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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-03
(45)【発行日】2023-10-12
(54)【発明の名称】ロールインマーガリンの製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23D 7/00 20060101AFI20231004BHJP
   A21D 2/14 20060101ALI20231004BHJP
   A21D 13/80 20170101ALI20231004BHJP
   A21D 13/16 20170101ALI20231004BHJP
【FI】
A23D7/00 506
A21D2/14
A21D13/80
A21D13/16
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020532505
(86)(22)【出願日】2019-07-26
(86)【国際出願番号】 JP2019029463
(87)【国際公開番号】W WO2020022490
(87)【国際公開日】2020-01-30
【審査請求日】2022-05-26
(31)【優先権主張番号】P 2018141368
(32)【優先日】2018-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤田 洋平
【審査官】手島 理
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-060912(JP,A)
【文献】特開平02-174629(JP,A)
【文献】特開2010-111727(JP,A)
【文献】特開2007-129949(JP,A)
【文献】特表2013-512693(JP,A)
【文献】特開2013-135629(JP,A)
【文献】特開2002-121585(JP,A)
【文献】特開昭50-095441(JP,A)
【文献】国際公開第06/120785(WO,A1)
【文献】特開平8-173034(JP,A)
【文献】特開2002-345405(JP,A)
【文献】辻順作,最近のマーガリン、ショートニングの冷却、捏和装置について,油化学,1967年,第16巻, 第5号,p.275-283,特に表題, 第275頁左欄第2段落, 図-15, 表-1, 第279頁左欄第1段落
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23D
A21D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
油脂が融解した状態の油中水型乳化油脂組成物を、0~25℃まで冷却して該温度に10~300秒間保持し晶析せしめた後、混和昇温装置を用いて混和により軟化させながら10~35℃に昇温させて、粘度を10~250Pa・sに調整し、調整後の流動状の前記油中水型乳化油脂組成物をピロー包装に充填し、厚みが2~7mmのシート状に圧延して成形し、-30℃~30℃で24時間以上静置することを特徴とする、ロールインマーガリンの製造方法。
【請求項2】
ロールインマーガリンの油脂全体中、パーム油及び/又はパーム分別油の含有量が50~95重量%であり、
該油脂が融解した状態の油中水型乳化油脂組成物を、0~25℃であって、かつ油相部の融点から15~40℃低い温度まで冷却して該温度に10~300秒間保持し晶析せしめた後、混和昇温装置を用いて混和により軟化させながら10~35℃に昇温させて、粘度を10~250Pa・sに調整し、調整後の流動状の前記油中水型乳化油脂組成物をピロー包装に充填し、厚みが2~7mmのシート状に圧延して成形した後、15~30℃の温度で10~100時間テンパリング処理してから、-30℃~30℃で24時間以上静置する、請求項に記載のロールインマーガリンの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロールインマーガリン、その製造方法、及び該ロールインマーガリンを用いた層状食品に関する。
【背景技術】
【0002】
シート形状のロールインマーガリンは、デニッシュやクロワッサン等の層状食品を製造するにあたって使用され、ロールインマーガリンを生地に重ねて折り込み、伸展した後、焼成することで層状食品が製造される。その際に必要なロールインマーガリンの使用量は、一般的に生地の小麦粉100重量部に対し40~50重量部と多い。しかし近年、消費者の健康志向により、低カロリーの食品が好まれる傾向があり、そのためロールインマーガリンの使用量も少なくしようとする傾向がある。
【0003】
しかし、現状のロールインマーガリンの厚み(10~20mm程度)を維持したままその使用量を減らすと、折り込み時に生地に練り込まれないロールインマーガリンの量が減り、層状食品の層が十分に出ずに、浮きが悪くなるといった問題がある。ロールインマーガリンの使用量を減らしつつ層状食品の各層の間に十分な隙間を持たせようとすると、薄いロールインマーガリンを製造する必要がある。しかし、通常の急冷・捏和機を通して油脂を結晶化させた後、休止管(レスティングチューブ)で結晶を更に成長させ、結晶の網目構造を作る前に成型ノズルでシート状に成型する従来法では、製造されるロールインマーガリンが波打ったり、形や厚さが不均一になり、薄いロールインマーガリンを安定的に製造することができなかった。
【0004】
特許文献1では、油脂組成物を急冷・捏和機に通して油脂を結晶化させた後、結晶が成長し結晶の網目構造を作る前にロールで圧延して成型することで、薄いロールインマーガリンを製造する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平8-173034号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の方法によれば、薄いロールインマーガリンを安定的に製造することは可能であるが、急冷・捏和機を出てからロールで圧延するため生産性が悪いことに加え、薄いロールインマーガリンは包装しにくいという問題もあった。
【0007】
一方、現状の厚みがあるロールインマーガリンを用いて層状食品を作製する際には、ロールインマーガリンが生地上で均一に伸びにくく、生地に折り込む作業に時間がかかったり、十分に伸展せずに生地間にロールインマーガリンが挟まれていない領域(端生地)が多く生じてその廃棄量が増加するという問題もあった。
【0008】
本発明の目的は、上記現状に鑑み、安定的かつ生産性高く製造可能な薄いロールインマーガリンであって、これを用いた層状食品作製時には作業性が良好で、端生地の廃棄量が少なく、作製された層状食品で層が良く出て良好な浮きが達成できるロールインマーガリン、及び、その製造方法を提供することである。さらには、ロールインマーガリン由来の油脂含量が少ないにも関わらず、層が良く出て良好な浮きを有する層状食品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、油脂が融解状態の油中水型乳化油脂組成物を、特定の温度域まで温度を下げてから特定時間保持して晶析せしめ、その後、混和により軟化させながら特定温度域まで昇温させ、粘度を特定値に調整して流動状の油中水型乳化油脂組成物をピロー包装に充填して特定の厚みになるように成形した後、特定温度で特定時間静置することで、シート厚が通常のロールインマーガリンより薄いロールインマーガリンが安定的且つ高生産性で得られ、該ロールインマーガリンを用いて層状食品を作製すると作業性が良好で、端生地の廃棄量が少なく、作製された層状食品では層が良く出て良好な浮きを達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明の第一は、油脂が融解した状態の油中水型乳化油脂組成物が、0~25℃まで冷却されて該温度に10~300秒間保持され晶析された後、混和により軟化させられながら10~35℃に昇温されて、粘度が10~250Pa・sに調整された流動状の前記油中水型乳化油脂組成物がピロー包装に充填され、厚みが2~7mmのシート状に成形されてから-30℃~30℃で24時間以上静置された、ピロー包装されたロールインマーガリンに関する。好ましくは、ピロー包装に充填された流動状の前記油中水型乳化油脂組成物が、2枚の平板で押し挟まれて厚みが2~7mmのシート状に成形されたものである。
