(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-03
(45)【発行日】2023-10-12
(54)【発明の名称】配管支持用アタッチメント
(51)【国際特許分類】
F16L 3/11 20060101AFI20231004BHJP
【FI】
F16L3/11
(21)【出願番号】P 2020081735
(22)【出願日】2020-05-07
【審査請求日】2021-12-21
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】508333228
【氏名又は名称】AWJ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099704
【氏名又は名称】久寶 聡博
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 聡
【審査官】▲高▼藤 啓
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-063302(JP,A)
【文献】特開平08-296769(JP,A)
【文献】登録実用新案第3017443(JP,U)
【文献】実開昭62-188185(JP,U)
【文献】特開2000-352476(JP,A)
【文献】実開昭50-111022(JP,U)
【文献】実公昭45-011754(JP,Y1)
【文献】特開昭59-212584(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 3/00-3/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スラブ、天井、壁等の建物躯体に連結することで配管を支持するようになっている吊りバンド、立てバンド等の配管支持具と併用される配管支持用アタッチメントであって、前記配管の外周面に当接する配管側当接面が内周側に設けられ外周側に前記配管支持具の一部が嵌合する嵌合溝が
形成されてなる荷重伝達部を備え、該荷重伝達部は、前記配管の周方向に沿って該配管を取り囲むように並置される複数の荷重伝達ブロックからなり、該複数の荷重伝達ブロックは、前記配管を取り囲んだ形に連結自在となるように構成され、
前記荷重伝達部は、前記配管の材軸方向に沿って少なくとも該荷重伝達部の両端近傍まで延びる空隙を
、該空隙を取り囲む隔壁が前記配管側当接面及び前記嵌合溝と連続一体となるように前記配管の周方向に沿って離散配置することにより、前記隔壁を介して前記配管と前記配管支持具との間で荷重伝達が行われるようになっていることを特徴とする配管支持用アタッチメント。
【請求項2】
前記複数の荷重伝達ブロックを、各々が半円筒状をなし前記配管に抱き合わせる形で互いに隣接配置される2つの側方ブロックで構成するとともに該2つの側方ブロックの外周面に前記嵌合溝をそれぞれ設け、前記2つの側方ブロックを、それらの内周面が前記配管側当接面となって前記配管が挟み込まれるように、なおかつ対向端面が当接面となって互いに連結されるように構成した請求項1記載の配管支持用アタッチメント。
【請求項3】
前記複数の荷重伝達ブロックのうち、前記配管を取り囲んだ状態において互いに隣り合う2つの荷重伝達ブロックの一方に磁性体を、他方に該磁性体に磁着する金属物を配置した請求項1又は請求項2記載の配管支持用アタッチメント。
【請求項4】
スラブ、天井、壁等の建物躯体に連結することで配管を支持するようになっている吊りバンド、立てバンド等の配管支持具と併用される配管支持用アタッチメントであって、前記配管の外周面に当接する配管側当接面が内周側に設けられ外周側に前記配管支持具の一部が嵌合する嵌合溝が
形成されてなる荷重伝達部を備え、該荷重伝達部は、前記配管の周方向に沿ってヒンジを介して互いに繋がれていて該配管を取り囲むように並置できるようになっている複数の荷重伝達ブロックからなり、
前記荷重伝達部は、前記配管の材軸方向に沿って少なくとも該荷重伝達部の両端近傍まで延びる空隙を
、該空隙を取り囲む隔壁が前記配管側当接面及び前記嵌合溝と連続一体となるように前記配管の周方向に沿って離散配置することにより、前記隔壁を介して前記配管と前記配管支持具との間で荷重伝達が行われるようになっていることを特徴とする配管支持用アタッチメント。
【請求項5】
前記複数の荷重伝達ブロックを、各々が半円筒状をなし前記配管に抱き合わせる形に配置可能な2つの側方ブロックで構成するとともに該2つの側方ブロックの外周面に前記嵌合溝をそれぞれ設け、前記2つの側方ブロックを、それらの内周面が前記配管側当接面となって前記配管が挟み込まれるように、なおかつ対向端面が互いに当接面となるように構成した請求項4記載の配管支持用アタッチメント。
【請求項6】
前記各空隙の両端が閉じるように前記荷重伝達部を構成した請求項1乃至請求項5のいずれか一記載の配管支持用アタッチメント。
【請求項7】
前記各空隙をそれらの横断面形状が六角形となるように形成するとともに、該各空隙を取り囲む六角形状隔壁を前記隔壁として該六角形状隔壁を介して前記各空隙を互いに近接配置した請求項1乃至請求項6のいずれか一記載の配管支持用アタッチメント。
【請求項8】
前記複数の荷重伝達ブロックをそれぞれ熱可塑性エラストマーで形成した請求項1乃至請求項7のいずれか一記載の配管支持用アタッチメント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種配管を吊りバンドあるいは立てバンドといった形で支持する際に配管支持具とともに併用される配管支持用アタッチメントに関する。
【背景技術】
【0002】
空気調和設備工事や衛生設備工事においては、用途や目的に応じてさまざまな配管が用いられており、材質で分類すると概ね金属管と樹脂管に大別される。
【0003】
例えば、給水管には、ポリエチレンや硬質ポリ塩化ビニルで内面を被覆したライニング鋼管や、硬質ポリ塩化ビニル管、ポリエチレン管などの樹脂管が用いられており、給湯管には、ステンレス鋼管や耐熱性硬質ポリ塩化ビニルライニング鋼管が用いられている。
【0004】
これらの配管を建物内に設置するにあたっては、横走り管であれば、吊りバンドで天井や上階スラブから吊持し、立ち上がり管であれば、立てバンドで壁に固定する。
【0005】
吊りバンドや立てバンドは、帯状の鋼材を面外方向に環状に湾曲加工することでその内側に配管が挿通できるように構成された配管挿通部と、該配管挿通部の各端部から互いに対向するように放射方向にそれぞれ延設された一対の連結部とで構成してあり、これら吊りバンドや立てバンドを用いて配管を支持するには、かかる一対の連結部の間に天井面や上階床スラブ下面に固定された連結具の下端あるいは壁面に固定された連結具の先端を挟み込むとともに、配管挿通部に配管を挿通した上、一対の連結部にボルトを挿通して締め付けることで、該配管を天井や上階床スラブから吊持し、あるいは壁に固定する。
【0006】
ここで、帯状の鋼材で構成されてなる配管挿通部には配管の自重が鉛直荷重として常時作用し、あるいは地震時慣性力が水平荷重として作用する一方、それらの反力が配管の周面に作用するが、製作コストを抑えるためには、鋼材の幅を25mm程度に制限せざるを得ない。
【0007】
そのため、配管挿通部からの反力の作用面が配管の狭い範囲に集中し、その結果、腐食等によって配管の強度が低下している場合には、該配管が破断するおそれがある。また、配管挿通部が帯状の鋼材を面外に湾曲加工して構成される関係上、該配管挿通部には、いわゆるスプリングバックを防止するための補剛リブが周方向に設けられるが、その凹凸は、外周側では突条として、内周側では溝として顕れるので、荷重作用面がさらに減少し、上述した応力集中がより顕著になるという問題も生じる。
【0008】
ちなみに、配管が金属管である場合には、電食を防止すべく、鋼材に電気絶縁材を被覆したものが配管挿通部として用いられているが、従来においては、電気絶縁材の被覆を主としてディッピングによって行っているので、上述した補剛リブにはその凹凸に沿って電気絶縁材が被覆されるにとどまり、内周側には上述した溝が依然として顕れたままとなり、溝による荷重作用面の減少の問題は何ら解決されない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【文献】株式会社昭和コーポレーション、[online]、[令和元年12月8日検索]、インターネット<URL :https://www.showa-cp.jp/products-own/sleeperl/>
