(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-03
(45)【発行日】2023-10-12
(54)【発明の名称】ツール位置検出装置及び該装置を備えたロボット
(51)【国際特許分類】
G01B 11/00 20060101AFI20231004BHJP
【FI】
G01B11/00 A
(21)【出願番号】P 2020027616
(22)【出願日】2020-02-20
【審査請求日】2023-01-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000002244
【氏名又は名称】株式会社ジャノメ
(74)【代理人】
【識別番号】100156867
【氏名又は名称】上村 欣浩
(74)【代理人】
【識別番号】100143786
【氏名又は名称】根岸 宏子
(72)【発明者】
【氏名】釜井 善弘
(72)【発明者】
【氏名】真船 潤
【審査官】信田 昌男
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-206120(JP,A)
【文献】特開2003-145004(JP,A)
【文献】特開2007-057335(JP,A)
【文献】特開2001-280930(JP,A)
【文献】特開2007-017202(JP,A)
【文献】特開平07-286826(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00-11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークに対しツールを相対移動させ作業を行うロボットのツール位置検出装置において、
発光部と受光部とを設けた光センサを備える検出部と、
前記発光部から前記受光部への検出光の光軸方向に対して交差する方向
に沿う軸を中心として前記検出部を回転させる回転部と、を備え、
前記回転部の回転に伴う前記検出光による走査エリアで前記ツールの先端部の位置を検出するツール位置検出装置。
【請求項2】
前記走査エリアにおける第一位置に前記ツールの先端部があるときに当該先端部が前記光センサで検出される時間である第一検出時間と、当該走査エリアにおける第二位置に当該ツールの先端部があるときに当該先端部が当該光センサで検出される時間である第二検出時間と、に基づいて前記ツールの先端部の位置を検出する請求項1に記載のツール位置検出装置。
【請求項3】
前記回転部を回転させて前記走査エリア内における前記ツールの先端部の位置を検出する位置検出モードと、
前記回転部を回転させつつ前記ツールを前記走査エリアに対して交差する方向に移動させることによって前記ツールの傾きを検出する傾き検出モードと、に切り替え可能な請求項1又は2に記載のツール位置検出装置。
【請求項4】
前記回転部を回転させて前記走査エリア内における前記ツールの先端部の有無を検出する回転検出モードと、
前記回転部の回転を停止させ、前記検出光を横切る方向に前記ツールの先端部を移動させることによって当該先端部の位置を検出する回転停止検出モードと、に切り替え可能な請求項1~3の何れか一項に記載のツール位置検出装置。
【請求項5】
前記回転部を第一回転速度で回転させて前記走査エリア内における前記ツールの先端部の有無を検出する第一回転速度モードと、
前記回転部を前記第一回転速度よりも遅い第二回転速度で回転させて前記走査エリア内における前記ツールの先端部の位置を検出する第二回転速度モードと、に切り替え可能な請求項1~4の何れか一項に記載のツール位置検出装置。
【請求項6】
請求項1~5の何れか一項に記載のツール位置検出装置を備えたことを特徴とするロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークに対しツールを相対移動させ作業を行うロボットのツール位置検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ワークに対しツールを相対移動させ作業を行うロボットにおいては、ツールの実際の位置(ツールの座標情報)を検出してロボットに取り込み、ロボットに記憶させているツールの座標情報を実際の座標情報で補正する、所謂ツール位置検出・補正作業(キャリブレーション)が必要となる。
【0003】
このような産業用ロボットにおいて、例えばワークに対して塗布剤を塗布する塗布ロボットでは、多くの場合、先端にノズルを設けたシリンジが使用され、シリンジに収容した塗布剤が減ると、作業性を考慮して、塗布剤が充填されたシリンジ自体を交換することが一般的である。シリンジを交換すると、シリンジの製造上の誤差や取り付け誤差等に起因して、ノズルの先端部の位置にわずかなずれが発生することがあり、その結果、ワークに対して狙いとする位置に塗布剤を塗布することができなくなる。このような不具合を防止するべく、従来、ノズルの位置を検出し、その検出結果に基づいて記憶されている塗布パターンを補正する技術が種々提案されている。
