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特許7360327ベイピング装置用の耐食性貯蔵部およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-03
(45)【発行日】2023-10-12
(54)【発明の名称】ベイピング装置用の耐食性貯蔵部およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 37/14 20060101AFI20231004BHJP
   A24F 40/10 20200101ALI20231004BHJP
   A24F 47/00 20200101ALI20231004BHJP
   B05D 5/00 20060101ALI20231004BHJP
   B05D 3/12 20060101ALI20231004BHJP
   B05D 1/02 20060101ALI20231004BHJP
   B05D 1/18 20060101ALI20231004BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20231004BHJP
   B05D 7/00 20060101ALI20231004BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20231004BHJP
   C25D 13/14 20060101ALI20231004BHJP
   C25D 13/06 20060101ALI20231004BHJP
   C25D 13/04 20060101ALI20231004BHJP
   C23C 26/00 20060101ALI20231004BHJP
【FI】
B32B37/14 Z
A24F40/10
A24F47/00
B05D5/00 Z
B05D3/12 Z
B05D1/02 Z
B05D1/18
B05D7/24 302Y
B05D7/00 K
B32B27/18 Z
C25D13/14 Z
C25D13/06 A
C25D13/04
C23C26/00 A
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2019563061
(86)(22)【出願日】2018-06-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-08-13
(86)【国際出願番号】 EP2018065544
(87)【国際公開番号】W WO2018229070
(87)【国際公開日】2018-12-20
【審査請求日】2021-06-14
(31)【優先権主張番号】15/619,997
(32)【優先日】2017-06-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】596060424
【氏名又は名称】フィリップ・モーリス・プロダクツ・ソシエテ・アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(72)【発明者】
【氏名】カルレス ゲオルギオス ディー
(72)【発明者】
【氏名】サンダー ランガラジ エス
【審査官】横山 敏志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/177043(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第106072775(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第102206848(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0262740(US,A1)
【文献】国際公開第2015/177045(WO,A1)
【文献】特表2006-524494(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0184304(US,A1)
【文献】特表2014-506468(JP,A)
【文献】特表2017-515490(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0246020(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24F 40/00 - 40/95
B05D 1/00 - 1/42
B05D 3/12
B05D 7/00 - 7/26
C23C 26/00
C25D 13/00 - 13/24
B32B 15/08 - 15/098
B32B 27/18
B32B 37/14
A24F 47/00
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
eベイピング装置部分の表面を腐食から保護する方法であって、前記方法が、
前記表面を腐食から保護するように構成されたコーティング混合物を調製することであって、前記コーティング混合物は、分解することなく前記eベイピング装置の使用温度に耐えるように構成されており
前記表面を前記コーティング混合物でコーティングして前記表面上に保護コーティングを形成することと、を含み、
前記コーティングが、電着、浸漬、吹き付け、および蒸着のうちの一つを介して実施され、
前記コーティング混合物がシランおよび有機ポリマーを含む、方法。
【請求項2】
前記eベイピング装置部分の表面が、プレベイパー製剤と接触して配置されたeベイピング装置の金属部分の表面を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記eベイピング装置の金属部分の表面が、前記装置の貯蔵部またはカートリッジの内壁、あるいは前記装置のヒーターの内側表面である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記コーティング混合物を前記調製することが、
第一のポリマーを溶解することによって第一の混合物を調製することと、
第二のポリマーを溶解することによって第二の混合物を調製することと、
シランを溶解することによって第三の混合物を調製することと、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第一の混合物を前記調製することが、
1重量パーセント~5重量パーセントの濃度で前記第一のポリマーを水中に溶解することと、
酢酸を添加して、前記第一の混合物のpHを6以下に調節することと、