【文献】株式会社昭和コーポレーション、[online]、[令和元年12月13日検索]、インターネット<URL :https://www.showa-cp.jp/products-own/boushin/>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本出願人は、かかる問題を解決すべく、帯状の鋼材で構成される配管挿通部と配管との間で荷重伝達が行われるようにそれらの間に配置された樹脂材料からなる荷重伝達手段を備えるとともに、該荷重伝達手段を、その内周側において配管の材軸を含む断面で凹凸が顕れないように形成してなる配管支持具を開発した。
【0011】
かかる配管支持具によれば、荷重伝達手段が、配管挿通部の横断面形状とは無関係に、十分な作用面積をもってその内周側で配管の周面と当接するので、該荷重伝達手段からの力、すなわち配管の自重や配管の地震時慣性力に対する反力は、分散した状態で配管に作用することとなり、かくして配管に生じるせん断応力が小さくなり、配管への応力集中、ひいてはそれに起因する破断が未然に防止される。
【0012】
しかしながら、上述の配管支持具においては、帯状の鋼材のうち、配管挿通部に相当する部分をインサートとした射出成形で製作するのが望ましいところ、このような方法だと、金型に対する鋼材の位置決めなど、製作に手間やコストがかかるという問題や、一対の連結部が離間するように配管挿通部を拡げてその内側に配管を通す際に、荷重伝達部に大きな曲げモーメントが作用して該荷重伝達部に損傷が生じるおそれがあるという問題を生じていた。
【0013】
また、非特許文献1には、複数の断熱材を、配管を取り囲む形に配置した上、該断熱材を帯状の鋼材で取り囲んで吊持する配管支持具が開示されているが、かかる構成では、締付け作業が終了するまで、複数の断熱材が互いに離間やずれを生じたり、落下したりしないよう、配管の外周面に押さえ付けておかねばならないため、複数の作業員が必要になる、作業が繁雑になる、作業に時間を要するといった問題を生じるとともに、吊りバンドや立てバンドでは、高所作業になることが多いため、かかる作業性の問題はより顕著となる。
【0014】
また、配管内を温冷水が流れる場合、特に冷却水が流れる場合には、結露水が金属製品を腐食させたり、下方に滴り落ちて様々な不具合を生じさせたりするおそれがあるため、配管周囲には、熱損失を防止する観点でも保温材の巻付けが必要になるほか、配管固定箇所では、吊りバンドや立てバンドを構成する帯状の鋼材と配管との間に断熱性を持たせる必要があるが、非特許文献1記載の配管支持具では、複数の断熱材が硬質ウレタンフォームで形成されているところ、硬質ウレタンフォームに断熱機能と荷重分散機能の両方を十分に持たせることは難しいという問題を生じていた。
【0015】
また、配管には、さまざまな機械振動が駆動源から伝わるほか、ポンプから圧送される液体の圧力脈動が作用し、その振動数が配管系の固有振動数に一致すると、共振によって配管が大きく振動し、その結果、配管やそれらを固定している配管支持具が破損する事態を招くため、吊りバンドや立てバンドを構成する帯状の鋼材と配管との間に防振性を持たせる必要があるが、非特許文献2記載の配管支持具では、帯状の鋼材に防振ゴムが先行装着されているため、配管を取り囲む形に配管支持具を配置しようとすると、取付け途中で防振ゴムの先端が配管の外周面に当接して取付け終了時には該防振ゴムに残留変形が生じたり、不測の残留応力が防振ゴムに発生したりするおそれがあり、それが原因で、基本機能である荷重伝達機能に支障が出たり、防振ゴムが本来の防振機能を発揮できない場合が生じる。
【0016】
加えて、非特許文献2記載の配管支持具では、直状に製作された防振ゴムを、製作後に湾曲させて帯状の鋼材に装着するようになっているので、それに見合う柔らかさとなるように防振ゴムを製作せざるを得ず、防振に適した剛性調整が本来的に困難であるという問題を生じていた。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、上述した事情を考慮してなされたもので、インサート成形の場合よりも製作コストを低減することが可能で、なおかつ配管への取付け時にインサート成形による場合と同様の作業性を確保することが可能な配管支持用アタッチメントを提供することを目的とする。
【0018】
また、本発明は、これらに加えて、断熱性や防振性を高めることも可能な配管支持用アタッチメントを提供することを目的とする。
【0019】
上記目的を達成するため、本発明に係る配管支持用アタッチメントは請求項1に記載したように、スラブ、天井、壁等の建物躯体に連結することで配管を支持するようになっている吊りバンド、立てバンド等の配管支持具と併用される配管支持用アタッチメントであって、前記配管の外周面に当接する配管側当接面が内周側に設けられ外周側に前記配管支持具の一部が嵌合する嵌合溝が形成されてなる荷重伝達部を備え、該荷重伝達部は、前記配管の周方向に沿って該配管を取り囲むように並置される複数の荷重伝達ブロックからなり、該複数の荷重伝達ブロックは、前記配管を取り囲んだ形に連結自在となるように構成され、
前記荷重伝達部は、前記配管の材軸方向に沿って少なくとも該荷重伝達部の両端近傍まで延びる空隙を、該空隙を取り囲む隔壁が前記配管側当接面及び前記嵌合溝と連続一体となるように前記配管の周方向に沿って離散配置することにより、前記隔壁を介して前記配管と前記配管支持具との間で荷重伝達が行われるようになっているものである。
【0020】
また、本発明に係る配管支持用アタッチメントは、前記複数の荷重伝達ブロックを、各々が半円筒状をなし前記配管に抱き合わせる形で互いに隣接配置される2つの側方ブロックで構成するとともに該2つの側方ブロックの外周面に前記嵌合溝をそれぞれ設け、前記2つの側方ブロックを、それらの内周面が前記配管側当接面となって前記配管が挟み込まれるように、なおかつ対向端面が当接面となって互いに連結されるように構成したものである。
【0021】
また、本発明に係る配管支持用アタッチメントは、前記複数の荷重伝達ブロックのうち、前記配管を取り囲んだ状態において互いに隣り合う2つの荷重伝達ブロックの一方に磁性体を、他方に該磁性体に磁着する金属物を配置したものである。
【0022】
また、本発明に係る配管支持用アタッチメントは請求項4に記載したように、スラブ、天井、壁等の建物躯体に連結することで配管を支持するようになっている吊りバンド、立てバンド等の配管支持具と併用される配管支持用アタッチメントであって、前記配管の外周面に当接する配管側当接面が内周側に設けられ外周側に前記配管支持具の一部が嵌合する嵌合溝が形成されてなる荷重伝達部を備え、該荷重伝達部は、前記配管の周方向に沿ってヒンジを介して互いに繋がれていて該配管を取り囲むように並置できるようになっている複数の荷重伝達ブロックからなり、
前記荷重伝達部は、前記配管の材軸方向に沿って少なくとも該荷重伝達部の両端近傍まで延びる空隙を、該空隙を取り囲む隔壁が前記配管側当接面及び前記嵌合溝と連続一体となるように前記配管の周方向に沿って離散配置することにより、前記隔壁を介して前記配管と前記配管支持具との間で荷重伝達が行われるようになっているものである。
【0023】
また、本発明に係る配管支持用アタッチメントは、前記複数の荷重伝達ブロックを、各々が半円筒状をなし前記配管に抱き合わせる形に配置可能な2つの側方ブロックで構成するとともに該2つの側方ブロックの外周面に前記嵌合溝をそれぞれ設け、前記2つの側方ブロックを、それらの内周面が前記配管側当接面となって前記配管が挟み込まれるように、なおかつ対向端面が互いに当接面となるように構成したものである。
【0026】
また、本発明に係る配管支持用アタッチメントは、前記各空隙の両端が閉じるように前記荷重伝達部を構成したものである。
【0027】
また、本発明に係る配管支持用アタッチメントは、前記各空隙をそれらの横断面形状が六角形となるように形成するとともに、該各空隙を取り囲む六角形状隔壁を前記隔壁として該六角形状隔壁を介して前記各空隙を互いに近接配置したものである。
また、本発明に係る配管支持用アタッチメントは、前記複数の荷重伝達ブロックをそれぞれ熱可塑性エラストマーで形成したものである。