【0011】
本発明の第二は、油脂が融解した状態の油中水型乳化油脂組成物を、0~25℃まで冷却して該温度に10~300秒間保持し晶析せしめた後、混和により軟化させながら10~35℃に昇温させて、粘度を10~250Pa・sに調整し、調整後の流動状の前記油中水型乳化油脂組成物をピロー包装に充填し、厚みが2~7mmのシート状に圧延して成形し、-30℃~30℃で24時間以上静置することを特徴とする、ロールインマーガリンの製造方法に関する。好ましくは、ロールインマーガリンの油脂全体中、パーム油及び/又はパーム分別油の含有量が50~95重量%であり、該油脂が融解した状態の油中水型乳化油脂組成物を、0~25℃であって、かつ油相部の融点から15~40℃低い温度まで冷却して該温度に10~300秒間保持し晶析せしめた後、混和により軟化させながら10~35℃に昇温させて、粘度を10~250Pa・sに調整し、調整後の流動状の前記油中水型乳化油脂組成物をピロー包装に充填し、厚みが2~7mmのシート状に圧延して成形した後、15~30℃の温度で10~100時間テンパリング処理してから、-30℃~30℃で24時間以上静置する。
【0012】
本発明の第三は、本発明の第一に係るロールインマーガリンを用いてなる層状食品に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明に従えば、安定的かつ生産性高く製造可能な薄いロールインマーガリンであって、これを用いた層状食品作製時には作業性が良好で、端生地の廃棄量が少なく、作製された層状食品で層が良く出て良好な浮きが達成できるロールインマーガリン、及び、その製造方法を提供することができる。さらには、ロールインマーガリン由来の油脂含量が少ないにも関わらず、層が良く出て良好な浮きを有する層状食品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明につき、さらに詳細に説明する。本発明のロールインマーガリンは、特定の状態にある油中水型乳化油脂組成物を、特定の温度域まで温度を下げてから特定時間保持して晶析せしめ、その後、混和により軟化させながら特定温度域まで昇温させ、粘度を特定値に調整して流動状の油中水型乳化油脂組成物をピロー包装に充填して特定の厚みになるように成形した後、特定温度で特定時間静置して得られ、該ロールインマーガリンは厚みが薄いことを特徴とする。
【0015】
前記油中水型乳化油脂組成物とは、水相が油相に分散するタイプの乳化物を指し、通常、油脂組成物全体中の油相の量は30~99.5重量%、水相の量は0.5~70重量%である。本発明のロールインマーガリンは、前記油中水型乳化油脂組成物を固体状に晶析せしめたものであり、前記油中水型乳化油脂組成物と同様、ロールインマーガリン中の油相の量は30~99.5重量%、水相の量は0.5~70重量%である。よって、本発明でいうロールインマーガリンには、油分が80%を超えるマーガリンの他、油分が80%未満のファットスプレッドも包含される。
【0016】
前記油中水型乳化油脂組成物に含まれる油脂としては、一般的にロールインマーガリンに使用される油脂であれば特に限定されない。例えば、パーム油、パーム核油、ヤシ油、ナタネ油、大豆油、コーン油、サフラワー油、綿実油、落花生油、米ぬか油、コーン油、オリーブ油、ヒマワリ油、ゴマ油、シア脂、サル脂、カカオ脂等の植物性油脂;乳脂、牛脂、ラード等の動物性油脂;それらの分別油、硬化油、エステル交換油などが挙げられる。1種のみを使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。原料コストの観点から、パーム油及び/又はパーム油分別油を前記油脂全体中50~95重量%含むことが好ましく、パーム油を前記油脂全体中50~95重量%含むことがより好ましい。なお、パーム分別油とは、パーム油を原料に分別されてできる油脂であり、例えば、パームステアリン、パームハードステアリン、パームオレイン、パームダブルオレイン、パームスーパーオレイン、パームトップオレイン、パーム中融点部等が挙げられる。
【0017】
前記油中水型乳化油脂組成物は、前記油脂と水以外に、通常ロールインマーガリンに配合できる成分を適宜含有することができる。そのような成分としては、例えば、乳化剤、香料、酸化防止剤、着色料、糖類、食塩、増粘安定剤、甘味料、酸味料、呈味素材等を挙げることができる。
【0018】
前記乳化剤としては、大豆レシチン、卵黄レシチン、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等を挙げることができる。
【0019】
前記香料としては、バターフレーバー、ミルクフレーバー等を挙げることができる。
【0020】
前記酸化防止剤としては、トコフェロール、β-カロテン、茶抽出物(カテキン等)等を挙げることができる。
【0021】
前記着色料としては、β-カロテン、カラメル、紅麹色素等を挙げることができる。
【0022】
前記糖類としては、砂糖、果糖、ブドウ糖、水飴、還元水飴、はちみつ、異性化糖、転化糖、オリゴ糖、トレハロース、糖アルコール等を挙げることができる。
【0023】
前記増粘安定剤としては、グアーガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、アラビアガム、アルギン酸類、ペクチン、キサンタンガム、寒天、グルコマンナン、ゼラチン、澱粉等を挙げることができる。
【0024】
前記甘味料としては、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース、アリテーム、ネオテーム、カンゾウ抽出物(グリチルリチン)、サッカリン、サッカリンナトリウム、ステビア抽出物、ステビア粉末等を挙げることができる。
【0025】
前記酸味料としては、酢酸、乳酸、グルコン酸等を挙げることができる。
【0026】
前記呈味素材としては、前記糖類、前記甘味料、前記酸味料は除かれ、乳製品、風味エキス類、その他呈味を有する原料等を挙げることができる。前記乳製品としては、全粉乳、脱脂粉乳、練乳粉、乳脂の加熱処理物や酵素処理物、牛乳、加糖練乳、発酵乳、生クリーム、チーズ等を挙げることができる。前記風味エキス類としては、昆布エキス、発酵調味料等を挙げることができる。前記その他呈味を有する原料としては、卵黄、全卵、コーヒー、カカオ原料、抹茶、緑茶、餡類、果汁、果肉、野菜ペースト、粉末野菜等を挙げることができる。
【0027】
以下に、本発明のロールインマーガリンの製造方法を具体的に説明する。まず、油脂が融解した状態の油中水型乳化油脂組成物を特定温度まで冷却する。ここで油脂が融解した状態の油中水型乳化油脂組成物とは、油脂を加熱融解し、必要に応じて乳化剤などの油溶性成分を添加して油相を調製し、該油相に、水や、必要に応じて食塩、香料や呈味素材などの水溶性成分を加えて攪拌した水相を加え、油脂の融解状態を維持しつつ乳化させることで調製され、その油脂の融解状態が維持されている油中水型乳化油脂組成物のことをいう。また、油相と水相を混合してから、乳化する前後何れかで殺菌処理を行なうことが望ましい。殺菌方法は、タンクでのバッチ式でも、プレート型熱交換機や掻き取り式熱交換機を用いた連続式でもよい。
【0028】
前記冷却に用いる装置としては、ボテーター、コンビネーター、パーフェクター等のマーガリン製造機である密閉型連続式チューブ冷却機、プレート型熱交換機、開放型のダイアクーラーとコンプレクターとの組合せ等の冷却機器または冷却捏和装置が挙げられる。
【0029】
前記冷却時の油中水型乳化油脂組成物の最低温度は、0~25℃が好ましく、1~20℃がより好ましく、5~15℃が更に好ましい。0℃未満まで冷却すると、油中水型乳化油脂組成物中の水分が凍結して設備を傷める場合があり、冷却時の最低温度が25℃より高いと油脂が十分に結晶化せず、作製した層状食品において各層の間に十分な隙間が形成されず、浮きが悪い場合がある。冷却する際の冷却速度は特に限定されないが、-10~-100℃/分の冷却速度が好ましい。
【0030】