前記第一の混合物を摂氏50度~摂氏70度に加熱することと、を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記第二の混合物を前記調製することが、
前記第二のポリマーを、30重量パーセント~40重量パーセントの粒子状分散液を含む粒子分散液中に溶解することを含み、前記第二のポリマーが陽イオンポリマーである、請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
第三の混合物を調製することが、
溶媒をシランの5重量パーセント~20重量パーセントでシランと混合することと、
酢酸を添加してpHを調節し、加水分解シランを安定化させることと、
前記第三の混合物を、室温で10分~1時間攪拌して混合することと、含む、請求項4~6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記コーティングが電着を介して実施される場合に、前記表面を前記コーティングすることが、
電着容器に前記コーティング混合物を充填することであって、前記電着容器が陽極および陰極を含む、充填することと、
前記陰極を前記eベイピング装置部分と接続することと、
前記eベイピング装置部分の表面上に前記コーティングフィルムを堆積させることと、を含む、請求項1~7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記eベイピング装置部分を前記電着容器から取り出すことと、
前記eベイピング装置部分を洗浄することと、
前記eベイピング装置部分を乾燥させることと、を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記コーティングが浸漬を介して実施される場合に、前記表面を前記コーティングすることが、
浸漬浴に前記コーティング混合物を充填することと、
前記eベイピング装置部分を前記浸漬浴内に浸漬することと、
前記eベイピング装置部分を前記浸漬浴から取り出すことと、
前記eベイピング装置部分を洗浄することと、を含む、請求項1~7のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記コーティングが吹き付けを介して実施される場合に、前記表面をコーティングすることが、
吹き付け装置に前記コーティング混合物を充填することと、
前記eベイピング装置部分に前記コーティング混合物を吹き付けることと、
前記eベイピング装置部分を洗浄することと、を含む、請求項1~7のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
eベイピング装置の表面を腐食から保護する方法であって、前記方法が、
前記eベイピング装置部分の前記表面を洗浄することと、
前記eベイピング装置部分の前記表面上に中間接着層を堆積させることであって、前記中間接着層がシランおよびカルボン酸を含有する、堆積させることと、
前記eベイピング装置部分の前記表面上にコーティングを堆積する蒸着を実施することと、を含む、方法。
【請求項13】
前記堆積することが、0.05体積パーセント~5体積パーセントのシラン溶液を含む溶液中に前記eベイピング装置部分を浸漬することを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記コーティングがパリレンを含む、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
前記蒸着を実施することが、
摂氏600度以上の温度でパリレンを加熱し、パリレン二量体を単量体に熱分解することと、
前記eベイピング装置部分の金属部分上に室温で前記パリレン単量体を堆積させることと、を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記蒸着を実施することが、化学蒸着および物理蒸着のうちの一つを実施することを含む、請求項12~15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記中間接着層の厚さが0.1マイクロメートル~5マイクロメートルである、請求項12~16のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
例示的な実施形態は、一般的に、eベイピング装置用の耐食性貯蔵部、およびeベイピング装置用の耐食性貯蔵部の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子ベイピング装置は、eベイピング装置使用者がこの装置の一つ以上の出口を通してベイパー(蒸気)を引き出すために、プレベイパー製剤を気化してベイパーにするために使用される。これらの電子ベイピング装置は、eベイピング装置と呼ばれる場合がある。eベイピング装置は典型的に、電源セクションおよびカートリッジなど、幾つかのeベイピング要素を含む場合がある。電源セクションは電池などの電源を含み、カートリッジは、プレベイパー製剤を保持することができる貯蔵部とともにヒーターを含み、カートリッジは、eベイピング装置の使用者の口に蒸気を運ぶ煙突などの導管を含む。カートリッジ内のヒーターは、芯を介してプレベイパー製剤と接触し、プレベイパー製剤を加熱して蒸気を生成するように構成されている。ヒーターは芯と絡み合っていてもよい。プレベイパー製剤は一般に、ある量のニコチンおよび随意にその他の成分(酸、プロピレングリコール、グリセロールまたは風味剤など)を含む。例えば、プレベイパー製剤は、水、ビーズ、溶媒、活性成分、エタノール、植物抽出物、天然または人工風味、グリセリンおよびプロピレングリコールのうちの少なくとも一つなどのベイパー形成体、ならびにその組み合わせ(ただしこれらに限定されない)を含む、液体製剤、固体製剤、またはゲル製剤のうちの少なくとも一つを含んでもよい。
【0003】
eベイピング装置では、貯蔵部内に含まれる予気化製剤は、eベイピング装置の金属部分と相互作用する場合があり、それによって結果的に金属部分の腐食が生じ、これが予気化製剤の安定性の低下につながる可能性がある。
【0004】
一部の例では、プレベイパー製剤の成分は、カートリッジの固体金属部品または金属イオンと反応しうる。例えば、成人eベイピング装置使用者による装置の動作の前に、eベイピング装置の芯にプレベイパー製剤が十分に供給されていない場合、カートリッジが空である場合、またはヒーターがeベイピング装置の動作中にヒーターのコイルが過熱されている場合、のいずれかのeベイピング装置の使用中、プレベイパー製剤の成分は、例えば銅、黄銅、ステンレス鋼などの鋼または鉄などの、eベイピング装置の固体部分の一つ以上の金属と酸素の存在下で反応して、eベイピング装置の金属部分の腐食を生じさせる場合がある。具体的には、例えば、銅イオンCu2または鉄イオンFe2+またはFe3+などの金属イオンが、腐食反応の結果としてプレベイパー溶液中に溶解してプレベイパー製剤の成分と反応し、それによってプレベイパー製剤の安定性を低下させうる。さらに、eベイピング装置の金属部分は、その金属イオンの溶解に起因する構造的損傷を受ける場合があり、またプレベイパー製剤がある期間にわたってeベイピング装置から漏れ出る原因となりうる。