【0030】
[本発明に係る作用]
本発明に係る配管支持用アタッチメントにおいては、荷重伝達部の内周側に配管の外周面に当接する配管側当接面が設けられていて、該配管側当接面を介して配管との間の荷重伝達が行われるとともに、外周側には、配管支持具の一部が嵌合する嵌合溝が形成してあり、該嵌合溝の溝内面を介して配管支持具との間の荷重伝達が行われるようになっている。
【0031】
このようにすると、内周側では、配管側当接面の面積を適宜確保することで、配管との間の荷重伝達が分散状態で行われ、外周側においては、嵌合溝の溝内面を介して配管支持具との間の荷重伝達が確実に行われるとともに、配管の材軸方向に沿った配管支持用アタッチメントの移動が制限される。
【0032】
そのため、配管から振動荷重が作用するような状況においても、配管支持用アタッチメントが配管の材軸方向にずれたり、配管と配管支持具との間から抜け落ちたりといった懸念がなくなって上述した荷重伝達機能が確実に維持されることとなり、かくして、配管支持具と一体になるよう製作せずとも、より経済性に優れた形で、配管の応力集中を防止することが可能となる。
【0033】
加えて、配管支持具と一体に製作される場合には、配管支持作業の際、一対の連結部が離間するように配管挿通部を拡げてその内側に配管を通すことになるため、荷重伝達部にも大きな曲げモーメントが作用することとなって該荷重伝達部に損傷が生じるおそれがあるが、本発明に係る配管支持用アタッチメントにおいては、荷重伝達部は、配管の周方向に沿って該配管を取り囲むように並置される複数の荷重伝達ブロックで構成してあるので、配管支持作業の際、荷重伝達ブロックに曲げモーメントが生じて荷重伝達ブロックが損傷するといった懸念がなくなる。
【0034】
本発明に係る配管支持用アタッチメントを用いて配管を建物躯体に固定するには、まず、複数の荷重伝達ブロックを、配管が取り囲まれるようにして該配管の周方向に沿って配置し、次いで、荷重伝達ブロックに形成された嵌合溝に配管支持具が嵌め込まれるようにしながら、該配管支持具を配管に配置し、しかる後、配管支持具を適当な連結具を介して天井や上階床スラブあるいは壁といった建物躯体に固定するが、本発明に係る配管支持用アタッチメントは、単独で配管に先行配置することができるので、配管支持具による固定作業が終わるまでの間、配管支持用アタッチメントが配管から外れたり落下したりしないよう注意を払う必要がなくなる。
【0035】
[荷重伝達部の基本構成]
複数の荷重伝達ブロックは、配管の周方向に沿って該配管を取り囲むように並置されるとともに、該配管を取り囲んだ形に連結自在となるように構成されてもよいし(以下、第1の構成)、配管の周方向に沿ってヒンジを介して互いに繋がれていて該配管を取り囲むように並置できるようになっている構成でもよい(以下、第2の構成)。
【0036】
ここで、上記第1の構成は、配管を取り囲んだ状態が連結によって保持される、換言すれば、連結による力によって、望ましくは荷重伝達部に設けられた配管側当接面が配管の外周面から離間することなく該外周面に当接し続けられ、少なくとも配管から脱落するほどの離間が防止されることを必須とするものであるが、複数の荷重伝達ブロックが互いに別体であるか、それとも互いに繋がれているかは任意である。
【0037】
一方、上記第2の構成においては、配管の周方向に沿ってヒンジを介して互いに繋がれていて該配管を取り囲むように並置できることを必須とするものであって、繋がれていない側の端部が開くように、複数の荷重伝達ブロックをヒンジ回りに回動させることで、配管が挿通された状態にすることができる一方、配管が挿通された状態で、繋がれていない側の端部が閉じるように、複数の荷重伝達ブロックをヒンジ回りに回動させることで、配管を取り囲んだ状態に配置できることが必要不可欠であるが、配管を取り囲んだ状態が保持されるように連結構成を採用することは必ずしも必須ではなく、連結する力に代えて、外部の力、例えば作業員の押圧力によって配管を取り囲んだ状態を保持する場合も包摂される。
【0038】
ちなみに、作業員の押圧力による保持の場合、配管支持用アタッチメントが配管から外れたり落下したりしないよう若干の注意を払う必要が生じるが、複数の荷重伝達ブロックが配管の周方向に沿って互いに繋がれているので、配管取付け時の作業負担が従来より軽減されることに何ら変わりはない。
【0039】
[第1の構成に係る荷重伝達部の具体的構成]
第1の構成に係る複数の荷重伝達ブロックは、個数については任意であるし、それぞれの形状も限定されないが、各々が半円筒状をなし配管に抱き合わせる形で互いに隣接配置される2つの側方ブロックで構成するとともに該2つの側方ブロックの外周面に上述の嵌合溝をそれぞれ設け、かかる2つの側方ブロックを、それらの内周面が配管側当接面となって配管が挟み込まれるように、なおかつ対向端面が当接面となって互いに連結されるように構成されたものが典型例となる。
【0040】
複数の荷重伝達ブロックは、配管を取り囲んだ形に連結自在となるように構成される限り、互いに分離されたものを、配管が取り囲まれるように配置して相互連結するのか、それとも、例えばヒンジ等を介してつながれたものを、配管が取り囲まれるように配置してから相互連結するのかは任意であるし、連結するための構成についても任意である。
【0041】
連結のための具体的構成としては、互いに隣り合う荷重伝達ブロックのうち、一方に係止部、他方に該係止部に係止される爪をそれぞれ設けた構成や、一方に凹部、他方に該凹部に嵌合される凸部をそれぞれ設けた構成、あるいは一方に両面テープ等の接着シートを貼着し、他方に該接着シートが接着する接着面を設けた構成などを採用することが可能である。
【0042】
ここで、接着構成であれば、連結作業をやり直すことが難しいが、一方に磁性体、他方に該磁性体に磁着する金属物をそれぞれ設けた構成であれば、製作が容易でなおかつ連結作業のやり直しが可能となる。
【0043】
[第2の構成に係る荷重伝達部の具体的構成]
第2の構成に係る複数の荷重伝達ブロックは、個数については任意であるし、それぞれの形状も限定されないが、各々が半円筒状をなし前記配管に抱き合わせる形に配置可能な2つの側方ブロックで構成するとともに該2つの側方ブロックの外周面に前記嵌合溝をそれぞれ設け、前記2つの側方ブロックを、それらの内周面が前記配管側当接面となって前記配管が挟み込まれるように、なおかつ対向端面が互いに当接面となるように構成されたものが典型例となる。
【0044】
ヒンジは、プラスチック製品に広く使われているプラスチックヒンジあるいはプラスチック蝶番から適宜選択し採用することができる。
【0045】
[第1の構成、第2の構成に共通の構成]
複数の荷重伝達ブロックは、配管と配管支持具との間に荷重伝達部として介在して両者の荷重伝達を行うことができるように構成される限り、具体的な形成材料は任意であるが、変形性能に富んだ樹脂材料、特に熱可塑性エラストマーを形成材料として採用するのが望ましい。
【0046】
[荷重伝達部の断熱性を高める構成]
荷重伝達部は、配管の材軸方向に沿って少なくとも該荷重伝達部の両端近傍まで延びる空隙が該配管の周方向に沿って離散配置されるように構成する。
【0047】
このようにすると、荷重伝達部の形成材料や空隙の離散配置形態を適宜設定することで、荷重伝達機能を確保しつつ、荷重伝達部内に十分な体積の断熱空間を形成することが可能となり、従来の硬質ウレタンフォームを用いた断熱材と同等、あるいはそれ以上の断熱性能を、より経済性に優れた形で持たせることができる。
【0048】
荷重伝達部に形成される空隙は、例えば蓮根に形成されているような横断面が円形の孔(円孔)で構成することができるが、所要の断熱性能が得られる限り、その横断面形状は任意である。
【0049】
ここで、各空隙の両端が開くように荷重伝達部を構成した場合には、射出成形の際、金型を用いた製作が容易となるが、これに代えて、各空隙の両端が閉じるように荷重伝達部を構成したならば、空隙を出入りする空気移動が阻止されるため、断熱性能をさらに向上させることができる。
【0050】
なお、空隙は、いずれの場合であっても、荷重伝達部における断熱性能が実質的に確保されるよう、少なくとも荷重伝達部の両端近傍まで延びるように形成する。
【0051】
各空隙の両端を閉じるための具体的構成は任意であるが、例えば荷重伝達部の端面と同様の平面形状をなす閉塞板を該荷重伝達部の各端面にそれぞれ貼着して構成することが可能である。
