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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-03
(45)【発行日】2023-10-12
(54)【発明の名称】緩み検知センサ用の貼付工具
(51)【国際特許分類】
   G01L 5/00 20060101AFI20231004BHJP
   F16B 31/02 20060101ALI20231004BHJP
   B25B 33/00 20060101ALI20231004BHJP
【FI】
G01L5/00 103B
F16B31/02 Z
B25B33/00
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020017885
(22)【出願日】2020-02-05
(65)【公開番号】P2021124383
(43)【公開日】2021-08-30
【審査請求日】2022-11-24
(73)【特許権者】
【識別番号】521475989
【氏名又は名称】川崎車両株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西村 武宏
(72)【発明者】
【氏名】鴻池 史一
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 與志
(72)【発明者】
【氏名】正川 仁彦
【審査官】松山 紗希
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-078611(JP,A)
【文献】特開2007-136023(JP,A)
【文献】特開昭50-131199(JP,A)
【文献】実開昭54-036488(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 5/00ー5/28
F16B 31/02
B25B 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線周りの回転により構造物の座面に軸力を伝達する締結具の緩みを検知するために、前記締結具と前記座面とにわたって貼り付けられる緩み検知センサ用の貼付工具であって、
ユーザにより操作可能な少なくとも1つのレバーと、
底面と、内部空間を画定する周壁と、前記内部空間に連通して前記底面側に開口する締結具入口と、を有する締結具レセプタと、
前記締結具レセプタの前記周壁に設けられ、前記締結具レセプタの前記内部空間を前記締結具レセプタの外部空間に連通させ且つ前記底面側に開口する切欠と、
前記締結具の側面及び前記座面に沿う形状を有する押付具を有し、前記レバーの操作に連動して前記押付具を前記外部空間から前記切欠に進入させる第1押付機構と、を備える、緩み検知センサ用の貼付工具。
【請求項2】
第2押付機構を更に備え、
前記締結具レセプタは、可動上壁を有し、
前記第2押付機構は、前記レバーの操作に連動して前記可動上壁を前記内部空間に向けて降下させる、請求項1に記載の緩み検知センサ用の貼付工具。
【請求項3】
位置決め機構を更に備え、
前記周壁は、固定壁と、前記固定壁とは反対側に配置された可動壁と、を含み、
前記位置決め機構は、前記レバーの操作に連動して前記可動壁を前記固定壁に近づくように移動させる、請求項1又は2に記載の緩み検知センサ用の貼付工具。
【請求項4】
前記少なくとも1つのレバーは、第1レバー及び第2レバーを含み、
前記第1押付機構は、前記第1レバーの操作に連動して前記押付具を支軸周りに回転させ、前記押付具を前記外部空間から前記切欠に進入させる回動機構と、前記第1レバーの操作後の前記第2レバーの操作に連動して前記押付具を追加的に押す直動機構と、を含む、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の緩み検知センサ用の貼付工具。
【請求項5】
前記押付具は、前記第1レバーの操作状態において前記内部空間に向く第1押圧面と、前記第1面と直角に配置され且つ前記第1レバーの操作状態において前記底面と平行になる第2押圧面と、前記第1押圧面と前記第2押圧面との間に配置された中間傾斜面と、を有し、
