(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-03
(45)【発行日】2023-10-12
(54)【発明の名称】シール方法およびシール部材
(51)【国際特許分類】
E04B 1/684 20060101AFI20231004BHJP
E04G 23/02 20060101ALI20231004BHJP
F16L 5/02 20060101ALI20231004BHJP
【FI】
E04B1/684 A
E04B1/684 Z
E04G23/02 H
F16L5/02 L
F16L5/02 P
(21)【出願番号】P 2020066084
(22)【出願日】2020-04-01
【審査請求日】2022-10-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】502064438
【氏名又は名称】日東エルマテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】石川 麻子
(72)【発明者】
【氏名】漆原 慎
(72)【発明者】
【氏名】岩田 淳
(72)【発明者】
【氏名】田村 崇
【審査官】伊藤 昭治
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-210928(JP,A)
【文献】特開2020-007724(JP,A)
【文献】特開2015-224729(JP,A)
【文献】特開2018-003998(JP,A)
【文献】特開2014-077314(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/62 - 1/99
F16L 5/02
F16L 5/10
E04G 23/02
C09K 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外壁下地材の屋外側に外装材が建て込まれている既設建物の外壁に、その外壁を厚み方向に貫通する開口部を設け、その開口部に挿入される筒体と前記開口部との隙間を以下の工程を含んで封止することを特徴とするシール方法。
(1)緩衝性および水密性を有する薄板材に前記筒体の外径よりも小径の通孔が形成されてなる弾性層と、前記弾性層のウラ面に積層された粘着層と、前記粘着層のウラ面に積層された離型シートと、を備え、前記離型シートは、前記通孔と中心を共有して前記筒体の外径以上の大きさを有する内外分割切込により、前記通孔の内周縁に沿う内側剥離部と、その径外領域の外側剥離部と、に分割されており、前記内側剥離部には前記内側剥離部を剥離させるときに引っ張るための内側引剥タブが、前記通孔の内側に向けて延び出すように設けられるとともに、前記外側剥離部にも前記外側剥離部を剥離させるときに引っ張るための外側引剥タブが、前記通孔の内側に向けて延び出すように設けられているシール部材を用意する工程。
(2)前記外装材に、前記シール部材の外径よりも小径の外装開口部を形成する工程。
(3)前記外壁下地材に、前記外装開口部よりも小径で、前記筒体が挿通可能な外壁下地開口部を形成する工程。
(4)前記シール部材を屋外側から前記外装開口部内に押し入れて前記外壁下地材にあてがい、前記離型シートの外側引剥タブを前記通孔の内側から屋外側へと引っ張って前記外側剥離部を剥がし、前記弾性層の外側部分を前記外壁下地開口部の周囲に貼付する工程。
(5)前記外壁の屋内側に建て込まれている内壁材に、前記外壁下地開口部と略同径で、前記筒体が挿通可能な内壁開口部を形成する工程。
(6)前記筒体を屋内側から前記内壁開口部、前記外壁下地開口部および前記外装開口部へと挿入し、前記筒体の屋外側の端部を前記シール部材の前記通孔内に圧入する工程。
(7)前記離型シートの前記内側引剥タブを前記通孔の内側から屋外側へと引っ張って前記内側剥離部を剥がし、前記弾性層の内側部分を前記筒体の外周面に貼付する工程。
(8)前記外装開口部の内周縁と前記筒体の屋外側の端部との隙間にシーリング材を充填する工程。
【請求項2】
壁の厚み方向を貫通する開口部と、その開口部に挿入される筒体との隙間を封止するシール部材であって、
緩衝性および水密性を有する薄板材に前記筒体の外径よりも小径の通孔が形成されてなる弾性層と、前記弾性層のウラ面に積層された粘着層と、前記粘着層のウラ面に積層された離型シートと、を備え、