【0052】
また、各空隙をそれらの横断面形状が六角形となるように形成するとともに、それらを六角形状隔壁を介して互いに近接配置したならば、荷重伝達部がハニカム構造で構成されることになるため、十分な荷重伝達機能を確保しつつ、ほぼ最大限に近い断面積で空隙を形成することが可能となり、断熱性能を格段に向上させることができる。
【0053】
そのため、従来よりも断熱構造の厚みを抑えることが可能となり、狭隘な箇所での施工性が改善されるとともに、配管周囲に巻く保温材を配管支持具の上から重ねることもできるので、配管周囲の保温材と配管支持用アタッチメントとの間に隙間が生じたとしても、その隙間で結露が生じるおそれもない。
【0054】
[荷重伝達部の防振性を高める構成(参考発明)]
荷重伝達部は、配管の材軸に向かって延びる形で周方向に離散配置され各先端面が配管側当接面として配管の外周面にそれぞれ当接されるように形成されてなる複数の突起を設けた構成とすることができる。
【0055】
このようにすると、荷重伝達部には上述したように、その内周側に設けられた配管側当接面を介して配管との間の荷重伝達が行われるとともに、外周側に設けられた嵌合溝の溝内面を介して配管支持具との間の荷重伝達が行われるようになっているので、配管から振動荷重が作用する状況においても、配管支持用アタッチメントが配管の材軸方向にずれたり、配管と配管支持具との間から抜け落ちたりといった懸念がなくなって上述した荷重伝達機能が確実に維持される。
【0056】
そのため、振動荷重に追従するように突起が変形する荷重伝達部の基本的な防振機能が確実に発揮される。
【0057】
なお、ここでいう荷重伝達部の防振機能は、配管支持具と圧力脈動とが共振しないように突起の剛性を調整することによる防振機能であり、後述する振動吸収による防振機能とは異なる。
【0058】
また、防振ゴムをUバンドに取り付ける従来の配管支持具では、直状に成形された防振ゴムを湾曲させ、その状態でUバンドにセットするようになっているため、防振ゴムは、そのような取付け作業に見合った柔らかさで成形される必要があり、剛性を調整するにも制約が大きいが、本発明に係る配管支持用アタッチメントによれば、配管に取り付けられた状態の形状で当初から製作されるため、上記のような問題は起こり得ず、荷重伝達部を形成する材料の種類、突起の断面積、突起の長さなどの仕様を、何らの制約を受けることなく自由に定めることが可能であって、荷重伝達部の剛性を所望の大きさに設定することができる。
【0059】
また、本発明に係る配管支持用アタッチメントにおいては、配管支持具に取り付けられた状態の振動特性を振動実験等によって明確に定めることができるとともに、これを配管系の固有振動数解析に反映させれば、より正確な解析結果を得ることが可能となる。
【0060】
ここで、荷重伝達部のうち、少なくとも突起を、振動吸収機能を備えた熱可塑性エラストマーで形成したならば、荷重伝達部の振動吸収機能を高めることが可能となる。
【0061】
ちなみに、標準的あるいは汎用的な熱可塑性エラストマーの場合、振動吸収機能が十分でない場合もあるが、弾性バネとしての機能は十分に発揮し得るものであって、なおかつその振動特性については、振動実験等で明確に、しかもばらつきが少ない形で把握することができるため、振動吸収機能が十分でないとしても、熱可塑性エラストマーの剛性を適宜設定すれば、配管支持具を含む配管系全体の固有振動数を変化させ、それによって圧力脈動の振動数に一致しないようにすることが可能であって、その意味では、防振機能が発揮されることに何ら変わりはなく、振動吸収機能を備えた熱可塑性エラストマーで形成した場合には、そのような剛性調整による防振機能に加えて、振動吸収機能の向上を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【
図1】第1実施形態に係る配管支持用アタッチメント1に関する図であり、(a)は吊りバンド2とともに示した組立斜視図、(b)は全体斜視図、(c)は併用する吊りバンド2の全体斜視図。
【
図2】配管支持用アタッチメント1の図であり、(a)は配管4とともに示した全体斜視図、(b)は分解斜視図。
【
図3】配管支持用アタッチメント1の図であり、(a)は縦断面図、(b)はA-A線に沿った矢視図、(c)はB-B線に沿った横断面図。
【
図4】変形例に係る図であり、(a)は横断面図、(b)は分解斜視図。
【
図5】別の変形例に係る図であり、(a)は分解斜視図、(b)は横断面図。
【
図6】別の変形例に係る図であり、(a)は側方ブロック61a,61bをヒンジ62回りに回動させている様子を示した説明図、(b)はヒンジ62回りの詳細斜視図、(c)は横断面図。
【
図7】第2実施形態に係る配管支持用アタッチメント71に関する図であり、(a)は吊りバンド2とともに示した組立斜視図、(b)は全体斜視図、(c)は併用する吊りバンド2の全体斜視図。
【
図8】配管支持用アタッチメント71の図であり、(a)は配管4とともに示した全体斜視図、(b)は分解斜視図。
【
図9】配管支持用アタッチメント71の図であり、(a)は縦断面図、(b)はC-C線に沿った矢視図、(c)はD-D線に沿った横断面図。
【
図10】変形例に係る図であり、(a)は横断面図、(b)は分解斜視図。
【
図11】別の変形例に係る図であり、(a)は分解斜視図、(b)は横断面図。
【
図12】別の変形例に係る図であり、(a)は側方ブロック121a,121bをヒンジ62回りに回動させている様子を示した説明図、(b)はヒンジ62回りの詳細斜視図、(c)は横断面図。
【
図13】別の変形例に係る図であり、(a)は配管4とともに示した全体斜視図、(b)は分解斜視図。
【
図14】第3実施形態に係る配管支持用アタッチメント141に関する図であり、(a)は吊りバンド2とともに示した組立斜視図、(b)は全体斜視図、(c)は併用する吊りバンド2の全体斜視図。
【
図15】配管支持用アタッチメント141の図であり、(a)は配管4とともに示した全体斜視図、(b)は分解斜視図。
【
図16】配管支持用アタッチメント141の図であり、(a)は縦断面図、(b)はE-E線に沿った矢視図、(c)はF-F線に沿った横断面図。
【
図17】変形例に係る図であり、(a)は横断面図、(b)は分解斜視図。
【
図18】別の変形例に係る図であり、(a)は分解斜視図、(b)は横断面図。
【
図19】別の変形例に係る図であり、(a)は側方ブロック191a,191bをヒンジ62回りに回動させている様子を示した説明図、(b)はヒンジ62回りの詳細斜視図、(c)は横断面図。
【発明を実施するための形態】
【0063】
以下、本発明に係る配管支持用アタッチメントの実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
【0064】
[第1実施形態]
図1(a)は、本実施形態に係る配管支持用アタッチメント1を、天井又は上階床スラブの下方に横走り管として配置されるべき配管4を吊持するための配管支持具としての吊りバンド2とともに示した組立斜視図、同図(b)は配管支持用アタッチメント1の全体斜視図、同図(c)は吊りバンド2の全体斜視図、
図2(a)は、配管支持用アタッチメント1を配管4とともに示した全体斜視図、同図(b)は配管支持用アタッチメント1の分解斜視図、
図3(a)は配管支持用アタッチメント1の縦断面図、同図(b)はA-A線に沿った矢視図、同図(c)はB-B線に沿った横断面図である。
【0065】
これらの図に示すように、本実施形態に係る配管支持用アタッチメント1は、吊りバンド2と併用されるものであって、配管4と吊りバンド2との間の荷重伝達を行うための荷重伝達部5を備える。
【0066】
ここで、吊りバンド2は、帯板状の鋼材を用いて構成されたものであって、面外方向にかつ環状に湾曲形成された配管挿通部3及び該配管挿通部の対向端部から放射方向にそれぞれ延設された互いに対向する一対の連結部6,6からなり、該一対の連結部を、該連結部に形成されたボルト挿通孔7,7を利用しつつ、吊りボルト等の連結具(図示せず)を介して天井面又は上階床スラブ下面に連結することにより、配管挿通部3の内側空間に挿通された配管4を吊持できるようになっている。
【0067】
配管挿通部3には、いわゆるスプリングバックを防止するための補剛リブ8が周方向に設けられており、その凹凸は、外周側では突条9として、内周側では溝10として顕れる。
