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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-03
(45)【発行日】2023-10-12
(54)【発明の名称】情報表示装置
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/0346 20130101AFI20231004BHJP
   G06F 3/01 20060101ALI20231004BHJP
   G06F 3/04842 20220101ALI20231004BHJP
   B60K 35/00 20060101ALI20231004BHJP
   B60R 11/04 20060101ALI20231004BHJP
   B60R 11/02 20060101ALI20231004BHJP
   G01C 21/36 20060101ALI20231004BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20231004BHJP
   G02B 27/01 20060101ALI20231004BHJP
   G02B 26/10 20060101ALN20231004BHJP
   G02B 26/08 20060101ALN20231004BHJP
【FI】
G06F3/0346 421
G06F3/01 570
G06F3/04842
B60K35/00 A
B60R11/04
B60R11/02 C
G01C21/36
G08G1/16 C
G02B27/01
G06F3/01 510
G06F3/0346 423
G02B26/10 C
G02B26/10 104Z
G02B26/08 E
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021175416
(22)【出願日】2021-10-27
(62)【分割の表示】P 2017205299の分割
【原出願日】2017-10-24
(65)【公開番号】P2022020704
(43)【公開日】2022-02-01
【審査請求日】2021-10-27
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005810
【氏名又は名称】マクセル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平田 浩二
(72)【発明者】
【氏名】藤田 浩司
(72)【発明者】
【氏名】高木 栄治
【審査官】滝谷 亮一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/159522(WO,A1)
【文献】特開2016-088513(JP,A)
【文献】国際公開第2014/096896(WO,A1)
【文献】特開2015-132905(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0160074(US,A1)
【文献】特開2017-139012(JP,A)
【文献】特開2000-168352(JP,A)
【文献】特開2013-097605(JP,A)
【文献】特開2010-018201(JP,A)
【文献】特開2012-056359(JP,A)
【文献】特開2015-134521(JP,A)
【文献】特開2012-073658(JP,A)
【文献】特開2016-014954(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/0346
G06F 3/01
G06F 3/04842
B60K 35/00
B60R 11/04
B60R 11/02
G01C 21/36
G08G 1/16
G02B 27/01
G02B 26/10
G02B 26/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗り物に情報を表示する情報表示装置であって、
運転者側の前記乗り物のフロントガラスの中央付近の画像表示領域に画像情報を投写する第1の表示部と、
前記フロントガラスの中央付近の画像表示領域の下部に画像情報を投写する第2の表示部と、
前記第1の表示部と前記第2の表示部に対応しており、前記乗り物のステアリングから前記フロントガラスに向かった奥行き方向における障害物の位置情報を検出する空間センシング装置と、を備え、
前記第1の表示部は、前記第1の表示部から出射された光を前記乗り物のフロントガラスで反射させることで虚像を前記運転者から前記フロントガラス前方の遠方の領域に表示し、前記運転者が観ている遠方実景に前記虚像を重ねるHUD装置であり、
前記第2の表示部は、前記第2の表示部から出射された光を前記乗り物のフロントガラス上に走査することにより実像を前記運転者から前記フロントガラス内面の直近の領域に表示し、前記運転者が観ている近景に前記実像を重ねる投写光学装置であ
前記虚像の奥行き方向の表示位置と前記実像の奥行き方向の表示位置を一部重ねる、情報表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の情報表示装置において、
前記空間センシング装置は、光源からの光束を平行光束とする発光素子と、当該発光素子からの光束のうち前記障害物で反射した反射光束を受光する集光レンズ素子と、を備え、
前記発光素子と前記集光レンズ素子とが対になっており、前記対が水平方向に複数個、直線上に配置し構成されている、情報表示装置。
【請求項3】
請求項に記載の情報表示装置において、
前記複数個の対は、前記フロントガラスと運転座席の間において、前記運転座席から前記フロントガラスへの方向に対して直交する方向に配置されている、情報表示装置。
【請求項4】
請求項に記載の情報表示装置において、
前記複数個の対は、前記乗り物のインストルメントパネルの少なくとも1つの辺に沿って配置されている、情報表示装置。
【請求項5】
請求項1に記載の情報表示装置において、
前記乗り物のインストルメントパネルとして直視型の映像表示部である第3の表示部を備える、情報表示装置。
【請求項6】
請求項に記載の情報表示装置において、
前記空間センシング装置は、前記第3の表示部に対応している、情報表示装置。
【請求項7】
請求項1に記載の情報表示装置において、
前記フロントガラスと運転座席の間のダッシュボード上に配置されているカメラを備え、