前記離型シートは、前記通孔と中心を共有して前記筒体の外径以上の大きさを有する内外分割切込により、前記通孔の内周縁に沿う内側剥離部と、その径外領域の外側剥離部と、に分割されており、
前記内側剥離部には前記内側剥離部を剥離させるときに引っ張るための内側引剥タブが、前記通孔の内側に向けて延び出すように設けられるとともに、
前記外側剥離部にも前記外側剥離部を剥離させるときに引っ張るための外側引剥タブが、前記通孔の内側に向けて延び出すように設けられている
ことを特徴とするシール部材。
【請求項3】
請求項2に記載されたシール部材において、
前記外側剥離部は、径方向に形成された少なくとも一か所の外側剥離用切込によって周方向に分割され、前記外側剥離用切込を挟んだ両側二か所に外側引剥タブがそれぞれ設けられている
ことを特徴とするシール部材。
【請求項4】
請求項2または3に記載されたシール部材において、
前記外側引剥タブは、離型シートの裏面に接合した帯状の引張補強テープを前記通孔の内側に向けて延長することにより形成されている
ことを特徴とするシール部材。
【請求項5】
請求項2、3または4に記載されたシール部材において、
前記外側剥離部には、互いに近接して径方向に形成された少なくとも一対の仮固定用切込によって分割される仮固定用剥離部が設けられ、
前記仮固定用剥離部には外側に向けて突出する仮固定用引剥タブが設けられている
ことを特徴とするシール部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願が開示する発明は、外壁を貫通する開口部と、その開口部内に挿入される筒体との隙間を封止するためのシール方法、および該シール方法に用いるシール部材に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の外壁を厚み方向に貫通する開口部に給排気用ダクト、エアコン用スリーブ、各種配線の保護管等、中空状の筒体を挿入するに際して、該開口部と該筒体との隙間を止水するシール部材、および該シール部材を用いて前記隙間を封止するシール方法に関する技術が、特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1に記載されたシール部材を
図8に示し、該シール部材を利用したシール方法の施工途中状態を
図9に示す。このシール部材1は、緩衝性および水密性を有する正面視円環形状の弾性層2と、弾性層2の片面(ウラ面)に積層された弾性層2と同一形状の粘着層3と、粘着層3の片面(ウラ面)に積層された離型シート4と、を備える。弾性層2および粘着層3は、その外径が壁11を貫通する円形の開口部12よりも大きく、中央に設けられる通孔(特許文献1では「貫通穴」)9の内径が開口部12に挿入される筒体(特許文献1では「ダクト」)14の外径よりも小さくなるように形成されている。
【0004】
離型シート4は、通孔9と中心を共有する正面視円形状の内外分割切込(特許文献1では「第一切込」)15によって径方向に分割されており、通孔9の内周縁に沿って設けられる内側剥離部(特許文献1では「第1剥離部」)5と、弾性層2および粘着層3の外周に沿って設けられる外側剥離部(特許文献1では「第2剥離部」)6と、から構成される。内外分割切込15の直径は、筒体14の外径と同じか、それよりもわずかに大きくなるように設定されている。
【0005】
離型シート4を粘着層3から剥離させやすくするため、内側剥離部5には、略台形状の内側引剥タブ(特許文献1では「第1引張部」)7が、通孔9の内側に向けて突出するように形成されている。また、外側剥離部6には、略台形状の外側引剥タブ(特許文献1では「第2引張部」)8が、内側引剥タブ7とは反対に外側に向けて突出するように形成されている。そして、内側引剥タブ7および外側引剥タブ8の中央を径方向に通過する直線状の第二切込16によって、内側剥離部5および外側剥離部6が、それぞれ周方向に分割されている。
【0006】
このシール部材1は、離型シート4を剥がさない状態で、その離型シート4を壁11側に向け、開口部12に挿入されている筒体14の先端(壁11から突出している遊端)に屋外側から挿着される。シール部材1の通孔9に筒体14の先端を圧入すると、弾性層2の内側部分が筒体14の外周面に沿うように曲がりながら押し拡げられ、離型シート4の内側剥離部5を介して筒体14の外周面に密着する。シール部材1を壁11まで押し込むと、弾性層2の外周縁が離型シート4の外側剥離部6を介して壁11に当接する。
