(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-03
(45)【発行日】2023-10-12
(54)【発明の名称】密封装置
(51)【国際特許分類】
F16J 15/3204 20160101AFI20231004BHJP
F16C 33/78 20060101ALI20231004BHJP
【FI】
F16J15/3204 201
F16C33/78 D
(21)【出願番号】P 2021518331
(86)(22)【出願日】2020-04-20
(86)【国際出願番号】 JP2020017004
(87)【国際公開番号】W WO2020226042
(87)【国際公開日】2020-11-12
【審査請求日】2021-08-30
(31)【優先権主張番号】P 2019088583
(32)【優先日】2019-05-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 祐貴
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 卓哉
(72)【発明者】
【氏名】杉原 弘恵
(72)【発明者】
【氏名】谷田 昌幸
【審査官】宮下 浩次
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-234093(JP,A)
【文献】実開平05-075562(JP,U)
【文献】特開2010-270909(JP,A)
【文献】特開2006-046565(JP,A)
【文献】特開2011-241868(JP,A)
【文献】実開平06-080956(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/3204
F16C 33/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸と、該軸よりも外周側において軸線周りに配置された外周側部材との間に取り付けられ、前記軸の外周面に摺動可能に接触して、前記軸と前記外周側部材との間を密封する密封装置であって、
前記軸線周りに環状の補強環と、
前記補強環に取り付けられ、前記軸線周りに環状の導電性の弾性体からなる弾性体部と、
導電性グリースとを備え、
前記弾性体部は、基部と、該基部から前記軸線に沿って延びるリップ部と、少なくとも1つの前記軸線周りに環状のダストリップと、環状の弾性部材である緊迫力付与部材と、を有しており、
前記リップ部は、該リップ部の先端に、前記軸の外周面が摺動可能に前記軸の外周面に接触可能に形成されたリップ接触面を有するリップ先端部分を有しており、
前記リップ接触面は、前記軸の外周面に面し、前記軸線に平行であり前記軸線方向に所定の長さを有する環状の円柱面に形成されていて、
前記導電性グリースは、前記弾性体部の内周側に面する環状の面である内周面において、前記軸線方向における前記リップ接触面と前記ダストリップとの間に形成されている環状の空間であるリップ間空間の少なくとも一部を充たし、
前記リップ間空間の容積よりも体積が大きくならない範囲で該リップ間空間を完全に充たさないように前記内周面に付いていて、
前記緊迫力付与部材は、前記リップ先端部分において前記リップ部の外周側に装着され、前記リップ接触面を前記軸の外周面に押し付ける緊迫力を付与している密封装置。
【請求項2】
前記緊迫力付与部材は、前記リップ部のうち前記リップ接触面と背向する位置に装着されている、
請求項1に記載の密封装置。
【請求項3】
前記リップ間空間において、前記軸線方向における前記リップ接触面と前記ダストリップとの間に形成されている内側ダストリップを備える、
請求項1または2に記載の密封装置。
【請求項4】
前記リップ接触面は、前記軸の外周面に対して凹凸形状を有している、
請求項1乃至3のいずれかに記載の密封装置。
【請求項5】
軸と、該軸よりも外周側において軸線周りに配置された外周側部材と、前記軸及び前記外周側部材の間に取り付けられ、前記軸の外周面に摺動可能に接触して、前記軸と前記外周側部材との間を密封する密封装置と、を備え、
前記密封装置は、
前記軸線周りに環状の補強環と、
前記補強環に取り付けられ、前記軸線周りに環状の導電性の弾性体からなる弾性体部と、
導電性グリースとを備え、
前記弾性体部は、基部と、該基部から前記軸線に沿って延びるリップ部と、少なくとも1つの前記軸線周りに環状のダストリップと、環状の弾性部材である緊迫力付与部材と、を有しており、
前記リップ部は、該リップ部の先端に、前記軸の外周面が摺動可能に前記軸の外周面に接触可能に形成されたリップ接触面を有するリップ先端部分を有しており、
前記リップ接触面は、前記軸の外周面に面し、前記軸線に平行であり前記軸線方向に所定の長さを有する環状の円柱面に形成されていて、
前記導電性グリースは、前記弾性体部の内周側に面する環状の面である内周面において、前記軸線方向における前記リップ接触面と前記ダストリップとの間に形成されている環状の空間であるリップ間空間の少なくとも一部を充たし、
前記リップ間空間の容積よりも体積が大きくならない範囲で該リップ間空間を完全に充たさないように前記内周面に付いていて、
前記緊迫力付与部材は、前記リップ先端部分において前記リップ部の外周側に装着され、前記リップ接触面を前記軸の外周面に押し付ける緊迫力を付与している、密封構造。
