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  • 特許-空調システム 図1
  • 特許-空調システム 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-03
(45)【発行日】2023-10-12
(54)【発明の名称】空調システム
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/80 20180101AFI20231004BHJP
   F24F 3/044 20060101ALI20231004BHJP
   F24F 11/46 20180101ALI20231004BHJP
   F24F 11/63 20180101ALI20231004BHJP
【FI】
F24F11/80
F24F3/044
F24F11/46
F24F11/63
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020045000
(22)【出願日】2020-03-16
(65)【公開番号】P2021148301
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2022-10-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000001834
【氏名又は名称】三機工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000512
【氏名又は名称】弁理士法人山田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】樋口 康博
(72)【発明者】
【氏名】菊池 雄太
【審査官】大野 明良
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-194383(JP,A)
【文献】特開2008-215679(JP,A)
【文献】特開2008-209023(JP,A)
【文献】国際公開第2019/165133(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/00-11/89
F24F 3/044
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の熱源機から熱媒を供給され、冷房時に空気を予冷する第一のコイルと、
前記第一のコイルの後段に設置され、第二の熱源機から熱媒を供給され、冷房時に空気をさらに冷却する第二のコイルと
を備えた外調機と、
前記第一のコイルの出側における空気の温度を測定する空気温度センサと、
前記第一の熱源機から前記第一のコイルへ供給される熱媒の温度を測定する熱媒温度センサと、
前記第一の熱源機から前記第一のコイルへ供給される熱媒の流量を調整する流量調整部とを備え、
前記第一の熱源機から前記第一のコイルへ供給される熱媒の温度に応じ、前記第一のコイルによる予冷目標値を設定するよう構成されたことを特徴とする空調システム。
【請求項2】
前記予冷目標値は、前記第一の熱源機から前記第一のコイルへ供給される熱媒の温度に対し一定の温度幅だけ高い値として設定されることを特徴とする請求項1に記載の空調システム。
【請求項3】
前記予冷目標値は、前記第一の熱源機から前記第一のコイルへ供給される熱媒の温度を変数とするn次関数(n=1,2,3,・・・)として設定されることを特徴とする請求項1に記載の空調システム。
【請求項4】
冷房時、前記第一の熱源機から前記第一のコイルへ供給される熱媒の温度は、前記第二の熱源機から前記第二のコイルへ供給される熱媒の温度より高く設定されることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の空調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調システムに関する。特に、外気を屋内へ導入する際の外気調和に関する省エネルギー的な空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