以上のように冷却された油中水型乳化油脂組成物を、前記冷却に用いる装置内で所定の温度帯に保持して晶析させる。保持する温度帯は0~25℃が好ましく、1~20℃がより好ましく、5~15℃が更に好ましい。晶析のために前記温度帯で保持する時間(以下、冷却保持時間ともいう)は、前記冷却に用いる装置内で油中水型乳化油脂組成物の温度が25℃になった時点から、前記冷却に用いる装置から油中水型乳化油脂組成物を搬出する(後述する混和昇温装置に移送する)までの時間を意味し、10~300秒間が好ましく、20~200秒間がより好ましく、30~150秒間が更に好ましい。冷却保持時間が10秒間未満であると油脂が十分に結晶化せず、層状食品作製時にロールインマーガリンが均一に伸展せず作業性が悪く、また、作製した層状食品において各層の間に十分な隙間が形成されず、浮きが悪い場合があり、300秒間を超えると、前記冷却に用いる装置による油中水型乳化油脂組成物の練りが過剰になり、得られるロールインマーガリンの硬さやコシが劣る場合がある。
【0031】
なお、油中水型乳化油脂組成物に含まれる油脂がエステル交換油及び/又は硬化油を40重量%以上含む場合は、前記冷却時の最低温度は10~20℃で、前記冷却保持時間は10~100秒間が好ましい。また、油中水型乳化油脂組成物に含まれる油脂がパーム油及び/又はパーム分別油を40重量%以上含む場合は、前記冷却時の最低温度は5~15℃で、前記冷却保持時間は30~150秒間が好ましい。
【0032】
次いで、前記冷却によって晶析された油中水型乳化油脂組成物を、混和昇温装置を用いて混和により軟化させながら特定温度に昇温させる。前記混和昇温装置としては、オンレーターなどの掻き取り式熱交換機、多管円筒式熱交換機、スタティックミキサー内蔵式熱交換器、ピンマシン等が挙げられる。また、前記混和昇温装置を通した後に、密閉型連続式チューブ冷却機や、冷却機器または冷却捏和装置を用いて再度冷却を行なっても良いが、その場合も、後述する油中水型乳化油脂組成物の粘度を満足する範囲で該再冷却を行なう。
【0033】
混和昇温装置による昇温後の油中水型乳化油脂組成物の温度は、前述した晶析のために保持する温度よりも高い温度であって、10~35℃が好ましく、15~30℃がより好ましく、20~25℃が更に好ましい。また、前記混和昇温装置を通した後に、密閉型連続式チューブ冷却機や、冷却機器または冷却捏和装置を用いて再度冷却を行なう場合も、再冷却後の油中水型乳化油脂組成物の温度は、前述した晶析のために保持する温度よりも高い温度であって、10~35℃が好ましく、15~30℃がより好ましく、20~25℃が更に好ましい。昇温後または再冷却後の油中水型乳化油脂組成物の温度が10℃未満であると、充填時の粘度が高すぎたり充填中に硬化して粘度が上がることで、充填後にシート状に成形加工する際に割れたり空気穴が空いたりする場合がある。一方、35℃を超えると、大部分の結晶が溶けて充填後に水相部が分離したり、ロールインマーガリンに不適な物性となる場合がある。
【0034】
混和昇温装置による昇温後の油中水型乳化油脂組成物の粘度は、10~250Pa・sが好ましく、20~200Pa・sがより好ましく、50~150Pa・sが更に好ましい。10Pa・s未満であると、作製した層状食品において各層の間に十分な隙間が形成されず、浮きが悪い場合があり、250Pa・sを超えると、ロールインマーガリンを安定的かつ生産性高く製造できない場合がある。前記粘度は、混和昇温装置による剪断を変更することでコントロールすることができる。なお、粘度は、振動式粘度計、回転式粘度計、落球式粘度計、細管式粘度計等を用いて定法に従い測定することができる。
【0035】
また、混和昇温装置による昇温後の油中水型乳化油脂組成物の粘度が上記範囲内にあれば、後述するピロー包装への充填時の油中水型乳化油脂組成物のペネ値が140~460になることから、相関的に、折り込み時のロールインマーガリンのペネ値を50~130にコントロールしやすく好ましい。
【0036】
次に、粘度が上記範囲内にある流動状の油中水型乳化油脂組成物をピロー包装に充填する。ここで、ピロー包装とは、包装フィルムを、開口部を有する袋状に加工した後、内容物を充填し、前記開口部を閉じて該内容物を包装するものをいう。前記ピロー包装は、密封性と開封作業性を両立するため、イージーピール性を有する方が好ましい。
【0037】
流動状の油中水型乳化油脂組成物をピロー包装の開口部から投入してピロー包装に充填した直後に、ピロー包装の開口部を閉じることが衛生面から好ましい。ピロー包装の開口部を閉じる方法としては、ヒートシール、チャック、クリップで挟む等の方法が挙げられる。
【0038】
その後、流動状の油中水型乳化油脂組成物を、ピロー包装と共に、シート状に圧延して所望の厚みに成形する。当該成形方法によると、流動状の油中水型乳化油脂組成物をピロー包装に充填してから、ピロー包装ごと圧延するので、作製される本発明のロールインマーガリンでは、ピロー包装を構成する包装フィルムの内面と、ピロー包装内のロールインマーガリンの表面が密接することになる。
【0039】
シート状に圧延して所望のシート厚に成形するには、ピロー包装に充填された油中水型乳化油脂組成物を、(1)適切なクリアランスを保持した2枚の平板で挟む、(2)適切なクリアランスを保持した2つのローラー間に通す、(3)袋容量に対する内容量を調整した上で、振動させ自然に厚みを揃える、などの方法が挙げられる。
【0040】
次いで、ピロー包装されたシート状の油中水型乳化油脂組成物を、特定温度で特定時間以上静置することで、本発明のピロー包装されたロールインマーガリンが製造される。このように特定条件で静置することで、油中水型乳化油脂組成物中の油脂の結晶化を進行させ、結晶を安定化させることで、ロールインマーガリンの製造を実現できる。
【0041】
静置する際の温度は、-30~30℃が好ましく、-20~25℃がより好ましく、0~10℃が更に好ましい。-30℃より低いと保管コストの点で不利であり、30℃を超えると、層状食品作製時にロールインマーガリンが伸展しにくく、作業性が悪かったり、作製した層状食品において各層の間に十分な隙間が形成されず、浮きが悪い場合があり、また、ロールインマーガリンに油浸や変形が発生する場合がある。
【0042】
静置する時間は、24時間以上であることが好ましい。24時間未満であると、油脂の結晶が十分に析出せず、または安定しておらず、製造されたロールインマーガリンの物性が不十分となり、作製した層状食品において各層の間に十分な隙間が形成されず、浮きが悪い場合がある。静置時間の上限としては、保管コストの観点から2年が好ましいが、特にこれに限定されない。
【0043】
ロールインマーガリンのシート厚は2~7mmが好ましく、2~6mmがより好ましく、2~5mmが更に好ましい。シート厚が2mm未満であると、ピロー包装から取り出す際にロールインマーガリンが折れたりする場合がある。7mmを超えると、ロールインマーガリンの使用量を減らして層状食品を作製した際に、ロールインマーガリンが十分に伸展せず生地間にロールインマーガリンが挟まれていない端生地が多く生じる場合がある。
【0044】
本発明により作製するロールインマーガリンにおいて、波打ったり、形や厚さが不均一になる製品不良の発生率は、5%以下であることが好ましい。
【0045】
本発明の好適な実施形態では、ロールインマーガリンに含まれる油脂全体中、パーム油及び/又はパーム油分別油の含有量が50~95重量%であり、該油脂が融解した状態の油中水型乳化油脂組成物を、特定温度範囲内であって、かつ該油脂組成物の油相部の融点から特定範囲の低い温度に冷却し、晶析せしめた後、混和により軟化させながら前記特定温度に昇温させて、粘度を特定範囲に調整し、前記粘度を保った状態で流動状の油中水型乳化油脂組成物をピロー包装に充填し、シート状に圧延して前記所望の厚みにした後、特定温度で特定時間テンパリング処理してから、テンパリング処理温度より低い特定温度範囲で特定時間静置する。
【0046】
前記好適な実施形態において、冷却時の最低温度は、0~25℃の範囲内であって、かつ油相部の融点から15~40℃低い温度が好ましく、油相部の融点から20~40℃低い温度がより好ましく、油相部の融点から25~40℃低い温度が更に好ましく、油相部の融点から25~35℃低い温度が特に好ましい。0℃未満まで冷却すると、油中水型乳化油脂組成物中の水分が凍結して設備を傷める場合があり、冷却時の最低温度が25℃を超えると油脂が十分に結晶化せず、作製した層状食品において各層の間に十分な隙間が形成されず、浮きが悪い場合がある。また、油相部の融点から15℃以下とならない温度までしか冷却しないと、油脂が十分に結晶化しない場合があり、油相部の融点から40℃を超えて低い温度まで冷却すると、冷却のためのコストがかかりすぎる場合がある。また冷却の際の冷却速度は、-20~-110℃/分が好ましい。