【0068】
また、配管挿通部3のうち、一対の連結部6,6の反対側に位置する部位、すなわち最下端近傍位置には、開口からなる断面欠損部15を設けてあり、連結部6,6が互いに離間する方向に沿った配管挿通部3の開閉操作を容易に行うことができるようになっている。
【0069】
荷重伝達部5は、各々が半円筒状をなし配管4に抱き合わせる形で互いに隣接配置される2つの側方ブロック5a,5bで構成してあるとともに、これらを配管4の周方向に沿って該配管を取り囲むように並置してその形で連結できるようになっている。
【0070】
側方ブロック5a,5bは、変形性能に富んだ熱可塑性エラストマーを射出材料とした射出成形によってそれぞれ形成してある。
【0071】
側方ブロック5a,5bは、それらの間に配管4が挟み込まれた状態で、その内周面12a,12bがそれぞれ配管側当接面として配管4の外周面に当接できるようになっているとともに、側方ブロック5aの各端に形成された端面13a,13a(対向端面の一方)と側方ブロック5bの各端に形成された端面13b,13b(対向端面の他方)とがそれぞれ当接面となって互いに連結できるようになっていることで、配管側当接面である内周面12a,12bを介して配管4との間の荷重伝達が行われるようになっている。
【0072】
一方、側方ブロック5a,5bの外周面には、吊りバンド2のうち、配管挿通部3が嵌合する嵌合溝18a,18bをそれぞれ設けてあり、該嵌合溝を介して吊りバンド2との間の荷重伝達が行われるようになっている。
【0073】
本実施形態に係る配管支持用アタッチメント1を用いて配管4を吊持するには、まず、側方ブロック5a,5bを、それらの内周面12a,12bが配管4の外周面に当接されるように、かつ側方ブロック5aの各端に形成された端面13a,13aが、側方ブロック5bの各端に形成された端面13b,13bにそれぞれ当接されるように隣接配置することで配管4を取り囲んだ形とし、しかる後、又はその配置作業と同時に、配管4を取り囲んだ形で側方ブロック5a,5bを互いに連結する。
【0074】
側方ブロック5a,5bを互いに連結するには、例えば側方ブロック5aの端面13a,13aに接着シート(図示せず)を連結前に貼着しておき、これが側方ブロック5bの端面13b,13bに接着されるように該側方ブロックを配置したり、側方ブロック5aの端面13a,13aに凸部(図示せず)を、側方ブロック5bの端面13b,13bに該凸部に嵌合される凹部(図示せず)をそれぞれ設けておき、該凸部が凹部に嵌合するように該側方ブロックを配置したりする構成を適宜採用すればよい。
【0075】
次に、吊りバンド2の連結部6,6が互いに離間する方向に該吊りバンドの配管挿通部3を拡げ、次いで、該連結部の離間スペースを利用して配管挿通部3の内側に配管支持用アタッチメント1を入れ込まれるように吊りバンド2を配置するが、このとき、連結部6,6が互いに接近する方向に配管挿通部3を縮めるようにすることで、該配管挿通部が側方ブロック5a,5bの嵌合溝18a,18bにそれぞれ嵌め込まれる形となるように該吊りバンドを配管支持用アタッチメント1の外側に装着する。
【0076】
次に、連結部6,6に形成されたボルト挿通孔7,7を利用しつつ、吊りボルト等の連結具(図示せず)を介して天井面又は上階床スラブ下面に連結することにより、配管挿通部3の内側空間に挿通された配管4を吊持する。
【0077】
本実施形態に係る配管支持用アタッチメント1においては、配管4の外周面に当接する配管側当接面として、側方ブロック5a,5bに内周面12a,12bがそれぞれ設けられていて、該配管側当接面を介して配管4との間の荷重伝達が行われるとともに、外周側では、吊りバンド2のうち、配管挿通部3が嵌合する嵌合溝18a,18bが側方ブロック5a,5bの外周面にそれぞれ設けてあり、これら嵌合溝18a,18bを介して吊りバンド2との間の荷重伝達が行われるようになっている。
【0078】
このようにすると、荷重伝達部5の内周側では、該荷重伝達部の幅(配管4の材軸方向に沿った寸法)を適宜設定して配管側当接面の面積を必要なだけ確保することにより、配管4との間の荷重伝達が分散状態で行われ、外周側においては、嵌合溝18a,18bの各溝内面を介して吊りバンド2との間の荷重伝達が確実に行われるとともに、配管4の材軸方向に沿った配管支持用アタッチメント1の移動が制限される。
【0079】
以上説明したように、本実施形態に係る配管支持用アタッチメント1によれば、嵌合溝18a,18bを介して吊りバンド2との間の荷重伝達が行われるようになっているので、配管4から振動荷重が作用するような状況においても、該配管支持用アタッチメントが配管4の材軸方向にずれたり、配管4と吊りバンド2との間から抜け落ちたりといった懸念がなくなって上述した荷重伝達機能が確実に維持される。
【0080】
そのため、吊りバンド2と一体になるよう製作せずとも、より経済性に優れた形で、配管4の応力集中を防止することが可能となる。
【0081】
加えて、吊りバンド2と一体に製作される場合には、吊りバンド2の配管挿通部3と一体となるように該配管挿通部の周方向に沿って荷重伝達部が配置されるところ、かかる構成だと、配管挿通部3を拡げる際、該配管挿通部と一体に配置された荷重伝達部にも大きな曲げモーメントが作用することとなって該荷重伝達部に損傷が生じるおそれがあるが、本実施形態に係る配管支持用アタッチメント1においては、荷重伝達部5は、配管4の周方向に沿って該配管を取り囲むように並置される側方ブロック5a,5bで構成してあるので、配管支持作業の際、荷重伝達部5に曲げモーメントが生じて該荷重伝達部が損傷するといった懸念がなくなる。
【0082】
また、本実施形態に係る配管支持用アタッチメント1によれば、側方ブロック5a,5bを、配管4を取り囲んだ形に連結自在となるように構成してあり、それによって配管4を取り囲んだ形が保持されるので、配管支持用アタッチメント1を単独で配管4に先行配置することができるとともに、吊りバンド2による固定作業が終わるまでの間、配管支持用アタッチメント1が配管4から外れたり落下したりしないよう注意を払う必要がなくなる。
【0083】
本実施形態では、本発明に係る複数の荷重伝達ブロックを、側方ブロック5a,5bで構成したが、複数の荷重伝達ブロックは、配管の周方向に沿って該配管を取り囲むように並置される限り、形状や分割数といった具体的構成は任意であり、例えば
図4に示すように、吊りバンド2の連結部6,6の側とその反対側で、同図では上下で配管4を挟み込むように配置される底部ブロック41aと頂部ブロック41bとで構成してもよい。
【0084】
なお、同図に示した変形例の場合、底部ブロック41aに嵌合溝42aが、頂部ブロック41bに嵌合溝42bがそれぞれ形成される。
【0085】
また、本実施形態では、側方ブロック5a,5bの相互連結手段を接着又は嵌着としたが、これに代えて、
図5に示すように、側方ブロック5aの端面13a,13aに磁性体であるマグネットシート51を、それらに磁着する金属物であるボルト52,52を側方ブロック5bの端面13b,13bにそれぞれ埋め込んだ構成としてもよい。
【0086】
また、本実施形態では、本発明に係る複数の荷重伝達ブロックを、互いに分離された別体の側方ブロック5a,5bで構成したが、これに代えて、
図6に示すように、ヒンジ62を介して相互に繋がれ該ヒンジの回りに回動自在に構成されてなる側方ブロック61a,61bで構成してもよい。ヒンジ62は、プラスチック製品に広く使われているヒンジを適宜選択し採用することができる。
【0087】
なお、側方ブロック61a,61bは、ヒンジ62を介して互いに繋がれている以外、側方ブロック5a,5bと同様の構成であるので、ここでは、その詳細な説明は省略する。
【0088】
また、側方ブロック61a,61bを、配管4を取り囲んだ形に連結するための連結手段については、上述したように、接着、嵌着、磁着といったものから適宜選択採用することが可能である。
【0089】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態について説明するが、第1実施形態と実質的に同一の部品等については同一の番号を付してその説明を省略する。
【0090】
