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特許7360294シリカを含む外殻の内側に空洞を有する粒子とその製造方法、該粒子を含む塗布液、及び該粒子を含む透明被膜付基材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-03
(45)【発行日】2023-10-12
(54)【発明の名称】シリカを含む外殻の内側に空洞を有する粒子とその製造方法、該粒子を含む塗布液、及び該粒子を含む透明被膜付基材
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/141 20060101AFI20231004BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20231004BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20231004BHJP
   C09D 7/62 20180101ALI20231004BHJP
【FI】
C01B33/141
C09D201/00
C09D7/61
C09D7/62
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019180756
(22)【出願日】2019-09-30
(65)【公開番号】P2021054685
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2022-07-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000190024
【氏名又は名称】日揮触媒化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】二神 渉
(72)【発明者】
【氏名】熊澤 光章
(72)【発明者】
【氏名】村口 良
【審査官】廣野 知子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/050263(WO,A1)
【文献】特開2018-123043(JP,A)
【文献】特開2013-014506(JP,A)
【文献】特開2013-121911(JP,A)
【文献】特開2011-042527(JP,A)
【文献】特開2016-041643(JP,A)
【文献】特開2012-136363(JP,A)
【文献】特開2010-083744(JP,A)
【文献】特開2008-247664(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/00-33/193
C09D 1/00-10/00
G02B 1/10-1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリカを含む外殻の内側に空洞を有する粒子であって、
前記粒子の平均粒子径(D)が20~250nm、
前記空洞の径が前記粒子の径の0.6~0.85倍、
前記粒子のN吸着法による細孔容積が1.0cm/g未満、
前記粒子の屈折率(n)が1.08~1.34、
前記粒子の炭素含有量が3.0質量%以下、
下記式で求められる前記外殻の屈折率(n)が1.38~1.47、
前記粒子の 29 Si-NMRスペクトル法における化学シフト-78~-88ppmに現れるピークの面積(Q )と、化学シフト-88~-98ppmに現れるピークの面積(Q )と、化学シフト-98~-108ppmに現れるピークの面積(Q )と、化学シフト-108~-117ppmに現れるピークの面積(Q )において、比(Q /(Q +Q +Q +Q ))が実質0、比(Q /(Q +Q +Q +Q ))が実質0、比(Q /Q )が0.01~0.7であることを特徴とする粒子。
【数1】
【請求項2】
前記粒子の炭素含有量が0.02~3.0質量%であることを特徴とする請求項1に記載の粒子。
【請求項3】
前記粒子のアルカリ金属に属する元素の各々の含有量が、前記元素を酸化物で表した時、SiOに対して、1ppm以下であることを特徴とする請求項1に記載の粒子。
【請求項4】
前記粒子のFe、Ti、Zn、Pd、Ag、Mn、Co、Mo、Sn、Al、Zrの各々の含有量が0.1ppm未満、Cu、Ni、Crの各々の含有量が1ppb未満、U、Thの各々の含有量が0.3ppb未満であることを特徴とする請求項1に記載の粒子。
【請求項5】
請求項1に記載の粒子と、マトリックス形成成分と、有機溶媒と、を含む透明被膜形成用の塗布液。
【請求項6】
請求項1に記載の粒子と、マトリックスとを含む透明被膜が、基材上に形成された透明被膜付基材。
【請求項7】
珪素を含む化合物の溶液と、アルカリ可溶の前記珪素以外の無機元素の化合物の水溶液とを、前記珪素の酸化物をSiOと表し、前記無機元素の酸化物をMOxと表した時、モル比(MOx/SiO)が0.01~2となるように、アルカリ水溶液中に同時に添加して、複合酸化物粒子aの分散液を調製する第一工程と、
次に、前記第一工程のモル比よりも小さいモル比(MOx/SiO)で、珪素を含む化合物の溶液と、アルカリ可溶の前記珪素以外の無機元素の化合物の水溶液とを添加して、複合酸化物粒子bの分散液を調製する第二工程と、
次に、複合酸化物粒子bの分散液に酸を加えて、前記複合酸化物粒子bを構成する珪素以外の元素の少なくとも一部を除去して、シリカ系粒子の分散液を調製する第三工程と、
前記シリカ系粒子の分散液を、昇温速度0.3~3.0℃/min.で200~800℃まで加温した後、0.04~2.0℃/min.の速度で降温し、100℃未満にする第四工程と、
を含むシリカを含む外殻の内側に空洞を有する粒子の製造方法。
【請求項8】
前記加温及び前記降温する処理を複数回繰り返すことを特徴とする請求項7に記載の粒子の製造方法。
【請求項9】
前記第三工程と前記第四工程の間に、前記シリカ系粒子の分散液に、下記式(2)で表される有機珪素化合物とその部分加水分解物の少なくとも一方を添加する工程を含むことを特徴とする請求項7に記載の粒子の製造方法。
-SiX4-n (2)
(式中、Rは炭素数1~10の非置換又は置換炭化水素基で、互いに同一であっても異なっていてもよい。置換基としては、エポキシ基、アルコキシ基、(メタ)アクリロイロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子、アミノ基、フェニルアミノ基が挙げられる。Xは炭素数1~4のアルコキシ基、水酸基、ハロゲン原子、水素原子であり、nは0~3の整数を示す)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリカを含む外殻の内側に空洞を有する粒子、該粒子の製造方法に関する。また、該粒子を含む透明被膜形成用塗布液及び該粒子を含む透明被膜付基材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガラス、プラスチック等で形成されたシートやレンズ等の基材表面の反射を防止するために、その表面に反射防止膜が形成されている。例えば、コート法、蒸着法、CVD法等によって、フッ素樹脂、フッ化マグネシウムのような低屈折率な物質の被膜をガラスやプラスチックの基材表面に形成することが行われている。しかしながら、これらの方法は、コスト的に高価である。これに対して、屈折率が1.36~1.44である、シリカとシリカ以外の無機酸化物とからなる複合酸化物コロイド粒子を含む塗布液を基材表面に塗布して、反射防止被膜を形成する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、多孔性の中空粒子の製造方法が知られている(例えば、特許文献2参照)。この方法により得られる中空粒子は、屈折率が低く、この中空粒子を用いて形成された透明被膜は、屈折率が低く反射防止性能に優れている。
【0004】
さらに、中空粒子を含む透明被膜を表示装置の前面に設けると、反射防止性能に優れ表示性能が向上することが知られている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平7-133105号公報
【文献】特開2001-233611号公報
【文献】特開2002-079616号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、内部に空洞を有するシリカ系粒子を反射防止膜に使用すると、得られる膜の硬度や強度(耐擦傷性)が低下するおそれがある。また、粒子の低屈折率化を図るために、粒子の中空化を過剰に行うと、粒子自身が脆くなり、この粒子を使用する透明被膜の硬度、強度(耐擦傷性)も不十分となる。
【0007】
このように、粒子の硬度及び強度が不十分であると、透明被膜の屈折率、硬度、強度の少なくとも一つが不十分となる課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような課題を解決するため、以下のようなシリカを含む外殻と、その内側に空洞を有する粒子を透明被膜形成用塗布液に用いることとした。この粒子の平均粒子径(D)は20~250nm、空洞の径は粒子径の0.5~0.9倍、N吸着法による細孔容積は1.0cm/g未満、下記式(1)で求められる外殻の屈折率(n)は1.38以上、屈折率(n)は1.08~1.34、炭素含有量は3.0質量%以下である。
【0009】
【数1】
【0010】
この粒子は、シリカを含む緻密な外殻の内側に空洞を有するため、十分な硬度と強度、及び低い屈折率を有する。このような粒子を含む塗布液によれば、高い硬度(鉛筆硬度)と高い強度(耐擦傷性)とを有する透明被膜付基材が得られる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の粒子によれば、反射率が低く、基材との密着性に優れ、高い硬度と強度とを有する透明被膜を作製可能な塗布液が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の粒子の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係る粒子は、シリカを含む外殻と、その外殻の内側に空洞を有する粒子である。(以下、この本発明に係る粒子を単に粒子ということがある。)この粒子の断面を図1に模式的に示す。
【0014】
粒子の平均粒子径Dは、20~250nmである。平均粒子径がこの範囲にあると、粒子が安定して存在できる。また、塗布液中や被膜中でも分散性が良く、被膜の高い透明性と硬度及び強度が得られる。平均粒子径は、30~150nmが好ましく、30~120nmがより好ましい。
【0015】
外殻の内側の空洞の径は、粒子の径(外径)の0.5~0.9倍の長さである。空洞の径がこの範囲にあると、外殻の構造が安定して維持できるので、粒子として安定して存在できる。また、被膜の高い透明性と硬度及び強度が得られる。ここで、0.5倍未満であると外殻の厚みが厚すぎて十分な被膜の透明性が得られないおそれがある。0.9倍よりも大きいと外殻が薄くて粒子構造が維持できないおそれがある。空洞の径は、粒子の径の0.55~0.9倍が好ましく、0.6~0.85倍がより好ましい。
【0016】
粒子のN吸着法による細孔容積は、1.0cm/g未満である。細孔容積がこの範囲にあると、外殻の構造が緻密である。1.0cm/gよりも大きいと、外殻の構造は疎(多孔質)であり、外殻の硬度や強度が弱いために、外殻の構造が維持できないおそれや、十分な被膜の硬度や強度が得られないおそれがある。細孔容積は、0.8cm/g未満が好ましく、0.5cm/g未満がより好ましく、0.0cm/gが最も好ましい。