【請求項6】
前記緊迫力付与部材は、前記リップ部のうち前記リップ接触面と背向する位置に装着されている、
請求項5に記載の密封構造。
【請求項7】
前記リップ間空間において、前記軸線方向における前記リップ接触面と前記ダストリップとの間に形成されている内側ダストリップを備える、
請求項5または6に記載の密封構造。
【請求項8】
前記リップ接触面は、前記軸の外周面に対して凹凸形状を有している、
請求項5乃至7のいずれかに記載の密封構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、密封装置に関し、特に自動車等における回転軸の端部からの油漏れや、外部からの埃等の侵入を防止する密封装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の電動化が進んでおり、EV(Electric Vehicle)やHV(Hybrid Vehicle)等の電動自動車が主流になりつつある。これらの電動自動車においては、動力源として駆動モータが用いられており、この駆動モータに生じる誘起電流が電磁ノイズとなり、AMラジオに悪影響を及ぼすことがあった。
【0003】
そこで、金属の導電性ブラシによってケースとドライブシャフトとを導通させ、接地のための導通経路を形成することにより、高周波ノイズの原因となる電動機からのリーク電流を導通経路により逃がす車両用動力伝達装置が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0004】
また、電動機ハウジングの貫通孔と電動機の回転軸との間を液密にシールするオイルシールが導電性ゴムにより形成されているため、電動機ハウジングと回転軸とを導電性のオイルシールによって電気的に導通させることによりノイズの発生を抑制する電気自動車用の電磁ノイズ抑制装置が提案されている(例えば、特許文献2を参照)。
【0005】
さらに、ハブベアリング用の密封装置として、導電性カーボンを含有するゴム材からなるシールリップ部材を使用してノイズ対策を施すベアリングシールがある(例えば、特許文献3を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2015-207534号公報
【文献】特開2000-244180号公報
【文献】特開2015-14296号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した特許文献1の車両用動力伝達装置においては、軸受やオイルシールに加えて導電性ブラシを別個追加しなければならないため、設置スペースを確保できない場合には使用できないおそれがあった。
【0008】
また、上述した特許文献2の電磁ノイズ抑制装置においては、例えば回転軸が偏心している場合、あるいは、導電性のオイルシールが長期間使用されて回転軸と接触するリップ先端部にへたりが生じている場合、導電性のオイルシールと回転軸とが離間してしまうことになり、ノイズの発生を抑制することが困難になるおそれがあった。
【0009】
さらに、上述した特許文献3の密封装置においては、ラジオノイズの発生を抑制することはできるが、3個の導電性リップ部がハブ輪と接触しているため、摺動抵抗の更なる低減が求められていた。
【0010】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、密封性能を向上するとともに摺動抵抗を低減し、かつ、ノイズの発生を抑制し得る密封装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明に係る密封装置は、軸と、該軸よりも外周側において軸線周りに配置された外周側部材との間に取り付けられ、前記軸の外周面に摺動可能に接触して、前記軸と前記外周側部材との間を密封する密封装置であって、前記軸線周りに環状の補強環と、前記補強環に取り付けられ、前記軸線周りに環状の導電性の弾性体からなる弾性体部と、導電性グリースとを備え、前記弾性体部は、基部と、該基部から前記軸線に沿って延びるリップ部と、少なくとも1つの前記軸線周りに環状のダストリップと、を有しており、前記リップ部は、該リップ部の先端に、前記軸の外周面が摺動可能に前記軸の外周面に接触可能に形成されたリップ接触面を有するリップ先端部分を有しており、前記リップ接触面は、前記軸の外周面に面する環状の面を有しており、前記導電性グリースは、前記弾性体部の内周側に面する環状の面である内周面において、前記軸線方向における前記リップ接触面と前記ダストリップとの間に形成されている環状の空間であるリップ間空間の少なくとも一部に存在するように付いている。
【0012】
本発明の一態様に係る密封装置において、前記弾性体部は、環状の弾性部材である緊迫力付与部材を有しており、前記緊迫力付与部材は、前記リップ先端部分において前記リップ部の外周側に装着され、前記リップ接触面を前記軸の外周面に押し付ける緊迫力を付与している。
【0013】
本発明の一態様に係る密封装置において、前記緊迫力付与部材は、前記リップ部のうち前記リップ接触面と背向する位置に装着されている。
【0014】
本発明の一態様に係る密封装置において、前記リップ間空間において、前記軸線方向における前記リップ接触面と前記ダストリップとの間に形成されている内側ダストリップを備える。
