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特許7360326小児の経口供給および/または経腸供給のための調製物の改善された製剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-03
(45)【発行日】2023-10-12
(54)【発明の名称】小児の経口供給および/または経腸供給のための調製物の改善された製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/47 20060101AFI20231004BHJP
   A61P 3/02 20060101ALI20231004BHJP
   A23L 33/10 20160101ALI20231004BHJP
【FI】
A61K31/47
A61P3/02
A23L33/10
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019539896
(86)(22)【出願日】2018-01-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-02-20
(86)【国際出願番号】 PL2018000006
(87)【国際公開番号】W WO2018135957
(87)【国際公開日】2018-07-26
【審査請求日】2020-12-23
(31)【優先権主張番号】P.420258
(32)【優先日】2017-01-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】PL
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】519262401
【氏名又は名称】パルスズキエウィクズ,ピョートル
(73)【特許権者】
【識別番号】519262412
【氏名又は名称】ミラート,パーヴェル
(73)【特許権者】
【識別番号】519262423
【氏名又は名称】トゥルスキ,ウォルデマー
(73)【特許権者】
【識別番号】519262434
【氏名又は名称】トラス,マリウスズ
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(72)【発明者】
【氏名】パルスズキエウィクズ,ピョートル
(72)【発明者】
【氏名】ミラート,パーヴェル
(72)【発明者】
【氏名】トゥルスキ,ウォルデマー
【審査官】榎本 佳予子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2008/087461(WO,A2)
【文献】国際公開第2016/046294(WO,A1)
【文献】特開平05-064542(JP,A)
【文献】特開平07-095850(JP,A)
【文献】特開2015-173607(JP,A)
【文献】Journal of Food Composition and Analysis,2010年,Vol.23,424-431
【文献】M. P. Turski et al,Kynurenic Acid in the Digestive System - New Facts, New Challenges,Int. J. of Tryptophan Res.,2013年,6,47-55
【文献】L. O’Rourke et al.,Tryptophan metabolic profile in term and preterm breast milk: implications for health,J. of Nutritional Sci.,2018年,7,e13, p.1-9
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-33/44
A61P 1/00-43/00
A23L 33/00-33/29
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
授乳期間に適切な授乳期の母親の母乳中のキヌレン酸の含有量に対応する濃度でキヌレン酸またはその塩を含む、生後1日~12ケ月齢の哺乳類の小児または出生児の経口供給および経腸供給のための調製物の改善された製剤であって、前記キヌレン酸またはその塩の濃度は0.01μg~14.0μg/100mlの範囲内で小児または出生児の日齢、週齢又は月齢と共に増加する、製剤。
【請求項2】
生後1~5日の小児のために設計され、キヌレン酸またはその塩が、0.01μg~0.7μg/100mlの濃度で存在する、請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
生後6~14日の小児のために設計され、キヌレン酸またはその塩が、0.8μg~1.6μg/100mlの濃度で存在する、請求項1に記載の製剤。