【0017】
粒子の屈折率nは、1.08~1.34である。屈折率がこの範囲にあると、透明な被膜が得られる。屈折率は、1.08~1.32が好ましく、1.08~1.30がより好ましい。
【0018】
外殻の屈折率nは、1.38以上である。屈折率nが1.38以上であると、外殻は緻密である。屈折率nの上限は、特に設定されないが、例えば1.47である。屈折率nは、式(1)に示すように、粒子の径の平均値D、外殻の内側の空洞の径の平均値D、粒子の屈折率n、及び空洞の屈折率nから求められる。空洞の屈折率nは、空洞内部の状態によって異なる。例えば、空洞内部が気体であると、屈折率は1.00となる。また、空洞内部が液体であれば、その液体の屈折率となる。
【0019】
屈折率nがこの範囲にあると、透明で、十分な硬度や強度を有する被膜が得られる。屈折率nが1.38よりも小さいと、被膜の硬度が不十分になるおそれがある。屈折率nは、1.40以上が好ましく、1.42以上がより好ましい。
【0020】
粒子の炭素含有量は、3.0質量%以下である。粒子に含有される炭素は、有機珪素化合物、金属塩、還元剤、pH調整剤、洗浄液、溶媒等の有機化合物に由来する。これには、粒子の製造のために、意図的に添加されたものの他、原料等に不可避的に存在するものも含まれる。有機化合物が含まれていると外殻の硬度や強度が弱いため、被膜にした場合、透明性が低下したり分散性が低下したりして、十分な硬度や強度の透明被膜が得られないおそれがある。このような有機物に由来する炭素含有量は、後述のように、C(カーボン)量を分析することで求めることができる。炭素含有量は、1.0質量%以下が好ましく、0.1質量%以下がより好ましく、0.05質量%以下が更に好ましい。
【0021】
粒子の29Si-NMRスペクトル法における化学シフト-78~-88ppmに現れるピークの面積Qと、化学シフト-88~-98ppmに現れるピークの面積Qと、化学シフト-98~-108ppmに現れるピークの面積Qと、化学シフト-108~-117ppmに現れるピークの面積Qにおいて、比(Q/ΣQ)が実質0、比(Q/ΣQ)が実質0、比(Q/Q)が0.01~0.7であることが好ましい。ここで、ΣQ=Q+Q+Q+Qである。
【0022】
このQに帰属するピークはSi原子に1つの(-OSi)基と3つの(-OH)基が結合したもの、Qに帰属するピークはSi原子に2つの(-OSi)基と2つの(-OH)基が結合したもの、Qに帰属するピークはSi原子に3つの(-OSi)基と1つの(-OH)基が結合したもの、Qに帰属するピークはSi原子に4つの(-OSi)基が結合したものである。
【0023】
ここで、比(Q/ΣQ)及び比(Q/ΣQ)が実質0とは、測定における検出限界やノイズ等によって不可避的に検出されるピークはあり得るが、例えそれらを考慮したとしても「0」と判断されることを意味する。具体的には、上式で求められる比は、両者とも0.0001以下である。比(Q/ΣQ)及び比(Q/ΣQ)が実質0で、比(Q/Q)が0.01~0.7であると、粒子が緻密で、十分な硬度や強度の透明被膜が得られる。比(Q/ΣQ)や(Q/ΣQ)が0.0001よりも大きいと、Si-O-Siの結合の割合が少ないため、被膜の硬度や強度が不十分になるおそれがある。
【0024】
比(Q/Q)が0.01よりも小さいものは、得ることが難しい。比(Q/Q)が0.7よりも大きいと、Si-O-Siの結合の割合が少ないため、被膜の硬度が不十分になるおそれがある。比(Q/Q)は、0.02~0.5がより好ましく、0.03~0.2が更に好ましい。
【0025】
粒子の不純分であるアルカリ金属に属する元素の各々の含有量は、前記元素を酸化物で表した時、SiOに対して、1ppm以下であることが好ましい。含有量が、この範囲にあると、粒子の合着が少なくなるため、粒子が塗布液中や被膜中で均一に分散され、透明な被膜が得られるので好ましい。また、塗布液の性能においても安定性が高くなり、被膜の性能においても膜硬度の上昇や、透明性が高くなるため、好ましい。ここで、含有量が1ppmよりも多いと、粒子の合着が増え、十分な膜の硬度が得られなかったり、透明性が不十分になったりするおそれがある。含有量は、0.1ppm以下がより好ましい。ここで、アルカリ金属とは、Li、Na、K、Rb、Cs、Frを表す。
【0026】
また、粒子の不純分であるFe、Ti、Zn、Pd、Ag、Mn、Co、Mo、Sn、Al、Zrの各々の含有量は0.1ppm未満、Cu、Ni、Crの各々の含有量は1ppb未満、U、Thの各々の含有量は0.3ppb未満であることが好ましい。これら不純分の含有量がこの範囲であれば、透明な被膜が得られるので好ましい。これら不純分の含有量が多くなると分散液が着色し、透明な被膜が得られない恐れがある。また、高純度が要求される高集積なロジックやメモリー等の半導体回路や光センサー等に使用する場合は、金属元素が回路の絶縁不良を起こしたり、回路を短絡させたり、光透過率が低下する。これによって、絶縁膜の誘電率低下や、金属配線のインピーダンスの増大、応答速度の遅れ、消費電力の増大等が起こるおそれがある。特に、U、Thの場合は、放射能を発生するため、微量でも存在した場合、放射能による半導体の誤作動を引き起こすため好ましくない。
【0027】
このような不純分の含有量が少ない粒子を得るには、粒子を調製する際の装置の材質をこれらの元素を含まず、かつ耐薬品性が高いものにすることが好ましい。具体的には、テフロン(登録商標)、FRP、カーボンファイバー等のプラスチック、無アルカリガラス等が好ましい。また、使用する原料については、蒸留・イオン交換・フィルター除去で精製することが好ましい。
【0028】
高純度な粒子を得る方法としては、上述のように、予め不純分の少ない原料を準備したり、粒子調製用の装置からの混入を抑えたりする方法がある。これ以外にも、そのような対策を十分にとらずに調製された粒子から不純分を低減することが可能である。
【0029】
粒子の形状や空洞の形状は、特に限定されない。例えば、球状、楕円体(ラグビーボール)状、繭状、金平糖状、鎖状、サイコロ状などが挙げられる。ここで、透明被膜中に均一に分散できるため、粒子形状は、球状が好ましい。空洞の形状は、粒子形状に沿った形状が好ましい。外殻の厚みにもよるが、粒子に対して応力が加わった場合に、外殻が均一な厚みを有することにより、十分な硬度や強度を得ることができる。更には、空洞も球状粒子の形状と相似の球状であることが好ましい。
【0030】
また、屈折率を低下させ透明な被膜を得るには実質的に一つの空洞であることが好ましい。ここで、「実質的に一つの空洞である」とは、粒子の中には、粒子の合着等によって「外殻の内側に複数個の空洞が存在する粒子」は含まれ得るが、「外殻の内側の空洞が一つである粒子の割合」が90%以上であることを意味する。「外殻の内側の空洞が一つである粒子の個数割合」は、95%以上が好ましく、98%以上がより好ましく、99%以上が更に好ましく、100%が最も好ましい。
【0031】
粒子は、珪素分をシリカとして90質量%以上含有することが好ましい。この範囲にあればマトリックス形成成分との相溶性が向上する。このため、透明被膜中に粒子が高分散し、被膜の強度や硬度が向上する。この珪素分の含有量は、シリカとして95質量%以上がより好ましく、98質量%以上が更に好ましく、100質量%が特に好ましい。
【0032】
[粒子の製造方法]
本発明による製造方法は、珪素を含む化合物の溶液と、アルカリ可溶の珪素以外の無機元素の化合物の水溶液とを、珪素の酸化物をSiOと表し、珪素以外の無機元素の酸化物をMOxと表した時、モル比(MOx/SiO)が0.01~2となるように、アルカリ水溶液中に同時に添加して、複合酸化物粒子aの分散液を調製する第一工程と、前記工程のモル比よりも小さいモル比(MOx/SiO)で、珪素を含む化合物の溶液と、アルカリ可溶の珪素以外の無機元素の化合物の水溶液とを添加して、複合酸化物粒子bの分散液を調製する第二工程と、複合酸化物粒子bの分散液に酸を加えて、複合酸化物粒子bを構成する珪素以外の元素の少なくとも一部を除去して、シリカ系粒子の分散液を調製する第三工程と、シリカ系粒子の分散液を、昇温速度0.3~3.0℃/min.で200~800℃まで加温した後、0.04~2.0℃/min.の速度で降温させ、100℃以下にする第四工程とを含んでいる。必要に応じてシリカ系粒子を洗浄してもよい。
【0033】
以下に、各工程について詳細に説明する。
【0034】
[第一工程]
第一工程により、平均粒子径が10~225nmの複合酸化物粒子aの分散液を調製する。珪素を含む化合物は、珪酸塩、酸性珪酸液、有機珪素化合物から選ばれる少なくとも一つである。
【0035】
珪酸塩としては、アルカリ金属珪酸塩、アンモニウム珪酸塩および有機塩基の珪酸塩から選ばれる1 種または2種以上の珪酸塩が好ましい。アルカリ金属珪酸塩としては、例えば、珪酸ナトリウム(水ガラス)や珪酸カリウムが挙げられる。有機塩基としては、例えば、テトラエチルアンモニウム塩などの第4 級アンモニウム塩、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアミン類が挙げられる。アンモニウムの珪酸塩または有機塩基の珪酸塩には、珪酸液にアンモニア、第4級アンモニウム水酸化物、アミン化合物などを添加したアルカリ性溶液も含まれる。
【0036】
酸性珪酸液としては、珪酸アルカリ水溶液を陽イオン交換樹脂で処理すること等によって、アルカリを除去して得られる珪酸液を用いることができ、特に、pH2~pH4でSiO濃度が約7質量% 以下の酸性珪酸液が好ましい。
【0037】
有機珪素化合物としては、下記式(2)の有機珪素化合物が好ましい。
【0038】
-SiX4-n・・・(2)
但し、式中、Rは炭素数1~10の非置換又は置換炭化水素基で、互いに同一であっても異なっていてもよい。置換基としては、エポキシ基、アルコキシ基、(メタ)アクリロイロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子、アミノ基、フェニルアミノ基が挙げられる。Xは炭素数1~4のアルコキシ基、水酸基、ハロゲン原子、水素原子であり、nは0~3の整数を示す。
【0039】
ところで、式(2)の有機珪素化合物において、nが1~3の化合物は親水性に乏しいので、予め加水分解して反応系に均一に混合できるようにすることが好ましい。加水分解には、周知の方法を採用できる。加水分解触媒として、アルカリ金属の水酸化物、アンモニア水、アミン等の塩基性のものを用いた場合、加水分解後にこれらの塩基性触媒を除去して、酸性溶液にして用いることもできる。また、有機酸や無機酸などの酸性触媒を用いて加水分解物を調製した場合、加水分解後にイオン交換等によって酸性触媒を除去することが好ましい。なお、得られた有機珪素化合物の加水分解物は、水溶液の形態で使用することが望ましい。ここで水溶液とは加水分解物がゲルとして白濁した状態になく透明性を有している状態を意味する。
【0040】
有機珪素化合物としては、具体的に、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(βメトキシエトキシ)シラン、3,3,3-トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、メチル-3,3,3-トリフルオロプロピルジメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシトリプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、トリメチルシラノール、メチルトリクロロシラン、メチルジクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、ビニルトリクロルシラン、トリメチルブロモシラン、ジエチルシラン等が挙げられる。
