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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-03
(45)【発行日】2023-10-12
(54)【発明の名称】押出装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 48/37 20190101AFI20231004BHJP
   B29C 48/395 20190101ALI20231004BHJP
【FI】
B29C48/37
B29C48/395
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019197711
(22)【出願日】2019-10-30
(65)【公開番号】P2021070214
(43)【公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-08-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003395
【氏名又は名称】弁理士法人蔦田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤本 雅也
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 勝治
【審査官】関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-272947(JP,A)
【文献】実開平05-041756(JP,U)
【文献】特開平08-103938(JP,A)
【文献】特開2003-039526(JP,A)
【文献】特開2014-046646(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 48/00-48/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴムを吐出する吐出口を出口部に持つゴム供給機と、前記ゴム供給機の前記出口部に取り付けられたギアポンプと、を備える押出装置であって、
前記ギアポンプは、一対のギアが内蔵されたギアポンプ本体と、電動機と、を備え、前記ギアポンプ本体が、前記ゴム供給機の前記出口部に対して、幅方向一端部に配された鉛直な軸を中心に回動自在に取り付けられ
前記電動機は、前記ギアポンプ本体に保持されて、前記ギアポンプ本体とともに回動自在に設けられた、押出装置。
【請求項2】
前記ギアポンプ本体を前記ゴム供給機に固定するための締結構造を備え、前記締結構造が、前記ギアポンプ本体と前記ゴム供給機のうちの一方に回動自在に設けられたヒンジボルトと、前記ギアポンプ本体と前記ゴム供給機のうちの他方に設けられて前記ヒンジボルトの軸部を受け入れる受入凹所を持つフランジと、前記ヒンジボルトの前記軸部と螺合して前記フランジを固定するナットと、を備える、請求項1に記載の押出装置。
【請求項3】
ゴムを吐出する吐出口を出口部に持つゴム供給機と、前記ゴム供給機の前記出口部に取り付けられたギアポンプと、を備える押出装置であって、
前記ギアポンプは、一対のギアが内蔵されたギアポンプ本体と、電動機と、を備え、前記ギアポンプ本体が、前記ゴム供給機の前記出口部に対して、幅方向一端部に配された鉛直な軸を中心に回動自在に取り付けられ
前記ギアポンプは、前記ギアポンプ本体のギアと前記電動機の出力軸とをつなぐカップリング部を備え、前記ギアポンプ本体は、前記ゴム供給機への取り付け端部にフランジを備え、前記フランジは、前記電動機を保持する保持部を備える、押出装置。
【請求項4】
前記カップリング部がたわみ軸継手を備える、請求項に記載の押出装置。
【請求項5】
前記電動機は、前記ギアポンプ本体の下方に設けられた、請求項1~4のいずれか1項に記載の押出装置。
【請求項6】
前記ギアポンプ本体を前記鉛直な軸とともに前記出口部に対して前方に移動させるスライド機構を備える、請求項1~のいずれか1項に記載の押出装置。
【請求項7】
ゴムを吐出する吐出口を出口部に持つゴム供給機の前記出口部に取り付けられるギアポンプであって、
一対のギアが内蔵されたギアポンプ本体と、
前記ギアポンプ本体を前記出口部に取り付けるために前記ゴム供給機に固定される取付部材と、
前記ギアポンプ本体を、前記取付部材に対して、幅方向一端部に配された鉛直な軸を中心に回動自在に連結するヒンジ部と、
