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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-03
(45)【発行日】2023-10-12
(54)【発明の名称】作動流体供給システム
(51)【国際特許分類】
   F04C 14/00 20060101AFI20231004BHJP
【FI】
F04C14/00 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019203015
(22)【出願日】2019-11-08
(65)【公開番号】P2021076063
(43)【公開日】2021-05-20
【審査請求日】2022-07-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】弘中 剛史
(72)【発明者】
【氏名】長島 碧
(72)【発明者】
【氏名】津久井 謙
(72)【発明者】
【氏名】室田 和哉
【審査官】谿花 正由輝
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2009/0113888(US,A1)
【文献】特開2015-197212(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 14/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体機器へ作動流体を供給する作動流体供給システムであって、
第1駆動源の出力により駆動され前記流体機器へ作動流体を供給可能な第1ポンプと、
前記第1駆動源の出力により駆動され前記流体機器へ作動流体を供給可能な第2ポンプと、
前記第2ポンプからの作動流体の供給先を、前記第1ポンプの吐出側と、前記第1ポンプの吸込側と、の何れか一方に切り換え可能な第1切換弁と、
前記流体機器で必要とされる作動流体の必要流量に応じて前記第1切換弁を切り換え制御する第1切換制御部と、
前記第2ポンプからの作動流体の供給先が前記第1ポンプの吸込側となるように前記第1切換弁が切り換えられているときに、前記第1ポンプの吸込側の圧力が所定の第1圧力となるように制御する第1圧力制御部と、を備え、
前記第1圧力制御部は、
前記第1切換弁と前記第1ポンプの吸込側とを接続する還流通路に設けられ前記第2ポンプからの作動流体の供給先を、前記第1ポンプの吸込側と、作動流体が貯留されるタンクと、の何れか一方に切り換え可能な第2切換弁と、
前記第1ポンプの吸込側の圧力が前記第1圧力以下である場合には、前記第2ポンプからの作動流体の供給先が前記第1ポンプの吸込み側となるように前記第2切換弁を切り換え、前記第1ポンプの吸込側の圧力が前記第1圧力よりも大きい場合には、前記第2ポンプからの作動流体の供給先が前記タンクとなるように前記第2切換弁を切り換える第2切換制御部と、を有することを特徴とする作動流体供給システム。
【請求項2】
流体機器へ作動流体を供給する作動流体供給システムであって、
第1駆動源の出力により駆動され前記流体機器へ作動流体を供給可能な第1ポンプと、
前記第1駆動源の出力により駆動され前記流体機器へ作動流体を供給可能な第2ポンプと、
前記第2ポンプからの作動流体の供給先を、前記第1ポンプの吐出側と、前記第1ポンプの吸込側と、の何れか一方に切り換え可能な第1切換弁と、
前記流体機器で必要とされる作動流体の必要流量に応じて前記第1切換弁を切り換え制御する第1切換制御部と、
前記第2ポンプからの作動流体の供給先が前記第1ポンプの吸込側となるように前記第1切換弁が切り換えられているときに、前記第1ポンプの吸込側の圧力が所定の第1圧力となるように制御する第1圧力制御部と、を備え、
前記作動流体供給システムは、
前記第1駆動源とは別の第2駆動源の出力により駆動され前記流体機器へ作動流体を供給可能な第3ポンプと、
前記第3ポンプからの作動流体の供給先を、前記第1ポンプの吐出側と、前記第1ポンプ及び前記第2ポンプの吸込側と、の何れか一方に切り換え可能な第3切換弁と、
前記流体機器で必要とされる作動流体の前記必要流量に応じて前記第3切換弁を切り換え制御する第3切換制御部と、
前記第3ポンプからの作動流体の供給先が前記第1ポンプ及び前記第2ポンプの吸込側となるように前記第3切換弁が切り換えられているときに、前記第1ポンプ及び前記第2ポンプの吸込側の圧力が所定の第2圧力となるように制御する第2圧力制御部と、をさらに備えることを特徴とする作動流体供給システム。
【請求項3】
前記第1圧力制御部は、
前記第1切換弁と前記第1ポンプの吸込側とを接続する還流通路から分岐し、作動流体が貯留されるタンクに接続されるリリーフ通路と、
前記リリーフ通路に設けられ、前記還流通路の圧力が前記第1圧力よりも大きくなったときに開弁し、前記還流通路と前記タンクとを連通するリリーフ弁と、を有することを特徴とする請求項2に記載の作動流体供給システム。
【請求項4】
流体機器へ作動流体を供給する作動流体供給システムであって、
第1駆動源の出力により駆動され前記流体機器へ作動流体を供給可能な第1ポンプと、
前記第1駆動源とは別の第2駆動源の出力により駆動され前記流体機器へ作動流体を供給可能な第2ポンプと、
前記第2ポンプからの作動流体の供給先を、前記第1ポンプの吐出側と、前記第1ポンプの吸込側と、の何れか一方に切り換え可能な第1切換弁と、
前記流体機器で必要とされる作動流体の必要流量に応じて前記第1切換弁を切り換え制御する第1切換制御部と、
前記第2ポンプからの作動流体の供給先が前記第1ポンプの吸込側となるように前記第1切換弁が切り換えられているときに、前記第1ポンプの吸込側の圧力が所定の第1圧力となるように制御する第1圧力制御部と、を備え、
前記第1圧力制御部は、
前記第1ポンプの吸込側の圧力が前記第1圧力以下である場合には、前記第2駆動源の出力を増大させ、前記第1ポンプの吸込側の圧力が前記第1圧力よりも大きい場合には、前記第2駆動源の出力を低下させる出力制御部を有することを特徴とする作動流体供給システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体機器へ作動流体を供給する作動流体供給システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、駆動源の出力により駆動され流体機器へ作動流体を供給可能なメインポンプ及びサブポンプを備えた作動流体供給システムが開示されている。この作動流体供給システムでは、サブポンプから吐出された作動流体を、メインポンプの吸込み側へと戻すことにより、キャビテーションの発生を抑制するとともにポンプ効率を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平10-266978号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の作動流体供給システムでは、サブポンプから吐出される作動流体が余剰である限り、サブポンプから吐出された作動流体をメインポンプの吸込み側へと戻している。サブポンプからメインポンプの吸込み側へと供給される作動流体が多くなるにつれてメインポンプの効率は向上されるが、メインポンプの吸込み量に対してサブポンプからの供給量が過剰となると、メインポンプの吸込み側の圧力、すなわち、サブポンプの吐出側の圧力が上昇し、結果として、サブポンプの駆動負荷が増大することになる。このように、サブポンプの駆動負荷が増大すると、メインポンプの効率が向上したとしても、作動流体供給システム全体としては、効率が低下してしまうおそれがある。
【0005】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、作動流体供給システムの効率を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、流体機器へ作動流体を供給する作動流体供給システムが、第1駆動源の出力により駆動され流体機器へ作動流体を供給可能な第1ポンプと、第1駆動源の出力により駆動され流体機器へ作動流体を供給可能な第2ポンプと、第2ポンプからの作動流体の供給先を、第1ポンプの吐出側と、第1ポンプの吸込側と、の何れか一方に切り換え可能な第1切換弁と、流体機器で必要とされる作動流体の必要流量に応じて第1切換弁を切り換え制御する第1切換制御部と、第2ポンプからの作動流体の供給先が第1ポンプの吸込側となるように第1切換弁が切り換えられているときに、第1ポンプの吸込側の圧力が所定の第1圧力となるように制御する第1圧力制御部と、を備え、第1圧力制御部が、第1切換弁と第1ポンプの吸込側とを接続する還流通路に設けられ第2ポンプからの作動流体の供給先を、第1ポンプの吸込側と、作動流体が貯留されるタンクと、の何れか一方に切り換え可能な第2切換弁と、第1ポンプの吸込側の圧力が第1圧力以下である場合には、第2ポンプからの作動流体の供給先が第1ポンプの吸込み側となるように第2切換弁を切り換え、第1ポンプの吸込側の圧力が第1圧力よりも大きい場合には、第2ポンプからの作動流体の供給先がタンクとなるように第2切換弁を切り換える第2切換制御部と、を有することを特徴とする。
【0007】
この発明では、第2ポンプからの作動流体の供給先が第1ポンプの吸込側となるように第1切換弁が切り換えられているとき、第1ポンプの吸込側の圧力が所定の第1圧力となるように、第1圧力制御部によって、第2ポンプから第1ポンプの吸込側への作動流体の供給が制御される。このように、第2ポンプから吐出された作動流体を第1ポンプの吸込側へ供給することにより、第1ポンプの吸込み側の圧力が過度に負圧となることが抑制されることで第1ポンプの吸込側においてキャビテーションを生じにくくすることが可能であるとともに、第1ポンプの吸込み側の圧力を上昇させることで第1ポンプのポンプ効率を向上させることが可能である。また、第1ポンプの吸込側の圧力が所定の第1圧力となるように、第2ポンプから第1ポンプの吸込側への作動流体の供給を制御することによって、第2ポンプの駆動負荷が過大となることを抑制することにより、作動流体供給システムの全体効率を向上させることができる。また、この発明では、第2ポンプからの作動流体の供給先が第1ポンプの吸込側となるように第1切換弁が切り換えられているとき、第1ポンプの吸込側の圧力が所定の第1圧力となるように、第2切換弁及び第2切換制御部によって、第2ポンプから第1ポンプの吸込側への作動流体の供給が制御される。このように、第2ポンプから吐出された作動流体を第1ポンプの吸込側へ戻すことにより、第1ポンプの吸込み側の圧力が過度に負圧となることが抑制されることで第1ポンプの吸込側においてキャビテーションを生じにくくすることが可能であるとともに、第1ポンプの吸込み側の圧力を上昇させることで第1ポンプのポンプ効率を向上させることが可能である。また、第1ポンプの吸込側の圧力が所定の第1圧力となるように、第2ポンプから第1ポンプの吸込側への作動流体の供給を制御することによって、第2ポンプの駆動負荷が過大となることを抑制することにより、作動流体供給システムの全体効率を向上させることができる。
【0008】
また、本発明は、第2ポンプが、第1駆動源の出力により駆動され、作動流体供給システムが、第2駆動源の出力により駆動され流体機器へ作動流体を供給可能な第3ポンプと、第3ポンプからの作動流体の供給先を、第1ポンプの吐出側と、第1ポンプ及び第2ポンプの吸込側と、の何れか一方に切り換え可能な第3切換弁と、流体機器で必要とされる作動流体の必要流量に応じて第3切換弁を切り換え制御する第3切換制御部と、第3ポンプからの作動流体の供給先が第1ポンプ及び第2ポンプの吸込側となるように第3切換弁が切り換えられているときに、第1ポンプ及び第2ポンプの吸込側の圧力が所定の第2圧力となるように制御する第2圧力制御部と、をさらに備えることを特徴とする。
【0009】
この発明では、第3ポンプからの作動流体の供給先が第1ポンプ及び第2ポンプの吸込側となるように第3切換弁が切り換えられているとき、第1ポンプの吸込側の圧力が所定の第2圧力となるように、第2圧力制御部によって、第3ポンプから第1ポンプ及び第2ポンプの吸込側への作動流体の供給が制御される。このように、第3ポンプから吐出された作動流体を第1ポンプ及び第2ポンプの吸込側へ供給することにより、第1ポンプ及び第2ポンプの吸込み側の圧力が過度に負圧となることが抑制されることで第1ポンプ及び第2ポンプの吸込側においてキャビテーションを生じにくくすることが可能であるとともに、第1ポンプ及び第2ポンプの吸込み側の圧力を上昇させることで第1ポンプ及び第2ポンプのポンプ効率を向上させることが可能である。また、第1ポンプ及び第2ポンプの吸込側の圧力が所定の第2圧力となるように、第3ポンプから第1ポンプ及び第2ポンプの吸込側への作動流体の供給を制御することによって、第3ポンプの駆動負荷が過大となることを抑制することにより、作動流体供給システムの全体効率を向上させることができる。
【0010】
また、本発明は、第2ポンプが、第1駆動源の出力により駆動され、第1圧力制御部が、第1切換弁と第1ポンプの吸込側とを接続する還流通路から分岐し、作動流体が貯留されるタンクに接続されるリリーフ通路と、リリーフ通路に設けられ、還流通路の圧力が第1圧力よりも大きくなったときに開弁し、還流通路とタンクとを連通するリリーフ弁と、を有することを特徴とする。
