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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-03
(45)【発行日】2023-10-12
(54)【発明の名称】ハイブリッド繊維多軸プリプレグ
(51)【国際特許分類】
   B29C 70/32 20060101AFI20231004BHJP
   B29B 11/16 20060101ALI20231004BHJP
   B29C 70/16 20060101ALI20231004BHJP
   B32B 5/28 20060101ALI20231004BHJP
   B32B 1/08 20060101ALI20231004BHJP
   A63B 53/10 20150101ALN20231004BHJP
   B29K 105/10 20060101ALN20231004BHJP
   B29K 105/08 20060101ALN20231004BHJP
   B29L 23/00 20060101ALN20231004BHJP
【FI】
B29C70/32
B29B11/16
B29C70/16
B32B5/28 A
B32B1/08 Z
A63B53/10 A
B29K105:10
B29K105:08
B29L23:00
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020563937
(86)(22)【出願日】2019-06-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-09-30
(86)【国際出願番号】 US2019035603
(87)【国際公開番号】W WO2020068187
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2022-05-30
(31)【優先権主張番号】62/681,932
(32)【優先日】2018-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/421,237
(32)【優先日】2019-05-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500575824
【氏名又は名称】ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】Honeywell International Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100120754
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 豊治
(72)【発明者】
【氏名】クラッツァー、ゲイリー
(72)【発明者】
【氏名】ハースト、デイビッド エー.
(72)【発明者】
【氏名】ワグナー、ロリー エル.
(72)【発明者】
【氏名】バハタナガル、アシュホック
【審査官】関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-270515(JP,A)
【文献】特表2016-517500(JP,A)
【文献】特開2005-225196(JP,A)
【文献】特開2005-271279(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 70/00-70/88
C08J 5/04- 5/24
B32B 1/00、 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多プライハイブリッド複合材料から形成された多層中空管状物品であって、前記ハイブリッド複合材料が、
第2の一方向繊維プライに接着された第1の一方向繊維プライを含み、前記第1の一方向繊維プライは第1の繊維及び第1のポリマー結合剤材料を含み、前記第1の繊維及び第2の繊維は異なる繊維タイプであり、前記第2の一方向繊維プライは第2の繊維及び第2のポリマー結合剤材料を含み、
前記第1のポリマー結合剤材料及び前記第2のポリマー結合剤材料が、合わせて、前記複合材料の少なくとも30重量%を構成し、
前記複合材料が、少なくとも約80グラム/mの繊維面密度を有し、
前記第2の一方向繊維プライが、前記第1の一方向繊維プライの前記繊維面密度の少なくとも3倍の繊維面密度を有し、
前記第1の一方向繊維プライが、20グラム/m以下の繊維面密度を有し、
前記第2の一方向繊維プライが、少なくとも60グラム/mの繊維面密度を有し、
多層中空管状物品を形成するために、前記ハイブリッド複合材料が巻かれ、ここで、前記ハイブリッド複合材料は、それ自体の上に重ね合わされ、それ自体に封着されている、多層中空管状物品。
【請求項2】
前記ハイブリッド複合材料が、それ自体の周りに巻かれるか、マンドレルの周りに巻かれる、請求項1に記載の多層中空管状物品。
【請求項3】
第1の一方向繊維プライと第2の一方向繊維プライとが交差に重ねられる、請求項1または2に記載の多層中空管状物品。
【請求項4】
多プライハイブリッド複合材料を含む多層中空管状物品を形成するためのプロセスであって、前記プロセスが
a)第1の繊維と第1のポリマー結合剤材料とを含む第1の一方向繊維プライを剥離基材上に形成することであって、前記第1の一方向繊維プライが、20グラム/m以下の繊維面密度を有する、形成することと、
b)第2の繊維と第2のポリマー結合剤材料とを含む第2の一方向繊維プライを提供することであって、前記第2の一方向繊維プライが、少なくとも60グラム/mの繊維面密度を有し、前記第1の繊維及び前記第2繊維が異なる繊維タイプである、提供することと、
c)前記第1の一方向繊維プライを前記第2の一方向繊維プライ上に積層することと、
d)前記剥離基材を除去することであって、そうすることによって前記第1の一方向繊維プライが、前記第2の一方向繊維プライ上に留まり、かつ前記第2の一方向繊維プライに付着しており、それによって、多プライハイブリッド複合材料が形成され、前記第1のポリマー結合剤材料及び前記第2のポリマー結合剤材料が、合わせて、前記複合材料の少なくとも30重量%を構成し、前記複合材料が、少なくとも約80グラム/mの繊維面密度を有する、除去することと、
e)中空中央開口部を残して、前記複合材料をそれ自体の周囲に巻き付けることによって、前記複合材料を管状構造体に形成することと、
f)任意選択的に、前記管状構造体を熱及び/又は圧力にさらして、前記第1及び第2の一方向繊維プライを一体化させることと、を含む、プロセス。
【請求項5】
前記c)の積層することにおいて、前記第1の一方向繊維プライと前記第2の一方向繊維プライとが交差に重ねられる、請求項4に記載のプロセス。
【請求項6】
一方向に配向された細長い本体の第2のプライに接着された、一方向に配向された細長い本体の第1のプライを含み、
前記第1のプライが第1の細長い本体及び第1のポリマー結合剤材料を含み、前記第2のプライが第2の細長い本体及び第2のポリマー結合剤材料を含み、前記第1の細長い本体及び前記第2の細長い本体が、異なる細長い本体タイプである、多プライハイブリッド複合材料であって、
前記第1のポリマー結合剤材料及び前記第2のポリマー結合剤材料が、合わせて、前記多プライハイブリッド複合材料の少なくとも30重量%を構成し、
前記多プライハイブリッド複合材料が、少なくとも約80グラム/mの繊維面密度を有し、
前記第1のプライが、20グラム/m以下の繊維面密度を有し、
前記第2のプライが、少なくとも60グラム/mの繊維面密度を有する、多プライハイブリッド複合材料。
【請求項7】
第1のプライと第2のプライとが交差に重ねられる、請求項6に記載の多プライハイブリッド複合材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、優れたフープ強度を有する軽量の管状複合物品に関する。
【背景技術】
【0002】
炭素繊維複合管は、様々な産業で商業製品用の金属又はプラスチック管の代用品として使用されてきた。炭素繊維複合体の強度及び軽量は、重量荷担支持体として使用されるか、又は釣竿、ゴルフクラブ、テント支持体、スキーポール、自転車フレームなどの著しいフープ(円筒形)応力を受ける薄肉の中空円筒状物品の製造に特に有用となる。このような管状複合構造体は、一定断面を有する材料の連続形成のためのプロセスである引抜成形によって、若しくは、織又は不織の複合布の層をマンドレルの周りに螺旋状に巻き付けることによって形成された、典型的には不織の複合体で、可変断面を有する管の製造を可能にする。
【0003】
既存の軽量の炭素繊維複合材料の品質及び有効性にもかかわらず、進化する産業界のニーズが、性能を犠牲にすることなく更に低重量を有する、又は軽量を維持しつつ改善された強度及び性能を有する材料に対する需要を引き起こしている。この点に関し、日本特許出願第2011-147543号が、ゴルフクラブに有用な炭素繊維複合シャフトを教示しており、その複合強度は、層のうちの1つが、シャフトの長手方向に沿って0°に配向された一軸繊維から形成された第2の布層に対して20°~70°の角度で配向されている、複数の布層を組み合わせることによって最大化されている。この配置が、シャフトのねじり強度を増大させることが見出されている。米国特許第8,001,716号は、炭素繊維複合材料の2つの区分を有する釣竿を教示しており、各区分は強化エポキシ樹脂マトリックスが含浸されている。日本特許出願第2011-147543号と同様に、2つの複合区分の層は、互いに対して斜めに配向された繊維を有して配置されている。日本特許出願第2005-279098号は、繊維ガラスプリプレグの内側区分を炭素繊維プリプレグ層の外側区分で巻き付けることによって形成された、改善されたゴルフシャフトを教示している。繊維ガラスプリプレグ層の繊維は、シャフトの長手方向軸に対して約25°~65°の角度で配向され、炭素繊維プリプレグ層の繊維は0°~10°に配向されている。両区分はエポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂が含浸されており、この構造は、外側の直線層の樹脂含有量が内側傾斜層の樹脂含有量よりも大きいことを必要とする。一方、日本特許出願第H10-15129号は、角度付き強化層が、シャフトの長手方向軸に沿って配向された繊維から形成されたプリプレグ層よりも大きい樹脂含有量を有する、形成された反対の構造を教示している。
【0004】
上記参照された解決策の各々において、ねじり強度の改善は、それぞれの開示に記載された特定のシャフト設計に限定され、例えば、それらのゴルフクラブシャフトの異なる区分に対して、ゴルフクラブヘッドからの距離に応じて異なる構成要件を教示している。したがって、それらの構成の利点は、シャフト設計又は最終用途に関係なく汎用的には適用されない。したがって、任意の特定の最終用途又は物品設計要件に限定されることなく、汎用的な強化周方向応力耐性を提供する、薄肉の中空円筒状物品の製造のための改善された複合体設計が、当該技術分野において必要とされている。本開示は、この必要性に対する解決策を提供する。