前記ギアポンプ本体に保持されて前記ギアポンプ本体とともに回動自在である電動機と、
を備えるギアポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、押出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤの成型工程では複数のドラムとトランスファー装置を用いてタイヤ構成部材を分業で並行して準備する方法が多く提案されている。具体的には、カーカスを含む層を作成する工程と、ベルトを含む層を作成する工程と、これらを一体化してタイヤ状に成型する(シェーピング)工程をそれぞれ別のステージで行い、工程間の部材受け渡しにトランスファー装置を用いて行う方法である。
【0003】
この種の成型工程において、タイヤ構成部材の供給と成型を押出装置により行う工法が知られている。例えば、特許文献1に記載のタイヤ成型装置では、インナーライナー、チェーハー、トレッドゴム、サイドウォールゴムなどのゴム部材を、押出装置から押し出される帯状のゴムストリップの巻き付けにより成型している。
【0004】
かかる押出装置に関し、特許文献2には、ゴムを混練して吐出口から押し出す押出機と、その吐出口に接続されたギアポンプとを含むものにおいて、ギアポンプを構成する電動機及び減速機を、ギアポンプ本体又は押出機のシリンダ部の下方の空間に配置することにより、省スペース化を実現することが記載されている。
【0005】
ところで、この種の成型工程において、特に多品種少量生産を行う場合、材料替えを頻繁に行う必要がある。その際、押出機単体であれば材料であるゴムの供給を止めた状態で押出機を運転することにより、押出機内のゴムは排出されることから比較的簡単に材料替えは可能である。
【0006】
しかしながら、図13に示すような、押出機102と口金104との間にギアポンプ106を備える押出装置100では、押出機102からの材料供給が止まると、押出機102とギアポンプ106との連結部108のゴムをギア110に送ることができず、その部分のゴムが排出されない。すなわち、この部分のゴムは背圧がないとギアポンプ106の入口部より先へは送られないので、押出機102のスクリュー112とギア110との間にゴムが滞留してしまう。
【0007】
この場合、交換する材料であるゴムを押出機に供給して、当該ゴムとともに滞留した残ゴムも押し出し排出することが考えられる。しかしながら、ゴムは一見して見分けがつかないため、材料の切り替わりが判断できず、また残ゴムが装置内で滞留し時間を経て排出された場合には交換する材料への混入を検出することができない等の問題が考えられる。
【0008】
そのため、材料替えの際は、その都度、ギアポンプと押出機を分離して清掃を行わなければならない。しかしながら、押出機へのギアポンプの取り付けを例えばボルトナットを用いてそのまま締結固定する場合、ギアポンプと押出機との分離作業が煩雑である。詳細には、ギアポンプを押出機から手前に引き出し、即ちギアポンプをスクリュー軸方向に離隔させて滞留ゴムを取り除く場合、ボルトナットを外し、ギアポンプをクレーンや別途支持台を用いて仮支持させており、作業が煩雑である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】国際公開第2006/048924号
【文献】特開2014-046646号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の実施形態は、このような問題に鑑みてなされたものであり、ギアポンプを備えた押出装置において、材料替えを容易にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の実施形態に係る押出装置は、ゴムを吐出する吐出口を出口部に持つゴム供給機と、前記ゴム供給機の前記出口部に取り付けられたギアポンプと、を備える押出装置において、前記ギアポンプが、一対のギアが内蔵されたギアポンプ本体と、電動機と、を備え、前記ギアポンプ本体が、前記ゴム供給機の前記出口部に対して、幅方向一端部に配された鉛直な軸を中心に回動自在に取り付けられたものである。
【0012】
一実施形態において、前記押出装置は、前記ギアポンプ本体を前記ゴム供給機に固定するための締結構造を備え、前記締結構造が、前記ギアポンプ本体と前記ゴム供給機のうちの一方に回動自在に設けられたヒンジボルトと、前記ギアポンプ本体と前記ゴム供給機のうちの他方に設けられて前記ヒンジボルトの軸部を受け入れる受入凹所を持つフランジと、前記ヒンジボルトの前記軸部と螺合して前記フランジを固定するナットと、を備えてもよい。
