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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-03
(45)【発行日】2023-10-12
(54)【発明の名称】タンク、船舶
(51)【国際特許分類】
   B65D 90/02 20190101AFI20231004BHJP
   B63B 25/16 20060101ALI20231004BHJP
   B65D 88/12 20060101ALI20231004BHJP
【FI】
B65D90/02 G
B63B25/16 P
B65D88/12 D
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020168963
(22)【出願日】2020-10-06
(65)【公開番号】P2022061153
(43)【公開日】2022-04-18
【審査請求日】2023-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】518022743
【氏名又は名称】三菱造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】渡部 亨尚
(72)【発明者】
【氏名】高田 龍祐
【審査官】矢澤 周一郎
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第208560418(CN,U)
【文献】実開昭57-194892(JP,U)
【文献】特開2002-284287(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2012-0044045(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 90/02
B63B 25/16
B65D 88/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平方向を長手方向として延びる筒状部を有するタンク本体と、
前記筒状部の径方向の内側に前記長手方向に間隔を空けて配置され、それぞれ前記筒状部の内壁面に沿って周方向に連続し、前記内壁面に固定された一対の環状部材と、
前記一対の環状部材の径方向の内側に配置され、前記長手方向に延びる筒状で、前記一対の環状部材の内周縁部同士を接続する筒状部材と、
前記筒状部材の径方向の内側に配置され、前記筒状部材の前記径方向の内側の少なくとも一部を閉塞し、外周部が前記筒状部材に接合された隔壁と、
前記隔壁の前記長手方向の一方側を向く隔壁表面に沿って延び、前記隔壁表面に固定された複数のリブと、
を備えるタンク。
【請求項2】
前記リブに対して前記筒状部材を挟んで前記径方向の外側に配置され、前記筒状部材、及び一対の前記環状部材に接合された外周部材、を更に備える
請求項1に記載のタンク。
【請求項3】
前記外周部材が、前記タンク本体の前記内壁面に非接合とされている、
請求項2に記載のタンク。
【請求項4】
前記外周部材は、前記径方向の内側から外側に向かって、前記径方向に交差する断面における断面積が漸次縮小している
請求項3に記載のタンク。
【請求項5】
前記隔壁は、前記一対の環状部材のうち、前記長手方向の他方側に配置された前記環状部材と前記長手方向で重なる位置に配置されている
請求項1から4の何れか一項に記載のタンク。
【請求項6】
前記リブは、前記一対の環状部材のうち、前記長手方向の一方側に配置された前記環状部材と前記長手方向で重なる位置に配置されている
請求項1から5の何れか一項に記載のタンク。
【請求項7】
前記環状部材は、前記長手方向に交差する板状をなしている
請求項1から6の何れか一項に記載のタンク。
【請求項8】
請求項1から7の何れか一項に記載のタンクを備える船舶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、タンク、船舶に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、水平配置式略円筒形タンク(以下、単に筒型タンクと称する)を備える船舶が開示されている。このような筒型タンクに液体を収容する場合、船舶の揺れによって、筒型タンク内の液体が揺動する。例えば、筒型タンク内で、筒型タンクの長手方向に液体が揺動する、いわゆるスロッシングにより、筒型タンクや筒型タンク内に設けられた部材に大きな圧力が作用して悪影響を及ぼすことがある。そのため、筒型タンク内に、筒型タンクの長手方向に交差する面に沿うように隔壁を配置している。
