(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-03
(45)【発行日】2023-10-12
(54)【発明の名称】改変されたホスホリパーゼドメインを含むアデノ随伴ウイルス(AAV)
(51)【国際特許分類】
C12N 15/35 20060101AFI20231004BHJP
C12N 15/864 20060101ALI20231004BHJP
C12N 15/866 20060101ALI20231004BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20231004BHJP
C12N 7/01 20060101ALI20231004BHJP
【FI】
C12N15/35
C12N15/864 100Z
C12N15/866 Z ZNA
C12N5/10
C12N7/01
(21)【出願番号】P 2020511907
(86)(22)【出願日】2018-08-30
(86)【国際出願番号】 IB2018056651
(87)【国際公開番号】W WO2019043630
(87)【国際公開日】2019-03-07
【審査請求日】2021-07-06
(32)【優先日】2017-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521375829
【氏名又は名称】ベニテック アイピー ホールディングス インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ストリングス-ウフォムバー,ヴァネッサ
(72)【発明者】
【氏名】カオ,シー-チュー
(72)【発明者】
【氏名】ロエルヴィンク,ペトルス ダブリュ.
【審査官】市島 洋介
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2005/072364(WO,A2)
【文献】J. Virol.,2012年,Vol. 86, No. 17,pp.9163-9174
【文献】J. Virol.,2006年,Vol. 80, No. 4,pp.1874-1885
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C12N 7/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アデノ随伴ウイルス(AAV)ウイルスカプシドタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を含む核酸分子であって、前記ウイルスカプシドタンパク質は、位置1にセリン、位置26にグルタミン酸、位置40にアルギニン、位置43にアスパラギン酸、位置44にセリン及び位置64にリジンを含む改変サブユニット1(VP1)配列を含み、前記アミノ酸位置は、配列番号1に記載される配列に関して規定され、位置1、26、40、43、44及び64のいずれか1以上の前記アミノ酸は、対応する野生型配列に対して改変されており、かつ前記いずれか1以上の位置1、26、40、43、44及び64のアミノ酸以外のさらなるアミノ酸は、前記対応する野生型配列に対して改変されていない、前記核酸分子。
【請求項2】
前記ウイルスカプシドタンパク質が、下記:
(i)前記改変VP1配列が、配列番号15に記載される配列を含む、AAV1由来のウイルスカプシドタンパク質;
(ii)前記改変VP1配列が、配列番号16に記載される配列を含む、AAV3由来のウイルスカプシドタンパク質;
(iii)前記改変VP1配列が、配列番号17に記載される配列を含む、AAV4由来のウイルスカプシドタンパク質;
(iv)前記改変VP1配列が、配列番号18に記載される配列を含む、AAV5由来のウイルスカプシドタンパク質;
(v)前記改変VP1配列が、配列番号19に記載される配列を含む、AAV6由来のウイルスカプシドタンパク質;
(vi)前記改変VP1配列が、配列番号20に記載される配列を含む、AAV7由来のウイルスカプシドタンパク質;
(vii)前記改変VP1配列が、配列番号21に記載される配列を含む、AAV8由来のウイルスカプシドタンパク質;
(viii)前記改変VP1配列が、配列番号22に記載される配列を含む、AAV9由来のウイルスカプシドタンパク質;
(ix)前記改変VP1配列が、配列番号23に記載される配列を含む、AAV10由来のウイルスカプシドタンパク質;
(x)前記改変VP1配列が、配列番号24に記載される配列を含む、AAV11由来のウイルスカプシドタンパク質;
(xi)前記改変VP1配列が、配列番号25に記載される配列を含む、AAV12由来のウイルスカプシドタンパク質;
(xii)前記改変VP1配列が、配列番号26に記載される配列を含むAAV13由来のウイルスカプシドタンパク質
から成る群より選択される、請求項1に記載の核酸分子。
【請求項3】
前記ウイルスカプシドタンパク質がAAV8に由来し、前記改変VP1配列が、配列番号21に記載される配列を含む、請求項1または請求項2に記載の核酸分子。
【請求項4】
前記ウイルスカプシドタンパク質がAAV9に由来し、前記改変VP1配列が、配列番号22に記載される配列を含む、請求項1または請求項2に記載の核酸分子。
【請求項5】
前記ウイルスカプシドタンパク質が、前記改変VP1と同じAAV血清型由来のサブユニット2(VP2)及びサブユニット3(VP3)配列を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の核酸分子。
【請求項6】
前記AAVウイルスカプシドタンパク質をコードするヌクレオチド配列が、昆虫細胞内での発現のためのプロモーターに作動可能に連結されている、請求項1~5のいずれか1項に記載の核酸分子。
【請求項7】
昆虫細胞内での発現のための前記プロモーターが、多角体プロモーターまたはp10プロモーターである、請求項6に記載の核酸分子。
【請求項8】
Rep78及びRep68から選択される少なくとも1つの大型AAV複製(Rep)タンパク質ならびにRep52及びRep40から選択される少なくとも1つの小型AAV Repタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の核酸分子。
【請求項9】
Rep78及びRep52をコードするポリヌクレオチド配列を含む、請求項8に記載の核酸分子。
【請求項10】
前記Repタンパク質をコードする前記ポリヌクレオチド配列が、昆虫細胞内での前記Repタンパク質の発現のためのプロモーターに作動可能に連結されている、請求項8または請求項9に記載の核酸分子。
【請求項11】
昆虫細胞内での発現のための前記プロモーターが、多角体プロモーターまたはp10プロモーターである、請求項10に記載の核酸分子。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の核酸分子を含むバキュロウイルスベクター。
【請求項13】
下記:
(i)請求項1~12のいずれか1項に記載の核酸分子を含む第1のバキュロウイルスベクター;及び
(ii)AAV逆方向末端反復(ITR)配列と隣接する目的のタンパク質またはRNAをコードするポリヌクレオチドを含む第2のバキュロウイルスベクター
を含む複数のバキュロウイルスベクター。
【請求項14】
下記:
(i)請求項1~7のいずれか1項に記載の核酸分子を含む第1のバキュロウイルスベクター;
(ii)Rep78及びRep68から選択される少なくとも1つの大型AAV複製(Rep)タンパク質ならびにRep52及びRep40から選択される少なくとも1つの小型AAV Repタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を含む第2のバキュロウイルスベクター;及び
(iii)AAV逆方向末端反復(ITR)配列と隣接する目的のタンパク質またはRNAをコードするポリヌクレオチドを含む第3のバキュロウイルスベクター
を含む複数のバキュロウイルスベクター。
【請求項15】
前記第2のバキュロウイルスベクターが、Rep78及びRep52をコードするポリヌクレオチド配列を含む、請求項14に記載の複数のバキュロウイルスベクター。
【請求項16】
前記Repタンパク質をコードする前記ポリヌクレオチド配列が、昆虫細胞内での前記Repタンパク質の発現のためのプロモーターに作動可能に連結されている、請求項14または請求項15に記載の複数のバキュロウイルスベクター。
【請求項17】
請求項1~11のいずれか1項に記載の核酸分子を含む昆虫細胞。
【請求項18】
請求項12に記載のバキュロウイルスベクターまたは請求項13~16のいずれか1項に記載の複数のバキュロウイルスベクターを含む昆虫細胞。
【請求項19】
前記AAVウイルスカプシドタンパク質をコードする前記ポリヌクレオチド配列及び前記Repタンパクをコードする前記ポリヌクレオチド配列が、前記昆虫細胞内でエピソームとして複製する組換えバキュロウイルスゲノムから発現される、
請求項8~11及び14~16のいずれか1項に従属する請求項17または18に記載の昆虫細胞。
【請求項20】
AAV逆方向末端反復(ITR)配列と隣接する目的のタンパク質またはRNAをコードするポリヌクレオチドが、前記昆虫細胞内でエピソームとして複製する組換えバキュロウイルスゲノムから発現される、請求項17~19のいずれか1項に記載の昆虫細胞。
【請求項21】
昆虫細胞内でのアデノ随伴ウイルス(AAV)の生成方法であって、下記:
請求項17~20のいずれか1項に記載の昆虫細胞を、培地内で前記細胞がAAVを産生するのに十分な条件下で培養すること
を含む、前記方法。
【請求項22】
昆虫細胞内でのアデノ随伴ウイルス(AAV)の生成方法であって、下記:
(i)昆虫細胞を、請求項8~11のいずれか1項に記載の核酸分子を含むゲノムを有する第1のバキュロウイルス;及びAAV逆方向末端反復(ITR)配列と隣接する目的のタンパク質またはRNAをコードするポリヌクレオチドを含むゲノムを有する第2のバキュロウイルスに同時感染させること;
(ii)(i)で前記バキュロウイルスに感染した前記昆虫細胞を、培地内で前記細胞がAAVを産生するのに十分な条件下で培養すること
を含む、前記方法。
【請求項23】
昆虫細胞内でのアデノ随伴ウイルス(AAV)の生成方法であって、下記:
昆虫細胞を、請求項1~7のいずれか1項に記載の核酸分子を含むゲノムを有する第1のバキュロウイルス;Rep78及びRep68から選択される少なくとも1つの大型AAV複製(Rep)タンパク質ならびにRep52及びRep40から選択される少なくとも1つの小型AAV Repタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を含むゲノムを有する第2のバキュロウイルス;及びAAV逆方向末端反復(ITR)配列と隣接する目的のタンパク質またはRNAをコードするポリヌクレオチドを含むゲノムを有する第3のバキュロウイルスに同時感染させること;
前記第1、第2及び第3のバキュロウイルスに感染した前記昆虫細胞を、培地内で前記細胞がAAVを産生するのに十分な条件下で培養すること
を含む、前記方法。
【請求項24】
前記培地及び/または細胞から前記AAVを回収するさらなる工程を含む、請求項21~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記AAVを精製することを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
請求項21~25のいずれか1項に記載の方法で生成されたアデノ随伴ウイルス(AAV)。
【請求項27】
位置1にセリン、位置26にグルタミン酸、位置40にアルギニン、位置43にアスパラギン酸、位置44にセリン及び位置64にリジンを含む改変サブユニット1(VP1)配列を含むウイルスカプシドタンパク質を含むアデノ随伴ウイルス(AAV)であって、前記アミノ酸位置は、配列番号1に記載される配列に関して規定され、位置1、26、40、43、44及び64のいずれか1以上の前記アミノ酸は、対応する野生型配列に対して改変されており、かつ前記いずれか1以上の位置1、26、40、43、44及び64のアミノ酸以外のさらなるアミノ酸は、前記対応する野生型配列に対して改変されていない、前記AAV。
【請求項28】
前記AAVが、下記:
(i)前記改変VP1配列が、配列番号15に記載される配列を含むAAV血清型1;
(ii)前記改変VP1配列が、配列番号16に記載される配列を含むAAV血清型3;(iii)前記改変VP1配列が、配列番号17に記載される配列を含むAAV血清型4;
(iv)前記改変VP1配列が、配列番号18に記載される配列を含むAAV血清型5;(v)前記改変VP1配列が、配列番号19に記載される配列を含むAAV血清型6;
(vi)前記改変VP1配列が、配列番号20に記載される配列を含むAAV血清型7;(vii)前記改変VP1配列が、配列番号21に記載される配列を含むAAV血清型8;
(viii)前記改変VP1配列が、配列番号22に記載される配列を含むAAV血清型9;
(ix)前記改変VP1配列が、配列番号23に記載される配列を含むAAV血清型10;
(x)前記改変VP1配列が、配列番号24に記載される配列を含むAAV血清型11;(xi)前記改変VP1配列が、配列番号25に記載される配列を含むAAV血清型12;及び
(xii)前記改変VP1配列が、配列番号26に記載される配列を含むAAV血清型13
から成る群より選択される、請求項27に記載のAAV。
【請求項29】
前記AAVが血清型8のものであり、かつ配列番号21に記載される配列を含む改変VP1を含む、請求項27または請求項28に記載のAAV。
【請求項30】
前記AAVが血清型9のものであり、かつ配列番号22に記載される配列を含む改変VP1を含む、請求項27または請求項28に記載のAAV。
【請求項31】
昆虫細胞内で産生される血清型2以外の血清型由来のアデノ随伴ウイルス(AAV)の機能性の改善方法であって、前記AAVのウイルスカプシドタンパク質を、位置1、26、40、43、44及び64のみの1以上のアミノ酸を置換することによって、対応する野生型配列に対して改変することを含み、前記残基位置は、配列番号1に記載される配列に関して決定され、その結果、前記ウイルスカプシドタンパク質は、位置1にセリン、位置26にグルタミン酸、位置40にアルギニン、位置43にアスパラギン酸、位置44にセリン及び位置64にリジンを含み、かつ前記AAVは、改変されなかった、昆虫細胞内で産生される対応する野生型AAVに比べて改善された機能性を有する、前記方法。
【請求項32】
前記AAVの前記ウイルスカプシドタンパク質を、下記:
(i)前記AAVが血清型1のものであるとき、前記ウイルスカプシドタンパク質は、配列番号15に記載される配列を含むVP1配列を含む;
(ii)前記AAVが血清型3のものであるとき、前記ウイルスカプシドタンパク質は、配列番号16に記載される配列を含むVP1配列を含む;
(iii)前記AAVが血清型4のものであるとき、前記ウイルスカプシドタンパク質は、配列番号17に記載される配列を含むVP1配列を含む;
(iv)前記AAVが血清型5のものであるとき、前記ウイルスカプシドタンパク質は、配列番号18に記載される配列を含むVP1配列を含む;
(v)前記AAVが血清型6のものであるとき、前記ウイルスカプシドタンパク質は、配列番号19に記載される配列を含むVP1配列を含む;
(vi)前記AAVが血清型7のものであるとき、前記ウイルスカプシドタンパク質は、配列番号20に記載される配列を含むVP1配列を含む;
(vii)前記AAVが血清型8のものであるとき、前記ウイルスカプシドタンパク質は、配列番号21に記載される配列を含むVP1配列を含む;
(viii)前記AAVが血清型9のものであるとき、前記ウイルスカプシドタンパク質は、配列番号22に記載される配列を含むVP1配列を含む;
(ix)前記AAVが血清型10のものであるとき、前記ウイルスカプシドタンパク質は、配列番号23に記載される配列を含むVP1配列を含む;
(x)前記AAVが血清型11のものであるとき、前記ウイルスカプシドタンパク質は、配列番号24に記載される配列を含むVP1配列を含む;
(xi)前記AAVが血清型12のものであるとき、前記ウイルスカプシドタンパク質は、配列番号25に記載される配列を含むVP1配列を含む;及び
(xii)前記AAVが血清型13のものであるとき、前記ウイルスカプシドタンパク質は、配列番号26に記載される配列を含むVP1配列を含む
ように、前記対応する野生型配列に対して改変することを含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
血清型8のAAVの前記ウイルスカプシドタンパク質を、前記ウイルスカプシドタンパク質が、配列番号21に記載される配列を含むVP1配列を含むように、前記対応する野生型配列に対して改変することを含む、請求項31または請求項32に記載の方法。
【請求項34】
血清型9のAAVの前記ウイルスカプシドタンパク質を、前記ウイルスカプシドタンパク質が、配列番号22に記載される配列を含むVP1配列を含むように、前記対応する野生型配列に対して改変することを含む、請求項31または請求項32に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照によりその内容全体を本明細書に援用する2017年8月31日に提出された米国仮出願第62/553,028号の利益を主張する。
【0002】
EFS-WEB経由で電子的に提出した配列表への言及
本出願は、EFS-Web経由で電子的に提出した配列表(名称:「4226.006PC01_Sequence_Listing_ST25.txt」;サイズ:100,400バイト;2018年8月22に作成した)を含み、その内容全体を参照により本明細書に援用する。
【0003】
技術分野
本開示は、一般的に、改変されたホスホリパーゼドメインを含むウイルスカプシドタンパク質を有するアデノ随伴ウイルス(AAV)、及び昆虫細胞内でのバキュロウイルス発現系を用いたその生成方法に関する。
【背景技術】
【0004】
背景
アデノ随伴ウイルス(AAV)は、ヒト遺伝子治療のための最も有望なウイルスベクターの1つである。AAVは、2つのORFを発現する約4.7kbのssDNAゲノムを含有し、1つのORFは、ウイルスコートタンパク質VP1、VP2及びVP3ならびにアセンブリ関連タンパク質またはアセンブリ活性化タンパク質(AAP)をコードし、第2のORFは4つのウイルスレプリカーゼ成分をコードし;これらのORFは、2つの逆方向末端反復配列(ITR)と隣接する。該ITRは、新生ウイルスカプシドにおけるゲノムの複製及び新たに合成されるゲノムのローディングで非常に重要な役割を果たすウイルスrepタンパク質によって認識される。組換えAAV粒子は、目的の遺伝子(GOI)が2つのITR間でクローン化され、ウイルスのcap及びrepタンパク質がトランスにもたらされるベクターを用いて調製することができる。
【0005】
組換えAAV粒子は、分裂ヒト細胞のみならず、非分裂ヒト細胞をも効率的に感染させる能力を保持する。ウイルス粒子は、核に入り、そこでゲノムはエピソームとして存続し、長期間、数か月から数年にわたって組換えベクター内に存在するいずれのトランスジーンをも発現し続けると考えられる。重要なことに、AAV感染は普及しているにもかかわらず、該ウイルスはいずれの疾患にも関連しないと一般的に考えられる。さらに、典型的に血清型1~12と呼ばれる多くのAAV血清型があり、これらはその組織親和性が異なる。これらの利点を考慮して、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)は、多くのヒト疾患のための遺伝子治療の臨床試験で評価されている。
【0006】
組換えAAVのための2つの主なタイプの下記産生系がある:(1)哺乳動物の細胞株を用いる従来の生成系(例えば、HEK293細胞、COS細胞、HeLa細胞、KB細胞);及び(2)さらに最近では、昆虫細胞を用いる産生系。
【0007】
哺乳動物の産生系は、典型的にトリプルトランスフェクションを伴い、3種のプラスミドが哺乳動物の細胞株にトランスフェクトされ、これらのプラスミドは、i)AAV rep及びコートタンパク質、ii)アデノウイルス由来ヘルパー機能及びiii)ITRと隣接する目的の遺伝子をコードする。AAV rep及びITR配列は、典型的にAAV2血清型、ならびにCAP配列に由来し、他の血清型由来の配列に置き換えて偽型ウイルス粒子を作り出すことができ、ウイルスカプシドタンパク質の選択は望ましい組織親和性を反映する。
【0008】