前記第1の表示部は、前記カメラにより得られた情報に基づいて、表示される虚像の表示位置、表示色、または表示間隔を選択する、情報表示装置。
【請求項8】
請求項1に記載の情報表示装置において、
前記フロントガラスと運転座席の間のダッシュボード上に配置されているカメラを備え、
前記カメラは、前記乗り物の運転者の目線の動きを検出し、
前記第1の表示部は、検出された目線の動きに基づいて注意喚起の映像を表示する、情報表示装置。
【請求項9】
請求項1に記載の情報表示装置において、
前記空間センシング装置は、前記フロントガラスと運転座席の間のダッシュボード上に配置されている、情報表示装置。
【請求項10】
請求項1に記載の情報表示装置において、
前記障害物は指であり、
前記空間センシング装置は、前記乗り物のステアリングと前記フロントガラスの間の空間領域における指の移動速度と加速度を検出する、情報表示装置。
【請求項11】
請求項1に記載の情報表示装置において、
前記障害物は指であり、
前記空間センシング装置は、前記乗り物のステアリングと前記フロントガラスの間の空間領域における指の移動方向を検出する、情報表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車や電車や航空機等の人を乗せて移動する、いわゆる、乗り物のフロントガラスに画像を含む情報を投影する情報表示装置に関し、特に、運転者等によるインタラクティブな機能を備えた情報表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のフロントガラスに映像光を投写して虚像を形成し、ルート情報や渋滞情報などの交通情報や燃料残量や冷却水温度等の自動車情報を表示する、いわゆる、ヘッドアップディスプレイ(HUD:Head-Up-Display)装置が、例えば、以下の特許文献1により既に知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-194707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の情報表示装置においては、HUD装置本体を運転者の座席前方のステアリングとフロントガラスの間に配置するため小型化と共に、更には、投影した画面を見ながら対話をするような形式で操作を行うことが可能な、いわゆる、インタラクティブな機能が求められている。
【0005】
しかしながら、上述した従来技術によるヘッドアップディスプレイ装置では、小型化のための技術については開示しているが、インタラクティブな機能については記載されていない。特に、HUD装置において課題となる、すなわち、運転者の座席前方のステアリングとフロントガラスの間の空間に投影された画面に対してインタラクティブな操作を可能にする技術に関しては全く開示されていない。
【0006】
本発明の目的は、乗り物のフロントガラスに画像を含む情報を投影する情報表示装置において、運転者によるインタラクティブな機能を可能にした情報表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述した目的を達成するためになされたものであり、その一例を挙げるならば、乗り物に情報を表示する情報表示装置であって、運転者側の前記乗り物のフロントガラスの中央付近の画像表示領域に画像情報を投写する第1の表示部と、前記フロントガラスの中央付近の画像表示領域の下部に画像情報を投写する第2の表示部と、前記第1の表示部と前記第2の表示部に対応しており、前記乗り物のステアリングから前記フロントガラスに向かった奥行き方向における障害物の位置情報を検出する空間センシング装置と、を備える、情報表示装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、乗り物のフロントガラスに画像を含む情報を投影する情報表示装置において、自動車の制御や制御内容およびナビゲーション情報等の多くの表示映像を少ない視点移動で選択・変更すると共に、運転者によるインタラクティブな機能を可能にした情報表示装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施例に係るインタラクティブ機能を備えた情報表示装置および情報表示装置の周辺機器の概略構成図である。
図2】実施例における情報表示装置とフロントガラスと運転者の視点位置を示す概略断面構成図である。
図3】実施例における映像表示位置の概略説明図である。
図4】実施例における他の映像表示位置の概略説明図である。
図5】実施例においてインタラクティブ機能を実現するための構成を説明するための概略図である。
図6】実施例においてインタラクティブ機能を説明するための概略図である。
図7】空間センシング装置の原理を説明する第一の説明図である。
図8】空間センシング装置の原理を説明する第二の説明図である。
図9】実施例におけるフロントガラスの曲率半径の違いを説明する図である。
図10】実施例における異なる偏光に対するガラスの入射角度に対する反射率特性図である。
図11】実施例における情報表示装置を搭載した自動車の上面図である。
図12】実施例におけるフロントガラスに塗布、接着または粘着する反射物質の反射特性を示す特性図である。
図13】実施例における情報表示装置の虚像光学系の概略構成図である。
図14】実施例における投写光学装置の基本構成図である。
図15】実施例における2軸駆動のMEMS素子の概略構成図である。
図16】実施例におけるMEMS素子による光束スキャンの概要を説明する説明図である。
図17】実施例における自由曲面ミラー上を走査するレーザ光の第1の走査状態の説明図である。
図18】実施例における第1の走査状態での光走査装置の光源光スペクトルである。
図19】黒体軌跡および等色温度線図である。
図20】実施例における第1の走査状態での光走査装置の光源光の色度表を示す図である。
図21】実施例における自由曲面ミラー上を走査するレーザ光の第2の走査状態の説明図である。
図22】実施例における第2の走査状態での光走査装置の光源光スペクトルである。
図23】実施例における第2の走査状態での光走査装置の光源光の色度表である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施例について図面等を用いて詳細に説明する。
【0011】
まず、図1は、本発明の実施例に係るインタラクティブ機能を備えた情報表示装置および情報表示装置の周辺機器の概略構成図である。ここでは、その一例として、特に、自動車のフロントガラスに画像を投影する情報表示装置について説明する。図1(A)は情報表示装置の断面斜視図、図1(B)は周辺機器の概略構成ブロック図である。