【0013】
一実施形態において、前記電動機は、前記ギアポンプ本体の下方に設けられてもよい。
【0014】
一実施形態において、前記電動機は、前記ギアポンプ本体に保持されて、前記ギアポンプ本体とともに回動自在に設けられてもよい。
【0015】
一実施形態において、前記ギアポンプは、前記ギアポンプ本体のギアと前記電動機の出力軸とをつなぐカップリング部を備え、前記ギアポンプ本体は、前記ゴム供給機への取り付け端部にフランジを備え、前記フランジは、前記電動機を保持する保持部を備えてもよい。
【0016】
一実施形態において、前記カップリング部がたわみ軸継手を備えてもよい。
【0017】
一実施形態において、前記ギアポンプ本体を前記鉛直な軸とともに前記出口部に対して前方に移動させるスライド機構を備えてもよい。
【0018】
本発明の実施形態に係るギアポンプは、ゴムを吐出する吐出口を出口部に持つゴム供給機の前記出口部に取り付けられるギアポンプであって、一対のギアが内蔵されたギアポンプ本体と、前記ギアポンプ本体を前記出口部に取り付けるために前記ゴム供給機に固定される取付部材と、前記ギアポンプ本体を、前記取付部材に対して、幅方向一端部に配された鉛直な軸を中心に回動自在に連結するヒンジ部と、を備えるものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明の実施形態によれば、ゴム供給機の出口部に対してギアポンプ本体が鉛直な軸を中心に回動自在に取り付けられているため、例えば材料替えの際に、ギアポンプ本体を水平方向に回動させて内部を開くことができる。そのため、内部の清掃が容易であり、材料替えを容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】第1の実施形態に係る押出装置の側面図
図2】同押出装置の正面図
図3】同押出装置の断面図(図2のIII-III線断面図)
図4】同押出装置のギアポンプを閉じた状態での斜視図
図5】同押出装置のギアポンプを開いた状態での斜視図
図6】ギアポンプのフランジを示す(a)平面図、(b)正面図、(c)側面図
図7】(a)図2のA-A線断面図、(b)図2のB-B線断面図
図8】第2の実施形態に係る押出装置の正面図
図9】同押出装置の要部拡大側面図
図10】同押出装置のギアポンプの背面図(但し、ヒンジ部の一部は断面で示す)
図11】同押出装置のギアポンプを前方にスライドさせた状態を示す側面図
図12】同押出装置のギアポンプを開いた状態を示す平面概念図
図13】従来の押出装置の断面図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0022】
図1~4に示すように、第1の実施形態に係る押出装置10は、ゴムGを混練して長尺のゴムストリップGSを押出成型するためのゴム押出装置である。押出装置10は、ゴムGを混練して押し出す押出機12と、該押出機12に接続されたギアポンプ14と、ギアポンプ14から送り出されたゴムGを吐出する口金16とを備える。
【0023】
押出機12は、材料としてのゴムGが投入されるホッパ18と、ゴムGに熱を与えながら前方に送り出すスクリュー20と、スクリュー20を内蔵する筒状のシリンダ部22と、スクリュー20を駆動する駆動装置24とを備える。押出機12は、支持台25を介して床面F上に支持されている。
【0024】
図3に示すように、シリンダ部22の下流側には混練されたゴムGを吐出する吐出口26が設けられている。吐出口26は、押出機12の下流側の端面に設けられており、従って該下流側の端部が押出機12の出口部28となっている。ホッパ18から投入されたゴムGは、シリンダ部22内で回転するスクリュー20により混練されながら下流側に送られ、吐出口26から連続して押し出される。
【0025】
ギアポンプ14は、押出機12の出口部28に取り付けられており、押出機12から吐出されたゴムGを口金16に向けて送り出し量を制御しつつ送り出す。ギアポンプ14は、ギアポンプ本体30と、ギアポンプ本体30の下方に設けられた電動機32とを備える。詳細には、電動機32は、ギアポンプ本体30の下方に連結されて、ギアポンプ本体30に保持されている。この例では、ギアポンプ14は更に減速機34を備えており、電動機32は減速機34を介してギアポンプ本体30に連結されている。従って、ギアポンプ14は、ギアポンプ本体30と、その下方に連結された減速機34と、減速機34の下方に連結された電動機32とを備える。