【0011】
この発明では、第2ポンプからの作動流体の供給先が第1ポンプの吸込側となるように第1切換弁が切り換えられているとき、第1ポンプの吸込側の圧力が所定の第1圧力となるように、リリーフ弁及びリリーフ通路によって、第2ポンプから第1ポンプの吸込側への作動流体の供給が制御される。このように、第2ポンプから吐出された作動流体を第1ポンプの吸込側へ戻すことにより、第1ポンプの吸込み側の圧力が過度に負圧となることが抑制されることで第1ポンプの吸込側においてキャビテーションを生じにくくすることが可能であるとともに、第1ポンプの吸込み側の圧力を上昇させることで第1ポンプのポンプ効率を向上させることが可能である。また、第1ポンプの吸込側の圧力が所定の第1圧力となるように、第2ポンプから第1ポンプの吸込側への作動流体の供給を制御することによって、第2ポンプの駆動負荷が過大となることを抑制することにより、作動流体供給システムの全体効率を向上させることができる。
【0014】
また、本発明は、第2ポンプが、第2駆動源の出力により駆動され、第1圧力制御部が、第1ポンプの吸込側の圧力が第1圧力以下である場合には、第2駆動源の出力を増大させ、第1ポンプの吸込側の圧力が第1圧力よりも大きい場合には、第2駆動源の出力を低下させる出力制御部を有することを特徴とする。
【0015】
この発明では、第2ポンプからの作動流体の供給先が第1ポンプの吸込側となるように第1切換弁が切り換えられているとき、第1ポンプの吸込側の圧力が所定の第1圧力となるように、出力制御部によって、第2ポンプから第1ポンプの吸込側への作動流体の供給が制御される。このように、第2ポンプから吐出された作動流体を第1ポンプの吸込側へ供給することにより、第1ポンプの吸込み側の圧力が過度に負圧となることが抑制されることで第1ポンプの吸込側においてキャビテーションを生じにくくすることが可能であるとともに、第1ポンプの吸込み側の圧力を上昇させることで第1ポンプのポンプ効率を向上させることが可能である。また、第1ポンプの吸込側の圧力が所定の第1圧力となるように、第2ポンプから第1ポンプの吸込側への作動流体の供給を制御することによって、第2ポンプの駆動負荷が過大となることを抑制することにより、作動流体供給システムの全体効率を向上させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、作動流体供給システムの効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1実施形態に係る作動流体供給システムの構成を示す概略図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る作動流体供給システムのコントローラの機能を説明するためのブロック図である。
図3】本発明の第1実施形態に係る作動流体供給システムのコントローラによって実行される供給状態設定制御の手順を示すフローチャートである。
図4】本発明の第1実施形態に係る作動流体供給システムのコントローラによって実行される第1還流制御について説明するための図である。
図5】本発明の第1実施形態に係る作動流体供給システムのコントローラによって実行される第1還流制御の手順を示すフローチャートである。
図6】本発明の第1実施形態に係る作動流体供給システムのコントローラによって実行される第2還流制御について説明するための図である。
図7】本発明の第1実施形態に係る作動流体供給システムのコントローラによって実行される第2還流制御の手順を示すフローチャートである。
図8】本発明の第2実施形態に係る作動流体供給システムの構成を示す概略図である。
図9】本発明の第3実施形態に係る作動流体供給システムの構成を示す概略図である。
図10】本発明の第3実施形態に係る作動流体供給システムのコントローラによって実行される還流制御について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0019】
<第1実施形態>
図1を参照して、本発明の第1実施形態に係る作動流体供給システム100について説明する。
【0020】
作動流体供給システム100は、作動流体によって作動する流体機器へ作動流体を供給するシステムである。以下では、作動流体供給システム100が、エンジン50と、エンジン50の出力を駆動輪に伝達する自動変速機70と、を備える車両に搭載され、ベルト式無段変速機構(CVT)を有する流体機器としての自動変速機70に対して作動流体を供給する場合について説明する。図1は、作動流体供給システム100の構成を示す概略図である。
【0021】
作動流体供給システム100は、第1駆動源としてのエンジン50の出力により駆動され自動変速機70へ作動流体としての作動油を供給可能な第1ポンプとしての第1オイルポンプ10と、第1オイルポンプ10とともにエンジン50の出力により駆動され自動変速機70へ作動油を供給可能な第2ポンプとしての第2オイルポンプ11と、エンジン50とは別の第2駆動源としての電動モータ60の出力により駆動され自動変速機70へ作動油を供給可能な第3ポンプとしての第3オイルポンプ30と、第2オイルポンプ11からの作動油の供給先を、第1オイルポンプ10の吐出側と、第1オイルポンプ10の吸込側と、の何れか一方に切り換え可能な第1切換弁22と、第3オイルポンプ30からの作動油の供給先を、第1オイルポンプ10の吐出側と、第1オイルポンプ10の吸込側と、の何れか一方に切り換え可能な第3切換弁36と、電動モータ60や第1切換弁22、第3切換弁36の作動を制御し自動変速機70への作動油の供給状態を制御するコントローラ40と、を備える。
【0022】
第1オイルポンプ10は、エンジン50によって回転駆動されるベーンポンプであり、第1吸込管12を通じてタンクTに貯留された作動油を吸引し、第1吐出管13を通じて自動変速機70へと作動油を吐出する。第1吸込管12には、タンクTから第1オイルポンプ10への作動油の流れのみを許容する逆止弁14が設けられる。
【0023】
第2オイルポンプ11は、第1オイルポンプ10と同様に、エンジン50によって回転駆動されるベーンポンプであり、第2吸込管16を通じてタンクTに貯留された作動油を吸引し、第2吐出管17を通じて作動油を吐出する。第2吸込管16には、タンクTから第2オイルポンプ11への作動油の流れのみを許容する逆止弁18が設けられる。
【0024】
第1オイルポンプ10と第2オイルポンプ11とは、別々に構成される2つのベーンポンプであってもよいし、2つの吸込領域と2つの吐出領域とを有する平衡型ベーンポンプのように1つのベーンポンプで構成されるものであってもよい。また、第1オイルポンプ10の吐出流量と第2オイルポンプ11の吐出流量とは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0025】
第2吐出管17は、第1切換弁22と第1接続管19とを介して第1吐出管13に接続される。第1接続管19には、第2オイルポンプ11から自動変速機70への作動油の流れのみを許容する逆止弁21が設けられる。また、第1接続管19が接続される第1吐出管13には、第1接続管19が接続される位置よりも上流側に、第1オイルポンプ10から自動変速機70への作動油の流れのみを許容する逆止弁15が設けられる。
【0026】
第1切換弁22は、電気的に駆動される切換弁であり、第2吐出管17と第1接続管19とを連通させる第1位置22aと、第2吐出管17と還流通路としての第1還流通路20とを連通させる第2位置22bと、の2つの位置を有する。第1切換弁22の位置はコントローラ40によって制御されるが、非通電時は、第2位置22bとなるように付勢されている。
【0027】
作動流体供給システム100は、一端が第1切換弁22に接続される第1還流通路20の他端に設けられる第2切換弁25をさらに備える。
【0028】
第2切換弁25は、第1切換弁22と同様に電気的に駆動される切換弁であり、第1還流通路20と分岐通路24とを連通させる第1位置25aと、第1還流通路20と還流通路としての第2還流通路23とを連通させる第2位置25bと、の2つの位置を有する。第2切換弁25の位置はコントローラ40によって制御されるが、非通電時は、第1位置25aとなるように付勢されている。
【0029】
分岐通路24は、一端が第2切換弁25に接続され、他端がタンクTに接続されている。また、第2還流通路23は、一端が第2切換弁25に接続され、他端が第1オイルポンプ10の吸込み側である第1吸込管12の逆止弁14よりも下流側の部分に接続されている。
【0030】
また、第1オイルポンプ10の吸込み側である第1吸込管12の逆止弁14よりも下流側の部分には、第1オイルポンプ10の吸込み圧を検出可能な圧力センサ26が設けられている。圧力センサ26で検出された検出値はコントローラ40に入力される。
【0031】
上記構成の第1切換弁22が第1位置22aに切り換えられた状態では、第2吐出管17と第1接続管19とが連通し、第2吐出管17と第1還流通路20との連通は遮断される。このため、第2オイルポンプ11から吐出された作動油は第1接続管19を通じて自動変速機70へと供給される。
【0032】
一方、第1切換弁22が第2位置22bに切り換えられた状態では、第2吐出管17と第1還流通路20とが連通し、第2吐出管17と第1接続管19との連通は遮断される。この状態において、上記構成の第2切換弁25の位置が第1位置25aであるときは、第1還流通路20は分岐通路24と連通する。このため、第2オイルポンプ11から吐出された作動油は、第1還流通路20及び分岐通路24を通じてタンクTへと排出される。
【0033】
一方、この状態において、第2切換弁25の位置が第2位置25bであるときは、第1還流通路20は第2還流通路23と連通する。このため、第2オイルポンプ11から吐出された作動油は、第1還流通路20及び第2還流通路23を通じて第1オイルポンプ10の吸込側へと供給される。
【0034】
つまり、第1切換弁22の位置が第2位置22bであり、且つ、第2切換弁25の位置が第1位置25aであるときには、第2オイルポンプ11の吸入側と吐出側との両方がタンクTに連通した状態となり、第2オイルポンプ11の吸入側と吐出側との圧力差がほぼゼロとなる。したがって、第2オイルポンプ11を無負荷運転状態、すなわち、第2オイルポンプ11を駆動させる負荷がエンジン50に対してほとんどかからない状態とすることが可能である。
【0035】
また、第1切換弁22の位置が第2位置22bであり、且つ、第2切換弁25の位置が第2位置25bであるときには、第2オイルポンプ11から吐出された作動油が、第1オイルポンプ10の吸込側へと供給される状態となる。したがって、第1オイルポンプ10の吸込み側の圧力が過度に負圧となることが抑制されることでキャビテーションを生じにくくすることが可能である。また、第1オイルポンプ10の吸込み側の圧力を上昇させることで第1オイルポンプ10のポンプ効率を向上させることが可能である。
【0036】
第3オイルポンプ30は、電動モータ60によって回転駆動される内接歯車ポンプであり、吸込管31を通じてタンクTに貯留された作動油を吸引し、第3吐出管32を通じて作動油を吐出する。
【0037】
第3吐出管32は、第3切換弁36と第2接続管33とを介して第1吐出管13に接続される。第2接続管33には、第3オイルポンプ30から自動変速機70への作動油の流れのみを許容する逆止弁35が設けられる。
【0038】
第3切換弁36は、電気的に駆動される切換弁であり、第3吐出管32と第2接続管33とを連通させる第1位置36aと、第3吐出管32と還流通路としての第3還流通路34とを連通させる第2位置36bと、の2つの位置を有する。第3切換弁36の位置はコントローラ40によって制御されるが、非通電時は、第1位置36aとなるように付勢されている。
【0039】
第3還流通路34は、一端が第3切換弁36に接続され、他端が第1オイルポンプ10の吸込み側である第1吸込管12の逆止弁14よりも下流側の部分に接続されるとともに、第2オイルポンプ11の吸込み側である第2吸込管16の逆止弁18よりも下流側の部分に接続されている。
【0040】
上記構成の第3切換弁36が第1位置36aに切り換えられた状態では、第3吐出管32と第2接続管33とが連通し、第3吐出管32と第3還流通路34との連通は遮断される。このため、第3オイルポンプ30から吐出された作動油は第2接続管33を通じて自動変速機70へと供給される。
【0041】
一方、第3切換弁36が第2位置36bに切り換えられた状態では、第3吐出管32と第3還流通路34とが連通し、第3吐出管32と第2接続管33との連通が遮断される。このため、第3オイルポンプ30から吐出された作動油は、第3還流通路34を通じて第1オイルポンプ10及び第2オイルポンプ11の吸込側へと供給される。
【0042】
つまり、第3切換弁36の位置が第2位置36bであるときには、第3オイルポンプ30から吐出された作動油が、第1オイルポンプ10及び第2オイルポンプ11の吸込側へと供給される状態となる。したがって、第1オイルポンプ10及び第2オイルポンプ11の吸込み側の圧力が過度に負圧となることが抑制されることでキャビテーションを生じにくくすることが可能である。また、第1オイルポンプ10及び第2オイルポンプ11の吸込み側の圧力を上昇させることで第1オイルポンプ10及び第2オイルポンプ11のポンプ効率を向上させることが可能である。
