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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-03
(45)【発行日】2023-10-12
(54)【発明の名称】杭打機
(51)【国際特許分類】
   E02D 7/00 20060101AFI20231004BHJP
   E02D 13/04 20060101ALI20231004BHJP
   E21B 19/24 20060101ALI20231004BHJP
【FI】
E02D7/00 Z
E02D13/04
E21B19/24
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019235936
(22)【出願日】2019-12-26
(65)【公開番号】P2021105260
(43)【公開日】2021-07-26
【審査請求日】2022-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 良彦
(74)【代理人】
【識別番号】100086210
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 一彦
(72)【発明者】
【氏名】吉仲 智彦
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-118010(JP,A)
【文献】特開2006-249715(JP,A)
【文献】特開2014-173382(JP,A)
【文献】特開2016-098622(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 7/00
E02D 13/04
E21B 19/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クローラを備えた下部走行体と、該下部走行体の上部に旋回可能に設けられた上部旋回体と、該上部旋回体の前部に起伏可能に設けられたリーダと、該リーダの前面に沿って昇降可能な作業装置とを備え、前記リーダの前面には、前記作業装置によって回転駆動される施工部材の振れを防止する開閉可能な振止装置が設けられている杭打機において、
前記振止装置は、前記施工部材としてロッドを支持するロッド振止部材と、前記施工部材として鋼管杭を支持する鋼管杭振止部材と、前記ロッド振止部材及び前記鋼管杭振止部材が上下方向に並んで設けられるベース部材とを備え
前記作業装置は、前記リーダの前面に設けられたラックギヤに噛合するピニオンギヤと、該ピニオンギヤを駆動する作業装置昇降モータとを有する作業装置昇降機構を介して昇降可能に設けられ、
前記振止装置は、前記ラックギヤに噛合するピニオンギヤと、該ピニオンギヤを駆動する振止装置昇降モータとを有する振止装置昇降機構を介して前記作業装置の高さ位置よりも下方で昇降可能に設けられていることを特徴とする杭打機。
【請求項2】
前記ベース部材は、前記振止装置昇降モータが設けられるベース本体と、前記ロッド振止部材及び前記鋼管杭振止部材が設けられるブラケットとを有し、
前記ベース本体と前記ブラケットとは、前記ベース本体の前部に備わるブラケット取付腕と、前記ブラケットの後部に備わる連結腕との重合部をピン結合することにより、前後方向に対向配置して分離可能に組み合わされていることを特徴とする請求項記載の杭打機。
【請求項3】
前記ブラケット取付腕は、上部取付部及び下部取付部を有し、前記連結腕は、前記上部取付部に対応する上部連結部及び前記下部取付部に対応する下部連結部を有し、
前記上部取付部と前記上部連結部との重合部に上部連結ピンを挿通する上部ピン挿通孔が設けられるとともに、前記下部取付部と前記下部連結部との重合部に下部連結ピンを挿通する下部ピン挿通孔が設けられ、対応する各ピン挿通孔を一致させて各連結ピンをそれぞれ抜き差しすることにより、前記ベース本体と前記ブラケットとが分離可能に組み合わされ、