【0047】
晶析後の混和昇温装置内における昇温後の油中水型乳化油脂組成物の温度、前記混和昇温装置を通した後に、密閉型連続式チューブ冷却機や、冷却機器または冷却捏和装置を用いて再度冷却を行なった後の油中水型乳化油脂組成物の温度、軟化させながら昇温された油中水型乳化油脂組成物の粘度、シート状に圧延した後のシート厚などは、上述したものと同様である。
【0048】
前記テンパリング処理は、15~30℃で10~100時間行うことが好ましい。テンパリング処理温度は18~27℃がより好ましく、更に好ましくは20~25℃である。テンパリング時の温度が15℃未満であるとテンパリング効果が十分に得られないため、テンパリング処理によるロールインマーガリンの物性改善が不十分となる場合があり、30℃を超えると、ロールインマーガリンが必要以上に軟化したり、油浸を起こすため、ロールインマーガリンの品質が悪くなる場合がある。テンパリング処理時間は18~72時間がより好ましく、24~48時間が更に好ましい。10時間未満であるとテンパリング効果が十分に得られない場合があり、一方、100時間を超えてテンパリングしても効果が頭打ちとなり、生産性が落ちる場合がある。
【0049】
前記テンパリング処理後には、テンパリング処理温度より低い特定温度で特定時間以上静置する必要がある。具体的には、静置時の温度は-30~25℃が好ましく、-20~25℃がより好ましく、0~10℃が更に好ましい。-30℃より低いと保管コストの点で不利であり、25℃を超えると、層状食品作製時にロールインマーガリンが伸展しにくく、作業性が悪かったり、作製した層状食品において各層の間に十分な隙間が形成されず、浮きが悪い場合がある。静置する時間は24時間以上であることが好ましい。24時間未満であると、油脂の結晶が十分に析出せず、または安定しておらず、製造されたロールインマーガリンの物性が不十分となり、作製した層状食品において各層の間に十分な隙間が形成されず、浮きが悪い場合がある。静置時間の上限としては、保管コストの観点から2年が好ましいが、特にこれに限定されない。
【0050】
本発明のロールインマーガリンは、従来の製造方法で製造したロールインマーガリンと同様に、生地に包み込んで伸展し、その後、焼成することにより、層状食品の作製に用いることができる。
【0051】
該層状食品としては、例えばデニッシュ、クロワッサン、パイ等が挙げられるが、特に限定されない。
【0052】
また、該層状食品における本発明のロールインマーガリンの配合量は、製造する層状食品の種類によって異なり、本発明の効果を奏する限り、特に限定されない。しかし、本発明のロールインマーガリンを用いると、層状食品におけるロールインマーガリンの配合量を減らすことができ、ロールインマーガリン由来の油脂含量が少ないにも関わらず、層が良く出て良好な浮きを有する層状食品を製造することができる。具体的には、本発明のロールインマーガリンの配合量は、層状食品の配合原料全体中15~40重量%が好ましい。
【0053】
本発明の層状食品の製造方法は、特に限定されず、本発明のロールインマーガリンを用いること以外は、公知の原料を使用し、公知の配合および公知の方法を採用することができる。
【実施例
【0054】
以下に実施例を示し、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、実施例において「部」や「%」は重量基準である。
【0055】
実施例及び比較例で使用した原料は以下のとおりである。
1)(株)カネカ製「パーム油」
2)(株)カネカ製「パームステアリン」
3)(株)カネカ製「パーム極度硬化油」
4)(株)カネカ製「パーム核油」
5)(株)カネカ製「菜種油」
6)理研ビタミン(株)製「エマルジーMS」
7)J-オイルミルズ(株)製「大豆レシチン」
8)高砂香料(株)製「バターフレーバー」
9)雪印メグミルク(株)製「脱脂粉乳」
10)財団法人塩事業センター製「精製塩」
11)日清製粉(株)製「ミリオン」
12)日清製粉(株)製「バイオレット」
13)(株)カネカ製「カネカイーストGK」
14)日新製糖(株)製「上白糖P」
15)(株)赤城鶏卵GPセンター製「卵」
16)(株)カネカ製「エバーライトG」
17)(株)カネカ製「ニューフードC」
18)(株)カネカ製「ラード」
【0056】
<安定性>
ロールインマーガリンの生産における安定性は、実施例1~15及び比較例1~14のロールインマーガリンを100枚製造する過程で発生する成形不良品の発生枚数によって、以下の基準で評価した。
5点:ロールインマーガリンを100枚製造した際、形状や重量の不良品発生枚数が5枚以下である。
4点:ロールインマーガリンを100枚製造した際、形状や重量の不良品発生枚数が6~10枚である。
3点:ロールインマーガリンを100枚製造した際、形状や重量の不良品発生枚数が11~20枚である。
2点:ロールインマーガリンを100枚製造した際、形状や重量の不良品発生枚数が21~30枚である。
1点:ロールインマーガリンを100枚製造した際、形状や重量の不良品発生枚数が31枚以上である。
【0057】
<生産性>
ロールインマーガリンの生産性は、油脂が融解した状態の乳化物200kgが密閉型連続式チューブ冷却機に投入されてから、その内の100kgが混和昇温装置または成型ノズルより外に排出されるまでの時間(以下、生産性に関する時間という)によって、以下の基準で評価した。
○:生産性に関する時間が90分未満である。
△:生産性に関する時間が90~120分である。
×:生産性に関する時間が120分を超える。
【0058】
<デニッシュ作製時の作業性>
デニッシュの作製において、15℃で3時間温調した実施例1~15、比較例1~4、6、8~14のロールインマーガリンを、それぞれ生地に折り込んだ際の作業性を以下の基準で総合的に評価した。
5点:生地の中でロールインマーガリンが均一に伸び、作業時間が非常に短い。
4点:ロールインマーガリンの伸び方に偏りは殆ど見られず、作業時間は短い。
3点:ロールインマーガリンの伸び方に少し偏りが見られるが、作業時間は短い。
2点:ロールインマーガリンが均一に伸びていない部分が多く、作業時間が長い。
1点:ロールインマーガリンが伸びず、生地にロールインマーガリンの塊が見られ、作業時間が非常に長い。
【0059】
<デニッシュ作製時の端生地の廃棄量>
デニッシュの作製において、1回目の折り込みで生地を4mm厚に伸展した後に生じる端生地面積の、生地全体の面積に対する比によって、以下の基準で評価した。なお、端生地とは、生地と生地の間にロールインマーガリンが伸展せず、挟まれていない領域を指す。
5点:1回目の折り込みで生地を4mm厚に伸展した際に生じる端生地面積が、生地全体の面積の5%未満である。
4点:1回目の折り込みで生地を4mm厚に伸展した際に生じる端生地面積が、生地全体の面積の5~7%未満である。
3点:1回目の折り込みで生地を4mm厚に伸展した際に生じる端生地面積が、生地全体の面積の7~10%未満である
2点:1回目の折り込みで生地を4mm厚に伸展した際に生じる端生地面積が、生地全体の面積の10~15%未満である。
1点:1回目の折り込みで生地を4mm厚に伸展した際に生じる端生地面積が、生地全体の面積の15%を超える。
【0060】
<デニッシュの浮き>
実施例1~15及び比較例1~4、6、8~14で作製したデニッシュを切断し、熟練した10名のパネラーがその断面を観察して、以下の基準で評価した。各人の評価値の平均値を示した。
5点:非常に浮きが良く、各層の間に十分な隙間がある。
4点:浮きが良く、ほとんどの層の間に十分な隙間がある。
3点:浮きが良く、各層の間に十分な隙間のない部分がある。
2点:浮きが悪く、各層の間に十分な隙間のない部分が多い。
1点:非常に浮きが悪く、ほとんどの生地と生地の間に十分な隙間がない。
【0061】
<総合評価>
ロールインマーガリンの生産における安定性、及び生産性、デニッシュ作製時の作業性、デニッシュ作製時の端生地の廃棄量、及びデニッシュの浮きの各評価結果を基に、総合評価を行った。その際の評価基準は以下の通りである。