【0015】
本発明の一態様に係る密封装置において、前記リップ接触面は、前記軸の外周面に対して平行な環状の面を有している。また、前記リップ接触面は凹凸形状としても可とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る密封装置によれば、密封性能を向上するとともに摺動抵抗を低減し、かつ、ノイズの発生を抑制し得る密封装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の第1の実施の形態に係る密封装置が用いられた電気自動車用のモータ駆動装置の概略構成を示す部分拡大断面図である。
【
図2】本発明の第1の実施の形態に係る密封装置がケーシングの開口部と出力軸との隙間に装着された状態を示すための軸線に沿う断面における断面図である。
【
図3】本発明の第1の実施の形態に係る密封装置の構成を示す軸線に沿う断面における断面図である。
【
図4】本発明の第1の実施の形態に係る密封装置の構成を示す軸線に沿う断面における断面図である。
【
図5】本発明の第1の実施の形態に係る密封装置における弾性体部の内周面を示すための部分拡大断面図である。
【
図6】本発明の第1の実施の形態に係る密封装置が用いられたモータ駆動装置の部分拡大断面図である。
【
図7】本発明の第2の実施の形態に係る密封装置の構成を示す軸線に沿う断面における断面図である。
【
図8】本発明の第3の実施の形態に係る密封装置の構成を示す軸線に沿う断面における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<第1の実施の形態>
以下、本発明の第1の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0019】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る密封装置10が用いられた電気自動車用のモータ駆動装置100の概略構成を示す部分拡大断面図である。
図2は、本発明の第1の実施の形態に係る密封装置10がケーシング103の開口部105と出力軸102との隙間に装着された状態を示すための軸線xに沿う断面における断面図である。
図3及び
図4は、本発明の第1の実施の形態に係る密封装置10の構成を示す軸線xに沿う断面における断面図である。なお、
図3では、説明のため後述する導電性グリースGがリップ間空間につけられていない状態を示している。
【0020】
以下、説明の便宜上、図面において密封装置10よりも符号a側を外側、密封装置10よりも符号b側をモータ内部側とする。ここで、外側とはケーシング103の外部であって泥水等が存在する側であり、モータ内部側とはケーシング103の内側である。また、軸線xに垂直な方向(以下、径方向ともいう。)において、軸線xから遠ざかる方向を外周側とし(矢印c方向)、軸線xに向かう方向を内周側とする(矢印d方向)。
【0021】
図1に示すように、第1の実施の形態に係る密封装置10は、特に、電気自動車用のモータ駆動装置100に適用される。このモータ駆動装置100は、駆動輪を駆動する電動モータ101と、当該電動モータ101における軸としての出力軸102の動力(回転)を伝達するプーリー121とを備えている。プーリー121は、電動モータ101の出力軸102と一体に固定されるとともに、図示しないベルトが取り付けられており、当該ベルトを回して動力が補機類等に伝達される。
【0022】
電動モータ101の出力軸102は、外周側部材としてのケーシング103にベアリング104を回して軸支されている。モータ駆動装置100の出力軸102を突出させる開口部105において、金属からなるケーシング103の内周面103aと、金属からなる出力軸102の外周面102gとの間の環状の隙間(空間)には、ケーシング103の内部に封入された潤滑油が外部に漏れたり、外部からの砂や泥水等のダストの侵入を防止するための密封装置10が取り付けられている。
【0023】
すなわち、密封装置10は、モータ駆動装置100におけるケーシング103の開口部105から突出した出力軸102を介して電動モータ101の動力を伝達する際、開口部105と出力軸102との間の環状の隙間を密封するものである。
【0024】
ただし、密封装置10による密封対象としては、電気自動車用のモータ駆動装置100に限られるものではなく、インホイールモータのモータ駆動部、ハイブリッド自動車のモータ駆動装置、電動バイクのモータ駆動装置、電動自転車のモータ駆動装置等のその他種々のモータ駆動装置を密封対象とすることができる。
【0025】
図2及び
図3に示すように、密封装置10は、ケーシング103の開口部105と出力軸102との間の環状の隙間に嵌着されるものである。密封装置10は、出力軸102の軸線x周りに環状の補強環20と、補強環20と一体に取り付けられて軸線x周りに環状の弾性体からなる弾性体部30とを備えている。ここで、出力軸102の軸線xは、密封装置10の軸線xと一致していることを前提とする。
【0026】
図3及び
図4に示すように、本発明の第1の実施の形態に係る密封装置10は、軸102と、この軸102よりも外周側において軸線周りに配置された外周側部材としてのケーシング103との間に取り付けられ、軸102の外周面102gに摺動可能に接触して、軸102とケーシング103との間を密封する密封装置である。また、密封装置10は、電気自動車用のモータ駆動装置100等の種々のモータ駆動装置に適用される。