【発明の概要】
【0005】
一方がもう一方よりも著しく大きい繊維面密度を有する、2つの異なる不織一方向繊維プライから形成された多プライハイブリッド複合材料、及び、少なくとも30重量%の高いポリマー結合剤含有量を有するこの複合材料と共に、中空管状物品が、関連技術の複合体に対して、管状物品の全長に沿ってより大きな強度均一性を有して形成され得ることが見いだされた。
【0006】
特に、本開示は、多プライハイブリッド複合材料から形成された多層中空管状物品であって、当該ハイブリット複合材料は、
第2の一方向繊維プライに接着された第1の一方向繊維プライを含み、第1の一方向繊維プライは第1の繊維及び第1のポリマー結合剤材料を含み、第2の一方向繊維プライは第2の繊維及び第2のポリマー結合剤材料を含み、第1の繊維及び第2の繊維は異なる繊維タイプであり、
第1のポリマー結合剤材料及び第2のポリマー結合剤材料が、合わせて、複合材料の少なくとも30重量%を構成し、
複合材料が、少なくとも約80グラム/mの繊維面密度を有し、
第2の繊維プライが、第1の繊維プライの繊維面密度の少なくとも3倍の繊維面密度を有し、
第1の繊維プライが、20グラム/m以下の繊維面密度を有し、
第2の繊維プライが、少なくとも60グラム/mの繊維面密度を有し、
多層中空管状物品を形成するために、ハイブリッド複合材料が、それ自体の上に重ね合わされ、それ自体に封着された、多層中空管状物品を提供する。
【0007】
本開示はまた、多プライハイブリッド複合材料を含む多層中空管状物品を形成するためのプロセスであって、このプロセスが、
a)第1の繊維と第1のポリマー結合剤材料とを含む第1の一方向繊維プライを剥離基材上に形成することであって、第1の繊維プライが、20グラム/m以下の繊維面密度を有する、形成することと、
b)第2の繊維と第2のポリマー結合剤材料とを含む第2の一方向繊維プライを提供することであって、第2の繊維プライが、少なくとも60グラム/mの繊維面密度を有し、第1の繊維及び第2の繊維が異なる繊維タイプである、提供することと、
c)第1の一方向繊維プライを第2の一方向繊維プライ上に積層することと、
d)剥離基材を除去することであって、そうすることによって第1の一方向繊維プライが、第2の一方向繊維プライ上に留まり、かつ第2の一方向繊維プライに付着しており、それによって、多プライハイブリッド複合材料が形成され、第1のポリマー結合剤材料及び第2のポリマー結合剤材料が、合わせて、複合材料の少なくとも30重量%を構成し、複合材料が、少なくとも約80グラム/mの繊維面密度を有する、除去することと、
e)中空中央開口部を残して、複合材料をそれ自体の周りに巻き付けることによって、複合材料を管状構造体に形成することと、
f)任意選択的に、管状構造体を熱及び/又は圧力にさらして、第1及び第2の一方向繊維プライを一体化させることと、を含む、プロセスも提供する。
【0008】
本開示は、
一方向に配向された細長い本体の第2のプライに接着された、一方向に配向された細長い本体の第1のプライを含む多プライハイブリッド複合材料であって、第1のプライが第1の細長い本体及び第1のポリマー結合剤材料を含み、第2のプライが第2の細長い本体及び第2のポリマー結合剤材料を含み、第1の細長い本体及び第2の細長い本体は、異なる細長い本体タイプであり、
第1のポリマー結合剤材料及び第2のポリマー結合剤材料が、合わせて、複合材料の少なくとも30重量%を構成し、
複合材料が、少なくとも約80グラム/mの繊維面密度を有し、
第1のプライが、20グラム/m以下の繊維面密度を有し、
第2のプライが、少なくとも60グラム/mの繊維面密度を有する、多プライハイブリッド複合材料を、更に提供する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】それ自体の上にロール状に巻き付けられた2プライハイブリッド複合体から形成された中空管状物品の側面斜視概略図である。
図2】45°の第2の繊維プライに配向された繊維を有する一方向性の第2の繊維プライと、0°に配向された繊維を有する一方向性の第1の繊維プライを結合する、ハイブリッド複合体の形成を示す側面斜視概略図である。
図3】均一な面密度を有する、先行技術の一方向繊維プライの形成の上面斜視概略図である。
図4】ディップコーターを通過させることによって配列に結合剤をコーティングした後に、コーティングされた配列を剥離基材上に適用する概略斜視図である。
図5】ハイブリッド複合体がマンドレルの周りに螺旋状に巻き付けられて管状構造体を形成する側面斜視概略図である。
図6】0°の炭素繊維のウェブ及び90°のガラス繊維のウェブから0°/90°ハイブリッド複合体を製造する概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実質的に任意の高性能複合体用途で利用され得るが、フープ応力に対する改善された耐性を有する薄肉の中空管状物品の形成に特に有用である多プライハイブリッド複合材料が提供される。ハイブリッド複合体を形成する際、2つの異なる単プライプリプレグが製造され、共に積層される。プリプレグは、繊維、繊維テープ、又は繊維と繊維テープとの組み合わせ(例えば、単一プライ内の繊維及びテープ、又は繊維から形成された一方のプライ及びテープから形成されたもう一方のプライ)であってもよい細長い本体から製造される。各プライは、一方向に配向された細長い本体を含む。この点に関して、「一方向に配向された」細長い本体(すなわち、繊維又はテープ)という文脈において使用される場合、「配向された」と用語いうは、繊維/テープの延伸よりはむしろ、繊維/テープの整列を指す。各プライは、以下により詳細に記載されるように、一方向に配向された繊維をポリマー結合剤材料でコーティングし、それらを、好ましくは同一の広がりをもつように、一緒に積層し、それによって2つの異なる材料が互いに接着されて2プライの複合材料を形成する。次いで、この2プライ複合材料10が、図1に示されるように、中空の中央開口部を残して、それ自体の周りに巻かれるか、又は巻き付けられてもよく、ここで、第1の一方向性の細長い本体のプライ12(例えば、第1の繊維プライ)の上面は、第2の細長い本体のプライ14の底面と接触し、第1の細長い本体のプライ12の底面は、図1に示されるように、第2の細長い本体のプライ14(例えば、第2の繊維プライ)の上面と接触している。また、2つのプライの位置を逆にしても有効な製品を達成し得ることも、本開示の範囲内である。ハイブリッド複合体を最初に形成し、その後このハイブリッドを管状形状に巻き付けることにより、管状物品に沿った、複合強度の均一性及びフープ応力に対する耐性の一貫性が達成される。第1の材料を第2の材料の周りに巻き付け、続いてこれらの材料を一緒に積層する従来技術の方法は、所望の複合強度の均一性及びフープ応力に対する耐性の一貫性を達成せず、特定の用途への材料の有用性が制限される。
【0011】
一方向性の細長い本体のプライ12及び14の各々は、実質的に平行で一軸配向された一方向の細長い本体の単一の配列から形成される。前述のように、これらの細長い本体は、繊維(モノフィラメント又はマルチフィラメント)又は繊維性テープであってもよい。本明細書で使用される場合、「繊維性」は、細長い本体が繊維を含むことを意味する。本明細書で使用される場合、「繊維」は、当該技術分野において「ステープル」又は「ステープル繊維」と称されるストランドの短いセグメントではなく、ポリマー材料のストランドなどの、ある材料の長い連続した(ただし、一定の長さの)ストランドであり、その長さ寸法は、幅及び厚さの横断寸法よりもはるかに大きい。前述のように、単一の「繊維」は、一本だけのフィラメントからか、又は複数本のフィラメントから形成されてもよい。通常の定義による「ストランド」は、糸又は繊維などの単一の、薄い、長さのものである。本明細書で使用するための繊維の断面は、大きく異なってもよく、断面が円形、平坦、又は長円であってもよい。ストランドはまた、フィラメントの直線軸又は長手方向軸から突出している、1つ以上の規則的な又は不規則な突出部を有する、不規則な又は規則的な複数の突出部のある断面のものであってもよい。したがって、「繊維」という用語は、規則的な又は不規則な断面を有する、フィラメント、リボン、ストリップなどを含む。実質的に円形断面を有する繊維が好ましい。一本だけのフィラメントから形成された繊維は、本明細書では、「単一フィラメント」繊維、又は「モノフィラメント」繊維のいずれかと称され、複数のフィラメントから形成された繊維は、本明細書では、「マルチフィラメント」繊維と称される。本明細書で定義されるように、マルチフィラメント繊維としては、好ましくは2~約3000フィラメント、より好ましくは2~1000フィラメント、更により好ましくは30~500フィラメント、更により好ましくは40~500フィラメント、更により好ましくは約40フィラメント~約240フィラメント、及び最も好ましくは約120~約240フィラメントが挙げられる。マルチフィラメント繊維はまた、当該技術分野において、フィラメント束又はフィラメントの束と称されることが多い。本明細書で使用される場合、「糸(yarn)」という用語は、複数のフィラメントからなる単一ストランドとして定義され、「マルチフィラメント繊維」と交換可能に使用される。本明細書で使用される場合、「デニール」という用語は、繊維/糸又はテープの9000メートル当たりのグラムを単位とする質量に等しい、線密度の単位である。この点に関して、各繊維プライを形成する繊維は、任意の好適なデニールのものであってもよい。例えば、繊維は、約50~約5000、より好ましくは約200~約5000、更により好ましくは約200~約3000、更により好ましくは約200~約1000、及び最も好ましくは約200~約500のデニールを有してもよい。かかるテープは、かかる繊維の圧縮及び平坦化によって形成されるため、繊維のように、繊維テープは、繊維について上述の全く同じポリマータイプから製造され得る。したがって、繊維のように、テープは、好ましくは約50~約30,000、より好ましくは約200~約10,000、更に好ましくは約650~約2000、及び最も好ましくは約800~約1500のデニールを有する、任意の好適なデニールのものであってもよい。
【0012】
本明細書で使用される場合、「配列」は、繊維又はテープの規則正しく隣り合った、同一平面上の平行な配置を説明し、「平行な配列」は、繊維/テープの規則正しい、平行な配置を説明する。したがって、本開示の各「プライ」(一方向に配向された繊維/テープの「単プライ」とも称される)は、一方向(一軸)に、実質的に平行な配列に整列された、実質的に重ならない繊維又はテープの配置を含む。このタイプの繊維/テープ配置はまた、当該技術分野において、「ユニテープ(unitape)」、「一方向テープ」、「UD」、又は「UDT」としても知られている。各個々のプライは、外側頂/前表面、及び外側底/後表面の両方を有する。本開示の文脈における「複合体」という用語は、少なくとも1つのポリマー結合剤材料と繊維又はテープとの組み合わせを指し、また複数の繊維プライの組み合わせも含む。
【0013】