図1は空調システムにおける外調機(外気処理空調機)およびその周辺の構成を模式的に示している。外調機1は、外気を取り込んで所定の温度および湿度に調和し、屋内へ送り込む装置であり、ここに示した例では、塵埃を捕捉して空気Aを浄化するフィルタ2と、該フィルタ2の後段に2段にわたって設けられたコイル(第一のコイル3および第二のコイル4)と、該コイル3,4の後段に設けられたファン5を備えている。
【0003】
第一のコイル3および第二のコイル4は、熱媒が内部を流通する金属製の配管と、該配管の外面から突出するフィンと、前記配管と前記フィンの表面を空気Aが流れるように仕切る枠とを備えており、熱源機(第一の熱源機6または第二の熱源機7)から熱媒供給管(第一の熱媒供給管8または第二の熱媒供給管9)を通じてそれぞれ供給される熱媒W1,W2と、ファン5の動作によって自身の枠内を一部として外調機1内を流通する空気Aとの間で熱交換を行うようになっている。前段にあたる第一のコイル3と、後段にあたる第二のコイル4の間には空気温度センサ10が備えられ、この位置で空気Aの温度を計測するようになっている。尚、第一の熱媒供給管8及び第二の熱媒供給管9は、図では往き管しか表現していないが、第一のコイル3からも第二のコイル4からも熱交換を終えた熱媒が図示しない配管タッピングから導出され、図示しないそれぞれの還り管を介して第一の熱源機6又は第二の熱源機7に還され、熱媒自体は循環しながら熱を運んでいることはもちろんである。
【0004】
第一の熱媒供給管8の途中には熱媒温度センサ11が備えられ、第一の熱源機6から供給される熱媒W1の温度を測定するようになっている。また、第一の熱媒供給管8における熱媒温度センサ11より下流の位置には流量調整部12が設けられている。流量調整部12は、例えば二方弁であり、第一の熱媒供給管8内の流路に備えられた弁体の開度を適宜変更することにより、第一のコイル3に供給される熱媒W1の流量を操作し、第一のコイル3における熱媒W1と空気Aとの間の熱交換量を調整できるようになっている。
【0005】
同様に、第二の熱媒供給管9の途中には流量調整部13が設けられており、第二のコイル4に供給される熱媒W2の流量を操作し、第二のコイル4における熱媒W2と空気Aとの間の熱交換量を調整できるようになっている。
【0006】
空気温度センサ10、熱媒温度センサ11、流量調整部12,13は、それぞれ制御装置14に接続されている。制御装置14は、外部から運転信号を入力されたのちは外調機1の運転を自動で調整操作する装置であり、空気温度センサ10により計測される空気Aの温度を取得し、さらに熱媒温度センサ11により計測される熱媒W1の温度を取得し、また、流量調整部12,13における熱媒W1,W2の流量を自動で操作するようになっている。
【0007】
ここで、図1に示す空調システムおよび外調機1に関し、後に述べる本願発明の趣旨と直接関連しない構成要素(例えば加湿器や、ファン5の出口側に備えられるフィルタ、外気取り入れガラリやダクト、供給ダクト、あるいは屋内側の空調設備等)については適宜図示を省略している。
【0008】
尚、この種の空調システムや外調機に関連する先行技術文献としては、例えば、下記の特許文献1等がある。この特許文献1では、蒸気コイルは2段あり予熱と再熱を受け持つが、冷水コイルは1段しかない。通常の冷熱源は1系統なのでこのような配置になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2004-245538号公報
【0010】
図1に示すような外調機1について、特に中間期から夏期にかけて高温多湿な外気である日本では、第一の熱源機6及び第二の熱源機7を冷熱源とし、第一のコイル3及び第二のコイル4を冷却コイルとして使用することは、以下の点でエネルギー的に有利になる。