【0004】
例えば特許文献1では、塗布ロボットにおいて、光軸が交差するように配置された2個の光センサとエリアセンサの3つのセンサを備えたノズル位置検出装置を用いることによって、ノズルのX座標、Y座標、Z座標を検出し、その検出値からティーチングデータを補正する技術が提案されている。また特許文献2に記載されているように、光軸が交差するように配置された2個の光センサだけでX、Y、Z座標を検出可能な技術も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2003-145004号公報
【文献】独国特許出願公開第102007018640号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1におけるエリアセンサは、光センサを光軸が平行になるよう複数並べたものであって、光軸が交差するように配置された2個の光センサに加えて更に複数の光センサを必要としている。すなわち、位置検出装置として多数の光センサを必要としているため、装置の大型化、高コスト化、システムの複雑化につながることになる。
【0007】
一方、特許文献2の如き2個の光センサだけでX、Y、Z座標を検出する技術においては、Z軸方向のずれが分からないままX、Y座標を検出しなければならない。従って、ノズルと位置検出装置との衝突を防止するため、
図8に示すように、ノズル先端部の検出開始位置を少し高めに設定しておき、Z方向に少しずつノズルを下げながらこれをX軸方向(又はY軸方向)に往復動作(ジグザグ動作、探り動作)させなければならず、ノズルの位置検出に多大な時間を要している。
【0008】
このように、ノズル等のツールの位置を検出するためのツール位置検出装置においては、使用するセンサの数とツール位置の検出に要する時間は、トレードオフの関係にある。
【0009】
このような従来技術の問題点に鑑み、本発明は、従来のツール位置検出装置におけるトレードオフを解消し、多数のセンサを使用せずとも位置検出に要する時間を短縮することが可能なツール位置検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、ワークに対しツールを相対移動させ作業を行うロボットのツール位置検出装置において、発光部と受光部とを設けた光センサを備える検出部と、前記発光部から前記受光部への検出光の光軸方向に対して交差する方向に沿う軸を中心として前記検出部を回転させる回転部と、を備え、前記回転部の回転に伴う前記検出光による走査エリアで前記ツールの先端部の位置を検出するよう構成している。
【0011】
このようなツール位置検出装置においては、前記走査エリアにおける第一位置に前記ツールの先端部があるときに当該先端部が前記光センサで検出される時間である第一検出時間と、当該走査エリアにおける第二位置に当該ツールの先端部があるときに当該先端部が当該光センサで検出される時間である第二検出時間と、に基づいて前記ツールの先端部の位置を検出することが好ましい。
【0012】
また上記のツール位置検出装置においは、前記回転部を回転させて前記走査エリア内における前記ツールの先端部の位置を検出する位置検出モードと、前記回転部を回転させつつ前記ツールを前記走査エリアに対して交差する方向に移動させることによって前記ツールの傾きを検出する傾き検出モードと、に切り替え可能であることが好ましい。
【0013】
そして、前記回転部を回転させて前記走査エリア内における前記ツールの先端部の有無を検出する回転検出モードと、前記回転部の回転を停止させ、前記検出光を横切る方向に前記ツールの先端部を移動させることによって当該先端部の位置を検出する回転停止検出モードと、に切り替え可能であることが好ましい。
【0014】
また、前記回転部を第一回転速度で回転させて前記走査エリア内における前記ツールの先端部の有無を検出する第一回転速度モードと、前記回転部を前記第一回転速度よりも遅い第二回転速度で回転させて前記走査エリア内における前記ツールの先端部の位置を検出する第二回転速度モードと、に切り替え可能であることが好ましい。
【0015】
また本発明は、上記何れかのツール位置検出装置を備えるロボットでもある。
【発明の効果】
【0016】
本発明のツール位置検出装置によれば、1つの光センサであっても基準となるツールの位置と実際のツールの位置とのずれを検出することが可能であり、また従来のように、ツールと位置検出装置との衝突を防止するための往復動作(ジグザグ動作)を行う必要も無いため、ノズルの位置検出に要する時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明に係るツール位置検出装置の一実施形態を含んだ塗布ロボットの全体斜視図である。
【
図2】
図1に示した塗布ロボットの構成を示すブロック図である。
【