第1の細長い本体のプライ12は、好ましくは、高引張強度(すなわち、高靭性)、高引張弾性率のポリマー繊維である複数の第1の繊維、及び/又は複数の高引張強度、高引張弾性率の繊維テープを含む。本明細書で使用される場合、「高引張強度、高引張弾性率」の繊維又はテープは、各々、繊維についてはASTM D2256により、テープについてはASTM D882(又は当業者によって決定される別の好適な方法)により測定された、少なくとも約7g/デニール以上の好ましい靭性、少なくとも約150g/デニール以上の好ましい引張弾性率、及び好ましくは少なくとも約8J/g以上の破断エネルギーを有するものである。高引張強度繊維は、好ましくは、10g/デニールよりも大きく、より好ましくは少なくとも約15g/デニール、更により好ましくは少なくとも約20g/デニール、更により好ましくは少なくとも約27g/デニールの靭性、より好ましくは約28g/デニール~約60g/デニール、更により好ましくは約33g/デニール~約60g/デニール、更により好ましくは39g/デニール以上、更により好ましくは少なくとも39g/デニール~約60g/デニール、更により好ましくは40g/デニール以上、更により好ましくは43g/デニール以上、又は少なくとも43.5g/デニール、更により好ましくは約45g/デニール~約60g/デニール、更により好ましくは少なくとも45g/デニール、少なくとも約48g/デニール、少なくとも約50g/デニール、少なくとも約55g/デニール、又は少なくとも約60g/デニールの靭性を有する。有用なテープは、好ましくは、10インチ(25.4cm)ゲージ長及び100%/分の伸長速度でASTM D882-09によって各々測定された、少なくとも10g/デニールの靭性、少なくとも150g/デニール以上の初期引張弾性率、及び少なくとも約8J/g以上の破断エネルギーを有する、「高引張強度」テープである。第1の細長い本体のプライ12を形成するために有用な高引張強度テープは、各々、10インチ(25.4cm)ゲージ長及び100%/分の伸長速度でASTM D882-09によって測定された、好ましくは、10g/デニールよりも大きい、より好ましくは少なくとも約15g/デニール、更により好ましくは少なくとも約20g/デニール、更に好ましくは少なくとも約27g/デニールの靭性、より好ましくは、約28g/デニール~約60g/デニール、更により好ましくは約33g/デニール~約60g/デニール、更により好ましくは39g/デニール以上、更により好ましくは少なくとも39g/デニール~約60g/デニール、更により好ましくは40g/デニール以上、更により好ましくは43g/デニール以上、又は少なくとも43.5g/デニール、更により好ましくは約45g/デニール~約60g/デニール、更により好ましくは少なくとも45g/デニール、少なくとも約48g/デニール、少なくとも約50g/デニール、少なくとも約55g/デニール、又は少なくとも約60g/デニールの靭性を有する。これらの特性に関して、本明細書で使用される場合、「靭性」という用語は、応力を受けていない試験片の、線密度(デニール)単位当たりの力(グラム)として表現される、引張応力を指す。繊維又はテープの「初期弾性率」は、変形に対する耐性を表す材料の特性である。「引張弾性率」という用語は、歪みの変化に対するデニール当たりのグラム力(g/d)で表され、元の繊維又はテープの長さ(インチ/インチ)の割合として表される、靭性の変化の比を指す。第1の細長い本体のプライ12を形成する繊維(又はテープ)はまた、好ましくは、第2の細長い本体のプライ14よりも低いデニーを有し、好ましくは、1000未満、より好ましくは約50~約1000、又は200~1000、及び最も好ましくは約50~約200、又は約200~約500のデニールを有する繊維から形成される。
【0014】
第1の細長い本体のプライ12の製造に好適な細長い本体としては、高分子量ポリエチレン繊維、特に超高分子量ポリエチレン繊維、及びポリプロピレン繊維などのポリオレフィン繊維、高靭性パラアラミド繊維、ポリベンゾオキサゾール(PBO)繊維、ポリベンゾチアゾール(PBT)繊維、液晶コポリエステル繊維、M5(登録商標)繊維などの剛性ロッド繊維、及び高靭性ガラス繊維を含む高靭性繊維、並びにそのような繊維から形成されたテープである。また、ポリマー繊維/テープを製造するために好適なものは、コポリマー、ブロックポリマー、及び上記の材料のブレンドである。第1の細長い本体のプライ12を形成するための最も好ましい繊維タイプは、伸びきり鎖ポリエチレン繊維である。少なくとも300,000の分子量を有する伸びきり鎖ポリエチレン、好ましくは少なくとも100万以上、より好ましくは200万~500万の分子量を有する超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)が好ましい。かかる伸びきり鎖ポリエチレン(ECPE)繊維は、参照により本明細書に援用される、米国特許第4,137,394号若しくは同第4,356,138号に記載されているような溶液紡糸プロセスで成長され得るか、又は全てが参照により本明細書に援用される、米国特許第4,413,110号、同第4,536,536号、同第4,551,296号、同第4,663,101号、同第5,006,390号、同第5,032,338号、同第5,578,374号、同第5,736,244号、同第5,741,451号、同第5,958,582号、同第5,972,498号、同第6,448,359号、同第6,746,975号、同第6,969,553号、同第7,078,099号、同第7,344,668号、及び同第8,444,898号などに記載されているように、ゲル構造体を形成するために溶液から紡糸され得る。特に好ましい繊維タイプは、Honeywell International Inc.(Morris Plains,NJ)よりSPECTRA(登録商標)の商標で販売されているポリエチレン繊維のいずれかである。SPECTRA(登録商標)繊維は、当該技術分野において公知である。
【0015】
UHMW PE繊維を形成するために特に好ましい方法は、最も好ましくは繊維がマルチフィラメント繊維である、少なくとも39g/デニールの靭性を有するUHMW PE繊維を製造可能なプロセスである。最も好ましいプロセスとしては、共同所有される米国特許第7,846,363号、同第8,361,366号、同第8,444,898号、同第8,747,715号、及び同第9,365,953号に記載されたものが挙げられ、これらの開示は、本明細書と矛盾のない限り参照により本明細書に援用される。かかるプロセスは、「ゲル紡糸」プロセスと呼ばれ、また「溶液紡糸」とも称され、超高分子量ポリエチレンの溶液及び溶剤が形成され、続いて溶液を、多孔紡糸口金を通して押出して溶液フィラメントを形成し、溶液フィラメントをゲルフィラメントに冷却し、溶剤を抽出して乾燥フィラメントを形成する。これらの乾燥フィラメントは、当該技術分野において繊維又は糸のいずれかとして称される、束に寄せ集められる。次いで、繊維/糸は、最大引き延ばし限度まで延伸されて(引き延ばされて)靭性を高める。
【0016】
好ましいアラミド(芳香族ポリアミド)繊維は公知であり、市販されており、例えば、米国特許第3,671,542号に記載されている。例えば、有用なアラミドフィラメントは、KEVLAR(登録商標)の商標でDuPontによって、特に、KEVLAR(登録商標)K49及びK149アラミド繊維などの、100GPaより大きい引張弾性率を有する高弾性率アラミド繊維、特に105GPa以上、125GPa以上、又は145GPa以上の引張弾性率を有するものが、商業的に製造されている。また、本明細書で有用なのは、DuPont社(Wilmington、DE)によってNOMEX(登録商標)の商標で商業的に製造されているポリ(m-フェニレンイソフタルアミド)繊維及びTeijin Aramid Gmbh社(Germany)によってTWARON(登録商標)の商標で商業的に製造されている繊維、Kolon Industries,Inc.社(Korea)によってHERACRON(登録商標)の商標で商業的に製造されているアラミド繊維、Kamensk Volokno JSC社(Russia)によって商業的に製造されているp-アラミド繊維SVM(商標)及びRUSAR(商標)、並びにJSC Chim Volokno社(Russia)によって商業的に製造されているARMOS(商標)p-アラミド繊維である。
【0017】
好ましいアラミド繊維は、約60GPa~約145GPa、最も好ましくは約90GPa~約135GPaの引張弾性率を有する。
【0018】
好適なPBO繊維は、市販されており、例えば、各々が参照として本明細書に援用される、米国特許第5,286,833号、同第5,296,185号、同第5,356,584号、同第5,534,205号、及び同第6,040,050号に開示されている。好適な液晶コポリエステル繊維は市販されており、例えば、それらの各々が参照により本明細書に援用される、米国特許第3,975,487号、同第4,118,372号、及び同第4,161,470号に開示されており、それらには、Kuraray Co.,Ltd.(Tokyo,Japan)から市販されているVECTRAN(登録商標)液晶コポリエステル繊維が含まれる。好適な高靭性繊維としては、高靭性電気グレード繊維ガラス(Eガラス、良好な電気特性を有する低アルカリホウケイ酸ガラス)、及び構造グレード繊維ガラス(Sガラス、高強度マグネシアアルミナ-シリケート)などが挙げられる。好適なポリプロピレン繊維としては、参照として本明細書に援用される米国特許第4,413,110号に記載のような、高配向性伸びきり鎖ポリプロピレン(ECPP)繊維が挙げられる。高靭性電気グレード繊維ガラス(Eガラス、良好な電気特性を有する低アルカリホウケイ酸ガラス)、及び構造グレード繊維ガラス(Sガラス、高強度マグネシアアルミナ-シリケート)も有用である。M5(登録商標)繊維は、ピリドビスイミダゾール-2,6-ジイル(2,5-ジヒドロキシ-p-フェニレン)から形成され、これは最近Magellan Systems International社(Richmond、Virginia)によって製造され、例えば、各々が参照として本明細書に援用される米国特許第5,674,969号、同第5,939,553号、同第5,945,537号、及び同第6,040,478号に記載されている。「剛直棒状」繊維という用語は、かかるピリドビスイミダゾール系繊維タイプに限定されず、多くのPBO及びアラミド繊維の品種が、多くの場合剛直棒状繊維と称される。
【0019】