前記直動機構は、前記押付具を前記中間傾斜面の法線方向に押す、請求項4に記載の緩み検知センサ用の貼付工具。
【請求項6】
前記第1レバー及び第2レバーは、互いに対向して配置され、
前記第1レバー及び前記第2レバーは、互いに近接する向きに操作されるように構成されている、請求項4又は5に記載の緩み検知センサ用の貼付工具。
【請求項7】
前記レバーを揺動可能に支持し、前記締結具レセプタが固定されたフレームと、
前記締結具レセプタの前記底面に配置された磁石と、を更に備え、
前記フレームは、前記締結具レセプタの前記底面よりも前記レバーの近くに配置された底面を有し、
前記フレームの前記底面は、前記締結具レセプタから離れるにつれて前記レバーに向かうように前記締結具レセプタの前記底面に対して角度をなしている、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の緩み検知センサ用の貼付工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸線周りの回転により構造物の座面に軸力を伝達する締結具の緩みを検知するために、前記締結具と前記座面とにわたって貼り付けられる緩み検知センサ用の貼付工具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、構造物の座面とボルト頭部との間の境界を跨ぐように前記座面及び前記ボルト頭部に貼り付けてボルトの緩みを検知する緩み検知センサが開示されている。緩み検知センサは、ベースシートにRFIDチップ及び電気回路が搭載されてなる。これによれば、ボルトが緩んだときに、緩み検知センサのベースシートが破断するのに伴って電気回路が断線し、ボルトの緩みを検知できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-78611号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
構造物の座面とボルト頭部の側面とが直角をなすため、緩み検知センサは屈曲した状態で慎重に貼り付けられる必要がある。しかし、そのような慎重な貼付作業は、作業者の負担が大きくなると共に、作業者の技能のバラつきによって緩み検知センサの接着が不安定になり易いという問題がある。
【0005】
そこで本発明は、締結具の側面及び座面に沿って緩み検知センサを簡単かつ正確に貼り付け可能な工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る緩み検知センサ用の貼付工具は、軸線周りの回転により構造物の座面に軸力を伝達する締結具の緩みを検知するために、前記締結具と前記座面とにわたって貼り付けられる緩み検知センサの貼付工具であって、ユーザにより操作可能な少なくとも1つのレバーと、底面と、内部空間を画定する周壁と、前記内部空間に連通して前記底面側に開口する締結具入口と、を有する締結具レセプタと、前記締結具レセプタの前記周壁に設けられ、前記締結具レセプタの前記内部空間を前記締結具レセプタの外部空間に連通させ且つ前記底面側に開口する切欠と、前記締結具の側面及び前記座面に沿う形状を有する押付具を有し、前記レバーの操作に連動して前記押付具を前記外部空間から前記切欠に進入させる第1押付機構と、を備える。
【0007】
前記構成によれば、緩み検知センサの一部を締結具入口から締結具レセプタの内部空間に配置して且つ切欠を通じて緩み検知センサの他部を締結具レセプタの外部空間に引き出した状態において、締結具レセプタに締結具を収容してレバーを操作すると、押付具によって緩み検知センサが締結具の側面及び座面に押し付けられる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、締結具の側面及び座面に沿って緩み検知センサを簡単かつ正確に貼り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、緩み検知センサ用の貼付工具の斜視図である。
