(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-03
(45)【発行日】2023-10-12
(54)【発明の名称】印刷データ生成装置、RIPソフトウェアおよびインクジェットプリンター
(51)【国際特許分類】
G06F 3/12 20060101AFI20231004BHJP
B41J 2/21 20060101ALI20231004BHJP
G06T 11/60 20060101ALI20231004BHJP
B41J 2/525 20060101ALN20231004BHJP
【FI】
G06F3/12 344
B41J2/21
G06F3/12 308
G06F3/12 382
G06T11/60 100E
B41J2/525
(21)【出願番号】P 2020002807
(22)【出願日】2020-01-10
【審査請求日】2022-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000137823
【氏名又は名称】株式会社ミマキエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100140796
【氏名又は名称】原口 貴志
(72)【発明者】
【氏名】浅沼 由馬
【審査官】豊田 真弓
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-055238(JP,A)
【文献】特開2018-074313(JP,A)
【文献】特開2019-213114(JP,A)
【文献】特開2012-123195(JP,A)
【文献】特開2015-095123(JP,A)
【文献】特開2017-136779(JP,A)
【文献】特開2012-160960(JP,A)
【文献】特開2019-120960(JP,A)
【文献】特開2017-173377(JP,A)
【文献】特開2015-025845(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/12
B41J 2/21
G06T 11/60
B41J 2/525
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像ファイルに示される画像としての元画像に基づいて生成された通常の印刷用の画像としての通常印刷用画像と、
前記元画像に基づいて生成された、前記通常印刷用画像と重なるための画像としての積層用画像と
を印刷するための印刷データを生成する印刷データ生成部を備え、
前記通常印刷用画像は、前記元画像において特定の色としての特定色以外の色が付された領域のみが印刷される画像であり、
前記積層用画像は、特定の領域としての特定領域の全体を前記特定色で塗り潰した画像であり、
前記印刷データ生成部は、前記元画像において
前記特定色のオブジェクトが存在する領域が前記特定領域として指定されることが可能であることを特徴とする印刷データ生成装置。
【請求項2】
画像ファイルに示される画像としての元画像に基づいて生成された通常の印刷用の画像としての通常印刷用画像と、
前記元画像に基づいて生成された、前記通常印刷用画像と重なるための画像としての積層用画像と
を印刷するための印刷データを生成する印刷データ生成部をコンピューターに実現させ、
前記通常印刷用画像は、前記元画像において特定の色としての特定色以外の色が付された領域のみが印刷される画像であり、
前記積層用画像は、特定の領域としての特定領域の全体を前記特定色で塗り潰した画像であり、
前記印刷データ生成部は、前記元画像において前記特定色のオブジェクトが存在する領域が前記特定領域として指定されることが可能であることを特徴とするRIPソフトウェア。
【請求項3】
請求項1に記載の印刷データ生成装置を備えることを特徴とするインクジェットプリンター。
【請求項4】
請求項1に記載の印刷データ生成装置を備えることを特徴とする印刷物製造システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷データを生成する印刷データ生成装置、RIPソフトウェアおよびインクジェットプリンターに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、印刷装置によって使用される印刷データを、アプリケーションプログラムによって生成された画像ファイルに基づいて生成するRIP(Raster Image Processor)ソフトウェアを実行する印刷データ生成装置が知られている(特許文献1参照。)。
【0003】