図4】ノズルのZ座標を検出する方法に関する説明図である。
【
図5】ノズルのY座標、及びX座標を検出する方法に関する説明図である。
【
図6】ノズルの傾きを検出する方法に関する説明図である。
【
図7】回転部の回転を停止させた状態でノズルの位置を検出する方法に関する説明図である。
【
図8】ノズルのZ座標を検出するための従来の方法について示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら、本発明に係るツール位置検出装置の一実施形態を含んだ塗布ロボットについて説明する。
【0019】
図1に示すように本実施形態の塗布ロボット1は、X、Y、Z軸方向に駆動する3軸ロボット2と、塗布装置3と、3軸ロボット2を制御するロボット制御装置4と、塗布装置3を制御する塗布制御装置5と、塗布ロボット1に対して操作教示を行うための教示・操作装置6と、後述するノズル13の先端部の位置を検出する際に使用されるノズル位置検出装置(ツール位置検出装置)7で構成されていて、ワーク8に塗布剤を塗布するものである。
【0020】
3軸ロボット2は、ワーク8をX軸方向に移動せるXテーブル9と、Zユニット11及び塗布装置3をY軸方向に移動させるYユニット10と、塗布装置3をZ軸方向に移動させるZユニット11とを備えている。そして塗布装置3は、塗布剤を収容するシリンジ12と、シリンジ12の先端に設けられ、シリンジ12に収容した塗布剤を吐出するノズル13とを備えている。
【0021】
図2は、塗布ロボット1の構成を示すブロック図である。
図2に示すようにロボット制御装置4は、教示・操作装置6、塗布制御装置5、ノズル位置検出装置7、3軸ロボット2と接続されている。また塗布制御装置5は、塗布装置3と接続されており、ロボット制御装置4と連携して塗布装置3を制御する。またロボット制御装置4は、プログラム・教示データ記憶部14とノズル位置情報記憶部15を備えている。プログラム・教示データ記憶部14には、教示・操作装置6を介し、塗布パターン(塗布の座標情報)や塗布速度情報や塗布量情報等の他、後述するようにノズル位置情報を検出するため、塗布装置3と検出部17とを相対移動させる検出駆動パターンといった教示データ(ティーチングデータ)が入力され、記憶される。ロボット制御装置4は、教示データに基づき、Xテーブルを駆動させるX駆動モータ及び、Yユニット10を駆動させるY駆動モータ、Zユニット11を駆動させるZ駆動モータを駆動制御することで、ワーク8とツールである塗布装置3とを相対移動させると同時に、塗布制御装置5を介し塗布装置3を制御することでワーク8に対し塗布作業を行う。そしてノズル位置情報記憶部15には、教示データとして記憶された塗布パターンを塗布する際に使用される基準となるノズル13の先端部の位置に関する情報(基準ノズル位置情報)や後述する現ノズル位置情報及びそれらから算出された補正値が記憶される。
【0022】
ノズル位置検出装置7は、ノズル13に対してXYZ方向に相対的に移動可能な場所に設けられるものであり、本実施形態ではXテーブル9に取り付けられている。
図2、
図3に示すようにノズル位置検出装置7は、光センサ16を備える検出部17と、検出部17を回転させる(本実施形態では右回りに回転させる)回転部18とを備えている。ここで光センサ16は、発光部19と受光部20が対向するように設けられ、発光部19から受光部20に向けて検出光21を出力して、受光すると電気信号を出力する受光部20の受光状況を検出することで発光部19と受光部20の間に検出光21を遮光する物体が存在するか否かを検出するものである。本実施形態では1軸の光センサ16を使用している。なお、ここで言う光軸とは、発光部19から受光部20へと照射される光(検出光21)の軌跡を表した仮想的な線を意味している。
【0023】
上述した回転部18は、本実施形態では回転部18が回転する際の中心Cが、検出光21の光軸と直角に交わっていて、且つ検出光21の中間地点に位置する(検出光21の光軸長さ(発光部19と受光部20の距離)を2×Rとする場合、回転部18の中心Cは、発光部19と受光部20から距離Rのところに位置する)ように設けられている。すなわち、回転部18によって検出部17を回転させた場合、検出光21の軌跡は、中心Cを中心として半径がRとなる円状の領域を形成する。この円状の仮想的な領域を走査エリアβと称する。なお、回転部18の中心Cと走査エリアβの中心は一致するため、以下の説明においては、走査エリアβの中心を示す際も中心Cを使うこととする。ここで回転部18は、
図2に示すようにロボット制御装置4に接続されていて、回転角度や回転速度が制御される。また検出部17もロボット制御装置4に接続されていて、検出部17が備える光センサ16による出力は、ロボット制御装置4に伝送される。また詳細については後述するが、
図4、