前記振止装置昇降モータは、前記上部取付部と前記下部取付部とを上下方向に離間させて形成した空間に配置されていることを特徴とする請求項記載の杭打機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、杭打機に関し、詳しくは、作業装置に装着したロッド又は鋼管杭を支持する振止装置を備えた杭打機に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、小型の杭打機は、地盤改良と鋼管埋設との2種類の作業を1台で行うことができる。地盤改良を目的として使用する場合には施工部材に中空ロッドが使用され、一方、鋼管埋設を目的として使用する場合には施工部材に鋼管杭が使用される。このため、杭打機には、施工中のロッドや鋼管杭が傾斜したり芯ズレしたりしないように、リーダの下部に、これらの振れ止めを図る振止装置が設けられている(例えば、特許文献1,2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-121467号公報
【文献】特開2019-157499号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の地盤改良用、鋼管埋設用の各振止装置は、施工部材の形状や求める振止性能などに応じて使い分けがなされている。このため、地盤を改良してから鋼管杭を埋設する工法を行う場合、現場で振止装置を組み替える手間がかかり、作業効率が悪いという問題があった。
【0005】
そこで本発明は、地盤改良から鋼管埋設への作業の移行に伴う段取り替えの負担を低減可能な振止装置を備えた杭打機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の杭打機は、クローラを備えた下部走行体と、該下部走行体の上部に旋回可能に設けられた上部旋回体と、該上部旋回体の前部に起伏可能に設けられたリーダと、該リーダの前面に沿って昇降可能な作業装置とを備え、前記リーダの前面には、前記作業装置によって回転駆動される施工部材の振れを防止する開閉可能な振止装置が設けられている杭打機において、前記振止装置は、前記施工部材としてロッドを支持するロッド振止部材と、前記施工部材として鋼管杭を支持する鋼管杭振止部材と、前記ロッド振止部材及び前記鋼管杭振止部材が上下方向に並んで設けられるベース部材とを備え、前記作業装置は、前記リーダの前面に設けられたラックギヤに噛合するピニオンギヤと、該ピニオンギヤを駆動する作業装置昇降モータとを有する作業装置昇降機構を介して昇降可能に設けられ、前記振止装置は、前記ラックギヤに噛合するピニオンギヤと、該ピニオンギヤを駆動する振止装置昇降モータとを有する振止装置昇降機構を介して前記作業装置の高さ位置よりも下方で昇降可能に設けられていることを特徴としている。
【0008】
さらに、前記ベース部材は、前記振止装置昇降モータが設けられるベース本体と、前記ロッド振止部材及び前記鋼管杭振止部材が設けられるブラケットとを有し、前記ベース本体と前記ブラケットとは、前記ベース本体の前部に備わるブラケット取付腕と、前記ブラケットの後部に備わる連結腕との重合部をピン結合することにより、前後方向に対向配置して分離可能に組み合わされていることを特徴としている。
【0009】
加えて、前記ブラケット取付腕は、上部取付部及び下部取付部を有し、前記連結腕は、前記上部取付部に対応する上部連結部及び前記下部取付部に対応する下部連結部を有し、前記上部取付部と前記上部連結部との重合部に上部連結ピンを挿通する上部ピン挿通孔が設けられるとともに、前記下部取付部と前記下部連結部との重合部に下部連結ピンを挿通する下部ピン挿通孔が設けられ、対応する各ピン挿通孔を一致させて各連結ピンをそれぞれ抜き差しすることにより、前記ベース本体と前記ブラケットとが分離可能に組み合わされ、前記振止装置昇降モータは、前記上部取付部と前記下部取付部とを上下方向に離間させて形成した空間に配置されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明の杭打機によれば、振止装置がロッド振止部材及び鋼管杭振止部材を上下方向に並べて設けたベース部材を備えているので、地盤を改良する際には、鋼管杭振止部材を開いた状態とし、ロッド振止部材を閉じてロッドを支持しながら作業が行える。一方、鋼管杭を埋設する際には、ロッド振止部材を開いた状態とし、鋼管杭振止部材を閉じて鋼管杭を支持しながら作業が行える。すなわち、地盤を改良してから鋼管杭を埋設する工法では、振止装置を組み替える手間がなくなり、段取り替えにかかる時間を短縮することができる。