印刷データ生成装置は、画像ファイルに示される画像(以下「元画像」という。)に基づいて生成された通常の印刷用の画像(以下「通常印刷用画像」という。)と、この元画像に基づいて生成された、通常印刷用画像と重なるための画像(以下「積層用画像」という。)とを印刷するための印刷データを生成することが可能である。通常印刷用画像は、外形が矩形の画像であるが、元画像において白色などの特定の色(以下「特定色」という。)以外の色が付された領域(以下「印刷対象領域」という。)のみが印刷される。積層用画像としては、例えば、特定の領域(以下「特定領域」という。)の全体を特定色で塗り潰した画像が採用されることが可能である。特定領域としては、元画像の全体の矩形の領域を示す「画像全体」と、元画像における印刷対象領域、すなわち、特定色以外の色が付された画素の領域を示す「有効画素」とが指定されることが可能である。
【0004】
図13(a)は、画像ファイルに示される元画像の一例である元画像91を示す図である。
図13(b)は、元画像91に基づいて生成された通常印刷用画像92を示す図である。
図13(c)は、元画像91の全体の矩形の領域を特定色で塗り潰した積層用画像93を示す図である。
図13(d)は、元画像91において特定色以外の色が付された画素の領域を特定色で塗り潰した積層用画像94を示す図である。
【0005】
図13(a)には、元画像91の外形の矩形を示す破線91aが示されている。破線91aは、実際には存在していない線である。
図13(a)に示す元画像91は、特定色以外の色が付されたオブジェクト91bと、特定色が付されたオブジェクト91c、91dおよび91eとによって構成されている。すなわち、元画像91は、特定色以外の色が付された非特定色有色領域91fと、特定色が付された特定色領域91gと、色が付されていない無色領域91hとによって構成されている。ここで、非特定色有色領域91fは、元画像91において、オブジェクト91bが存在し、オブジェクト91c~91eが存在しない全ての領域である。特定色領域91gは、元画像91においてオブジェクト91c~91eが存在する全ての領域である。無色領域83dは、元画像91においてオブジェクト91b~91eが存在しない全ての領域である。
【0006】
図13(b)には、通常印刷用画像92の外形の矩形を示す破線92aが示されている。破線92aは、実際には印刷されない線である。通常印刷用画像92は、元画像91(
図13(a)参照。)における非特定色有色領域91f(
図13(a)参照。)に対応する印刷対象領域92bを含んでいる。
【0007】
図13(c)に示す積層用画像93は、特定色で塗り潰す領域として「画像全体」が指定された場合の積層用画像である。積層用画像93は、元画像91(
図13(a)参照。)全体を特定色で塗り潰した画像である。
【0008】
図13(d)に示す積層用画像94は、特定色で塗り潰す領域として「有効画素」が指定された場合の積層用画像である。
図13(d)には、積層用画像94の外形の矩形を示す破線94aが示されている。破線94aは、実際には印刷されない線である。積層用画像94は、元画像91(
図13(a)参照。)における非特定色有色領域91f(
図13(a)参照。)に対応する領域を特定色で塗り潰した画像である。すなわち、積層用画像94は、元画像91における特定色領域91g(
図13(a)参照。)に対応する領域と、元画像91における無色領域91h(
図13(a)参照。)に対応する領域とに色が付されていない。
【0009】
図14(a)は、被印刷媒体95の一例を示す図である。
図14(b)は、被印刷媒体95に積層用画像93、通常印刷用画像92の順に印刷した印刷物96を示す図である。
図14(c)は、被印刷媒体95に積層用画像94(
図13(b)参照。)、通常印刷用画像92の順に印刷した印刷物97を示す図である。
【0010】
図14(a)に示す被印刷媒体95に、
図13(c)に示す積層用画像93が印刷された後、積層用画像93の上に、
図13(b)に示す通常印刷用画像92が印刷されると、
図14(b)に示す印刷物96が生成される。
【0011】
図14(a)に示す被印刷媒体95に、
図13(d)に示す積層用画像94が印刷された後、積層用画像94の上に、
図13(b)に示す通常印刷用画像92が印刷されると、
図14(c)に示す印刷物97が生成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、従来の印刷データ生成装置においては、画像ファイルに示す元画像おいて色が付されていない無色領域が印刷されない積層用画像94が生成される場合に、元画像において特定色が付されている特定色領域も、この積層用画像94において印刷されないので、元画像において特定色が付されている特定色領域の色が印刷物97において被印刷媒体95の地色になる。ここで、画像ファイルの作成者が印刷物において特定色が付されることを期待して特定色領域を作成した場合に、被印刷媒体95の地色が特定色ではないとき、画像ファイルの作成者が意図した印刷物が得られないという問題がある。
【0014】
