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  • 特許-コンタクトおよびコネクタ 図1
  • 特許-コンタクトおよびコネクタ 図2
  • 特許-コンタクトおよびコネクタ 図3
  • 特許-コンタクトおよびコネクタ 図4
  • 特許-コンタクトおよびコネクタ 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-03
(45)【発行日】2023-10-12
(54)【発明の名称】コンタクトおよびコネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/11 20060101AFI20231004BHJP
   H01R 4/2454 20180101ALI20231004BHJP
   H01R 13/42 20060101ALI20231004BHJP
【FI】
H01R13/11 302E
H01R4/2454
H01R13/42 J
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019214024
(22)【出願日】2019-11-27
(65)【公開番号】P2021086705
(43)【公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-10-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000227995
【氏名又は名称】タイコエレクトロニクスジャパン合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094330
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 正紀
(72)【発明者】
【氏名】安井 達雄
(72)【発明者】
【氏名】菊地 寛明
(72)【発明者】
【氏名】岩▲崎▼ 正章
(72)【発明者】
【氏名】日景 千宏
【審査官】山下 寿信
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-005316(JP,A)
【文献】米国特許第04315663(US,A)
【文献】特開平09-293543(JP,A)
【文献】特開昭57-148885(JP,A)
【文献】米国特許第05980337(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 4/24
H01R 13/11
H01R 13/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基部と、
前記基部の前端部から上方に延び電線が圧接される第1の圧接スロットが形成された第1の圧接部と、
前記基部の後端部から上方に延び電線が圧接される、前記第1の圧接スロットとは前記基部で分離された第2の圧接スロットが形成された第2の圧接部と、
前記第1の圧接部の上端で下向きに折り返されて下方に延び、前記第1の圧接スロットよりも下方に、ハウジングに圧入される圧入部を有する垂下部と、
前記垂下部の下端から延び、前記後端部側から前記前端部側に向かって挿入されてきた雄型の相手コンタクトを前記基部との間に受け入れて該相手コンタクトと接触する接触部とを有することを特徴とするコンタクト。
【請求項2】
請求項1に記載のコンタクトと、ハウジングとを備え、前記圧入部が該ハウジングに圧入されていることを特徴とするコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線が圧接される圧接部を有するコンタクトと、そのコンタクトを備えたコネクタとに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、圧接部を有するコンタクトを備えたコネクタが知られている。例えば、特許文献1には、基部の上方に圧接部を有し、基部の下方に、相手コンタクトと接触する接触部を有するコンタクトが開示されている。圧接部には左右の中央に圧接スロットが形成されている。この圧接スロットは、被覆電線を受け入れてその被覆を切断し、その芯線と接触する。接触部は、挿入されてきた雄型の相手コンタクトを基部との間に受け入れて相手コンタクトと接触する。このコンタクトは、圧接部の左右両側に、ハウジングに圧入される圧入部を有する。このコンタクトをハウジングに組み込む際に圧入部がハウジングに圧入され、このコンタクトがハウジングに固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平6-5316号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年の小型化、軽量化の要請が上記のタイプのコンタクトを備えたコネクタにも及んでいる。このため、コンタクトも小型化、薄肉化が進み、撓みやすくなってきている。
【0005】