【0007】
その状態から、内側引剥タブ7を筒体14の外周面に沿って屋外側に引き出すと、離型シート4の内側剥離部5が筒体14の外周面を一周りするように粘着層3から剥がれて、弾性層2の内側部分が筒体14の外周面に貼付される。また、外側引剥タブを壁11の表面に沿ってシール部材1の径外方向に引き出すと、離型シート4の外側剥離部6がシール部材1の外周を一周りするように粘着層3から剥がれて、弾性層2の外側部分が壁11に貼付される。
【0008】
このような施工手順により、シール部材1の内側部分が筒体14の外周面に切れ目なく密着されるとともに、シール部材1の外側部分が開口部12の周縁部に切れ目なく密着され、壁11と筒体14との隙間が水密的に封止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に開示されたシール方法を用いて壁11の開口部12と筒体14との隙間を封止した状態では、壁11の屋外側に筒体14の先端が突出している。この壁11が外壁である場合、外壁に筒体14を設置する工事がこの状態で完了するわけではなく、そのさらに外側にサイディングボード等の外装材(不図示)が取り付けられて、その外装材に形成した開口部内に筒体14の先端が納められ、その周囲にシーリング等の止水処理が施された後、雨水を防ぐキャップや配管カバー等が外装材に取り付けられて外壁の表面が仕上げられることになる。つまり、特許文献1に開示されたシール方法における「壁11」は、外壁を構成する最外層の外装材ではなく、外壁下地材としての構造用合板等を意味していると解される。
【0011】
建物の新築時であれば、外壁下地材(壁11)に開口部を形成して筒体14を挿入し、その筒体14と開口部12との隙間をシール部材1で封止した後、外装材を取り付けて最外層の止水処理を施す、という工程を採用することができる。したがって、前記従来のシール方法の通り、筒体14に屋外側からシール部材1を挿入し、シール部材1の離型シート4を剥がしてシール粘着層3を筒体14および外壁下地材(壁11)に密着させる、という作業を、外装材がない状態で、屋外側から不自由なく実施することができる。
【0012】
しかし、建物のリフォームの場合は、前記従来のシール部材およびシール方法を採用することが困難になる。既設の建物の外装材および外壁下地材に、それらを貫通する開口部を新たに形成し、それらの開口部に筒体を挿入して固定した状態で、外壁下地材の開口部と筒体との隙間を前記従来のシール部材で封止しようとすると、外壁下地材の屋外側にある外装材が邪魔になるからである。特に、シール部材の離型シートにおける外側剥離部を剥がして、シール部材を外壁下地材に貼付するときの手先作業が大きく制約される。外装材に形成する開口部の内径を、外壁下地材に形成する開口部の内径よりも十分に大きくすれば、前述の手先作業もしやすくはなるが、外壁の表面に過大な開口部を開設してしまうと外壁の美観が損なわれるとともに、開口部周りの止水処理も面倒になる。したがって、リフォームに際しては、外装材に形成する開口部の径をなるべく小さくして、開口部と筒体との隙間を確実に封止することが望まれる。
【0013】
本願が開示する発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、特に既設の外壁に新たな開口部を形成して筒体を取り付けるリフォーム工事に際し、外装材に形成する開口部の大きさをなるべく小さくした状態で、外壁下地材に形成した開口部と筒体との隙間を封止するのに適したシール方法と、そのシール方法を好適に実施し得るシール部材と、を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前述の目的を達成するために、本願が開示する発明は、外壁下地材の屋外側に外装材が建て込まれている既設建物の外壁に、その外壁を厚み方向に貫通する開口部を設け、その開口部に挿入される筒体と前記開口部との隙間を封止するシール方法について、以下の工程を含むことを特徴とする。
(1)緩衝性および水密性を有する薄板材に前記筒体の外径よりも小径の通孔が形成されてなる弾性層と、前記弾性層のウラ面に積層された粘着層と、前記粘着層のウラ面に積層された離型シートと、を備え、前記離型シートは、前記通孔と中心を共有して前記筒体の外径以上の大きさを有する内外分割切込により、前記通孔の内周縁に沿う内側剥離部と、その径外領域の外側剥離部と、に分割されており、前記内側剥離部には前記内側剥離部を剥離させるときに引っ張るための内側引剥タブが、前記通孔の内側に向けて延び出すように設けられるとともに、前記外側剥離部にも前記外側剥離部を剥離させるときに引っ張るための外側引剥タブが、前記通孔の内側に向けて延び出すように設けられているシール部材を用意する工程。
