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特許7360451鋳造用鋳型及び中子の製造に使用するための粒子状耐火組成物の製造方法、対応する使用、並びに熱処理用の再生混合物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-03
(45)【発行日】2023-10-12
(54)【発明の名称】鋳造用鋳型及び中子の製造に使用するための粒子状耐火組成物の製造方法、対応する使用、並びに熱処理用の再生混合物
(51)【国際特許分類】
   B22C 1/18 20060101AFI20231004BHJP
   C01B 33/40 20060101ALI20231004BHJP
   B22C 5/04 20060101ALI20231004BHJP
【FI】
B22C1/18 B
C01B33/40
B22C5/04 A
B22C5/04 D
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021512440
(86)(22)【出願日】2019-09-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-27
(86)【国際出願番号】 EP2019073896
(87)【国際公開番号】W WO2020049174
(87)【国際公開日】2020-03-12
【審査請求日】2022-09-05
(31)【優先権主張番号】18193306.0
(32)【優先日】2018-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591194322
【氏名又は名称】ヒュッテネス-アルベルトゥス ヒェーミッシェ ヴェルケ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【住所又は居所原語表記】Wiesenstrasse 23,D-40549 Duesseldorf,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100183379
【弁理士】
【氏名又は名称】藤代 昌彦
(72)【発明者】
【氏名】リー シン
(72)【発明者】
【氏名】ルースティヒ クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ライノルト ミルコ
(72)【発明者】
【氏名】シュヴァイネフース マリア
(72)【発明者】
【氏名】エゲラー ニコラス
【審査官】池ノ谷 秀行
(56)【参考文献】
【文献】特表平08-509916(JP,A)
【文献】特表2007-537044(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02359957(EP,A1)
【文献】国際公開第2018/097178(WO,A1)
【文献】特表2010-519042(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102007045649(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22C 1/00-9/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐火材料と水ガラスを含む粘結剤とから形成される使用済みの鋳造用鋳型又は中子からの鋳造用鋳型及び中子の製造に使用するための粒子状耐火組成物の製造方法であって:
- 使用済みの鋳造用鋳型若しくは中子から破砕材料を提供するステップ、又は使用済みの鋳造用鋳型若しくは中子から破砕材料を製造するステップであって、前記破砕材料が、その表面上に硬化水ガラス粘結剤を有する耐火材料の粒子及び/又は粒子凝集体を含む、ステップと、
- 前記破砕材料を、粒子状非晶質酸化物の総量を基準として85重量%以上の量の二酸化ケイ素を含む粒子状非晶質酸化物と混合して混合物を得るステップと、
- 前記混合物を400℃以上の温度で加熱処理するステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記加熱処理が、400~750℃の範囲内温度で行われるかは流動床又は熱砂再生ユニット中で行われ、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記破砕材料が、その表面上に硬化水ガラス粘結剤を有する耐火材料の粒子及び/又は粒子凝集体を含む、使用済みの鋳造用鋳型又は中子から破砕材料を製造する前記ステップが、材料が破砕されるような、耐火材料と水ガラスを含む粘結剤とを含む使用済みの鋳造用鋳型又は中子からの材料の機械的処理を含、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
- 前記破砕材料を前記粒子状非晶質酸化物と混合する前記ステップが、液相の存在下行われるか

- 前記破砕材料を前記粒子状非晶質酸化物と混合する前記ステップにおいて、前記破砕材料が、液相中の前記粒子状非晶質酸化物の懸濁液と混合され
請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記破砕材料が、
- フィロケイ酸塩と、
- 懸濁化剤
- 湿潤剤と、
- 分散剤と、
- 沈降防止剤と、
- 染料と、
- 顔料と、
- 殺生物剤
- ゼオライトと、
- 水酸化アルミニウムと、
からなる群から選択される1つ以上の材料とも同時に又は連続して混合される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
粒子状非晶質酸化物の総量を基準として85重量%以上の量の二酸化ケイ素を含む前記粒子状非晶質酸化物が、
リカフュームと、
- 非晶質シリカと、
- 沈降ケイ酸と、
- 焼成ケイ酸と、
- シリカ溶融物の霧化、及び引き続く固化によって得られたシリカと、
からなる群から選択されるもう1つの物質を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
使用済みの鋳造用鋳型若しくは中子から破砕材料を製造するステップの前に:
- 耐火材料と、水ガラスを含む粘結剤と、粒子状非晶質二酸化ケイ素とを含む成形用混合物を製造するステップと、
- 前記成形用混合物を成形するステップと、
- 前記成形用混合物を硬化させて、硬化した鋳造用鋳型又は中子を得るステップと、
- 前記硬化した鋳造用鋳型又は中子を金属鋳造プロセスに使用して、使用済みの鋳造用鋳型又は中子を得るステップと、
さらに含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法
【請求項8】
前記粘結剤が、
ン含有化合物と、
- 炭水化物と、
- 界面活性剤
- 硫酸バリウムと、
化ホウ素化合物と、
からなる群から選択される1つ以上の化合物をさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
粒子状非晶質酸化物の総量を基準として85重量%以上の量の二酸化ケイ素を含む粒子状非晶質酸化物の総量が、
- 破砕材料の全重量を基準として、0.01~3.0重量%の範囲内るか

- 前記破砕材料中の耐火材料の前記粒子及び/又は前記粒子凝集体の表面上の硬化水ガラス粘結剤の全重量を基準として、10~60重量%の範囲内ある、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
粒子状非晶質酸化物の総量を基準として85重量%以上の量の二酸化ケイ素を含む前記粒子状非晶質酸化物が、100μm未満90を有するか

前記破砕材料の粒度が、100~600μmの範囲内るか

粒子状非晶質酸化物の総量を基準として85重量%以上の量の二酸化ケイ素を含む前記粒子状非晶質酸化物のD90と、前記破砕材料中の耐火材料の粒子及び/又は粒子凝集体のサイズとの比が、1:1未満ある、
請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
- 使用済みの鋳造用鋳型若しくは中子から破砕材料を提供するステップ、又は使用済みの鋳造用鋳型若しくは中子から破砕材料を製造するステップであって、前記破砕材料が、その表面上に硬化水ガラス粘結剤を有する耐火材料の粒子及び/又は粒子凝集体を含む、ステップと、
- 前記破砕材料を、粒子状非晶質酸化物の総量を基準として85重量%以上の量の二酸化ケイ素を含む粒子状非晶質酸化物と、水性液相の存在下で混合して混合物を得るステップと、
- 前記混合物に対して、400~750℃の範囲内温度で加熱処理を行うステップであって、前記加熱処理が流動床中で行われるステップと、
を含む、火材料と水ガラスを含む粘結剤とから形成される使用済みの鋳造用鋳型又は中子からの鋳造用鋳型及び中子の製造に使用するための粒子状耐火組成物の製造方法。
【請求項12】
粒子状耐火組成物の製造における使用のための混合物であって、
(i)使用済みの鋳造用鋳型又は中子からの破砕材料であって、その表面上に硬化水ガラス粘結剤を有する耐火材料の粒子及び/又は粒子凝集体を含む、破砕材料と、
(ii)水性懸濁液であって、
- 液相の総量を基準として80重量%以上の量の水を含む水性液相と、
- 粒子状非晶質酸化物の総量を基準として85重量%以上の量の二酸化ケイ素を含む粒子状非晶質酸化物と
を含む水性懸濁液と、
を含む、混合物。
【請求項13】
- 液相の総量を基準として80重量%以上の量の水を含む水性液相と、
- 粒子状非晶質酸化物の総量を基準として85重量%以上の量の二酸化ケイ素を含む粒子状非晶質酸化物と
含む水性懸濁液の、請求項12に記載の混合物の構成要素としての使用。
【請求項14】
鋳造用鋳型又は中子の製造方法であって:
- 請求項1~11のいずれか一項に記載の方法により粒子状耐火組成物を製造するステップと、
- 前記粒子状耐火組成物を粘結剤混合するステップと、
- 得られた混合物を成形するステップと、
- 前記成形された混合物中の前記粘結剤を硬化させるステップと、
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋳造用鋳型及び中子の製造に使用するための粒子状耐火組成物の製造方法、対応する使用、並びに熱処理用の再生混合物に関する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0002】
特に、第1の態様によると、本発明は、鋳造用鋳型及び中子の製造への使用に適切な粒子状耐火組成物(以降、実際に典型的に使用される用語では「砂」とも呼ばれる)の独自の製造方法であって、粒子状耐火組成物が、耐火材料と水ガラスを含む粘結剤(binder)とから形成される使用済みの鋳造用鋳型又は中子から製造される、製造方法に関する。さらに特に、本発明は、耐火材料と水ガラスを含む粘結剤とから形成される使用済みの鋳造用鋳型及び中子からの鋳物砂の再生による、粒子状耐火組成物(すなわち砂、上記を参照されたい)の製造方法に関する。
【0003】
第2の態様によると、本発明は、
- 液相の総量を基準として80重量%以上の量の水を含む水性液相と、
- 粒子状非晶質酸化物の総量を基準として85重量%以上の量の二酸化ケイ素を含む粒子状非晶質酸化物(定義については以下を参照されたい)とを、
使用済みの鋳造用鋳型又は中子から得られる独自の破砕材料を含む再生混合物の構成要素として含む、水性懸濁液の使用に関する。
【0004】
第3の態様によると、本発明は、熱処理用の独自の再生混合物であって、
(i)使用済みの鋳造用鋳型又は中子から得られる破砕材料であって、表面上に硬化水ガラス粘結剤を有する耐火材料の粒子及び/又は粒子凝集体を含む、破砕材料と、
(ii)以下にさらに明記され、特に本発明の第2の態様と関連してさらに明記されるような水性懸濁液と、
を含む、再生混合物に関する。
【0005】
第4の態様によると、本発明は、鋳造用鋳型又は中子の独自の製造方法であって、本発明の方法により製造され、前述の第1の態様、及び以下の説明が参照される粒子状耐火組成物が使用される、製造方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0006】
使用済みの鋳造用鋳型及び中子から得られる破砕材料は、本発明の態様に使用される材料である。多くの場合、これは、
1.アルカリ無機粘結剤(例えば(i)無機酸化物と併用される変性ケイ酸塩、又は(ii)二酸化ケイ素とアルカリ金属酸化物とを規定された比率で含む水ガラス粘結剤)を用いて鋳物砂(粒子状耐火組成物)を結合させるステップと、
2.無機粘結剤をそれ自体知られている方法で硬化させるステップと、及び