【請求項4】
2~3週齢の小児のために設計され、キヌレン酸またはその塩が、1.7μg~2.9μg/100mlの濃度で存在する、請求項1に記載の製剤。
【請求項5】
4~12週齢の小児のために設計され、キヌレン酸またはその塩が、3.0μg~3.9μg/100mlの濃度で存在する、請求項1に記載の製剤。
【請求項6】
4~6ケ月齢の小児のために設計され、キヌレン酸またはその塩が、4.0μg~5.0μg/100mlの濃度で存在する、請求項1に記載の製剤。
【請求項7】
7~12ケ月齢の小児のために設計され、キヌレン酸またはその塩が、5.1μg~14.0μg/100mlの濃度で存在する、請求項1に記載の製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の主題は、哺乳類の小児および出生児の経口供給および経腸供給のための新規の改善された製剤であり、上記調製物が出生からの異なる時間での母乳中のキヌレン酸またはその塩の含有量に適合した濃度でキヌレン酸またはその塩を含むという事実を特徴とする。
【0002】
小児の的確な発達(様々な臓器および系の出生後の成熟を含む)は、出生前期と固形食品の摂取の間を橋渡しする移行(bridging transition)を可能にすることに寄与する、基本的な栄養素、ミネラル、ビタミン、および微量で見いだされる物質の生物学的に有効な混合物として理解される食品のバランスのとれた供給に大きく依存する。発達生理学において、この混合物の理想的な組成は、供給される乳児の発達に伴いその組成が変化するヒトの母乳中で提供されると想定される。授乳の不足、乳腺(動物の乳)の疾患または自然な授乳を妨げる新生児の機能障害によって母親が自身の乳児へ授乳できないことは、胃用のチューブ(栄養上の瘻管(fistula))による経腸栄養または代用食の供給などの特別な供給技術の使用を必要とする。代用食の組成は、授乳期間中の母親の母乳の組成からの量の逸脱が最小限であるように設計される。世界保健機関からのデータによると、小児の38%のみが、母親からの母乳で育てられている。毎年およそ800,000名の乳幼児が、最適に満たない哺乳が原因で死亡すると報告されており、これは母親の母乳に代わる混合物の使用による死亡を含む。授乳期の母親により提供される母乳の組成に関する研究の進歩にも関わらず、最適な解決策は天然の母乳の供給を推奨する方針を導入することであり、その目標は、2025年までに天然の方法で母親により供給される小児のパーセンテージを50%にすることであると考えられた。この方針は、天然のヒト母乳の代わりとなり得る、新規の栄養混合物の開発の進歩が不十分であることに応答している。
【0003】
さらに、母親による天然の母乳の供給は、肥満、糖尿病、および喘息などの成人期の疾患のリスクの低減に顕著な役割を果たすことが強調されている(WHO Global Targets 2025, www.who.int)。
【0004】
消化管の発達に関する研究を行った際に、キヌレン酸が、分娩からの経過時間に応じて、様々な量でヒトの母乳中に存在することが予想外に見いだされた。母乳中のキヌレン酸の濃度は、時間と共に増加することが明言された。
【0005】
キヌレン酸は、キヌレニン経路で形成されるトリプトファンの代謝物である。これは、ヒトの身体および他の哺乳類において組織および体液で起こる。これは、消化管から吸収され、血液および組織で高レベルに達する(Kuc et al. Amino Acids. 2008, 35: 503-5)。
【0006】
キヌレン酸は、グルタミン酸受容体、たとえばN-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)受容体、カイニン酸受容体、およびα―アミノ-3-ヒドロキシ-5-メチル-4-イソキサゾール-プロピオン酸(AMPA)受容体に対する作用を有する。キヌレン酸は、α7ニコチン性受容体のアンタゴニストである(Kemp et al. Proc Natl Acad Sci USA, 1988, 85: 6547-50; Hilmas et al. JNeurosci, 2001, 21: 7463-73)。さらに、これは、GPR35受容体(Wang et al. 2006, JBiol Chem, 281: 22021-8)およびAHR受容体(DiNatale et al. 2010, Toxicol Sci. 2010; 115:89-97)に影響を与える。GPR35受容体およびAHR受容体は、消化管中に特に多く存在する。
【0007】