【0027】
図4に示すように、密封装置10は、軸線x周りに環状の補強環20と、補強環20に取り付けられ、軸線x周りに環状の導電性の弾性体からなる弾性体部30と、導電性グリースGとを備えている。弾性体部30は、基部31と、基部31から軸線xに沿って延びるリップ部35と、少なくとも1つの前記軸線周りに環状のダストリップとしてのダストリップ85とを有している。リップ部35はリップ部35の先端に、軸(出力軸102)の外周面(外周面102g)が摺動可能に軸の外周面に接触可能に形成されたリップ接触面36sを有するリップ先端部分36を有している。リップ接触面36sは、軸の外周面に面する環状の面を有しており、導電性グリースGは、弾性体部30の内周側に面する環状の面である内周面83において、軸線x方向におけるリップ接触面36sとダストリップ85との間に形成されている環状の空間であるリップ間空間Sの少なくとも一部に存在するように付いている。以下、密封装置10の構成を具体的に説明する。
【0028】
補強環20は、
図3及び
図4に示すように、軸線xを中心又は略中心とする環状の金属製の部材である。補強環20に用いられる金属製の部材として、例えば、ステンレス鋼やSPCC(冷間圧延鋼)が挙げられる。補強環20は、このような金属製の部材を例えばプレス加工や鍛造することによって製造される。補強環20は、例えば、軸線x方向に延びる円筒状又は略円筒状の部分である円筒部21と、円筒部21の外側の端部から内周側に向かって延びる中空円盤状の部分である円盤部24と、円盤部24の内周側の端部から内側に向かって内周側に斜めに延びる部分である錐環部
とを有している。円筒部21は、後述するように、ケーシング103に形成された貫通孔の内周面103aに密封装置10が嵌合可能となるように形成されており、弾性体部30の部分を介して貫通孔の内周面103aに接触して嵌合可能となっている。円筒部21は、円筒部21の中間部分に不図示の錐環部を形成するような形状となっていてもよく、円筒部21は、一部分が直接貫通孔の内周面103aに接触して嵌合可能となっていてもよい。
【0029】
円筒部21は、密封装置10がケーシング103の開口部105を形成している内周面103aに嵌着された際に、密封装置10の軸線xと出力軸102の軸線xとの一致が図られるように開口部105に嵌め込まれる。補強環20には、当該補強環20を外側(矢印a方向)かつ外周側(矢印c方向)から包み込むように弾性体部30が取り付けられており、当該補強環20が弾性体部30を補強している。
【0030】
弾性体部30は、
図3及び
図4に示すように、補強環20に取り付けられており、補強環20を覆うように補強環20と一体的に形成されている。具体的には、弾性体部30は成形型を用いて架橋(加硫)成形によって成形される。この架橋成形の際に、補強環20は成形型の中に配置されており、弾性体部30が架橋接着により補強環20に接着され、弾性体部30と補強環20とが一体的に成形される。弾性体部30は、上述のように、基部31とリップ部35とを有しており、また、少なくとも1つのダストリップとしてダストリップ85を有している。補強環20の錐環部
は、基部31の内部に入り込んでいる。ダストリップ85は、基部31から内周側に向かって斜めに延びている。
【0031】
弾性体部30は、補強環20における円盤部24の内周側(矢印d方向)の端部近傍に位置する基部31と、補強環20の円筒部21に外周側(矢印c方向)から取り付けられている部分であるガスケット部32と、基部31とガスケット部32との間において外側(矢印a方向)から補強環20の円盤部24に取り付けられている部分であるカバー部33と、基部31から内側(矢印b方向)へ軸線xに沿って延びるとともに、内周側(矢印d方向)へ突出したリップ先端部分36が形成されたリップ部35とを有している。
【0032】
弾性体部30の基部31は、リップ部35のリップ先端部分36を出力軸102の外周面102gに押し付けた状態で摺接させるように支持するとともに、出力軸102の外径102dとリップ部35のリップ先端部分36の内径36dとの差分すなわち締め代f1に応じて当該リップ部35が撓むときの中心となる部分である。
【0033】
ガスケット部32は、弾性体部30において、補強環20の円筒部21を外周側から覆っている部分である。ガスケット部32は、その外径が、ケーシング103の開口部105を形成している内周面103aの内径と同じか、それよりも僅かに大きくなっている。このため、密封装置10がケーシング103の開口部105に嵌着された場合、ガスケット部32は、補強環20の円筒部21とケーシング103との間で径方向に圧縮され、開口部105を形成しているケーシング103の内周面103aと補強環20の円筒部21との間を密封する。
【0034】
これにより、ケーシング103の開口部105と出力軸102との環状の隙間が密封装置10によって密封される。なお、ガスケット部32は、
図4に示すように円筒部21の外周側の全体を覆っているものには限定されない。例えば、ガスケット部32は、円筒部21の外周側の一部を覆うものであってもよい。
【0035】