図5に示すように本実施形態の光センサ16は、発光部19からの検出光21を照射し、遮蔽物を検知していない場合は、受光部20が検出光21を受光し、その信号つまりOPEN信号を出力する。一方、光軸上に遮蔽物が存在すると、遮蔽物によって検出光21が遮蔽され受光部20まで到達しないため、受光部20の出力は著しく低下するかもしくはゼロとなる。この状態をClose状態と称する。この出力値の変化を検出することで、光軸上に遮蔽物が存在するかどうかを検知する。なお検出部17に用いられるセンサは、遮蔽物を検知した場合と検知していない場合で出力状態が変わるものであればよく、光センサに限らず、他にも例えば超音波センサを用いたとしても良い。
【0024】
このような構成の塗布ロボット1では、塗布パターン等の作業・加工用データを、作業者が教示・操作装置6を使用して教示データ(ティーチングデータ)としてロボット制御装置4のプログラム・教示データ記憶部14に記憶させておく。そして塗布剤を塗布するにあたっては、プログラム・教示データ記憶部14に記憶されているプログラム及び記憶されている教示データに基づいて3軸ロボット2と塗布装置3を連動して駆動させ、ワーク8に対してノズル13を相対移動させるとともに塗布装置3の吐出量を制御して、ワーク8に所定の塗布パターンの塗布を行う。
【0025】
また本実施形態の塗布ロボット1では、例えばシリンジ12を交換した場合でも、記憶した塗布パターン通りに適切に塗布が行われるように、教示データとして記憶された塗布パターンを塗布する際に使用される基準となるノズル13の先端部の位置に関する情報(基準ノズル位置情報)がノズル位置情報記憶部15に記憶されていて、実際に塗布を行うノズル13の先端部の位置に関する情報(現ノズル位置情報)を取得して基準ノズル位置情報とのずれを算出し、そのずれを補正するキャリブレーションが行われる。つまり、一般的に塗布ロボット1に塗布パターンを教示させる際、代表ワーク8と代表シリンジ12を用い、相互の位置関係を確認しながら塗布パターンを教示・記憶させる。そのため、記憶された塗布パターンは代表シリンジ12のノズル13の先端部の位置を基準として設定されている。したがって、代表シリンジ12を用い塗布パターンを記憶させた後、後述する方法で代表シリンジ12とノズル13の先端部の位置情報を検出し、その情報を基準ノズル位置情報として、ノズル位置情報記憶部15に記憶する。その後、シリンジ12を交換した後等、ノズル13の先端部の位置が変化した可能性がある場合に、同様の方法でノズル13の先端部の位置情報を検出し、その検出座標を現ノズル位置情報として先に記憶させた基準ノズル位置情報と比較することで補正値を算出し、その補正値を基に塗布パターンを補正する。
【0026】
以下、基準ノズル位置情報と現ノズル位置情報として、ノズル13の先端部のX、Y、Z座標を検出する方法について詳細に説明する。ここで、ノズル13の先端部の位置として検出するX、Y、Z座標とは、ノズル13の先端部が走査エリアβ上にあり(先端部の高さが走査エリアβの高さと同一であり)、且つその先端部が中心Cと一致する位置における3軸ロボット2のXテーブル、Yユニット、Zユニットの位置(座標)である。なお本実施形態では、Z座標、Y座標、X座標の順にノズル13の先端部の位置を検出するようにしているが、検出順序は適宜入れ替えてもよい。
【0027】
まず
図4を参照しながら、ノズル13における先端部のZ座標を検出する方法について説明する。なお、
図4(a)における上図は、ノズル13とノズル位置検出装置7との位置関係を概略的に示した図であり、下図は、光センサ16が半回転するときの時間と光センサ16の出力信号との関係を示している(
図4(b)の上図と下図も同様)。
【0028】
本実施形態ではまず、ロボット制御装置4はからの指令によって3軸ロボット2を駆動させ、
図4(a)の上図に示すように、ノズル13をノズル位置検出装置7の上方に移動させる。また回転部18を駆動させて、検出光21による走査エリアβを形成しておく。なお、この時点において回転部18は停止していてもよい(走査エリアβが形成されていなくてもよい)が、後述するようにノズル13の下降を行う時点(
図4(b)に示す時点)では、回転部18を駆動させおくこととする。ここで、
図4(a)に示すようにノズル13をノズル位置検出装置7の上方に移動させた状態では、走査エリアβには遮蔽物となるノズル13が無いため、光センサ16の出力は、
図4(a)の下図に示すように常にOPEN信号を出力する。
【0029】
次いで、Zユニット11を駆動させて、
図4(b)に示すようにノズル13を下降させる。なお、
図4(a)の時点でノズル13の先端部の位置は正確には分からないものの、シリンジ12を通常通りに交換すると、ノズル13の先端部の位置がばらつくとしてもその量は微小であって、XY方向のずれは走査エリアβの大きさよりも十分に小さい範囲に収まる。従ってノズル13を下降させても、これが検出部17に干渉することはない。
【0030】