図7(a)は、本実施形態に係る配管支持用アタッチメント71を吊りバンド2とともに示した組立斜視図、同図(b)は配管支持用アタッチメント71の全体斜視図、同図(c)は吊りバンド2の全体斜視図、
図8(a)は、配管支持用アタッチメント71を配管4とともに示した全体斜視図、同図(b)は配管支持用アタッチメント71の分解斜視図、
図9(a)は配管支持用アタッチメント71の縦断面図、同図(b)はC-C線に沿った矢視図、同図(c)はD-D線に沿った横断面図である。
【0091】
これらの図に示すように、本実施形態に係る配管支持用アタッチメント71は、吊りバンド2と併用されるものであって、配管4と吊りバンド2との間の荷重伝達を行うための荷重伝達部75を備える。
【0092】
配管4は、その内部に断熱が必要となる冷温水、特に冷却水が流れているものを対象とする。
【0093】
荷重伝達部75は、各々が半円筒状をなし配管4に抱き合わせる形で互いに隣接配置される2つの側方ブロック75a,75bで構成してあるとともに、これらを配管4の周方向に沿って該配管を取り囲むように並置してその形で連結できるようになっている。
【0094】
側方ブロック75a,75bは、変形性能に富んだ熱可塑性エラストマーを射出材料とした射出成形によってそれぞれ形成してある。
【0095】
側方ブロック75a,75bは、それらの間に配管4が挟み込まれた状態で、その内周面12a,12bがそれぞれ配管側当接面として配管4の外周面に当接できるようになっているとともに、側方ブロック75aの各端に形成された端面13a,13aと側方ブロック75bの各端に形成された端面13b,13bとがそれぞれ当接面となって互いに連結できるようになっていることで、配管側当接面である内周面12a,12bを介して配管4との間の荷重伝達が行われるようになっている。
【0096】
一方、側方ブロック75a,75bの外周面には、吊りバンド2のうち、配管挿通部3が嵌合する嵌合溝18a,18bをそれぞれ設けてあり、該嵌合溝を介して吊りバンド2との間の荷重伝達が行われるようになっている。
【0097】
側方ブロック75a,75bは、荷重伝達機能に加えて、断熱機能を担う部位として機能するように、配管4の材軸方向に沿って両端まで延び該両端で開いた空隙72が該配管の周方向及び径方向に沿って離散配置されるように構成してある。
【0098】
空隙72は、それらの横断面形状が六角形となるように形成してあり、六角形状隔壁73を介して互いに近接配置してある。
【0099】
本実施形態に係る配管支持用アタッチメント71を用いて配管4を吊持するには、第1実施形態と同様、側方ブロック75a,75bを、配管4を取り囲んだ形に配置し、その形で互いに連結した後、吊りバンド2の配管挿通部3が側方ブロック75a,75bの嵌合溝18a,18bにそれぞれ嵌め込まれる形となるように該吊りバンドを配管支持用アタッチメント71の外側に装着し、しかる後、配管挿通部3の内側空間に挿通された配管4を天井面又は上階床スラブ下面といった建物躯体から吊持する。
【0100】
ここで、側方ブロック75a,75bを互いに連結するには、例えば側方ブロック75aの端面13a,13aに接着シート(図示せず)を連結前に貼着しておき、これが側方ブロック75bの端面13b,13bに接着されるように該側方ブロックを配置したり、側方ブロック75aの端面13a,13aに凸部(図示せず)を、側方ブロック75bの端面13b,13bに該凸部に嵌合される凹部(図示せず)をそれぞれ設けておき、該凸部が凹部に嵌合するように該側方ブロックを配置したりする構成を適宜採用すればよい。
【0101】
以下、配管支持用アタッチメント71を用いて配管4を吊持する手順は、第1実施形態とほぼ同様であるので、ここではその詳細な説明を省略する。
【0102】
本実施形態に係る配管支持用アタッチメント71においては、配管4の外周面に当接する配管側当接面として、側方ブロック75a,75bに内周面12a,12bがそれぞれ設けられていて、該配管側当接面を介して配管4との間の荷重伝達が行われるとともに、外周側では、吊りバンド2のうち、配管挿通部3が嵌合する嵌合溝18a,18bが側方ブロック75a,75bの外周面にそれぞれ設けてあり、これら嵌合溝18a,18bを介して吊りバンド2との間の荷重伝達が行われるようになっている。
【0103】
このようにすると、荷重伝達部75の内周側では、該荷重伝達部の幅(配管4の材軸方向に沿った寸法)を適宜設定して配管側当接面の面積を必要なだけ確保することにより、配管4との間の荷重伝達が分散状態で行われ、外周側においては、嵌合溝18a,18bの各溝内面を介して吊りバンド2との間の荷重伝達が確実に行われるとともに、配管4の材軸方向に沿った配管支持用アタッチメント71の移動が制限される。
【0104】
また、本実施形態に係る配管支持用アタッチメント71においては、配管4と吊りバンド2との間の荷重伝達を行うための荷重伝達部75を備えるとともに、該荷重伝達部を側方ブロック75a,75bで構成してあるが、これら側方ブロック75a,75bには、配管4の材軸方向に沿って両端まで延び該両端で開いた空隙72が離散配置してある。
【0105】
このようにすると、荷重伝達部75に荷重伝達機能が確保されつつ、該荷重伝達部に十分な体積の断熱空間が形成される。
【0106】
以上説明したように、本実施形態に係る配管支持用アタッチメント71によれば、嵌合溝18a,18bを介して吊りバンド2との間の荷重伝達が行われるようになっているので、配管4から振動荷重が作用するような状況においても、該配管支持用アタッチメントが配管4の材軸方向にずれたり、配管4と吊りバンド2との間から抜け落ちたりといった懸念がなくなって上述した荷重伝達機能が確実に維持される。
【0107】
そのため、吊りバンド2と一体になるよう製作せずとも、より経済性に優れた形で、配管4の応力集中を防止することが可能となる。
【0108】
加えて、吊りバンド2と一体に製作される場合には、吊りバンド2の配管挿通部3と一体となるように該配管挿通部の周方向に沿って荷重伝達部が配置されるところ、かかる構成だと、配管挿通部3を拡げる際、該配管挿通部と一体に配置された荷重伝達部にも大きな曲げモーメントが作用することとなって該荷重伝達部に損傷が生じるおそれがあるが、本実施形態に係る配管支持用アタッチメント71においては、荷重伝達部75は、配管4の周方向に沿って該配管を取り囲むように並置される側方ブロック75a,75bで構成してあるので、配管支持作業の際、荷重伝達部75に曲げモーメントが生じて該荷重伝達部が損傷するといった懸念がなくなる。
【0109】
また、本実施形態に係る配管支持用アタッチメント71によれば、側方ブロック75a,75bを、配管4を取り囲んだ形に連結自在となるように構成してあり、それによって配管4を取り囲んだ形が保持されるので、配管支持用アタッチメント71を単独で配管4に先行配置することができるとともに、吊りバンド2による固定作業が終わるまでの間、配管支持用アタッチメント71が配管4から外れたり落下したりしないよう注意を払う必要がなくなる。
【0110】
また、本実施形態に係る配管支持用アタッチメント71によれば、側方ブロック75a,75bを、配管4の材軸方向に沿って両端まで延び該両端で開いた空隙72が該配管の周方向及び径方向に沿って離散配置されるように構成したので、側方ブロック75a,75bに十分な体積の断熱空間を形成することができる。
【0111】
そのため、従来の硬質ウレタンフォームを用いた断熱材と同等、あるいはそれ以上の断熱性能を、より経済性に優れた形で持たせることができる。
【0112】
また、本実施形態に係る配管支持用アタッチメント71によれば、各空隙72をそれらの横断面形状が六角形となるように形成するとともに、それらを六角形状隔壁73を介して互いに近接配置したので、荷重伝達部75がハニカム構造で構成されることとなり、かくして十分な荷重伝達機能を確保しつつ、ほぼ最大限に近い断面積で空隙を形成することが可能となり、断熱性能を格段に向上させることができる。
【0113】
そのため、従来よりも断熱構造の厚みを抑えることが可能となり、狭隘な箇所での施工性が改善されるとともに、配管周囲に巻く保温材を吊りバンド2の上から重ねることもできるので、配管周囲の保温材と配管支持用アタッチメント71との間に隙間が生じたとしても、その隙間で結露が生じるおそれもない。
【0114】