また、弾性体部30においては、基部31から内側(矢印b方向)かつ内周側(矢印d方向)に向かって環状のリップ部35が延びており、このリップ部35は、軸線x方向において内側(矢印b方向)に向かうに連れて縮径する円錐筒状の形状を有している。つまり、リップ部35は、軸線xに沿う断面(以下、単に断面ともいう。)において、基部31から内側(矢印b方向)及び内周側(矢印d方向)のリップ先端部分36のリップ接触面36sに向けて、軸線xに対して斜めに延びている。
【0036】
また、リップ部35は、基部31から内側(矢印b方向)へ離れた先端側に内周側(矢印d方向)に突出したリップ先端部分36を有している。リップ部35は、リップ先端部分36と背向する外周側(矢印c方向)に凹部が設けられており、当該凹部に緊迫力付与部材としての環状の弾性部材であるガータスプリング38が装着されている。
【0037】
リップ先端部分36は、断面が軸102の外周面102gに面する環状の面であり、出力軸102の外周面102gと摺動自在に接触するリップ接触面36sを有している。リップ接触面36sは、軸線x方向に対して所定の長さを有する環状の面である。つまり、リップ先端部分36は、リップ接触面36sが軸102の外周面102gと面で接する。リップ接触面36sは、例えば
図4に示すように、軸102の外周面102gと平行な軸線xに対して平行であり所定の長さ(幅)を有する環状の面(円柱面または略円柱面)を有している。なお、リップ接触面36sは、
図4に示すように軸線xに対して平行な環状の面に限定されず、例えば密封側であるモータ内部側、すなわち内側bから外側aに向けて拡径するような緩やかな傾斜を有する環状の面(円錐面または略円錐面)であってもよい。
【0038】
このようなリップ部35を有する弾性体部30は、その全体がカーボンブラック粒子あるいは金属粉等の導電性フィラーを含む導電性ゴムからなる。このような導電性ゴムは、導電性フィラーを含み、比較的低い電気抵抗を備えたものである。ここで、導電性ゴムの体積電気抵抗率は、108 Ω・cm以下とする。より具体的には、導電性ゴムは、任意のゴム材と導電性粒子と導電性繊維とが夫々所望量混ぜ合わされて形成されるものである。ゴム材料は、例えば、ニトリルゴム(NBR)、水素添加ニトリルゴム(H-NBR)、アクリルゴム(ACM)、フッ素ゴム(FKM)、シリコーンゴム等の合成ゴムが挙げられる。導電性粒子としては、カーボンブラックの他に、グラファイトやインジウム/スズ酸化物、アンチモン/スズ酸化物等の導電性金属酸化物を使用することもできる。また、これらの材料を適宜選択して用いてもよい。導電性繊維としては、ステンレス繊維、炭素繊維(カーボンファイバー、カーボンチューブ)、あるいはチタン酸カリウムにメッキをした導電性繊維がある。また、導電性繊維の太さ、長さは任意に選択可能である。
【0039】
ガータスプリング38は、例えば金属製のバネ部材であり、リップ先端部分36を径方向において内周側(矢印d方向)へ付勢し、当該リップ先端部分36を出力軸102の外周面102gに押し付ける所定の大きさの緊迫力を付与するものである。なお、ガータスプリング38は、金属製に限らず、樹脂製等のその他種々の材料によるものであってもよい。
【0040】
すなわち、弾性体部30においては、リップ先端部分36の出力軸102の外周面102gに対する締め代f1(
図3)と、ガータスプリング38による緊迫力と、リップ先端部分36におけるリップ接触面36sの出力軸102に対する追随性に応じて、密封度合い及び出力軸102の外周面102gに対する摺動抵抗が決定される。
【0041】
ダストリップ85は、基部31から外側に向かって内周側に斜めに延びており、例えば円錐筒状又は略円錐筒状の形状を呈している。ダストリップ85は、後述する使用状態において、先端側の部分が軸(出力軸102)の外周面(外周面102g)に接触するように形成されている。ダストリップ85の内周側の端部は、先端85aである。なお、ダストリップ85は、使用状態において、軸(出力軸102)の外周面(外周面102g)に接触しないように形成されていてもよい。
【0042】
図5は、密封装置10における弾性体部30の内周面83を示すための部分拡大断面図である。弾性体部30の内周側に面する環状の面である内周面83は、軸線xに直交する径方向において弾性体部30が内周側で囲む空間に面する弾性体部30の内周側の面であり、この内周側の空間に接する、弾性体部30の内周側の輪郭を形成する表面である。本実施の形態に係る密封装置10においては、
図5に示すように、内周面83は、仮想線lに沿う、リップ部35の内周面83aと、ダストリップ85の内周面83cから成る面である。リップ部35の内周面83aは、
図5に示す仮想線lに沿うリップ部35の内周側に面する面であり、リップ部35の内周側に面する面のリップ先端部分36におけるリップ接触面36s
の外側の部分である。ダストリップ85の内周面83cは、
図5に示す仮想線lに沿うダストリップ85の内周側に面する面であり、ダストリップ85の内周側に面する面の先端85aから内側の部分である。
【0043】