【0012】
図1(A)において、45は車体であって、6は被投影部材であるフロントガラスであり、車体の縦断面のイメージ図である。HUD装置100は、運転者の視線8において自車両の前方に虚像を形成するため、被投影部材6(本実施例では、フロントガラスの内面)にて反射された各種情報を虚像(Virtual Image)として表示する装置である。なお、被投影部材6は、情報が投影される部材であれば良く、前述したフロントガラスだけではなく、その他、コンバイナであっても良い。すなわち、本実施例のHUD装置100では、運転者の視線8において自車両の前方に虚像を形成して運転者に視認させるものであれば良く、虚像として表示する情報としては、例えば、車両情報や監視カメラやアラウンドビュアーなどのカメラ(図示せず)で撮影した前景情報も含む。
【0013】
また、HUD装置100では、情報を表示する映像光を投射する映像表示装置4と、当該映像表示装置4に表示された映像を凹面ミラー1で虚像を形成する際に発生する歪や収差を補正するために補正用の光学素子であるレンズ2および3が、映像表示装置4と凹面ミラー1の間に設けられている。
【0014】
そして、HUD装置100は、上記映像表示装置4とバックライト光源10を制御する制御装置40とを備えている。なお、上記映像表示装置4とバックライト光源10などを含む光学部品は、以下に述べる虚像光学系であり、光を反射させる凹面形状の凹面ミラー1を含んでいる。また、この凹面ミラー1において反射した光は、フロントガラス6にて反射されて運転者の視線8(正しく観視することができる運転者の視点範囲いわゆるEyeboxでも良い)へと向かう。
【0015】
上記の映像表示装置4としては、例えば、バックライトを有するLCD(Liquid Crystal Display)の他に自発光のVFD(Vacuum Fluorescent Display)などがある。
【0016】
一方、上述した映像表示装置4の代わりに、投写装置によりスクリーンに映像を表示して、前述の凹面ミラー1で虚像とし被投影部材であるフロントガラス6で反射して運転者の視点8と向かわせても良い。このようなスクリーンとしては、例えば、マイクロレンズを2次元状に配置したマイクロレンズアレイにより構成しても良い。
【0017】
より具体的には、虚像の歪みを低減するために凹面ミラー1の形状は、図1(A)に示す上部(相対的に運転者の視点との距離が短いフロントガラス6の下方で光線が反射する領域)では、拡大率が大きくなるように相対的に曲率半径が小さく、他方、下部(相対的に運転者の視点との距離が長いフロントガラス6の上方で光線が反射する領域)では、拡大率が小さくなるように相対的に曲率半径が大きくなる形状とすると良い。また、映像表示装置4を凹面ミラーの光軸に対して傾斜させることで上述した虚像倍率の違いを補正して発生する歪みそのものを低減することによっても、更に良好な補正が実現できる。
【0018】
次に、図1(B)において、制御装置40は、ナビゲーションシステム60から、自車両が走行している現在位置に対応する道路の制限速度や車線数、ナビゲーションシステム60に設定された自車両の移動予定経路などの各種の情報を、前景情報(すなわち、上記虚像により自車両の前方に表示する情報)として取得する。
【0019】
運転支援ECU62は、周辺監視装置63での監視の結果として検出された障害物に従って駆動系や制御系を制御することで、運転支援制御を実現する制御装置であり、運転支援制御としては、例えば、クルーズコントロール、アダプティブクルーズコントロール、プリクラッシュセーフティ、レーンキーピングアシストなどの周知技術を含む。
【0020】
周辺監視装置63は、自車両の周辺の状況を監視する装置であり、一例としては、自車両の周辺を撮影した画像に基づいて自車両の周辺に存在する物体を検出するカメラや、探査波を送受信した結果に基づいて自車両の周辺に存在する物体を検出する探査装置などである。
【0021】
制御装置40は、このような運転支援ECU62からの情報(例えば、先行車両までの距離および先行車両の方位、障害物や標識が存在する位置など)を前景情報として取得する。更に、制御装置40には、イグニッション(IG)信号、および、自車状態情報が入力される。これらの情報の内、自車状態情報とは、車両情報として取得される情報であり、例えば、内燃機関の燃料の残量や冷却水の温度など、予め規定された異常状態となったことを表す警告情報を含んでいる。また、方向指示器の操作結果や自車両の走行速度、更には、シフトポジション情報なども含まれている。
【0022】
以上述べた制御装置40からの映像信号は、自動車の状態および周囲環境に対応した映像情報であり観視者の観ている遠方実景に虚像で重ねる第1の情報表示装置であるHUD装置100と、近景に実像で重ねる第2の情報表示装置である投写光学装置220、および第3の情報表示装置である直視型のインストルメントパネル42に適宜選択的に表示され、観視者である運転者が運転中に起こす視点移動を軽減する。なおこの制御装置40はイグニッション信号が入力されると起動する。以上が、本実施例における情報表示装置全体システムの構成である。
【0023】
図2は、本実施例における情報表示装置とフロントガラスと運転者の視点位置を示す概略断面構成図である。また、図3は、本実施例における映像表示位置の概略説明図であり、運転席からフロントガラス6を見た概略図である。
【0024】
これらの図2図3に示すように、本実施例においては、ステアリング43の前面のフロントガラス6の中央部近辺の画像表示領域1(a)とフロントガラス6の下部の画像表示領域2(a)とインストルメントパネル42上の画像表示領域3(a)を有している。
【0025】
本実施例における情報表示装置は、上述したHUD装置100によりフロントガラス6の中央部近辺の画像表示領域1(a)(図2図3を参照)を反射面として観視者に虚像距離8mで40インチ以上の虚像を提供し、観視者が運転中に見ている実景に重ねることで視点移動を抑えることができる。なお、発明者は、市街地走行時の運転者の視点位置変化を計測し、虚像距離の最大値を30mとすれば視点移動を90%抑えられることを実測により求め、高速走行では虚像距離を70m以上にすれば同様に視点移動を抑えることができることを実験により求めた。この時必要な虚像の大きさは350インチ相当になる。
【0026】