A:ロールインマーガリンの生産における生産性が○で、ロールインマーガリンの生産における安定性、デニッシュ作製時の作業性、デニッシュ作製時の端生地の廃棄量、及びデニッシュの浮きが全て4.0点以上5.0点以下を満たすもの。
B:ロールインマーガリンの生産における生産性が○又は△で、ロールインマーガリンの生産における安定性、デニッシュ作製時の作業性、デニッシュ作製時の端生地の廃棄量、及びデニッシュの浮きが全て3.5点以上5.0点以下であって、且つ3.5以上4.0未満が少なくとも一つあるもの。又は、ロールインマーガリンの生産における生産性が△で、ロールインマーガリンの生産における安定性、デニッシュ作製時の作業性、デニッシュ作製時の端生地の廃棄量、及びデニッシュの浮きが全て3.5点以上5.0点以下であるもの。
C:ロールインマーガリンの生産における生産性が○又は△で、ロールインマーガリンの生産における安定性、デニッシュ作製時の作業性、デニッシュ作製時の端生地の廃棄量、及びデニッシュの浮きが全て3.0点以上5.0点以下であって、且つ3.0以上3.5未満が少なくとも一つあるもの。
D:ロールインマーガリンの生産における生産性が○又は△で、ロールインマーガリンの生産における安定性、デニッシュ作製時の作業性、デニッシュ作製時の端生地の廃棄量、及びデニッシュの浮きが全て2.0点以上5.0点以下であって、且つ2.0以上3.0未満が少なくとも一つあるもの。
E:ロールインマーガリンの生産における生産性が×、又はロールインマーガリンの生産における安定性、デニッシュ作製時の作業性、デニッシュ作製時の端生地の廃棄量、及びデニッシュの浮きの何れかが2点未満、又はデニッシュの評価ができなかったもの。
【0062】
(製造例1)エステル交換油脂の製造
パーム油55重量部、パーム極度硬化油18重量部、パーム核分別軟質油(ヨウ素価24.5)27重量部を混合し、500Paの減圧下で90℃に加熱し、0.2重量部のナトリウムメチラートを加えて30分攪拌してエステル交換油脂を得た。
【0063】
(実施例1)
表1に示す配合に従って、パーム油55.0重量部、パームステアリン8.1重量部、パーム極度硬化油1.6重量部、パーム核油8.1重量部、菜種油8.1重量部を混合した。この油脂混合物にモノグリセライド0.5重量部、大豆レシチン0.5重量部、バターフレーバー0.1重量部を加え、70℃で融解後、65~70℃に保持して油相とした。油相の融点は38℃であった。また、水16.5重量部に食塩1.0重量部、脱脂粉乳0.5重量部を加えて攪拌し、80~85℃で20分殺菌後、65~70℃に保持して水相とした。水相を油相に加えて20分以上乳化させて乳化物を得た。
【0064】
得られた油脂が融解状態の乳化物を密閉型連続式チューブ冷却機(コンビネーター:1.3L容量)に投入し、-30~-50℃/分の冷却速度で捏和しながら最終到達温度10℃まで冷却した。この冷却過程で、ロールインマーガリンの製造装置のライン中における密閉型連続式チューブ冷却機内で25℃の品温に達してから、10℃に達温して混和昇温装置(ピンマシン:2.0L容量)に移送するまで94秒間、前記乳化物を該冷却機内に保持した後、混和昇温装置に移送し、該混和昇温装置で軟化させて23℃に昇温させ、その後ピロー包装に充填した。ここで密閉型連続式チューブ冷却機から混和昇温装置に至る全配管容量は0.7Lであった。
【0065】
充填10秒後に乳化物の粘度とペネ値を測定してから、厚さ4mmのシート状の容量となるようにピロー包装を速やかにヒートシーリングしてから2枚の平板で挟んで圧延し、厚さ4mmのブロックマーガリンを得た。このブロックマーガリンを20℃で24時間テンパリング処理した後、4℃で240時間静置して、シート厚4mmのロールインマーガリンを得た。ロールインマーガリンを100枚製造した際、形状や重量の不良品発生枚数が2枚であった。また、上記過程で、生産性に関する時間は81分であった。なお、乳化物の粘度は充填10秒後に測定したが、当該粘度の値は、充填直前の乳化物が示す粘度の値と実質的に同じものである。表1には、充填10秒後に測定した粘度とペネ値の値を記載した。
【0066】
【表1】
【0067】
次に、得られたロールインマーガリンを用いてデニッシュを作製した。即ち、表2に示す配合に従って、ロールインマーガリンとショートニングを除いた原料をミキサーにて低速3分間、中高速3分間ミキシングした後、ショートニングを混合し、更に低速3分間、中高速3分間ミキシングし、捏ね上げ温度を25℃とした。室温で30分間生地を発酵させた後、生地を1℃で5時間冷却した。
【0068】
【表2】
【0069】
冷却後の生地1916gを成形してから、15℃に温調したロールインマーガリン500gを載置し、包み込んだ。このとき、ロールインマーガリンを包んだ伸展前の生地のサイズは、実施例1~5、8~15および比較例1~4、9~14で36cm(縦)×36cm(横)×2cm(厚)、実施例6および比較例6で36cm(縦)×72cm(横)×1cm(厚)、実施例7で36cm(縦)×24cm(横)×3cm(厚)、比較例8で36cm(縦)×14.4cm(横)×5cm(厚)であった。この生地を、リバースシーターを用いて10mm厚になるまでは5mmごとに段階的に伸展し、その後は2mmごとに段階的に伸展し、最後は4mm厚に調整したリバースシーターを用いて、生地を4mm厚に伸展した。この時、デニッシュ作製時の端生地の廃棄量を評価した。続けて生地を3つ折りした後、3mm厚に調整したリバースシーターを用い、生地を3mm厚に伸展した。得られた生地を1℃で10時間冷却後、更に3つ折りした後、2.5mm厚に調整したリバースシーターを用いて生地を2.5mm厚に伸展した。生地を成形後、35℃、湿度70%のホイロで1時間最終発酵した後、200℃のオーブンで15分間焼成し、デニッシュを得た。デニッシュを作製する際の作業性及び得られたデニッシュの浮きについて評価し、その結果を表1にまとめた。
【0070】
(実施例2)
表1の製造条件に従って、得られた乳化物を最終到達温度3℃まで冷却し、冷却保持時間を29秒間にした以外は、実施例1と同様にしてロールインマーガリンを得た。ロールインマーガリンを100枚製造した際、形状や重量の不良品発生枚数が1枚であった。また、上記過程で、生産性に関する時間は25分であった。表1には、充填10秒後に測定した粘度とペネ値の値を記載した。
【0071】
次いで、得られたロールインマーガリンを用いて実施例1と同様にして、デニッシュを作製した。デニッシュを作製する際の作業性及びデニッシュ作製時の端生地の廃棄量及び得られたデニッシュの浮きについて評価し、その結果を表1に示した。
【0072】
(実施例3)
表1の製造条件に従って、得られた乳化物を最終到達温度16℃まで冷却し、冷却保持時間を131秒間にした以外は、実施例1と同様にしてロールインマーガリンを得た。ロールインマーガリンを100枚製造した際、形状や重量の不良品発生枚数が2枚であった。また、上記過程で、生産性に関する時間は113分であった。表1には、充填10秒後に測定した粘度とペネ値の値を記載した。
【0073】
次いで、得られたロールインマーガリンを用いて実施例1と同様にして、デニッシュを作製した。デニッシュを作製する際の作業性及びデニッシュ作製時の端生地の廃棄量及び得られたデニッシュの浮きについて評価し、その結果を表1に示した。
【0074】
(実施例4)
表1の製造条件に従って、得られた乳化物を最終到達温度3℃まで冷却した以外は、実施例1と同様にしてロールインマーガリンを得た。ロールインマーガリンを100枚製造した際、形状や重量の不良品発生枚数が6枚であった。また、上記過程で、生産性に関する時間は81分であった。表1には、充填10秒後に測定した粘度とペネ値の値を記載した。
【0075】
次いで、得られたロールインマーガリンを用いて実施例1と同様にして、デニッシュを作製した。デニッシュを作製する際の作業性及びデニッシュ作製時の端生地の廃棄量及び得られたデニッシュの浮きについて評価し、その結果を表1に示した。
【0076】
(実施例5)
表1の製造条件に従って、得られた乳化物を最終到達温度22℃まで冷却した以外は、実施例1と同様にしてロールインマーガリンを得た。ロールインマーガリンを100枚製造した際、形状や重量の不良品発生枚数が8枚であった。また、上記過程で、生産性に関する時間は81分であった。表1には、充填10秒後に測定した粘度とペネ値の値を記載した。