図2図2は、図1に示す貼付工具のフレームを外した状態の斜視図である。
図3図3は、図2に示す貼付工具の側面図である。
図4図4は、図1に示す貼付工具の底面図である。
図5図5は、図1に示す貼付工具の側面図である。
図6図6は、図3に示す貼付工具の第1動作図である。
図7図7は、図3に示す貼付工具の第2動作図である。
図8図8は、緩み検知センサの斜視図である。
図9図9は、図3に示す貼付工具による緩み検知センサの貼り付け作業を説明する拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。なお、以下の説明で用いる方向の概念は、貼付工具10を基準とした方向を基準としており、環境に対する貼付工具10の方向は使用状況に応じて変わり得る。
【0011】
図1は、貼付工具10の斜視図である。図1に示すように、貼付工具10は、板状のフレーム11を備える。第1レバー12及び第2レバー13は、フレーム11から後方に突出している。第1レバー12は、フレーム11に固定されて左右後方に延びた第1支軸14を支点として揺動可能である。第2レバー13は、第1レバー12の上方に配置されている。第2レバー13は、フレーム11に固定されて左右方向に延びた第2支軸15を支点として揺動可能である。
【0012】
第1レバー12及び第2レバー13は、互いに上下方向に対向して配置されている。第1レバー12と第2レバー13との間には、バネ16が介在している。第1レバー12及び第2レバー13は、ユーザに把持されることで、バネ16の付勢力に抗して互いに近接する向きに操作される。フレーム11の前部には、締結具レセプタ17が固定されている。
【0013】
図2は、図1に示す貼付工具10のフレーム11を外した状態の斜視図である。図3は、図2に示す貼付工具10の側面図である。図4は、図1に示す貼付工具10の底面図である。図2乃至4に示すように、第1レバー12は、第1支軸14から後方に延びた把持部12aと、把持部12aの前部から下方に延びた突出部12bとを有する。第2レバー13は、第2支軸15から後方に延びた把持部13aと、把持部13aの前部から下方に延びた突出部13bとを有する。
【0014】
締結具レセプタ17は、周壁21及び上壁22を備える。周壁21及び上壁22は、内部空間Sを画定されている。周壁21は、底面21aを有する。締結具レセプタ17は、内部空間Sに連通して底面21a側に開口する締結具入口23を有する。締結具入口23は、例えば、下方にいくにつれて開口面積が増加するテーパ形状を有する。周壁21のうち内部空間Sの後側の部分には、切欠Cが設けられている。切欠Cは、締結具レセプタ17の内部空間Sを締結具レセプタ17の外部空間に連通させ、底面21a側に開口している。周壁21の底面21aには、磁石24が設けられている。
【0015】
貼付工具10は、位置決め機構18を備える。位置決め機構18は、固定壁25、一対の可動壁26、第1ロッド31、第2ロッド32、自在継手33及びバネ34を備える。固定壁25は、周壁21の一部をなし、内部空間Sの後側の面を構成している。一対の可動壁26は、周壁21の一部をなし、固定壁25とは反対側に配置されている。一対の可動壁26は、内部空間Sの前側の面を構成している。可動壁26は、上下方向に延びた支軸27周りに回動可能に配置されている。
【0016】
第1ロッド31は、可動壁26に接続され、締結具レセプタ17より後方に延びている。第2ロッド32は、第1ロッド31と実質的に同一直線上において第1ロッド31の後方に配置され、第1レバー12の突出部12bを挿通している。自在継手33は、第1ロッド31を第2ロッド32にフレキシブルに連結している。バネ34は、第1レバー12の突出部12bの後面と第2ロッド32の後端との間に配置されている。
【0017】
第1レバー12の揺動に連動して第1ロッド31が後方に引っ張られると、一対の可動壁26が支軸27周りに互いに近接する向きに回動し、一対の可動壁26の内部空間S側の面が固定壁25に近づく(図4参照)。その結果、固定壁25及び可動壁26の内部空間S側の各面が、平面視で多角形(例えば、六角形)に配置される。
【0018】