【0043】
第3オイルポンプ30を回転駆動する電動モータ60の出力は、コントローラ40によって制御される。このため、第3オイルポンプ30の吐出流量は、電動モータ60の出力を変更することで自在に変更することが可能である。
【0044】
このように、作動流体供給システム100では、第1オイルポンプ10、第2オイルポンプ11及び第3オイルポンプ30の3つのオイルポンプから自動変速機70へと作動油を供給することが可能である。
【0045】
なお、第1切換弁22、第2切換弁25及び第3切換弁36の位置は、図示しないソレノイドによって図示しない弁体が直接駆動されることによって切り換えられるものであってもよいし、弁体に作用するパイロット圧力の有無によって切り換えられるものであってもよく、これら切換弁の駆動方式としては、コントローラ40からの指令に応じてその位置が切り換わればどのような方式が採用されてもよい。
【0046】
次に、図2を参照し、コントローラ40について説明する。図2は、コントローラ40の機能を説明するためのブロック図である。
【0047】
コントローラ40は、CPU(中央演算処理装置)、ROM(リードオンリメモリ)、RAM(ランダムアクセスメモリ)、及びI/Oインターフェース(入出力インターフェース)を備えたマイクロコンピュータで構成される。RAMはCPUの処理におけるデータを記憶し、ROMはCPUの制御プログラム等を予め記憶し、I/Oインターフェースはコントローラ40に接続された機器との情報の入出力に使用される。コントローラ40は、複数のマイクロコンピュータで構成されていてもよい。
【0048】
コントローラ40は、車両の各部に設けられた各種センサから入力される車両の状態を示す信号及び圧力センサ26の検出値に基づき、電動モータ60及び各切換弁22,25,36を制御することで自動変速機70への作動油の供給を制御する。なお、コントローラ40は、エンジン50のコントローラ及び自動変速機70のコントローラを兼ねるものであってもよいし、エンジン50のコントローラ及び自動変速機70のコントローラとは別に設けられるものあってもよい。
【0049】
コントローラ40に入力される車両の状態を示す信号としては、例えば、車両の速度を示す信号や車両の加速度を示す信号、シフトレバーの操作位置を示す信号、アクセルの操作量を示す信号、エンジン50の回転数を示す信号、スロットル開度や燃料噴射量等のエンジン50の負荷を示す信号、自動変速機70の入力軸及び出力軸回転数を示す信号、自動変速機70内の作動油の油温を示す信号、自動変速機70に供給された作動油の圧力(ライン圧)を示す信号、自動変速機70の変速比を示す信号、第1オイルポンプ10の吐出圧を示す信号、第2オイルポンプ11の吐出圧を示す信号、第3オイルポンプ30の吐出圧を示す信号、電動モータ60の回転数を示す信号等である。
【0050】
コントローラ40は、自動変速機70への作動油の供給を制御するための機能として、各種センサから入力される信号に基づいて自動変速機70で必要とされる作動油の必要流量Qrを演算する必要流量演算部41と、各種センサから入力される信号に基づいて第1オイルポンプ10から吐出される作動油の第1吐出流量Q1及び第2オイルポンプ11から吐出される作動油の第2吐出流量Q2を算出する吐出流量算出部42と、各種センサから入力される信号に基づいて第1オイルポンプ10の第1駆動動力W1、第2オイルポンプ11の第2駆動動力W2及び第3オイルポンプ30の第3駆動動力W3を演算する駆動動力演算部44と、必要流量演算部41で演算された流量と吐出流量算出部42で算出された流量との比較や駆動動力演算部44で演算された各駆動動力の比較が行われる比較部43と、比較部43における比較結果に基づき自動変速機70への作動油の供給状態を設定する供給状態設定部45と、を有する。
【0051】
また、コントローラ40は、第1切換弁22の位置を切り換え制御する第1切換制御部46と、第2切換弁25の位置を切り換え制御する第2切換制御部47と、第3切換弁36の位置を切り換え制御する第3切換制御部48と、電動モータ60の出力を制御する出力制御部49と、を有する。なお、これら必要流量演算部41等は、コントローラ40の各機能を、仮想的なユニットとして示したものであり、物理的に存在することを意味するものではない。
【0052】
必要流量演算部41は、主にアクセル開度や車速、自動変速機70内の作動油の油温、自動変速機70に供給された作動油の圧力、自動変速機70の入力軸及び出力軸回転数、自動変速機70の変速比に基づいて自動変速機70で必要とされる作動油の流量を演算する。
【0053】
ここで、自動変速機70で必要とされる作動油の流量は、図示しないベルト式無段変速機構のバリエータのプーリ幅を変化させるために必要となる変速流量や油圧制御弁内の隙間や油圧回路上の隙間から漏れるリーク流量、自動変速機70を冷却ないし潤滑するために必要となる潤滑流量、図示しないオイルクーラに導かれる冷却流量などがある。
【0054】
これらの流量がどの程度の流量となるかは、予めマップ化されており、コントローラ40のROMに記憶されている。具体的には、変速流量は、変速比が大きく変化する場合、例えば、アクセル開度の上昇率が大きい加速時や車速の減速率が大きい減速時には大きな値となることから、アクセル開度や車速の変化率がパラメータとされる。なお、車両の加減速に関連するパラメータとしては、エンジン50の回転数や負荷の変化に影響を及ぼすスロットル開度や燃料噴射量などが用いられてもよい。リーク流量は、作動油の温度が上昇し作動油の粘度が低下するほど、また、供給される作動油の圧力が大きいほど大きな値となることから、作動油の温度や圧力がパラメータとされる。
【0055】
また、作動油の温度が上昇し作動油の粘度が低下するほど油膜切れが生じやすくなるため、作動油の温度が高いほど潤滑流量を多くする必要があり、また、自動変速機70内の回転軸の回転数が高いほど油膜切れが生じやすくなるため、自動変速機70内の回転軸の回転数が高いほど潤滑流量を多くする必要がある。これらを考慮し、潤滑流量は、例えば、作動油の温度や自動変速機70の入出力軸の回転数がパラメータとされる。
【0056】
また、作動油の温度は、潤滑性や油膜保持等の観点からは、所定の温度を超えないようにする必要があり、また、作動油を冷却するためには、オイルクーラに冷却風が導かれる状態、すなわち、所定以上の車速で車両が走行する状態である必要がある。このため、冷却流量は、主に作動油の温度と車速とがパラメータとされる。なお、これら変速流量、リーク流量、潤滑流量及び冷却流量を決定するためのパラメータは一例であり、例示されたパラメータと関連性があるパラメータが用いられてもよく、何をパラメータとするかはコントローラ40に入力される信号から適宜選定される。
【0057】
このように、必要流量演算部41では、変速流量、リーク流量、潤滑流量及び冷却流量を考慮して自動変速機70で単位時間あたりに必要とされる作動油の量である必要流量Qrが演算される。
【0058】
吐出流量算出部42は、主にエンジン50の回転数と第1オイルポンプ10の1回転あたりの理論吐き出し量である予め設定された第1基本吐出量D1とに基づいて第1オイルポンプ10から単位時間あたりに吐出される作動油の量である第1吐出流量Q1を算出し、主にエンジン50の回転数と第2オイルポンプ11の1回転あたりの理論吐き出し量である予め設定された第2基本吐出量D2とに基づいて第2オイルポンプ11から単位時間あたりに吐出される作動油の量である第2吐出流量Q2を算出する。
【0059】
第1オイルポンプ10の回転数と第1オイルポンプ10の第1吐出流量Q1とは、ほぼ比例して変化する関係にあり、また、第1オイルポンプ10の第1吐出流量Q1は、油温によって変わる粘度や第1オイルポンプ10の吐出圧に応じて変化する。これらの関係は、第1オイルポンプ10の第1吐出流量Q1を正確に算出するために予めマップ化され、コントローラ40のROMに記憶されている。
【0060】
第1オイルポンプ10の回転数は、第1オイルポンプ10を駆動するエンジン50の回転数に応じて変化するため、吐出流量算出部42では、エンジン50の回転数と作動油の油温と第1オイルポンプ10の吐出圧とから第1吐出流量Q1が容易に算出される。
【0061】
なお、エンジン50の回転数に代えて、第1オイルポンプ10の回転数を用いて第1吐出流量Q1を算出してもよい。また、第1オイルポンプ10の吐出圧は、自動変速機70に供給された作動油の圧力であるライン圧に応じて変化するため、第1オイルポンプ10の第1吐出流量Q1の算出にあたっては、第1オイルポンプ10の吐出圧に代えて、ライン圧が用いられてもよい。
【0062】
第2オイルポンプ11の第2吐出流量Q2についても第1オイルポンプ10の第1吐出流量Q1と同様にして算出される。なお、第2オイルポンプ11の第2吐出流量Q2の算出は、第1切換弁22の切換状態に関わらず、すなわち、第2オイルポンプ11が自動変速機70へ作動油を供給する状態にあるか否かに関わらず行われる。
【0063】
駆動動力演算部44は、第1オイルポンプ10の第1駆動動力W1、第2オイルポンプ11の第2駆動動力W2及び必要流量Qrに基づいて設定される目標吐出流量Qaを吐出させた場合の第3オイルポンプ30の第3駆動動力W3を演算する。
【0064】
第1オイルポンプ10の第1駆動動力W1は、エンジン50において第1オイルポンプ10を駆動するために費やされる出力であり、第1オイルポンプ10の第1吐出流量Q1と第1吐出圧力P1と第1ポンプ機械効率η1とから算出される。第1オイルポンプ10の回転数、第1吐出圧力P1及び作動油の油温に応じて変化する第1ポンプ機械効率η1は、予めマップ化され、コントローラ40のROMに記憶されている。なお、第1吐出流量Q1としては、吐出流量算出部42で算出された値が用いられる。
【0065】
第2オイルポンプ11の第2駆動動力W2についても第1オイルポンプ10の第1駆動動力W1と同様にして算出される。第2オイルポンプ11の回転数、第2吐出圧力P2及び作動油の油温に応じて変化する第2ポンプ機械効率η2は、予めマップ化され、コントローラ40のROMに記憶されている。なお、第1切換弁22の位置が第2位置22bであり、第2オイルポンプ11から自動変速機70へ作動油が供給されない状態にある場合には、自動変速機70内の作動油の圧力であるライン圧PLを第2吐出圧力P2と仮定して第2オイルポンプ11の第2駆動動力W2が推定される。
【0066】
同様にして、第3オイルポンプ30の第3駆動動力W3は、第3オイルポンプ30から単位時間あたりに吐出される作動油の目標量である目標吐出流量Qaと第3吐出圧力P3と第3ポンプ機械効率η3とから算出される。目標吐出流量Qaは、第3オイルポンプ30のみから自動変速機70へ作動油を供給する場合と、第1オイルポンプ10とともに第3オイルポンプ30から自動変速機70へ作動油を供給する場合と、において異なる大きさに設定される。
【0067】
具体的には、第3オイルポンプ30のみから自動変速機70へ作動油を供給する場合、目標吐出流量Qaは、必要流量Qrよりも例えば10%程度多い流量とされ、現在の車両の状態が多少変化したとしても必要流量Qrを下回らないように余裕を持った大きさに設定されることが好ましい。第1オイルポンプ10とともに自動変速機70へ作動油を供給する場合、目標吐出流量Qaは、必要流量Qrから第1吐出流量Q1が差し引かれた不足流量Qsよりも例えば10%程度多い流量とされ、現在の車両の状態が多少変化したとしても第1吐出流量Q1と目標吐出流量Qaとの合計流量が必要流量Qrを下回らないように余裕を持った大きさに設定されることが好ましい。
【0068】
電動モータ60が停止しており第3オイルポンプ30から自動変速機70へ作動油が供給されていない場合には、自動変速機70内の作動油の圧力であるライン圧PLを第3吐出圧力P3と仮定して第3オイルポンプ30の第3駆動動力W3が推定される。第3オイルポンプ30の回転数、第3吐出圧力P3及び作動油の油温に応じて変化する第3ポンプ機械効率η3は、第1ポンプ機械効率η1や第2ポンプ機械効率η2と同様に、予めマップ化され、コントローラ40のROMに記憶されている。なお、第3オイルポンプ30の第3駆動動力W3は、第3オイルポンプ30を駆動する電動モータ60において消費される電力に相当することから、電動モータ60に供給される電流及び電圧に基づき第3オイルポンプ30の第3駆動動力W3を算出してもよい。
【0069】
ここで、電動モータ60には、エンジン50によって駆動されるオルタネータで発電された電力がバッテリを介して供給される。このため、第1オイルポンプ10や第2オイルポンプ11の駆動条件と第3オイルポンプ30の駆動条件とを一致させるため、第3オイルポンプ30の第3駆動動力W3の演算にあたっては、電動モータ60のモータ効率やオルタネータの発電効率、バッテリの充放電効率等の種々のエネルギー変換効率がさらに加味される。つまり、最終的に演算される第3オイルポンプ30の第3駆動動力W3は、第3オイルポンプ30がエンジン50によって駆動されると仮定した場合にエンジン50において費やされる出力となる。
【0070】