そしてノズル13を下降させていくと、ある段階でノズル13の先端部が走査エリアβに到達する。その瞬間から光センサ16の出力は、
図4(b)に示すように所定時間Close状態となる。本実施形態では、光センサ16が半回転する時間を1サイクルとする場合、1サイクルあたりに1回、信号幅W1のClose状態となる。そして、このときのZユニット11のZ座標がノズル位置情報のZ座標として記憶される。
【0031】
次に、
図5を参照しながらノズル13の先端部のY座標、X座標を検出する方法について説明する。
図5(a)~(g)における左図は、平面視における走査エリアβと、走査エリアβと交差する高さでのノズル13の先端部との位置関係を示していて、右図は光センサ16が半回転するときの時間と光センサ16の出力信号との関係を示している。なお
図5(a)は、
図4(b)の状態を示していて、本実施形態では、ノズル13の先端部のZ座標を検出した後、引き続きそのY座標を検出する動作を行っている。
【0032】
ノズル13の先端部のY座標を検出するにあたっては、ロボット制御装置4からの指令によってYユニット10を駆動させて、ノズル13を+Y方向、又は-Y方向に移動させて走査エリアβの中心Cに近づける。例えば、
図5(a)に示す位置から
図5(b)に示す位置までノズル13を-Y方向に移動させる場合、
図5(b)に示す状態での走査エリアβの中心Cからノズル13の先端部までの距離R2は、
図5(a)に示す状態での走査エリアβの中心Cからノズル13の先端部までの距離R1よりも小さくなる。すなわち、
図5(a)の位置から
図5(b)の位置へノズル13を移動させることによって、走査エリアβの中心Cにノズル13の先端部が近づくため、中心Cまわりに回転する検出光21がノズル13によって遮光される時間は、
図5(a)での位置よりも
図5(b)での位置の方が長くなる。従って、光センサ16から出力されるClose状態の信号幅は、
図5(a)での信号幅W1に対し、
図5(b)での信号幅W2は大きくなる。換言すると、ノズル13の先端部のY座標を検出する動作を行う際、走査エリアβの中心Cとノズル13の先端部との位置関係が
図5(a)や
図5(b)の状態にあることは実際には不明であるが、光センサ16から出力されるClose状態の信号幅が、ノズル13を-Y方向に動かすことによって大きくなっているため、走査エリアβの中心Cにノズル13の先端部が近づいていることが判別できる。また、ノズル13を-Y方向に移動させることによって走査エリアβの中心Cにノズル13の先端部が近づいていることから、-Y方向に移動させる前の状態において、ノズル13の先端部は、走査エリアβにおけるY方向プラス側の領域に位置していることが判別できる。なお、
図5(a)に示す位置からノズル13を+Y方向に動かした際は、光センサ16から出力されるClose状態の信号幅は次第に小さくなる。すなわち、走査エリアβの中心Cからノズル13の先端部が遠ざかっていることが判別できるため、このような場合は、ノズル13を動かす向きを逆方向に切り替えることによって、ノズル13の先端部の位置を検出する時間を短縮することができる。
【0033】
そして
図5(b)に示す位置から
図5(c)に示す位置へ、ノズル13を更に-Y方向に移動させる場合、
図5(c)に示す状態での走査エリアβの中心Cからノズル13の先端部までの距離R3は、
図5(b)に示す状態での走査エリアβの中心Cからノズル13の先端部までの距離R2よりも大きくなる。すなわち、
図5(b)の位置から
図5(c)の位置へノズル13を移動させることによって、ノズル13の先端部は、走査エリアβの中心Cから遠ざかるため、中心Cまわりに回転する検出光21がノズル13によって遮光される時間は短くなる。従って、光センサ16から出力されるClose状態の信号幅は、
図5(b)での信号幅W2に対し、
図5(c)での信号幅W3は小さくなる。なお、本実施形態の信号幅W3は、
図5(a)に示す信号幅W1と同一である。
【0034】
そして、このようにして得られるClose状態の信号幅に基づき、ノズル13がY軸方向において走査エリアβの中心Cと一致する位置を求めることによって、ノズル13の先端部が中心Cと一致する位置でのY座標を検出する。ノズル13がY軸方向において走査エリアβの中心Cと一致する位置は、種々の方法で算出可能である。例えば、Close状態の信号幅の値が最大で且つ極大となるとき(本実施形態では信号幅W2となるとき)は、ノズル13はY軸方向において走査エリアβの中心Cに最も近づいたことになるため、ノズル13は、Y軸方向において走査エリアβの中心Cと一致する。またノズル13をY軸に沿って移動させる際に、ある位置でのClose状態の信号幅と別の位置でのClose状態の信号幅が同一となる場合(例えば
図5(a)に示した位置での信号幅W1と
図5(c)に示した位置での信号幅W3は同一である)、これらの位置の中間点は、走査エリアβの中心Cと一致する。そして、検出されたYユニット10のY座標がノズル位置情報のY座標として記憶される。