キヌレン酸は、酸化ストレスの発達を阻害すること、および腸閉塞における脂質の過酸化を予防することが知られている(Kaszaki et al. Neurogastroenterol Motil, 2008, 20, 53-62)。キヌレン酸はまた、鎮痛作用を有する(Nasstrom et al. Eur J Pharmacol, 1992, 212, 21-9)。
【0008】
キヌレン酸の胃潰瘍に対する保護作用も知られている(Glavin et al. Prog Neuropsychopharmacol Biol Psychiatry. 1989; 13(3-4):569-72, Res Commun Chem Pathol Pharmacol. 1989;64:111-9)。
【0009】
キヌレン酸およびその誘導体は、腸ぜん動が増大する疾患状態の治療で使用される医薬の調製のために使用され(Kaszaki et al. Neurogastroenterol Motil, 2008, 20, 53-62)、また痛風および多発性硬化症を伴う疾患状態の治療で使用される医薬の調製のために使用される(国際特許公開公報第2008/087461号)。キヌレン酸はまた、敗血症性ショックの治療においても有効である(国際特許公開公報第2006/117624号)。
【0010】
キヌレン酸は、医療用のハーブを含む植物(Zgrajka et al., Ann Agric Environ Med. 2013; 20: 800-2)、および主に植物由来の食品(Turski et al., Amino Acids. 2009; 36: 75-80)に存在し、毒性作用を全く示さない(Turski et al., Pharmacol Rep. 2014;66:1127-33)ため、小児の栄養供給用の既知の調製物において、この物質の含有量がどれほどであるかが調査された。予想外に、生産者は、自身の製品中のキヌレン酸の存在を表示していないことが見いだされた。学術文献において、小児の栄養供給のために使用される調製物中のキヌレン酸の含有量に関する情報は存在しない。本出願人ら自身の研究は、現在製造されている調製物において、キヌレン酸の量は非常に多様であり、最大生後6日までの小児を対象としたいくつかの調製物においてのみ、この期間中のキヌレン酸の生理的な量に達することを示した。さらに、小児の栄養供給用の現代の調製物中のキヌレン酸の量は、計画された方法で制御されておらず、偶発的であることが判明した。これは恐らくは、調製のプロセスにおける様々な天然の成分の使用からもたらされる。このことに基づき、小児の栄養供給用の現在の調製物におけるキヌレン酸の存在は、偶発的な「混入」とみなされる可能性があると、明言できる。キヌレン酸のよく定義された生物学的な作用、および授乳期の女性の天然の母乳中のキヌレン酸の含有量が時間に応じて変動するという事実に照らして、母乳中のキヌレン酸の含有量の天然の変化を考慮した、小児の栄養供給用の調製物の改善された組成物を提案した。
【0011】
実施例
材料
ヒト母乳
25名の授乳期の母親からの母乳を、試験に使用した。母親はそれぞれ、滅菌性の試験管に授乳期の母親により独立して引き込まれた新鮮な母乳10mlのサンプルを提供した。母乳のサンプルを、生理的な分娩から3日目、1週間後、2週間後、1ケ月後、3ケ月後、および6か月後に、各母親から6回採取した。
【0012】
乳幼児の経口供給用の製剤
最大6ケ月齢までの乳幼児の経口供給用の標準的な製剤を、商業的に入手した。市販の調製物の3つのパッケージを試験のために、当該パッケージの製造社により特定される3つの分析された異なるシリーズのそれぞれから使用した。
【0013】
方法
2Mの過塩素酸0.1mlを、ヒト母乳のサンプル0.5mlごとに添加し、6000rpmで15分間遠心した。得られた上清を、キヌレン酸の濃度を決定するために、-20℃で保存した。
【0014】
最大6ケ月齢までの乳幼児への供給用のサンプルを、製造社により提供されるレシピにしたがい調製した。過塩素酸を、液体の製剤のサンプルに添加し、混合物を、授乳中の母親由来の母乳と同様に遠心した。得られた上清を、さらなる決定のために使用した。
【0015】
上清を、2Mの三塩素酸(trichloric acid)で酸性化した。変性したタンパク質を遠心により分離し、得られた除タンパク上清を、1Mの塩酸に懸濁した。
【0016】
得られた除タンパクの上清を、0.1Mの塩酸で満たされたイオン交換カラム(Dowex 50W+、200-400メッシュ)に適用した。このカラムを、0.1MのHCl1mlおよび脱イオン水1mlで洗浄した。得られた溶出物をクロマトグラフ(HPLC)にかけた。キヌレン酸の定量的決定を、計量フッ化物技術(metric fluoride technique)を使用して行った。キヌレン酸の標準物質は、Sigma-Aldrich(St. Louis, USA)から入手した。キヌレン酸の濃度を決定するために使用される全ての試薬は、最も高い純度を提供する生産者からもたらされた。