導電性グリースGは、この内周面83に付いており、内周面83が形成する軸線x周りに環状の空間であるリップ間空間Sの少なくとも一部に導電性グリースGが存在するように内周面83に付いている。リップ間空間Sは、具体的には、内周面83の内周側に突出する部分の内周側の端の中で互いに隣接する端の間を延びる面と内周面83とが形成する空間であり、本実施の形態においては、内周面83の内周側の空間、すなわち、リップ部35のリップ先端部分36のリップ接触面36sの外側aの端部とダストリップ85の先端85aとの間に延びる面(円錐面又は円筒面)とが囲む空間がリップ間空間Sとなる。
【0044】
導電性グリースGは、上述のように、リップ間空間Sの少なくとも一部を充たすように内周面83に取り付けられており、例えば、図示の例のようにリップ間空間Sを完全に充たさないように内周面83に取り付けられている。導電性グリースGは、リップ間空間Sの一部を充たすように内周面83に取り付けられていてもよく、リップ間空間Sを完全に充たすように内周面83に取り付けられていてもよく、リップ間空間Sから溢れるように内周面83に取り付けられていてもよい。また、導電性グリースGは、リップ間空間Sからはみ出すように内周面83に取り付けられていてもよい。
【0045】
導電性グリースGは、導電性物質を含んでいるグリースであればどのようなものであってもよい。導電性グリースGに使用される基油は特に限定されず、潤滑油の基油として使用されている油は全て使用することができる。また、導電性物質は、導電性を有する物質であればよく、この導電性を有する物質は特に制限されるものではない。導電性物質としては導電性が良好な物質が好ましい。また導電性物質は、液体であっても固体であってもよい。導電性物質は、例えばカーボンブラックである。ここで、導電性グリースGの体積電気抵抗率は、108 Ω・cm以下とする。
【0046】
次いで、上述の構成を有する本発明の第1の実施の形態に係る密封装置10の作用について説明する。
図6は、使用状態における密封装置10を示す図であり、本発明の第1の実施の形態に係る密封装置10が用いられたモータ駆動装置の部分拡大断面図である。
図6においては、電気自動車用のモータ駆動装置100に適用された密封装置10が示されている。
【0047】
使用状態において、弾性体部30のリップ部35、及びダストリップ85は、夫々の先端であるリップ接触面36s、先端85a近傍において、出力軸102の外周面102gに接触しており、内周面83と出力軸102の外周面102gとの間に閉じられた空間を形成している。この接触により、リップ部35、及びダストリップ85は変形しており、使用状態においてリップ間空間Sは変形して、使用状態においてリップ間空間Sの容積は、取り付けられていない非取付状態における密封装置10のリップ間空間Sの容積よりも小さくなっている。使用状態において、リップ部35、及びダストリップ85の全てが変形しないようになっていてもよく、いずれかが変形しないようになっていてもよい。
【0048】
本実施の形態においては、上述のように、非取付状態において、導電性グリースGはリップ間空間Sの一部を充たすように内周面83に取り付けられており、使用状態におけるリップ間空間Sの容積よりも内周面83に取り付けられる導電性グリースGの体積が大きくなっていない。このため、使用状態において、導電性グリースGが膨張して導電性グリースGの体積がリップ間空間Sの容積よりも大きくなることをより確実に防止することができ、これによりリップ部35が浮き上がり、リップ接触面36sと出力軸102の外周面102gとの間の接触が解放されることが防止されている。また、同様に、ダストリップ85の出力軸102の外周面102gとの間の接触が解放されることが防止されている。なお、取付状態において、リップ部35、及びダストリップ85が変形しないとしても、非取付状態において導電性グリースGをリップ間空間Sの一部を充たすように内周面83に取り付けることにより、同様にリップの浮き上がり防止の効果を得ることができる。
【0049】
図6に示すように、使用状態において、内周面83に取り付けられた導電性グリースGが、弾性体部30の出力軸102との接触部以外において、弾性体部30の内周面83と出力軸102の外周面102gとの間を電気的に接続させて導通させている。このため、弾性体部30の出力軸102との接触部以外においても、出力軸102とケーシング103との間の導通路を形成することができ、出力軸102とケーシング103との間の電気的な抵抗を低減させることができる。
【0050】
以上の構成において、密封装置10は、ケーシング103の開口部105と出力軸102との間の環状の隙間に嵌着された際、弾性体部30のリップ部35におけるリップ先端部分36のリップ接触面36sが所定の締め代f1により出力軸102の外周面102gに押し付けられた状態で摺動自在に接触して使用状態となる。
【0051】
密封装置10は、出力軸102がモータ駆動装置100により回転された場合でも、弾性体部30のリップ部35におけるリップ先端部分36のリップ接触面36sが締め代f1及びガータスプリング38の緊迫力により出力軸102の外周面102gに密着した状態を維持する。したがって、密封装置10は、リップ部35のリップ先端部分36のリップ接触面36sが出力軸102の外周面102gに押し付けられて密封対象物である導電性グリースGを密封し、グリースが外側(矢印a方向)へ流出することを防止することができる。
【0052】
