(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-03
(45)【発行日】2023-10-12
(54)【発明の名称】脂質バリアの修復
(51)【国際特許分類】
A61K 47/44 20170101AFI20231004BHJP
A61K 47/06 20060101ALI20231004BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20231004BHJP
A61K 47/14 20170101ALI20231004BHJP
A61K 9/06 20060101ALI20231004BHJP
A61K 8/02 20060101ALI20231004BHJP
A61K 8/70 20060101ALI20231004BHJP
A61K 8/31 20060101ALI20231004BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20231004BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20231004BHJP
A61K 8/92 20060101ALI20231004BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20231004BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20231004BHJP
A61K 31/395 20060101ALI20231004BHJP
A61K 33/00 20060101ALI20231004BHJP
【FI】
A61K47/44
A61K47/06
A61K47/10
A61K47/14
A61K9/06
A61K8/02
A61K8/70
A61K8/31
A61K8/34
A61K8/37
A61K8/92
A61Q19/00
A61P17/00
A61K31/395
A61K33/00
(21)【出願番号】P 2021514976
(86)(22)【出願日】2019-09-20
(86)【国際出願番号】 EP2019075345
(87)【国際公開番号】W WO2020064549
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2022-09-16
(32)【優先日】2018-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】522303560
【氏名又は名称】ダーマリック セラピューティクス, インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】DERMALIQ THERAPEUTICS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100133503
【氏名又は名称】関口 一哉
(72)【発明者】
【氏名】ルッシャー, フランク
(72)【発明者】
【氏名】グリレンベルガー, ラルフ
(72)【発明者】
【氏名】レオ, キアラ, シルヴァーナ
(72)【発明者】
【氏名】バイアー, マルクス
【審査官】鶴 剛史
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-249913(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第0670159(EP,A1)
【文献】特開2004-083593(JP,A)
【文献】特表2017-515855(JP,A)
【文献】特開2018-123138(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/00 ~ 9/72
A61K 47/00 ~ 47/69
A61K 31/00 ~ 33/44
A61K 8/00 ~ 8/99
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含む軟膏の形態の
均質な半固形の組成物:
a)半フッ素化アルカン
b)固形増粘剤
c)場合によっては、賦形剤、
であって、
前記組成物は水を含まず、
前記半フッ素化アルカンが、1-パーフルオロブチル-ペンタン(F4H5)、1-パーフルオロブチル-ヘキサン(F4H6)、1-パーフルオロブチル-オクタン(F4H8)、1-パーフルオロブチル-デカン(F4H10)、1-パーフルオロヘキシル-オクタン(F6H8)、1-パーフルオロヘキシル-デカン(F6H10)、およびそれらの組合せから選択され、
前記固形増粘剤が、植物ワックス、動物ワックス、石油由来ワックス、トリグリセリド、セチルアルコール、パルミチン酸セチル、テトラデカノール、またはそれらの組合せから選択される、組成物。
【請求項2】
有効成分をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記半フッ素化アルカンが、1-パーフルオロヘキシル-オクタン(F6H8)、1-パーフルオロブチル-オクタン(F4H8)、1-パーフルオロヘキシル-デカン(F6H10)、およびそれらの組合せから選択される、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物が、3~11wt%の前記固形増粘剤を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