第1の細長い本体のプライ12と同様に、第2の細長い本体のプライ14も、繊維、繊維テープ、又はこれらの組み合わせから製造され得る。第2の細長い本体のプライ14の製造に好適な第2の繊維としては、炭素繊維、電気グレード繊維ガラス(Eガラス、良好な電気特性を有する低アルカリホウケイ酸ガラス)を含むガラス繊維、構造グレード繊維ガラス(Sガラス、高強度マグネシア-アルミナ-ケイ酸)、及び耐性グレード繊維ガラス(Rガラス、酸化マグネシウム又は酸化カルシウムを含まない高強度アルミノケイ酸ガラス)、アラミド繊維(パラアラミド及びメタアラミド繊維)、ポリエチレンテレフタレート及びポリエチレンナフタレート繊維などのポリエステル繊維、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。これらの繊維タイプ及びその製造方法の各々は周知である。炭素繊維は、例えば、日本の株式会社クレハから商標名KRECA(登録商標)で、CYTEC Industries Inc.(West Paterson、NJ)から商標名THORNEL(登録商標)で、Nippon Carbon Co.Ltd.(Tokyo、Japan)、及びToray Composite Materials America(Tacoma、WA)から、T700繊維などが、市販されている。炭素繊維は、ポリアクリロニトリル(PAN)系の繊維のための標準的な方法によって紡糸される。第1のポリアクリロニトリルが繊維に溶融紡糸された後、繊維が黒鉛質炭素繊維に熱分解される。それらの特定の製造方法が、例えば、米国特許第4,115,527号、同第4,197,283号、同第4,356,158号、及び同第4,913,889号に記載されており、これらの開示は、参照により本明細書に援用される。好ましい炭素繊維は、約137GPa~約827GPa、より好ましくは約158GPa~約517GPa、及び最も好ましくは約206GPa~約276GPaの引張弾性率を有する。
【0020】
ガラス繊維は当該技術分野において従来既知であり、例えば、PPG Industries(Pittsburgh、PA)、及びNippon Electric Glass Co.,Ltd.(Japan)から市販されている。例えば、米国特許第4,015,994号、同第4140533号、同第4762809号、同第5064785号、同第5258227号、同第5284807号、同第6,139,958号、同第6,890,650号、同第6,949,289号などを参照されたい。これらの開示は、参照により本明細書に援用される。AGY Holding Corp.(Aiken、South Carolina)から市販のS2-Glass(登録商標)Sガラス繊維、並びにAGY Holding Corp.からのEガラス繊維、3B Fibreglass(Battice、Belgium)から市販のHiPerTex(商標)Eガラス繊維、Saint-Gobain(Courbevoie、France)からのVETROTEX(登録商標)Rガラス繊維も既知である。好ましいガラス繊維は、約60GPa~約90GPaの引張弾性率を有する。ポリエステル繊維は、Performance Fibers(Richmond、VA)から市販されている。例えば、米国特許第5,277,858号、同第5,397,527号、同第5,403,659号、同第5,630,976号、同第6,403,006号、同第6,649,263号、及び同第6,828,021号を参照されたい。これらの開示は、参照により本明細書に援用される。好ましいポリエステル繊維は、約2g/デニール~約10g/デニール、より好ましくは約3g/デニール~9g/デニール、及び最も好ましくは約5g/デニール~約8g/デニールの引張弾性率を有する。
【0021】
第1の細長い本体のプライ12又は第2の細長い本体のプライ14のいずれかの製造に有用な繊維性テープは、従来既知の方法によって形成される。この点については、用語「テープ」は、その幅よりも大きい長さ、及び少なくとも約3:1の平均断面アスペクト比、すなわち、テープ物品の長さ全体の平均断面の最大寸法対最小寸法の比を有する材料の、平坦で、細い、モノリシックストリップを指す。繊維テープとは、1つ以上のフィラメントを含むテープを指す。本開示のテープの断面は、長方形、楕円形、多角形、不規則な形状、又は、幅、厚さ、及び本明細書で略述されたアスペクト比要件を満たす任意の形状の断面であってもよい。かかるテープは、好ましくは、約0.5mm以下、より好ましくは約0.25mm以下、更により好ましくは約0.1mm以下、及び更により好ましくは約0.05mm以下の厚さを有する実質的に長方形の断面を有する。最も好ましい実施形態では、ポリマーテープは、最大約3ミル(76.2μm)、より好ましくは約0.35ミル(8.89μm)~約3ミル(76.2μm)、及び最も好ましくは約0.35ミル~約1.5ミル(38.1μm)の厚さを有する。厚さは、断面の最も厚い領域で測定する。
【0022】
本明細書で有用なテープは、約2.5mm~約50mm、より好ましくは約5mm~約25.4mm、更により好ましくは約5mm~約20mm、及び最も好ましくは約5mm~約10mmである。これらの寸法は、異なり得るが、本明細書で使用されるテープは、最も好ましくは、約3:1よりも大きく、より好ましくは少なくとも約5:1、更により好ましくは少なくとも約10:1、更により好ましくは少なくとも約20:1、更により好ましくは少なくとも約50:1、更により好ましくは少なくとも約100:1、更により好ましくは少なくとも約250:1の平均断面アスペクト比、すなわち、テープ物品の長さ全体の平均断面の最大寸法対最小寸法の比を達成する寸法を有するように製造され、及び最も好ましいテープは、少なくとも約400:1の平均断面アスペクト比を有する。テープから繊維プライを形成する際、複数のテープが、同一平面上に隣り合って、実質的に同一の広がりを持って配置されて、上記のような好ましい寸法を有する幅広層を形成する。
【0023】
好適なテープは、最も好ましくは、繊維について上述したように、全く同じポリマータイプから製造された繊維を圧縮することによって形成される。何故ならば、かかるテープは、かかる繊維を圧縮及び平坦化することによって形成されるからである。このような方法は、例えば、共同所有される米国特許第8,263,119号、同第8,697,220号、同第8,685,519号、同第8,852,714号、同第8,906,485号、同第9,138,961号、及び同第9,291,440号に記載されており、それらの各々が、本明細書と矛盾のない限り参照により本明細書に援用される。しかしながら、本明細書と矛盾のない限り参照により本明細書に援用される米国特許第9,138,961号に開示されたテープを含む、任意の方法で形成された繊維性テープが有用である。例えば、布は、所望の長さを有するテープに切断されるか、又は細長く切られてもよい。スリット装置の一例は、ロール上に巻かれる際にシート材料ウェブを細長く切るための装置について教示している米国特許第6,098,510号に開示されている。スリット装置の別の例は、複数のブレードを用いて、ポリマーフィルムのシートを複数のフィルムストリップへと細長く切るための装置について教示している米国特許第6,148,871号に開示されている。米国特許第6,098,510号及び同第6,148,871号の両開示は、本明細書と矛盾のない限り、参照として本明細書に援用される。
【0024】
一方向性の細長い本体のプライ12及び14の各々は、当該技術分野における従来の方法に従って製造され得る。不織一方向繊維プライを形成する好ましい方法では、複数の繊維が配列に配置され、典型的には、隣り合って実質的に平行な一方向配列に整列された複数の繊維/テープを含む繊維/テープのフェブとして配置される。典型的なプロセスでは、繊維(フィラメント束)がクリールから供給され、ガイド及び1つ以上のスプレッダバーを通ってコリメーティングコーム内に導かれてウェブを形成する。スプレッダバー及びコリメーティングコームは、束にされたフィラメントを分散し、広げ、同一平面上に隣り合わせに再編成して、実質的に平行で一方向性の配列にする。理想的な繊維の広がりは、個々のフィラメント又は個々の繊維が、単一繊維平面に互いに隣り合って位置され、繊維が互いに重なり合うことなく、実質的に一方向の平行な繊維の配列を形成することをもたらす。典型的には、これに続いて、繊維/テープを一緒にウェブ形態で保持するポリマー結合剤材料で繊維をコーティングする。
【0025】
図3に示されるように、一方向繊維プライを形成するための従来の方法では、複数のマルチフィラメント繊維(すなわち、フィラメント束20)がクリール22から供給され、均一又は実質的に均一な繊維の平行配列に配置される。フィラメント束20はヘドル24を通過し、このフィラメント束20は、典型的には(ただし、任意選択で)、結合剤/樹脂コーター26を通過し、それによって、フィラメント束が、フィラメントを束の形態で共に保持するのに役立つ結合剤/樹脂でコーティングされる。その後、平行な一方向性の細長い本体の連続繊維ウェブを形成するように、フィラメント束20が、同一平面上に隣り合わせにフィラメント束のフィラメントを広げるスプレッディング装置(spreading apparatus)28を通される。この点に関して、スプレッディング装置28は、例えば、一対の移動ロール、一対の固定ロール、移動ロールと固定ロールとの組み合わせ、又は当業者によって決定されるようなこれらのニーズに好適である別の装置を備え得る。次に、フィラメント20の連続的な配列が、使用に必要になるまで保管するために、任意選択で貯蔵用ロール30上に巻かれる。図3は、ヘドル24とスプレッディング装置28との間に位置付けられたコーター26によって結合剤が適用されることを示しているが、結合剤は、代替的にオフラインで別途適用されてもよく、あるいは図3の装置内でスプレッディング装置28の後ろであるが、貯蔵用ロール30の前など、異なる場所でインラインで適用されてもよい。また、図3に示す装置は、単なる例示であり、任意の他の従来装置が使用されてもよい。
【0026】
連続ウェブの形態で製造された、図3に示されるような繊維配列の幅は、製造業者によって所望される任意の幅であってもよい。この点に関して、図3の例示は縮尺どおりに描かれておらず、既知のヘドル24は一般的に、必要に応じて、任意のスロット寸法を有する任意の数のスロットを含むようにカスタマイズされ得、必要に応じてフィラメントをできる限り薄く広げることを可能にし、また配列が任意の所望の幅を有することを可能にする。クリール(複数可)22からヘドル24に供給される束の数、並びに束を形成するフィラメントの数が調整されてもよい。この点に関して、好ましい実施形態では、配列/ウェブ、すなわち細長い本体のプライ12及び14は、少なくとも10インチ(25.4cm)の幅、より好ましくは少なくとも約12インチ(30.48cm)の幅、更により好ましくは少なくとも約15インチ(38.1cm)の幅、更により好ましくは少なくとも約18インチ(45.72cm)の幅、更により好ましくは少なくとも約20インチ(50.8cm)の幅、更により好ましくは少なくとも約24インチ(60.96cm)の幅、及び最も好ましくは少なくとも約30インチ(76.2cm)の幅を有するであろう。同様に、細長い本体のプライの長さは、連続ウェブから所望の長さを切断することによって、必要に応じて調節され得る。本開示の好ましい実施形態では、同じ寸法の長さ及び幅を有する複数の正方形を、異なる繊維の連続ウェブから切り出して、第1の細長い本体のプライ12及び第2の細長い本体のライ14の各々を形成する。
【0027】