なお、各駆動動力W1,W2,W3の演算方法は、上述の演算方法に限定されず、各オイルポンプ10,11,30の駆動条件を同じ条件とした場合に必要とされる各駆動動力W1,W2,W3が演算されれば、どのような演算方法であってもよい。また、各吐出圧力P1,P2,P3が直接検出されていない場合には、作動油がどのような供給状態にある場合であってもライン圧PLを各吐出圧力P1,P2,P3と仮定して、各駆動動力W1,W2,W3が演算されてもよい。
【0071】
比較部43は、後述のように、必要流量演算部41で演算された必要流量Qrと吐出流量算出部42で算出された第1吐出流量Q1との比較や第1吐出流量Q1と第2吐出流量Q2との合計流量と必要流量Qrとの比較を行い、これらの比較結果に応じた信号を駆動動力演算部44や供給状態設定部45へ送信する。また、比較部43では、後述のように、駆動動力演算部44で演算された第1オイルポンプ10の第1駆動動力W1と第3オイルポンプ30の第3駆動動力W3との比較や第1駆動動力W1と第3駆動動力W3との合計動力と第1駆動動力W1と第2駆動動力W2との合計動力との比較も行われ、これらの比較結果に応じた信号を供給状態設定部45へ送信する。
【0072】
供給状態設定部45は、比較部43から送信された信号に基づき自動変速機70への作動油の供給状態を設定する。具体的には、供給状態設定部45は、比較部43から送信された信号に応じて第1切換弁22やエンジン50、電動モータ60、自動変速機70を適宜制御することによって、第1切換制御部46を介して第1切換弁22の位置を第2位置22bに切り換えて第2オイルポンプ11から自動変速機70へ作動油が供給されない状態とするとともに電動モータ60を停止して第1オイルポンプ10のみから自動変速機70へ作動油が供給される第1供給状態と、第1切換制御部46を介して第1切換弁22の位置を第2位置22bに切り換えて第2オイルポンプ11から自動変速機70へ作動油が供給されない状態として第1オイルポンプ10と第3オイルポンプ30とから自動変速機70へ作動油が供給される第2供給状態と、電動モータ60を停止して第1オイルポンプ10と第2オイルポンプ11とから自動変速機70へ作動油が供給される第3供給状態と、第1オイルポンプ10と第2オイルポンプ11と第3オイルポンプ30との3つのポンプから自動変速機70へ作動油が供給される第4供給状態と、の4つの供給状態の中から供給状態を設定する。
【0073】
次に、図3のフローチャートを参照し、上述の機能を有するコントローラ40により行われる自動変速機70への作動油の供給制御について説明する。図3に示される制御は、コントローラ40によって所定の時間毎に繰り返し実行される。
【0074】
まず、ステップS11において、コントローラ40には、車両の状態、特にエンジン50や自動変速機70の状態を示す各種センサの検出信号が入力される。
【0075】
ステップS12では、ステップS11において入力された各種センサの信号に基づき、自動変速機70で必要とされる作動油の必要流量Qrが必要流量演算部41において演算される。
【0076】
続くステップS13では、ステップS11において入力された各種センサの信号に基づき、第1オイルポンプ10から吐出される作動油の第1吐出流量Q1及び第2オイルポンプ11から吐出される作動油の第2吐出流量Q2が吐出流量算出部42において算出される。なお、第1オイルポンプ10の仕様と第2オイルポンプ11の仕様が全く同じであり、第1吐出流量Q1と第2吐出流量Q2とが同じ値になる場合には、何れか一方が算出されればよい。
【0077】
ステップS12で演算された必要流量QrとステップS13で算出された第1吐出流量Q1とは、ステップS14において比較部43により比較される。
【0078】
ステップS14において、第1吐出流量Q1が必要流量Qr以上であると判定された場合、つまり、第1オイルポンプ10のみで自動変速機70で必要とされる作動油の必要流量Qrを賄うことが可能である場合には、ステップS15に進む。
【0079】
ステップS15では、自動変速機70への作動油の供給状態が供給状態設定部45により第1供給状態に設定される。この場合、自動変速機70で必要とされる作動油の必要流量Qrが比較的少ないため、第1オイルポンプ10のみを駆動させることで必要流量Qrを賄うことができる。
【0080】
このような状況として、具体的には、急加速や急減速が行われない定常走行時であって変速流量がほとんど増減しない場合や、作動油の油温が例えば120℃以下であるためリーク流量が比較的少ない場合、作動油の油温が低温から中温であって冷却流量を確保する必要がない場合などが挙げられる。
【0081】
一方、ステップS14において、第1吐出流量Q1が必要流量Qrよりも小さいと判定された場合、つまり、第1オイルポンプ10のみでは自動変速機70で必要とされる作動油の必要流量Qrを賄うことが不可能である場合には、ステップS16に進む。
【0082】
ステップS16では、ステップS12で演算された必要流量Qrと、ステップS13で算出された第1吐出流量Q1と第2吐出流量Q2との合計流量と、が比較部43により比較される。
【0083】
ステップS16において、第1吐出流量Q1と第2吐出流量Q2との合計流量が必要流量Qr以上であると判定された場合、つまり、第1オイルポンプ10と第2オイルポンプ11とで自動変速機70で必要とされる作動油の必要流量Qrを賄うことが可能である場合には、ステップS17に進む。
【0084】
ステップS17では、ステップS11において入力された各種センサの信号に基づき、第1オイルポンプ10の第1駆動動力W1、第2オイルポンプ11の第2駆動動力W2及び第3オイルポンプ30の第3駆動動力W3が駆動動力演算部44によって演算される。
【0085】
駆動動力演算部44によって演算された第1駆動動力W1と第3駆動動力W3との合計動力と、第1駆動動力W1と第2駆動動力W2との合計動力と、は、ステップS18において比較部43により比較される。
【0086】
ここで、必要流量Qrが第1吐出流量Q1に対してわずかに上回るような場合には、第1オイルポンプ10に加えて第2オイルポンプ11を駆動させると、自動変速機70に供給される油量が過剰な状態となり、結果として、エンジン50の出力が無駄に費やされることになる。
【0087】
このような場合は、第1オイルポンプ10に加えて第2オイルポンプ11を駆動させるよりも、必要流量Qrから第1吐出流量Q1を差し引いた不足流量Qsを電動モータ60によって駆動される第3オイルポンプ30から吐出させた方がエンジン50における燃料消費を抑制させることができる可能性がある。
【0088】
つまり、ステップS18では、第1オイルポンプ10と第2オイルポンプ11とを駆動させて作動油を供給する場合と、第1オイルポンプ10と第3オイルポンプ30とを駆動させて作動油を供給する場合と、のどちらの場合の方がエンジン50の燃料消費を低減させることができるかが判定される。
【0089】
ステップS18において、第1駆動動力W1と第3駆動動力W3との合計動力が第1駆動動力W1と第2駆動動力W2との合計動力以下であると判定された場合、つまり、第1オイルポンプ10をエンジン50によって駆動させるとともに第3オイルポンプ30を電動モータ60によって駆動させて作動油を供給する場合の方がエンジン50の燃料消費を低減させることができる場合は、ステップS19に進み、自動変速機70への作動油の供給状態は、供給状態設定部45によって第2供給状態に設定される。
【0090】
一方、ステップS18において、第1駆動動力W1と第3駆動動力W3との合計動力が第1駆動動力W1と第2駆動動力W2との合計動力よりも大きいと判定された場合、つまり、第1オイルポンプ10と第2オイルポンプ11とをエンジン50によって駆動させて作動油を供給する場合の方がエンジン50の燃料消費を低減させることができる場合は、ステップS20に進み、自動変速機70への作動油の供給状態は、供給状態設定部45によって第3供給状態に設定される。
【0091】
ここで、加減速を伴う走行状態であっても加減速の度合いによって自動変速機70において必要とされる作動油の量は変化する。このため、自動変速機70への作動油の供給状態は、例えば車速の変化率が所定値以下であり比較的必要流量Qrが少ない場合は第2供給状態に設定され、車速の変化率が所定値よりも大きく比較的必要流量Qrが多い場合は第3供給状態に設定されることになる。また、作動油の温度が低い場合は、作動油の粘度が高くなるため、第3オイルポンプ30により作動油を供給させようとすると、電動モータ60の負荷が大きくなる。このため、自動変速機70への作動油の供給状態は、例えば作動油の温度に応じて、第2供給状態と第3供給状態とに切り換えられることになる。
【0092】
このように、自動変速機70への作動油の供給状態は、比較的必要流量Qrが多い運転状態において、エンジン50の燃料消費を低減させることが可能な供給状態に適宜切り換えられる。この結果、比較的必要流量Qrが多くなる加減速を伴う走行時であっても車両の燃費を向上させることができる。
【0093】
一方、ステップS16において、第1吐出流量Q1と第2吐出流量Q2との合計流量が必要流量Qrよりも小さいと判定された場合、つまり、第1オイルポンプ10と第2オイルポンプ11とでは自動変速機70で必要とされる作動油の必要流量Qrを賄うことができない場合には、ステップS21に進む。
【0094】
ステップS21では、自動変速機70への作動油の供給状態が供給状態設定部45により第4供給状態に設定される。この場合は、自動変速機70で必要とされる作動油の必要流量Qrが比較的多く、これを確保するために、第1オイルポンプ10と第2オイルポンプ11に加えて第3オイルポンプ30が駆動される。
【0095】
このような状況として、具体的には、急加速や急減速によって変速流量が増加する場合や、作動油の油温が例えば130℃を超えるような高温となり、リーク流量が増加する場合、作動油の油温が高温であって車速が中速(30~50km/h)以上となり、十分な冷却流量を確保する必要がある場合などが挙げられる。
【0096】
このように、車両の状態、特にエンジン50や自動変速機70の状態に基づいて自動変速機70への作動油の供給状態を適宜切り換えることで、自動変速機70に十分な作動油が供給されるとともに、エンジン50において無駄な燃料が消費されることが抑制される。この結果、自動変速機70を安定して作動させることができるとともに、車両の燃費を向上させることができる。
【0097】
なお、自動変速機70への作動油の供給状態が頻繁に切り換わると、自動変速機70に供給される作動油の圧力が変動し、自動変速機70の制御が不安定となるおそれがあることから、比較部43において比較を行う際にヒステリシスを設定し、供給状態が頻繁に切り換わることを抑制してもよい。また、何れかの供給状態に設定された後、自動変速機70への供給される作動油量が必要流量Qrを下回らなければ、所定時間の間は他の供給状態に移行することを禁止してもよい。
【0098】
コントローラ40では、上述のように自動変速機70への作動油の供給制御が行われるとともに、第2オイルポンプ11が自動変速機70へ作動油を供給しない状態にある場合には、第2オイルポンプ11から吐出された作動油を第1オイルポンプ10の吸込側へと戻す第1還流制御が行われる。
【0099】
ここで、特に第1オイルポンプ10が高速回転しているときに、第2オイルポンプ11から吐出された作動油を第1オイルポンプ10の吸込側へと戻すことで、第1オイルポンプ10の吸込側においてキャビテーションを生じにくくすることが可能である。また、第2オイルポンプ11から吐出された作動油を第1オイルポンプ10の吸込側へと戻し、第1オイルポンプ10の吸込側の圧力を高めるほど、図4に示されるように、第1オイルポンプ10のポンプ効率を向上させることが可能である。なお、図4は、第1オイルポンプ10の吸込側の圧力に対する作動流体供給システム100全体の効率、第1オイルポンプ10のポンプ効率、及び、第2オイルポンプ11の駆動負荷の変化を示している。
【0100】
しかしながら、第1オイルポンプ10のポンプ効率を向上させるために、第2オイルポンプ11からの供給量を増やして第1オイルポンプ10の吸込側の圧力を高めたとしても、特に第1オイルポンプ10が高速で回転している場合には吸込部の圧損等によって第1オイルポンプ10の吸込みが追い付かなくなり、結果として、第1オイルポンプ10の吸込側の圧力をある程度より上昇させてもポンプ効率は上昇しにくくなる。
【0101】
また、当然ながら、第1オイルポンプ10の吸込み側の圧力、すなわち、第2オイルポンプ11の吐出側の圧力を高めるほど、第2オイルポンプ11の駆動負荷は増大する。
【0102】
このように第1オイルポンプ10の吸込み側の圧力を高めるにつれて、第1オイルポンプ10のポンプ効率が上昇しにくくなる一方で、第2オイルポンプ11の駆動負荷が増大することから、第1オイルポンプ10の吸込み側の圧力を過度に高めると作動流体供給システム100全体の効率が低下することになる。
【0103】
つまり、図4に示すように、第1オイルポンプ10の吸込み側の圧力を徐々に高めていくと、作動流体供給システム100全体の効率は、第1オイルポンプ10の吸込側の圧力が所定の第1圧力TP1となるまでは上昇するが、1オイルポンプ10の吸込み側の圧力をそれ以上高めると低下する。換言すれば、作動流体供給システム100全体の効率は、第1オイルポンプ10の吸込側の圧力が所定の第1圧力TP1となったときに最高効率に達する。
【0104】