【0041】
珪素以外の無機元素の酸化物(MOx)としては、Al、B、TiO、ZrO、SnO、CeO、P、Sb、MoO、ZnO、WO等の1種または2種以上が挙げられる。また、これら珪素以外の無機元素の複合酸化物として、TiO-Al、TiO-ZrO等が挙げられる。
【0042】
このような無機酸化物の原料としては、アルカリ可溶の無機化合物が好ましい。例えば、珪素以外の無機元素の酸化物を構成する金属または非金属のオキソ酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、第4級アンモニウム塩を挙げられる。具体的には、アルミン酸ナトリウム、四硼酸ナトリウム、炭酸ジルコニルアンモニウム、アンチモン酸カリウム、錫酸カリウム、アルミノ珪酸ナトリウム、モリブデン酸ナトリウム、硝酸セリウムアンモニウム、燐酸ナトリウム等が好適である。
【0043】
複合酸化物粒子aの分散液を調製するためには、予め、珪素以外の無機元素の化合物のアルカリ水溶液を個別に調製するか、または、混合水溶液を調製しておき、この水溶液を目的とする珪素酸化物(SiO)と珪素以外の無機元素の酸化物(MOx)の複合割合に応じて、アルカリ水溶液中に、攪拌しながら徐々に添加する。このアルカリ水溶液は、pH10以上に調整されていることが好ましい。添加は連続であっても断続的であってもよいが、両者を同時に添加することが好ましい。
【0044】
アルカリ水溶液中に添加する、珪素を含む化合物と、珪素以外の無機元素の化合物の添加割合は、モル比(MOx/SiO)を0.01~2とする。モル比がこの範囲にあれば、複合酸化物粒子の構造は主として、珪素と珪素以外の元素が酸素を介在して交互に結合した構造となる。即ち、珪素原子の4つの結合手に酸素原子が結合し、この酸素原子に珪素以外の元素M が結合した構造が多く生成する。これによって、後述する第三工程で珪素以外の元素M を除去する際に、複合酸化物粒子の形状を破壊することなく、元素M に随伴させて珪素原子も珪酸モノマーやオリゴマーとして除去できる。ここで、モル比が0.01未満であると最終的に得られる粒子の空洞容積が十分大きくならない。モル比が2よりも大きいと、第三工程で珪素以外の元素を除去する際に、複合酸化物粒子が破壊され、外殻の内側に空洞を有する粒子が得られない。モル比は、0.1~1.5とすることが好ましい。また、このモル比を漸次小さくなるように変更しながら添加することもできる。添加後の複合酸化物粒子の平均粒子径(Da)は、概ね10~225nmになるように調製することが好ましい(以下、この時の複合酸化物粒子を一次粒子ということがある)。
【0045】
ところで、このモル比が上述の範囲にあっても、一次粒子の平均粒子径が10nm未満の場合は、最終的に得られる粒子の外殻が厚くなり、粒子の空洞容積が十分大きくならない。また、一次粒子の平均粒子径が225nmを越えると、後述する第三工程で珪素以外の元素M の除去が不十分となり、粒子の空洞容積が十分大きくならず、低屈折率の粒子を得ることが困難になる。
【0046】
本発明の製造方法では、複合酸化物粒子aの分散液を調製する際に、種粒子を含む分散液を出発原料とすることも可能である。この場合には、種粒子として、SiO、Al、TiO、ZrO、SnO、CeO等の1種または2種以上の粒子が挙げられる。また、複合酸化物として、SiO-Al、TiO-Al、TiO-ZrO、SiO-TiO、SiO-TiO-Al等の粒子が挙げられる。種粒子を含む分散液は、通常、これらのゾルを用いることができる。このような種粒子は、公知の方法によって調製できる。例えば、上記無機酸化物に対応する金属塩、金属塩の混合物あるいは金属アルコキシド等に、酸またはアルカリを添加して加水分解し、必要に応じて熟成することによって得ることができる。
【0047】
この種粒子分散アルカリ水溶液中に、上述の珪素を含む化合物の溶液と、アルカリ可溶の珪素以外の無機元素の化合物の水溶液とを、上記したアルカリ水溶液中に添加する方法と同様にして、添加する。この時、種粒子分散アルカリ水溶液のpHは、10以上に調整されていることが好ましい。
【0048】
このように、種粒子をシードとして複合酸化物粒子を成長させると、成長粒子の粒径コントロールが容易であり、粒度の揃ったものを得ることができる。種粒子分散液中に添加する珪素を含む化合物の溶液と、アルカリ可溶の前記珪素以外の無機元素の化合物の水溶液の添加割合は、上述のアルカリ水溶液に添加する場合と同じ範囲とする。ただし、添加液のモル比(MOx/SiO)は、種粒子の分を差し引いて計算する。
【0049】
珪素を含む化合物及び珪素以外の無機元素の化合物は、アルカリ側で高い溶解度をもつ。しかしながら、この溶解度の高いpH領域で両者を混合すると、珪酸イオンおよびアルミン酸イオンなどのオキソ酸イオンの溶解度が低下し、これらの複合物が析出してコロイド粒子に成長し、あるいは、種粒子上に析出して粒子成長が起こる。
【0050】
[第二工程]
次に、第一工程のモル比よりも小さいモル比(MOx/SiO)で、珪素を含む化合物の溶液と、アルカリ可溶の珪素以外の無機元素の化合物の水溶液とを添加して、複合酸化物粒子bの分散液を調製する。これによって、複合酸化物粒子a(一次粒子)を成長させる。添加後の複合酸化物粒子bの平均粒子径Dbは、20~250nmになるように調製することが好ましい。
【0051】
第二工程で使用する珪素を含む化合物と、アルカリ可溶の珪素以外の無機元素の化合物は、第一工程で例示したものから選ばれる。これらの化合物は、第一工程で使用したものと同じ種類でも構わないし、第一工程で例示した別の種類でも構わない。
【0052】
第一工程におけるモル比(MOx/SiO)をA、第二工程におけるモル比(MOx/SiO)をBとすると、比B/Aを1未満とすることが好ましい。比B/Aが1 未満であれば、複合酸化物粒子の表層がシリカに富み、殻の形成が容易となる。その結果、後述する第三工程で珪素以外の元素を除去しても複合酸化物粒子の形状が破壊されることはなく、シリカを含む外殻の内側に空洞を有する粒子を安定的に得ることができる。比B/Aが1以上であると、シリカ成分の多い殻の生成ができないため、第三工程で珪素以外の元素を除去する際に複合酸化物粒子が破壊されて粒子形状が維持できない。このため、シリカを含む外殻の内側に空洞を有する粒子が得られないおそれがある。比B/A は、0.8以下とすることがより好ましく、0.7以下とすることが更に好ましい。
【0053】
複合酸化物粒子a(一次粒子)の平均粒子径Daと、これを粒子成長させた複合酸化物粒子bの平均粒子径Dbの比(Da/Db)は、0.5~0.9にあることが好ましい。比(Da/Db)が0.5未満の場合は、第三工程で珪素以外の元素の除去が不十分となり、得られた粒子の空洞容積が十分大きくならず、低屈折率の粒子を得ることが困難となるおそれがある。また、比(Da/Db)が0.9よりも大きいと粒子径によっては( 具体的には、平均粒子径(Db)が20nm未満の複合酸化物粒子)、シリカを含む外殻の内側に空洞を有する粒子が得られないおそれがある。比(Da/Db)は、0.6~0.88がより好ましく、0.7~0.85が更に好ましい。
【0054】
第二工程において、平均粒子径Daが、概ね10~225nmの複合酸化物粒子aの分散液に、電解質塩を添加しても良い。
【0055】
ここで、電解質塩としては、具体的に、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硝酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、塩化マグネシウム、硝酸マグネシウム等の水溶性の電解質塩が挙げられる。
【0056】
電荷質塩を添加することによって、第三工程で珪素以外の元素を除去する際に外殻が形成されやすくなる。このような効果が得られるメカニズムについては明らかではないが、粒子成長した複合酸化物粒子の表面にシリカが多くなり、酸に不溶性のシリカが複合酸化物粒子の保護膜的な作用をしているものと考えている。
【0057】
電解質塩の添加量は、電解質塩のモル数をM,第二工程で使用する珪素を含む化合物をSiOと表した時のモル数をMとした時、比(M/M)が0.1~10であることが好ましい。比(M/M)が0.1未満だと、電解質塩を添加した効果は十分に見出せない。比(M/M)が10よりも大きくしても電解質塩を添加する効果が向上することはなく、これが緩衝材となるためか、第二工程での粒子成長が損なわれたり、第三工程での珪素以外の元素の除去に時間を要したりして、経済性が低下するおそれがある。比(M/M)は、0.2~8がより好ましい。なお、電解質塩は、第二工程の開始時に全量を添加しても良いし、珪素を含む化合物の溶液と、アルカリ可溶の珪素以外の無機元素の化合物の水溶液とを添加している際に、連続的にあるいは断続的に添加しても良い。
【0058】
[第三工程]
第三工程では、複合酸化物粒子bの分散液に酸を加えて、複合酸化物粒子bを構成する珪素以外の元素の少なくとも一部を除去して、シリカ系粒子の分散液を調製する。元素の除去は、例えば、鉱酸や有機酸を使用して溶解除去したり、陽イオン交換樹脂と接触させてイオン交換除去したり、あるいは、これらの方法を組合せることによって除去する。
【0059】
複合酸化物粒子bの分散液の濃度は、処理温度によっても異なるが、複合酸化物粒子bを酸化物に換算して0.1~50質量%が好ましい。ここで、濃度が0.1質量%未満だと、シリカの溶解量が多くなるため、複合酸化物粒子の形状を維持できないおそれがある。また、低濃度のために処理効率が低くなる。濃度が50質量%よりも高いと、粒子の分散性が不十分となり、特に、珪素以外の元素の含有量が多い複合酸化物粒子では、均一に、あるいは効率的に、珪素以外の元素を除去できないおそれがある。複合酸化物粒子bの分散液の濃度は、0.5~25質量%がより好ましい。
【0060】
上記元素の除去は、得られるシリカ系粒子のモル比(MOx/SiO)が、0.2以下となるまで行うことが好ましい。モル比(MOx/SiO)が0.2よりも大きいと、最終的に得られる「シリカを含む外殻の内側に空洞を有する粒子」の屈折率や、粒子の硬度及び強度が不十分となるおそれがある。モル比(MOx/SiO)は、0.1以下がより好ましい。
【0061】
本工程では、第二工程と同様に電解質塩を添加しても構わない。その添加量も、第二工程と同様に、比(M/M)として0.1~10が好ましい。なお、電解質塩は、第三工程の開始時に全量を添加しても良いし、珪素以外の元素の少なくとも一部を除去する際に、連続的にあるいは断続的に添加しても良い。ただし、第三工程での添加量は、第二工程で電解質塩を添加した場合、それを除去しない限り、第二工程と第三工程の合計量が、上記の範囲内となるように添加する。比(M/M)は、0.2~8がより好ましい。
【0062】
[第四工程]
第四工程では、シリカ系粒子を必要に応じて洗浄し、昇温速度を0.3~3.0℃/min.で200~800℃まで加温した後、0.04~2.0℃/min.の速度で降温し、少なくとも100℃未満にする。
【0063】