哺乳動物の産生系はいくつかの欠点に悩まされる。治療用途にとって最も重要な欠点は、付着性哺乳動物細胞の大規模トランスフェクションの困難さ及び結果としてのAAV産生系の不十分な拡張性である。さらに、哺乳動物細胞培養で産生される臨床用途のベクターは、哺乳動物宿主細胞内に存在する望ましくなく、おそらく病原性の物質で汚染されるリスクがある。
【0009】
哺乳動物産生系の代替物として、バキュロウイルスベクターを用いるAAVの生成に昆虫細胞を使用することができる。バキュロウイルスが昆虫細胞に感染すると、バキュロウイルスはエピソームとして複製し、感染細胞においてバキュロウイルス由来プロモーターの使用を通じて極端に高いレベルのトランスジーン発現を誘導することができる。典型的に昆虫細胞を2種の組換えバキュロウイルスで同時感染させ、一方の組換えバキュロウイルスはAAV cap及びrepタンパク質を発現し、第2のバキュロウイルスは、ITRと隣接するGOIを含有し、ウイルスヘルパー機能を必要としない。
【0010】
ウシ胎仔血清等を補充しない懸濁培養液で成長するように昆虫細胞を適応させたので、AAVの生成に昆虫を使用することの主な利点は拡張性である。しかしながら、昆虫細胞産生系は、3種のAAVカプシドタンパク質(VP1、VP2及びVP3)の正確な化学量論を達成することの困難さ、バキュロウイルス発現ベクターの継代不安定性、及び最も重大なことに、結果として生じるAAVが、従来の哺乳動物細胞内で産生される対応AAVに比べて機能性が低いことを含めたいくつかの欠点もある。
【0011】
昆虫細胞内で産生されるAAVの機能性は、AAV血清型に応じて異なる。例えば、Urabe et al.(2006)J.Virol.80(4):1874-1885は、昆虫細胞内で該バキュロウイルス系で産生されたAAV5粒子は、同じ系で産生されたAAV2に比べて乏しい活性を有すると報告した。従って、AAV2は、昆虫細胞内でバキュロウイルス発現系から産生されると、そのウイルスカプシドタンパク質のサブユニット1(VP1)内のホスホリパーゼドメイン(PLA)の活性を保持し、それによって、ウイルスがエンドソーム区画から脱出して細胞質に達することができるようにすると認識されている。Urabe et alは、ビリオンの機能性を改善するためにAAV5 VP1の少なくとも49個のアミノ酸のN末端部が、AAV2 VP1の対応する部分と置き換えられている、キメラAAV2/5 VP1タンパク質を構築することによって、この問題に部分的に取り組んだ。しかしながら、ヒト遺伝子治療でAAVを使用することへの興味を考慮すると、当技術分野には、AAVが細胞の内部移行後にエンドソームから脱出することができる昆虫細胞内で組換えAAV(AAV2以外の血清型から)を生成する代替方法及び/または改善された方法の必要性が未だにある。
【0012】
公文書、条例、材料、装置、物品等のいずれの考察も、本発明に適した背景を与える目的でのみ本明細書に含まれることを理解されたい。これらの事項のいずれもまたは全ては、それが本出願の任意の請求項の優先日の前に存在したという理由で、本発明に関連する分野における共通の一般知識だったと承認するものと解釈すべきでない。
【発明の概要】
【0013】
概要
本開示は、昆虫細胞内でバキュロウイルス発現系から産生される血清型2以外の血清型からのAAVのエンドソーム脱出能は、ホスホリパーゼドメイン及び隣接領域内の特異的部位でアミノ酸置換を行うことによって、修復または改善できるという発明者らによる予想外の発見に基づいている。詳細には、発明者らは、初めて2種の代表的なAAV血清型、すなわち血清型8及び9のエンドソーム脱出能を、6個までの残基位置でアミノ酸を対応位置のAAV血清型2由来のアミノ酸と置き換えることによって、修復または改善できることを示した。この関連で、本発明者らは、現在まで昆虫細胞内で産生されるAAVの機能性を改善するためにこの戦略が利用されたように、キメラAAVを生成するためにPLAドメイン全体をAAV2のPLAドメインと交換する必要はなく、野生型VP1/PLA配列及びAAV2の野生型VP1/PLA配列、例えば、AAV2/WT VP1を含むモザイクカプシドを発現するAAVを生成する必要もないことを示した。従って、発明者らは、それぞれのAAVの野生型ウイルスカプシドタンパク質内の全ドメイン及び/またはサブユニット配列を置き換えなくても昆虫細胞内で産生される組換え非血清型2AAVのエンドソーム脱出能を修復または改善できる新規手法を提供した。
【0014】
従って、本開示は、アデノ随伴ウイルス(AAV)ウイルスカプシドタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を含む核酸分子であって、該ウイルスカプシドタンパク質は、位置1にセリン、位置26にグルタミン酸、位置40にアルギニン、位置43にアスパラギン酸、位置44にセリン及び位置64にリジンを含む改変サブユニット1(VP1)配列を含み、アミノ酸位置は、配列番号1に記載される配列に関して規定され、位置1、26、40、43、44及び64のいずれか1以上のアミノ酸は、対応する野生型配列に対して改変されており、かつ前記いずれか1以上の位置1、26、40、43、44及び64のアミノ酸以外のさらなるアミノ酸は、対応する野生型配列に対して改変されていない、核酸分子を提供する。
【0015】
一例において、ウイルスカプシドタンパク質は、AAV血清型1に由来する。一例において、ウイルスカプシドタンパク質は、AAV血清型3に由来する。一例において、ウイルスカプシドタンパク質は、AAV血清型4に由来する。一例において、ウイルスカプシドタンパク質は、AAV血清型5に由来する。一例において、ウイルスカプシドタンパク質は、AAV血清型6に由来する。一例において、ウイルスカプシドタンパク質は、AAV血清型7に由来する。一例において、ウイルスカプシドタンパク質は、AAV血清型8に由来する。一例において、ウイルスカプシドタンパク質は、AAV血清型9に由来する。一例において、ウイルスカプシドタンパク質は、AAV血清型10に由来する。一例において、ウイルスカプシドタンパク質は、AAV血清型11に由来する。一例において、ウイルスカプシドタンパク質は、AAV血清型12に由来する。一例において、ウイルスカプシドタンパク質は、AAV血清型13に由来する。
【0016】
一例において、ウイルスカプシドタンパク質は、下記:
(i)改変VP1配列が、配列番号15に記載される配列を含む、AAV1由来のウイルスカプシドタンパク質;
(ii)改変VP1配列が、配列番号16に記載される配列を含む、AAV3由来のウイルスカプシドタンパク質;
(iii)改変VP1配列が、配列番号17に記載される配列を含む、AAV4由来のウイルスカプシドタンパク質;
(iv)改変VP1配列が、配列番号18に記載される配列を含む、AAV5由来のウイルスカプシドタンパク質;
(v)改変VP1配列が、配列番号19に記載される配列を含む、AAV6由来のウイルスカプシドタンパク質;
(vi)改変VP1配列が、配列番号20に記載される配列を含む、AAV7由来のウイルスカプシドタンパク質;
(vii)改変VP1配列が、配列番号21に記載される配列を含む、AAV8由来のウイルスカプシドタンパク質;
(viii)改変VP1配列が、配列番号22に記載される配列を含む、AAV9由来のウイルスカプシドタンパク質;
(ix)改変VP1配列が、配列番号23に記載される配列を含む、AAV10由来のウイルスカプシドタンパク質;
(x)改変VP1配列が、配列番号24に記載される配列を含む、AAV11由来のウイルスカプシドタンパク質;
(xi)改変VP1配列が、配列番号25に記載される配列を含む、AAV12由来のウイルスカプシドタンパク質;及び
(xii)改変VP1配列が、配列番号26に記載される配列を含むAAV13由来のウイルスカプシドタンパク質
から成る群より選択される。
【0017】
一例において、ウイルスカプシドタンパク質は、改変VP1配列が、配列番号15に記載される配列を含むAAV1に由来する。
【0018】
一例において、ウイルスカプシドタンパク質は、改変VP1配列が、配列番号16に記載される配列を含むAAV3に由来する。
【0019】
一例において、ウイルスカプシドタンパク質は、改変VP1配列が、配列番号17に記載される配列を含むAAV4に由来する。
【0020】
一例において、ウイルスカプシドタンパク質は、改変VP1配列が、配列番号18に記載される配列を含むAAV5に由来する。
【0021】
一例において、ウイルスカプシドタンパク質は、改変VP1配列が、配列番号19に記載される配列を含むAAV6に由来する。
【0022】
一例において、ウイルスカプシドタンパク質は、改変VP1配列が、配列番号20に記載される配列を含むAAV7に由来する。
【0023】
一例において、ウイルスカプシドタンパク質は、改変VP1配列が、配列番号21に記載される配列を含むAAV8に由来する。
【0024】
一例において、ウイルスカプシドタンパク質は、改変VP1配列が、配列番号22に記載される配列を含むAAV9に由来する。
【0025】
一例において、ウイルスカプシドタンパク質は、改変VP1配列が、配列番号23に記載される配列を含むAAV10に由来する。
【0026】
一例において、ウイルスカプシドタンパク質は、改変VP1配列が、配列番号24に記載される配列を含むAAV11に由来する。
【0027】
一例において、ウイルスカプシドタンパク質は、改変VP1配列が、配列番号25に記載される配列を含むAAV12に由来する。
【0028】
一例において、ウイルスカプシドタンパク質は、改変VP1配列が、配列番号26に記載される配列を含むAAV13に由来する。
【0029】
前述の各例において、ウイルスカプシドタンパク質は、改変VP1と同じAAV血清型由来のサブユニット2(VP2)及びサブユニット3(VP3)配列を含んでよい。
【0030】
一例において、AAVウイルスカプシドタンパク質をコードするヌクレオチド配列は、昆虫細胞内での発現のためのプロモーターに作動可能に連結される。一例において、プロモーターは多角体プロモーターである。別の例において、プロモーターはp10プロモーターである。
【0031】
核酸分子は、Rep78及びRep68から選択される少なくとも1つの大型AAV複製(Rep)タンパク質ならびにRep52及びRep40から選択される少なくとも1つの小型AAV Repタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を含んでもよい。一例において、核酸分子は、Rep78及びRep52をコードするポリヌクレオチド配列を含む。一例において、核酸分子は、Rep78及びRep40をコードするポリヌクレオチド配列を含む。一例において、核酸分子は、Rep68及びRep52をコードするポリヌクレオチド配列を含む。一例において、核酸分子は、Rep68及びRep40をコードするポリヌクレオチド配列を含む。一例において、核酸分子は、Rep78、Rep68、Rep52及びRep40をコードするポリヌクレオチド配列を含む。前述の各例において、Repタンパク質は、ウイルスカプシドタンパク質と同じAAV血清型に由来し得る。代わりに、Repタンパク質は、ウイルスカプシドタンパク質のAAV血清型と異なるAAV血清型に由来してよく、例えば、Repタンパク質はAAV血清型2に由来し得る。
【0032】
Repタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列は、昆虫細胞内でのRepタンパク質の発現のためのプロモーターに作動可能に連結され得る。一例において、Repタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列は、多角体プロモーターに作動可能に連結される。一例において、Repタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列は、p10プロモーターに作動可能に連結される。
【0033】
前述の各例において、核酸分子は、アセンブリ活性化タンパク質(AAP)をコードするポリヌクレオチドを含んでよい。例えば、AAPは、ウイルスカプシドタンパク質をコードするオープンリーディングフレームと異なるオープンリーディングフレームによってコードされ得る。
【0034】
本開示は、本明細書に記載どおりに核酸分子を含むバキュロウイルスベクターをも提供する。
本開示は、下記:
(i)本明細書に記載どおりに核酸分子を含む第1のバキュロウイルスベクターであって、核酸分子が、本明細書に記載どおりにAAVウイルスカプシドタンパク質及びRepタンパク質をコードするベクター;及び
(ii)AAV逆方向末端反復(ITR)配列と隣接する目的のタンパク質またはRNAをコードするポリヌクレオチドを含む第2のバキュロウイルスベクター
を含む複数のバキュロウイルスベクターをも提供する。
【0035】
一例において、AAV ITR配列は、ウイルスカプシドタンパク質と同じ血清型に由来する。別の例において、AAV ITR配列は、ウイルスカプシドタンパク質の血清型以外の血清型に由来する。ある特定例において、AAV ITR配列は、AAV血清型2に由来する。
【0036】
本開示は、下記:
(i)本明細書に記載どおりに核酸分子を含む第1のバキュロウイルスベクターであって、核酸分子が、本明細書に記載どおりにAAVウイルスカプシドタンパク質をコードするベクター;
(ii)Rep78及びRep68から選択される少なくとも1つの大型AAV複製(Rep)タンパク質ならびにRep52及びRep40から選択される少なくとも1つの小型AAV Repタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を含む第2のバキュロウイルスベクター;及び
(iii)AAV逆方向末端反復(ITR)配列と隣接する目的のタンパク質またはRNAをコードするポリヌクレオチドを含む第3のバキュロウイルスベクター
を含む複数のバキュロウイルスベクターをも提供する。
【0037】
一例において、第2のバキュロウイルスベクターは、Rep78及びRep52をコードするポリヌクレオチド配列を含む。一例において、第2のバキュロウイルスベクターは、Rep78及びRep40をコードするポリヌクレオチド配列を含む。一例において、第2のバキュロウイルスベクターは、Rep68及びRep52をコードするポリヌクレオチド配列を含む。一例において、第2のバキュロウイルスベクターは、Rep68及びRep40をコードするポリヌクレオチド配列を含む。一例において、第2のバキュロウイルスベクターは、Rep78、Rep68、Rep52及びRep40をコードするポリヌクレオチド配列を含む。前述の各例において、Repタンパク質は、第1のバキュロウイルスベクターにおいて核酸分子によりコードされているウイルスカプシドタンパク質と同じAAV血清型に由来し得る。代わりに、Repタンパク質は、第1のバキュロウイルスベクターにおいて核酸分子によりコードされているウイルスカプシドタンパク質のAAV血清型と異なるAAV血清型に由来してよく、例えば、Repタンパク質は、AAV血清型2に由来し得る。
【0038】
前述の各例において、第2のバキュロウイルスベクター内でRepタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列は、昆虫細胞内でのRepタンパク質の発現のためのプロモーターに作動可能に連結され得る。一例において、第2のバキュロウイルスベクター内でRepタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列は、多角体プロモーターに作動可能に連結される。一例において、第2のバキュロウイルスベクター内でRepタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列は、p10プロモーターに作動可能に連結される。
【0039】
一例において、第3のバキュロウイルスベクターは、第1のバキュロウイルスベクター内で核酸分子によりコードされているウイルスカプシドタンパク質と同じ血清型由来のAAV ITR配列を含む。別の例において、第3のバキュロウイルスベクターは、第1のバキュロウイルスベクター内で核酸分子によりコードされているウイルスカプシドタンパク質の血清型以外の血清型由来のAAV ITR配列を含む。ある特定例において、AAV ITR配列は、AAV血清型2に由来する。
【0040】
バキュロウイルスベクターの少なくとも1つは、AAVのためのアセンブリ活性化タンパク質(AAP)をコードするポリヌクレオチドを含む。一例において、AAPは、第1のバキュロウイルスベクター内に含まれるポリヌクレオチド配列によってコードされ得る。一例において、AAPは、第2のバキュロウイルスベクター内に含まれるポリヌクレオチド配列によってコードされ得る。別の例において、AAPは、第3のバキュロウイルスベクター内に含まれるポリヌクレオチド配列によってコードされ得る。
【0041】
本開示は、本明細書に記載どおりに核酸を含む昆虫細胞をも提供する。
【0042】
本開示は、本明細書に記載どおりにバキュロウイルスベクターまたは複数のバキュロウイルスベクターを含む昆虫細胞をも提供する。
【0043】
一例において、AAVウイルスカプシドタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列及び/またはRepタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列は、エピソームとして複製する組換えバキュロウイルスゲノムから発現される。
【0044】
代わりに、またはさらに、AAV逆方向末端反復(ITR)配列と隣接する目的のタンパク質またはRNAをコードするポリヌクレオチドは、エピソームとして複製する組換えバキュロウイルスゲノムから発現される。
【0045】
本開示は、昆虫細胞内でのアデノ随伴ウイルス(AAV)の生成方法であって、下記:
(i)本明細書に記載どおりに昆虫細胞を、培地内で細胞がAAVを産生するのに十分な条件下で培養すること;及び場合により
(ii)培地及び/または細胞からAAVを回収すること
を含む方法をも提供する。
【0046】
本開示は、昆虫細胞内でのアデノ随伴ウイルス(AAV)の生成方法であって、下記:
(i)昆虫細胞を、本明細書に記載どおりにAAVウイルスカプシドタンパク質及びRepタンパク質をコードする本明細書に記載の核酸分子を含むゲノムを有する第1のバキュロウイルス;及びAAV逆方向末端反復(ITR)配列、例えばAAV血清型2由来のITR配列と隣接する目的のタンパク質またはRNAをコードするポリヌクレオチドを含むゲノムを有する第2のバキュロウイルスに同時感染させること;
(ii)(i)でバキュロウイルスに感染した昆虫細胞を、培地内で細胞がAAVを産生するのに十分な条件下で培養すること;及び場合により
(iii)培地及び/または細胞からAAVを回収すること
を含む方法をも提供する。
【0047】
一例において、AAVの生成方法は、培地及び/または細胞からAAVを回収することを含む。別の例において、AAVの生成方法は、培地及び/または細胞からAAVを回収してからAAVを精製することを含む。一例において、AAVは、細胞から回収される。一例において、AAVは、培地から回収される。一例において、AAVは、細胞及び培地から回収される。
【0048】
第1及び第2のバキュロウイルスの少なくとも1つのゲノムは、AAVのためのアセンブリ活性化タンパク質(AAP)をコードするポリヌクレオチドを含むことになる。一例において、AAPは、第1のバキュロウイルスのゲノム内に含まれるポリヌクレオチド配列によってコードされ得る。一例において、AAPは、第2のバキュロウイルスのゲノム内に含まれるポリヌクレオチド配列によってコードされ得る。
【0049】
本開示は、昆虫細胞内でのアデノ随伴ウイルス(AAV)の生成方法であって、下記:
(i)昆虫細胞を、本明細書に記載どおりにAAVウイルスカプシドタンパク質をコードする本明細書に記載の核酸分子を含むゲノムを有する第1のバキュロウイルス;Rep78及びRep68から選択される少なくとも1つの大型AAV複製(Rep)タンパク質ならびにRep52及びRep40から選択される少なくとも1つの小型AAV Repタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を含むゲノムを有する第2のバキュロウイルス;及びAAV逆方向末端反復(ITR)配列と隣接する目的のタンパク質またはRNAをコードするポリヌクレオチドを含むゲノムを有する第3のバキュロウイルスに同時感染させること;
(ii)(i)でバキュロウイルスに感染した昆虫細胞を、培地内で細胞がAAVを産生するのに十分な条件下で培養すること;及び場合により
(iii)培地及び/または細胞からAAVを回収すること
を含む方法をも提供する。
【0050】