【0077】
次いで、得られたロールインマーガリンを用いて実施例1と同様にして、デニッシュを作製した。デニッシュを作製する際の作業性及びデニッシュ作製時の端生地の廃棄量及び得られたデニッシュの浮きについて評価し、その結果を表1に示した。
【0078】
(比較例1)
表1の製造条件に従って、得られた乳化物を密閉型連続式チューブ冷却機内で保持した後、レスティングチューブ(17.0L容量、20℃)に排出して成型ノズルを通して厚さ4mmのブロックマーガリンを得た以外は、実施例1と同様にしてブロックマーガリンを得た。ここで密閉型連続式チューブ冷却機からレスティングチューブに至る全配管容量は0.7Lであった。
【0079】
このブロックマーガリンを4℃で240時間静置して、所望のロールインマーガリンを得た。ロールインマーガリンを100枚製造した際、形状や重量の不良品発生枚数が24枚であった。また、上記過程で、生産性に関する時間は95分であった。表1には、成型ノズルから排出10秒後に測定した粘度とペネ値の値を記載した。
【0080】
次いで、得られたロールインマーガリンを用いて実施例1と同様にして、デニッシュを作製した。デニッシュを作製する際の作業性及びデニッシュ作製時の端生地の廃棄量及び得られたデニッシュの浮きについて評価し、その結果を表1に示した。
【0081】
(比較例2)
表1の製造条件に従って、得られた乳化物を最終到達温度6℃まで冷却し、冷却保持時間を29秒間にした以外は、比較例1と同様にしてロールインマーガリンを得た。ロールインマーガリンを100枚製造した際、形状や重量の不良品発生枚数が39枚であった。また、上記過程で、生産性に関する時間は29分であった。表1には、成型ノズルから排出10秒後に測定した粘度とペネ値の値を記載した。
【0082】
次いで、得られたロールインマーガリンを用いて実施例1と同様にして、デニッシュを作製した。デニッシュを作製する際の作業性及びデニッシュ作製時の端生地の廃棄量及び得られたデニッシュの浮きについて評価し、その結果を表1に示した。
【0083】
(比較例3)
表1の製造条件に従って、得られた乳化物を最終到達温度14℃まで冷却し、冷却保持時間を131秒間にした以外は、比較例1と同様にしてロールインマーガリンを得た。ロールインマーガリンを100枚製造した際、形状や重量の不良品発生枚数が21枚であった。また、上記過程で、生産性に関する時間は133分であった。表1には、成型ノズルから排出10秒後に測定した粘度とペネ値の値を記載した。
【0084】
次いで、得られたロールインマーガリンを用いて実施例1と同様にして、デニッシュを作製した。デニッシュを作製する際の作業性及びデニッシュ作製時の端生地の廃棄量及び得られたデニッシュの浮きについて評価し、その結果を表1に示した。
【0085】
(比較例4)
表1の製造条件に従って、得られた乳化物を最終到達温度3℃まで冷却した以外は、比較例1と同様にしてロールインマーガリンを得た。ロールインマーガリンを100枚製造した際、形状や重量の不良品発生枚数が21枚であった。また、上記過程で、生産性に関する時間は95分であった。表1には、成型ノズルから排出10秒後に測定した粘度とペネ値の値を記載した。
【0086】
次いで、得られたロールインマーガリンを用いて実施例1と同様にして、デニッシュを作製した。デニッシュを作製する際の作業性及びデニッシュ作製時の端生地の廃棄量及び得られたデニッシュの浮きについて評価し、その結果を表1に示した。
【0087】
(比較例5)
表1の製造条件に従って、得られた乳化物を最終到達温度22℃まで冷却した以外は、比較例1と同様にしてロールインマーガリンを得ようとしたが、成型ノズルから排出されるブロックマーガリンが柔らかすぎて成形はできなかった。ロールインマーガリンを100枚製造した際、全てが形状や重量の不良品であった。また、上記過程で、生産性に関する時間は95分であった。表1には、成型ノズルから排出10秒後に測定した粘度とペネ値の値を記載した。
【0088】
(比較例6)
表1の製造条件に従って、シート厚を2mmにした以外は、比較例1と同様にしてロールインマーガリンを得た。ロールインマーガリンを100枚製造した際、形状や重量の不良品発生枚数が58枚であった。また、上記過程で、生産性に関する時間は95分であった。表1には、成型ノズルから排出10秒後に測定した粘度とペネ値の値を記載した。
【0089】
次いで、得られたロールインマーガリンを用いて実施例1と同様にして、デニッシュを作製した。デニッシュを作製する際の作業性及びデニッシュ作製時の端生地の廃棄量及び得られたデニッシュの浮きについて評価し、その結果を表1に示した。
【0090】
表1より、実施例1~5のロールインマーガリンは、油脂が融解した状態の油中水型乳化油脂組成物を、0~25℃の範囲に冷却して該温度での保持時間が10~300秒間で、混和により軟化され10~35℃の範囲に昇温されて、粘度が10~250Pa・sの範囲に調整された流動状の前記油中水型乳化油脂組成物をピロー包装に充填し、厚みを2~7mmの範囲のシート状に成形してから-30℃~30℃の範囲で24時間以上静置したものであって、何れのロールインマーガリンも、安定性及び生産性のどちらも良好なものであった。そして、これらのロールインマーガリンを使用したデニッシュの作製時には、生地の中でロールインマーガリンが均一に伸び、作業性が非常に良好で、端生地の廃棄量も極めて少なく、また、得られたデニッシュは浮きも良く、ほとんどの層の間に十分な隙間があるものであり、総合評価は良好であった。
【0091】
一方、比較例1~6のロールインマーガリンは、ピロー包装充填ではなく、密閉型連続式チューブ冷却機内で保持した後、成型ノズルを通して得られたものであり、比較例1~4及び6のロールインマーガリンを使用して作製されたデニッシュの評価は良好であったものの、ロールインマーガリン製造時の安定性または生産性の少なくともどちらかが悪いものであり、総合評価は悪かった。また、比較例5のロールインマーガリンは油脂の結晶化が不十分であるため、ロールインマーガリンの形状に成形ができず、デニッシュの作製ができなかった。
【0092】
(実施例6)
表3の製造条件に従って、シート厚を2mmにした以外は、実施例1と同様にしてロールインマーガリンを得た。ロールインマーガリンを100枚製造した際、形状や重量の不良品発生枚数が8枚であった。また、上記過程で、生産性に関する時間は81分であった。表3には、充填10秒後に測定した粘度とペネ値の値を記載した。
【0093】
次いで、得られたロールインマーガリンを用いて実施例1と同様にして、デニッシュを作製した。デニッシュを作製する際の作業性及びデニッシュ作製時の端生地の廃棄量及び得られたデニッシュの浮きについて評価し、その結果を表3に示した。
【0094】
(実施例7)
表3の製造条件に従って、シート厚を6mmにした以外は、実施例1と同様にしてロールインマーガリンを得た。ロールインマーガリンを100枚製造した際、形状や重量の不良品発生枚数が2枚であった。また、上記過程で、生産性に関する時間は81分であった。表3には、充填10秒後に測定した粘度とペネ値の値を記載した。
【0095】
次いで、得られたロールインマーガリンを用いて実施例1と同様にして、デニッシュを作製した。デニッシュを作製する際の作業性及びデニッシュ作製時の端生地の廃棄量及び得られたデニッシュの浮きについて評価し、その結果を表3に示した。
【0096】
【表3】
【0097】
(比較例7)
表3の製造条件に従って、シート厚を1mmにした以外は、実施例1と同様にしてロールインマーガリンを得た。ロールインマーガリンを100枚製造した際、形状や重量の不良品発生枚数が11枚であった。また、上記過程で、生産性に関する時間は81分であった。表3には、充填10秒後に測定した粘度とペネ値の値を記載した。
【0098】
次いで、得られたロールインマーガリンを用いて実施例1と同様にして、デニッシュを作製しようとしたが、ピロー包装から取り出して生地に載せる過程で該ロールインマーガリンが折れてしまったため、デニッシュの作製に使用できなかった。
【0099】
(比較例8)