珪素以外の元素の少なくとも一部を除去したシリカ系粒子の分散液は、必要に応じて限外濾過等の公知の洗浄方法により洗浄することができる。洗浄によって溶解した珪素以外の元素の少なくとも一部を除去する。この場合、予め分散液中のアルカリ金属イオン等の一部を除去した後に限外濾過すれば、分散安定性の高いシリカ系粒子の分散液が得られる。
【0064】
また、元素を除去した分散液は、陽イオン交換樹脂と陰イオン交換樹脂の少なくとも一方と接触させることによっても、溶解した珪素以外の元素の一部あるいはアルカリ金属イオン等を除去することができる。また、洗浄する際、加温して行うと効果的に洗浄することができる。
【0065】
このように洗浄することによって、シリカ系粒子を加熱処理して得られる「シリカを含む外殻の内側に空洞を有する粒子」中の不純分であるアルカリ金属等の含有量を効果的に低減することができる。これらの含有量は、上述の「シリカを含む外殻の内側に空洞を有する粒子」の不純分の含有量に準じる。例えば、洗浄されたシリカ系粒子中のアルカリ金属に属する元素は、酸化物で表した時、SiOに対して各々500ppm以下である。
【0066】
もし、シリカ系粒子中の不純分の各々の含有量が、上述の粒子の不純分の範囲内であれば、本工程での洗浄は特に必要としない。
【0067】
このように、アルカリ金属等の含有量が少ないシリカ系粒子の分散液を、昇温速度を0.3~3.0℃/min.で200~800℃まで加温する。加温後は、0.04~2.0℃/min.の速度で降温し、少なくとも100℃未満にする。
【0068】
本発明は、シリカ系粒子の分散液を加温することで、シリカ系粒子に熱遊離性の珪素分を析出させ、これを降温することでシリカ系粒子に沈着させて固定化することで、「シリカを含む外殻の内側に空洞を有する粒子」を作製する。
【0069】
このようなシリカを含む外殻は、緻密であるために、内部が屈折率の低い気相あるいは液相に保たれる。このため、粒子自身も緻密で低屈折率な粒子となる。
【0070】
ここで、昇温速度が0.3℃/min.未満であると、目標とする温度まで昇温する時間がかかりすぎて生産効率が悪い。昇温速度が3.0℃/min.よりも速いと、粒子中の珪素分の溶解が急激に起こり、粒子の緻密化が図れないおそれがある。昇温速度は、0.5~2.5℃/min.が好ましく、0.8~2.2℃/min.がより好ましい。
【0071】
次に、加温した温度が200℃未満だと、粒子中の珪素分の析出が不十分となるおそれがある。温度が800℃を超えても、それ以上の粒子中の析出の向上は得られないし、製造コストがかかるおそれがある。目標とする温度まで加温した後は、降温しても構わないが、安定的に生産するために、その温度を30分間以上保持することが好ましい。加温は、360~750℃が好ましく、400~750℃がより好ましい。
【0072】
次に、降温速度が0.04℃/min未満であると、製造コストがかかるおそれがある。降温速度が2.0℃/min.よりも速いと、珪素分のシリカ系粒子への沈着は進むものの、粒子の緻密化が図れないおそれがある。降温速度は、0.08~1.8℃/min.が好ましく、0.12~1.5℃/min.がより好ましい。
【0073】
降温した温度は、100℃未満であればよい。取り扱いを容易にするために、常温まで温度を下げても構わない。ただし、後述のように、再び昇温する場合は、温度を下げすぎると、降温や昇温に時間がかかったり、余計なエネルギーを要したりするおそれがある。100℃を下回れば、上述の降温速度の範囲にとらわれず、例えば、降温速度を上げて、降温しても構わない。
【0074】
上述の昇温及び降温の操作は、複数回繰り返すことが好ましい。この操作を繰り返すことによって、珪素分の溶解・沈着も繰り返し行われるため、より緻密で低屈折率な「シリカを含む外殻の内側に空洞を有する粒子」が得られる。操作を繰り返す際の条件は、毎回同じでも構わないし、昇温速度や温度を変更しても良い。
【0075】
このようにして得られる「シリカを含む外殻の内側に空洞を有する粒子」を用いて得られる被膜形成用塗料は、安定性、塗膜性等が向上する。また、このような粒子を被膜等に使用する場合、屈折率の高い物質、例えば、マトリックス形成成分等が、粒子外殻の内側には進入できない。このため、屈折率が低く透明な被膜が得られる。更に、この被膜は、基材との密着性に優れ、高い硬度と強度を有する。
【0076】
本発明では、第三工程の後、シリカ系粒子の分散液に不純分の含有量が少ないシリカゾルや珪酸液あるいは有機珪素化合物といったシリカ源を添加することが好ましい。これを第四工程の水熱処理の前に行うことにより、シリカを含む外殻は、より緻密化されて、低屈折率で高い硬度と強度を有する「シリカを含む外殻の内側に空洞を有する粒子」が得られる。
【0077】
このシリカ源の添加は、第四工程での珪素分の溶解・沈着をより積極的に行うためのものである。このため、シリカ源としては微細なものが好ましい。例えば、シリカ源としてシリカゾルを使用する場合、その平均粒子径は、シリカ系粒子の平均粒子径にもよるが、概ね30nm未満であることが好ましい。また、使用するシリカ源が、有機珪素化合物の場合、上述の第一工程の式(2)に示す有機珪素化合物を用いることができる。式(2)において、nが0の有機珪素化合物を用いる場合は、有機珪素化合物の部分加水分解物を用いることが好ましい。シリカ源は、単独で使用しても組み合わせて使用してもよい。
【0078】
シリカ源の量は、シリカ系粒子100質量部に対して、SiOとして1~200質量部、固形分として存在することが好ましい。ここで、シリカ源量が1質量部未満であると、その添加効果は十分に得られない。シリカ源量が200質量部よりも多くても、粒子の緻密化が更に向上する訳ではない。その上、粒子の屈折率が上昇し、所望の屈折率を有する粒子が得られないおそれがある。シリカ源量は、5~100質量部がより好ましく、20~55質量部が更に好ましい。
【0079】
これらのシリカ源を添加する場合も、昇温及び降温の操作は、上述したように複数回繰り返すことが好ましい。この添加は、被膜層の形成と粒子の緻密化の観点から、昇温前に行うことが好ましい。
【0080】
これらのシリカ源の添加の時期は、昇温前の1回だけでも良いし、昇温及び降温の操作の繰返しの都度、あるいは断続的に行っても構わない。
【0081】
本発明では、第四工程の後、有機珪素化合物を添加して、粒子を表面処理することが好ましい。
【0082】
使用する有機珪素化合物としては、上述の第一工程の式(2)に示すnが1~3の有機珪素化合物を用いることが好ましい。ここで、nが0の有機珪素化合物を用いる場合は、有機珪素化合物の部分加水分解物を用いることが好ましい。
【0083】
粒子の表面処理は、粒子のアルコール分散液を準備して、これに所定量の式(2)に示す有機珪素化合物と水とを加えて、有機珪素化合物を加水分解して行う。この加水分解には、必要に応じて、加水分解用触媒として酸またはアルカリを使用する。
【0084】
有機珪素化合物は、粒子100質量部に対し、R-SiO(4-n)/2として0.1~100質量部、固形分として存在することが好ましい。有機珪素化合物で粒子が表面処理されていれば、マトリックス形成成分との相溶性が向上する。
【0085】
ここで、有機珪素化合物量が0.1質量部未満であると、その添加効果は十分に得られない。むしろ、粒子の分散性が不十分となり、得られる透明被膜にヘイズが発生するおそれがある。有機珪素化合物量が100質量部よりも多くても、粒子の分散性が更に向上する訳ではない。その上、マトリックスと結合するサイトが増えるので、基材との密着性が不十分となるおそれがある。有機珪素化合物量は、概ね2~80質量部がより好ましく、3~50質量部が更に好ましい。
【0086】
[透明被膜形成用塗布液]
上述した粒子は、透明被膜形成用の塗布液に適用できる。すなわち、塗布液は、粒子とマトリックス形成成分と有機溶媒とを含む。これ以外に、重合開始剤、レベリング剤、界面活性剤等の添加剤を含んでいてもよい。次に、この塗布液に含まれる主要成分について説明する。
【0087】
塗布液中の粒子の濃度は、含まれる粒子やマトリックス形成成分等の固形分の合計量に対して、固形分として5~95質量%が好ましい。粒子が5質量%未満であると、被膜の屈折率が十分に低減できないおそれがある。逆に、95質量%より多いと、被膜にクラックが発生するおそれ、基材との密着性が不十分となるおそれ、硬度や強度、透明性、ヘイズ等が悪化するおそれがある。この粒子の濃度は、10~85質量%がより好ましく、20~70質量%が更に好ましい。
【0088】
マトリックス形成成分としては、有機樹脂系マトリックス形成成分が好適である。例えば、紫外線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等のマトリックスを形成する成分が挙げられる。
【0089】
紫外線硬化性樹脂としては、(メタ)アクリル酸系樹脂、γ‐グリシルオキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、ビニル系樹脂等がある。熱硬化性樹脂としては、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、ケイ素樹脂、ブチラール樹脂、反応性シリコーン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、熱硬化性アクリル樹脂等がある。熱可塑性樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、熱可塑性アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、フッ素樹脂、酢酸ビニル樹脂、シリコーンゴム等がある。これらの樹脂は、2種以上の共重合体や変性体でもよく、組み合わせて使用してもよい。また、これらの樹脂は、エマルジョン樹脂、水溶性樹脂、親水性樹脂であってもよい。
【0090】
これらの樹脂を形成する成分は、粒子の分散性、塗膜の容易さから、モノマーやオリゴマーが好ましい。
【0091】
塗布液中のマトリックス形成成分の濃度は、含まれる粒子やマトリックス形成成分等の固形分の合計量に対して、固形分として5~95質量%が好ましい。マトリックス形成成分が5質量%未満の場合、被膜化が困難である。また、被膜が得られたとしても、被膜にクラックが発生するおそれ、基材との密着性が不十分となるおそれ、硬度や強度、透明性、ヘイズ等が悪化するおそれがある。逆に95質量%よりも多いと、粒子の量が少ないため、屈折率が十分に低減できないおそれがある。このマトリックス形成成分の濃度は、15~90質量%がより好ましく、30~80質量%が更に好ましい。
【0092】
有機溶媒としては、粒子を均一に分散でき、マトリックス形成成分や重合開始剤等の添加剤を溶解あるいは分散できるものが用いられる。中でも、親水性溶媒や極性溶媒が好ましい。親水性溶媒としては、例えば、アルコール類、エステル類、グリコール類、エーテル類等が挙げられる。極性溶媒としては、例えば、エステル類、ケトン類等が挙げられる。
【0093】
アルコール類としては、メタノール、エタノール、プロパノール、2-プロパノール、ブタノール、ジアセトンアルコール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール等がある。
【0094】
エステル類としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸プロピル、酢酸イソブチル、酢酸ブチル、酢酸イソペンチル、酢酸ペンチル、酢酸3-メトキシブチル、酢酸2-エチルブチル、酢酸シクロヘキシル、エチレングリコールモノアセテート等がある。