【0011】
また、振止装置がラックピニオン式の振止装置昇降機構を備えているので、施工部材の支持位置を上下方向に容易に調節することができる。とりわけ、ラックギヤが作業装置の昇降用の他に振止装置の昇降用として、その用途を兼ねるので、部品共通化による製造コストの低減が図れるだけでなく、既存の杭打機との互換性を確保して振止装置を後付けすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の杭打機を地盤改良用とした作業状態の一形態例を示す側面図である。
図2】同じく鋼管埋設用とした作業状態の一形態例を示す側面図である。
図3】同じく地盤改良用とした作業状態の要部側面図である。
図4図3のIV-IV矢視図である。
図5】同じく鋼管埋設用とした作業状態の要部側面図である。
図6図5のVI-VI矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1乃至図6は、本発明の杭打機を示す図である。杭打機11は、図1に示すように、クローラ12aを備えた下部走行体12と、該下部走行体12上に旋回可能に設けられた上部旋回体13とで構成されたベースマシン14と、上部旋回体13の前部に立設したリーダ15と、該リーダ15を後方から支持するリーダ起伏シリンダ16とを備えている。また、上部旋回体13の前部には、リーダ15を起伏可能に支持するリーダサポート17が設けられ、上部旋回体13の前部上方には、リーダ15の後方で配管を支持する配管案内アーム18が設けられている。さらに、上部旋回体13の前後左右の4箇所に安定用のジャッキ19が設けられるとともに、上部旋回体13の後端部に杭打機11のバランスをとるためのカウンタウエイト20が搭載されている。
【0014】
リーダ15は、断面が角筒状に形成された複数のリーダ部材を連結したもので、前記リーダサポート17に設けられたベースマシン幅方向の支軸に回動可能に取り付けられた基本リーダ21と、該基本リーダ21の上部に連結される上部リーダ22と、基本リーダ21の下部に連結される下部リーダ23とに分割形成され、上部リーダ22は、更に複数のリーダ部材に分割形成されている。これらの各リーダ部材は、上下端のフランジ部材によって連結され、ボルト・ナットを使用して着脱可能に構成されている。
【0015】
また、リーダ15の上端部には、吊上げ用ロープが巻掛けられるトップシーブ24が、下部前方には、回転駆動される施工部材の振れを防止する開閉可能な振止装置25がそれぞれ備わっており、リーダ15の前面中央には、ラックピニオン式昇降機構(作業装置昇降機構)の構成品の一つであるラックギヤ26が、両側面前端部には、左右一対のガイドパイプ27,27が、リーダ15の全長に亘ってそれぞれ連続的に設けられている。
【0016】
作業装置の一例であるオーガ28は、前記ガイドパイプ27,27に摺接する左右一対のガイドギブ28a,28aが後方に突出して設けられるとともに、前記ラックギヤ26の両側に設けられている歯列に歯合するピニオンギヤ(図示せず)をオーガ昇降モータ28bで回転駆動することにより、リーダ15の前面に沿って昇降可能になっている。
【0017】
この杭打機11を地盤改良を目的として使用する場合には、施工部材として中空ロッドが使用される。中空ロッド29は、ギヤケース28cを貫通して取り付けた状態で、オーガ駆動モータ28dの駆動を受けて回転され、上端がオーガ28の上方でスイベル30と連結されるとともに下端が掘削ヘッド31と連結される。これにより、中空ロッド29を回転させながら、中空ロッド29を通じて掘削ヘッド31の先端から噴射したセメントミルクなどの地盤改良剤が地盤内に注入される。一方、杭打機11を鋼管杭の埋設を目的として使用する場合には、施工部材として鋼管杭が使用される。鋼管杭32は、図2に示すように、ギヤケース28cの中に取り付けたドライブロッド33の下端にロッドキャップ34を介して連結され、オーガ駆動モータ28dの駆動を受けて、ロッドキャップ34を回転させながらオーガ28を降下させることにより地中に圧入される。