一例において、昆虫細胞を感染させる第2のバキュロウイルスベクターは、Rep78及びRep52をコードするポリヌクレオチド配列を含む。一例において、昆虫細胞を感染させる第2のバキュロウイルスベクターは、Rep78及びRep40をコードするポリヌクレオチド配列を含む。一例において、昆虫細胞を感染させる第2のバキュロウイルスベクターは、Rep68及びRep52をコードするポリヌクレオチド配列を含む。一例において、昆虫細胞を感染させる第2のバキュロウイルスベクターは、Rep68及びRep40をコードするポリヌクレオチド配列を含む。一例において、昆虫細胞を感染させる第2のバキュロウイルスベクターは、Rep78、Rep68、Rep52及びRep40をコードするポリヌクレオチド配列を含む。前述の各例において、Repタンパク質は、第1のバキュロウイルスベクター内で核酸分子によりコードされているウイルスカプシドタンパク質と同じAAV血清型に由来し得る。代わりに、Repタンパク質は、第1のバキュロウイルスベクター内で核酸分子によりコードされているウイルスカプシドタンパク質のAAV血清型と異なるAAV血清型に由来してよく、例えば、Repタンパク質は、AAV血清型2に由来し得る。
【0051】
前述の各例において、第2のバキュロウイルスベクター内でRepタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列は、昆虫細胞内でのRepタンパク質の発現のためのプロモーターに作動可能に連結され得る。一例において、第2のバキュロウイルスベクター内でRepタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列は、多角体プロモーターに作動可能に連結される。一例において、第2のバキュロウイルスベクター内でRepタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列は、p10プロモーターに作動可能に連結される。
【0052】
一例において、昆虫細胞を感染させる第3のバキュロウイルスベクターは、第1のバキュロウイルスベクター内で核酸分子によりコードされているウイルスカプシドタンパク質と同じ血清型由来のAAV ITR配列を含む。別の例において、昆虫細胞を感染させる第3のバキュロウイルスベクターは、第1のバキュロウイルスベクター内で核酸分子によりコードされているウイルスカプシドタンパク質の血清型以外の血清型由来のAAV ITR配列を含む。ある特定例において、AAV ITR配列はAAV血清型2に由来する。
【0053】
一例において、第2のバキュロウイルスベクターのゲノムによりコードされているRepタンパク質及び第3のバキュロウイルスベクターのゲノムによりコードされているITR配列は、AAV血清型2に由来する。
【0054】
第1、第2及び第3のバキュロウイルスの少なくとも1つのゲノムは、AAVのためのアセンブリ活性化タンパク質(AAP)をコードするポリヌクレオチドを含むことになる。一例において、AAPは、第1のバキュロウイルスのゲノム内に含まれるポリヌクレオチド配列によってコードされ得る。一例において、AAPは、第2のバキュロウイルスのゲノム内に含まれるポリヌクレオチド配列によってコードされ得る。一例において、AAPは、第3のバキュロウイルスのゲノム内に含まれるポリヌクレオチド配列によってコードされ得る。
【0055】
一例において、AAVの生成方法は、培地及び/または細胞からAAVを回収することを含む。別の例において、AAVの生成方法は、培地及び/または細胞からAAVを回収してからAAVを精製することを含む。一例において、AAVは、細胞から回収される。一例において、AAVは、培地から回収される。一例において、AAVは、細胞及び培地から回収される。
【0056】
本開示は、本明細書に記載の方法によって生成されたアデノ随伴ウイルス(AAV)をも提供する。
【0057】
位置1にセリン、位置26にグルタミン酸、位置40にアルギニン、位置43にアスパラギン酸、位置44にセリン及び位置64にリジンを含む改変サブユニット1(VP1)配列を含むウイルスカプシドタンパク質を含むアデノ随伴ウイルス(AAV)であって、アミノ酸位置は、配列番号1に記載される配列に関して規定され、位置1、26、40、43、44及び64のいずれか1以上のアミノ酸は、対応する野生型配列に対して改変されており、かつ前記いずれか1以上の位置1、26、40、43、44及び64のアミノ酸以外のさらなるアミノ酸は、対応する野生型配列に対して改変されていない、アデノ随伴ウイルス(AAV)をも提供する。
【0058】
一例において、位置1、26、40、43、44及び64のいずれか2以上のアミノ酸は、本明細書に記載どおりに対応する野生型配列に対して改変されている。一例において、位置1、26、40、43、44及び64のいずれか3以上のアミノ酸は、本明細書に記載どおりに対応する野生型配列に対して改変されている。一例において、位置1、26、40、43、44及び64のいずれか4以上のアミノ酸は、本明細書に記載どおりに対応する野生型配列に対して改変されている。一例において、位置1、26、40、43、44及び64のいずれか5以上のアミノ酸は、本明細書に記載どおりに対応する野生型配列に対して改変されている。一例において、位置1、26、40、43、44及び64のそれぞれのアミノ酸は、本明細書に記載どおりに対応する野生型配列に対して改変されている。
【0059】
改変VP1配列を含むウイルスカプシドタンパク質について本明細書に記載した。これらのいずれの例も、特に別段の定めをした場合を除き、変更すべきところは変更して本開示のAAVに当てはまるものと解釈すべきである。
【0060】
一例において、AAVは、下記:
(i)改変VP1配列が、配列番号15に記載される配列を含むAAV血清型1;
(ii)改変VP1配列が、配列番号16に記載される配列を含むAAV血清型3;
(iii)改変VP1配列が、配列番号17に記載される配列を含むAAV血清型4;
(iv)改変VP1配列が、配列番号18に記載される配列を含むAAV血清型5;
(v)改変VP1配列が、配列番号19に記載される配列を含むAAV血清型6;
(vi)改変VP1配列が、配列番号20に記載される配列を含むAAV血清型7;
(vii)改変VP1配列が、配列番号21に記載される配列を含むAAV血清型8;
(viii)改変VP1配列が、配列番号22に記載される配列を含むAAV血清型9;
(ix)改変VP1配列が、配列番号23に記載される配列を含むAAV血清型10;
(x)改変VP1配列が、配列番号24に記載される配列を含むAAV血清型11;
(xi)改変VP1配列が、配列番号25に記載される配列を含むAAV血清型12;及び
(xii)改変VP1配列が、配列番号26に記載される配列を含むAAV血清型13
から成る群より選択される。
【0061】
一例において、AAVは、改変VP1配列が、配列番号15に記載される配列を含むAAV血清型1である。
【0062】
一例において、AAVは、改変VP1配列が、配列番号16に記載される配列を含むAAV血清型3である。
【0063】
一例において、AAVは、改変VP1配列が、配列番号17に記載される配列を含むAAV血清型4である。
【0064】
一例において、AAVは、改変VP1配列が、配列番号18に記載される配列を含むAAV血清型5である。
【0065】
一例において、AAVは、改変VP1配列が、配列番号19に記載される配列を含むAAV血清型6である。
【0066】
一例において、AAVは、改変VP1配列が、配列番号20に記載される配列を含むAAV血清型7である。
【0067】
一例において、AAVは、改変VP1配列が、配列番号21に記載される配列を含むAAV血清型8である。
【0068】
一例において、AAVは、改変VP1配列が、配列番号22に記載される配列を含むAAV血清型9である。
【0069】
一例において、AAVは、改変VP1配列が、配列番号23に記載される配列を含むAAV血清型10である。
【0070】
一例において、AAVは、改変VP1配列が、配列番号24に記載される配列を含むAAV血清型11である。
【0071】
一例において、AAVは、改変VP1配列が、配列番号25に記載される配列を含むAAV血清型12である。
【0072】
一例において、AAVは、改変VP1配列が、配列番号26に記載される配列を含むAAV血清型13である。
【0073】
本開示は、昆虫細胞内で産生される血清型2以外の血清型由来のアデノ随伴ウイルス(AAV)の機能性の改善方法であって、AAVのウイルスカプシドタンパク質内のVP1配列を、位置1、26、40、43、44及び64のみの1以上のアミノ酸を置換することによって、対応する野生型配列に対して改変することを含み、残基位置は、配列番号1に記載される配列に関して決定され、その結果、ウイルスカプシドタンパク質は、位置1にセリン、位置26にグルタミン酸、位置40にアルギニン、位置43にアスパラギン酸、位置44にセリン及び位置64にリジンを含み、AAVは、改変されなかった、昆虫細胞内で産生される対応する野生型AAVに比べて改善された機能性を有する、方法をも提供する。AAVの改善された機能性は、内部移行後にAAVが細胞のエンドソーム区画から脱出する能力の改善、すなわち、改善されたエンドソーム脱出能に起因するのが好ましい。改変VP1配列を含むAAVウイルスカプシドタンパク質について本明細書に記載した。これらのいずれの例も、特に別段の定めをした場合を除き、変更すべきところは変更して、本明細書に記載どおりにそれを生成する方法に当てはまるものと解釈すべきである。
【0074】
一例において、本方法は、位置1、26、40、43、44及び64のいずれか2以上のアミノ酸を、本明細書に記載どおりに対応する野生型配列に対して改変することを含む。一例において、本方法は、位置1、26、40、43、44及び64のいずれか3以上のアミノ酸を、本明細書に記載どおりに対応する野生型配列に対して改変することを含む。一例において、本方法は、位置1、26、40、43、44及び64のいずれか4以上のアミノ酸を、本明細書に記載どおりに対応する野生型配列に対して改変することを含む。一例において、本方法は、位置1、26、40、43、44及び64のいずれか5以上のアミノ酸を、本明細書に記載どおりに対応する野生型配列に対して改変することを含む。一例において、本方法は、位置1、26、40、43、44及び64のアミノ酸を、本明細書に記載どおりに対応する野生型配列に対して改変することを含む。
【0075】
一例において、本方法は、AAVのウイルスカプシドタンパク質のVP1配列を下記:
(i)AAVが血清型1のものであるとき、ウイルスカプシドタンパク質は、配列番号15に記載される配列を含むVP1配列を含む;
(ii)AAVが血清型3のものであるとき、ウイルスカプシドタンパク質は、配列番号16に記載される配列を含むVP1配列を含む;
(iii)AAVが血清型4のものであるとき、ウイルスカプシドタンパク質は、配列番号17に記載される配列を含むVP1配列を含む;
(iv)AAVが血清型5のものであるとき、ウイルスカプシドタンパク質は、配列番号18に記載される配列を含むVP1配列を含む;
(v)AAVが血清型6のものであるとき、ウイルスカプシドタンパク質は、配列番号19に記載される配列を含むVP1配列を含む;
(vi)AAVが血清型7のものであるとき、ウイルスカプシドタンパク質は、配列番号20に記載される配列を含むVP1配列を含む;
(vii)AAVが血清型8のものであるとき、ウイルスカプシドタンパク質は、配列番号21に記載される配列を含むVP1配列を含む;
(viii)AAVが血清型9のものであるとき、ウイルスカプシドタンパク質は、配列番号22に記載される配列を含むVP1配列を含む;
(ix)AAVが血清型10のものであるとき、ウイルスカプシドタンパク質は、配列番号23に記載される配列を含むVP1配列を含む;
(x)AAVが血清型11のものであるとき、ウイルスカプシドタンパク質は、配列番号24に記載される配列を含むVP1配列を含む;
(xi)AAVが血清型12のものであるとき、ウイルスカプシドタンパク質は、配列番号25に記載される配列を含むVP1配列を含む;及び
(xii)AAVが血清型13のものであるとき、ウイルスカプシドタンパク質は、配列番号26に記載される配列を含むVP1配列を含む
ように、対応する野生型配列に対して改変することを含む。
【0076】
一例において、本方法は、AAV1のウイルスカプシドタンパク質のVP1配列を、ウイルスカプシドタンパク質が、配列番号15に記載される配列を含むVP1配列を含むように、対応する野生型配列に対して改変することを含む。
【0077】
一例において、本方法は、AAV3のウイルスカプシドタンパク質のVP1配列を、ウイルスカプシドタンパク質が、配列番号16に記載される配列を含むVP1配列を含むように、対応する野生型配列に対して改変することを含む。
【0078】
一例において、本方法は、AAV4のウイルスカプシドタンパク質のVP1配列を、ウイルスカプシドタンパク質が、配列番号17に記載される配列を含むVP1配列を含むように、対応する野生型配列に対して改変することを含む。
【0079】
一例において、本方法は、AAV5のウイルスカプシドタンパク質のVP1配列を、ウイルスカプシドタンパク質が、配列番号18に記載される配列を含むVP1配列を含むように、対応する野生型配列に対して改変することを含む。
【0080】
一例において、本方法は、AAV6のウイルスカプシドタンパク質のVP1配列を、ウイルスカプシドタンパク質が、配列番号19に記載される配列を含むVP1配列を含むように、対応する野生型配列に対して改変することを含む。
【0081】
一例において、本方法は、AAV7のウイルスカプシドタンパク質のVP1配列を、ウイルスカプシドタンパク質が、配列番号20に記載される配列を含むVP1配列を含むように、対応する野生型配列に対して改変することを含む。
【0082】
一例において、本方法は、AAV8のウイルスカプシドタンパク質のVP1配列を、ウイルスカプシドタンパク質が、配列番号21に記載される配列を含むVP1配列を含むように、対応する野生型配列に対して改変することを含む。
【0083】
一例において、本方法は、AAV9のウイルスカプシドタンパク質のVP1配列を、ウイルスカプシドタンパク質が、配列番号22に記載される配列を含むVP1配列を含むように、対応する野生型配列に対して改変することを含む。
【0084】
一例において、本方法は、AAV10のウイルスカプシドタンパク質のVP1配列を、ウイルスカプシドタンパク質が、配列番号23に記載される配列を含むVP1配列を含むように、対応する野生型配列に対して改変することを含む。
【0085】
一例において、本方法は、AAV11のウイルスカプシドタンパク質のVP1配列を、ウイルスカプシドタンパク質が、配列番号24に記載される配列を含むVP1配列を含むように、対応する野生型配列に対して改変することを含む。
【0086】
一例において、本方法は、AAV12のウイルスカプシドタンパク質のVP1配列を、ウイルスカプシドタンパク質が、配列番号25に記載される配列を含むVP1配列を含むように、対応する野生型配列に対して改変することを含む。
【0087】
一例において、本方法は、AAV13のウイルスカプシドタンパク質のVP1配列を、ウイルスカプシドタンパク質が、配列番号26に記載される配列を含むVP1配列を含むように、対応する野生型配列に対して改変することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【
図1】BacAAV8-Rep-VPmodと名付けられたDNA構築物のベクターマップである。このDNA構築物は、昆虫細胞内でAAV Repタンパク質及び改変AAV8カプシドを両方発現するように設計された。ベクター骨格はバキュロウイルスベクターpOET1骨格(Oxford Expression Technologies)であり、昆虫細胞内で改変AAV8カプシドタンパク質を含有するAAVを調製するために使用した。
【
図2】AAV8-VPmodと名付けられたDNA構築物のベクターマップである。このDNA構築物はAAV8カプシド遺伝子の改変型を含有し、AAV8-Rep-VPmod(
図4)及びBacAAV8-Rep-VPmod(
図1)を調製するために使用した。
【
図3】wtAAV8-Rep/Capと名付けられたDNA構築物のベクターマップである。このDNA構築物は、昆虫細胞内でAAV Repタンパク質及びwtAAV8カプシドを発現するように設計され、wtAAV8カプシドタンパク質を含有するAAVを調製するために使用した。
【
図4】AAV8-Rep-VPmodと名付けられたDNA構築物のベクターマップである。このDNA構築物は、昆虫細胞内でAAV Repタンパク質及び改変AAV8カプシドを発現するように設計され、BacAAV8-Rep-VPmod(
図1)を調製するために使用した。
【
図5】BacAAV9-Rep-VPmodと名付けられたDNA構築物のベクターマップである。このDNA構築物は、昆虫細胞内でAAV Repタンパク質及び改変AAV9カプシドを発現するように設計された。ベクター骨格はバキュロウイルスベクターpOET1骨格(Oxford Expression Technologies)であり、改変AAV9カプシドタンパク質を含有するAAVを調製するために使用した。
【
図6】AAV9-VPmodと名付けられたDNA構築物のベクターマップである。このDNA構築物はAAV9カプシド遺伝子の改変型を含有し、BacAAV9-Rep-VPmod(
図5)を調製するために使用した。
【
図7】AAV9-Rep-VPmodと名付けられたDNA構築物のベクターマップである。このDNA構築物は、昆虫細胞内でAAV Repタンパク質及び改変AAV9カプシドを発現するように設計された。
【
図8】AAV2-GOIと名付けられたDNA構築物のベクターマップである。このDNA構築物は、AAV ITRと隣接する2つのshmiRを発現するように設計され、BacAAV2-GOI(
図9)を調製するために使用した。
【
図9】BacAAV2-GOIと名付けられたDNA構築物のベクターマップである。このDNA構築物は、バキュロウイルスベクターpOET1骨格(Oxford Expression Technologies)内でAAV ITRと隣接する2つのshmiRを発現するように設計された(AAV2-GOI)。この構築物を用いて、2つのshmiRをコードするGOIを発現する改変AAV9カプシドタンパク質を含有するAAVを調製した。
【
図10】
図10A~
図10Cは、(i)哺乳動物細胞内で産生された非改変VP1を有するAAV8(VecBio)、(ii)昆虫細胞内でバキュロウイルスによって産生された改変VP1を有するAAV8(BacVPmod)、及び(iii)昆虫細胞内でバキュロウイルスによって産生された非改変VP1を有するAAV8(Ben10)の4x10e9、8x10e9及び1.6x10e10のAAVベクターゲノムに感染したJHU67細胞から発現した1細胞当たりのshmiRコピーの総数を示す。哺乳動物細胞内で産生された野生型カプシドを有するAAVは、昆虫細胞内で産生された野生型カプシドを有するAAVに比べて高レベルのshmiRを発現し、この発現はほとんど検出できない。昆虫細胞内で産生された改変VP1を含むカプシドを有するAAVは、非改変野生型カプシドを用いて昆虫内で産生されたAAVに比べて、発現、ひいては機能性の顕著な増大を示す。
【
図11】AAV内部移行受容体(AAV-R)を発現し、かつ(i)哺乳動物細胞内で産生された非改変VP1を有するAAV9、及び(ii)昆虫細胞内でバキュロウイルスによって産生された改変VP1を有するAAV9の4x10e9、8x10e9及び1.6x10e10のAAVベクターゲノムに感染したC2C12細胞から発現したshmiRコピーの総数を示す。両組換えウイルスは、同等レベルのshmiRを発現した。これは同等の機能性を実証している。
【発明を実施するための形態】
【0089】
配列表のキー
配列番号1:PLA2ドメイン及び隣接配列を含む、AAV血清型の改変コンセンサスVP1部分配列。
【0090】
配列番号2:PLA2ドメイン及び隣接配列を含む、AAV血清型1のVP1部分配列。
【0091】
配列番号3:PLA2ドメイン及び隣接配列を含む、AAV血清型2のVP1部分配列。
【0092】
配列番号4:PLA2ドメイン及び隣接配列を含む、AAV血清型3のVP1部分配列。
【0093】
配列番号5:PLA2ドメイン及び隣接配列を含む、AAV血清型4のVP1部分配列。
【0094】
配列番号6:PLA2ドメイン及び隣接配列を含む、AAV血清型5のVP1部分配列。
【0095】
配列番号7:PLA2ドメイン及び隣接配列を含む、AAV血清型6のVP1部分配列。
【0096】
配列番号8:PLA2ドメイン及び隣接配列を含む、AAV血清型7のVP1部分配列。