【0005】
eベイピング装置の金属部分の実際の腐食プロセスに関して、カートリッジまたは貯蔵部などのeベイピング装置の一部分を形成する一つ以上の金属の酸化は、酸素勾配がeベイピング装置の金属部分の表面と予気化製剤との間に現れ、それ故に局所的な陽極/陰極システムが生成されるときに生じる。局所的な陽極/陰極システムは、一つ以上の金属が酸化されて金属カチオンが生成される酸化/反応サイクルを作り出すが、金属カチオンは、予気化製剤中に溶解し、予気化製剤の成分と反応してその安定性を低減する。
【発明の概要】
【0006】
少なくとも一つの例示的な実施形態は、eベイピング装置の金属部分にコーティングを塗布することに関し、コーティングは、予気化製剤との反応を介して金属部分の一つ以上の金属の腐食または酸化を低減または実質的に防止するように構成される。
【0007】
いくつかの例示的な実施形態は、eベイピング装置部分の表面を腐食から保護する方法に関し、該方法は、表面を腐食から保護するように構成されたコーティング混合物を調製すること、およびコーティング混合物に基づいて表面を保護コーティングでコーティングすることを含む。コーティングは、電着、浸漬、吹き付け、および蒸着のうちの一つを介して実施されてもよく、コーティング混合物はシランおよび樹脂のうちの少なくとも一つを含んでもよい。
【0008】
いくつかの例示的な実施形態は、予気化製剤の成分と金属部分の金属との間の反応によって生じる腐食に起因する損傷から金属部分を保護するために、ヒーターの内側表面、または貯蔵部またはカートリッジの内壁などの、eベイピング装置の金属部分の内側表面上に保護コーティングを堆積させる方法に関する。保護コーティング堆積は、例えば、電着または電気吹き付けを介して実施されてもよい。また、保護コーティングは、例えば、銅または銅合金上の、疎水性グラフェン酸化物ポリマー複合体を含みうる。
【0009】
いくつかの例示的な実施形態では、一般的にプレベイパー製剤と接触するeベイピング装置の金属部分の表面は、腐食から実質的に保護されるために処理されてもよい。例えば、eベイピング装置の金属部分の製造プロセスの間、コーティングは、電着、無電解蒸着または浸漬を介して金属部分の表面上に堆積されてもよい。コーティングは、鋼上の、シランおよび樹脂の混合物、例えばエポキシ樹脂エステル修飾ビス-[トリエトキシシリル]エタンの混合物で形成されてもよく、またはそれを含んでもよい。例示的な実施形態では、疎水性グラフェン酸化物ポリマーを、銅部分の酸化、腐食、または酸化および腐食を低減または実質的に防止するために、金属部分(例えば、eベイピング装置の銅部分)上のコーティングとして堆積させてもよい。
【0010】
例示的な実施形態において、eベイピング装置の金属部分上に堆積されたコーティングは、実質的に非多孔性であってもよく、金属部分の表面とプレベイパー製剤との間の接触を妨げるまたは実質的に禁じてもよい。例えば、高分子結合剤と組み合わせられたシランまたはグラフェン酸化物コーティングは、分解することなく、eベイピング装置の典型的な使用温度に耐えうる。例えば、堆積されたコーティングは、湿潤、およびそれ故にeベイピング装置の金属部分の酸化または腐食をさらに減少させるか、または実質的に防ぐよう疎水性であってもよい。
【0011】
いくつかの例示的な実施形態では、一般的にプレベイパー製剤と接触するeベイピング装置の金属部品または一部分は、例えば、eベイピング装置として組み立てられる前に保護コーティングで電気メッキされてもよい。例えば、金属表面は、適合しており、eベイピング装置のヒーターの使用温度に耐えるように構成される、薄い非多孔性の有機コーティングで電気メッキされてもよい。別の方法として、eベイピング装置の少なくとも一部の組立後、様々な金属部分を電気メッキしてもよく、またはその上に堆積させたコーティングを有してもよい。
【0012】
いくつかの例示的な実施形態では、eベイピング装置の金属部分上にコーティングを堆積するために、電気吹き付けが使用されてもよい。例えば、薄いまたは超薄のパリレンコーティングを、一般的にプレベイパー製剤と接触するeベイピング装置の金属部分の表面上に堆積させてもよい。例えば、超薄のパリレンコーティングを、コーティングの温度抵抗を増加させる、ならびにプレベイパー製剤およびUV光の成分などの化学物質の少なくとも一つとの相互作用を減少させるために、吹き付け方法またはタンブラー方法のいずれかを使用して真空下で塗布してもよい。
【0013】
例示的な実施形態は、その金属部分の改善された耐食性、改善された貯蔵寿命、およびeベイピング装置の金属部分の一つ以上の表面上の、低減された、または実質的に防止された触媒反応を有する、eベイピング装置に関する。
【0014】
例示的な実施形態の上記およびその他の特徴および利点は、例示的な実施形態を添付の図面を参照しながら詳細に説明することによってさらに明らかとなる。添付の図面は、例示的な実施形態を描写することを意図したものであり、意図された特許請求の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。添付の図面は、明記されていない限り、実寸に比例して描かれているとは考えられない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、例示的な実施形態によるeベイピング装置の側面図である。
図2図2は、例示的な実施形態によるeベイピング装置の長軸方向の断面図である。
図3図3は、eベイピング装置の別の例示的な実施形態の長軸方向の断面図である。
図4図4は、eベイピング装置の別の例示的な実施形態の長軸方向の断面図である。
図5A図5Aは、少なくとも一つの例示的な実施形態による、eベイピング装置の金属部分の内側表面上に保護コーティングを堆積させる方法を図示するフローチャートである。
図5B図5Bは、少なくとも一つの例示的な実施形態による、eベイピング装置の金属部分の内側表面上に保護コーティングを堆積させる方法を図示するフローチャートである。
図5C図5Cは、少なくとも一つの例示的な実施形態による、eベイピング装置の金属部分の内側表面上に保護コーティングを堆積させる方法を図示するフローチャートである。