【0018】
ところで、杭打機11は、地盤改良と鋼管埋設との2種類の作業を1台で行うことができるが、例えば、地盤を改良してから鋼管杭32を埋設する工法を行う場合、現場で振止装置を組み替える手間が発生する。そこで、作業の移行に伴う段取り替えの負担をなくすべく、前記振止装置25は、図3乃至図6に示すように、オーガ28の昇降と同様にラックピニオン式の振止装置昇降機構を有するとともに、中空ロッド29の支持機能と鋼管杭32の支持機能とを選択的に実現可能な構造、すなわち、中空ロッド29を支持するロッド振止部材35と、鋼管杭32を支持する鋼管杭振止部材36と、これらの振止部材35,36が上下方向に並んで設けられるベース部材37とを備えている。
【0019】
ベース部材37は、基板39aに振止装置昇降モータ38が設けられるベース本体39と、ロッド振止部材35及び鋼管杭振止部材36が設けられるブラケット40とを有して形成され、ベース本体39とブラケット40とは、基板39aの前面両側部に備わる左右一対のブラケット取付腕41,41と、ブラケット40の両側部に備わる左右一対の連結腕42,42との重合部をピン結合することにより、前後方向に対向配置して分離可能に組み合わされている。
【0020】
具体的には、ブラケット取付腕41は、その前端部において、上部取付部41a及び下部取付部41bを有し、連結腕42は、その後端部において、前記上部取付部41aに対応する上部連結部42a及び前記下部取付部41bに対応する下部連結部42bを有し、上部連結部42aを上部取付部41aの二股部に差し込んで形成した重合部に、水平方向の上部連結ピン43を挿通する上部ピン挿通孔41c,42cが設けられるとともに、下部連結部42bを下部取付部41bの二股部に差し込んで形成した重合部に水平方向の下部連結ピン44を挿通する下部ピン挿通孔41d,42dが設けられ、対応する各ピン挿通孔41c,41d,42c,42dを一致させて各連結ピン43,44をそれぞれ抜き差しすることにより、ベース本体39とブラケット40とが分離可能に組み合わされている。
【0021】
また、上部取付部41aと下部取付部41bとは、互いに上下方向に離間させることにより、これらの間に振止装置昇降モータ38を配置可能にする程度の大きさの空間45が形成されており、該空間45を利用して左右一対の振止装置昇降モータ38,38が基板39aにそれぞれ取り付けられている。これにより、左右一対のブラケット取付腕41,41の幅(左右方向幅)は、リーダ15と略同一の幅に揃えられている。さらに、基板39aにおける振止装置昇降モータ38が配置された前面側とは反対の後面側には、リーダ15のガイドパイプ27に摺接する左右一対のガイドギブ46,46が後方に突出して設けられている。
【0022】
このようなラックピニオン式の振止装置昇降機構を有した振止装置25は、ラックギヤ26の両側に設けられている歯列に歯合する左右一対のピニオンギヤ38a,38aを振止装置昇降モータ38,38で回転駆動することで、オーガ28の高さ位置よりも下方において、リーダ15の前面に沿って昇降可能になっている。
【0023】
ロッド振止部材35は、ブラケット40の前端上部にて、左右一対の開閉フレーム47,48の基端部が回動ピン49,50で軸支され、閉じた状態で先端部に固定ピン51が挿入されて一体となるように構成されている。開閉フレーム47,48は、互いに内側が開口した箱型状に形成され、上面がブラケット40の上端と略同一高さに揃えられている。また、閉じた状態で中空ロッド29の外径よりも広径な円形になるように、内側開口部(ロッド挿通部)には、略半円状の切欠き47a,48aが形成されている。さらに、開閉フレーム47,48の基端部外側面には、開き状態の開閉フレーム47,48を保持するための係止ピン52,53が設けられている。