そこで、本発明は、画像ファイルの作成者が意図した印刷物を得ることができる印刷データ生成装置、RIPソフトウェアおよびインクジェットプリンターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の印刷データ生成装置は、画像ファイルに示される画像としての元画像に基づいて生成された通常の印刷用の画像としての通常印刷用画像と、前記元画像に基づいて生成された、前記通常印刷用画像と重なるための画像としての積層用画像とを印刷するための印刷データを生成する印刷データ生成部を備え、前記通常印刷用画像は、前記元画像において特定の色としての特定色以外の色が付された領域のみが印刷される画像であり、前記積層用画像は、特定の領域としての特定領域の全体を前記特定色で塗り潰した画像であり、前記印刷データ生成部は、前記元画像においてオブジェクトが存在する領域が前記特定領域として指定されることが可能であることを特徴とする。
【0016】
この構成により、本発明の印刷データ生成装置は、画像ファイルに示される元画像において特定色以外の色が付された領域のみが印刷される通常印刷用画像と、元画像に基づいて生成された、通常印刷用画像と重なるための画像としての積層用画像とを印刷するための印刷データを生成する場合に、元画像に特定色のオブジェクトが含まれるとき、積層用画像において特定色で塗り潰される特定領域として、元画像においてオブジェクトが存在する領域が指定されることが可能であるので、画像ファイルの作成者が意図した印刷物を得ることができる。
【0017】
本発明の印刷データ生成装置において、前記印刷データ生成部は、前記元画像において前記特定色の前記オブジェクトが存在する領域が前記特定領域として指定されることが可能であっても良い。
【0018】
この構成により、本発明の印刷データ生成装置は、積層用画像において特定色で塗り潰される特定領域として、元画像において特定色のオブジェクトが存在する領域が指定されることが可能であるので、画像ファイルの作成者が意図した印刷物を得ることができる。
【0019】
本発明のRIPソフトウェアは、画像ファイルに示される画像としての元画像に基づいて生成された通常の印刷用の画像としての通常印刷用画像と、前記元画像に基づいて生成された、前記通常印刷用画像と重なるための画像としての積層用画像とを印刷するための印刷データを生成する印刷データ生成部をコンピューターに実現させ、前記通常印刷用画像は、前記元画像において特定の色としての特定色以外の色が付された領域のみが印刷される画像であり、前記積層用画像は、特定の領域としての特定領域の全体を前記特定色で塗り潰した画像であり、前記印刷データ生成部は、前記元画像においてオブジェクトが存在する領域が前記特定領域として指定されることが可能であることを特徴とする。
【0020】
この構成により、本発明のRIPソフトウェアを実行するコンピューターは、画像ファイルに示される元画像において特定色以外の色が付された領域のみが印刷される通常印刷用画像と、元画像に基づいて生成された、通常印刷用画像と重なるための画像としての積層用画像とを印刷するための印刷データを生成する場合に、元画像に特定色のオブジェクトが含まれるとき、積層用画像において特定色で塗り潰される特定領域として、元画像においてオブジェクトが存在する領域が指定されることが可能であるので、画像ファイルの作成者が意図した印刷物を得ることができる。
【0021】
本発明のインクジェットプリンターは、彩色インクを吐出することが可能なインクジェットヘッドおよび無彩色インクを吐出することが可能なインクジェットヘッドを有するインクジェットプリンターであって、印刷用の画像のデータとしての印刷用画像データに基づいて彩色インクを印刷するための彩色印刷データおよび前記印刷用画像データの全領域を示すオブジェクトデータを作成する印刷データ生成部を有し、前記印刷データ生成部は、前記彩色印刷データと前記オブジェクトデータとに基づいて、無彩色インクを印刷するための無彩色領域の有無を判定し、前記無彩色領域が有る場合、無彩色インクを印刷するための無彩色印刷データを前記無彩色領域に基づいて作成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明の印刷データ生成装置、RIPソフトウェアおよびインクジェットプリンターは、画像ファイルの作成者が意図した印刷物を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る印刷物製造システムのブロック図である。
【
図2】インクジェットプリンターである場合の
図1に示す印刷装置の外観斜視図である。
【
図4】
図1に示す印刷データ生成装置のブロック図である。
【
図5】印刷データを生成する場合の
図4に示す印刷データ生成装置の動作のフローチャートである。
【
図6】
図5に示す動作において表示される印刷データ生成画面の一例を示す図である。
【
図7】積層用画像を生成する場合の
図4に示す印刷データ生成装置の動作のフローチャートである。
【
図8】
図13(a)に示す元画像においてオブジェクトが存在する領域を特定色で塗り潰した積層用画像の一例を示す図である。
【
図9】被印刷媒体に