貼付工具10は、第1押付機構19を備える。第1押付機構19は、押付具35、支軸36、回動機構37及び直動機構38を備える。押付具35は、第1板部41、第2板部42、中間板部43及びロッド部44を有する。第1板部41は第1押圧面41aを有し、第2板部42は第2押圧面42aを有する。第1押圧面41a及び第2押圧面42aは、側面視において互いに直角に配置されている。
【0019】
中間板部43は、第1板部41を第2板部42に連結している。中間板部43は、中間傾斜面43aを有する。中間傾斜面43aは、第1押圧面41aの仮想延長面と第2押圧面42aの仮想延長面とが交差する部分を面取りするように配置されている。中間傾斜面43aは、第1板部41及び第2板部42に連なっている。ロッド部44は、中間板部43から中間傾斜面43aとは反対側に突出している。押付具35の第1板部41は、周壁21に接続されて左右方向に延びた支軸36周りに回動可能である。
【0020】
第1押付機構19は、回動機構37を備える。回動機構37は、第1レバー12の操作に連動して押付具35を支軸36周りに回転させ、押付具35を締結具レセプタ17の外部空間から締結具レセプタ17の切欠Cに進入させる。即ち、回動機構37は、押付具35を退避位置(図3)と押付位置(図6)との間で回動させる。
【0021】
具体的には、回動機構37は、第1揺動部材45、第2揺動部材46、第3揺動部材47及び支軸48を備える。第1揺動部材45は、第1レバー12の近傍から前後方向に延びている。第1揺動部材45の後部は、第1レバー12に接続されている。
【0022】
第2揺動部材46は、支軸48に回動自在に支持されている。支軸48は、締結具レセプタ17の上方において左右方向に延び、フレーム11に固定されている。第2揺動部材46の上部は、第1揺動部材45の前部に回動自在に接続されている。第2揺動部材46の前部には、第3揺動部材47の前部に回動自在に接続されている。第3揺動部材47の後部は、押付具35の第1板部41に回動自在に接続されている。
【0023】
第1押付機構19は、直動機構38を備える。直動機構38は、固定台51、プッシャー52及びバネ53を備える。固定台51は、押付位置にある押付具35(図6)のロッド部44の端面の近傍に配置され、フレーム11に固定されている。プッシャー52は、押付位置にある押付具35(図6)のロッド部44と同一直線状上に配置されている。プッシャー52は、ロッド部44の延在方向に延びており、固定台51に前記延在方向に変位可能に支持されている。プッシャー52は、軸部52aと、軸部52aの前端に設けられた前端部52bと、軸部52bの後端に設けられた後端部52cと、を有する。前端部52b及び後端部52cの各々は、軸部52aよりも軸直角方向に大きい。プッシャー52の前端部52bは、固定台51の前方に位置し、プッシャー52の後端部52cは固定台51から離れた後方に位置する。
【0024】
バネ53は、プッシャー52の軸部52aに外嵌され、固定台51に対してプッシャー52の後端部52cを後方に付勢する。バネ53によるプッシャー52の後方への移動は、プッシャー52の前端部52bが固定台51の前面に干渉することで停止する。第2レバー13が操作されると、第2レバー13の突出部13bがプッシャー52の後端部52cに当たり、プッシャー52がバネ53に抗して前方に動かされ、プッシャー52の前端部52bが押付位置にある押付具35(図6)のロッド部44の端面を押す。
【0025】
貼付工具10は、第2押付機構20を備える。第2押付機構20は、可動上壁28、第2揺動部材46のカム面46a、及びカムフォロア55を備える。可動上壁28は、上壁22の上下方向に貫通した穴Hに上下移動可能に収容されている。可動上壁28は、バネで上方に付勢されており、下方に向けて押されることで内部空間Sに向けて降下する。第2揺動部材46の下面には、カム面46aが形成されている。可動上壁28の上部には、カム面46aに対向するカムフォロア55が設けられている。第1レバー12が操作されると、第2揺動部材46が揺動することでカム面46aがカムフォロア55を下方に押し、可動上壁28が内部空間Sに向けて降下する。