3.上記鋳型又は中子を使用後に破砕するステップ、すなわち使用済みの鋳造用鋳型又は中子を破砕するステップと、
によって製造される材料である。
【0007】
他の製造方法も知られており、それらは共通の一般知識に属する。
【0008】
鋳造用鋳型又は中子を製造するためのアルカリ無機粘結剤(例えば水ガラスを含む粘結剤)の使用は長年にわたって知られている。アルカリ無機粘結剤の使用の典型的な例は、液体粘結剤(パートI)及び/又は添加剤(パートII)をホットコアボックス(hot core box)中で硬化させるホットコアボックス硬化法である。アルカリ無機粘結剤が使用される場合、熱空気でガス処理することによって(又は追加で)硬化を行うこともできる。別の方法では、鋳造用鋳型又は中子は、二酸化炭素でガス処理することによって、又はエステルを加えることによって硬化させる。アルカリ無機粘結剤は、アルカリ性条件下、規定されたSiO2:M2O(ここでM=Na、K、及び/又はLiである)比(モジュラスとも呼ばれる)で、水ガラスをアルカリ(ナトリウム、カリウム及び/又はリチウム)で改質することによって通常は調製される。
【0009】
鋳造用鋳型及び中子を製造するために知られている、水ガラスを含む幾つかのアルカリ無機粘結剤系が存在する。鋳造プロセスに使用される場合、このような鋳造用鋳型及び中子から、最終的には(それぞれの鋳造用鋳型又は中子が使用された後に)破砕材料が得られ、これは本発明の目的に適切な出発物質である。(新しい)鋳造用鋳型及び中子の製造への再利用に適切となる前に、破砕材料から、その表面上に残留する硬化水ガラスを除去すべきであるので、表面上に硬化水ガラス粘結剤を有する耐火材料の粒子及び/又は粒子凝集体を含む、使用済みの鋳造用鋳型又は中子から得られる破砕材料は、本発明の方法の出発物質として機能する。
【0010】
水ガラス粘結剤系を用いることによって製造された鋳造用鋳型及び中子は、上記混合物中で大きなアルカリ性を示すという共通点がある。水ガラス粘結剤系の利点は、鋳造用鋳型又は中子の製造中、及び/又はそれぞれの鋳造用鋳型又は中子を用いた鋳造プロセス中に、BTX(BTX=ベンゼン、トルエン、及びキシレン異性体の混合物)を放出しないこと、及び煙を発生しないことのような技術的利点である。欠点は、水ガラス粘結剤系に多量のアルカリ金属水酸化物及び/又はアルカリ金属酸化物が補われることである。この高いアルカリ性(多量のアルカリ金属水酸化物及び/又はアルカリ金属酸化物によって生じる)は、主として、鋳造後に、硬化水ガラス粘結剤の形態、特にアルカリ金属の酸化物及び水酸化物の形態で、使用済みの鋳物砂中に残留する。従来の再生方法(例えば機械的磨砕又は熱処理)では、残留する硬化水ガラス粘結剤又はアルカリ性が上記使用済み鋳物砂から十分に除去されない。
【0011】
残留する硬化水ガラス粘結剤(すなわち可溶性アルカリ成分)を除去するための砂の洗浄は、砂を清浄にするための理想的な解決策である。しかし、このような洗浄方法は、大量の汚染廃水と、砂の乾燥のための高いエネルギーコストとが生じるので実際的ではない。
【0012】
コールドボックス硬化法に使用される溶媒を含有しアミン硬化するウレタン粘結剤系と比較すると環境に優しいので、最近では、鋳造用鋳型又は中子を製造するためのアルカリ水ガラス粘結剤系の使用に対する関心が高まっている。
【0013】
結果として、鋳造後の水ガラスが結合した鋳造用鋳型及び/又は中子からの鋳物砂(鋳造用鋳型及び中子の製造に使用するための粒子状耐火組成物)のリサイクル/再生に対する要求が高まっている。環境的及び商業的理由で、廃棄に対するコストを削減するために、できるだけ多くの鋳物砂を再生及び再利用し、多量のアルカリ性を除去することが望ましい。
【0014】
砂再生の周知の従来方法の1つは、主として機械的な再生であり、破砕材料を得るために、使用済みの鋳造用鋳型又は中子から結合した砂を磨砕することを含む。
【0015】
磨砕後に得られる再生(水ガラスが結合した)砂を使用する場合、硬化水ガラス粘結剤はその表面上に残留し、結果として、新しい砂、又は他の非アルカリ若しくは有機粘結剤系から再生された砂と比較すると、酸消費量及び導電率値は一般にはるかに大きい。さらに、(新しい)水ガラス粘結剤と磨砕後に得られる再生水ガラス結合砂とを含む混合物の可使時間(すなわち、結合反応に必要なすべての成分がミキサー中で均質化される時間から求められる、性能が大きく低下することなく、鋳物砂を依然として成形できる時間)は、(新しい)水ガラス粘結剤と、新しい砂、又は他の(特に、非アルカリ及び/又は有機粘結剤)系から再生された砂とを含む混合物の可使時間よりもはるかに短い。結果として、磨砕後に得られ、(再び)水ガラスを粘結剤として含む再生水ガラス結合砂に基づく鋳造用鋳型又は中子は、製造にはより不便であり、(使用される再生水ガラス結合砂の表面上の硬化水ガラス粘結剤の量によるが)新しい砂を用いて得られる鋳造用鋳型又は中子の強度よりもはるかに低い強度を有する。さらに、多くの場合、(磨砕後に得られる再生水ガラス結合砂から製造された鋳造用鋳型又は中子を用いて製造される)鋳物の表面品質も、新しい砂から製造された鋳造用鋳型又は中子を使用する場合よりも悪くなる。さらに、磨砕後に得られる再生水ガラス結合砂に基づく鋳造用中子は、典型的には、圧縮が困難であるため、同じ設計であるが新しい砂から製造された鋳造用中子の中子重量よりも中子重量が軽くなる。さらに、磨砕後に得られる再生水ガラス結合砂に基づく鋳造用鋳型及び中子の耐湿性は、新しい砂から得られた鋳造用鋳型又は中子の耐湿性よりも典型的には低くなる。
【0016】
従来の磨砕方法では、典型的には、水ガラス結合砂の場合でわずか70~85%の再生率を得ることができ、実際には、許容できる性能レベルを維持するために、新しい砂(又は別の方法で再生された水ガラス結合砂、又は別の粘結剤系、例えば非アルカリ若しくは有機粘結剤系に最初に曝露した、機械的に再生された砂)を多量に加える必要がある。
【0017】
したがって、磨砕によって従来通り再生された、水ガラスが結合した使用済みの鋳造用鋳型又は中子は、それらの表面上の硬化水ガラス粘結剤の残留量のために、限定された適用性を示す。
【0018】
上記のような悪影響を回避又は軽減するために、多くの場合、水ガラスが結合した使用済み鋳物砂の機械的磨砕後に、さらなる再生方法が使用される。砂の再生のさらなるステップは、機械的磨砕後に加熱処理を含み得る。この限りにおいて、周知の技術の1つは、流動床中の砂を400℃を超えるまで加熱することである(さらなる詳細は本明細書において後述される)。しかし、特にアルカリ粘結剤(例えば水ガラス粘結剤として)の場合、おそらくは高含有量のアルカリ性のため、加熱処理は、砂粒の凝集を引き起こして、流動床の適切な機能を妨げる場合があることが分かった。この悪影響は、場合により、流動床のフリッティング又は焼結と記載される。このフリッティング/焼結プロセスは、温度上昇下での粒子状粉末状物質(例えば砂粒)の溶融又は凝集を意味する固化した物体の形成が結果として起こる物理化学的プロセスである。本発明の状況では、このフリッティング/焼結プロセスは望ましくなく、回避すべきである。
【0019】
水ガラスで汚染された鋳物砂の熱処理は、最先端技術で知られている。この点において、独国特許出願公開第10 2007 008 149 A1号明細書には、水ガラスが付着した使用済み鋳物砂の再生方法であって、鋳物砂に付着した水ガラスをベースとする粘結剤を含む使用済み鋳物砂が提供され;使用済み鋳物砂に対して熱処理が行われ、使用済み鋳物砂が少なくとも200℃の温度に加熱される、方法が開示されている。
【0020】
フリッティング/焼結の防止、又は熱的及び/又は機械的に再生された砂の品質の他の方法での改善を意図した種々の添加剤の添加を開示する多数の特許が知られている。欧州特許出願公開第2 191 908 A1号明細書には、砂の改善された機械的再生のための添加剤としてのシリコン油の使用が開示されている。自身の実験によると、この添加剤はアルカリ性を除去せず、したがって理想的ではない。
【0021】
欧州特許第0 949 978 B1号明細書には、砂粒の溶融を防止するために加熱処理前に加えられる添加剤としての炭水化物の使用が開示されている。しかし、自身の実験においてこの方法は、カリウムは除去されないか非常にわずかのみ除去され、再生された砂のカリウム含有量は、徹底的な再利用には高すぎ、したがって再結合強度及び耐火性が低下するので、うまくいかないことが分かった。さらに、自身の実験では、欧州特許第0 949 978 B1号明細書による処理を行うと、悪臭の発生が確認された。
【0022】
国際公開第94/05448号パンフレットには、カリウム化合物と反応して少なくとも550℃、好ましくは700℃を超える融点を有する塩を形成する、ハロゲン酸、硫酸、ホウ酸、及びこれらの酸のアンモニウム塩のような添加剤の使用が開示されている。自身の実験におけるこの方法の容認できない欠点は、処理プラントにおいて高度の腐食が確認されたことであった。
【0023】
国際公開94/26439 A1号パンフレットには、加熱処理の前に加えられる粒子状活性粘土添加剤の使用が開示されている。これには、再生した砂を用いて得られる強度レベルが改善され、再生プロセス後に溶出可能なアルカリレベルが大きく減少することが開示されている。しかし、自身の実験において、この添加剤を用いると、強度レベルが、再生サイクルごとに低下し、中子又は鋳型を確実に製造するためには低すぎることが分かった。さらに、欧州特許第1 753 560 B1号明細書には、国際公開第94/26439 A1号パンフレットの方法では、非常に微細な粘土粒子が処理された砂とともに維持され、その結果としてカリウム(又は他のアルカリ)の除去が不十分になるという欠点があることが開示されている。
【0024】
さらに、鋳造用鋳型及び中子の製造のための再生された砂の使用を開示する特許が知られている。この点において、欧州特許出願公開第2 359 957 A1号明細書には、鋳造用鋳型及び中子の製造のための鋳造用鋳型組成物であって、砂と、粘結剤と、シリカフューム及び/又はシリカフューム代替品とを含み、砂が、アルカリ粘結剤残留物を含む再生砂を含む、鋳造用鋳型組成物が開示されている。
【0025】
さらなる関連文献は、国際公開第2013/026579 A1号パンフレット、独国特許出願公開第102012020509 A1号明細書、独国特許出願公開第102012020510 A1号明細書、独国特許出願公開第102012020511 A1号明細書、米国特許出願公開第2018/0056374 A1号明細書、独国特許出願公開第102006061876 A1号明細書、独国特許出願公開第102007051850 A1号明細書、独国特許出願公開第102012104934 A1号明細書、独国特許出願公開第102013111626 A1号明細書、米国特許出願公開第2010/0173767 A1号明細書、欧州特許第1802409 B1号明細書、欧州特許第2 692 460 B1号明細書、国際公開第2014/019726 A1号パンフレット、英国特許出願公開第809,283 A号明細書、及び米国特許第4,008,856 A号明細書である。
【0026】
本発明の主要な目的は、耐火材料と水ガラスを含む粘結剤とから形成された使用済みの鋳造用鋳型又は中子からの鋳造用鋳型及び中子の製造に使用するための粒子状耐火組成物の代替の又は改善された製造方法を提供することである。この方法は、好ましくは、前述の従来技術の方法に関連する少なくとも一部の問題又は欠点の回避又は少なくとも軽減に寄与すべきである。特に、この方法は、処理される粒子及び/又は粒子凝集体の表面からの硬化水ガラス粘結剤の除去又は変換に寄与すべき又はそれらを可能にするべきであり、それによってこのような硬化水ガラスによって生じる悪影響が軽減又は回避される。
【0027】
本発明によると、主要な目的は、(A)耐火材料と水ガラスを含む粘結剤とから形成される使用済みの鋳造用鋳型又は中子からの鋳造用鋳型及び中子の製造に使用するための粒子状耐火組成物の製造方法であって:
- 使用済みの鋳造用鋳型若しくは中子から破砕材料を提供するステップ、又は使用済みの鋳造用鋳型若しくは中子から破砕材料を製造するステップであって、破砕材料が、表面上に硬化水ガラス粘結剤を有する耐火材料の粒子及び/又は粒子凝集体を含む、ステップと、
- 破砕材料を、粒子状非晶質酸化物の総量を基準として85重量%以上の量の二酸化ケイ素を含む粒子状非晶質酸化物と混合して混合物を得るステップと、
- 混合物を400℃以上の温度で加熱処理するステップと、
を含む方法によって達成される。
【0028】
典型的には、結果として得られる生成物(加熱処理された混合物)は、次に、さらなるステップ(詳細については以下を参照されたい)において、上記鋳造用鋳型又は中子をそれぞれ製造するための粒子状耐火組成物として使用される。