組成物の総重量に対して、80~97wt%の前記半フッ素化アルカンおよび3~11wt%の前記増粘剤を含む、請求項1から
4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記増粘剤が、ビーズワックス、ラノリン(ウールワックス)、カルナウバワックス、カンデリラワックス、キャスターワックス、ライスブランワックス(ライスワックス)、鯨ワックス、ホホバオイル、ブランワックス、モンタンワックス、カポックワックス、ベイベリーワックス、シェラックワックス、サトウキビワックス、パラフィンワックス、セレシンワックスからなる群から選択されるワックスである、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記賦形剤が、1種または複数の共溶媒または油性材料から選択される、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
組成物の総重量に対して、80~97w%の前記半フッ素化アルカン、3~11wt%の前記増粘剤、および3~6wt%の前記賦形剤を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
哺乳動物の体と接触すると融解し、室温で半固形である、請求項1から8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記有効成分が、分子状ヨウ素、コルチコステロイド、カルシニューリン阻害剤、レチノイド、ビタミンD類似体から選択される、請求項2から9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記組成物が防腐剤を含まない、請求項1から10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
刺激性接触皮膚炎、アレルギー性接触皮膚炎、アトピー性皮膚炎、乾癬、にきびから選択される皮膚の脂質バリア損傷に関連する疾患の予防に使用するための、請求項
1から11
のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
乾燥肌、老化した肌、かゆみから選択される
皮膚の脂質バリア損傷に関連する状態の予防に使用するための、請求項1から11
のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
請求項1から
11のいずれか一項で定義される組成物と、前記組成物を保持するための容器とを含むキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半フッ素化アルカンを含む軟膏に関する。本発明の軟膏は、さらなる医薬組成物または化粧用組成物を調製するための軟膏基剤として使用することができる。特に、本発明の軟膏は、乾癬、皮膚炎、にきび、およびそれらに関連する症状など、皮膚の脂質バリア損傷に関連する皮膚疾患および状態の治療に使用することができる。
【背景技術】
【0002】
軟膏は、体に外用するための半固形剤である。治療上、軟膏は、皮膚保護剤および皮膚軟化剤として機能するが、主に薬物の局所的塗布のためのビヒクルまたは基剤として使用される。理想的には、軟膏基剤は、皮膚に適合性があり、安定で、永続的で、滑らかかつ柔軟で、非刺激性で、非感作性で、不活性であり、組み込まれた薬物を容易に放出できる必要がある。軟膏は、その組成によって、油脂性、乳剤性、乳化基剤、および水溶性に最もよく分類される。
【0003】
油脂性軟膏基剤には、植物由来の油、動物からの脂肪、および石油から得られる半固形炭化水素が含まれる。植物油と動物性脂肪には、吸水能が低いこと、および嫌な臭いになる傾向があることといった、軟膏基剤として2つの顕著な欠点がある。炭化水素基剤は、広範囲の融点を持つ物質のグループを含む。それらは安定であり、刺激がなく、化学的に不活性であり、事実上すべての化学物質と混ざる。油脂性軟膏の例には、白色軟膏(白色ワックスおよび白色ワセリン)、黄色軟膏(黄色ワックスおよびワセリン)、セチルエステルワックス、ワセリン(石油から得られる半固形炭化水素の精製混合物)が含まれる。
【0004】
乳剤性軟膏基剤と呼ばれることもある吸収性軟膏基剤は、一般に、かなりの量の水を吸収(乳化)し、それでもその軟膏の稠度を保持する特性を持つ無水物質である。例としては、ラノリン無水物、親水ワセリンがある。
【0005】
乳化軟膏基剤は、実際には半固形乳剤であり、水中油型エマルションの軟膏基剤および油中水型エマルションの軟膏基剤に分けられる。
【0006】
水溶性軟膏基剤には、Carbowax(商標)の名で販売されている高級エチレングリコールポリマーから調製された基剤が含まれる。(Remington、「The Science and practice of pharmacy」、1076-1080ページ)。
【0007】
油脂性基剤は、密閉性があり、皮膚を空気から保護する。それらは疎水性であるため、水で洗い流されず、触るとべたつき感がある。油脂性基剤は、水分を皮膚から逃がさず、乾燥せず、長時間皮膚上に留まるため、主に潤滑効果のために使用される。ワセリン石油ゼリーは、油脂性基剤の一例である。
【0008】