このため、第2オイルポンプ11から吐出された作動油を第1オイルポンプ10の吸込側へと供給する第1還流制御では、作動流体供給システム100全体の効率を向上させるために、単に第2オイルポンプ11から吐出された作動油を第1オイルポンプ10の吸込側へと供給するのではなく、後述の第1圧力制御部により、第1オイルポンプ10の吸込側の圧力が所定の第1圧力TP1となるように第2オイルポンプ11からの作動油の供給を制御している。
【0105】
続いて、図5のフローチャートを参照し、第1還流制御について説明する。図5に示される制御は、コントローラ40によって所定の時間毎に繰り返し実行される。
【0106】
まず、ステップS31において、コントローラ40は、第1切換弁22の位置が第2位置22bにあるか否かを判定する。ここで、上述のように、供給状態設定部45により供給状態が第1供給状態または第2供給状態に設定されているとき、第1切換弁22は第1切換制御部46により第2位置22bに切り換えられている。このため、コントローラ40は、供給状態が第1供給状態または第2供給状態に設定されているとき、第1切換弁22の位置が第2位置22bにあると判定する。なお、第1切換弁22の位置の判定は、第1切換弁22の位置を検出可能な図示しない位置センサの検出値に基づいて行われてもよい。
【0107】
ステップS31において、第1切換弁22の位置が第2位置22bにあると判定されると、ステップS32に進み、第1オイルポンプ10の吸込み側の圧力の検出が行われる。一方、ステップS31において、第1切換弁22の位置が第2位置22bにないと判定されると、第2オイルポンプ11から吐出された作動油を第1オイルポンプ10の吸込側へと供給することができない状態にあるとして、一旦、処理を終了する。
【0108】
ステップS32では、圧力センサ26により検出された検出圧Pを取り込み、続くステップS33において、取り込まれた検出圧Pと目標圧力である第1圧力TP1との比較が行われる。第1圧力TP1は、作動流体供給システム100の全体効率が最高効率になると予測されるときの第1オイルポンプ10の吸込み側の圧力であり、第1オイルポンプ10のポンプ効率及び第2オイルポンプ11の駆動負荷に基づいてコントローラ40内の目標圧力設定部により予め設定される。なお、第1圧力TP1は、予めマップ化されコントローラ40のROMに記憶されたものであってもよい。
【0109】
検出圧Pが第1圧力TP1よりも低い場合、ステップS34に進み、第2切換制御部47により第2切換弁25の位置は第2位置25bに切り換えられる。これにより第2オイルポンプ11から吐出された作動油は、第1還流通路20及び第2還流通路23を通じて第1オイルポンプ10の吸込側へと供給される。
【0110】
一方、検出圧Pが第1圧力TP1以上である場合、ステップS35に進み、第2切換制御部47により第2切換弁25の位置は第1位置25aに切り換えられる。これにより第2オイルポンプ11から吐出された作動油は、第1オイルポンプ10の吸込側へと供給されることなく、第1還流通路20及び分岐通路24を通じてタンクTへと排出される。
【0111】
このように、第2オイルポンプ11から吐出された作動油を第1オイルポンプ10の吸込側へと供給することが可能である場合には、第2切換弁25と第2切換制御部47とが第1圧力制御部として機能し、第1オイルポンプ10の吸込側の圧力を目標圧力である第1圧力TP1に近づけるように作動する。
【0112】
なお、第1還流制御において設定される第1圧力TP1が比較的高く、第1還流通路20及び第2還流通路23を通じて第1吸込管12と連通する第2吐出管17の圧力が比較的高い状態となっている場合に第1切換弁22が第1位置22aに切り換えられると、自動変速機70に作動油を供給する第1吐出管13の圧力が急激に上昇し、自動変速機70の作動不良を招くおそれがある。このため、第1還流制御後、第1切換弁22の位置を第2位置22bから第1位置22aに切り換える際には、切り換え前に第2切換弁25の位置を第1位置25aとし、第2吐出管17をタンクTと一旦連通させ、第2吐出管17の圧力を低下させることが好ましい。
【0113】
以上のように、第1還流制御が行われると、第1オイルポンプ10の吸込み側の圧力が過度に負圧となることが抑制されることで第1オイルポンプ10の吸込側においてキャビテーションを生じにくくすることが可能であるとともに、第1オイルポンプ10の吸込み側の圧力を上昇させることで第1オイルポンプ10のポンプ効率を向上させることが可能である。さらに、第1オイルポンプ10の吸込側の圧力が所定の第1圧力TP1となるように、第2オイルポンプ11から第1オイルポンプ10の吸込側への作動油の供給を制御することによって、第2オイルポンプ11の駆動負荷が過大となることを抑制することにより、作動流体供給システム100の全体効率を向上させることができる。
【0114】
また、エンジン50の回転数が低く第1オイルポンプ10の回転数も低くなっているときに、自動変速機70で必要とされる作動油の必要流量Qrが比較的多いものの第1オイルポンプ10のみで必要流量Qrを賄うことが可能である場合、第1オイルポンプ10の吸込み側の負圧の度合いが大きくなり、キャビテーションが発生しやすい状況となる。しかしながら上述のように第2オイルポンプ11から吐出された作動油を第1オイルポンプ10の吸込側へと供給する第1還流制御を行うことによって、キャビテーションを生じにくくすることが可能である。
【0115】
なお、上述の第1還流制御では、第1圧力TP1の大きさは、作動流体供給システム100の全体効率を向上させることを意図して設定されている。これに代えて、第1圧力TP1の大きさは、第1オイルポンプ10の吸込側におけるキャビテーションの発生の抑制を意図して設定されるものであってもよい。この場合、第1オイルポンプ10の吸込み側の圧力が負圧とならないように、第1圧力TP1の大きさは、例えば、若干正圧側の値に設定される。これにより、第1オイルポンプ10の吸込側においてキャビテーションが生じることが確実に回避される。
【0116】
また、第1圧力TP1の大きさは、ほぼ無負荷運転状態となっている第2オイルポンプ11の駆動負荷が極度に増大しない程度の大きさに設定されるものであってもよい。この場合、第1圧力TP1の大きさは、例えば、第2オイルポンプ11の駆動負荷が、第2オイルポンプ11から吐出された作動油が第1還流通路20及び分岐通路24を通じてタンクTへと排出されるときの第2オイルポンプ11の駆動負荷の任意の倍率(好ましくは1.1倍程度)となったときに得られる圧力値に設定される。これにより、第2オイルポンプ11の駆動負荷が過大となり作動流体供給システム100の全体効率が悪化することが回避される。
【0117】
コントローラ40では、上述の第1還流制御に加えて、第3オイルポンプ30のみが自動変速機70へ作動油を供給しない状態にある場合には、第3オイルポンプ30から吐出された作動油を第1オイルポンプ10及び第2オイルポンプ11の吸込側へと供給する第2還流制御が行われる。
【0118】
ここで、特に第1オイルポンプ10及び第2オイルポンプ11が高速回転しているときに、第3オイルポンプ30から吐出された作動油を第1オイルポンプ10及び第2オイルポンプ11の吸込側へと供給することで、第1オイルポンプ10及び第2オイルポンプ11の吸込側においてキャビテーションを生じにくくすることが可能である。また、第3オイルポンプ30から吐出された作動油を第1オイルポンプ10及び第2オイルポンプ11の吸込側へと供給し、第1オイルポンプ10及び第2オイルポンプ11の吸込側の圧力を高めるほど、図6に示されるように、第1オイルポンプ10及び第2オイルポンプ11のポンプ効率を向上させることが可能である。なお、図6は、第1オイルポンプ10及び第2オイルポンプ11の吸込側の圧力に対する作動流体供給システム100全体の効率、第1オイルポンプ10及び第2オイルポンプ11のポンプ効率、及び、第3オイルポンプ30の駆動負荷の変化を示している。
【0119】
しかしながら、第1オイルポンプ10及び第2オイルポンプ11のポンプ効率を向上させるために、第3オイルポンプ30からの供給量を増やして第1オイルポンプ10及び第2オイルポンプ11の吸込側の圧力を高めたとしても、特に第1オイルポンプ10及び第2オイルポンプ11が高速で回転している場合には吸込部の圧損等によって第1オイルポンプ10及び第2オイルポンプ11の吸込みが追い付かなくなり、結果として、第1オイルポンプ10及び第2オイルポンプ11の吸込側の圧力をある程度より上昇させてもポンプ効率は上昇しにくくなる。
【0120】
また、当然ながら、第1オイルポンプ10及び第2オイルポンプ11の吸込み側の圧力、すなわち、第3オイルポンプ30の吐出側の圧力を高めるほど、第3オイルポンプ30の駆動負荷である電動モータ60の出力も増大することから、結果として、電動モータ60の消費電力は増大する。
【0121】
このように第1オイルポンプ10及び第2オイルポンプ11の吸込み側の圧力を高めるにつれて、第1オイルポンプ10及び第2オイルポンプ11のポンプ効率が上昇しにくくなる一方で、第3オイルポンプ30の駆動負荷が増大することから、第1オイルポンプ10及び第2オイルポンプ11の吸込み側の圧力を過度に高めると作動流体供給システム100全体の効率が低下することになる。
【0122】
つまり、図6に示すように、第1オイルポンプ10の吸込み側の圧力を徐々に高めていくと、作動流体供給システム100全体の効率は、第1オイルポンプ10及び第2オイルポンプ11の吸込側の圧力が所定の第2圧力TP2となるまでは上昇するが、1オイルポンプ10及び第2オイルポンプ11の吸込み側の圧力をそれ以上高めると低下する。換言すれば、作動流体供給システム100全体の効率は、第1オイルポンプ10及び第2オイルポンプ11の吸込側の圧力が所定の第2圧力TP2となったときに最高効率に達する。
【0123】
このため、第3オイルポンプ30から吐出された作動油を第1オイルポンプ10及び第2オイルポンプ11の吸込側へと供給する第2還流制御では、作動流体供給システム100全体の効率を向上させるために、単に第3オイルポンプ30から吐出された作動油を第1オイルポンプ10及び第2オイルポンプ11の吸込側へと供給するのではなく、後述の第2圧力制御部により、第1オイルポンプ10及び第2オイルポンプ11の吸込側の圧力が所定の第2圧力TP2となるように第3オイルポンプ30からの作動油の供給を制御している。
【0124】
続いて、図7のフローチャートを参照し、第2還流制御について説明する。図7に示される制御は、コントローラ40によって所定の時間毎に繰り返し実行される。
【0125】
まず、ステップS41において、コントローラ40は、第3切換弁36の位置が第2位置36bにあるか否かを判定する。ここで、上述のように、供給状態設定部45により供給状態が第3供給状態に設定されているとき、第3切換弁36は第3切換制御部48により第2位置36bに切り換えられている。このため、コントローラ40は、供給状態が第3供給状態に設定されているとき、第3切換弁36の位置が第2位置36bにあると判定する。なお、第3切換弁36の位置の判定は、第3切換弁36の位置を検出可能な図示しない位置センサの検出値に基づいて行われてもよい。
【0126】
ステップS41において、第3切換弁36の位置が第2位置36bにあると判定されると、ステップS42に進み、第1オイルポンプ10及び第2オイルポンプ11の吸込み側の圧力の検出が行われる。一方、ステップS41において、第3切換弁36の位置が第2位置36bにないと判定されると、第3オイルポンプ30から吐出された作動油を第1オイルポンプ10及び第2オイルポンプ11の吸込側へと供給することができない状態にあるとして、一旦、処理を終了する。
【0127】
ステップS42では、圧力センサ26により検出された検出圧Pを取り込み、続くステップS43において、取り込まれた検出圧Pと目標圧力である第2圧力TP2との比較が行われる。第2圧力TP2は、作動流体供給システム100の全体効率が最高効率になると予測されるときの第1オイルポンプ10及び第2オイルポンプ11の吸込み側の圧力であり、第1オイルポンプ10及び第2オイルポンプ11のポンプ効率及び第3オイルポンプ30の駆動負荷に基づいてコントローラ40内の目標圧力設定部により予め設定される。なお、第2圧力TP2は、予めマップ化されコントローラ40のROMに記憶されたものであってもよい。
【0128】
検出圧Pが第2圧力TP2よりも低い場合、ステップS44に進み、出力制御部49によって電動モータ60の出力は増大される。これにより第3オイルポンプ30から第3還流通路34を通じて第1オイルポンプ10及び第2オイルポンプ11の吸込側へと供給される作動油の流量は増加する。
【0129】
一方、検出圧Pが第2圧力TP2以上である場合、ステップS45に進み、出力制御部49によって電動モータ60の出力が低下または電動モータ60が停止される。これにより第3オイルポンプ30から第3還流通路34を通じて第1オイルポンプ10及び第2オイルポンプ11の吸込側へと供給される作動油の流量は減少する。
【0130】
このように、第3オイルポンプ30から吐出された作動油を第1オイルポンプ10及び第2オイルポンプ11の吸込側へと供給することが可能である場合には、出力制御部49が第2圧力制御部として機能し、第1オイルポンプ10及び第2オイルポンプ11の吸込側の圧力を目標圧力である第2圧力TP2に近づけるように作動する。