以上述べたように、観視者の視点が遠方の領域には、虚像を表示するHUD装置100を用いて画像表示領域1(a)に表示し、他方、画像表示領域2(a)においては、観視者である運転者が実際に見る近景に映像を重畳するためにフロントガラス下部に特定偏波の光束をMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)素子でスキャンする投写光学装置220を用いて実像を映し出す。ここで、MEMSによる映像表示は、基本的にフォーカスフリーであるために、曲率をもつフロントガラス6への投写には有利である。
【0027】
また、映像を映し出すフロントガラス下部には、後に詳細に説明する特定の偏波に対する反射率が他方の偏波に対して異なる特性を有する部材を含有または車内のガラス面に塗布または接着または粘着することで映像光を効率よく反射させ実像を観視者に向ける。ここで、HUD装置100によるフロントガラス6上の画像表示領域1(a)の水平方向表示寸法は、フロントガラス前方の遠方に虚像として焦点を結ぶために、投写光学装置220による実像表示の水平方向表示寸法より小さくなる。
【0028】
更に、上述した画像表示領域の分割に替えて、図4に示したように、HUD装置を用いて虚像を表示する遠方の画像表示領域1(b)の一部または全部と、近景に映像を重畳する画像表示領域2(b)を重ねて表示することで、擬似的に立体表示を行うことができることを実験により実証した。より良好な表示とするために、虚像の奥行き方向の表示位置と実像の奥行き方向の表示位置を一部重ねると良好な効果が得られた。また、上述した2つの画像表示領域を重ねて表示することで表示画像の連続性が得られ視点移動がスムーズに行なわれるなど新しい効果も得られた。
【0029】
上述したフロントガラス中央部付近に映し出す虚像の表示位置、表示色、表示間隔は観視者の状態を観視する観視用カメラ210により適宜選択され、自動走行状態で制御された自動車が次に行う動作、例えば右左折、停止、加速などの情報を映像表示するだけでなく運転者の健康状態や眠気などをセンシングしこれらの情報により注意喚起の映像表示などを行う。なお、これらの情報は常に表示する必要がなく、運転者の目線の動きを観視用カメラ210で追尾し必要に応じて必要な場所に表示することが望ましい。
【0030】
<インタラクティブ機能>
発明者らは上述した情報表示装置において、例えば、視点移動を軽減し多くの情報を取得できるようにするには、空間センシング装置を併用すすることにより、複数の映像を選択または映像表示されたスイッチ部等を選択して自動車の制御や制御内容およびナビゲーション情報等の多くの表示映像を少ない視点移動で選択・変更する映像表示装置が実現できることを確認した。特に、投影した画面を見ながら対話をするような形式で操作を行うことが可能な、いわゆる、インタラクティブな機能を実現することによれば、より便利で使い勝手にも優れた情報表示装置を実現するのに有効であることを確認した。かかるインタラクティブ機能を実現するための構成について、以下に述べる。
【0031】
<空間センシング装置>
図1(A)に示す符号51は、インストルメントパネル42(画像表示領域3(a)や3(b))に対応した空間センシング装置であり、表示面に近接して配置することで複数の映像を選択または映像表示されたスイッチ部を選択し、自動車の制御や制御内容およびナビゲーション情報等の多くの表示映像を少ない視点移動で選択することが可能となる。更に、符号52および53は、当該空間センシング装置51と並列させて、ステアリング43からフロントガラス6に向かった奥行き方向の位置情報を併せて空間センシングする(図3の画像表示領域1(a)や2(a)、または、図4の画像表示領域1(b)や2(b)に対応)ことを可能にする空間センシング装置である。
【0032】
この空間センシング装置は、ここでは、例えば、特に、図3および図4の画像表示領域1(a)または1(b)に対応した空間センシング装置53をその一例として示す。そして、図5図6にも示すように、この空間センシング装置によれば、当該画像表示領域に表示された情報を見ながら運転している運転者は、運転席に着座している状態においても、その指(または、指で把持した棒状の物:障害物)を空間領域(図では、破線Aで示す)において自在に操作・移動することにより、当該画像表示領域に表示された画面上で指示手段(ポインタ)を自在に操作・移動することが可能となる。そこで、例えば、変換装置531等を介して、検出した指(障害物)の座標位置から当該指示手段(ポインタ)の位置を算出して、ポインタの位置情報として、上記のHUD装置100へ位置情報として出力する(図1または図2を参照)。
【0033】
このことによれば、運転者は、運転している状態でも、前方に表示されている画面情報を見ながら、上述の破線Aで示した空間領域において、当該画面情報の所望の位置に指等を移動することにより、当該画面情報の所望の位置に対する位置情報を入力して所望の指令を指示することが可能となる。すなわち、投影した画面を見ながら対話をするような形式で操作を行うことが可能な、いわゆる、インタラクティブな機能を実現することが可能となる。
【0034】
続いて、図7は本願発明の空間センシング装置の構成や動作の基本原理を示したものである。使用者(例えば運転者)の指が図面の左から右に移動した場合にまず、第一の光源60からの光束φ1はコンデンサ光学素子61により略平行光束とし移動する使用者の指で反射し反射光束φ3となって集光レンズ素子65により集光されて第一の受光部64に到達する。
【0035】
この時、第一の光源60の発光時間と第一の受光部64が受光した時間との時間的な差Δt1によりY軸方向の指までの距離情報を、同時に第一の光源60の発光時間と第一の受光部64と絶対的な位置座標によりX軸方向の位置情報を得る。ついで同図に示すように、使用者(例えば運転者)の指が図面の左から右に更に移動した場合にはまず、第三の光源68からの光束φ4はコンデンサ光学素子69により略平行光束となし移動する使用者の指で反射し反射光束φ6となって集光レンズ素子73により集光されて第三の受光部72に到達する。
【0036】
この時、第三の光源68の発光時間と第三の受光部72が受光した時間との時間的な差Δt2によりY軸方向の指までの距離情報を、同時に第三の光源68の発光時間と第三の受光部72と絶対的な位置座標によりX軸方向の位置情報を得る。
【0037】