特許文献1では、筒型タンク内に、互いに隣接する2つの隔壁(円形多孔隔壁)と、2つの隔壁の中間に配置され、かつ、2つの隔壁に対して溶接された交差補強材の骨組み構造と、を備える構成が開示されている。この構成において、円形多孔隔壁の外周部は、タンクの内周面に溶接により接合されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2009-541118号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されているような筒型タンクの隔壁は、その外周部を、筒型タンクの内周面に溶接により接合しているため、筒型タンク内の液体から隔壁に過大な圧力が作用すると、隔壁とタンクとの溶接部や、タンク自体が損傷してしまう可能性がある。
【0005】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであって、隔壁に過大な圧力が作用した場合であっても、隔壁とタンクとの接合部やタンク自体への影響を抑えることが可能なタンク、船舶を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示に係るタンクは、タンク本体と、一対の環状部材と、筒状部材と、隔壁と、複数のリブと、を備える。前記タンク本体は、水平方向を長手方向として延びる筒状部を有する。前記一対の環状部材は、前記筒状部の径方向の内側に前記長手方向に間隔を空けて配置されている。前記一対の環状部材は、それぞれ前記筒状部の内壁面に沿って周方向に連続している。前記一対の環状部材は、前記内壁面に固定されている。前記筒状部材は、前記一対の環状部材の径方向の内側に配置されている。前記筒状部材は、前記長手方向に延びる筒状である。前記筒状部材は、前記一対の環状部材の内周縁部同士を接続する。前記隔壁は、前記筒状部材の径方向の内側に配置されている。前記隔壁は、前記筒状部材の前記径方向の内側の少なくとも一部を閉塞している。前記隔壁は、外周部が前記筒状部材に接合されている。前記複数のリブは、前記隔壁の前記長手方向の一方側を向く隔壁表面に沿って延びている。前記複数のリブは、前記隔壁表面に固定されている。
【0007】
本開示に係る船舶は、上記したようなタンクを備えている。
【発明の効果】
【0008】
本開示のタンク、船舶によれば、隔壁に過大な圧力が作用した場合であっても、隔壁とタンクとの接合部やタンク自体への影響を抑えることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の実施形態に係るタンクを備えた船舶の概略構成を示す平面図である。
図2図1のII-II線に沿う断面図である。
図3】本開示の実施形態に係るタンクに設けられた制水隔壁を示す斜視図である。
図4】上記制水隔壁の断面図である。
図5】上記制水隔壁を、長手方向の一方側から見た図である。
図6】上記制水隔壁に対し、長手方向の一方側から他方側に圧力が作用した場合を模式的に示す図である。
図7】上記制水隔壁に対し、長手方向の他方側から一方側に圧力が作用した場合を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施形態に係るタンク、船舶について、図1図7を参照して説明する。
(船舶の構成)
図1に示すように、本開示の実施形態における船舶1は、例えば、液化天然ガス(LNG)、液化石油ガス(LPG:Liquefied Petroleum Gas)等、の液化ガスを運搬する。この船舶1は、船体2と、タンク10と、を少なくとも備えている。
【0011】
(船体の構成)
船体2は、その外殻をなす一対の舷側3A,3Bと、船底(図示無し)と、上甲板5と、を有している。舷側3A,3Bは、左右舷側をそれぞれ形成する一対の舷側外板を有している。船底(図示無し)は、これら舷側3A,3Bを接続する船底外板を有している。これら一対の舷側3A,3B及び船底(図示無し)により、船体2の外殻は、船首尾方向Daに直交する断面において、U字状を成している。上甲板5は、例えば、外部に露出する全通甲板である。船体2には、船尾2b側の上甲板5上に、居住区を有する上部構造7が形成されている。本実施形態で例示する船体2は、上部構造7よりも船首2a側の上甲板5と船底との間(言い換えれば、船体2内)に、タンク搭載区画(ホールド)8を有している。
【0012】
(タンクの構成)
タンク10は、タンク搭載区画8内に、複数が配置されている。本実施形態において、タンク搭載区画8内に配置された複数のタンク10は、船首尾方向Daに間隔をあけて配置されている。