【0017】
結果
実施例1
ヒト母乳中のキヌレン酸の濃度
【0018】
研究の結果として、ヒトの母乳中のキヌレン酸の濃度の上昇が、分娩からの経過時間に応じて見いだされた。分娩から3日後の母乳中のキヌレン酸の平均濃度は、6ケ月の授乳後の平均濃度よりも14倍低かった(表1)。観察された差異は、3日目の含有量と比較して、分娩後14日目から統計的に有意であった。
表1.分娩からの経過時間に応じた、ヒトの母乳中のキヌレン酸の濃度(μg/100ml)
【表1】
SD-標準偏差;SEM-平均値の標準誤差;最小値-最小測定値;最大値-最大測定値
【0019】
実施例2
新生児、乳幼児、およびより年長の小児への供給用の市販の乳の調製物中のキヌレン酸の濃度
生産者は、自身が生産する製剤中のキヌレン酸の含有量を特定していない。
【0020】
行われた試験は、乳幼児への供給用の全ての試験した乳の調製物中のキヌレン酸の存在を明らかにした(表2)。行われた分析の結果として、同じ製造社のシリーズ由来のパッケージングに応じて試験した調製物中でキヌレン酸の含有量の差は見いだされなかった。異なる製造社の調製物の間で有意差が存在した。最も大きな差は、NAN AR(0.03μg/100ml)とBebilon 1 immuno fortis(1.08μg/100ml)であり、キヌレン酸の量における36倍の差を表している(表2)。
表2.生産者により推奨される授乳期間に応じた小児への供給用の市販の乳の調製物中のキヌレン酸の平均含有量(μg/100ml)
【表2】
【0021】
測定を、5つの乳のパッケージで行い、3つの異なる生産者のシリーズを比較した(それぞれの試験調製物について15の測定)。
【0022】
小児の栄養供給用の同じ市販の乳の調製物のシリーズの比較は、キヌレン酸の含有量において有意差を示した。シリーズ間の相違は、小児用の調製物100mlあたりで計算された、2倍の量のキヌレン酸に達した(表3)。
表3.最小および最大のキヌレン酸含有量を含むシリーズの数値表示を伴う、小児への供給用の、試験した乳の調製物中のキヌレン酸の濃度(μg/100ml)
【表3】
SD-標準偏差;SEM-平均値の標準誤差;最小値-シリーズの最小平均値;最大値-シリーズの最大平均値
【0023】
実施例3
分娩後同時期でのヒトの母乳中のキヌレン酸の濃度との、小児の栄養供給用の市販の乳の調製物中のキヌレン酸の濃度の比較
【0024】
出生からの期間における小児の栄養供給用のする市販の乳の調製物では、平均キヌレン酸含有量は非常に多様であり、調製物の種類に応じて0.03~1.08μg/100mlの範囲であり、一方で分娩後3日目の母乳中のキヌレン酸の平均含有量は、0.39μg/100mlであり、6日目で1.07μg/100mlであり、2週間目で2.11μg/100mlであり、4週間目で3.74μg/100mlである。これらの量は、市販の調製物中のキヌレン酸の量と有意に異なる。異なる生産シリーズ由来の調製物の間でもまた、キヌレン酸の含有量において有意差が存在する。さらに、この年齢の小児用の市販の調製物は一定量のキヌレン酸を含み、一方で母乳中のキヌレン酸の含有量は、4週間で、0.39μg/100mlから3.74μg/100mlへと、およそ4倍増加する。上記製品は、この期間中のキヌレン酸含有量の変化の動態を反映していない。
【0025】
4ケ月齢以降の小児用の市販の乳の調製物では、キヌレン酸の平均含有量は、調製物の種類に応じて0.38~0.58μg/100mlであり、一方で分娩から3ケ月後の母乳中のキヌレン酸の平均含有量は、4.15μg/100mlである。この量は、市販の調製物中のキヌレン酸の量を、10倍超、超える。
【0026】
6ケ月齢以降の期間での小児の栄養供給用の市販の乳の調製物では、平均キヌレン酸含有量は非常に多様であり、調製物の種類に応じて0.29~1.42μg/100mlの範囲であり、一方で分娩後6ケ月での母乳中のキヌレン酸の平均含有量は、5.66μg/100mlである。この量は、この年齢に適した市販の調製物中のキヌレン酸の量よりもはるかに高い(4~20倍)。
【0027】
9~24カ月齢以降の期間での小児の栄養供給用の市販の乳の調製物では、平均キヌレン酸含有量は非常に多様であり、調製物の種類に応じて0.28~1.52μg/100mlの範囲である。これらの量は、5.66μg/100mlである分娩後6か月での母乳中の平均キヌレン酸含有量よりも有意に低い。この量は、この年齢に適した市販の調製物中のキヌレン酸の量よりもはるかに高い(4~20倍)。
【0028】
実施例4
小児の経口供給のための製剤の調製方法
【0029】
水中のキヌレン酸の溶解度は、0.95mg/mlである。
(http://www.hmdb.ca/metabolites/HMDB00715)
【0030】