次に、Z軸方向の位置情報を取得する方法について図8を用いて説明する。上記図7において説明したX軸方向およびY軸方向の位置情報をセンシングするユニット80を複数Z軸方向(ステアリング43からフロントガラス6に向かった奥行き方向)に並べて配置する(図中80,81,82と表示)。このセンシング装置51に対して使用者(例えば運転者)の指が図面の左から右に更に移動した場合にはまず、第一ユニット80の特定光源60からの光束φ8はコンデンサ光学素子61により略平行光束となし移動する使用者の指で反射し反射光束φ7となって集光レンズ素子(図示せず)によって集光されて受光部(図示せず)に到達する。この時、上述したユニットの動作により第一ユニット80を通過した時間(絶対時間T1)とXY座標が明らかになる。使用者の指が更に左から右に移動すれば第二ユニット81でも同様に、第二ユニット81を通過した時間(絶対時間T2)とXY座標が明らかになる。また、第三ユニット82の光束φ11は図8に示したように使用者の指を遮らないことから、Z軸方向の指の位置も特定できる。
【0038】
更に、本発明の実施例においては、上述した絶対時間T1と絶対時間T2の時間差と第二ユニット81のセンシング出力(XY座標と受光部で指からの反射光を得た絶対時間)から、空間軸のZ座標方向の指の移動速度と加速度を割り出すことができる。同様に第一ユニット80と第二ユニット81からのセンシング情報からも指の移動方向と加速度を算出し、単なる位置情報だけでなく使用者の意志(加速度が高ければ意志が強いなど)をシステムの情報表示の量、速度、位置などに反映できる。
【0039】
なお、上述した空間センシング装置の構成は、例えば、特表2012-518228号等に開示されている。また、市場においても「AIRBAR(登録商標:ネオノード社)」の名称で販売されており、置くだけでPCをタッチパネル化するものとしても知られるところである。この空間センシング装置は、外形が棒状であることから、狭小な車内のインストルメントパネルやダッシュボード上においても、所望の位置に容易に配置することが可能である。
【0040】
なお、上記では、主に、図3の画像表示領域1(a)または図4の画像表示領域1(b)に対応した空間センシング装置53について詳細に述べた。しかしながら、図3の画像表示領域2(a)または図4の画像表示領域2(b)、更には、図3の画像表示領域3(a)または図4の画像表示領域3(b)についても、上記と同様である。そして、これによれば、運転者は、運転している状態でも、前方に表示されている画面情報を見ながら、上述の破線Aで示した空間領域において、当該画面情報の所望の位置に指等を移動することにより、当該画面情報の所望の位置に対する位置情報を入力して指示すること、すなわち、投影した画面を見ながら対話をするような形式で操作を行う、いわゆる、インタラクティブな機能を実現することが可能となることは当業者であれば明らかであろう。
【0041】
<本実施例のその他の特徴>
乗用車のフロントガラス6は、図9に示すように、垂直方向の曲率半径Rvと水平方向の曲率半径Rhが異なり、一般には、Rh>Rvの関係にある。このため、図7に示すように、反射面としてフロントガラス6を捉えると、凹面ミラーのトロイダル面となる。このため、本実施例のHUD装置100では、凹面ミラー1の形状はフロントガラス6の形状による虚像倍率を補正するように、すなわち、フロントガラスの垂直方向と水平方向の曲率半径の違いを補正するように水平方向と垂直方向で異なる平均曲率半径とすれば良い。この時、凹面ミラー1の形状は、光軸に対称な球面または非球面(以下に式(2)で示す)形状では光軸からの距離hの関数であり、離れた場所の水平断面と垂直断面形状を個別に制御できないことから、以下に式(1)で示す自由曲面としてミラー面の光軸からの面の座標(x,y)の関数として補正することが好ましい。
【0042】
【数1】
【0043】
【数2】
【0044】
ここで、zは面を定義する軸を基準とした座標(x,y)におけるサグ量、cは面を定義する軸の原点における曲率、Kはコーニック定数、Cjは係数である。
【0045】
再び、図1に戻り、更に、映像表示装置4と凹面ミラー1の間に透過型の光学部品として、例えばレンズ素子2およびレンズ素子3を配置し、凹面ミラー1への光線の出射方向を制御することで凹面ミラー1の形状と合わせて歪曲収差の補正を行うと同時に、前述したフロントガラス6の水平方向の曲率半径と垂直方向の曲率半径の違いによって生じる非点収差を含めた虚像の収差補正を実現する。
【0046】
一方、図1および図2に示すように太陽50からの光束はフロントガラス6でS編波の殆どが反射され車内に入射する光束はP偏波が殆どとなるため、近景に映像を重畳するためにフロントガラス下部に映像を投写するにはS偏波の光束をMEMS素子に入射させスキャンする投写光学装置220を用いる。この時映像表示にはS偏光を用いる他の理由は、フロントガラス6の傾斜角度が40度以上と大きくこの反射率は図10に示すようにS偏波が高いためである。
【0047】
また、自動車のフロントガラス6は、図9に示すように水平方向の曲率半径Rhと垂直方向の曲率半径Rvが異なることと、図11に示すように観視者である運転者の位置(図11ではステアリング43の位置)が水平方向の曲率中心に対して映像の中心が異なるためである。
【0048】
これに対して、上述した投写光学装置220はレーザ光源を用いMEMSにより垂直および水平方向にスキャンすることでフロントガラス上に映像を映し出すが、図2および図3に示すフロントガラス下部の画像表示領域2(a)にはS偏波に対する反射率がP偏波に対して異なる特性を有する部材を含有または車内のガラス面に塗布または接着または粘着することで映像光を効率よく反射させ実像を観視者に向ける。具体的には図12に示すようにS波のレーザ光の可視光範囲(380nm~780nm)での反射率が特性(1)に示すように平均で10%程度のものから特性(2)に示す20%程度のものが良く、フロントガラスの室内に接した反射面で反射して観視者である運転者の方向に映像光を反射させるようにする。
【0049】
より具体的には、上述した特性を有する光学多層膜を積層したシート、または、屈折率の異なる複数のシートを積層して同様の効果を持たせても良く、フロントガラスの水平方向に対する拡散特性を垂直方向に対する拡散特性に比べて大きくするためにシート表面に凹凸形状を設けても良い。
【0050】
また、上述したシートの反射率が、紫外線領域(380nmより小)および近赤外線領域(780nmより大)で高く設定することで、車内への紫外線および近赤外線の入射を抑え、より快適な環境を実現するためである。
【0051】