本実施形態では、本発明に係る複数の荷重伝達ブロックを、側方ブロック75a,75bで構成したが、複数の荷重伝達ブロックは、配管の周方向に沿って該配管を取り囲むように並置される限り、形状や分割数といった具体的構成は任意であり、例えば
図10に示すように、吊りバンド2の連結部6,6の側とその反対側で、同図では上下で配管4を挟み込むように配置される底部ブロック101aと頂部ブロック101bとで構成してもよい。
【0115】
なお、同図に示した変形例の場合、底部ブロック101aに嵌合溝102aが、頂部ブロック101bに嵌合溝102bがそれぞれ形成される。
【0116】
また、本実施形態では、側方ブロック75a,75bの相互連結手段を接着又は嵌着としたが、これに代えて、
図11に示すように、側方ブロック75aの端面13a,13aに磁性体であるマグネットシート51を、それらに磁着する金属物であるボルト52,52を側方ブロック75bの端面13b,13bにそれぞれ埋め込んだ構成としてもよい。
【0117】
また、本実施形態では、本発明に係る複数の荷重伝達ブロックを、互いに分離された別体の側方ブロック75a,75bで構成したが、これに代えて、
図12に示すように、ヒンジ62を介して相互に繋がれ該ヒンジの回りに回動自在に構成されてなる側方ブロック121a,121bで構成してもよい。ヒンジ62は、プラスチック製品に広く使われているヒンジを適宜選択し採用することができる。
【0118】
なお、側方ブロック121a,121bは、ヒンジ62を介して互いに繋がれている以外、側方ブロック75a,75bと同様の構成であるので、ここでは、その詳細な説明は省略する。
【0119】
また、側方ブロック121a,121bを、配管4を取り囲んだ形に連結するための連結手段については、上述したように、接着、嵌着、磁着といったものから適宜選択採用することが可能である。
【0120】
また、本実施形態では、荷重伝達部に設ける空隙を、配管4の材軸方向に沿って両端まで延び該両端で開いた空隙72としたが、
図13に示すように、本発明の荷重伝達部を、側方ブロック75aと同様に構成された側方ブロック本体75a′及びその各面に貼着された半環状の閉塞板133,133からなる側方ブロック131aと、側方ブロック75bと同様に構成された側方ブロック本体75b′及びその各面に貼着された半環状の閉塞板133,133からなる側方ブロック131bとで構成することにより、該荷重伝達部に形成される空隙を、配管4の材軸方向に沿って両端近傍まで延び、該両端でそれぞれ閉じた形となるように形成された空隙132としてもよい。
【0121】
かかる変形例によれば、空隙132に出入りする空気移動が防止されるため、断熱性能をさらに向上させることができる。
【0122】
また、本実施形態では、本発明に係る配管支持具を吊りバンド2に適用したものとして説明したが、これに代えて、立てバンドにも適用できることは言うまでもない。
【0123】
[第3実施形態]
次に、第3実施形態について説明するが、第1,2実施形態と実質的に同一の部品等については同一の番号を付してその説明を省略する。
【0124】
図14(a)は、本実施形態に係る配管支持用アタッチメント141を吊りバンド2とともに示した組立斜視図、同図(b)は配管支持用アタッチメント141の全体斜視図、同図(c)は吊りバンド2の全体斜視図、
図15(a)は、配管支持用アタッチメント141を配管4とともに示した全体斜視図、同図(b)は配管支持用アタッチメント141の分解斜視図、
図16(a)は配管支持用アタッチメント141の縦断面図、同図(b)はE-E線に沿った矢視図、同図(c)はF-F線に沿った横断面図である。
【0125】
これらの図に示すように、本実施形態に係る配管支持用アタッチメント141は、吊りバンド2と併用されるものであって、配管4と吊りバンド2との間の荷重伝達を行うための荷重伝達部145を備える。
【0126】
荷重伝達部145は、各々が半円筒状をなし配管4に抱き合わせる形で互いに隣接配置される2つの側方ブロック145a,145bで構成してあるとともに、これらを配管4の周方向に沿って該配管を取り囲むように並置してその形で連結できるようになっている。
【0127】
側方ブロック145a,145bには、それらの間に配管4が挟み込まれた状態で、該配管の材軸に向かって延びる形で周方向に離散配置され各先端面142a,142bが配管側当接面として配管4の外周面に当接されるように形成されてなる突起としての突条143a,143bをそれぞれ複数設けてあるとともに、側方ブロック145aの各端に形成された端面13a,13aと側方ブロック145bの各端に形成された端面13b,13bとがそれぞれ当接面となって互いに連結できるようになっていることで、配管側当接面である先端面142a,142bを介して配管4との間の荷重伝達が行われるようになっている。
【0128】
一方、側方ブロック145a,145bの外周面には、吊りバンド2のうち、配管挿通部3が嵌合する嵌合溝18a,18bをそれぞれ設けてあり、該嵌合溝を介して吊りバンド2との間の荷重伝達が行われるようになっている。
【0129】
側方ブロック145a,145bは、Uボルト2と配管4との間で荷重伝達を行うことが可能な剛性及び強度を有するように、変形性能に富んだ熱可塑性エラストマーを射出材料とした射出成形によってそれぞれ形成してあるが、突条143a,143bについては、特に、振動吸収機能を備えた熱可塑性エラストマーで形成してある。
【0130】
振動吸収機能を備えた熱可塑性エラストマーは、例えば積水ポリマテック株式会社から「エグザゲル」(登録商標)の商品名で市販されているものや、株式会社クラレから「ハイブラー」(登録商標)の商品名で市販されているものを選択することができる。
【0131】
本実施形態に係る配管支持用アタッチメント141を用いて配管4を吊持するには、第1,2実施形態と同様、側方ブロック145a,145bを、配管4を取り囲んだ形に配置し、その形で互いに連結した後、吊りバンド2の配管挿通部3が側方ブロック145a,145bの嵌合溝18a,18bにそれぞれ嵌め込まれる形となるように該吊りバンドを配管支持用アタッチメント141の外側に装着し、しかる後、配管挿通部3の内側空間に挿通された配管4を天井面又は上階床スラブ下面といった建物躯体から吊持する。
【0132】
ここで、側方ブロック145a,145bを互いに連結するには、例えば側方ブロック145aの端面13a,13aに接着シート(図示せず)を連結前に貼着しておき、これが側方ブロック145bの端面13b,13bに接着されるように該側方ブロックを配置したり、側方ブロック145aの端面13a,13aに凸部(図示せず)を、側方ブロック145bの端面13b,13bに該凸部に嵌合される凹部(図示せず)をそれぞれ設けておき、該凸部が凹部に嵌合するように該側方ブロックを配置したりする構成を適宜採用すればよい。
【0133】
以下、配管支持用アタッチメント141を用いて配管4を吊持する手順は、第1,2実施形態とほぼ同様であるので、ここではその詳細な説明を省略する。
【0134】
本実施形態に係る配管支持用アタッチメント141においては、配管4の外周面に当接する配管側当接面として、側方ブロック145a,145bに先端面142a,142bがそれぞれ設けられていて、該配管側当接面を介して配管4との間の荷重伝達が行われるとともに、外周側では、吊りバンド2のうち、配管挿通部3が嵌合する嵌合溝18a,18bが側方ブロック145a,145bの外周面にそれぞれ設けてあり、これら嵌合溝18a,18bを介して吊りバンド2との間の荷重伝達が行われるようになっている。
【0135】
このようにすると、荷重伝達部145の内周側では、該荷重伝達部の幅(配管4の材軸方向に沿った寸法)を適宜設定して配管側当接面の面積を必要なだけ確保することにより、配管4との間の荷重伝達が分散状態で行われ、外周側においては、嵌合溝18a,18bの各溝内面を介して吊りバンド2との間の荷重伝達が確実に行われるとともに、配管4の材軸方向に沿った配管支持用アタッチメント141の移動が制限される。
【0136】
また、本実施形態に係る配管支持用アタッチメント141においては、配管4と吊りバンド2との間の荷重伝達を行うための荷重伝達部145を備えるとともに、該荷重伝達部を側方ブロック145a,145bで構成してあるが、これら側方ブロック145a,145bには、配管4の材軸に向かって延びる形で周方向に離散配置された複数の突条143a,143bがそれぞれ設けてあり、該各突条は、それらの先端面142a,142bが配管4の周面にそれぞれ当接されるように形成してある。