【0013】
図2に示すように、タンク10は、タンク本体11と、制水隔壁20と、を備えている。
タンク本体11は、その内部に液化ガスLを収容する。タンク本体11は、筒状部12と、端部球状部13と、を備えている。筒状部12は、水平方向を長手方向Dxとして延びている。本実施形態において、筒状部12は、長手方向Dxに直交する断面形状(言い換えれば、船幅方向に延びる垂直平面で切断した断面形状)が長手方向Dxで一定の円形をなす円筒状に形成されている。本実施形態において、タンク10(筒状部12)の長手方向Dxは、船首尾方向Daと一致している。端部球状部13は、筒状部12の長手方向Dxの両端部にそれぞれ配置されている。これら端部球状部13は、それぞれ半球状をなしている。言い換えれば、これら端部球状部13は、長手方向Dxに直交する断面視で、長手方向Dxの外側に向かうにしたがって漸次縮径するように形成されている。端部球状部13は、それぞれ筒状部12の船首尾方向Da両端の開口を閉塞している。
【0014】
(制水隔壁の構成)
制水隔壁20は、例えば、筒状部12の長手方向Dxの中間部に配置されている。
なお、図2において、制水隔壁20を一つだけ設ける場合を例示しているが、制水隔壁20は、筒状部12内に、長手方向Dxに間隔を空けて複数配置してもよい。
【0015】
図3図5に示すように、制水隔壁20は、一対の環状部材21,22と、筒状部材23と、隔壁25と、複数のリブ27と、外周部材29と、を備えている。
【0016】
一対の環状部材21,22は、上述した筒状部12の径方向Drの内側に配置されている。一対の環状部材21,22は、長手方向Dxに間隔を空けて配置されている。一対の環状部材21,22は、それぞれ筒状部12の内壁面12wに沿って周方向Dcに連続している。一対の環状部材21,22は、長手方向Dxから見て、それぞれ円環状を成している。一対の環状部材21,22は、長手方向Dxに直交(交差)する表裏面を有した板状に形成されている。一対の環状部材21,22は、それぞれ筒状部12の内壁面12wに溶接により固定されている。本実施形態における環状部材21と環状部材22とは、同一形状の場合を例示しているが、これに限られない。
【0017】
筒状部材23は、一対の環状部材21,22の径方向Drの内側に配置されている。筒状部材23は、長手方向Dxに延びる筒状である。筒状部材23は、一対の環状部材21,22の内周縁部21a,22a同士を接続する(図4参照)。本実施形態において、筒状部材23は、一対の環状部材21,22に対し、長手方向Dxの両側に僅かに突出している。
【0018】
隔壁25は、タンク本体11内に収容した液化ガスLが長手方向Dxに移動することを抑える。隔壁25は、筒状部材23の径方向Drの内側に配置されている。隔壁25の外縁は、筒状部材23に溶接により接合されている。隔壁25は、筒状部材23の径方向Drの内側の空間のうち少なくとも一部を閉塞している。ここで、隔壁25は、筒状部材23の径方向Drの内側の全体を閉塞していてもよい。この場合の隔壁25は、筒状部材23の径方向Drの内側の円形の空間全体を閉塞すべく、長手方向Dxから見て円板状をなす。本実施形態における隔壁25には、長手方向Dxの両側に連通する開口やスリット(図示無し)が形成され、隔壁25を挟んだ両側で液化ガスLの行き来を許容するように形成されている。
【0019】
隔壁25は、一対の環状部材21,22のうち、長手方向Dxの他方側に配置された環状部材22と長手方向Dxで重なる位置に配置されている。言い換えると、隔壁25は、環状部材22と共に同一の垂直平面上に配置されている。本実施形態における隔壁25の長手方向Dxの厚さは、環状部材21,22の長手方向Dxの厚さと同等又は僅かに薄くなっている。
【0020】
複数のリブ27は、隔壁25を補強し、タンク本体11内で液化ガスLが長手方向Dxに揺動したときに液化ガスLから作用する長手方向Dxの圧力によって、隔壁25が撓み変形することを抑える。複数のリブ27は、長手方向Dxの一方側を向く隔壁25の隔壁表面25fに沿って延びている。複数のリブ27は、それぞれ隔壁表面25fに溶接により固定されている。さらに、複数のリブ27の両端部は、それぞれ筒状部材23の内周面に溶接により固定されている。
【0021】
本実施形態における複数のリブ27は、上下方向Dzに延びている。複数のリブ27は、隔壁表面25fに沿うタンク幅方向Dyに互いに間隔を空けて配置されている。本実施形態において、各リブ27は、その延在方向(上下方向Dz)に直交する断面形状が、T字状とされている。