【0024】
開閉フレーム47,48の内部には、図示は省略するが、中空ロッド29を回転可能かつ摺動可能に支持するロッド振止手段と、中空ロッド29を把持して固定するロッド固定手段とを上下に隣接させて配置しており、ロッド振止手段を構成する左右一対のロッドガイドブロックと、ロッド固定手段を構成する左右一対のロッドチャックブロックとを上下に重ねてそれぞれ対向配置している。また、開閉フレーム47,48の先端部外側面には、ロッドガイドブロック及びロッドチャックブロックを開閉駆動するための油圧シリンダ54,55が設けられている。
【0025】
これにより、ロッド振止部材35は、ロッド振止手段に対応する油圧シリンダ54のみを伸長させたときには、ロッドガイドブロックのガイド面同士が接近してロッド挿通部の内側に突出することにより、中空ロッド29の外周面をガイド面によって回転可能かつ摺動可能に支持して中空ロッド29の振れを防止する。一方、全ての油圧シリンダ54,55を縮小させたときには、ロッドガイドブロック及びロッドチャックブロックが離反してそれぞれロッド挿通部の外側に引き込まれることにより、中空ロッド29がロッド振止部材35の部分を通過可能な状態となる。
【0026】
鋼管杭振止部材36は、ブラケット40の前端下部にて、左右一対の開閉アーム56,57の基端部が回動ピン58,59で軸支され、閉じた状態で先端部に固定ピン60が挿入されて一体となるように構成されている。開閉アーム56,57は、内側部に鋼管杭32を抱持して振止め可能な円弧状凹部56a,57aを有する弓型状に形成され、下面がブラケット40の下端と略同一高さに揃えられている。また、開閉アーム56,57の基端部外側面には、開き状態の開閉アーム56,57を保持するための係止ピン61(反対側は図示せず)が設けられている。
【0027】
このように形成した杭打機11を使用して、地盤を改良してから鋼管杭32を埋設する工法を行うには、まず、オーガ28に中空ロッド25を装着するとともに、振止装置25において、鋼管杭振止部材36を開いた状態とし、ロッド振止部材35を閉じて中空ロッド29を支持した状態とする。すなわち、ロッド振止部材35の振止手段によって中空ロッド29を支持する。続いて、中空ロッド29の下端部に、掘削刃31aと撹拌羽根31bとを備えた掘削ヘッド31を装着するとともに、中空ロッド29の上端部において、回り止めロッド62で保持されたスイベル30に地盤改良剤注入ホース63を接続する(図1)。
【0028】
この作業開始状態で、地盤改良剤注入ホース63から地盤改良剤を注入し、オーガ28によって中空ロッド29を回転させながら、オーガ28をリーダ15の下方に移動させる。ここで、リーダ15よりも長いロッドを使用する際には、中空ロッド29の中間部と上端部とに角軸部を設け、中空ロッド29の中間角軸部を把持したオーガ28がリーダ15の下端部に到達したときに、中間角軸部の把持を解除したオーガ28を上昇させ、上部角軸部を把持させる掴み替えを行う。このとき、中空ロッド29をその位置に固定しておくために、ロッド振止部材35の固定手段によって中空ロッド29が把持される。
【0029】
オーガ28の移動によって中空ロッド29の支持位置を上部側に切り替えたら、掘削刃31aで掘削した土砂と注入された地盤改良剤とを撹拌羽根31bで撹拌混合する。そして、所定深度まで掘削ヘッド31を降下させた後、逆の手順で掘削ヘッド31を引上げることによって地盤改良作業が終了する。
【0030】
続いて、鋼管埋設作業を行うには、振止装置25にてロッド振止部材35を開いた状態とし、オーガ28に装着されている中空ロッド29をドライブロッド33に組み替えた後、ロッドキャップ34の下端に螺旋羽根32aを備えた鋼管杭32を取り付ける。このとき、地上付近に降下させた振止装置25について、鋼管杭振止部材36を閉じて鋼管杭32を支持した状態とする。これにより、オーガ28を駆動して鋼管杭32に回転を与えながら押し進めることにより、地盤の深くまで鋼管杭32が埋め込まれる。
【0031】