図4は、ポリマー結合剤を、既に形成された細長い本体の配列に適用する代替プロセスを示し、連続ウェブの形態の本体の配列が、従来のディップアンドスクイーズコーターを通され、続いてコーティングされた配列が従来の剥離紙基材上に適用される。次に、剥離紙上のコーティングされた配列が、後で使用するために貯蔵用ロール上に巻き上げられてもよく、又は所望の長さの細長い本体のプライへの更なる処理のために直ちに送られてもよい。剥離紙上のコーティングされた配列が保管される場合、保管前に、結合剤のコーティングが乾燥/硬化されることが好ましい。剥離紙上のコーティングされた配列が、細長い本体の別の配列と積層されるような、更なる処理のために直ちに送られる場合、(一方又は両方の配列上の)結合剤のコーティングは、プライ間の接着剤として機能するように湿ったままであってもよく、あるいはコーティングが乾燥していて、まだ本体同士を互いに接着させるのに十分な接着特性を有していてもよい。剥離紙上のコーティングされた配列(又はコーティングされたプライ)を別の配列(又はコーティングされた、若しくはコーティングされていないプライ)に接着すると、剥離紙は、配列の合体後に剥がされて廃棄されなければならないか、又は、第1の細長い本体のプライ12を第2の細長い本体のプライ14に積層した後に、切断された繊維プライから剥離紙を剥がしてもよい。この点に関して、事前に切断されたプライを、連続した細長い本体のウェブに積層し、続いてウェブを所望の長さに切断してもよく、このことは、本開示の目的のために、第1の一方向性の細長い本体のプライを第2の一方向性の細長い本体のプライ上に積層するものと考えられることを理解されたい。この方法は、例えば、80g/m以下、又は60g/m以下、又は40g/m以下、又は20g/m以下の非常に低い総面密度の繊維プライを形成する際に特に望ましい。
【0028】
第1及び第2の細長い本体のプライの各々が異なる繊維タイプから製造されることに加えて、これらのプライはまた、ポリマー結合剤/樹脂の含有量及び繊維面密度(FAD)も異なる。当該技術分野において「ポリマーマトリックス」材料とも称される用語「ポリマー結合剤」は、当該技術分野において従来既知であり、その固有の接着特性によって、又は周知の加熱及び/又は圧力条件に供された後のいずれかで、それらを形態プライ/層で所定の位置に固定するために、繊維/テープを共に貼り合わせる材料を表す。本明細書で使用される場合、「ポリマー」結合剤材料又は「ポリマー」マトリックス材料は、樹脂及びゴムを含む。かかる結合剤が繊維ベースのプライに使用される場合、ポリマー結合剤/マトリックス材料は、個々の繊維を部分的に又は実質的にのいずれかでコーティングし、好ましくは、繊維プライを形成する個々のフィラメント/繊維の各々を実質的にコーティングするか、又は繊維プライを形成する個々のフィラメント/繊維の各々を完全に封入する。かかる結合剤がテープベースの層に使用される場合、テープを作製するために使用される方法(通常、圧縮工程及びフィラメントの互いに対する融合を伴う)は、個々のテープを形成するフィラメントを共に十分に保持するため、結合剤が実質的にテープの全表面をコーティングする必要も、テープを封入する必要もない。この点に関して、テープベースの繊維性プライにおける結合剤/樹脂の主な目的は、テープをプライ/層の形態で互いに隣り合って共に保持することである。
【0029】
好適なポリマー結合剤材料としては、低引張弾性率エラストマー材料、及び高引張弾性率材料の両方が挙げられるが、可撓性を最大化するために、低弾性率熱可塑性結合剤が防刃パネルの布層に最も好適である。本明細書をとおして使用される場合、引張弾性率という用語は、ポリマー結合剤材料がASTM D638によって測定された場合の、弾性の係数を意味する。低又は高弾性率結合剤は、様々なポリマー及び非ポリマー材料を含んでもよい。本開示の目的として、低弾性率エラストマー材料は、ASTM D638試験手順に従って、約6,000psi(41.4MPa)以下で測定された引張弾性率を有する。低弾性率ポリマーは、好ましくは、約4,000psi(27.6MPa)以下、より好ましくは約2400psi(16.5MPa)以下、更により好ましくは1200psi(8.23MPa)以下、及び最も好ましくは約500psi(3.45MPa)以下の引張弾性率を有するエラストマーである。低弾性率エラストマー材料のガラス転移温度(T)は、好ましくは約0℃未満、より好ましくは約-40℃未満、及び最も好ましくは約-50℃未満である。低弾性率エラストマー材料はまた、少なくとも約50%、より好ましくは少なくとも約100%、最も好ましくは少なくとも約300%の好ましい破断伸びを有する。低弾性率材料か高弾性率材かにかかわらず、着色剤に加えて、ポリマー結合剤はまた、カーボンブラック若しくはシリカなどの充填材を含んでもよいか、油で増量されてもよいか、又は当該技術分野において周知であるように硫黄、過酸化物、金属酸化物若しくは放射線硬化系によって加硫されてもよい。
【0030】
低弾性率ポリマー結合剤として、多種多様な材料及び処方が用いられてよい。代表例としては、ポリブタジエン、ポリイソプレン、天然ゴム、エチレン-プロピレンコポリマー、エチレン-プロピレン-ジエンターポリマー、ポリスルフィドポリマー、ポリウレタンエラストマー、クロロスルホン化ポリエチレン、ポリクロロプレン、可塑化ポリ塩化ビニル、ブタジエンアクリロニトリルエラストマー、ポリ(イソブチレン-co-イソプレン)、ポリアクリレート、ポリエステル、ポリエーテル、フルオロエラストマー、シリコーンエラストマー、エチレンのコポリマー、ポリアミド(いくつかの繊維タイプと共に使用するのに有用な)、アクリロニトリルブタジエンスチレン、ポリカーボネート、及びそれらの組み合わせ、並びに繊維の融点未満で硬化可能な他の低弾性率ポリマー及びコポリマーが挙げられる。また有用なのは、異なるエラストマー材料のブレンド、又は1つ以上の熱可塑性物質とエラストマー材料とのブレンドである。
【0031】
特に有用なのは、共役ジエンとビニル芳香族モノマーとのブロックコポリマーである。ブタジエン及びイソプレンが、好ましい共役ジエンエラストマーである。スチレン、ビニルトルエン、及びt-ブチルスチレンが、好ましい共役芳香族モノマーである。ポリイソプレンを組み込んだブロックコポリマーを、水素化して、飽和炭化水素エラストマーのセグメントを有する熱可塑性エラストマーを製造してもよい。ポリマーは、タイプA-B-Aの単純な三元ブロックコポリマー、タイプ(AB)(n=2~10)の多元ブロックコポリマー、又はタイプR-(BA)(x=3~150)の放射状に構成されたコポリマーであってもよい。式中、Aは、ポリビニル芳香族モノマーからのブロックであり、Bは、共役ジエンエラストマーからのブロックである。これらのポリマーの多くは、Kraton Polymers(Houston,TX)によって商業的に製造されており、KRATON(登録商標)の商標で販売されている低弾性率ポリスチレン-ポリイソプレン-ポリスチレンブロックコポリマーなどである。また有用なのは、ドイツ、デュッセルドルフを本拠地とするHenkel Technologies社よりPRINLIN(登録商標)の商標で市販されている、スチレン-イソプレン-スチレン(SIS)ブロックコポリマーの樹脂分散液である。
【0032】
高弾性率剛性材料は、一般に、ASTM D638によって測定されるとき、6,000psiより大きい初期引張弾性率を有し、硬化時に、典型的には少なくとも約1×10psi(6895MPa)の高い引張弾性率を有する。有用な高弾性率剛性ポリマー結合剤材料としては、ポリウレタン(エーテル系及びエステル系の両方)、エポキシ、ポリアクリレート、フェノール/ポリビニルブチラール(PVB)ポリマー、ビニルエステルポリマー、スチレン-ブタジエンブロックコポリマー、並びにビニルエステルとジアリルフタレート、又はフェノールホルムアルデヒドとポリビニルブチラールなどのポリマーの混合物を含む、熱可塑性ポリマー並びに熱硬化性ポリマーが挙げられる。メチルエチルケトンなどの炭素-炭素飽和溶媒に可溶性である熱硬化性ポリマーも有用である。また有用なのは、参照として本明細書に援用される、米国特許第6,642,159号に記載の結合剤材料である。
【0033】
極性樹脂又は極性ポリマー、特に、約2,000psi(13.79Mpa)~約8,000psi(55.16Mpa)の範囲の引張弾性率で、軟質及び硬質材料の両方の範囲内のポリウレタンも、結合剤ポリマーとして有用である。好ましいポリウレタンは、最も好ましくは共溶媒を含まないが、必ずしもそうではない、非水性ポリウレタン分散液として適用される。そのようなものとしては、アニオン性ポリウレタン分散液、カチオン性ポリウレタン分散液、及び非イオン性ポリウレタン分散液が挙げられる。特に好ましいポリウレタンは、非水性アニオン性ポリウレタン分散液、非水性脂肪族ポリウレタン分散液であり、最も好ましいものは、非水性アニオン性脂肪族ポリウレタン分散液である。そのようなものとしては、アニオン性ポリエステル系ポリウレタン分散液、脂肪族ポリエステル系ポリウレタン分散液、及びアニオン性脂肪族ポリエステル系ポリウレタン分散液が挙げられ、それらの全てが、好ましくは非水性無共溶媒分散液である。また、そのようなものとしては、非水性アニオン性ポリエーテルポリウレタン分散液、非水性脂肪族ポリエーテル系ポリウレタン分散液、及び非水性アニオン性脂肪族ポリエーテル系ポリウレタン分散液が挙げられる。同様に好ましいのは、非水性カチオン性及び非水性非イオン性分散液の全ての対応する変形(ポリエステル系、脂肪族ポリエステル系、ポリエーテル系、脂肪族ポリエーテル系など)である。最も好ましいのは、約700psi以上、特に好ましい範囲で700psi~約3000psiの100%伸びでの弾性率を有する脂肪族ポリウレタン分散液である。より好ましいのは、約1000psi以上の、更により好ましくは約1100psi以上の100%伸びでの弾性率を有する脂肪族ポリウレタン分散液である。最も好ましいのは、1000psi以上、より好ましくは1100psi以上の弾性率を有する脂肪族ポリエーテル系アニオン性ポリウレタン分散液である。
【0034】
繊維プライは、第1の細長い本体のプライ12が、第2の細長い本体のプライ14よりも大きい結合剤含有量を有するように製造される。好ましい実施形態では、第1の細長い本体のプライ12の第1のポリマー結合剤材料は、繊維と結合剤の重量の約30重量%~約49.9重量%のポリマー結合剤、より好ましくは約30重量%~約45重量%、及び最も好ましくは約30重量%~約40重量%を構成する。好ましい実施形態では、第2の細長い本体のプライ14の第2のポリマー結合剤材料は、繊維と結合剤の重量の約20重量%~約40重量%のポリマー結合剤、より好ましくは約20重量%~約35重量%、及び最も好ましくは約20重量%~約30重量%を構成する。全体として、第1のポリマー結合剤材料及び第2のポリマー結合剤材料は、合わせて、複合材料の少なくとも30重量%、好ましくは、繊維と結合剤の重量の約30重量%~約45重量%を構成する。結合剤含有量の制御は、従来の方法を使用して、例えば、繊維/繊維プライ/繊維ウェブに適用されるポリマー結合剤組成物中の固形分含有量、図3及び図4の実施形態におけるような、繊維がコーティング浴を通過する速度などの因子を調整することによって、若しくは、実施例で使用されるようなエポキシフィルムなどのフィルムの形態で適用されるときの接着剤の厚み/面重量を修正することによってなど、任意の他の既知のコーティング法を使用して繊維/フィラメント束に適用される組成物の量を調整することによって、当業者により行われる。