【0022】
各リブ27は、ウェブ27aと、フランジ27bと、を一体に有している。ウェブ27aは、隔壁表面25fに直交する板状で、上下方向Dzに連続して延びている。このウェブ27aが、隔壁25の隔壁表面25fに溶接により接合されている。本実施形態のウェブ27aの長手方向Dxの寸法は、環状部材21と環状部材22との間の長手方向Dxの距離と同等になっている。
【0023】
フランジ27bは、隔壁表面25fとは長手方向Dxで反対側のウェブ27aの縁部に形成されている。フランジ27bは、隔壁表面25fと平行な板状で、上下方向Dzに連続して延びている。ここで、本実施形態のフランジ27bの長手方向Dxの厚さは、環状部材21,22の厚さと同等となっている。なお、本実施形態においては、ウェブ27aが一定幅の帯状に形成されている場合を例示しているが、ウェブ27aは、一定幅に限られない。
【0024】
上記のリブ27と、一対の環状部材21,22のうち、長手方向Dxの一方側に配置された環状部材21とは、長手方向Dxで重なる位置に配置されている。本実施形態では、リブ27のフランジ27bが、環状部材21と同一面内に配置されている場合を例示している。
【0025】
外周部材29は、リブ27に対して筒状部材23を挟んで径方向Drの外側に配置されている。外周部材29は、筒状部材23の上下方向Dzの両側に配置されている。外周部材29は、タンク幅方向Dy(図5参照)に直交する面に沿う板状をなしている。例えば、外周部材29の厚さは、リブ27のウェブ27aの厚さと同等にすることができる。
【0026】
外周部材29は、筒状部材23と、一対の環状部材21,22とに、それぞれ溶接により接合されている。外周部材29の長手方向Dxの一方側の端部29r(図4参照)は、径方向Drにおいて、環状部材21の外周端21sと同一位置に配置されている。同様に、外周部材29の長手方向Dxの他方側の端部29sは、径方向Drにおいて、環状部材22の外周端22sと同一位置に配置されている。
【0027】
外周部材29には、凹部29pが形成されている。この凹部29pは、端部29r,29sに対し、径方向Drの内側に窪む曲線状に形成されている。これにより、外周部材29は凹部29pが形成された部分で、径方向Drの内側から外側に向かって、径方向Drに交差する断面における断面積が漸次縮小している。外周部材29の径方向Drの外側の端部29r,29sは、タンク本体11の内壁面12wに対して非接合とされている。
【0028】
図6に示すように、このような制水隔壁20は、例えば、長手方向Dxの他方側から一方側に向かう圧力P1(図6中、矢印で示す)によって隔壁25及び複数のリブ27が撓み変形すると、一対の環状部材21,22のうち、長手方向Dxの一方側に位置する環状部材21には、この環状部材21を上下方向Dzに引っ張る方向の力(偶力)F11(図6中、矢印で示す)が作用する。この力F11により、長手方向Dxの一方側に位置する環状部材21は、上下方向Dzに広がるように弾性変形する。
【0029】
一方で、長手方向Dxの他方側に位置する環状部材22には、この環状部材22を上下方向Dzに圧縮する方向の力(偶力)F12(図6中、矢印で示す)が作用する。この力F12により、長手方向Dxの他方側に位置する環状部材22は、上下方向Dzに潰れるように弾性変形する。
【0030】
また、例えば、図7に示すように、長手方向Dxの一方側から他方側に向かう圧力P2(図7中、矢印で示す)によって隔壁25及び複数のリブ27が撓み変形すると、長手方向Dxの一方側に位置する環状部材21には、この環状部材21を上下方向Dzに圧縮する方向の力(偶力)F21(図7中、矢印で示す)が作用する。この力F21により、長手方向Dxの一方側に位置する環状部材21は、上下方向Dzに潰れるように弾性変形する。
【0031】
また、長手方向Dxの他方側に位置する環状部材22には、この環状部材22を上下方向Dzに引っ張る方向の力(偶力)F22(図7中、矢印で示す)が作用する。この力F22により、長手方向Dxの他方側に位置する環状部材22は、上下方向Dzに広がるように弾性変形する。
【0032】
(作用効果)
本実施形態のタンク10では、隔壁25及び複数のリブ27と、タンク本体11の筒状部12の内壁面12wとの間に、一対の環状部材21,22と、筒状部材23とを備えている。