図5D図5Dは、少なくとも一つの例示的な実施形態による、eベイピング装置の金属部分の内側表面上に保護コーティングを堆積させる方法を図示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
幾つかの詳細な例示的な実施形態が本明細書で開示されている。しかしながら、本明細書に開示されている特定の構造面および機能面の詳細は、例示的な実施形態を説明することを目的とした単なる典型にすぎない。しかしながら、例示的な実施形態は、数多くの代替的な形態で具体化されてもよく、本明細書に記載の実施形態のみに限定されるものと解釈されるべきではない。
【0017】
それに応じて、例示的な実施形態は、様々な修正および代替的形態が可能である一方で、その実施形態は例として図面に示されていて、本明細書で詳細に説明される。しかし当然のことながら、開示された特定の形態に対する例示的な実施形態に限定する意図はなく、反対に、例示的な実施形態は、例示的な実施形態の範囲の中に収まるすべての修正、均等物、代替物を網羅するものである。同様の数字は、図の説明の全体を通して同様の要素を指す。
【0018】
要素または層が別の要素もしくは層「の上にある」、「に接続される」、「に連結される」、または「を覆う」と言及される時、これはもう一方の要素もしくは層の上に直接あってもよく、それに直接的に接続されてもよく、それに直接的に連結されてもよく、またはそれを直接的に覆ってもよく、あるいは介在する要素もしくは層が存在してもよいことが理解されるべきである。対照的に、要素が別の要素もしくは層「の上に直接ある」、「に直接的に接続される」、または「に直接的に連結される」と言及される時、介在する要素もしくは層は存在しない。同様の数字は、本明細書の全体を通して同様の要素を指す。
【0019】
「第一の」、「第二の」、「第三の」などという用語は、様々な要素、領域、層、またはセクションを記述するために本明細書で使用されてもよいが、これらの要素、領域、層、またはセクションはこれらの用語によって限定されるべきではないことが理解されるべきである。これらの用語は、一つの要素、領域、層、またはセクションを別の要素、領域、層、またはセクションと区別するためにのみ使用される。従って、下記で考察される第一の要素、領域、層、またはセクションは、例示的な実施形態の教示内容から逸脱することなく、第二の要素、領域、層、またはセクションと呼ぶこともできる。
【0020】
空間的関係の用語(例えば、「下に」、「下方に」、「下部」、「上方に」、「上部」、およびこれに類するもの)は、図中で図示する際に、一つの要素または特徴と他の要素または特徴との間の関係を説明しやすくするために本明細書で使用されてもよい。空間的関係の用語は、図に描写されている方向に加えて、使用時または動作時に装置の異なる方向を包含することが意図されていると理解されるべきである。例えば、図中の装置をひっくり返した場合、他の要素または特徴の「下方に」または「下に」と説明されている要素は、その後は他の要素または特徴の「上方に」方向付けられることになる。従って、「下方に」という用語は上方および下方の両方の向きを包含する場合がある。装置は、別の方法で(90度回転して、または他の向きで)向きが決められる場合があり、本明細書で使用される空間的関係の記述語は適宜に解釈される。
【0021】
本明細書で使用される用語は、様々な実施形態を説明する目的のみのものであり、例示的な実施形態の限定を意図しない。本明細書で使用される単数形「一つの(a)」、「一つの(an)」、および「その(the)」は複数形も含むことが意図されているが、文脈によって明らかにそうではないことが示される場合は、その限りではない。「含む(includes)」、「含む(including)」「備える(comprises)」、および「備える(comprising)」という用語は本明細書で使用される時、述べられた特徴、整数、工程、動作、または要素の存在を特定するが、一つ以上の他の特徴、整数、工程、動作、要素、またはこれらの群の存在または追加を除外しないことがさらに理解されるであろう。
【0022】
例示的な実施形態は、例示的な実施形態の理想的な実施形態(および中間構造)の概略図である断面図を参照して本明細書で説明される。このように、例えば製造技法または公差の結果としてもたらされた図の形状からの変形が予想される。従って、例示的な実施形態は、本明細書に図示された領域の形状を限定するものとして解釈されるべきでなく、例えば製造の結果としてもたらされる形状の逸脱を含むものである。従って、図に図示された領域は、本質的に概略的なものであり、それらの形状は、装置の領域の実際の形状を図示することを意図せず、例示的な実施形態の範囲を限定することを意図しない。
【0023】
別の方法で定義されない限り、本明細書で使用されるすべての用語(技術的用語および科学的用語を含む)は、例示的な実施形態が属する当該技術分野の当業者が一般的に理解しているものと同じ意味を有する。用語(一般的に使用されている辞書で定義された用語を含む)は、関連する技術分野の文脈でのそれらの用語の意味と一致する意味を有するものと解釈されるべきであり、理想的なまたは過度に正式な意味で解釈されないが、本明細書で明示的にそのように定義されている場合はその限りではないことがさらに理解されるであろう。
【0024】
本明細書において「約」または「実質的に」という用語を数値と組み合わせて使用する場合、それに伴う数値が、述べられた数値の前後±10パーセントの公差を含むということを意図する。さらに、本明細書において百分率に言及する場合、それらの百分率は重量に基づく、すなわち重量百分率であることが意図される。「最大~まで」という表現は、ゼロから、その表現した上限までの量およびそれらの間にあるすべての値を含む。範囲を特定する時、その範囲はそれらの間にあるすべての値(例えば0.1パーセントずつに異なる値)を含む。
【0025】
本明細書で使用される「ベイパー形成体」という用語は、使用時にベイパーの形成を促進し、かつeベイピング装置の動作温度にて熱劣化に対して実質的に抵抗性である任意の適切な公知の化合物または化合物の混合物を説明する。適切なベイパー形成体は、プロピレングリコール、およびグリセロールまたはグリセリンのうちの少なくとも一つなどの多価アルコールの様々な組成物から成る。少なくとも一つの実施形態において、ベイパー形成体はプロピレングリコールである。
【0026】