【0035】
このようにしてノズル13の先端部のY座標を検出した後は、同様の手順で、ノズル13の先端部のX座標を検出する。本実施形態では、
図5(d)~(g)に示す手順で行うこととする。なお
図5(d)に示すように、本実施形態ではノズル13がY軸方向において走査エリアβの中心Cと一致するところを開始点としているが、これに限られず、Y軸方向において走査エリアβの中心Cからずれたところを開始点としてもよい。
【0036】
ノズル13の先端部のX座標を検出するにあたっては、ロボット制御装置4からの指令によってXテーブル9を駆動させて、ノズル13を+X方向、又は-X方向に移動させて走査エリアβの中心Cに近づける。例えば、
図5(d)に示す状態から
図5(e)に示す状態までノズル13を-X方向に移動させる場合、
図5(e)に示す状態での走査エリアβの中心Cからノズル13の先端部までの距離R4は、
図5(d)に示す状態での走査エリアβの中心Cからノズル13の先端部までの距離R2よりも小さくなる。すなわち、
図5(d)の位置から
図5(e)の位置へノズル13を移動させることによって、走査エリアβの中心Cにノズル13の先端部が近づくため、中心Cまわりに回転する検出光21がノズル13によって遮光される時間は長くなる。従って、光センサ16から出力されるClose状態の信号幅は、
図5(d)での信号幅W2に対し、
図5(e)での信号幅W4は大きくなる。なお、
図5(d)に示す位置からノズル13を+X方向に動かした際は、光センサ16から出力されるClose状態の信号幅は次第に小さくなる。すなわち、走査エリアβの中心Cからノズル13の先端部が遠ざかっていることが判別できるため、先に説明したノズル13を+Y方向に動かしたときと同様に、ノズル13を動かす向きを逆方向に切り替えることによって、ノズル13の先端部の位置を検出する時間を短縮することができる。
【0037】
そしてノズル13を更に-X方向に移動させると、
図5(f)に示すようにノズル13は、走査エリアβの中心Cに差し掛かる。この状態おいては、回転部18が何れの回転位置にあっても光センサ16の検出光21はノズル13によって遮光されることになる。すなわち、この状態において光センサ16は、常にClose状態となる。なお、ノズル13を更に-X方向へ移動させても、ノズル13が検出光21を遮光している限り、光センサ16は常にClose状態となる。すなわち、光センサ16が常にClose状態となっている間のノズル13のX軸方向の移動量は、ノズル13の先端部の直径に相当するため、この移動量に基づいてノズル13の直径を算出することができる。
【0038】
そして
図5(f)に示す位置から
図5(g)に示す位置へ、ノズル13を更に-X方向に移動させる場合、
図5(g)に示す状態での走査エリアβの中心Cからノズル13の先端部までの距離R6は、
図5(f)に示す状態での走査エリアβの中心Cからノズル13の先端部までの距離R5よりも大きくなる。すなわち、
図5(f)の位置から
図5(g)に示す位置へノズル13を移動させることによって、走査エリアβの中心Cからノズル13の先端部が遠ざかるため、中心Cまわりに回転する検出光21がノズル13によって遮光される時間は短くなり、光センサ16から出力されるClose状態の信号幅は、
図5(f)での信号幅W5に対し、
図5(g)での信号幅W6は小さくなる。なお、本実施形態の信号幅W6は、
図5(a)に示す信号幅W4と同一である。
【0039】
そして、このようにして得られるClose状態の信号幅に基づき、ノズル13がX軸方向において走査エリアβの中心Cと一致する位置を求めることによって、ノズル13の先端部が中心Cと一致する位置でのX座標を検出する。例えば
図5(f)に示した光センサ16が常にClose状態になった位置からノズル13の半径分進んだ位置が、ノズル13がX軸方向において走査エリアβの中心Cと一致する位置となる。またノズル13をX軸に沿って移動させる際に、ある位置でのClose状態の信号幅と別の位置でのClose状態の信号幅が同一となる場合(例えば
図5(e)に示した位置での信号幅W4と
図5(g)に示した位置での信号幅W6は同一である)、これらの位置の中間点は、走査エリアβの中心Cと一致する。そして、検出されたXテーブル9のX座標がノズル位置情報のX座標として記憶される。
【0040】
以上がノズル位置情報の検出方法である。そして、教示データとして記憶された塗布パターンを塗布する際に使用される基準となるノズル13について、上記の手順でその先端部のX、Y、Z座標を検出し、この座標を基準ノズル位置情報としてノズル位置情報記憶部15に記憶させておく。一方、シリンジ12を交換した場合には、実際に塗布を行うノズル13の現ノズル位置情報として、上記の手順によってX、Y、Z座標を検出する。そして、基準ノズル位置情報としてのX、Y、Z座標と現ノズル位置情報としてのX、Y、Z座標とを比較した際の差分をノズル13の位置ずれ量とし、記憶された教示データをこのずれ量で補正することによって、基準のノズルと実際のノズル13とにおける位置ずれの影響が排除され、ワーク8に対して塗布剤を正確な位置に塗布することができる。