【0026】
図5は、図1に示す貼付工具10の側面図である。図5に示すように、フレーム11の底面は、第1底面11a及び第2底面11bを有する。第1底面11aは、締結具レセプタ17の側方に位置し、締結具レセプタ17の底面21aと面一である。第2底面11bは、第1底面11aの後側に連なり、締結具レセプタ17の底面21aよりも第1レバー12の近くに配置される。フレーム11の第2底面11bは、締結具レセプタ17から後方に離れるにつれて第1レバー12に向かうように、締結具レセプタ17の底面21a及び第1底面11aに対して角度をなしている。例えば、底面21a及び第1底面11aに対して第2底面11bがなす角度は、例えば、180°より小さくて170°より大きい。
【0027】
図6は、図3に示す貼付工具10の第1動作図である。図6に示すように、ユーザが第1レバー12を上方に操作すると、位置決め機構18、第1押付機構19の回動機構37、及び第2押付機構20が動作する。位置決め機構18に関し、第1レバー12の操作による突出部12bの後方移動が、バネ34を介して第2ロッド32に伝達され、第1ロッド31が後方に移動し、可動壁26が固定壁25に近づくように移動する。
【0028】
第1押付機構19の回動機構37に関し、第1レバー12の操作により、第1揺動部材45が前方に移動し、第2揺動部材46が支軸48周りに回動し、第3揺動部材47が後方に移動する。それに伴い、押付具35が支軸36周りに回動し、押付具35が締結具レセプタ17の切欠Cに進入する。この状態では、押付具35は、第1押圧面41aが締結具レセプタ17の内部空間Sに向き且つ第2押圧面42aが締結具レセプタ17の底面21aと平行な姿勢になる。即ち、この状態では、押付具35の第2押圧面42aが締結具レセプタ17の底面21aと面一になり、押付具35の第1押圧面41aが締結具レセプタ17の底面21aに対して垂直になる。
【0029】
第2押付機構20に関し、第2揺動部材46が支軸48周りに回動する際に、カム面46aがカムフォロア55に沿って移動する。カム面46aによって下方に押されたカムフォロア55が可動上壁28を降下させ、可動上壁28が内部空間Sに向けて進出する。
【0030】
図7は、図3に示す貼付工具10の第2動作図である。図7に示すように、ユーザが第1レバー12の操作の後に第2レバー13を下方に操作すると、第1押付機構19の直動機構38が動作する。具体的には、第2レバー13の突出部13bが受圧体54に当たってプッシャー52が前方に移動し、プッシャー52の前端部52bが押付具35のロッド部44の端面を押し、その押圧力が押付具35を中間傾斜面43aの法線方向に押す。
【0031】
図8は、緩み検知センサ2の斜視図である。図8に示すように、緩み検知センサ2は、基部2aと、基部2aから突出した突出部2bを有するシート状センサである。緩み検知センサ2の基部2aの裏面には、絶縁材料(例えば、非導電性樹脂)からなる絶縁スペーサ3が接合されている。なお、基部2aが貼り付けられる回転締結具が絶縁材料である場合には、絶縁スペーサ3は無くてもよい。緩み検知センサ2は、ベースシート4、検知回路5、RFIDチップ6及びアンテナ回路7を備える。
【0032】
ベースシート4のうち絶縁スペーサ3に対向する面を裏面とし、その反対側を表面とする。ベースシート4は、絶縁材料(例えば、非導電性樹脂)からなる。ベースシート4の裏面には、接着剤が設けられている。
【0033】
検知回路5は、ベースシート4の表面に設けられている。検知回路5は、RFIDチップ6と共に閉回路を形成している。即ち、検知回路5の両端がRFIDチップ6に電気的に接続されている。検知回路5は、基部2aから突出部2bにわたって設けられている。検知回路5は、突出部2bのうち構造物1の座面1a(図9)に貼り付けられる部分に配置されている。
【0034】
RFIDチップ6は、電源が不要なパッシブRDIDタグのチップである。RFIDチップ6は、検知回路5が断線すると自己の検知情報が書き換えられるように構成されている。即ち、RFIDチップ6は、自己のID情報と、自己に接続された検知回路5が断線されているか否かを示す検知情報とを記憶している。例えば、RFIDチップ6は、検知回路5が断線している状態では検知情報として「0」を記憶し、検知回路5が断線していない状態では検知情報として「1」を記憶する。RFIDチップ6は、基部2aに設けられている。