図1は、例示的な実施形態によるeベイピング装置60の側面図である。図1では、eベイピング装置60は、ねじ継手74で連結された、または滑り嵌め、スナップ嵌め、戻り止め、クランプおよび留め金、またはこれに類するもののうちの少なくとも一つなどの他の接続構造によって相互に結合された、第一のセクション(またはカートリッジ)70および第二のセクション72(または電源セクション72)を含む。少なくとも一つの例示的な実施形態において、第一のセクションまたはカートリッジ70は交換可能なカートリッジであってもよく、また第二のセクション72は再使用可能なセクションであってもよい。別の方法として、第一のセクションまたはカートリッジ70および第二のセクション72は、一つの部品として一体的に形成されてもよい。少なくとも一つの実施形態において、第二のセクション72は、その遠位端28にLEDを含む。例示的な実施形態において、第一のセクションは、プレベイパー製剤を保持するように構成された、かつ手動で再充填可能なタンク70でありうるか、またはそれを含んでもよい。
【0027】
図2は、eベイピング装置の例示的な実施形態の断面図である。図2に示すように、第一のセクションまたはカートリッジ70は、口側端インサート20、毛細管18、貯蔵部14を収容することができる。
【0028】
例示的な実施形態において、貯蔵部14は内側管(図示せず)の周りに巻き付けたガーゼを含んでもよい。例えば、貯蔵部14は、内側に巻き付けたガーゼを囲む外側に巻き付けたガーゼで形成されてもよく、またはこれを含んでもよい。少なくとも一つの例示的な実施形態において、貯蔵部14は、ばらの粒子、ばらの繊維、または織布繊維もしくは不織布繊維の形態のアルミナセラミックで形成されてもよく、またはこれを含んでもよい。別の方法として、貯蔵部14は、ばらの繊維を束ねた形態の、綿もしくはガーゼ材料などのセルロース系材料、またはポリエチレンテレフタラートなどのポリマー材料で形成されてもよく、またはこれらを含んでもよい。貯蔵部14のより詳細な説明を下記に提供する。
【0029】
第二のセクション72は、電源12と、電源12を制御するように構成された制御回路11と、吸煙センサー16とを収容することができる。吸煙センサー16は、eベイピング装置の使用者がeベイピング装置60で吸引している時に感知するように構成されており、これは制御回路11を介して電源12の動作を引き起こして、貯蔵部14内に収容されたプレベイパー製剤を加熱し、これによってベイパーを形成する。第二のセクション72のねじ部分74は、第一のセクションまたはカートリッジ70に接続されていない時に、電池充電器に接続して電池または電源セクション12を充電することができる。
【0030】
例示的な実施形態において、毛細管18は、導電性材料から形成され、または導電性材料を含み、従って管18を通して電流を流すことによって管自体がヒーターとなるように構成されてもよい。毛細管18は、毛細管18が経験する動作温度で必要な構造的完全性を維持しながらも、加熱、例えば抵抗加熱が可能であり、プレベイパー製剤と反応しない任意の導電性材料であってもよい。毛細管18を形成するために適切な材料は、ステンレス鋼、銅、銅合金、フィルム抵抗性材料でコーティングされた多孔性セラミック材料、ニッケルクロム合金、およびこれらの組み合わせのうちの一つ以上である。例えば、毛細管18はステンレス鋼毛細管18であり、毛細管18の長さに沿った直流電流または交流電流の通過のためにこれらに取り付けられたリード線26を介してヒーターとして機能する。従って、ステンレス鋼毛細管18は、例えば抵抗加熱によって加熱される。別の方法として、毛細管18は、例えばガラス管などの非金属管であってもよい。こうした実施形態において、毛細管18はまた、ガラス管に沿って配置され、かつ加熱される(例えば、抵抗的に加熱される)能力がある導電材料(例えば、ステンレス鋼、ニクロム、またはプラチナワイヤーなど)を含む。ガラス管に沿って配置されている導電材料が加熱される時、毛細管18内に存在するプレベイパー製剤は、毛細管18内のプレベイパー製剤を少なくとも部分的に揮発させるのに十分な温度まで加熱される。
【0031】
少なくとも一つの実施形態において、リード線26は毛細管18の金属部分に結合されている。少なくとも一つの実施形態において、一本のリード線26は毛細管18の第一の上流部分101に連結されていて、また第二のリード線26は毛細管18の下流の端部分102に連結されている。
【0032】
動作において、eベイピング装置の使用者がeベイピング装置で吸引する時に、吸煙センサー16はeベイピング装置の使用者の吸引によって生じた圧力勾配を検出し、制御回路11は毛細管18に電力を供給することによって、貯蔵部14内に位置するプレベイパー製剤の加熱を制御する。毛細管18が加熱されると、毛細管18の加熱部分内に含まれるプレベイパー製剤は揮発されて出口63から放出され、ここでプレベイパー製剤は拡張し、空気と混合して、混合チャンバー240内でベイパーを形成する。
【0033】
図2に示す通り、貯蔵部14は、貯蔵部14内にプレベイパー製剤を維持し、貯蔵部14が圧迫されて、そこに圧力が適用されると開くように構成された弁40を含み、eベイピング装置の使用者がeベイピング装置の口側端インサート20で吸引する時に圧力が生成され、その結果、貯蔵部14は貯蔵部14の出口62を通してプレベイパー製剤を毛細管18に押し出す。少なくとも一つの実施形態において、弁40は臨界の最小圧力に達した時に開き、プレベイパー製剤が貯蔵部14から不注意に分与されることが回避される。少なくとも一つの実施形態において、圧力スイッチ44を押すのに必要な圧力は十分に高いので、物理的動作または外側の物体の衝突などの外的要因によって圧力スイッチ44が不注意に押されることによる偶発的な加熱が回避される。
【0034】
例示的な実施形態の電源12は、eベイピング装置60の第二のセクション72内に配置された電池を含むことができる。電源12は、電圧を印加して貯蔵部14内に収容されたプレベイパー製剤を揮発するように構成されている。
【0035】
少なくとも一つの実施形態において、毛細管18とリード線26の間の電気的接続は実質的に導電性かつ温度抵抗性であり、一方で毛細管18は実質的に抵抗性があるので、発熱は接点ではなく主に毛細管18に沿って生じる。
【0036】
電源セクションまたは電池12は再充電可能であってもよく、外部充電装置による電池の充電を可能にする回路を含んでもよい。例示的な実施形態において、回路は充電される時に、eベイピング装置の出口を介した所与の回数の吸引のための電力を提供し、その後、回路は外部充電装置に再接続されなければならない可能性がある。
【0037】
少なくとも一つの実施形態において、eベイピング装置60は、例えばプリント基板上に搭載することができる制御回路11を含んでもよい。制御回路11はまた、装置が起動された時に発光するように構成されたヒーター作動灯27を含んでもよい。少なくとも一つの実施形態において、ヒーター作動灯27は少なくとも一つのLEDを備え、かつeベイピング装置60の遠位端28にあり、そうなることで、eベイピング装置の使用者がeベイピング装置で吸引する時に、ヒーター作動灯27は、燃焼する石炭の外観をしたキャップを照らす。さらに、ヒーター作動灯27は、eベイピング装置の使用者に見えるように構成されうる。灯27はまた、所望する場合に灯27がベイピング中に点灯しないように、eベイピング装置の使用者が所望する時に灯27を点灯する、消灯する、または点灯および消灯を行うことができるように構成されてもよい。