哺乳類の皮膚は、さまざまな高度な機能を備えた非常に複雑な器官であり、最も重要な機能の1つは、過度の水分喪失、ならびに生体異物および微生物の攻撃に対するバリアとして機能することである。適切に機能するバリアは、健康な皮膚に不可欠であるが、同時に、活性化合物の浸透が重要である医薬製剤および活性化粧用製剤の開発にとっては課題となる。
【0009】
この皮膚バリア機能にとって重要なのは、皮膚の最外層である角質層(SC)中の脂質マトリックスである。その機能は、(1)表皮から過度の水分喪失を防ぐこと、および(2)環境からの化合物が、生きている表皮層と真皮層に浸透し、それにより免疫応答が引き起こされるのを避けることの2つである。SC脂質マトリックスの組成は、コレステロール、遊離脂肪酸、セラミドの3つの脂質クラスが大半を占める。これらの脂質は、積み重ねられ、密に詰まった脂質層(脂質ラメラ)の高度に秩序化された三次元構造(ラテラルおよびラメラ脂質組織化)をとる。
【0010】
皮膚バリア機能の障害は、アトピー性皮膚炎(AD)、刺激性/アレルギー性接触皮膚炎(ICD、ACD)など、いくつかの皮膚疾患で発生する。皮膚バリアの損傷は、脂質生成を刺激するサイトカインの産生を引き起こし、また、炎症過程を引き起こす可能性がある。
【0011】
皮膚炎は、かゆみ、発疹、赤い皮膚を特徴とする皮膚の炎症を指す。短期間の場合には、小さな水ぶくれができる可能性があり、一方、長期間の場合には、皮膚が厚くなる可能性がある。皮膚炎は、アトピー性皮膚炎、アレルギー性接触皮膚炎、および刺激性接触皮膚炎を含む皮膚状態のグループである。皮膚炎の正確な原因は、しばしば不明である。症例には、刺激、アレルギー、および静脈還流不良の組合せが関係する場合がある。
【0012】
刺激性接触皮膚炎は、機械的摩擦もしくは寒さなどの物理的要因、またはより一般的には化学物質のいずれかによって引き起こされる、皮膚に対する非特異的な細胞損傷の結果である。該皮膚炎は、頻繁に手を濡らす人の手にしばしば起こる。アレルギー性接触皮膚炎は、アレルゲンにさらされると起こり、皮膚に過敏反応を引き起こす。
【0013】
環境誘発性皮膚炎の最も頻繁にある兆候は、乾燥肌(乾皮症)である。乾燥は通常、バリア機能の障害と関連するが、乾燥の臨床的外観によると、下に無傷の透過性バリアを持つ角質層の最も外側の構造における変化に限定することができる。保湿剤は通常、皮膚の正常化を促進する(Am.J.Clin.Dermatol.、2003、4(11)、771-788)。
【0014】
アトピー性皮膚炎の症状は、人によって異なるが、最も一般的な症状は、乾燥、かゆみ、赤い皮膚である。典型的な患部の皮膚としては、腕のひだ、膝の後ろ、手首、顔、手などが挙げられる。
【0015】
アトピー性皮膚炎は、通常、保湿剤およびステロイドクリームで治療する。ステロイドクリームは、一般的に中強度から高強度であり、副作用が発生する可能性があるため、一度に2週間未満で使用する必要がある。皮膚感染の兆候がある場合には、抗生物質が必要になることがある。
【0016】
乾癬は、皮膚および関節に患う免疫性疾患である。一般的に、赤いうろこ状のパッチが皮膚に現れる原因になる。乾癬によって引き起こされるうろこ状のパッチは、しばしば乾癬プラークまたは病斑と呼ばれる。乾癬プラークは、過度の皮膚細胞生成および炎症の部分である。皮膚は、これらの部位で急速に蓄積し、時には銀白色の外観を呈する。プラークは、肘および膝の皮膚でたびたび発生するが、頭皮や性器を含むあらゆる部分で罹患する可能性がある。
【0017】
尋常性ざ瘡としても知られるにきびは、毛包が、死んだ皮膚細胞および皮膚からの油で詰まるときに起こる、長期的な皮膚疾患である。ブラックヘッドまたはホワイトヘッド、吹き出物、脂性肌、および起こり得る瘢痕によって特徴付けられる。主に、顔、胸の上部、背中など、脂腺の数が比較的多い皮膚の部分に患う。
【0018】
皮膚軟化剤および保湿クリームは、乾燥肌のサイクルを断ち切り、皮膚の滑らかさを保つために使用される。「保湿剤」という用語が、皮膚軟化剤と同意語として使用されることがよくあるが、保湿剤には、角質層に潤いを与えるための保水剤が含まれていることが多い。保湿剤には、皮膚の保湿以外にも複数の機能がある。他の活性物質と同様に、有効性は用量に依存する可能性が高く、コンプライアンスは皮膚疾患の管理において直面する大きな課題である。成分からの強い臭い、およびべたつく組成物は、患者にとって不快となり得る。さらに、例えば、乳酸や尿素に由来する低pHおよび感覚反応によって、患者の受け入れが低下することがある。一旦皮膚に塗布されると、成分は表面に留まり、皮膚に吸収され、代謝され、または蒸発、脱落、もしくは他の材料との接触によって表面から消失することがある。
【0019】
定義によれば、保湿剤には、ワセリンまたはラノリンなどの密閉性成分が含まれる。これらは、皮膚を通した水の双方向の動きを妨げる撥水性脂質層で皮膚の表面を覆う。これらの薬剤は、皮膚からの水分喪失をブロックするため、脂質バリア損傷および加齢に伴う湿疹性疾患に関連する疾患の特徴である乾皮症を一時的に改善することができる。さらに、角質層の水分補給を改善することにより、炎症を抑えることができる。
【0020】
軟膏は、通常、非常に保湿性があり、乾燥肌に適している。基油または脂肪以外の成分が少ないため、感作のリスクが低く、刺激のリスクも低い。軟膏は、べたつきのために、しばしば患者に嫌われる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0021】