以上のように、本実施例は、上述した特徴に加えて、乗り物に情報を表示する情報表示装置であって、乗り物のフロントガラスに反射させ、虚像の映像情報を表示する第1の情報表示装置と、レーザ光をMEMS素子でフロントガラスにスキャンして実像を得る第2の情報表示装置と、乗り物のインストルメントパネルを用いた第3の情報表示装置とを備え、第1の情報表示装置は、映像情報を表示する映像表示装置から出射された光をフロントガラスで反射させることで虚像を乗り物の前方に表示させる虚像光学系を備えており、第2の情報表示装置は、走査型ミラー素子でレーザ光をスキャンしてフロントガラスに実像を表示する実像光学系を備えており、第3の情報表示装置はインストルメントパネルとして直視型の映像表示装置を備え、第1の情報表示装置の映像表示位置がフロントガラスの中央付近で、第2の情報表示装置の映像表示位置がフロントガラスの下部であるように構成する。
【0052】
これにより、遠景に虚像を重ねるHUD装置と近景に重ねる実像を表示する実像表示装置およびインストルメントパネルの表示を組み合わせることで運転者の視点移動を軽減し安全運転の支援に寄与する情報表示装置を提供することが可能となる。
【0053】
更に、以下には、上述した情報表示装置の虚像光学系を有するHUD装置のより具体的な光学的な構成について説明する。
【0054】
図13は本実施例におけるHUD装置100の全体構成図である。図13において、下流側から順に、フロントガラス6を介して虚像を形成する映像光を投射する凹面(自由曲面)ミラー1、その際に発生する歪や収差を補正するための補正用のレンズ群2、映像表示装置4、バックライトを構成するバックライト光源10が設けられている。なお、7は筐体である。更に、HUD装置100の内部に侵入する太陽光のP波成分を抑制するため、その一例として、レンズ群2と映像表示装置4の間には、P波成分を抑制するための光学手段3が設けられている。
【0055】
まず、本実施例では、映像光を投射する凹面(自由曲面)ミラー1には、可視光(波長:略400~700nm)を反射すると同時に、特に、各種の波長スペクトルを含む太陽光から、情報表示装置には不要で装置にダメージを与える、例えば、赤外線(IR)や紫外線(UV)などを除去する機能を持たせることが好ましい。この時、可視光の反射率を95%以上とすると光利用効率が高い虚像光学系が実現できる。
【0056】
しかしながら、その反面、フロントガラスを透して直接凹面(自由曲面)ミラー1を見た場合に、外光が反射して眩しく見え自動車の品位の低下や、太陽光や夜間の対向車のヘッドライトなどの強い光が凹面ミラー1に反射し一部の光線が液晶パネルに戻ることでコントラスト性能など情報表示装置として得られる画像(虚像)の画質低下を招くと共に、映像表示装置4を構成する偏光板や液晶パネルにダメージを与えることになる。このため、凹面(自由曲面)ミラー1の反射率を意図的に低減し90%以下望ましくは85%以下とすることで、上述した問題点を解決できる。
【0057】
凹面(自由曲面)ミラー1の基材である凹面ミラー支持部1aは、上述した太陽光の内、反射しない波長成分の光を基材が吸収しないように透明性が高いものを選択する。プラスチック製基材であって透明度が高い基材としては、(1)日本ゼオン(株)のZEONEX、(2)ポリカーボネイト、(3)アクリル等がある。吸水率がほぼ0%で熱変形温度が高い、(1)ZEONEXが最適であるが価格が高いため、熱変形温度が同等で吸水率が0.2%程度のポリカーボネイトを工夫して使用すると良い。成形性が最も高く安価なアクリルについては吸湿率が最大であるため防湿膜と反射膜を設けることが必須となる。
【0058】
凹面(自由曲面)ミラー1の基材が吸湿するのを防止するために反射面に成膜する反射膜に併せて、反対側の面に防湿膜としてSiN(窒化シリコン)を成膜して防湿膜を設けると良い。防湿膜であるSiNは太陽光を通過させるため基材での光吸収が発生せず熱変形を押さえることができる。この結果、ポリカーボネイトやアクリルで成形された凹面(自由曲面)ミラーにおいても吸湿による形状変化を防止することができる。
【0059】
更に、ここでは図示しないが、上述したIRやUVを抑制/除去する機能を備えた凹面(自由曲面)ミラー1に加え、または、それに代えて、HUD装置100の上部に形成される開口部41に、IRやUVを除去する機能を備えた透光板を設けても良い。なお、その場合には、IRやUVの抑制機能に加え、外部の塵がHUD装置100内部に侵入することを防止することが可能となる。
【0060】
このように、上述した凹面ミラー1によれば、開口部41からHUD装置100の内部に侵入する多数のスペクトル成分を含む太陽光の内、当該HUD装置では不要な成分を除去し、主に可視光成分を選択的に取り出すことが可能となる。
【0061】
一方、HUD装置の画質を低下させる要因として、映像表示装置4から凹面ミラー1に向かって出射する映像光線が途中に配置された光学素子2の表面で反射して映像表示装置に戻り、再度反射して本来の映像光に重畳されて、画質を低下させることが知られている。このため、本実施例では、光学素子2の表面に反射防止膜を成膜して反射を抑えるだけでなく、光学素子2の映像光入射面と出射面のいずれか一方、若しくは、両方のレンズ面形状を上述した反射光が映像表示装置4の一部分に極端に集光しないような形状の制約を持たせて設計することが好ましい。
【0062】
次に、映像表示装置4として、上述した光学素子2からの反射光を吸収させるために偏光板を配置した液晶パネルとすれば、画質の低下を軽減できる。また、液晶パネルのバックライト光源10は、映像表示装置4に入射する光の入射方向を凹面ミラー1の入射瞳に効率よく入射するように制御される。更に、光源としては、製品寿命が長い固体光源を採用すると良く、更には、周囲温度の変動に対する光出力変化が少ないLED(Light Emitting Diode)として光の発散角を低減する光学手段を設けたPBS(Polarizing Beam Splitter)を用いて偏光変換を行うことが好ましい。
【0063】
液晶パネルのバックライト光源10側(光入射面)と光学素子2側(光出射面)には偏光板を配置して、映像光のコントラスト比を高めている。バックライト光源10側(光入射面)に設ける偏光板には、偏光度が高いヨウ素系のものを採用すれば、高いコントラスト比が得られる。一方、光学素子2側(光出射面)には染料系の偏光板を用いることで、外光が入射した場合や環境温度が高い場合でも、高い信頼性を得ることが可能となる。
【0064】
映像表示装置4として液晶パネルを用いる場合、特に、運転者が偏光サングラスを着用している場合には、特定の偏波が遮蔽されて映像が見えない不具合が発生する。これを防ぐために、液晶パネルの光学素子2側に配置した偏光板の光学素子側にλ/4板を配置し、特定の偏光方向に揃った映像光を円偏光に変換することが好ましい。