【0095】
グリコール類としては、エチレングリコール、ヘキシレングリコール等がある。
【0096】
エーテル類としては、ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールイソプルピルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等がある。
【0097】
ケトン類としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ブチルメチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、ジプロピルケトン、メチルペンチルケトン、ジイソブチルケトン等がある。
【0098】
極性溶媒としては、他に、炭酸ジメチル、トルエン等がある。
【0099】
これらは単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0100】
添加剤としては、反射防止膜形成に従来使用可能なものが任意に使用できる。例えば、マトリックス形成成分の重合促進や造膜性を向上させるために、重合開始剤、レベリング剤等が使用される。
【0101】
重合開始剤としては、例えば、ビス(2、4、6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2、6-ジメトキシベンゾイル)2、4、4-トリメチル-ペンチルフォスフィンオキサイド、2-ヒドロキシメチル-2-メチルフェニル-プロパン-1-ケトン、2、2-ジメトキシ-1、2-ジフェニルエタン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン等が挙げられる。
【0102】
レベリング剤としては、例えば、アクリル系レベリング剤、シリコーン系レベリング剤、アクリルシリコーン系レベリング剤等が挙げられる。これらのレベリング剤にはフッ素基を有するものが好ましく使用される。
【0103】
これらの添加剤の塗布液中の濃度は、被膜化した際に固形分として含まれるものは、便宜上、マトリックス形成成分として計上し、被膜化後はマトリックスとして計上する。
【0104】
塗布液の固形分濃度(塗布液に対する、粒子の固形分とマトリックス形成成分の固形分とを合計した固形分の割合)は、0.1~60質量%が好ましい。塗布液の固形分濃度が0.1質量%未満であると、塗料の濃縮安定性が低いため、塗工が困難となり、均一な被膜が得られ難いおそれがある。また、ヘイズあるいは外観が悪くなるため、生産性、製造信頼性等が低下するおそれがある。逆に、60質量%より高いと、塗布液の安定性が悪くなるおそれがある。また、塗布液の粘度が高くなるため、塗工性が低下するおそれがある。更に、被膜のヘイズが高くなって、表面粗さが大きくなり、強度が不十分となるおそれがある。塗布液の固形分濃度は、1~50質量%がより好ましい。
【0105】
[透明被膜付基材の製造方法]
上述の塗布液を用いて、透明被膜を基材に形成する。
【0106】
具体的には、基材上に塗布液を塗布した後、乾燥及び紫外線照射を行い、基材上に透明被膜を形成する。塗布液の塗布方法としては、基材に透明被膜を形成できるものであれば特に制限されない。例えば、スプレー法、スピナー法、ロールコート法、バーコート法、スリットコーター印刷法、グラビア印刷法、マイクログラビア印刷法等の周知の方法が採用できる。乾燥は、例えば、50~150℃程度に加熱し、溶媒を蒸発させて除去する。その後、紫外線を照射し、樹脂成分の重合を促進させて被膜の硬度化を図る。透明被膜は、主にマトリックス(樹脂)成分と粒子とで形成される。
【0107】
このようにして、基材上に透明被膜が形成された透明被膜付基材が作製される。透明被膜には、粒子とマトリックスとが含まれる。透明被膜では、塗布液中の粒子とマトリックス形成成分の固形分の割合が、そのまま被膜中の粒子成分とマトリックスの割合となる。上述のように、塗布液中の添加剤の内、固形分として残存するものは、ここではマトリックスとして計上する。
【0108】
透明被膜の膜厚は、80~350nmが好ましい。膜厚が80nmより薄いと、膜の強度、耐擦傷性が不十分となる場合がある。また、膜が薄すぎて十分な反射防止性能が得られないことがある。逆に、膜厚が350nmより厚いと、膜にクラックが入りやすくなるために膜の強度が不十分となる場合があり、また、膜が厚すぎて反射防止性能が低下する場合がある。また、収縮が非常に大きい場合には、クラックが発生するおそれもある。この膜厚は、85~220nmがより好ましく、90~110nmが更に好ましい。
【0109】
また、透明被膜の屈折率は1.10~1.45が好ましい。
【0110】
透明被膜の屈折率が1.10未満のものは得ることが困難であり、屈折率が1.45を越えると基材の屈折率あるいは必要に応じて形成される透明被膜の下層に形成される他の膜の屈折率によっても異なるが反射防止性能が不十分となることがある。
【0111】
本発明の透明被膜の屈折率はエリプソメーター(ULVAC社製 EMS-1)により測定する。透明被膜の屈折率は、1.15~1.35がより好ましい。
【0112】
透明被膜付基材の光透過率は、85.0%以上が好ましい。光透過率が85.0%より低いと、表示装置等において画像の鮮明度が不十分となるおそれがある。この光透過率は、90.0%以上がより好ましい。
【0113】
また、透明被膜付基材のヘイズは、3%以下が好ましく、0.3%以下がより好ましい。
【0114】
また、透明被膜付基材の反射率は、2.0%以下が好ましく、1.2%以下がより好ましい。
【0115】
透明被膜の強度(耐擦傷性)は、#0000のスチールウールを用い、荷重1kg/cmにて摺動させて評価する。この摺動回数が少なくとも100回の時点で膜表面に筋状の傷が認められないことが好ましく、500回の時点で傷が認められないことがより好ましく、1000回の時点で傷が認められないことが更に好ましい。
【0116】
透明被膜の鉛筆硬度は、2H以上が好ましい。2H未満では、反射防止膜として硬度が不十分である。この鉛筆硬度は、3H以上がより好ましく、4H以上が更に好ましい。
【0117】
基材は、公知のものが使用可能である。例えば、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタラート(PET)、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)、シクロオレフィンポリマー(COP)等の透明な樹脂基材が好ましい。これらの基材は、上述の塗布液によって形成される透明被膜との密着性が優れ、硬度、強度等に優れた透明被膜付基材を得ることができる。このため、薄い基材に好適に用いられる。基材の厚みに特に制限はないが、10~100μmが好ましく、20~80μmがより好ましい。
【0118】
また、このような基材上に、他の被膜が形成された被膜付基材を用いこともできる。他の被膜としては、例えば、従来公知のプライマー膜、ハードコート膜、高屈折率膜、導電性膜等が挙げられる。
【0119】
以下、本発明の実施例を説明する。ここでは、有機珪素化合物で表面処理された粒子を例示する。
【0120】
[実施例1]
〈シリカを含む外殻の内側に空洞を有する粒子(P1)の製造〉
種粒子の水分散液(日揮触媒化成(株)製 USBB-120、平均粒子径25nm、固形分濃度20質量%、固形分中のAl23含有量27質量%)50gに純水9950gを加えた後、1質量%の水酸化ナトリウムを添加してpHを11.0に調整した。その後、98℃に加温して、SiOとしての濃度が1.5質量%の珪酸ナトリウム水溶液1.87kgと、Alとしての濃度が0.5質量%のアルミン酸ナトリウム水溶液1.87kgとを添加した。その後、遠心沈降法で洗浄を行い、複合酸化物粒子(a-1)の分散液を得た。この複合酸化物粒子(a-1)の平均粒子径は44nmであった。
【0121】
この複合酸化物粒子(a-1)を98℃に加温して、SiOとしての濃度が1.5質量%の珪酸ナトリウム水溶液6.31kgと、Alとしての濃度が0.5質量%のアルミン酸ナトリウム水溶液2.10kgとを添加した。その後、限外濾過膜で洗浄して固形分濃度を13質量%にした後、目開き1μmのカプセルフィルターで濾過し、複合酸化物粒子(b-1)の分散液を得た。この複合酸化物粒子(b-1)の平均粒子径は58nmであった。
【0122】
この複合酸化物粒子(b-1)の分散液500gに純水1125gを加え、更に濃塩酸(濃度35.5質量%)を滴下してpH1.0とした。これに、pH3の塩酸水溶液10Lと純水5Lを加えながら、限外濾過膜で溶解したアルミニウム塩を分離・洗浄して、濃度5質量%のシリカ系粒子(c-1)を得た。
【0123】
次に、シリカ系粒子(c-1)100gに、シリカ源としてシリカゾル(日揮触媒化成(株)製 カタロイドSI-550、平均粒子径5nm、固形分濃度20質量%、NaO濃度0.8質量%)を12.8g加えて、十分に撹拌した。その後、アンモニア水を添加して分散液のpHを10.8に調整した。これを25℃から360℃に335分かけて昇温して24時間保持した後、420分かけて25℃に冷却した。その後、再度25℃から360℃に335分かけて昇温して24時間保持した後、420分かけて25℃に冷却し、もう一度同じ操作を行った(計3回)。その後、陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製 ダイヤイオンSK1B)400gを用いて3時間イオン交換し、次いで、陰イオン交換樹脂(三菱化学(株)製 ダイヤイオンSA20A)200gを用いて3時間イオン交換した。その後、更に、陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製 ダイヤイオンSK1B)200gを用い、80℃で3時間イオン交換して洗浄を行い、シリカを含む外殻の内側に空洞を有する粒子(P1)の水分散液を得た。この分散液の固形分濃度は、20質量%であった。
【0124】
この粒子(P1)の水分散液を、限外濾過膜を用いて溶媒をメタノールに置換して、固形分濃度20質量%の粒子(P1)のメタノール分散液を調製した。
【0125】
次いで、この粒子(P1)のメタノール分散液100gに3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製 KBM-503)6gを添加し、50℃で6時間、加熱処理を行った。その後、エバポレーターにて溶媒をメチルイソブチルケトン(MIBK)に置換し、固形分濃度20質量%の粒子(P1)のMIBK分散液を得た。
【0126】
この粒子(P1)の製造条件を表1に示す。また、粒子(P1)について以下の方法で測定した各性状を表2に示す(以下の実施例、比較例も同様)。
【0127】
粒子(P1)の物性を画像解析法により測定した。具体的には、まず、粒子(P1)のMIBK分散液をメタノールで0.01質量%に希釈した後、電子顕微鏡用銅セルのコロジオン膜上で乾燥させた。次に、これを電解放出型透過電子顕微鏡(株式会社日立ハイテクノロジーズ製 HF5000)にて、倍率100万倍で写真撮影した。得られた写真投影図(SEM像、TEM写真)の任意の1000個の粒子について、以下の方法(1)~(5)にて測定した。
【0128】
(1)平均粒子径(D)
SEM像の画像処理から粒子(P1)の面積を求め、その面積から円相当径を求めた。その円相当径の平均値を粒子の平均粒子径とした。