図8に示す積層用画像、通常印刷用画像の順に印刷した印刷物を示す図である。
【
図10】画像ファイルに示される元画像の、
図13(a)に示す例とは異なる一例を示す図である。
【
図11】
図13(a)に示す元画像において特定色のオブジェクトが存在する領域を特定色で塗り潰した積層用画像の一例を示す図である。
【
図12】フラットベッドタイプのインクジェットプリンターである場合の
図1に示す印刷装置の外観斜視図である。
【
図13】(a)画像ファイルに示される元画像の一例を示す図である。 (b)
図13(a)に示す元画像に基づいて生成された通常印刷用画像を示す図である。 (c)
図13(a)に示す元画像の全体の矩形の領域を特定色で塗り潰した積層用画像を示す図である。 (d)
図13(a)に示す元画像において特定色以外の色が付された画素の領域を特定色で塗り潰した積層用画像を示す図である。
【
図14】(a)被印刷媒体の一例を示す図である。 (b)被印刷媒体に
図13(c)に示す積層用画像、通常印刷用画像の順に印刷した印刷物を示す図である。 (c)被印刷媒体に
図13(d)に示す積層用画像、通常印刷用画像の順に印刷した印刷物を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を用いて説明する。
【0025】
まず、本実施の形態に係る印刷物製造システムの構成について説明する。
【0026】
図1は、本実施の形態に係る印刷物製造システム10のブロック図である。
【0027】
図1に示すように、印刷物製造システム10は、被印刷媒体に印刷する印刷装置20と、印刷装置20によって使用されるための印刷データを生成するコンピューターとしての印刷データ生成装置40とを備えている。
【0028】
印刷装置20と、印刷データ生成装置40とは、互いに通信可能である。
【0029】
印刷装置20としては、例えば、インクジェットプリンターが採用されることが可能である。
【0030】
印刷データ生成装置40としては、例えば、PC(Personal Computer)が採用されることが可能である。
【0031】
図2は、インクジェットプリンターである場合の印刷装置20の外観斜視図である。
【0032】
図2に示すように、印刷装置20は、矢印Zで示す鉛直方向における下側から被印刷媒体95を支持するプラテン21と、プラテン21に対して鉛直方向における上側に配置されていて鉛直方向に直交する矢印Yで示す左右方向に延在しているガイドレール22と、ガイドレール22によって左右方向における移動がガイドされるキャリッジ23と、プラテン21に支持された被印刷媒体95に向けてインクを吐出する複数のインクジェットヘッド24と、プラテン21に支持された被印刷媒体95に付着したインクに向けて光を照射する複数の光照射装置25とを備えている。
【0033】
インクジェットヘッド24および光照射装置25は、キャリッジ23に搭載されている。
【0034】
インクジェットヘッド24は、インクを吐出するノズルが、鉛直方向および左右方向の両方に直交する矢印Xで示す前後方向に多数並べられたノズル列を鉛直方向における下面に備えている。インクジェットヘッド24によって吐出されるインクは、光照射装置25によって光が照射されることによって硬化するインクであり、例えば、紫外線が照射されることによって硬化するUVインクである。インクジェットヘッド24によって吐出されるインクとしては、例えば、シアンインク、マゼンタインク、イエローインク、ブラックインク、ホワイトインク、クリアーインクが採用されることが可能である。
【0035】
印刷装置20は、彩色インクを吐出することが可能なインクジェットヘッド24と、無彩色インクを吐出することが可能なインクジェットヘッド24とを有している。ここで、彩色インクとは、例えば、シアンインク、マゼンタインク、イエローインク、ブラックインクである。また、無彩色インクとは、例えば、ホワイトインク、クリアーインクである。
【0036】
光照射装置25は、例えば、LED(Light Emitting Diode)によって紫外線を照射する装置である。
【0037】
【0038】
図3に示すように、印刷装置20は、複数のインクジェットヘッド24と、複数の光照射装置25と、前後方向、すなわち、副走査方向に被印刷媒体95(
図2参照。)を搬送する媒体搬送装置26と、ガイドレール22(
図2参照。)に沿って左右方向、すなわち、主走査方向にプラテン21(
図2参照。)に対してキャリッジ23(
図2参照。)を移動させるキャリッジ走査装置27と、種々の操作が入力される例えばボタンなどの入力デバイスである操作部28と、種々の情報を表示するLCD(Liquid Crystal Display)などの表示デバイスである表示部29と、ネットワーク経由で、または、ネットワークを介さずに有線または無線によって直接に、外部の装置と通信を行う通信デバイスである通信部30と、各種の情報を記憶する半導体メモリー、HDD(Hard Disk Drive)などの不揮発性の記憶デバイスである記憶部31と、印刷装置20全体を制御する制御部32とを備えている。