【0137】
このようにすると、配管4から伝わってきた振動荷重に追従するように、それぞれの突条143a,143bが伸縮方向あるいはせん断方向に変形するが、振動の主たる原因が例えば配管4内を流れる流体の圧力脈動である場合、該圧力脈動と共振しないように突条143a,143bの形成材料である熱可塑性エラストマーの仕様や、突条143a,143bの立体形状(配管4の周方向に沿った寸法、配管4の材軸方向に沿った寸法、高さなど)を適宜選定することで、該突条の圧縮剛性及びせん断剛性を調整し、配管4から吊りバンド2に伝達される振動荷重の低減を図ることができる。
【0138】
以上説明したように、本実施形態に係る配管支持用アタッチメント141によれば、嵌合溝18a,18bを介して吊りバンド2との間の荷重伝達が行われるようになっているので、配管4から振動荷重が作用するような状況においても、該配管支持用アタッチメントが配管4の材軸方向にずれたり、配管4と吊りバンド2との間から抜け落ちたりといった懸念がなくなって上述した荷重伝達機能が確実に維持される。
【0139】
そのため、吊りバンド2と一体になるよう製作せずとも、より経済性に優れた形で、配管4の応力集中を防止することが可能となる。
【0140】
加えて、吊りバンド2と一体に製作される場合には、吊りバンド2の配管挿通部3と一体となるように該配管挿通部の周方向に沿って荷重伝達部が配置されるところ、かかる構成だと、配管挿通部3を拡げる際、該配管挿通部と一体に配置された荷重伝達部にも大きな曲げモーメントが作用することとなって該荷重伝達部に損傷が生じるおそれがあるが、本実施形態に係る配管支持用アタッチメント141においては、荷重伝達部145は、配管4の周方向に沿って該配管を取り囲むように並置される側方ブロック145a,145bで構成してあるので、配管支持作業の際、荷重伝達部145に曲げモーメントが生じて該荷重伝達部が損傷するといった懸念がなくなる。
【0141】
また、本実施形態に係る配管支持用アタッチメント141によれば、側方ブロック145a,145bを、配管4を取り囲んだ形に連結自在となるように構成してあり、それによって配管4を取り囲んだ形が保持されるので、配管支持用アタッチメント141を単独で配管4に先行配置することができるとともに、吊りバンド2による固定作業が終わるまでの間、配管支持用アタッチメント141が配管4から外れたり落下したりしないよう注意を払う必要がなくなる。
【0142】
また、従来の配管支持具においては、直状に形成された防振ゴムを湾曲させたながらUバンドの内周側に取り付けねばならないがゆえに、その作業に見合うように防振ゴムを柔らかく形成しておかねばならなかったのに対し、本実施形態に係る配管支持用アタッチメント141によれば、側方ブロック145a,145bを熱可塑性エラストマーを射出材料とした射出成形によって形成するようにしたので、側方ブロック145a,145b、特にそれらの突条143a,143bを形成する材料の種類や、突条143a,143bの断面積あるいはそれらの突出長さといった仕様を、何らの制約を受けることなく、自由に定めることができる。
【0143】
そのため、配管4内を流れる流体の圧力脈動と該配管及び吊りバンド2を含む配管系が共振しないように、突条143a,143bの剛性を適切に調整することが可能となり、かくして防振機能を高めることが可能となる。
【0144】
本実施形態では、本発明に係る複数の荷重伝達ブロックを、側方ブロック145a,145bで構成したが、複数の荷重伝達ブロックは、配管の周方向に沿って該配管を取り囲むように並置される限り、形状や分割数といった具体的構成は任意であり、例えば
図17に示すように、吊りバンド2の連結部6,6の側とその反対側で、同図では上下で配管4を挟み込むように配置される底部ブロック171aと頂部ブロック171bとで構成してもよい。
【0145】
なお、同図に示した変形例の場合、底部ブロック171aに嵌合溝172aが、頂部ブロック171bに嵌合溝172bがそれぞれ形成される。
【0146】
また、本実施形態では、側方ブロック145a,145bの相互連結手段を接着又は嵌着としたが、これに代えて、
図18に示すように、側方ブロック145aの端面13a,13aに磁性体であるマグネットシート51を、それらに磁着する金属物であるボルト52,52を側方ブロック145bの端面13b,13bにそれぞれ埋め込んだ構成としてもよい。
【0147】
また、本実施形態では、本発明に係る複数の荷重伝達ブロックを、互いに分離された別体の側方ブロック145a,145bで構成したが、これに代えて、
図19に示すように、ヒンジ62を介して相互に繋がれ該ヒンジの回りに回動自在に構成されてなる側方ブロック191a,191bで構成してもよい。ヒンジ62は、プラスチック製品に広く使われているヒンジを適宜選択し採用することができる。
【0148】
なお、側方ブロック191a,191bは、ヒンジ62を介して互いに繋がれている以外、側方ブロック145a,145bと同様の構成であるので、ここでは、その詳細な説明は省略する。
【0149】
また、側方ブロック191a,191bを、配管4を取り囲んだ形に連結するための連結手段については、上述したように、接着、嵌着、磁着といったものから適宜選択採用することが可能である。
【0150】
また、本実施形態では、本発明に係る配管支持具を吊りバンド2に適用したものとして説明したが、これに代えて、立てバンドにも適用できることは言うまでもない。
【0151】
また、第1実施形態、第2実施形態及び第3実施形態では、側方ブロック61a,61a、側方ブロック121a,121a、側方ブロック191a,191aを、ヒンジ62を介してそれぞれ互いに繋いでなる構成(
図6,12,19)を変形例とするとともに、該各変形例においては、配管4を取り囲んだ形に連結するための連結手段の採用を必須としたが、これに代えて、かかる連結手段を省略してもよい。
【0152】
かかる構成においても、
図6,12,19の各変形例と同様、繋がれていない側の端部、すなわち端面13a,13a及び端面13b,13bのうち、ヒンジ62で繋がれていない側の対向端面13a,13bが形成された端部(
図6,12,19で下方に位置する端部)が開くように、側方ブロック61a,61a、側方ブロック121a,121a、側方ブロック191a,191aを、ヒンジ62の回りに回動させることで、配管4が挿通された状態にするとともに、配管4が挿通された状態で、繋がれていない側の端部が閉じるように、側方ブロック61a,61a、側方ブロック121a,121a、側方ブロック191a,191aを、ヒンジ62の回りに回動させることで、配管4を取り囲んだ状態に配置する。
【0153】
但し、連結手段を省略した本変形例の場合、吊りバンド2が巻き付けられるまでの間、配管4を取り囲んだ状態が保持されるように、連結するための力に代えて、外部の力、例えば作業員の押圧力によって配管4を取り囲んだ状態を保持する必要があり、それゆえ、配管支持用アタッチメントが配管4から外れたり落下したりしないよう若干の注意を払う必要が生じるが、側方ブロック61a,61a、側方ブロック121a,121a、側方ブロック191a,191aを、ヒンジ62が配管4の周方向に沿ってヒンジ62を介して互いに繋がれているので、配管取付け時の作業負担が従来より軽減されることに何ら変わりはない。
【符号の説明】
【0154】
1,71,141 配管支持用アタッチメント
2 吊りバンド(配管支持具)
4 配管
5,75,145 荷重伝達部
5a,61a,75a,121a,145a,131a,191a
側方ブロック(荷重伝達ブロック)
5b,61b,75b,121b,145b,131b,191b
側方ブロック(荷重伝達ブロック)
12a,12b 内周面(配管側当接面)
13a,13b 端面(対向端面)
18a,18b,42a,42b,102a,102b,172a,172b
嵌合溝
41a,101a,171a 底部ブロック(荷重伝達ブロック)
41b,101b,171b 頂部ブロック(荷重伝達ブロック)
51 マグネットシート(磁性体)
52 ボルト(金属物)
72,132 空隙
73 六角形状隔壁
133 閉塞板
142a,142b 先端面(配管側当接面)
143a,143b 突条(突起)