【0035】
アンテナ回路7は、RFIDチップ6に電気的に接続されている。RFIDチップ6は、アンテナ回路7を介して受信した信号に基づいて起電し、アンテナ回路7を介してID情報及び検知情報を外部に無線送信する。アンテナ回路7は、基部2aに設けられている。なお、緩み検知センサ2は、検知回路5、RFIDチップ6及びアンテナ回路7を覆うようにベースシート4に積層されるトップシートを備えるが、トップシートは無くてもよい。
【0036】
図9は、図3に示す貼付工具10による緩み検知センサ2の貼り付け作業を説明する拡大図である。図9に示すように、構造物1には、軸線X周りに回転して構造物1の座面1aに軸力を伝達するボルトBが締結されている。ボルトBは、外周面に雄ネジが形成された軸部Bbと、軸部Bbの端部に設けられた頭部Ba(以下、ボルト頭部と称する)とを有する。本実施形態では、ボルト頭部Baと座面1aとの間にワッシャWが挟まれているが、ワッシャWは無くてもよい。
【0037】
緩み検知センサ2は、ボルトBの緩みを検知するために、ボルト頭部Baと座面1aとに直接的又は間接的に固定される。具体的には、緩み検知センサ2の基部2aが、ボルト頭部Baの上面に固定(例えば、接着)された絶縁スペーサ3に接着され、緩み検知センサ2の突出部2bが、ボルト頭部Baの側面と構造物1の座面1aとに接着される。
【0038】
緩み検知センサ2は、絶縁スペーサ3(又はボルト頭部Ba)と座面1aとに跨って固定されるので、ボルトBが所定角度を超えて緩むと、緩み検知センサ2のうち絶縁スペーサ3(又はボルト頭部Ba)に固定された部分と、緩み検知センサ2のうち座面1aに固定された部分との間に相対変位が生じる。そうすると、緩み検知センサ2が歪んでベースシート4が破断し、検知回路5が断線する。検知回路5が断線すると、RFIDチップ6の検知情報が「1」から「0」に書き換えられる。この状態で、リーダがアンテナ回路7を介してRFIDチップ6の情報を無線で読み取ることで、ボルトBに所定角度を超えた緩みが発生したか否かを検知できる。なお、回転締結具は、ボルトB以外のもの(例えば、ナット)でもよい。
【0039】
このような緩み検知センサ2の貼り付けは、貼付工具10を用いて実現される。以下、図6、7及び9を参照しながら、緩み検知センサ2の貼付作業を説明する。先ず、ユーザは、締結具入口23を介して緩み検知センサ2の基部2aを締結具レセプタ17の内部空間Sに配置し、緩み検知センサ2の突出部2bを切欠Cに挿通させる。緩み検知センサ2を貼付工具10にセットする。
【0040】
その状態で、ボルト頭部Baが内部空間Sに配置されるように締結具レセプタ17をボルト頭部Baに被せ、締結具レセプタ17の底面21aを座面1aに設置する。その際、緩み検知センサ2の基部2aの裏面に設けられた絶縁スペーサ3が、接着剤を介してボルト頭部Baの上面に載せられる。なお、貼付工具10は、金属製の座面1aに磁石24(図4)が引っ付くことによって、磁石24の磁力の限度内で座面1aに対して位置決めされる。
【0041】
次いで、ユーザが第1レバー12を上方に操作すると、可動壁26が固定壁25に近づくように移動することで、ボルト頭部Baの側面が固定壁25及び可動壁26によって保持され、ボルト頭部Baと貼付工具10との間の位置関係が正確に決定される。それと共に、可動上壁28が降下し、緩み検知センサ2の基部2a及び絶縁スペーサ3が可動上壁28によってボルト頭部Baに向けて押し付けられる。更にそれと共に、押付具35が回動し、押付具35によって緩み検知センサ2の突出部2bがボルト頭部Baの側面と構造物1の座面1aとに向けて押し付けられる。
【0042】
最後に、ユーザが第2レバー13を下方に操作すると、プッシャー52が押付具35のロッド部44を押す。そうすると、第1押圧面41aによって緩み検知センサ2の突出部2bの一部がボルト頭部Baの側面に追加的に押し付けられ、かつ、第2押圧面42aによって緩み検知センサ2の突出部2bの他部が構造物1の座面1aに追加的に押し付けられる。