【0039】
制御部32は、例えば、CPU(Central Processing Unit)と、プログラムおよび各種のデータを記憶しているROM(Read Only Memory)と、CPUの作業領域として用いられるRAM(Random Access Memory)とを備えている。CPUは、ROMまたは記憶部31に記憶されているプログラムを実行する。
【0040】
図4は、印刷データ生成装置40のブロック図である。
【0041】
図4に示すように、印刷データ生成装置40は、種々の操作が入力される例えばボタンなどの入力デバイスである操作部41と、種々の情報を表示するLCDなどの表示デバイスである表示部42と、ネットワーク経由で、または、ネットワークを介さずに有線または無線によって直接に、外部の装置と通信を行う通信デバイスである通信部43と、各種の情報を記憶する半導体メモリー、HDDなどの不揮発性の記憶デバイスである記憶部44と、印刷データ生成装置40全体を制御する制御部45とを備えている。
【0042】
記憶部44は、画像ファイルを生成するためのアプリケーションプログラム44aと、アプリケーションプログラム44aによって生成された画像ファイルに基づいて印刷データを生成するためのRIPソフトウェア44bとを記憶可能である。アプリケーションプログラム44aおよびRIPソフトウェア44bは、例えば、印刷データ生成装置40の製造段階で印刷データ生成装置40にインストールされていても良いし、CD(Compact Disk)、DVD(Digital Versatile Disk)、USB(Universal Serial Bus)メモリーなどの外部の記憶媒体から印刷データ生成装置40に追加でインストールされても良いし、ネットワーク上から印刷データ生成装置40に追加でインストールされても良い。なお、画像ファイルによって示される画像データは、印刷用の画像のデータとしての印刷用画像データを構成している。
【0043】
記憶部44は、アプリケーションプログラム44aによって生成された画像ファイル44cを記憶可能である。記憶部44は、画像ファイル44c以外にも、画像ファイルを少なくとも1つ記憶可能である。
【0044】
制御部45は、例えば、CPUと、プログラムおよび各種のデータを記憶しているROMと、CPUの作業領域として用いられるRAMとを備えている。CPUは、ROMまたは記憶部44に記憶されているプログラムを実行する。
【0045】
制御部45は、RIPソフトウェア44bを実行することによって、画像ファイルに基づいて印刷データを生成する印刷データ生成部45aを実現する。
【0046】
次に、本実施の形態に係る印刷物製造方法について説明する。
【0047】
まず、印刷データを生成する場合の印刷データ生成装置40の動作について説明する。
【0048】
印刷データ生成装置40の制御部45は、操作部41を介して指定された画像ファイルに基づいた印刷データの生成の処理の開始が操作部41を介して指示されると、
図5に示す動作を実行する。
【0049】
図5は、印刷データを生成する場合の印刷データ生成装置40の動作のフローチャートである。
【0050】
図5に示すように、印刷データ生成部45aは、印刷データを生成するための印刷データ生成画面50(
図6参照。)を表示部42に表示する(S101)。
【0051】
図6は、印刷データ生成画面50の一例を示す図である。
【0052】
図6に示すように、印刷データ生成画面50は、通常印刷用画像の情報を表示する通常印刷用画像情報表示部51を含んでいる。
【0053】
印刷データ生成画面50は、積層用画像の情報を表示する積層用画像情報表示部52を含むことが可能である。印刷データ生成画面50は、積層用画像情報表示部52以外にも、積層用画像情報表示部52と同様の構成の積層用画像情報表示部を少なくとも1つ含むことが可能である。
【0054】
印刷データ生成画面50は、積層用画像を追加するための積層用画像追加ボタン53と、印刷データの生成を終了するためのキャンセルボタン54と、印刷データを印刷装置20に送信するための印刷実行ボタン55とを含んでいる。
【0055】
通常印刷用画像情報表示部51は、通常印刷用画像のプレビューを示すための通常印刷用画像プレビュー部51aと、通常印刷用画像および積層用画像のうち、通常印刷用画像の印刷の順位を上昇させるための印刷順上昇ボタン51bと、通常印刷用画像および積層用画像のうち、通常印刷用画像の印刷の順位を下降させるための印刷順下降ボタン51cとを含んでいる。
【0056】
積層用画像情報表示部52は、積層用画像情報表示部52の積層用画像において特定色で塗り潰される特定領域が選択されるための特定領域選択部52aと、積層用画像のプレビューを示すための積層用画像プレビュー部52bと、通常印刷用画像および積層用画像のうち、積層用画像情報表示部52の表示の対象の積層用画像の印刷の順位を上昇させるための印刷順上昇ボタン52cと、通常印刷用画像および積層用画像のうち、積層用画像情報表示部52の表示の対象の積層用画像の印刷の順位を下降させるための印刷順下降ボタン52dと、積層用画像情報表示部52の表示の対象の積層用画像を削除するための積層用画像削除ボタン52eとを含んでいる。