このように、本発明の杭打機11によれば、振止装置25がロッド振止部材35及び鋼管杭振止部材36を上下方向に並べて設けたベース部材37を備えているので、地盤を改良する際には、鋼管杭振止部材36を開いた状態とし、ロッド振止部材35を閉じて中空ロッド29を支持しながら作業が行える。一方、鋼管杭32を埋設する際には、ロッド振止部材35を開いた状態とし、鋼管杭振止部材36を閉じて鋼管杭32を支持しながら作業が行える。すなわち、地盤を改良してから鋼管杭32を埋設する工法では、振止装置を組み替える手間がなくなり、段取り替えにかかる時間を短縮することができる。
【0032】
また、振止装置25がラックピニオン式の振止装置昇降機構を備えているので、中空ロッド29や鋼管杭32などの施工部材の支持位置を上下方向に容易に調節することができる。とりわけ、ラックギヤ26がオーガ28の昇降用の他に振止装置25の昇降用として、その用途を兼ねるので、部品共通化による製造コストの低減が図れるだけでなく、既存の杭打機との互換性を確保して振止装置25を後付けすることもできる。
【0033】
さらに、ベース部材37におけるベース本体39とブラケット40とが、ベース本体39の前部に備わるブラケット取付腕41と、ブラケット40の後部に備わる連結腕42との重合部を、簡便なピン結合によって分離可能に組み合わせているので、振止装置昇降モータ38の組付けや保守が容易に行える。これに加えて、振止装置昇降モータ38を、ブラケット取付腕41における上部取付部41a及び下部取付部41b間に形成した空間45に配置しているので、ブラケット取付腕41,41が左右幅方向に広がってしまう不都合がなくなり、振止装置25の小型化を図ることができる。
【0034】
なお、本発明は、前記形態例に限定されるものではなく、振止装置は、昇降機構を備えたベース部材にロッド振止部材及び鋼管杭振止部材を上下に並べて設けてあればよく、個々の構成についてはロッドや鋼管杭の形状などに応じて適宜に変更することができる。また、近年では、オーガの高出力化のニーズが高まってきており、小型杭打機であっても、比較的に大きなオーガを装着することが想定される。この場合、リーダからオーガの回転軸までの距離が長くなるが、本発明の振止装置であれば、連結腕を伸ばした長さ違いのブラケットを用意するだけの簡単な構成で、仕様別に組み替えが行える。すなわち、杭打機が使用される多様な環境において、その適用の幅を広げることができる。
【符号の説明】
【0035】
11…杭打機、12…下部走行体、12a…クローラ、13…上部旋回体、14…ベースマシン、15…リーダ、16…リーダ起伏シリンダ、17…リーダサポート、18…配管案内アーム、19…ジャッキ、20…カウンタウエイト、21…基本リーダ、22…上部リーダ、23…下部リーダ、24…トップシーブ、25…振止装置、26…ラックギヤ、27…ガイドパイプ、28…オーガ、28a…ガイドギブ、28b…オーガ昇降モータ、28c…ギヤケース、28d…オーガ駆動モータ、29…中空ロッド、30…スイベル、31…掘削ヘッド、31a…掘削刃、31b…撹拌羽根、32…鋼管杭、32a…螺旋羽根、33…ドライブロッド、34…ロッドキャップ、35…ロッド振止部材、36…鋼管杭振止部材、37…ベース部材、38…振止装置昇降モータ、38a…ピニオンギヤ、39…ベース本体、39a…基板、40…ブラケット、41…ブラケット取付腕、41a…上部取付部、41b…下部取付部、41c…上部ピン挿通孔、41d…下部ピン挿通孔、42…連結腕、42a…上部連結部、42b…下部連結部、42c…上部ピン挿通孔、42d…下部ピン挿通孔、43…上部連結ピン、44…下部連結ピン、45…空間、46…ガイドギブ、47…開閉フレーム、47a…切欠き、48…開閉フレーム、48a…切欠き、49,50…回動ピン、51…固定ピン、52,53…係止ピン、54,55…油圧シリンダ、56…開閉アーム、56a…円弧状凹部、57…開閉アーム、57a…円弧状凹部、58,59…回動ピン、60…固定ピン、61…係止ピン、62…回り止めロッド、63…地盤改良剤注入ホース
図1
図2
図3
図4
図5
図6