表3で示した製造条件に従って、シート厚を10mmにした以外は、実施例1と同様にしてロールインマーガリンを得た。ロールインマーガリンを100枚製造した際、形状や重量の不良品発生枚数が0枚であった。また、上記過程で、生産性に関する時間は81分であった。表3には、充填10秒後に測定した粘度とペネ値の値を記載した。
【0100】
次いで、得られたロールインマーガリンを用いて実施例1と同様にして、デニッシュを作製した。デニッシュを作製する際の作業性及びデニッシュ作製時の端生地の廃棄量及び得られたデニッシュの浮きについて評価し、その結果を表3に示した。
【0101】
表3より、実施例1,6及び7のロールインマーガリンは、厚みが2~7mmの範囲のシート状に成形されたものであって、何れのロールインマーガリンも、安定性及び生産性のどちらも良好なものであった。そして、これらのロールインマーガリンを使用したデニッシュの作製時には、生地の中で均一に伸びて作業性が非常に良好であり、端生地の廃棄量は実施例7のロールインマーガリンの伸び方にわずかに偏りが見られ若干多かったものの、他は極めて少なく、また、得られたデニッシュは浮きも良く、ほとんどの層の間に十分な隙間があるものであり、総合評価は良好であった。
【0102】
一方、比較例7のロールインマーガリンは、厚みが1mmのシート状に成形されたものであって、安定性及び生産性のどちらも良好であったものの、ピロー包装から取り出して生地に載せる過程で該ロールインマーガリンが折れてしまったため、デニッシュの作製に使用できなかった。また、比較例8のロールインマーガリンは、厚みが10mmのシート状に成形されたものであって、安定性及び生産性のどちらも良好であったものの、このロールインマーガリンを使用したデニッシュの作製時には、端生地の廃棄量が多く、総合評価は悪かった。
【0103】
(実施例8)
表4の製造条件に従って、得られた乳化物を最終到達温度3℃まで冷却し、冷却保持時間を59秒間にし、混和昇温装置で軟化させて21℃に昇温させた以外は、実施例1と同様にしてロールインマーガリンを得た。ロールインマーガリンを100枚製造した際、形状や重量の不良品発生枚数が3枚であった。また、上記過程で、生産性に関する時間は69分であった。表4には、充填10秒後に測定した粘度とペネ値の値を記載した。
【0104】
次いで、得られたロールインマーガリンを用いて実施例1と同様にして、デニッシュを作製した。デニッシュを作製する際の作業性及びデニッシュ作製時の端生地の廃棄量及び得られたデニッシュの浮きについて評価し、その結果を表4に示した。
【0105】
【表4】
【0106】
(実施例9)
表4の製造条件に従って、得られた乳化物を最終到達温度22℃まで冷却し、冷却保持時間を134秒間にし、混和昇温装置で軟化させて28℃に昇温させた以外は、実施例1と同様にしてロールインマーガリンを得た。ロールインマーガリンを100枚製造した際、形状や重量の不良品発生枚数が8枚であった。また、上記過程で、生産性に関する時間は94分であった。表4には、充填10秒後に測定した粘度とペネ値の値を記載した。
【0107】
次いで、得られたロールインマーガリンを用いて実施例1と同様にして、デニッシュを作製した。デニッシュを作製する際の作業性及びデニッシュ作製時の端生地の廃棄量及び得られたデニッシュの浮きについて評価し、その結果を表4に示した。
【0108】
(比較例9)
表4の製造条件に従って、冷却保持時間を361秒間にし、混和昇温装置で軟化させて25℃に昇温させた以外は、実施例1と同様にしてロールインマーガリンを得た。ロールインマーガリンを100枚製造した際、形状や重量の不良品発生枚数が3枚であった。また、上記過程で、生産性に関する時間は171分であった。表4には、充填10秒後に測定した粘度とペネ値の値を記載した。
【0109】
次いで、得られたロールインマーガリンを用いて実施例1と同様にして、デニッシュを作製した。デニッシュを作製する際の作業性及びデニッシュ作製時の端生地の廃棄量及び得られたデニッシュの浮きについて評価し、その結果を表4に示した。
【0110】
(比較例10)
表4の製造条件に従って、得られた乳化物を最終到達温度28℃まで冷却し、混和昇温装置で軟化させて31℃に昇温させた以外は、実施例1と同様にしてロールインマーガリンを得た。ロールインマーガリンを100枚製造した際、形状や重量の不良品発生枚数が12枚であった。また、上記過程で、生産性に関する時間は81分であった。表4には、充填10秒後に測定した粘度とペネ値の値を記載した。
【0111】
次いで、得られたロールインマーガリンを用いて実施例1と同様にして、デニッシュを作製した。デニッシュを作製する際の作業性及びデニッシュ作製時の端生地の廃棄量及び得られたデニッシュの浮きについて評価し、その結果を表4に示した。
【0112】
(比較例11)
表4の製造条件に従って、得られた乳化物を最終到達温度15℃まで冷却し、冷却保持時間を7秒間にした以外は、実施例1と同様にしてロールインマーガリンを得た。ロールインマーガリンを100枚製造した際、形状や重量の不良品発生枚数が8枚であった。また、上記過程で、生産性に関する時間は12分であった。表4には、充填10秒後に測定した粘度とペネ値の値を記載した。
【0113】
次いで、得られたロールインマーガリンを用いて実施例1と同様にして、デニッシュを作製した。デニッシュを作製する際の作業性及びデニッシュ作製時の端生地の廃棄量及び得られたデニッシュの浮きについて評価し、その結果を表4に示した。
【0114】
表4より、実施例1,2,8及び9のロールインマーガリンは、製造時の油脂が融解した状態の油中水型乳化油脂組成物を、0~25℃の範囲に冷却して該温度での保持時間が10~300秒間のものであって、何れのロールインマーガリンも、安定性及び生産性のどちらも良好なものであった。そして、これらのロールインマーガリンを使用したデニッシュの作製時には、生地の中で均一に伸びて作業性が非常に良好であり、端生地の廃棄量は極めて少なく、また、得られたデニッシュは浮きも良く、ほとんどの層の間に十分な隙間があるものであり、総合評価は良好であった。
【0115】
一方、比較例9のロールインマーガリンは、製造時の油脂が融解した状態の油中水型乳化油脂組成物の10℃での保持時間が361秒間と長いものであって、このロールインマーガリンを使用して作製されたデニッシュの評価は良好であったものの、ロールインマーガリンの生産性が悪く、総合評価が悪かった。また、比較例10のロールインマーガリンは、製造時の油脂が融解した状態の油中水型乳化油脂組成物の冷却温度が28℃と高いものであって、ロールインマーガリン生産時の安定性及び生産性は良好であったものの、このロールインマーガリンを使用して得られたデニッシュは浮きが非常に悪く、ほとんどの生地と生地の間に十分な隙間がないものであり、総合評価は悪かった。更に、比較例11のロールインマーガリンは、製造時の油脂が融解した状態の油中水型乳化油脂組成物の15℃での保持時間が7秒間と短いものであって、ロールインマーガリン生産時の安定性及び生産性は良好であったものの、デニッシュ作製時に、ロールインマーガリンが均一に伸びていない部分が多くて作業性が悪く、また、得られたデニッシュは浮きも悪く、各層の間に十分な隙間のない部分が多いものであり、総合評価は悪かった。
【0116】
(実施例10)
表5の製造条件に従って、得られた乳化物を最終到達温度11℃まで冷却し、冷却保持時間を134秒間にし、混和昇温装置で軟化させて13℃に昇温させ、またテンパリング処理を25℃で行った以外は、実施例1と同様にしてロールインマーガリンを得た。ロールインマーガリンを100枚製造した際、形状や重量の不良品発生枚数が7枚であった。また、上記過程で、生産性に関する時間は113分であった。表5には、充填10秒後に測定した粘度とペネ値の値を記載した。
【0117】
次いで、得られたロールインマーガリンを用いて実施例1と同様にして、デニッシュを作製した。デニッシュを作製する際の作業性及びデニッシュ作製時の端生地の廃棄量及び得られたデニッシュの浮きについて評価し、その結果を表5に示した。
【0118】
【表5】
【0119】
(実施例11)