【0057】
以下、特定色が白色である場合について説明する。しかしながら、特定色は、白色以外の色でも良い。
【0058】
特定領域選択部52aは、表示されているいずれか1つの特定領域のみがラジオボタンによって選択可能である。特定領域選択部52aにおいて選択可能な特定領域としては、通常印刷用画像の全体の矩形の領域を示す「画像全体」と、通常印刷用画像における印刷対象領域、すなわち、特定色以外の色が付された画素の領域を示す「有効画素」と、画像ファイルに示す元画像においてオブジェクトが存在する領域を示す「オブジェクト」とが存在する。
【0059】
印刷データ生成部45aは、積層用画像追加ボタン53が押されることによって、印刷データ生成画面50に積層用画像情報表示部を追加する。印刷データ生成部45aは、積層用画像情報表示部の積層用画像削除ボタンが押されることによって、この積層用画像情報表示部を印刷データ生成画面50から削除する。
【0060】
印刷データ生成部45aは、通常印刷用画像情報表示部51と、積層用画像情報表示部とを、それぞれの表示の対象の画像の印刷の順位が前のものほど、印刷データ生成画面50において上側に配置する。
【0061】
印刷データ生成部45aは、画像ファイルに示される元画像が
図13(a)に示す元画像91である場合に、
図13(b)に示す通常印刷用画像92を生成する。
【0062】
図7は、積層用画像を生成する場合の印刷データ生成装置40の動作のフローチャートである。
【0063】
図7に示すように、印刷データ生成部45aは、選択されている特定領域を判断する(S121)。
【0064】
印刷データ生成部45aは、特定領域として「画像全体」が選択されているとS121において判断すると、画像ファイルに示される元画像の全体の矩形の領域を特定色で塗り潰した画像を積層用画像として生成して(S122)、
図7に示す動作を終了する。
【0065】
印刷データ生成部45aは、特定領域として「有効画素」が選択されているとS121において判断すると、通常印刷用画像における印刷対象領域、すなわち、画像ファイルに示される元画像において特定色以外の色が付された画素の領域を特定色で塗り潰した画像を積層用画像として生成して(S123)、
図7に示す動作を終了する。
【0066】
印刷データ生成部45aは、特定領域として「オブジェクト」が選択されているとS121において判断すると、画像ファイルに示される元画像においてオブジェクトが存在する領域を特定色で塗り潰した画像を積層用画像として生成して(S124)、
図7に示す動作を終了する。
【0067】
なお、印刷データ生成部45aは、画像ファイルに示される元画像において特定色以外の色が付された画素の領域と、画像ファイルにおいて特定色のオブジェクトが存在する領域とを特定色で塗り潰すことによって、S124において積層用画像を生成しても良い。
【0068】
印刷データ生成部45aは、画像ファイルに示される元画像が
図13(a)に示す元画像91である場合に、特定色で塗り潰す領域として「画像全体」が指定されたときに、
図13(c)に示す積層用画像93をS122において生成する。
【0069】
印刷データ生成部45aは、画像ファイルに示される元画像が
図13(a)に示す元画像91である場合に、特定色で塗り潰す領域として「有効画素」が指定されたときに、
図13(d)に示す積層用画像94をS123において生成する。
【0070】
図8は、
図13(a)に示す元画像91においてオブジェクトが存在する領域を特定色で塗り潰した積層用画像81の一例を示す図である。
【0071】
印刷データ生成部45aは、画像ファイルに示される元画像が
図13(a)に示す元画像91である場合に、特定色で塗り潰す領域として「オブジェクト」が指定されたときに、
図8に示す積層用画像81をS124において生成する。
図8には、積層用画像81の外形の矩形を示す破線81aが示されている。破線81aは、実際には印刷されない線である。積層用画像81は、
図13(a)に示す元画像91における非特定色有色領域91f(
図13(a)参照。)に対応する領域と、特定色領域91g(
図13(a)参照。)に対応する領域とを特定色で塗り潰した画像である。すなわち、積層用画像81は、元画像91における無色領域91h(
図13(a)参照。)に対応する領域に色が付されていない。
【0072】
図5に示すように、印刷データ生成部45aは、S101の処理の後、キャンセルボタン54(
図6参照。)が押されたか否かを判断する(S102)。
【0073】
印刷データ生成部45aは、キャンセルボタン54が押されたとS102において判断すると、
図5に示す動作を終了する。
【0074】