【0097】
配列番号9:PLA2ドメイン及び隣接配列を含む、AAV血清型8のVP1部分配列。
【0098】
配列番号10:PLA2ドメイン及び隣接配列を含む、AAV血清型9のVP1部分配列。
【0099】
配列番号11:PLA2ドメイン及び隣接配列を含む、AAV血清型10のVP1部分配列。
【0100】
配列番号12:PLA2ドメイン及び隣接配列を含む、AAV血清型11のVP1部分配列。
【0101】
配列番号13:PLA2ドメイン及び隣接配列を含む、AAV血清型12のVP1部分配列。
【0102】
配列番号14:PLA2ドメイン及び隣接配列を含む、AAV血清型13のVP1部分配列。
【0103】
配列番号15:PLA2ドメイン及び隣接配列を含む、AAV血清型1の改変VP1部分配列
【0104】
配列番号16:PLA2ドメイン及び隣接配列を含む、AAV血清型3の改変VP1部分配列。
【0105】
配列番号17:PLA2ドメイン及び隣接配列を含む、AAV血清型4の改変VP1部分配列
【0106】
配列番号18:PLA2ドメイン及び隣接配列を含む、AAV血清型5の改変VP1部分配列。
【0107】
配列番号19:PLA2ドメイン及び隣接配列を含む、AAV血清型6の改変VP1部分配列
【0108】
配列番号20:PLA2ドメイン及び隣接配列を含む、AAV血清型7の改変VP1部分配列
【0109】
配列番号21:PLA2ドメイン及び隣接配列を含む、AAV血清型8の改変VP1部分配列
【0110】
配列番号22:PLA2ドメイン及び隣接配列を含む、AAV血清型9の改変VP1部分配列。
【0111】
配列番号23:PLA2ドメイン及び隣接配列を含む、AAV血清型10の改変VP1部分配列。
【0112】
配列番号24:PLA2ドメイン及び隣接配列を含む、AAV血清型11の改変VP1部分配列
【0113】
配列番号25:PLA2ドメイン及び隣接配列を含む、AAV血清型12の改変VP1部分配列
【0114】
配列番号26:PLA2ドメイン及び隣接配列を含む、AAV血清型13の改変VP1部分配列
【0115】
配列番号27:AAV血清型1のVP1アミノ酸配列。
【0116】
配列番号28:AAV血清型2のVP1アミノ酸配列。
【0117】
配列番号29:AAV血清型3のVP1アミノ酸配列。
【0118】
配列番号30:AAV血清型4のVP1アミノ酸配列。
【0119】
配列番号31:AAV血清型5のVP1アミノ酸配列。
【0120】
配列番号32:AAV血清型6のVP1アミノ酸配列。
【0121】
配列番号33:AAV血清型7のVP1アミノ酸配列。
【0122】
配列番号34:AAV血清型8のVP1アミノ酸配列。
【0123】
配列番号35:AAV血清型9のVP1アミノ酸配列。
【0124】
配列番号36:AAV血清型10のVP1アミノ酸配列。
【0125】
配列番号37:AAV血清型11のVP1アミノ酸配列。
【0126】
配列番号38:AAV血清型12のVP1アミノ酸配列。
【0127】
配列番号39:AAV血清型13のVP1アミノ酸配列。
【0128】
詳細な説明
通則
本明細書全体を通じて、特に別段の定めをした場合を除き、または文脈上他の意味に解すべき場合を除いて、単一の工程、特徴、組成物、工程の群または特徴もしくは組成物の群への言及は、1つ及び複数の(すなわち1つ以上の)当該工程、特徴、組成物、工程の群または特徴もしくは組成物の群を包含するものと解釈すべきである。
【0129】
当業者は、本開示が、具体的に記載したもの以外の変形形態及び変更形態を受け入れる余地があることを理解している。本開示は、全てのそのような変形形態及び変更形態を包含するものと理解すべきである。本開示は、本明細書に個々にまたはまとめて言及または指摘した全ての工程、特徴、組成物及び化合物、ならびに前記工程または特徴のありとあらゆる組み合わせまたはいずれか2つ以上をも包含する。
【0130】
本開示は、例示の目的だけを意図する本明細書に記載の具体例による範囲に限定されるべきでない。機能的に等価な生成物、組成物及び方法は、明白に本開示の範囲内である。
【0131】
本明細書の本開示のいずれの例も、特に別段の定めをした場合を除き、変更すべきところは変更して、本開示のいずれの他の例にも当てはまるものと解釈すべきである。
【0132】
別段の具体的な定義がない限り、本明細書で使用する全ての技術用語及び科学用語は、当業者(例えば、細胞培養、分子遺伝子学、免疫学、免疫組織化学、タンパク質化学、及び生化学の)が一般的に理解するのと同じ意味を有するものと解釈すべきである。
【0133】
特に別段の定めをした場合を除き、本開示で利用する組換えDNA、組換えタンパク質、細胞培養、及び免疫学的技術は、当技術分野で周知の標準的手順である。該技術は、J.Perbal,A Practical Guide to Molecular Cloning,John Wiley and Sons(1984)、J.Sambrook et al. Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989),T.A.Brown(editor),Essential Molecular Biology:A Practical Approach,Volumes 1 and 2,IRL Press(1991),D.M.Glover and B.D.Hames(editors),DNA Cloning:A Practical Approach,Volumes 1-4,IRL Press(1995 and 1996)、及びF.M.Ausubel et al.(editors),Current Protocols in Molecular Biology,Greene Pub.Associates and Wiley-Interscience(1988,現在までの全ての改訂を含めて)、Ed Harlow and David Lane(editors)Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,(1988)、及びJ.E.Coligan et al.(editors)Current Protocols in Immunology,John Wiley & Sons(現在までの全ての改訂を含めて)等の情報源の文献全体を通じて記載及び説明されている。
【0134】
本明細書を通じて、文脈上他の意味に解すべき場合を除き、単語「含む(comprise)、または「含む(comprises)もしくは含むこと(comprising)等の異形は、規定された工程もしくは要素もしくは整数または工程もしくは要素もしくは整数の群を含めるが、いずれの他の工程もしくは要素もしくは整数または要素もしくは整数の群をも排除しないことを意味すると理解される。
【0135】
用語「及び/または」、例えば、「X及び/またはY」は、「X及びY」または「XまたはY」のいずれかを意味するものと理解すべきであり、両方の意味またはどちらかの意味を明示的にサポートするものと解釈すべきでる。
【0136】
選ばれた定義
本明細書で使用する場合、用語「アデノ随伴ウイルス」または「AAV」は、短い(約4.7kb)一本鎖DNAゲノムを含有し、それらの複製のためにはアデノウイルス等のヘルパーウイルスの存在に依存するパルボウイルス科内の1群のウイルスに関する。本開示は、AAVに由来するベクター、すなわち遺伝子トランスファービヒクルをも企図する。
【0137】
本明細書で使用する場合、AAVの文脈で使用する用語「血清型」は、他のAAV血清型と血清学的に区別されるカプシドを有するAAVを指すために用いる区別である。血清学的独自性は、あるAAVに対する抗体間の交差反応性が別のAAVに比べて欠如することに基づいて決定される。該交差反応性の相違は、通常はカプシドタンパク質配列/抗原決定基の相違に起因(例えば、AAV血清型のVP1、VP2、及び/またはVP3配列の相違に起因)する。
【0138】
本明細書においてAAVの文脈で使用する場合、用語「ウイルスカプシドタンパク質」、「カプシドタンパク質」、「カプシドポリペプチド」または同様の語は、コートタンパク質またはVPタンパク質とも呼ばれるAAV粒子のタンパク質性殻を生成するためのセルフアセンブリの活性を有するAAVのポリペプチドに関する。それは3つのサブユニット、VP1、VP2及びVP3で構成され、これらは典型的に単一の核酸分子から発現され、相互に作用して正二十面体対称性のカプシドを形成する。AAVのカプシド構造は、BERNARD N.FIELDS et al.,VIROLOGY,volume 2,chapters 69&70(4th ed.,Lippincott-Raven Publishers)に記載されている。
【0139】
本明細書で使用する場合、用語「作動可能に連結される」または「作動可能な連結」(または同様の用語)は、機能的な関係にあるポリヌクレオチド要素の連結を指す。核酸またはポリヌクレオチド配列は、それが別の核酸配列と機能的関係に置かれると、「作動可能に連結される」。例えば、転写調節配列、例えば、当技術分野において承認されているプロモーター、エンハンサーまたは他の発現制御要素は、それがコード配列の転写に影響を及ぼす場合に当該コード配列に作動可能に連結されることになる。
【0140】
本明細書で使用する場合、用語「プロモーター」は、一般的に、DNA依存性RNAポリメラーゼ及びその他のタンパク質(トランス作用性転写因子)の認識及び結合に関与して、1つ以上のコード配列の転写を開始及び制御するDNA配列に関し、一般的に転写の方向に対してコード配列の上流に位置する。
【0141】
本明細書で使用する場合、複数もしくは単数の用語「逆方向末端反復配列」または「ITR」は、ベクターの一端に位置し、ベクターの反対端に位置する相補的配列と併用されるとヘアピン構造を形成できる配列を指す。この逆方向末端反復配列の対は、宿主ゲノム内においてAAV DNAのレスキュー、複製及びパッケージングに関与する。ITRは、AAV DNAの効率的なカプシド形成及び完全にアセンブルされたAAV粒子の生成にも必要とされる。
【0142】
改変カプシドタンパク質またはVP1配列を含む本開示のAAVの文脈で使用する用語「改善された機能性」または同様の用語は、改変カプシドタンパク質またはVP1配列を含むAAVが、改変されなかった、昆虫細胞内で生成される同じ血清型の野生型AAVに比べて改善されたエンドソーム脱出能を有することを意味すると理解すべきである。本明細書で使用する場合、用語「エンドソーム脱出能(endosomal escape activity)」、エンドソーム脱出能(endosome escape activity)」、または同様の用語は、細胞の内部移行後にエンドソーム区画から脱出するAAVの能力を意味すると理解すべきである。AAV機能性の文脈においては、細胞の内部移行後にエンドソームから脱出できないAVVは、特に遺伝子治療の文脈では機能的でないと認められる。
【0143】
改変AAV生成のためのDNA構築物
本開示は、一般的に、特に改変VP1配列及び関連ホスホリパーゼA2(PLA2)ドメインを含む改変ウイルスカプシドタンパク質を有するAAVに関し、昆虫細胞内で産生されるとき(対応する野生型AAVに比べて)改善または修復された機能性を有する。本開示は、該改変AAVの生成ならびに遺伝子治療の場合のような哺乳動物細胞における外因性核酸の導入及び/または発現のためのベクターとしてのその使用にも関する。
【0144】
AAVは、一般的にヒト(例えば、血清型1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13)または霊長類(例えば、血清型1及び4)に感染する。全ての既知AAV血清型のゲノム構成は非常に類似している。AAVのゲノムは直鎖状の一本鎖DNA分子であり、一般的に約5,000ヌクレオチド(nt)長未満である。逆方向末端反復配列(ITR)は、非構造性複製(Rep)タンパク質及び構造性(VP)タンパク質に特有のコードヌクレオチド配列と隣接する。VPタンパク質(VP1、VP2及びVP3)はカプシドを形成する。AAVカプシドアセンブリは、VP2及びVP3 ORFのコード配列内にあるカプシド遺伝子のインフレームのオープンリーディングフレームによってコードされるアセンブリ活性化タンパク質(AAP)の発現を必要とする(Sonntag et al.,(2010)PNAS,107(22):10220-10225)。末端の145ntは自己相補的であり、T字形ヘアピンを形成するエネルギー的に安定した分子内二本鎖、すなわち逆方向末端反復配列(ITR)が形成されるように構築される。これらのヘアピン構造は、ウイルスDNA複製の起点として機能し、細胞のDNAポリメラーゼ複合体のプライマーとして役立つ。哺乳動物細胞内での野生型AAV(wtAAV)の感染後に、Rep遺伝子(すなわちRep78及びRep52)がそれぞれP5プロモーター及びP19プロモーターから発現される。Rep78タンパク質は、ウイルスゲノムの複製において機能を有し、一方でRep52タンパク質は、ウイルス粒子中に新生ゲノムを動員する。RepのORFにおけるスプライシング現象が4つのRepタンパク質(すなわちRep78、Rep68、Rep52及びRep40)の発現をもたらす。しかしながら、哺乳動物細胞内では、Rep78及びRep52タンパク質をコードするスプライシングされていないmRNAでAAVベクター産生に十分であることが示されている。昆虫細胞内でも、AAVベクター産生にはRep78及びRep52タンパク質で十分である。3つのカプシドタンパク質、すなわちVP1、VP2及びVP3は、p40プロモーターからの単一のVPリーディングフレームから発現される。
【0145】
AAV(特に昆虫細胞内で産生されるもの)の機能性に特に重要なのは、保存ホスホリパーゼA2(PLA2)モチーフを含有するVP1サブユニットであり、PLA2の活性は、エンドソーム脱出に必要であり、脱出後に宿主細胞の核内にウイルスゲノムを移行させることが示されている。血清型2のAAVは、昆虫細胞内で発現されるとPLA2活性を保持し、それによってその機能性を保持することが示されているが、他の血清型のAAVは、パルボウイルス科全体のこのドメインの一般的保存にもかかわらず、欠陥のあるPLA2活性を有する。この欠陥のあるPLA2活性は、昆虫細胞において、血清型2以外の機能的AAVを産生する能力を制限している。PLA2モチーフを含有するAAV VP1配列、またはそのN末端部をAAV2 VP1の対応する配列と置き換える(ドメイン交換)キメラAAV2/5 VP1タンパク質の構築を含め、多くの手法を利用してさまざまな効果に対してこの問題に取り組んでいる。野生型と血清型2の両方のVP1配列を発現するAAVをもたらすAAV2 VP1をベースとするモザイクの産生も報告されている。これらの手法は、昆虫細胞内で発現されるときにさまざまな程度まで機能性を改善すると報告されているが、昆虫細胞内でAAVベクターを生成するためのバキュロウイルス系は臨床環境での使用がまだ制限されている。本開示においては、昆虫細胞内でバキュロウイルス系から発現されるときにAAV2以外の血清型からのAAVのその後の機能性を改善することが示されている、AAV VP1配列への部位特異的改変を含む新規手法について記載する。この改善された機能性は、エンドソーム区画から脱出するビリオンの能力によって与えられる。
【0146】
従って、本開示は、アデノ随伴ウイルス(AAV)ウイルスカプシドタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を含む核酸分子であって、ウイルスカプシドタンパク質が、位置1にセリン、位置26にグルタミン酸、位置40にアルギニン、位置43にアスパラギン酸、位置44にセリン及び位置64にリジンを含む改変サブユニット1(VP1)配列を含み、アミノ酸位置は、配列番号1に記載される配列に関して規定され、位置1、26、40、43、44及び64のいずれか1以上のアミノ酸は、対応する野生型配列に対して改変されており、かつ前記いずれか1以上の位置1、26、40、43、44及び64のアミノ酸以外のさらなるアミノ酸は、対応する野生型配列に対して改変されていない、核酸分子を提供する。
【0147】
一例において、配列番号1に記載される配列の位置1、26、40、43、44及び64のいずれか2、3、4、5または6つのアミノ酸は、本明細書に記載どおりに対応する野生型配列に対して改変される。
【0148】
AAVカプシドタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列は、血清型2以外の、一般的にヒトに感染するAAVのいずれか1つ(例えば、血清型1、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13)に由来し得る。一例において、ウイルスカプシドタンパク質は、AAV血清型1に由来する。一例において、ウイルスカプシドタンパク質は、AAV血清型3に由来する。一例において、ウイルスカプシドタンパク質は、AAV血清型4に由来する。一例において、ウイルスカプシドタンパク質は、AAV血清型5に由来する。一例において、ウイルスカプシドタンパク質は、AAV血清型6に由来する。一例において、ウイルスカプシドタンパク質は、AAV血清型7に由来する。一例において、ウイルスカプシドタンパク質は、AAV血清型8に由来する。一例において、ウイルスカプシドタンパク質は、AAV血清型9に由来する。一例において、ウイルスカプシドタンパク質は、AAV血清型10に由来する。一例において、ウイルスカプシドタンパク質は、AAV血清型11に由来する。一例において、ウイルスカプシドタンパク質は、AAV血清型12に由来する。一例において、ウイルスカプシドタンパク質は、AAV血清型13に由来する。
【0149】
AAVカプシドタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列は、配列番号15~26のいずれか1つに記載される配列を含む改変VP1をコードし得る。一例において、ウイルスカプシドタンパク質はAAV1に由来し、改変VP1配列は、配列番号15に記載される配列を含む。一例において、ウイルスカプシドタンパク質はAAV3に由来し、改変VP1配列は、配列番号16に記載される配列を含む。一例において、ウイルスカプシドタンパク質はAAV4に由来し、改変VP1配列は、配列番号17に記載される配列を含む。一例において、ウイルスカプシドタンパク質はAAV5に由来し、改変VP1配列は、配列番号18に記載される配列を含む。一例において、ウイルスカプシドタンパク質はAAV6に由来し、改変VP1配列は、配列番号19に記載される配列を含む。一例において、ウイルスカプシドタンパク質はAAV7に由来し、改変VP1配列は、配列番号20に記載される配列を含む。一例において、ウイルスカプシドタンパク質はAAV8に由来し、改変VP1配列は、配列番号21に記載される配列を含む。一例において、ウイルスカプシドタンパク質はAAV9に由来し、改変VP1配列は、配列番号22に記載される配列を含む。一例において、ウイルスカプシドタンパク質はAAV10に由来し、改変VP1配列は、配列番号23に記載される配列を含む。一例において、ウイルスカプシドタンパク質はAAV11に由来し、改変VP1配列は、配列番号24に記載される配列を含む。一例において、ウイルスカプシドタンパク質はAAV12に由来し、改変VP1配列は、配列番号25に記載される配列を含む。一例において、ウイルスカプシドタンパク質はAAV13に由来し、改変VP1配列は、配列番号26に記載される配列を含む。
【0150】
前述の各例において、ウイルスカプシドタンパク質は、改変VP1と同じAAV血清型由来のサブユニット2(VP2)及びサブユニット3(VP3)配列を含み得る。好ましくはVP1、VP2及びVP3は、同じORFから発現される。
【0151】