【0035】
更に、第1のポリマー結合剤材料及び第2のポリマー結合剤材料は、好ましくは化学的に異なるポリマーを含む。例えば、一方の結合剤が、エポキシ又は熱硬化性ポリウレタンポリマーなどの熱硬化性ポリマー/樹脂であり、もう一方が、熱可塑性ポリウレタンなどの熱可塑性コポリマー/樹脂であってもよく、又は第1及び第2のポリマー結合剤材料が、熱硬化性エポキシ及び熱硬化性ポリウレタンなどの2つの異なる熱硬化性ポリマー、若しくは2つの異なる熱可塑性ポリウレタンなどの2つの異なる熱可塑性ポリマーであってもよい。好ましい実施形態では、高弾性率熱可塑性ポリウレタン(すなわち、6,000psiよりも大きい、好ましくは10,000psiよりも大きい弾性率を有する)でコーティング又は含浸された炭素繊維ベースの繊維性プライ(例えば、100グラム/mよりも大きい、好ましくは120g/mよりも大きい面密度を有する不織一方向炭素繊維布)が、非常に細長いエポキシ又は熱硬化性ポリウレタン結合剤繊維(すなわち、15%以上、好ましくは30%以上、更に好ましくは40%以上の伸長を有する)でコーティング又は含浸されたEガラス繊維ベースの繊維プライ(例えば、20グラム/m未満、好ましくは15g/m未満の面密度を有する不織一方向炭素繊維布)に貼り付けられ、好ましくは、非常に細長い樹脂が、硬化中に架橋される。
【0036】
繊維ベースのプライにポリマー結合剤材料を塗布する方法であって、繊維ベースのプライが結合剤で含浸されることは周知であり、当業者によって容易に決定される。本明細書において「含浸される」という用語は、ポリマー材料が布プライの中に拡散し、プライの表面に存在するだけでない、ポリマーコーティングが「埋め込まれる」、「コーティングされる」、又は別様に適用されることと同義であるとみなされる。ポリマー結合剤材料の塗布には任意の適切な塗布方法が用いられてよく、「コーティングされた」などの用語の特定の使用は、フィラメント/繊維に塗布される方法を制限することを意図するものではない。有用な方法としては、例えば、ポリマー又はポリマー溶液の繊維への吹き付け、押出し、又はロールコーティング、並びに溶融ポリマー又はポリマー溶液を通じた繊維の搬送が挙げられる。最も好ましいのは、図4に示されたディップアンドスクイーズ法を含む、個々の繊維の各々を実質的にコーティング又は封入し、繊維の表面積の全体又は実質的に全体をポリマー結合剤材料で被覆する方法である。これらのコーティング方法はまた、テープ系布層を結合剤でコーティングするためにも一般的に有用であるが、上述のようにより少ない量が好ましいので、噴霧又はロールコーティングなどの方法が、溶融ポリマー又はポリマー溶液を通してテープを移送するなどの方法よりも好ましい。更に、各ポリマー結合剤材料は、フィルムの形態で(例えば、各繊維プライ/布の)繊維に適用されてもよい。図6に概略的に示されるように、ポリマー結合剤材料は、剥離紙の表面上に任意選択的に供給されてもよく、次いでポリマー結合剤が剥離紙から繊維上に移送され、その後剥離紙が剥ぎ取られる。この結合剤適用方法は、当該技術分野において従来既知であり、図6の実施形態に例示されるような、エポキシ結合剤を適用する、特に好ましい方法である。
【0037】
したがって、本開示の好ましい実施形態では、プライは、(援用される米国特許第9,138,961号に記載されるように、圧縮繊維、より大きい布から切り出された狭い布ストリップ、狭い織ストリップなどのいずれかであるテープを含む)繊維成分及び結合剤/樹脂成分を有するであろう。また、当該技術分野において、組み合わされた繊維及び結合剤成分の単位面積当たりの質量は「面密度」又は「総面密度」と称される。複合体の総面密度(TAD)は、ASTM D3776によって決定され得る。TADのうちの繊維部分は、繊維面密度、すなわちFADとして当該技術分野において既知である。FADは、複合体の重量のうちの結合剤/樹脂部分に対する繊維の既知の割合に基づいて、TADから決定される(例えば、30重量%の結合剤/樹脂を含む、100グラム/mのTADを有する複合体では、FADは70グラム/mである)。結合剤/樹脂の重量%は、コーティング前の繊維の重量と、結合剤/樹脂でコーティングした後の複合材の重量とを計量又は計算するなど、従来の手段によって決定される。これらのFAD及び結合剤/樹脂含有量の値は、例えば、繊維プライに含めるためのクリール(図3参照)上に取り付けられた繊維(フィラメント束)の数(及び束に援用されたフィラメントの数)を制御することによって、必要に応じて制御することができる。本開示の好ましい目的に従い、第2の細長い本体のプライ14は、第1の細長い本体のプライ12の繊維面密度の少なくとも3倍(3×)、より好ましくは第1の細長い本体のプライ12の繊維面密度の少なくとも4倍(4×)、及び最も好ましくは第1の細長い本体のプライ12の繊維面密度の少なくとも5倍(5×)の繊維面密度を有する。この点に関して、第1の繊維プライは、20グラム/m(g/m)以下の繊維面密度を有し、第2の繊維プライは、少なくとも60g/m2の繊維面密度を有する。好ましくは、第1の繊維プライは、約5g/m~20g/mの繊維面密度を有し、第2の繊維プライは、60g/m~120g/mの繊維面密度を有する。好ましくは、第1の繊維プライは、100g/m未満、より好ましくは50g/m未満、及び更により好ましくは約5g/m~20g/mの総面密度を有し、最も好ましくは15g/m未満の総面密度を有する。好ましい実施形態では、第2の繊維プライは、100g/mより大きい、より好ましくは100g/m~約150g/m、及び最も好ましくは約100g/m~125g/mの総面密度を有する。個々には、プライの各々の面密度は、その全幅にわたって均一又は実質的に均一であることが好ましい。第1及び第2の繊維プライを組み合わせた複合材料は、少なくとも約80g/m、好ましくは約80g/m~約125g/m、より好ましくは約80g/m~約115g/m、及び最も好ましくは約80g/m~約100g/mの繊維面密度を有する。更に、第1及び第2の繊維プライを組み合わせた複合材料は、少なくとも約125g/m、好ましくは約125g/m~約200g/m、より好ましくは約125g/m~約175g/m、及び最も好ましくは約125g/m~約150g/mの総面密度を有する。本開示の好ましい実施形態では、第2の一方向繊維プライの総面密度は、第1の一方向繊維プライ及び第2の一方向繊維プライの合わせた総面密度の50%よりも大きい。
【0038】
形成されると、接合された(すなわち、実質的に同一の広がりを持つ様式で、互いに面対面で積層された)2つの繊維プライ、そして一体化(合体)されて単層の単体ハイブリッドプライを形成する。「一体化する」は、各繊維プライと共に、ポリマー結合剤材料が組み合わされて合体され、単一の単体層になることを意味する。本明細書で使用されるとき、「単層」又は「単一の単体層」構造は、一体化された1つ以上の個々のプライで構成されたモノリシック複合構造を指し、複数の個々のプライは、損傷又は破壊されることなしには、もはや分離可能ではない。繊維プライ/層を一体化させる方法は、(本明細書と矛盾のない限り参照により本明細書に援用される)米国特許第6,642,159号に記載された方法などによって周知であり、一体化は、乾燥、冷却、加熱、圧力、又はこれらの組み合わせを介して起こり得る。繊維又は布プライ/層は、ウェットラミネーションプロセスの場合と同様に、共に貼り合わせるだけでもよいので、加熱及び/又は加圧が必要でない場合がある。しかしながら、一体化は、好ましくは低圧積層によって、又は高圧成形によって行われ、低圧積層が好ましい。
【0039】
通常、このような積層は、平台型積層装置内、二重ベルト若しくはスチールベルトプレス内、又はカレンダーニップセット内において実施されるが、他の方法が、必要に応じて、当業者によって使用され得る。一体化はまた、真空下に置かれた金型内で材料を真空成形することによって行われてもよい。真空成形技術は、当該技術分野において公知である。積層は、約50℃~約175℃、好ましくは約105℃~約175℃の範囲の温度、及び約5psig(0.034MPa)~約2500psig(17MPa)の範囲の圧力で、約0.01秒~約24時間、好ましくは約0.02秒~約2時間かけて行うことができる。この点に関して、約225°F(107.22℃)~約275°F(135℃)の温度で、350psi(2.4MPa)を下回る低積層圧力。約60秒を下回る短い積層時間が最も好ましい。
【0040】
繊維性の高圧合体は、好適な成形装置内での加熱及び圧力下で、約50psi(344.7kPa)~約5,000psi(34,470kPa)、より好ましくは約100psi(689.5kPa)~約3,000psi(20,680kPa)、最も好ましくは約150psi(1,034kPa)~約1,500psi(10,340kPa)の圧力で成形することにより達成されてよい。成形は、約5,000psi(34,470kPa)~15,000psi(103,410kPa)、より好ましくは約750psi(5,171kPa)~5,000psi、及び、より好ましくは約1,000psi~5,000psiの高圧で交互に行われてよい。成形工程は、約4秒~約45分かかってもよい。好ましい高圧成形温度は、約200°F(約93℃)~約350°F(約177℃)の範囲であり、より好ましくは約200°F~約300°Fの温度、及び最も好ましくは約200°F~約280°Fの温度である。繊維プライが成形される圧力は、結果として生じる成形製品の剛性又は可撓性に直接影響を与える。特に、成形される圧力がより高いと、剛性はより高くなり、その逆も成立する。複合体をマンドレルの周りに管状形態に巻き付けることができるように良好な可撓性が望ましいため、より穏やかな低圧一体化/積層技術が最も好ましい。
【0041】
図2に示すように、第1の細長い本体のプライ12と第2の細長い本体のプライ14とが一体化されて、2つの一体化されたプライの細長い本体が異なる方向に配向された、単層2プライの単体ハイブリッド複合体10を形成する。繊維/テープが0°/90°で互いに対して直交するように、換言すれば、中空管状構造体内の周方向応力に対する耐性を最大化するためでなく、複合体が発射体の貫通を止める能力を最大化するために、複数の不織繊維プライを交差に重ねることは、耐弾性複合体の技術分野で従来既知である。本明細書で所望されるように、周方向応力に対する耐性を最大化するために、繊維プライのうちの一方が、その構成要素の細長い本体が0°、すなわち管状構造体の長手方向軸に沿って配向されるように配置される一方、もう一方のプライの細長い本体が、この0°のプライに対して20°~約70°の角度で配向された場合に、有益な結果が達成される。より好ましくは、繊維プライのうちの一方は、繊維が、管状構造体の長手方向軸に沿って0°にあるように配置され、もう一方のプライの細長い本体は、この0°のプライに対して30°~約60°の角度で配向され、最も好ましくは、この0°のプライに対して45°の傾斜で配向される。図2に示すように、最も好ましい実施形態では、第1の細長い本体のプライ12は、その構成要素の繊維が、中空管状構造体の長手方向軸に沿って0°に配向されるように位置付けられる一方、第2の細長い本体のプライ14は、その繊維が、細長い本体のプライ12に対して傾斜(例えば、図示されるような45°)するように位置付けされる、又は第1の細長い本体のプライ12及び細長い本体のプライ14の配向が逆であってもよい。