表5の製造条件に従って、得られた乳化物を最終到達温度5℃まで冷却し、冷却保持時間を59秒間にし、混和昇温装置で軟化させて32℃に昇温させ、またテンパリング処理を18℃で行った以外は、実施例1と同様にしてロールインマーガリンを得た。ロールインマーガリンを100枚製造した際、形状や重量の不良品発生枚数が7枚であった。また、上記過程で、生産性に関する時間は69分であった。表5には、充填10秒後に測定した粘度とペネ値の値を記載した。
【0120】
次いで、得られたロールインマーガリンを用いて実施例1と同様にして、デニッシュを作製した。デニッシュを作製する際の作業性及びデニッシュ作製時の端生地の廃棄量及び得られたデニッシュの浮きについて評価し、その結果を表5に示した。
【0121】
(実施例12)
表5の製造条件に従って、ブロックマーガリンをテンパリング処理した後の静置温度を-20℃にした以外は、実施例1と同様にしてロールインマーガリンを得た。ロールインマーガリンを100枚製造した際、形状や重量の不良品発生枚数が2枚であった。また、上記過程で、生産性に関する時間は81分であった。表5には、充填10秒後に測定した粘度とペネ値の値を記載した。
【0122】
次いで、得られたロールインマーガリンを用いて実施例1と同様にして、デニッシュを作製した。デニッシュを作製する際の作業性及びデニッシュ作製時の端生地の廃棄量及び得られたデニッシュの浮きについて評価し、その結果を表5に示した。
【0123】
(実施例13)
表5の製造条件に従って、ブロックマーガリンをテンパリング処理した後の静置温度を27℃にした以外は、実施例1と同様にしてロールインマーガリンを得た。ロールインマーガリンを100枚製造した際、形状や重量の不良品発生枚数が2枚であった。また、上記過程で、生産性に関する時間は81分であった。表5には、充填10秒後に測定した粘度とペネ値の値を記載した。
【0124】
次いで、得られたロールインマーガリンを用いて実施例1と同様にして、デニッシュを作製した。デニッシュを作製する際の作業性及びデニッシュ作製時の端生地の廃棄量及び得られたデニッシュの浮きについて評価し、その結果を表5に示した。
【0125】
(実施例14)
表5の製造条件に従って、ブロックマーガリンをテンパリング処理した後の静置時間を36時間にした以外は、実施例1と同様にしてロールインマーガリンを得た。ロールインマーガリンを100枚製造した際、形状や重量の不良品発生枚数が2枚であった。また、上記過程で、生産性に関する時間は81分であった。表5には、充填10秒後に測定した粘度とペネ値の値を記載した。
【0126】
次いで、得られたロールインマーガリンを用いて実施例1と同様にして、デニッシュを作製した。デニッシュを作製する際の作業性及びデニッシュ作製時の端生地の廃棄量及び得られたデニッシュの浮きについて評価し、その結果を表5に示した。
【0127】
(実施例15)
表5に示す配合に従って、油脂の配合を、パームステアリン8.1重量部、菜種油14.6重量部、製造例1のエステル交換油脂21.8重量部、ラード36.4重量部とし、パーム油、パーム極度硬化油及びパーム核油を使用しなかった。油相の融点は36℃であった。さらに、表5に示す製造条件に従って、得られた乳化物を最終到達温度16℃まで冷却し、混和昇温装置で軟化させて昇温させた温度を24℃とし、テンパリング処理を行なわなかったこと以外は、実施例1と同様にしてロールインマーガリンを得た。ロールインマーガリンを100枚製造した際、形状や重量の不良品発生枚数が0枚であった。また、上記過程で、生産性に関する時間は81分であった。表5には、充填10秒後に測定した粘度とペネ値の値を記載した。
【0128】
次いで、得られたロールインマーガリンを用いて実施例1と同様にして、デニッシュを作製した。デニッシュを作製する際の作業性及びデニッシュ作製時の端生地の廃棄量及び得られたデニッシュの浮きについて評価し、その結果を表5に示した。
【0129】
(比較例12)
表5の製造条件に従って、得られた乳化物を最終到達温度15℃まで冷却し、混和昇温装置で軟化させて37℃に昇温させ、テンパリング処理を15℃で行った以外は、実施例1と同様にしてロールインマーガリンを得た。ロールインマーガリンを100枚製造した際、形状や重量の不良品発生枚数が18枚であった。また、上記過程で、生産性に関する時間は81分であった。表5には、充填10秒後に測定した粘度とペネ値の値を記載した。
【0130】
次いで、得られたロールインマーガリンを用いて実施例1と同様にして、デニッシュを作製した。デニッシュを作製する際の作業性及びデニッシュ作製時の端生地の廃棄量及び得られたデニッシュの浮きについて評価し、その結果を表5に示した。
【0131】
(比較例13)
表5の製造条件に従って、ブロックマーガリンをテンパリング処理した後の静置温度を33℃にした以外は、実施例1と同様にしてロールインマーガリンを得た。ロールインマーガリンを100枚製造した際、形状や重量の不良品発生枚数が2枚であった。また、上記過程で、生産性に関する時間は81分であった。表5には、充填10秒後に測定した粘度とペネ値の値を記載した。
【0132】
次いで、得られたロールインマーガリンを用いて実施例1と同様にして、デニッシュを作製した。デニッシュを作製する際の作業性及びデニッシュ作製時の端生地の廃棄量及び得られたデニッシュの浮きについて評価し、その結果を表5に示した。
【0133】
(比較例14)
表5の製造条件に従って、ブロックマーガリンをテンパリング処理した後の静置時間を12時間にした以外は、実施例1と同様にしてロールインマーガリンを得た。ロールインマーガリンを100枚製造した際、形状や重量の不良品発生枚数が2枚であった。また、上記過程で、生産性に関する時間は81分であった。表5には、充填10秒後に測定した粘度とペネ値の値を記載した。
【0134】
次いで、得られたロールインマーガリンを用いて実施例1と同様にして、デニッシュを作製した。デニッシュを作製する際の作業性及びデニッシュ作製時の端生地の廃棄量及び得られたデニッシュの浮きについて評価し、その結果を表5に示した。
【0135】
表5より、実施例1及び10~15のロールインマーガリンは、ロールインマーガリン製造時の油中水型乳化油脂組成物の軟化時の昇温温度が10~35℃の範囲で、シート状に成形してから-30℃~30℃の範囲で24時間以上静置したものであって、何れのロールインマーガリンも、安定性及び生産性のどちらも良好なものであった。そして、これらのロールインマーガリンを使用したデニッシュの作製時には、生地の中でロールインマーガリンが均一に伸び、作業性が非常に良好で、端生地の廃棄量も極めて少なく、また、得られたデニッシュは浮きも良く、ほとんどの層の間に十分な隙間があるものであり、総合評価は良好であった。一方、比較例12のロールインマーガリンは、ロールインマーガリン製造時の油中水型乳化油脂組成物の軟化時の昇温温度が37℃と高いものであって、ロールインマーガリン生産時の安定性及び生産性は良好であったものの、このロールインマーガリンを使用して得られたデニッシュは浮きが悪く、各層の間に十分な隙間のない部分が多いものであり、総合評価は悪かった。また、比較例13のロールインマーガリンは、シート状に成形してからの静置温度が33℃と高いものであって、ロールインマーガリン生産時の安定性及び生産性は良好であったものの、このロールインマーガリンを使用したデニッシュの作製時に、ロールインマーガリンが伸びず、生地にロールインマーガリンの塊が見られ、作業性が非常に悪く、また、得られたデニッシュは浮きも非常に悪く、ほとんどの生地と生地の間に十分な隙間がないものであり、総合評価は悪かった。更に、比較例14のロールインマーガリンは、シート状に成形してから4℃での静置時間が12時間と短いものであって、ロールインマーガリン生産時の安定性及び生産性は良好であったものの、このロールインマーガリンを使用して得られたデニッシュは浮きが悪く、各層の間に十分な隙間のない部分が多いものであり、総合評価は悪かった。
【0136】
(実施例16)デニッシュの作製
実施例1のロールインマーガリンを使用し、その配合量を50重量部から40重量部に変えた以外は、実施例1と同様にして、デニッシュを得た。デニッシュ作製時の作業性は5点、端生地の廃棄量は5点、得られたデニッシュの浮きは4.1点であった。デニッシュの作製時には、生地の中でロールインマーガリンが均一に伸び、作業性が非常に良好で、端生地の廃棄量も極めて少なく、また、得られたデニッシュは浮きも良く、ほとんどの層の間に十分な隙間があるものであり、総合評価は良好であった。