上記実施形態によれば、タンク10内の流体が長手方向Dxに揺動すると、長手方向Dxの圧力P1,P2が隔壁25に作用する。そして、この長手方向Dxの圧力P1,P2によって、隔壁25及び複数のリブ27が変形する。これら隔壁25及び複数のリブ27の変形に伴い、筒状部材23を介して、環状部材21,22が上下方向Dzに広がったり潰れたりするように弾性変形する。言い換えれば、隔壁25及び複数のリブ27の端部の曲げモーメントが、環状部材21,22の偶力として伝達されて、環状部材21,22が上下方向Dz(径方向Dr)に弾性変形する。
【0033】
したがって、環状部材21,22の上下方向への弾性変形に伴う応力がタンク本体11に作用するようになり、その結果、タンク本体11に隔壁25及び複数のリブ27が直接固定されている場合のように固定部近傍の局所的な応力発生を抑えることができる。
したがって、隔壁25に過大な圧力が作用した場合であっても、制水隔壁20とタンク10との接合部やタンク10自体への影響を抑えることができる。
【0034】
上記実施形態では、更に、リブ27に対して筒状部材23を挟んで径方向Drの外側に配置され、筒状部材23及び一対の環状部材21,22に接合された外周部材29を備えている。
これにより、隔壁25に作用する長手方向Dxの圧力P1,P2によって隔壁25及び複数のリブ27が変形したとき、環状部材21,22に生じる偶力の一部を、外周部材29で受けることができる。そのため、筒状部材23や環状部材21,22の変形を抑えることができる。また、外周部材29により、環状部材21,22が互に離間及び接近する方向へ変形することを抑制することができる。そのため、環状部材21,22と筒状部材23との接続部に生じる応力を低減できる。
【0035】
上記実施形態では、更に、外周部材29が、タンク本体11の内壁面12wに非接合とされている。
これにより、隔壁25に作用する長手方向Dxの圧力P1,P2によって隔壁25及び複数のリブ27が変形した場合に、各リブ27から筒状部材23を介して外周部材29に外力が作用しても、外周部材29がタンク本体11の内壁面12wに非接合であるので、外周部材29とタンク本体11との間で応力が生じることを抑えられる。
また、通常は、内圧によりタンク10のタンク本体11にはその周方向Dcに応力が作用する。例えば、外周部材29が内壁面12wに接合されていた場合、その接合された部位は、タンク本体11に作用する周方向Dcの応力を増加させる応力集中部となる。しかし、外周部材29が、タンク本体11の内壁面12wに非接合とされていることで、当該応力の増加を抑えることができる。
【0036】
上記実施形態では、更に、外周部材29が、径方向Drの内側から外側に向かって、径方向Drに交差する断面における断面積が漸次縮小している。
これにより、隔壁25に作用する長手方向Dxの圧力によって隔壁25及び複数のリブ27が変形したときに、外周部材29がタンク本体11に接して応力集中が生じることを抑えることができる。さらに、隔壁25に作用する長手方向Dxの圧力P1,P2によって隔壁25及び複数のリブ27が変形したときに、環状部材21,22が上下方向Dz(径方向Dr)に弾性変形することを外周部材29が阻害するのを抑えることができる。また、外周部材29の断面積を漸次縮小することで、外周部材29の剛性を漸次低下させることができるため、剛性が急激に低下することによる応力集中を回避できる。
【0037】
上記実施形態では、更に、隔壁25が、長手方向Dxで環状部材22と重なる位置に配置されている。
これにより、長手方向Dxの圧力P1,P2によって隔壁25が変形したときに、隔壁25の曲げモーメントを、長手方向Dxの他方側に配置された環状部材22の偶力として、より効率良く伝達させることができる。
【0038】
上記実施形態では、更に、リブ27が、環状部材21と長手方向Dxで重なる位置に配置されている。また、上記実施形態では、リブ27のフランジ27bが環状部材21と長手方向Dxで重なる位置に配置されている。
これにより、長手方向Dxの圧力P1,P2によって隔壁25とともに複数のリブ27が変形したときに、複数のリブ27の曲げモーメントを、長手方向Dxの一方側に配置された環状部材21の偶力として、より効率良く伝達させることができる。また、リブ27のフランジ27bが環状部材21と長手方向Dxで重なる位置に配置されていることで、複数のリブ27の曲げモーメントを、長手方向Dxの一方側に配置された環状部材21の偶力として、より一層効率良く伝達させることができる。
【0039】
上記実施形態では、更に、環状部材21,22は、長手方向Dxに交差する板状をなしている。
これにより、隔壁25に作用する長手方向Dxの圧力P1,P2によって隔壁25及び複数のリブ27が変形したときに、環状部材21,22の径方向Drへの弾性変形を良好に生じさせることができる。
【0040】