【0129】
(2)空洞径
TEM写真から粒子(P1)の外殻内側の空洞の面積を求め、その面積から円相当径を求め、これを空洞径とした。また、この空洞径の平均値をDとした。
【0130】
(3)粒子形状
SEM像から粒子(P1)の短径、長径の比率を求めた。ここで、長径/短径の比の平均値が1.2未満であれば球状とした。
【0131】
(4)空洞形状、空洞が一つである粒子割合
TEM写真から粒子(P1)の外殻内側の空洞の短径、長径の比率を求めた。ここで、長径/短径の比の平均値が1.2未満であれば球状とした。また、粒子内の空洞の個数を測定し、その割合を求めた。
【0132】
(5)N吸着法による細孔容積
粒子(P1)のMIBK分散液をエバポレーターにて乾燥させ、105℃で乾燥させた。その粉体1gをセルに取り、窒素吸着装置(BELSORP-miniII(マイクロトラック・ベル株式会社製))を用いて窒素を吸着させ、細孔容積を測定した。
【0133】
(6)粒子の屈折率(n
粒子(P1)のMIBK分散液をエバポレーターに採り分散媒を蒸発させた。次に、これを120℃で乾燥し、粉末とした。ガラス板上に、屈折率が既知の標準屈折液を2、3滴滴下し、これに上記粉末を混合した。この操作を種々の標準屈折液で行い、混合液が透明になった時の標準屈折液の屈折率をシリカ系中空粒子の屈折率とした。
【0134】
(7)粒子の外殻屈折率(ns
前述の方法で求めた、粒子の平均粒子径(D)、外殻内側の空洞径の平均値(D)、粒子の屈折率(n)を用いて、下記式にて粒子の外殻屈折率(ns)を求めた。
【0135】
【数2】
【0136】
(8)炭素含有量
粒子(P1)中の炭素含有量は、粒子(P1)のMIBK分散液を120 ℃ で乾燥して、400℃で焼成したものを炭素硫黄分析装置(HORIBA製 EMIA -320V) を用いて測定した。
【0137】
(9)29Si-NMRによるQ1、Q2、Q3、Q4及びその比率
専用ガラスセルに粒子(P1)のMIBK分散液を入れ、基準物質としてテトラメチルシランを5質量% 添加し、NMR装置( 日本電子(株)製 JNM-EX270 型、解析ソフト 日本電子(株)製Excalibur) にて測定した。より具体的には、シングルパルスノンデカップリング法にて、29Si-NMRスペクトル法における化学シフト-78~-88ppmに現れるピークの面積(Q)と、化学シフト-88~-98ppmに現れるピークの面積(Q)と、化学シフト-98~-108ppmに現れるピークの面積(Q)と、化学シフト-108~-117ppmに現れるピークの面積(Q)において、比(Q/ΣQ)、比(Q/ΣQ)及び比(Q3/Q4)を求めた。
【0138】
(10)アルカリ金属、その他元素の含有量
粒子(P1)中のアルカリ金属の含有量、Fe、Ti、Zn、Pd、Ag、Mn、Co、Mo、Sn、Al、Zrの含有量、Cu、Ni、Crの含有量、及びU、Thの含有量、については、粒子をフッ酸で溶解し、加熱してフッ酸を除去した後、必要に応じて純水を加え、得られた溶液についてICP誘導結合プラズマ発光分光質量分析装置(例えば、株式会社島津製作所製 ICPM-8500)を用いて測定した。
【0139】
(11)シリカ含有量
粒子(P1)のMIBK分散液を120℃で12時間乾燥した。これを蛍光X線分析装置(株式会社日立ハイテクサイエンス製 EA600VX)を使用して、シリカ(SiO)の含有量を求めた。
【0140】
〈反射防止用透明被膜形成用塗布液(1)の製造〉
粒子(P1)のMIBK分散液を固形分濃度5質量%に希釈した。この希釈分散液50gと、アクリル樹脂(日立化成(株)製 ヒタロイド1007)1.67g及びイソプロパノールとn-ブタノールの1/1(質量比)混合溶媒52.6gとを十分に混合して、透明被膜形成用塗布液(1)を製造した。この透明被膜形成用塗布液について表3に示す(以下の実施例、比較例も同様)。
【0141】
〈反射防止用透明被膜付基材(1)の製造〉
ハードコート塗料(日揮触媒化成(株)製 ELCOM HP-1004)を、TACフィルム(パナック(株)製 FT-PB80UL-M、厚さ 80μm、屈折率 1.51)にバーコーター法(#18)で塗布し、80℃で120秒間乾燥した。その後、300mJ/cmの紫外線を照射して硬化させてハードコート膜を作製した。ハードコート膜の膜厚は8μmであった。
【0142】
次いで、反射防止用透明被膜形成用塗布液(1)をバーコーター法(#4)で塗布し、80℃で120秒間乾燥した後、N雰囲気下で600mJ/cmの紫外線を照射して硬化させて反射防止用透明被膜付基材(1)を製造した。
【0143】
反射防止用透明被膜付基材(1)を以下の項目について測定した。結果を表3に示す(以下の実施例、比較例も同様)。
【0144】
(12)膜厚、屈折率、反射率
エリプソメーター(ULVAC社製、EMS-1)を使用して、反射防止用透明被膜付基材(1)の膜厚、膜屈折率、波長550nmの光線の反射率を測定した。
【0145】
(13)全光線透過率、ヘイズ
ヘーズメーター(スガ試験機(株)製)を使用して、反射防止用透明被膜付基材(1)の全光線透過率、ヘイズを測定した。
【0146】
(14)密着性
反射防止用透明被膜付基材(1)の表面にナイフで縦横1mmの間隔で11本の平行な傷を付け100個の升目を作り、これにセロファンテープを接着し、次いで、セロファンテープを剥離したときに被膜が剥離せず残存している升目の数を、以下の3段階に分類することによって密着性を評価した。
残存升目の数90個以上 :◎
残存升目の数85~89個:○
残存升目の数84個以下 :△
【0147】
(15)耐擦傷性の測定
#0000スチールウールを用い、荷重1,500g/cmで100回摺動し、膜の表面を目視観察し、以下の基準で評価した。
評価基準;
筋状の傷が認められない :◎
筋状の傷が僅かに認められる:○
筋状の傷が多数認められる :△
面が全体的に削られている :×
【0148】
(16)鉛筆硬度
鉛筆硬度は、JIS K 5400に準じて、鉛筆硬度試験器で測定した。即ち、透明被膜表面に対して45度の角度に鉛筆をセットし、所定の加重を負荷して一定速度で引っ張り、傷の有無を観察した。
【0149】
[実施例2]
〈シリカを含む外殻の内側に空洞を有する粒子(P2)の製造〉
種粒子の水分散液(日揮触媒化成(株)製 USBB-120、平均粒子径25nm、固形分濃度20質量%、固形分中のAl23含有量27質量%)750gに純水29250gを加えた後、1質量%の水酸化ナトリウムを添加してpHを11.0に調整した。その後、98℃に加温して、SiOとしての濃度が1.5質量%の珪酸ナトリウム水溶液5.83kgとAlとしての濃度が0.5質量%のアルミン酸ナトリウム水溶液5.83kgとを添加した。その後、遠心沈降法で洗浄を行い、複合酸化物粒子(a-2)の分散液を得た。このとき、複合酸化物粒子(a-2)の平均粒子径は225nmであった。
【0150】
この複合酸化物粒子(a-2)を98℃に加温して、SiOとしての濃度が1.5質量%の珪酸ナトリウム水溶液2.21kgと、Alとしての濃度が0.5質量%のアルミン酸ナトリウム水溶液0.74kgとを添加した。その後、限外濾過膜で洗浄して固形分濃度を13質量%にした後、目開き1μmのカプセルフィルターで濾過し複合酸化物粒子(b-2)の分散液を得た。この複合酸化物粒子(b-2)の平均粒子径は240nmであった。
【0151】
この複合酸化物粒子(b-2)の分散液500gに純水1125gを加え、更に濃塩酸(濃度35.5質量%)を滴下してpH1.0とした。これに、pH3の塩酸水溶液10Lと純水5Lを加えながら、限外濾過膜で溶解したアルミニウム塩を分離・洗浄して、濃度5質量%のシリカ系粒子(c-2)を得た。
【0152】
次にシリカ系粒子(c-2)100gに、シリカ源としてシリカゾル(日揮触媒化成(株)製 カタロイドSI-50、平均粒子径25nm、固形分濃度48質量%、NaO濃度0.5質量%)を2.5g加えて、十分に撹拌した。その後、アンモニア水を添加して分散液のpHを10.5に調整した。これを25℃から360℃に335分かけて昇温して24時間保持した後、420分かけて25℃に冷却した。その後、再度25℃から360℃に335分かけて昇温して24時間保持した後、420分かけて25℃に冷却し、もう一度同じ操作を行った(計3回)。その後、陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製 ダイヤイオンSK1B)400gを用いて3時間イオン交換し、次いで、陰イオン交換樹脂(三菱化学(株)製 ダイヤイオンSA20A)200gを用いて3時間イオン交換した。その後、更に、陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製 ダイヤイオンSK1B)200gを用い、80℃で3時間イオン交換して洗浄を行い、シリカを含む外殻の内側に空洞を有する粒子(P2)の水分散液を得た。この分散液の固形分濃度は、20質量%であった。
【0153】
この粒子(P2)の水分散液を、限外濾過膜を用いて溶媒をメタノールに置換して、固形分濃度20質量%の粒子(P2)のメタノール分散液を調製した。
【0154】
次いで、この粒子(P2)のメタノール分散液100gに3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製 KBM-503)2gを添加し、50℃で6時間、加熱処理を行った。その後、エバポレーターにて溶媒をMIBKに置換し、固形分濃度20質量%の粒子(P2)のMIBK分散液を得た。
【0155】
〈反射防止用透明被膜形成用塗布液(2)及び該被膜付基材(2)の製造〉
粒子(P1)のMIBK分散液の代わりに、粒子(P2)のMIBK分散液を使用した以外は、実施例1と同様にして、反射防止用透明被膜形成用塗布液(2)、反射防止用透明被膜付基材(2)を製造し、各特性を評価した。
【0156】
[実施例3]
〈シリカを含む外殻の内側に空洞を有する粒子(P3)の製造〉
種粒子の水分散液(日揮触媒化成(株)製 カタロイドSI-550、平均粒子径5nm、SiO濃度20質量%)3000gに純水17000gを加えた後、1質量%の水酸化ナトリウムを添加してpHを10.0に調整した。その後、80℃に加温して、SiOとして濃度が1.5質量%の珪酸ナトリウム水溶液1369gと、Alとしての濃度が0.5質量%のアルミン酸ナトリウム水溶液1369gとを添加した。その後、遠心沈降法で洗浄を行い、複合酸化物粒子(a-3)の分散液を得た。このとき、複合酸化物粒子(a-3)の平均粒子径は19nmであった。
この複合酸化物粒子(a-3)を85℃に加温してSiOとしての濃度が1.5質量%の珪酸ナトリウム水溶液2820gと、Alとしての濃度が0.5質量%のアルミン酸ナトリウム水溶液940gとを添加した。その後、限外濾過膜で洗浄して固形分濃度を13質量%にした後、目開き1μmのカプセルフィルターで濾過し、複合酸化物粒子(b-3)の分散液を得た。この複合酸化物粒子(b-3)の平均粒子径は22nmであった。
【0157】
この複合酸化物粒子(b-3)の分散液500gに純水1125gを加え、更に濃塩酸(濃度35.5質量%)を滴下してpH1.0とした。これに、pH3の塩酸水溶液10Lと純水5Lを加えながら、限外濾過膜で溶解したアルミニウム塩を分離・洗浄して、濃度5質量%のシリカ系粒子(c-3)を得た。
【0158】