(2)前記外装材に、前記シール部材の外径よりも小径の外装開口部を形成する工程。
(3)前記外壁下地材に、前記外装開口部よりも小径で、前記筒体が挿通可能な外壁下地開口部を形成する工程。
(4)前記シール部材を屋外側から前記外装開口部内に押し入れて前記外壁下地材にあてがい、前記離型シートの外側引剥タブを前記通孔の内側から屋外側へと引っ張って前記外側剥離部を剥がし、前記弾性層の外側部分を前記外壁下地開口部の周囲に貼付する工程。
(5)前記外壁の屋内側に建て込まれている内壁材に、前記外壁下地開口部と略同径で、前記筒体が挿通可能な内壁開口部を形成する工程。
(6)前記筒体を屋内側から前記内壁開口部、前記外壁下地開口部および前記外装開口部へと挿入し、前記筒体の屋外側の端部を前記シール部材の前記通孔内に圧入する工程。
(7)前記離型シートの前記内側引剥タブを前記通孔の内側から屋外側へと引っ張って前記内側剥離部を剥がし、前記弾性層の内側部分を前記筒体の外周面に貼付する工程。
(8)前記外装開口部の内周縁と前記筒体の屋外側の端部との隙間にシーリング材を充填する工程。
【0015】
また、本願が開示する発明は、壁の厚み方向を貫通する開口部と、その開口部に挿入される筒体との隙間を封止するシール部材については、緩衝性および水密性を有する薄板材に前記筒体の外径よりも小径の通孔が形成されてなる弾性層と、前記弾性層のウラ面に積層された粘着層と、前記粘着層のウラ面に積層された離型シートと、を備え、前記離型シートは、前記通孔と中心を共有して前記筒体の外径以上の大きさを有する内外分割切込により、前記通孔の内周縁に沿う内側剥離部と、その径外領域の外側剥離部と、に分割されており、前記内側剥離部には前記内側剥離部を剥離させるときに引っ張るための内側引剥タブが、前記通孔の内側に向けて延び出すように設けられるとともに、前記外側剥離部にも前記外側剥離部を剥離させるときに引っ張るための外側引剥タブが、前記通孔の内側に向けて延び出すように設けられている、との基本的構成を採用する。
【0016】
さらに、本願が開示する発明は、前記外側剥離部が、径方向に形成された少なくとも一か所の外側剥離用切込によって周方向に分割され、前記外側剥離用切込を挟んだ両側二か所に外側引剥タブがそれぞれ設けられている、との付加的構成を採用する。
【0017】
前記外側引剥タブは、離型シートの裏面に接合した帯状の引張補強テープを前記通孔の内側に向けて延長することにより形成することができる。
【0018】
また、前記外側剥離部には、互いに近接して径方向に形成された少なくとも一対の仮固定用切込によって分割される仮固定用剥離部が設けられ、前記仮固定用剥離部には外側に向けて突出する仮固定用引剥タブが設けられている、との構成を採用することもできる。
【発明の効果】
【0019】
本願が開示する発明に係るシール方法は、外壁下地材の屋外側に外装材が建て込まれている既設建物の外壁に、それらを貫通する開口部を新たに形成して筒体を挿入するに際し、筒体の挿入前に、シール部材を屋外側から外装材に形成した外装開口部内に押し入れて外壁下地材にあてがい、離型シートの外側剥離部に設けた外側引剥タブを通孔の内側から屋外側へと引っ張って外側剥離部を剥がし、粘着層の外周部分を外壁下地開口部の周囲に貼付する、という工程を採用することで、外装材に形成した開口部よりも一回り大きいシール部材の外側部分を外壁下地材に対してしっかりと貼付することができる。
【0020】
さらに、こうして外壁下地材に形成した開口部の周囲にシール部材を貼付した後、筒体を屋内側から開口部に挿入してシール部材の通孔に圧入し、離型シートの内側剥離部に設けた内側引剥タブを通孔の内側から屋外側へと引っ張って内側剥離部を剥がし、弾性層の内側部分を筒体の外周面に貼付する、という工程を採用することで、外壁下地材に形成した開口部と筒体との隙間を確実に封止することができる。
【0021】
これらにより、外装材に形成する開口部の径をなるべく小さくした状態で、外装材および外壁下地材を貫通する筒体を施工することが可能になる。
【0022】