このような外調機1において冷房を行う場合、第一のコイル3は予冷コイル、第二のコイル4は最終冷却コイルとして使用することができる。すなわち、第一の熱源機6からは相対的に温度の高い中温の熱媒W1(例えば、10-15℃程度)を第一のコイル3に供給すると共に、第二の熱源機7からは相対的に温度の低い低温の熱媒W2(例えば、6℃程度)を第二のコイル4に供給する。そして、外気である空気Aを前段にあたる第一のコイル3にてある程度まで予冷した後、後段にあたる第二のコイル4にてさらに冷却するのである。例えば、外気を導入する室内空気条件が23℃乾球、45%相対湿度であると、その露点温度は10℃程度となるので、ここまで冷却除湿するには、温度の低い低温の熱媒W2をコイルの配管内に流さないと最終的に除湿ができない。ただ、33℃乾球温度63%相対湿度の夏期ピーク時の外気を、途中までの冷却除湿に利用するならば、中温の熱媒W1でも有効である。そして、空調の除湿以外の別用途の冷却水として熱媒を利用するには、熱媒W2の温度では熱交換器周りに凝縮水が発生する状態が良くない場合もあり、熱媒W2の利用は、空調での外気を温調して供給する空気の目標露点の最後の除湿に利用することに限られることも多い。そして、低い温度(例えば6℃)までの冷水の冷凍エネルギーは、冷凍サイクルの単位冷凍熱量当たりの圧縮機の仕事が多くなり、成績係数:COPの値が小さくエネルギー消費が多くなる。つまり、第一の熱源機6はCOPが大きくなるので、第一の熱源機6で冷凍する冷水量が多く、第2の熱源機7で冷凍する冷水量が少なければ、総合したCOPは大きくなり、省エネルギーとなる。
【0011】
図2には空気線図(T-X線図)を用いて、外調機1における空気Aの冷却操作を概念的に示している。図中に飽和水蒸気曲線をLの符号で示す。冷却前の外気は、例えば図2中における点P0の状態(乾球温度および絶対湿度)にあり、外調機1に取り込まれた空気Aは、ここから状態点P1を経由し、状態点P2の状態まで冷却される。この過程において、予冷コイルとして働く第一のコイル3は点P0から点P1までの冷却を担い、最終冷却コイルとして働く第二のコイル4は点P1から点P2までの冷却を担う。尚、状態点として説明したが、理想的には設定点P1を経由し設定点P2(室内露点温度目標値)まで冷却されることと同じ意味となる。点P0から点P2までの冷却において、空気の状態露点を下回る低温の表面があることで水蒸気が凝結して除去された空気Aは、さらに必要に応じ、図示しない加熱器により点P3まで加熱される。こうして、空気Aは点P3の絶対湿度を実現する点P2まで除湿されて、顕熱変化をすることで点P3の乾球温度と共に相対湿度をも調和されて屋内側の空調設備へ送られる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところで従来、上述の如き空調システムにおいて冷房を行う場合には、予冷コイル(第一のコイル3)によって冷却される空気Aの温度の目標値(すなわち、図1の空気温度センサ10によって測定される温度の目標値。また、図2における点P1のX座標。以下、「予冷目標値」と称する)は、フィードバック制御を例えばPID制御として行う場合の常としての目標値になると共に、当該目標値は固定値として設定されることが一般的である。一方で、第一の熱源機6から供給される熱媒W1の熱媒往き温度は、空調利用だけでない場合に他の冷却利用の都合で一定とは限らず、場合によって変動し得る。第一の熱源機6で発生させる冷熱を各種冷却対象に有効利用するため、外調機1以外の機器にも必要に応じて熱媒W1を流用する場合等があるからである。例えば、空調以外の別用途の冷却水として熱媒W1を利用するには、熱交換器周りでの凝縮水発生を気にして熱媒往き温度を高くしたりする場合もある。また逆に、季節による第一の熱源機6の冷凍サイクルの圧力変化により熱媒W1の往き温度を低下させる場合もある。
【0013】
ここで、熱媒W1の温度にかかわらず予冷目標値を一定の値とすると、熱媒W1の温度が低い場合、点P0の状態にある空気Aを点P1まで冷却するのに必要な熱媒W1の量は少なくなる。逆に、熱媒W1の温度が高い場合は、空気Aを点P0から点P1まで冷却するのに必要な熱媒W1の量は多くなる。
【0014】
一般に、熱源機において熱媒を冷却する場合、熱源機から供給される熱媒の温度が高いほど、熱源機におけるエネルギー効率は良い。つまり、図1に示す空調システムにおいては、第一の熱源機6における熱媒W1の冷却効率は、第二の熱源機7における熱媒W2の冷却効率と比較して高い。つまり、冷凍サイクルにおいて発生した冷熱量をKW換算し、圧縮機の仕事をKW換算して冷熱量を除した成績係数:COPで表現すると、第一の熱源機6におけるCOPは、第二の熱源機7におけるCOPと比較して大きくなる。したがって、熱源機6,7におけるエネルギー効率の観点からは、空気Aを点P0から点P2まで冷却するにあたり、コイル3,4による合計の冷却量のうち、予冷コイルである第一のコイル3による冷却の割合をなるべく多くすることが好ましいと言える。