【0029】
本発明によると、主要な目的は、(B)使用済みの鋳造用鋳型又は中子から得られる破砕材料の表面を清浄にする方法であって、破砕材料が、表面上に硬化水ガラス粘結剤を有する耐火材料の粒子及び/又は粒子凝集体を含むことにより達成され、方法は、以下のステップ:
- 使用済みの鋳造用鋳型若しくは中子から破砕材料を提供するステップ、又は使用済みの鋳造用鋳型若しくは中子から破砕材料を製造するステップであって、破砕材料が、表面上に硬化水ガラス粘結剤を有する耐火材料の粒子及び/又は粒子凝集体を含むステップと、
- 破砕材料を、粒子状非晶質酸化物の総量を基準として85重量%以上の量の二酸化ケイ素を含む粒子状非晶質酸化物と混合して混合物を得るステップと、
- 混合物を400℃以上の温度で加熱処理するステップと、
を含む方法によっても達成される。
【0030】
典型的には、結果として得られる生成物(すなわち清浄な表面を有する加熱処理された破砕材料を含む生成物)は、次に、さらなるステップ(詳細については以下を参照されたい)において、新しい鋳造用鋳型又は中子をそれぞれ製造するための粒子状耐火組成物として使用される。
【0031】
以下では、(A)耐火材料と水ガラスを含む粘結剤とから形成される使用済みの鋳造用鋳型又は中子からの鋳造用鋳型及び中子の製造に使用するための粒子状耐火組成物を製造する本発明の方法、に関して行われる表現は、(B)使用済みの鋳造用鋳型又は中子から得られる破砕材料の表面を清浄にする本発明の方法にも関連し、逆の場合も同様である。
【0032】
本発明の範囲内で、「水ガラス」は、溶融物から固化され、ガラス質、すなわち非晶質で、水溶性のケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、及びケイ酸リチウム、又は前述のケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、及びケイ酸リチウムの水溶液(=水ガラスの水性形態)を含む、それ自体が周知であるアルカリ水ガラスを意味するものと理解されたい。
【0033】
「粒子凝集体」は、(一次)「粒子」の溶融又は焼結した集団として理解される。本発明の状況では、粒子凝集体は、典型的には、鋳造プロセスから得られる、又は耐火材料と水ガラスを含む粘結剤とから形成される使用済みの鋳造用鋳型又は中子に対して、本発明による方法の出発物質としてそれらが使用される前に、典型的には行われる(高温で行われる)プロセスから得られる。使用済みの鋳造用鋳型又は中子から破砕材料の製造過程中、第1のステップにおいて、表面上に硬化水ガラス粘結剤を有する耐火材料の粒子凝集体を形成し、次にこれを(部分的又は完全に)表面上に硬化水ガラス粘結剤を有する耐火材料の(個別の一次)粒子にさらに変換することが可能である。
【0034】
使用済みの鋳造用鋳型又は中子から得られる破砕材料中に存在する、表面上に硬化水ガラス粘結剤を有する耐火材料の(第1の)粒子及び/又は粒子凝集体は、特に鋳造用鋳型又は中子のそれぞれに使用される(水ガラス)粘結剤によって、表面上に硬化水ガラス粘結剤を有する耐火材料の(第2の)粒子及び/又は粒子凝集体に結合することができる。
【0035】
「硬化水ガラス粘結剤」は、水ガラスの水性形態から調製される水ガラスを含む粘結剤であって、硬化しており、好ましくは硬化の場合に、水及び/又は他の液体構成要素が除去されることによって固化している、又はCO2ガス、若しくは空気/CO2ガス混合物若しくはエステル.若しくはエステルブレンドを使用することによって架橋している粘結剤として理解される。水ガラスの水性形態の硬化は、好ましくは液体構成要素の加熱及び/又はその他の除去によって行われる。
【0036】
「二酸化ケイ素を含む粒子状非晶質酸化物」は、構成要素として、
(i)1つ以上の粒子状非晶質二酸化ケイ素を含み、他の酸化物を含まない、
又は
(ii)1つ以上の粒子状非晶質二酸化ケイ素と1つ以上の他の粒子状非晶質酸化物との混合物を含む、
又は
(iii)ある量の非晶質粒子を含み、上記粒子のそれぞれが、二酸化ケイ素と1つ以上の別の酸化物との混合物を含み、この量の非晶質粒子は、場合により、粒子状非晶質二酸化ケイ素と、二酸化ケイ素以外の粒子状非晶質酸化物とからなる群から選択される1つ以上の構成要素との混合物中に存在する。粒子状非晶質酸化物が、2種類以上の酸化物から形成される非晶質粒子を含み得ることを意味する(例えば、非晶質ホウケイ酸ガラスの粒子など)。
【0037】
驚くべきことに、使用済みの鋳造用鋳型又は中子から得られる破砕材料(この破砕材料は、表面上に硬化水ガラス粘結剤を有する耐火材料の粒子及び/又は粒子凝集体を含む)を、粒子状非晶質酸化物の総量を基準として85重量%以上の量の二酸化ケイ素を含む粒子状非晶質酸化物で処理することによって、粒子又は凝集体(例えば、砂粒)の(さらなる)フリッティング/焼結の可能性が低下し、再生ユニット中の流動床の流動性をあまり妨害しないことが分かった。さらに、処理に使用される上記粒子状非晶質酸化物は、砂粒子に結合せず、典型的には除塵によって混合物から完全に除去可能であり、ダスト/微粉とともに有利には多量のアルカリ金属イオン(例えばナトリウムイオン)を除去することができる。したがって、使用済みの鋳造用鋳型又は中子から得られる破砕材料(この破砕材料は、表面上に硬化水ガラス粘結剤を有する耐火材料の粒子及び/又は粒子凝集体を含む)を、粒子状非晶質酸化物の総量を基準として85重量%以上の量の二酸化ケイ素を含む粒子状非晶質酸化物で処理することによって、酸消費量(COA)が減少し、処理された(再生された)破砕材料の導電率が低下する。この結果、(新しい)水ガラス粘結剤と、本発明の方法によって得られる粒子状耐火組成物とを含む混合物の可使時間が改善され、本発明の方法によって得られた対応する粒子状耐火組成物から製造された鋳造用鋳型又は中子を用いて製造された鋳物の表面品質が改善される。
【0038】
さらに、驚くべきことに、粒子状非晶質酸化物を使用しないが他については同一である方法と比較すると、使用済みの鋳造用鋳型又は中子から得られる破砕材料(この破砕材料は、表面上に硬化水ガラス粘結剤を有する耐火材料の粒子及び/又は粒子凝集体を含む)を、粒子状非晶質酸化物の総量を基準として85重量%以上の量の二酸化ケイ素を含む粒子状非晶質酸化物で処理することによって、必要な処理時間が短縮され、処理中に加える必要がある温度が低下することが分かった。したがって、使用済みの鋳造用鋳型又は中子から得られる破砕材料(この破砕材料は、表面上に硬化水ガラス粘結剤を有する耐火材料の粒子及び/又は粒子凝集体を含む)を、粒子状非晶質酸化物の総量を基準として85重量%以上の量の二酸化ケイ素を含む粒子状非晶質酸化物で処理することによって、大幅なエネルギー節約も実現できる。
【0039】
本発明による方法は、好ましくは、耐火材料と水ガラス(この水ガラスを含む粘結剤は(無機)水ガラス粘結剤である)を含む粘結剤とから形成される使用済みの鋳造用鋳型又は中子からの鋳造用鋳型及び中子の製造に使用するための粒子状耐火組成物の製造を対象としている。水ガラス粘結剤は、典型的には、二酸化ケイ素とアルカリ金属酸化物(酸化ナトリウム及び/又は酸化カリウム及び/又は酸化リチウム)とを、規定されたSiO2:M2O(ここでM=Na、K、及び/又はLiである)比(モジュラスとも呼ばれる)でアルカリ性条件下で混合して水ガラス粘結剤を得ることによって製造される。得られる水ガラス粘結剤の規定されたSiO2:M2Oモル比は、典型的には1.8:1.0~4.1:1.0の範囲内であり、典型的な固体材料含有量は、水ガラス粘結剤の全重量を基準として27~56重量%の範囲内である。上記水ガラス粘結剤を用いて製造される鋳造用鋳型及び中子は、ほとんど場合、本発明の方法の優れた出発物質となる。対応して、粒子及び/又は凝集体の表面上に存在する硬化水ガラス粘結剤は、好ましくはこのような無機水ガラス粘結剤の硬化生成物である。
【0040】
本発明の方法及びそれに使用される粒子状非晶質酸化物は、粒子状材料(砂)の表面をこのような水ガラス粘結剤から清浄にする際に特に有用である。耐火材料と水ガラスを含む粘結剤とから形成される使用済みの鋳造用鋳型又は中子から再生された(清浄な)粒子状耐火組成物の性質は、対応する未使用の粒子状耐火組成物、すなわち粘結剤と最初に接触する前に存在する粒子状耐火組成物(例えば新しい砂)の性質に類似しており、典型的には使用済みの鋳造用鋳型又は中子から機械的磨砕及び/又は熱処理単独によって再生された粒子状耐火材料よりも良好である。しかし、鋳造用鋳型及び中子の適用性をさらに改善するために、本発明の方法により使用済みの鋳造用鋳型又は中子から再生された粒子状耐火組成物は、場合により未使用の粒子状耐火組成物と混合することができる。特に驚くべき好都合な結果が、水ガラス粘結剤(再生プロセスにおいて除去される)が前述の定義のような好ましい粘結剤である本発明の方法で実現されている。本発明により得られる(清浄な)粒子状耐火組成物の性質は、耐火材料と水ガラスを含む粘結剤とから形成される使用済みの鋳造用鋳型又は中子から再生されるが、本発明の方法による処理は行われていない粒子状耐火組成物と比較して改善される。
【0041】
本発明の加熱処理中に使用済みの鋳造用鋳型又は中子から得られる破砕材料のアルカリ含有量が、上記破砕材料を粒子状非晶質酸化物と混合するステップを含まないがその他は同一である方法と比較すると減少するように、本発明の方法に使用される粒子状非晶質酸化物の量が好ましくは選択される。
【0042】
実際には、特定の種類及び量の破砕材料の場合の、二酸化ケイ素を含む適切な粒子状非晶質酸化物(前述のように定義される)、例えば、好ましい構成要素及びそれらの相対量、並びに対応する粒子状非晶質酸化物の適切な量を同定するために、当業者は、典型的には多数の単純な試験を行うであろう。当然ながら、適切な粒子状非晶質酸化物と、粒子状非晶質酸化物の適切な量とは、混合及び加熱処理などに利用可能な装置によっても決定される。当業者であれば、適切な量及び種類の粒子状非晶質酸化物を確認するために使用できる方法を知っている。
【0043】
例えばDIN 51730の概念によって、加熱処理された破砕材料を用いて製造された試験片の断面積値を求めることで、規定された量及び種類の粒子状非晶質酸化物を用いて達成される結果を検証する方法(Testing of solid fuels - Determination of fusibility of fuel ash)が提供される。これらの断面積値は、温度の依存性におけるフリッティング/焼結の進行を示している。別の一例として、当業者は、光学顕微鏡を用いて加熱処理された破砕材料の写真を撮影して、加熱処理された粒子の表面を分析することができる。このような分析によって、有利には、表面が清浄であるか、又は残留粘結剤材料などの不純物で依然として覆われているかが示される。両方の方法は、特に耐火材料と水ガラスを含む粘結剤とから形成される使用済みの鋳造用鋳型又は中子から得られた破砕材料(砂)に対する、粒子状非晶質酸化物の適切な量及び種類を求めるのに適切である。顕微鏡を用いる光学分析は、砂粒粒子を分析し、焼結及び/又はフリッティングが起こったかどうか、それがどの程度かを特定するための好ましい方法である(破砕材料を粒子状非晶質酸化物と混合することを含まないがその他は同一である方法と比較される)。特定の種類及び量の破砕材料に対する、粒子状非晶質酸化物の適切な量及び種類は、さらに、処理前後の上記破砕材料の導電率及び/又は酸消費量(COA)を測定することによって求めることができ、その理由は、両方の値が汚染の程度の適切な指標となるからである。
【0044】
本発明による方法における加熱処理の重要なパラメーターの1つは温度である。本発明による方法は、加熱処理が400℃以上の温度で行われる方法(前述のもの、特に、好ましいと記載されるもの)に関する。本発明による方法の好ましい一実施形態では、加熱処理は、400~750℃の範囲内、好ましくは570~730℃の範囲内、より好ましくは630~730℃の範囲内、最も好ましくは670~730℃の範囲内の温度で行われる。本発明の方法及びそれに使用される粒子状非晶質酸化物は、破砕材料(砂)の表面を、水ガラスを含む残留粘結剤から清浄にするステップにおいて特に有用である。この清浄プロセスは、400℃以上の温度で行われるが、その理由は、この温度において、加熱処理によって、残留粘結剤が完全に溶融し、水ガラスを含む残留粘結剤から残留する水が完全に除去されるからである。さらに、400℃以上の温度における加熱処理によって、破砕材料中に存在する可能性のあるあらゆる有機(炭素質)化合物が除去され、すなわち焼成/燃焼が起こる。
【0045】