そして、上記実施形態の船舶1は、上記したようなタンク10を備えている。
そのため、隔壁25に過大な圧力P1,P2が作用した場合であっても、隔壁25とタンク10との接合部やタンク10自体への影響を抑えることができる。
【0041】
(その他の実施形態)
以上、本開示の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
例えば、上記実施形態において、複数のリブ27を、上下方向Dzに延びる構成としたが、これに限らない。例えば、各リブ27は、タンク幅方向Dyに延びるようにしてもよい。さらに、リブ27は、隔壁表面25fに沿って、斜め方向に延びるようにしてもよい。また、上記実施形態におけるリブ27は、タンク10の長手方向Dxから見て直線状の場合を例示した。しかし、リブ27は、長手方向Dxから見て僅かに湾曲していてもよい。また、複数のリブ27は、互いに平行に延びる場合を例示したがこれに限られない。
【0042】
また、各リブ27の断面形状は、ウェブ27aとフランジ27bとを有するT字状に限られない。各リブ27の断面形状は、例えばL字状、I字状、H字状等としてもよい。
【0043】
また、上記実施形態において、タンク10は、タンク本体11を一つのみ備えるようにしたが、これに限らない。タンク10は、いわゆるバイローブ(Bi-lobe)型、トライローブ(Tri-lobe)型等のマルチローブ型で、長手方向Dxに延びるタンク本体11を複数組み合わせて備える構成であってもよい。このような場合、タンク本体11の断面形状は、円形に限らず、他の形状であってもよい。この場合、制水隔壁20の輪郭は、バイローブ型やトライローブ型等のタンク10のタンク本体11の断面形状に応じた形状とすればよい。
【0044】
さらに、上記実施形態では、タンク10を、筒状部12の長手方向Dxを船首尾方向Daに沿わせて配置するようにしたが、これに限られない。タンク10は、筒状部12の長手方向Dxを、船幅方向に沿わせて配置してもよい。
また、上記実施形態では、タンク10が端部球状部13を備える場合を例示した。しかし、タンク10の長手方向の端部の形状は、半球状に限られない。さらに、船舶1が備えるタンク10の個数や配置は、上述したものに限られない。
【0045】
また、上記実施形態では、タンク10に液化ガスLを収容するようにしたが、これに限られない。例えば、タンク10は、燃料や、水等の各種液体を収容するものであってもよい。
【0046】
また、上記実施形態では、タンク10を船舶1に備えるようにしたが、これに限られない。タンク10の用途は、収容する液体が揺動するような用途であれば、船舶用に限られない。例えば、海洋構造物等、適宜他の用途としても用いることができる。
【0047】
<付記>
実施形態に記載のタンク10、船舶1は、例えば以下のように把握される。
【0048】
(1)第1の態様に係るタンク10は、水平方向を長手方向Dxとして延びる筒状部12を有するタンク本体11と、前記筒状部12の径方向Drの内側に前記長手方向Dxに間隔を空けて配置され、それぞれ前記筒状部12の内壁面12wに沿って周方向Dcに連続し、前記内壁面12wに固定された一対の環状部材21,22と、前記一対の環状部材21,22の径方向Drの内側に配置され、前記長手方向Dxに延びる筒状で、前記一対の環状部材21、22の内周縁部21a,22a同士を接続する筒状部材23と、前記筒状部材23の径方向Drの内側に配置され、前記筒状部材23の前記径方向Drの内側の少なくとも一部を閉塞し、外周部が前記筒状部材23に接合された隔壁25と、前記隔壁25の前記長手方向Dxの一方側を向く隔壁表面25fに沿って延び、前記隔壁表面25fに固定された複数のリブ27と、を備える。
【0049】
このタンク10によれば、隔壁25に作用する長手方向Dxの圧力P1,P2によって隔壁25及び複数のリブ27が変形したときに、リブ27の曲げモーメントが環状部材21,22の偶力として伝達されて、環状部材21,22が径方向Drに弾性変形する。そのため、環状部材21,22の径方向Drへの弾性変形に伴う応力がタンク本体11に作用するようになり、環状部材21,22とタンク本体11の内壁面12wとの接合部に、過大な応力が生じることが抑えられる。したがって、隔壁25に過大な圧力P1,P2が作用した場合であっても、隔壁25とタンク10との接合部やタンク10自体への影響を抑えられる。
【0050】
(2)第2の態様に係るタンク10は、(1)のタンク10であって、前記リブ27に対して前記筒状部材23を挟んで前記径方向Drの外側に配置され、前記筒状部材23、及び一対の前記環状部材21,22に接合された外周部材29、を更に備える。