ここで、密封装置10は、弾性体部30のリップ部35におけるリップ先端部分36のリップ接触面36sが、上述のように軸102の外周面102gに面する環状の面を有している。このため、密封装置10によれば、締め代f1や緊迫力に依存することなく接触面積(接触幅)を増加させることができる。つまり、密封装置10によれば、リップ接触面36sを有することにより、導電性を向上させることができる。
【0053】
リップ接触面36sは、上述のように軸102の外周面102gに面する環状の面を有している。このため、密封装置10によれば、例えば軸102の外周面102gに接する先端部分が楔形状の不図示のリップ先端部分を有する密封装置とは異なり、軸102の外周面102gに接した状態におけるリップ先端部分36の変形が少ない。つまり、密封装置10によれば、耐久性に優れ、かつ、軸102への接触面積を増加させることができる。
【0054】
また、密封装置10は、導電性ゴムからなる弾性体部30を有し、当該弾性体部30を介して出力軸102とケーシング103との導通を確保することができるので、モータ駆動装置100において発生するリーク電流を出力軸102から弾性体部30を経由してケーシング103へ逃がし、ノイズの発生を抑制することができる。この際、弾性体部30自体が導電性を有しているため、出力軸102とケーシング103との導通を図るために金属ブラシ等を別個に用意する必要がなく、部品点数を最小限として簡素化及び省スペース化を図ることができる。
【0055】
また、密封装置10では、ガータスプリング38の緊迫力によりリップ先端部分36のリップ接触面36sを出力軸102の外周面102gに押し付けることにより、出力軸102の外周面102gに対する接触状態すなわち導通状態を安定させることができ、かくしてノイズの発生を安定的に低減することができる。
【0056】
具体的には、密封装置10では、出力軸102が仮に偏心していたとしても、ガータスプリング38の緊迫力によってリップ接触面36sを当該出力軸102の外周面102gに安定的に接触させるという偏心追従性を持たせることができるため、ノイズの発生を安定的に低減することができる。
【0057】
また、密封装置10では、例えば0℃以下等の低温環境下における弾性体部30のゴム硬化時においても、ガータスプリング38の緊迫力によってリップ接触面36sを当該出力軸102の外周面102gに対して強く押し付けることができるので、出力軸102とケーシング103との導通状態を維持し、ノイズの発生を安定的に低減することができる。密封装置10によれば、リップ接触面36sが環状の円錐面であるため、ガータスプリング38の緊迫力によって、接触状態をより安定することができ、これにより、出力軸102とケーシング103との導通状態を維持し、ノイズの発生をより安定的に低減することができる。
【0058】
さらに、密封装置10では、長時間使用後における弾性体部30のリップ部35のへたり時や磨耗時にリップ先端部分36のリップ接触面36sと出力軸102の外周面102gとの接触面積が部分的に減少することがある。このような場合でも、密封装置10では、ガータスプリング38の緊迫力によって弾性体部30のリップ先端部分36のリップ接触面36sを当該出力軸102の外周面102gに対して強く押し付けているため、出力軸102とケーシング103との導通状態を維持し、ノイズの発生を安定的に低減することができる。
【0059】
加えて、本発明の第1の実施の形態に係る密封装置10は、ガータスプリング38及び導電性の弾性体からなる弾性体部30において、弾性体部30の内周面83に付く導電性グリースGを有しているため、弾性体部30と出力軸102との間に介在する導電性グリースGにより、出力軸102とケーシング103との間の電気的な抵抗を低減させることができ、ノイズの発生を安定的により低減することができる。
【0060】
また、本発明の第1の実施の形態に係る密封装置10においては、リップ部35、及びダストリップ85の2つのリップを有しているが、導電性グリースGが内周面83に付いているため、グリースの潤滑により摺動抵抗の低減を図ることができ、リップの数が増えたことによる摺動抵抗の増加を抑制することができる。
【0061】
<第2の実施の形態>
以下、本発明の第2の実施の形態について図面を参照しながら説明する。以下、上述の第1の実施の形態に係る密封装置10と同一の又は類似する機能を有する構成に対しては同一の符号を付してその説明を省略し、異なる構成についてのみ説明する。
【0062】
図7は、本発明の第2の実施の形態に係る密封装置10Aの構成を示す軸線に沿う断面における断面図である。
図7に示すように、第2の実施の形態に係る密封装置10Aは、リップ先端部分36Aにおけるリップ接触面36sAが、先に説明した密封装置10が有しているリップ先端部分36におけるリップ接触面36sと相違する。リップ接触面36sAは、具体的には、出力軸102の外周面102gに面する環状の面に、軸線xを中心とした環状に形成されている溝状の凹凸形状を有している。
【0063】
以上のように構成されている密封装置10Aによれば、リップ接触面36sAに溝状の凹凸形状が形成されていることにより、出力軸102の外周面102gへの接触幅を増加させつつ、リップ接触面36sAと出力軸102の外周面102gとの摺動による摩擦を低減することができる。また、密封装置10Aによれば、内周面83のリップ間空間Sに付いている導電性グリースGがリップ接触面36sAにも付着するため、密封装置10Aと出力軸102との導通を確保しつつリップ接触面36sAと出力軸102の外周面102gとの摺動による摩擦を低減し、密封装置10A及び出力軸102の耐久性を向上させることができる。