400℃未満の温度は、通常は、(i)有機(炭素質)化合物(存在する場合)の十分な焼成/燃焼が保証されず、及び/又は、この状況において、(ii)残留炭素の蓄積が生じる。さらに(iii)耐火材料の粒子/凝集体の表面上の残留水ガラス粘結剤は、400℃未満で依然として固体状態(又は少なくとも高粘度状態)であり、それによって、表面上の水ガラス粘結剤のアルカリ金属イオンと、粒子状非晶質酸化物との間の十分な接触が妨げられ、そのため再生が十分に進行しない。他方、750℃を超える温度では、場合により、加熱処理中の破砕材料のフリッティング/焼結の可能性が増大すると思われる。さらに、より高い温度においては機械的摩耗及びエネルギー消費が急激に増加する。そのため、加熱処理は好ましくは400~750℃の範囲内の温度で行われる。
【0046】
本発明による方法は、種々の規模で行うことができ、例えば1kg未満(例えば500g)から15トンまでの混合物(破砕材料及び粒子状非晶質酸化物を含む)を含んでもよい。
【0047】
本発明による方法(前述のもの、特に、好ましいと記載されるもの)は、バッチ方法として又は連続方法として行うことができる。両方の方法は、加熱処理中に適切な温度にすることが可能な熱再生ユニット(これは特に砂の再生のための熱再生ユニットを意味する)中で行うことができる。ほとんどの場合、熱再生ユニットによって、有利には、加熱処理中に安定で再現可能な処理条件が得られる。連続運転熱再生ユニットは、市販の熱再生プラント(例えば、“Energy-Saving Counter Flow Furnace SX2-5-12”熱再生ユニットを典型的には含むCHIN YING Foundry Material(Tianjin) Sand Reclamation Plant;CHIN YING foundry material Co.,LTD)の一部であってよい(しかし必ずしもそうではない)。
【0048】
さらに、本発明による方法(前述のもの、特に、好ましいと記載されるもの)では、400℃以上の温度における加熱処理は、好ましくは流動床又は熱砂再生ユニット中で行われ、ここで流動床又は熱砂再生ユニット中の加熱処理と同時に、又は加熱処理後に、粒子状非晶質酸化物及びアルカリイオン(特に破砕材料の粒子/凝集体の表面上の水ガラス粘結剤に由来する)の残留物を含むダスト及び/又は微粉及び/又は固体物質が、好ましくは除去される。
【0049】
前述のように、本発明による方法における混合物の加熱処理によって、対応する破砕材料中に存在する、水ガラスを含む残留粘結剤の構成要素が融解する。したがって、加熱処理の効果を改善するために、混合物を撹拌する又は動かすことが好ましい。このため、本発明による方法における加熱処理は、より好ましくは、回転再生装置などの熱砂再生ユニット中で流動床中の混合物の流動化又は運動(混合運動)を用いて行われる。回転再生装置は、例えば米国特許第6,286,580 B1号明細書に開示されている。本発明による方法における混合物の流動化は、より好ましくは熱再生ユニット又は熱再生プラント(前述のようなもの)の中で実現される。当業者は、このような加熱処理ステップを行うための適切な条件に精通している。
【0050】
本発明による方法(前述のもの、特に、好ましいと記載されるもの)では、使用済みの鋳造用鋳型又は中子から破砕材料を製造するステップであって、破砕材料が、表面上に硬化水ガラス粘結剤を有する耐火材料の粒子及び/又は粒子凝集体を含むステップは、好ましくは、材料が破砕されるような、耐火材料と水ガラスを含む粘結剤とを含む使用済みの鋳造用鋳型又は中子からの材料の機械的処理を含み、好ましくは、破砕材料は、表面上に硬化水ガラス粘結剤を有する耐火材料の粒子を含む。
【0051】
本発明の目的のためには、耐火材料と水ガラスを含む粘結剤とから形成される使用済みの鋳造用鋳型又は中子は、破砕材料を粒子状非晶質酸化物と混合する前に、粒子及び/又は粒子凝集体に破砕される。一方で、耐火材料と水ガラスを含む粘結剤とから形成される使用済みの鋳造用鋳型又は中子の破砕は、嵩高い使用済みの鋳造用鋳型又は中子のさらなる処理及び取り扱いが容易になるという利点を有する。一方で、使用済みの鋳造用鋳型又は中子から結果としてえら得る破砕材料は、嵩高い使用済みの鋳造用鋳型よりもはるかに広い表面を有することで、粒子状非晶質酸化物との徹底的な混合(したがって、必要な大きな接触)が可能となる。使用済みの鋳造用鋳型又は中子から得られる破砕材料と粒子状非晶質酸化物との混合が、さらにより激しくなると、より多くの破砕材料が、表面上に硬化水ガラス粘結剤を有する耐火材料の粒子として存在し、すなわちより少ない破砕材料が、表面上に硬化水ガラス粘結剤を有する耐火材料の粒子凝集体として存在する。
【0052】
前述のように、耐火材料と水ガラスを含む粘結剤とから形成される使用済みの鋳造用鋳型又は中子の破砕は、好ましくは機械的処理ステップを含む。一般的な機械的処理(例えば研削又は細断)は当業者にはよく知られている。耐火材料と硬化水ガラス粘結剤とを含む使用済みの鋳造用鋳型の破砕(例えば粉砕/断片化)によって、これも耐火材料と硬化水ガラス粘結剤とを含む粒子及び/又は粒子凝集体が得られ、それによって(破砕の結果として)、硬化水ガラス粘結剤は、粒子及び/又は粒子凝集体の表面上に存在し、したがって粒子状非晶質酸化物と直接接触可能となる。
【0053】
好ましくは、機械的処理は、耐火材料と水ガラスを含む粘結剤とを含む使用済みの鋳造用鋳型又は中子から得られる材料を、表面上に硬化水ガラス粘結剤を有する耐火材料の粒子及び/又は粒子凝集体に変換するために、2つ以上の連続する破砕ステップを含む。この点において、「変換すること」という用語は、変換を意味するものと理解されたい。2つ以上の連続する「破砕ステップ」は、同一の破砕ステップの複数回の繰り返しと、2つ以上の異なる破砕ステップの伝導との両方を意味することができる。
【0054】
本発明による方法(前述のもの、特に、好ましいと記載されるもの)では、
- 破砕材料を粒子状非晶質酸化物と混合するステップは、好ましくは液相の存在下、
好ましくは水性液相の存在下、
より好ましくは液相の総量を基準として80重量%以上の量の水を含む水性液相の存在下で行われ、
混合するステップは、好ましくは水性液相の構成要素としての1つ以上の有機化合物の存在下で行われ、
及び/又は
- 破砕材料を粒子状非晶質酸化物と混合するステップにおいて、破砕材料は、好ましくは液相中の粒子状非晶質酸化物の懸濁液と混合され、
好ましくは液相は水性液相であり、
より好ましくは液相は、液相の総量を基準として80重量%以上の量の水を含む水性液相であり、
好ましくは水性液相は1つ以上の有機化合物を含む。
【0055】
粒子状非晶質酸化物の総量を基準として85重量%以上の量の二酸化ケイ素を含む粒子状非晶質酸化物を、使用済みの鋳造用鋳型又は中子から得られる破砕材料と混合するために、特に実用的な方法の1つは、液相の存在下で上記粒子状非晶質酸化物を加えること、すなわち液相中の粒子状非晶質酸化物の懸濁液を加えることである。利点の1つは、懸濁液を正確且つ容易に加えることが可能なことである。さらに、破砕材料を懸濁液と混合することによって、ダストの発生が防止され、粒子状非晶質酸化物との均一な混合が促進される。液相として又は懸濁化剤として、好ましくは水性相又は水性懸濁化剤が使用されるが、その理由は、水はその毒物学的及び環境的影響に関して無害であると分類できるからである。したがって、好ましくは、液相の総量を基準として好ましくは80重量%以上の量の多量の水を含む水性液相又は水性懸濁化剤が使用される。したがって、本発明による方法(前述のもの、特に、好ましいと記載されるもの)に好ましくは使用される懸濁液は、好ましくは、液相の総量を基準として80重量%以上の量の水を含む水性液相中の粒子状非晶質酸化物の懸濁液である。上記懸濁液は、有利には貯蔵安定性であり、通常は、構成要素の規定された組成を示す。これによって、本発明による方法の安定で再現性のあるプロセス条件が保証される。
【0056】
液相として又は懸濁化剤として水を使用することが好ましいが、にもかかわらず水性液相の構成要素として1つ以上の有機化合物が存在することが、特定の場合の本発明の状況では有利となり望ましい場合がある。1つ以上の有機化合物の存在は、水性液相のぬれ性、安定性、粘度、貯蔵寿命、流動性、及び/又はその他の性質に好都合な影響を与えることがある。好ましい有機化合物の例は、界面活性剤、懸濁剤、及び増粘剤である(好ましい有機化合物に関する詳細に関しては、以下の明細書を参照されたい)。液相中の粒子状非晶質酸化物の懸濁液は、高性能ミキサーによって、粒子状非晶質酸化物を液相(水など)及び/又は1つ以上の有機化合物と混合することによって調製することができる。
【0057】
本発明による方法(前述のもの、特に、好ましいと記載されるもの)では、破砕材料は好ましくは、
- 好ましくはカオリナイト、メタカオリン、モンモリロナイト、ハロイサイト、ヘクトライト、スメクタイト、白雲母、パイロフィライト、合成フィロケイ酸塩、及びそれらの混合物からなる群から選択されるフィロケイ酸塩であって、好ましくは部分的又は完全に焼成され、
好ましくは粒子状非晶質酸化物との予備混合物として、
より好ましくは粒子状非晶質酸化物も含む液相中の予備混合懸濁液としてのものであり、
好ましくは液相は水性液相であり、
より好ましくは液相は、液相の総量を基準として80重量%以上の量の水を含む水性液相であり、
好ましくは水性液相は1つ以上の有機化合物を含む、
フィロケイ酸塩と、
- 懸濁化剤、好ましくは粘土を含むイライト、スメクタイト、及び/又は、アタパルジャイトと、
- 湿潤剤と、
- 分散剤と、
- 沈降防止剤と、
- 染料と、
- 顔料と、
- 殺生物剤、好ましくは殺真菌剤と、
- ゼオライトと、
- 水酸化アルミニウムと、
からからなる群から選択される1つ以上の材料とも同時に又は連続して混合される。
【0058】
驚くべきことに、特に、フィロケイ酸塩及び粒子状非晶質酸化物が最初に(均一に)予備混合され、続いて破砕材料の混合が行われる場合、及び/又は予備混合物が水などの液相中の懸濁液として供給される場合、破砕材料と粒子状非晶質酸化物との混合物中にフィロケイ酸塩が存在することで、本発明による方法の加熱処理中に破砕材料の再生に対して特に好都合な影響が得られることが分かった。さらに、懸濁液中、フィロケイ酸塩によって、粒子状非晶質酸化物の安定性が増加し、その結果、懸濁液がより長時間保管される場合に、固体材料と液相との間の分離が防止される、又は少なくとも遅くなる。
【0059】
したがって、耐火材料と水ガラスを含む粘結剤とから形成される使用済みの鋳造用鋳型又は中子からの鋳造用鋳型及び中子の製造に使用するための粒子状耐火組成物の製造方法の好ましい一実施形態では、
この方法は:
- 使用済みの鋳造用鋳型若しくは中子から破砕材料を提供するステップ、又は使用済みの鋳造用鋳型若しくは中子から破砕材料を製造するステップであって、破砕材料が、表面上に硬化水ガラス粘結剤を有する耐火材料の粒子及び/又は粒子凝集体を含むステップと、
- 好ましくはカオリナイト、メタカオリン、モンモリロナイト、ハロイサイト、ヘクトライト、スメクタイト、白雲母、パイロフィライト、合成フィロケイ酸塩、及びそれらの混合物からなる群から選択されるフィロケイ酸塩であって、好ましくは部分的又は完全に焼成されるフィロケイ酸塩と、
粒子状非晶質酸化物の総量を基準として85重量%以上の量の二酸化ケイ素を含む粒子状非晶質酸化物とを、
好ましくは液相中の予備混合懸濁液として含む、予備混合物を提供するステップであって、
好ましくは液相が水性液相であり、
より好ましくは液相が、液相の総量を基準として80重量%以上の量の水を含む水性液相であり、
好ましくは水性液相が1つ以上の有機化合物を含む、ステップと、
- 破砕材料を予備混合物と混合して混合物(すなわち特に破砕材料と、フィロケイ酸塩と、二酸化ケイ素を含む粒子状非晶質酸化物とを含む混合物)を得るステップと、
- 混合物に対して400℃以上の温度における加熱処理を行うステップと、
を含む。
【0060】
予備混合物(すなわち粒子状非晶質酸化物も有する)としてのフィロケイ酸塩の添加は、多くの場合好ましいが、別の実施形態では、フィロケイ酸塩は、別に(すなわち純粋な化合物として)破砕材料に、及び/又は破砕材料と粒子状非晶質酸化物との混合物に加えられる。
【0061】
当技術分野において典型的なように、沈降を回避又は最小限にし、破砕材料、特に砂との混合を改善するために、懸濁剤、分散剤、及び/又は沈降防止剤が場合により懸濁液に加えられる。
【0062】
懸濁液の表面張力を低下させるために、場合により湿潤剤が加えられる。
【0063】
本発明の範囲内で、特に長期の保管中に、懸濁液への侵入を防止するために、殺生物剤の任意選択の使用が好ましい。本発明による方法の好ましい一実施形態では、懸濁液に白カビなどの菌類が蔓延するのを防止するために、殺真菌剤が使用される。