【0051】
これにより、隔壁25に作用する長手方向Dxの圧力P1,P2によって隔壁25及び複数のリブ27が変形したとき、環状部材21,22に生じる偶力の一部を、外周部材29で受けることができる。これにより、筒状部材23や環状部材21,22の変形を抑えることができる。
【0052】
(3)第3の態様に係るタンク10は、(1)のタンク10であって、前記外周部材29が、前記タンク本体11の前記内壁面12wに非接合とされている。
【0053】
これにより、隔壁25に作用する長手方向Dxの圧力P1,P2によって隔壁25及び複数のリブ27が変形した場合に、各リブ27から筒状部材23を介して外周部材29に外力が作用しても、外周部材29がタンク本体11の内壁面12wに非接合であるので、外周部材29とタンク本体11との間で応力が生じることを抑えられる。
また、通常は、内圧によりタンク10のタンク本体11にはその周方向Dcに応力が作用する。例えば、外周部材29が内壁面12wに接合されていた場合、その接合された部位は、タンク本体11に作用する周方向Dcの応力を増加させる応力集中部となる。しかし、外周部材29が、タンク本体11の内壁面12wに非接合とされていることで、当該応力の増加を抑えることができる。
【0054】
(4)第4の態様に係るタンク10は、(3)のタンク10であって、前記外周部材29は、前記径方向Drの内側から外側に向かって、前記径方向Drに交差する断面における断面積が漸次縮小している。
【0055】
これにより、隔壁25に作用する長手方向Dxの圧力P1,P2によって隔壁25及び複数のリブ27が変形したときに、環状部材21,22が径方向Drに弾性変形することを外周部材29が阻害するのを抑えることができる。
また、外周部材29の断面積を漸次縮小することで、外周部材29の剛性を漸次低下させることができるため、剛性が急激に低下することによる応力集中を回避できる。
【0056】
(5)第5の態様に係るタンク10は、(1)から(4)の何れか一つのタンク10であって、前記隔壁25は、前記一対の環状部材21、22のうち、前記長手方向Dxの他方側に配置された前記環状部材22と前記長手方向Dxで重なる位置に配置されている。
【0057】
これにより、隔壁25に作用する長手方向Dxの圧力P1,P2によって隔壁25が変形したときに、隔壁25の曲げモーメントを、長手方向Dxの他方側に配置された環状部材22の偶力としてより効率良く伝達させることができる。
【0058】
(6)第6の態様に係るタンク10は、(1)から(5)の何れか一つのタンク10であって、前記リブ27は、前記一対の環状部材21,22のうち、前記長手方向Dxの一方側に配置された前記環状部材21と前記長手方向Dxで重なる位置に配置されている。
【0059】
これにより、隔壁25に作用する長手方向Dxの圧力P1,P2によって隔壁25とともに複数のリブ27が変形したときに、複数のリブ27の曲げモーメントを、長手方向Dxの一方側に配置された環状部材21の偶力として、より効率良く伝達させることができる。
【0060】
(7)第7の態様に係るタンク10は、(1)から(6)の何れか一つのタンク10であって、前記環状部材21,22は、前記長手方向Dxに交差する板状をなしている。
【0061】
これにより、隔壁25に作用する長手方向Dxの圧力P1,P2によって隔壁25及び複数のリブ27が変形したときに、環状部材21,22の径方向Drへの弾性変形を良好に生じさせることができる。
【0062】
(8)第8の態様に係る船舶1は、(1)から(7)の何れか一つのタンク10を備える。
【0063】
これにより、隔壁25に過大な圧力P1,P2が作用した場合であっても、隔壁25とタンク10との接合部やタンク10自体への影響を抑えることができる。したがって、船舶1に設けられたタンク10の破損を抑えて、船舶1のメンテナンスに掛かる負担を軽減することができる。
【符号の説明】
【0064】
1…船舶
2…船体
2a…船首
2b…船尾
3A,3B…舷側
4…船底
5…上甲板
7…上部構造
8…タンク搭載区画
10…タンク
11…タンク本体
12…筒状部
12w…内壁面
13…端部球状部
20…制水隔壁
21,22…環状部材
21a,22a…内周縁部
21s,22s…外周端
23…筒状部材
25…隔壁
25f…隔壁表面
27…リブ
27a…ウェブ
27b…フランジ
29…外周部材
29p…凹部
29r,29s…端部
L…液化ガス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7