【0041】
以上のように本実施形態の塗布ロボット1は、発光部19から受光部20に向けて検出光21を出力する光センサ16を備える検出部17と、検出光21の光軸方向に対して交差する方向(上記の実施形態で中心Cは検出光21の光軸方向に対して直角に交わっていたが、交差する方向であればよい)を中心として検出部17を回転させる回転部18と、を備え、回転部18の回転に伴う検出光21による走査エリアβでノズル13の先端部の位置を検出する構成を含むものであるため、光センサ16が1個であっても、往復動作(ジグザグ動作)させずにノズル13の位置(ノズル13の先端部の位置)を検出することができる。
【0042】
つまり、本実施形態の塗布ロボット1によれば、走査エリアβにおける第一位置(上記実施形態では例えば
図5(a)に示す位置)にノズル13の先端部があるときにこの先端部が光センサ16で検出される時間である第一検出時間(上記実施形態では、光センサ16から出力されるClose状態の信号幅W1から算出可能)と、走査エリアβにおける第二位置(上記実施形態では例えば
図5(c)に示す位置)にノズル13の先端部があるときにこの先端部が光センサ16で検出される時間である第二検出時間(上記実施形態では、光センサ16から出力されるClose状態の信号幅W3から算出可能)と、に基づいて、ノズル13の先端部の位置(上記実施形態ではノズル13の先端部のY座標)を検出することができる、とも言い換えることができる。
【0043】
なお、ノズル13の先端部のX、Y、Z座標を検出する際、回転部18の回転速度は、全て同一でもよいし、各座標の特性に合わせて異なる速度としてもよい。特に、Z座標を算出する工程では、光センサ16がOPEN信号を出力するかClose状態であるか(走査エリアβにノズル13が有るか無いか)によって検出を行っており、回転部18の回転速度が検出精度に大きく影響することはない。従って、Z座標を算出する工程における回転部18の回転速度(以下、第一回転速度と称する)は可能な限り速くしておくことが好ましい。これにより、ノズル13の先端部の位置検出に要する時間を短縮することができる。一方、X座標及びY座標を算出する工程では、光センサ16の信号幅に基づいてノズル13の位置検出を行っており、この工程での回転部18の回転速度(以下、第二回転速度と称する)が速くなり過ぎると、検出分解能は低下することになる。従って、X座標及びY座標を算出する工程においては、少なくとも回転部18の第二回転速度を第一回転速度よりも遅くすることが好ましく、これにより位置検出に要する時間の短縮と検出精度の維持を両立することができる。
【0044】
このように塗布ロボット1に対して、回転部18を第一回転速度で回転させて走査エリアβ内におけるノズル13の先端部の有無を検出する第一回転速度モードと、回転部18を第一回転速度よりも遅い第二回転速度で回転させて走査エリアβ内におけるノズル13の先端部の位置を検出する第二回転速度モードと、に切り替え可能な機能を持たせてもよい。
【0045】
ところで、
図4、
図5に示した手順によって、ノズル13の先端部のX座標、Y座標、Z座標の他、ノズル13の直径を算出することが可能であるが、更に、
図6を参照しながら説明するノズル13の傾きを検出する工程を加えることによって、ノズル13の傾きに起因する塗布位置のずれを防止することも可能である。ここで、
図6(a)は
図4(b)の状態を示していて、以下の説明では、ノズル13の先端部のZ位置を検出した後、引き続きノズル13の傾きを検出する工程を実行している。
【0046】
ノズル13が傾いていない場合(ノズル13の軸方向が中心Cと平行である場合)は、ノズル13をZ軸方向に移動させても、走査エリアβと交差するノズル13の位置は変わることがないため、光センサ16の出力状態も変化することはない。一方、ノズル13が傾いている場合(ノズル13の軸方向が中心Cに対して傾いている場合)は、ノズル13をZ軸方向に移動させると、走査エリアβと交差するノズル13の位置が変わることになる。またその際、走査エリアβと交差するノズル13の位置の変化量は、ノズル13が傾く量と比例する(ノズル13をZ軸方向に移動させる量は同じでも、ノズル13の傾き量が大きいと、走査エリアβと交差するノズル13の位置の変化量は大きくなる)。ここで、
図6(a)に示す状態では、光センサ16からClose状態が信号幅W(Z1)で出力され、
図6(a)に示す状態からノズル13をΔZ下降させた