【0042】
複合体10が形成されると、中空管状構造体は、当該技術分野における従来の方法によって、最も好ましくは、複合体10を円筒状又はテーパ状マンドレルの周りに、ロール巻き付け又は螺旋状巻き付け技術のいずれかによって、巻き付けることによって形成される。例示的なロール巻き付け技術が図1に示されており、複合体10はそれ自体の周りに、所望に応じて何回でも巻き付けられて、所望の肉厚を有する多層管を形成する。次に、樹脂を架橋し、巻き付けられた層を合体させるために多層管が加熱され、圧力を受け、それによって単体の管状物品を形成し、結果得られた管状物品がマンドレルから取り外される。この点に関して、マンドレル上の複合体は、約220°F~280°F(約104℃~138℃)の温度で約2~約24時間、より好ましくは約220°F~約240°F(約104℃~約116℃)の温度で約4時間~約8時間、及び約100psi~約150psi(約689kPa~約1033.5kPa)の印加圧力で、加熱されてもよい。
【0043】
例示的な螺旋状巻き付け技術が図5に示されており、複合体10の層が、角度をなして円筒形マンドレルの周りに巻き付けられる。この方法では、複合体10は狭い幅に切断され、マンドレル上に螺旋状に巻かれ、次いで好適な熱及び好ましくは圧力下で硬化される。複合体から切断される「狭い」幅のストリップは、好ましくは約1インチ~約20インチ(2.54cm~50.8cm)、より好ましくは約2インチ~約16インチ(5.08cm~40.64cm)、及び最も好ましくは約4インチ~約16インチ(10.16cm~40.64cm)の幅を有する。より小さい直径の管状構造体は、一般に、より狭い布複合体から形成され、より大きな直径の管状構造体と比較して、より小さいマンドレルの周りに巻き付けられる。ロール巻き付けと同様に、マンドレル上の巻き付けられた複合体は、約220°F~280°F(約104℃~138℃)の温度で約2~約24時間、より好ましくは約220°F~約240°F(約104℃~約116℃)の温度で約4時間~約8時間熱することができる。圧力は、約100psi~約150psi(約689kPa~約1033.5kPa)の範囲であってもよい。次いで、結果得られた管がマンドレルから取り外される。
【0044】
複合体ストリップをマンドレルの上に巻き付けるとき、各次に続く縦糸層は、例えば、前のストリップの幅の約15%~約75%、より好ましくは前のストリップの幅の約1/2のような所望の量だけ、前の巻き付け層に重なってもよい。他の重なり距離、又は重なりなしを採用し得ることを理解されたい。複合布を螺旋状に巻き付けるとき、約40°~約60°の巻き角が好ましく、フープ応力に対する耐性を最大化するためには、約55°~約60°の巻き角が最も好ましい。管状構造体において更なる強度を達成するために、複合体を、最初にマンドレル上に一方向に巻き付けて第1の層を形成し、次いで複合体を反対方向に巻き付けることによって、この第1の層の上に重ねて第2の層を追加することができる。
【0045】
使用される巻き付け方法に応じて、このように形成された管状物品は、その全長に沿って均一な面密度を有し得る、又はその全長に沿って不均一な面密度を有し得る。この点に関して、ロール巻き付け法は、均一な面密度を有する管状物品を製造するであろう一方、螺旋状巻き付け法は、上述のような巻き付けられたストリップの重なりがあるかどうかに応じて、均一又は不均一な面密度のいずれかを有する管状物品を製造する可能性がある。管状物品の面密度は、その全長に沿って均一であることが好ましい。使用される方法に応じて、結果得られる管状物品が、ポリマー結合剤材料濃度の高い領域とポリマー結合剤材料濃度の低い領域とが交番することによって特徴付けられる場合もある。これは特に、第2の繊維プライとは異なる結合剤含有量を有する第1の繊維プライを含む複合体をロール巻き付けするときに達成される。別の実施形態では、特に、巻き付けられた構造体を熱及び圧力にさらすことによって、複合体がそれ自体の上に重なって、それ自体に封着されるように、複合体をマンドレルの周りに巻き付けて管状物品が形成される場合、熱及び圧力条件が、第1の繊維プライからの第1のポリマー結合剤の一部を第2の繊維プライ内へ浸透させ、又はその逆を引き起こして、それにより、重なり合う層が互いに融合され、管状物品の全長に沿って最大の強度均一性を有する、単体の管状物品が製造され得る。
【0046】
結果得られる管状構造体は、テント支持体及び自転車フレームなどの重量荷担支持体を含む様々な用途に、又は釣竿、ゴルフクラブ、スキーポールなどの著しい円筒応力(cylindrical stress)を受ける物品に、使用することができる。本開示の管状構造体の別の使用は、既存のパイプ又はホース用の被覆又はライナーとしてのものである。このようなパイプは、金属、プラスチック、又は複合体で形成され得る。
【0047】
好ましい実施形態では、形成されたままの管状物品は薄肉である。したがって、管状物品の厚さは、2プライ複合層10の厚さ、及びマンドレルの周りの巻き数に依存する。この点に関して、2プライ複合層10は、約12μm~約600μm、より好ましくは約50μm~約385μm、更により好ましくは約50μm~約255μm、及び最も好ましくは約50μm~約200μmの厚さを有する。好ましい肉厚は、管状物品の所望の最終用途に応じて変化するであろう。しかしながら、一般に、管状物品は、約0.13mm~約50.0mm、より好ましくは約0.13mm~約25mm、更により好ましくは約0.13mm~19.00mm、更により好ましくは約0.13mm~12.7mm、更により好ましくは約0.25mm~3.20mm、及び最も好ましくは約0.38mm~約1.0mmの好ましい肉厚を有するであろう。更に、管の直径は、複合体10が巻き付けられるマンドレルのサイズにも依存し、これが、管状物品の中空コアの直径を決定する。このようなものはエンドユーザによって容易に決定されるが、本開示の好ましい実施形態の目的のために、管状物品の中空コアは、典型的には、約0.1mm~約250mm、より好ましくは約0.1mm~約100mm、及び最も好ましくは約0.38mm~約50mmの範囲であることが意図される。
【0048】
本技術が、特に、好ましい実施形態を参照しながら示され、説明されてきたが、本開示の趣旨及び範囲を逸脱することなく、様々な変更及び修正がなされ得ることは、当業者によって容易に理解されるであろう。例えば、最初に各繊維プライを形成し、次いでそれらを同一の広がりをもつように面対面で重ね合わせ、次に、積層などによってそれらを合体することによって2プライの複合体を形成するのではなく、図6に例示されるような代替の複合体製造方法を使用してもよく、そこでは、最初に繊維層タイプのうちの1つが、(図3に示された方法などで上記により詳細に説明されたように)0°で軸方向に配向されたウェブの繊維を有する一方向繊維ウェブに形成され、次いで、0°のウェブをセクションに切断し、繊維が所望の角度に配向されるように、切断されたセクションを回転させ、その後、切断されたセクションを共に貼り合わせて図6に示されるような新しいウェブを形成することによって、軸方向に配向された繊維のウェブを90°(又は、例えば±45°などの任意の他の所望の角度)に配向された繊維のウェブに変換する。次に、この新たなウェブ、例えば、図6に示されるような90°のウェブを、別の0°の一方向ウェブと、好ましくは、接着フィルム(エポキシフィルムなど)などの中間接着剤を用いて、又は繊維上のポリマー結合剤コーティングを接着剤として使用して、接合し、続いて、上述のものなどの従来の積層技術などによって、2つのプライを一体化させることができる。特許請求の範囲は、開示の実施形態、上述されているそれらの代替物、及びそれらの全ての等価物を網羅するように解釈されることを意図する。
【0049】
以下の非限定的な実施例は、本開示の好ましい実施形態を例示するのに役立つ。
【実施例
【0050】
いくつかは、その全長に沿って均一な直径を有しており、他は、その長さに沿って不均一な直径を有するテーパ状管である、いくつかの中空管を製造するために、2組のハイブリッドプリプレグが作製された。各管は、最初に所望のプリプレグを作製し、続いて、各管全体にわたって所望の直径及び均一性を有する鋼棒マンドレル上にプリプレグを巻き付けることによって作製された。
【0051】
ハイブリッドプリプレグ1-比較例
このプリプレグは、一方向に配向された炭素繊維(Toray Composite Materials America(Tacoma、WA)製東レT700繊維(12kフィラメントトウ))の単プライ布に積層された平織りEガラス織布を含んだ。各布は、少なくとも30%の樹脂含有量をもたらす、熱硬化性エポキシ樹脂フィルムがコーティングされた。炭素繊維ベースの単プライ布は、178.7g/mの総面密度(TAD)に対して、120g/mの繊維面密度(FAD)、及び32.8%(58.7g/mの被覆重量)の樹脂含有量を有した。Eガラス織布(バランス平織り、スタイル106、50デニールEガラス繊維(102のフィラメント束数)、AGY Holding Corp.(Aiken、サウスカロライナ)製)は、53.5g/mのTADに対して、26g/mのFAD、及び51.4%(被覆重量27.5g/m)の樹脂含有量を有した。次いで、炭素繊維単プライ布とEガラス織布とが、従来の積層条件によって、231.2g/mのTADに対して、146g/mの組み合わせFAD(combined FAD)及び37.3%の樹脂含有量を有する単体2プライハイブリッドプリプレグに一体化された。
【0052】
ハイブリッドプリプレグ2
このプリプレグは、一方向に配向された炭素繊維(東レT700繊維(12Kフィラメントトウ)の単プライ布に積層された、一方向に配向されたEガラス繊維の単プライ布を含んだ。炭素繊維ベースの単プライ布は、178.7g/mのTADに対して、120g/mのFAD及び32.8%の(58.7g/mの被覆重量)を有した。Eガラス繊維ベースの単プライ(バランス平織り、スタイル106、50デニールEガラス繊維(102のフィラメント束数)、AGY Holding Corp.製)は、34.5g/mのTADに対して、13g/mのFAD及び62.3%(21.5g/mの被覆重量)を有した。2つのプライを重ね合わせて、層の繊維が互いに対して直交して(すなわち90°に)配向されるように、層のうちの一方を回転することによって交差に重ね、次いで、従来の積層条件によって、217.7g/mのTADに対して、133g/mの組み合わせFAD及び37.7%の樹脂含有量を有する単体2プライハイブリッドプリプレグに一体化した。
【0053】