本明細書に記載どおりにAAVウイルスカプシドタンパク質をコードするヌクレオチド配列は、昆虫細胞内でのカプシドタンパク質の発現に適したプロモーターに作動可能に連結され得る。昆虫細胞内での発現に適したプロモーターは技術上周知であり、本明細書で使用するために企図される。この関連で、昆虫細胞内におけるポリペプチドの分子操作及び発現に関する方法論は、例えば、Summers and Smith,A Manual of Methods for Baculovirus Vectors and Insect Culture Procedures,Texas Agricultural Experimental Station Bull.No.7555,College Station,Tex.(1986);Luckow.,In Prokop et al.,Cloning and Expression of Heterologous Genes in Insect Cells with Baculovirus Vector's Recombinant DNA Technology and Applications,97-152(1991);King,L.A and R.D.Possee,The Baculovirus expression system,Chapman and Hall,United Kingdom(1992);O'Reilly,D.R.L.K.Miller,V.A Luckow,Baculovirus Expression Vectors:A Laboratory Manual,New York(1992);W.H.Freeman and Richardson,C.D.,Baculovirus Expression Protocols,Methods in Molecular Biology,volume 39(1992);US Pat.No.4,745,051;US2003148506;WO2003/074714;Kotin RM(2011)Hum.Mol.Genet.,20(R1):R2-R6;Aucoin et al.,(2006)Biotechnol.Bioeng.95(6);1081-1092;及びvan Oers et al.,(2015)J.Gen.Virol.96:6-23に記載されている。技術上周知のプロモーター及び他の該調節要素は、本開示の核酸に使用するために明白に企図される。ある特定の例においては、プロモーターは多角体プロモーターまたはp10プロモーターである。
【0152】
本明細書に記載のように、AAVカプシドアセンブリは、非構造性タンパク質、アセンブリ活性化タンパク質(AAP)の発現を必要とする。従って、前述の各例において、本明細書に記載される核酸分子は、AAPをコードするポリヌクレオチドを含み得る。
【0153】
本明細書に記載のように、AAVゲノムは、Rep遺伝子(すなわちRep78及びRep52)を含み、これらがコードするタンパク質がウイルスゲノムの複製で機能する。Rep ORFにおけるスプライシング現象が4つのRepタンパク質(すなわちRep78、Rep68、Rep52及びRep40)の発現をもたらす。しかしながら、昆虫細胞内ではRep78及びRep52タンパク質をコードするスプライシングされていないmRNAでAAVベクター産生に十分であることが示されている。従って、一例において、本開示の核酸分子は、Rep78及びRep68から選択される少なくとも1つの大型AAV複製Repタンパク質ならびにRep52及びRep40から選択される少なくとも1つの小型AAV Repタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列をも含む。一例において、本明細書に記載の核酸分子は、Rep78及びRep52をコードするポリヌクレオチド配列を含む。一例において、本明細書に記載の核酸分子は、Rep78及びRep40をコードするポリヌクレオチド配列を含む。一例において、本明細書に記載の核酸分子は、ウイルスカプシドタンパク質と同じAAV血清型由来のRep68及びRep52をコードするポリヌクレオチド配列を含む。一例において、本明細書に記載の核酸分子は、Rep68及びRep40をコードするポリヌクレオチド配列を含む。一例において、本明細書に記載の核酸分子は、Rep78、Rep68、Rep52及びRep40をコードするポリヌクレオチド配列を含む。前述の各例において、それぞれの小型及び大型Repタンパク質は、ウイルスカプシドタンパク質と同じAAV血清型に由来し得る。代わりに、それぞれの小型及び大型Repタンパク質は、ウイルスカプシドタンパク質のAAV血清型以外のAAV血清型に由来し得る。例えば、Repタンパク質はAAV血清型2に由来し得る。
【0154】
Repタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列は、昆虫細胞内でのRepタンパク質の発現に適したプロモーターに作動可能に連結され得る。昆虫細胞内での発現に適したプロモーターは技術上周知であり、本明細書で使用するために企図される。ある特定例においては、プロモーターは、多角体プロモーターまたはp10プロモーターであり得る。それぞれのRepタンパク質をコードするヌクレオチド配列は、同一プロモーターに作動可能に連結され得る。代わりに、Repタンパク質をコードする各配列が、それ自体のプロモーターに作動可能に連結され得る。
【0155】
改変VP1配列をコードする核酸は、インシリコで、例えば、野生型AAV配列または野生型AAV配列由来の天然起源のバリアントAAV配列に基づいて設計可能であり、該核酸配列を含むDNA構築物は、技術上周知の方法を用いて合成可能である。代わりに、または加えて、本明細書に記載される対応する野生型VP1配列(または当該野生型AAV配列由来の天然起源のバリアントAAV配列)に対するVP1配列への改変は、例えばSambrook and Russell(2001)“Molecular Cloning:A Laboratory Manual(3rd edition),Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor Laboratory Press,New Yorkに記載されているような周知の遺伝子操作技術の適用によって達成可能である。VPコード配列の種々のさらなる改変は当業者に知られており、VP及びビリオンの収率を高めるかまたは他の望ましい効果、例えば向性変化を有するかまたはビリオンの抗原性を低減させることができる。これらの改変は本開示の範囲内である。
【0156】
例えば、本明細書に記載のように昆虫細胞内における改変VP1配列を有するAAVの生成のために本開示で使用し得るAAV配列は、任意のAAV血清型のゲノムに由来することができる。一般的に、AAV血清型は、アミノ酸及び核酸レベルで顕著な相同性のゲノム配列を有し、同一セットの遺伝的機能をもたらし、物理的及び機能的に類似するビリオンを生成し、かつ実際に同一の機構(本明細書に記載のPLA2ドメインの活性の特異的除外を伴う)によって複製及びアセンブルする。本開示の改変AAVの設計及び生成に用いるAAVに適した核酸及びタンパク質配列は、公に入手可能である。ヒトに感染することが分かっている(及び本明細書で企図される)野生型AAVに関するVP1配列は、Chen et al.,(2013)J.Vir.87(11):6391-6405に記載されている。ヒトまたはサルのアデノ随伴ウイルス(AAV)血清型は、本開示の文脈で用いるAAVヌクレオチド配列の好ましい起源であり、一般的にヒトに感染するAAV血清型(例えば、血清型1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12及び13)がさらに好ましい。AAV血清型1~13に関するカプシドポリペプチド配列は技術上周知であり、例えば、AAV1(Genbank登録番号AAD27757.1,GI:4689097)、AAV2(Genbank登録番号AAC03780.1,GP.2906023)、AAV3(Genbank登録番号AAC55049.1,GI:1408469)、AAV4(Genbank登録番号AAC58045.1,GL2337940)、AAV5(Genbank登録番号AAD13756.1,GI-4249658)、AAV10(Genbank登録番号AAT46337.1,GL48728343)、AAV11(Genbank登録番号AAT46339.1,GI:48728346)、AAV12(Genbank登録番号ABI16639.1,GI:112379656)、またはAAV13(Genbank登録番号ABZ10812.1,GI:167047087)である。血清型1~13に関するAAVカプシドタンパク質のポリペプチド配列は、本明細書の配列番号27~39にも記載されている。さらに、血清型1~13由来のAAVに関する全ゲノムは技術上周知であり、例えば、AAV1(NCBI参照配列NC_002077.1)、AAV2(Genbank登録番号J01901.1)、AAV3(Genbank登録番号AF028705.1)、AAV4(NCBI参照配列NC_001829.1)、AAV5(NCBI参照配列NC_006152.1)、AAV6(Genbank:AF028704.1)、AAV7(NCBI参照配列NC_006260.1)、AAV8(NCBI参照配列NC_006261.1)、AAV9(Genbank登録番号AY530579.1)、AAV10(Genbank登録番号AY631965.1)、AAV11(Genbank登録番号AY631966.1)またはAAV12(Genbank登録番号DQ813647.1)である。
【0157】
本開示は、本開示の核酸によってコードされる改変VP1配列を含むAAVカプシドタンパク質をも提供する。
【0158】
改変AAVの生成のためのバキュロウイルスベクター
本開示は、昆虫細胞適合ベクター、すなわち、バキュロウイルスベクター内の本開示の核酸分子をも提供する。特に、本開示は、本明細書に記載どおりに改変VP1配列を有するAAVウイルスカプシドタンパク質をコードする核酸分子を含むバキュロウイルスベクターを提供する。
【0159】
本開示は、下記:
(i)本明細書に記載どおりに改変VP1配列を有するAAVウイルスカプシドタンパク質をコードする核酸分子を含む第1のバキュロウイルスベクター;及び
(ii)AAV逆方向末端反復(ITR)配列と隣接する目的のタンパク質またはRNAをコードするポリヌクレオチドを含む第2のバキュロウイルスベクター
を含む複数のバキュロウイルスベクターをも提供する。
【0160】
一例において、AAV ITR配列は、第1のバキュロウイルスベクター内の核酸分子によってコードされるウイルスカプシドタンパク質と同じ血清型に由来する。別の例において、AAV ITR配列は、別のAAV血清型、例えば、AAV2に由来する。
【0161】
典型的に、目的のタンパク質またはRNAをコードするポリヌクレオチドは、隣接ITRを含めて、5,000ヌクレオチド(nt)長以下である。しかしながら、特大、すなわち5,000nt長より大きいDNAをコードするポリヌクレオチドも企図される。本明細書では特大DNAは、5kbpという最大AAVパッケージング制限を超えるDNAと理解される。従って、通常は5.0kbより大きいゲノムによってコードされる組換えタンパク質またはRNAを産生可能なAAVベクターの生成も実現可能であり得る。
【0162】
哺乳動物細胞内での発現のための目的のタンパク質またはRNAをコードするポリヌクレオチドは、昆虫細胞内で複製され、かつ複製されたAAVゲノム中に組み込まれるように、バキュロウイルスベクター内に配置されることになる。本開示に従って生成されたAAVでトランスフェクトされた哺乳動物細胞内での後の発現のために、構築物がAAVビリオンのパッケージング容量以内にとどまる限り、任意のヌクレオチド配列を組み込むことができる。ポリヌクレオチド配列は、例えば、目的のタンパク質をコードし得るかまたはRNAi作用物質、すなわち、例えば、shRNA(低分子ヘアピン型RNA)もしくは低分子ヘアピン型マイクロRNA(shmiR)のようなRNA干渉可能なRNA分子を発現し得る。一例において、目的のタンパク質またはRNAをコードするポリヌクレオチドは、複数の目的のタンパク質、複数のRNAi作用物質、または目的の1以上のタンパク質及び1以上のRNAi作用物質をコードする。哺乳動物細胞内での発現のための目的のタンパク質は、治療用遺伝子産物であり得る。治療用遺伝子産物は、標的細胞内で発現されると、例えば、望ましくない活性の除去、例えば、感染細胞の除去、もしくは例えば、酵素活性の欠乏を引き起こす遺伝子欠陥の補完のような望ましい治療効果をもたらすポリペプチド、またはRNA分子(例えば本明細書に記載されるshRNAまたはshmiR)、または他の遺伝子産物であり得る。代わりに、または加えて、ポリヌクレオチドによってコードされる目的のタンパク質は、細胞の形質転換及び発現を評価するためのマーカータンパク質として役立ち得る。この目的に適したマーカータンパク質は、例えば、蛍光タンパク質GFPまたはホタルルシフェラーゼである。これらのマーカー遺伝子を得るための原料及びそれらの使用方法は、Sambrook and Russel(2001)“Molecular Cloning:A Laboratory Manual(3rd edition),Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor Laboratory Press,New Yorkに提供されている。
【0163】
第1のバキュロウイルスベクターがAAV Repタンパク質をコードしない例によれば、複数のバキュロウイルスベクターは、さらに下記:
(iii)Rep78及びRep68から選択される少なくとも1つの大型AAV Repタンパク質ならびにRep52及びRep40から選択される少なくとも1つの小型AAV Repタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を含む第3のバキュロウイルスベクター
を含む。
【0164】
例えば、第3のバキュロウイルスベクターは、Rep78及びRep52をコードするポリヌクレオチド配列を含み得る。例えば、第3のバキュロウイルスベクターは、Rep78及びRep40をコードするポリヌクレオチド配列を含み得る。例えば、第3のバキュロウイルスベクターは、Rep68及びRep52をコードするポリヌクレオチド配列を含み得る。例えば、第3のバキュロウイルスベクターは、Rep68及びRep40をコードするポリヌクレオチド配列を含み得る。例えば、第3のバキュロウイルスベクターは、Rep78、Rep68、Rep52及びRep40をコードするポリヌクレオチド配列を含み得る。第3のバキュロウイルスベクターについて記載する前述の各例において、それぞれの小型及び大型Repタンパク質は、第1のバキュロウイルスベクターによってコードされるウイルスカプシドタンパク質と同じAAV血清型に由来し得る。代わりに、それぞれの小型及び大型Repタンパク質は、第1のバキュロウイルスベクターによってコードされるウイルスカプシドタンパク質のAAV血清型以外のAAV血清型に由来し得る。例えば、Repタンパク質は、AAV血清型2に由来し得る。この関連で、Rep配列は、ほとんどの血清型の間で特に保存され、Rep配列は昆虫細胞内で効率的に交差補完すると報告されている。
【0165】
複数のバキュロウイルスベクターについて記載する前述の各例において、第3のバキュロウイルスベクター内でRepタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列は、昆虫細胞内でのRepタンパク質の発現のためのプロモーターに作動可能に連結され得る。昆虫細胞内でのタンパク質の発現に適したプロモーターは記載されており、特に別段の定めをした場合を除き、変更すべきところは変更して、バキュロウイルスベクターについて記載する本開示の例に当てはまると解釈すべきである。
【0166】
複数のバキュロウイルスベクターの少なくとも1つは、AAVカプシドアセンブリに必要とされるアセンブリ活性化タンパク質(AAP)をコードするポリヌクレオチドを含むことになる。一例において、カプシドタンパク質をコードするバキュロウイルスベクターは、AAPをコードするポリヌクレオチドを含む。代替例においては、Repタンパク質をコードするバキュロウイルス及び/または目的のタンパク質もしくはRNAをコードするバキュロウイルスは、AAPをコードするポリヌクレオチドを含む。
【0167】
バキュロウイルスベクターならびにそれらの生成方法及び使用方法は技術上周知であり、昆虫細胞の遺伝子操作に関する上記引用文献に記載されている。
【0168】
昆虫細胞
本明細書では、本明細書に記載どおりに改変VP1配列を有するAAVウイルスカプシドタンパク質をコードする本開示の核酸分子を含む昆虫細胞をも提供する。
【0169】
昆虫細胞は、好ましくは(i)Rep78及びRep68から選択される少なくとも1つの大型AAV Repタンパク質と、Rep52及びRep40から選択される少なくとも1つの小型AAV Repタンパク質とをコードするポリヌクレオチド配列、ならびに(ii)AAV ITR配列と隣接する目的のタンパク質またはRNAをコードするポリヌクレオチドをも含むことになる。大型及び小型Repタンパク質の特定の組み合わせ、ならびに適切なITRについては、本明細書に、例えば、本開示のバキュロウイルスベクターの文脈に記載してあり、特に別段の定めをした場合を除き、変更すべきところは変更して、昆虫細胞について記載する本開示の例に当てはまると解釈すべきである。同様に、昆虫細胞により産生されたAAVのゲノムへの組み込みのために目的のタンパク質またはRNAをコードするポリヌクレオチドは、本明細書に、例えば、本開示のバキュロウイルスベクターの文脈に記載してあり、特に別段の定めをした場合を除き、変更すべきところは変更して、昆虫細胞について記載する本開示の例に当てはまると解釈すべきである。
【0170】
好ましくは、(i)本明細書に記載どおりに改変VP1配列を有するAAVウイルスカプシドタンパク質をコードする本開示の核酸分子、(ii)Repタンパク質をコードするポリヌクレオチド、及び(iii)AAV ITR配列と隣接する目的のタンパク質またはRNAをコードするポリヌクレオチドをそれぞれバキュロウイルスベクターに導入し、昆虫細胞を感染させるために使用する。好ましくは、(i)~(iii)の少なくとも1つは、アセンブリ活性化タンパク質(AAP)AAVカプシドアセンブリをコードするポリヌクレオチドをも含むことになる。従って、本明細書に記載の昆虫細胞は、感染性かつ安定したAAVビリオンの発現及びアセンブリを可能にするのに必要な成分を含むべきである。一例において、昆虫細胞は、エピソームとして複製する組換えバキュロウイルスを含み得る。
【0171】
本開示は、感染性かつ安定したAAVビリオンを生成することができる、本明細書に記載どおりに1つのバキュロウイルスベクターまたは複数のバキュロウイルスベクターを含む昆虫細胞をも提供する。一例において、昆虫細胞は、本明細書に記載どおりにバキュロウイルスベクターまたは複数のバキュロウイルスベクターで形質転換またはトランスフェクトされている。昆虫細胞が本開示のバキュロウイルスベクターまたは複数のバキュロウイルスベクターで形質転換またはトランスフェクトされている例によれば、(i)本明細書に記載どおりに改変VP1配列を有するAAVウイルスカプシドタンパク質をコードする本開示の核酸分子、(ii)Repタンパク質をコードするポリヌクレオチド、及び(iii)AAV ITR配列と隣接する目的のタンパク質またはRNAをコードするポリヌクレオチドはそれぞれ、エピソームとして複製する組換えバキュロウイルスゲノムから発現されることになる。
【0172】
本開示によれば、バキュロウイルスの複製を可能にし、かつ培養下で維持できるいずれの昆虫細胞をも使用することができる。例えば、使用する細胞株は、Spodoptera frugiperda、ショウジョウバエ細胞株、または蚊細胞株、例えば、Aedes albopictus由来細胞株からのものであり得る。好ましい昆虫細胞または細胞株は、バキュロウイルス感染しやすい昆虫種由来の細胞であり、例えば、expresSF+(登録商標)、Drosophila Schneider 2(S2)細胞、Se301、SeIZD2109、SeUCRl、Sf9、Sf900+、Sf21、BTI-TN-5Bl-4、MG-I、5Tn368、HzAml、Ha2302、及びHz2E5が挙げられる。
【0173】
改変AAVの生成方法
本開示は、改変VP1配列を有するカプシドタンパク質を含むAAVの生成方法であって、本明細書に記載どおりに改変VP1配列をコードする核酸が、昆虫細胞内で発現され、その中でAAVがアセンブルされる、方法をも提供する。一例において、本開示は、昆虫細胞内でのAAVの生成方法であって、下記:
(i)本明細書に記載どおりに昆虫細胞を培地内で細胞がAAVを産生するのに十分な条件下で培養すること;及び場合により
(ii)培地及び/または細胞からAAVを回収すること
を含む方法をも提供する。
【0174】
別の例において、本開示は、昆虫細胞内でのAAVの生成方法であって、下記:
(i)昆虫細胞を、本明細書に記載の改変VP1配列を有するAAVウイルスカプシドタンパク質をコードする本開示の核酸分子を含み、かつRep78及びRep68から選択される少なくとも1つの大型AAV複製(Rep)タンパク質ならびにRep52及びRep40から選択される少なくとも1つの小型AAV Repタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を含むゲノムを有する第1のバキュロウイルスベクターと、本明細書に記載どおりにAAV逆方向末端反復(ITR)配列と隣接する目的のタンパク質またはRNAをコードするポリヌクレオチドを含むゲノムを有する第2のバキュロウイルスベクターとに同時感染させること;