図6(b)に示す状態では、光センサ16からClose状態が信号幅W(Z2)で出力されるとする場合、ノズル13の傾き量は、((W(Z1)-W(Z2))/ΔZ)で表すことができる。このようにしてノズル13の傾き量を検出する工程を設けることによって、例えばノズル13の先端部のZ位置を検出した後、引き続きノズル13の傾きを検出する工程を実行し、検出したノズル13の傾き量が規定した範囲に収まっていれば次の工程を実行する一方、規定した範囲から外れていれば次の工程は実行せずにエラー表示を行うことで、ノズル13の傾きに起因する塗布位置のずれを防止することができる。
【0047】
このように塗布ロボット1に対して、回転部18を回転させて走査エリアβ内におけるノズル13の先端部の位置を検出する位置検出モードと、回転部18を回転させつつノズル13を走査エリアβに対して交差する方向に移動させることによってノズル13の傾きを検出する傾き検出モードと、に切り替え可能な機能を持たせてもよい。
【0048】
なお、
図4、
図5に示した手順では、ノズル13の先端部のX座標、Y座標、Z座標を検出するにあたり、全て回転部18を回転させていたが、例えばX座標、Y座標については、回転部18を回転させずに検出することも可能である。この場合は、ノズル13の先端部のZ座標を検出した後、例えば
図7に示すように、検出光21がY軸と平行になる角度で回転部18を停止させる。そしてノズル13をX軸方向に移動させて、ノズル13の先端部が検出光21を遮光した位置に基づいてノズル13の先端部のX座標を検出することができる。その後は、検出光21がX軸と平行になる角度で回転部18を停止させ、更にノズル13をY軸方向に移動させて、ノズル13の先端部が検出光21を遮光した位置に基づいてY座標を検出することができる。この手順においても、
図8に示すようなノズル13を往復動作(ジグザグ動作)させてZ座標を求める動作は不要であるため、位置検出に要する時間を短縮することができる。
【0049】
このように塗布ロボット1に対して、回転部18を回転させて走査エリアβ内におけるノズル13の先端部の有無を検出する回転検出モードと、回転部18の回転を停止させ、検出光21を横切る方向にノズル13の先端部を移動させることによってこの先端部の位置を検出する回転停止検出モードと、に切り替え可能な機能を持たせてもよい。
【0050】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、上記の説明で特に限定しない限り、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。また、上記の実施形態における効果は、本発明から生じる効果を例示したに過ぎず、本発明による効果が上記の効果に限定されることを意味するものではない。
【0051】
例えば、回転部18の回転方向は上述した右回りに限定されず、左回りでもよい。また回転部18は360度回転させなくてもよく、回転部18を少なくとも180度回転させれば走査エリアβを形成することができる。なおこの場合は、180度で右回りと左回りを繰り返す往復半回転動作を行うものでもよい。このような往復半回転動作を行う回転部18によれば、360度回転させる場合に対してケーブルの配線等が容易になるという利点がある。
【0052】
また上記の実施形態では、回転部18が回転する際の中心Cは、検出光21の光軸と直角に交わっていていたが、検出光21の光軸に対して傾いていればよい(検出光21の光軸に対して平行でなければよい)。また中心Cは、検出光21の中間地点に位置していて、これにより走査エリアβの範囲を最大限に確保できるという利点があるが、走査エリアβの範囲を狭めても支障がなければ、回転部18が回転する際の中心Cは、検出光21の中間地点からずらしてもよい。
【0053】
また、ノズル位置検出装置7により現ノズル位置情報を取得するタイミングとして、シリンジ12を交換した時に、例えば教示・操作装置6を介し作業者によって特定の操作がなされたタイミングであっても良い。その他にも、塗布作業に伴い何らかの原因でノズル13の位置がズレたり、ノズル13が曲がったりする可能性もあるため、例えば、所定の作業サイクル毎、もしくは所定時間ごとに現ノズル位置情報の取得を自動実行する、もしくはロボットの電源が投入された時に自動実行する、さらには、位置検出実行命令(検出駆動パターン)を塗布パターンに組み入れることで、塗布作業前後もしくは最中に自動実行するように設定しても良い。
【0054】
また本発明は、上記のようなノズル13を持つ塗布ロボット1だけに適用されるものではなく、例えばはんだロボットにおけるはんだコテ先の位置検出や、切削加工ロボットにおけるドリル(エンドミルやリュータでもよい)の先端部の位置検出、ねじ締めロボットのドライバー先端部の位置検出等の各種ロボットのツール位置検出に適用することができる。
【符号の説明】
【0055】
1:塗布ロボット(ロボット)
8:ワーク
13:ノズル(ツール)
16:光センサ
17:検出部
18:回転部
19:発光部
20:受光部
21:検出光
β:走査エリア