また、本願が開示する発明に係るシール部材を用いることにより、前述のシール方法を容易に、かつ精度良く実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本願が開示する発明の一実施形態に係るシール部材の(a)屋外側正面図、(b)径方向断面図、および(c)屋内側正面図である。
【
図2】
図1のシール部材を用いたシール方法の工程説明図であって、(a)は外装材に開口部を形成する工程S1を示す断面図、(b)は外壁下地材に開口部を形成する工程S2を示す断面図である。
【
図3】同じくシール方法の工程説明図であって、(a)は外壁下地材にシール部材を貼付する工程S3を示す断面図、(b)は外壁下地材に貼付したシール部材から離型シートの外側剥離部を剥離させる工程S4を示す斜視図である。
【
図4】同じくシール方法の工程説明図であって、(a)は内壁材に開口部を形成する工程S5を示す断面図、(b)は内壁材、外壁下地材、外装材に形成した開口部に屋内側から筒体を挿入する工程S6を示す断面図である。
【
図5】同じくシール方法の工程説明図であって、(a)はシール部材に筒体が圧入された状態から離型シートの内側剥離部を剥離させる工程S7を示す断面図、(b)は同工程S7の斜視図である。
【
図6】同じくシール方法の工程説明図であって、(a)は外装材に形成した開口部と筒体との間にバックアップ材を挿入してシール部材に重ねる工程S8を示す断面図、(b)はバックアップ材の上にシーリング材を充填する工程S9を示す断面図である。
【
図7】同じくシール方法の工程説明図であって、外装材に形成した開口部にウォールカバーを取り付け、内壁材に形成した開口部に室内キャップを取り付けて、筒体の施工が完了した状態(工程10)を示す断面図である。
【
図8】特許文献1に記載されたシール部材の(a)屋外側正面図、(b)径方向断面図、および(c)屋内側正面図である。
【
図9】
図8のシール部材を用いたシール方法の工程説明図であって、(a)は壁の開口部に挿入されている筒体の先端に屋外側からシール部材を挿着した状態を示す断面図、(b)は同状態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本願が開示する発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明において、
図8、
図9に示した特許文献1記載のシール部材およびシール方法と実質的に同一の構成要素には共通の符号を付す。
【0025】
また、部位・部材の位置関係や向きを説明する際には、建物の外壁を貫通する方向を屋内外方向(屋内側、屋外側)と呼び、外壁に設けられる開口部の開口面内における中心側を内側(径内方向)、外周側を外側(径外方向)と呼ぶ。また、シール部材の各層を構成する部位・部材については、該シール部材が外壁に施工されときに屋外側になるほうをオモテ面(オモテ側)、屋内側になるほうをウラ面(ウラ側)と呼び、屋内外方向の寸法を厚さと呼ぶ。
【0026】
(シール部材)
図1は、本願が開示する発明の一実施形態に係るシール部材の構成を示している。なお、(b)の径方向断面図は、厚さ方向の寸法を径方向の寸法の5倍程度に拡大して表している。
【0027】
シール部材10は、緩衝性および水密性を有する薄板材からなる正面視略円環形状の弾性層2と、弾性層2のウラ面に積層された弾性層2と同一形状をなす粘着層3と、粘着層3のウラ面に積層された離型シート40と、を備えている。各層の中央に設けられる通孔9の内径は、外壁に施工される筒体14の外形よりもわずかに小さくなるように設定されている。各層の材質、組成、密度、強度、積層方法等は、特許文献1記載のシール部材1を構成する各層と同様なので、それらの詳細な説明は省略する。また、各層の好ましい厚さも、特許文献1に記載された各層の厚さと同様である。
【0028】
離型シート40は、通孔9と中心を共有する正面視円形状の内外分割切込15によって、通孔9の内周縁に沿う内側剥離部50と、その径外領域の外側剥離部60とに、分割されている。内外分割切込15の直径は、筒体14の外径と同じか、それよりもわずかに大きくなるように設定されている。
【0029】
離型シート40の内側剥離部50は、その上部一か所を径方向に横断する内側剥離用切込51によって周方向に分割されている。その内側剥離用切込51を挟む両側には、一片ずつの内側引剥タブ52が設けられている。内側引剥タブ52は、離型シート40のウラ面に引張強度を高めるための補強シート53を貼り重ねて形成されており、通孔9の内側に向けて、通孔9の内径と略同程度の長さの舌片状に延び出している。