印刷データ生成部45aは、キャンセルボタン54が押されていないとS102において判断すると、印刷実行ボタン55が押されたか否かを判断する(S103)。
【0075】
印刷データ生成部45aは、印刷実行ボタン55が押されていないとS103において判断すると、S102の処理を実行する。
【0076】
印刷データ生成部45aは、印刷実行ボタン55が押されたとS103において判断すると、印刷データ生成画面50における指定に基づいて印刷データを生成する(S104)。ここで、印刷データ生成部45aは、印刷データ生成画面50に積層用画像情報表示部が含まれていない場合、通常印刷用画像情報表示部51に示される通常印刷用画像を印刷するための印刷データを生成する。一方、印刷データ生成部45aは、印刷データ生成画面50に積層用画像情報表示部が含まれている場合、通常印刷用画像情報表示部51に示される通常印刷用画像と、積層用画像情報表示部に示される積層用画像とを、印刷データ生成画面50に示される順位で印刷するための印刷データを生成する。
【0077】
印刷データ生成部45aは、S104の処理の後、S104において生成した印刷データを印刷装置20に送信して(S105)、
図5に示す動作を終了する。
【0078】
次に、印刷を実行する場合の印刷装置20の動作について説明する。
【0079】
印刷装置20の制御部32は、通信部30を介して印刷データを受信すると、印刷データに含まれる画像を、印刷データにおいて示される順位で印刷する。
【0080】
ここで、制御部32は、キャリッジ走査装置27によって主走査方向にキャリッジ23を移動させてインクジェットヘッド24によって被印刷媒体95に向けてインクを吐出し、被印刷媒体95に付着したインクに向けて光照射装置25によって光を照射することによって、主走査方向における被印刷媒体95に対する印刷を実行する。また、制御部32は、主走査方向における被印刷媒体95に対する印刷を実行すると、必要に応じて、媒体搬送装置26によって副走査方向に被印刷媒体95を搬送することによって、副走査方向における被印刷媒体95に対する印刷の位置を変更した後、再び主走査方向における被印刷媒体95に対する印刷を実行する。
【0081】
図14(a)に示す被印刷媒体95に、
図13(c)に示す積層用画像93が印刷された後、積層用画像93の上に、
図13(b)に示す通常印刷用画像92が印刷されると、
図14(b)に示す印刷物96が生成される。
【0082】
図14(a)に示す被印刷媒体95に、
図13(d)に示す積層用画像94が印刷された後、積層用画像94の上に、
図13(b)に示す通常印刷用画像92が印刷されると、
図14(c)に示す印刷物97が生成される。
【0083】
図9は、被印刷媒体95に積層用画像81、通常印刷用画像92の順に印刷した印刷物82を示す図である。
【0084】
図14(a)に示す被印刷媒体95に、
図8に示す積層用画像81が印刷された後、積層用画像81の上に、
図13(b)に示す通常印刷用画像92が印刷されると、
図9に示す印刷物82が生成される。
【0085】
図10は、画像ファイルに示される元画像の一例である元画像83を示す図である。
【0086】
図10には、元画像83の外形の矩形を示す破線83aが示されている。破線83aは、実際には印刷されない線である。
図10に示す元画像83は、特定色以外の色が付されたオブジェクト83bのみによって構成されている。すなわち、元画像83は、特定色以外の色が付された非特定色有色領域83cと、色が付されていない無色領域83dとによって構成されている。ここで、非特定色有色領域83cは、元画像83においてオブジェクト83bが存在する全ての領域である。無色領域83dは、元画像83においてオブジェクト83bが存在しない全ての領域である。
【0087】
印刷データ生成部45aは、画像ファイルに示される元画像が
図10に示す元画像83である場合に、特定色で塗り潰す領域として「画像全体」が指定されたときに、
図13(c)に示す積層用画像93をS122において生成する。
【0088】
印刷データ生成部45aは、画像ファイルに示される元画像が
図10に示す元画像83である場合に、特定色で塗り潰す領域として「有効画素」が指定されたときに、
図13(d)に示す積層用画像94をS123において生成する。
【0089】
印刷データ生成部45aは、画像ファイルに示される元画像が
図10に示す元画像83である場合に、特定色で塗り潰す領域として「オブジェクト」が指定されたときに、
図13(d)に示す積層用画像94をS124において生成する。
【0090】
以上に説明したように、印刷データ生成装置40は、画像ファイルに示される元画像において特定色以外の色が付された領域のみが印刷される通常印刷用画像と、元画像に基づいて生成された、通常印刷用画像と重なるための画像としての積層用画像とを印刷するための印刷データをS104において生成する場合に、元画像に特定色のオブジェクトが含まれるとき、積層用画像において特定色で塗り潰される特定領域として、元画像においてオブジェクトが存在する領域を示す「オブジェクト」が指定されることが可能であるので、画像ファイルの作成者が意図した印刷物を得ることができる。