(ii)(i)でバキュロウイルスベクターに感染した昆虫細胞を、培地内で細胞がAAVを産生するのに十分な条件下で培養すること;及び場合により
(iii)培地及び/または細胞からAAVを回収すること
を含む方法を提供する。
【0175】
別の例において、本開示は、昆虫細胞内でのAAVの生成方法であって、下記:
(i)昆虫細胞を、本明細書に記載どおりに改変VP1配列を有するAAVウイルスカプシドタンパク質をコードする本開示の核酸分子を含むゲノムを有する第1のバキュロウイルスベクターと、Rep78及びRep68から選択される少なくとも1つの大型AAV複製(Rep)タンパク質ならびにRep52及びRep40から選択される少なくとも1つの小型AAV Repタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を含むゲノムを有する第2のバキュロウイルスベクターと、AAV ITR配列と隣接する目的のタンパク質またはRNAをコードするポリヌクレオチドを含むゲノムを有する第3のバキュロウイルスベクターとに同時感染させること;
(ii)(i)でバキュロウイルスベクターに感染した昆虫細胞を、培地内で細胞がAAVを産生するのに十分な条件下で培養すること;及び場合により
(iii)培地または細胞からAAVを回収すること
を含む方法を提供する。
【0176】
前述の各例において、Repタンパク質は、ウイルスカプシドタンパク質と同じAAV血清型に由来し得る。代わりに、Repタンパク質は、ウイルスカプシドタンパク質のAAV血清型と異なるAAV血清型に由来し得る。例えば、Repタンパク質は、AAV血清型2に由来し得る。
【0177】
同様に、前述の各例において、ITR配列は、ウイルスカプシドタンパク質と同じAAV血清型に由来し得る。代わりに、ITR配列は、ウイルスカプシドタンパク質のAAV血清型と異なるAAV血清型に由来し得る。ITR配列は、AAV血清型2に由来し得る。
【0178】
複数のバキュロウイルスベクターの少なくとも1つは、AAVカプシドアセンブリのためのアセンブリ活性化タンパク質(AAP)をコードするポリヌクレオチドをも含むことになる。一例において、カプシドタンパク質をコードするバキュロウイルスベクターは、AAPをコードするポリヌクレオチドを含む。代替例において、Repタンパク質をコードするバキュロウイルス及び/または目的のタンパク質もしくはRNAをコードするバキュロウイルスは、AAPをコードするポリヌクレオチドを含む。
【0179】
方法が本明細書に記載のバキュロウイルスベクターに昆虫細胞を感染させることを含む例によれば、当技術分野で知られているいずれの通常の方法をも利用し得る。昆虫細胞内でのAAV等のウイルスの生成に適した培地及び条件は技術上周知であり、本明細書で企図される。例えば、昆虫細胞内でのAAV及びポリペプチドの分子操作及び発現に関する方法論は、例えば、Summers and Smith,A Manual of Methods for Baculovirus Vectors and Insect Culture Procedures,Texas Agricultural Experimental Station Bull.No.7555,College Station,Tex.(1986);Luckow.,In Prokop et al.,Cloning and Expression of Heterologous Genes in Insect Cells with Baculovirus Vectors’Recombinant DNA Technology and Applications,97-152(1991);King,L.A and R.D.Possee,The Baculovirus expression system,Chapman and Hall,United Kingdom(1992);O’Reilly,D.R.,L.K.Miller,V.A Luckow,Baculovirus Expression Vectors:A Laboratory Manual,New York(1992);W.H.Freeman and Richardson,C.D.,Baculovirus Expression Protocols,Methods in Molecular Biology,volume 39(1992);US Pat.No.4,745,051;US2003148506;WO2003/074714;Kotin RM(2011) Hum.Mol.Genet.,20(R1):R2-R6;Aucoin et al.,(2006) Biotechnol.Bioeng.95(6):1081-1092;及びvan Oers et al.,(2015) J.Gen.Virol.96:6-23に記載されている。
【0180】
適切な大型及び小型Repタンパク質、ITR配列、ならびに目的のタンパク質またはRNAは、本明細書に、例えば、本開示のバキュロウイルスベクターの文脈に記載してあり、特に別段の定めをした場合を除き、変更すべきところは変更して、AAVの生成方法について記載する本開示の例に当てはまると解釈すべきである。一例において、本明細書に記載の方法は、昆虫細胞を本開示の複数のバキュロウイルスベクターで同時トランスフェクトさせることを含む。
【0181】
AAVの生成方法を記載する前述の各例において、バキュロウイルスベクター内でRepタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列は、昆虫細胞内でのRepタンパク質の発現のためのプロモーター(及び場合により他の調節要素)に作動可能に連結され得る。同様に、AAV ITR配列と隣接する目的のタンパク質またはRNAをコードするポリヌクレオチド配列は、昆虫細胞内での発現のためのプロモーター(及び場合により他の調節要素)に作動可能に連結され得る。昆虫細胞内での発現に適したプロモーターは技術上周知であり、本明細書に記載されており、特に別段の定めをした場合を除き、変更すべきところは変更して、AAVの生成方法について記載する本開示の例に当てはまると解釈すべきである。一例において、プロモーターは多角体プロモーターまたはp10プロモーターである。
【0182】
一例において、AAVの生成方法は、培地及び/または細胞からAAVを回収する工程を含む。別の例において、AAVの生成方法は、培地及び/または細胞からAAVを回収してからAAVを精製する工程を含む。一例において、AAVは細胞から回収される。一例において、AAVは培地から回収される。一例において、AAVは細胞及び培地から回収される。培地及び/または細胞からのAAVの回収及び精製に適した方法は技術上周知であり、本明細書で使用するために企図される。例えば、該方法は、イオジキサノールに基づく密度勾配精製後の塩化セシウム(CsCl)勾配遠心分離を含み得る。例えば、該方法は、抗AAV抗体、好ましくは固定化抗体を用いるAAVの親和性精製を含み得る。抗AAV抗体はモノクローナル抗体であり得る。特に適切な抗体は、ラクダまたはラマから得られるように一本鎖ラクダ抗体またはその断片である(例えば、Muyldermans et al.,(2001) Biotechnol.74:277-302参照)。AAVの親和性精製用の抗体は、好ましくはAAVカプシドタンパク質上のエピトープ、例えば複数のAAV血清型のカプシドタンパク質上に存在するエピトープに特異的に結合する抗体である(異なる血清型由来のAVVの精製を可能にするため)
【0183】
組換えAAVの構築及び精製については以前に記載されている。例えば、米国特許第5,173,414号、第5,139,941号、第5,863,541号、及び第5,869,305号、第6,057,152号、第6,376,237号;Rabinowitz et al.,(2002)J.Virol.76:791-801;及びBowles et al.,(2003)J.Virol.77:423-432を参照されたい。該方法は、記載されたとおりに本明細書で使用するために企図される。
【0184】
本開示は、本明細書に記載の方法によって生成される改変VP1配列を有するウイルスカプシドタンパク質を含むAAVをも提供する。
【0185】
本開示は、昆虫細胞内で産生される血清型2以外の血清型由来のAAVの機能性の改善方法であって、AAVウイルスカプシドタンパク質のVP1配列を、該ウイルスカプシドタンパク質が、位置1のセリン、位置26のグルタミン酸、位置40のアルギニン、位置43のアスパラギン酸、位置44のセリン及び/または位置64のリジンの1つ以上を含むように、位置1、26、40、43、44及び64の1以上のアミノ酸を置換することによって、対応する野生型配列に対して改変することを含み、残基位置は、配列番号1に記載される配列に関して決定され、位置1、26、40、43、44及び/または64のアミノ酸以外のさらなるアミノ酸は、対応する野生型配列に対して改変されず、かつAAVは、昆虫細胞内で産生されるときに改変されなかった対応する野生型AAVに比べて、昆虫細胞内で産生されるときに改善された機能性を有する、方法をも提供する。AAVの機能性の改善は、細胞の内部移行後にAAVがエンドソーム区画から脱出するAAVの能力の改善に起因することになる。改変VP1配列を含むAAVウイルスカプシドタンパク質については本明細書に記載してあり、これらのいずれの例も、特に別段の定めをした場合を除き、変更すべきところは変更して、本明細書に記載どおりにAAVの機能性を改善する方法に当てはまるものと解釈すべきである。
【0186】
一例において、AAVの機能性の改善方法は、ウイルスカプシドタンパク質が、位置1のセリン、位置26のグルタミン酸、位置40のアルギニン、位置43のアスパラギン酸、位置44のセリン及び/または位置64のリジンの2つ以上を含むように、VP1配列の位置1、26、40、43、44及び64のアミノ酸のいずれか2つ以上を、本明細書に記載どおりに対応する野生型配列に対して改変することを含み、残基位置は、配列番号1に記載される配列に関して決定される。一例において、AAVの機能性の改善方法は、ウイルスカプシドタンパク質が、位置1のセリン、位置26のグルタミン酸、位置40のアルギニン、位置43のアスパラギン酸、位置44のセリン及び/または位置64のリジンの3つ以上を含むように、VP1配列の位置1、26、40、43、44及び64のアミノ酸のいずれか3つ以上を、本明細書に記載どおりに対応する野生型配列に対して改変することを含み、残基位置は、配列番号1に記載される配列に関して決定される。一例において、AAVの機能性の改善方法は、ウイルスカプシドタンパク質が、位置1のセリン、位置26のグルタミン酸、位置40のアルギニン、位置43のアスパラギン酸、位置44のセリン及び/または位置64のリジンの4つ以上を含むように、VP1配列の位置1、26、40、43、44及び64のアミノ酸のいずれか4つ以上を、本明細書に記載どおりに対応する野生型配列に対して改変することを含み、残基位置は、配列番号1に記載される配列に関して決定される。一例において、AAVの機能性の改善方法は、ウイルスカプシドタンパク質が、位置1のセリン、位置26のグルタミン酸、位置40のアルギニン、位置43のアスパラギン酸、位置44のセリン及び/または位置64のリジンの5つ以上を含むように、VP1配列の位置1、26、40、43、44及び64のアミノ酸のいずれか5つ以上を、本明細書に記載どおりに対応する野生型配列に対して改変することを含み、残基位置は、配列番号1に記載される配列に関して決定される。一例において、AAVの機能性の改善方法は、ウイルスカプシドタンパク質が、位置1にセリン、位置26にグルタミン酸、位置40にアルギニン、位置43にアスパラギン酸、位置44にセリン及び位置64にリジンを含むように、VP1配列の位置1、26、40、43、44及び64の各アミノ酸を、本明細書に記載どおりに対応する野生型配列に対して改変することを含み、残基位置は、配列番号1に記載される配列に関して決定される。
【0187】
本開示の方法は、配列番号15~26のいずれか1つに記載される配列を含むVP1配列を有するウイルスカプシドタンパク質を含むAAVを提供することができる。AAVは、一般的にヒトに感染するいずれの血清型に由来してもよい(例えば、血清型1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13)。
【0188】
一例において、本方法は、AAVのウイルスカプシドタンパク質のVP1配列を、下記:
(i)AAVが血清型1のものであるとき、ウイルスカプシドタンパク質が、配列番号15に記載される配列を含むVP1配列を含む;
(ii)AAVが血清型3のものであるとき、ウイルスカプシドタンパク質が、配列番号16に記載される配列を含むVP1配列を含む;
(iii)AAVが血清型4のものであるとき、ウイルスカプシドタンパク質が、配列番号17に記載される配列を含むVP1配列を含む;
(iv)AAVが血清型5のものであるとき、ウイルスカプシドタンパク質が、配列番号18に記載される配列を含むVP1配列を含む;
(v)AAVが血清型6のものであるとき、ウイルスカプシドタンパク質が、配列番号19に記載される配列を含むVP1配列を含む;
(vi)AAVが血清型7のものであるとき、ウイルスカプシドタンパク質が、配列番号20に記載される配列を含むVP1配列を含む;
(vii)AAVが血清型8のものであるとき、ウイルスカプシドタンパク質が、配列番号21に記載される配列を含むVP1配列を含む;
(viii)AAVが血清型9のものであるとき、ウイルスカプシドタンパク質が、配列番号22に記載される配列を含むVP1配列を含む;
(ix)AAVが血清型10のものであるとき、ウイルスカプシドタンパク質が、配列番号23に記載される配列を含むVP1配列を含む;
(x)AAVが血清型11のものであるとき、ウイルスカプシドタンパク質が、配列番号24に記載される配列を含むVP1配列を含む;
(xi)AAVが血清型12のものであるとき、ウイルスカプシドタンパク質が、配列番号25に記載される配列を含むVP1配列を含む;及び
(xii)AAVが血清型13のものであるとき、ウイルスカプシドタンパク質が、配列番号26に記載される配列を含むVP1配列を含む
ように、対応する野生型配列に対して改変することを含む。
【0189】
一例において、本方法は、AAV1のウイルスカプシドタンパク質のVP1配列を、ウイルスカプシドタンパク質が、配列番号15に記載される配列を含むVP1配列を含むように、対応する野生型配列に対して改変することを含む。一例において、本方法は、AAV3のウイルスカプシドタンパク質のVP1配列を、ウイルスカプシドタンパク質が、配列番号16に記載される配列を含むVP1配列を含むように、対応する野生型配列に対して改変することを含む。一例において、本方法は、AAV4のウイルスカプシドタンパク質のVP1配列を、ウイルスカプシドタンパク質が、配列番号17に記載される配列を含むVP1配列を含むように、対応する野生型配列に対して改変することを含む。一例において、本方法は、AAV5のウイルスカプシドタンパク質のVP1配列を、ウイルスカプシドタンパク質が、配列番号18に記載される配列を含むVP1配列を含むように、対応する野生型配列に対して改変することを含む。一例において、本方法は、AAV6のウイルスカプシドタンパク質のVP1配列を、ウイルスカプシドタンパク質が、配列番号19に記載される配列を含むVP1配列を含むように、対応する野生型配列に対して改変することを含む。一例において、本方法は、AAV7のウイルスカプシドタンパク質のVP1配列を、ウイルスカプシドタンパク質が、配列番号20に記載される配列を含むVP1配列を含むように、対応する野生型配列に対して改変することを含む。一例において、本方法は、AAV8のウイルスカプシドタンパク質のVP1配列を、ウイルスカプシドタンパク質が、配列番号21に記載される配列を含むVP1配列を含むように、対応する野生型配列に対して改変することを含む。一例において、本方法は、AAV9のウイルスカプシドタンパク質のVP1配列を、ウイルスカプシドタンパク質が、配列番号22に記載される配列を含むVP1配列を含むように、対応する野生型配列に対して改変することを含む。一例において、本方法は、AAV10のウイルスカプシドタンパク質のVP1配列を、ウイルスカプシドタンパク質が、配列番号23に記載される配列を含むVP1配列を含むように、対応する野生型配列に対して改変することを含む。一例において、本方法は、AAV11のウイルスカプシドタンパク質のVP1配列を、ウイルスカプシドタンパク質が、配列番号24に記載される配列を含むVP1配列を含むように、対応する野生型配列に対して改変することを含む。一例において、本方法は、AAV12のウイルスカプシドタンパク質のVP1配列を、ウイルスカプシドタンパク質が、配列番号25に記載される配列を含むVP1配列を含むように、対応する野生型配列に対して改変することを含む。一例において、本方法は、AAV13のウイルスカプシドタンパク質のVP1配列を、ウイルスカプシドタンパク質が、配列番号26に記載される配列を含むVP1配列を含むように、対応する野生型配列に対して改変することを含む。
【0190】
本明細書に記載どおりにAAVの機能性の改善する方法は、改変AAVの機能性を、対応する野生型AAVに関して解析する工程をさらに含み得る。すなわち、本方法は、本明細書に記載され及び/または本明細書に記載の方法によって生成された改変もしくは野生型AAVに哺乳動物細胞を感染させ、機能性のレベルを判定することをさらに含み得る。例えば、AAVの機能性は、AAVに感染後に哺乳動物細胞内での目的のタンパク質またはRNAの発現レベルを決定することによって判定可能である。ビリオンの機能性を判定するための機能性アッセイは、例えば、Girod et al.,(2002)J.Gen.Virol.,83:973-978;Lock et al.,(2010)Hum.Gene Ther.21(10):1273-1285に記載されているように、技術上周知であり、本明細書で使用するために企図さる。ウイルスの感染性及び/または機能性を検定するのに適したアッセイとしては、限定するものではないが、(1)A20酵素結合免疫吸着検定法によるカプシド力価;(2)定量ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)によるベクターゲノム力価;ならびに(3)50%組織培養感染量(TCID50)とqPCR解読による感染力価及び(4)レポーター遺伝子、例えば、緑色蛍光タンパク質[GFP]による形質導入を検定することによる感染力価が挙げられる。
【0191】
本明細書に記載どおりにAAVの機能性を改善する方法は、本明細書に記載どおりに改変AAV VP1配列をコードする核酸または本明細書に記載どおりに該核酸を含むバキュロウイルスベクターを準備することを含み得る。代わりに、または加えて、本明細書に記載どおりにAAVの機能性を改善する方法は、本明細書に記載どおりに改変VP1配列を有するカプシドタンパク質を含むAAVを生成することを含み得る。
【0192】
改変VP1を有するAAV
本開示は、改変VP1配列を有するウイルスカプシドタンパク質を含むAAVであって、前記改変VP1配列が、位置1にセリン、位置26にグルタミン酸、位置40にアルギニン、位置43にアスパラギン酸、位置44にセリン及び位置64にリジンを含み、アミノ酸位置は、配列番号1に記載される配列に関して規定され、位置1、26、40、43、44及び64のいずれか1以上のアミノ酸は、対応する野生型配列に対して改変されており、かつ前記いずれか1以上の位置1、26、40、43、44及び64のアミノ酸以外のさらなるアミノ酸は、対応する野生型配列に対して改変されていない、AAVをも提供する。
【0193】
一例において、本明細書に記載のAAVは、配列番号1に記載される配列の位置1、26、40、43、44及び64のいずれか2、3、4、5または6つのアミノ酸が、本明細書に記載どおりに対応する野生型配列に対して改変されている改変VP1配列を有するウイルスカプシドタンパク質を含む。
【0194】
一例において、本明細書に記載のAAVは、配列番号1に記載される配列の位置1、26、40、43、44及び64のいずれか2以上のアミノ酸が、本明細書に記載どおりに対応する野生型配列に対して改変されている改変VP1配列を有するウイルスカプシドタンパク質を含む。
【0195】
一例において、本明細書に記載のAAVは、配列番号1に記載される配列の位置1、26、40、43、44及び64のいずれか3以上のアミノ酸が、本明細書に記載どおりに対応する野生型配列に対して改変されている改変VP1配列を有するウイルスカプシドタンパク質を含む。