【0038】
少なくとも一つの実施形態において、eベイピング装置60は、少なくとも二つの軸から離れた分岐出口21を有する口側端インサート20をさらに含み、分岐出口21は口側端インサート20の周りに均一に分布され、eベイピング装置の動作中、eベイピング装置の使用者の口内にベイパーを実質的に均一に分布するようにする。少なくとも一つの実施形態において、口側端インサート20は、少なくとも二つの分岐出口21(例えば、3~8個以上の出口)を含む。少なくとも一つの実施形態において、口側端インサート20の出口21は、軸から離れた通路23の端に位置し、eベイピング装置60の長軸方向に対して外向きの角度を有する(例えば、分岐状)。本明細書で使用される「軸から離れた」という用語は、eベイピング装置の長軸方向に対してある角度を有することを意味する。
【0039】
少なくとも一つの実施形態において、eベイピング装置60は、たばこ由来の製品とほぼ同じサイズである。一部の実施形態において、eベイピング装置60は、約80ミリメートル~約110ミリメートルの長さ、例えば約80ミリメートル~約100ミリメートルの長さおよび約7ミリメートル~約10ミリメートルの直径であってもよい。
【0040】
eベイピング装置60の外側円筒状ハウジング22は、任意の適切な材料または複数の材料の組み合わせから形成されてもよく、またはこれを含んでもよい。少なくとも一つの実施形態において、外側円筒状ハウジング22は、少なくとも部分的に金属で形成されていて、制御回路11と、電源12と、吸煙センサー16とを接続する電気回路の一部である。
【0041】
図2に示す通り、eベイピング装置60はまた、プレベイパー製剤貯蔵部14および毛細管18を収容することができる中間セクション(第三のセクション)73を含むことができる。中間セクション73は、第一のセクションまたはカートリッジ70の上流端でねじ継手74’に、および第二のセクション72の下流端でねじ継手74に嵌合されるように構成されることができる。この例示的な実施形態において、第一のセクションまたはカートリッジ70は口側端インサート20を収容し、一方で第二のセクション72は電源12と、電源12を制御するように構成された制御回路11とを収容する。
【0042】
図3は、例示的な実施形態によるeベイピング装置の断面図である。少なくとも一つの実施形態において、毛細管18をクリーニングする必要性を回避するように、第一のセクションまたはカートリッジ70は交換可能である。少なくとも一つの実施形態において、第一のセクションまたはカートリッジ70と、第二のセクション72とを、ねじ接続なしで一体として形成されて、使い捨て可能なeベイピング装置を形成してもよい。
【0043】
図3に示す通り、他の例示的な実施形態において、弁40は二方弁とすることができ、貯蔵部14は加圧することができる。例えば、貯蔵部14は、貯蔵部14に一定の圧力を印加するように構成された加圧機構405を用いて加圧することができる。そのため、貯蔵部14内に収容されたプレベイパー製剤の加熱によって形成されたベイパーの放出が促進される。貯蔵部14に対する圧力が軽減されると弁40は閉じ、加熱された毛細管18は、弁40の下流に残留しているプレベイパー製剤があれば排出する。
【0044】
図4は、eベイピング装置の別の例示的な実施形態の長軸方向の断面図である。図4では、eベイピング装置60は、上流シール15内に中央空気通路24を含むことができる。中央空気通路24は内側管65に対して開く。さらに、eベイピング装置60は、プレベイパー製剤を貯蔵するよう構成された貯蔵部14を含む。貯蔵部14は、プレベイパー製剤と、随意に貯蔵媒体25(中にプレベイパー製剤を貯蔵するように構成されたガーゼなど)とを含む。一実施形態において、貯蔵部14は外側管6と内側管65の間の外側環状部の中に収容されている。貯蔵部14からのプレベイパー製剤の漏れを防止するために、環状部は上流端でシール15によって密封されていて、下流端でストッパー10によって密封されている。ヒーターが起動された時、芯220の中央部分内に存在するプレベイパー製剤が気化されてベイパーを形成するように、ヒーター19は芯220の中央部分を少なくとも部分的に囲む。ヒーター19は、間隙を介した二本のリード線26によって電池12に接続されている。eベイピング装置60は、少なくとも二つの出口21を有する口側端インサート20をさらに含む。口側端インサート20は、内側管65の内部と、ストッパー10を通して延びる中央通路64とを介して中央空気通路24と流体連通している。
【0045】
eベイピング装置60は、シール15内の中央空気通路24の下流端82で不浸透性プラグ30を備える気流ダイバーターを含んでもよい。少なくとも一つの例示的な実施形態において、中央空気通路24はシール15内で軸方向に延びる中央通路であり、シール15は外側管6と内側管65の間の環状部の上流端を密封する。半径方向空気チャネル32は、中央通路20から内側管65に向かって外側に空気を方向付ける。動作において、eベイピング装置の使用者がeベイピング装置で吸引する時に、吸煙センサー16はeベイピング装置の使用者の吸引によって生じた圧力勾配を検出し、結果として制御回路11は、ヒーター19に電力を供給することによって、貯蔵部14内に位置するプレベイパー製剤の加熱を制御する。
【0046】
図5A~5Dは、少なくとも一つの例示的な実施形態による、eベイピング装置の金属部分の内側表面上に保護コーティングを堆積させる方法を図示するフローチャートである。図5Aにおいて、方法はS10で開始し、表面を腐食から保護するように構成されたコーティング混合物を調製する。いくつかの例示的な実施形態では、コーティング混合物を調製することは、第一のポリマーを溶解することによって第一の混合物を調製すること、第二のポリマーを溶解することによって第二の混合物を調製すること、およびシランを溶解することによって第三の混合物を調製することを含む。
【0047】