【0091】
印刷データ生成装置40は、元画像においてオブジェクトが存在する領域が特定色で塗り潰される積層用画像の生成のために、積層用画像の生成のための画像がアプリケーションプログラム44aによって元画像とは別に作成される必要はなく、元画像に基づいてRIPソフトウェア44bのみによって通常印刷用画像および積層用画像の両方が生成されるので、利用者の手間を削減することができる。
【0092】
なお、特定領域選択部52aにおいて選択可能な特定領域として、画像ファイルにおいて特定色のオブジェクトが存在する領域を示す「特定色オブジェクト」が存在しても良い。
【0093】
図11は、
図13(a)に示す元画像91において特定色のオブジェクトが存在する領域を特定色で塗り潰した積層用画像84の一例を示す図である。
【0094】
印刷データ生成部45aは、画像ファイルに示される元画像が
図13(a)に示す元画像91である場合に、特定色で塗り潰す領域として「特定色オブジェクト」が指定されたときに、
図11に示す積層用画像84を生成する。
図11には、積層用画像84の外形の矩形を示す破線84aが示されている。破線84aは、実際には印刷されない線である。積層用画像84は、
図13(a)に示す元画像91における特定色領域91g(
図13(a)参照。)に対応する領域を特定色で塗り潰した画像である。すなわち、積層用画像84は、元画像91における非特定色有色領域91f(
図13(a)参照。)に対応する領域と、無色領域91h(
図13(a)参照。)に対応する領域とに色が付されていない。
【0095】
図14(a)に示す被印刷媒体95に、
図13(d)に示す積層用画像94が印刷された後、
図11に示す積層用画像84とが印刷され、その後、積層用画像94の上に、
図13(b)に示す通常印刷用画像92が印刷されると、
図9に示す印刷物82と同様の印刷物が生成される。なお、積層用画像84は、積層用画像94の印刷の前に印刷されても良いし、通常印刷用画像92の印刷の後に印刷されても良い。
【0096】
以上に説明したように、印刷データ生成装置40は、積層用画像において特定色で塗り潰される特定領域として、元画像において特定色のオブジェクトが存在する領域を示す「特定色オブジェクト」が指定されることが可能である場合、画像ファイルの作成者が意図した印刷物を得ることができる。
【0097】
図12は、フラットベッドタイプのインクジェットプリンターである場合の印刷装置20の外観斜視図である。
【0098】
印刷装置20は、本実施の形態において、プラテン21に対して被印刷媒体95を副走査方向に搬送することによって、インクジェットヘッド24に対して被印刷媒体95を副走査方向に移動させている。しかしながら、印刷装置20は、プラテン21を
図2に示すものより副走査方向に伸ばして、
図12に示すように、いわゆるフラットベッドタイプのインクジェットプリンターにして、プラテン21に対してガイドレール22およびキャリッジ23を副走査方向に移動させる機構を備えることによって、被印刷媒体95に対してインクジェットヘッド24を副走査方向に移動させても良い。
【0099】
以上においては、印刷データ生成部45aが印刷装置20の外部の印刷データ生成装置40に備えられている。しかしながら、印刷装置20が印刷データ生成部45aの機能と同様の機能を備えても良い。
【0100】
なお、印刷データ生成部45aは、彩色インクを印刷するための彩色印刷データと、画像ファイルによって示される画像データの全領域を示すオブジェクトデータとを、画像ファイルによって示される画像データに基づいて作成しても良い。そして、印刷データ生成部45aは、彩色印刷データと、オブジェクトデータとに基づいて、無彩色インクを印刷するための無彩色領域の有無を判定し、無彩色領域が有る場合、無彩色インクを印刷するための無彩色印刷データを無彩色領域に基づいて作成しても良い。なお、彩色印刷データは、印刷データのうち、通常印刷用画像を印刷するためのデータである。また、オブジェクトデータとは、オブジェクトが存在する領域を示すデータである。また、無彩色領域は、オブジェクトが存在する領域から、彩色インクを印刷するための領域を除いた領域である。
【符号の説明】
【0101】
20 印刷装置(インクジェットプリンター)
40 印刷データ生成装置(コンピューター)
44b RIPソフトウェア
44c 画像ファイル
45a 印刷データ生成部
52a 特定領域選択部
81 積層用画像
84 積層用画像
91 元画像
91b オブジェクト
91c~91e オブジェクト(特定色のオブジェクト)
91f 非特定色有色領域(元画像においてオブジェクトが存在する領域)
91g 特定色領域(元画像においてオブジェクトが存在する領域、元画像において特定色のオブジェクトが存在する領域)
92 通常印刷用画像