【文献】Remington、「The Science and practice of pharmacy」、1076-1080ページ
【文献】Am.J.Clin.Dermatol.、2003、4(11)、771-788
【発明の概要】
【0022】
本発明の目的は、治療および化粧用途に有用であり、皮膚炎、乾癬、にきびなどの皮膚の脂質バリア損傷に関連する皮膚障害を治療または予防するために使用できる軟膏を提供することである。本発明の目的は、特許請求の範囲によって達成される。
【0023】
本発明の軟膏組成物は、油脂性軟膏のような水を含まない他の軟膏よりも粘性が低いという利点を持ち、したがって、皮膚および布地/衣類にべたつく残留物を残すことなく、また皮脂腺を詰まらせることなく、角質層に迅速かつ完全に浸透する軟膏をもたらす。さらに、本発明の軟膏組成物は、皮膚への塗布中および塗布後に、心地よい絹のような感触を与える。本発明の軟膏の別の利点は、他の軟膏よりも大量に酸素を皮膚に運ぶことができることである。皮膚への酸素供給は、健康な皮膚のために重要である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】実施例に記載の手順に従って得られ、組成物の総重量に対して、95重量パーセントの濃度でF6H8、および5重量パーセントの濃度でビーズワックスを含む軟膏を表す。
【0025】
【
図2】実施例に記載の手順に従って得られ、組成物の総重量に対して、92重量パーセントの濃度でF6H8、5重量パーセントの濃度でビーズワックス、および3重量パーセントの濃度でスクワランを含む軟膏を表す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
第1の態様では、本発明は、半フッ素化アルカン、固形増粘剤、および場合によっては賦形剤を含む、軟膏の形態の組成物を提供する。
【0027】
軟膏は、皮膚または粘膜への外用を目的とした均質な半固形の製剤である。
【0028】
半フッ素化アルカンは、直鎖状または分岐状アルカンであり、その水素原子の一部が、フッ素に置き換えられている。本書類の全体を通じて「SFA」とも呼ばれる「半フッ素化アルカン」という用語は、本明細書で使用される場合、少なくとも1つの過フッ素化セグメント(Fセグメント)および少なくとも1つの非フッ素化炭化水素セグメント(Hセグメント)から構成される、直鎖状または分岐状化合物を指す。好ましくは、半フッ素化アルカンは、1つの過フッ素化セグメント(Fセグメント)および1つの非フッ素化炭化水素セグメント(Hセグメント)から構成される、直鎖状または分岐状化合物である。好ましくは、前記半フッ素化アルカンは、4℃~40℃の温度範囲内において、液体状態で存在する化合物である。一実施形態では、前記SFAの過フッ素化セグメントおよび/または炭化水素セグメントは、場合によっては、環状炭化水素セグメントを含むか、またはそれからなる、あるいは場合によっては、前記SFAは、炭化水素セグメント内に不飽和部分を含む。
【0029】
直鎖状または分岐状の半フッ素化アルカンのFセグメントおよびHセグメントは、互いに独立して、2~10個の炭素原子を含むことが好ましい。
【0030】
本発明の好ましい実施形態によれば、半フッ素化アルカンは、式(I)CF3(CF2)n(CH2)mCH3の直鎖状化合物であり、nおよびmは、互いに独立して、2~10の範囲から選択される整数である。
【0031】
別の命名法によれば、直鎖状半フッ素化アルカンは、FnHmと呼ばれ得、Fは過フッ素化炭化水素セグメントを意味し、Hは非フッ素化炭化水素セグメントを意味し、n、mは、対応するセグメントの炭素原子の数である。例えば、F4H5は、1-パーフルオロブチル-ペンタンに対して使用される。本発明の好ましい実施形態では、半フッ素化アルカンは、式(I)CF3(CF2)n(CH2)mCH3の半フッ素化アルカンであり、nは3~5から選択され、mは4~9から選択される。より好ましいのは、F4H5、F4H6、F4H8、F4H10、F6H8、F6H10からなる群から選択される半フッ素化アルカンである。最も好ましいのは、F4H8、F6H8、およびF6H10から選択される半フッ素化アルカンである。
【0032】
好ましくは、本発明の組成物は、組成物の総重量に対して、50~97重量パーセント、好ましくは70~97重量パーセント、より好ましくは80~97重量パーセントの濃度で半フッ素化アルカンを含む。最も好ましくは、半フッ素化アルカンは、組成物の総重量に対して、85~95重量パーセントの濃度で存在する。
【0033】
好ましい実施形態では、半フッ素化アルカンは、組成物の総重量に対して、少なくとも50重量パーセント、好ましくは少なくとも70重量パーセント、より好ましくは少なくとも80重量パーセント、最も好ましくは少なくとも85重量パーセントの濃度で存在する。より好ましい実施形態では、半フッ素化アルカンは、組成物の総重量に対して、最大95重量パーセントの濃度で存在する。
【0034】
本発明において、固形増粘剤は、軟膏の形態の組成物に含まれる。本発明で用いることができる固形増粘剤には、植物ワックス、動物ワックス、石油由来ワックス、固形および半固形トリグリセリド、C12-24脂肪酸、C8-18グリセリド、脂肪族アルコール、脂肪族アルコール誘導体、ならびにそれらの任意の組合せが含まれる。ワックスの非限定的な例は、ビーズワックス、ラノリンワックス(ウールワックス)、ラノリンワックス誘導体、カルナウバワックス、カンデリラワックス、キャスターワックス、ライスブランワックス、鯨ワックス、ブランワックス、モンタンワックス、カポックワックス、ベイベリーワックス、シェラックワックス、サトウキビワックス、パラフィンワックス、セレシンワックスである。