【0064】
場合によりゼオライト及び/又は水酸化アルミニウムを加えることで、破砕材料の粒子及び/又は粒子凝集体のフリッティング/焼結の可能性がさらに低下する。
【0065】
「ゼオライト」という用語は、自然界に存在するが、大規模な合成的製造も行われる微孔質アルミノケイ酸塩鉱物を意味する。本明細書においては、総称の「ゼオライト」は、他の記載がなければ、天然ゼオライト及び合成ゼオライトの両方を意味し、それらの間で区別は行われない。
【0066】
「水酸化アルミニウム」Al(OH)3は、時には誤ってアルミナ水和物(ドイツ語:Tonerdehydrat)と呼ばれるが、自然界では、鉱物のギブサイト(単斜晶系;水礬土石としても知られる)、並びにその3つのはるかに希少な多形:バイヤライト(六方晶系)、ドイライト、及びノルドストランダイトとして見つけられている。水酸化酸化アルミニウムAlO(OH)と近い関係にあり、水が失われたことのみが異なる。これらの化合物はともに、アルミニウム鉱石のボーキサイトの主要成分である。新しく沈殿させた水酸化アルミニウムはゲルを形成し、このことは、水質浄化における凝集剤としてのアルミニウム塩の使用の基本原理である。このゲルは時間が経つと結晶化する。
【0067】
水酸化アルミニウムの異なる形態の名前の付け方は曖昧であり、普遍的な基準は存在しない。4つすべての多形が、三水酸化アルミニウム(3つの水酸化物基に結合する1つのアルミニウム原子)の化学組成を有する。
【0068】
ギブサイトは水礬土石としても知られており、米国ではギブサイトが最も一般的に使用されており、欧州では水礬土石がより頻繁に使用されている。1930年には、β-アルミナ三水和物と呼ばれるバイヤライトと対比させるためにα-アルミナ三水和物と呼ばれた(アルファ及びベータの名称は、より一般的な形態とより一般的でない形態とをそれぞれ区別するために使用された)。1957年に、普遍的な基準を作成するためにアルミナの命名法に関するシンポジウムが企画され、その結果、ギブサイトはγ-Al(OH)3で表され、バイヤライトはα-Al(OH)3となり、ノルドストランダイトはAl(OH)3で表された。それらの結晶学的特性に基づくと、提案される命名法及び名称は、ギブサイトがα-Al(OH)3となり、バイヤライトがβ-Al(OH)3で表され、ノルドストランダイト及びドイライトの両方はAl(OH)3で表される。この名称では、α及びβの接頭辞は、六方晶最密構造であり、それぞれ異なる又は脱水した多形を意味し、ノルドストランジエート(nordstrandiate)とドイライトとの間に区別はない。
【0069】
本明細書に使用される場合、「水酸化アルミニウム」という用語は、前述の水酸化アルミニウムの種々の形態のいずれかを意味する。好ましい形態に関しては、以下を参照されたい。
【0070】
特に示されるのでなければ、本明細書に使用される場合、「水酸化アルミニウム」という用語は、Al(OH)3とは水が失われたことのみが異なる水酸化酸化アルミニウムAlO(OH)をさらに含む。AlO(OH)は、α-AlO(OH)(Diaspor)及びγ-AlO(OH)(Boehmit)の2つの形態で存在する。水酸化アルミニウムは、アルカリ金属水酸化物と反応してアルミン酸塩を形成することができる。このような化合物の一般式はM[Al(OH)4]であり、式中のMはアルカリ金属イオンを意味する。
【0071】
本発明による方法(前述のもの、特に、好ましいと記載されるもの)では、粒子状非晶質酸化物の総量を基準として85重量%以上の量の二酸化ケイ素を含む粒子状非晶質酸化物は、好ましくは、
- 好ましくは金属ケイ素の酸素含有ガスによる酸化によって得られるシリカ、及び
ZrSiO4からZrO2及びSiO2への熱分解によって得られるシリカからなる群から選択されるシリカフュームと、
- 非晶質シリカと、
- 沈降ケイ酸と、
- 焼成ケイ酸と、
- シリカ溶融物の霧化、及び引き続く固化によって得られたシリカと、
からなる群から選択されるもう1つの物質を含む。
【0072】
この限りにおいて、本発明者らは、特定の物質が、前述の定義のような二酸化ケイ素を含む好ましい粒子状非晶質酸化物の群からの2つ以上の要素に分類される場合があることを指摘しておく。言い換えると、群の要素は重なり合う場合がある。
【0073】
さらに、粒子状非晶質酸化物の総量を基準として85重量%以上の量の二酸化ケイ素を含む粒子状非晶質酸化物は、これとは別に、又はこれに加えて、“Mikrosilica - ein Staub macht Karriere”(雑誌「Nachrichten aus der Chemie”の2011年第59巻の956~958ページに公開される)に開示されるもう1つの物質、すなわち(例えば)“Kieselgel”(シリカゲル、CAS番号:112926-00-8);“Lichtbogen-Silica”(これを文字通り訳すと、アーク炉シリカを意味する);“Plasma-Silica”(これを文字通り訳すと、プラズマシリカを意味する);“Kieselgur”(珪藻土、CAS番号:61790-53-2);“kalzinierte Kieselgur”(焼成珪藻土、CAS番号:91053-39-3);“fluxkalzinierte Kieselgur”(フラックス焼成珪藻土、CAS番号:68855-54-9)、及び“Quarzglas,Kieselglas”(溶融石英、溶融シリカ、CAS番号:60676-86-0)からなる群から選択される1つ以上の非晶質物質を含み得る。
【0074】
シリカフューム(CAS番号:69012-64-2、ドイツ語では“Mikrosilica”としても知られる)は、典型的には、「珪砂をコークス又は無煙炭で還元して、最初に一酸化ケイ素ガスを形成し、次にこれを二酸化ケイ素までさらに酸化することによる、電気アーク炉中のケイ素及びフェロシリコンの大量生産の副生成物として製造される。後の冷却中、形成された二酸化ケイ素は、凝縮してシリカフュームと呼ばれる粒子状非晶質二酸化ケイ素になる。
【0075】
シリカフュームは、好ましくは、電子顕微鏡検査で調べられているように非晶質二酸化ケイ素のほぼ完全な球からなる。他の好ましい粒子状非晶質酸化物とは対照的に、本発明の方法によると、シリカフューム中の粒子は、典型的には焼結しないが、完全に分散可能な凝集物を形成する単離された球として存在する。シリカフュームの一次粒子は、さらに、非常に小さく(好ましくは100nm~150nmの範囲内の重量平均を有する)ので、シリカフュームは、破砕材料と混合して均一混合物を得ることが特に容易である非常に微細な粒子状非晶質酸化物である。粒子状非晶質酸化物としてのシリカフュームの使用が特に好ましい。前述の他の粒子状非晶質酸化物は、類似の理由で同様に好ましい。
【0076】
さらに、本発明による方法の1つ(前述のもの、特に、好ましいと記載されるもの)が好ましく、使用済みの鋳造用鋳型又は中子からの破砕材料の製造方法において:
- 耐火材料と、水ガラスを含む粘結剤と、粒子状非晶質二酸化ケイ素とを含む成形用混合物を製造するステップと、
- 成形用混合物を成形するステップと、
- 成形用混合物を硬化させて、硬化した鋳造用鋳型又は中子を得るステップと、
- 硬化した鋳造用鋳型又は中子を金属鋳造プロセスに使用して、使用済みの鋳造用鋳型又は中子を得るステップと(注記:使用済みの鋳造用鋳型又は中子から破砕材料を製造するステップは既に前述している)
を有する。
【0077】
本発明による方法の1つ(前述のもの、特に、好ましいと記載されるもの)がさらにより好ましく、使用済みの鋳造用鋳型又は中子からの破砕材料の製造方法において:
- 耐火材料と、水ガラスを含む粘結剤と、粒子状非晶質二酸化ケイ素とを含む成形用混合物を製造するステップと、
- 成形用混合物を成形するステップと、
- 成形用混合物を硬化させて、硬化した鋳造用鋳型又は中子を得るステップと、
- 硬化した鋳造用鋳型又は中子を金属鋳造プロセスに使用して、使用済みの鋳造用鋳型又は中子を得るステップとを有し、
材料が破砕されるような、(上記)使用済みの鋳造用鋳型又は中子からの材料の機械的処理をさらに含み、
好ましくは
- 破砕材料が、表面上に硬化水ガラス粘結剤を有する耐火材料の粒子を含み、
及び/又は
- 機械的処理が、耐火材料と水ガラスを含む粘結剤とを含む使用済みの鋳造用鋳型又は中子から得られる材料を、表面上に硬化水ガラス粘結剤を有する耐火材料の粒子及び/又は粒子凝集体に変換するために2つ以上の連続する破砕ステップを含む。
【0078】
前述の定義のような破砕材料を製造するための出発物質として使用される、耐火材料と水ガラスを含む粘結剤とから形成される使用済みの鋳造用鋳型又は中子は、典型的には、破砕材料の製造の出発物質として使用される前に金属鋳造に最初に使用された(古い)使用済みの鋳造用鋳型に対応する。したがって、本発明による方法によって、金属鋳造への使用にはもはや適さない使用済みの鋳造用鋳型の再利用が可能となる。使用済みの鋳造用鋳型又は中子からの破砕材料の製造方法に関する詳細な情報のため、欧州特許第1802409 B1号明細書及び米国特許出願公開第2010/0173767 A1号明細書が参照される。米国特許出願公開第2010/0173767 A1号明細書から分かるように、破砕材料の製造方法に使用される使用済みの鋳造用鋳型は、粒子状金属酸化物を添加剤として既に含むことができ、それによって使用済みの鋳造用鋳型中に本来含まれる粒子状金属酸化物は、再生物質としては使用されないが、鋳造用鋳型の強度を増加させる添加剤として使用される。使用済みの鋳造用鋳型が既に(古い)粒子状金属酸化物を含む場合、これによって、本発明による方法によって実現される所望の技術的効果を実現するために、(新しい)粒子状非晶質酸化物が不要になるわけではない。
【0079】
さらに、本発明による方法の1つ(前述のもの、特に、好ましいと記載されるもの)が好ましく、粘結剤がさらに、
- 好ましくはメタリン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、及びそれらの混合物からなる群から選択されるリン含有化合物と、
- 炭水化物と、
- 界面活性剤、好ましくは陰イオン界面活性剤、より好ましくはサルフェート基、スルホネート基、又はホスフェート基を有するものと、
- 硫酸バリウムと、
- 好ましくはボレート、ボロホスフェート、ボロホスホシリケート、及びそれらの混合物からなる群から選択される酸化ホウ素化合物と、
からなる群から選択される1つ以上の化合物を含む。
【0080】
本発明による方法の1つ(前述のもの、特に、好ましいと記載されるもの)も好ましく、使用済みの鋳造用鋳型又は中子からの破砕材料の製造方法において:
- 耐火材料と、水ガラスを含む粘結剤と、粒子状非晶質二酸化ケイ素とを含む成形用混合物を製造するステップと、
- 成形用混合物を成形するステップと、
- 成形用混合物を硬化させて、硬化した鋳造用鋳型又は中子を得るステップと、
- 硬化した鋳造用鋳型又は中子を金属鋳造プロセスに使用して、使用済みの鋳造用鋳型又は中子を得るステップと(注記:使用済みの鋳造用鋳型又は中子から破砕材料を製造するステップは既に前述している)
を有し、
粘結剤が、
- 好ましくはメタリン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、及びそれらの混合物からなる群から選択されるリン含有化合物と、
- 炭水化物と、
- 界面活性剤、好ましくは陰イオン界面活性剤、より好ましくはサルフェート基、スルホネート基、又はホスフェート基を有するものと、
- 硫酸バリウムと、
- 好ましくはボレート、ボロホスフェート、ボロホスホシリケート、及びそれらの混合物からなる群から選択される酸化ホウ素化合物と、
からなる群から選択される1つ以上の化合物をさらに含む。
【0081】
本発明による方法は、粘結剤として「純粋な」水ガラスを用いて作製した使用済みの鋳造用鋳型の使用に限定されるものではない。むしろ、使用される粘結剤又はその他の供給源に由来する添加剤を含む使用済みの鋳造用鋳型にも適用可能である。粘結剤が有機化合物を含む場合、本発明の方法の温度処理に選択される温度範囲によって、有機(炭素質)材料の完全な(又はほぼ完全な)焼成/燃焼が保証される。本発明に使用されるような使用済みの鋳造用鋳型の製造に使用される粘結剤は、好ましくは(水ガラスに加えて)前述のさらなる化合物を含む。
【0082】
本発明による方法(前述のもの、特に、好ましいと記載されるもの)では、粒子状非晶質酸化物の総量を基準として85重量%以上の量の二酸化ケイ素を含む粒子状非晶質酸化物の総量は、好ましくは、
- 破砕材料の全重量を基準として、0.01~3.0重量%の範囲内、好ましくは0.03~0.9重量%の範囲内、より好ましくは0.04~0.8重量%の範囲内、最も好ましくは0.06~0.4重量%の範囲内であり、