プリプレグの製造
完全不織0°/90°ハイブリッドプリプレグ2を形成するために、一方向ガラスフィラメント束(多フィラメント繊維、トウ)の第1の不織一方向(軸方向)ウェブが図6の工程1に示されるような、0°で平行に配置された複数の束から形成される。所望の数の巻かれた繊維のスプール/パッケージが、当該技術分野における従来の方法に従って、クリール上に取り付けられ、巻き出され、平行化されて、平行配列に広げられる。次に、剥離紙の一方の表面上にコーティングされたエポキシなどの接着樹脂のフィルムが、平行配列の表面に巻き出され、続いて、従来の積層条件下で圧力を用いてフィルムと繊維とを共に積層して、樹脂がコーティングされた繊維ウェブを形成し、次いで、この繊維ウェブが巻き上げられて、更なる処理のために移送される。図6の工程2に示されるように、次に、この巻き上げられたガラス繊維の0°のウェブが、複数の所望の長さの正方形に切断され、これらの複数の切断された正方形が、フィラメントを90°に配向した状態で、共に貼り合わされて90°のウェブを形成する。続いて、この90°のウェブが巻き上げられて、更なる処理のために移送される。次に、図6の工程3に示すように、90°のウェブが、工程1の0°のガラス繊維ウェブと同じ方法であるが、代わりに炭素繊維を用いて形成された別の繊維の配列と組み合わされ、炭素繊維の平行配列の表面上に巻き出される、剥離紙の一方の表面上にコーティングされた接着樹脂(エポキシなど)のフィルムとも組み合わされる。工程3に示すように、次いで、ガラス繊維の90°のウェブが、樹脂が2つのウェブ間の中間接着剤として位置付けられるように、0°の炭素繊維ウェブの樹脂コーティング表面上に巻き出される。次いで、組み合わされたウェブが、従来の積層条件下で圧力を用いてより強い積層されて、一体化された0°/90°ハイブリッドプリプレグウェブを形成し、その後、このプリプレグウェブが管に成形される。
【0054】
一方向繊維のプライではなくガラス繊維の織布を内蔵するハイブリッドプリプレグ1を形成するために、当該技術分野における従来の方法が使用される。これらの実施例では、図6の工程2のプロセスがスキップされ、図6の工程1に従って製造されたような0°の炭素繊維ウェブが、図6の工程3と類似の中間樹脂フィルム(エポキシなど)を用いて、織布に積層される。
【0055】
管の製造
ハイブリッドプリプレグ1及びハイブリッドプリプレグ2の各々から、それらを鋼マンドレルの周りに巻くことによって、いくつかの中空管試料が製造された。長さに沿って均一な直径を有する中空管を形成するために、プリプレグが、0.25インチ(6.35mm)の均一な内径を有する48インチ長のロッドの周りに個々に巻き付けられた。長さに沿って不均一でテーパ状の直径を有する中空管を形成するために、プリプレグが、一端に7.92mmの外径を有し、他端で0.76mmの外径まで徐々に縮小する、48”長の円錐形状の鋼棒マンドレルの周りに個々に巻き付けられた。図1に示すように、単一のプリプレグをこのマンドレルの周りに巻き付け、マンドレルの周りに合計4回転巻き付け、続いて、巻き付けたものを熱及び圧力下で一体化させた後にそれらをマンドレルから取り外して、プリプレグの厚さの4倍(4×)の厚さを有する管を製造した。これを各タイプのプリプレグについて数回繰り返して、以下に概説する試験試料を製造した。各プリプレグの繊維の配向が、巻き付け中維持され、マンドレル上にある間、一体化条件が、巻き付けの全長に沿って均一に保持された。4巻き後、管は0.5mmの厚さを有し、マンドレル棒が、120℃に保持されたオーブンに移送されて、プリプレグを硬化させた。プリプレグが完全に硬化したら管をマンドレルから外し、両端をトリミングして、圧潰強度及び曲げ強度を試験するために管長を所望の試料サイズまで小さくした。
【0056】
実施例1~6(比較例)及び実施例7~12
つぶれ試験は、2つの平らな鋼プラテンの間に6.35cm長の管試料を配置し、そのうちの一方をAmetek,Inc.(Berwyn、Pennsylvania)製のChatillon TCD500引張試験機のロードセルに取り付けた。プラテンを共に押圧して管を圧縮し、管の破壊まで圧縮を継続した。管の破壊が、対応する管の荷重の低下を引き起こし、この破壊点が各試料について記録された。次いで、破壊までの最大荷重がキログラム単位で記録された。プリプレグタイプの各々の6つの中空管均一直径試料が、このつぶれ試験に供されて、つぶれ耐性(フープ強度)を測定し、平均破壊荷重を決定した。プリプレグ1及びプリプレグ2の試験試料は、同一タイプの試料間で、平均破壊荷重からの限られたばらつきを示し、プリプレグを作成するプロセス、管製造プロセス、及び試験方法が一貫していることを確認した。
【0057】
【表1】
【0058】
【表2】
【0059】
実施例13~16(比較例)及び実施例17~20
7.9mmから0.762mmまで減少する直径を有する48インチ(122cm)長の中空テーパ状直径の管試料で曲げ試験が実施された。試料は、管の幅広の端部が固定具内に取り付けられ、次いで、管の幅広の管端部を幅狭の管端部より上にして垂直に保持された。次いで、(上記のつぶれ試験のように、同じChatillon TCD500引張試験機の)ロードセルが、幅狭の管端部の先端の固定点に取り付けられ、管が垂直に引き上げられ、それにより、管が上昇するにつれて幅狭の管端部の荷重を上昇させて、管が破壊するまで管を円弧状に屈曲させた。管の破壊が、対応する管の荷重の低下を引き起こし、この破壊点が各試料について記録された。曲げ試験は、各プリプレグタイプ及び各管タイプの4つの試料について実施された。各試験試料の平均破壊荷重を、キログラム単位で以下に示す。プリプレグ1及びプリプレグ2の試験試料は、平均値からの限られたばらつきを示し、プリプレグを作成するプロセス、管製造プロセス、及び試験方法が一貫していることを確認した。
【表3】
【表4】
【0060】
結論:
単一の交差に重ねられた繊維ガラスの一方向プライと一体化された単一の炭素繊維ベースの一方向プライを有する、本開示の新しい軽量のプリプレグ2は、縦糸繊維及び横糸繊維の両方を有する織繊維ガラスプライと一体化された、同じ炭素繊維ベースの一方向プライとほぼ同じ圧潰強度及び曲げ強度を達成することができるが、織布と比較して、1組の繊維が効果的に除去されるので、より低い重量で達成し得る。この点に関して、この試験では、織繊維ガラスは、一方向繊維ガラスプライの2倍の面密度を有した。織布の横糸繊維がフープ強度を提供し、縦糸繊維はほとんど寄与しなかったことは明らかで、したがって、この新しい材料は、縦糸繊維を除去して、圧潰強度及び曲げ強度のいずれかにおいても性能損失のない、より低重量の材料を実現する。
本明細書は以下の発明の開示を包含する。
[1]
多プライハイブリッド複合材料から形成された多層中空管状物品であって、前記ハイブリッド複合材料は、
第2の一方向繊維プライに接着された第1の一方向繊維プライを含み、前記第1の一方向繊維プライは第1の繊維及び第1のポリマー結合剤材料を含み、前記第1の繊維及び第2の繊維は異なる繊維タイプであり、前記第2の一方向繊維プライは第2の繊維及び第2のポリマー結合剤材料を含み、
前記第1のポリマー結合剤材料及び前記第2のポリマー結合剤材料が、合わせて、前記複合材料の少なくとも30重量%を構成し、
前記複合材料が、少なくとも約80グラム/m の繊維面密度を有し、
前記第2の繊維プライが、前記第1の繊維プライの前記繊維面密度の少なくとも3倍の繊維面密度を有し、
前記第1の繊維プライが、20グラム/m 以下の繊維面密度を有し、
前記第2の繊維プライが、少なくとも60グラム/m の繊維面密度を有し、
多層中空管状物品を形成するために、前記ハイブリッド複合材料が、それ自体の上に重ね合わされ、それ自体に封着されている、多層中空管状物品。
[2]
前記第1の一方向繊維プライが、100g/m 未満の総面密度を有し、前記第2の
一方向繊維プライが、少なくとも約100g/m の総面密度を有し、前記第2の一方向繊維プライの前記総面密度が、前記第1の一方向繊維プライ及び前記第2の一方向繊維プライの合わせた総面密度の50%よりも大きい、[1]に記載の管状物品。
[3]
前記第1の一方向繊維プライが、10グラム/m 未満の繊維面密度15グラム/m 未満の総面密度を有する、[1]に記載の管状物品。
[4]
前記第2の一方向繊維プライが、炭素繊維を含む、[1]に記載の管状物品。
[5]
前記第1の一方向繊維プライが、ポリエチレン繊維を含む、[4]に記載の管状物品。
[6]
前記第1の一方向繊維プライが、ガラス繊維を含む、[4]に記載の管状物品。
[7]
前記第2の繊維プライが、前記第1の繊維プライの前記繊維面密度の少なくとも4倍の繊維面密度を有する、[1]に記載の管状物品。
[8]
多プライハイブリッド複合材料を含む多層中空管状物品を形成するためのプロセスであって、前記プロセスが、
a)第1の繊維と第1のポリマー結合剤材料とを含む第1の一方向繊維プライを剥離基材上に形成することであって、前記第1の繊維プライが、20グラム/m 以下の繊維面密度を有する、形成することと、
b)第2の繊維と第2のポリマー結合剤材料とを含む第2の一方向繊維プライを提供することであって、前記第2の繊維プライが、少なくとも60グラム/m の繊維面密度を有し、前記第1の繊維及び前記第2の繊維が異なる繊維タイプである、提供することと、
c)前記第1の一方向繊維プライを前記第2の一方向繊維プライ上に積層することと、
d)前記剥離基材を除去することであって、そうすることによって前記第1の一方向繊維プライが、前記第2の一方向繊維プライ上に留まり、かつ前記第2の一方向繊維プライに付着しており、それによって、多プライハイブリッド複合材料が形成され、前記第1のポリマー結合剤材料及び前記第2のポリマー結合剤材料が、合わせて、前記複合材料の少なくとも30重量%を構成し、前記複合材料が、少なくとも約80グラム/m の繊維面密度を有する、除去することと、
e)中空中央開口部を残して、前記複合材料をそれ自体の周りに巻き付けることによって、前記複合材料を管状構造体に形成することと、
f)任意選択的に、前記管状構造体を熱及び/又は圧力にさらして、前記第1及び第2の一方向繊維プライを一体化させることと、を含む、プロセス。
[9]
工程e)が、前記複合材料をマンドレルの周りに巻き付けることによって行われ、工程f)が行われる、[8]に記載のプロセス。
[10]
一方向に配向された細長い本体の第2のプライに接着された、一方向に配向された細長い本体の第1のプライを含み、
前記第1のプライが第1の細長い本体及び第1のポリマー結合剤材料を含み、前記第2のプライが第2の細長い本体及び第2のポリマー結合剤材料を含み、前記第1の細長い本体及び前記第2の細長い本体が、異なる細長い本体タイプであり、
前記第1のポリマー結合剤材料及び前記第2のポリマー結合剤材料が、合わせて、前記複合材料の少なくとも30重量%を構成し、
前記複合材料が、少なくとも約80グラム/m の繊維面密度を有し、
前記第1のプライが、20グラム/m 以下の繊維面密度を有し、
前記第2のプライが、少なくとも60グラム/m の繊維面密度を有する、多プライハイブリッド複合材料。
図1
図2
図3
図4
図5
図6