【0065】
更に、上述した情報表示装置の実像光学系を有する投写光学装置のより具体的な光学的な構成について説明する。
【0066】
図14は、本実施例における、レーザ光をMEMSによりスキャンして実像を得る投写光学装置220の基本構成図である。図14において、投写光学装置220は、画像信号に応じて光強度変調(以下、「変調」という)されたレーザ光を二次元方向に走査する光走査装置を搭載し、その光走査装置によりレーザ光を被照射体(例えばフロントガラス)上で走査させて画像を描画する走査型の画像表示装置である。すなわち、回動軸を有する走査ミラー91により光源部94(94a,94b)からのレーザ光を反射させることによって、レーザ光を走査させることができる。概念的には、変調された各画素201が、表示面20のレーザ光の走査軌跡202に沿って、像面上で二次元状に走査される。
【0067】
以下、本実施例における走査ミラー91での二次元状の偏向作用の詳細について説明する。
【0068】
図15は本実施例における2軸駆動のMEMS素子である走査ミラー91の概略構成図である。図において、レーザ光を反射角度で偏向する走査ミラー面91aは、同軸上に走査ミラー面91aを挟んで対向して配置された第1のトーションバネ91bに連結されている。更に、トーションバネ91bは保持部材91cに連結され、次に、保持部材91cは第2のトーションバネ91dに連結されている。第2のトーションバネ91dはフレーム91eに連結されている。そして、それぞれのトーションバネ91bと91dに関して略対称な位置に、図示しないが永久磁石とコイルを配置している。コイルは走査ミラー91の走査ミラー面91aに略平行に形成されており、走査ミラー91の走査ミラー面91aが静止した状態にある時に、走査ミラー面91aと略平行な磁界を生じさせる。コイルに電流を流すと、フレミングの左手の法則によって、走査ミラー面91aと略垂直なローレンツ力が発生する。
【0069】
走査ミラー面91aは、ローレンツ力と、トーションバネ91bと91dの復元力がつりあう位置まで回動する。トーションバネ91bに対しては、走査ミラー面91aが持つ共振周波数でコイルに交流電流を供給することによって、走査ミラー面91aは共振動作を行う。同様に、トーションバネ91dに対しては、走査ミラー面91aと保持部材91cを合わせた共振周波数でコイルに交流電流を供給することによって、走査ミラー面91aとトーションバネ91bと保持部材91cは共振動作を行う。これによって、2方向について、異なる共振周波数による共振動作を可能としている。
【0070】
図16において、光走査部の反射面である走査ミラー91の回動角をβ/2とすれば、反射光線の角度である走査角はその2倍でβ変化する。ここで、走査ミラー91と像面20の間になんら光学要素を配置しない場合は、走査角βは像面20での入射角αに等しくなる。従って、ある投射距離に対する走査像の大きさは走査ミラー91の回動角β/2で決まってしまう。このため、短い距離で大画面を得るために、本実施例においては、図14に示す走査ミラー91から投写面であるフロントガラスまでの間に光学系(凹レンズまたは凸面鏡)を設ける(図示せず)ことで上述した振幅を大きくする。
【0071】
本実施例では観視者が観る近景に映像を重ねるために観視者から映像までの距離が短いため、垂直方向に対して水平方向の映像表示領域を大きくとる必要がある。そこで、発明者等は観視者である運転者とフロントガラス下部までの距離を1.2mで固定し映像表示幅の最適値を実測により求めた。運転する自動車が左右に曲がることをステアリングの回転角度に併せて矢印で表示するためには水平方向の表示範囲を30インチ以上とする必要があり、40インチを超える表示ができれば更に良好な映像表示が可能であることが判った。
【0072】
一方、垂直方向の表示は10インチあれば明確な表示が可能であることを見出した。更に表示の視認性を上げるには20インチ程度まで表示範囲を拡大する必要があるが、MEMSの駆動では垂直方向の振幅を大きくすると水平方向の振幅を小さくする必要があり上限を15インチとすれば実用上十分な映像が得られることを確認した。
【0073】
次に、本実施例における像面上を走査するレーザ光の第1の走査状態について説明する。
【0074】
図17は、本実施例における光走査部からのレーザ光の第1の走査状態を示す。上述したように、本実施例における光走査部のスキャンの範囲(振幅)は水平方向の振幅角度を垂直方向の振幅角度に対して2倍以上とし水平方向の映像表示範囲を垂直方向に対して大きくする。フロントガラス上でのレーザ光のサイズを一画素とし水平方向にレーザ光301を左から右方向にスキャンし、一画素分下がって右から左に向かってスキャンする。302は第1の走査部の走査軌跡である。画像が切り替わるフレームレートは、自動車の走行速度が40km/時の場合は1/60Hzで良いが、走行速度が100km/時ではフレームレートを1/120Hzとすることで自動車の走行速度に応じて表示画像の書き換え速度を速めて最適表示を可能にした。
【0075】
この時、本実施例における光走査部は式(3)に示すようにフレーム周波数Fと水平偏向周波数fhと垂直偏向周波数fvの積はほぼ一定値Aとなる。このため、図1に示した運転支援ECU62からの自動車の走行速度情報によりフレームレートを変更し、式(3)により水平の偏向周波数を小さくすると同時に偏向角度も比例して小さくする。
【0076】
【数3】
【0077】
この結果、映像表範囲として映像表示である水平方向サイズが小さくなるが走行速度が高くなると運転者の視野が狭くなるため、使用に際しては違和感のない情報表示装置を得ることができる。
【0078】
本実施例における第1の走査状態では図18に示す3色(赤色(635nm),緑色(532nm),青色(460nm))の単色レーザ光を用いた。これらを組み合わせて得られる単色の光および合成した場合の色度を図19に示す色度図上の座標に変換した結果を図20に示すが、単色の色純度がそれぞれ優れているために、NTSC方式の表示色範囲をカバーしながら十分な明るさが得られた。
【0079】
更に、それぞれ単色の発光時に他の色光を混ぜること、例えば、青色レーザ光を100%発光させた時、緑色光を最大発光に対して10%発光させ同時に赤色光を最大発光に対して5%発光させると混色光は青色相当色で明るさは2倍以上となった。以上述べたように、本願方式の走査部ではレーザ単色光ではなく他色レーザ光を混色させることで擬似的な単色光の明るさを更に向上できることも見出した。