及び/又は
- 破砕材料中の耐火材料の粒子及び/又は粒子凝集体の表面上の硬化水ガラス粘結剤の全重量を基準として、10~60重量%の範囲内、好ましくは13~50重量%の範囲内、より好ましくは20~40重量%の範囲内、最も好ましくは25~35重量%の範囲内である。
【0083】
実際に使用される粒子状非晶質酸化物の量は、再生される破砕材料の粒子及び/又は粒子凝集体の表面上のアルカリ金属イオンの量に強く依存する(破砕材料の粒子及び/又は粒子凝集体の表面上のアルカリ金属イオンは、硬化水ガラス粘結剤に由来する)。この量は、好ましくは、アルカリ金属イオンと粒子状非晶質酸化物との完全な変換又は反応が可能となるのに十分多い量であるべきである。アルカリ金属イオンの量は、再生される破砕材料の種類に強く依存するので、使用される粒子状非晶質酸化物の量は、典型的には、再生される個別の破砕材料に適合させる必要がある。粒子状非晶質酸化物のそれぞれの適切な量の個別の選択及び決定に関しては、前述の議論が参照され、それがこの場合に適宜適用される。
【0084】
本発明による方法(前述のもの、特に、好ましいと記載されるもの)では、
粒子状非晶質酸化物の総量を基準として85重量%以上の量の二酸化ケイ素を含む粒子状非晶質酸化物は、好ましくは100μm未満、好ましくは45μm未満、より好ましくは25μm未満、最も好ましくは5μm未満のD90を有し、
及び/又は
破砕材料の粒度は、好ましくは100~600μmの範囲内、好ましくは120~550μmの範囲内、より好ましくは150~500μmの範囲内であり、
及び/又は
粒子状非晶質酸化物の総量を基準として85重量%以上の量の二酸化ケイ素を含む粒子状非晶質酸化物のD90と、破砕材料中の耐火材料の粒子及び/又は粒子凝集体との比は、好ましくは1:1未満、好ましくは1:10未満、より好ましくは1:20未満、最も好ましくは1:120未満である。
【0085】
既に前述したように、特に広い表面積の破砕材料(及び粒子状非晶質酸化物)を得て、破砕材料と粒子状非晶質酸化物との徹底的な(均一な)混合物を得ることが、本発明による方法を実現するために有益である。上記要因の両方は、可能な最小の粒子が存在することが好都合であるので、小さな粒子の粒子状非晶質酸化物及び小さな粒子の破砕材料(前述のように規定される)を使用することが好ましい。
【0086】
本文書全体にわたって、特に示されなければ、「粒度」という用語は、粒子の粒径に関連する。
【0087】
粒子状非晶質酸化物の「D90」は、この粒子状非晶質酸化物の総量における粒子の粒度分布から誘導される測定値である。この点において、例えば100μmのD90は、90%の粒子が100μmよりも小さいことを意味する。粒度分布は、当業者に周知の方法によって、好ましくはレーザー回折によって、例えばBeckman Coulter社のBeckman Coulter LS 230のようなレーザー回折装置を用いることによって求められる。
【0088】
破砕材料の粒度は、好ましくは、1999年10月27日、item 4.3からのVDGリーフレット(すなわち“Association of German foundry professionals”のリーフレット)に準拠したふるい分けによって求められる。対応するVDGリーフレットに記載の分析方法は、DIN ISO 3310に準拠している(特にそれに使用される試験用ふるいに関する)。
【0089】
耐火材料と水ガラスを含む粘結剤とから形成される使用済みの鋳造用鋳型又は中子からの鋳造用鋳型及び中子の製造に使用するための粒子状耐火組成物の本発明による製造方法の1つ(前述のもの、特に、好ましいと記載されるもの)も好ましく(好ましくは前述の本発明による)、
その方法は:
- 使用済みの鋳造用鋳型若しくは中子から破砕材料を提供するステップ、又は使用済みの鋳造用鋳型若しくは中子から破砕材料を製造するステップであって、破砕材料が、表面上に硬化水ガラス粘結剤を有する耐火材料の粒子及び/又は粒子凝集体を含むステップと、
- 破砕材料を、粒子状非晶質酸化物の総量を基準として85重量%以上の量の二酸化ケイ素を含む粒子状非晶質酸化物と水性液相の存在下で混合して混合物を得るステップと、
- 混合物に対して、400~750℃の範囲内、好ましくは570~730℃の範囲内、より好ましくは630~730℃の範囲内、最も好ましくは670~730℃の範囲内で加熱処理を行うステップであって、加熱処理が流動床中で行われるステップと、
を含む。
【0090】
水性液相の存在下での粒子状非晶質酸化物の使用、加熱処理のための規定された好ましい温度範囲の選択、又は流動化における加熱処理の実施に関連する利点に関して、それぞれの前述の議論が参照され、それらがこれに適宜適用される。
【0091】
本発明の別の関連する態様の1つでは、本発明は、
- 液相の総量を基準として80重量%以上の量の水を含む水性液相と、
- 粒子状非晶質酸化物の総量を基準として85重量%以上の量の二酸化ケイ素を含む粒子状非晶質酸化物とを、
使用済みの鋳造用鋳型又は中子から得られる破砕材料を含む再生混合物の構成要素として含む水性懸濁液の使用であって、破砕材料が、表面上に硬化水ガラス粘結剤を有する耐火材料の粒子及び/又は粒子凝集体を含む、使用に関する。
【0092】
本発明のさらなる一態様では、本発明は、熱処理用の再生混合物であって、
(i)使用済みの鋳造用鋳型又は中子から得られる破砕材料であって、表面上に硬化水ガラス粘結剤を有する耐火材料の粒子及び/又は粒子凝集体を含む破砕材料と、
(ii)水性懸濁液であって、
- 液相の総量を基準として80重量%以上の量の水を含む水性液相と、
- 粒子状非晶質酸化物の総量を基準として85重量%以上の量の二酸化ケイ素を含む粒子状非晶質酸化物と、
を含む水性懸濁液と、
を含む再生混合物に関する。
【0093】
上記で議論した本発明による方法のすべての好ましい実施形態は、変更すべきことは変更して、前述の水性懸濁液の使用及び熱処理用の再生混合物にも適用され、逆の場合も同様である。
【0094】
本発明の最後の態様では、本発明は、鋳造用鋳型又は中子の製造方法であって:
- 前述の規定の方法又は添付の請求項に記載の方法(特に好ましいと記載されるもの)により粒子状耐火組成物を製造するステップと、
- 粒子状耐火組成物を粘結剤、好ましくは水ガラス粘結剤と混合するステップと、
- 得られた混合物を成形するステップと、
- 上記の成形された混合物中の粘結剤を硬化させるステップと、
を含む、方法に関する。
【0095】
自身の実験では、鋳造用鋳型及び中子の製造に使用するための本発明の方法により製造された粒子状耐火組成物は、優れた低酸消費量及び優れた低導電率を示すことが分かった。さらに、このような粒子状耐火組成物を用いることによって製造された鋳造用鋳型及び中子は優れた結合強度(さらなる詳細は実施例の項に見ることができる)を示し、対応する鋳造用鋳型を用いて製造した鋳物は優れた表面品質を有する。本発明による鋳造用鋳型又は中子の製造方法に使用される粘結剤は、好ましくは前述のような水ガラス粘結剤である。好ましくは、粘結剤は、水ガラス及び粒子状非晶質二酸化ケイ素を含む。別の又は追加の添加剤の存在も好ましい(粘結剤が好ましくはリン含有化合物、炭水化物、界面活性剤、硫酸バリウム、及びオキシドホウ素(oxid boron)化合物からなる群から選択される1つ以上の化合物をさらに含むことに関する前述の開示が参照され、これらがここで同様に適用される)。
【0096】
(前述のような)本発明による鋳造用鋳型又は中子の製造方法において、粘結剤(好ましくは、水ガラス粘結剤)は、好ましくは熱によって(例えば熱風によって)硬化させる。本発明の方法により製造された鋳造用鋳型又は中子は、有利には、鋳物及び鋳造プロセスにおいて優れた性質を示し、使用後、それらは前述のように再利用することができ、すなわち、本発明の方法より製造された使用済みの鋳造用鋳型又は中子は破砕することができ、その結果得られる破砕材料は、鋳造用鋳型及び中子の製造に使用するための粒子状耐火組成物の本発明の製造方法における出発物質として使用することができる。
【実施例
【0097】
実施例1:熱処理用の再生混合物の構成要素として使用するための水性懸濁液の調製及び組成
水性懸濁液(「懸濁液A」)を調製した。
【0098】
懸濁液Aは、25重量%のシリカフュームSIF-A-T(Yingkou Imerys Astron Chemicals Co.,Ltd;CAS番号:69012-64-2;SiO2含有量=95重量%)と、25重量%のフィロケイ酸塩Satintone(登録商標)W/Whitetex(登録商標)(BASF Catalysts LLCの焼成カオリナイト、325メッシュによるスクリーン残留物=0.02%;平均ストークス相当径=1.4μm)との水中の水性懸濁液である。シリカフュームの重量%とフィロケイ酸塩の重量%との両方は、懸濁液の総量を基準としている。使用したシリカフュームのD50は1~2μmの間である。使用したシリカフュームのD90は4.485μmである。
【0099】
懸濁液Aは、当技術分野において周知の手順を用いて調製した。これは、それぞれの構成要素(水、シリカフューム、フィロケイ酸塩)を混合することを含んだ。懸濁液Aの顕著な特性を表1にまとめている。
【0100】
【表1】
【0101】
実施例2:パイロットプラント試験
“Single Axis Attrition Flasher”(Chin Ying Foundry Material co.LTD)機械的処理装置中、及び“Energy-Saving Counter Flow Furnace”SX2-5-12(Chin Ying Foundry Material co.LTD)流動床中で、パイロットプラント試験を行った。これらの設備の両方は、CHIN YING FOUNDRY MATERIAL(TIANJIN)CO.,LTDによって製造され、そのTianjin plant,Chinaの中に配置された。パイロット試験は以下のように行った。
【0102】
実施例2.1:使用済みの鋳造用中子からの破砕材料の製造、再生混合物の製造、及び粒子状耐火組成物の製造
I)耐火材料(LIANXIN SAND GROUPの焼成珪砂;50~55の間のAFS値;0.1%未満の粘土含有量)と、水ガラスを含む粘結剤系(Huettenes-Albertus Chemische Werke GmbH社のCordis(登録商標)8593)とから形成される使用済みの鋳造用中子(以前にアルミニウム鋳造に使用した)、及び粒子状非晶質シリカ(Huettenes-Albertus Chemische Werke GmbH社のAnorgit(登録商標)8610、Anorgit(登録商標)8610の総量を基準として65~70重量%の間の量の粒子状非晶質シリカを含む)に対して、1回又は2回連続する破砕ステップを行うことによる機械的処理を行った(すなわち、破砕した)。ここで、使用済みの鋳造用中子の材料は、表面上に硬化水ガラス粘結剤を有する耐火材料の粒子及び/又は粒子凝集体を含む破砕材料に変換される。
a.第1の破砕ステップでは、上記使用済み鋳造用中子からの総量1000kgの使用済みの鋳物砂を通常の鋳物用粉砕機で破砕した。次に、この結果得られる破砕材料を「試料A」と名付ける。
b.第2の連続する破砕ステップでは、総量750kgの「試料A」に対して“Single Axis Attrition Flasher”機械設備でさらなる機械的処理(破砕)を行った。Single Axis Attrition Flasherは不連続な設備である。第2の連続する破砕ステップは、バッチ当たり250kgの3つのバッチで行った。3つすべてのバッチは、15kWの出力、1800r/分の回転速度、20分の処理時間を用いることによって処理した。次に、この結果得られる破砕材料を「試料B」と名付ける。
c.表面上に硬化水ガラス粘結剤を有する耐火材料の粒子及び/又は粒子凝集体を含む結果として得られた試料A及び試料Bをさらなる用途のために収集した。
【0103】
II)水性懸濁液Aを、「実施例1:熱処理用の再生混合物の構成要素として使用するための水性懸濁液の調製及び組成」により調製した。
【0104】
III)試料Bの破砕材料を(a)懸濁液Aを使用せず、及び(b)懸濁液Aを使用の2つの異なる方法で処理した:
a.300kgの試料Bを、730℃にあらかじめ加熱した“Energy-Saving Counter Flow Furnace SX2-5-12”流動床に供給した。そこで、試料Bに対して730℃で1時間の加熱処理を行い、続いて、加熱せずに4時間くすぶらせ、続いて冷却した。次に、この結果得られた粒子状耐火組成物を「試料C」と名付ける。