次にシリカ系粒子(c-3)100gに、シリカ源として珪酸液(SiOとして4.0質量%、NaO濃度12ppm)を52.5g加えて、十分に撹拌した。その後、アンモニア水を添加して分散液のpHを9.5に調整した。これを25℃から360℃に335分かけて昇温して24時間保持した後、420分かけて25℃に冷却した。その後、再度25℃から360℃に335分かけて昇温して24時間保持した後、420分かけて25℃に冷却し、もう一度同じ操作を行った(計3回)。その後、陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製 ダイヤイオンSK1B)400gを用いて3時間イオン交換し、次いで、陰イオン交換樹脂(三菱化学(株)製 ダイヤイオンSA20A)200gを用いて3時間イオン交換した。その後、更に、陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製 ダイヤイオンSK1B)200gを用い、80℃で3時間イオン交換して洗浄を行い、シリカを含む外殻の内側に空洞を有する粒子(P3)の水分散液を得た。この分散液の固形分濃度は、20質量%であった。
【0159】
この粒子(P3)の水分散液を、限外濾過膜を用いて溶媒をメタノールに置換して、固形分濃度20質量%の粒子(P3)のメタノール分散液を調製した。
【0160】
次いで、この粒子(P3)のメタノール分散液100gに3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製 KBM-503)10gを添加し、50℃で6時間、加熱処理を行った。その後、エバポレーターにて溶媒をMIBKに置換し、固形分濃度20質量%の粒子(P3)のMIBK分散液を得た。
【0161】
〈反射防止用透明被膜形成用塗布液(3)及び該被膜付基材(3)の製造〉
粒子(P1)のMIBK分散液の代わりに、粒子(P3)のMIBK分散液を使用して、アクリル樹脂(日立化成(株)製 ヒタロイド1007)を1.07g、イソプロパノールとn-ブタノールの1/1(質量比)混合溶媒を85.7g使用した以外は、実施例1と同様にして、反射防止用透明被膜形成用塗布液(3)、反射防止用透明被膜付基材(3)を製造し、各特性を評価した。
【0162】
[実施例4]
〈シリカを含む外殻の内側に空洞を有する粒子(P4)の製造〉
シリカ系粒子(c-1)1000gに、シリカ源としてシリカゾル(日揮触媒化成(株)製 カタロイドSI-550、平均粒子径5nm、固形分濃度20質量%、NaO濃度0.8質量%)を128g加えて、十分に撹拌した。次に、これを陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製 ダイヤイオンSK1B)200gを用いて1時間イオン交換した。
【0163】
次に、アンモニア水を添加して分散液のpHを10.0に調整し、110℃にて6時間かけて乾燥して粉を得た。これを、25℃から750℃に258分かけて昇温して5時間保持した後、375分かけて50℃に冷却した。
【0164】
その後、粉50gに水500gを加えた後、1%のNaOH水溶液をpHが10.2になるように加えた。その後、0.02mmのZrOメジアを用いてビーズミルにより、分散処理を行った。
【0165】
その後、陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製 ダイヤイオンSK1B)400gを用いて3時間イオン交換し、次いで、陰イオン交換樹脂(三菱化学(株)製 ダイヤイオンSA20A)200gを用いて3時間イオン交換した。その後、更に、陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製 ダイヤイオンSK1B)200gを用い、80℃で3時間イオン交換して洗浄を行い、シリカを含む外殻の内側に空洞を有する粒子(P4)の水分散液を得た。この分散液の固形分濃度は、20質量%であった。
【0166】
この粒子(P4)の水分散液を、限外濾過膜を用いて溶媒をメタノールに置換して、固形分濃度20質量%の粒子(P4)のメタノール分散液を調製した。
【0167】
次いで、この粒子(P4)のメタノール分散液100gに3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製 KBM-503)6gを添加し、50℃で6時間、加熱処理を行った。その後、エバポレーターにて溶媒をMIBKに置換し、固形分濃度20質量%の粒子(P4)のMIBK分散液を得た。
【0168】
〈反射防止用透明被膜形成用塗布液(4)及び該被膜付基材(4)の製造〉
粒子(P1)のMIBK分散液の代わりに、粒子(P4)のMIBK分散液を使用した以外は、実施例1と同様にして、反射防止用透明被膜形成用塗布液(4)、反射防止用透明被膜付基材(4)を製造し、各特性を評価した。
【0169】
[実施例5]
〈シリカを含む外殻の内側に空洞を有する粒子(P5)の製造〉
シリカ系粒子(c-1)1000gに、シリカ源としてシリカゾル(日揮触媒化成(株)製 カタロイドSI-550、平均粒子径5nm、固形分濃度20質量%、NaO濃度0.8質量%)を62.5g加えて、十分に撹拌した。
【0170】
次に、アンモニア水を添加して分散液のpHを10.5に調整し、25℃から200℃に583分かけて昇温して24時間保持した後、4400分かけて25℃に冷却した。この操作は2回繰り返した。
【0171】
その後、陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製 ダイヤイオンSK1B)400gを用いて3時間イオン交換し、次いで、陰イオン交換樹脂(三菱化学(株)製 ダイヤイオンSA20A)200gを用いて3時間イオン交換した。その後、更に、陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製 ダイヤイオンSK1B)200gを用い、80℃で3時間イオン交換して洗浄を行い、シリカを含む外殻の内側に空洞を有する粒子(P5)の水分散液を得た。この分散液の固形分濃度は、20質量%であった。
【0172】
この粒子(P5)の水分散液を、限外濾過膜を用いて溶媒をメタノールに置換して、固形分濃度20質量%の粒子(P5)のメタノール分散液を調製した。
【0173】
次いで、この粒子(P5)のメタノール分散液100gに3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製 KBM-503)6gを添加し、50℃で6時間、加熱処理を行った。その後、エバポレーターにて溶媒をMIBKに置換し、固形分濃度20質量%の粒子(P5)のMIBK分散液を得た。
【0174】
〈反射防止用透明被膜形成用塗布液(5)及び該被膜付基材(5)の製造〉
粒子(P1)のMIBK分散液の代わりに、粒子(P5)のMIBK分散液を使用した以外は、実施例1と同様にして、反射防止用透明被膜形成用塗布液(5)、反射防止用透明被膜付基材(5)を製造し、各特性を評価した。
【0175】
[実施例6]
〈シリカを含む外殻の内側に空洞を有する粒子(P6)の製造〉
シリカ系粒子(c-1)1000gに、エタノール1000g、アンモニア水50gを加えた後、液温を35℃に調整した。これに、シリカ源としてテトラエトキシシランを88.5g加えて、十分に撹拌した。その後、限外濾過膜を用いて、溶媒を水に置換した。
【0176】
次に、アンモニア水を添加して分散液のpHを10.5に調整し、25℃から360℃に335分かけて昇温して24時間保持した後、419分かけて25℃に冷却した。この操作は3回繰り返した。
【0177】
その後、陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製 ダイヤイオンSK1B)400gを用いて3時間イオン交換し、次いで、陰イオン交換樹脂(三菱化学(株)製 ダイヤイオンSA20A)200gを用いて3時間イオン交換した。その後、更に、陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製 ダイヤイオンSK1B)200gを用い、80℃で3時間イオン交換して洗浄を行い、シリカを含む外殻の内側に空洞を有する粒子(P6)の水分散液を得た。この分散液の固形分濃度は、20質量%であった。
【0178】
この粒子(P6)の水分散液を、限外濾過膜を用いて溶媒をメタノールに置換して、固形分濃度20質量%の粒子(P6)のメタノール分散液を調製した。
【0179】
次いで、この粒子(P6)のメタノール分散液100gに3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製 KBM-503)6gを添加し、50℃で6時間、加熱処理を行った。その後、エバポレーターにて溶媒をMIBKに置換し、固形分濃度20質量%の粒子(P6)のMIBK分散液を得た。
【0180】
〈反射防止用透明被膜形成用塗布液(6)及び該被膜付基材(6)の製造〉
粒子(P1)のMIBK分散液の代わりに、粒子(P6)のMIBK分散液を使用した以外は、実施例1と同様にして、反射防止用透明被膜形成用塗布液(6)、反射防止用透明被膜付基材(6)を製造し、各特性を評価した。
【0181】
[実施例7]
〈シリカを含む外殻の内側に空洞を有する粒子(P7)の製造〉
シリカ系粒子(c-1)1000gにアンモニア水を添加して、分散液のpHを10.5に調整した後、110℃にて6時間かけて乾燥して粉を得た。これを、25℃から360℃に335分かけて昇温して24時間保持した後、420分かけて25℃に冷却した。この操作は3回繰り返した。
【0182】
その後、粉50gに水500gを加えた後、1%のNaOH水溶液をpHが10.2になるように加えた。その後、0.02mmのZrOメジアを用いてビーズミルにより、分散処理を行った。
【0183】
その後、陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製 ダイヤイオンSK1B)400gを用いて3時間イオン交換し、次いで、陰イオン交換樹脂(三菱化学(株)製 ダイヤイオンSA20A)200gを用いて3時間イオン交換した。その後、更に、陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製 ダイヤイオンSK1B)200gを用い、80℃で3時間イオン交換して洗浄を行い、シリカを含む外殻の内側に空洞を有する粒子(P7)の水分散液を得た。この分散液の固形分濃度は、20質量%であった。
【0184】
この粒子(P7)の水分散液を、限外濾過膜を用いて溶媒をメタノールに置換して、固形分濃度20質量%の粒子(P7)のメタノール分散液を調製した。
【0185】
次いで、この粒子(P7)のメタノール分散液100gに3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製 KBM-503)6gを添加し、50℃で6時間、加熱処理を行った。その後、エバポレーターにて溶媒をMIBKに置換し、固形分濃度20質量%の粒子(P7)のMIBK分散液を得た。
【0186】
〈反射防止用透明被膜形成用塗布液(7)及び該被膜付基材(7)の製造〉
粒子(P1)のMIBK分散液の代わりに、粒子(P7)のMIBK分散液を使用した以外は、実施例1と同様にして、反射防止用透明被膜形成用塗布液(7)、反射防止用透明被膜付基材(7)を形成し、各特性を評価した。
【0187】
[実施例8]
〈シリカを含む外殻の内側に空洞を有する粒子(P8)の製造〉
シリカ系粒子(c-1)1000gにシリカ源として高純度シリカゾル(日揮触媒化成(株)製 LNA-2000、平均粒子径23nm、固形分濃度12.6質量%)を128g加えて、十分に撹拌した。