【0196】
一例において、本明細書に記載のAAVは、配列番号1に記載される配列の位置1、26、40、43、44及び64のいずれか4以上のアミノ酸が、本明細書に記載どおりに対応する野生型配列に対して改変されている改変VP1配列を有するウイルスカプシドタンパク質を含む。
【0197】
一例において、本明細書に記載のAAVは、配列番号1に記載される配列の位置1、26、40、43、44及び64のいずれか5以上のアミノ酸が、本明細書に記載どおりに対応する野生型配列に対して改変されている改変VP1配列を有するウイルスカプシドタンパク質を含む。
【0198】
一例において、本明細書に記載のAAVは、配列番号1に記載される配列の位置1、26、40、43、44及び64のそれぞれのアミノ酸が、本明細書に記載どおりに対応する野生型配列に対して改変されている改変VP1配列を有するウイルスカプシドタンパク質を含む。
【0199】
改変VP1配列を含むウイルスカプシドタンパク質については本明細書に記載してあり、そのいずれの例も、特に別段の定めをした場合を除き、変更すべきところは変更して、前記改変VP1配列を含む本開示のAAVに当てはまるものと解釈すべきである。
【0200】
本明細書に記載のAAVは、血清型2以外の、一般的にヒトに感染するAAVのいずれか1つ(例えば、血清型1、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13)であってもよい。一例において、AAVは血清型1のものである。一例において、AAVは、血清型3のものである。一例において、AAVは血清型4のものである。一例において、AAVは血清型5のものである。一例において、AAVは血清型6のものである。一例において、AAVは血清型7のものである。一例において、AAVは血清型8のものである。一例において、AAVは血清型9のものである。一例において、AAVは血清型10のものである。一例において、AAVは血清型11のものである。一例において、AAVは血清型12のものである。一例において、AAVは血清型13のものである。
【0201】
本明細書に記載のAAVは、配列番号15~26のいずれか1つに記載される配列を含む改変VP1を有するカプシドタンパク質を含み得る。一例において、AAVは血清型1のものであり、改変VP1配列は、配列番号15に記載される配列を含む。一例において、AAVは血清型3のものであり、改変VP1配列は、配列番号16に記載される配列を含む。一例において、AAVは血清型4のものであり、改変VP1配列は、配列番号17に記載される配列を含む。一例において、AAVは血清型5のものであり、改変VP1配列は、配列番号18に記載される配列を含む。一例において、AAVは血清型6のものであり、改変VP1配列は、配列番号19に記載される配列を含む。一例において、AAVは血清型7のものであり、改変VP1配列は、配列番号20に記載される配列を含む。一例において、AAVは血清型8のものであり、改変VP1配列は、配列番号21に記載される配列を含む。一例において、AAVは血清型9のものであり、改変VP1配列は、配列番号22に記載される配列を含む。一例において、AAVは血清型10のものであり、改変VP1配列は、配列番号23に記載される配列を含む。一例において、AAVは血清型11のものであり、改変VP1配列は、配列番号24に記載される配列を含む。一例において、AAVは血清型12のものであり、改変VP1配列は、配列番号25に記載される配列を含む。一例において、AAVは血清型13のものであり、改変VP1配列は、配列番号26に記載される配列を含む。
【0202】
前述の各例において、本明細書に記載のAAVは、改変VP1と同じAAV血清型由来のサブユニット2(VP2)及びサブユニット3(VP3)配列を含むウイルスカプシドタンパク質を含む。好ましくはVP1、VP1及びVP3は、同じORFから発現される。
【0203】
本明細書に記載されるように、AAVゲノムは、該ウイルスによってコードされるタンパク質である複製(Rep)遺伝子を含み、これらが該ウイルスゲノムの複製において機能を果たす。従って、一例において、本明細書に記載のAAVは、Rep78及びRep68から選択される少なくとも1つの大型AAV Repタンパク質ならびにRep52及びRep40から選択される少なくとも1つの小型AAV Repタンパク質を含む。一例において、本明細書に記載のAAVは、Rep78及びRep52を含む。一例において、本明細書に記載のAAVは、Rep78及びRep40を含む。一例において、本明細書に記載のAAVは、Rep68及びRep52を含む。一例において、本明細書に記載のAAVは、Rep68及びRep40を含む。一例において、本明細書に記載のAAVは、Rep78、Rep68、Rep52及びRep40を含む。前述の各例において、それぞれの小型及び大型Repタンパク質は、ウイルスカプシドタンパク質と同じAAV血清型に由来し得る。代わりに、それぞれの小型及び大型Repタンパク質は、ウイルスカプシドタンパク質のAAV血清型以外のAAV血清型に由来し得る。例えば、Repタンパク質は、AAV2に由来し得る。
【0204】
本開示のAAVは、AAV逆方向末端反復(ITR)配列と隣接する目的のタンパク質またはRNAをコードするポリヌクレオチドを含んでもよい。
【0205】
一例において、AAV ITR配列は、ウイルスカプシドタンパク質と同じ血清型に由来する。別の例において、AAV ITR配列は、ウイルスカプシドタンパク質の血清型以外の血清型に由来する。ある特定例において、ITR配列はAAV血清型2に由来する。
【0206】
本明細書に記載されるように、目的のタンパク質またはRNAをコードするポリヌクレオチドは、隣接ITRを含めて、典型的に5,000ヌクレオチド(nt)長以下である。しかしながら、特大DNA、すなわち5,000nt長より大きいDNAをコードするポリヌクレオチドも企図される。本明細書では特大DNAは、5kbpという最大AAVパッケージング制限を超えるDNAと理解される。従って、本開示のAAVは、通常は5.0kbより大きいゲノムによってコードされるタンパク質またはRNAを発現することができる本開示のAAVも実現可能であり得る。
【0207】
本開示のAAVは、好ましくは、そのゲノムに組み込まれる、哺乳動物細胞内での発現のための、目的のタンパク質またはRNAをコードするポリヌクレオチドを含むことになる。本開示に従って生成されたAAVでトランスフェクトされた哺乳動物細胞内での後の発現のために、構築物がAAVビリオンのパッケージング容量以内にとどまる限り、任意のヌクレオチド配列を組み込むことができる。目的のタンパク質またはRNAをコードする適切なポリヌクレオチドについては本明細書に既に記載してあり、特に別段の定めをした場合を除き、変更すべきところは変更して、本開示のAAVに当てはまると解釈すべきである。一例において、AAVゲノムは、本明細書に記載どおりに目的の治療用タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を含む。一例において、AAVゲノムは、本明細書に記載どおりにRNAi作用物質をコードするポリヌクレオチド配列を含む。一例において、AAVゲノムは、例えば、本明細書に記載どおりに細胞の形質転換及び発現を評価するためのマーカータンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を含む。一例において、AAVゲノムは、複数のポリヌクレオチド配列を含み、前記複数は、本明細書に記載どおりに、目的のタンパク質、RNAi作用物質、及び/またはマーカータンパク質の2つ以上をコードする。
【0208】
改変VP1配列を含む本明細書に記載のAAVは、昆虫細胞内で生成されるとき、対応する野生型VP1配列を含むAVVに比べて改善された機能性を有することになる。
【0209】
一例において、改変VP1配列を有するカプシドタンパク質を含むAAVは、本開示の方法を用いて生成される。
【0210】
キット
本開示は、本開示の核酸分子、バキュロウイルスベクター、複数のバキュロウイルスベクター及び/または昆虫細胞をキットの形態でも提供する。キットは、本開示の核酸分子を含む容器を含み得る。一例において、核酸は、バキュロウイルスベクター内に含まれる。一例において、キットは、本開示の核酸分子を含む第1の容器と、AAVを生成するための1種以上のさらなる試薬を含む第2の容器とを含む。一例において、核酸は、バキュロウイルスベクター内に含まれる。一例において、キットは、本開示の複数のバキュロウイルスベクターを含み、それぞれ別々の容器に含まれる。キットは、場合により、例えば、本開示に従うAAVの生成に適した昆虫細胞をさらに含み得る。キットは、本明細書に記載される方法を用いたAAVの生成のために本開示の核酸分子、バキュロウイルスベクター、複数のバキュロウイルスベクター及び/または昆虫細胞を使用するための説明書をさらに含んでもよい。
【実施例】
【0211】
実験例
実施例1-改変AAV VP1配列の設計、生成及び試験
この実施例において、発明者らは、昆虫細胞内での生成時にAAVのホスホリパーゼ活性及びウイルス機能性を修復するため、中に特異的配列改変、すなわち、アミノ酸置換をホスホリパーゼA2(PLA2)ドメイン及び隣接配列に導入したウイルスカプシドタンパク質サブユニット1(VP1)を有するAAVを設計及び調製した。さらに、種々の代表的なAAV血清型についてPLA2ドメイン及び隣接配列を含むVP1部分配列に関して行なった多重配列アラインメントに基づいて、PLA2ドメイン及び隣接配列を含むコンセンサスVP1部分配列を、ホスホリパーゼ活性を修復するように設計した配列改変を含めて調製した。このコンセンサスVP1部分配列は配列番号1に記載されている。
【0212】
1.1 改変AAV8 VP1及びAAV9 VP1配列の設計
AAV8(配列番号34)及びAAV2(配列番号28)のウイルスカプシドタンパク質1(VP1)タンパク質由来のN末端180アミノ酸、ならびにAAV9(配列番号35)及びAAV2(配列番号26)のVP1タンパク質由来のN末端180アミノ酸についてBLASTpアラインメントツールを用いてペアワイズ配列アラインメントを行なった。これらのアラインメントに基づいて、AAV8及びAAV9由来のPLA2ドメイン及び隣接配列が、AAV2の対応する配列に高度に保存されていることを示した。
【0213】
これらの配列アラインメントに基づいて、配列番号34に記載される配列の位置42、67、81、84、85及び105のアミノ酸を、配列番号28に記載されるAAV2 VP1配列の対応する位置に存在するアミノ酸、すなわち、配列番号34の配列内のG42S、A67E、Q81R、Q84D、A85S及びQ105Kと置き換えることによって、改変AAV8 VP1配列をインシリコで設計した。改変AAV8 VP1配列において置換された残基位置の2つは、PLA2ドメインと隣接する領域内にあり(しかしPLA2ドメインの折りたたみ及び/または活性に関与する可能性があると考えられる)、改変された残基位置の4つは、PLA2ドメイン自体の内部に存在した。
【0214】
同様に、配列番号35に記載される配列の位置42、67、81、84及び85のアミノ酸を、配列番号28に記載されるAAV2 VP1配列の対応する位置に存在するアミノ酸、すなわち、配列番号35の配列内のA42S、A67E、Q81R、K84D及びA85Sと置き換えることによって、改変AAV9 VP1配列をインシリコで設計した。改変AAV9 VP1配列において置換された位置の1つは、PLA2ドメインと隣接する領域内にあり(しかしPLA2ドメインの折りたたみ及び/または活性に関与する可能性があると考えられる)、改変された残基位置の4つは、PLA2ドメイン自体の内部に存在した。
【0215】
1.2 改変残基を含むコンセンサスAAV VP1部分配列の設計
AAV2、AAV8及びAAV9の全VP1配列について行なった配列アラインメントン基づいて、AAV血清型1~13(配列番号15~26)のPLA2ドメイン及び隣接配列を含むVP1部分配列について多重配列アラインメントを行なった。上記ペアワイズアラインメントから明らかにされた差異に加えて、いくつかのさらなる非同一残基が部分配列内で明らかにされた。しかしながら、これらの差異は保存的差異であると思われたので及び/または残基位置はPLA2ドメインの外部であり、ホスホリパーゼ活性に影響を与える可能性はないと考えられたので、対応するAAV2配列に関する同一性についてこれらの位置を変化させないと決断した。多重配列アラインメントに基づいて、上記アミノ酸置換を有するPLA2ドメイン及び隣接配列を含むコンセンサスVP1部分配列をインシリコで調製した(配列番号1)。
【0216】
1.3 構造性及び非構造性AAV8タンパク質を発現するバキュロウイルスベクターの生成
サブユニットVP1、VP2及びVP3を含む改変AAV8カプシドタンパク質ならびにAAV8非構造性タンパク質Rep78及びRep52をコードするバキュロウイルスベクターを調製した(BacAAV8-Rep-VPmod、
図1)。
【0217】
簡潔には、配列番号21に記載される配列を含む改変VP1サブユニットを有するAAV8カプシドタンパク質(VP1、VP2及びVp3)をコードし、かつ隣接NotI及びApaI制限部位を有するDNA構築物をGenScriptで合成した(AAV8-VPmod、
図2)。非構造性タンパク質Rep78、Rep68、Rep52及びRep40のみならず、カプシドタンパク質VP1、VP2及びVP3ならびにアセンブリ活性化タンパク質(AAP)をもコードするwtAAV8-Rep/Capプラスミド(Virovek,Hayward,CA)を骨格として用いてAAV8-VPmod DNA構築物を受け入れた。AAV8-VPmod DNA構築物とwtAAV8-Rep/Capプラスミドを両方ともNotI及びApaIで消化させてからAAV8-VPmod DNA構築物を、wtカプシドタンパク質コード配列の代わりにwtAAV8-Rep/Capプラスミド骨格(
図3)に連結してAAV8-Rep-VPmod(
図4)を得た。
【0218】
次にAAV8-Rep-VPmod中間体をpOET1バキュロウイルストランスファーベクター(Oxford Expression Technologies)にクローン化した。これを容易にするため、Quickchange技術を用いてEcoRV部位をAAV8-Rep-VPmod中間体に挿入してAAV8-Rep-VPmod-EcoRV中間体を得た。次にAAV8-Rep-VPmod-EcoRV中間体及びpOET1をNotI及びEcoRVで消化させてから挿入物をpOET1骨格(Oxford Expression Technologies)に連結して最終AAV8-Rep-VPmodクローンを生成した(BacAAV8-Rep-VPmod、
図1)。
【0219】
1.4 構造性及び非構造性AAV9タンパク質を発現するバキュロウイルスベクターの生成
サブユニットVP1、VP2及びVP3ならびにAAV9非構造性タンパク質Rep78、Rep68、Rep52及びRep40を含むAAV9カプシドタンパク質をコードするバキュロウイルスベクターを調製した(BacAAV9-Rep-VPmod、
図5)。
【0220】
簡潔には、配列番号22に記載される配列によってコードされた改変AAV9 VP1サブユニットを有するAAV9カプシドタンパク質をコードし、かつ隣接NotI及びApaI制限部位を有するDNA構築物をGenScriptで合成した(AAV9-VPmod、
図6)。非構造性タンパク質Rep78、Rep68、Rep52及びRep40のみならず、カプシドタンパク質VP1、VP2及びVP3ならびにアセンブリ活性化タンパク質(AAP)をもコードするwtAAV9-Repプラスミド(Virovek,Hayward,CA)を骨格として用いてAAV9-VPmod DNA構築物を受け入れた。AAV9-VPmod DNA構築物とwtAAV9-Repプラスミドを両方ともNotI及びApaIで消化させ、その後にAAV9-VPmod DNA構築物を、wtカプシドタンパク質コード配列の代わりにwtAAV9-Repプラスミド骨格(
図3)に連結してAAV9-Rep-VPmodを得た(
図7)。
【0221】
次にAAV9-Rep-VPmod中間体をpOET1バキュロウイルストランスファーベクター(Oxford Expression Technologies)にクローン化した。これを容易にするため、Quickchange技術を用いてEcoRV部位をAAV9-Rep-VPmod中間体に挿入してAAV9-Rep-VPmod-EcoRV中間体を得た。次にAAV9-Rep-VPmod-EcoRV中間体及びpOET1(Oxford Expression Technologies)をNotI及びEcoRVで消化させ、次に挿入物をpOET1骨格に連結して最終AAV9-Rep-VPmodクローンを得た(BacAAV9-Rep-CapPL、
図5)。
【0222】
1.5 目的の遺伝子(GOI)を発現するバキュロウイルスベクターの生成
AAV2逆方向末端反復配列(ITR)と隣接する目的の遺伝子(GOI)をコードするバキュロウイルスベクターを調製した。簡潔には、一例ではAAV2 ITRと隣接するヒトPABPN1の転写物を標的にする2つのshmiRをコードするDNA構築物を、AAV2-GOI構築物(
図8)及びpOET1(Oxford Expression Technologies)をNotIで消化させ、AAV2-GOI構築物をpOET1骨格に連結することによってpOET1バキュロウイルストランスファーベクター(Oxford Expression Technologies)にクローン化して最終クローンを生成した(BacAAV2-GOI、
図9)。HBVポリメラーゼ遺伝子転写物の種々の領域を標的にする3つのshmiRをコードするものではあるが、上記と同様に、第2のGOIをも調製した。
【0223】
1.6 P0バキュロウイルスストックの生成
Oxford Expression TechnologiesのbaculoCOMPLETEシステムを用いてバキュロウイルスP0ストックを生成した(製造業者の説明書に従って)。簡潔には、トランスフェクションの1時間前に百万個のSf9細胞を6ウェルプレートに播種し、プレートに付着させた。1mlのTC100培地、500ngのBac-AAV2-GOIプラスミド、BacAAV8-Rep-CapPLまたはBacAAV9-Rep-CapPLを500ngのフラッシュBAC DNA及びbaculoFECTINトランスフェクション試薬と混合した(製造業者のプロトコルに従って)。室温での30分のインキュベーション後、播種したSf9細胞にトランスフェクション混合物を加えた。6ウェルプレートを28℃でインキュベートした。トランスフェクション24時間後に、1mlのSf9培地を細胞に添加した。トランスフェクションの5日後に、P0バキュロウイルスストックを含有する培地を収集し、4℃で貯蔵した。このようにしてBacAAV8-Rep-CapPL、BacAAV9-Rep-CapPL及びBac-AAV2-GOIのためのP0バキュロウイルスを生成した。
【0224】
1.7 P1バキュロウイルスストックの生成
500ulのP0バキュロウイルスストックを用いて100mlのSf9細胞培養物を2x10e6細胞/mlの濃度で感染させた。バキュロウイルス培養物を140rpmで5日間振盪させながら28℃でインキュベートした。感染5日後、P1を含有する培地を回収して4℃で貯蔵した。
【0225】
1.8 P2バキュロウイルスストックの生成
500ulのP1バキュロウイルスストックを用いて100mlのSf9細胞培養物を2x10e6細胞/mlの濃度で感染させた。バキュロウイルス培養物を140rpmで5日間振盪させながら28℃でインキュベートした。感染5日後、P2を含有する培地を回収して4℃で貯蔵した。
【0226】
1.9 P2バキュロウイルスストックの力価決定
バキュロウイルスP2ストックの力価をOxford Expression TechnologiesのbaculoQUANTキットを用いて測定した。製造業者の説明書に従ってバキュロウイルスストックを段階希釈し、提供された溶解バッファーで溶解させた。バキュロウイルスエンベロープ融合タンパク質、gp64のqPCRを利用してDNAを増幅させた。検量線を用いてP2ストックを定量化し、外挿してウイルスのpfu/mlを決定した。
【0227】
1.10 AAVを生成するための同時感染
2x10e6細胞/mlの細胞密度の600mlのSf9細胞を、0.1のMOIでBacAAV8-Rep-CapPL及びBacAAV2-GOI(HBVポリメラーゼ遺伝子転写物を標的にする3つのshmiRをコードする)または0.1のMOIでBacAAV9-Rep-CapPL及びBacAAV2-GOI(ヒトPABPN1遺伝子転写物を標的にする2つのshmiRをコードする)に同時感染させた。次に細胞培養物を115rpmで6日間振盪させながら28℃でインキュベートした。