【0080】
次に、本実施例における像面上を走査するレーザ光の第2の走査状態について説明する。
【0081】
図21は、本実施例における光走査部からのレーザ光の第2の走査状態を示す。第1の走査状態との違いは光走査部を複数、すなわち、図21では第1の走査部と第2の走査部の2個、としている点である。第1の走査部によるスキャンの範囲(振幅)は水平方向の振幅角度を垂直方向の振幅角度に対して2倍以上とし水平方向の映像表示範囲を垂直方向に対して大きくする。フロントガラス上でのレーザ光301のサイズを一画素とし水平方向にビームをスキャン、すなわち、図21の実線で示す軌跡で左から右方向へスキャンし、一画素分下がって右から左に向かってスキャンする。302は第1の走査部の走査軌跡である。
【0082】
一方、第2の走査部によるスキャンの範囲(振幅)は第1の走査部と同様に水平方向の振幅角度を垂直方向の振幅角度に対して2倍以上とし水平方向の映像表示範囲を垂直方向に対して大きくする。フロントガラス上でのレーザ光303のサイズを一画素とし水平方向にビームをスキャン、すなわち、図21の破線で示す軌跡で右から左方向へスキャンし、一画素分下がって左から右に向かってスキャンする。なお、図21ではレーザ光303が最下段の最終画素に来た状態を示している。また、第2の走査部によるスキャンは上から下方向でも良いし、下から上方向でも良い。304は第2の走査部の走査軌跡である。この時、第1の走査部が表示するフレーム画像の次のフレームの表示をほぼ1/2フレーム分ずらして次のフレームの映像を表示する。
【0083】
この結果、擬似的にフレームレートを2倍にできることを確認した。更に、第2の走査状態での第1の走査部では図22に示す3色の、赤色(635nm),緑色(532nm),青色(460nm)の単色レーザ光を用いた。また第2の走査部では図22に示す3色の、赤色(645nm),緑色(515nm),青色(450nm)の単色レーザ光を用いることでスペックルも低減でき、これらを組み合わせて得られる単色の光および合成した場合の色度は図23に示すように、2つの走査部を構成するレーザ光源の単色の色純度がそれぞれ優れているために、NTSC方式の表示色範囲をカバーしながら十分な明るさが得られた。
【0084】
更に第1の走査部(以降(1)と記載)、第2の走査部(以降(2)と記載する)それぞれ単色の発光時に他の色光を混ぜること、例えば、2走査部の青色レーザ光(1)および(2)を100%発光させた時、緑色光(1)を最大発光に対して5%発光させ同時に緑色光(2)を最大発光に対して10%発光させ、赤色光(1)を最大発光に対して5%発光させると混色光は青色相当色で明るさは2倍以上となった。
【0085】
以上述べたように、本実施例によれば、複数の走査部を重ねて用いてもレーザ単色光ではなく他色レーザ光を混色させることで擬似的な単色光の明るさを更に向上できることも見出した。本実施例では2つの走査部を同時に使用した場合の効果について述べたが、3つ以上の走査部を同時に使用すれば、擬似的にフレームレートを速めることができることは言うまでもなく、異なる波長のレーザ光をそれぞれの走査部に用いて重ねることでスペックルノイズの大幅な軽減もできる。明るさについても上述したように単色の色度を損なうことなく向上できる。
【0086】
続いて、上述した情報表示装置のインストルメントパネルによる表示のより具体的な構成について説明する。
【0087】
図1に示すインストルメントパネル42はステアリング43の内径部分に配置されるため、その表示される映像は、観視者である運転者からの視点移動が最も大きくなる。このため、自動車が自動運転モードによる自動運転中以外は緊急度の低い情報を表示する。運転者の視点を、前述した観視用カメラ210でセンシングし、表示映像を変更すると多くの映像情報を有効に運転者に表示できる。
【0088】
インストルメントパネルとしては装置の薄型化のために液晶パネルを使用する。自動車の内装デザインを重視して曲面形状とすると良い。また、表示速度をフレームレート(60Hz)の2倍の120Hzまたは4倍の240Hzとして表示内容の切り替えを高速で行うことで、車外の観視カメラからの映像情報をリアルタイムに表示可能となる。
【0089】
以上述べた情報表示装置は、図3に示すような3種類の情報表示位置として、画像表示領域1(a),画像表示領域2(a)、画像表示領域3(a)を有する。これに対して、観視者である運転者の視点移動を観視するセンサとして、例えば図1図2で示した観視用カメラ210を用い、観視者の視点移動の情報と自動車の速度に対応して、3種類の情報表示位置に表示されるそれぞれの映像表示を最適な位置、時間、表示内容として組み合わせて表示することで安全運転支援に有効な情報表示装置を提供することができる。例えば、旋回時の観視者の視点移動に応じて、情報表示位置を旋回方向に変更する等の制御を行う。
【0090】
また、上述した3つの情報表示位置は、ステアリングの回転中心軸を含む直線近傍を表示の中心とすることで、観視者である運転者の水平方向の視点移動が左右均等になるため運転時の疲労を抑える効果と視点移動を最小にする効果がある。
【0091】
以上、本発明の種々の実施例になる情報表示装置について述べた。しかしながら、本発明は、上述した実施例のみに限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するためにシステム全体を詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0092】
1…凹面ミラー、1a…凹面ミラー支持部、2、3…光学素子(レンズ)、4…映像表示装置、6…被投影部材(フロントガラス)、8…アイボックス(観察者の眼)、10…バックライト光源、20…表示面、41…開口部、42…インストルメントパネル、43…ステアリング、44…フロントカバー、45…車体、50…太陽、51、52、53…空間センシング装置、531…変換装置、60…光源、61…コンデンサ光学素子、65…集光レンズ素子、64…受光部、80…センシングユニット、91…走査ミラー、100…HUD装置、101…自動車、201…画素、202…レーザ光の走査軌跡、210…観視用カメラ、220…投写光学装置、301…第1の走査部のレーザ光、302…第1の走査部の走査軌跡、303…第2の走査部のレーザ光、304…第2の走査部の走査軌跡、1(a)、2(a)、3(a)、1(b)、2(b)、3(b)…画像表示領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23