【0015】
ここで、熱媒W1の温度が予冷目標値に対して低すぎると(すなわち、予冷目標値の設定が熱媒W1の温度に対して高すぎると)、点P0から点P1までの冷却に必要な熱媒W1の量は少ないので、点P0から点P2までの冷却に使用される熱媒W1と熱媒W2の量比は、熱媒W1が少なめとなってしまう。これは、熱源機6,7のエネルギー効率の点では好ましくなく、仮に熱媒W1の供給量を増やし、代わりに熱媒W2の供給量を減らすような運転をすれば、第一の熱源機6と第二の熱源機7との総合エネルギー効率がいっそう改善される。
【0016】
一方、熱源機から熱媒を供給するにあたってはポンプを利用するが、熱源のポンプ運転は、近年省エネルギーのため、負荷側の二方弁などの流量制御機構が絞られることを考慮し、全体の圧力変化などを計測し、それにより中央ポンプを変流量制御することが一般的となっている。該ポンプの消費エネルギーは、熱媒系統の圧力などに表現される二次側の要求熱量に応じて熱媒の供給量が多くなることで大きくなる。つまり、図1における第一の熱媒供給管8に設置されるポンプ(図示せず)の消費エネルギーを抑える観点からは、第一のコイル3に供給する熱媒W1の量は多すぎないことが好ましい。
【0017】
ところが、熱媒W1の温度が予冷目標値に対して高すぎると(すなわち、予冷目標値の設定が熱媒W1の温度に対して低すぎると)、空気Aを点P0から点P1まで冷却するのに多くの熱媒W1が必要となり、流量調整部12の開度が全開となって図示しないポンプの動力が増し、該ポンプによる消費エネルギーが大きくなってしまう。
【0018】
このように、上述の如き外調機1を備えた空調システムにおいては、外調機1の運転が省エネルギーの観点から必ずしも最適化されてこなかった。
【0019】
本発明は、斯かる実情に鑑み、外調機による空気の冷却を効率よく行い得る空調システムを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、第一の熱源機から熱媒を供給され、冷房時に空気を予冷する第一のコイルと、前記第一のコイルの後段に設置され、第二の熱源機から熱媒を供給され、冷房時に空気をさらに冷却する第二のコイルとを備えた外調機と、前記第一のコイルの出側における空気の温度を測定する空気温度センサと、前記第一の熱源機から前記第一のコイルへ供給される熱媒の温度を測定する熱媒温度センサと、前記第一の熱源機から前記第一のコイルへ供給される熱媒の流量を調整する流量調整部とを備え、前記第一の熱源機から前記第一のコイルへ供給される熱媒の温度に応じ、前記第一のコイルによる予冷目標値を設定するよう構成されたことを特徴とする空調システムにかかるものである。
【0021】
本発明の空調システムにおいて、前記予冷目標値は、前記第一の熱源機から前記第一のコイルへ供給される熱媒の温度に対し一定の温度幅だけ高い値として設定することができる。
【0022】
本発明の空調システムにおいて、前記予冷目標値は、前記第一の熱源機から前記第一のコイルへ供給される熱媒の温度を変数とするn次関数として設定することができる。
【0023】
本発明の空調システムにおいて、冷房時、前記第一の熱源機から前記第一のコイルへ供給される熱媒の温度は、前記第二の熱源機から前記第二のコイルへ供給される熱媒の温度より高く設定することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の空調システムによれば、外調機による空気の冷却を効率よく行い得るという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】空調システムにおける外調機周辺の構成を簡易的に示す概略図である。