いくつかの例示的な実施形態では、第一の混合物を調製することは、ポリマーを約1~約5重量パーセントの濃度で水中に溶解すること、酢酸を添加して、第一の混合物のpHを6以下に調節すること、および第一の混合物を摂氏約50度~摂氏約70度に加熱した後室温で冷却することを含む。いくつかの例示的な実施形態において、方法はさらに、約10部のポリマー対1部のフィラーの重量比でフィラーを添加することを含む。いくつかの例示的な実施形態において、フィラーは、例えば、低pHで安定している市販の分散液などのコロイド分散液中のシリカを含みうる。シリカ分散液は、乾燥質量基準で約0.1重量パーセント~約30重量パーセントの処理溶液であってもよく、例えば20パーセント未満であってもよい。コロイダルシリカ分散液は、1ナノメートル~100ナノメートルの範囲のバラバラのシリカ粒子の分散体であってもよい。さらに、フィラーは、0.1パーセント~30パーセント、例えば20パーセント未満の濃度のグラフェン酸化物の固体粒子、TiO2、粘土、ZrO2等を含有しうる。
【0048】
いくつかの例示的な実施形態では、ポリマーはキトサンであるか、またはキトサンを含む。いくつかの例示的な実施形態では、pHは、約4~約5の範囲である。
【0049】
いくつかの例示的な実施形態では、フィラーは、約100部のポリマー対1部のフィラーの重量比で添加される。
【0050】
いくつかの例示的な実施形態では、第二の混合物を調製することは、約30パーセント~約40パーセントの粒子分散液を含む水分散液中に陽イオン性ポリマーを溶解することを含む。粒子分散液は、固体ポリマー粒子、グラフェン酸化物粒子およびコロイダルシリカ粒子のうちの少なくとも一つを含みうる。フィラーは、約10部のポリマー対1部のフィラーの重量比で、または約100部のポリマー対1部のフィラーの重量比で添加されうる。
【0051】
いくつかの例示的な実施形態では、第三の混合物を調製することは、溶媒を約5重量パーセント~約20重量パーセントのシランと混合すること、pHを調節するために酢酸を添加して加水分解シランを安定化させること、および撹拌を介して第三の混合物を室温で約10分~約1時間混合することを含む。溶媒は、水、または代替的にメタノールを含みうる。シランは、オルトケイ酸テトラエチル(TEOS)および1,2-ビス(トリエトキシシリル)エタン(BTSE)のうちの少なくとも一つを含みうる。
【0052】
いくつかの例示的な実施形態では、コーティング混合物を調製することは、第一の混合物と第三の混合物を約6対1の比で組み合わせること、フィラーを添加する工程なしに、第一の混合物と第三の混合物を約6対1の比で組み合わせること、第二の混合物と第三の混合物を約6対1の比で組み合わせること、またはフィラーを添加する工程なしに、第二の混合物と第三の混合物を約6対1の比で組み合わせることを含む。
【0053】
例示的な実施形態において、コーティング混合物は幾つかの部分を含む。例えば、コーティング混合物は、最大5個の異なる部品を含む。コーティング混合物は、水およびメタノールのうちの少なくとも一つを含む第一の部分を含む。第二の部品は、例えば、酢酸などのpHを制御する有機酸を含む。プレベイパー製剤中に存在する一つ以上の酸は、少なくとも摂氏約100度の沸点を有してもよい。例えば、一つ以上の酸は、摂氏約100度~摂氏約300度、または摂氏約150度~摂氏約250度(例えば、摂氏約160度~摂氏約240度、摂氏約170度~摂氏約230度、摂氏約180度~摂氏約220度、または摂氏約190度~摂氏約210度)の範囲の沸点を有してもよい。少なくとも一つの例示的な実施形態によると、コーティング内に存在する一つ以上の酸としては、ピルビン酸、ギ酸、シュウ酸、グリコール酸、酢酸、イソ吉草酸、吉草酸、プロピオン酸、オクタン酸、乳酸、レブリン酸、ソルビン酸、リンゴ酸、酒石酸、コハク酸、クエン酸、安息香酸、オレイン酸、アコニット酸、酪酸、ケイ皮酸、デカン酸、3,7-ジメチル-6-オクテン酸、1-グルタミン酸、ヘプタン酸、ヘキサン酸、3-ヘキサン酸、トランス-2-ヘキサン酸、イソ酪酸、ラウリン酸、2-メチル酪酸、2-メチル吉草酸、ミリスチン酸、ノナン酸、パルミチン酸、4-ペンテン酸、フェニル酢酸、3-フェニルプロピオン酸、塩酸、リン酸、硫酸、およびこれらの組み合わせのうちの一つ以上が挙げられうる。
【0054】
例示的な実施形態では、コーティング混合物は、有機ポリマーを含む第三の部分を含む。例えば、第三の部分には、キトサンなどの直鎖ポリサッカリド、またはコーティング混合物のその他の成分を架橋または水素結合するためのヒドロキシル基およびアミン基などの複数の反応部位を含むその他の有機ポリマーを含む。有機ポリマーは溶液中にあってもよく、または陽イオン性水性分散液の形態であってもよい。また、エポキシ、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアクリレートなどのその他の有機ポリマーもコーティングの陽イオン性水分散液として使用されうる。例示的な実施形態では、キトサン、修飾澱粉または天然ガムなどの天然ポリマー、または別のバイオポリマーは、それらが生体適合性かつ無毒性であるため有利である。コーティング内の合計固体で表現されるポリマー濃度は、コーティング溶液の約0.5重量パーセント~約40重量パーセントの範囲でありうる。
【0055】
例示的な実施形態では、コーティング混合物は、例えば、コロイダル分散液中のシリカなどのフィラーを含む第四の部分を含む。例えば、シリカは、乾燥質量基準でコーティング溶液の約0.1重量パーセント~約30重量パーセントの低濃度で安定している市販のシリカ分散液であってもよく、またはそれを含んでもよい。例えば、シリカ濃度は約20パーセント以下であってもよい。第四の部分は、約1ナノメートル~約100ナノメートルの範囲のばらばらのシリカ粒子の分散液であるコロイダルシリカ分散液を含みうる。例示的な実施形態において、第四の部分は、約0.1パーセント~約30パーセントの濃度、例えば約20パーセント以下の濃度の固体グラフェン酸化物、TiO2、粘土、ZrO2、ZrO2-Y23、CeO2、Al23などを含みうる。
【0056】
例示的な実施形態では、コーティング混合物は、水溶性シランを含む第五の部分を含む。例えば、オルトケイ酸テトラエチル(TEOS)、オルトケイ酸テトラメチル(TMOS)、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルジメトキシメチルシラン(AEAPS)、(3-グリシドキシプロピル)メチルジエトキシシラン(GPTMS)、(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン(APTES)、ビス-1,2-(トリエトキシシリル)エタン(BTSE)およびポリ(メタクリル酸メチル)(PMMA)などの複数のシランがコーティング中に使用されてもよく、これらは一般的に、望ましい反応およびコーティングのその他の構成要素との期待される適合性を提供する。例えば、シラン濃度は、コーティングの約0.1重量パーセント~約1重量パーセントでありうる。
【0057】