b.別の300kgの試料Bを3kgの懸濁液Aと混合して、試料Bと懸濁液Aとの均一混合物、すなわち本発明による熱処理用の再生混合物を得た。その後、この結果得られた熱処理用の再生混合物に対して、ステップIII)aに記載のものと同じ(加熱)処理を行った。次に、本発明による方法によって製造されて得られた粒子状耐火組成物を「試料D」と名付ける。
【0105】
実施例2.2:使用済みの鋳造用中子から得られる破砕材料と、実施例2.1により製造した粒子状耐火組成物との酸消費量、導電率、及び砂粒表面の光学分析
試料A、試料B、試料C、試料D、及び新しい粒子状耐火組成物(すなわち、LIANXIN SAND GROUPの焼成珪砂)の酸消費量(COA)及び導電率の測定及び決定を行った。COAは、試料のアルカリ含有量を求めるために、無機分析化学(試料の酸塩基滴定を伴う)で使用される値である。導電率値は、試料中の導電性物質の含有量を求めるために測定される。両方の値は、試料の「清浄度」に直接関連している。COA及び導電率の両方の値が小さいことは、高度な試料清浄度を示している。清浄な材料は一般に、鋳造用鋳型及び中子の製造に使用される場合により良好な性質を示すので、高い清浄度の粒子状耐火組成物が好ましい。試料の清浄度について、光学顕微鏡によるそれぞれの試料の砂粒表面の分析によってさらに評価した。
【0106】
酸消費量(COA)の測定:
- COAの測定に使用した装置:
- 化学天秤(精度:±0.01g);
- 250mLのキャップ付き実験用ボトル;
- マグネチックスターラー;
- PTFEの円筒形磁気撹拌子(約50×8mm);
- ビュレット;
- 50mLのピペット;
- 300mLの三角フラスコ(広口);
- 濾過漏斗;
- 濾紙;
- フィルターホルダー。
【0107】
COAの測定に使用した試薬:
塩酸(0.1mol/L);
水酸化ナトリウム溶液(0,1mol/L);
ブロモチモールブルー(エタノール中0.1重量%);
超純水。
【0108】
酸消費量を測定するために、50g±0.01の試料(試料A、試料B、試料C、試料D、及び新しい粒子状耐火組成物)を、磁気撹拌子が入った250mLの実験用ボトル中にはかり取った。続いて、50mLのピペットを用いて50mLの超純水及び50mLの0.1mol/L塩酸を実験用ボトル中に入れた。キャップで実験用ボトルを閉めた後、得られた懸濁液を最初にマグネチックスターラーで5分間撹拌し、その後1時間静置した。同じ方法でブラインド懸濁液(すなわち50g±0.01の試料を有しない)を調製した。
【0109】
次に、濾過システムを用いて、得られた懸濁液を三角フラスコ中に濾過した。次に固体残留物(濾過ケーキ)をそれぞれ約10ミリリットルの超純水で5回洗浄し、その洗浄水を濾液に加えた。4~5滴のブロモチモールブルー指示薬を加えた後、濾液(洗浄水を含む)を、黄色から青色になるまで0.1mol/Lの水酸化ナトリウム溶液で滴定した。
【0110】
COAは以下のように計算され:
【数1】
式中、
ブラインドは、ブラインド懸濁液の場合の、0.1mol/Lの水酸化ナトリウム溶液の消費された体積(mL)であり、
試料は、試料A、試料B、試料C、試料D、又は新しい粒子状耐火組成物の対応する懸濁液の場合の、0.1mol/Lの水酸化ナトリウム溶液の消費された体積(mL)である。
【0111】
導電率の測定:
- 導電率の測定に使用した装置:
- 実験用天秤(精度=±0.01g);
- 250mLのビーカー;
- PTFEの円筒形磁気撹拌子(約50×8mm);
- 導電率計;
- メスシリンダー;
- 加熱板。
【0112】
導電率の測定に使用した試薬:
- 超純水。
【0113】
導電率測定のため、50±0.01gの試料(試料A、試料B、試料C、試料D、及び新しい粒子状耐火組成物)及び約100mLの超純水をビーカー中に入れた。得られた懸濁液を加熱板の上に置き、沸騰させた。5分間の沸騰後、懸濁液を室温まで冷却し、続いて導電率計を用いて導電率を測定した。
【0114】
光学顕微鏡による砂粒表面の分析
光学顕微鏡(VHX550/1000D、Keyence)を用いて砂粒表面の写真を撮影することによって、試料(試料A、試料B、試料C、試料D、及び新しい粒子状耐火組成物)の砂粒表面の分析を行った。光学顕微鏡によって分析した清浄度の評価を「1」から「5」の段階に基づいて行い、ここで1は、「非常に清浄」(検査した粒子表面上に残存硬化水ガラスなどの不純物を全く又はほとんど見ることができない)を意味し、5は、「非常に汚れている」(すなわち、検査した粒子表面上に、残存硬化水ガラスなどの多量の不純物を見ることができる)を意味する。
【0115】
酸消費量(COA)の測定、導電率の測定、及び光学顕微鏡による砂粒表面の分析に関する結果を表2中にまとめている。
【0116】
【表2】
【0117】
表2から分かるように、「試料D」(すなわち本発明による方法によって製造した再生粒子状耐火組成物)の酸消費量(COA)、導電率、及び光学顕微鏡によって分析した清浄度の値は、「新しい粒子状耐火組成物」の基準試料によって示される理想的な値に近い。「試料D」を「試料A」及び「試料B」(すなわち、流動床中の追加の加熱処理を行わずに機械的処理によって製造した、使用済みの鋳造用中子からの破砕材料)と比較すると、COA、導電率、及び光学顕微鏡によって分析した清浄度の値が、本発明による方法(試料D)によって顕著な改善が見られることに注目すべきである。さらに、「試料D」を「試料C」(すなわち、加熱処理前に、粒子状耐火組成物の製造に使用した破砕材料を粒子状非晶質酸化物及びフィロケイ酸塩と混合しなかった再生粒子状耐火組成物)と直接比較すると、COA、導電率、及び光学顕微鏡によって分析した清浄度に関して「試料D」がより良好な値を示すことが実証されている。
【0118】
まとめると、上記の表2中に列挙される結果は、本発明による方法によって、当技術分野において典型的に使用される方法では実現できない非常に優れた性質を有する粒子状耐火組成物が(使用済みの鋳造用中子から)製造されることを示している。
【0119】
さらなる研究によって、懸濁液の総量を基準として水中に50重量%のシリカフュームSIF-A-Tの水性懸濁液を使用する(すなわちフィロケイ酸塩を含まない懸濁液を使用する)本発明による方法によって、同様に優れた性質を有する粒子状耐火組成物が得られることも示され、上記懸濁液によって製造した(再生)粒子状耐火組成物のCOA、導電率、及び光学顕微鏡によって分析した清浄度に関する測定値は、「試料D」の測定値とほぼ同程度に良好であり、「試料A」、「試料B」、又は「試料C」よりも良好である。
【0120】
実施例3:鋳造試験用の鋳造用中子の製造
実施例3.1:実施例2.1により製造した「試料A」、「試料B」、「試料C」(本発明によらない)、及び「試料D」(本発明による)による材料を使用することによる鋳造用中子の製造
「試料A」、「試料B」、「試料C」、「試料D」、及び新しい粒子状耐火組成物((すなわちLIANXIN SAND GROUPの焼成珪砂)を用いて、鋳造用中子になる試験片(屈曲用バー(bending bar)、寸法:22.4mm×22.4mm×178.0mm)を作製した。
【0121】
鋳造用中子を製造する前に、「試料A」、「試料B」、「試料C」、及び「試料D」による材料のAFS値、並びに新しい粒子状耐火組成物の「AFS値」を“VDG Merkblatt P 27”に記載の測定方法により測定した。“VDG Merblatt R 202”によると、AFS値は、粒子サイズを特徴付けるために米国鋳造技術者協会(American Foundrymen’s Society)(AFS)によって規定されるパラメーターである。この点において、AFS値は、検査する材料が均一な粒子サイズを有する場合に通過する、ふるい1インチ当たりの網目数を示す。AFS値を求めるために、100g±0.01gの各試料をふるい塔(1.000mm、0.710mm、0.500mm、0.355mm、0.250mm、0.180mm、0.125mm、0.090mm、0.063mmのメッシュのふるいを有するふるいの組を含む)の上で秤量した。このふるい塔を1.0mmの振幅で5分間動作させ、間隔は0sに設定した。ふるい分けの終了後、各ふるいの含有量が秤量され、以下の式を用いてAFS値が計算され:
【数2】
式中、gは全質量であり、giは、個別の粒の等級(例えば1.000mm~0.710mm)の質量であり、M3iは、個別の粒の等級の増倍係数(“VDG Merkblatt P 27”中に列挙される)である。
【0122】
鋳造用中子(屈曲用バー)を製造するため、2.2重量部の水ガラスを含む粘結剤(Huettenes-Albertus Chemische Werke GmbH社のCordis(登録商標)8593、すなわち水ガラス粘結剤)及び1.3重量部の添加剤(Huettenes-Albertus Chemische Werke GmbH社のAnorgit(登録商標)8610、Anorgit(登録商標)8610の総量を基準として65~70重量%の間の量の粒子状非晶質シリカを有する)を、100重量部(3500g)の「試料A」、「試料B」、「試料C」、「試料D」、又は新しい粒子状耐火組成物と均一化(混合)した。続いて、得られた混合物から、Morek Multiserw社の「Universal Core Shooter(LUT)」を用いたシューティングによって鋳造用中子を製造した。鋳造用中子のシューティングは、対応する混合物の成形と、上記の成形された混合物中の粘結剤の硬化とを含む。鋳造用中子のシューティングのパラメーターを表3中に列挙する。
【0123】
【表3】
【0124】
各試料(「試料A」、「試料B」、「試料C」、「試料D」、及び新しい粒子状耐火組成物)の10個の鋳造用中子(屈曲用バー)を前述の方法によって製造した。この結果得られた鋳造用中子(屈曲用バー)を中子強度試験及び鋳造試験に使用した。
【0125】
鋳造用中子(屈曲用バー)の中子強度は、暖かい状態(すなわちシューティングの15秒後)及び冷たい状態(すなわちシューティングの1時間後)において試験した。中子強度に関する各試験は、それぞれの鋳造用中子組成物で3回繰り返した。次に、3つの測定値のそれぞれから平均値を計算した。実験室(その中で中子強度試験を行った)は、21~22℃の間の温度、及び44~45%の間の相対湿度に空調した。十分高い中子強度は、鋳造を目的とする鋳造用鋳型又は中子の使用のための前提条件の1つである。
【0126】
さらに、鋳造用中子組成物ごとに7つの屈曲用バーを冷たい状態で秤量して、鋳造用中子の平均重量を求めた。鋳造用中子の平均重量によって、それぞれの中子の圧縮がいかに容易か又は困難かが示される。鋳造用中子の平均重量が軽いほど、鋳造用中子の圧縮が容易である。鋳造用中子の重い平均重量は、高度な圧縮に対応しており、通常は、それぞれの鋳造用中子が強度及び耐湿性に関して改善された値も示すことを意味する。
【0127】
鋳造用中子の中子強度及び中子重量、並びに鋳造用中子の製造に使用した材料のAFS値に関する結果を表4中にまとめている。表4中に列挙される中子強度値は、実施した3回の測定の平均値を表している。
【0128】
【表4】
【0129】
表4から分かるように、「試料A」、「試料B」、「試料C」、又は「試料D」を用いて製造した鋳造用中子の中子強度は、新しい粒子状耐火組成物を用いて製造した鋳造用中子の中子強度に近い(又はさらにはより高い)。さらに、「試料A」を除けば、上記試料の平均中子重量は、新しい粒子状耐火組成物を用いて製造した鋳造用中子の平均中子重量よりも大きい。「試料A」、「試料B」、「試料C」、及び「試料D」からの破砕材料のAFS値は、全体として、新しい粒子状耐火組成物のAFS値よりも小さい(しかし同じ範囲内である)。
【0130】
実施例3.2:実施例3.1により製造した鋳造用中子を使用することによる鋳造試験
それぞれの鋳造用中子組成物(A、B、C、D、新しい)の3個の鋳造用中子(屈曲用バー)にアルミニウム合金を用いて鋳造を行った。鋳造条件に関する詳細は表5中に列挙している。
【0131】
【表5】
【0132】
使用したアルミニウム合金の組成に関する詳細は表6中に列挙している。
【0133】
【表6】
【0134】
鋳造後、得られた鋳物の鋳造表面品質の等級を評価した。鋳造表面品質の等級を「1」から「4」の段階に基づいて評価し、ここで、「1」は、得られた鋳物の表面品質が非常に良好であることを意味し、「4」は、得られた鋳物の表面品質が非常に不十分であることを意味する。
【0135】
得られた鋳物の鋳造表面品質の等級に関する結果を表7中にまとめている。鋳造表面品質の特定の等級は、それぞれの場合で、同じ組成物のすべての鋳造用中子の全体の評価を表している。
【0136】
【表7】
【0137】