【0043】
貼付工具10を座面1aから離す際には、フレーム11の第2底面11bが座面1aに着地するようにユーザが貼付工具10を後傾させることで、梃子の原理によって、締結具レセプタ17の磁石24が座面1aから離される。
【0044】
以上に説明した構成によれば、緩み検知センサ2の基部2aを締結具入口23から締結具レセプタ17の内部空間Sに配置して且つ切欠Cを通じて緩み検知センサ2の突出部2bを締結具レセプタ17の外部空間に引き出した状態において、締結具レセプタ17にボルト頭部Baを収容して第1レバー12を操作すると、第1押付機構19の回動機構37によって押付具35が回動し、押付具35によって緩み検知センサ2がボルト頭部Baの側面及び構造物1の座面1aに押し付けられる。よって、ボルト頭部Baの側面及び構造物1の座面1aに沿って緩み検知センサ2を簡単かつ正確に貼り付けることができる。
【0045】
また、第1レバー12の操作に連動して、第2押付機構20が可動上壁28を内部空間Sに向けて降下させるので、可動上壁28によって緩み検知センサ2の基部2a及び絶縁スペーサ3がボルト頭部Baに押し付けられる。よって、ボルト頭部Baの上面に対して基部2a及び絶縁スペーサ3を良好に密着させることができる。
【0046】
また、第1レバー12の操作前は、可動壁26が固定壁25から離れていて内部空間Sが大きいため、締結具レセプタ17へのボルト頭部Baの収容を容易に行うことができる。そして、締結具レセプタ17に収容されたボルト頭部Baは、第1レバー12の操作に連動して固定壁25及び可動壁26によって挟み込まれて所定の位置に位置決めされるので、ボルト頭部Baに対して緩み検知センサ2を正確に貼り付けることができる。
【0047】
また、第1レバー12の操作に連動する回動機構37によって、押付具35が緩み検知センサ2をボルト頭部Baの側面及び座面1aに押し付けた後に、第2レバー13の操作に連動する直動機構38によって押付具35が更にボルト頭部Baの側面及び座面1aに押し付けられる。よって、ボルト頭部Baの側面及び座面1aに沿って緩み検知センサ2を簡単かつ強固に貼り付けることができる。
【0048】
また、直動機構38は、押付具35を中間傾斜面43aの法線方向に押すので、直動機構38による追加押付力の分力が、第1押圧面41a及び第2押圧面42aの法線方向に作用する。よって、ボルト頭部Baの側面に向けた追加押付力と座面1aに向けた追加押付力との両方を簡素な構成で実現できる。
【0049】
また、第1レバー12及び第2レバー13は、互いに近接する向きに操作されるので、ユーザが第1レバー12及び第2レバー13を片手で把持して操作でき、作業性を向上させることができる。
【0050】
また、締結具レセプタ17の底面21aに磁石24が配置されているため、磁石24によって締結具レセプタ17が座面1aに安定的に設置され、緩み検知センサ2の貼付作業を容易に行うことができる。また、フレーム11の第2底面11bは、締結具レセプタ17から離れるにつれて第1レバー12に向かうように締結具レセプタ17の底面21aに対して角度をなしているので、緩み検知センサ2の貼付後は、フレーム11の第2底面11bを座面1aに着地させるように貼付工具10を操作することで、梃子の原理で容易に磁石24を座面1aから離すことができる。
【符号の説明】
【0051】
1 構造物
1a 座面
2 緩み検知センサ
10 貼付工具
11 フレーム
11b 第2底面
12 第1レバー
13 第2レバー
17 締結具レセプタ
18 位置決め機構
19 第1押付機構
20 第2押付機構
21 周壁
21a 底面
23 締結具入口
24 磁石
25 固定壁
26 可動壁
28 可動上壁
35 押付具
36 支軸
37 回動機構
38 直動機構
41a 第1押圧面
42a 第2押圧面
43a 中間傾斜面
B ボルト(回転締結具)
C 切欠
S 内部空間
X 軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9