【0188】
次に、アンモニア水を添加して分散液のpHを10.8に調整し、110℃にて6時間かけて乾燥して粉を得た。これを、25℃から360℃に335分かけて昇温して24時間保持した後、420分かけて25℃に冷却した。この操作は3回繰り返した。
【0189】
その後、粉50gに水500gを加えた後、1%のNaOH水溶液をpHが10.2になるように加えた。その後、0.02mmのZrOメジアを用いてビーズミルにより、分散処理を行った。
【0190】
その後、陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製 ダイヤイオンSK1B)400gを用いて3時間イオン交換し、次いで、陰イオン交換樹脂(三菱化学(株)製 ダイヤイオンSA20A)200gを用いて3時間イオン交換した。その後、更に、陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製 ダイヤイオンSK1B)200gを用い、80℃で3時間イオン交換して洗浄を行い、シリカを含む外殻の内側に空洞を有する粒子(P8)の水分散液を得た。この分散液の固形分濃度は、20質量%であった。
【0191】
この粒子(P8)の水分散液を、限外濾過膜を用いて溶媒をメタノールに置換して、固形分濃度20質量%の粒子(P8)のメタノール分散液を調製した。
【0192】
次いで、この粒子(P8)のメタノール分散液100gに3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製 KBM-503)6gを添加し、50℃で6時間、加熱処理を行った。その後、エバポレーターにて溶媒をMIBKに置換し、固形分濃度20質量%の粒子(P8)のMIBK分散液を得た。
【0193】
〈反射防止用透明被膜形成用塗布液(8)及び該被膜付基材(8)の製造〉
粒子(P1)のMIBK分散液の代わりに、粒子(P8)のMIBK分散液を使用した以外は、実施例1と同様にして、反射防止用透明被膜形成用塗布液(8)、反射防止用透明被膜付基材(8)を形成し、各特性を評価した。
【0194】
[実施例9]
〈シリカを含む外殻の内側に空洞を有する粒子(P9)の製造〉
シリカ系粒子(c-1)1000gに、シリカ源としてシリカゾル(日揮触媒化成(株)製 カタロイドSI-550、平均粒子径5nm、固形分濃度20質量%、NaO濃度0.8質量%)を128g加えて、十分に撹拌した。次に、これを陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製 ダイヤイオンSK1B)200gを用いて1時間イオン交換した。
【0195】
その後、アンモニア水を添加して分散液のpHを10.8に調整した後、110℃にて6時間かけて乾燥して粉を得た。これを、25℃から600℃に575分かけて昇温して5時間保持した後、550分かけて50℃に冷却した。この操作は3回繰り返した。
【0196】
その後、粉50gに水500gを加えた後、1%のNaOH水溶液をpHが10.0になるように加えた。その後、0.02mmのZrOメジアを用いてビーズミルにより、分散処理を行った。
【0197】
その後、陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製 ダイヤイオンSK1B)400gを用いて3時間イオン交換し、次いで、陰イオン交換樹脂(三菱化学(株)製 ダイヤイオンSA20A)200gを用いて3時間イオン交換した。その後、更に、陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製 ダイヤイオンSK1B)200gを用い、80℃で3時間イオン交換して洗浄を行い、シリカを含む外殻の内側に空洞を有する粒子(P9)の水分散液を得た。この分散液の固形分濃度は、20質量%であった。
【0198】
この粒子(P9)の水分散液を、限外濾過膜を用いて溶媒をメタノールに置換して、固形分濃度20質量%の粒子(P9)のメタノール分散液を調製した。
【0199】
次いで、この粒子(P9)のメタノール分散液100gに3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製 KBM-503)6gを添加し、50℃で6時間、加熱処理を行った。その後、エバポレーターにて溶媒をMIBKに置換し、固形分濃度20質量%の粒子(P9)のMIBK分散液を得た。
〈反射防止用透明被膜形成用塗布液(9)及び該被膜付基材(9)の製造〉
粒子(P1)のMIBK分散液の代わりに、粒子(P9)のMIBK分散液を使用した以外は、実施例1と同様にして、反射防止用透明被膜形成用塗布液(9)、反射防止用透明被膜付基材(9)を形成し、各特性を評価した。
【0200】
[比較例1]
〈シリカを含む外殻の内側に空洞を有する粒子(R1)の製造〉
シリカ系粒子(c-1)1000gに、シリカ源としてシリカゾル(日揮触媒化成(株)製 カタロイドSI-550、平均粒子径5nm、固形分濃度20質量%、NaO濃度0.8質量%)を62.5g加えて、十分に撹拌した。
【0201】
次に、アンモニア水を添加して分散液のpHを10.5に調整し、25℃から150℃に25分かけて昇温して24時間保持した後、42分かけて25℃に冷却した。
【0202】
その後、陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製 ダイヤイオンSK1B)400gを用いて3時間イオン交換し、次いで、陰イオン交換樹脂(三菱化学(株)製 ダイヤイオンSA20A)200gを用いて3時間イオン交換した。その後、更に、陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製 ダイヤイオンSK1B)200gを用い、80℃で3時間イオン交換して洗浄を行い、シリカを含む外殻の内側に空洞を有する粒子(R1)の水分散液を得た。この分散液の固形分濃度は、20質量%であった。
【0203】
この粒子(R1)の水分散液を、限外濾過膜を用いて溶媒をメタノールに置換して、固形分濃度20質量%の粒子(R1)のメタノール分散液を調製した。
【0204】
次いで、この粒子(R1)のメタノール分散液100gに3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製 KBM-503)6gを添加し、50℃で6時間、加熱処理を行った。その後、エバポレーターにて溶媒をMIBKに置換し、固形分濃度20質量%の粒子(R1)のMIBK分散液を得た。
【0205】
〈反射防止用透明被膜形成用塗布液(R1)及び該被膜付基材(R1)の製造〉
粒子(P1)のMIBK分散液の代わりに、粒子(R1)のMIBK分散液を使用した以外は、実施例1と同様にして、反射防止用透明被膜形成用塗料(R1)、反射防止用透明被膜付基材(R1)を製造し、各特性を評価した。
【0206】
[比較例2]
〈シリカを含む外殻の内側に空洞を有する粒子(R2)の製造〉
シリカ系粒子(c-1)1000gに、エタノール1000g、アンモニア水50gを加えた後、液温を35℃に調整した。これに、シリカ源としてメチルトリメトキシシランを57.9g加えて、十分に撹拌した。その後、限外濾過膜を用いて、溶媒を水に置換した。
【0207】
次に、アンモニア水を添加して分散液のpHを10.5に調整した後、25℃から360℃に335分かけて昇温して24時間保持した後、419分かけて25℃に冷却した。この操作は3回繰り返した。
【0208】
その後、陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製 ダイヤイオンSK1B)400gを用いて3時間イオン交換し、次いで、陰イオン交換樹脂(三菱化学(株)製 ダイヤイオンSA20A)200gを用いて3時間イオン交換した。その後、更に、陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製 ダイヤイオンSK1B)200gを用い、80℃で3時間イオン交換して洗浄を行い、シリカを含む外殻の内側に空洞を有する粒子(R2)の水分散液を得た。この分散液の固形分濃度は、20質量%であった。
【0209】
この粒子(R2)の水分散液を、限外濾過膜を用いて溶媒をメタノールに置換して、固形分濃度20質量%の粒子(R2)のメタノール分散液を調製した。
【0210】
次いで、この粒子(R2)のメタノール分散液100gに3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製 KBM-503)6gを添加し、50℃で6時間、加熱処理を行った。その後、エバポレーターにて溶媒をMIBKに置換し、固形分濃度20質量%の粒子(R2)のMIBK分散液を得た。
【0211】
〈反射防止用透明被膜形成用塗布液(R2)及び該被膜付基材(R2)の製造〉
粒子(P1)のMIBK分散液の代わりに、粒子(R2)のMIBK分散液を使用した以外は、実施例1と同様にして、反射防止用透明被膜形成用塗布液(R2)、反射防止用透明被膜付基材(R2)を製造し、各特性を評価した。
【0212】
[比較例3]
〈シリカを含む外殻の内側に空洞を有する粒子(R3)の製造〉
シリカ系粒子(c-1)1000gに、シリカ源としてシリカ粒子(日揮触媒化成(株)製 カタロイドSI-550、平均粒子径5nm、固形分濃度20質量%、NaO濃度0.8質量%)を62.5g加えて、十分に撹拌した。
【0213】
次に、10%NaOH水溶液を10.6g添加して分散液のpHを10.5に調整し、した後、25℃から360℃に335分かけて昇温して24時間保持した後、419分かけて25℃に冷却した。この操作は3回繰り返した。
【0214】
その後、陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製 ダイヤイオンSK1B)400gを用いて3時間イオン交換し、次いで、陰イオン交換樹脂(三菱化学(株)製 ダイヤイオンSA20A)200gを用いて3時間イオン交換した。その後、更に、陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製 ダイヤイオンSK1B)200gを用い、80℃で3時間イオン交換して洗浄を行い、シリカを含む外殻の内側に空洞を有する粒子(R2)の水分散液を得た。ただし、この粒子は外殻に穴が開いており、外殻内側の空洞は外殻によって閉ざされていない形状であった。この分散液の固形分濃度は、20質量%であった。
【0215】
この粒子(R3)の水分散液を、限外濾過膜を用いて溶媒をメタノールに置換して、固形分濃度20質量%の粒子(R3)のメタノール分散液を調製した。
【0216】
次いで、この粒子(R3)のメタノール分散液100gに3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製 KBM-503)6gを添加し、50℃で6時間、加熱処理を行った。その後、エバポレーターにて溶媒をMIBKに置換し、固形分濃度20質量%粒子(R3)のMIBK分散液を得た。
【0217】
〈反射防止用透明被膜形成用塗布液(R3)及び該被膜付基材(R3)の製造〉
粒子(P1)のMIBK分散液の代わりに、粒子(R3)のMIBK分散液を使用した以外は、実施例1と同様にして、反射防止用透明被膜形成用塗布液(R3)、反射防止用透明被膜付基材(R3)を製造し、各特性を評価した。
【0218】
【表1】
【0219】
【表2】
【0220】
【表3】
図1