【0026】
ギアポンプ本体30は、直方体状のケーシング36と、該ケーシング36に内蔵された互いに噛み合う一対のギア38,40とを備える。ケーシング36の内部には、ゴムGが流れるチャンバー42が設けられている。チャンバー42は、一対のギア38,40を内蔵するギア室44と、押出機12からのゴムGが流入する入口46と、一対のギア38,40により送り出されたゴムGを吐出する出口48とを備える。ギアポンプ本体30は、チャンバー42の入口46を吐出口26に合わせてシリンダ部22に固定されている。
【0027】
口金16は、チャンバー42の出口48が設けられたギアポンプ本体30の前面に取り付けられ、出口48から吐出されたゴムGをゴムストリップGSとして所定の断面形状に形成する。
【0028】
一対のギア38,40は、左右一対の鉛直な回転軸50,52にそれぞれ設けられて、互いに噛み合うように回転する。なお、ギアの種類(歯すじの形状)や歯形等は特に限定されない。
【0029】
一対の回転軸50,52は、ケーシング36に回転可能に軸支されている。一方のギア38の回転軸50は、ケーシング36の底面から下方に延在しており、電動機32により回転駆動される駆動軸である。もう一方のギア40の回転軸52は、ケーシング36に回転自在に軸支された従動軸である。駆動軸である回転軸50が回転駆動されることにより、一対のギア38,40は、互いに逆方向に回転し、チャンバー42のゴムGを入口46から出口48へと圧送することができる。
【0030】
ギアポンプ14は、ギアポンプ本体30のギア38と電動機32の出力軸とをつなぐカップリング部54を備える。詳細には、駆動側のギア38の回転軸50の下端部がカップリング部54まで延在しており、カップリング部54で減速機34を介して電動機32の出力軸と接続されている。すなわち、電動機32の回転軸がその上方に位置する減速機34に接続され、その出力軸がカップリング部54においてギア38の回転軸50と接続されている。
【0031】
電動機32,減速機34及びカップリング部54としては公知の構成を採用することができる。例えば、電動機32としてはサーボモータが用いられ、減速機34としてはサーボモータ用減速機が用いられる。カップリング部54については、この例では、たわみ軸継手56を含んで構成されており、これにより押出装置10をコンパクトにすることができる。
【0032】
図2に示すように、たわみ軸継手56は、ギア38側の第1継手本体56Aと、電動機32側の第2継手本体56Bとを含む。第2継手本体56Bは、減速機34の回転体に固定されて電動機32により回転駆動される。第1継手本体56Aは、第2継手本体56Bに対して偏心及び偏角等のずれを許容しつつ接続されており、第2継手本体56Bの回転により回転駆動される。ギア38の回転軸50は、第1継手本体56Aの中空部に入り込んで接続され、第1継手本体56Aの回転により回転駆動される。
【0033】
図4及び図5に示すように、ギアポンプ本体30は、押出機12の出口部28に対して、幅方向一端部に配された鉛直な軸58を中心に回動自在に取り付けられている。詳細には、矩形状をなす出口部28の左右両側のうちの一方側の端部に、鉛直な軸58を回動中心とするヒンジ部60が設けられ、ギアポンプ本体30は、該ヒンジ部60を介して押出機12に開閉自在に取り付けられている。
【0034】
この例では、ギアポンプ14は、ギアポンプ本体30と、ギアポンプ本体30を出口部28に取り付けるために押出機12に固定される取付部材61と、ギアポンプ本体30と取付部材61との連結部に設けられてギアポンプ本体30を回動可能に支持するヒンジ部60と、を備える。
【0035】
図3及び図5に示すように、取付部材61は、押出機12の出口部28に取り付けられており、その周縁部がシリンダ部22の前端部において径方向外側に張り出すフランジ62(以下、押出機12側のフランジ62ともいう。)となっている。取付部材61は、中央部に押出機12の吐出口26を受け入れる開口部が設けられた矩形板状をなしており、そのためフランジ62は外形が矩形状をなしている。取付部材61は不図示のボルト等を用いて押出機12に固定されており、固定された状態で該取付部材61により押出機12の出口面が形成されている。
【0036】