キヌレン酸は、アルカリ性条件;1.0MのNaOH中で容易に溶解し、その溶解度は、50mg/mlである(http://ww4.mpbio.com/ecom/docs/proddata.nsf/440121766f8ee75e8525645d0068b043/2f736b86941e7f61852569cb00688812? OpenDocument)。
【0031】
水に良好に溶解するキヌレン酸の塩、たとえばナトリウム塩が存在し、21mg/mlの溶解度に対応する、100mMの溶解度を伴う(http://www.abcam.coni/kynurenic-acid-sodium-salt-abl20256.html)。
【0032】
文献からのデータに照らした本出願人ら自身の研究の結果は、水中のキヌレン酸の溶解度が、授乳中の女性の母乳中のキヌレン酸の生理的な含有量の決定からもたらされるこの物質の最も高い推奨濃度を得るために十分であることを示す。0.95mg/mlのキヌレン酸の溶解度は、13.78μg/100mlであるこの試験で試験した母乳中のキヌレン酸の最も高い含有量(表1)よりも6900倍高く、これは生理的な含有量と比較して増加した含有量のキヌレン酸の調製物の生産を可能にする。この目的のために、可溶性の良好なキヌレン酸塩またはアルカリ中に溶解されたキヌレン酸も使用され得る。
【0033】
キヌレン酸は水に可溶であるため、粉末の形態のキヌレン酸を、製造社により推奨される体積に変換される137.8μg/100mlである、13.78μg/100mlの母乳で見いだされる最も高いキヌレン酸(表1)の10倍多い含有量で、小児の粉末の製剤-Bebilon Nenatalに添加した。次に水を、製造社により推奨される量で添加し、全体をよく混合した。
【0034】
肉眼での観察は、キヌレン酸の添加が、キヌレン酸が添加されない対照の混合物と比較して、混合物の色、稠度、およびpHを変えないことを証明した。
【0035】
栄養供給調製物は容易な液体形態で利用可能であるため、水に溶解したキヌレン酸を、最終形態の液体調製物のBebilon 1に添加した。添加したキヌレン酸の量は、137.8μg/100mlである、13.78μg/100mlの母乳で見いだされる最も高いキヌレン酸の含有量(表1)の10倍に対応した。
【0036】
肉眼での検査は、キヌレン酸の添加が、キヌレン酸が添加されない対照の混合物と比較して、混合物の色、稠度、およびpHを変えないことを証明した。
【0037】
結論:小児の経口供給のための調製物が、食品産業で知られる手段により調製され、ただしキヌレン酸の含有量は好ましくは、生後1~5日目の小児に対し0.01~0.7μg/100mlであり;生後6~14日目の小児に対し0.8~1.6μg/100mlであり;2~3週齢の小児に対し1.7~2.9μg/100mlであり;4~12週齢の小児に対し3.0~3.9μg/100mlであり;生後4~6ケ月の小児に対し4.0~5.0μg/100mlであり;生後7~12か月の小児に対し5.1~14.0μg/100mlである。
【0038】
概要
1.ヒトの母乳は、授乳時間に伴い増大する量でキヌレン酸を含む。授乳中の女性の母乳中のキヌレン酸の濃度は、分娩後3日目と比較して6カ月の授乳で14倍高い。
【0039】
2.小児の栄養供給用の大部分の調製物中のキヌレン酸の含有量は、授乳中の女性の母乳中のキヌレン酸の含有量と比較して有意に低い。キヌレン酸の含有量が最も高い市販の調製物のみが、授乳6日目の女性の母乳中の含有量と類似の量でキヌレン酸を含む。
【0040】
3.乳幼児用調製物中のキヌレン酸の含有量は偶発的であり、すなわちそれは製造社により意図的に計画されておらず、かつ制御されていない。
【0041】
4.研究結果は、女性および泌乳する動物の乳中のキヌレン酸の含有量の天然の変化を考慮して、哺乳類の小児および出生児への供給用の改良された製剤の調製物の開発を支持するものである。
【0042】
5.キヌレン酸の所望の効果を得るために、乳幼児の調製物中のキヌレン酸の含有量は好ましくは、生後1~5日目の小児に対し0.01~0.7μg/100mlであり;生後6~14日目の小児に対し0.8~1.6μg/100mlであり;2~3週齢の小児に対し1.7~2.9μg/100mlであり;4~12週齢の小児に対し3.0~3.9μg/100mlであり;生後4~6ケ月の小児に対し4.0~5.0μg/100mlであり;生後7~12か月の小児に対し5.1~14.0μg/100mlである。
【0043】
6.生理的なレベルでのキヌレン酸の含有量を確保する水中でのキヌレン酸の十分に良好な溶解度のため、キヌレン酸またはその可溶性の塩は、ゆるい形態での哺乳類の小児および出生児へ供給するための製剤、または液体の形態での調製物のためのキヌレン酸もしくはその塩の溶液を調製するために使用され得る。