【0131】
以上のように、第2還流制御が行われると、第1オイルポンプ10及び第2オイルポンプ11の吸込み側の圧力が過度に負圧となることが抑制されることで第1オイルポンプ10及び第2オイルポンプ11の吸込側においてキャビテーションを生じにくくすることが可能であるとともに、第1オイルポンプ10及び第2オイルポンプ11の吸込み側の圧力を上昇させることで第1オイルポンプ10及び第2オイルポンプ11のポンプ効率を向上させることが可能である。さらに、第1オイルポンプ10及び第2オイルポンプ11の吸込側の圧力が所定の第2圧力TP2となるように、第3オイルポンプ30から第1オイルポンプ10及び第2オイルポンプ11の吸込側への作動油の供給を制御することによって、第3オイルポンプ30の駆動負荷が過大となることを抑制することにより、作動流体供給システム100の全体効率を向上させることができる。
【0132】
また、エンジン50の回転数が低く第1オイルポンプ10及び第2オイルポンプ11の回転数も低くなっているときに、自動変速機70で必要とされる作動油の必要流量Qrが比較的多いものの第1オイルポンプ10及び第2オイルポンプ11で必要流量Qrを賄うことが可能である場合、第1オイルポンプ10及び第2オイルポンプ11の吸込み側の負圧の度合いが大きくなり、キャビテーションが発生しやすい状況となる。しかしながら上述のように第3オイルポンプ30から吐出された作動油を第1オイルポンプ10及び第2オイルポンプ11の吸込側へと供給する第2還流制御を行うことによって、キャビテーションを生じにくくすることが可能である。
【0133】
なお、上述の第2還流制御では、第2圧力TP2の大きさは、作動流体供給システム100の全体効率を向上させることを意図して設定されている。これに代えて、第2圧力TP2の大きさは、第1オイルポンプ10及び第2オイルポンプ11の吸込側におけるキャビテーションの発生の抑制を意図して設定されるものであってもよいし、第3オイルポンプ30の駆動負荷、すなわち、電動モータ60の出力が極度に増大しない程度の大きさに設定されるものであってもよい。
【0134】
以上の第1実施形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0135】
上述の作動流体供給システム100では、第2オイルポンプ11からの作動油の供給先が第1オイルポンプ10の吸込側となるように第1切換弁22が切り換えられているとき、第1オイルポンプ10の吸込側の圧力が所定の第1圧力TP1となるように、第2切換制御部47及び第2切換弁25によって、第2オイルポンプ11から第1オイルポンプ10の吸込側への作動油の供給が制御される。
【0136】
このように、第2オイルポンプ11から吐出された作動油を第1オイルポンプ10の吸込側へ戻すことにより、第1オイルポンプ10の吸込み側の圧力が過度に負圧となることが抑制されることで第1オイルポンプ10の吸込側においてキャビテーションを生じにくくすることが可能であるとともに、第1オイルポンプ10の吸込み側の圧力を上昇させることで第1オイルポンプ10のポンプ効率を向上させることが可能である。また、第1オイルポンプ10の吸込側の圧力が所定の第1圧力TP1となるように、第2オイルポンプ11から第1オイルポンプ10の吸込側への作動油の供給を制御することによって、第2オイルポンプ11の駆動負荷が過大となることを抑制することにより、作動流体供給システム100の全体効率を向上させることができる。
【0137】
<第2実施形態>
次に、図8を参照して、本発明の第2実施形態に係る作動流体供給システム200について説明する。以下では、第1実施形態と異なる点を中心に説明し、第1実施形態と同様の構成には、同一の符号を付し説明を省略する。
【0138】
作動流体供給システム200の基本的な構成は、第1実施形態に係る作動流体供給システム100と同様である。作動流体供給システム200では、第2切換弁25が設けられておらず、第1切換弁22と第1オイルポンプ10の吸込側とを接続する還流通路としての第1還流通路20及び第2還流通路23から分岐し他端がタンクTに接続されるリリーフ通路28にリリーフ弁27が設けられている点において作動流体供給システム100と相違する。
【0139】
リリーフ弁27は、上流側の圧力、すなわち第1還流通路20及び第2還流通路23を流れる作動油の圧力が所定の圧力に達すると開弁し、第1還流通路20及び第2還流通路23と、タンクTと、を連通させるものである。つまり、第1還流通路20及び第2還流通路23を流れる作動油の圧力は、リリーフ弁27において設定された所定の圧力よりも大きくなることはない。
【0140】
したがって、上記第1実施形態における作動流体供給システム100と同様に、作動流体供給システム200において、第2オイルポンプ11から吐出された作動油を第1オイルポンプ10の吸込側へと供給する第1還流制御が行われる場合、第1還流通路20及び第2還流通路23を通じて作動油が供給される第1オイルポンプ10の吸込側の圧力は、リリーフ弁27によって、リリーフ弁27において設定された所定の圧力となるように制御される。
【0141】
したがって、リリーフ弁27の設定圧を、例えば図4に示される第1圧力TP1とすることにより、上記第1実施形態における作動流体供給システム100と同様に、第1オイルポンプ10の吸込み側の圧力が過度に負圧となることが抑制されることで第1オイルポンプ10の吸込側においてキャビテーションを生じにくくすることが可能であるとともに、第1オイルポンプ10の吸込み側の圧力を上昇させることで第1オイルポンプ10のポンプ効率を向上させることが可能である。さらに、第1オイルポンプ10の吸込側の圧力が所定の第1圧力TP1となるように、第2オイルポンプ11から第1オイルポンプ10の吸込側への作動油の供給を制御することによって、第2オイルポンプ11の駆動負荷が過大となることを抑制することにより、作動流体供給システム200の全体効率を向上させることができる。
【0142】
また、リリーフ弁27は、上記第1実施形態の第2切換弁25と比較し、構成においてコンパクトであり、制御も不要であることから、作動流体供給システム200の製造コストを低減することができるとともに、作動流体供給システム200をコンパクト化することができる。
【0143】
このように、第2オイルポンプ11から吐出された作動油を第1オイルポンプ10の吸込側へと供給することが可能である場合には、リリーフ弁27とリリーフ弁27が設けられるリリーフ通路28とが第1圧力制御部として機能し、第1オイルポンプ10の吸込側の圧力を目標圧力である第1圧力TP1に近づけるように作動する。
【0144】
なお、リリーフ弁27の設定圧は可変であることが好ましく、この場合、設定圧は、第1オイルポンプ10のポンプ効率及び第2オイルポンプ11の駆動負荷に基づいてコントローラ40内の目標圧力設定部によって随時設定される第1圧力TP1や予めマップ化されコントローラ40のROMに記憶された第1圧力TP1に適宜変更される。また、リリーフ弁27の設定圧の大きさは、作動流体供給システム200の全体効率の向上を意図して設定されるものに限定されず、第1オイルポンプ10の吸込側におけるキャビテーションの発生の抑制を意図して設定されてもよいし、ほぼ無負荷運転状態となっている第2オイルポンプ11の駆動負荷が極度に増大しない程度の大きさに設定されるものであってもよい。
【0145】
以上の第2実施形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0146】
上述の作動流体供給システム200では、第2オイルポンプ11からの作動油の供給先が第1オイルポンプ10の吸込側となるように第1切換弁22が切り換えられているとき、第1オイルポンプ10の吸込側の圧力が所定の第1圧力TP1となるように、リリーフ弁27によって、第2オイルポンプ11から第1オイルポンプ10の吸込側への作動油の供給が制御される。
【0147】
このように、第2オイルポンプ11から吐出された作動油を第1オイルポンプ10の吸込側へ戻すことにより、第1オイルポンプ10の吸込み側の圧力が過度に負圧となることが抑制されることで第1オイルポンプ10の吸込側においてキャビテーションを生じにくくすることが可能であるとともに、第1オイルポンプ10の吸込み側の圧力を上昇させることで第1オイルポンプ10のポンプ効率を向上させることが可能である。また、第1オイルポンプ10の吸込側の圧力が所定の第1圧力TP1となるように、第2オイルポンプ11から第1オイルポンプ10の吸込側への作動油の供給を制御することによって、第2オイルポンプ11の駆動負荷が過大となることを抑制することにより、作動流体供給システム200の全体効率を向上させることができる。
【0148】
<第3実施形態>
次に、図9を参照して、本発明の第3実施形態に係る作動流体供給システム300について説明する。以下では、第1実施形態と異なる点を中心に説明し、第1実施形態と同様の構成には、同一の符号を付し説明を省略する。
【0149】
作動流体供給システム300の基本的な構成は、第1実施形態に係る作動流体供給システム100と同様である。作動流体供給システム300では、自動変速機70へ作動油を供給可能な第2ポンプとしての第2オイルポンプ130が、第1オイルポンプ10を駆動するエンジン50とは別の第2駆動源としての電動モータ160の出力により駆動される点において作動流体供給システム100と相違する。
【0150】
作動流体供給システム300は、エンジン50の出力により駆動され自動変速機70へ作動流体としての作動油を供給可能な第1オイルポンプ10と、第1オイルポンプ10を駆動するエンジン50とは別の第2駆動源としての電動モータ160の出力により駆動され自動変速機70へ作動油を供給可能な第2ポンプとしての第2オイルポンプ130と、第2オイルポンプ130からの作動油の供給先を、第1オイルポンプ10の吐出側と、第1オイルポンプ10の吸込側と、の何れか一方に切り換え可能な第1切換弁136と、電動モータ160や第1切換弁136の作動を制御し自動変速機70への作動油の供給状態を制御するコントローラ140と、を備える。
【0151】
第2オイルポンプ130は、上記第1実施形態の第3オイルポンプ30と同様に、電動モータ160によって回転駆動される内接歯車ポンプであり、吸込管131を通じてタンクTに貯留された作動油を吸引し、第2吐出管132を通じて作動油を吐出する。
【0152】
第2吐出管132は、第1切換弁136と接続管133とを介して第1吐出管13に接続される。接続管133には、第2オイルポンプ130から自動変速機70への作動油の流れのみを許容する逆止弁135が設けられる。
【0153】
第1切換弁136は、電気的に駆動される切換弁であり、第2吐出管132と接続管133とを連通させる第1位置136aと、第2吐出管132と還流通路134とを連通させる第2位置136bと、の2つの位置を有する。第1切換弁136の位置はコントローラ140によって制御されるが、非通電時は、第1位置136aとなるように付勢されている。
【0154】
還流通路134は、一端が第1切換弁136に接続され、他端が第1オイルポンプ10の吸込み側である第1吸込管12の逆止弁14よりも下流側の部分に接続されている。
【0155】
上記構成の第1切換弁136が第1位置136aに切り換えられた状態では、第2吐出管132と接続管133とが連通し、第2吐出管132と還流通路134との連通は遮断される。このため、第2オイルポンプ130から吐出された作動油は接続管133を通じて自動変速機70へと供給される。
【0156】
一方、第1切換弁136が第2位置136bに切り換えられた状態では、第2吐出管132と還流通路134とが連通し、第2吐出管132と接続管133との連通が遮断される。このため、第2オイルポンプ130から吐出された作動油は、還流通路134を通じて第1オイルポンプ10の吸込側へと供給される。
【0157】
つまり、第1切換弁136の位置が第2位置136bであるときには、第2オイルポンプ130から吐出された作動油が、第1オイルポンプ10の吸込側へと供給される状態となる。したがって、第1オイルポンプ10の吸込み側の圧力が過度に負圧となることが抑制されることでキャビテーションを生じにくくすることが可能である。また、第1オイルポンプ10の吸込み側の圧力を上昇させることで第1オイルポンプ10のポンプ効率を向上させることが可能である。
【0158】
第2オイルポンプ130を回転駆動する電動モータ160の出力は、コントローラ140によって制御される。このため、第2オイルポンプ130の吐出流量は、電動モータ160の出力を変更することで自在に変更することが可能である。
【0159】
なお、第1切換弁136の位置は、図示しないソレノイドによって図示しない弁体が直接駆動されることによって切り換えられるものであってもよいし、弁体に作用するパイロット圧力の有無によって切り換えられるものであってもよく、第1切換弁136の駆動方式としては、コントローラ140からの指令に応じてその位置が切り換わればどのような方式が採用されてもよい。
【0160】
コントローラ140は、上記第1実施形態のコントローラ40と同様の構成を有し、コントローラ140では、自動変速機70への作動油の供給制御が行われるとともに、第2オイルポンプ130が自動変速機70へ作動油を供給しない状態にある場合には、第2オイルポンプ130から吐出された作動油を第1オイルポンプ10の吸込側へと供給する還流制御が行われる。