ギアポンプ本体30は、押出機12への取り付け端部に径方向外方に張り出すフランジ64を備える。フランジ64は、押出機12側のフランジ62と重なり合う矩形状の外形形状を持つ。この例では、ギアポンプ本体30のケーシング36はフランジ64を介して押出機12の出口部28に固定されている。
【0037】
取付部材61のフランジ62の一端部には、ヒンジシャフト60Aが挿通される挿通孔を持つ第1ヒンジ部60Bが設けられている。ギアポンプ本体30のフランジ64の一端部には、ヒンジシャフト60Aが挿通される挿通孔を持つ第2ヒンジ部60Cが上下一対に設けられている。そして、鉛直な軸58を軸心とするヒンジシャフト60Aを第1ヒンジ部60B及び第2ヒンジ部60Cに挿通させて組付けることによりヒンジ部60が構成されている。
【0038】
なお、ヒンジ部の構成はこれに限定されるものではなく、例えば、押出機側とギアポンプ本体側のいずれか一方に設けた凸部を上記鉛直な軸とし、いずれか他方に該凸部を設ける軸受けを設けて、該鉛直な軸を中心に回動自在に支持するように構成してもよい。
【0039】
ギアポンプ本体30は、押出機12の出口面を覆うように出口部28に固定されている。ギアポンプ本体30を出口部28に固定するための締結構造66として、この例では、ヒンジボルト68が用いられている。ヒンジボルト68による締結構造66は、矩形状をなす出口面の四隅、即ち各角部に設けられている。
【0040】
詳細には、図2図7(a)及び(b)に示すように、締結構造66は、押出機12側のフランジ62の角部に設けられたヒンジボルト68と、ギアポンプ本体30のフランジ64に設けられた受入凹所70と、ナット72とを備えて構成されている。
【0041】
ヒンジボルト68は、フランジ62に設けられたピン74を中心に回動自在に設けられている。ピン74は、図2に示すように矩形状をなすフランジ62の対角線に対して直交する方向に配されており、ヒンジボルト68は、該ピン74に取り付けられて、押出機12の軸方向(スクリュー20の軸方向と同じ)に対して平行な方向から外向き(即ち、ヒンジボルト68の先端部が押出機12の軸心から離れる方向)に回動可能に設けられている。
【0042】
受入凹所70は、ヒンジボルト68の軸部68Aを受け入れるために設けられた凹部であり、矩形状をなすフランジ64の各角部において外向き、即ち放射方向に開いた形状となるようにU字状に切り欠くことで形成されている。
【0043】
ナット72は、ヒンジボルト68の軸部68Aのネジと螺合してフランジ64を固定する部材であり、各受入凹所70にヒンジボルト68の軸部68Aを受け入れた状態でナット72を締め付けることにより、ヒンジボルト68が設けられたフランジ62とナット72との間に挟まれたギアポンプ本体30のフランジ64が固定される。
【0044】
図5に示すように、ヒンジボルト68の軸部68Aの長さは、ナット72による締結を解除し、ヒンジボルト68を回動させて軸部68Aを受入凹所70から離脱させる際に、ナット72を軸部68Aの先端に螺合させた状態のままでヒンジボルト68を回動させることできる程度の長さに設定されている。
【0045】
ギアポンプ本体30のケーシング36と押出機12の出口部28との間に介在するフランジ64は、電動機32を保持する保持部76を備える。電動機32は、該保持部76によりギアポンプ本体30に保持されている。詳細には、図4及び図5に示すように、フランジ64は、ケーシング36と出口部28との間に介在する矩形板状の本体部78と、本体部78の下端から前方に延設された保持部76とを備える。
【0046】
図6(a)~(c)に示すように、フランジ64の本体部78には、その中央部にケーシング36の入口46に対応する開口部78Aが設けられている。本体部78の各角部には受入凹所70が設けられている。本体部78の幅方向一端部にはヒンジ部60を構成する上下一対の第2ヒンジ部60C,60Cが設けられている。
【0047】
フランジ64の保持部76は、図1及び図4に示すように、ケーシング36の下方においてケーシング36の底面と平行に延びている。保持部76には、カップリング部54の外周を取り囲む円形の開口部76Aが設けられている。
【0048】
図2に示すように、保持部76には減速機34を介して電動機32が固定されており、これにより保持部76は電動機32を保持する。詳細には、電動機32の上面に連結一体化された減速機34が、ボルト80を用いて締結することにより保持部76の下面に固定されている。これにより、電動機32,減速機34及びカップリング部54(詳細には第2継手本体56B)が保持部76に固定されて、保持部76に対して吊り下げられた状態に保持されている。