図2】空調システムにおける空気冷却の操作を概念的に示す線図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。尚、本実施例の空調システムは図1に説明したものと同一の構成を想定しているため、図1を参照して説明する。また、空気冷却の操作についても図2を参照して説明する。
【0027】
外調機1は、フィルタ2と、該フィルタ2の後段に設けられた第一、第二のコイル3,4と、該コイル3,4の後段に設けられたファン5を備えている。
【0028】
外調機1内には、ファン5の動作によって空気Aが流通し、第一のコイル3および第二のコイル4では、第一、第二の熱源機6,7から第一、第二の熱媒供給管8,9を通じてそれぞれ供給される熱媒W1,W2と空気Aとの間で熱交換が行われる。冷房時には、第一のコイル3において空気Aが予冷され、その後段の第二のコイル4において空気Aがさらに冷却される。前段にあたる第一のコイル3と、後段にあたる第二のコイル4の間には空気温度センサ10が備えられており、第一のコイル3の出側における空気Aの温度を測定するようになっている。
【0029】
第一の熱媒供給管8の途中には熱媒温度センサ11が備えられ、該熱媒温度センサ11より下流の位置には流量調整部12が設けられている。また、第二の熱媒供給管9の途中には流量調整部13が設けられている。空気温度センサ10、熱媒温度センサ11、流量調整部12,13はそれぞれ制御装置14に接続されている。
【0030】
そして、本実施例の空調システムは、冷房時において、予冷コイル(第一のコイル3)による冷却の目標温度(予冷目標値)を、熱媒W1の温度計測値に基づくカスケード制御として設定値可変にし得るようにした点を特徴としている。
【0031】
すなわち、制御装置14では、基本のフィードバック制御として、空気温度センサ11の測定値と、制御装置14に入力された流量調整部12を操作器とするフィードバック系の設定値との偏差に基づいて、偏差を無くすように演算し制御信号を操作器である流量調整部12へ出力し流量調整部12の弁開度を制御するのである。この演算にPID制御を用いるのが一般的である。ここで、この第一の熱媒供給管8を流通する熱媒W1の温度を熱媒温度センサ11の測定値として把握し、この熱媒W1の計測温度に基づいて予冷目標値を演算して流量調整部12を操作器とするフィードバック系の設定値として制御装置14に入力設定し続け(カスケード制御)、空気温度センサ10における空気Aの測定温度と、新しく設定された予冷目標値との偏差に基づいて、演算した制御信号により流量調整部12の開度を調整する。予冷目標値は、熱媒W1の温度を変数とする適当な関数として設定することができる。例えば、熱媒温度センサ11の測定値に対し一定の温度幅(例えば、+2~3℃)だけ高い値を予冷目標値として設定してもよいし、一次関数や二次関数のようなn次関数(n=1,2,3,・・・)としてもよい。予冷目標値の更新は、例えば一定時間おきに熱媒温度センサ11の測定値を取得し、それに応じて予冷目標値を設定し直すことで実行すれば良い。ここで予冷目標値の設定にn次関数を用いる場合には、n次関数が、第一の熱源機6から第一のコイル3へ供給される熱媒W1の温度を変数とするものならば、それぞれの関数の条件について特に制限されることはない。
【0032】
このようにすると、熱媒W1の温度が低い場合には、それに応じた低い温度値が予冷目標値として設定される。熱媒W1の温度が低くなれば、第一のコイル3による目標冷却量が増加することになるので、予冷目標値が固定されている場合と比べ、熱媒W1の供給量が多くなる。すなわち、制御装置14では、第一の熱媒供給管8に備えられた流量調整部12の開度を大きく設定し、第一のコイル3へ熱媒W1が多く供給されるように調整する。
【0033】
また、第一のコイル3による冷却量が増加すれば、第一のコイル3から第二のコイル4へ流れ込む空気Aの温度は低くなるので、第二のコイル4での冷却に必要な熱媒W2の量は少なくなる。制御装置14は、第二のコイル4で必要とされる冷却量に合わせ、流量調整部13の開度を調整する。その結果、外調機1全体の冷却量は変わらないまま、中温の熱媒W1を使用する予冷コイル(第一のコイル3)による冷却量の割合が増え、低温の熱媒W2を使用する最終冷却コイル(第二のコイル4)による冷却量の割合が減る。熱媒W2よりも温度が高く、冷却効率の良い熱媒W1を多く使用することで、熱源機6,7におけるエネルギー効率が向上される。