鋳造表面品質の等級に関して、「試料D」から製造した(すなわち本発明による方法によって製造した粒子状耐火組成物から製造した)鋳造用中子を使用することによって製造した鋳物が最良の結果を示している。このような鋳物の鋳造表面品質の等級は、「試料A」及び「試料B」から製造した(すなわち破砕材料から製造した)鋳造用中子を使用することによって製造した鋳物の鋳造表面品質の等級よりもはるかに良好であり、「試料C」から製造した(すなわち、加熱処理の前に、粒子状耐火組成物の製造に使用した破砕材料を、粒子状非晶質酸化物及びフィロケイ酸塩と混合しなかった再生粒子状耐火組成物から製造した)鋳物又は新しい粒子状耐火組成物から製造した鋳物の鋳造表面品質の等級よりも良好である。
【0138】
加熱処理前に、使用した破砕材料を、懸濁液の総量を基準として水中に50重量%のシリカフュームSIF-A-Tの水性懸濁液と混合した、本発明による方法によって製造した再生混合物から製造した鋳造用中子によっても、優れた等級の鋳造表面品質を有する鋳物が得られた。
【0139】
実施例4:異なる使用済みの鋳造用中子組成物を出発物質として使用することによる実施例2.1~3.2の繰り返し
全体的に、前述の実施例2.1~3.2を繰り返した。しかし、使用済みの鋳造用中子(表面上に硬化水ガラス粘結剤を有する耐火材料の粒子及び/又は粒子凝集体を含む破砕材料の製造に使用した)は、実施例2.1に使用したものとは異なる耐火材料(特に、Ma’anshan Shenzhou Sand CorporationのMongolia quartz sandを実施例4に使用した)と、水ガラスを含む粘結剤(Huettenes-Albertus Chemische Werke GmbH社のCordis(登録商標)8593)と、添加剤(Huettenes-Albertus Chemische Werke GmbH社のAnorgit(登録商標)8610)とから形成された。
【0140】
COA、導電率、中子強度、平均中子重量、及びAFS値の測定、並びに光学顕微鏡によって分析した清浄度の評価、及び鋳造表面品質の等級の評価を前述の方法と同じ方法で行った。対応する結果を表8中にまとめている。「試料A.2」、「試料B.2」、「試料C.2」、及び「試料D.2」は、それぞれ「試料A」、「試料B」、「試料C」、及び「試料D」と同様にして得た。表8の基準試料の「新しい粒子状耐火組成物」は、新しい耐火材料(すなわちMa’anshan Shenzhou Sand CorporationのMongolia quartz sand)を用いることによって製造した試料に相当する。
【0141】
【表8】
【0142】
表8から分かるように、本発明による方法によって製造した耐火組成物(「試料D.2」)は、この場合も、COA、導電率、光学顕微鏡によって分析した清浄度の評価、及び鋳造の等級に関して、一致した基準試料(「試料A.2」、「試料B.2」、及び「試料C.2」)と比較して最良の値を示している。したがって、本発明による方法によって、最先端技術で知られている方法と比較して、(使用される使用済みの鋳造用鋳型又は中子の組成とは無関係に)特に有利な性質が得られる。
本発明の好ましい態様は、下記の通りである。
〔1〕耐火材料と水ガラスを含む粘結剤とから形成される使用済みの鋳造用鋳型又は中子からの鋳造用鋳型及び中子の製造に使用するための粒子状耐火組成物の製造方法であって:
- 使用済みの鋳造用鋳型若しくは中子から破砕材料を提供するステップ、又は使用済みの鋳造用鋳型若しくは中子から破砕材料を製造するステップであって、前記破砕材料が、その表面上に硬化水ガラス粘結剤を有する耐火材料の粒子及び/又は粒子凝集体を含む、ステップと、
- 前記破砕材料を、粒子状非晶質酸化物の総量を基準として85重量%以上の量の二酸化ケイ素を含む粒子状非晶質酸化物と混合して混合物を得るステップと、
- 前記混合物を400℃以上の温度で加熱処理するステップと、
を含む、方法。
〔2〕前記加熱処理が、400~750℃の範囲内、好ましくは570~730℃の範囲内、より好ましくは630~730℃の範囲内、最も好ましくは670~730℃の範囲内の温度で行われ、及び/又は流動床又は熱砂再生ユニット中で行われ、前記流動床又は熱砂再生ユニット中の前記加熱処理と同時に、又は前記加熱処理後に、アルカリイオンを含むダスト及び/又は微粉及び/又は固体物質が好ましくは除去される、前記〔1〕に記載の方法。
〔3〕前記破砕材料が、その表面上に硬化水ガラス粘結剤を有する耐火材料の粒子及び/又は粒子凝集体を含む、使用済みの鋳造用鋳型又は中子から破砕材料を製造する前記ステップが、材料が破砕されるような、耐火材料と水ガラスを含む粘結剤とを含む使用済みの鋳造用鋳型又は中子からの材料の機械的処理を含み、
好ましくは
- 前記破砕材料が、その表面上に硬化水ガラス粘結剤を有する耐火材料の粒子を含み、
及び/又は
- 前記機械的処理が、耐火材料と水ガラスを含む粘結剤とを含む使用済みの鋳造用鋳型又は中子からの材料を、その表面上に硬化水ガラス粘結剤を有する耐火材料の粒子及び/又は粒子凝集体に変換するために2つ以上の連続する破砕ステップを含む、前記〔1〕又は〔2〕に記載の方法。
〔4〕- 前記破砕材料を前記粒子状非晶質酸化物と混合する前記ステップが、液相の存在下、
好ましくは水性液相の存在下、
より好ましくは液相の総量を基準として80重量%以上の量の水を含む水性液相の存在下で行われ、
混合する前記ステップが、好ましくは前記水性液相の構成要素としての1つ以上の有機化合物の存在下で行われ、
及び/又は
- 前記破砕材料を前記粒子状非晶質酸化物と混合する前記ステップにおいて、前記破砕材料が、液相中の前記粒子状非晶質酸化物の懸濁液と混合され、
好ましくは前記液相が水性液相であり、
より好ましくは前記液相が、液相の総量を基準として80重量%以上の量の水を含む水性液相であり、
好ましくは前記水性液相が1つ以上の有機化合物を含む、
前記〔1〕~〔3〕のいずれか一項に記載の方法。
〔5〕前記破砕材料が、
- 好ましくはカオリナイト、メタカオリン、モンモリロナイト、ハロイサイト、ヘクトライト、スメクタイト、白雲母、パイロフィライト、合成フィロケイ酸塩、及びそれらの混合物からなる群から選択されるフィロケイ酸塩であって、好ましくは部分的又は完全に焼成されており、
好ましくは粒子状非晶質酸化物との予備混合物として、
より好ましくは粒子状非晶質酸化物も含む液相中の予備混合懸濁液としてのものであり、
好ましくは前記液相が水性液相であり、
より好ましくは前記液相が、液相の総量を基準として80重量%以上の量の水を含む水性液相であり、
好ましくは前記水性液相が1つ以上の有機化合物を含む、
フィロケイ酸塩と、
- 懸濁化剤、好ましくは粘土を含むイライト、スメクタイト、及び/又は、アタパルジャイトと、
- 湿潤剤と、
- 分散剤と、
- 沈降防止剤と、
- 染料と、
- 顔料と、
- 殺生物剤、好ましくは殺真菌剤と、
- ゼオライトと、
- 水酸化アルミニウムと、
からなる群から選択される1つ以上の材料とも同時に又は連続して混合される、前記〔1〕~〔4〕のいずれか一項に記載の方法。
〔6〕粒子状非晶質酸化物の総量を基準として85重量%以上の量の二酸化ケイ素を含む前記粒子状非晶質酸化物が、
- 好ましくは金属ケイ素の酸素含有ガスによる酸化によって得られるシリカ、及びZrSiO 4 からZrO 2 及びSiO 2 への熱分解によって得られるシリカからなる群から選択されるシリカフュームと、
- 非晶質シリカと、
- 沈降ケイ酸と、
- 焼成ケイ酸と、
- シリカ溶融物の霧化、及び引き続く固化によって得られたシリカと、
からなる群から選択されるもう1つの物質を含む、前記〔1〕~〔5〕のいずれか一項に記載の方法。
〔7〕使用済みの鋳造用鋳型又は中子からの破砕材料の製造方法中に:
- 耐火材料と、水ガラスを含む粘結剤と、粒子状非晶質二酸化ケイ素とを含む成形用混合物を製造するステップと、
- 前記成形用混合物を成形するステップと、
- 前記成形用混合物を硬化させて、硬化した鋳造用鋳型又は中子を得るステップと、
- 前記硬化した鋳造用鋳型又は中子を金属鋳造プロセスに使用して、使用済みの鋳造用鋳型又は中子を得るステップと、
を含む、前記〔1〕~〔6〕のいずれか一項に記載の方法、好ましくは前記〔3〕に記載の方法。
〔8〕前記粘結剤が、
- 好ましくはメタリン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、及びそれらの混合物からなる群から選択されるリン含有化合物と、
- 炭水化物と、
- 界面活性剤、好ましくは陰イオン界面活性剤、より好ましくはサルフェート基、スルホネート基、又はホスフェート基を有するものと、
- 硫酸バリウムと、
- 好ましくはボレート、ボロホスフェート、ボロホスホシリケート、及びそれらの混合物からなる群から選択される酸化ホウ素化合物と、
からなる群から選択される1つ以上の化合物をさらに含む、前記〔7〕に記載の方法。
〔9〕粒子状非晶質酸化物の総量を基準として85重量%以上の量の二酸化ケイ素を含む粒子状非晶質酸化物の総量が、
- 破砕材料の全重量を基準として、0.01~3.0重量%の範囲内、好ましくは0.03~0.9重量%の範囲内、より好ましくは0.04~0.8重量%の範囲内、最も好ましくは0.06~0.4重量%の範囲内であり、
及び/又は
- 前記破砕材料中の耐火材料の前記粒子及び/又は前記粒子凝集体の表面上の硬化水ガラス粘結剤の全重量を基準として、10~60重量%の範囲内、好ましくは13~50重量%の範囲内、より好ましくは20~40重量%の範囲内、最も好ましくは25~35重量%の範囲内である、前記〔1〕~〔8〕のいずれか一項に記載の方法。
〔10〕粒子状非晶質酸化物の総量を基準として85重量%以上の量の二酸化ケイ素を含む前記粒子状非晶質酸化物が、100μm未満、好ましくは45μm未満、より好ましくは25μm未満、最も好ましくは5μm未満のD 90 を有し、
及び/又は
前記破砕材料の粒度が、100~600μmの範囲内、好ましくは120~550μmの範囲内、より好ましくは150~500μmの範囲内であり、
及び/又は
粒子状非晶質酸化物の総量を基準として85重量%以上の量の二酸化ケイ素を含む前記粒子状非晶質酸化物のD 90 と、前記破砕材料中の耐火材料の粒子及び/又は粒子凝集体のサイズとの比が、1:1未満、好ましくは1:10未満、より好ましくは1:20未満、最も好ましくは1:120未満である、
前記〔1〕~〔9〕のいずれか一項に記載の方法。
〔11〕- 使用済みの鋳造用鋳型若しくは中子から破砕材料を提供するステップ、又は使用済みの鋳造用鋳型若しくは中子から破砕材料を製造するステップであって、前記破砕材料が、その表面上に硬化水ガラス粘結剤を有する耐火材料の粒子及び/又は粒子凝集体を含む、ステップと、
- 前記破砕材料を、粒子状非晶質酸化物の総量を基準として85重量%以上の量の二酸化ケイ素を含む粒子状非晶質酸化物と、水性液相の存在下で混合して混合物を得るステップと、
- 前記混合物に対して、400~750℃の範囲内、好ましくは570~730℃の範囲内、より好ましくは630~730℃の範囲内、最も好ましくは670~730℃の範囲内の温度で加熱処理を行うステップであって、前記加熱処理が流動床中で行われるステップと、
を含む、好ましくは前記〔1〕~〔10〕のいずれか一項に記載の、耐火材料と水ガラスを含む粘結剤とから形成される使用済みの鋳造用鋳型又は中子からの鋳造用鋳型及び中子の製造に使用するための粒子状耐火組成物の製造方法。
〔12〕水性懸濁液の使用であって、前記水性懸濁液が、
- 液相の総量を基準として80重量%以上の量の水を含む水性液相と、
- 粒子状非晶質酸化物の総量を基準として85重量%以上の量の二酸化ケイ素を含む粒子状非晶質酸化物とを、
使用済みの鋳造用鋳型又は中子からの破砕材料を含む再生混合物の構成要素として含み、前記破砕材料が、その表面上に硬化水ガラス粘結剤を有する耐火材料の粒子及び/又は粒子凝集体を含む、使用。
〔13〕熱処理用の再生混合物であって、
(i)使用済みの鋳造用鋳型又は中子からの破砕材料であって、その表面上に硬化水ガラス粘結剤を有する耐火材料の粒子及び/又は粒子凝集体を含む、破砕材料と、
(ii)水性懸濁液であって、
- 液相の総量を基準として80重量%以上の量の水を含む水性液相と、
- 粒子状非晶質酸化物の総量を基準として85重量%以上の量の二酸化ケイ素を含む粒子状非晶質酸化物とを含む水性懸濁液と、
を含む、再生混合物。
〔14〕鋳造用鋳型又は中子の製造方法であって:
- 前記〔1〕~〔11〕のいずれか一項に記載の方法により粒子状耐火組成物を製造するステップと、
- 前記粒子状耐火組成物を粘結剤、好ましくは水ガラス粘結剤と混合するステップと、
- 得られた混合物を成形するステップと、
- 前記成形された混合物中の前記粘結剤を硬化させるステップと、
を含む、方法。