【0049】
以上よりなる本実施形態の押出装置10であると、押出機12の出口部28に対してギアポンプ本体30を鉛直な軸58を中心に回動可能に取り付けたので、図4に示す状態からギアポンプ本体30を、図5に示すように水平方向において手前(即ち、前方)に回動させて内部を開くことができ、その状態で滞留ゴムを除去することができる。そのため、例えば材料替えを行う際に、押出機12とギアポンプ14との連結部の清掃が容易となり、材料替えを容易に行うことができる。
【0050】
また、押出機12に対するギアポンプ本体30の締結が、ヒンジボルト68とナット72を用いたヒンジボルト-ナット構造によるため、押出機12に対するギアポンプ本体30の締結作業を容易に行うことができる。
【0051】
詳細には、図4に示す状態から締結を解除する際には、ナット72をゆるめて、図5に示すようにヒンジボルト68をピン74を中心として外側に起こすように回動させればよい。また、図5に示す状態から締結する際には、ギアポンプ本体30をヒンジ部60により回動させて、押出機12の出口部28にギアポンプ本体30のフランジ64を重ね、その状態でヒンジボルト68を手前に回動させて、その軸部68Aをフランジ64の受入凹所70に入れ、ナット72を軸部68Aに螺合させて締め付ければよい。このとき、一般的なボルト-ナット構造であると、ボルトやナットが落下してしまうことがある。これに対し、本実施形態によれば、ナット72をヒンジボルト68の軸部68Aの先端に付けたまま締結を解除し、ギアポンプ本体30を回動させることができるため、ヒンジボルト68だけでなくナット72の落下も防止することができる。
【0052】
また、本実施形態であると、電動機32がギアポンプ本体30の下方に設けられているため、空間を有効活用して省スペース化を図ることができる。
【0053】
また、本実施形態であると、電動機32がギアポンプ本体30に保持されて、ギアポンプ本体30とともに回動自在に構成されている。詳細には、ギアポンプ本体30とともにその下方に連結された電動機32も含めてギアポンプ14が水平方向に回動可能である。水平方向に回動するため、重いギアポンプ14を小さな力で回動させて開くことができ、またギアポンプ14を開いた状態に保持しやすい。そのため、作業者に対する負担を軽減することができる。
【0054】
本実施形態によれば、また、ギアポンプ本体30のギア38と電動機32の出力軸とをつなぐカップリング部54を設けたものにおいて、ギアポンプ本体30のフランジ64に電動機32を保持する保持部76を設けたので、カップリング部54を有するものでありながら、電動機32をギアポンプ本体30に対して吊り下げ保持することができる。そのため、電動機32とともにギアポンプ本体30を回動させて開くことができ、ギアポンプ14の開閉作業が妨げられないようにすることができる。
【0055】
また、カップリング部54がたわみ軸継手56で構成されているので、押出装置10の装置全体をコンパクトにすることができる。
【0056】
図8~12は、第2の実施形態に係る押出装置10Aを示した図である。該押出装置10Aは、ギアポンプ本体30を鉛直な軸58とともに出口部28に対して前方に移動させるスライド機構82を設けた点で、第1の実施形態に係る押出装置10とは異なる。すなわち、押出装置10Aでは、図12に示すように、ギアポンプ本体30を手前に引き出して回動させることができるように構成されている。
【0057】
スライド機構82は、ヒンジ部60に設けられている。詳細には、第1ヒンジ部60Bが取付部材61に対して前後方向にスライド自在に設けられている。図9に示すように、第1ヒンジ部60Bは、後方に延設されることで前後方向に延びるブロック状に形成されている。図9~11に示すように、取付部材61のフランジ62には、第1ヒンジ部60Bを前後方向にスライド可能に支持する係合溝84が設けられている。このようにスライド機構82は、第1ヒンジ部60Bと係合溝84とを備えて構成されている。
【0058】
また、スライド量を規制するために、第1ヒンジ部60Bには前後方向に延びる長孔86が設けられ、フランジ62には該長孔86に差し込まれる規制突起88がボルトにより設けられている。そして、第1ヒンジ部60Bが前後にスライドすることで長孔86内における規制突起88の位置が変位し、これにより長孔86の前後方向長さに応じて第1ヒンジ部60Bのスライド量が規制されるようになっている。