【0030】
離型シート40の外側剥離部60は、その下部一か所を径方向に横断する外側剥離用切込61によって周方向に分割されている。そして、外側剥離用切込61を挟んだ左右両側二か所に一片ずつの外側引剥タブ62が設けられている。外側引剥タブ62は、離型シート40のウラ面に帯状の引張補強テープ63を接合して形成されている。左右の引張補強テープ63は、互いに向かい合うように通孔9の内側に延び出して、内側引剥タブ52のオモテ側で重なり合っている。
【0031】
また、外側剥離部60の上部には、互いに近接して径方向に横断する一対の仮固定用切込64が形成されており、これらに挟まれて仮固定用剥離部65が分割されている。仮固定用剥離部65には、径外方向に向けて正面視略台形状に延出する仮固定用引剥タブ66が設けられている。
【0032】
(シール方法)
次に、前述のシール部材10を用いたシール方法について、その工程を表した
図2~
図7を参照しつつ説明する。各図に示した外壁は、屋外側から順に、サイディング等からなる外装材21、構造用合板等からなる外壁下地材11、グラスウール等からなる断熱材31、石こうボード等からなる内壁材41を重ねて構成されている。外装材21と外壁下地材11との間には厚さ数mm~20mm程度の通気層17が設けられる。また、外壁下地材11の屋外側の表面全体には透湿防水シートが貼り重ねられているが、薄いため図示は省いている。
【0033】
工程S1:まず、
図2(a)に示すように、外装材21に筒体14を取り付けるための外装開口部22を開ける。この孔開け作業は、屋外側からコアドリル等を用いて行う。外装開口部22の内径は、施工する筒体14の外径よりもひと周り大きいが、シール部材10の外径(仮固定用引剥タブ66は除く)よりはやや小さくなるように設定される。
【0034】
工程S2:続いて
図2(b)に示すように、外壁下地材11に筒体14を取り付けるための外壁下地開口部12を開ける。この孔開け作業も、屋外側からコアドリル等を用いて行う。外壁下地開口部12の内径は、筒体14の外径よりも数mm程度大きい寸法に設定される。なお、この孔開け作業で外壁下地材11に貼り重ねられた透湿防水シートが破れるのを防ぐために、孔開け位置の透湿防水シートをあらかじめカットしておき、孔開け後には必要に応じてカット箇所を防水テープ等で補修するのが好ましい。
【0035】
工程S3:
図3(a)に示すように、シール部材10を屋外側から外装開口部22内に押し入れて、外壁下地材11にあてがう。このとき、あらかじめシール部材10の仮固定用剥離部65だけを剥がしておいて、その剥がした部分を外壁下地開口部12の上方に仮固定する。
【0036】
工程S4:
図3(b)に示すように、外壁下地材11に仮固定した部分を押さえて左右の外側引剥タブ62を屋外側へ引っ張り、離型シート40の外側剥離部60を通孔9の内側へ引き剥がしながら、弾性層2の外側部分を外壁下地開口部12の周囲に貼付して圧着する。本願が開示する発明において、ここが最も特徴的な工程になる。弾性層2の外側部分を外壁下地開口部12の周囲に圧着する際に、外装材21と外壁下地材11との隙間が狭くて指先が入らない場合は、適当な押さえ具等を隙間に挿し込んで弾性層2を押さえ付ける。
【0037】
工程S5:
図4(a)に示すように、内壁材41に筒体14を挿入するための内壁開口部42を開ける。この孔開け作業は、屋内側から廻し引き鋸(ボードソー)等を用いて行う。内壁開口部42の内径は、外壁下地開口部12と同じく、筒体14の外径よりも数mm程度大きい寸法に設定される。内壁開口部42が開いたら、筒体14の挿入の邪魔にならないように断熱材31を整理しておく。なお、この工程S5は、屋外側から作業する前述の工程S1~S4よりも先に、またはそれらと並行して行うこともできる。
【0038】
工程S6:
図4(b)に示すように、筒体14を屋内側から、内壁開口部42、外壁下地開口部12および外装開口部22へと挿入する。筒体14の長さは外壁全体の壁厚と略同寸であり、筒体14の屋外側の端部が外装開口部22の屋外側の口縁部に揃う位置付近まで押し込まれる。このとき、筒体14の屋外側の端部をシール部材10の通孔9内に圧入することで、シール部材10の通孔9の周縁部が屋外側に捲れた形で筒体14の外周面に密着する。
【0039】
