体(10)を保温することは、被覆部材(216)によって搬送路(201)を少なくとも部分的に覆うことを含んでいてもよい。この場合、鉄心本体の保温を簡易且つ容易に実施することが可能となる。
【0092】
例5.例1~例4のいずれかの方法において、鉄心本体(10)を保温することは、搬送路(202)の下流側を搬送中の鉄心本体(10)の温度が所定の温度を下回る場合に、鉄心本体(10)を保温することを含んでいてもよい。この場合、下流側に位置し、温度低下が進行している鉄心本体の温度を基準に、保温の開始が判断される。そのため、保温の開始をより正確に判断することが可能となる。
【0093】
例6.例1~例5のいずれかの方法において、鉄心本体(10)を保温することは、搬送路(202)を搬送中の鉄心本体(10)の温度が所定の温度を下回る場合に、鉄心本体(10)の冷却を停止しつつ、鉄心本体(10)を保温することを含んでいてもよい。この場合、鉄心製品の生産が中断されるなどの場合には、鉄心本体の冷却が停止され、さらに鉄心本体が保温される。そのため、鉄心製品の生産が再開した場合に、鉄心本体が過度に冷却されてしまうことが極めて抑制される。したがって、鉄心本体の熱を後続の工程でより効果的に利用することが可能となる。
【0094】
例7.例1~例6のいずれかの方法は、搬送路(202)を搬送中の鉄心本体(10)の温度が所定の下限値を下回る場合に、当該鉄心本体(10)を搬送路(202)から除去して再加熱することをさらに含んでいてもよい。この場合、搬送路の搬送中に過度に冷却された鉄心本体は、後続の加工装置には送られず、再加熱される。そのため、加工装置には再加熱を要しない鉄心本体のみが搬送されるので、鉄心製品の生産時間の短縮化が図られる。また、再加熱を要する鉄心本体は、再加熱後に加工装置において処理されるので、鉄心本体を無駄なく利用できる。その結果、鉄心製品の生産性を高めることが可能となる。
【0095】
例8.鉄心製品(1)の製造装置(100)の一例は、鉄心本体(10)に設けられた樹脂注入部(16)に溶融樹脂を注入するように構成された樹脂注入装置(140)と、樹脂注入装置(140)の後続の加工装置(150,160)とを備えていてもよい。鉄心製品(1)の製造装置(100)の一例は、樹脂注入装置(140)と加工装置(150,160)との間に延びるように構成された搬送路(202)と、搬送路(202)内を冷却するように構成された冷却部(206)とをさらに備えていてもよい。またさらに、鉄心製品(1)の製造装置(100)の一例は、搬送路(202)を搬送中の鉄心本体(10)を保温するように構成された保温部(210)と、搬送路(202)を搬送中の鉄心本体(10)の温度を測定するように構成された測定部(208)とを備えていてもよい。加えて、鉄心製品(1)の製造装置(100)の一例は、測定部(208)によって測定された温度が所定の温度を下回る場合に、保温部(210)を動作させるように構成された制御部(Ctr)を備えていてもよい。この場合、例1の方法と同様の作用効果が得られる。
【0096】
例9.例8の装置(100)において、制御部(Ctr)は、測定部(208)によって測定された温度が所定の温度を下回ると共に、搬送路(202)における鉄心本体(10)の搬送速度が所定の速度を下回る場合に、保温部(210)を動作させるように構成されていてもよい。この場合、例2の方法と同様の作用効果が得られる。
【0097】
例10.例8又は例9の装置(100)において、保温部(210)は、搬送路(202)の上流側を搬送中の鉄心本体(10)を少なくとも保温するように構成されていてもよい。この場合、例3の方法と同様の作用効果が得られる。
【0098】
例11.例8~例10の装置(100)において、保温部(210)は、搬送路(202)を少なくとも部分的に覆う被覆部材(216)を含んでいてもよい。この場合、例4の方法と同様の作用効果が得られる。
【0099】
例12.例8~例11のいずれかの装置(100)において、制御部(Ctr)は、測定部(208)によって測定された温度が所定の温度を下回る場合に、保温部(210)を動作させるように構成されていてもよい。この場合、例5の方法と同様の作用効果が得られる。
【0100】
例13.例8~例12のいずれかの装置(100)において、制御部(Ctr)は、測定部(208)によって測定された温度が所定の温度を下回る場合に、冷却部(206)を停止しつつ、保温部(210)を動作させるように構成されていてもよい。この場合、例6の方法と同様の作用効果が得られる。
【0101】
例14.例8~例13のいずれかの装置(100)は、鉄心本体(10)を加熱するように構成された加熱部(214)と、鉄心本体(10)を搬送路(202)から加熱部(214)に排出するように構成された排出部(212)とをさらに備えていてもよい。制御部(Ctr)は、測定部(208)によって測定された温度が所定の下限値を下回る場合に、排出部(212)によって鉄心本体(10)を搬送路(202)から加熱部(214)に排出させるように構成されていてもよい。この場合、例7の方法と同様の作用効果が得られる。
【符号の説明】
【0102】
1…回転子(鉄心製品)、2…回転子積層鉄心、10…積層体(鉄心本体)、16…磁石挿入孔(樹脂注入部)、100…製造装置、140…樹脂注入装置、150…溶接装置(後続の加工装置)、160…シャフト取付装置(後続の加工装置)、200A~200C…搬送装置、202…搬送路、204…コンベア、206…冷却機(冷却部)、208…温度センサ(測定部)、210…保温装置(保温部)、212…払出装置(排出部)、214…加熱装置(加熱部)、216…被覆部材、218…駆動機構、Ctr…コントローラ(制御部)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8