【0059】
第2の実施形態の押出装置10Aでは、スライド機構82を設けたことにより、図11及び図12に示すように、ギアポンプ本体30を、鉛直な軸58とともに前方に引き出すことができる。この例では、ギアポンプ本体30はフランジ64とともに前後にスライド自在に構成されており、更にフランジ64を介して電動機32及び減速機34がギアポンプ本体30に保持されているため、これらを一体に前方に引き出すことができる。
【0060】
そのため、押出装置10Aであると、図11に示すように、ナット72をゆるめてヒンジボルト68を回動させることで締結構造66による締結を解除し(矢印A1)、次いで、ギアポンプ14を前方に引き出して、押出機12のスクリュー軸方向に離隔させる(矢印A2)。その後、図12に示すように、ギアポンプ14を水平方向に回動させて内部を開くことができ、滞留ゴムを除去することができる。この構成は、押出機12の手前側左右に空間的余裕がない場合に有効であり、一旦手前に引き出すことにより、水平方向に回動させるための空間を確保することかできる。
【0061】
なお、スライド機構82は上記構成に限定されるものではなく、ギアポンプ本体30を手前に引き出すことができれば、種々のスライド機構を採用することができる。
【0062】
第2の実施形態の押出装置10Aについて、その他の構成及び作用効果については基本的に第1の実施形態に係る押出装置10と同様であり、説明は省略する。
【0063】
なお、上記第1及び第2の実施形態では、ギアポンプ14にゴムを供給するゴム供給機として押出機12を用いたが、ゴムを供給することができれば、押出機には限定されず、例えば射出機を用いてもよい。
【0064】
また、ギアポンプ14の一対のギア38,40として鉛直な回転軸50,52を持つ場合について説明したが、水平な回転軸を上下一対で配したものについて適用してもよい。
【0065】
また、電動機32をギアポンプ本体30の下方に保持した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、電動機はギアポンプ本体の上方や側方に保持されてもよい。
【0066】
また、減速機34の下方に電動機32を連結一体化した場合について説明したが、減速機の側面に電動機を連設してもよい。例えば、ギアポンプ本体の底面に連設された減速機を介してその側面(ここでいう側面とは、左右両側面だけでなく、前面及び後面も包含する意味で用いている)に連設されてもよい。すなわち、電動機をギアポンプ本体の下方に設ける場合、電動機はギアポンプ本体の真下に設けられている必要はなく、ギアポンプ本体に対して下方に設けられていれば、例えば押出機のシリンダ部の下方の空間に配されてもよい。
【0067】
また、押出機12側にヒンジボルト68を設け、ギアポンプ本体30側に受入凹所70を持つフランジ64を設けたが、これに代えて、ギアポンプ本体側にヒンジボルトを設け、押出機側に受入凹所を設けてもよい。
【0068】
また、ギアポンプ本体30のフランジ64をケーシング36とは別部材により構成したが、これらは一体に形成してもよい。すなわち、ケーシング36の後端部に径方向外側に一体に張り出すフランジ部を設けて、これに上記の受入凹所70や第2ヒンジ部60Cを設けてもよい。
【0069】
本実施形態の押出装置は、タイヤ成型装置においてタイヤ構成部材を成型するための押出装置として好適に用いることができるが、これに限定されるものではなく、ゴムの押し出しを行う種々の押出装置に用いることができる。
【0070】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これら実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0071】
10,10A…押出装置、12…押出機(ゴム供給機)、14…ギアポンプ、26…吐出口、28…出口部、30…ギアポンプ本体、32…電動機、38,40…ギア、50,52…回転軸、54…カップリング部、56…たわみ軸継手、58…軸、64…フランジ、66…締結構造、68…ヒンジボルト、70…受入凹所、72…ナット、76…保持部、82…スライド機構
図1
図2
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図4
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図13