工程S7:
図5(a)に示すように、外壁下地材11に貼付したシール部材10の外周部分を押さえながら、左右の内側引剥タブ52を屋外側へ引っ張り、離型シート40の内側剥離部50を通孔9の内側へ引き剥がして、弾性層2の内側部分を筒体14の外周面に貼付する。
【0040】
工程S8:
図6(a)に示すように、外装開口部22の内周縁と筒体14の屋外側の端部との隙間にリング状のバックアップ材71を押し込みながら挿入して、シール部材10に重ねる。外装材21と外壁下地材11との間隔がバックアップ材71の厚さよりも小さい場合は、この工程S8は省かれてもよい。
【0041】
工程S9:
図6(b)に示すように、外装開口部22の内周縁と筒体14の屋外側の端部との隙間にシーリング材72を充填する。これにより、外装開口部22の周囲が止水される。
【0042】
工程S10:
図7に示すように、外装開口部22に雨水を防ぐためのウォールカバー73や配管化粧カバー74等を取り付ける、また、内壁開口部42にはダクトキャップ75等を取り付ける。これで、外壁に新たな開口部を設けて筒体14を設置するリフォーム工事が完了する。
【0043】
このように、本願が開示する発明に係るシール方法によれば、離型シート40の外側剥離部60を剥がすための外側引剥タブ62が、シール部材10の通孔9の内側に向けて延び出すように形成されているので、外装材21に形成される外装開口部22よりも大径のシール部材10を、外装材21の屋外側からの作業で、外装材21の裏側にある外壁下地材11の表面にしっかりと貼付することができる。また、外壁下地材11にシール部材10を貼付しておいた上で、屋内側から筒体14を挿入してシール部材10の通孔9に圧入する、という手順を採用しているので、外装材21の裏側でシール部材10と筒体14とをしっかりと密着させることができる。
【0044】
かくして、外壁下地材11の屋外側に外装材21が建て込まれた既設建物の外壁に新たな開口部を形成して筒体14を挿入するリフォーム工事を、安全かつ効率的に、かつ精度よく実施することができる。また、外装材21に形成する外装開口部22の内径を必要以上に大きくしなくて済むので、外壁の美観が損なわれるのを回避することができる。
【0045】
なお、本願が開示する発明の技術的範囲は、例示した実施の形態によって限定的に解釈されるべきものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて概念的に解釈されるべきものである。本願が開示する発明の実施に際しては、特許請求の範囲において具体的に特定していない構成要素の形状、寸法、構造、材質、数量、相対的な位置関係等を、例示形態と実質的に同程度の作用効果が得られる範囲内で適宜、改変することが可能である。
【0046】
例えば、シール部材については、内側剥離部に設ける内側引剥タブの位置や、外側剥離部に設ける外側引剥タブの位置を、例示形態とは異なる位置に変更することもできる。また、例示形態では、内側剥離部および外側剥離部がそれぞれ二か所に分割されているが、それらを三か所以上に分割して、それぞれに引剥タブを設けることもできる。あるいは、仮固定用離型部を複数か所以上に設けることもできる。それらに応じて、離型シートに設ける切込の位置も適宜選択されればよい。
【0047】
また、外壁の内部構造も例示形態に限定されるものではなく、本願が開示する発明は、貫通孔を設けることのできる様々な構造の壁体に適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本願が開示する発明は、屋内外を問わず、壁体その他の構造物を貫通する筒体の周囲を止水する際のシール方法、および該シール方法に用いるシール部材として幅広く利用することができる。
【符号の説明】
【0049】
2 弾性層
3 粘着層
9 通孔
10 シール部材
11 外壁下地材
12 外壁下地開口部
14 筒体
15 内外分割切込
17 通気層
21 外装材
22 外装開口部
31 断熱材
40 離型シート
41 内壁材
42 内壁開口部
50 内側剥離部
51 内側剥離用切込
52 内側引剥タブ
53 補強シート
60 外側剥離部
61 外側剥離用切込
62 外側引剥タブ
63 引張補強テープ
64 仮固定用切込
65 仮固定用剥離部
66 仮固定用引剥タブ
71 バックアップ材
72 シーリング材
73 ウォールカバー
74 配管化粧カバー
75 ダクトキャップ