【0161】
還流制御では、上記第1実施形態と同様に、作動流体供給システム300全体の効率を向上させるために、後述の第1圧力制御部により、第1オイルポンプ10の吸込側の圧力が所定の第1圧力TP1となるように第2オイルポンプ130からの作動油の供給を制御している。なお、第1圧力TP1は、少なくとも第1オイルポンプ10のポンプ効率及び第2オイルポンプ130の駆動負荷に基づいて算出される作動流体供給システム300の全体効率が最高効率となるときの第1オイルポンプ10の吸込側の圧力である。
【0162】
次に、図10のフローチャートを参照し、還流制御について説明する。図10に示される制御は、コントローラ140によって所定の時間毎に繰り返し実行される。
【0163】
まず、ステップS51において、コントローラ140は、第1切換弁136の位置が第2位置136bにあるか否かを判定する。第2オイルポンプ130が自動変速機70へ作動油を供給しない状態にある場合、すなわち、自動変速機70で必要とされる作動油の必要流量Qrが比較的少なく、第1オイルポンプ10のみを駆動させることで必要流量Qrを賄うことができるような場合には、第1切換弁136は第1切換制御部146により第2位置136bに切り換えられる。このため、コントローラ140は、第1オイルポンプ10のみを駆動させることで必要流量Qrを賄うことができると判定された場合、第1切換弁136の位置が第2位置136bにあると判定する。なお、第1切換弁136の位置の判定は、第1切換弁136の位置を検出可能な図示しない位置センサの検出値に基づいて行われてもよい。
【0164】
ステップS51において、第1切換弁136の位置が第2位置136bにあると判定されると、ステップS52に進み、第1オイルポンプ10の吸込み側の圧力の検出が行われる。一方、ステップS51において、第1切換弁136の位置が第2位置136bにないと判定されると、第2オイルポンプ130から吐出された作動油を第1オイルポンプ10の吸込側へと供給することができない状態にあるとして、一旦、処理を終了する。
【0165】
ステップS52では、圧力センサ26により検出された検出圧Pを取り込み、続くステップS53において、取り込まれた検出圧Pと目標圧力である第1圧力TP1との比較が行われる。第1圧力TP1は、作動流体供給システム300の全体効率が最高効率になると予測されるときの第1オイルポンプ10の吸込み側の圧力であり、第1オイルポンプ10のポンプ効率及び第2オイルポンプ130の駆動負荷に基づいてコントローラ140内の目標圧力設定部により予め設定される。なお、第1圧力TP1は、予めマップ化されコントローラ140のROMに記憶されたものであってもよい。
【0166】
検出圧Pが第1圧力TP1よりも低い場合、ステップS54に進み、出力制御部149によって電動モータ160の出力は増大される。これにより第2オイルポンプ130から還流通路134を通じて第1オイルポンプ10の吸込側へと供給される作動油の流量は増加する。
【0167】
一方、検出圧Pが第1圧力TP1以上である場合、ステップS55に進み、出力制御部149によって電動モータ160の出力が低下または電動モータ160が停止される。これにより第2オイルポンプ130から還流通路134を通じて第1オイルポンプ10の吸込側へと供給される作動油の流量は減少する。
【0168】
このように、第2オイルポンプ130から吐出された作動油を第1オイルポンプ10の吸込側へと供給することが可能である場合には、電動モータ160の出力を制御する出力制御部149が第1圧力制御部として機能し、第1オイルポンプ10の吸込側の圧力を目標圧力である第1圧力TP1に近づけるように作動する。
【0169】
以上のように、還流制御が行われると、第1オイルポンプ10の吸込み側の圧力が過度に負圧となることが抑制されることで第1オイルポンプ10の吸込側においてキャビテーションを生じにくくすることが可能であるとともに、第1オイルポンプ10の吸込み側の圧力を上昇させることで第1オイルポンプ10のポンプ効率を向上させることが可能である。さらに、第1オイルポンプ10の吸込側の圧力を第1圧力TP1に近づけることによって、作動流体供給システム300全体の効率を向上させることができる。
【0170】
また、エンジン50の回転数が低く第1オイルポンプ10の回転数も低くなっているときに、自動変速機70で必要とされる作動油の必要流量Qrが比較的多いものの第1オイルポンプ10のみで必要流量Qrを賄うことが可能である場合、第1オイルポンプ10の吸込み側の負圧の度合いが大きくなり、キャビテーションが発生しやすい状況となる。しかしながら上述のように第2オイルポンプ130から吐出された作動油を第1オイルポンプ10の吸込側へと供給する還流制御を行うことによって、キャビテーションを生じにくくすることが可能である。
【0171】
なお、上述の還流制御では、第1圧力TP1の大きさは、作動流体供給システム300の全体効率を向上させることを意図して設定されている。これに代えて、第1圧力TP1の大きさは、第1オイルポンプ10の吸込側におけるキャビテーションの発生の抑制を意図して設定されるものであってもよいし、第2オイルポンプ130の駆動負荷、すなわち、電動モータ160の出力が極度に増大しない程度の大きさに設定されるものであってもよい。
【0172】
以上の第3実施形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0173】
上述の作動流体供給システム300では、第2オイルポンプ130からの作動油の供給先が第1オイルポンプ10の吸込側となるように第1切換弁136が切り換えられているとき、第1オイルポンプ10の吸込側の圧力が所定の第1圧力TP1となるように、出力制御部149によって、第2オイルポンプ130から第1オイルポンプ10の吸込側への作動油の供給が制御される。
【0174】
このように、第2オイルポンプ130から吐出された作動油を第1オイルポンプ10の吸込側へ供給することにより、第1オイルポンプ10の吸込み側の圧力が過度に負圧となることが抑制されることで第1オイルポンプ10の吸込側においてキャビテーションを生じにくくすることが可能であるとともに、第1オイルポンプ10の吸込み側の圧力を上昇させることで第1オイルポンプ10のポンプ効率を向上させることが可能である。また、第1オイルポンプ10の吸込側の圧力が所定の第1圧力TP1となるように、第2オイルポンプ130から第1オイルポンプ10の吸込側への作動油の供給を制御することによって、第2オイルポンプ130の駆動負荷が過大となることを抑制することにより、作動流体供給システム300の全体効率を向上させることができる。
【0175】
次に、上記各実施形態の変形例について説明する。以下のような変形例も本発明の範囲内であり、変形例に示す構成と上述の各実施形態で説明した構成を組み合わせたり、以下の異なる変形例で説明する構成同士を組み合わせたりすることも可能である。
【0176】
上記第1及び第2実施形態では、第1還流制御において、第2オイルポンプ11から吐出された作動油が第1オイルポンプ10の吸込側へと供給されている。これに代えて、第2オイルポンプ11だけではなく、第3オイルポンプ30も自動変速機70へ作動油を供給しない状態にある場合、具体的には、供給状態設定部45により供給状態が第1供給状態に設定されている場合には、第1還流制御において、第3オイルポンプ30から吐出された作動油を第1オイルポンプ10の吸込側へと供給してもよい。
【0177】
この場合、電動モータ60の出力を制御し第3オイルポンプ30の吐出量を変化させる出力制御部49が第1圧力制御部として機能し、第1オイルポンプ10の吸込側の圧力を目標圧力である第1圧力TP1に近づけるように作動する。また、この場合、第3オイルポンプ30が第2ポンプに相当し、第3切換弁36が第1切換弁に相当し、第3切換制御部48が第1切換制御部に相当する。なお、第1圧力TP1は、少なくとも第1オイルポンプ10のポンプ効率及び第3オイルポンプ30の駆動負荷に基づいて算出される作動流体供給システム100の全体効率が最高効率となるときの第1オイルポンプ10の吸込側の圧力である。
【0178】
このように第1還流制御において、第1オイルポンプ10の吸込側へと作動油を供給するポンプとしては、第2オイルポンプ11及び第3オイルポンプ30の何れであってもよいが、第1還流制御が行われた際の作動流体供給システム100の全体効率をより向上させることができる方のポンプを選択することが好ましい。
【0179】
なお、第2オイルポンプ11だけではなく、第3オイルポンプ30も自動変速機70へ作動油を供給しない状態にある場合は、第1還流制御において、第1オイルポンプ10の吸込側へと作動油を供給するポンプとして、第2オイルポンプ11と第3オイルポンプ30との2つのポンプが用いられてもよい。この場合、第2オイルポンプ11と第3オイルポンプ30との2つのポンプが第2ポンプに相当し、第1切換弁22と第3切換弁36との2つの切換弁が第1切換弁に相当し、第1切換制御部46と第3切換制御部48との2つの切換制御部が第1切換制御部に相当する。
【0180】
また、上記第1及び第2実施形態では、第2オイルポンプ11は、定容量型のベーンポンプである。これに代えて、第2オイルポンプ11は、可変容量型のベーンポンプやピストンポンプであってもよく、この場合、第2オイルポンプ11から吐出された作動油を第1オイルポンプ10の吸込側へと供給する第1還流制御が行われる際に、カムリングの偏心量やピストンのストロークを調整して第2オイルポンプ11の吐出量を変更することによって、第1オイルポンプ10の吸込側へと供給される作動油の流量を制御してもよい。この場合、上記第1実施形態では、第2切換弁25及び分岐通路24を廃止することが可能であり、上記第2実施形態では、リリーフ弁27及びリリーフ通路28を廃止することが可能である。
【0181】
また、上記第1及び第2実施形態では、第1切換弁22は、第2吐出管17と第1接続管19とを連通させる第1位置22aと、第2吐出管17と第1還流通路20とを連通させる第2位置22bと、の2つの位置を有する1つの弁装置で構成されている。これに代えて、第1切換弁22は、第2吐出管17と第1接続管19とを連通または遮断する開閉弁と、第2吐出管17と第1還流通路20とを連通または遮断する開閉弁と、の2つの開閉弁により構成されるものであってもよい。同様に、第3切換弁36も2つの開閉弁により構成されるものであってもよい。また、上記第1実施形態における第2切換弁25や上記第3実施形態における第1切換弁136も2つの開閉弁により構成してもよい。
【0182】
また、上記第1実施形態では、第2切換弁25は、第1切換弁22とは別に設けられている。これに代えて、第2切換弁25を第1切換弁22と一体的に構成し、第2吐出管17と第1接続管19とを連通させる第1位置と、第2吐出管17と第2還流通路23とを連通させる第2位置と、第2吐出管17と分岐通路24とを連通させる第3位置と、の3つの位置を有する1つの弁装置としてもよい。
【0183】
また、上記第1及び第2実施形態では、第1オイルポンプ10及び第2オイルポンプ11に加えて、第3オイルポンプ30が設けられている。流体機器である自動変速機70で必要とされる作動油の必要流量Qrを、第1オイルポンプ10及び第2オイルポンプ11の2つのポンプによって十分に賄うことができる場合、第3オイルポンプ30は設けられなくてもよい。
【0184】
また、上記第1及び第2実施形態では、第2オイルポンプ11の駆動負荷の変化を圧力センサ26により検出された検出圧Pから推定している。これに代えて、第2オイルポンプ11の駆動軸におけるトルクを直接検出してもよい。
【0185】
また、上記各実施形態では、作動流体として、作動油を使用しているが、作動油の代わりに水や水溶液等の非圧縮性流体を使用してもよい。
【0186】
また、上記各実施形態では、自動変速機70がベルト式無段変速機構(CVT)を備える変速機である場合について説明したが、自動変速機70は作動油の圧力を利用して作動するものであればどのような形式のものであってもよく、トロイダル式無段変速機構や遊星歯車機構を備えたものであってもよい。
【0187】
また、上記各実施形態では、作動流体供給システム100,200,300は、車両の動力伝達装置に作動流体を供給するものとして説明したが、本作動流体供給システム100,200,300が適用されるものは車両に限定されず、ポンプから供給される作動流体によって作動する流体機器を備えたものであれば、例えば、建設作業機や船舶、航空機、定置式設備に適用されてもよい。
【0188】
また、上記各実施形態では、第1オイルポンプ10及び第2オイルポンプ11はベーンポンプであり、第3オイルポンプ30は内接歯車ポンプである。これらポンプの形式は、異なる形式である必要はなく、同じ形式のものが用いられてもよく、例えば、すべてベーンポンプであってもよい。また、ポンプの形式は、これらに限定されず、例えば、外接歯車ポンプやピストンポンプであってもよい。
【0189】
また、上記各実施形態では、第1オイルポンプ10は、エンジン50の出力により駆動されている。第1オイルポンプ10を駆動する第1駆動源としては、エンジン50に限定されず、例えば、車両の駆動輪を駆動する電動モータであってもよい。