ここで、上掲の特許文献1の構造のコンタクトの場合、コンタクトをハウジングに圧入する際に、圧入部がハウジングから反力を受けて、圧接部に、圧接スロットの幅を縮める向きの力が作用する。このため、小型化、薄肉化の影響でコンタクトが撓みやすくなっていると、圧入部がハウジングにしっかりとは圧入されずに、本来の効果を発揮できないおそれがある。
【0006】
また、相手コンタクトを接触部と基部との間に受け入れた際、接触部が弾性変形する。ここで、上掲の特許文献1の構造のコンタクトの場合、圧入部が圧接部の左右の位置にある。このため、相手コンタクトの挿入により接触部が弾性変形したことの影響が圧接部にまで及ぶおそれがある。小型化、薄肉化の影響でコンタクトが撓みやすくなっていると、圧接部に与える影響が大きく、圧接部における芯線との接触圧が変動するおそれがある。
【0007】
本発明は、コンタクトをハウジングに組み込むにあたっては、圧入部をハウジングに確実に圧入させ、かつ、相手コンタクトの挿入による影響が圧接部に伝わるのを抑えた構造のコンタクト、およびそのコンタクトを備えたコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成する本発明のコンタクトは、
基部と、
基部の前端部から上方に延び電線が圧接される第1の圧接スロットが形成された第1の圧接部と、
基部の後端部から上方に延び電線が圧接される、第1の圧接スロットとは前記基部で分離された第2の圧接スロットが形成された第2の圧接部と、
第1の圧接部の上端で下向きに折り返されて下方に延び、第1の圧接スロットよりも下方に、ハウジングに圧入される圧入部を有する垂下部と、
垂下部の下端から延び、上記後端部側から上記前端部側に向かって挿入されてきた雄型の相手コンタクトを前記基部との間に受け入れて該相手コンタクトと接触する接触部とを有することを特徴とする。
【0009】
本発明のコンタクトの場合、圧入部は圧接スロットよりも下方、すなわち圧接スロットが存在しない位置に形成されている。このため、圧入部に反力が働いてもその反力に耐えて圧入部をハウジングに確実に圧入させることができる。
【0010】
また、本発明のコンタクトの場合、圧入部は圧接部と接触部との中間に設けられている。このため、相手コンタクトの挿入による接触部の変形の影響は圧入部の位置で遮断され、その影響が圧接部にまで及ぶことが抑えられる。
また、本発明のコンタクトの場合、第1の圧接部と第2の圧接部を有しているため、圧接部と芯線が高い信頼性を持って電気的に導通する。
【0013】
また、上記目的を達成する本発明のコネクタは、本発明のコンタクトと、ハウジングとを備え、圧入部がハウジングに圧入されていることを特徴とする。

【0014】
本発明のコネクタによれば、信頼性の高いコネクタが実現する。
【発明の効果】
【0015】
以上の本発明によれば、コンタクトがハウジングに安定的に支持され、かつ、相手コンタクトが挿入されても安定的に動作するコンタクトおよびコネクタが実現する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態としてのコンタクトの斜視図である。
図2】本発明の一実施形態としてのコネクタの斜視図である。
図3図2に斜視図を示したコネクタの平面図である。
図4図3に示した矢印A-Aに沿う拡大断面図(A)および図3に示した矢印B-Bに沿う拡大断面図(B)である。
図5】本実施形態のコネクタの、図3に示した矢印B-Bに沿う断面を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0018】
図1は、本発明の一実施形態としてのコンタクトの斜視図である。
【0019】
このコンタクト10は、一枚の金属平板の打ち抜き加工および曲げ加工により形成されている。このコンタクト10は、基部20と、圧接部30と、垂下部40と、接触部50とを有する。
【0020】
基部20は、平板形状を有し、水平に広がっている。
【0021】
また、圧接部30は、基部20から上方に延びている。そして、この圧接部30には、被覆電線90(図5参照)が圧接される圧接スリット31が形成されている。この圧接部30に被覆電線90を装着すると、圧接スリット31の両側のエッジで被覆電線90の被覆が切断され、その内側の芯線とこのコンタクト10とが電気的に導通する。この圧接部は、矢印Sで示す相手コンタクト81(図5参照)の挿入の向きの、基部20の前端部および後端部の各々に設けられた、それぞれ第1の圧接部30Aおよび第2の圧接部30Bを有する。被覆電線90を、第1の圧接部30Aと第2の圧接部30Bとの2か所で圧接することで、芯線とコンタクト10との間の導通の信頼性を向上させている。
【0022】