【0035】
好ましい実施形態では、固形増粘剤は、植物ワックス、動物ワックス、石油由来ワックス、固形および半固形トリグリセリド、セチルアルコール、パルミチン酸セチル15、テトラデカノール、ならびにそれらの任意の組合せから選択される。より好ましい実施形態では、固形増粘剤は、ビーズワックス、カルナウバワックス、セチルアルコール、テトラデカノール、石油由来ワックス、パラフィンワックス、パルミチン酸セチル15、固形および半固形トリグリセリドから1種または複数選択される。より好ましくは、固形増粘剤は、ビーズワックス、固形および半固形トリグリセリド、ワセリンなどの石油由来ワックス、セチルアルコール、テトラデカノール、パルミチン酸セチル15、パラフィンワックス、ならびにそれらの任意の組合せから選択される。
【0036】
固形増粘剤は、組成物の総重量に対して、3~50重量パーセントの濃度で、好ましくは3~30重量パーセントの濃度で、より好ましくは3~20重量パーセント、最も好ましくは3~11重量パーセントで含まれ得る。
【0037】
好ましくは、本発明の組成物は、いかなる防腐剤も含まない。
【0038】
本発明の組成物は、有効成分をさらに含むことができる。好ましくは、有効成分は、消毒剤、コルチコステロイド、抗生物質、カルシニューリン阻害剤、麻酔剤、レチノイド、ビタミンD類似体、免疫抑制剤、プロスタグランジン類似体、カプサイシノイド、アベルメクチンから選択される1種である。好ましい実施形態では、有効成分は、分子状ヨウ素、プロスタグランジン類似体、イベルメクチン、カプサイシン、シクロスポリン、タクロリムス、コルチコステロイド、カルシニューリン阻害剤、レチノイド、ビタミンD類似体から選択される1種であり得る。最も好ましい実施形態では、有効成分は、分子状ヨウ素、シクロスポリン、ラタノプロスト、カプサイシン、およびイベルメクチンから選択される1種である。
【0039】
有効成分は、組成物の総重量に対して、最大10重量パーセント、好ましくは、組成物の総重量に対して、最大5重量パーセントの濃度で含まれ得る。好ましい実施形態では、有効成分は、組成物の総重量に対して、0.05~10重量パーセント、好ましくは0.05~5重量パーセントの濃度で存在する。
【0040】
場合によっては、本発明の組成物は、共溶媒などの賦形剤、または軟膏の調製に有用なものなどの油性材料をさらに含むことができる。賦形剤は、組成物の総重量に対して、最大45重量パーセントの濃度で存在し得る。好ましい実施形態では、賦形剤は、組成物の総重量に対して、最大25重量パーセント、好ましくは最大10重量パーセント、より好ましくは最大6重量パーセントの濃度で存在する。より好ましくは、賦形剤は、組成物の総重量に対して、1~45重量パーセント、最も好ましくは1~25重量パーセント、さらに最も好ましくは1~10重量パーセントの濃度で存在する。
【0041】
本発明の組成物に含まれ得る共溶媒の例は、イソプロパノール、エタノール、液体中鎖トリグリセリド、N-メチル-2-ピロリドン、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸エチル、オレイン酸エチル、オクチルドデカノール、セバシン酸ジエチルである。好ましくは、共溶媒は、イソプロパノール、エタノール、液体中鎖トリグリセリド、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、セバシン酸ジエチルから選択される。
【0042】
共溶媒は、組成物の総重量に対して、0.5~10重量パーセント、好ましくは0.5~5重量パーセントの濃度で存在し得る。
【0043】
油性材料の例は、スクワラン、スクワレン、チモール、エッセンシャルオイル、液体トリグリセリド、シクロメチコン、およびジメチコンなどのシリコーンオイル、ミネラルオイル、オリーブ、ココナッツ、ホホバ、ゴマ、アボカド、ヒマワリ、ベニバナ、ボラージ、コーン、およびシーバックソーンオイルなどの皮膚軟化植物油である。好ましい実施形態では、本発明の組成物は、スクワラン、スクワレン、シリコーンオイル、ミネラルオイル、エッセンシャルオイル、液体トリグリセリド、植物油から選択される油性材料を含む。
【0044】
油性材料は、組成物の総重量に対して、0.1~25重量パーセント、好ましくは0.1~10重量パーセントの濃度で存在し得る。
【0045】
ミリスチン酸イソプロピルおよびパルミチン酸イソプロピルのような皮膚軟化剤を、本発明の組成物に含めることができる。
【0046】
水はまた、本発明の組成物中に存在することができるが、好ましくは、組成物の総重量に対して、最大1,0重量パーセント、さらには最大0,1重量パーセントの少量または微量である。好ましい実施形態では、本発明の組成物は、本質的に水を含まないが、残留水は、選択された有効成分の潜在的な含水量に起因する可能性がある。本明細書で使用される「本質的に」という用語は、存在する場合、本発明の目的に関して技術的利点または重要性に影響を与えないような微量または残留量で存在することを意味する。より好ましい実施形態では、軟膏の形態の組成物は、水を含まない軟膏である。