【0034】
また、熱媒W1の温度が高い場合には、それに応じた高い温度値が予冷目標値として設定される。予冷目標値が高くなれば、第一のコイル3による目標冷却量が減少することになるので、予冷目標値が固定されている場合と比べ、熱媒W1の温度が高い場合における熱媒W1の供給量が少なくなる。過大な量の熱媒W1を第一のコイル3に供給しないので、第一の熱媒供給管8に備えたポンプ(図示せず)の動作に要するエネルギー消費の過剰な増大は防止される。
【0035】
このような操作は、図2において、予冷目標値すなわち点P1のX座標を、熱媒W1の温度に応じて左右(例えば、点P1aや点P1bの位置)に動かすことに相当する。熱媒W1の温度が低い時には、それに応じて点P1の位置を点P1aに設定し、中温の熱媒W1による冷却量(点P0から点P1(P1a)までのX軸方向における距離)を増やすと同時に低温の熱媒W2による冷却量(点P1(P1a)から点P2までのX軸方向における距離)を減らして、熱源機6,7における冷却効率を向上し、エネルギー消費の合計を抑える。一方、熱媒W1の温度が高い時には、それに応じて点P1の位置を点P1bに設定し、熱媒W1による冷却量を減らして熱媒W1の供給量を減らし、図示しないポンプによるエネルギー消費を抑えることができる。言い換えれば、第一のコイル3および第一の熱源機6による冷却量と、第二のコイル4および第二の熱源機7による冷却量の振り分けを最適化することにより、外気の冷却を行う上で省エネルギーを図るのである。
【0036】
尚、このような運転を行う場合、コイル3,4および熱源機6,7の能力には冗長性をもたせておくべきである。すなわち、第一のコイル3および第一の熱源機6は、変動する点P0の位置から変動する点P1の位置(例えば、点P1aの位置)まで、想定され得る空気Aの予冷による冷却量を実現できるように設計する必要があるし、第二のコイル4および第二の熱源機7は、変動する点P1の位置(例えば、点P1bの位置)から点P2の位置まで、想定され得る空気Aの最終冷却による冷却量を実現できるように設計する必要がある。
【0037】
以上のように、上記本実施例の空調システムは、第一の熱源機6から熱媒W1を供給され、冷房時に空気Aを予冷する第一のコイル3と、第一のコイル3の後段に設置され、第二の熱源機7から熱媒W2を供給され、冷房時に空気Aをさらに冷却する第二のコイル4とを備えた外調機1と、第一のコイル3の出側における空気Aの温度を測定する空気温度センサ10と、第一の熱源機6から第一のコイル3へ供給される熱媒W1の温度を測定する熱媒温度センサ11と、第一の熱源機6から第一のコイル3へ供給される熱媒W1の流量を調整する流量調整部12とを備え、第一の熱源機6から第一のコイル3へ供給される熱媒W1の温度に応じ、第一のコイル3による予冷目標値を設定するよう構成されている。このようにすれば、第一のコイル3と第二のコイル4における冷却量の振り分けを最適化することができる。
【0038】
また、本実施例の空調システムにおいて、前記予冷目標値は、第一の熱源機6から第一のコイル3へ供給される熱媒W1の温度に対し一定の温度幅だけ高い値として設定することができる。
【0039】
また、本実施例の空調システムにおいて、前記予冷目標値は、第一の熱源機6から第一のコイル3へ供給される熱媒W1の温度を変数とするn次関数(n=1,2,3,・・・)として設定することができる。
【0040】
また、本実施例の空調システムにおいて、冷房時、第一の熱源機6から第一のコイル3へ供給される熱媒W1の温度は、第二の熱源機7から第二のコイル4へ供給される熱媒W2の温度より高く設定することができる。
【0041】
したがって、上記本実施例の空調システムによれば、外調機1による空気の冷却を効率よく行い得る。
【0042】
尚、本発明の空調システムは、上述の実施例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0043】
1 外調機
3 第一のコイル
4 第二のコイル
6 第一の熱源機
7 第二の熱源機
10 空気温度センサ
11 熱媒温度センサ
12 流量調整部
A 空気
W1 熱媒
W2 熱媒
図1
図2