【0228】
1.11 AAVの精製
感染6日後に、感染培養物から清澄培地を収集した。0.2ミクロンフィルタリング後に0.1ミクロンフィルタリングを利用してバキュロウイルスをAAVから濾別した。次にバキュロウイルスフリー培地にPEGを添加してAAVを沈殿させた。PEG添加24時間後に培地を2500gで45分間回転させてAAVをペレット化した。上清を捨て、ペレット化ウイルスを溶解バッファーに懸濁させた。イオジキサノール勾配によってAAVの初期精製を行ない、それにより40~60%のフラクション間の5mlの層が収集された。このウイルス含有層をバッファー交換して残存イオジキサノールを除去し、バッファー交換したウイルスをセシウム勾配上に層化した。次に一晩の遠心分離をセシウム勾配上で行なった。セシウム勾配からAAV含有バンドをシリンジで収集し、バッファー交換して精製AAVウイルスストックから塩化セシウムを除去した。
【0229】
1.12 AAVの力価決定
全てのAAV調製物についての最終AAV力価をqPCRで定量化した。簡潔には、10マイクロリットルの精製AAVウイルスを15分間室温でDNAse処理(DNAseI、増幅グレード、1U/ul、Invitrogen)した。次に65℃での10分間のインキュベーションによりDNAse酵素を失活させた。ウイルスを以下のように希釈した:1:10;1:30;1:100;1:1,000;1:3,000;1:10,000。各希釈物をqPCRで解析して1ml当たりのウイルスゲノムの総数を決定した。
【0230】
1.13 哺乳動物細胞内で調製したAAV
哺乳動物細胞内で調製したAAVの機能性を、上述したように昆虫細胞内で調製したAAVと比較した。哺乳動物及び昆虫細胞内で調製した組換えAAVの生物活性(機能性)を比較するため、種々の力価のウイルスで哺乳動物細胞をインビトロで感染させ、プロセシングされたshmiRの発現をqRT PCRアッセイで定量化した。
【0231】
これらの実験のため、HBVポリメラーゼ遺伝子転写物を標的にする3つのshmiRを発現する組換えAAV8粒子が哺乳動物細胞内で商用供給業者により調製された(Vector Biolabs;https://www.vectorbiolabs.com)。さらに、ヒトPABPN1を標的にする2つのshmiRを発現する組換えAAV9粒子が第2の供給業者、すなわちNationwide Children’s hospitalベクターコアにより哺乳動物細胞内で調製された(https://ccts.osu.edu/research-support-services/clinical-research-support/nationwide-childrens-viral-vector-gmop-facility)。
【0232】
(i)哺乳動物細胞内で生成された非改変VP1を有するAAV8(Vector Biolabs)、(ii)昆虫細胞内でバキュロウイルスにより(BacAAV8-Rep-VPmodを用いて本明細書に記載どおりに)生成された改変VP1を有するAAV8、及び(iii)wtAAV8-Rep/Cap(Ben10,Virovek,Hayward,CA)を用いて昆虫細胞内でバキュロウイルスにより生成された非改変wtVP1を有するAAV8について生物活性を評価した(それぞれHBVポリメラーゼ遺伝子を標的にする3つのshmiR(shmiR1、shmiR2及びshmiR3)をコードする)。簡潔には、JHU67細胞を4x10e9、8x10e9及び1.6x10e10のMOIで上記改変または非改変組換えウイルス調製物に感染させ、感染72時間後に3つのshmiRのそれぞれについてshmiR発現を定量化した。shmiRの発現を定量化するため、Qiagen RNAミニキット(Qiagen)を用いて感染細胞からRNAを抽出した。Qiagen miScriptキット(Qiagen)を用いてRNAを逆転写させた。次にshmiR標的を増幅するように設計された特異的プライマーとのqPCR反応にcDNAを用いてサンプル中に存在するコピーの総数を決定した。
【0233】
図10A~10Cに示すように、哺乳動物細胞内で調製された非改変wtVP1を有するAAV8に感染した細胞は直ちに検出可能レベルのshmiRを産生したが、昆虫細胞内でバキュロウイルスにより生成された非改変wtVP1を有するAAV8は、たとえあったにしても、少ししかshmiRを産生しなかった。対照的に昆虫細胞内でバキュロウイルスにより生成された改変VP1を有するAAV8は、相対的に高レベルのshmiRを産生した。これは、昆虫細胞内でバキュロウイルスにより生成された非改変wtVP1を有するAAV8に比べてこれらのAAVの機能性の向上を示唆している。
【0234】
(i)哺乳動物細胞内で生成された非改変カプシドタンパク質を有するAAV9(Nationwide)、及び(ii)昆虫細胞内でバキュロウイルスにより生成されたBACAAV9-Rep-VPmodを用いて改変されたプシドタンパク質を有するAAV9(本明細書に記載どおり)についても生物活性を評価した(それぞれヒトPABPN1の転写物を標的にする2つのshmiR(sh13及びsh17と名付けられている)をコードする)。簡潔には、AAV内部移行受容体を発現するC2C12細胞を4x10e9、8x10e9及び1.6x10e10のベクターゲノムに感染させた。72時間のインキュベーション後、細胞を回収し、RNAを抽出し、上記qPCR法に従って2つのshmiRについてshmiRの発現を定量化した。
【0235】
図11に示すように、2つの調製物は非常に類似するレベルのshmiR発現を示した。これは、非常に類似するウイルス機能性を示唆している。
【0236】
血清型8及び9由来のAAVという観点から実証したが、本明細書に記載の手法に従って他のAAV血清型(血清型2以外)のVP1サブユニット配列を改変すると、昆虫細胞内でバキュロウイルス発現系から生成されるときにAAVの機能性を修復することになると想定される。
【0237】
当業者は、本開示の広い一般的範囲を逸脱することなく、多くの変更及び/または修正を上記実施形態に加えることができると認識している。従って、本実施形態は、全ての点で例示的であり、限定的でないとみなすべきである。
(付記)
(付記1)
アデノ随伴ウイルス(AAV)ウイルスカプシドタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を含む核酸分子であって、前記ウイルスカプシドタンパク質は、位置1にセリン、位置26にグルタミン酸、位置40にアルギニン、位置43にアスパラギン酸、位置44にセリン及び位置64にリジンを含む改変サブユニット1(VP1)配列を含み、前記アミノ酸位置は、配列番号1に記載される配列に関して規定され、位置1、26、40、43、44及び64のいずれか1以上の前記アミノ酸は、対応する野生型配列に対して改変されており、かつ前記いずれか1以上の位置1、26、40、43、44及び64のアミノ酸以外のさらなるアミノ酸は、前記対応する野生型配列に対して改変されていない、前記核酸分子。
(付記2)
前記ウイルスカプシドタンパク質が、下記:
(i)前記改変VP1配列が、配列番号15に記載される配列を含む、AAV1由来のウイルスカプシドタンパク質;
(ii)前記改変VP1配列が、配列番号16に記載される配列を含む、AAV3由来のウイルスカプシドタンパク質;
(iii)前記改変VP1配列が、配列番号17に記載される配列を含む、AAV4由来のウイルスカプシドタンパク質;
(iv)前記改変VP1配列が、配列番号18に記載される配列を含む、AAV5由来のウイルスカプシドタンパク質;
(v)前記改変VP1配列が、配列番号19に記載される配列を含む、AAV6由来のウイルスカプシドタンパク質;
(vi)前記改変VP1配列が、配列番号20に記載される配列を含む、AAV7由来のウイルスカプシドタンパク質;
(vii)前記改変VP1配列が、配列番号21に記載される配列を含む、AAV8由来のウイルスカプシドタンパク質;
(viii)前記改変VP1配列が、配列番号22に記載される配列を含む、AAV9由来のウイルスカプシドタンパク質;
(ix)前記改変VP1配列が、配列番号23に記載される配列を含む、AAV10由来のウイルスカプシドタンパク質;
(x)前記改変VP1配列が、配列番号24に記載される配列を含む、AAV11由来のウイルスカプシドタンパク質;
(xi)前記改変VP1配列が、配列番号25に記載される配列を含む、AAV12由来のウイルスカプシドタンパク質;
(xii)前記改変VP1配列が、配列番号26に記載される配列を含むAAV13由来のウイルスカプシドタンパク質
から成る群より選択される、付記1に記載の核酸分子。
(付記3)
前記ウイルスカプシドタンパク質がAAV8に由来し、前記改変VP1配列が、配列番号21に記載される配列を含む、付記1または付記2に記載の核酸分子。
(付記4)
前記ウイルスカプシドタンパク質がAAV9に由来し、前記改変VP1配列が、配列番号22に記載される配列を含む、付記1または付記2に記載の核酸分子。
(付記5)
前記ウイルスカプシドタンパク質が、前記改変VP1と同じAAV血清型由来のサブユニット2(VP2)及びサブユニット3(VP3)配列を含む、付記1~4のいずれか1項に記載の核酸分子。
(付記6)
前記AAVウイルスカプシドタンパク質をコードするヌクレオチド配列が、昆虫細胞内での発現のためのプロモーターに作動可能に連結されている、付記1~5のいずれか1項に記載の核酸分子。
(付記7)
昆虫細胞内での発現のための前記プロモーターが、多角体プロモーターまたはp10プロモーターである、付記6に記載の核酸分子。
(付記8)
Rep78及びRep68から選択される少なくとも1つの大型AAV複製(Rep)タンパク質ならびにRep52及びRep40から選択される少なくとも1つの小型AAV Repタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を含む、付記1~7のいずれか1項に記載の核酸分子。
(付記9)
Rep78及びRep52をコードするポリヌクレオチド配列を含む、付記8に記載の核酸分子。
(付記10)
前記Repタンパク質をコードする前記ポリヌクレオチド配列が、昆虫細胞内での前記Repタンパク質の発現のためのプロモーターに作動可能に連結されている、付記8または付記9に記載の核酸分子。
(付記11)
昆虫細胞内での発現のための前記プロモーターが、多角体プロモーターまたはp10プロモーターである、付記10に記載の核酸分子。
(付記12)
付記1~11のいずれか1項に記載の核酸分子を含むバキュロウイルスベクター。
(付記13)
下記:
(i)付記1~12のいずれか1項に記載の核酸分子を含む第1のバキュロウイルスベクター;及び
(ii)AAV逆方向末端反復(ITR)配列と隣接する目的のタンパク質またはRNAをコードするポリヌクレオチドを含む第2のバキュロウイルスベクター
を含む複数のバキュロウイルスベクター。
(付記14)
下記:
(i)付記1~7のいずれか1項に記載の核酸分子を含む第1のバキュロウイルスベクター;
(ii)Rep78及びRep68から選択される少なくとも1つの大型AAV複製(Rep)タンパク質ならびにRep52及びRep40から選択される少なくとも1つの小型AAV Repタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を含む第2のバキュロウイルスベクター;及び
(iii)AAV逆方向末端反復(ITR)配列と隣接する目的のタンパク質またはRNAをコードするポリヌクレオチドを含む第3のバキュロウイルスベクター
を含む複数のバキュロウイルスベクター。
(付記15)
前記第2のバキュロウイルスベクターが、Rep78及びRep52をコードするポリヌクレオチド配列を含む、付記14に記載の複数のバキュロウイルスベクター。
(付記16)
前記Repタンパク質をコードする前記ポリヌクレオチド配列が、昆虫細胞内での前記Repタンパク質の発現のためのプロモーターに作動可能に連結されている、付記14または付記15に記載の複数のバキュロウイルスベクター。
(付記17)
付記1~11のいずれか1項に記載の核酸を含む昆虫細胞。
(付記18)
付記12に記載のバキュロウイルスベクターまたは付記13~16のいずれか1項に記載の複数のバキュロウイルスベクターを含む昆虫細胞。
(付記19)
前記AAVウイルスカプシドタンパク質をコードする前記ポリヌクレオチド配列及び前記Repタンパクをコードする前記ポリヌクレオチド配列が、前記昆虫細胞内でエピソームとして複製する組換えバキュロウイルスゲノムから発現される、付記17または18に記載の昆虫細胞。
(付記20)
AAV逆方向末端反復(ITR)配列と隣接する目的のタンパク質またはRNAをコードするポリヌクレオチドが、前記昆虫細胞内でエピソームとして複製する組換えバキュロウイルスゲノムから発現される、付記17~19のいずれか1項に記載の昆虫細胞。
(付記21)
昆虫細胞内でのアデノ随伴ウイルス(AAV)の生成方法であって、下記:
付記17~20のいずれか1項に記載の昆虫細胞を、培地内で前記細胞がAAVを産生するのに十分な条件下で培養すること;及び場合により
前記培地及び/または細胞から前記AAVを回収すること
を含む、前記方法。
(付記22)
昆虫細胞内でのアデノ随伴ウイルス(AAV)の生成方法であって、下記:
(i)昆虫細胞を、付記8~11のいずれか1項に記載の核酸分子を含むゲノムを有する第1のバキュロウイルス;及びAAV逆方向末端反復(ITR)配列と隣接する目的のタンパク質またはRNAをコードするポリヌクレオチドを含むゲノムを有する第2のバキュロウイルスに同時感染させること;
(ii)(i)で前記バキュロウイルに感染した前記昆虫細胞を、培地内で前記細胞がAAVを産生するのに十分な条件下で培養すること;及び場合により
(iii)前記培地及び/または細胞から前記AAVを回収すること
を含む、前記方法。
(付記23)
昆虫細胞内でのアデノ随伴ウイルス(AAV)の生成方法であって、下記:
昆虫細胞を、付記1~7のいずれか1項に記載の核酸分子を含むゲノムを有する第1のバキュロウイルス;Rep78及びRep68から選択される少なくとも1つの大型AAV複製(Rep)タンパク質ならびにRep52及びRep40から選択される少なくとも1つの小型AAV Repタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を含むゲノムを有する第2のバキュロウイルス;及びAAV逆方向末端反復(ITR)配列と隣接する目的のタンパク質またはRNAをコードするポリヌクレオチドを含むゲノムを有する第3のバキュロウイルスに同時感染させること;
(i)で前記バキュロウイルに感染した前記昆虫細胞を、培地内で前記細胞がAAVを産生するのに十分な条件下で培養すること;及び場合により
前記培地及び/または細胞から前記AAVを回収すること
を含む、前記方法。
(付記24)
前記AAVを精製することを含む、付記21~23のいずれか1項に記載の方法。
(付記25)
付記21~24のいずれか1項に記載の方法で生成されたアデノ随伴ウイルス(AAV)。
(付記26)
位置1にセリン、位置26にグルタミン酸、位置40にアルギニン、位置43にアスパラギン酸、位置44にセリン及び位置64にリジンを含む改変サブユニット1(VP1)配列を含むウイルスカプシドタンパク質を含むアデノ随伴ウイルス(AAV)であって、前記アミノ酸位置は、配列番号1に記載される配列に関して規定され、位置1、26、40、43、44及び64のいずれか1以上の前記アミノ酸は、対応する野生型配列に対して改変されており、かつ前記いずれか1以上の位置1、26、40、43、44及び64のアミノ酸以外のさらなるアミノ酸は、前記対応する野生型配列に対して改変されていない、前記AAV。
(付記27)
前記AAVが、下記:
(i)前記改変VP1配列が、配列番号15に記載される配列を含むAAV血清型1;
(ii)前記改変VP1配列が、配列番号16に記載される配列を含むAAV血清型3;(iii)前記改変VP1配列が、配列番号17に記載される配列を含むAAV血清型4;
(iv)前記改変VP1配列が、配列番号18に記載される配列を含むAAV血清型5;(v)前記改変VP1配列が、配列番号19に記載される配列を含むAAV血清型6;
(vi)前記改変VP1配列が、配列番号20に記載される配列を含むAAV血清型7;(vii)前記改変VP1配列が、配列番号21に記載される配列を含むAAV血清型8;
(viii)前記改変VP1配列が、配列番号22に記載される配列を含むAAV血清型9;
(ix)前記改変VP1配列が、配列番号23に記載される配列を含むAAV血清型10;
(x)前記改変VP1配列が、配列番号24に記載される配列を含むAAV血清型11;(xi)前記改変VP1配列が、配列番号25に記載される配列を含むAAV血清型12;及び
(xii)前記改変VP1配列が、配列番号26に記載される配列を含むAAV血清型13
から成る群より選択される、付記26に記載のAAV。
(付記28)
前記AAVが血清型8のものであり、かつ配列番号21に記載される配列を含む改変VP1を含む、付記26または付記27に記載のAAV。
(付記29)
前記AAVが血清型9のものであり、かつ配列番号22に記載される配列を含む改変VP1を含む、付記26または付記27に記載のAAV。
(付記30)
昆虫細胞内で産生される血清型2以外の血清型由来のアデノ随伴ウイルス(AAV)の機能性の改善方法であって、前記AAVのウイルスカプシドタンパク質を、位置1、26、40、43、44及び64のみの1以上のアミノ酸を置換することによって、対応する野生型配列に対して改変することを含み、前記残基位置は、配列番号1に記載される配列に関して決定され、その結果、前記ウイルスカプシドタンパク質は、位置1にセリン、位置26にグルタミン酸、位置40にアルギニン、位置43にアスパラギン酸、位置44にセリン及び位置64にリジンを含み、かつ前記AAVは、改変されなかった、昆虫細胞内で産生される対応する野生型AAVに比べて改善された機能性を有する、前記方法。
(付記31)
前記AAVの前記ウイルスカプシドタンパク質を、下記:
(i)前記AAVが血清型1のものであるとき、前記ウイルスカプシドタンパク質は、配列番号15に記載される配列を含むVP1配列を含む;
(ii)前記AAVが血清型3のものであるとき、前記ウイルスカプシドタンパク質は、配列番号16に記載される配列を含むVP1配列を含む;
(iii)前記AAVが血清型4のものであるとき、前記ウイルスカプシドタンパク質は、配列番号17に記載される配列を含むVP1配列を含む;
(iv)前記AAVが血清型5のものであるとき、前記ウイルスカプシドタンパク質は、配列番号18に記載される配列を含むVP1配列を含む;
(v)前記AAVが血清型6のものであるとき、前記ウイルスカプシドタンパク質は、配列番号19に記載される配列を含むVP1配列を含む;
(vi)前記AAVが血清型7のものであるとき、前記ウイルスカプシドタンパク質は、配列番号20に記載される配列を含むVP1配列を含む;
(vii)前記AAVが血清型8のものであるとき、前記ウイルスカプシドタンパク質は、配列番号21に記載される配列を含むVP1配列を含む;
(viii)前記AAVが血清型9のものであるとき、前記ウイルスカプシドタンパク質は、配列番号22に記載される配列を含むVP1配列を含む;
(ix)前記AAVが血清型10のものであるとき、前記ウイルスカプシドタンパク質は、配列番号23に記載される配列を含むVP1配列を含む;
(x)前記AAVが血清型11のものであるとき、前記ウイルスカプシドタンパク質は、配列番号24に記載される配列を含むVP1配列を含む;
(xi)前記AAVが血清型12のものであるとき、前記ウイルスカプシドタンパク質は、配列番号25に記載される配列を含むVP1配列を含む;及び
(xii)前記AAVが血清型13のものであるとき、前記ウイルスカプシドタンパク質は、配列番号26に記載される配列を含むVP1配列を含む
ように、前記対応する野生型配列に対して改変することを含む、付記30に記載の方法。
(付記32)
血清型8のAAVの前記ウイルスカプシドタンパク質を、前記ウイルスカプシドタンパク質が、配列番号21に記載される配列を含むVP1配列を含むように、前記対応する野生型配列に対して改変することを含む、付記30または31に記載の方法。
(付記33)
血清型9のAAVの前記ウイルスカプシドタンパク質を、前記ウイルスカプシドタンパク質が、配列番号22に記載される配列を含むVP1配列を含むように、前記対応する野生型配列に対して改変することを含む、付記30または31に記載の方法。
【配列表】