また、垂下部40は、圧接部30の上端、具体的には、矢印Sで示す挿入の向きの前端部に設けられた第1の圧接部30Aの上端で下向きに折り返されて下方に延びている。そして、この垂下部40は、ハウジングに圧入される圧入部41を有する。この圧入部41は、圧接スロット31よりも下方の位置であって、垂下部40の左右両側に設けられている。この圧入部41が設けられている箇所には圧接スリット31は形成されておらず、左右の圧入部41の間には、圧接スリット31のような空間は存在しない。このため、左右の圧入部41どうしを互いに近づける向き(矢印Fで示す向き)の力が加わっても左右の圧入部41どうしの距離が維持される。これに対し、仮に、圧接スリット31が形成されている圧接部30に、矢印F’で示す向きの力が加わると、圧接スリット31が内側に撓んで圧接部30の左右の縁32どうしの距離が近付くことになる。前掲の特許文献1のコンタクトの場合、圧接スリット31と並ぶ、矢印F’で示す位置に圧入部が形成されている。このため、圧接スリット31が内側に撓み、圧入部がハウジングの壁から離れる向きに移動し、十分な圧入、ひいてはコンタクトの保持がなされないおそれがある。これに対し、この実施形態の場合は、左右の圧入部41の間には、圧接スリット31のような空間は存在せず、圧入部41がハウジング60の壁61から強い反力を受けてもそれに耐えることができ、十分な圧入が行われる。
【0023】
また、接触部50は、垂下部40の下端から片持ち梁形状に延びている。そして、この接触部50は、挿入されてきた雄型の相手コンタクト81を基部20との間に受け入れて相手コンタクト81と接触し、電気的に導通する。
【0024】
図2は、本発明の一実施形態としてのコネクタの斜視図である。
【0025】
また、図3は、図2に斜視図を示したコネクタの平面図である。
【0026】
さらに、図4は、図3に示した矢印A-Aに沿う拡大断面図(A)および図3に示した矢印B-Bに沿う拡大断面図(B)である。
【0027】
この図2に示すコネクタ100は、ハウジング60と、そのハウジング60に装着された複数(この図2に示す例の場合13個)のコンタクト10を備えている。図2に示す矢印Sは、図1に示した矢印Sとその向きが一致している。すなわち、ハウジング60には、複数のコンタクト10が、図1の矢印Sと図2の矢印Sの向きが一致するように、装着されている。
【0028】
図4(A)に示すように、各コンタクト10をハウジング60内に装着すると、圧入部41がハウジング60の壁61に食い込むように圧入される。これにより、各コンタクト10は、ハウジング60内の各所定位置に固定される。
【0029】
また、このハウジング60には、各コンタクト10に対応する位置に、相手コンタクト81(図5参照)が挿し込まれる挿入開口62が形成されている。この挿入開口62は、図4(B)に示すように、コンタクト10の基部20と接触部50との間の相手コンタクト81の受入口51と連通する位置に形成されている。さらに、このハウジング60には、各コンタクト10に対応する収容溝63が形成されている。被覆電線90は、その端部がコンタクト10の圧接部30に圧接され、圧接された端部に連なる部分がハウジング60の収容溝63に収容される。ただし、図2図4には被覆電線90は示されていない。
【0030】
図5は、本実施形態のコネクタの、図3に示した矢印B-Bに沿う断面を示した斜視図である。この図5には、被覆電線90も示されている。ただし、ここに示す被覆電線90は、被覆と芯線とを区別せず一体のものとして示している。また、図5(B),(C)には、対応する箇所で断面した相手コネクタ80の斜視図も示されている。
【0031】
図5(A)に示すように、被覆電線90は、その端部がコンタクト10の圧接部30に圧接され、圧接された端部に連なる部分がハウジング60の収容溝63に収容されている。
【0032】
図5(B)には、このコネクタ100に嵌合する向きおよび姿勢の、嵌合前の相手コネクタ80が示されている。
【0033】
また、図5(C)には、このコネクタ100に嵌合した状態の相手コネクタ80が示されている。
【0034】
相手コネクタ80は、このコネクタ100のコンタクト10と同数の、雄型の相手コンタクト81を備えている。このコネクタ100に相手コネクタ80を嵌合すると、各相手コンタクト81が各挿入開口62からコネクタ100内に挿し込まれる。そして、その挿し込まれた相手コンタクト81は、このコネクタ100のコンタクト10の接触部50と基部20とに挟まれて、コンタクト10と電気的に導通する。相手コンタクト81の挿入にあたり、接触部50が弾性的に撓む。ただし、この接触部50が撓んだことの影響は垂下部40の圧入部41が形成された部分で抑えられ、圧接部30に与える影響を無視することができる。したがって、圧接部30と被覆電線90の芯線との安定的な導通が維持される。
【0035】
なお、ここでは、13個のコンタクト10を備えたコネクタ100について説明したが、コンタクト10の数は、1つ以上のいくつでもよい。
【符号の説明】
【0036】
10 コンタクト
20 基部
30 圧接部
30A 第1の圧接部
30B 第2の圧接部
31 圧接スロット
40 垂下部
41 圧入部
50 接触部
60 ハウジング
81 相手コンタクト
90 被覆電線
100 コネクタ
図1
図2
図3
図4
図5