【0190】
また、上記第1及び第2実施形態では、第3オイルポンプ30は、電動モータ60の出力により駆動される。第3オイルポンプ30を駆動する第2駆動源としては、電動モータ60に限定されず、例えば、補機等を駆動する補助エンジンであってもよい。同様に、上記第3実施形態において第2オイルポンプ130を駆動する第2駆動源としては、電動モータ60に限定されない。
【0191】
また、上記各実施形態では、コントローラ40,140に入力される車両の状態を示す信号として種々の信号が列記されているが、これら以外にも、例えば、自動変速機70にトルクコンバータが設けられている場合は、トルクコンバータの作動状態や締結状態を示す信号がコントローラ40,140に入力されてもよい。この場合、トルクコンバータの状態を加味して、自動変速機70の必要流量Qrを演算したり、自動変速機70への作動油の供給状態の切り換えを制限したりしてもよい。例えば、トルクコンバータが半締結状態(スリップロックアップ状態)にあることが検出された場合には、作動油供給状態が他の供給状態に移行することを禁止してもよい。これにより、トルクコンバータを安定した作動状態に維持することができる。また、車両の減速状態を示す信号として、ブレーキの操作量及び操作速度を示す信号がコントローラ40,140に入力されてもよい。
【0192】
また、上記第1及び第2実施形態では、コントローラ40の吐出流量算出部42では、第1オイルポンプ10から吐出される作動油の第1吐出流量Q1及び第2オイルポンプ11から吐出される作動油の第2吐出流量Q2が算出される。これに代えて、流量センサ等によって、第1オイルポンプ10及び第2オイルポンプ11から吐出される実際の作動油の吐出流量を直接的に計測してもよい。上記第3実施形態において第1オイルポンプ10から吐出される作動油の第1吐出流量Q1についても同様である。
【0193】
以下、本発明の実施形態の構成、作用、及び効果をまとめて説明する。
【0194】
作動流体供給システム100,200,300は、エンジン50の出力により駆動され自動変速機70へ作動油を供給可能な第1ポンプ10と、エンジン50または電動モータ60,160の出力により駆動され自動変速機70へ作動油を供給可能な第2ポンプ11,30,130と、第2ポンプ11,30,130からの作動油の供給先を、第1ポンプ10の吐出側と、第1ポンプ10の吸込側と、の何れか一方に切り換え可能な第1切換弁22,36,136と、第1ポンプ10から吐出される作動油の第1吐出流量が自動変速機70で必要とされる作動油の必要流量以上である場合には、第2ポンプ11,30,130からの作動油の供給先が第1ポンプ10の吸込側となるように第1切換弁22,36,136を切り換え、第1吐出流量が必要流量未満である場合には、第2ポンプ11,30,130からの作動油の供給先が第1ポンプ10の吐出側となるように第1切換弁22,36,136を切り換える第1切換制御部46,146と、第2ポンプ11,30,130からの作動油の供給先が第1ポンプ10の吸込側となるように第1切換弁22,36,136が切り換えられているときに、第1ポンプ10の吸込側の圧力が所定の第1圧力TP1となるように制御する第1圧力制御部25,47,27,28,49,149と、を備える。
【0195】
この構成では、第2ポンプ11,30,130からの作動油の供給先が第1ポンプ10の吸込側となるように第1切換弁22,36,136が切り換えられているとき、第1ポンプ10の吸込側の圧力が所定の第1圧力TP1となるように、第1圧力制御部25,47,27,28,49,149によって、第2ポンプ11,30,130から第1ポンプ10の吸込側への作動油の供給が制御される。
【0196】
このように、第2ポンプ11,30,130から吐出された作動油を第1ポンプ10の吸込側へ供給することにより、第1ポンプ10の吸込み側の圧力が過度に負圧となることが抑制されることで第1ポンプ10の吸込側においてキャビテーションを生じにくくすることが可能であるとともに、第1ポンプ10の吸込み側の圧力を上昇させることで第1ポンプ10のポンプ効率を向上させることが可能である。また、第1ポンプ10の吸込側の圧力が所定の第1圧力TP1となるように、第2ポンプ11,30,130から第1ポンプ10の吸込側への作動油の供給を制御することによって、第2ポンプ11,30,130の駆動負荷が過大となることを抑制することにより、作動流体供給システム100,200,300の全体効率を向上させることができる。
【0197】
また、第2ポンプ11は、エンジン50の出力により駆動され、第1圧力制御部は、第1切換弁22と第1ポンプ10の吸込側とを接続する還流通路20,23に設けられ第2ポンプ11からの作動油の供給先を、第1ポンプ10の吸込側と、作動油が貯留されるタンクTと、の何れか一方に切り換え可能な第2切換弁25と、第1ポンプ10の吸込側の圧力が第1圧力TP1以下である場合には、第2ポンプ11からの作動油の供給先が第1ポンプ10の吸込み側となるように第2切換弁25を切り換え、第1ポンプ10の吸込側の圧力が第1圧力TP1よりも大きい場合には、第2ポンプ11からの作動油の供給先がタンクTとなるように第2切換弁25を切り換える第2切換制御部47と、を有する。
【0198】
この構成では、第2ポンプ11からの作動油の供給先が第1ポンプ10の吸込側となるように第1切換弁22が切り換えられているとき、第1ポンプ10の吸込側の圧力が所定の第1圧力TP1となるように、第2切換弁25及び第2切換制御部47によって、第2ポンプ11から第1ポンプ10の吸込側への作動油の供給が制御される。
【0199】
このように、第2ポンプ11から吐出された作動油を第1ポンプ10の吸込側へ戻すことにより、第1ポンプ10の吸込み側の圧力が過度に負圧となることが抑制されることで第1ポンプ10の吸込側においてキャビテーションを生じにくくすることが可能であるとともに、第1ポンプ10の吸込み側の圧力を上昇させることで第1ポンプ10のポンプ効率を向上させることが可能である。また、第1ポンプ10の吸込側の圧力が所定の第1圧力TP1となるように、第2ポンプ11から第1ポンプ10の吸込側への作動油の供給を制御することによって、第2ポンプ11の駆動負荷が過大となることを抑制することにより、作動流体供給システム100の全体効率を向上させることができる。
【0200】
また、第2ポンプ11は、エンジン50の出力により駆動され、第1圧力制御部は、第1切換弁22と第1ポンプ10の吸込側とを接続する還流通路20,23から分岐し、作動油が貯留されるタンクTに接続されるリリーフ通路28と、リリーフ通路28に設けられ、還流通路20,23の圧力が第1圧力TP1よりも大きくなったときに開弁し、還流通路20,23とタンクTとを連通するリリーフ弁27と、を有する。
【0201】
この構成では、第2ポンプ11からの作動油の供給先が第1ポンプ10の吸込側となるように第1切換弁22が切り換えられているとき、第1ポンプ10の吸込側の圧力が所定の第1圧力TP1となるように、リリーフ弁27及びリリーフ通路28によって、第2ポンプ11から第1ポンプ10の吸込側への作動油の供給が制御される。
【0202】
このように、第2ポンプ11から吐出された作動油を第1ポンプ10の吸込側へ戻すことにより、第1ポンプ10の吸込み側の圧力が過度に負圧となることが抑制されることで第1ポンプ10の吸込側においてキャビテーションを生じにくくすることが可能であるとともに、第1ポンプ10の吸込み側の圧力を上昇させることで第1ポンプ10のポンプ効率を向上させることが可能である。また、第1ポンプ10の吸込側の圧力が所定の第1圧力TP1となるように、第2ポンプ11から第1ポンプ10の吸込側への作動油の供給を制御することによって、第2ポンプ11の駆動負荷が過大となることを抑制することにより、作動流体供給システム200の全体効率を向上させることができる。
【0203】
また、第2ポンプ11は、エンジン50の出力により駆動され、作動流体供給システム100,200は、電動モータ60の出力により駆動され自動変速機70へ作動油を供給可能な第3ポンプ30と、第3ポンプ30からの作動油の供給先を、第1ポンプ10の吐出側と、第1ポンプ10及び第2ポンプ11の吸込側と、の何れか一方に切り換え可能な第3切換弁36と、第1吐出流量が必要流量未満であり、第1吐出流量と第2ポンプ11から吐出される作動油の第2吐出流量との合計流量が必要流量以上である場合には、第3ポンプ30からの作動油の供給先が第1ポンプ10及び第2ポンプ11の吸込側となるように第3切換弁36を切り換え、合計流量が必要流量未満である場合には、第3ポンプ30からの作動油の供給先が第1ポンプ10の吐出側となるように第3切換弁36を切り換える第3切換制御部48と、第3ポンプ30からの作動油の供給先が第1ポンプ10及び第2ポンプ11の吸込側となるように第3切換弁36が切り換えられているときに、第1ポンプ10及び第2ポンプ11の吸込側の圧力が所定の第2圧力TP2となるように制御する出力制御部49と、をさらに備える。
【0204】
この構成では、第3ポンプ30からの作動油の供給先が第1ポンプ10及び第2ポンプ11の吸込側となるように第3切換弁36が切り換えられているとき、第1ポンプ10の吸込側の圧力が所定の第2圧力TP2となるように、出力制御部49によって、第3ポンプ30から第1ポンプ10及び第2ポンプ11の吸込側への作動油の供給が制御される。
【0205】
このように、第3ポンプ30から吐出された作動油を第1ポンプ10及び第2ポンプ11の吸込側へ供給することにより、第1ポンプ10及び第2ポンプ11の吸込み側の圧力が過度に負圧となることが抑制されることで第1ポンプ10及び第2ポンプ11の吸込側においてキャビテーションを生じにくくすることが可能であるとともに、第1ポンプ10及び第2ポンプ11の吸込み側の圧力を上昇させることで第1ポンプ10及び第2ポンプ11のポンプ効率を向上させることが可能である。また、第1ポンプ10及び第2ポンプ11の吸込側の圧力が所定の第2圧力TP2となるように、第3ポンプ30から第1ポンプ10及び第2ポンプ11の吸込側への作動油の供給を制御することによって、第3ポンプ30の駆動負荷が過大となることを抑制することにより、作動流体供給システム100,200の全体効率を向上させることができる。
【0206】
また、第2ポンプ30,130は、電動モータ60,160の出力により駆動され、第1圧力制御部は、第1ポンプ10の吸込側の圧力が第1圧力TP1以下である場合には、電動モータ60,160の出力を増大させ、第1ポンプ10の吸込側の圧力が第1圧力TP1よりも大きい場合には、電動モータ60,160の出力を低下させる出力制御部49,149を有する。
【0207】
この構成では、第2ポンプ30,130からの作動油の供給先が第1ポンプ10の吸込側となるように第1切換弁36,136が切り換えられているとき、第1ポンプ10の吸込側の圧力が所定の第1圧力TP1となるように、出力制御部49,149によって、第2ポンプ30,130から第1ポンプ10の吸込側への作動油の供給が制御される。
【0208】
このように、第2ポンプ30,130から吐出された作動油を第1ポンプ10の吸込側へ供給することにより、第1ポンプ10の吸込み側の圧力が過度に負圧となることが抑制されることで第1ポンプ10の吸込側においてキャビテーションを生じにくくすることが可能であるとともに、第1ポンプ10の吸込み側の圧力を上昇させることで第1ポンプ10のポンプ効率を向上させることが可能である。また、第1ポンプ10の吸込側の圧力が所定の第1圧力TP1となるように、第2ポンプ30,130から第1ポンプ10の吸込側への作動油の供給を制御することによって、第2ポンプ30,130の駆動負荷が過大となることを抑制することにより、作動流体供給システム100,200,300の全体効率を向上させることができる。
【0209】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0210】
100,200,300・・・作動流体供給システム、10・・・第1オイルポンプ(第1ポンプ)、11・・・第2オイルポンプ(第2ポンプ)、20・・・第1還流通路(還流通路)、22・・・第1切換弁、23・・・第2還流通路(還流通路)、25・・・第2切換弁(第1圧力制御部)、26・・・圧力センサ、27・・・リリーフ弁(第1圧力制御部)、28・・・リリーフ通路(第1圧力制御部)、30・・・第3オイルポンプ(第2ポンプ,第3ポンプ)、34・・・第3還流通路(還流通路)、36・・・第3切換弁(第1切換弁,第3切換弁)、40・・・コントローラ、46・・・第1切換制御部、47・・・第2切換制御部(第1圧力制御部)、48・・・第3切換制御部(第1切換制御部,第3切換制御部)、49・・・出力制御部(第1圧力制御部,第2圧力制御部)、50・・・エンジン(第1駆動源)、60・・・電動モータ(第2駆動源)、70・・・自動変速機(流体機器)、130・・・第2オイルポンプ(第2ポンプ)、134・・・還流通路、136・・・第1切換弁、140・・・コントローラ、146・・・第1切換制御部、149・・・出力制御部(第1圧力制御部)、160・・・電動モータ(第2駆動源)
図1
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図10