【0047】
上記の本発明の第1の態様の組成物に関連するすべての実施形態および好ましい実施形態は、本発明の以下の態様のすべてに適用される。
【0048】
本発明の第2の態様では、本発明の第1の態様による組成物は、医薬として使用することができ、特に、皮膚の脂質バリア損傷に関連する疾患または状態の予防または治療に使用することができる。脂質バリア損傷に関連する疾患の例は、皮膚炎、乾癬、にきびである。好ましい実施形態では、脂質バリア損傷関連疾患は、刺激性接触皮膚炎、アレルギー性接触皮膚炎、アトピー性皮膚炎、乾癬、にきびから選択される1種である。好ましくは、脂質バリア損傷関連疾患は、皮膚炎または乾癬、より好ましくは皮膚炎である。皮膚の脂質バリア損傷に関連する状態は、乾燥肌、老化した肌、かゆみであり得る。
【0049】
第3の態様では、本発明は、皮膚の脂質バリア損傷に関連する疾患または状態の治療方法であって、本発明の第1の態様による組成物を、皮膚の脂質バリア損傷に関連する疾患または状態に罹患している対象の皮膚に、局所的に投与することを含む、方法を提供する。脂質バリア損傷関連疾患は、皮膚炎、乾癬、にきびから選択される1種であり得、好ましくは、刺激性接触皮膚炎、アレルギー性接触皮膚炎、アトピー性皮膚炎、乾癬、にきびから選択される1種であり得る。好ましい実施形態では、脂質バリア損傷関連疾患は、皮膚炎または乾癬、より好ましくは皮膚炎である。皮膚の脂質バリア損傷に関連する状態は、乾燥肌、老化した肌、かゆみであり得る。
【0050】
第4の態様では、本発明は、皮膚の脂質バリア損傷に関連する疾患または状態を治療する方法において、本発明の第1の態様の組成物の使用を提供する。
【0051】
第5の態様では、本発明は、皮膚の脂質バリア損傷に関連する疾患または状態を治療するための医薬を製造するために、本発明の第1の態様の組成物の使用を提供する。
【0052】
第6の態様では、本開示は、本発明の第1の態様による組成物と、該組成物を保持するための容器とを含むキットを提供する。容器は、例えば、ジャー、チューブ、ボトル、ディスペンサー、または組成物を保持するのに適した他のタイプの容器であり得る。容器は、例えば、ポンプおよび/またはスクイーズ機構を有することができる。
【0053】
キットは、本発明の第1の態様の組成物が配置される容器を含むパッケージを含み得る。パッケージには、使用説明書を含めることができる。
【0054】
要約すると、本発明は以下の項目を含む。
1.以下を含む軟膏の形態の組成物:
a)半フッ素化アルカン
b)固形増粘剤
c)場合によっては、賦形剤。
2.有効成分をさらに含む、項目1に記載の組成物。
3.半フッ素化アルカンが、式F(CF2)n(CH2)mHであり、nは2~10から選択される整数であり、mは2~10から選択される整数である、先行する項目のいずれかに記載の組成物。
4.nが4~6から選択される整数であり、mが5~10から選択される整数である、項目3に記載の組成物。
5.半フッ素化アルカンが、1-パーフルオロブチル-ペンタン(F4H5)、1-パーフルオロブチル-ヘキサン(F4H6)、1-パーフルオロブチル-オクタン(F4H8)、1-パーフルオロブチル-デカン(F4H10)、1-パーフルオロヘキシル-オクタン(F6H8)、1-パーフルオロヘキシル-デカン(F6H10)、およびそれらの組合せから選択される、先行する項目のいずれかに記載の組成物。
6.半フッ素化アルカンが、1-パーフルオロヘキシル-オクタン(F6H8)、1-パーフルオロブチル-ペンタン(F4H5)、1-パーフルオロヘキシルデカン(F6H10)、および1-パーフルオロブチル-オクタン(F4H8)から選択され、好ましくは1-パーフルオロヘキシル-オクタン(F6H8)および1-パーフルオロブチル-オクタン(F4H8)から選択される、先行する項目のいずれかに記載の組成物。
7.好ましくは、a)F6H8およびF4H8、b)F4H8およびF6H10、c)F6H8およびF6H10から選択される、半フッ素化アルカンの混合物を含む、先行する項目のいずれかに記載の組成物。
8.組成物の総重量に対して、50~98wt%の半フッ素化アルカンを含む、先行する項目のいずれかに記載の組成物。
9.組成物の総重量に対して、50~97重量パーセント、好ましくは70~97重量パーセント、より好ましくは80~97重量パーセントの濃度で半フッ素化アルカンを含む、先行する項目のいずれかに記載の組成物。
10.組成物の総重量に対して、85~95重量パーセントの半フッ素化アルカンを含む、先行する項目のいずれかに記載の組成物。
11.組成物の総重量に対して、少なくとも70wt%、好ましくは少なくとも80wt%、組成物の総重量に対して、より好ましくは90wt%で半フッ素化アルカンを含む、先行する項目のいずれかに記載の組成物。
12.固形増粘剤の混合物を含む、先行する項目のいずれかに記載の組成物。
13.組成物の総重量に対して、1~50重量パーセント、好ましくは1~40重量パーセント、より好ましくは3~40重量パーセントの、1種または複数の固形増粘剤を含む、先行する項目のいずれかに記載の組成物。
14.固形増粘剤が、組成物の総重量に対して、3~25wt%、好ましくは3~20wt%、より好ましくは3~11wt%の濃度で含まれる、先行する項目のいずれかに記載の組成物。
15.固形増粘剤が、組成物の総重量に対して、最大25wt%、好ましくは最大15wt%、より好ましくは最大10wt%の濃度で存在する、先行する項目のいずれかに記載の組成物。