【0064】
<第3の実施の形態>
以下、本発明の第3の実施の形態について図面を参照しながら説明する。以下、上述の第1の実施の形態に係る密封装置10及び第2の実施の形態に係る密封装置10Aと同一の又は類似する機能を有する構成に対しては同一の符号を付してその説明を省略し、異なる構成についてのみ説明する。
【0065】
図8は、本発明の第3の実施の形態に係る密封装置10Bの構成を示す軸線に沿う断面における断面図である。
図8に示すように、第3の実施の形態に係る密封装置10Bは、リップ先端部分36Bにおけるリップ接触面36sBが、先に説明した密封装置10Aが有しているリップ先端部分36Aにおけるリップ接触面36sAと相違する。リップ接触面36sBは、具体的には、出力軸102の外周面102gに面する環状の面に、梨地状の凹凸形状を有している。また、リップ接触面36sBの環状の面には、先に説明したリップ接触面36sAのような複数の凹凸形状の表面に、梨地状の凹凸形状を有しても可とする。
【0066】
以上のように構成されている密封装置10Bによれば、リップ接触面36sBに梨地状の凹凸形状が形成されていることにより、出力軸102の外周面102gへの接触幅を増加させつつ、リップ接触面36sBと出力軸102の外周面102gとの摺動による摩擦を低減することができる。また、密封装置10Bによれば、内周面83のリップ間空間Sに付いている導電性グリースGがリップ接触面36sBにも付着するため、密封装置10Bと出力軸102との導通を確保しつつリップ接触面36sBと出力軸102の外周面102gとの摺動による摩擦を低減し、密封装置10B及び出力軸102の耐久性を向上させることができる。
【0067】
<他の実施の形態>
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に係る密封装置10,10A,10Bに限定されるものではなく、本発明の概念及び請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含む。また、上述した課題及び効果の少なくとも一部を奏するように、各構成を適宜選択的に組み合わせてもよい。例えば、上記実施の形態における、各構成要素の形状、材料、配置、サイズ等は、本考案の具体的使用態様によって適宜変更され得る。
【0068】
例えば、上述の本発明の実施の形態に係る密封装置10において、弾性体部30は、1つのダストリップ、すなわちダストリップ85を有するとしたが、本発明においてこれには限定されない。弾性体部30は、ダストリップ85に加えてその内側bに内側ダストリップを備えて2つのダストリップを有するものであってもよい。この場合において、内側ダストリップは、ダストリップ85と同様に、ダストリップ85より内側bでありリップ部35のリップ先端部分36のリップ接触面36sの外側aの端部との間の内周面83において、基部31から外側に向かって内周側に斜めに延びており、例えば円錐筒状又は略円錐筒状の形状を呈していればよい。さらに、弾性体部30は、内側ダストリップ及びダストリップ85に加え他のダストリップを有しており、3つ以上のダストリップを有するものであってもよい。弾性体部30が2つ以上のダストリップを有する場合、内周面83は、リップ部35のリップ接触面36sから最も外側のダストリップの先端まで延びる弾性体部30の内周面であってもよく、リップ部35のリップ接触面36sから最も外側のダストリップよりも内側にある途中のダストリップの先端まで延びる弾性体部30の内周面であってもよい。また、内周面83は、ダストリップとダストリップとの間の弾性体部30の内周面であってもよい。例えば、密封装置10においては、内周面83は、内周面83a,83cから成るとしたが、内周面83は、内周面83aと内周面83cの先端85aよりも内側の部分とから成るものであってもよく、また、内周面83aと内周面83cの先端85aよりも外側の部分とから成るものであってもよい。また、内周面83は、連続する面でなく、断続する面であってもよい。また、内周面83は、リップ接触面36sとダストリップの先端との間で終わっていてもよく、また、ダストリップの先端とダストリップの先端との間で終わっていてもよい。さらに、密封装置10は、リップ部35のリップ先端部分36と背向する外周側(矢印c方向)に緊迫力付与部材としての環状の弾性部材であるガータスプリング38が装着されていないものであってもよい。
【符号の説明】
【0069】
10,10A,10B…密封装置、20…補強環、21…円筒部、22…錐環部、24…円盤部、30…弾性体部、31…基部、32…ガスケット部、33…カバー部、35…リップ部、36,36A,36B…リップ先端部分、36s,36sA,36sB…リップ接触面、38…ガータスプリング(緊迫力付与部材)、85…ダストリップ、83,83a,83c…内周面、85a…先端、100…モータ駆動装置、101…電動モータ、102…出力軸(軸)、103…ケーシング(外周側部材)、104…ベアリング、105…開口部、121…プーリー、f1…締め代、G…導電性グリース、S…リップ間空間、x…軸線。