例示的な実施形態において、eベイピング装置の一部分の表面上に保護コーティングを形成する方法は、幾つかの混合物を調製することを含みうる。例えば、方法の例示的な実施形態は、三つの混合物、A、BおよびCを調製することを含む。
【0058】
混合物Aは、約1重量パーセント~約5重量パーセントの濃度の有機ポリマー(例えば、キトサンなど)を溶媒(水またはメタノールなど)中に溶解することによって調製されうる。例えば、酢酸などの有機酸を使用して、pHを約6未満、例えば約4~5の範囲に調節しうる。方法はさらに、溶解を促進するために摂氏約50度~摂氏約70度に混合物を加熱した後、混合物を室温まで冷却することを含みうる。随意に、フィラーは、(乾燥基準で)約10の有機ポリマー対フィラーの重量比で有機ポリマーに添加されてもよい(10部のポリマー対1部のポリマー)。一部のフィラーについては、比を約100/1まで減少させて、加工可能な粘性を生成しうる。
【0059】
混合物Bは、約30パーセント~約40パーセントの固体を有する陽イオン性ポリマー水分散液を調製することによって調製されうる。随意に、フィラーは、(乾燥基準で)約10の有機ポリマー対フィラーの重量比で有機ポリマーに添加されてもよい(10部のポリマー対1部のポリマー)。一部のフィラーについては、比を約100/1まで減少させて、加工可能な粘性を生成しうる。
【0060】
混合物Cは、例えば、TEOSまたはBTSEなどの機能的または非機能的シランを含む溶媒溶液(水またはメタノール)を調製することによって調製されうる。酢酸を添加して、加水分解シランの安定性を促進する範囲にpHを調節してもよい。また、混合物は、約5重量パーセント~約20重量パーセントまでのシランを含み、室温で約10分~約1時間攪拌することによって混合されてもよい。
【0061】
eベイピング装置の一部分の表面上に保護コーティングを形成する方法の例示的な実施形態は、上記混合物を使用してコーティングを形成する一つ以上の処理を含む。例えば、第一の処理は、約6:1のC:A重量比で上述した混合物Aと混合物Cを組み合わせることを含みうる。例示的な第二の処理は、フィラーを用いずに、約6:1のA:C重量比で混合物Aと混合物Cを組み合わせることを含みうる。例示的な第三の処理の例は、約6:1のB:C重量比で混合物Bと混合物Cを組み合わせることを含みうる。例示的な第四の処理の例は、フィラーを用いずに、約6:1のB:C重量比で混合物Aと混合物Cを組み合わせることを含みうる。
【0062】
いくつかの例示的な実施形態では、方法はS100へと続き、ここでコーティングが電着を介して実施される場合、方法は、S110において、電着容器または電着浴にコーティング混合物を充填することを含みうるが、電着容器は陽極および陰極を含む。S120において、陰極は、金属製eベイピング装置部分であるか、またはそれを含む。S130において、方法は、陽極および陰極に蒸着電圧を印加して、eベイピング装置部分の表面上にコーティングフィルムを堆積させることを含む。いくつかの例示的な実施形態では、コーティングフィルムを堆積させることは、陽極と陰極との間に電着電圧を印加することを含み、電圧は、数秒~10分の範囲の期間、例えば、2~5分間の、約1ボルト~約50ボルトでありうる。いくつかの例示的な実施形態では、コーティングフィルムを堆積させることは、陽極と陰極との間に、約3アンペア未満、または例えば約5ミリアンペア~約200ミリアンペアの電着電流を印加することを含む。結果として得られるコーティングの厚さは、1マイクロメートル未満~数十マイクロメートルとしうる。
【0063】
いくつかの例示的な実施形態では、方法はさらに、S140において、電着浴からeベイピング装置を取り出し、eベイピング装置部分を溶媒または水で洗浄し、そしてeベイピング装置部分を乾燥させることを含む。例えば、乾燥は、摂氏約50度~摂氏約200度の温度で約1分~約30分の間実施されうる。
【0064】
いくつかの例示的な実施形態では、S200において、コーティングが浸漬を介して実施される場合、方法は、S210で浸漬浴にコーティング混合物を充填すること、S220でeベイピング装置部分を浸漬浴内に浸漬すること、S230でeベイピング装置部分を浸漬浴から取り出すこと、そしてS240で残留物のeベイピング装置部分を洗浄してeベイピング装置部分を乾燥させることを含む。
【0065】
いくつかの例示的な実施形態では、S300において、コーティングが吹き付けを介して実施される場合、コーティングは、S310で吹き付け装置にコーティング混合物を充填すること、S320でeベイピング装置部分にコーティング混合物を充填すること、およびS330で残留物のイーベイパー装置部分を洗浄してeベイピング装置部分を乾燥させることを含む。
【0066】
いくつかの例示的な実施形態では、S400において、コーティングが蒸着を介して実施される場合、コーティングは、S410でeベイピング装置部分の表面を洗浄すること、S420でeベイピング装置部分の表面上に中間接着層を堆積させることを含む。中間接着層を堆積させることは、約0.05体積パーセント~約5体積パーセントのシラン溶液を含む溶液中にeベイピング装置部分を浸漬することを含む。シラン溶液は、約50パーセントの水および約50パーセントのイソプロパノール混合物、または約2パーセント~約10パーセントのメタノール系BTSEを含む。中間接着層は、シラン、カルボン酸または一つ以上のポリマーを含有する無水物基を含みうる。また、方法は、S430において、蒸着を実施してeベイピング装置部分の表面上にコーティングを堆積させることも含みうる。コーティングはパリレンを含んでもよく、そして、化学蒸着および物理蒸着のうちの一つであってもよい、蒸着を実施することは、パリレンを摂氏約600度以上で加熱して、パリレン二量体を単量体に熱分解し、そしてパリレン単量体を室温でeベイピング装置部分の金属部分上に堆積させることを含む。例えば、中間接着層の厚さは、約0.1マイクロメートル~約5マイクロメートルであってもよく、またパリレンの厚さは約0.05マイクロメートル~約2マイクロメートルであってもよい。また、方法は、S440において、蒸気脱脂洗浄、超音波洗浄、および機械洗浄のうちの少なくとも一つを介してeベイピング装置部分を洗浄すること、ならびにeベイピング装置部分を乾燥させることを含みうる。
【0067】
例示的な実施形態が説明されているため、これらは多くの方法で変化しうることが明らかであろう。こうした変化は、例示的な実施形態の意図される範囲を逸脱するものと見なされず、当業者にとって明らかであろうすべての修正は、以下の請求項の範囲内に含まれることが意図されている。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D