16.組成物の総重量に対して、80~97wt%の半フッ素化アルカンおよび3~11wt%の固形増粘剤を含む、先行する項目のいずれかに記載の組成物。
17.固形増粘剤が天然または合成である、先行する項目のいずれかに記載の組成物。
18.固形増粘剤が、ワックス、トリグリセリド、脂肪族アルコール、脂肪族アルコール誘導体、またはそれらの組合せから選択される、先行する項目のいずれかに記載の組成物。
19.固形増粘剤が、植物ワックス、動物ワックス、石油由来ワックス、トリグリセリド、セチルアルコール、パルミチン酸セチル、テトラデカノール、またはそれらの組合せから選択される、先行する項目のいずれかに記載の組成物。
20.増粘剤が、ビーズワックス、ラノリン(ウールワックス)、カルナウバワックス、カンデリラワックス、キャスターワックス、ライスブランワックス(ライスワックス)、鯨ワックス、ホホバオイル、ブランワックス、モンタンワックス、カポックワックス、ベイベリーワックス、シェラックワックス、サトウキビワックス、パラフィンワックス、セレシンワックスからなる群から選択されるワックスである、先行する項目のいずれかに記載の組成物。
21.賦形剤が、共溶媒または油性材料から選択される、先行する項目のいずれかに記載の組成物。
22.2種以上の賦形剤を含む、先行する項目のいずれかに記載の組成物。
23.賦形剤の総量が、組成物の総重量に対して、最大約45wt%、好ましくは最大25wt%、より好ましくは最大10wt%、最も好ましくは最大6wt%である、先行する項目のいずれかに記載の組成物。
24.賦形剤が、スクワラン、スクワレン、チモール、エッセンシャルオイル、液体トリグリセリド、オリーブ、ココナッツ、ホホバ、アボカド、ヒマワリ、ベニバナ、ボラージ、コーン、およびシーバックソーンなどの皮膚軟化植物油から選択される油性材料である、先行する項目のいずれかに記載の組成物。
25.共溶媒が、イソプロパノールおよびエタノールから選択される1種であり、好ましくはイソプロパノールである、先行する項目のいずれかに記載の組成物。
26.組成物の総重量に対して、80~97wt%の1種または複数の半フッ素化アルカン、3~11wt%の固形増粘剤、および3~6wt%の賦形剤を含む、先行する項目のいずれかに記載の組成物。
27.哺乳動物の体と接触すると液化し、室温で半固形である、先行する項目のいずれかに記載の組成物。
28.室温で溶液を形成しない、先行する項目のいずれかに記載の組成物。
29.室温でクリーミーで均質な半固形物として存在する、先行する項目のいずれかに記載の組成物。
30.リポゲルである、先行する項目のいずれかに記載の組成物。
31.防腐剤を含まない、先行する項目のいずれかに記載の組成物。
32.組成物の総重量に対して、a)85~97重量パーセントの濃度で、1-パーフルオロヘキシルオクタン、1-パーフルオロブチルオクタン、またはそれらの混合物から選択される半フッ素化アルカンと、b)3~11重量パーセントの濃度で、ビーズワックス、パラフィンワックス、セチルアルコール、パルミチン酸セチル15、またはそれらの混合物から選択される固形増粘剤とを含む、先行する項目のいずれかに記載の組成物。
33.スクワラン、イソプロパノール、エタノール、およびセバシン酸ジエチルから選択される賦形剤をさらに含む、項目32に記載の組成物。
34.有効成分が、消毒剤、アベルメクチン、プロスタグランジン類似体、カプサイシノイド、コルチコステロイド、抗生物質、カルシニューリン阻害剤、麻酔剤、レチノイド、ビタミンD類似体、免疫抑制剤から選択される、項目2から33のいずれかに記載の組成物。
35.有効成分が、分子状ヨウ素、イベルメクチン、カプサイシン、プロスタグランジン類似体、シクロスポリン、タクロリムス、レチノイド、ビタミンD類似体、コルチコステロイド、カルシニューリン阻害剤から選択される、項目2から34のいずれかに記載の組成物。
36.組成物の総重量に対して、90~95重量パーセントの半フッ素化アルカン、5~10重量パーセントの、1種または複数の固形増粘剤、および最大約1000ppmの分子状ヨウ素、好ましくは250~1000ppmの分子状ヨウ素を含む、項目35に記載の組成物。
37.半フッ素化アルカンが1-パーフルオロヘキシルオクタンであり、固形増粘剤がパラフィンワックスである、項目36に記載の組成物。
38.有効成分が、組成物の総重量に対して、0.1~0.5重量パーセント、好ましくは0.1~0.3重量パーセントの濃度のシクロスポリンAである、項目35に記載の組成物。
39.固形増粘剤が、Softisan(登録商標)378であり、組成物の総重量に対して、好ましくは20~30重量パーセントの濃度であり、半フッ素化アルカンが1-パーフルオロヘキシルオクタンである、項目38に記載の組成物。
40.水を含まない、先行する項目のいずれかに記載の組成物。
41.少なくとも10mg/l、好ましくは少なくとも15mg/lの酸素含有量を有し、より好ましくは、皮膚に酸素を運ぶのに有効であり、かつ少なくとも10mg/l、好ましくは少なくとも15mg/lの酸素含有量を有する、先行する項目のいずれかに記載の組成物。
42.医薬品として使用するための、先行する項目のいずれかに記載の組成物。
43.皮膚の脂質バリア損傷に関連する疾患または状態の予防または治療に使用するための、項目42に記載の組成物。
44.疾患が、刺激性接触皮膚炎、アレルギー性接触皮膚炎、アトピー性皮膚炎、乾癬、にきびから選択される、項目43に記載の使用のための組成物。
45.脂質バリア損傷に関連する状態が、乾燥肌、老化した肌、かゆみから選択される、項目43から44に記載の使用のための組成物。
46.先行する項目のいずれかで定義される組成物と、該組成物を保持するための容器とを含むキット。
47.皮膚の脂質バリア損傷に関連する疾患または状態を治療する方法であって、項目1から41のいずれかで定義される組成物を局所的に投与することを含む、方法。
48.疾患が、刺激性接触皮膚炎、アレルギー性接触皮膚炎、アトピー性皮膚炎、乾癬、にきびから選択される、項目47に記載の方法。
49.脂質バリア損傷に関連する状態が、乾燥肌、老化した肌、かゆみから選択される、項目47から48に記載の方法。
【0055】
本発明は、以下の実施例によって説明されるが、本発明の範囲を制限するものとして理解されるべきではない。
【実施例】
【0056】
実施例1、2および3の軟膏を、以下の手順に従って調製した。軟膏の成分を秤量し、次いで一緒に混合した。透明で均質な溶液が得られるまで、混合物を水浴中で穏やかに加熱し、かつ穏やかに振とうした。その後、溶液を室温まで放冷し、半固形組成物を形成した。
【0057】
以下の成分を使用した:ビーズワックス(Acros Organics、CAS 8012-89-3)
分子状ヨウ素(Merck、CAS 7553-56-2)、カルナウバワックス(Alfa Aesar、CAS 8015-86-9)、
パルミチン酸セチル15(Acros Organics、CAS 540-10-3)、F4H8(Novaliq)、パラフィンワックス(Sigma Aldrich、CAS 8002-74-2)、スクワラン(Sigma Aldrich、CAS 111-01-3)、F6H8(Novaliq)、セチルアルコール(Sigma Aldrich、CAS 36653-82-4、99%)、F4H5(Novaliq)。
【0058】
以下の組成物における各成分の含有量は、組成物の総重量に対する重量パーセント(wt%)で表されている。
【0059】
【0060】
【0061】
【0062】
実施例4 投与
実施例1~3の組成物は、半固形組成物として存在する。前腕の皮膚に投与すると、組成物は非常に迅速に皮膚へ吸収され、絹のような感触が認められた。さらに、組成物が、皮膚に完全に吸収された後、不快なべたつき感を後に残さなかった。処置された皮膚が布地/衣類と接触しても、べたつく汚れを生じなかった。
【0063】
実施例5
以下の手順に従って、0.2%w/wのシクロスポリンA(CsA)、2%w/wのEtOH、25%w/wのSoftisan(登録商標)378、および1-パーフルオロヘキシルオクタンを含む軟膏を調製した。0.10gのCsAを、ガラスバイアル内の1.0gのエタノールに溶解させた。12.50gのSoftisan(登録商標)378を乳鉢で秤量し、透明な融解物が形成されるまで約45℃の水浴で融解させた。次いで、融解したSoftisan(登録商標)378を室温に置いて少し冷却し、続いてエタノール中のCsA溶液およびF6H8を、均質な半固形製剤が形成されるまで撹拌しながら、融解したSoftisan(登録商標)378に加えた。
【0064】
半固形製剤は、白くてクリーミーで、均質で、べたつかず、皮膚に広がった後に融解したように見えた。顕微鏡検査によると、未溶解の有効成分結晶は示されず、均質性を確認することができた。
【0065】
実施例6:製剤中の酸素含有量の測定
軟膏中の酸素含有量を測定するための一般的な手順は以下のとおりである。ニードル式化学光学マイクロ酸素センサー(オプトロードまたはオプトード)を、閉じたクリンプ・キャップ・バイアル内の規定量の脱酸素化オリーブオイル(N2でパージ)に入れた。次いで、規定量の試験製剤をバイアルに加えた。製剤を加えた後、バイアルを再び閉じ、マグネチックスターラーを使用して穏やかに撹拌した。酸素含有量を測定し、1秒間隔で約30分間記録した。
【0066】
1)製剤A6:F6H8 90wt%/ビーズワックス4wt%/スクワラン6wt%
6,05gのオリーブオイルを、N2で10分間パージした。パージ後、1.01gの製剤A6を添加し、マグネチックスターラーを使用して30分間撹拌した。
【0067】
2)製剤A26:F4H8 90wt%/ビーズワックス3wt%/パラフィンワックス3wt%/スクワラン4wt%
総量5,86gのオリーブオイルを、N2で10分間パージした。次いで、0,74gの製剤A26を添加し、マグネチックスターラーを使用して30分間撹拌した。
【0068】
3)比較製剤:100%ワセリン
6.10gのオリーブオイルを、N2で10分間パージした。次いで、1.20gのワセリンを添加し、マグネチックスターラーを使用して30分間撹拌した。
【0069】
測定された酸素の量は、約25分を超え30分後までに、すべての製剤でプラトーに達した。測定された酸素を6gのオリーブオイル中の1gの製剤に正規化することによって、ワセリン(1.3mg/l)と比較したところ、試験製剤A6(約2.6mg/l)およびA26(約2.9mg/l)の両方について、約30分でより高い値の酸素含有量(mg/l)が観察された。最終的なプラトー値を使用することによって、製剤における初期の酸素含有量の推定値として、以下の値を算出した。A6(21mg/L)、A26(23mg/L)、ワセリン(8mg/L)。